京女に魅せられて

レス147 HIT数 13176 あ+ あ-


2015/12/19 22:49(更新日時)

思い通りにならない不思議な彼女は

古都に似つかわしくなく

挑戦的に自分の前に現れた


~【四条で待ち合わせ】より~

No.1144989 (スレ作成日時)

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No.51

>> 50 私は年上女との関係を話してしまおうか悩んでいた


『なあ❓ サラリーマンさんには可愛いヒト居てはんの❓』

えっ 不意うち💡


『ウサギちゃん』

自分に向けられた私の人差し指をキョトンと見るウサギちゃん


『私にアプローチしてくれてはるんや❤
おおきに(笑)』

明らかに流されている

No.52

>> 51 ウサギちゃんの心が揺れたら大成功だよ

『ドッキリみたいな感覚だよ
またに こういう刺激が欲しいかな❓』

冗談めかして言う私に意外なアンサー

『私は意外とシャレが利かんへんよ』

伏せ目がちに微笑む堕天使は私を甘く引き付ける


抱き締めてしまいたい気持ちを抑えてウサギちゃんを見つめていると

ウサギちゃんも黙って私を見つめていた


数秒間の視線のKISS

ウサギちゃん 好きだよ

気付いているよね

No.53

>> 52 その日もハシゴをする訳でもなく

程々の時間で私達は解散した


瞼にウサギちゃんの瞳が焼き付いている

出逢ったその日に私の懐にすぅっと入り込んできたあの瞳

意地っ張りでクリスタル製のハートを持ったこわい女


手をのばせば

いや

指を差し出しただけでも届きそうなところまで近付いたのに

ウサギちゃん 君は

なんて遠いところに居るんだ

No.54

>> 53 「あれからどうなってんの」

久しぶりに年上女とまともにやり取りした


私はウサギちゃんを刺激するのはやめてもらえないかと伝えた

「なあに(笑) 本気モードなんだ」

もはや年上女に特別な感情はない

私を手のひらで転がしていたつもりだろうが

もうそんな事はどうでもいい


その日はわかったような口調で引き下がった年上女だが

その後 何かにつけメールや電話を寄越してきた

私は適切にかわしていた

No.55

>> 54 珍しく残業の無い平日

例の店に立ち寄ってみる

特に待ち合わせた訳でもなく

それでもウサギちゃんはカウンターに居た


いつの間にか

私達は肩を並べて座るのも当たり前になっていた

でも

それ以上でも それ以下でもなく


相変わらずマスターとウサギちゃんとの会話には他を寄せ付けない独自の空気がある

『実は私もマスターん事好きやねんよ』

『サラリーマンさんの事かて好きやで』

時折頭をよぎる

ライクだよね

気にしないよ

No.56

>> 55 マスターとウサギちゃんのやり取りに相づちを打ちながら

ピスタチオの殻を剥いていた時

すっかり常連顔の年上女が現れた


『マスターいいわね ウサギちゃんみたいな可愛い彼女がいて 若いしね』

その皮肉は私に向けられたものか

ウサギちゃんに向けられたものか

『ホンマやねえ マスター幸せやろ❤』

とウサギちゃんはノリよく気を遣う


私はウサギちゃんを見つめながらピスタチオを口に入れた

No.57

>> 56 ほどなくして

やはり年上女の重圧が心地悪かったのか

『そろそろ私 おいとましようかな』

とウサギちゃんはコートを羽織った

丁度グラスが空いた私も店を出る事にした


店を出る時視界に入った年上女は私を見ていたが

私は振り返らずウサギちゃんと店を後にした


私とウサギちゃんは相変わらず手を繋ぐ訳でもなく歩いていた

『2人だとあまり代わり映えしないね ウサギちゃんは他にどんなところで遊んでいるの❓』

No.58

>> 57 私の問いかけに

『馬鹿騒ぎ出来るとこ(笑)』

