一緒にお話つくろう会②byクリス(代行)
設定:7つの惑星(世界)を舞台に登場人物たちが連合軍と言う巨大組織と闘うストーリーです👮是非、皆さん読んでみて下さい⤴【一緒にお話つくろう会】代表…
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番号持ち登場人物
①クリス
②ハーク
③セレナ
④バジリス
⑤セロ
⑥ドイス
⑦凱
⑧ナタレー
⑨ライオネル
⑩キメラ
⑪リオ
⑫雷
⑬竜王
⑭キック
⑮アイシス
⑯リード
⑰ファックス
その他キャラ:ナナ・ヤン・隼・タカの子・カリーナ・ローナ・ザック・キキ・ミスター・アーム・ベネズエラ・蟷螂・鬼・砦・シャドー・サマー・長老・マリーン・他モロモロ
上のキャラの性格・外見等は【一緒にお話つくろう会】参照
>> 1
【一緒にお話つくろう会】のあらすじ
世界(宇宙)にある7つ世界(惑星)の平和は世界征服を掲げる連合軍という組織によって、崩されてしまった。そんな何処にいても戦乱に巻き込まれてしまう時代に主人公クリスがダンテスティン星の王族セレナ姫の用心棒として雇われる。だが、用心棒となり、一日と立たずにダンテスティン王国は連合軍の侵略攻撃を受けてしまう。【あの事件】で国力が落ちていた王国には勝目はなく、大賢者ハークの提案でセレナ姫は星から逃れることになった。クリスの親友セロの船で、ハークの助けもあり、クリスとセレナは連合軍から逃れ、星から脱出することが出来た。その後、シーラ星、エルフの星に足を運んだクリスたちはまたしても世界征服を企む連合軍と遭遇してしまう。セレナ姫を追って、バジリス将軍もシーラ星にやってきて、クリスたちは連合軍と闘うことになってしまった。エルフたちと力を合わし、どうにか【冬の大雪】の闘いを勝利し、連合軍を退ける事に成功した。この時、新たな仲間ライオネルも出来る。しかし、連合軍のバジリス部隊に勝利したのはいいものの連合軍本来(本体)を壊滅させなげればなんの解決にもならない。
>> 2
あらすじ
そこで、クリスたちは連合軍に打ち勝つため、竜族の力(助け)を得るため、イース星に向かう。イース星で生き残るには竜族の長、竜王に気に入られなければならなかったが、運よくクリスが気に入られ、竜王は力を貸すと約束してくれる。しかし、連合軍の手はイース星にまでやってくるキメラ魔法将軍率いる大艦隊がイース星にやってきたのだ。クリスたちは再び、連合軍と対峙するこになった。ここでも竜人や竜と力を合わせ、またハークとの再開もあって、強敵キメラ将軍、大艦隊を撃退することに成功した。戦いに勝利したのも束の間、悪い知らせが耳に入る。ライオネルの母国、シーラ星に宇宙最強とうたわれる雷総将軍率いる大部隊が侵略するため向かっていると言うのだ。慌てて、クリスたちはシーラ星を戻る。竜王も話しを聞き、竜族部隊を収集し、クリスたちと友にシーラに目指すが、雷部隊の方が到着が早く凱単独の行動も虚しく春、夏、秋国と次々に征服されしまう。残りは冬国だけになり、やっとクリスとセロだけが到着する。クリスとセロ・凱の三人は地下迷宮で珍獣族と出会い新な力を得る。
>> 3
あらすじ
珍獣族とエルフ族は力を合わし、連合軍と戦うが連合軍は雷将軍率いる精鋭部隊だ。徐々に押されていく。最後の冬国も落ちようとした時、セレナたち竜部隊がやってくる。そして、激戦の末、連合軍をシーラ星から撤退させることに成功する。だが、撤退するとき雷将軍により、クリスは深手を追ってしまう。クリスは外傷はないものの意識がなくエルフ族の医学では治すことが出来ないと言う。そこで、凱の提案により、医学の発達したピンタゴ星雲ウマンダ星に向かうことになった。ピンタゴ星雲で、凱の知り合いアイシス医師にクリスを任せ、セレナたちは凱の船を改造するため、青の惑星の賞金稼ぎ7の基地にきていた。
↓これから…
>> 4
シュイィーーッ
ザック「ほう、やろうってのか!相手になるぜ、竜人さんよっ!」
サイボーグの両腕から鋭い刃物が出る。
ガシャン
胸が開き両胸から小型ビームキャノンが突き出る。
ザック「いつでも、いいぜ!竜人さんよ!」
⑭「ギリッ! こいつ!!」
キックは竜剣の構えをとる。
③「止めて…」
セレナの声は皆に届かない。
カリーナ「ふん!いつでも、かかってきいやぁ!賞金はいただきや。」
皮のグローブをはめた両手を構え拳にオーラを溜める。
ピロピロ ピロピロ
ローナ「あっ、ナナの頭からだ…はい、戻って来て仕事を手伝え。今、取り込み中…はい、分かりました。」
プツッ
ザック「どうした?」
ローナ「ナナの頭が仕事だから、工場に戻って来いですって…然も、賞金首のセレナ姫に会っても、客人だから手を出すなとの事だったわ。」
③「ほっ…」
⑭「…。」
ザック「チッ、命拾いしたな!あんたら。」
シュイィーーッ
武器を体にしまう。
カリーナ「賞金が…」拳法の構えをとき、ガックリ肩を落とした。
>> 5
ザック「命拾いしたな」
⑭キック「貴様らがな…」
竜剣を豪快に回転させ鞘に収める。
カリーナ「…」
ローナ「ガッカリしないの!カリーナ!頭の命令なんだから!」
デビル「食った食ったぁ」
デビルは買った食べ物を食いつくすと町の方に歩いていく。
③セレナ「デビル!待って!」
セレナは軽くカリーナたちに頭を下げるとデビルの後を追う。
⑭「ふん」
キックも直ぐにセレナに続く。
ザック「くっ…気にくわん竜人だ」
カリーナ「…」
ローナ「さぁ基地に帰るよ」
③「待ちなさいぃ~」
セレナはデビルの首ねっこを掴み持ち上げる。
デビル「ぎゃあぁ。放してぇ」
③「やっと捕まえたぁ…勝手に行っちゃだめだってば」
⑭「デビル!貴様は珍獣族の王だろう!もっと王らしくだな…」
デビルは身体を揺らし、セレナの手をほどく。
③「あっ」
デビル「やだ!食うったら食うの!」
デビルは舌を出し、セレナたちを挑発すると人混みの中に走っていく。
③「デビル!」
背の低いデビルは直ぐに人混みに消え見えなくなる。
⑭「困った奴だ!」
>> 6
関西弁よく分からないので、間違ってたらすいません!
m(_ _)m アル🍺
--------------------
バンッ
カリーナ「どう言うことや、賞金首のセレナ姫に手を出したらあかんて言うのは!」
工場の扉を勢いよく開けて銀狼のカリーナが中に入ってきた。
カシュン カシュン
ザック「いけすかねぇ竜人の野郎もいるしよ!」
続いて機械音を鳴らしながら入って来る。
ローナ「まあ、頭に拾って貰ってるからの頭の言葉は絶対ですわ。」
最後に子供みたいな小人族のローナが金髪をなびかせ入って来る。
ナナ「やっと、全員揃ったな。」
「知ってる奴も知らない奴もいるだろうが、凱の仲間に手を出さないでやってくれ。」
ヤン「ガハハハ!連合軍の奴らと戦ってんだとよ。」
タカの息子「ふん…」
隼「下らん!!」
ガシャン カチカチ
セロとリオそして凱も作業を手伝っている。
カリーナ「!?」
「凱が、おんのか?」
狼の耳をピコピコさせる。
>> 9
町の人々で賑わう店通りに汗だくのセレナとキックがいた。
⑭「しかし…水の中にいると言うのに汗をかくとは」
③「えぇ…はぁはぁ」
③「でも…これだけ探しても見つからないなんて可笑しいわ」
人々の熱気でそれなりに気温も高いようだ。
⑭「確かに…あのデビルのことだ食いだしたら目立つはずなのに…」
③「とにかく町の中心部はほとんど探したし…町外れを探しましょ」
二人は人混みの中から離れ、町の外れに歩いて行く。
⑭「ふぅ。やっと人混みから解放された…これだけ町が栄えてると言うのに戦争中とは…いったいどうなってるんだぁ」
町を抜けると水(水)との境界のガラス(壁)との距離も近い人工の森に出た。
③「それにしても綺麗なとこですね」
セレナは周りを見渡し空(海)をみやげる。
⑭「そうですな…この世のものとは思えないほど神秘的な場所ですね」
頭上には海を経て、眩い太陽の光りが降り注ぎ、大小様々な魚たちが泳いでいる。周りの木々は地上では見たことのない彩りどりの花で一杯だ。
③「素敵…」
二人は大自然の神秘に見とれる。
>> 10
二人は大自然に耳を傾け、しばし、腰を下ろして眺めることにした。
⑭「竜王様にも見せてあげたいな」
③「キックは本当に竜王様が大切なんですね。いつも頭の中には竜王様がいる(笑)」
⑭「そっそんなことは…ただ私は竜王様の…の…ですね(汗)」
③「照れてるのキック?(笑)」
⑭「っ(汗)姫それ以上勘弁を…余りいじめないで下さい(汗)」
キックは頭をかきながら言う。
③「キックったら(笑)」
③「ずっとこうしていたいわ…最近は戦い…戦い…戦場しか見てなかったから…」
⑭「姫……」
③「本当…綺麗」
二人は黙りこみ、自然の神秘を見つめる。
⑭「ぅ?」
そんな心休まる時間も長くは続かなかった。今のセレナたちに平穏という言葉からは遠ざかる運命のようだ。
⑭「姫」
キックは立ち上がり、剣を抜く。
③「キック?」
セレナも直ぐに立ち上がり、杖を手にとる。
⑭「上を!どうやら我らに用があるようです!」
頭上の神秘的な海は宇宙海賊の旗を掲げた船に遮られ見えなくなっている。
③「アレは」
船の船底の一部分が光り始める。
⑭「姫!直ぐに船の下から離れて!」
キックはセレナの手をとる。
>> 11
⑭キック「姫!早く!アレは船内に引き込む物質入出装置です!光に触れたら船内に引き込れます!」
③「ははい」
混乱しているセレナを無理矢理抱え、キックは飛び上がる。
⑭「くっ」
頭上の船の物質入出装置の光りが強くなる。
⑭「間に合わない…くそ」
③「きゃあぁ」
⑭「っ…」
ピカッ
船から強烈な閃光が放たれ、二人の姿が消える。
ゴオオオオ
⑭「うっ」
ガシャガシャ
③「ここは」
二人は低い機械音がやまびこのように響いている古ぼけた部屋の中央にいた。周りにはなにもなく、それなりに広さもある。
⑭「どうやら船の中のようです」
キックは床に耳を当て、船のエンジン音を確認するとそう言った。
③「ちょっと待って下さい」
セレナは杖の水晶に手を当て呟く。
⑭「どうですか?」
③「私たちは気を失っていたようです…この船は既に宇宙空間に出てるわ。これじゃあ魔法で脱出しようにも…」
⑭「だが…宇宙海賊が何故我らを…」
>> 12
③「理由はわかりませんが…友好的ではないようですね」
⑭「確かに」
③「惑星の大気圏に入ったようです」
セレナの杖の先につい水晶には連れ込まれた船が映っており、黒い惑星の大気圏に入っていく。
⑭「赤・緑・青の次は黒の惑星ですか」
キックはセレナの水晶を覗き込みながら言う。
③「大気圏を突破したわ!逃げるなら今です!」
杖は光りを放つ。
『止めておけ』
セレナが魔法を使おうとした時、部屋に声が響く。
⑭「誰だ!」
キックは剣を抜く。
『竜人は銀狼より野蛮のようだな』
⑭「貴様!竜人をバカにしよって!」
スピーカーごしに聞こえてくる声の主にキックは今にも斬りかかりそうだ。
③「落ち着いて!」
⑭「す…すいません」
③「貴方たちが宇宙海賊の人と言うのは船を見て分かりましたが、なぜ私たちをさらったんですか?正当な理由が無いかぎり私は船から降りさせて貰います」
セレナの杖は輝きを増す。
『止めておけ…と言ってるだろう…今船から飛びだしたら命はないぞ。外は嵐だ。大人しく我らの基地にこい…キャプテン・ドグロ様がお待ちだ』
そう言うと男の声はスピーカーから聞こえなくなる。
>> 13
⑭「姫…どうしますか?」
キックは部屋の壁を調べながら言う。
③「さっきの男が言ったのは嘘ではないようです。外は大荒れの嵐です。私の浮遊魔法でもキックの翼でも飛ぶのは無理ですよ」
⑭「う~…どうしたものか…」
③「あっ」
③「どうやら目的地についたようです」
船の動きが止まる。嵐のせいか空中停止している船は揺れている。
⑭「そのようで…このまま物質入出装置で地上に下ろすようですな」
部屋の壁が鈍く光り出す。
大型戦艦が軽く入るほどの大きな部屋に宇宙海賊のトップ、そして銀狼の長でもある名高きキャプテン・ドグロがいた。
⑱キャプテン・ドグロ「まだか?」
部屋の天井は強化ガラスのドーム状の天井で、どうやら物質入出装置の受け取り用の部屋のようである。
「はっ!嵐のせいで少し遅れていますが…直ぐに」
ドグロの後ろに整列している数十名の銀狼の一人が言う。
⑱ドグロ「ふん…」
ドグロは腰につけたかぎ爪のような剣を目にも止まらない早さで抜き、さっきの銀狼を斬る。
「ぎゃあぁぁ」
銀狼は叫び声を上げ倒れる。周りの銀狼たちは顔色一つ変えずドグロを見つめる。
>> 14
⑭「っ…」
③「ここは?」
セレナとキックは天井がドーム状の大きな部屋にいた。
⑭「万全の体勢でお待ちかねか」
キックは周りを取り囲んでいる銀狼たちを見渡す。
③「私たちをここに連れてきた理由を教えて頂いてよろしくですか」
セレナは杖を構えながら言う。
⑱ドグロ「セレナ姫…竜王の血を引くキック」
銀狼の中から他の銀狼とは一味違う銀狼が前に出てきた。
⑱「俺はキャプテン・ドグロ…宇宙海賊の船長だ」
ドグロと名乗る銀狼は銀狼ならではの銀髪ではなく黒髪で黒いサングラスをかけている。
③「なぜ私たちの事を知ってるんです?」
ドグロは床につくほど長いマントをなびかせ笑う。
⑱「ふっ…そんな事はどうでもいい。今のお前らに大切なのはこの状況をどう切り抜けるかだ」
周りの銀狼たちは一斉に剣を抜く。
⑭「姫どうやら。話が通じる相手ではないようです」
キックは竜族ならではの構えをとる。
③「えぇ」
セレナも杖に魔力を込める。
⑱「さぁ~ショータイム!!」
ドグロは床に胡座を組み座り、戦いを見守る。
>> 15
「我らの力を見せつけてやれ!ドグロ様の前での失態は死を意味するぞ!」
「お~!!」
銀狼たちはセレナたちに襲いかかる。
⑭「竜剣の力を試すかなぁ」
竜剣から凄まじいオーラが溢れ出る。
「なっ!」
襲いかかって来た銀狼たちは凄まじいオーラに飲み込まれていく。
⑭「はあぁぁああ~!!」
斬ると言うより、竜が人を食べるように剣は銀狼を飲み込んでいく。
「ぐはぁ」
銀狼たちは吹き飛ばされ床に叩きつけられていく。
③「凄い…(汗)」
一分も経たないうちに数十人の銀狼たちは誰一人立っている者がいなくなった。
⑭「ふぅ…もう終わりか?」
竜剣を豪快に回す。
⑱「やるな。流石は竜王の右腕だな」
⑭「どうも…お前は闘わないのか…それともビビったかなぁ??」
⑱「ふん。俺が闘うまでも無いさ」
ドグロは上を指さす。ガラス製のドーム状の天井には嵐が止み、厚い雲が徐々に晴れていくのが見える。
⑭「まさか…今日は…」
ドグロは笑う。
⑱「お前らに銀狼について少し教えてやる」
雲は徐々に晴れていき黄色い光りが見え始める。
>> 16
⑱「銀狼には三種類あってな。例えれば竜族の竜人・竜、エルフ族のエルフ、ダークエルフのようなものでな」
雲もどんどん晴れていく。
⑱「一つ目は低級銀狼だ。満月の日には狼人間になり、感情・理性を失いただ暴れるだけの銀狼。力は強いが仲間すら殺しかねない」
⑱「2つ目は中級銀狼だ。こちらは満月の日に狼人間になるが感情・理性もある。だが力は低級銀狼よりは低い。もっとも多いタイプだ」
⑱「3つ目は100年に一人生まれるか生まれないかと言うぐらい貴重な高級銀狼。大きく違う所は満月でなくてもいつでも好きな時に銀狼になれると言う点だ。感情・理性があることはもちろん…力も前者2つとは比べものにならない」
⑭「くっ…」
周りで倒れていた銀狼たちが微かに動き始める。
⑱「そこにいるのは中級銀狼だが…狼人間になった銀狼の力は凄まじいぞ」
雲に隠れていた満月が徐々に姿を見せ始める。
③「きゃあ」
倒れている銀狼の身体から毛が生え、筋肉が激しく動き、大きくなっていく。
⑱「さぁ。後半の始まりだぜ」
雲は晴れ、満月がはっきり姿を現す。
>> 17
「ガルルルル」
倒れていた銀狼たちが次々に立ち始める。
⑭キック「くっ…これが狼人間か…」
銀狼たちは人間の姿から変化し、狼人間、化物になっている。
⑱ドグロ「ハッハァ~!お前ら殺したかったら殺していいぜ!」
「了解…ガルルルル」
狼人間たちはセレナたちの周りを這い周り、徐々にスピードを早めて行く。
③「キック!援護します!」
セレナは呪文を唱え始める。
⑭「わかりました。気をつけて下さい!」
「ガルルルル!!」
狼人間の一匹がキックに襲いかかる。キックは空高く飛び上がり、攻撃を回避すると今度は急落下し、襲いかかって来た狼人間に斬りかかる。が、狼人間は腕を交差し、キックの剣を軽々と受け止める。
⑭「なっ…なんて身体だ」
「ガルルルル…狼人間になった我らの身体に剣は食らわぬ」
他の狼人間たちは攻撃を止められ動揺しているキックに一斉に襲いかかる。だが、セレナはそうはさせまいと魔法を放つ。
③「炎よ!全てを飲み込め!」
空気が一瞬にして乾き、地面から炎の渦が吹き上げる。
「ガァァアア」
狼人間たちはセレナが放つた炎の渦に飲み込れるが、倒すまでにはいたらない。
>> 18
⑱ドグロ「あまい…あまい…そんなことでは狼人間は倒せんぞ」
狼人間たちは若干毛が焼けているも平気な素振りをしている。
③「なんて…頑丈なの…」
⑭「ちっ…」
「ガルルルル」
狼人間たちはじりじりと近づいてくる。
⑭「竜人をなめるなよ!」
竜刀からオーラが溢れ出て、キックの身体を包んでいく。
⑭「いざ…」
風を斬りながら、キックは自在に空を飛び、凄まじいスピードで狼人間を斬っていく。
「ガァッ…」
しかし、頑丈な狼人間の身体には浅い斬り傷しかつけれない。
⑭「くそ…なんて堅いんだ」
だが、キックの超スピードの連続攻撃に狼人間たちは倒れはしないものの防御に徹しているため、動きがとれずにいる。
⑭「姫!」
③「任せて!大地よ己の力(火)を発せよ!」
セレナがそう言うと大地が燃え始める。
⑱「なんだ…こんなちんけな火で狼人間を倒すつもりかぁ…笑かしてくれるぜ」
確かにドグロが言う通り、大地を燃やすセレナの魔法火は数㎝ほどの高さで、狼人間たちはなんのダメージも与えていない。
③「ふふ。よく見て言って下さい」
⑱「あぁ?何が…」
>> 19
⑱「お姫様が何やるつもりか知らないがかまわねえ、おまえ等かかれっ!!」
手を振りあげると同時に一斉に襲いかかる。
『ガルルアーッ』
⑭「姫ぇーーっ!」
③「大地よ…灼熱の炎で敵を穿て」
銀狼達にひるみもせず、セレナは水晶のついた魔法の杖を下から上に振り上げた。
バシュン バシュン
ドゴゴオオオォォッ
凄まじい勢いの火山弾が次々と襲っていく。
⑭「俺も負けられない。」
キックも竜人独特のオーラを溜めると、さっきの技を繰り出した。
竜の形をしたオーラが再び銀狼を飲み込んでいく。
『ギャウンッ』
『グウウゥッ』
『ギャイィィ』
火山弾や竜のオーラに当たった銀狼はあるものは壁に打ちつけられ、あるものは地面に叩き付けられる。
辺りは、鼻を覆うような肉の焼けた匂いが漂った。
⑱「こっ、これは…一体…」
⑭「二人の力はまだこんな物ではないぞ!」
③「流石に、この超高熱魔法は気が引けます。もう、止めさせて下さい…」
⑱「ぬぬぬ…」
キャプテン・ドグロは握り拳を作りワナワナと震るわせた。
>> 20
⑱「ぬぬぬ…」
⑱「ふっ…」
拳を震わせながら鼻で笑うドグロ。
⑭「何が可笑しい!」
キックは竜剣をドグロに向け、威嚇する。
⑱「遊びは…終わりだ…十分楽しめたぜ」
ドグロは黒いマントにくるまり、言う。
③「次は貴方が相手ですか?…お仲間はこの通りですしね」
セレナは周りで黒焦げになって倒れている狼人間たちを見渡す。狼人間たちは黒焦げになってはいるが、死んではいないようだ微かに動いている。
⑱「バカを言うな。俺とお前たちが闘うことなどない…」
ドグロは冷酷な目つきで、セレナとキックの顔を見る。
⑱「いや闘うにも値しないと言おうか…ふっ」
⑭「よく言えたものだ!貴様の仲間は皆やられ今は貴様一人だぞ!」
ドグロは舌を鳴らし、嬉しそうに笑う。
⑱「仲間がやられた?ふっ…誰がそんなことを言った?俺様は何百万の宇宙海賊のトップだぜぇ」
ドグロは指を鳴らす。
③「…」
⑭「な…」
上空からターボジャエット器を背負った狼人間たちが次々と飛んで来て、ドーム状の天井が開き中に入ってくる。部屋の壁は突然扉が出現し、狼人間たちが重機械を持って入ってくる。
>> 21
「武器を捨て、大人しくしろ」
狼人間に変身した銀狼たちが銃をつきつけ言う。
⑭「くっ…姫…ここは」
どうやら中級銀狼のようだ。銀狼の数はどんどん増えていく。
③「分かってます…」
セレナとキックがほぼ同時に杖・剣を捨てる。
⑱「お~!潔くていいねぇ!」
既に部屋には銀狼兵士たちで一杯だが、彼らは皆、銃に変身前後の身体の変化にも対応出来る最新の伸縮自在の鎧をまとっている。
「おら!伏せろ!」
武器も持たず、両手を上げ、無防備なキックは銀狼に背中を蹴られ床に倒れ込む。
⑭「くっ…」
銀狼たちは暴れるキックを数人がかりで押さえ込み、縛り上げていく。
「おら!」
⑭「ぐっふ」
縛られ動くことすら出来ないキックは横腹を蹴られ疼くまる。
③「やめて!暴力は!ドグロさん!無防備な相手にこんなことをして恥ずかしくないんですか!それでも銀狼の長たるものですか!」
セレナは銀狼に押さえ込まれながらも必死に言う。
⑱「ふっ…」
ドグロはセレナの杖・キックの剣を手にとり、しみじみと見ながら、セレナとは目を合わせずに笑う。
>> 23
ナナ「ふうっ!何とか形になったな。」
工場の資材置き場に皆は腰を下ろし、ひと休憩をしていた。
ヤン「ガッハッハッハッ!俺達にかかれば、こんなもんだわい。」
ビールを流し込む。巨人族の手で持つと大ジョッキが小さいコップのようだ。
⑪「疲れた~っ。デビルじゃないけど、腹減った…」
リオは、その場にへたり込んでしまった。
ローナ「まだまだ、ですわね。」
クスクスと笑うと、オレンジジュースをリオに手渡した。
⑪「サンキュー!!」
ゴキュ ゴキュ ゴキュ
一気に飲み干すと、お代わりを貰った。
⑦「ったくよう、彼奴等はどこほっつき歩いてんだ。」
⑤「ほんとだよ!手伝いもせずに…」
カリーナ「あぁ、街の市場であった奴らのことか。」
⑪「デビルは兎も角、セレナとキックが帰って来ない何ておかしくない。」
心配そうに言う。
⑦「確かに、そうだなっ…何かあったのか…」
その時、工場の扉の方に二人の黒い影が現れた。
>> 24
シュン
チャキ
隼「フッ!」
手下1「うっ!」
隼の剣が銀狼の喉元を捉える。
手下2「野郎!この狐人が…」
隣にいた銀狼が隼に向いた瞬間、タカの子が、いつの間にか後ろに立っていた。
手下2「コイツ…い、いつの間に…エルフの分際で…」
タカの子「…私の名はディアスだ!何しにきた。キャプテン・ドグロの使者よ。」
銀狼の肩に彫ってある入れ墨を指差す。
手下1「へん!ドグロ様からの伝言だ。お姫さんは、預かった。帰してほしくば我の所に来い!となっ。」
⑦「何だと!てめ~っ本当だろうなぁ。首洗って待ってろっ!てボスに伝えとけ。」
カリーナ「あの、冷酷無比のキャプテン・ドグロなんや、何するか分かったもんやない。早く行かんと姫さんの命危ないで!」
ザック「確か、黒の惑星だったな。」
ナナ「ああ、そこがドグロのいる場所だ。」
>> 25
隼「フッ…」
タカの子「…」
ドグロの使者は用件を伝えると逃げるように走っていく。
⑤「逃していいのか?」
銃の小型スコープごしに逃げていく使者見ながら言う。
ローナ「あんな使い走りを問いただしてもなんの意味もないよ。弾の無駄…」
⑪「場所も分かってる訳だしね」
⑦「そうだぜ!場所も敵(ドグロ)も分かってるんだ!今直ぐセレナとキックを助けに行こうぜ!」
