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18/11/10 16:13(更新日時)

身バレ防止のためフェイクを入れたり、記憶が曖昧なところは辻褄合わせをしているので、純度80%くらいの自分語りです。

No.2738873 18/11/07 06:27(スレ作成日時)

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No.1 18/11/07 06:31
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私が幼馴染の同級生、ナオヤに恋していることに気づいたのは小学4年の時。
ナオヤは、兄と姉がいる三人兄弟の末っ子で、勉強はさっぱりだけど明るくて楽しいバスケ大好き少年だった。
家が近所で幼稚園の時から一緒で、家族同士の顔見知りではあったけど
好きになったきっかけは、毎朝ナオヤが家の前の川沿いの道を走っている事に気づいてからだ。家の前を川下に向かって走って行き、20分後くらいに逆方向からまた家の前を通過していく。
いつの間にか私は、ほぼ毎日部屋の窓のカーテンの隙間から隠れて覗くようになっていた。

「ねぇ、ナオヤって時々川沿いを走ってる?」
「あぁ、コーチが体力ないから走れって」
「そうなんだ。よく走るの?(ほんとは知っている)」
「うん、土日とか雨の日以外」
「すごいねー」
「バドミントンのコーチは走れって言わないのか?」
「言われたことないよ」
「ふーん」

今思えば小学4年の自分にとって恋愛そのものに憧れがあったのは間違いない。
もしかしてカーテンの隙間から覗くドキドキ感と恋愛のドキドキ感を混同した「吊り橋効果」的なものなのかもしれない。
一番大きなのは、自分しか知らないナオヤを知っている優越感みたいなものだとは思うが、ともあれ、あれが私の初恋なのには間違いない。

No.2 18/11/07 06:34
恋愛中さん 

>> 1 初恋を意識した頃から約3ヶ月後の夏休み。
登校日の朝の教室に先生と一緒に転校生がやってきた。

「〇〇市から引っ越して来ました、〇〇マサトです。よろしくお願いします」

「背っ高っ!」
「〇〇市ってどこだっけ?」
「バスケやろうぜ、バスケ!」

なんとなく無愛想に感じたけど初対面の大勢の前で質問攻めにされて少し戸惑っているのかな?とも思った。

休憩時間になるとマサトはクラスの男子に囲まれて再び質問攻撃されていた。
特にナオヤは一番に駆け寄って行って「バスケやろうぜ!絶対センターがハマるから!」
と、一生懸命バスケクラブへの勧誘をしていたのを覚えてる。

No.3 18/11/07 06:37
恋愛中さん 

>> 2 新学期になり、私は久しぶりに所属していたバドミントンのジュニアクラブに行った。
週2回の練習で、希望者だけが試合に出るって感じのゆるいジュニアクラブで
中学生から小学1年まで合わせて17.8人。大きな大会にまで出る人は3.4人くらい。
私は夏休みの間は完全に休んでいたので、マサトがコーチや他の人と普通に会話して馴染んでいるのに少し驚いた。

「おっ、ユイ、久しぶりだな。〇〇マサトくん、知ってるよな?」
「うん。てか、バドやってたんだ」
「あぁ、うん」
「マサトは強いぞ。全国大会に行けるぞ」
「前の小学校に俺より強いヤツがいます」
「頑張って練習しような」

マサトは転校前からすでに本格的に始めていたみたいで
ラケットやバッグ、ウェアやシューズとかを普通に持っていた。
これだけ本格的にやっていれば、そりゃナオヤがバスケ誘っても乗らないわけだと思った。

No.4 18/11/07 06:42
恋愛中さん 

>> 3 ナオヤとマサトが親友になったきっかけの事件があった。
5年生の時のとある月曜日の朝、校門の近くであちこちからの登校班が合流し始めた時、いきなり他の登校班の6年生2人がナオヤを殴ったり蹴ったりし始めた。
あたしは恐くて体が硬直し、ただただ見ていた。

「なにやってんだよっ!!」

マサトがすっ飛んで来て止めに入った。
校門のところに先生がいたので6年生2人はすぐに立ち去った。

その後、教室に入ってしばらくして気がつくとマサトがいない。
カバンはあるのに朝の会になっても教室に戻ってこない。
教室に来た担任が、マサトがいないのに気づいた。

「あれ?マサトは?」

男子がトイレを見に行ったり、下駄箱の上履きの確認をしに行ったりしていたけど、
しばらくすると6年生の担任と教頭先生が教室にやってきて、ナオヤが呼ばれて担任と教室を出て行った。
教室には教頭先生が入って来て、6年生がナオヤを殴ったりしているのを目撃した人は挙手させられた。

後でナオヤが親から聞いた話だと、マサトは朝の会の最中の6年生の教室に入って行って、6年の担任と生徒の前で、ナオヤが殴られたことを言って、殴った2人を「犯罪者」呼ばわりしまくったらしい。
止めに入った6年の担任にも「犯罪者を庇うお前も犯罪者だ」ってブチ切れたって。
殴った1人が「ちょっとふざけただけです」と言うと、マサトはその子の机を蹴り飛ばし「じゃぁこれ、俺もちょっとふざけただけな?」って。
結局、校長室に関係者とその親たちが呼ばれて6年生の2人とその親たちはナオヤとナオヤの親に謝罪したらしい。
6年生2人は前日のバスケの試合でのナオヤのプレーが気に入らなかったらしく、ナオヤを殴ったって。
その後6年生2人は、他のイジメも発覚したりで、結局バスケクラブを辞めて他の6年生もナオヤに絡むことはなくなった。

「あいつすげえぇよ!6年どころか先生にも全然びびんないんだぜ?」
「6年なのに泣いてんのw」
「あいつバスケやんないかなぁ」

その事件を境にナオヤはマサト信者っていうか、なにかあるごとに「マサトはすげぇ」って言うようになった。
マサトはというと、時々周りがドン引きするようなことを平気で言って、ナオヤはそんなマサトに憧れているように見えた。

No.5 18/11/07 06:53
恋愛中さん 

>> 4 この話も5年生の時だったと思う。
ある日
「おっ、ユイ!聞いて!」
「なに?」
「マサトも朝走ってんだぜ」
「え?」
「あいつ、〇〇神社まで走って階段ダッシュとかしてんの。マジですげぇ!」
「なんで分かったの?」
「今朝走ってたら偶然会って、マサトのコースについて行ったんだ」
「ふぅん(それで今朝はなかなか戻ってこなかったのか)」
「こっちに走りに来いって言ったら、海の匂いがするほうがいいってw」
「ふぅん」
「一緒に走りたいけど、俺絶対ついて行けねぇよ」

目をキラキラさせて話すナオヤを見てどんだけマサトが好きなんだと少し嫉妬さえ感じるようになった。

No.6 18/11/07 06:56
恋愛中さん 

>> 5 5年生の冬、全体朝礼で校長先生からマサトがバドミントンの全国大会に出場するって知らされた。
田舎の小さな小学校なので「全国大会」ってだけで、大騒ぎになった。
ナオヤは「まぁ当然だよな。つか、俺知ってたけどな!」って妙な自慢をしていた。
そんなナオヤも、まだ5年生なのに、バスケの市の選抜チームに呼ばれ、バスケクラブの方でも「5年生エース」とか言われていたみたいだった。


6年生になるとマサトはバドミントンの全国大会で入賞した。
マサトは実業団や大人のサークルにまで出かけて行って練習しているらしい。
ナオヤはバスケの県の選抜チームに呼ばれるようになったが、学校のクラブはキャプテンのナオヤが飛び抜けて上手いだけで、チームとしては1.2勝するのがやっとみたいだった。
ナオヤの「マサトすげぇ病」は相変らずで、私はマサトが煙たいというか嫌いだった。

ある日、宿題を忘れたナオヤが大騒ぎしているとマサトが結構強いトーンで文句を言った。

「宿題くらいしろよ!」
「めんどくせぇよぉw」
「お前そのうちバスケからも逃げるようになるからな」
「バスケからは逃げねぇよw」
「嫌な宿題から逃げ出すヤツがバスケで嫌なことがあったら逃げ出さない保証ねぇだろ」