『サラリーマンさんの遊んではるとこも もっと教えてや』

そう言ってウサギちゃんは屈託なく笑った


ウサギちゃんとの関係に もう一歩踏み出したい

私はそんな事を考えていた

『せやけどサラリーマンさん 今日は平日やし もうリミットやろ❓ 今日はここで解散しよか』

ウサギちゃんはいつも絶妙のタイミングで私に言葉のキャッチボールを仕掛けてくる

No.59

>> 58 『ウサギちゃんは延長を希望する❓一軒だけなら延長可能だよ』

『延長(笑) なんやエロい響きや』

転がるように笑いながら艶めいた話をするウサギちゃん


軽い言い方かも知れないけど

ウサギちゃん

君をお持ち帰りしたいくらいだよ


『けどアカン 男は仕事が出来てナンボや』
『延長はまた今度 な❤』

メールと同じで

外見からは意外に思える程

常識的な堕天使

私はメロメロだよ

No.60

>> 59 それからも

ウサギちゃんとは特に進展もなく

後退する訳でもなく

年上女との事をカミングアウトする訳でもなく

日々のメールのやり取りと

例の店でたまに肩を並べながら 同じ時間を過ごしていた

No.61

>> 60 ウサギちゃん

ウサギちゃんは私の事好きかい

ウサギちゃんの気持ちがマスターにあるのはわかるよ

私だって 精算出来てない年上女との事がある


だけどウサギちゃん

何故だかウサギちゃんは

私と同じ匂いがするよ

孤独な匂い


君の孤独

私があたためてあげるよ

No.62

>> 61 土曜日の夜

出先で食事を済ませた後 例の店に立ち寄った

約束していなくともカウンターにはウサギちゃんの後ろ姿


『あら こんばんは』

そして年上女


ウサギちゃんを挟んで座る

マスターは当然のようにダニエルのボトルを掲げてこちらを伺う

私は頷きながら口にくわえたメンソールに火を着けながらウサギちゃんに目をやった

様子がおかしい


『ウサギちゃん 珍しく沢山飲んだんですよ』

メンバーさんが灰皿を置きながら言った

No.63

>> 62 『ウサギちゃん 年上さんに昔の恋の痛手を聞いてもらってたんだよね』

マスターは相変わらずの能天気っぷりだ

年上女は手を扇ぎながら謙遜していたが

その表情の端には優越感を漂わせていた

『あと マスターと彼女の話ね(笑)』


ウサギちゃんが潰れた原因

そんな事して楽しいのか

私は年上女を寄せ付けない姿勢をとり ウサギちゃんに話し掛ける

『大丈夫 大丈夫』

とウサギちゃんは笑っている

No.64

>> 63 少し低次元な気もしたが

マスターへのアピールと年上女へのささやかな報復として

私はウサギちゃんを介抱した


『おおきに❤ サラリーマンさん優しいなあ 今 優しくされたら私堕ちるえ
気いつけなあ(笑)』

寂しく甘えた顔でウサギちゃんは笑う

安心して堕ちればいいさ

一緒に堕ちてみたいよ


『サラリーマンさん 年上さん達と楽しく飲んで❓ せっかくのお休みやのに』

この期に及んで君はまだまわりを気遣うのか

私はマスターに目配せしてカウンターからボックス席に移った

年上女は一度も振り向かなかった

No.65

>> 64 結局その日もタクシーに同乗して送る提案は丁重に断られ

ウサギちゃんは千鳥足ながらも気丈に帰って行った


私との間にはっきりとした一線を引くウサギちゃん

いや

あんなに親しいマスター相手にも

踏み込ませない何かをもって接しているよね

ウサギちゃん

君の心の傷の深さは計り知れないよ

私は歩きながら出会って間もない頃のウサギちゃんのディープなカミングアウトを思い出していた

No.66

>> 65 翌日の夕方

昨晩のお詫びのメールがウサギちゃんから届く

介抱のお礼も兼ねて と食事に誘われる


食事の邪魔にならない程度に気に入っているフレグランスをつけてみる

支度している間に年上女から呆れた内容の俗っぽいメールが届いていたが返信はしていない