凱は改造作業が終了し、一段と頼もしくなった船を見上げる。
ヤン「ガハハハハ!」
カリーナ「…」
ザック「簡単に言うなお前ら(笑)」
今にも黒の惑星に乗り込もうとする凱たちを見て、ナナはため息をつく。
ナナ「言っとくが黒の惑星には宇宙海賊(銀狼)が何万と居るんだ。お前ら数人が行って、何になる?それにドグロの思惑が分からん。姫さんを拐うのはまだ分かるが、ざわざ知らせてきたのはおかしい…きっと何かある。」
⑦「俺はなんだろうと行くぜ!」
⑤「仲間だよ。ほってはおけないでしょ」
⑪「以下同文…」
ナナ「敵の思惑通りに動いてどうなる!止めておけ!」
>> 26
セロとリオが船に乗り込み、凱も乗ろうとするがナナに肩を捕まれる。
ナナ「待て!」
⑤「俺は行くぜ…船はありがとよ」
ナナ「死ぬぞ…お前はドグロを知らんからそう言えるんだ。」
ゴオオオオオ
凱の船は豪快なエンジン音を上げる。船頭の操縦室ではセロとリオが席に座り操作しているのが見える。
⑦「じゃぁな」
ナナ「…」
ナナは肩から手を離す、凱は静かに船の中に消えていく。
カリーナ「頭…アタシも行くわ。凱の事心配やし…ごめんな」
ナナ「なっ…何馬鹿な事を…お前まで」
ザック「俺も行く。奴等気にいった。手助けしてやるぜ。」
ヤン「ガハハハ!俺様もいくぞ!」
ナナ「お前らまで…」
ローナ「私も行くわ。この3人が行くならまとめ役が必要だしね。なにより、研究に役立ちそうだし」
ナナ「ローナなお前まで…お前ら死にたいのか?敵が誰か分かっ…」
隼「好きにさせてやりましょう。頭…死ねばそれはこいつらの寿命です」
ザック「言うねぇ…いつか殺してやるよ」
隼「フッ…頭うっとしいので早々と決断を」
ナナ「…」
タカの子「…」
隼「頭」
ナナ「うっ…」
ローナ「頭…」
>> 27
カリーナ「頭」
⑦「頭」
ナナ「うっ…分かった。分かった。行けよ。って!凱!なんでお前まで入ってるんだぁ!」
⑦「あっすまねぇ。で!一緒に来てくれるのか?」
カリーナ「まぁねぇ~貸しやけどな」
ナナ「言ってとくが行くかぎりは凱たちに全力で協力してやれよ。それと…」
ローナ「死ぬな…でしょ」
ザック「頭聞き飽きてるぜ」
ヤン「ガハハハハ!」
ナナ「ちっ…早く行け」
カリーナたち四人は凱の船に乗り込む。
⑦「悪いな。仲間まで連れて行って…」
ナナ「いいと言っただろうが…早くいけよ。お前らしくもねぇ」
⑦「分かった!またな!」
凱は入口を閉める。その直後に船は動き初め、賞金稼ぎ7基地に溜まった誇りを巻き上げながら飛んでいく。
ナナ「…」
隼「頭…」
タカの子「…」
残った三人は小さくなっていく船を見えなくなるまで見つめ、静かに動き始めた。
>> 28
流星群の中を巧みに通る一隻の宇宙船がいた。船の進路は黒の思惑に向いている。
⑤「凱!もっとやさしく運転は出来ないのかよ!うわぁ!」
船の中の物と一緒にセロも左に振られる。
⑦「何踊ってんだよ。セロは(笑)」
⑤「おっ…ぐ…踊ってな~い!死にかけてんだよ!うわぁぁ!」
セロは左右に転がり回っている。
ローナ「凱。私が思うに流星群を通って行っても宇宙海賊の船には見つかると思うわ」
ローナはヤンの膝の上に座っている。
⑦「あぁ。だろうなぁ。なんせ政府の攻撃を何度も防いだ惑星だからな。守りも半端ない」
ザック「なら、なぜに」
モニターには黒の思惑が近いことを示す表示が出ている。
⑦「信用度の高い情報なんだが、政府軍との争いで宇宙海賊の支配地の惑星の八割近くは既に奪われているそうだ。だが、宇宙海賊側の死者の数が極端に少なくてな。」
>> 29
⑦「可笑しいだろ?八割の惑星を乗っ取った割に宇宙海賊の死者が少ないなんてよ」
カリーナ「ほな、宇宙海賊は八割の惑星をワザと敵に渡しよったてっ言うんかぁ?」
⑦「その通りだぜ。政府軍は今は優勢にことを進めてるが、本当の勝負はこっからってわけよ。宇宙海賊側も惑星の数を減らし、守りを固めたってことだ。まぁ宇宙海賊も敵の強さを判断し負けない策をこうじたわけだ」
ローナ「答えになってない。なぜ流星群を通るの?見つかると分かっていて?早く答えなさい」
凱の話がそれていくことにイライラしていたローナが言う。
⑦「まぁもう少し聞いてくれ、今は政府軍側が戦闘を中断して休戦中だが、さっきも言った通り、宇宙海賊の守りは堅い、これほど本星に近づいたと言うのに宇宙海賊が気づかないのは可笑しい。なんせ戦闘中は政府軍の軍船が黒の惑星をレーザーで捉える前に撃墜されてるしなぁ。今はその時より更に宇宙海賊も集まって守りは何倍にもなってるし」
ローナ「敵はわざと私たちを通してるか…それを分かってなぜ進むの?」
⑦「ようするに敵さんは俺らを殺すのが目的ではないってことだ。ならそれを逆手にとって闘うだけだぜ(シャドー意見)」
>> 30
カリーナ「ほ~ほんまやなぁ敵さんがうちらを殺すのが目的やったら船ごと撃ち落とせばしまいや!」
⑪「撃ち落とさないのは敵に違う目的があるってわけだ」
⑤「でも…一番の疑問は」
⑦「ギクッ…(汗)」
⑤「凱!いつからそんなに頭がよくなった!誰の入れ知恵だよ!」
セロが凱に抱きつき、擽る。
⑦「わぁ!止めろ!運転中だぁ~!」
船は流星群を抜け、安定運転になっていて、スクリーンには黒の惑星がはっきりと確認出来るまでの距離に来ている。
ローナ「でも、例えここ(宇宙)では殺されないとしても黒の惑星ではどうかは分からないわよ!殺す所を生で見たいとか…一概に殺されないとは言い切れない」
⑦「流石、小人族は慎重だ。あんたの言う通り、かもしれねぇ。だが、俺の勘ではドグロは違う目的で俺たちを呼んだと思う。まぁ賭さ!入ってからわ…(笑)」
⑤「はぁ…」
>> 31
⑪「凱のそういう性格嫌いじゃないよ(笑)」
ローナ「ふふ何よその答え…知的な考えでは無いけど…頭からの命令もあるし、私も賭に乗って上げるわ。」
カリーナ「凱!あんたぁ!昔っから変わってないなぁ~!」
ザック「暴れるのは得意だぜ。殺すのは次に得意だ。その次は料理だ。んでその次は…」
ローナ「ザック…うるさい」
ザック「…」
⑤「はぁ無鉄砲ぶりはクリスで慣れてるよ。凱その賭乗るよ!」
ヤン「ガハハハハ!宇宙海賊なんぞ!この腕で捻り潰してやる!」
⑦「全員賛成のようだ!シャドー!このまま直進!耐熱シールドオン!」
シャドー「ココニ ヒトリハンタイガイルンダケド シカモ ダイハンタイ」
⑦「うるせぇ!耐熱シールドオン!」
シールド「ハイハイ リョウカイ バカガイ」
⑦「てぇめえ!」
凱とシャドーの口喧嘩が始まると同時に一行が乗る船は黒の惑星の大気圏に入って行った。
>> 32
青の惑星からずっと凱たちを尾行していた一隻の船がいた。狐族の最新ステルス船である。
「奴ら死ぬ気か…」
黒の惑星の大気圏に入っていく船を見て、一人の男が言う。
「仲間をドグロに誘拐され助けに行くようで…盗聴機で確認しました」
その男の後ろには二人の狐人の兵士が立っていて、機嫌が悪い男の様子を伺っている。
「凱を殺すのは俺だ!宇宙海賊なんぞに殺さすか!お前ら!我らも黒の惑星に行くぞ!」
「しかし(汗)砦様…大気圏まで近づくといくら最新ステルス船でも気づかれる恐れが(汗)」
砦「宇宙海賊にびびっておるのか!それでも狐族の兵士かぁ!」
「いえ(汗)そんなことは直ぐに(汗)」
二人の兵士は慌てて、操縦室に走っていく。
「ぷはっ(笑)」
砦「鳥…何が可笑しい」
部屋の隅で兵士と砦のやりとりを聞いていた。狐人は笑いを必死に堪えている。
鳥「いや…お前が凱を恨んでいるのは意外だったからな」
鳥と言われた男は長い尻尾を首に巻き、奇抜な服に鎖を腰に巻きつけているため、動く度に鎖同士が擦れ音がなる。
砦「お前の知ったことではない」
砦が乗る船は凱の後を追うように大気圏に入っていった。
>> 33
凱たちが黒の惑星の大気圏に入ったちょうど同時刻、政府軍の本拠地、つまりウマンダ星だが、本拠地に動きがあった。ウマンダ星では連合軍の大艦隊に政府軍の大艦隊が合わさった大大艦隊が、ウマンダ星を飛び出し、宇宙海賊の支配地区(青、赤、緑などの惑星)に向け、次々に飛んでいく。
⑯リード「順調か…」
その大艦隊を率いているのが、3大将軍の一人、リードだ。どうやらキメラはウマンダ星に残っているようだ。
④バジリス「はっ…順調です(くっ餓鬼がぁ…なぜ私がこんな餓鬼に頭が上がらんのだ)」
将軍補佐になったバジリスは膝をつけ、胸に手を当て、リードに言う。
⑯リード「そうか…順調か…」
流星群を破壊しながら、連合艦隊・政府艦隊は進んでいく。
>> 34
【番外ハーク編①】
ハークは今、世界の始めにいた。そう創造の世界、魔法世界だ。
②ハーク「大丈夫ですかなぁマリーン殿は?」
天は光りそのもので雲一つない。まるで太陽の中にいるようだ。壁も建物もない。あるのは光。そう魔法使いたちだけの世界だ。
「心配するな。風の大賢者ハークよ。雷の大賢者(マリーン)は医療魔法の賢者(専門家)たちに任せておる」
そんな世界の始めの世界の中心の男、いや彼は男、女などと言う区別はふさわしいないだろう。見た目は人間だが、人間ではない。光りそのもの神と言っても言い過ぎでは無い。
魔法老「風の大賢者よ。今世界は変わろうとしている。新な命が脅威をふるうことになる」
②「新な命?一体それは…」
魔法老「風の大賢者よ。それは私に聞くのは間違っておる。私はお主の世界に干渉はせぬ。いやしてはならんのだ。」
②「しかし…魔法老…貴方は魔法界を導いてこられた」
魔法老「うむ。だが既に魔法界にも新たな風が吹いておる。私には手が負えなくなる程にな」
②「この世界にもですか…そんな馬鹿な」
魔法老「この世界とお主の世界が一つになろうとしておる」
>> 35
【番外ハーク編②】
②「そんな…世界が一つになるわけが…」
ハークの手から力が抜け、杖が手からこぼれる。
魔法老「繋ぐ道(方法)をある男が見つけおった。いや男ではないか…新たな存在」
②「まさか…魔法老…新たな存在とは…ドイス」
魔法老はハークに背を向け、万年樹で出来た杖の頭を擦る。
魔法老「いかんいかん。言い過ぎたわ。大賢者ハークよ。運命じゃ…最早誰にも止められん」
魔法老は光りに包まれ、消えていく。
②「魔法老!お待ち下され!魔法老!」
ハークの声は虚しく響き、魔法老の姿は消える。
②「新たな存在…」
ハークは落ちている杖を拾うと強く握りしめる。杖からは魔法界の光にも負けないくらい強い光りが放たれている。
>> 36
【番外竜王編①】
竜王は竜化させた右腕を振る。周りにいた連合兵数人は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
⑬竜王「ふう」
地面に倒れている無数の兵士たちは皆、鎧が裂かれ、竜王の爪を受けた後が残っている。
「竜王様!御無事ですか!」
竜人兵たちが竜王の所に走って来た。
⑬「無事だ。で、どうだ。連合軍の様子は」
竜人兵たちは無惨な姿になっている連合兵たちを見て、血塗れの竜王に一瞬、恐怖を感じたが、竜王の優しい目を見て、恐怖は消えた。
「はっ!連合軍はライジング(首都)の方に後退しております!ライジング星には連合軍の兵力もさほどいないことが確認されています」
⑬「そうか」
「連合軍もまさか攻撃を受けるとは思っていなかったようです。守りも薄いですし、明日までには決着がつきます」
⑬「ライジング星の住民の生き残りの方はどうだ?」
「はっ!生き残りの巨人族は保護しておりますが、やはり被害は大きいようです。ライジング星の住民は10分の1以下のようです。ほとんど連合軍に…」
>> 37
【番外竜王編②】
「竜王様!報告です!」
別の兵士が走ってくる。
「どうした!」
「はっ!報告であります!首都に逃げこんだ連合軍を完全に包囲しました!空・陸ともに完全包囲です!どういたしましょうか、攻撃をしかけますか?」
⑬「まて…交渉する。首都には巨人族の生き残りも多く監禁されている。攻撃をしかけてしまっては被害はまた大きくなるだろう。連合軍側の指揮官を出すように言え、私が直接話そう」
「はっ!了解であります!」
完全包囲された連合軍はなすすべなく、いつくるか分からんない竜族の攻撃にそなえ少ない兵力を整えていた。
指揮官「くそっ竜族がなぜ巨人族を助けるんだ!不意打ちだ!こんな兵力では相手にならん」
頭を抱える。
連合兵「失礼します。指揮官殿。竜族側が交渉したいそうです」
指揮官「内容は!」
指揮官は顔を上げ、神の助けかと言わんばかりの顔で伝令兵を見る。
「はっ!内容はわかりませんが連絡用の通信機を竜族側から受けとりました!いかがいたしましょう?」
兵士二人が伝令兵に続き指揮官がいる部屋に入ってくる。どうやら二人係りで持っている機械が通信機のようだ。
>> 38
【番外竜王編③】
「ここに置いていいですか?」
指揮官「待て!お前ら!その通信機調べただろうな!もし爆弾でも入ってたら!(汗)」
「ご安心を…確りと確かめましたが、爆発物はなにもありませんでした」
指揮官「そっそうか…ならいい置け」
二人の兵士はかけ声をかけて通信機を置く。
「お前たちはもういいぞ」
「はっ!!」
二人の兵士は敬礼すると機敏な動きで、部屋から出ていく。
指揮官「これで命は助かるのか?私は死にたくないのだ!」
指揮官は兵士の足にしがみつきながら言う。
「はっ(汗)竜族は誇り高い種族です。無抵抗の相手を殺すようなことはしません。」
指揮官「なら!降伏だ!降伏せよ!」
「はっ(汗)」
兵士は竜族からの通信機のスイッチを入れる。
「ぞうぞ」
兵士は通信機についたマイクを差し出す。
指揮官「うむ。竜族方聞こえますか?こちら連合軍の代表です!」
『ガッ…聞こえる…私は竜族の長、竜王だ!交渉の条件は一つ!降伏せよ!さもなければ…どうなるかは分かるだろう』
指揮官「えぇ。しかし(汗)降伏すれば命の保証は…」
『ガッ…命は助けてやる。だが、戦艦、武器は全て破壊するがな』
>> 39
【番外竜王編④】
指揮官「戦艦などどうでもいい。命さえ助かれば…」
指揮官「わかりました。その条件を飲みます。我ら連合軍ウマンダ星駐在部隊は降伏する」
指揮官はそう言うと竜族からの返事を待つ。だが、返事は一向に返ってこない。そのかわりに後ろから聞きなれぬ声が聞こえてきた。
「お前はそれでも軍人か?」
指揮官「う!誰だ!」
指揮官は慌てて、後ろを振り向く。
「指揮…官…殿…ぐっ…」
後ろにいた兵士が腹部から血を流し、倒れている。
「ふん。まだ生きてるのか」
倒れている兵士の横には槍のような杖を持った魔法使いが立っている。魔法使いはその杖についた鋭い刃で兵士に止めをさすと指揮官の方をみる。
指揮官「貴様!何者だ!」
指揮官は素早く腰の短銃をとる。が、魔法使いの方が早く魔法を放った。
指揮官「ぐっ…私がこんな星で死ぬなんて…くそっ…」
ドテ
指揮官は黒い炎に殺られ、力なく倒れた。
「ふっ…」
魔法使いは深くかぶっていたフードを外し、通信機のマイクに向かう。
>> 40
【番外竜王編⑤】
「竜王聞こえるか!」
『人が変わったな。降伏するのか?』
「降伏?するわけないだろうが…俺が誰だか分かるか?貴様に右腕を奪われた魔法使いだ!貴様は俺が殺す」
『そうか…あの魔法使いか…私と対峙する気なら死を覚悟しろよ。少年』
キキ「死ぬのは貴様だ!」
キキは無くなった右腕に手を当てる。
キキ「絶対に殺す…」
通信機に杖を向ける。
ドカァァン
通信機は跡形も無く吹き飛ぶ。
『ガッアアアア…ガッ』
⑬「ふん。通信が途絶えたか…全軍に連絡せよ。総攻撃をしかけるぞ」
竜人兵「了解」
『全軍進めぇ!!』
待機していた竜族部隊は合図と共に一斉に動く。
上空の竜人艦隊からの凄まじい爆撃により、連合軍の重機(固定銃機、戦車、艦隊等)を破壊されていく。
竜人「進めぇ!」
ドラー「我ら竜部隊も行くぞ!」
連合兵「撃てぇ!」
ババババババ
連合兵たちは空を巧みに飛び回る竜族を打ち落とそうとするが、銃弾は当たらない。
>> 41
【番外竜王編⑥】
「ぐわぁぁ」
「ぎゃあぁぁ」
連合兵たちは竜の炎に飲み込まれていく。
「隊長!もはや!これまでです!我々の火力では勝目はありません!」
連合兵たちは向かってくる無数の竜に発泡するが竜の堅い鱗は傷すらつかない。
「くそ…なんたる脅威(竜)」
「隊長!上を!竜が!うわぁぁ!」
ゴオオオオ
「ぐぁぁ!!」
ドラー「ガアァァ!!」
連合軍は殆どの兵士が戦闘不能になってしまい。指揮系統も殲滅され、生き残っている兵士たちも次々に武器を捨て降伏していく。
竜人「竜隊長殿!」
一人の竜人が空を自在に飛び回っている一際大きい竜に話かける。
ドラー「竜隊長はやめろと言ってるだろう。ドラーでいいぞ」
竜人「はっ…すいません。ドラーさん。敵は既に戦闘能力はゼロです。後は我ら竜人にお任せを」
ドラー「分かった。竜部隊退却するぞ」
ドラーは凄まじい雄叫びを上げる。
竜たちはドラーを先頭に戦線から離脱していく。
「竜王様!連合軍側が完全に降伏しました!今捕虜の兵士を艦に護送中です!」
⑬「そうか。やけにあっさり勝てたな。魔法使いは出てきたか?」
「はっ!魔法使いは見ておりません!」
>> 42
【番外竜王編⑦】
⑬「なら…兵たちに魔法使いの少年を探すように伝えろ。奴は危険だ。」
「はっ!了解しました!」
兵士は走っていく。
⑬「しかし…」
竜王は椅子に座り、丸机に置かれたブドウのような果物を手に取り口にふくむ。
竜王が今いる所は簡単に作られたテント状の部屋だが、それなりに風格がある。
⑬「少年よ…探す手間が省けたな」
横目で後ろを見る。後ろには槍のような杖を持った魔法使い(キキ)が杖の先端の鋭い刃を背中に当てている。
キキ「なぜ…逃げない」
⑬「…」
キキ「くっ馬鹿にしやがって!死ね!」
杖の刃をつく。だが、刃は竜王を捉えず、宙を貫く。
キキ「くっ…くそ」
キキは後ろを振り返り、部屋の隅にいる竜王に杖を向ける。
キキ「一瞬で移動するなんて…化物め!」
⑬「少年よ…私は手加減はせんぞ」
両手を広げ、雄叫びを上げる。雄叫びは何重に響き、凄まじい超音波となり辺りの物を破壊していく。
キキ「な…ぐはぁ」
キキはもちろんテントごと吹き飛ばされ、竜王の周りの物全てが吹き飛ばされていく。
>> 43
【番外竜王編⑧】
キキ「ぐっ…」
勢いよく地面に叩きつけられながらも直ぐに立ち上がる。
⑬「まだやるか?」
竜王は背中から竜の翼を出し、空高く飛び上がる。
キキ「なめるな!」
杖を飛び上がる竜王に向け、呪文を唱える。
ガタガタガタガタ
キキ「死ねぇ~!」
杖からは何もかも黒く染めるような黒い光が放たれている。
⑬「可哀想な少年だ…その歳で闇に呑まれるとは」
ゴオオォォォォ
杖から放たれた凄まじい黒き炎は渦をなし、生き物のように竜王を襲う。
⑬「む…」
闇の炎から巧みに空を飛び逃げるが、炎は竜王のスピードについてくる。
キキ「ぎゃはは!逃がさねぇ!死ねぇ!」
闇の炎は空さえも闇に染め、辺りが闇に覆われていく。
⑬「醜いな…」
竜王は後ろから迫ってくる炎よりもキキに目をやっていた。キキの杖は黒く侵食され、腕も黒く染まろうとしている。
⑬「少年!止めろ!飲み込まれるぞ!半端な力では闇をコントロールすることなど出来ん!」
キキ「半端!半端だと!俺様は完璧だ!力もこの通り自在に…」
杖からは更に凄まじい闇の光りが放たれ、炎も巨大になっていく。
>> 45
【番外マリーン編①】
「うっ、う~ん…」
『気が付いたか、マリーンよ!』
目を覚ますと、辺り一面光に包まれた世界にいた。
天を見ると虹色のオーロラが風に吹かれたカーテンのように靡(なび)いている。
そして、マリーンを囲むように三人の人の影みたいな形をした陽炎が揺らいでいた。
『もう大丈夫のようだな。』
しわがれた声がマリーンの頭の中に鳴り響く。
「あなた様は、魔法老様!有り難う御座います。」
『儂に礼などいらぬ。雷の大賢者マリーンよ!その傍で待っておる風の大賢者ハークが、傷ついたお主を連れてきたのだ。』
「…はっ!シーラ星は…エルフの民は…」
『案ずるでない、一時的に戦いは終わったようだ…だが、儂が関与する事ではない。それよりか、そなたの身を案ずるがよい。』
「……。」
『そなたは、余りにも魔法力を使い過ぎた…エルフの寿命を燃やして魔法力にかえたのだ。』
>> 46
【番外マリーン編②】
「…分かっております。それがどういう事なのかを…」
マリーンのグリーン色した目に力がこもる。
『そうか、ならば何も言うまい…』
「魔法老、有り難う御座いました。私は、何の悔いもありません。」
そう言うと深々と声が聞こえる方に頭を下げ、ハークがいる方へ歩みよった。
「ハーク殿すまない、私をここまで運んでくれて。」
「同じ大賢者として、当然の事をしたまでじゃよ。」
ちょっと照れたのか、蓄えた白い髭を触ると杖で魔法陣を描いた。
ピカーッ
「さぁ、元の世界に戻るかの。」
「ええ…」
体と魔力は全回復したものの、大きな代償として、マリーンの寿命はエルフのものではなく普通の人間の寿命へとかわっていた…
そう25歳の人間の寿命へと…
(凱、あなたに会いたい…)
魔法陣の光に二人は包まれると、魔法界から姿を消していた。
>> 47
黒の惑星に無事着陸したシャドーmkⅢ。凱たちは警戒しながら、船の外に出る。
⑤「やけにあっさり、入らせてくれたなぁ」
セロは辺りを見渡す。辺りは一面枯れた大地が広がっていて、まさに死の惑星だ。
⑦「あぁ」
カリーナ「でもさ、敵はんが何もしてけえへんとなると探すのに手間がかかるんちゃうの?」
ザック「おいおい。船で飛んで探せば早いじゃねぇか!」
ローナ「馬鹿ね。船で探すのはリスクが高すぎよ」
⑪「そうだよ。それにここにはそれなりに腕(力)に自信がある人が多いんだし…陸上での闘いの方が有利だよ」
ザック「うるさいな!ちっこい二人が!」
ローナ「アンタは頭の中がちっこいけどね」
ザック「てぇ!てめぇ!」
カリーナ「やめ!喧嘩したあかんってば!」
ヤン「ガハハ!」
⑤「凱。これからどうする?探すにしてもこの惑星は広過ぎだよ?」
⑦「まぁ心配するな。嫌でも敵から近づいてくるさ。それまではひたすら前に進むだけだ」
凱はそう言うと砂ぽい空気が漂う荒野を歩いて行く。
⑤「なんだよそれ…」
シャドーmkⅢは勝手に飛んで行く。シャドーが操縦しているんだろう。他の皆も凱に続き荒野を歩いていく。
>> 48
⑤「ゴホ…」
⑦「何むせてんだぁ?セロ?」
一同は荒野の中を歩いていく。周りには背丈の低い草以外には何も見当たらない。
⑤「皆よく平気でいられるなぁ…こんな砂埃の中…くそ目に」
荒野は強い風に煽られ、砂を巻き上げている。
ローナ「人間ってひ弱よね」
カリーナ「うちもこんな砂埃には耐えれれへん」
カリーナは上着を口に当てている。
⑦「そうか?俺は平気だけどな」
ヤン「ガハハハ!」
ザック「俺様もこんな砂埃平気だぜ」
⑦「う!待て!皆!止まれ!」
先頭を行く凱が突然止まり、剣を抜く。
カリーナ「なんや?敵さんのおでましか!」
⑤「どうせ出てくるならもっと早く出てきてくれよな」
砂埃が目に入ったのかセロは目を擦りながら言う。
「ようこそ。黒の惑星に」
凱たちの前方に数人の銀狼が立っている。彼らは闘う気がないのか武器は何一つ持っていない。
⑦「お前らは宇宙海賊だな?」
「そうです。私は宇宙海賊副船長のミスチルと言います」
ローナ「貴方たちはどう言うつもりで私たちの前に出て来たのかしら?」
ローナは目でカリーナ・ザック・ヤンに合図する。
>> 49
カリーナたち三人は素早く動き、連携のとれた動きで銀狼たちに攻撃をしかける。
ミスチル「おやおや」