横で聞いていた私はカチンときてしまい

「ナオヤ!まじめ君のマサトなんか相手しなくていいよ!」
「やってこなきゃなんないことサボるやつがクズなんだよ!」
「宿題くらいでクズって言わなくたっていいじゃん!!」
「宿題くらいって言うならやってこいよw」

マサトに言い合いで勝てる訳もなくあたしは半ベソ状態。

「いや、マサトの言う通りだよ・・」

ナオヤがそう言った瞬間あたしは泣いてた。

教室に入って来た担任に泣いているのがバレて軽く事情を聞かれると、ナオヤとマサトと私は相談室に連れていかれた。

「お前らいつも仲いいのにどうした?」
「マサトが・・・クズって・・・」
「いや、あのさ、マサトっていつもこうじゃん?俺が宿題してないのが悪いんだし」
「うーん、マサトは間違っちゃいないんだけど言い方がキツイからなぁ」

私はナオトも担任もマサトの味方ばかりするのに腹が立った。

「絶対クズって言うやつがクズ!!」
「お前、今2回も言ってんじゃんw」
「んぷw」

バカにした言い方で笑っているマサトを見てナオヤが吹き出した。
私号泣。

No.7 18/11/07 06:58
恋愛中さん 

>> 6 「こらマサト!ナオヤも笑うな!」
「わかりましたっ。もうクズって言いません」

次の日、私はマサトと顔を合わすのがすごく嫌だったけど
マサトは昨日のことなんか何もなかったかのような態度で「あーおはよー」
教室でナオヤがやってくるとマサトはナオヤに向かって、それでいて私に聞こえるように

「おい、カス!今日は宿題やってきたか?」
「今度はカスかよw」

明らかに自分がからかわれているのに気づいた私は職員室に行き担任に告げ口。
朝の会で担任がマサトに「おーいマサト、カスも禁止な?」と言った時のマサトの表情と
ナオヤの爆笑に少し溜飲が下がった気がした。

No.8 18/11/07 07:00
恋愛中さん 

>> 7 でも、そんなマサトがクラスの女子の間で大人気なのを知ったのが修学旅行。
1泊2日の日程で、夜寝る前は定番の恋愛話。
クラスの女子の中心的人物のナツミが全員1人ずつ男子の推しを言おうって言い出した。
ナツミは小3まで私の家の近所に住んでいて登校班も一緒だったせいもあって
今でも親友の1人だ。運動神経が男子並みで私はナツミに誘われてバドミントンを始めたくらいだ。

私が驚いたのは女子15人中、マサト推しが5人、ナオヤ推しが3人、ヒロ推し2人で残りがいないって結果に。

「ええぇぇ!あんなやつのどこがいいのっ!!」
「えっ、ユイ、マサトと仲いいじゃん」
「どこがっ!」
「てか、ユイってマサトともナオヤとも仲いいよね」
「1位2位を独り占めじゃんw」

みんなに変ないじられ方をして顔が赤くなるのが自分でもわかった。

大のマサト推しのナツミが言うには、マサトは大人、ひどいこと言うけどほんとは優しい。勉強もスポーツもすごいし。らしい。

「完全無欠の冷血人間」

私がマサトを表現したあだ名だ。
どこが優しいのか全然分からなかった。

No.9 18/11/07 07:04
恋愛中さん 

>> 8 ナツミのマサト推しには理由があった。
あるバドミントンの練習日、バスケクラブの試合が近いので体育館を半分ずつ使うことになった。
その日はバドの監督が来れないってことで、練習はのんびりムードで私はナオヤの姿が見られるのでウキウキしていた。
体育館のフロアを二分するネットが引かれてバスケットボールが入ってこないようにして練習していたのだが、バスケクラブの低学年の子たちがネットと壁を固定する止め具を外して、バドのエリアに来たりしてウロウロしていた。
初めはバドミントンの子の保護者が優しく諭していたが、しつこく出入りしているうちにバスケットボールが入って来てコートでノックを受けていたナツミの方へ。
ナツミはボールが入って来たのに気がつかないまま、後ろに下がってボールに乗るかたちで転倒。腰と肩を打って右足首を捻ったらしく痛みで立ち上がれずにいた。

「おいっ!大丈夫かっ!どこが痛い?」

すぐにマサトが走って行き、ナツミに痛い場所を聞きながらスプレーを吹きつけていた。
バスケの関係者とナオトがやって来て謝った。

「すみません、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねーよっ!クソガキをいつまでもチョロチョロさせてっからだろうがっ!」
「ごめん、気を付ける」
「ごめんはナツミにだろ!ナオヤもキャプテンならちゃんと周り見ろよっ!」
「ごめん」

マサトは相変わらずで、大人にもおかまいなしに文句を言っていた。

「マサト、大丈夫だから」
「クソが・・・」

マサトはナツミにちょっと我慢しろと言うと、ナツミを抱え上げ体育館の壁際まで運んでゆっくり降ろした。
肩と腰はたいしたことないらしくアイスバックでナツミの足首を冷やした。

「こうは痛くない?こうしたら?・・・痛い?」
「骨は大丈夫とは思うけどちゃんとレントゲン撮った方がいいぞ」

マサトの口の悪さには慣れていたが、ケガの処置の手際の良さに驚いた。

結局、ナツミの右足首は捻挫で、しばらく足を引きずって歩いていたけど
たいしたことにはならなかった。
その後、ナツミはところかまわずマサトにお姫様だっこをされたと自慢しはじめて、私はそのたびに経緯を説明させられる役になってた。
そんなことがあってナツミは、マサトはほんとは優しいと言うようになったが
私は、マサトがバド選手としての能力と経験値が高いだけで優しいのとは違うと思っていた。

No.10 18/11/07 07:11
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>> 9 翌年、私たちは中学生になった。
同じ小学校から、マサトただ一人中高一貫校に進学。もう1人女子が中高一貫の女子校に進学した。
ナオヤはマサトと離れるのをもっと残念がるかと思っていたのに
朝のランニングで会うからと案外あっさりしていた。
私は嫌いというか苦手だったマサトがいなくなるのでほっとしていた。

中学は3クラスあったけどナオヤと同じクラスになって、私は勝手に運命だとか思ってた。
ナツミも同じクラスでほんとラッキーだと思った。
中学のクラブ活動は全生徒必修で、ナオヤは当然のようにバスケ部に入部。
バドミントンが私より上手いナツミは陸上部に入部し、私はいろいろ迷ったが結局経験のあるバドミントン部に入部した。
ナオヤのバスケの腕前は中学ですでに名前が知られていて「県選抜の1年」と、ちょっとした有名人だった。
私の方は、たいしたことないのにジュニア時代の経験のおかげで部活内では学年2番手で来年には団体戦5人のレギュラーに入れるだろうって言われた。

ナオヤが夏休みが過ぎた2学期あたりから急にモテはじめた。
ついには、告白する人も出てきてハラハラしまくりだったけど、今は彼女は欲しくないって理由で断ったらしい。
それとなくナオヤに聞くと「いやだよ、身長俺より高いんだぜ?」とまるで子どものような表情で言うのについ笑ってしまった。
私は自分が告白する前に玉砕にならなくてよかったと思う一方で、ナオヤはバスケ一筋で彼女とか興味ないのかな?と思ったり、早く告白しないとマズイかなとかヤキモキしていた。
私のそんな気も知らずナオヤは、相変らず話しかけてくる話題はほとんどマサトの話。

「あいつさ、中高一貫校じゃん?入学していきなり高等部の副キャプテンに勝ってさキャプテンが試合したがらないって・・・すごくね?」
「高校の練習試合に普通に呼ばれて普通に勝つらしいよ」

中学になっても治らないナオヤの「マサトすげぇ病」に少しイラついた私はある日ナオヤにくってかかった。

No.11 18/11/07 07:13
恋愛中さん 

>> 10 「あたし完全無欠の冷血人間きらーい」
「あいつのどこが完全無欠なんだよw」
「正しいかもしんないけど、ひどい言い方しかしないじゃん」
「マサトはそう思ってなくてもわざと言うんだよw」
「意味わかんない」
「なんて言うかなぁ・・・でも、普通に面白いやつなんだぜ?」
「えぇーどこがだよ」
「服とかめっちゃダセェし・・・あーそうそう、あいつ虫が大嫌いでセミとかトンボでも大騒ぎして逃げるんだぜw」
「マジで?」
「意外だろw」
「うん」
「夏休みにうちの家族とマサトんちの家族で海行った時にさ、虫は嫌いスイカは嫌い泳ぐならプールがいいって」
「え?ランニングコース海の匂いがなんとかって言ってなかった?」
「うん、でも海は深いし辛いしってw」
「溺れてる?w」

