ちむにーの冒険

レス2 HIT数 123 あ+ あ-


2024/08/12 17:00(更新日時)

クラッカーとコーンポタージュを食べてソファでゲームをしていたら、もう夜の九時になっていました。いつもなら八時にはお母さんが帰って来ます。しばらくゲームに夢中になっていたちむにーは、時計を見て急に心配になりました。LINEも来ていないので、これはいよいよ変だと思い、ちむにーはリビングルームをぐるぐる歩き回ったあと、電話をかけることにしました。しばらく待っていると、突然誰かの叫び声が聞こえました。それはお母さんの声でした。ちむにー来ちゃだめ!何度も叫んでいましたが途中で電話が切れてしまいました。ちむにーはあまりの衝撃に呆然としていましたが、これはいよいよ大変なことになったと思いました。お母さんが危ない!こういう時に何をしたら良いのか、まだ幼いチムニーにとってそれは大きな試練でした。スマホから110番して警察に連絡をしました。

「はいこちら○○○警察です」

ちむにーは必死に説明をしましたが、警察側はイタズラ電話だと思ったらしく、途中からちむにーを舐めてかかりました。ちむにーは今にも泣きそうになりながら、何とか状況を伝えようとしましたが、警察官はついに大声をあげて笑いました。そしてイタズラを止めるようにと告げると電話を切られてしまいました。

ちむにーはわっと泣き出しその場で崩れてしまいました。早くお母さんを助けないといけない。しかし幼いこの無力なちむにーに一体何が出来るというのでしょうか。すると突然辺りが明るくなり、チムニーの目の前にお母さんが男達に捕まっている光景が一瞬、見えました。ちむにーはその場所をよく知っています。それは近所のスーパーの駐車場でした。ちむにーは立ち上がると、自分の中から不思議な力が湧いてくるのを感じました。目を閉じて、意識を集中。

それから目を開けると、ちむにーはスーパーの入り口にいました。驚いている暇はありません。ちむにーは現場に急行しました。

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No.4115898 (スレ作成日時)

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No.1

スーパーはもう閉店していますから、鍵はかかっているし、中は真っ暗なのですが、何故かちむにーはすり抜けることが出来ました。自身に突然芽生えた不思議な能力を実感しながら、ちむにーは階段を駆け上がり、あっという間に屋上の駐車場に着きました。

広い駐車場の真ん中に黒いバンが一台、止まっています。ちむにーはその車から発せられる恐ろしいオーラに一瞬めまいがしました。しかしあそこにお母さんがいる!という確信がありました。

ちむにーは再び目を閉じて意識を集中しました。それから目を開けると、体全体にマジカルきゅあちゃんのバスタープリンセスの格好になっていることに気づきました。それに相棒の子犬、マックスフンドーもいます。ちむにーはミラクルステッキを構え、バスターエマージェンシーモードになりました。するとマックスフンドーがミラクルステッキの中へ吸い込まれていきました。これはアニメでマジカルきゅあちゃんが悪を滅ぼす時に使う最上級奥義です。ちむにーは興奮と緊張も驚きと感動の混ざった気持ちで、必殺技を叫びました。

「悪よ滅べ!堪忍せよ!マジカルミラクルサンシャイン!いけっ、マックスフンドー!」

すると七色のまばゆい光が出現し、黒いバンを覆い尽くしました。禍々しい悲鳴が聞こえたかと思うと、バンの中から石油のような黒いヘドロが溢れ出しました。それからバンはその姿をデーモンに変えました。そして何とデーモンの肉体の中に、お母さんが埋め込まれていたのです。お母さんは辛うじて顔だけが見えています。そして再び叫びました。来ちゃ駄目って言ったでしょ!何で来たの!?

ちむにーはお母さん、今助けるからね!と言い、次の技を打つ為に呪文を唱えました。

「光の戦士あるてぃめいたむ降臨せよ!」

するとマックスフンドーの姿が大きな獣戦士ダルメール・シアンに変わりました。その瞬間、ダルメール・シアンの素早い一撃がデーモンの首を切り落としました。デーモンの首から勢い良く溢れ出る黒い液体が駐車場全体に黒い雨となって降り注ぎました。

ちむにーはお母さんの目の前に瞬間移動して、救出しようと試みました。しかしお母さんの肉体は既にデーモンに溶け込んでおり、引き剥がすことは困難でした。

突然、お母さんの両目が真っ黒になりました。それから口を大きく開けて笑い始めました。

「オマエノハハオヤハ、ココニハイナイ」

No.2

>> 1 それは最早お母さんではありませんでした。お母さんではない何か、つまりデーモンの罠でした。本当のお母さんはどこにいるのだ!ちむにーが叫ぶとデーモンは笑いました。

「オマエニハハオヤハ、サイショカライナイ」

ちむにーはデーモンに接近し過ぎたこともあってその魔力に引きずられていきました。それは物凄い吸引力で、あっという間に胸の中の希望という光が失われていくのを感じました。私に母親はいないって?ちむにーの記憶が走馬灯のようにフラッシュバックしていきました。

母親はいつも仕事で忙しい。私はほとんど全ての時間を家で一人で過ごしてきた。お母さんはたまに帰ってきて、机にカバンやネックレスを放り投げる。あんたまだいたの?彼女は毎回そうやって私に声をかけた。たまに知らない男を連れてくることもあった。私は物心ついた頃から父親の存在を知らなかった。家にいるのは母親と私と知らない男だけ。母親はいつも食べ物を机に置いてどこかへ消えてしまう。夜になると再び知らない男を連れて帰ってくる。入れ替わり立ち替わり現れる知らない男達は、私を必要以上に撫でまわしてきた。毎日その繰り返し。父親のいない私にとって母親が全てだった。母親がいなければ、私はどうやって生きていけばいいのだろうか。

ダルメール・シアンがちむにーを間一髪で救い出しました。デーモンはちむにーの絶望の記憶を呼び覚まし、その力を増幅させることに成功したようでした。スーパーの駐車場は悪魔の巣窟のような雰囲気と化しました。

「ちむにーよ、あのデーモンを滅ぼすことは、貴方の記憶を滅ぼすことになります。貴方自身を救うことになるのです」

ちむにーは迷っていました。デーモンはお母さんと一体化しているから、滅ぼせばお母さんも滅ぶのです。そうなれば、ちむにーには母親という存在がいなくなってしまう。それはとても寂しいことだと、ちむにーは思いました。

力を蓄えたデーモンは、大量のヘドロを生み出し、一人の美しい青年を作り上げました。青年はちむにーの名前を何度も優しく呼びました。

「ちむにー、ぼくだよ。君の父親さ」

ちむにーはその美しい青年こそがまさに自分の父親だとわかりました。なぜなら顔がそっくりだったからです。

「ちむにー、ぼくだよ。遊び人で女を取っ替え引っ換えしていたのは。何も出来ないただのヒモさ。君のお母さんに飼われて、裏切られたのさ」

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