副船長と名乗る銀狼は手を後ろに回し、組んだまま動かない。周りにいる数人の銀狼たちは隠し持っていた小型レーザー銃を取り出す。
ザック「くらいな!」
「ぐはぁ」
ザックは腕を奇怪な銃へと変形させ銀狼の一人を打ち抜く。
「撃て!」
ヤン「ガハハハ!何かしたか!」
「ひぃ」
ヤンは銀狼たちに撃たれるが巨人族の強靭な肉体のお陰で、平気な顔をしている。
ヤン「次はこっちだな!」
「ぐわぁぁ」
人間族の身体ほどある腕で殴り、銀狼を吹き飛ばす。
カリーナ「はっ!やぁ!」
「ぐげぇ」
カリーナは見事な足技で銀狼の銃を蹴り落とし、顔面を蹴る。
ミスチル「素晴らしい…」
数秒で、ミスチルの周りにいた銀狼たちはやられカリーナたちはミスチルの周りを囲う。
ザック「動くと殺す」
銃に変形した腕をミスチルに向け、冷酷な目で睨みつける。
ローナ「さぁ。話してもらおうかしら…死にたくなかったらね」
⑤「大した奴らだぁ…」
⑪「凄い…」
セロとリオは一瞬の出来事に呆気にとられている。
>> 50
⑦「お前らは何の目的でセレナたちを拐った?」
ミスチル「ふふ」
ザック「どうやら死にたいようだ」
ローナ「止めなさい。ザック。殺すなら情報を聞き出してからよ」
ザック「ちぃ」
ミスチル「おやおや」
ミスチルは凱たちの反応を見て、楽しんでいるようなだ。顔はにやけている。
⑦「お前!舐めてるのか!」
凱が斬りかかろうとしたのでカリーナは慌てて止める。
カリーナ「止めぇ!男どもは感情的なんやらから…まったく」
ミスチル「…」
⑤「黙ってないで何か言ったらどうなの?ミスチルって言ったっけか?」
セロは銃を抜き、足に向ける。
ミスチル「…」
⑤「拷問するしかないかなぁ。足から撃ち抜くよ」
カチャ
⑪「セロ!」
セロが撃とうとした時、ミスチルはゆっくり口を開く。
ミスチル「待った…」
⑤「喋る気になった?」
ミスチル「待った方がいい…私を傷つけてては貴方たちのお仲間は助からない」
⑦「お前…俺たちを脅す気か!この…」
カリーナ「凱!あかんってば!」
ミスチル「簡単なゲームです」
ローナ「?」
ミスチル「貴方たちを呼び出した理由ですよ」
⑤「ゲームだって?」
>> 51
ミスチル「そうです。キャプテン・ドグロ様は貴方たちとゲームをされたいと申しております」
深々とお辞儀をし、綺麗にたたまれた一枚の紙を凱に渡す。
⑦「なんだ…これ」
凱は黄ばんだ紙を広げ、内容を読む。
【セレナ姫の仲間どもへ
姫を助けたければ俺とゲームをしようじゃないか、ゲームの内容は簡単だ。俺の所まで来ればお前たちの勝ち、姫と竜人は返そう。だが、ここに来るまでに色々な障害を用意してあるから命の保証は出来ないぞ。死にたくなかったらゲームをしなければいい。しかし、その場合は姫の命はないだろう。そこにいるミスチルに案内してもらえ…じゃあな】
凱は読み終わると紙を丸め、ミスチルに投げつける。
⑦「お前のボスに言え!ゲームをしなくても俺はお前の所に行くってな!そして、殺す!それと案内はいらねぇ…ドグロぐらい直ぐ見つけられるぜ」
ミスチル「そうですか。ドグロ様に会うにはこの道を行かねばならないのに残念です」
そう言った瞬間、ミスチルの姿が消える。
ザック「なっ!」
>> 52
ザックはミスチルが立っていた場所に空いた穴を覗き込む。
ザック「アイツ…この穴に落ちやがった」
穴の底が見えず、相当深そうである。
ローナ「ミスチルって奴…どうりでここから動かなかったわけね。この下にこんな穴があるなんて油断したわ。組んでいた手の中にリモコンでも隠してたんでしょうね」
⑤「一体…なんなんだよ…ドグロって…」
セロは凱が投げ捨てた紙を拾い見ている。
カリーナ「ほんま…何考えとんか…わからんやっちゃ」
手紙を見ているセロをカリーナとリオが覗き込んでいる。
⑦「くそ…腹立つぜ」
ローナ「そうかりかりしないで…今はこの穴の中に入るか決めないと…ミスチルの最後の言葉からはこの穴の先にドグロがいると解釈出来るけど。穴に落ちるのはお勧め出来ないわ。何があるかわからないし…危険過ぎ」
ローナがそう言っている内に凱が穴に飛び込む。
⑦「いくぜぇ!!」
ローナ「ちょ…」
カリーナ「やほ~!姫はん!待っときいや!」
続いて、カリーナが飛び込む。
ローナ「貴方たち…ちょ…待ちなさい!」
⑪「やほ~」
ザック「何があろうと殺すだけ」
次にリオ・ザックが次々飛び込んでいく。
>> 53
⑤「確かに危険度は高いけど…今はこれしか道がないよ。それにここは砂埃酷いしね」
セロは目を擦りながら、穴に飛び込んでいった。
ローナ「まったく…あらヤンは行かないのね」
ヤン「行きてぇが…穴が小さ過ぎる。入らねぇよ。ガハハハ!違う道でも探すぜ」
そう言うとヤンは荒野を歩いて行った。
ローナ「ほんと馬鹿ばっか…」
当てもないのに荒野を進んで行くヤンの後ろ姿を見ていう。
ローナ「はぁ…仕方ない」
ローナは穴の中に飛び込む。
ローナ「きゃあぁぁ~!」
穴の中は最初のうちは垂直だったが、徐々に角度がついてきて、滑り台のようになってくる。右に左にと曲がる穴をローナは滑っていく。数分たったころだろうか、光りが見えてきた。
ローナ「出口ね…わぁぁあ!」
ローナは勢いよく穴から出る。入口にいたセロの上に乗っかる。
⑤「ぐげぇ!」
ローナ「あら…ごめんなさいね」
下敷きになったセロの上からどくとローナは辺りを見渡す。
⑤「痛い…うぅ」
天井や壁は岩で出来ており、人工的に作られた空間のようだ。家数件分は入る広さで、前方には石造りの扉が見てとれる。そして、扉の前には二人の銀狼が立っている。
>> 54
二人の銀狼のうちの一人が話し始める。
ミスチル「皆さん。揃いましたか?今からゲームの始まりです」
⑦「ゲームかなんだか知らねぇが!通させてもらうぜ!」
凱の身体がオーラに包まれていく。ガイブレイドを使う前兆だ。
ミスチル「上をご覧下さい」
⑦「う!?」
ローナ「アレがキャプテン・ドグロね」
岩の天井から巨大スクリーンが現れ、キャプテン・ドグロが映し出されている。その後ろには縛られているセレナが見てとれる。
⑱「ゲーム開始だ!この俺様は7の部屋にいる。お前らがいる部屋は1の部屋だ。」
⑦「ちっ…」
凱はセレナの姿を目のあたりにして、下手に動けないことを認識したようだ。ガイブレイドを使うのを止めている。
⑱「俺様の部屋に来るには…俺様が用意した刺客と戦って勝ち抜いて貰うぜ。以上だ」
ローナ「どうやら…親玉さんはバトルマニアのようね」
ミスチル「えぇ。よく分かりましたねぇ」
スクリーンの映像は消える。
ミスチル「各部屋ごとにいる刺客を倒すと扉が開くシステムですのであしからず。あとですね。扉は魔法石で出来ておりますのでどんな衝撃を加えても潰すことはできないかと」
>> 55
カリーナ「ほんま…ふざけた奴らやぁ!でも…姫さんの命は奴らの手のうちやし…ここは大人しく刺客とやらを倒して進むんが一番なんかなぁ」
ローナ「そうね。それが一番いいと思うわ」
⑦「くぅ~気にくわねぇ。だが、仕方ねぇぜ」
凱は剣を鞘に戻し、ミスチルの指示を待つ。
ザック「くそめんどくせぇな」
⑪「ほんとだね」
⑤「とにかく今はあの一人目の刺客を倒すことだけ考えるか…」
ミスチルの横にいる第1の刺客と思われる銀狼はすらっとした引き締まった身体つきで、武器は何一つ持っていない。
ミスチル「この横にいるのは宇宙海賊1の拳法の使い手です。名はワイパー…」
ワイパー「しゃ!誰でもいいぜ!かかってこい!」
ミスチル「ぞうぞ。武器・魔法なんでもありです。もちろん殺しても…複数で闘っても問題ありません。ですが命を失う覚悟で挑んで下さい」
ワイパー「はいや!」
ワイパーを地面を蹴る。地面は亀裂が入り、砕ける。
⑤「なっ…」
カリーナ「格闘家ならうちが闘うわ。助けはいらへんからな」
カリーナはそう言うと前に出て、ワイパーと向かい合う。
⑪「大丈夫なの…あのお姉ちゃん」
⑦「大丈夫だ。アイツは強いぜ」
>> 56
ワイパー「何だ女が俺の相手か!?笑わせる。」
両手を広げはぁと溜め息をつくと、カリーナに向け人差し指を突き出した。
「そこの女、1分でお前を倒すと宣言しよう。」
ニヤッと左の口角が上がる。
カリーナ「……。」
「死ね!」
ワイパーは地面を蹴り土煙をあげ素早くカリーナの鳩尾(みぞおち)に右肘を打ち込んだ。
ザシュ
ワイパー「んっ!?手応えがない。」
カリーナ「どこ見て打っとんのや。それは、うちの残像や。」
尻尾をパタパタと揺らしている。
ワイパー「くっ、だが早いだけでは俺には勝てんぞ。」
一呼吸おき構えを取り直した。
カリーナ「うちも、ちょっと本気出していいやろか。後、30秒残っとるし。」
はぁーっ!と息を吸うと両拳にオーラが溜まりだす。
>> 57
カリーナ「気を溜めたオーラナックル喰らいな。ほな行くで!おっちゃん。」
ワイパー「おっちゃんだと、俺は二十後半だ!」
ザシュ
ワイパーの前にいきなり現れるとパアンと両手を鼻先で鳴らした。
「うっ」
突然の事で一瞬目を瞑った、その時を狙いカリーナは頭を抱え顔面に左膝蹴りを喰らわせた。
「ぐげっ」
そしてそのまま、気を溜めた右手を思いっきり振りかぶりワイパーの左わき腹を貫いた。
「がはっ…」
ズン
ワイパーは膝まづいた。
ドガガガガガガガガガガガガッ
手を休めずカリーナは、ワイパーに高速の蹴りを何発も叩き込む。
カリーナ「速射連脚!!」
ワイパーは数メートル後ろに吹き飛ばされた。
「オッサン、1分経ったで。」
⑪「…。」
⑦「なっリオ、敵でなくて良かったろ!」
リオはコクリと頷いた。
>> 59
部屋に入ると、薄暗くて相手がよく見えない。
⑤「何だってんだ!この部屋は…。」
ミスチル「第二の部屋。この部屋のクエスに力はありません。然し、相手をするとその力が分かるでしょう。」
「!?」
皆は目を凝らし、ようやく1人の影が見えてきた。
クエスは皆にお辞儀をした。
クエス「そこの貴方たち我にひれ伏すでしょう。」
パチン
指を鳴らすと姿が消えた…
ザック「何処へ消えたっ。」
ズキュン ズキュン ズキュン ズキュン ズキュン ズキュン
空中が光ると上から雨霰の様に弾が降り注ぐ。
⑦「危ねぇ!」
カリーナ「おっと。」
凱はリオをカリーナはローナを抱えて弾を避けた。
ブシュー
ザック「くっ速い…」背中のブースターを点火しよける。
⑤「…。」
セロは新型の銃を素早く抜き前転してクエスの方に構える。
⑤「コイツは銃を使う者として戦わせてくれ。」
クエス「ハッ!いいでしょう。我が二丁拳銃の餌食になるがよい。」
ズキュン ズキュン ズキュン
ズキュン ズキュン ズキュン
クエスが撃つ度に部屋が光る。
カチャカチャ ガシャン
セロは自分の銃を素早く改造すると銃口をクエスに向けた。
>> 60
クエス「さぁ!死になさい!はっはは!」
クエスの閃光弾銃が嵐のように火を吹く。
⑦「っ…」
ザック「これじゃ俺たちもヤバイぜ」
クエスの弾丸は八方から飛んでくる。
ローナ「皆私の後ろに!小人族の精霊よ!我らを守られよ!」
そう言うと半透明の半円状のバリアーがローナを中心に凱たちを包む。
⑤「あの光り銃厄介だなぁ…うわぁと」
セロは銃弾の嵐の中を紙一重で避けていく。
⑦「この部屋は一面、弾丸をはね返す素材で出来てるようだな。クエスとか言う奴の弾丸が八方から飛んでくるのはそれのせいだ」
ローナ「そのようね。それにあの閃光銃の光はこの暗闇の部屋で目を慣れさせないようにするためのようね」
ミスチル「その通りです。流石…観察力も素晴らしい」
ローナのバイアーの中に一緒にいるミスチルが言う。
ザック「なっ!なんでお前もいるんだ!」
ミスチル「おやおや、私も外にいては危険ですので…お世話になります。それに案内人の私に死なれては貴方たちもお困りになられるはずです」
ローナ「呆れるわ…貴方敵の自覚あるの」
ミスチル「そう言わずに…今は二人の闘いを見守りましょう」
⑪「だね」
>> 61
クエス「どうしました!逃げるのに必死ですか!ほらほら!」
クエスの弾丸は八方からセロを襲う。
⑤「ちっ!」
左、右、後ろ、前へと飛び、ぎりぎりながらも弾丸を避けていく。
クエス「なかなか運動神経がよいようですね!だが!何時まで避けてられますかな!」
弾丸は止むことなくセロを襲う。
⑪「ヤバイよ!セロ!」
カリーナ「そや!防戦一方やないか!そのうちやられてまうで!」
⑦「しっかりやれ!セロ!」
バリアーの中からセロへの野次が飛ぶ。
⑤「ったく。見ている奴は楽でいいよな」
頭をかきながら、見えむ敵を捉えようと必死に探す。
クエス「ほらほら!足が止まり出しましたよ!」
弾丸は容赦なくセロを襲い休む間も与えない。
⑤「マジであの光り銃うっとしいなぁ…目がいつまで経っても暗闇になれない」
横に飛び、空中で一回転し着地する。セロは弾丸が飛んできた方へ乱射するが、手応えはない。
⑤「ほんと厄介だよ。跳弾を利用して場所も分からないようにしてるなんてさ」
クエス「お褒め頂いて嬉しいかぎりです!さぁ!どんどんいきますよ!」
>> 62
⑤「暗視スコープでも使ってやがるのかよ!なんで俺の場所が分かるんだ!」
弾丸はセロの頭をかすめる。
クエス「ほっほ!何故でしょうね!」
声で居場所を見つけようと頑張ってはみるものの声は反響し、弾丸と同じく八方から聞こえてくる。
⑤「うっ…この部屋ほんとよく出来てるよ」
無駄に乱射し弾切れになった銃に弾を込め言う。
クエス「特注ですからね!さぁ!更にスピード上げていきますよ!」
ザック「大丈夫なのかよ。アイツは」
⑦「駄目かもしんねぇな…セロ!目で見るんじゃねぇ!心だ心!」
ローナ「鈍いわ。ほんと人間で第六感が鈍感よね。私はクエスの姿がはっきり見えるのに!」
バリアーの中からは思い思いの声が聞こえてくる。
⑤「はぁ…俺はお前らみたいに人間離れしてないの!」
セロは少しでも音するとその方向に乱射するがクエスを捉えることは出来ない。
⑤「はぁはぁ…」
元から体力には乏しいセロは息切れし始める。
クエス「ふふ!そろそろですかな!」
>> 63
⑤「使いたくないんだけどなぁ…高いから」
セロはポケットから高性能小型爆弾を取り出し、高く放り投げる。
⑤「ドカ~ンってね」
ドカァァン!!!
凄まじい爆発により、天井が崩れ落ちていく。
ガラガラガラ
クエス「なっなに!うわぁぁ!」
天井から崩れてくる瓦礫にセロ・クエスは飲み込まれていく。
⑪「セロ!」
⑦「馬鹿何してんだ!セロ!」
ザック「自滅かよ」
ローナ「くっ…」
ローナのバイアーのお陰で、凱たちは崩れてくる瓦礫からは守られるが、セロは瓦礫の下に消えてしまう。
⑦「ローナ!バイアー解除してくれ!」
ローナ「分かったわ!」
ミスチル「おやおや」
部屋は一面瓦礫の山と化している。
⑪「セロ!」
セロが立っていた場所に数m積もった瓦礫をリオは鉄を変形させ作ったアームで退かしていく。
カリーナ「リオちゃん!早よせな!死んでまう!」
⑦「ちくしょ!何もここまでしなくてもいいだろうが!」
凱・カリーナは手で小さな瓦礫を退かしていく。
ローナ「ふ~ん。中々…度胸があるわね」
ザック「ふん」
>> 64
⑦「なんだこれ」
瓦礫を退かしていくと緑色の可愛らしい蛙が出てきた。
⑪「何?」
フシュー
ゴム製の蛙から空気が抜けていく。
ローナ「緊急用衝撃吸収装置ね」
絞んだ蛙の内側から、セロが脱皮するように出てきた。
⑤「ぷは!苦しかった!」
カチ~ン!
凱・リオ・カリーナから拳骨が一斉に飛んでくる。
⑦「無茶しやがって!」
⑪「心配したんだぞ!馬鹿!」
カリーナ「冗談キツイわ!」
⑤「まぁまぁ。そう怒るなよ。勝ったしさぁ」
本人はいかにも暢気そうに言う。もちろん二発三発と拳骨が飛んできた。
⑤「痛たたぁ…これ高かっただけあるよ中々だぁお勧めだよ」
絞んだ蛙形、緊急用衝撃吸収装置を指さしながら言う。
ミスチル「皆さん。扉をご覧下さい」
⑦「おっ」
ゴオオオオ
第3の部屋へと繋がる扉がゆっくりと開いていく。
ミスチル「ぞうぞ」
⑦「次はどんな奴だ!」
一同は第3の部屋へと歩を進める。
>> 65
⑦「さぁ次は誰が闘う?」
ザック「俺がやる」
ミスチル「皆さん。次の相手はグリップと言う…」
ミスチルが第3の部屋の中央で立っている第3の刺客グリップの紹介をしようと意気込んだその時、グリップが地面に叩きつけられる。
グリップ「ぐふ…な」
ザック「死ね」
高速で移動したザックはグリップをハンマーに変形させた右腕で、叩き落とすように振りかぶり、グリップを地面に這いつかせると今度は左腕を機械獣(鋭い牙をもったライオンのようなもの)に変形させる。
グリップ「ひぃぃ」
ザック「…」
機械獣(左腕)
「ギャアァァァ!!」
グリップ「うわぁぁぁ!」
機械獣は食らいつくようにグリップに襲いかかる。
ローナ「悪い癖が出たわね」
カリーナ「こうなったらうちらはやることなくなるで」
第4の部屋の扉がゆっくり開いていく。
ミスチル「うっ…素晴らしい…軽々と」
ザック「次も俺様が殺る…どけ!」
ミスチル「おっと…」
ザックは全身血塗れになっている。そして、ミスチルを突き飛ばすと一人で第4の部屋へと入っていく。
⑦「どうしたんだ。アイツ…」
ローナ「殺人スイッチが入ってしまったのよ」
>> 66
⑦「なんだ…」
凱たちはザックに続き、第4の部屋へと入っていく。
⑤「酷いな…」
だが、部屋にはザックの姿はなく無惨な姿と化した第4の刺客が横たわっているだけだ。第5の部屋へと繋がる扉は既に開いている。
ミスチル「おやおや…もう終わりましたか…では皆さん次に進みましょうか」
カリーナ「ほら。うちらはすることないやろ」
⑤「確かに…」
ミスチル「そうですかね」
ローナ「何?ザックが負けるとでも貴方は思ってるのかしら?ザックは頭はアレだけど強いわよ」
ミスチル「確かにお強い方です。ザック殿は…しかし次の部屋ではザック殿の力は無に等しい…あの部屋の刺客に手を出そうものなら…こうなります」
ミスチルは第5の部屋を指さす。
ローナ「なっ…なんてこと」
ミスチルが指さす場所にはザックが力なく倒れ込んでいるではないか、凱たちは慌てて、第5の部屋へ入っていく。
ローナ「ザック!」
カリーナ「どないしたん!」
ザック「…」
『心配するでない…殺してはおらん』
⑦「うっ!お前がやったのか!」
部屋の中央には第5の刺客と思われる魔法使いが立っている。
>> 67
「お前たちは考えなければいかない」
老人の魔法使いは灰色のマントを身につけ、地面にも届きそうな長い髭、巨大な水晶がついた長い杖を持っている。雰囲気は何処かハークに似ている。
⑦「なにを言ってんだ!うっ!動かねぇ…」
凱は剣を抜こうとするが身体が動かない。
「考えよ…誰が己と闘うか…」
魔法使いからは凄まじい魔力を感じる。
⑤「なんて…くっ魔力だ」
ローナ「あ…貴方様は大地の大賢者オジオン殿…」
カリーナ「大賢者やって?」
⑪「大地の大賢者ってあの有名な…?」
オジオン「いかにも儂は大地の大賢者と呼ばれておる者だ」
自分の顔より大きい水晶を軽々と持っているオジオンは歳のわりに力が強いようだ。
⑦「大賢者ともあろう者が悪党に手を貸すなんてよ」
凱は縛りの魔法から逃れようと必死に身体を動かしているが、無駄な抵抗という奴で、魔法からは逃れられずにいる。
オジオン「儂はこの世の全ての出来事を把握しておる。儂は知そのものだ。悪に加担するような真似はせん」
ローナ「宇宙海賊は悪ではないと言われるのですか?オジオン殿?」
オジオン「…」
>> 68
オジオン「今はそんなことより…姫を助けることだけを考えよ」
オジオン「凱・セロ・リオ・カリーナ・ローナ・ザックお前たちのことは全て知っておる。小さい時から見ておった…お主のこともなミスチルよ」
ミスチル「…」
⑦「!?」
ローナ「大地の大賢者は…この世界の人々のこと見守っておられる存在…言わば私たちにとっては神のような人よ。それにオジオンは自然そのもの…オジオンが死ねば自然も死に絶えると言われているわ」
⑤「そんなに凄い人なの」
オジオン「儂はこんな周りくどいことは好きではないが…ドグロの意思を尊重しておるのだ。今からお前たちを試させて貰うぞ。」
オジオンは凱を指さす。
⑦「なっなんだよ!」
オジオン「姫を助けたい気持は強いか…凱よ」
⑦「そりゃ!助けてぇ!」
オジオン「なら…己と闘って勝ってみよ」
凱の身体は光りに包まれ消える。
⑤「なっ!凱!」
ローナ「心配しないで…試しの義よ」
⑦「うっ…何処だ…ここ」
凱はオジオンが作り出した空間にいた。見渡すがきり、白の世界。
>> 69
『試しの義をうけるか凱よ』
地の底から響くようにオジオンの声が聞こえてきた。
⑦「試しの義だと!」
凱は剣を抜き、構える。
『そうだ。この義は本来、賢者となるときにふさわしいか試す時に行うものだが…今はお前を試すのにちょうどよい』
⑦「…」
『姫を助けたいという意思が強ければ己と言えど打ち勝つことができよう。だが、逆に弱ければこの空間に飲み込まれるだろう』
凱「そう言うことだぜ」
⑦「なっ…俺」
凱の目の前に凱とそっくりな人間が現れ、凱と同じ構えで、剣を構える。
『言っておくが…闘いと言うものは力だけが勝敗を決めるのではないぞ…凱よく覚えておけ』
凱「さぁ…始めようぜ…俺」
⑦「くっ…」
偽凱が凱に斬りかかる。動きは凱そのものだ。
ガキーン
剣と剣か噛み合い鈍い音がなる。同じ剣に同じ人間がぶっかり合う。
凱「姫がそんなに大事か?お前は孤独が友達だっただろうが!忘れたか!なぁ!そうだろ俺!」
⑦「お前…くっく」
力は互角。
凱「セレナなんぞどうでもいいだろ。俺たちには関係ない。あっそうだ。いっそ売り飛ばして賞金貰うか!」
⑦「くそ…」
ガガガガガガ
>> 72
凱の額から血が滴り落ちる。
ズズズ
⑦「そうか…分かったぜ…」
ゆっくりと立ち上がった。
偽凱「何が分かったんだよ!」
⑦「これが答えだ!」
そう言うと自分自身に黒魔剣を腹に刺した。
⑦「俺様は、闇に対する気持ちが弱く心のどっかに迷いがあった。」
「ごふっ!信念を貫く。姫を守る。ドイスを倒しこの宇宙を闇から救う。そして、己自身に勝つ!!全てを受け入れるぜ…」
ギュッと拳を握り締めながら、凱はそのまま地面に倒れ込んだ。
フッ
偽凱はいつの間にか消えていた。
『合格じゃ。』
凱は光に包まれると、元の部屋に戻ってきた。
オリジン「皆よ!よく聞くのじゃ。闇と光は表裏一体、人の心にも光があるから闇が出来、闇があるから光を求める。」
「人の心は必ずしも善ばかりじゃないのじゃ。全てを受け入れ、それに負けない心、信念を持ち打ち勝つ事が大事なのじゃよ!」
大地の大賢者は大きな水晶が付いた杖を凱に向けると回復の呪文を唱えた。
>> 73
⑦「うっ…体力が戻ったぜ」
オジオン「儂からの課題は見事合格じゃ…先に進むがよい」
オジオンは第6の部屋へと続く扉を指さす。
ローナ「大賢者オジオン殿…一つ聞いても宜しいですか?」
オジオン「ローナよ…お前の聞きたいことは分かっておる」
ローナ「それでは…答えをお教え下さいませんか」
オジオン「儂は世界の均衡を守るためにいる存在だ…儂自ら均衡を崩すような真似はせん。そして…今世界は変わろうとしておるのだ…だが、決していい方へ変わろうとはしておらん」
ローナ「世界の均衡が…」
先を言おうとするローナをオジオンが止める。
オジオン「ローナよ…儂に言葉は必要ではない。世界の均衡が崩れた時に何が起こるか…その質問に答えられるものはこの世にはおらんだろう。例え魔法界の魔法老すら答えをおっしゃることは出来まい。しかし、均衡が崩れれば人は人でなくなり…魔法はこの世界から消え…種族の境すらなくなる…と言われておる。だが、これぐらいではすむまいな」
>> 74
⑤「魔法消える?」