私とウサギちゃんの成り行きを全て把握したいらしい

心配ではなく把握

何処までも“俺様な女”だ

No.67

>> 66 ちゃんとした待ち合わせは これで何回目だろう

軽く飲めるビストロに入った

オーダーしたものを待つ間

スープのクルトンが好きだという共通点で盛り上がる

そしていつもの他愛もない話から 冗談めいた猥談まで

まわりから見たら普通のカップルだろう


見えない一線を引かれてはいるものの

ウサギちゃん

君の笑顔は甘く優しいよ

好きな女を目の前に

同じ空間で同じ時間を過ごせる事の楽しさを私は味わっていた

No.68

>> 67 少しアルコールが回ってきた頃

ウサギちゃんは不意に話し始めた

『私なあ 出来ひんねん
男の人と その
アレが』

猥談の延長かと聞き流してしまうところだった

私はウサギちゃんを二度見した

『もしかして 前に聞いた事が原因なのかい』

私の問いかけにウサギちゃんはうつむきながら頷いた


そうか

常に引かれていた一線はそれだったんだね


ウサギちゃんが口にふくんだ氷を噛み砕く音が響いた

No.69

>> 68 『イタイ女やろ』

冗談ぽく言っているが私と目線は合わさずウサギちゃんは呟いた


これまでにもきっと幾つかの恋をしてきただろう

その度に今みたいな淋しい顔をしてきたのかい


私は黙ってウサギちゃんの肩を軽く抱き寄せた

身体を硬直させながらも

ウサギちゃんは無抵抗だった

No.70

>> 69 私は確信した

ウサギちゃんの心がこちらを向いている事を


ウサギちゃんの心はクリスタル製

壊れないようにそっと抱き寄せる


好きだよウサギちゃん

ウサギちゃんは私の事好きかい


ちゃんとしないといけないね

年上女との事

ちゃんと終わらせないといけないね

No.71

>> 70 小さい一歩だけど

私とウサギちゃんは確実に近付いた

相変わらず家まで送らせてはくれない堅いウサギちゃんが私は好きだよ


タクシーのテールランプが見えなくなるまで見送ったあと

年上女にウサギちゃんを愛しているとメールした

そして年上女のメアドを着信拒否設定にした

No.72

>> 71 それからメールのやり取りや電話はするものの

お互いに忙しくて会えない日が続いた


残業の無い平日に久しぶりに例の店に寄る

カウンターにはいつもの席にウサギちゃんの後ろ姿

声を掛けかけて私は止まった

隣に知らない男が居る

マスターのいらっしゃいの声でウサギちゃんが私に気付く

同時に隣の男も振り向く

端正な顔立ちのその男はウサギちゃんを呼び捨てにしていた

No.73

>> 72 兄妹のようにも見えるが違う

その男に対して悪態をつくウサギちゃんの顔は安心仕切った笑顔だ

マスター相手とはまた違う

入る隙の無い空気が漂っていた


『ホンマにええ男ですねぇ 是非この子を嫁に貰ろて下さいよ(笑)』

とウサギちゃんと同じ京都弁で冗談めかしてマスターに話し掛けるその男は余裕綽々だ


『サラリーマンさん こいつ私のSP(笑)』

ウサギちゃんの言葉にその男も好意的な笑顔で会釈した

私も会釈したが互いの目は笑っていないように感じた

No.74

>> 73 『この方なあ 私の相談役❤
めっちゃジェントルマンやよ』

ウサギちゃんは屈託なくその男へ私を紹介する

目が笑っていない男二人を目の前にしても無邪気極まりないウサギちゃん

計算なのか❓

いや

天然なのか


マスター

その男



異様に無口に牽制し合う男三人に

ウサギちゃんの笑顔が対照的だった

No.75

>> 74 ウサギちゃんによると

その男は自分のディープな過去の傷を癒すのを支えてくれた親友らしい

親友❓

上手にごまかしているのか

私は基本的に男女間の友情なんてものは信じない


ウサギちゃんはどうなんだ

男女の友情が成立するなんて思っているのなら