ナオヤの話にはほんとうに驚いた。というか全然想像出来なかった。
私が知っているマサトとナオヤが知っているマサトは別人なんじゃないかと思うくらいだった。

「でも、ナオヤいつもマサトすげぇって言うじゃん」
「あー、バドに関してとか、えーとなんて言えばいいかなぁ・・・まっ、とにかくあいつは全然お前が言うようなやつじゃないよ」

マサトの違った一面は知ったけど、その時は男子と女子で見方が違うのかなくらいにしか思わなかった。
その後も何回かナオヤの「マサトすげぇ病」が出ると似たような言い合いをした。

No.12 18/11/07 07:15
恋愛中さん 

>> 11 それから間もない中1の冬休み、とんでもないことが起こった。

ナオヤ一家5人の乗った車が帰省先の県外に向かう道中で事故に会い3人兄弟の内の長女とナオヤが亡くなった。
事故が県外だったのもあってか私が知ったのは葬儀の直前、向こうで火葬して遺骨を持ち帰っての葬式となった。

お通夜にはお母さんと二人で行った。
葬式やお通夜の参列は初めてじゃないけど、病気で入院して容体が悪化してというのでなく、突然の死というのは悲惨だと思った。同じ葬式なのに全然違う感じがした。
ナオヤのお父さんは手に包帯をしていたし、兄のタクマくんも右足にギブスをしていた。
おばさんは疲れた顔をしながらも参列者に挨拶していた。
お母さんがおばさんに何か話しかけ2人とも声をあげて泣いていた。
私も涙は溢れてきたけど、どうしても実感出来なくてただぼーっとナオヤと姉のエリちゃんの遺影を見ていた。

挨拶がすんで後ろの方にいるとお坊さんが入って来た。
お坊さんが最前列に着いた頃会場の後ろの方で大声がした。
怒鳴り声とか制止する声が聞こえた。
振り返ると人垣の向こうで、小6の時の担任がマサトを羽交い絞めにしていた。マサトは見たことのないもの凄い形相で何か言っているようだった。
私は一瞬何があったんだろ?とは思ったっけど、その時は「あぁマサト来てるんだ」くらいにしか思わないくらい何も考えることが出来なかった。

No.13 18/11/07 07:17
恋愛中さん 

>> 12 ナオヤがいなくなってしばらくして3学期が始まった。
始業式で全校生徒での黙祷があったせいか学校全体が静かな感じがしたけど、2.3日もすると普段の生活になっていった。
私はまるで自分が取り残されている感じで、ぼーっと生きているような状態が続いていた。
毎朝、ナオヤがランニングで通る時間に窓の外を眺めて幽霊でもいいから走ってこないかなとか思っていた。


それからしばらくしたある朝、いつもの感じで窓の外を眺めてたら川下の方から走ってくる人影があった。
川沿いの道はナオヤだけでなく近所のお年寄りの散歩や、犬を散歩させてるおじさん、夫婦で歩いている人たちもいるけど、私はその人影を見た瞬間マサトだと直感した。
まだ薄暗くて確信が持てなかったので家の前を通過する時必死に目を凝らした。

バドミントンのジャージだ!!

私は反射的に大急ぎで上着を着て家の外に出てマサトが走って行った方向を見た。

あれだ!!

とにかく会いたい、話がしたい。自転車に乗って必死で追いかけた。
マサトが公園に入ったのが見えて後に続いた。

「マサト!!!」

マサトがストレッチをしていた顔をあげて目が合った。

「おぉ・・・久しぶり」
「ナオヤがぁ・・・・・」

マサトの顔を見た瞬間私は号泣していた。
葬式の時以上にひどい泣き方をしていたと思う。
マサトは何も言わずただ黙ってしばらく立ち尽くしていた。

「悔しいよな・・・・・ほんといいやつだったのに」
「お通夜、何かあった?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ねぇ」
「〇中(私の中学)のバスケ部のやつが、これでレギュラーの枠がひとつ空いたなって」
「ええっ!!」
「他のやつが笑いながら県選抜の枠もなって・・・」
「ひど・い・・・・・ひどいよぉ」

私は泣きながらも必死でマサトの話を聞いた。

「俺、気が付いたら〇〇先生(小6の担任)に押さえつけられてた」
「暴れたことを先週ナオヤんち行っておじさんとおばさんに謝った」
「始業式の日の夕方、〇中に抗議しに行った」
「俺より先に学校に電話やメールで苦情や抗議した人が何人かいて校長も知ってた」
「「不快な思いさせてすみません、しっかり指導します」ってさ」



No.14 18/11/07 07:19
恋愛中さん 

>> 13 そういえばバスケ部は活動自粛して視聴覚室でミーティングばかりしているって聞いていた。
ナオヤの件でだと思っていたが、そうじゃないんだと気がついた。
そのことをマサトに伝えたがマサトは「もうどうでもいい」と言った。

マサトは泣いてる私と違い冷静にポツリポツリと話していたけど生気がないというか、私と同じ状態なんだと思った。

「あいつ小5の時に6年に殴られたことあったじゃん」
「うん」
「6年2人がバスケクラブ退部した後さ「あーあ、これで戦力が確実に落ちるよぉ」って言ったんだ」
「えっ」
「「自分を殴るようなやつらと同じチームでバスケやりたいか?」って聞いたら「バスケ出来ないよりマシかな」って笑ってた」
「そうなんだ」
「あいつ何かあったらすぐに「すげぇ」って言ってたけど、ほんとにすごいのはナオヤの方だよ。俺と違ってすぐ許せるんだ。
あいつ今頃「部活禁止にまでしなくても」とか、言ってんだろう・・な・・・」

マサトはそう言うと手で顔を覆って泣いた。

「くっそう、なんなんだよ!こんなとこに引っ越して来たくなかったよっ!!」
「やめてよぉ・・・・そんなこと言わないでよぉ」

引っ越してきてからの時間を否定して、あのマサトが泣いた。
私はただただ悲しくてまた泣いていた。

「ごめん・・・俺、行くわ」

マサトは、そう言うとゆっくり走り出して公園を出て行った。
顔を見なくても泣いているのが分かるような後ろ姿だった。
私はナオヤが死んだことをこの時初めて実感したんだと思う。

私はそれまで、マサトとナオヤの関係というのは、マサトがいつも偉そうにしていてナオヤが必要以上にマサト持ち上げてるイメージでいた。
でも、それは間違いだったと思った。
マサトが泣いて「ほんとうにすごいのはナオヤ」って口にしたのを聞いて、自分の思い込みは間違ってた、ほんとうに親友だったんだと思った。

私はナオヤが死んでから、ずっとぼーっと過ごしていた。
マサトはもしかしたら私よりつらい思いをしているかもしれないのに、もう前を向いて走っていた。自分も頑張ろうと思った。

No.15 18/11/07 13:03
恋愛中さん 

>> 14 それからも私は、毎朝窓の外を見続けた。
それはナオヤの時のように恋愛感情から来るものではなく、ただマサトが心配だった。
私にとってマサトが泣いたのはそれくらい衝撃的な出来事だった。

約1ヶ月後の学年末テストの頃、マサトの姿を見なくなった。
テスト期間中で勉強がきつくて休んでいるのかな?それとも走るコースを変えたのかな?
10日くらいマサトを見ないまま春休みに入った。

春休みは学校からの課題もほとんどなく、私はバドミントン中心の生活を送る予定でいた。
昼間は学校へ行って部活、夜はジュニアクラブに行って練習するつもりでいた。
そして春休み最初のジュニアクラブの練習日、小学校の体育館に行くとマサトがいた。
思わず朝のランニングはどうしたのか聞きたかったけどなんとか我慢して、
監督のところに行って挨拶をすると、監督がちょっといいか?と言い、少し離れたところで話をした。