オジオン「魔法は世界を束ねるものだ。魔法は善と悪を区別し、運命をつかさどる。そして、死者の世界・魔法界との境界を保つものだ。魔法がなくなればこれら全てが無となろう」
⑪「錬金術も?無くなちゃうの?」
オジオン「魔法は人の得た力の原点なるものだ…魔法が消えれば錬金術とて例外ではなかろう」
カリーナ「大賢者はん!世界の均衡が崩れる原因って!なんなんや!」
⑤「皆!信じるな!大賢者が言うからって本当とは限らない!俺たちを試してるのかも…代々本物の大賢者っていう証拠もない」
ローナ「この人は本物よ。私の中の精霊たちもそう言っている」
ザック「この人は本物だ…俺を簡単に倒すなんぞ…賢者クラスの魔法使いでも無理だ…大賢者クラスじゃねぇと」
ザックはアンチマジック製合金の身体をゆっくり動かし、立ち上がる。
カリーナ「ザック!大丈夫なんか!」
オジオン「心配するでない…と言ったはずだ。儂はただ眠りの呪文をかけただけじゃ。突然襲ってきよったからの」
ザック「大地の大賢者オジオン様とは知らず、無礼な行為お許しを…」
ザックは深々と頭を下げる。
- << 77 オジオン「かまわん…儂はお前たちが敵とする宇宙海賊側についておるのだ。襲われても仕方あるまい」 ザック「すいません…オジオン様は俺の生まれた村じゃ…神様のように崇められていたってのに…」 ローナ「あら…貴方がそんなに神を崇めてるなんて始めて知ったわ」 ザック「ちっ…」 カリーナ「…」 オジオン「カリーナ」 カリーナ「なんや?…うっ…なんですか?」 オジオン「お前の質問には今はまだ答えられないのだ…均衡を崩す原因…それはドグロに勝ってから言おうとしよう」 ミスチル「では…第6の部屋へ」 第6の部屋へと進んでいく。部屋には刺客の姿はなく。先に入って刺客を探していた凱しかいない。 ⑦「いねぇ…何処にも」 ミスチル「それは仕方ないでしょう…刺客はこの私ですから」 ⑤「!?」 ミスチルは剣を抜き、中央まで歩いていく。今凱たちがいる部屋は天井がドーム状のセレナたちが捕まった部屋だ。 ミスチル「さぁ…どなたが相手になって下さいますか?」 ドーム状の天井は空がはっきり見え、雲に隠れた月が少しだけ顔を出している。 オジオン「さて…儂も拝見させて貰うか」
今日も一日、学校が始まる…。ダルい。私は高校一年生。入学して2週間。クラブには入ってない。友達はまぁまぁいる方かなぁ。でも毎日毎日楽しくナイ。毎日学校で授業も楽しくナイし。先生も真面目。友達も3人いるけど…みんな真面目な子ばっかり…。私も一応真面目っぽくしてるけど、まぁ派手じゃないし大人しい方だし…そんな毎日。 今日も理科ある。最悪キツイなぁ。理科の先生って今入学式の時に来た新任の先生。若い上にちょっと間抜けそう…。ハァ。そんな親父に授業見てもらうのかぁ。 … しんどい。『珠理~!早く行くよ理科室!』 『はいはい…』 理科室に行って、生徒に気に入られそうな爆発実験何かするんでしょ。(キーンコーン)あ…チャイム『早く急ご!珠理!』『はいはい』 理科室に駆け足で入ると皆はもう席に座っていた。先生は試験管を持ちながら、私たちを見ると『早く座りなさい』とゆっくり口調で言った。私たちは席に着くと、先生は試験管を置き皆に言った。『僕は、早間祐菜と言います。これから3年みんなの理科を受け持つことになりました。よろしくお願いします。では、今日は…みんなに面白い実験をやってもらおうと思います』
- << 78 やっぱりね。みんなに気に入られたいんだ…『まず用意する物は…』私は先生の顔をゆっくり上から見てみる。顔はお兄ちゃんタイプで、カッコイイけど見た目が間抜けな感じ(笑)『ねぇ、珠理、先生ってカッコイ良くない??顔、イケメンだょね』『そうか??』(キーンコーン)あ…チャイム!やっと終わったよぉ…。『亜紀教室行こうか』あれ…亜紀??どこ行った…?『先生!あの…亜紀、わからないところがあるから今日の放課後教えてください(*^^*)』『良いよ。今日の放課後ね。』うわぁ、あいつ…(-_-;…。『亜紀、行こう教室』『うん行こっか♪♪』ハァ…こいつ…『あんた何か企んでるよね』『わかちゃった??だって先生凄くカッコイイじゃん💕だから💕』ハァ…(-_-;よく言うよ。今先輩と良いところまで行ってるくせにわざわざ興味もないクラブに入って先輩に放課後告白して…。まぁ亜紀、かなりの面食いだしね。先輩もかなりのイケメンでカッコイイし、まぁしょうがないか…。
>> 75
⑤「魔法消える?」
オジオン「魔法は世界を束ねるものだ。魔法は善と悪を区別し、運命をつかさどる。そして、死者の世界・魔法界との境界を保つも…
オジオン「かまわん…儂はお前たちが敵とする宇宙海賊側についておるのだ。襲われても仕方あるまい」
ザック「すいません…オジオン様は俺の生まれた村じゃ…神様のように崇められていたってのに…」
ローナ「あら…貴方がそんなに神を崇めてるなんて始めて知ったわ」
ザック「ちっ…」
カリーナ「…」
オジオン「カリーナ」
カリーナ「なんや?…うっ…なんですか?」
オジオン「お前の質問には今はまだ答えられないのだ…均衡を崩す原因…それはドグロに勝ってから言おうとしよう」
ミスチル「では…第6の部屋へ」
第6の部屋へと進んでいく。部屋には刺客の姿はなく。先に入って刺客を探していた凱しかいない。
⑦「いねぇ…何処にも」
ミスチル「それは仕方ないでしょう…刺客はこの私ですから」
⑤「!?」
ミスチルは剣を抜き、中央まで歩いていく。今凱たちがいる部屋は天井がドーム状のセレナたちが捕まった部屋だ。
ミスチル「さぁ…どなたが相手になって下さいますか?」
ドーム状の天井は空がはっきり見え、雲に隠れた月が少しだけ顔を出している。
オジオン「さて…儂も拝見させて貰うか」
- << 85 ローナ「私が、相手になるわ。」 金色の髪を靡(なび)かせ前に出る。 ミスチル「いいでしょう。」 鉄仮面を被っている為、下の表情は読み取ることが出来ない。 ⑦「大丈夫なのかよ?あんな、おチビちゃんで。」 カリーナ「アンタみたいな力馬鹿と一緒にせんときや。仮にも、賞金稼ぎ7のメンバーの一人なんやさかい。」 ザック「凱、まあ見てなって!」 ローナとコンビを組んでいるカリーナとザックは、そう言うと観戦モードに入って地べたに座ってしまった。 ⑦「んじゃ、お手並み拝見といきますか。」 ちょっぴり皮肉を込めて言い凱は腕を組んだ。 ⑪「出番がない…」 ⑤「リオ、そう言わず、ローナの戦いを見てみようよ。」 リオの肩をポンっと叩きミスチルの方に目をやった。 ミスチルは右手に剣を左手に虹色の水晶を持っている。
>> 76 今日も一日、学校が始まる…。ダルい。私は高校一年生。入学して2週間。クラブには入ってない。友達はまぁまぁいる方かなぁ。でも毎日毎日楽しくナイ… やっぱりね。みんなに気に入られたいんだ…『まず用意する物は…』私は先生の顔をゆっくり上から見てみる。顔はお兄ちゃんタイプで、カッコイイけど見た目が間抜けな感じ(笑)『ねぇ、珠理、先生ってカッコイ良くない??顔、イケメンだょね』『そうか??』(キーンコーン)あ…チャイム!やっと終わったよぉ…。『亜紀教室行こうか』あれ…亜紀??どこ行った…?『先生!あの…亜紀、わからないところがあるから今日の放課後教えてください(*^^*)』『良いよ。今日の放課後ね。』うわぁ、あいつ…(-_-;…。『亜紀、行こう教室』『うん行こっか♪♪』ハァ…こいつ…『あんた何か企んでるよね』『わかちゃった??だって先生凄くカッコイイじゃん💕だから💕』ハァ…(-_-;よく言うよ。今先輩と良いところまで行ってるくせにわざわざ興味もないクラブに入って先輩に放課後告白して…。まぁ亜紀、かなりの面食いだしね。先輩もかなりのイケメンでカッコイイし、まぁしょうがないか…。
『珠理!!ちょっと待って!』『?何??』『あのさ、先輩が今から、デート行こうって言ってるんだよねぇ…で、先生に行けないって断っといてお願い』と言って走って行ったハァ…何で私が伝達係に…勝手すぎるって…職員室まで来て扉を開ける。『あの~早間先生はいませんか??』『早間先生は理科室にいるよ。』『ありがとうございます』理科室か…一階まで行かないと…面倒くさいなぁ。階段をゆっくり降りて廊下の端の理科室まで行くと扉をそっと開けた。『先生…いますか??』と小さな声で言って覗くと真剣な目で実験に集中していた…間抜けな感じとは一変して本当の大人って感じがした。じっと見ていると急に先生が私を見た。
急に先生がこっちを見たからビックリして私は端にしゃがんで隠れた。先生は気付いてるみたいで私に『かくれんぼ?』と笑って言ってきたので私は頬を赤らめながら立ち上がった。『先生、あの長田さんが来られなくなったそうです』『うん。わかったありがとう』私はそれだけ言って帰ろうとすると先生が『ちょっと待って。ちょっと来てくれる?』と急いで言ってひき止めた。私はトボトボそっちに歩いて行くと先生はビーカーを持って何かを入れている。『これを持ってくれる?』と言ってビーカーを私に渡すと急にビーカーがポンッと音をたてた。『ひゃあっ』先生は笑って『驚いた?』と言って私を見ている。『ちょっと驚かそうと思って(^^)』と恥ずかしそうに言った時の顔が普通の男子の顔の様に見えた。私はその顔にドキッとした。『ごめんね。ひき止めて、さぁもう帰りなさい。』私は黙って顔を赤らめながら教室を出て行った帰り道や家でも先生のことばっかり考えていた。次の日は休みだったけど、先生がどうしても気になって学校まで行った。理科室の扉を開けてそっと覗くと先生が昨日の様に真剣な目でに実験をしていた。
表現力がありますね😊細かい描写が良く出来ていると思います。ただ、残念なことにこの「話つく」の物語のシュシとちょっと違うってところです😂
おしい☝
もし、この続きがあるならスレ立ててしてみると良いと思います。
期待して待ってます。💪
いちファンの「話つく」の凱より
>> 77
オジオン「かまわん…儂はお前たちが敵とする宇宙海賊側についておるのだ。襲われても仕方あるまい」
ザック「すいません…オジオン様は俺の生まれ…
ローナ「私が、相手になるわ。」
金色の髪を靡(なび)かせ前に出る。
ミスチル「いいでしょう。」
鉄仮面を被っている為、下の表情は読み取ることが出来ない。
⑦「大丈夫なのかよ?あんな、おチビちゃんで。」
カリーナ「アンタみたいな力馬鹿と一緒にせんときや。仮にも、賞金稼ぎ7のメンバーの一人なんやさかい。」
ザック「凱、まあ見てなって!」
ローナとコンビを組んでいるカリーナとザックは、そう言うと観戦モードに入って地べたに座ってしまった。
⑦「んじゃ、お手並み拝見といきますか。」
ちょっぴり皮肉を込めて言い凱は腕を組んだ。
⑪「出番がない…」
⑤「リオ、そう言わず、ローナの戦いを見てみようよ。」
リオの肩をポンっと叩きミスチルの方に目をやった。
ミスチルは右手に剣を左手に虹色の水晶を持っている。
>> 86
カリーナ「なんや、あの光りは…」
カリーナとザックは顔を見合わせ真顔になった。
ザック「嫌な予感がする。」
ズズズズズズッ
ミスチル「…。」
水竜巻にもまれながら剣を振ると、空間が裂けた。
⑦「!?」
⑤「空間が斬れてる…」
⑪「一体どうなってるの!?」
ローナ「私の精霊が空間に飲み込まれていく。何なの…」
ミスチル「私に勝てますか?」
ローナ「馬鹿にしないでもらいたいわ!空間を斬ったぐらいで。」
冷たい鉄仮面の下の表情は分からない。
初めてローナは、いつも冷静に分析しクールを通しているが、内心相手の表情や手の内が読めない為、焦っていた。
ミスチル「…。」
ミスチルは再び剣をローナに向かって振り下ろした。
>> 87
ローナ「地の精霊よ!」
咄嗟に精霊を出し、ガードしたローナだったが、ミスチルが放った剣撃は空間をもねじ伏せ、地の精霊は軽々と飲み込まれてしまう。
ミスチル「おっ…よく防ぎましたね。しかし…いつまでも防げるものではありませんよ」
ミスチルの水晶が再び光りを放ち始める。第二波目を放つ気だ。
ローナ「くっ…」
オジオン「一撃目はガードは出来たが、攻撃の度に精霊を失っては魔力が尽きるぞ…助けが必要なのではないか」
⑤「確かに…」
カリーナ「うち助けに入る!ローナは一日で三人(三回)までしか精霊を出せないんや!もう魔力も殆どない」
そうしている間にもミスチルの剣波がローナを襲う。
ローナ「ちっ…なんて」
ローナは既に精霊を失った代償で魔力が尽き、もはや逃げるだけで精一杯だ。危なげに攻撃をかわしていく。
ミスチル「おや…もうバテましたか…流石に高度魔法の精霊召喚をしたにも関わらず、精霊(魔力)ごと時空に引き込まれては魔力も尽きますか」
ミスチルの目に殺気がこもる。止めをさす気だ。
>> 88
ミスチル「うっ…」
ミスチルが剣を振ろうと身体を動かした時、金属の蛇のようなものが素早い動きでミスチルの身体を締めつけていく。
⑪「必殺鉄蛇!」
ミスチル「ぐっ…なんです。これは…可愛い顔をした蛇ですね」
鉄蛇の力は強くミスチルは身動きがとれない。
カリーナ「アンタの水晶頂くよ!」
⑦「おら!くらいな!」
ミスチルの前に突然現れた凱は剣を振る。鉄蛇で身動きがとれないミスチルはまともに攻撃をくらい。吹き飛ばされる。
カリーナ「貰い~!」
その衝撃でミスチルの手からこぼれた水晶にカリーナのハイキックが飛ぶ。水晶は空中で粉々に砕け、ミスチルは地面に叩きつけられる。
⑦「流石に強いぜ…アイツ咄嗟に鉄蛇を切って、剣でガードしやがった」
手応えのなかった自分剣を見ながら言う。
ミスチル「やりますね。楽しくなってきました。私を倒すのには一人では役不足でしたから全員でこられた方がいい」
ミスチルはゆっくりと立ち上がり、剣を構える。リオの鉄蛇は切られており、ミスチルを拘束する力を失っている。
ローナ「私だけでもやれたの」
ザック「そう言うな…ほらよ」
力を失い座り込んでいるローナにザックは手を貸す。
>> 89
ミスチル「さぁ…どうぞ」
かかってこいと言わんばかりに手を動かし言う。
カリーナ「えらい強気やな。御自慢の空間すら斬る剣術も水晶失ったら出来へんくせに!」
⑦「油断するなよ。アイツの余裕は嘘じゃねぇぜ」
ザック「なら…様子見といくか」
両腕が変形していき、奇妙な大型銃のようなものに変わった。
⑤「賛成!」
セロも二丁の銃を構える。
⑪「僕も僕も!必殺鉄鉄砲!」
リオは頭上にビー玉程度の無数の鉄球を投げる。
ミスチル「遠距離攻撃ですか…厄介です」
リオの鉄球が銃弾にも引きをとらない威力でミスチルに向かって飛んでいく。
ミスチル「はっはは!そう闘いとはこうでなくては!」
法則性もなく八方が飛んでくる鉄球を全く無駄のない動きで避けていく。
⑪「くそ!当たらない!」
⑤「俺も手伝う!」
セロの最新型小型レーザー銃【NNN1000】も火を吹くが、ミスチルを捉えることは出来ない。
ミスチル「無駄撃ちはあまりお勧め出来ませんね」
⑤「くそっ…アイツ腹立つな」
⑦「早い…クリスの風の力を得た状態と変わらねぇ…いやそれ以上かも…わくわくしてきたぜ」
⑤「お前なぁ…」
>> 90
ザック「お前らに任してたら日が暮れるぜ!」
⑤「ぐぎゃ」
⑪「うわぁ」
ザックは二人を押しのけ、前に出る。
⑤「お前!なん…!?」
ズギャアァァー!!
ザックの両腕から凄まじい光線が放たれ、部屋半分を吹き飛ばす。
⑤「すげぇ…」
ザック「死んだか?」
ミスチルが立っていた所はクレーターのように大きく凹み、部屋が半分程が消し飛んでいる。
ミスチル「いえ…死んでませんよ」
ザック「!?」
ザックの横にミスチルが立っている。
⑤「お前!いつの間に!」
すかさず、銃を撃つセロだが、ミスチルは軽くかわすと元いた所に歩いていく。
ザック「早えぇってもんじゃね…魔法でも使ってやがるのか」
⑦「次は俺たちが行く…近距離戦だ。セロ・リオ援護を頼むぜ!」
⑤「分かってる」
⑪「僕が…やる」
⑦「おい!リオ!」
リオが突然ミスチルに向かって走り出す。
⑪「必殺ローラー鉄靴!」
リオは鉄製の靴をはいており、靴の底面にはローラーがついている。
⑪「行くぞぉ!必殺鉄ハンマー!」
素早い動きで移動するリオは右手にハンマーを錬成する。
ミスチル「君が相手ですか…小さな勇者よ楽しませて下さいね」
>> 91
⑪「やぁ!」
真っ直ぐ突っ込んでいったリオは勢いに乗せて、ハンマーを振る。
ミスチル「おっと」
凄まじい速さで振りかぶられたハンマーをミスチルは紙一重でかわし、リオから距離を置くため横に飛ぶ。
⑪「逃がさない」
だが、リオもミスチルのスピードについてくる。
⑦「早いな…」
ザック「あんな餓鬼があの重そうなハンマーを持てるんだ」
ローナ「馬鹿ね…錬金術師にとっては鉄は自由自在よ。重さ操作ぐらいわけないわ。それにあの子中々のきれ者よ。ローラーの靴あれは中々…鉄を自在に操れる錬金術師ならスピードだって出し放題だわ」
⑤「リオの奴も成長したなぁ。うんうん」
ローナ「安心する程の力じゃないわ。あの子はまだまだ操れる鉄の量が少ない。錬金術師にとっては操れる最大鉄量が魔力のようなものなの。」
カリーナ「おっ!ローナ難しい話はいいさかい!見てみいや!押しとるで!」
⑪「必殺鉄壁!」
逃げ回るミスチルの前に鉄の壁が現れる。
ミスチル「なっ…何処から鉄を」
⑪「必殺鉄蛇大蛇!」
リオの腰のポーチ(鉄が入っている)から先程の鉄蛇よりごつい鉄蛇大蛇が素早い動きで飛び出し、ミスチルを縛り上げていく。
>> 92
⑪「必殺鉄融合!」
リオは鉄蛇大蛇に拘束されたミスチルに手を向ける。すると鉄蛇大蛇は後ろの鉄壁とくっつき、一つになった。
⑪「どう?逃げれないでしょう?それにさっきみたいに剣を使って切れないしね」
身体もそうだが、ミスチルの剣は分厚い鉄の塊に拘束されている。
⑪「驚きました…これ程の力とは…素晴らしいセンスです」
⑪「どうも♪じゃ降参する?」
手に持っているハンマーを変形させ鋭い剣に変える。
ミスチル「一つお聞きしていいでしょうか?小さな大錬金術師殿」
⑪「いいけど」
ミスチル「先程の突然現れた鉄壁ですが…何処から鉄を?貴方は鉄精製は出来ないと思っていました…鉄は自分で持っておられる僅かな鉄以外ないとそれしか使っておられませんでしたし」
⑪「そうだよ。僕は地面の砂鉄から鉄精製はまだ出来ない。その鉄壁はミスチルさんがさっき切り倒した鉄蛇を変形させたんだ。この部屋には鉄一つないからきつかったよ」
ミスチル「そうですか…油断しました。だが、素晴らしい。楽しめました」
⑪「!?」
⑦「リオ!離れろ!何かする気だ!」
ミスチルの身体からオーラが放たれる。
>> 93
ザック「だがよ…錬金術師は鉄を自在に操れるだろ…なのになんで…敵が持っている剣をあの餓鬼は奪わないんだ…アレはどう見ても鉄だろう」
ローナ「リオ君がピンチな時に何バカな事言ってんの!ったく…錬金術師は確かに鉄を操れるわ…でも…魔法がかけられた鉄は操れないの。あの魔法剣…それに凱の鎧・剣は魔法がかけられているのそうな鉄は操れないのよ。まぁ普通の相手なら武器を奪うことも可能よね」
カリーナ「早よ!逃げ!」
⑪「わ…分かってるよ」
慌てて、ローラー鉄靴で滑り、凱たちの元に戻る。
⑤「心配させるなよ」
⑪「ごめんごめん」
⑦「おい!皆見ろ!アイツの剣!」
ミスチルの剣は水晶玉と同じ、輝きを放っている。剣の周りの鉄は剣に飲み込まれていく。
カリーナ「アイツ…水晶無くても空間技使えるんか」
ミスチルの周りの鉄はどんどん剣に飲み込まれていく。
⑪「あぁ…僕の鉄が」
ミスチル「水晶玉は力の元ではありません。逆です。力を抑制する為のものです。本気の私は私ですら力のコントロールが出来ないものでして」
⑦「今度こそ俺の出番だな」
カリーナ「うちの…や!」
ザック「俺様の…だ」
>> 94
⑦「え~い!誰でもいい!行くぞ!」
カリーナ「そやな」
ザック「せいぜい俺様の足を引っ張らないようにな」
ザックの腕は奇妙な機械獣に変形している。
ミスチル「次は貴方たちがお相手ですか…楽しめそうです」
既にミスチルを拘束していた鉄は全て、剣に飲み込まれている。
⑪「援護するにも鉄使いきっちゃったよ」
ローナ「私は魔力を使い切ったわ」
⑤「俺はヤル気を使い切った」
セロにローナとリオの蹴りが飛ぶ。
⑦「援護は期待しない方がいいぜ」
そんなセロたちを見て凱は言う。
ザック「援護なんざいらん。俺一人でもいいぐらいだ」
カリーナ「あんたそんなん言って…今日は一回倒されとるやないか」
ザック「あれは…仕方ないだろうが!」
⑦「喧嘩は後だぜ。とっと終わらして、ドグロのところにいかねぇと」
カリーナ「そや!早よ姫さん助けなあかんだ!」
ザック「ふん。行かせてもらうぞ」
ザックは先頭きって、ミスチルに向かっていく。直ぐに凱・カリーナが続く。
>> 95
ザック「りゃあぁ!」
凶暴な鋭い牙をもった右腕をミスチルに振る。次は左腕と右腕と交互にパンチを繰り出す。
ミスチル「おっと怖い怖い」
だが、ミスチルを捉えることは出来ない。
カリーナ「動きが遅いパワータイプのあんたはコイツと相性悪いで!下がっとき!」
ザック「うるさい!なっおい!」
カリーナはザックの肩を飛び箱のように飛び越えるとミスチルに飛び蹴りを繰り出す。
ミスチル「おっとと」
しかし、飛び蹴り当たらない。
カリーナ「なんて、素早い奴やこの飛び蹴りかわしたのはあんたが始めてやで」
ミスチル「それは光栄です」
カリーナ「四連脚!八連脚!一二連脚!」
凄まじい勢いで技を繰り出すが、カリーナの足技は宙を舞う。
ミスチル「素晴らしい型の整った動きです」
カリーナ「当たってもないのに褒められても嫌味にしか聞こえれへんわ!追撃連脚!」
足技の動きがいきなり早くなる。
ミスチル「ぐっ!」
一撃目は腹にクリーンヒットし、ミスチルの身体が少し宙に浮く。すかさず、カリーナの見事な蹴りが顔面を捉え、ミスチルの仮面が吹き飛ばされる。
ミスチル「ぐっぐ…やり…ますね」
>> 96
ミスチルは口から垂れた血を脱ぐうと剣を構える。
カリーナ「なんや…本気になったんか。それに男前やのに顔なんでかくしとるんや…その額の傷がいやなんか」
ミスチルは銀狼特有の銀髪で、額に斬り傷があり、りりしい顔立ちだ。
ミスチル「いえ…職業柄いつもつけていますのでつい」
カリーナ「変な仮面つける仕事って、どんな職業やねん(汗)」
⑦「早くも一撃貰ってるが…まだやるのか?」
ミスチル「えぇ…素晴らしい闘いをここで止めるのはもったいない」
⑦「ドグロがバトルマニアと言ってたが、お前もそうとうだぜ」
ミスチル「えぇよくおわかりで」
⑦「ふっ…やるか!」
ミスチル「えぇ。お先にどうぞ」
>> 97
⑦「手始めにこの技でもくらいなぁ!」
凱の身体が何重にも重なって、見え始める。
⑦「七重残像剣!!」
そして、一つの身体は7つに分かれ、四方からミスチルに斬りかかっていく。
ミスチル「おっそれは…狐人の技!素晴らしい!」
技を見たミスチルのティションは更に上がっていく。斬りかかってくる凱たちは素早い動きに翻弄されて、ミスチルには剣は当たらない。
⑦「ちっ!素早い奴だぜ」
ミスチル「ほっ…とっ…はっ」
7人がかりで斬りかかる凱だが、五分経ってもミスチルを捉えることが出来ない。
⑦「やるか…皆行くぞ!」
(このままでは体力を消費するだけだ。この技で一気に決めるぜ)
一人の凱がそう言うと残りの六人は頷き、ミスチルの周りを囲い剣を構える。
ミスチル「おや…次はどんな技を見せて下さるんですか」
⑦「七重残像剣阿修羅斬り!!」
7人の凱の剣がオーラに包まれ、ミスチルの周りにオーラが渦がおこる。その瞬間、周りをとり囲んでいた凱たちが矢のように光りの線となり、ミスチルに斬りかかる。