私の君への気持ちも友情に映っているのかな

No.76

>> 75 複雑な気持ちのまま

私のグラスは空になっていた

『良かったら 一杯ご馳走させて下さい
日頃のお礼に』

端正な顔立ちのその男はあくまでスタイリッシュに私に話しかけてきた


日頃のお礼❓

ウサギちゃんの保護者のつもりなのか

それとも私への挑戦状か

断るのもオトナ気ないので好意を受ける事にする


異様な空気の中

マスターが黙ってボトルの栓をあける音だけがキュッキュッと鳴っていた

No.77

>> 76 『こいつもなあ お店やってんねんよ』

唐突にウサギちゃんが異様な静寂を破る

その男はメンズバーを経営しているらしい

今日はたまたま休みだという


ウサギちゃんのテリトリーの偵察❓

マスターや私の品定めに来ているかのように

その切れ長の目で私やマスターを観察している

と同時にマスターとはすっかり友達口調だ


私もその男とウサギちゃんを交互に見ている

No.78

>> 77 今日は帰った方がいいだろうとグラスを空けようと手に取った時

タイミングいいのか悪いのか

年上女がやってきた


『あら お揃いで』

年上女とはメアドを着信拒否設定にした以来だった


私と年上女は何事もなかったかのように会釈をしたがお互いの表情は心なしか堅い

その男は年上女にも一杯とマスターにオーダーした

No.79

>> 78 『あらどうも こんないい男からなんて緊張しちゃうわね』

私をチラッと見ながらまんざらでもなさそうだ

ウサギちゃんは私にしたのと同じようにその男を年上女にも紹介した


『私とサラリーマンさんみたいなものかしら』

不意に勝ち誇るような笑みを浮かべて年上女が言い放った一言で

その男は私を見た

ウサギちゃんは笑ってはいたが

その笑顔にいつもの無邪気さはなかった

マスターは黙って年上女のカクテルをステアしている


なんて窮屈な時間なんだろう

No.80

>> 79 『年上さんは私がサラリーマンさんと知り合う前からの仲良しさんなんやて』

ウサギちゃんはその男に私と年上女の説明をした

その男は改めて私と年上女を見て言った

『見たらわかりますよ』

何気ない一言だがその奥は底知れない


一瞬にして空間を気まずくする年上女に私は腹立たしさを覚えたが

これも私の身から出た錆び


ウサギちゃんは黙ってマスターの吸いかけの煙草の煙を見ていた

No.81

>> 80 平日という事で明日の事も考え

私はマスターに会計を申し出た


ウサギちゃんはちょうど席を外していた

今日はウサギちゃんを送る必要はなさそうだ

マスターと年上女は談笑している


席を立ちかけた時

その男が私に小声で話しかけてきた

『あの子は壊れやすいから』

私はその男の顔を見た

私を見るその男の目は鋭い

マスターと年上女も私が席を立ったのに気付きこちらを見た


『ほな 今後ともよろしゅうに』

先程の鋭い目を細めてその男は笑顔で私を見送った

No.82

>> 81 店を出てしばらく歩いたところでメールの着信音がした

ウサギちゃんからだった

「なんで私が御手洗い行ってる隙に帰らはるの
狙ってたやろ(笑)」


正直そんな事を考える余裕はなかった

ただその場から離れたかった

「明日も仕事だから ごめんね」

と返信した


返信完了画面を見ながら

あの店のアフターのウサギちゃんとその男の事を考えていた

No.83

>> 82 ウサギちゃん

その男にはタクシー同乗で送ってもらうのかい

いや

送ってもらうのは もしかして翌日❓

考えたくない


いつも甘く私を包み込むウサギちゃん

今日は苦く私を暗く底深い闇に墜としていく

堕天使

いや

悪魔❓

違うよね

違っていて欲しい

No.84

>> 83 翌日 年上女からの電話

何気なく取ってしまった

メールは着信拒否にしたものの電話番号までは気がまわってなかった