監督が言うには、先週マサトのお父さんと話をしたらしい。マサトがオーバーワークで右足の腓骨を疲労骨折した。骨折自体はたいしたことはなく、ギブスもしなくて普通に生活できるが、思い切りバドをするには様子を見ながら1ヶ月くらいの安静が必要。
オーバーワークの原因はおそらく友達が亡くなったことに起因しているんじゃないかと。骨折がクセになるのも避けたいし、この際だから春の全中予選は諦めて焦らずしっかり治して夏の全日本ジュニアの予選での復帰を目標にやっていく。
とはいえ、原因が原因だし家でじっとしているよりはということで、しっかり動けるようになるまでジュニアの面倒を見てもらうことにした。って。

「練習で「自分を追い込む」ってなかなか出来るもんじゃないんだがな」
「マサト、根はまじめだから・・」
「〇〇さんとこの下の子だろ?バスケが上手だった。マサトと仲良かったのか?」
「マサトが引っ越して来てからずっと親友でした」
「マサトのことだから大丈夫とは思うけど、無茶してたら声かけてやってくれ」
「はい」
「怒鳴ってやっていいからなw」

ナオトが死んで傷ついているのはマサトもだと分かってたつもりだった。
でももしかしてマサトの方が深刻なんじゃ?
骨が折れるまでって、めちゃくちゃじゃん・・・。
監督の前では必死に平静を装ったがトイレに隠れる前に涙がこぼれた。
私はマサトの無茶を絶対に見逃さないようにしようと思った。

No.16 18/11/08 05:51
恋愛中さん 

>> 15 体育館に戻るとマサトが笑顔でジュニアの子たちに接していた。

「打て打てっ!ナイショーッwww」
「前前前―っ、オケーッwww」

ジュニアの子たちもマサトが強いのはみんな知っていて、そのマサトが楽しく声をかけ練習を盛り上げてくれるのでコーチも助かっているって言っていた。
やがて、低学年の子たちが帰っていく時間になるとコーチがやってきた。

「マサト、ユイも見てやってくれよ。今年は団体戦レギュラーらしいし」
「ユイがレギュラーとか〇中はどんだけ人がいないんだよw」
「うっさいなぁ」

マサトにすれば、いつも通りの悪態なんだけど、なぜか私は無理に明るく振舞っているように感じた。


マサトの指導は、基礎の反復練習から始まった。
これが出来るようになったらこういうプレイが出来るとか
これが出来ないと、楽に体勢を崩されてしまうとか。
単純な反復練習でも目的が明確だからモチベーションを保って集中できるし
マサトが一生懸命教えてくれているのが伝わってくるので、私も必死で食らいついて練習した。

「学校の部活でもこれとこれは意識して練習しろよ」
「うん。マサトはやっぱバドはすごいね」
「「バドは」かよw」
「うんw」

練習が終了時刻10分前になりフロアをモップがけしていると監督が

「マサトーッ、ユイを送ってやってくれ」
「うぃーす、つか、こいつ襲うヤツなんかいんの?」
「うるさいなぁ」
「まぁ、暗いと顔わかんないしなw」
「黙れ!」

家まで15分くらいマサトと話ができた。


No.17 18/11/08 05:53
恋愛中さん 

>> 16 「マサト、あの、この前、朝・・・」
「あぁ、悪かった。ごめん」
「謝れって言ってんじゃなくて・・・・・大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。お前こそ、どうなんだよ。ナオヤのこと好きだったんだろ?」
「知ってたの?」
「6年1組全員知ってたぞw」
「・・・・うん」
「親父に言われたんだけどさ、死んだ人のために生きるなんて出来やしない。大事なのはその人のことを忘れないことだって。俺オーバーワークはナオヤのことが原因ってことは理解したつもりだからもう大丈夫だ」
「うん」
「ナオヤのことは忘れない。でも、「自分は自分」で頑張るよ」
「うん」
「お前は、大丈夫なのかよ」
「あたしは、ただの片想いだから」
「でも俺より全然、歴史があるんだろ?」
「でも、マサトのお父さんの言う通りだよ。忘れないようにする」

マサトは立ち直ろうとしている。
私もいつまでもぼーっとしてられないと思った。

春休みの最後の2日間の部活はチームのランキング戦をした。
私は3年生2人にも勝って部内でシングルス2番手になった。
先生にすごく驚かれていろいろ聞かれたのでジュニアに行って練習していることを話した。

「〇〇ジュニアか。〇〇マサトがいたところだよな?」
「先生マサト知ってるんですか?」
「県内のバド関係者で知らない人いないぞ」

少し驚いたけど、さすがというかやっぱりというか、まぁマサトだしと思った。
私はマサトにバドを教えてもらっていることを言おうか迷ったがなぜか黙っていた。

中2になってから初の公式戦、私は団体戦のシングルスで出場し3勝した。
チームは県ベスト8。個人戦も県ベスト16で自己最高の成績だった。
改めてマサトのすごさを思い知った。今のうちにもっと教えてもらって強くなりたいと思った。

マサトが朝のランニングを再開した。
前をしっかり見て走っていた。あの日のマサトと明らかに違う。私はとても嬉しかった。そして負けられない、頑張ろうと思った。

No.18 18/11/08 05:57
恋愛中さん 

>> 17 ジュニアクラブの練習日

「ベスト16?せめてもう1つ勝てよぉ」
「無理だよ、相手3年だよ?」
「関係ねぇーよ」
「マサトに弱い人の気持ちは分かんないよ」
「俺だって初めは弱かったっつーの」

マサトの骨折は3回目のレントゲン撮影の後、医者からOKをもらい練習を再開させた。

「脚が全然動かねぇw」
「体力がぁーっw」

と、愚痴をこぼしながらも楽しそうに練習を始めていた。
特にフットワークの練習は、学校の部活ではみんな嫌がるのにマサトは汗まみれになって黙々と続ける。
時々、指示出しを頼まれた。(指示された方向に動くフットワークの練習)
男子の速さかマサトの速さか分からないけど、そのスピードと迫力に驚いた。

「マサトーッ、お前その動きで骨折したんだからなっ!気をつけろよ!」
「うぃーっす」
「マサト、フットワークの練習好きなの?」
「好きな訳ねーだろっ!」
「いつもやってるじゃん」
「脚さえ動けばなんとかなるじゃん」

私は小学生時代マサトがナオヤに「嫌いなことから逃げるヤツはいつかバスケからも逃げる」って言ってたのを思い出していた。

マサトとシングルスの対戦を小学生の時以来でやってみた。
あたりまえだけど、女子と比べて球の質というか圧が全然違う。
5点マッチで全然点が取れない。
私の得点はほとんどがマサトのミス。
何回かマサトに教えてもらったカットスマッシュを使ったコンビネーションで点を取ったがそれもすぐ通用しなくなる。

「お前少しは考えろよ!バック奥のあとそればっかじゃん。フォア奥も使うとかさ、ボディにスマッシュ入れるとかさぁ・・」

マサトとシングルスをするのは凄く勉強になる。
その場で指摘してくれて別パターンも教えてくれる。
フットワークやポジション取りもラリーを止めて教えてくれる。
ショットのコントロールの微調整とかちょっとしたスタンスの取り方も、ほんと目からうろこだった。
そしてそれを部活で試すと面白いように決まる。
私は夏休み前に学校の部内ランキング1位になっていた。

No.19 18/11/08 06:00
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>> 18 マサトは復帰の目標にしていた大会が近付いてくると、実業団や大人のサークルに参加し始めて、ジュニアクラブに来ることが減った。

「あれ?最近彼氏どうした?」
「彼氏じゃないですぅ」
「えっ、付き合ってんじゃないの?」
「付き合ってないですっ!」

このやりとりマサトが来なくなって何回あったんだろ。
私のマサトに対しての想いは、間違いなく「恋愛感情」じゃなく「バドのコーチ」で、特にこの頃は自分が強くなっていくのが実感できてほんとバドが楽しかった。

そして大会当日。
大会は個人戦のシングルスのみで決勝戦進出の2人が全国大会出場。
全中予選の県大会と違い男女同じ会場なのでマサトが話題のヒソヒソ話を何度か聞いた。
中学2年以下の大会のため、男子はマサトと県大会3位の子が優勝候補だけどマサトは復帰してすぐなので厳しいんじゃないか。女子は強豪の〇〇中学の2人に××中学の子が食い込めるかどうかみたいな感じらしかった。