ミスチル「すっ素晴らし…い」
⑦「りゃあぁぁぁ!!」
>> 98
四方からの光速の領域にも達する阿修羅斬りのスピードを避けられるわけはなく。
ミスチル「ぐはぁ」
凱の剣・身体が光りの線となり、ミスチルの身を斬りさく。
⑦「はぁはぁ…」
(確かに手応えはあった…だが…)
七重残像剣も解け、今は一人に戻った凱は阿修羅斬りの反動の影響でその場に膝をつく。
カリーナ「やったやん!凱!」
凱と同じく膝をつき、腹部(阿修羅斬りを受けた部分)を押さえ苦しそうにしているミスチルを見て、カリーナは凱に駆け寄る。
⑦「いや…まだだ」
カリーナ「なんやって?」
⑦「入りが浅い」
凱がミスチルを睨む、ミスチルはゆっくり立ち上がり、剣を構える。腹部からはそれなりに出血はしているものの死にいたる傷ではないようだ。
⑦「カリーナ…すまねぇが…手は出すな…」
カリーナ「そっそやかて…」
凱はそう言うとゆっくりと立ち上がり、剣を構える。
ミスチル「さっきの技素晴らしいです…ただ…本物の阿修羅斬りと比べれば赤子同然ですがね」
ミスチルの剣からは空間斬りを見せた時と同じ光が放たれている。
>> 99
【100】
⑦「まぁ本物(フォックス)とは比べもんにならねぇのは事実だが…それでもお前にはキツイだろ」
阿修羅斬りは修行・旅のお陰もあり、以前とは威力・スピード桁違いになっている。だが、それでも教え主(フォックス)の足元にも及ばない威力であるというのは自分でも嫌と言うほど分かっている。
ミスチル「ふっ…確かに今までの私にはキツかったです。ですが、それはあくまでも手を抜いた私であって、全力の私ではない!」
ミスチルの身体から先程とは比べようにならない程のオーラが溢れ出てくる。
ローナ「アイツの言うことは満更嘘ではないようね。オーラの量も見えば分かるけどさっきとは別人よ。それに力の抑制の水晶を破壊してからまともに技を使ってないわ。逃げてばかりだしね」
ミスチル「その通り…私は今まで何一つ本気で技を放っておりません。ドグロ様には殺さないようにと言われておりますが…私を傷つけた代償はここにいるお仲間全員の命でも足りませんよ」
ミスチルの身体から出たオーラは次第に渦となり、形が徐々竜に似たもになってくる。
ザック「なっなんだ!アレは!」
⑦「オーラを生き物のように…」
>> 100
ミスチル「死んで下さい!たのしめましたよ!異次元竜!」
オーラの竜は飢えた野獣のように真っ直ぐと獲物(凱)に向かっていく。
⑦「くっ…すげぇ技だ…行くぜ!!」
凱は真っ直ぐ向かってくる竜に真っ向から斬りかかる。
⑦「トルネードガイブレイド!!」
(この技を使ったら丸一日は身体が動かねぇが、あとはカリーナたちが上手くやってくれるはずだぜ)
オジオン「そこまでだ!ミスチル!凱!」
唐突に二人の間にわって、入ってきたオジオンは大きな水晶を天にかかげる。
ミスチル「オジオン殿!」
⑦「なんだ!」
一瞬で二人の技(オーラ)は煙のように消えさり、二人の動きが止まる。
ミスチル「素晴らしい…無効魔法です」
オジオン「うるさい…黙っておれ」
ミスチル「はっ…」
オジオン「凱よ…先に進むがよい」
オジオンは魔力石で出来た扉に杖を向けると扉は粉々に吹き飛んでしまう。
ミスチル「なっ何をなさいます!オジオン殿!刺客を倒さないと進めない条件ですよ!私はまだ…」
オジオン「お前の負けじゃ…凱の最後の技をくらっていたら異次元竜と共に吹き飛んでいただろう」
>> 101
ミスチル「ぐっ……分かりました。」
剣を鞘に納めた。
⑦「ふぅ…実際ヤバかったぜ。オリジンが止めなかったたら、どうなってか分からねぇぜ。」
闘いでかいた汗と違う汗をかいていた。
カリーナ「まだ、力隠しとるな。凱並みのバトル馬鹿は一緒やけど。」
ローナ「本当、やな感じ…」
始めにミスチルと闘い精霊たちを傷つけられ、まだ根に持っていた。
カシュカシュカシュ
ザック「しかし、この宇宙には色々と化け物がいるぜ。全く。」
⑪「あん…ハッ」
(あんたの機械の体も充分化け物だよ。)と、リオはザックに突っ込みを入れそうになったが、後が怖そうなので止めた。
ザック「どうした坊主。」
⑪「いや…べ、別に…」
⑤「さぁ、この扉の先には何が待ち構えていることやら…」
セロの足取りは重かった。
⑦「んな事言ってるんじゃねぇよ。嬢ちゃんとキックのがドグロに捕まってんだからよ。」
オリジンが壊した扉の階段を上がって行った。
>> 102
ミスチル「オジオン殿…我々も」
ミスチルが後を追おうとするとオジオンがおもむろに喋り始める。
オジオン「いや…我々は魔法階段(エレベーター)で行くとしよう…あの階段は年寄りにはちっとキツイ」
そう言うと壁に杖を向け、隠し扉を開く。
ミスチル「こんなものがあったとは…私はいつもあの気が遠くなる程長い階段(凱たちが登っていった)を登っていたんですよ…私の日々の苦労は…」
ミスチルの脳裏にはいつも階段を一日かけて登っていた自分が浮かんでいた。
オジオン「ほれ…行くぞ」
ミスチル「はっ」
オジオン「我らは地上(階段の先)から凱たちが来るのを首を長くしてまっておるとしよう」
オジオン「このシーラ星秋国いや今は冬国にある塔より長い階段を果たして、何時間で登れるかのぅ」
オジオンは大声で楽しそうに笑いながら、魔法階段を登っていく。
ミスチル「…」
>> 103
⑤「ハァハァ長い…ずっと登っている気がする…」
⑪「ゼーゼーッほんと…だよ。」
もう、どれくらい登ったのだろうか…階段の踊り場があり、皆、休憩することにした。
ローナ「疲れた時は、甘いものが一番だわ。」
どこからともなく、リュックが現れた。ローナはチョコを取り出すと2人に割ってやった。
⑤「ローナ有難う。それも精霊の力?」
ローナ「ええ、そうよ。」
⑪「便利なんだな精霊魔法って。」
指に付いたチョコをしゃぶりながら話す。
ローナ「契約するまでが大変なのよ。」
⑤「へ~っ。」
カリーナ「ほんま、強い精霊を手懐けるのが大変なんやで…」
ザック「さぁ俺はナノマシンで人間部分を回復し、このボディに油を注さないとな。」
カリーナ「うちも、少し疲れたわ。凱なにやってんの?」
あっちを向いてる凱に近づいた。
ジョ~ッ
⑦「んっ、小便。」
頭をボリボリ掻きながら答える。
カリーナ「あほ、もっと遠くでしいや。」
⑦「別にいいじゃねぇか。俺様の勝手だろ。そういや、お前等便所はどうしてるんだ?」
カリーナ「…企業秘密や。」
>> 104
凱もみんなの輪の中入り腰袋から干し肉を出すとかじった。
⑦「お前も喰うかよ」
カリーナに一切れの干し肉を出すが
カリーナ「手洗ってへんのに、そんなんいらんわ!」
と言って断った。
ローナ「そういえば、ヤンはどうなったかしら…」
ザック「大丈夫だろ。」
カリーナ「道に迷ってるかもね。ふふっ」
一方…
ヤン「へっくしょんがーっ!!」
豪快にクシャミをし、鼻を啜った。
ヤン「誰か噂してるな…ガッハハハハ 人気者は辛いのう。」
ビューッ
砂漠の熱風と砂埃でヤンはフードを深く被った。
強い風が吹く度に砂の顔が変わる。
ヤン「いきり立って、一人歩き回ったのわ良いが、ここわドコじゃい…」
辺りをキョロキョロ見回すが何も目標になるものが無かった。
ヤン「まぁ、そのうち着くだろ。ガッハハハハ」
のしんのしんと汗を拭いながら、呑気に歩き出した。
>> 105
ギィィィ
錆びて、老朽化の激しい両開きの扉をミスチルはゆっくりと開けた。
オジオン「いつ見ても汚いところだ」
扉についた錆びが頭に落ちてきたので払いながら、中に入っていく。
ミスチル「ただいま戻りました船長」
扉の向こうには縛られた女とキャプテン・ドグロそして、宇宙船の操縦装置一式が中央に置かれている。床は埃だらけで至るところに蜘蛛の巣やゴミが散乱している。広さは中型戦艦が軽く入る程だ。
ドグロ「帰ったか」
ドグロはスクリーンに映った凱たちを見ながら言う。
ミスチル「はっ」
ドグロ「それと…オジオン」
吐息がかかる程近い距離で、不思議そうな顔をしながら気絶しているセレナの顔を見つめる。
ドグロ「こんな娘…それと剣士…錬金術師の子供…小さき精霊使い…機械人間…ガンマン…格闘娘が我ら(宇宙海賊)を救うと言う予言は本当とは思えんな」
ドグロは手に持っている黒光りした銃を今にもオジオンに向けそうな剣幕で言う。
オジオン「私は嘘は言わん…それに藁にもすがらねば宇宙海賊は破滅の道しか残っておらんぞ」
杖の水晶には数百万の連合軍艦隊が此方に向かってきている姿が映っている。
>> 106
ドグロ「大地の大賢者オジオン!もしも…予言が外れた時には貴様の命もないと思え!」
黒いマントをなびかせ、半分狼人間化した異業な顔で、オジオンを睨む。
オジオン「ふむ…短気な奴よ」
ドグロ「貴様ぁ舐めるなよ!俺には下らん魔法は通じんことを肝にめいじて話せ!」
オジオン「確かに…お前が私を殺そうと思えば簡単だろう…しかし…お前は私を殺せない。私に助けを求めてきたのだからな」
ドグロ「くっ…」
ドグロはサングラスの位置を直すと冷静さを取り戻すため、椅子に座る。
オジオン「敵の兵力は億にのぼる。なにせ政府軍・連合軍が手を組んでおるのだ。しかし、宇宙海賊は数百万よくいって一千万の兵力しかおらん。単純計算で敵の兵力は十倍以上だ」
ドグロの顔が曇る。
オジオン「それはそうと兵の徴集は終わったのか?それに何処の星で闘うつもりじゃ?」
ドグロ「終わった…既に九割の宇宙海賊がこの黒の惑星付近に集まっている。闘う場はこの惑星だ!」
オジオン「そうか…勝つためには何をせんとならんかはしかりと覚えておくのじゃぞ。ドグロよ。私は暫しの間この場を離れる」
オジオンは壁をすり抜け、消えてしまう。
ドグロ「ふん」
>> 107
⑪「まだなの…ハァハァ」
休憩し、再び登り始めてから一時間まだ一向に出口が見えない。
⑤「まさかこの先は天国まで続いてたりして」
ローナ「あら?貴方天国行けるのね」
皮肉たっぷりにローナが言う。
⑤「ちっえ」
カリーナ「はっは!」
⑦「皆しんどいと思うがセレナとキックのためだ。我慢してくれ。それに何か開けた所についたようだしよ」
少し先に開けた場所が見てとれるが、最上階ではないようだ。
ザック「やっと休憩か…ハァハァ」
半分機械をしょた身体が堪えるのかザックは体力的にきつそうである。
⑦「おっ…ここは」
一番乗りした凱は50㎡程度の場所を見渡す、どうやら牢屋部屋のようで鉄格子のついた小部屋が何個かある。
ローナ「見張りはいないようね」
周りを警戒しながら、ローナが言う。
⑭キック「すまないが開けてくれないかな」
一番隅の牢屋から聞きなれた声がする。
⑤「!?」
⑦「キックじゃねぇか!まってろ!直ぐに開けてやる!」
凱が剣で切ろうとするとキックが制止する。
⑭「鍵そこに吊ってあるからそれで開けてくれると助かるんだが…」
キックが指さす壁に牢屋の鍵がかかっている。
>> 108
ガチャガチャ
⑤「ほら…開いたぞ」
⑭「すまん。助かった」
キックは牢屋から出ると羽を大きく広げ、背伸びをする。
⑦「キック。無事でよかったぜ」
⑤「そうそう。てっきり剥製にされたと思ってたよ」
⑭「笑えん冗談だな。セロ」
セロが気まずそうに苦笑いする。
⑭「皆改めて言わせてもらう。すまなかった。私の力不足で姫を拐われてしまって…一生の不覚だ」
キックが肩を落とし言う。
⑦「いいぜ…そんな過ぎたことはよ!セレナは無事だから心配するな!」
⑭「姫は無事か!良かった…」
⑪「うん…でもドグロに捕まったままだけどね」
⑭「なら直ぐに助けに行こう!」
直ぐにでも行こうとするキックに
ローナ「待って…私たちはずっと走ってきたんだから少し休憩させてよね」
ザック「そうだ…機械も休みが必要た」
カリーナ「へぇ竜人って初めてみるんやけど凄いな羽とかかっこええ」
⑭「う?貴方たちは?」
⑦「俺の知り合いだ。セレナを助ける手伝いをして貰ってる」
⑭「そうですか…感謝します」
⑪「アレ?キック竜王様の剣は?」
⑭「うっ不覚にもドグロの手の内だ」
キックは更に肩を落とす。
>> 109
⑤「馬鹿!余計に落ち込ませてどうするんだよ!」
⑪「はっははぁ…だって気になったんだもん」
リオが頭をかく。
⑪「そっそうだ!間に合わせで!」
リオが鉄格子の一本に手を当て、剣に変形させ、キックに渡す。
⑪「はい!外見は竜剣そのものだよ!質はただの鉄だけどね…」
⑭「ありがとう…無いよりは助かる」
キックは剣を受けとり、いつも竜剣をかけている腰につける。
⑭「皆に言っておくが敵の数は多い。しかも狼人間に変身されては此方に勝目はないだろう。それにドグロの力は未知数だ」
⑦「あぁ。こっからが山だな」
ローナ「そうね…でも宇宙海賊と闘う前に…お客さんのようよ」
ローナが上へと続く階段に視線を送る。
⑭「はっ!三人降りてくる。一人飛び抜けた力を感じるぞ」
キックも気配を感じ戦闘体勢をとる。
⑤「誰だ!」
上からゆっくりと三人の狐人が降りてくる。見覚えのある三人組だ。
⑦「しつこい奴だ」
凱は剣を抜き構える。
砦「凱!殺しにきてやったぞ!」
階段から降りるやいなや砦は凄まじい速さで凱に斬りかかっていく。
⑦「勝負!」
>> 110
ガキーッ
剣と剣が擦れ火花が辺りに飛び散る。
砦は三本の尻尾を揺らしながら、次の攻撃を仕掛ける。
⑦「フッ、相変わらず猪突猛進だぜ。お前はよ。」
顔面スレスレの剣をスウェイして避けると同時に砦の左脇腹に、蹴りを放つ。然し、砦は素早く鞘で受け流した。
更に、凱は一歩踏み出し下段から斬る。が、剣で弾かれた。
砦「ふん!この前の戦いで貴様の動きは見切った。」
⑦「はんっ!開!!」
凱は足の封印を解くと、漆黒の鎧にオーラを溜めた。
「砦、これでも喰らいなっ三重残像おぉぉっ!!ガイ・ブレイドオウゥゥゥーッ!!」
三方向からオーラが砦に迫る。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴ…
階段の一部が吹き飛び爆煙が上がる。
弧人「砦様ーっ!!」
⑪「決まったね。」
⑤「大した事無かったね。あの砦って弧人も。」
⑭「…いや、まだだ。」
⑦「ああっ…キックの言う通りだぜ。」
煙りが徐々に薄くなると、尻尾5本の砦が立っていた。
>> 111
カリーナ「何や、尻尾が増えとるで!?」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ…
大気が揺れる。
⑦「何だこのプレッシャーは!!」
ザック「俺も恐怖を感じる。」
砦「まさか、ここまでとはな…凱。」
ザシュ
⑦「なっ、消えぐっはっ!」
凱の鳩尾に砦の膝蹴りが突き刺さっている。
ドゴッ
⑦「ぶっ」
顔を鷲掴みされ柱に叩きつけられた。
ガゴゴッ
凱の口からは血が飛び散る。
カリーナ「今、助けに…」
二人の弧人が立ちはだかる。
弧人「砦様の闘いに水を差さないで貰おうか。」
カリーナ「何やて!」
ローナ「カリーナ、かえって貴女が行くと凱の足手まといになるわ。」
カリーナ「くっ!」
ガキッガキッガキッガキーッ 砦「凱、さっき迄の勢いはどうした。」
凄まじい剣圧により、防戦一方の凱であった。
⑦(両腕か丹田の封印を解くか…然し、そんな暇がねぇくらいに速い!)
砦「ハハハ、そんなものか。」
あざ笑いながら攻撃の手を休めない。
⑦「……。」
>> 112
漆黒の鎧に無数の傷が付いていく。
⑦「フフッ…」
砦「笑ったりして、実力の違いに狂ったか!?」
ガキッ ガキッ キキン ガキッ
⑦「いや、なに楽しくてしょうがねぇ。相手が強ければ強い程、俺様は燃えてくるんでね。」
会話をしながらでも、二人は激しい攻防を繰り広げている。
⑦「それに、上の階じゃ嬢ちゃんが助けを待ってるんでね。」
ジリジリ
砦「うぬっ、少しずつ力強い剣に変わってきた…」
少し怯んだ隙を狙い、凱は黒魔剣に炎のサラムを宿した。
ゴオオォッ
⑦「ドグロ戦にとっとく筈だったが、いくぜ!七重残像剣んーっ!!」
ブーン
砦「フンッ!ただ人数が増えただけか。」
⑦「爆炎阿修羅斬りぃぃぃっ!!」
砦を囲み高速の炎の剣で斬っていく。
砦「こんなたわいも無い攻撃…」
凱はニヤリと笑った。
⑦「かかったな」
気づいたときには八人目の凱が空中にジャンプしていた。
⑦「ふっ飛びなっ。」
頭上に妖刀覇王を構えオーラを円の中心に放った。
>> 113
【番外ライオネル編①】
連合軍が去ったシーラ星は4つの国は荒れ果て、星の民は半分以上失いはしたが、民の目は死んではいない。新たな希望(総王)もあり、民は国の再建に勤しんでいる。
今、シーラ星は長年荒らそっていた4つの国が一つの国となっていた。名は【エルフ国】。皮肉にも連合軍の闘いが民を一つにしたのである。エルフ国の王(総王)は元秋国、今は冬国にある塔にいた。
⑨「しかし…本当に私で良かったのだろうか…長老…いや今は長老ではなかったなすまん。タカ老将軍」
金髪で美形のエルフが頭の上に乗った金の王冠を恥ずかしそうに隠しながら言う。そう大多数の指示により、総王に選ばれたライオネルである。
タカ「老将ですが…儂にそんな立派な称号は合わんですわい」
元冬国の長老は恥ずかしそうに言う。
サマー「総王。老将軍。お二人とも相応しい名ですよ」
元夏国王が白にマントを身につけ装い新たな恰好で部屋に入ってきた。
>> 114
【番外ライオネル編②】
⑨「おっサマー殿!」
総王とサマーは握手をかわす。
サマー「ここ数日留守にしていましたが、今帰って参りました」
ガシャガシャン
総隊長「誰が何になるか話が拗れてしまってな」
サマーの後ろから元秋国隊長、現在はエルフ国の総隊長となった全身重そうな鎧を纏った男が入ってくる。
タカ「ほうお主がやはり総隊長になった。適任じゃ」
総隊長の証である立派な鎧を見ながら言う。
総隊長「はっ!勤めは命にかえても果たしていきますよ!」
タカ「頼もしのぅ」
サマー「私は軍を立て直すため、戦闘を学ばす学校を開きたいと思っております。連合軍に本当の意味で勝つためには強い兵がいる」
サマーは後にエルフ民は素質(魔力)を持つことを知り、剣術と魔法の融合となる剣術を生み出し、また自らも魔法に目覚め魔法使いの道を歩くことになる。そして、魔法学校を開き理事長とがなるが今はそんなことになろうとは夢にも思っていないだろう。
⑨「素晴らしいお考えです。私も全力で援助しますよ。」
サマー「ありがとうございます。総王」
>> 115
【番外ライオネル編③】
⑨「サマー殿が留守の間良い知らせが入りましたよ」
サマー「悪い知らせは勘弁だが…良い知らせは歓迎です。ぜひ、お聞かせ下さい」
王は朝方やってきた竜人伝令の言葉を思い出しながら、話していく。
⑨「今朝、竜王殿からライジング星・ムーク星の連合軍をほぼ壊滅させたとの知らせが入りました。残党が少し残っていると言うことで、完全排除ではないそうですが、事実上、連合軍から解放したようです。竜王は生き残りの巨人族・小人族から兵を募り、軍を強化してから此方に来られるそうです。」
サマー「流石は竜族ですね。連合軍をいとも簡単に退けるとは…では竜王様がシーラ星に来られるまでに我ら(エルフ族)も兵を整えなければいけませんね」
総隊長「竜族・エルフ族・小人族・巨人族の4種族のドリーム軍が出来るのですな」
タカ「しかし、4種族が力を合わせても連合軍(フラク星雲レイカ星)にいる兵力には到底及ばない」
⑨「そう。だからこそクリスたちがピンタゴ星雲ウマンダ星の人々を味方につけてくれることを願うしかない」
>> 116
タカ「それは難しいでしょうのぅ…ピンタゴ星雲には連合軍が山ほどおりますしの」
⑨「いや…クリスたちならやってくれる。私はそう信じている」
サマー「総王の言う通りです。我々は信じるしかない。今は軍を立て直し連合軍との闘いに備えることだけを考えましょう」
総隊長「腕がなりますな。さぁて!仕事に戻りますか…山ほどありますからな」
タカ「そうじゃな。信じるか…さて、儂も仕事をするとしようか」
サマー「私も兵に志願希望の者を立派な兵にする仕事に戻るとしよう」
⑨「皆、頑張ってくれ…後一つだけ言っておく…エルフ国に栄光を!」
王がそう言うと三人は顔を見合わせて
『エルフ国に栄光を!!』
剣を突き上げ、王に続き言った。
>> 118
【過去編】
とある星のとある研究所で、今まさに歴史的瞬間が起ころうとしていた。
「博士!博士!博士!」
一人の若い研究員が寝ている老年の男を揺さぶる。
「なっ…なんじゃ…儂は眠いんじゃよ」
博士と呼ばれた白髪の男は目覚めが悪そうに言った。
「ハァハァ…落ち着いて聞いて下さいね!落ち着いて!」
研究員は今にも胸が張り裂けそうな言い方だ。
「リード君。君が落ち着きたまえ…冷静な君がどうしたのだね」
いつもと違う様子の研究員に博士は不思議そうに聞いた。
「ドイス博士…遂にやりました…人工知能が完成しました!完璧です!」
博士は目を丸くして、研究員が言った言葉を頭の中で整理する。死ぬまでに実現出来るとは思っていなかった長年の夢。
「まさか…早すぎる…計算上では後数年は…まて!いいいくぞ」
博士のいつ心臓発作で倒れるか分からないような機敏な動きで研究室に走る。
「ハァハァ…儂の夢よ…」
研究室には巨大なスーパーコンピュータが複数台置いており、中央には柱のような円柱の一際大きいスーパーコンピュータが置かれている。
「おっおぉぉ~」
>> 119
【過去編】
「我が子よ…おっお…なんと立派な」
中央のコンピュータには完了を示すランプが点灯しており、ディスプレイには難しい数列が、目にも止まらない速さで流れている。
「博士。どうです。完璧でしょう。私も夢かと思いましたが…現実です」
博士は複雑に配置されたコンピュータの操作パネルを操作しながら、研究員の話に耳をかたむける。
「既に人工知能が自ら成長しているようです。私たちの数年の研究をこの人工知能は一時間で終わらして、成長していっています。これはまさに奇跡です。まさか…これほどの物が出来るとは…博士もこれで歴史に名を残される。おめでとうございます」
「前置きはいい…早速身体を与えるとしよう!リード君!」
博士は目を輝かせ言うと研究員は直ぐに走っていった。
「人間が人間を作る夢の第一歩…儂はついにやったぞ!儂は神の領域に踏み込んだのだ!」
ガラガラ
「博士!持ってきました!世界初のロボットになる身体!」
台車の上には人型のロボットが置かれている。
「ついにそれが自分の意識で考え動く所を見れるのか!」
博士はロボットを見るなり、コンピュータからコードを抜き、ロボットに接続していく。
>> 120
【過去編】
コードを接続し終わるとコンピュータのディスプレイには【人工知能AI一号送信中】と表示が出る。
「博士。名を!このロボットに名前をつけてやって下さい!」
研究員は突飛もないことを突然言う。
「名前じゃと…」
博士は困惑気味に返した。
「えぇ…今までのロボットは決められた単純な動きしかできませんでした。だから名前すらない記号で分別されていただけです。でもこのロボットは違う…生きているのです。本当の意味で!確かに身体は鉄の塊です…脳の役割の人工知能も基盤ですが…心を持っています。生きているのです。」
博士は研究員に言われ初めて悟る。
「そうだ。そうなのだ。私は心を作った。そうじゃそうじゃ!名前が無くてはならん!」
ロボットの顔を両手で触れ見つめる。
「お前は新たな存在じゃ…人間や他の種族すら超越した存在じゃ」
ロボットの目が光り始める。人工知能を受信完了が近い。
「己の思うまま生きろ!人に使われているだけの存在ではなくなったのだから…お前は【ドイス】だ。儂の名と一緒だ。生きておる。生きておるのじゃドイス」