『昨日は残念だったわね 愛するウサギちゃんはあれからあのイケメンと帰ったわよ』

何が言いたいんだ

『いいわね~若いしね どうせ私はオバサンだから(笑)』

一瞬 そんな事ないよ と言いかけたがやめた

ポツリと言ってのける弱音さえも

もはや裏があるようにしか聞こえない


今は何も考えたくない


年上女の事

あの男の事

そして


ウサギちゃんの事も

No.85

>> 84 私はすっかり例の店から足が遠退いてしまっていた

ウサギちゃんからのメールにも当たり障りの無い返信をしていた

ウサギちゃんも何かを悟ったかのようにメールの数を減らしてきた


蜜月

あの甘い時間が懐かしいよ

ついこの間の事なのに


これまでにもハートは何回か砕け散ってきた

慎重でいたはずなのに

気がついたら近づき過ぎていたんだね


甘く柔らかな堕天使

今はその甘い匂いを思い出すと苦しいよ

No.86

>> 85 まだ始まってもいない恋だったが

まるで失恋したみたいだよ


墜ちた気持ちを引き上げられないまま

気がつけば数週間経っていた

ウサギちゃんの事は意識的に考えないようになっていた

No.87

>> 86 それからの私は

時折年上女と心の通わない世間話をする日々

今は敢えて電話を拒否する程の気力もない


私の生活なんてこんなものだろう

ウサギちゃんと出逢う前もそうだった

いつも何かを諦めている習慣が身にしみついてしまっていた

ウサギちゃんのあの甘い毒で夢を見ていただけなのかもしれない


ウサギちゃん

君に会いたい


会いたくないよ

No.88

>> 87 雪がちらつく ある週末の夕方

ウサギちゃんからのメールに思わず立ち止まってしまった

『私の事迷惑に思ってるん❓』

そんな訳ない

苦しいだけだよ


とりあえず在り来たりな内容で否定する返信をした

No.89

>> 88 直後に電話のコール

着信画面にはウサギちゃんの名前と電話番号


躊躇したが出てみる

胸の鼓動が高鳴る


『…私をさがしてや』

『えっ』

『私をさがしてや
私 サラリーマンさんが来るん…
ずっと待っててんよ』

うわずった声で私に怒るウサギちゃん

泣いていたのかい


私はウサギちゃんを捜しに走り始めていた

No.90

>> 89 所在をはっきり告げられていないのに

私は以前ウサギちゃんと食事したビストロへ向かっていた


週末とあって早目の夕食を取る客で溢れかえっている店内を見渡す

肩から腰にかけて身体のラインを描くようにのびている栗毛の後ろ姿が見えた


その瞬間

まわりの雑踏はモノトーンの世界


ウサギちゃんの後ろ姿だけがカラーに浮かび上がっていた

No.91

>> 90 走ってきたせいでかなり息が上がっていた

ウサギちゃんは呼吸の荒い私にすぐ気づいたようだった

『私を見つけてくれたんやね』


もういいよ

あの男とどうとか

マスターをどう思っているのかとか

ディープな過去を背負っているとか


今 目の前に居るウサギちゃんが私のウサギちゃんだよ

悪魔でも構わない

愛してるよウサギちゃん


声に出して言わなくても

そんな私の想いをわかってくれているような瞳で

ウサギちゃんは私を見つめていた

No.92

>> 91 軽い食事を頼み 私達は久しぶりにゆっくり話をした

テーブルにはカシスソーダとダニエルのタンブラーとグラスが寄り添っている


『なんでここやとわかったの』

確かにそうだ

でも

ここしか思い浮かばなかった

ここ数週間の空白を埋めるように私達は話した


ウサギちゃんはあの男の事を話してくれた

タクシー同乗で送ってもらうものの

特別な関係ではないという話に嘘はなさそうだ


私も年上女との事を話した

No.93

>> 92 意外にもウサギちゃんは動揺していた

申し訳ない気持ちと

カミングアウト出来た解放感が入り交じる中