結果、マサトは決勝戦で相手に半分も点を与えず圧勝。
私は、人生初の公式戦ベスト4進出。
男子は女子より参加人数が少なく、私が準決勝をやっている隣でマサトは優勝を決めていた。

決勝戦進出の2人が全国大会出場になるので「これを勝てば全国」のプレッシャーとか、自分がとんでもない位置で戦っている場違い感というか、私は、優勝候補相手にあっさり負けた。

まだ3位決定戦があるので準備していたらマサトがやってきた。

No.20 18/11/08 06:03
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>> 19 「マサトおめでと!」
「俺のことはいいから、お前切り替えろよ。全国ダメだったけど賞状くらい持って帰ろうぜ」
「無理だよ。相手、県大会ダブルス2位の子だよ?」
「これダブルスの試合じゃねーぞ、シングルスの試合だぞ!」
「さっき少し見たけど強かったもん」

顧問の先生がやってきてマサトの後ろで話を聞き始めた。

「お前、少しはシングルスプレイヤーのプライド持てよっ!」
「だって・・・」
「小中学生のダブルスなんてな、1人で勝てないやつがやってんだよ!」
「うわ、暴言w」
「お前はまずプライド持てって!」
「うん・・・・」
「ダブルスプレイヤーの潰し方教えてやるから」
「そんなのがあるの?」
「俺にも教えてくれw」

マサトが振り返った。

「あぁごめん、ユイがお世話になってます。〇中の顧問の〇〇です」
「こんちわー、お世話って・・〇中の〇〇マサトです」
「有名人だから知ってるよ、続けてよ」
「え、あっ、その前にとにかく休め、ほら座って。ドリンクある?ほら、これ使え」

マサトはアイスバックを出すと首に押し付けてきた。

マサトの話では、ダブルスは2人いるからコート全体を斜めに動くことがない。
だから、特にコート全体を斜めに下がるフットワークが苦手な人が多い。
男子なら跳んで誤魔化しが効くけど女子は全国行ってもそんなのほぼいない。
逆に脚を止めて打ち合いとかは強いからドライブ戦には付き合わず、切ってネットに落とすか跳ね上げて逃げろ。
「コート目いっぱいに相手をV字やN字に大きく動かせ」
後半、相手は日頃やらないフットワークさせられまくってショットの精度も落ちてくるから粘って絶対に諦めるな。

具体的にはバック奥へのドリブンからフォア前へのドロップ、もしくは振りで騙すカッシュ。この斜めの線を軸にして、慣れられたと思ったら高さに注意してフォア奥へドリブン。
前に落として来たら、ネットに切るかフェイントを織り交ぜたアタックロブで下がらせろ。
ネット際の球を高い位置で触るためのフットワークをさんざん練習してるから大丈夫。
ユイのリバースなんてまだまだ危ないから使わないでよし。ドロップでOK。

「1人で戦うコートの広さを思い知らせてやれw」

No.21 18/11/08 06:07
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>> 20 あれ?いつもジュニアの練習でマサトとやってたことじゃん。
勝てるとまでは言わないが結構やれそうな気がしてきた。
ていうか、試合で試したいことだらけだ。

女子の3位決定戦は決勝戦のコートの隣、準決勝の時と同じで相手が違うだけの形だった。
コートサイドに先生と先生の要請でマサトが付いてくれた。

第1セット8-11でインターバル。

「いい感じじゃん」
「負けてる」
「3点なんか差の内に入んねーよ」
「でも・・」
「しっかり相手動かせてるし大丈夫!ただ思ったより相手の足が速いから対策言うぞ」
「うん」
「クリアを同じとこに2発だ。2発目は1発目より厳しくだぞ。それを織り交ぜろ」
「うん」
「厳しくって、コースだけじゃなくて、低いドリブンってこともだぞ?」
「はい」
「相手は前に出にくくなるし、1発のクリアでも後ろ警戒して前への出足が鈍るから」
「はい」
「「はい」ってw、よし行けっ!」

第1セット、セティング、22-20で取った。

「取れた、マグレだw」
「自分でマグレとか言うなよ!」
「マサトの言う通りになったよっ!」
「いいから水分取れ」
「うん・・・」
「ユイ、向こうのベンチ見てみろ」

見ると向こうの先生が必死でなにか選手に身振り手振りで話していた。

No.22 18/11/08 06:10
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>> 21 「あれが勝つチームのベンチに見えるか?」
「ううんw」
「だろw、じゃ次の作戦な」
「はい」
「はいやめろw」
「何?」
「開始早々ボディスマッシュから展開していけ」
「え?向こうダブルスプレイヤーなのに?」
「今、向こうの頭の中はユイのクリアとドロップやカッシュで一杯だ」
「うん」
「その状態でボディにスマッシュだとラケットに当てて返すのが精一杯だから、帰って来る甘い球を見逃すな」
「はい」
「そのまま4.5点取られてもいいから、スマッシュをボディに集めろ」
「4.5点も!」
「大丈夫!でもサイドラインに近い時に打つとこっちの守備範囲が広くなるから、センター寄りの時だぞ!」
「うん」
「で、ボディにスマッシュ連打されると相手は体勢落として低く構えるようになるから、
そしたらまた奥にドリブンクリアだ。二発連続も使えよ。もう試合開始の頃の足はないし後ろで崩せる」
「はい」
「スマッシュがきびしいドライブで返されたり、クロスできっちりネットに落とされたりしても前で勝負すんな、奥へ走らせろ」
「はい!」

第2セット21-14。
相手は途中、足が縺れて倒れたりして第1セットとは大違いで楽に勝てた。
私はバドミントンの公式試合で人生初の賞状をもらった。
顧問の先生がマサトを絶賛するのが自分のことのように嬉しかった。

「全国大会の常連ってあんなにすごいのか?」
「中学生とは思えん。どうやってあんな経験積んだんだ?」
「ユイ、ジュニアでしっかり習ってこいよ」

荷物をまとめているマサトを見つけた。

No.23 18/11/08 06:11
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>> 22 「マサト、ありがと」
「3位以下1没(一回戦負け)も一緒だっつーの」

この時、ほんと今でもなぜそうしたのかわからないけど、私はナオヤの口マネをしていた。

「うわっ出たよ、毒舌ぅーw」

マサトは一瞬驚いた顔をした。

「でもまぁ、3位も2位も1敗ってことじゃ同じだし、向こうの山(トーナメント表の)だったら2位の可能性があったしな」
「無理無理w」
「あたりまえだバーカ、調子に乗んなwww」
「乗ってないじゃんっwww」
「次は秋季頑張って選抜だな」
「うん」
「準決の途中からと3決、録画してるから帰ったら反省会しろよ」
「うん、ありがと」

ナオヤから私に感染した「マサトすげぇ病」は長かった潜伏期間をすぎて、ついに発症したみたいだ。
昔ならカチンときてたマサトの毒舌が、ナオヤの口マネをしたら腹の立つものじゃなくなった。
そして久しぶりにマサトと心から笑えた気がして嬉しかった。

No.24 18/11/10 05:44
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>> 23 最悪の卒業式だった。
式がすんで一旦教室に集まり担任から挨拶のあと
生徒はそれぞれ部活の後輩が挨拶にきたり、顧問の先生に挨拶をしたり、親と帰宅したりと各々解散。
高校生活に思い入れがないわけじゃなかったけど正直それどころじゃなかった。

マサトがバドミントン部の仲間と別れ1人になったのを見計らって
私は計画通りマサトに告白をした。

「マサト!」
「おー、もう帰んの?」
「謝恩会は?」
「行かねー」
「ちょっといい?」
「おー、なに?」
「えーと・・・」
「ん?」
「大好きです。付き合ってください!!」
「は?ええぇぇっ!!!」
「・・・・・・・・」
「なに?罰ゲーム?ドッキリ?」