『己の思うままに生きる…』
ロボットは目を開けるとそう言った。
>> 121
【番外雷編①】
アーム「将軍。配置完了ですぜ」
ダンテスティン城の周りを取り囲むように雷部隊(戦車隊)が配置についている。それどころか星中に数千万の連合軍が駐在している。
⑫「そうか…ご苦労」
雷は懐かしい古里。ダンテスティン星にいた。彼はマントをなびかせ、城の最上階から国を見渡す。
⑫「荒れているな」
美しい国だったダンテスティン国は連合軍の侵略攻撃の被害がまだ大きく残っている。
アーム「そうですな。侵略っんときの傷後が直ぐには消えませんよ」
昔自分が住んでいた北の山の麓に目をやる。昔とは違い住んでいた家はなくなってはいるが面影は残っている。
⑫「国民の反乱は起きていないのか?」
雷はドイス閣下の命令でダンテスティン星に待機していた。最近、各惑星で反乱が起き、連合軍が支配していたライジング・ムーク星の支配が解けたのだ。それに焦りを感じている上層部はなんとしても支配地域をこれ以上減らさないためにもダンテスティン星に三将軍の柱、雷・大艦隊を送ったのである。
アーム「えぇ。これだけの兵(圧力)がありゃ反乱なんて起こしても勝目がないことぐらい分かってますよ。しかも力が弱い人間の星ですからな」
>> 122
【番外雷編②】
アーム「なにより…」
雷の目を強く見つめる。
アーム「なにより…この星の人間はロボットを怖がっていやがる。こんなロボット軍が山ほどいる軍に反乱は起こさんでしょうな」
ダンテスティン星にいる連合軍は通常よりロボット軍の数が多いように見てとれる。星の人々はそんなロボットを恐ろしそうに見ている。今にも殺されそうな目で…
⑫「…」
アーム「なんて言ったか…【あの事件】でしたかなぁ?この国で起こった事件は?」
試すようにアームは言う。
⑫「何が言いたい…アーム」
雷の顔色は険しくなっていく。
アーム「俺りゃ…この星のもんじゃねぇから詳しく知りませんがね。【あの事件】って奴には少し興味がありまして…少し調べたことがあるんですわ」
雷の手に目線をやる。手は剣の鞘に触れているが、アームは気にせず続ける。
「何年か前…この国はロボットで溢れてた。なんせ世界初のロボットの国ですからな。だが、今は何処を見ても連合軍以外のロボットはいねぇ。可笑しいですなぁ…この星ほど科学を否定し、魔法を好む星はねぇ。魔法使いの数が多いのがいい証拠だ。至るところに魔法がかかった物がある」
>> 123
【番外雷編③】
⑫「…」
これ以上言ったら、斬るぞと言わんばかりに雷はアームを睨む。
アーム「将軍そう怒りなさんな。儂はただこの星が連合軍の世界戦争の始まりだっていうのが知りたいだけですぜ。【あの事件】についてね」
アーム「俺の聞くところによるとロ…」
事件の内容について、言おうとした時、アームの喉に剣先が触れる。
⑫「死にたいか…」
アーム「やはり早いですな…儂には動いたことすら直ぐに認識出来ませんでしたわ」
雷が更に剣先をアームにつきつける。喉からは少し血が垂れ始める。
アーム「うっ…儂を殺せば将軍も困るでしょう」
⑫「何がだ」
剣を更に突きつけるのでアームは後ろに引く。
アーム「儂を殺せば雷部隊が反乱を起こしますぜ。そうなりゃ…あんたも困るはずだ。大切な兵たちが殺し合われては困るでしょう…なんせシーラ星の退去の件もある…これ以上失敗したらドイス閣下はどうなさいますかな」
⑫「年の功だな…俺を丸めこむとは…行け」
雷は剣を下げる。
アーム「ガッハハハ…年の功とは言ってくれますな」
⑫「気にくわん奴だ…昔の借りが無ければ殺っていた…」
そう言うとその場から姿を消した。
>> 124
【番外雷編④】
アーム「やはり…まだ餓鬼だな。ガッハハハ」
三色服の胸ポケットから葉巻を取り出し、口に運ぶ。
アーム「あっ…火がねぇ」
『ぞうぞ…』
アーム「あっわりぃな」
後ろから火を差し出される。
ミスター『いえ…』
ミスターの手から小さな火が灯る。
アーム『ふぅ便利な身体だ』
その火に葉巻を近づけ、火をつけるとアームはそう言った。
アーム「将軍の過去はあの人の弱点ともなる…」
葉巻を吸い、豪快に煙を吐く。
ミスター『??』
アーム「あの人を俺は支えると決めて長年ついてきている…無敵と呼ばれる将軍だが…弱点がある」
アームは葉巻を二息で吸いきるとミスターの身体に押し付け、火を消す。
アーム「弱点は俺たちが消すんだ。過去の大きな存在は妹の存在だ。ミスター…次あの娘…クリスに会ったら殺れ。その時将軍は完璧な強さを得る。弱点がなくなるのよ」
ミスター『はっ』
アームはミスターの口に葉巻を放り込み。
アーム「お前本当に便利な身体だ」
葉巻を処理するとそう言った。
>> 125
【番外ドラー編①】
「竜隊長!竜隊長!」
一匹の竜が、寝ている一際大きい竜の上空を旋回する。
ドラー「なんじゃい…俺は寝てるんだ」
竜隊長ドラーは眠そうに言った。
「ドラーさん!ライジング星の王を残党から無事に救出しました!」
ドラー「うっ巨人族の王をか?」
眠気が一気に吹き飛んだドラーは顔を上げる。
「そうです!無事でした!巨人族の王ビッグバン様です!」
ドラー「竜王様がムーク星行かれておるからなぁ…いちよ挨拶はせんといかんか…ふぅ寝たかったんだがの」
ゆっくりと起き上がり、身体より大きい羽を伸ばすと誘導する若竜の後を追うように空高く飛び上がった。
5分ぐらい飛ぶと山やらしき物が見えてきた。
ドラー「う?ありゃ…」
ドラーは目を疑う。少し先にある出っ張りは山かと思ったが、人だ。
ドラー「なんて…バカでけぇんだ」
そう全種族の中でもっとも大きいと言われている巨人族の王、ビッグバンである。竜族一の巨大を誇る竜王(竜状態)の何倍もの大きさだ。
ドラー「会えて光栄ですぞ。ビッグバン王」
ドラーはビッグバンの前に降り立つ。巨大のドラーすら、ビッグバンの前では玩具のようだ。
>> 126
【番外ドラー編②】
ビッグバン「止めてくれ…王などと…民を守れない王など王にあらず」
ビッグバンは空を見上げる。吐く息一つでもドラーは飛ばされそうになる。
ドラー「そう言われるな…王。民を多く失っても王を止めないでください…それでは余りにも生き残った巨人たちが可哀想だ。仲間を失い王までも失ってはの」
ビッグバンは空を見上げたままドラーの話を聞いている。涙を堪えているのか、それとも星となった同士たちを思っているのか分からないが、そんなビッグバンをドラーは見つめる。
ビッグバン「分かっておる…だが、儂は情けないのだ。力には自信があった儂が、ただの人間の剣士にやられ…しかも生け捕りとは…情けない。どうせなら剣士に殺された方が良かった」
ドラー「いや生きておられて本当に良かった。貴方が戦ったのは世界最強の剣士雷です。負けたとて恥ではない」
ビッグバン「雷と言うのかあの人間は…」
拳を握り、やられた時の事を思い出す。
ビッグバン「儂は闘うぞ!!まだ儂ら(巨人族)は負けてはおらん!」
『どおぉぉぉ~!!』
胸を叩き、大声で叫ぶ。声は大地を揺らし、星中に響き渡った。
>> 127
【番外アイシス編①】
⑮アイシス「なんだってんだい」
赤の惑星に停泊していた宇宙海賊の船がひっきりなしに黒の惑星に飛び立っていく。
「先生!患者も多くいなくなってます!」
怪我人の銀狼たちも自分の身体も考えず、ドグロの招集に答え、船に乗り込んでいく。
⑮「止めな!スタッフ・医師全員で止めるんだよ!」
「しかし…もう大半の患者はいなくなった後ですよ」
クリスの手術の時、助手をしていた男はいいずらそうに言った。
⑮「いいから!止めな!無駄死にされたら助けた意味がなくなるだろう!」
「はぃぃ」
アイシスの剣幕に男は即答で返事をすると直ぐ様、走っていった。
⑮「ちっ…どいつもこいつも…本当馬鹿だよ戦争に行くなんて」
アイシスはつい先程までは医師と患者で溢れかえっていた廊下をすんなりと通っていく。宇宙海賊の負傷者受け入れ病院だけあって、宇宙海賊がいなくなれば静かなものだ。
⑮「本当…馬鹿ばっかだ」
900号室の扉を開くとアイシスは額に手を当て、ため息をつく。
⑮「ったく」
病室のベッドの上には走り書きで書かれたメモが置かれている。
【助かった。ありがとう。手術料は凱につけといて下さい。 クリス】
>> 128
【番外キメラ編①】
今や政府軍の中枢(議会)は連合軍の思うがままに動いていた。
議長「全員賛成でよろしいかな?」
議席は全て、連合軍派の議員で埋まっている。
⑩「異議を唱えるものはおりませんぞ。議長」
キメラがそう言うと議員は頷き共感の意を示す。
議長「それでは…ここに政府軍は連合軍の傘下に入ることを決定する。これからは連合軍の意のままに動くように」
議員たちから拍手が起こり、キメラは満足そうに水晶を撫でる。
議長「では…解散」
決議が決まると議長を始めとする議員たちはそそくさと議会から出ていく。
⑩「民主主義国家は面倒だな…だが、これで議会など通さんでも政府軍は思うがままよ。あとは宇宙海賊に狐人の一族だけだ」
「おめでとう御座います。将軍殿」
議員と入れ替わりに議会に鎧を纏った7人の兵士が入ってくる。兵士たちはキメラの前で会釈をすると規則正しく横に並んだ。
⑩「来たか…連合軍7大中将たちよ」
グラカス「はっ…ここに連合軍全ての中将が集まっております」
背が高く赤い鎧を身につけた人々からは【勇者】と呼ばれる名高き男が言う。
>> 129
サム「我らを宇宙の彼方から呼び出されるとは余程のことがありましたかな」
【老剣士】と呼ばれる老人が言う。この男は【タカ伝】で、剣士タカと激戦を繰り広げた男だ。
⑩「なに…閣下が万全の体勢を整えピンタゴ星雲を警護せよとのことだ」
カラス「ふっ占領地域を多く失ってるのが大分とこたえているようだな」
【千人斬りの烏】と異名を持つ、黒服に身を包んだ細身の女が言う。
他4人の中将たちも名の知れた剣豪ばかりである。
グラカス「まぁ確かに…占領地域を奪われて…戦争にも負けぱなしじゃねぇ」
カラス「代々…あの雷を将軍にするのが間違いだ。奴は力は強いかも知れんが、指導者としては向いてない。私ならもっと上手くやる」
グラカス「おいおい…自分のアプローチかよ…カラスチャン」
カラス「うるさい…この女好きが!」
グラカス「酷いなぁこれでも勇者様で通ってるんだぜ」
サム「それはそうとじゃ…リードと言う何処の馬の骨かも分からん奴を将軍した閣下のお考えが儂には分からん」
「確かに…」
「そうだな」
「私の方が適任だ」
「いや俺様だ」
他の中将たちも各々気持をキメラにぶつける。
>> 130
【番外グラカス編③】
⑩「……」
キメラは深々と椅子に座り、中将たちの意見に耳をやっている。
グラカス「久々に異次元の異境からこの世界に帰ってきたと思ったら、これだぜ?どうよ?」
カラス「これが今の将軍の力の限界だな」
「確かにキメラ将軍以外はカス同然…いやカステラかな」
グラカス「笑えねぇなぁその冗談…ぷ」
カラス「笑ってるだろうが…ったく」
サム「儂に言わせれば兵士が弱いんじゃ…やはり天然でないとな」
「おいおい。それは禁句だろ。サムさんよぉ」
グラカス「禁句だって?ここにいる奴皆知ってるのにか?あぁ?」
カラス「いや兵士に聞かれてはマズイ」
グラカス「おぃお前までそんな事言ってさ…隠しごとは無しにしようぜ…そうだ!ついでにドイス閣下の謎について語ろうぜ」
グラカスがそう言うと急に中将たちは静かになる。
グラカス「アレ?なんかマズイこと言ったかなぁ?」
「それに触れるな…いや触れん方が己の身のためよ」
サム「うむ…」
サムはグラカスにキメラの方を見るように目で合図する。
グラカス「ありゃりゃ…物騒なことで」
キメラの杖は凄まじい魔力を放っている。
>> 131
【番外キメラ編④】
グラカス「キメラ将軍…貴方が魔法を使うまでに俺は貴方の首を落とす自信があるぜ」
金銀の装飾を施した剣を抜きながら言う。
⑩「ほぅ?それは見てみたいな」
杖からは更に凄まじく鋭い魔力が放たれる。
グラカス「ふん…流石に元炎の大賢者だけのことはある。すげぇ魔力ですね」
グラカスの剣は目映い光りに包まれていく。
カラス「あんた…マジでやるきなのか!」
グラカス「おや…味方してくれるだろ?カラスチャン?皆もしてくれる筈だ」
サム「止めておけ…将軍には勝てん」
グラカス「なんで?7対1だぜ?天下とらないのか?キメラ将軍さえ殺れば…う?」
グラカスは周りの気配に気づく。
グラカス「将軍も人が悪い…」
剣をゆっくり鞘に戻す。
カラス「囲まれてるな」
⑩「ふっふ…お前たちが集まるといつも私を殺そうとするものだからな」
キメラは出てこいと言わんばかりに杖で床を叩く。すると誰もいなかった筈の議会に数百の魔法使いが現れた。
ベネズエラ「及びでしょうか…魔法将軍」
グラカス「すげぇ数…負けだ負け…ちっ」
数百の魔法使いたちは中将たちに杖を向け、動けは殺すと言いたげだ。
>> 132
【番外キメラ編⑤】
⑩「ここにいる魔法使いたちは魔法軍の最後の砦だ。イース星で多くの魔法軍を失い私は大切な手駒の大半を失ったが、まだ全滅ではない」
カラス「これだけいけば十分」
⑩「この星には今連合軍の主力が集まっておる。魔法軍全て、賢者クラスの魔法使いもうじゃうじゃおるわ。そしてお前たち中将だ。将軍二人。まさに連合軍の総力と言ってもいい」
グラカス「要するに負けは許されないってわけだ」
⑩「その通り…もしもこの星を失うようなことがあれば連合軍崩壊の危機にもなりえる。だからこそ貴様らには頑張って貰わねばならんのだ」
キメラは杖をグラカスに向ける。
グラカス「ぐっ…うぅぅ…何を」
杖から放たれている邪悪な魔力はグラカスの首を締め上げていく。
カラス「将軍!ちっ!」
カラスが剣を抜こうと動いたが、身体が動かない。
ベネズエラ「大人しくしなよ。無駄だからね。数百の魔法使いによる縛りの魔法からは逃れられない」
⑩「私を侮辱した罪は重いぞ」
グラカス「ぐっ…がはぁ…き…」
身体は宙に浮き、首が今にももげそうだ。グラカスは腰の剣を手にとろうとするが、縛りの魔法のせいでもがくことすら出来ない。
>> 133
【番外キメラ編⑥】
サム「止めておけ…将軍殿」
⑩「!?」
ベネズエラ「なっなんで動ける」
グラカスが意識を失いそうになった時、キメラとグラカスの間をわって入ってきたサムは太古の呪文が書かれた腕でキメラの魔法を軽く払うとそう言った。
グラカス「げほっ…爺…さん…ゲホッゲホッ…助かったぜ…」
ベネズエラ「なっなんだ!その腕!魔法を…」
ベネズエラたち魔法軍の魔法使いは必死に縛りの魔法をかけているというのにサムは何事もないように動いている。
サム「儂が世界の果てで手にいれたものじゃ」
太古の呪文が書かれた右腕をキメラに向けながら言う。
⑩「ほぅ…魔力を払う腕か…失われた言葉の力は聞いたことはあるがこれ程のものとはな」
サム「儂はタカと別に生きるため、連合軍側についておる…だから将軍殿についてはいく。だが、仲間は殺させないぞ」
グラカス「爺さん…ありがとうよ…後は俺がやる」
グラカスは輝く剣を抜き構える。
ベネズエラ「なっなんでアイツも動けるんだ!」
サム「止めておけ…戦っても犠牲が出るだけだ。剣を下げろ」
グラカス「ちっ…つれねぇな」
>> 134
【番外キメラ編⑦】
ガシャ
グラカス「将軍…失礼いたしました。お許して頂きたい」
剣を鞘に戻し、頭を軽く下げる。
⑩「ふん…今回はサムに免じて、目を瞑ってやるが…次はない」
ベネズエラ「将軍!?」
グラカス「有りがたき幸せ…」
サム「世話がやける」
カラス「全くだ」
ベネズエラ「ちっ運のいい奴…」
⑩「では…改めて命ずる。連合軍7大中将よ。お前たちはこのウマンダ星の各地に飛び、支配地域の管理に当たってもらう。特別重要な地域…つまり…狐人の寺はカラス。政府軍の中枢基地にはグラカス。もっとも重要な議員(正統派の魔法使い議員たち)たちの収容所にはサマを命ずる。」
7大中将たちは敬礼する。
⑩「私やここにおる魔法軍・連合軍主力部隊はこの議員塔・首都に駐在する。何かあれば使いをよこすがよい」
⑩「以上だ…ゆけ」
>> 135
【番外狐寺編①】
蟷螂「族長…政府軍は連合軍の手に落ちたようです。外をご覧になって下さい。寺の周りを数万の連合軍が囲まれております」
⑰「ほぅ」
まるで、知らなかったような口ぶりで返事し扇子で口を隠し欠伸をする。自分には関係ないと言いたけだ。
蟷螂「良いのですか?連合軍に好きにさせて…」
⑩「我ら(狐人)は如何なる時でも中立…争いには関わらず…族の掟を忘れたか?蟷螂」
蟷螂「掟はしかりと…ですが、寺の周りに軍隊を配備されては…いつ攻撃されるかと心配になります。この里(寺は城壁なような物で、狐人の里を守るように狐寺が敷地の境界線に立っている。寺つまり狐人の里の意味)には女・子供もいます。銃や戦車に囲まれた生活は心に堪えます。それに政府側から一切の外出は禁じるようにとの通告も出ています。これでは狐人は完全に孤立です」
⑰「いいたい事は分かったが…連合軍がここを攻撃することは無いぞ心配するな。我らの力を侮ってはおらん。まぁ攻撃されても寺の魔力は偉大だ。砲弾は里には当たらん。外出も特例以外の者しか今までも外に出ておらん…害はなかろう」
欠伸を何度もしながら、そう言うと横になる。
蟷螂「族長!」
>> 136
【番外狐寺編②】
⑰「なんじゃ…うるさいなぁ」
蟷螂「攻撃されないことも分かったはおります。ですが…連合軍はタダ者ではありません。覇…仲介人が警告してくるほどですから…」
⑰「ふぅ…覇は信用出来ぬ生き物よ。奴はこの世界・魔法界・死後の世界の中間を生きる者。そんな者が世界の危機だと言い歩いておるのは…ちと気になるが、奴のいう事は信用せん」
横になりながらも威厳があるフォックスに蟷螂は押される。
蟷螂「しかし…」
⑰「魔法(大いなる力の意)が消える?そんな馬鹿なことを言った奴をお前は信用しておるというのか?蟷螂?魔法が消えてなくなれば世界の境界線はなくなり人が持つ力もなくなる。その時何が起こるかも分かっておらん。私は私の力(魔力)が無くなるなどとは思わん。力は絶対だ。」
蟷螂「ぅ…」
鬼「蟷螂よ…お主は世界の均衡を揺るがす連合軍を止めたいのだろう。だが…私も長と同じ考えよ。たかが、巨大組織といえ所詮は人間だ。世界は崩せない」
突然、部屋に入ってきた鬼は厳しい表情で言う。
蟷螂「鬼…帰ってきたのか」
>> 137
【番外狐寺編③】
鬼「今さっきな。お土産も連れてきてしまったが…」
鬼は目線を扉の方に向ける。後から誰か来るような仕草だ。
蟷螂「お土産だと」
⑩「いいもんではないな…はぁ私は寝たいのに」
三人はゆっくりと開く扉を見つめる。
ガシャガシャ
狐人兵「失礼いたします。族長殿。」
綺麗な絵が描かれた鎧を身につけた兵士達が、向かい合い列を作る。その列の間を一人の女が歩いてくる。
蟷螂「誰だ」
鬼「連合軍の中将らしい…我らを監督しに里へ来たようだ。一人だけと言う約束で入れたのだ」
女は全身黒色の服を着ており、簡単な鎧を身につている。髪は肩より上で、細身だ。幼い顔はとても軍の中将とは思えない。
蟷螂「鬼。なぜ連合軍を…入れる理由など」
鬼「連合軍はあの女をいれない場合は攻撃をしかけると言ってきてな…寺の防御は堅いが攻撃されるのは避けたい。なら女一人入れる方を選ぶのが賢いだろう。それに美人だ。歓迎せんわけにはいかんだろう」
⑰「女一人…か…」
蟷螂「お前そんな下らん理由で…入れたのが本心じゃないだろうな」
鬼「よく分かったな」
蟷螂「お前に外交を任せた私が悪かった…やはりお前は教官が向いてる」
>> 138
【番外狐寺編④】
カラス「貴様が狐人の一番偉い奴か!」
女は三人の目の前にくると男勝りの言い方でそう言った。
蟷螂「そうだ。このお方がい…」
カラス「お前には聞いていない。私はこの着物の男に聞いているのだ!」
蟷螂を黙らせると女は鋭い目付きで、フォックスを睨みつける。
鬼「ふっ笑えるな」
蟷螂「ぅ…私は…」
カラス「うるさいぃ!黙れ!」
鬼「…」
蟷螂「…」
凄まじい剣幕だ。二人は黙り込む。
カラス「どうした!聞いているのだ!答えろ!」
フォックスは腕を枕に横になったまま女を見つめ、一向に口を開こうとしない。
カラス「貴様!なめているのか!」
女は剣に手をかける。一瞬で、鬼・蟷螂を始め周りの狐人が剣を抜き、周りを囲う。
狐人兵「動くな!!」
カラス「黙れ!貴様らこそ剣を下ろせ!死にたいのか!」
蟷螂「なっなんだと」
周りを囲まれ、剣を突きつけられているにも関わらず、女は余裕だ。
狐人兵「斬らせて下さい!許可を!」
兵たちは斬り捨て許可を貰おうと蟷螂・鬼に言いよる。
⑰「止めよ…兵はこの部屋から出ていけ。鬼・蟷螂お前たちもだ」
蟷螂「なっ」
>> 139
【番外狐寺編⑤】
狐人兵「しかし…」
蟷螂「お気は確かですか…族長の身に何かあれば」
⑰「出ていけと言ったはずだ。何かあれば呼ぶ」
鬼「蟷螂。長の命令だ。掟だ。長の命には従え」
掟という言葉を聞くと兵たちは剣を下げる。掟は狐人の間では絶対的な存在である。
蟷螂「下がるぞ」
鬼・蟷螂・兵は渋々部屋から出ていく。
カラス「なぜ?警護を下げた?殺されるかもしれないぞ」
女は剣を抜き言う。
⑰「ふっふ。私をお前たちでは殺せんよ」
フォックスは女とは目を合わさず、隣にいる者を睨む。
スゥー
「気づいてましたか…どうりで隙がないわけだ」
睨む先にいた男が姿を現す。魔法使いのようである。手には金属製の最新の杖。先端にはダイヤモンドがついている。
⑰「変わった杖だな?昔は木で出来た杖に水晶と決まっていたがな」
「時代とともに進歩するものですよ。なんでもね」
「でも…驚きました。名高きフォックス殿がこんなにお若いとは」
魔法使いは見た目は20代にみえるフォックスを関心しながら見る。
⑰「見た目はな。だが、もう数千歳だ」
>> 140
【番外狐寺編⑤】
それから暫く他愛もない話を魔法使いはすると思い出したように
「おと!紹介が遅れました!私は横に居られるカラス中将殿の使いぱりしこと連合軍少将レイです!どうぞよろしく」
⑰「レイ…聞いたことがあるな。カラス中将か【千人斬り】だな」
カラス「そうだ」
レイ「おぉ狐人の長が私の名前をご存知とは嬉しいかぎりです!」
⑰「それはそうとじゃ…」
フォックスは起き上がる。
⑰「殺りに来たのではないのか?」
カラス「ふん。私は命令以外のことはしない性格だ。安心しろ」
⑰「命令?」
レイ「はい。キメラ将軍からこの里をつまり支配地域を管理命令が出ております。ですから、大人しくされている限りは我ら連合軍は攻撃いたしません。狐人との闘いは私たちにとっても得になりませんから」
⑰「なんじゃ…闘わんのか?久々に身体を動かせると思ったのだが…」
>> 141
砦「なっ!気(オーラ)を飛ばしただと!」
凱が放ったオーラは矢のように鋭く、凄まじい速さで砦に飛んでいく。
⑦「だだ飛ばしただけじゃねぇ!オーラを圧縮して威力も倍増してるぜ!」
砦「こしゃくな!」
七人の凱からの爆炎阿修羅斬りを防ぎつつ、向かってくるオーラに意識を向ける。
⑦「くらいな!極爆炎阿修羅!」
砦「くっ!」
(なんて、気だ。直撃はさけねば…俺とてもたん)
砦は逃げようにも周りを囲われ、逃げれない。
砦「はぁ!!」
流石は戦闘センスが優れている狐人である。絶対絶命の窮地から打開する策を一瞬で考えつく。
⑦「なっ!剣を!」
砦は剣を図上に投げたのだ。そう凱のオーラと剣はぶつかり、凄まじい光が部屋をおおう。
⑭「やばいな…」
ローナ「加減ってものを知らないのね」
⑤「おい…俺はまだ死にたくないぞ」
ピカッ
ドゴオォォォォォ!!!