不謹慎にも動揺しているウサギちゃんを見て私はうれしくなっていた


私の事好きかい

言葉にする程私も野暮ではない


その困惑した顔は私への気持ちだよね

私と視線を合わさないウサギちゃんが愛しい


まさに 甘く至福の時を迎えていた

No.94

>> 93 『やっぱりサラリーマンさんも男やったんやね』

悦びに浸っていたのも束の間

ウサギちゃんは悟ったような表情で私を見た


その後の会話は以前と同じように楽しく語り合えはしたものの

一瞬近づいたように感じたウサギちゃんと私の間には

相変わらずくっきりと一線を引かれていた

いや

年上女との事を話した事でその一線はより鮮明になった気がした

No.95

>> 94 男に関したトラウマを持った彼女にするべき話じゃなかったかもしれない

後から気付くが遅かったようだ


私は昔から空気が読めないところがある

カミングアウトも実は自分が楽になりたかっただけなのかもしれない


私は弱い


せっかく私と繋がっている糸を手繰り寄せてくれたウサギちゃんなのに

私は自らその糸を解れさせてしまったんだね


さっき私を見つめてくれていたウサギちゃんの潤んだ瞳は

既に何処かへ消えてしまっていた

No.96

>> 95 一度解れた糸を戻すのは容易ではないだろう

全て私自身が起こした事

あの男との事で君が遠くに感じた時も

結局私は年上女からの電話で寂しさをまぎらわせてしまった

心に傷を負うのはもう嫌だったから


私は弱い人間だよ


目の前で野菜を美味しそうに頬張るウサギちゃんは 今

私だけのものなのに

とても遠くに感じるよ

私は大事なところで違うカードを引いてしまったんだね


ごめんよ

ウサギちゃん

ごめん

No.97

>> 96 『どないしたの 楽しない❓』

頭の中が真っ白な私にウサギちゃんは屈託なく話しかける


さすがだね

伊達にトラウマを背負ってないんだね


さっき君を落胆させた男に気遣う余裕があるなんて凄いよ

私は酷い男だね

自分の事しか考えてなかった

好きな女に不要な気遣いをさせてしまっている

最低な男だよ

No.98

>> 97 私はウサギちゃんに相応しくないのかも知れないね


「あの子は壊れ易いから」

端正な顔のあの男の切れ長な目が頭を過る


私は君を傷つけたはずなのに

こうしてまだ私と同席してくれている


幸せだけど 辛い時間

愛しくてたまらないけど手が届かない天使

ウサギちゃん

今君は何を考えているの

No.99

>> 98 以前と変わらない解散風景

ウサギちゃんの乗ったタクシーのテールランプを見送る


もしかしたら

私が間違ったカードを引かなかったら

たった今見送ったタクシーに同乗出来ていたのかも知れないね


そして ウサギちゃんの甘い匂いをもっと身近に感じられたのかも知れない


私はなんて馬鹿なんだろう

ウサギちゃん

君をこの腕に抱きしめたいよ

さっきまで一緒だったのに

凄く恋しいよ

No.100

>> 99 ウサギちゃんと再びやり取り出来るようになって嬉しい反面

すっかり私自身の立ち位置を見失っていたある日

ウサギちゃんがメールで あの男の店で飲まないかと提案してきた

返事に困ったが断るとウサギちゃんに会えなくなるような気がして誘いを受けた


ウサギちゃんの真意がわからない

でも会いたい


気持ちが交錯する

  • << 101 あの男の店はウサギちゃんのエナジーチャージの場所らしい 細い路地を歩いて案内されながら話を聞いていると ウサギちゃんのあの男への信頼度が嫌気がさす程うかがえる 少し落ち込み 少しジェラシーを感じながら歩いているうちに店に着いた 居心地の悪さは容易に想像出来るその空間に 堕天使にいざなわれて私は足を踏み入れた
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