マサトは辺りをキョロキョロ見渡していた。

「違うっ!」
「マジで?」
「うん」
「いや、お前・・・・」
「ダメかな?」
「あのほら、俺、ナオヤと全然タイプ違うし・・えーと・・」
「あたし、いつまでナオヤナオヤって言われるのかな?」
「えっ・・・」
「もう5年も経つんだよ?」
「・・・・・何年経とうが俺の大事な友達なんだよ」
「マサト「死んだ人のために生きることなんかできない、忘れなきゃいいって」って言ってたじゃん!」
「・・・・・」
「ばぁかぁぁっ!!!」

私は泣きながら学校を出た。
最悪だ。玉砕の覚悟はしていたけどこんなことになるなんて。
ふるならちゃんとふって欲しかった。
マサトはたかだか小学生時代の初恋に私を一生縛り続けるつもりなのか。
ふられることより、マサトの意識とか考え方が悲しくて涙が出た。


夜、親友のナツミに報告した。
ナツミに慰められながら、さんざん愚痴った。

「もうさ大学で彼氏探せばいいじゃん」
「うん、そうする。」

そう誓ったはずなのに、大学でまたバドミントン部に入部した。
マサトがインカレ目指すの知っているのに。
インハイ・国体出場のマサトの実力なら、嫌でもどこかで会うだろうに。
私はマサトを忘れることが出来なかった。
というか、まだ好きで好きでしょうがなかった。

No.25 18/11/10 05:48
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>> 24 私の大学のバドミントン部は弱小クラブで団体戦の大会はおろか個人戦さえ数人しか出場者がいない。
学校行事やイベント優先で、他大学だとサークルレベルの部活だった。
県内出身の経験者が自分以外に1人いていつもその先輩と行動するようになった。

「ユイちゃん強いのにうちの大学じゃもったいないよ」

と、何回も言われた。
それでも、マサトに会いたい一心でバド部に在籍した。

新歓コンパやいろいろな飲み会があって1年なのにアルコールを勧められるが
世の中でアルハラやコンプライアンスが盛んに言われるようになってきてた時期だったので普通に断ってOKだった。
彼氏や好きな人の存在を聞かれるたびに、マサトの顔が真っ先に思い浮かんだけど
言えずにいた。
いろいろ話しかけられたけど、マサトより好きになれる人なんかいない気がした。

大学生になって初のバドミントンの大会。
マサトは有名人だった。
「〇〇マサト、〇〇大学かぁー」
「今年から2.3年、インカレ出場は〇大に持って行かれるなぁ」

自分のことのように嬉しいのだが、次の瞬間そんな自分に気が付き落ち込んだ。
マサトに見つからないように、マサトの姿を探している自分が悲しかった。

マサトは個人戦シングルス団体戦ともに準優勝。
私は個人戦シングルスは1回戦シードで2回戦敗退。

マサトと顔を合わすこともなく大会は終わった。
それでも、久しぶりにマサトの顔が見れて嬉しかった。

No.26 18/11/10 05:52
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>> 25 大学2年の冬、1月の成人式で小学校時代の同窓会をやる話が持ち上がった。
幹事というか言いだしっぺはナツミとアカネ。
ナツミとアカネは小、中、高が一緒で仲がいい。
ナツミいわく、高校時代の同窓会が開かれないらしく、それじゃ久しぶりにマサトに会ってみたいからって。
マサトは欠席らしくナツミがさんざん愚痴っていたけど、私とのことがあるから欠席なんだろうなと思った。

年が明けて成人式の数日前、ナツミからラインが入った。

「マサトがユイに話しがあるから、よかったらスマホ鳴らしてって」

ナツミがしつこく同窓会出席の催促の連絡をした時言われたらしい。

「番号知ってる?」
「変わってないなら分かる」
「変わってなかったよw」

ナツミにマサトの番号を消してないのを悟られて少し恥ずかしかった。

「なんの話かな?」
「知らないわよ、自分で聞きなよ」
「うん」
「あとで詳しく報告ねw」
「うん」

なんだろ?心臓がめちゃくちゃドキドキする。

しばらく悩んだけど聞いてみないと始まらないので意を決してマサトの番号を押した。

「もしもし」
「もしもし、あの、ナツミから連絡があって・・・」
「うんありがと、えーと成人式の前の〇曜日に会って話がしたいんだけど」
「えっ、今じゃなくて?」
「電話で話すべきことじゃないから」

声はマサトなんだけど、まったく他人行儀な口調でせつない気がした。
時間は取らせないからということで、家の近くの喫茶店で待ち合わせにした。

あの声のトーンじゃ告白とかじゃないよなぁ。
バドミントン絡みかな。電話で話せないってことってなんだろう。

当日までさんざん悩みながらも、ふったことを後悔させたいとかじゃないけど
まだ着るつもりじゃなかった買ったばかりの服を着たりして必死でお洒落して出かけた。

うわ、まだ10分前だどうしよ。先に着いて待ってるのもなんか嫌だなぁ。
と、車の中で時間を調整して店に入った。

バドミントンのアップスーツを着たマサキがいた。

No.27 18/11/10 05:55
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>> 26 マサトはコーヒーが半分も残ってなくて、少し前に着いていたみたいだ。
テーブルに座って飲みものを注文をした。

「ひさしぶり、時間とらせてごめん」
「ううん、ひさしぶりだね」

お互いめちゃくちゃギクシャクしていた。
注文したドリンクが運ばれてきたのを見て、マサトが話し始めた。

「高校の卒業式の後のことなんだけど」
「えっ・・・・うん」
「悪かった。付き合う付き合わないの前に人として悪い事をしたと思う」
「え・・・」
「今更許してもらおうとか思っていない。ただ、謝罪したい。ごめん悪かった」
「話ってそれ?」
「あぁ」
「2年も経つんだよ?いいよもうw」
「秋季大会ですれ違ったよな?」
「うん」
「なんか気まずくてさ、普通に話すくらい出来るようにしておこうと思ってさ」
「普通に話しかけてくれればよかったのに」
「いや、まぁどっちにしても謝罪が先かなと」
「もう、いいよw」

ぎこちないまま、しばらく大学のバドミントンの話とか差し障りのない話をした。

「同窓会来ないの?」
「うん」
「なんか用事でもあるの?」
「うん、まぁ、・・・・・ありがと、ごめんな、時間取らせて」

結局15分くらいだったかな。
告白とか淡い期待をしてお洒落した自分が恥ずかしかった。
昔みたいに親しく話すことはもう二度と出来ないような気がして悲しかった。

No.28 18/11/10 06:00
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>> 27 その日の夕方、アカネのバイト先で同窓会の打ち合わせをするためナツミを乗せて車を運転していた。
信号が黄色になったのでブレーキを踏んで減速。

「あれ?、マサト?マサトだっ!」
「えっ」
「車止めて!」

慌てて車を左に寄せて止める。
助手席のナツミが窓を開けた。

「マサトーっ!」

マサトは花束を持ったまま自販機でなにか買おうとしていた。

「久しぶりーっ!何その花?そこで買ったの?これからデート?www」
「え、いや・・・」
「それちょっと地味すぎるんじゃ・・・・・・・・お墓参り?」
「・・うん、まぁ」
「もしかしてナオヤの?」
「あぁ・・・・・・・・・・・・・一緒に行く?」

ナツミは私の方を向いて半ば強制的に

「行くよね?」

と言った。

ナオヤのお墓に、マサトの運転する車に付いて行くと家から20分くらのところの墓地の中だった。
マサトは備え付けてあるバケツに水を汲むと柄杓を1つ取った。

「マサト、よく来るの?」
「よくってほどじゃないよ」

ナオヤのお墓は周りと比べてまだ新しく大理石がピカピカしていた。

「おぉい、ナオヤ来たぞ。今日はナツミとユイも連れて来たぞ」

マサトはそう言いながら墓石に水をかけて、花とナオヤの好きだったジュースをお供えしたり、お墓の周りの草むしりをしてお線香とろうそくに火をつけた。
しゃがんで手を合わせたので私とナツミもマサトの後ろにしゃがんで手を合わせた。

「あぁっ、数珠持ってないっ!」
「いいよ別に。俺も墓参りっていうより近況報告だし」

マサトはそう言うと前に向き直った。

「おぉい、俺もう二十歳だぞ。なんか信じらんねぇよ」
「まだバドやってんだぜ。インカレも行ったぞ」
「次は大学卒業の時だな。いや、就職決まったらかもなw」
「じゃぁな!」