部屋全体は一瞬にして、爆炎に飲み込まれ、壁や物は粉々に破壊されていく。
>> 142
ガラガラ
⑦「みんな、生きてっか?」
辺りを見回しながら、体に降り積もった瓦礫をはらいながら立ち上がった。
⑤「ふう何とかね…」
カリーナ「凱、うちらまでダメージ与えてどないすんのや!」赤い髪の泥をはたくと文句を言った。
ザック「本当だぜ…機械の部分にオイルささなきゃいけぬぇ。」
ローナ「本当だわ。小人の精霊ちゃん、守ってくれてありがとう」
⑦「いいじゃねぇかよ。砦の野郎は倒したんだし…」
⑪「どうしたんだい?喋るの止めて。」
鉄で出来た盾を元に戻すとリオは不思議そうに尋ねたが、凱は神経を集中させ微動だにしなかった。
⑭「まだみたいだぞ!」
スチャ
竜剣を抜きキックも凱と同じ瓦礫の場所を見ていた。
>> 143
ゴゴゴゴゴゴゴ……皆、瓦礫の下から凄まじいオーラを感じた。
⑦「馬鹿なっ!!お前の剣で技の力は半減されたが、あれを喰らって動ける筈がねぇ…」
砦「うおぉぉぉっ!!」ガゴォン
瓦礫を吹き飛ばし立ち上がった。
皆は、いつ攻撃してきても良いように、一斉に構えを取った。
砦「俺の二人の部下が飛び込んで、貴様の技の盾になったんだ。二人とも虫の息だ。」
砦は口から垂れた血を拭うと、瓦礫に埋もれている部下を引きずり出し両肩に担いだ。
砦「今回は部下を助ける為に一旦引くが、凱よ!次会う時まで、せいぜい首を洗って待ってろ!」
そう言うとその場を去って行った。
⑦「やれやれだぜ。だが俺様もあの技で砦を倒せねぇとは、まだまだ、修行が足りねぇな…」
ガックリうなだれた。
⑭「さぁ、姫様を助けに行こう。」
凱の肩を叩くと階段を登り始めた。
⑪「キャプテン・ドグロから早く取り戻しに行こうよ。」
カリーナ「しかし、月がでる前に行かんとやっかいやで。うちも、銀狼やさかい分かるんやけど。みんなタフになるで。」
ローナ「そうね、急ぎましょっ。」
⑤「一難去ってまた一難だ…。」
セロは、手を合わせた。
ザック「ほら、行くぜ!」
セロの服をむんずと掴むと引きずった
>> 144
⑤「ハァハァ…早い早過ぎるってば」
⑦「おい!遅いぞ!セロ!置いていかれたくなかったら気合い入れて走れ!」
⑪「だらしないねぇ」
リオは鉄の板に乗り階段を滑るように登っていく。
⑤「うるさい!楽しやがって!俺も乗せろよ!」
⑪「いやだねぇ」
舌を出し、セロを挑発すると余裕な顔で戦闘を駆けのぼっていった。
⑤「っ!お前!覚えとけ…ハァハァ」
時間は大幅にロスしたが、無事砦を撃退した凱たちは、再び、階段を駆けのぼっていた。
『お♪お♪お♪おぉぉ♪俺様たちゃ~♪世界最強♪極悪ぅぅう♪宇宙海賊ぅぅぅ♪』
そんなセロが息をきらし始めたころ微かに歌が聞こえてきた。不気味な大人数の男たちの歌声だ。
⑦「うっ?」
階段を登る度に歌は次第に大きくなり、はっきりと聞きとることが出来るようになってきた。
⑤「なんだぁ?この歌?」
『敵は細切れに♪家族も皆殺し♪殺せ♪殺せ♪やっちまぇい♪』
ローナ「センスが無いわね」
カリーナ「これ…宇宙海賊の歌やで!それにしてもいったい何人でうたっとんやろ?」
『侵略しろぉ♪奪いとれ♪女に♪金に♪全てを奪えぇぇい♪』
>> 145
最後尾からゼーゼーと言いながら階段を登って来ると、凱が扉の隙間からそ~っと覗いている。セロも気になって一緒に覗き込んだ。
⑤「……。」
扉の向こう側は、宇宙海賊の大音量の歌声が鳴り響いている。
沈黙しているセロが気になって、リオも覗き込んだ。
⑪「あわわわわっ」
ザック「俺にも、見せやがれ!」
ローナ「私も。」
ピョンとザックの肩に乗った。
カリーナ「どないしたんや?うちにも、見せてぇな。」
後ろから皆をグイグイ押す。
⑭「それ以上押すと…」
キックが制するのを聞かずカリーナは前に、つんのめった。
『あっ!!!』
ギィィ
バタンッ
それまで、歌っていた銀狼たち数百が一斉に扉の方を向いた。
真ん中に巨大な支柱があり周りを金の装飾で出来ている赤い大きな椅子に、銀狼よりひとまわり大きい銀狼が海賊帽をかぶって座っている。その横には見慣れたミスチルとオリジンそしてセレナ姫の姿があった。
>> 146
大きな音をたて、入ってきた凱たちに視線がそそがれる。
⑱「おや…やっと来たか」
数百人の銀狼たちは歌うのを止め、凱たちに釘付け状態だ。
⑦「おい!押すなよ!お前ら!」
ザック「ふん」
カリーナ「ほんまぁ~ごめん。まぁ!見つかったことやし!頑張ろ!」
⑭「ふぅ。全く」
銀狼兵たちはきつい眼差して此方を見つめている。既に武器を構えている兵士も多々いる。
ローナ「とにかく…目的地にはついたようね」
⑭「問題はここからだがな」
⑪「この数ヤバイんじゃないの?」
⑦「安心しろ!雑魚が何人いても問題ねぇぜ!」
ザック「だな。こんぐらい準備運動にもなりゃしねぇ」
⑤「俺は見学組で頑張るわ」
銀狼「かまえぇ!」
武器を取り出した凱たちに反応するように銀狼たちも一斉に武器をかまえる。
⑦「しゃあ!」
凱も宙を何度か斬り剣の動きを確かめかまえる。
⑭「満月が顔を出すのが近い…手早くすませた方がいい」
竜剣を眠りから覚ますように大きく回す。
銀狼「銃隊前へ!発泡準備!」
ザック「闘いの前のこの瞬間…わくわくするねぇ」
>> 147
「発泡許可を!」
ガチャガチャ
銀狼たちは銃をかまえ、上官の指示をあおぐ。
「はっぽ…」
上官らしき銀狼が『発泡』と言おうとした時、また、凱が銀狼に斬りかかった時にドグロの大声で戦闘は打ち切られた。
⑱『止めろ!てめぇら!』
ドグロの命令は絶対の銀狼たちはあっさり武器を下ろす。
⑦「なんだぁお前が相手になってくれるのか?」
⑱「あぁ俺様と戦えるなんて…いい冥土の土産が出来たな。羨ましいぞ」
ゆっくりと近づきながら、ドグロは言う。手に短剣が握られている。
⑦「土産話にもならねぇぜ!猿山のボス倒した話なんてな!」
⑱「なにぃ」
凱の挑発に足が止まる。
⑱「!?」
その一瞬にカリーナ・ザックが左右から襲いかかる。凱はガイブレイドを使うため、オーラを貯めている。
カリーナ「連脚蓮華!」
ザック「うりゃあぁ」
カリーナの鋭い足蹴りはドグロの腹部にめり込み、ザックの拳は顔面を捉える。
⑱「がっ…」
攻撃の勢いで、ドグロは銀狼の集団の中に吹き飛ばされ何人か銀狼も巻き込まれる。
カリーナ「一気にいくでぇ!」
ザック「わかってる!マシンガンモード!」
>> 148
⑱「何のこれしき…」周りにいた銀狼達がクッションとなり、軽々と起き上がると口からペッと血の混じった唾を吐いた。
⑱「ちったあ歯ごたえがあるみてぇだ…はぐあっ!!」
と、ドグロが話してる途中で凱のガイブレイドが炸裂し、空中に吹き飛ばされた。
シュン
同時にカリーナもジャンプした。
両拳にオーラを溜めていたのをドグロの鳩尾にピタッとあてると一気にオーラを放出させた。
カリーナ「牙狼拳零式!!」
凄まじい衝撃波でドグロの体は横壁に吹き飛んだ。
ドゴーンッ
ガシャ ジャキ
ザックは両手を突き出すと手首がパカッと外れマシンガンが出てきた。そして、横壁にめり込んでいるドグロ目掛け秒数三発弾を発射できるマシンガンをぶっ放した。
ザック「死んじまいなっ!」
ガガガガガ…
ガガガガガ…
ガガガガガ…
>> 149
ガガガガガガ
ガッ…
カチンカチン
ザック「ちっ玉切れだ…」
数分間、めった撃ちにしていたにも関わらず物足りない様子で言う。
⑤「ありゃ…死んだね」
ドグロは壁にめり込み、衣服は破け見るも無惨な姿になっている。
⑦「さぁ!親玉は倒したぜ!セレナを返せ!」
セレナは柱に縛られており、周りにはミスチル・オジオンが警護するように陣取っている。これでは迂濶に手は出せない。
オジオン「姫を返すのはまだ早い…ドグロとのやりとりを済ましてからなら直ぐ返してやろう」
⑭「何…まさか」
オジオンは杖をドグロの方に向ける。凱たちも慌てて、ドグロの方に向き直る。
⑱「ふっ…お前たちの攻撃など俺様にはくらわぬ」
ドグロは右手・左足・右足・右手と壁にめり込んだ身体を力まかせで抜いていく。
ローナ「なんて…奴なの」
⑤「トイレ行ってきます……」
>> 150
⑱『お前たちに聞く!!』
⑦「っ…」
カリーナ「く…なんて圧力や」
ザック「ぐ…」
ドグロはオーラに包まれていく。炎のようなまた闇の魔法のようなオーラである。風圧・重力に似たものを放ち周りに立っていることさえ困難だ。
⑭「ちっ!セロ・リオ!俺たちも行くぞ!あの三人だけではキツイ!」
⑪「了解!鉄も補給したしね」
銀狼兵から奪いとった銃数個を手に持ち自慢気そうだ。
⑤「俺今トイレ探しで忙しいから後にして…」
セロは瓦礫に身を隠しながら言う。
⑭「馬鹿者!男かそれでも貴様は!代々お前は日頃から…」
⑱『お前たちに聞く…お前らは竜族の王【竜王】に勝てるか?巨人族の王【ビッグバン】に勝てるのか?狐人の王【フォックス】に勝てるのか!!勝てんだろう!…そうだ!俺様にもお前は勝てん』
ドグロの身体は血管が膨れ上がり、腕は何倍にも膨れ上がっていく。
⑱『見せてやる!族の王たる力を!』
ゴオオォォォォォ
>> 151
ズン
ピシピシッ
⑦「ぐっ!凄まじいプレッシャーだ!!」
カリーナ「ほんまや!ドグロからの気が肌にビシビシくるで。」
ザック「この俺が動けないだと!」
ドグロの激しい赤黒いオーラにより三人は見えない何かに押しつぶされ身動きが取れずにいた。
⑱「王というものは、重みが違うんのだ!!皆を背負っておるからの。」
バサバサ
⑭「凱!大丈夫か?」
キックは竜剣を構えながら飛んできた。
⑦「ああっ何とかな。」
⑭「流石に宇宙海賊の長を務めるだけのことはある。我々、竜人族のオーラと気質が違うな。」
ドグロの方をチラッと横目でみながら話す。
⑪「大丈夫。」
鉄をスケボーの様にして、その上に乗っかって来た。
⑤「ずるいよな~っ!俺だけ走りだよ!」
荒々しい呼吸をしながら近づいてくる。
その後ろからは風の精霊の肩にちょこんと乗っかりローナが続いて来た。
ローナ「このオーラの障気にあてられて具合悪いわ。然も、押しつぶされそう…」
>> 152
⑤「うっ…この状態どうみてもピンチだよな」
周りには数百の銀狼たち、そして、大賢者オジオン・剣豪のミスチルまで、更には化物級の強さのドグロがいるのだ。到底勝目などない。
ローナ「ピンチなのは今に始まったことじゃないわよ。宇宙海賊の本拠地に乗り込んだ時点からね」
⑪「だね~♪」
ドグロは凄まじいオーラをまといその狼人間の巨大をゆっくりと前に進める。
⑭「まるで獣だな。餌代がかかりそうだ」
竜剣を大きく回し、皮肉気に言う。
⑦「ったく!化物の相手はごめんだぜ…」
カリーナ「あんなゴッイ身体で、殴られたら骨一本じゃすみそうにないなぁ」
ザック「ふん。この俺が恐怖を感じてやがる…ちっ」
⑱『お前らぁ…銀狼族の力受けてみろ…』
まるで、獣が言葉を話すような掠れた低い声でドグロは言う。そんな声は余計に恐怖感を煽る。
ミスチル「さぁどう切り抜ける?【大戦の英雄】様…ふ」
オジオン「まだ信じておらぬか…」
ミスチル「えぇ。今にも殺されそうな輩が…【大戦の英雄】などと…まぁ女神でもよんでドグロ様を倒すなら別ですがね」
>> 154
ピキピキ
ミスチル「う??」
透明な素材(ガラスのようなもの)で出来ている天井を見やげるオジオンに釣られるように天井に目をやる。
ミスチル「ば…」
ピキピキ…
いつの間にやら天井には無数のひび割れが入っている。
ミスチル『逃げろ!!』
天井を指さし大声を放った瞬間、天井は一斉に崩れ落ちる。下にいる銀狼たちはミスチルの声に反応し天井をみやげる。
銀狼「退避!」
ガラガラガラ…ドゴオォォォォォ
⑤「マジで…」
ローナ「皆私の近くに!」
⑱『なっ!なに!』
ほとんどの者が身体を動かす間もなく崩れ落ちてくる天井の下敷きになっていく。
⑭「ふぅ」
ドゴオォォォォォ
数分で瓦礫の雨は止んだ。だが、部屋一面は瓦礫の山と化している。数百の銀狼は無論、凱たちも瓦礫の下だ。
ガラガラガラ
⑤「いてぇ…本日二度目の天井の下じきだ」
頭の上に埃をのせ、白髪になったセロは瓦礫の下から這い出る。
⑭「う…牢屋には入れられ…天井の下敷きか…今日は中々ついてるな」
服についた埃を払い竜剣に傷がないか確認すると瓦礫の下に埋もれていローナを引きずり出す。
>> 155
ローナ「もっと優しくしてくれない」
引きずり出されたローナが言う。
⑭「はは。貴方の魔法のお陰で助かったよ」
ローナ「それは良かったわね…はぁ…今ので完全に魔力切れよ。紙一枚動かす力も残ってないわ」
⑦「敵さんも一掃出来たようだな」
身体の上に乗っていた重そうな瓦礫を軽々と投げ飛す。銀狼たちは瓦礫の下に埋っているようだ。凱たち以外は瓦礫の下から出てきていない。
カリーナ「あかん。セットが乱れたわ」
長い髪を束ね直し、再びくくり直す。
⑪「いたたたぁ…」
全身、鉄の鎧をまとい瓦礫の下から出てきたリオは何処かの国の兵士のような格好をしている。
ザック「ぐぅ…ローナ…俺だけ防御魔法を使わなかったな…くそ」
頭から微かに血を流し、やっとの思いで瓦礫から這い出てきたザックは言う。
ローナ「あら…生きてるからいいじゃない」
ザック「くそ…覚えてやがれ」
ガラガラガラ
オジオン「やれやれ…」
ミスチル「くっ…」
⑱『がぁぁぁあ!』
凱たちに続き瓦礫からドグロ・ミスチル・オジオンと出てくる。
⑭「やはり簡単にはやられてくれないか」
>> 156
オジオン「…」
オジオンはセレナを抱えている。どうやら守ってくれたようだ。
⑱『なぜ…天井が落ちてきた。鉄より堅い特殊材だぞ。自然に壊れはしないはず』
ガラガラガラ
「理由は私が潰したからだ」
ドグロの足元から突然、剣士が飛び出てくる。そう凱たちには見慣れた剣士…
⑱『誰だ!』
捻り潰そうと腕を振るドグロだが、剣士は軽々と避けて見せた。
「風よ!その鋭さを!」
風が吹く。そして、風は剣士を包む。
ミスチル「美しい…」
剣士の凄まじい速さで繰り出される剣技によって、ドグロは押されていく。また一歩また一歩と引き下がる。
⑦「ク…!」
⑤「クリ…!!」
⑪「クリス~!!」
凱たちは剣士、クリスを見るやいなや叫ぶ。
⑭「クリスには相変わらず驚かされる」
ローナ「あら…あの剣士知り合い」
カリーナ「あれ?あれヤンちゃうの?」
瓦礫と見間違えたが、ヤンが瓦礫と一緒に転がっている。どうやらクリスと一緒に落ちてきたようである。
ヤン「おっ!着いた着いた!」
ザック「ふん。おせぇんだよ」
ローナ「あら方向音痴のヤンにしては珍しいわね」
ヤン「ガハハハハ」
>> 158
カリーナ「どないしたんや? クリスって姉ちゃんとドグロの手が止まったで。」
⑤「本当だ。クリスが強いんで降参したとか…」
カリーナ「ドグロがそんなたまかいな。」
セロの頭を小突いた。
⑱「俺が、銀狼の王になる前の話しだ。まだ駆け出しの頃に先代王からおまえ等の星雲に攻撃を仕掛けるよう命じられ乗り込んだことがあった。」
クリスは黙ってドグロの言葉を聞いた。
⑱「その時、俺達の前に立ちはだかったのが剣豪雷神ダリルと剣豪風神タカだった。俺は怖いもの知らずだったから、構わず戦いを仕掛けたが見事に返り討ち。この銀狼のタフな体を持ってしても歯が立たなかった。仲間が次々と倒され、余りの強さに先代王から撤退命令が出たくらいだ。だが、俺は一人構わずダリルとタカに何度も戦いを挑んだ。」
キュポ
ドグロはアルコール度数の強い液体が入っている小瓶の蓋を開けると一気に胃袋に流し込んだ。
>> 161
⑱『行くぞぉ!』
本気でパンチを繰り出すドグロに対し、クリスは危なげながらも紙一重でかわしてゆく。
①「凱!お前たちは何ぼけっと立ってるんだ!手伝わないつもりか!」
突然のクリスの登場に我を失い二人戦闘を見守っていた凱たちは
⑦「あっ…すまねぇ」
⑭「よし!加勢に加わるぞ!」
⑤「しゃあないなぁ…クリス様の命令だし」
⑪「珍しく素直だね~セロ」
ローナ「あら…あんなじゃじゃ馬好きなの?変わってるわ」
ザック「ふん」
カリーナ「応援したろか?女心は女にしかわからへんでぇ」
⑤「ちっ違う…違う違うぞ!俺はクリスなんか…リオ!余計なことを」
セロは顔を赤しながら、リオの頭を叩くと銃を構え真っ先にクリスの援護に向かった。
⑪「痛てぇ…ちぇ」
ヤン「さぁ!すねてねぇで!いくぞ!チビ!」
⑪「チビじゃない!リオ!リオだ~い!」
⑱『受けてみな』
ドグロは息を大きく吸い込む。
①「なに」
胸は大きく膨らむ。そして、一気に絞んだと思った瞬間、ドグロの口から巨大な炎の玉が放たれる。
①「くっ…」
炎の玉に服を焦がされながらも避けたクリスだが、第2波が襲っくる。
>> 162
①「なっ…」
ドグロはいとも簡単に巨大な炎の玉を再度精製し放ってくる。100分の一秒の世界での戦闘だ。一瞬の反応の遅れが命とりになる。
⑱『捉えたぁ!!』
ドゴオォォォォォ
二発目の炎の玉は一発目を避けた直後で、体勢を崩しているクリスに完璧なタイミングで直撃する。
⑱『もう終わりか…本物の神剣はその程度ではないぞ』
シュウゥゥゥ
①「安心しろ。まだ本気は出していない」
⑱『くっ…憎たらしい奴だ。お前父親そっくりだぞ』
①「知ってるわよそんなこと」
ザックの硬質させた両手に守られるようにクリスは煙の中から現れる。
ザック「何が本気じゃないだ…よく言うぜ。俺様が盾にならなきゃそんな細い身体は今ごろないぞ」
⑪「いや…僕の盾のお陰だね」
更にザックを守るようにリオの鉄壁が盾になっている。
①「有り難う」
ザック「ふん」
⑪「貸しにしとくね」
⑱『さぁ!お仲間との会話はそれぐらいだ!かかってこ…』
バァァン
顔面に弾丸が直撃し、頭を大きく後ろにのけぞる。
⑤「堅いな血すらでないじゃんか。人間なら頭吹き飛ぶ威力なのに」
最新型のショットガンを構え、弾を込め直しながらそう呟くセロ。
>> 163
⑱『貴様ぁ!遠くから卑怯なや…ッ』
バァァァン
⑤「え?何だって?聞こえな~い」
⑱『貴様あぁぁ!そんな人間の玩具などくらわ…ガッ』
セロは素早い手つきで弾を込め、引金を引く。
⑱『ガッ…グォ…ガァ』
弾丸は全て、ドグロの額を捉え、傷はつけれないものの頭は退けぞらせている。
⑤「くらわないんじゃいの?」
流石に痛みはあるようで、ドグロは手で弾丸をガードし始める。
⑱『舐めた真似を…死ね!!』
胸を膨らませる。炎の玉を放つ気だ。
カリーナ「あかんなぁ周り見えてへんで」
直ぐ近くでオーラを溜めていたカリーナが動く。他にも凱・キック・クリスがオーラを練っている。
⑱『!?』
カリーナ「一撃脚!!」
カリーナは足に赤いオーラをまといながら、ドグロの胸に蹴りを入れる。
⑱『ごほぉぉぉがあぁぁ』
鈍い音とともにドグロは苦しそうに吠え、身体は炎に包まれていく。
カリーナ「なんや」
ローナ「おそらく…炎を放出するまえに攻撃されたことで、体内で爆発したようね」
⑱『があぁぁぁあああああ~!!』
>> 164
⑦「そろそろ。止めだぜ」
凱は苦しさから暴れ回るドグロの頭上に高くに飛び上がる。
⑦「脳天に攻撃されたら!いくらお前でも…どうなるか!見物だぜ!」
落下の勢いに乗り、凱はガイブレイドを放つ。身体はオーラに包まれ、まるで隕石のように降ってくる。
ドカアアァァァァァァァァァ
⑤「うわ…痛そうだな」
見事、ガイブレイドで脳天をとらえる。ドグロは倒れはしないものの今にも倒れそうにふらついている。
⑱『がぁ…ぁ…ぁ』
⑭「クリス!そっちに飛ばすぞ!」
①「あぁ。いつでもどうぞ」
竜剣を回しているキックの周りに渦が起こる。渦は次第に大きくなり、竜剣と共鳴し、剣を包む。
⑭「受けてみよ。竜族の剣技を…」
ゴオォォォォォ
⑱「ぐっ…」
竜剣を振る。剣からは渦が放たれ、ドグロを襲う。渦は巨体のドグロを軽々と吹き飛ばし、クリスの元に飛んでいく。
①「我、自然の中に生きることを誓い…我、自然の中で死ぬことを誓う」
胸に剣を当て、お馴染みのポーズをとるクリスの元に狼人間が飛んでくる。
①「やあぁぁ!!」
クリスは飛んだ。吹き込んだ剣は威力も倍増し、ドグロの腹部やすやすと切り裂き血が吹き出す。
>> 165
⑱『……』
吹き飛ばされていた勢いおいもあってか、ドグロは勢いよく倒れ込む。
ドゴオォォ
倒れただけで、地震のような揺れだ。これだけでも今まで戦っていた敵の強さがうかがえる。
ヤン「やったな。ガハハハハ」
ザック「結局、なんの役にも立たなかったな。ヤン。戦え糞が…」
ローナ「現場まで来ただけでも進歩よ」
カリーナ「ほんま…手強かったわぁ今まで戦った相手で一番やで」
⑪「あ~あ。僕も戦いたかったなぁ」
⑦「リオにはまだ早い相手だぜ。まぁ俺をギャフンと言わせてからだな」
⑪「ちぇ。ふんっだ」
ほっぺを膨らませ、ふてくされる。
⑤「はっはは。餓鬼だな反応が…あっ」
①「セロ!お前はもっとやる気を出しな!」
⑤「すいません…」
⑭「皆、ボスは倒したが、肝心のセレナをまだ助けていないぞ」
キックはミスチルとオジオンを睨む。オジオンはセレナを抱えている。
⑦「すんなり返してくれるといいんだけどな」
①「分かった。私が奪還してくる」
⑤「ちょと!何が分かったんだよ…あっおい」
交渉役が一番不適切なクリスが二人の元に歩いていく。
>> 166
①「セレナを返せ」
クリスは二人の前で立ち止まると剣を抜き言う。人質をとられているとは思えない態度である。
ミスチル「美しい…まるで女神」
ミスチルはクリスがストライクゾーンのようで漫画なら目がハートになっているだろう。
①「3秒やる…」
オジオン「ふむ」
①「3…2…」
カシーン
剣を振る。クリスの剣はオジオンには届かず、見えない壁に遮られた。
①「魔法か…」
オジオン「3秒はまだだったはずだがのぅ」
①「私は気が早いんでね」
クリスの身体を風が包んでいく。
オジオン「止めておけ…クリスよ。お前にはこの防御魔法は破れない。破る必要もないぞ。儂は約束は守るからな」
①「!?」
オジオンは赤子でも扱うかのようにセレナをゆっくりとクリスの前に寝かせた。
オジオン「ほれ…あと数時間は眠っているだろうが、心配いらんぞ」
①「セレナ…」
警戒しながらクリスはセレナを抱き上げる。
オジオン「だが…」
①「っ…」
セレナを抱え、両手が塞がってから、オジオンが喋り始める。クリスの眼光は鋭さを増し、オジオンを睨むつける。
>> 167
オジオン「だが…銀狼とは変わっておる。月を見れば狼人間に変身する。実に変わっとる」
オジオンは吹き抜けとかした天井をみやげる。
①「月が…」
空は雲が徐々に晴れ、月が顔を出していく。
⑭「クリス!早く!こっちに戻ってこい!」
①「あぁ!」
オジオン「ドグロは高級銀狼だ。月がなくとも狼人間になることが出来るが…月がない時に変身しても力が半分もでないらしいな」
走ろうと足を動かした時にオジオンはそう切り出した。
①「半分だって…」
もちろん、クリスはくいついてくる。
オジオン「そう。半分じゃ…月の下ではドグロはあの倍の強さらしい…もっとかもしれんが」
ミスチル「あぁ力が溢れてきます!」
ミスチルの身体はどんどん大きくなっていく。
オジオン「おやおや…ここは狼人間が多くて困るわい」
瓦礫もあちこちで動き始める。
