獣医師の恋１

レス0 HIT数 1165 あ+ あ-

小説家
2017/03/03 14:44(更新日時)

獣医師として仕事をしてきて、もう20年近くが経った。
その間、彼女もいたけど、現在、独り暮らしなのだから、まぁ、仕方がないかな。

矢崎高志、44歳。　
ヤスタカと名前をつけた三毛猫とマンションに二人暮らし。
５年ほど前から、矢崎動物病院という、自分の動物病院を開業した。

子供の頃からの夢だったのだ。
あの頃は、動物病院と動物園がごちゃごちゃになっていたらしい。
ライオンとペンギンとオラウ―タンを治療している様子が画用紙いっぱいに描かれていた。

日々、命というものに向き合っていると、
感極まって男泣きしそうになるし、
助けられなかった時には、自分の無力さを痛感している。
獣医師という仕事に誇りも、プライドももってはいるが、人間だから、時には、辞めたくなることも、嫌になることも無いわけではない。

仲間の獣医師が、皆、結婚したり子どもをもったりしていく中で、たまに、仲間と呑みに行く機会があると、言われていることがある。

「なぁ、野崎。ヤスタカという猫と男二人暮らしも良いけれど、嫁さんいないと大変だろう⁉悪いこと言わないから、結婚したらどうなんだ。動物が恋人か？嫁さんか？違うだろう？まったく、お前は%$?!～」

私は、それを聞いている風を装って、頭では
別のことを考えていた。
明日の仕事のこと。

医師という仕事は、合コンや婚活パーティーでは、まだまだ根強い人気があるのにも関わらず、

なぜ、獣医師となるとモテないかなぁ～???

仕事内容は、医師と同じくらい、一般的で、
誰しもが目にしたことがあるはずだし、
親近感があると思うのになぁ。

あの病院の受付かわいいとか、あの病院に
イケメン医師がいるとか、入院した時に、
きれいな看護師がいたとか、聞くのに
それが、動物病院をなると無い❗

イケメン獣医師も、かわいい動物看護師も
おりますよ❗と声を大にして言いたい。

自分は、頭髪も薄くなってきたから、
見た目に自信が無いのだが。

とにかく、獣医師という仕事に、やりがいは多少はあると思う。
すごくと言えないのは、楽な仕事ではなく、お金のわりに、仕事が多岐に渡り、過労気味になることもあるからだ。

ワンちゃんやネコちゃんも、家族の一員として、大事にしている患者さんの家族を見ると、
患者さんにも、家族にも寄り添って、全力でもって、治すしたいという気持ちになることもある。

「先生、うちの数日前から具合が悪くて」

と泣きそうな顔で、不安いっぱいにやって来られる患者さんの家族を見ると、
自分のことのように、胸がいっぱいで、心臓がしめつけられるようだ。

動物病院も最近は、夜間救急もやっているところもあるし、救急車の代わりのドクターカ―もあったりする。
動物も人間と同じような病気になるのだ。

動物の心の病気だってある。
アニマルセラピーという言葉も、徐々に浸透してきている。
動物に癒される人にいる一方で、人間の生活
スタイルに合わせる動物たちも、また負担を
強いられているのかもしれない。