マサトはそういうと立ち上がってろうそくの火を消した。

「いつもこんな感じさ。さすがに人がいたら声は出さないけどなw」
「俺、未だに中1のあいつを尊敬してるんだぜ、どんな二十歳だよw」

私は、あることに思い当たった。
心臓の鼓動が早くなり全身の血の気が引く感じがする。
それでも恐る恐る聞いてみた。

「マサト・・・・高校の・・卒業式の・あとも・・来た・・の?」

唇が震えてうまくしゃべれない。ナツミが驚いて私の方に振り向いた。
マサトの目が一瞬泳いで微妙な表情をした。

No.29 18/11/10 06:04
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>> 28 「あぁ、うん・・・・・」
「うっ・・・うっ・・・ごめんなさああいいっっ!!!」

私はマサトにひどい事を言ってる。
これからナオヤのお墓参り行くって時に、「ナオヤナオヤ言うな」とか「5年も前の話だ」とか。
知らなかったとはいえ、マサトを傷つけてる。

私は「何年経とうが俺の友達だ」と言った時のマサトの寂しそうな顔を思い出していた。

「ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・・」

私はマサトに申し訳なくてひたすら謝った。

「しょうがないよ!知らなかったんだから。ね?マサト怒ってないよね?」
「なんで俺が怒るんだよ」

謝らないといけないのは私の方だ。なのにさっきマサトは自分の気持ちを押し殺して私に謝った。
マサトのことがこんなに未練たらしく好きなのに私はマサトを傷つけてばかりだ。
涙が止まらない、胸が苦しい・・・私は、めまいがしてしゃがみこんでいた。

「ユイ、大丈夫?」

ナツミが隣にしゃがみこんで肩を抱いてくれた。
しゃっくりが連続して出る感じでうまくしゃべれない。

「ちょっと、ユイ!ユイ!!」

私は地べたに座り込んでいた。
呼吸がうまく出来ない。

「ユイ、落ち着け」
「ごめん・・ね・ごめ・・・んね・・・・」
「分かった、大丈夫だ」

マサトが優しく背中をさすってくれた。

「いいかよく聞け、10秒息止めろ・・1,2,3,4・・・10」
「よーしゆっくり息吐き出して・・・・・・・・よーし2秒吸うぞ・・1,2」
「よーし力抜いて。5秒吐くぞ・・1,2,3.4.5」
「もっかい・・・・」
「もっかい・・・・」

しばらく、マサトの言う通り呼吸した。

「ユイ!ユイィ・・・」

ナツミも泣いていた。

「お前も落ち着け。ちょっとした過呼吸だ」
「う・・ん」

マサトに支えられながらゆっくり立ち上がった。

「大丈夫か?無理して立たなくていいぞ」
「うん、大丈夫」
「心配すんな、ただの過呼吸だ」
「ごめんなさい・・・」
「さっきから謝ってばっかだな。なにも悪い事してないのに」
「ごめん」
「いや、俺が悪い」

マサトは駐車場まで付き添うようしてに連れていってくれた。
車のシートを倒して少し休んだ。

No.30 18/11/10 06:19
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>> 29 「えーと、ちょっと整理させて」

しばらくマサトは何か考えてるようだった。
そして独り言のように話し出した。

「俺、ユイのことが昔から大好きだった。ナオヤが死んだあと、俺は疲労骨折ですんだけどユイの事が心配だった。それでユイを見守るのが俺の役割だと思った」
「ずーっと、ユイはナオヤみたいなヤツがタイプで、それがお似合いだと勝手に決めつけていた」
「卒業式のあと告白されてめちゃくちゃ驚いた。つかパニクった」
「でも、見守るつもりが、勝手に思い込んで決めつけて、押し付けてただけだったと気づいたよ」
「ユイを泣かしたことは心に引っかかったけど、翌週から大学の準備で家を出る予定だったし、ユイを見守る任務は終了だしこれでいいと思った」
「だからユイが謝ることなんかなにもないよ。卒業式のことはちょっとタイミングが悪くて俺がヘタレなだけだからw」

マサトは明るくおどけてそう言った。
でも、無理してるのは分かりすぎるくらい分かった。

「今日はもう家に帰って安静にしてろ。俺がユイの車を運転するから」
「やだっ!」
「だめだって!」
「あたし・・・マサトが大好きなの」

私はボロボロな状態のくせして告白していた。

「へっ?」

他にもなにかいろいろ言ったと思うけど思い出せない。

マサトは笑い出した。

「ちょっと!マサト!ちゃんと答えてあげなよっ!」
「あーもー、俺せっかく告る決心したのになんで先にユイが告るかなぁ」
「えっ」
「俺もずーっと大好きなんだけど」
「えぇっ」
「俺の彼女になってください」
「はい・・うっ、うっ・・」
「泣くなよっ」

私は「ナオヤのことで申し訳ない」「見守っていてくれてた驚き」「好きでいてくれて、付き合えることになって嬉しい」いろいろな感情が混ざって、頭の中がぐちゃぐちゃだった。

「あんたら、マジで手が焼けるわ。こんだけ人巻き込んどいて別れたら許さないから。ナオヤにも頼んで化けて出て来てもらうからね」
「絶対別れないもん」
「ナオヤなら出て来ても恐くねぇよ」
「そうだねw」

マサトがナオヤのお墓の方に向いた。

「おーいナオヤ、ユイと付き合うことになったわ」
「ナオヤ・・今は、マサトが大好きです」
「はいはい。ナオヤー、こいつらの事はあたしに任せて安心して見てていいからね」
「ナツミさんすげぇw」

再会して、やっと心から笑うことができた。

No.31 18/11/10 06:24
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>> 30 「今から同窓会の打ち合わせするんだけど・・・てかマサト同窓会来るよね?」
「はい、ありがたく出席させて頂きますw」
「ついでに、打ち合わせ来てよ」
「はい、なんなりとw」
「下僕かwww」

私はマサトが帰れって言うのも聞かず無理やり打ち合わせに行こうとしたので
ナツミがアカネに連絡を取って急遽翌日に。

「ユイ、とりあえず、今日は帰りな?」
「うん・・・ごめんね」
「いいってば!ユイはもう謝るなよぉw」

翌日、マサトとナツミと私の3人でアカネのバイト先に行くとアカネはバイト時間が終わって客席に1人で座っていた。
私はアカネの顔を見た瞬間また泣いてしまった。

「え、ユイ?どうした?」
「アカネごめんー、ったく、こいつらがさー」
「マサト?久しぶりぃ!懐かしいぃwww」
「おひさしぶりです」
「なんで敬語www」
「マサト・・と、付き合うことに・・なった」
「聞いたよぉ!良かったじゃん!!!ちょっとー、泣くなよぉ、よしよしw」

まともにしゃべれない私のかわりナツミが説明してくれた。

「やばいぃ、泣けるぅw」

他に客がいないからいいものの、今思うとすごく恥ずかしいと思う。
ナツミが一通り説明してくれたあと、アカネが手を挙げた。

「はい!はい!マサトに質問!」
「俺?」
「マサトって、いつからユイが好きだったの?」
「そうだぁっ!聞きたい聞きたい。昔からって言ったよね、ユイも知りたいよね?」
「えっ・・・・・うん」

「さぁて、同窓会の打ち合わせは?」
「ちょっとぉwwwww」
「そんなもんあとだーっ!!」

マサトは、観念した様子で話してくれた。

「転校して来てからすぐ」
「ええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「まじいぃっ?」

私は声も出なかった。
また心臓がドキドキする。でも、昨日の嫌な感じのドキドキとは違う。

No.32 18/11/10 06:31
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>> 31 「転校して来て最初俺一番後ろの席だったじゃん。斜め前がユイで」
「覚えてないしw」
「そうなの?」
「うん、それは覚えてる。転校生が後ろって」
「授業中にさ、鉛筆落としてユイが拾ってくれたんだけどさ」
「うん」
「かがんで起き上がる時に机に頭ぶつけてさ、頭さすりながら俺に鉛筆返してくれてさ」
「うん」
「照れ笑いの笑顔がめちゃくちゃ可愛くて・・・・好きになりましたw」
「えーっなにそれ、ドジっ子?」
「そうなんだぁw・・・ユイ覚えてる?」
「えぇーっ・・・・覚えてない・・・・・」
「でも、あの頃ってユイはナオヤが・・・・」
「コラ!しーっ!w」
「そうなんよ。気が付いたらさ、俺の大親友にスキスキビーム出してんのw」
「うわ、つらっw」
「だろwww」
「でも、しょっちゅうケンカしてなかった?」
「ガキ特有の好きな子に意地悪したくなるアレっす」
「えぇーっw」

「ナオヤが死んだ時にさ、付け込むようなことだけはしたくなくてさ」
「うん」
「自分も骨折したりでいっぱいいっぱいだったし」
「ジュニアのコーチにユイの練習頼まれた時、嬉しかったけど下心なしでやんなきゃって思ったよ」
「そうなんだ」
「別に下心あってもいいじゃん」
「うーん、なぜかあの時はそう思った」
「ジュニオリ予選で〇〇先生にコートサイド頼まれた時も、必死でユイを勝たすことだけ考えたよ」
「あれはすごかったよ。マジでバドの神様だと思ったもん」
「へぇ、そうなんだ」
「あたし、あの時はもうマサトが好きになってたんだと思う」
「よかったねマサト。下心無しの勝利だねw」
「下心無しってつもりだったけどカッコつけてたのかなぁ。告ってさ、「こいつナオヤが死んだからって」って思われるのが恐かったのもあったし」
「思うわけないじゃんっ!」
「だよねぇ」
「うちらユイからの話しか知らないからさ、分んないことだらけだったじゃん」
「そーだねー、マサトは元々分かりづらいやつだったしねぇw」
「考えてみたらマサトはマサトで長い間、辛かったよねぇ」
「律儀というか不器用っていうかw」
「やめろよ俺泣くぞw」

No.33 18/11/10 06:32
恋愛中さん 

>> 32 マサトは少し涙ぐんでた。

「あっ、マサト泣いてるぅw」
「泣いてねーしw」
「もうっ!やめてよっ!」
「もうマサトの味方?」
「マサト大丈夫?」
「なんともないってw」
「あーもーいいなぁー。どっかに鉛筆落ちてないかなぁー」
「うっさいわwww」

バドの時のマサトはかっこよくて大好きだけど、やっぱ笑ったマサトも可愛くていいなと思った。

No.34 18/11/10 16:05
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>> 33 成人式は慣れない着物でほんと窮屈だったけど懐かしい顔がたくさん見れた。
マサトが高校のバド部の仲間と楽しそうに話しているのを見つけた。
高校時代なら躊躇せずに話しかけて行けたのに、まだ2日しかたっていないのもあって話しかけられずにいたら、マサトの方が私を見つけてくれた。

「ユ・・イ・だよな?あはは、一瞬分んなかった」
「ひっどぉーい、彼女なのにぃw」
「似合ってるじゃん、可愛いぞw」
「ほんとかなぁ?」
「ユイだっ!なぁ、マサトと付き合ってるって?」
「なんでもう知ってんの?」
「一昨日からって?」
「誰に聞いたの?」
「さっき、マサトが自慢してた」
「えーっw」
「あはは、マズかった?」
「いいよ、全然w」

しばらくしたら高校の女子のバド部の子たちも集まって来た。

「おーい、こいつら付き合ってんだって!」
「えぇーっ!」
「まじで??」
「ユイよかったじゃーんw」

女子は私がマサトを好きだったことを知っている子が多いからか、中には涙ぐんでいるこもいたりして、めちゃめちゃ照れくさかったけど、みんな喜んでくれてるのがとても嬉しかった。

No.35 18/11/10 16:08
恋愛中さん 

>> 34 夜に開催された小学校の同窓会は、アカネの紹介のおしゃれなお店で立食形式だった。
マサトがなかなか来ないのでメールしたり電話ならしたりハラハラしながら待ってた。
マサトは時間ギリギリに飛び込んで来て、ナツミとアユミに怒られていた。

「マサト、会費!」
「はいはい、これで2人分頼む」
「ユイのはもらったよ?」
「いや、ナオヤの分」
マサトはそういうとバックからナオヤの小さな遺影を取り出した。

「邪魔にならないとこでいいから置かせてくんないかな」

ナツミとアカネが涙ぐんでた。たぶん私も。

「ほんと律儀なやつw」

参加していた他の同級生もナオヤの遺影に気が付いて会場が静まりかえった。
すると、マサトが大きな声で話しはじめた。

「あぁーなんかしんみりさせてすみません!でも、あいつたぶんこういう空気嫌いだから賑やかにやりましょう!」

その後マサトは、私そっちのけで6年の時の担任と話し続けていた。
私は、ナツミとアカネにみんなにマサトと付き合い始めたことを暴露されて質問攻めにあっていた。
時々マサトの方をチラ見すると先生とマサトが涙ぐんで話しているのが見えたので心配になって行ってみた。

「あっ、先生!俺、ユイと付き合うことになりましたw」
「おーっ!そっかーw」
「えっ・・・」
「あはは、結婚式呼べよ、絶対行くからな!」
「捨てられないように頑張りますw」



同窓会はナツミの挨拶から始まった。
先生の乾杯の挨拶はナオヤへの黙祷からはじまり、しんみり話すかと思いきやマサトが暴れたことを面白おかしく話してた。

「俺必死で止めたよ。こいつほんとに殺すんじゃないかと思ったからw」
「ちょっw」
「次の日俺、二の腕にでっかいアザが出来てたもんw」
「ええっ!すいません!!!」
「行動自体は褒められたもんじゃないが、友だちを想う心には感動させられたよ」

No.36 18/11/10 16:13
恋愛中さん 

>> 35 その後は1人ずつ近況報告。
話している最中に突っ込みを入れたりイジったりして楽しく進行していった。
私は無難にバドの話しをして終わりにしようとしたらアカネが逃がしてくれなかった。

「マサトと付き合い始めたって聞きましたがー?w」

会場は「えーっ!」と「おぉー」で爆笑。

「はい」
「どちらから告白したんですかー?」
「あたしですw」

会場は、大きな「えぇーっ!!」
まぁそうなるよなぁ。小学生時代はケンカばっかだったし。

そして何人か挟んでマサトの番。
会場は突然の「ユイコール」。自分の顔が赤くなっていくのが分かった。

「お久しぶりです、〇〇マサトです!」
「うぉ~www」

なぜかコール&レスポンスになってた。

「〇〇ユイと付き合ってまぁーすw」
「うぉーっ&キャー」
「ヤロウども!手出したらぶっ殺すぞぉ!」
「うぉーっ!」&爆笑
「女子の皆様、ユイをよろしくお願い致します」
ブーイング&爆笑

横にいたナツミとアカネが手を叩いて笑っていた。

「マサト酔ってる?」
「分んないw」

で、突然

「ユーイッ!!嘘つくなぁ!!!告ったのは俺だああぁ!!!」

会場おぉーっ!&爆笑。

「これからもどうぞよろしくお願いしますっ!」

すると、ナツミとアカネが

「ちゅーっ!ちゅーっ!ちゅーっ!ちゅーっ!ちゅーっ!・・・・・」

会場はあっと言う間にキスコール。

「やめろよ、おいぃっ!まだキスしてないんだぞっ!」
「先生、拍手すんな!!止めるとこっ!!!」
「頼む!マジで勘弁してっ」

私はナツミとアカネに強引に連れられマサトのところに。

始めは抵抗したけど諦めて開き直った。

「なに来てんだよっ!」
「あたしはいいよ?」
「ぅえぇぇぇっ!」

目を瞑って顎を突き出したのになかなか来ない。

「おいっ、ユイッ!」
「男でしょ!」

首に手を回すとマサトは諦めたのか抱きしめてくれた。

うぅっ!・・抱きしめられるってこんなに気持ちいいの?・・・
今、あたしマサトに抱き締められてる・・・

ちゅ・・んっ・・・
やばいっ!ずっと、こうしていたい。ハグされてキスってやばすぎる・・・。

目を瞑っていても大騒ぎになっているのが分かった。

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