⑦「まさか…銀狼たち生きてやがるのか!」
ローナ「そのようね」
瓦礫からは次々に狼人間と変貌した銀狼たちが出てくる。
⑤「おいおい。数百の狼人間を相手になんて…」
ザック「おい…アレ…」
⑭「狼人間と言うよりゾンビだな」
⑱『やぁ』
>> 168
⑱『あれぐらいなら…死にはせんぞ』
ドグロの身体は月の光を浴び、傷はみるみる完治していく。
⑭「暴れたりてなかったんだ」
⑦「だな」
キック・凱は剣を抜く。
ヤン「戦うか久々に」
「ガルルルルル」
狼人間たちは凱たちにせめ寄ってくる。
ローナ「あら?珍しいわね」
ザック「??」
空気が乾き、大地が揺れる。
⑦「なっなんだ」
①「敵?」
ゴオォォォォォ
一瞬、目の前を金属の蛇のようなものが横切ったともった瞬間。数百の狼人間全員が分厚い鉄に拘束され、動くことすら出来なくなっていた。
⑦「え…」
⑭「錬金術?」
⑪「え?僕じゃないよ?こんな量の鉄、操れないし」
ゴオォォォォォ
①「次はなんだ?」
ローナ「相変わらず…派手な登場なこと」
隕石かと思ったが、空から大鉄球が降ってきた。鉄球は大きな音をたて、部屋の中央に落ち、土ぼこりを舞い上げる。少し転がると機械音を上げ、4つに開く。
⑦「お前は…」
⑱『てめぇは…』
鉄球の中には三人の男たちが立っている。
「おい…偶然だぞ。決して、心配してきたんじゃねぇ」
その中の一人、将棋稼ぎ7のリーダーこと大錬金術の…
カリーナ「頭!隼!タカの子!」
>> 169
ナナ「さぁ!俺が来たからもう安心だ!」
ナナは瓦礫につまずきながら、足取り危なげにドグロの前まで行くとそう言った。
ローナ「見てられないわ…」
派手な登場だったが、いまいち決まっていないナナを見て、額に手を当て呆れる。
カリーナ「頭!サイコーやでぇ!」
ヤン「ガハハハハ」
隼「ふん」
ザック「お前らも来るとは珍しいじゃないか?おう?」
隼「私は頭の護衛に来ただけだ」
タカの子「……」
ナナ「やぁやぁ。ドグロさん。天井見事に崩れてますね~それに埃っぽいし…いやいや」
薄ら笑いで、マントについた埃を払いドグロと向き合う。
⑱「貴様は…賞金稼ぎ7の…」
ナナ「そうです。そうです。賞金稼ぎ7の頭ナナです」
マントの下に隠しもっている金属球を手にとりつつ、無防備を装い話しているが、気を許していないところを見るとドグロはお見通しのようである。
⑤「おっ!頭さんじゃんか!さっきの錬金術もあの人か!」
⑪「助けに来てくれたんだぁ」
⑦「アイツが仲間とためといえ…ただで動くとは思えないけどな」
⑭「ふむ…確かに何かあるかもなあの薄ら笑いは…」
>> 170
ナナ「凱、一つ貸しだからな!」
目はドグロを見据えたまま、凱にそう言うと懐の鉄の塊を握った。
ナナ「鉄界、四面楚歌!!」
ズズズッ
ドグロの周りを茨の分厚い鉄柵が覆う。
⑱「こんな、子供騙しが効くか直ぐに蹴散らしてやる。」
赤黒いオーラを放ち鉄柵を引きちぎろうとするがビクともしない。それどころか、段々ドグロに狭まって来る。
⑱「ぬうっ!?」
隼「頭の大錬金術奥義は伊達じゃない」
カリーナ「大将はん、降参するなら今のうちやで。」
ザック「前に俺が暴走して暴れた時、ソイツで身動き取れなくされたの思いだしたぜ。」
⑱「ぐぎぎっ…」
段々と鉄柵の幅が狭まっていく。
銀狼手下「ドグロ様っ!」
タカの子「動いたら消す…」
銀狼達に向かって右手を翳すと手のひらに光が集まる。
⑦「これで、形勢逆転だな。」
ヤン「俺たち賞金稼ぎ7の力思い知ったか。ガッハハハ!」
肩にグレートアックスを担ぎヤンは大笑いをした。
>> 171
ナナ「さぁ~話合いといきましょうか?」
⑱「ぐぐっぐ!こんなもの!くそっ!」
鉄の檻は完全にドグロの動きを封じているようだ。腕さえ動かせていない。
ナナ「無駄ですよ。この技から逃げられた者はいない…それにお仲間の命も握っているしね。」
登場の錬金術により、周りの狼人間たちも皆、鉄に拘束されている。
ナナ「私が少し念じれば皆粉々に出来ます。貴方も例外じゃない」
ドグロに手をかざすと鉄は更に締めつけを増す。
⑱「ぐっう…き…」
ナナ「さぁさぁ姫様を返してもらおうか!」
ミスチルとオジオンの方に向かってそう叫ぶとナナは錬を練り始める。
オジオン「やれやれ」
ミスチル「ふぅ」
ミスチルたちの周りに突如、無数の鉄槍が出現し、周りを取り囲む。鋭い先端を持つ槍はあと少しで身体に刺さるほど近くで止まる。
⑭「これほどの錬金術を…アイツ一体何者だ…」
⑦「ただの道から外れた落ちこぼれだ」
①「落ちこぼれ?」
>> 172
ナナ「大人しく返して貰えると嬉しいんだけどね」
ミスチル「……」
槍に囲まれているというのに顔色一つ変えない二人に近づいていく。
隼『頭!!』
ナナ「うっ!?」
隼が駆け出す。だが、間に合わないと踏んだ隼は大声で叫んだ。タカの子は素早く銃を構える。
⑱「やぁ!爪が甘いな!」
ドグロが、狼人間から銀狼に戻って、背を向けたナナに襲いかかったのだ。巨体の狼人間から銀狼に変われば鉄檻から簡単に脱出できる。
ナナ「人間型に!!」
銀狼が月を見れば狼人間になると言うことは周知されているが、意外に高級銀狼の存在は知られていない。
⑱「銀波!」
丸い黒眼鏡をかけながら、黒いマントをなびかせ、身体を捻り、剣を抜く。
ナナ「くっ!」
人間型になったドグロのスピードは狼人間とは比べものにならないぐらい早い。さらに月の光を浴びスピードが増している。
ナナ「ぐおぉ!」
錬金術を使う間もなくドグロの剣波を受けたナナは吹き飛ばされる。
隼「貴様ぁ!」
一瞬、遅れ駆けつけた隼は躊躇せず斬りかかる。
⑱「ふっ!」
>> 173
ナナ「ぐはぁ…」
吹き飛ばされたナナを凱とカリーナが受け止める。
⑦「格好つけるからこうなるんだ!」
カリーナ「頭!死なんといてや!」
ナナ「うぅ…痛てぇな。全く手加減をしらない奴は困る。よいしょっと」
ナナは直ぐに起き上がると服を払い、背筋を伸ばす。
⑦「おい。大丈夫なのかよ」
ナナ「あぁ。俺も色々あってね」
⑦「色々?」
凱はナナの剣波をうけた腹部に目をやる。服は破けているが、外傷は見当たらない。よく見ると皮膚が銀色に輝いている。
⑦「まさか…お前…」
ナナ「あぁ。禁術だ。俺の身体は鉄そのものになったよ」
カリーナ「頭…」
隼「くっ…」
剣を次々に繰り出すが、一向にドグロを捉えることは出来ない。虚しく宙を斬るだけだ。
⑱「当たらんなぁ…はぁ」
首をかしげ、欠伸をし、挑発する。
隼「貴様ぁ!なめよって!」
隼の剣はオーラをまとう。何か技を繰り出すつもりのようだ。
⑱「待て待て!」
だが、それより早くドグロの蹴りが飛んできた。身軽な隼は軽々吹き飛ばされる。
隼「ぐっ…」
⑱「そこのタカの餓鬼も銃をしまえ…俺様はもう闘う気はねぇよ」
タカの子「…」
>> 174
タカの子「……」
ナナ「銃をしまちゃってね」
銃を構えたまま動かないタカの子にナナは言うと素直に銃を下げた。この二人の関係はいまいち分からないが、タカの子はナナの命令しか聞かないようである。
⑱「お前らはまだやりたいのか?おう?」
武器を納めていない凱たちに向かって言うと黒眼鏡の位置を直す。
⑦「どうする?」
⑭「ここは武器を下ろした方が賢いかもな。姫の身の安全も確保したようだしな」
キックはナナと一緒にミスチルらの近くから離れたクリスとセレナたちを確認する。
①「セレナは無事。心配しないで」
セレナはクリスに抱えられ、眠っている。
ナナ「姫様はお休み中のようで…それにしてもかわいい」
セレナの寝顔を覗き込みにやける。
カリーナ「頭!セクハラやでぇ!アホ!」
ナナ「あっもうちょっと…ちょっとだけ…あっ」
今にも手を出しそうなナナをカリーナは服を捕み、強引に引き離す。
⑱「昔の戦友の子供にこうも合うとは年を感じるぜ」
クリスとタカの子を見つめながら、腰を下ろし、葉巻を口にくわえる。
①「代々分かってるけど…姫を拐った理由を教えて貰おうか」
セレナをキックに預け、ドグロに歩み寄る。
>> 175
ミスチル「……」
ボォ
ミスチルは手から炎を出し、時空移動でクリスの前に現れる。
①「なっ!」
ドグロとの間にわって入ってきたミスチルに素早く剣を抜く。
ミスチル「いやいや誤解です…私の仕事でしてね。葉巻に火をつけるのは」
クリス「っ……」
そう言うとドグロに火を差し出し、ドグロの後ろに控えた。
⑭「ふぅ…ややこしい奴だ」
竜剣を抜き、早とちりしたキックは恥ずかしそうに剣を収める。
⑱「俺様が姫を拐った理由は…」
①「私たちを呼ぶためだろ」
ドグロは頷く。
⑱「まっ…のこのこ来たお前らは俺様の思惑通りってことだ。おまけ(賞金稼ぎ7)は計算外だったけどな」
葉巻を吸い豪快に煙を吐く。煙はドーナツの形を描き、直ぐに消えてしまう。
⑤「分からないのが…なぜ俺たちを呼んだか?」
瓦礫に隠れていたセロは安全確認をし、ドグロに問いかけた。
①「あの馬鹿…今まで隠れてたな」
⑱「ふっふ。くだらん理由だ。大賢者様の予言を信じて呼んだだけ…貴様らが銀狼を救うだとよ!更には世界までだと!」
⑦「俺たちが銀狼を?」
⑱「連合軍の大軍を前にして、藁にもすがる思いでってな!自分で自分が笑える」
>> 176
太い葉巻をくわえていたドグロは、口からふ~っと紫煙を吐き出すと、クリス等を見回した。
⑱「我等、銀狼族は政府軍の目の上のたんこぶみてえな扱いを受けてきた…」
更に、ドグロは葉巻をふかした。
⑱「それが、違う星雲から来た連合軍の奴らに乗せられ、政府軍の連中はますます調子に乗って俺たち一族を迫害してきやがった。」
⑱「俺たちは、頭にきて銀狼族と政府軍の生き残りをかけたウマンダ星雲第二次大戦をおっぱじめた訳よ…」
ジジジッ
ドグロはしかめた顔をして葉巻を握り締めた。
クリス等一行はじっとその話しに耳を傾けている。
⑱「始めは、俺たちがゲリラ戦法で有利に事を進めていたんだが、誰が知ったのかシルバーブレッドが弱点だとバレて苦戦しだした。」
シュボッ
新たに葉巻に火をつけふかしだした。
>> 177
⑦「シルバーブレッドって何だ。」
凱はドグロに尋ねた。その横いるカリーナが口を挟んだ。
カリーナ「はあ~っうちでも知ってんのに、あんたハーフのくせして、知らんの…呆れたわ!」
赤いくせのある長髪を掻きながら言った。
⑦「いいじゃねぇかよ!俺様が知らねぇもんは知らねーんだよ!」
フンッと鼻息を荒くして凱は答えた。
⑱「二人ともよく聞け!シルバーブレッドとは銀の弾丸…ソイツを銀狼の眉間に喰らったら体中の細胞を破壊し動きが取れなくなり、最後には灰になっちまう…恐ろしいものだ。そのシルバーブレッドの材料となる鉱石はピンタゴ星雲には無く、小人族が住んでいるフクラ星雲ムーク星の地下に眠っていたらしい。」
ローナ「知らなかったわ!そんな物があったなんて…」
ローナはビックリした表情で言った。
①「私達の星雲に銀狼族を滅ぼす鉱石があったのか。」
クリス等も驚きを隠せずにいた…
>> 178
ドグロ「だが…シルバーブレットはまだ序の口だ」
葉巻を吸い終わり、新しい葉巻を取り出す。すかさず、ミスチルが火を差し出す。
ドグロ「シルバーブレットは連合軍にとって副産物に過ぎねぇ」
⑭「副産物?」
ドグロ「そうよ…副産物だ。奴らはある研究を進めるうちに偶然シルバーブレットに使われる鉱石が銀狼の弱点となることを知ったんだ。連合軍にとっちゃシルバーブレットなんど大した価値もねぇんだ。奴らの研究はそんなもんとは次元がちがう」
①「種族の弱点の発見すら副産物程度にしかならない研究…一体なんの」
クリスは重い口調で言う。それほどの研究とは一体…
ドグロ「聞かないほうがいい時もある…が…それでも聞きたいか?」
①「えぇ。連合軍が何をしようとしているのか…それを知らずに止めることは出来ないから…」
ドグロ「はっは…お前らマジで連合軍とやる気かよ」
額に手を当て、笑う。
①「そう。連合軍に勝つつもりよ」
クリスは強い眼差しでドグロを見つめる。その目を見たドグロからは笑みが消え、表情が強ばる。
ドグロ「その目…父親そっくりだぜ」
クリス「父親似って言ってだろ」
ドグロ「くっく」
>> 179
ドグロ「今から言うことは全て真実だ。なんなら証拠も見せていい」
そう言ってから数分間黙り込む。周りは静かにドグロが口を開くのを待つ。ようやく口を開いたドグロからは耳を疑う真実が語られる。
ドグロ「連合軍が進めている研究は…人を作り出す研究だ」
ローナ「ウソでしょ…そんなこと…」
⑤「マジかよ…」
⑦「そんなこと可能なのかよ」
驚愕するクリスたちにドグロは更に衝撃的事実を口にする。
ドグロ「驚くことにその研究は既に成功させ…第2段階の人間族以外の種族の作り出す研究すら成功させ…第3と研究を進めてやがる」
①「まさか…」
⑭「ありえん。人間にそんなことは出来ない」
ミスチル「信じろと言う方が無理かもしれません。ですが、連合軍の戦闘員の半分近くは人口的に作られた人間なのです」
カリーナ「そんな…」
⑦「じゃあ…今まで戦ってきた連合軍の中にも…」
ミスチル「考えてみて下さい。連合軍のあれほどの兵力をフラク星雲だけで賄えるとは思えません。既に連合軍の兵力は以前のフラク星雲の人口の何倍にもあっていることが確認されています。ここ数年の間にこれだけの人口率の伸び率通常では有りません」
>> 180
⑤「確かに…」
⑭「いや…それだけでは真実とはいいきれん!私はそんな…馬鹿げた事は信じない!」
連合軍は確かに数年で強大な力をつけたが、それだけでは証拠になりはしない。
オジオン「儂は世界の隅々まで見ることが可能だ。なんなら連合軍の生産施設を見せてやってもいい…まぁ、魔法の泉ごしに見たものなど信じはせんかな」
地の大賢者、世界の番人と呼ばれるオジオンが事実と言うのだ。間違いはない。分かってはいるが信じたくはない。
ナナ「裏界で噂は聞いたことはあったが…本当だったとは…」
※裏界:賞金稼ぎ・暗殺者・傭兵など裏の世界の輩が集まる場。
ドグロ「人間に始まり…いまや全種族も作られているらしいが…それでだけで、研究は終わっていない」
ザック「連合軍め!俺みたいな奴も研究の初歩だったかよ!」
ドグロ「まぁ貴様は機械と人間の融合実験にされたわけだ。連合軍は更に全種族を融合させた化物を作り出そうとしている。パーフェクトをな」
①「っ…」
絶句するクリス。
⑭「馬鹿な!神への冒涜だぞ!自然の摂理を無視するにも程がある!」
鞘を握りしめ、怒りをあらわにするキックだが、怒りをぶつける相手はいない。
>> 181
ドグロ「世界の均衡はすでにずれてきている。各地で異変も確認されてるしな」
オジオン「うむ。しかし、まだ世界の均衡が完全に崩れた訳ではない。連合軍がパーフェクトと命名する新たな生物を生み出す前に止めることが出来たなら均衡を守ることは出来よう」
ローナ「オジオン様…魔法界は黙ってみていたのですかっ!今の今まで何の対策もしなかったのですか!」
オジオン「…均衡を守るため各七つ惑星には一人ずつ大賢者がおる。フラク星雲の管轄は炎の大賢者じゃたが…奴は闇の道に走りおったのだ…奴のお陰で連合軍の研究を事前に察知することが出来なかったのだ。情けないが…儂も含め大賢者たちは自分の星で精一杯じゃた」
ドグロ「と~まぁ…今になって魔法界も慌てて対応してるって訳よ。ほっときゃ魔法界も消滅しかねないからな」
⑭「しかし…魔法界がその気になれば今からでも連合軍は簡単に止められるのではないのか…魔法界は世界の危機と言うのにまた世界に関わらずの掟を貫くつもりか!」
オジオン「いや…世界には干渉せぬの掟はあくまでも均衡が崩れないまでの話よ。連合軍が世界を征服しようとも均衡は崩れはせんが…奴らの研究はそれほどの物…」
>> 182
⑤「じゃあさ。なんで連合軍を止めれないのさ~魔法界は魔法使いたちを収集してさ。レイカ星に乗り込んでドイスを倒せば…魔法界からは何処の星でも行けるって聞くし簡単じゃないの」
オジオン「簡単…そう簡単だ…大賢者を集めレイカ星に行きドイスを倒し、施設を破壊し…なんなら賢者数千人を率い連合軍を一人残らず壊滅させてもいい…」
①「なら…なぜしないのです」
オジオン「簡単じゃと思っておった…だが…実際は違っておったよ。レイカ星…いやフラク星雲でもはや魔法は使えなくなっておったのだ。魔法が使えねば儂はただの老いぼれじゃ」
ローナ「魔法が…」
オジオン「そうじゃ…魔法が使えん。いや使えるやもしれぬ…ドイスあやつならな…なにせ儂らとは根本的に違うからな。そうじゃろクリス?」
①「……」
ドイスの正体を知る数少ない者の中に入るクリスはオジオンと目線をそらす。ドイスのことを考えるだけで【あの事件】が頭をよぎるのだ。や・つ・らが全てドイスに見えてくる。事件の後、数年のうちは身の周りの物がドグロではないかと怯えたものだ。
⑤「クリス…」
セロはそんなクリスを心配そうに見つめる。
>> 183
⑤「クリス…」
クリスと出会ったのは10才の時だ。セロは親の顔も知らない。修道院の院長の話だとセロは赤子の時、門の前に捨てられていたそうだ。今となっては親を恨むとか馬鹿げたこと思っていない。逆に感謝しているよ修道院に捨ててくれたことを…捨てられた修道院は修道院として通ってはいたが、子供の受け入れ施設のようなものだった。俺以外にもその修道院には捨てられた子供が沢山いたし、修道院での厳しい生活もつらいと思ったこともなかった。そんな修道院にいて、10歳の誕生日をむかえる年にクリスがやってきた。修道院には男の子供が多く、女子は少しはいたが、俺好みの女はいなくそれが唯一、修道院の生活での不満な点だった。まぁ10歳で女の事で不満がってるなんて変わっていたけど…そんな中、衝撃的な出会いだった。その日は朝から雨だったが、俺の誕生日でいつになく陽気だった。修道院ではいつも素っ気ない食事ばかりだったが、誕生日だけは晩御飯が豪華になるのだ。修道院の子供は1年に一回の誕生日が待ち遠しくてたまらない奴が多かった。俺もそのうちの一人だったけど。そんな日にクリスはやってきた。
>> 184 クリスは兄らしき男子に手を引かれながら修道院にやってきた。顔は泥だらけで、髪は乱れ、服は所々破けている。綺麗な剣を大事そうに抱えながら、不安そうな顔で、頭一つ分、背が高い男子をみやげている。男子も同じく乱れた格好で、背丈の3倍はありそうな重そうな剣を背負っている。俺は友達数人とそんなクリスたちを影から見ていたが、二人は揃って、美形で、見た瞬間にクリスに一目惚れしてしまった。誕生日にやってきた美人に気持は高ぶる。ここ数日で、この修道院には十人近い子供がやってきていた。院の人の話だと国中で、大勢の人が死んだらしい。子供の俺には詳しいことは説明してくれなかったが、院内の慌ただしさから、そうとうな事が起こったようだ。兄らしいき男子は院長に「親が死んで、身よりがない。どうかここに置いて貰えないだろうか」と言った。男子は子供だと言うのに言葉使いは大人のようで、しっかりとしていた。院長は親を失った経緯は聞かず、修道院の中に招きいれた。普通なら経緯ぐらい聞いてもおかしくないが、ここ数日で、やってきた子供は皆同じ理由のようだ。国で起こった事件で親を失いやっとの思いでやってきたのだ。
>> 185 二人は院長室に入っていく。数時間後に出てきた時には簡素だが、綺麗な修道院の衣服を着て出てきた。持っていた剣は見当たらない。当然の事ながら修道院で剣を持ち歩くこと許してくれない。後から聞いたが、二人の剣は父親から貰った大事な物らしく手放ささせるのに院長は苦労したようだ。大切に保管し、定期的に見せること条件にやっと渡したらしい。二人は修道院にいる子供たちの前で自己紹介するが、クリスは今とは別人のようだった。最初の数ヵ月は何処か周りを恐れていて、喋る時もいつも下を向く暗い女の子だった。直ぐに今にいたったが…男子はやはり兄らしく雷と名乗った。格好いい。男の俺でもそう思うぐらいだ。容姿もさることながら、同じ修道院の服を着ているのに何処か雷が着ている服が格好よく見える。不思議だ。当然のことながら雷は女にもてた。そんな雷をよく思わない男子たちが出てくるのはこれまた当然で、年上の青年たちが数人係で喧嘩をしかけたこともあったが、一瞬で泣かされていたようだ。流石は雷と言ったところだ。
>> 186 俺はというとクリスしか見えていなかった。俺は積極的に話かけるのだが、クリスは事件の影響で兄以外の人間を怖がり直ぐに逃げれてしまう。今思うとこれは結構ショックだったな。クリスと雷は修道院の子供とは馴染もうとはしなかった。家系は有名な剣術使いらしいことは院長から聞いたが、いつも二人で、木の棒を剣に見立て、剣術の修行に励んでいた。そんなクリスたちを遠くから見るのが日課となった俺は暇潰しに本を読みながら見守っていた。一番嫌いな読書が好きになったのもこの時からだろう。よく読んでいたのが銃や機械に関する本だった。これのお陰で、修道院から抜け出した後も仕事には困ることはなかった。抜け出したと言ったが、修道院にお世話になる見返りに大きくなったら修道院で働かなくてはならない。俺は一生修道院での生活でいいと思っていたから別にここで働くことは嫌ではなかった。だから、抜け出すつもりもなかったが…
>> 187
そう言えば、雷とクリスの兄妹が入って来た1ヶ月後に、又しても両親を亡くしたキルトと言う同じ年齢の男の子が修道院に入ってきたっけ。自分は窓際に腰掛けて本を読みつつ、そいつを眺めると何故か腰には円盤に刃がついているものをぶら下げて頬はこけ眼孔も鋭く光って、触れると切れそうなナイフみたいな奴だったな。当然の事だが、人を傷つける危険な武器は修道院に募集され落ち込んでいた。
ずっと、本を読んでいるつもりだったが、同い年と言う事もあって話し掛けると無視された。だが、俺の持ち前のキャラクターで友達になりそして、最近入った雷やクリスにも紹介した。何でも、腰にぶら下がっていたやつは親の形見らしい。しまいには雷の力強さに惚れ込み勝手に弟分になっていたっけ。
>> 188 クリスが来て、一年以上経った時には俺とクリスは大分と打ち解けていた。毎日毎日、近くで見守っている俺に興味をもったのだろう先に話しかけてきたのはクリスだった。まさに俺の粘り勝ちだったな。事件の影響で内気にはなっていたが、元は明るいクリスだ。俺とクリスは次第にお互い無くてはならない者同士になっていた。あっ、誤解はしないでほしい。今もそうだが、俺とクリスはそう言う関係じゃないぞ。あくまでも親友以上ではない。絶対うん絶対そうだ。俺だって最初は女として見ていたが、今じゃ兄弟しかも姉貴にしか見えないからなぁ。今になって改めて思うと人生で一番幸せだったころはこの時期だったかもしれない。だが、そんな日々は長くは続かなかった…クリスとの出会いの日、俺の誕生日の日のようにその日は朝から分厚い雲に覆われ、雨がひっきりなしに降っていた。
>> 189
俺はその日、朝から雨ということもあり、自室で、本を片手に外を眺めていた。部屋からは裏庭が見え、雨の中、雷が木棒を振って修行に勤しんでいるのが見える。クリスの姿は見えない。まさか、それが修道院で雷を見る最後になるとは思いもよらなかった…
修道院で育った子供はその恩を返すため、一生、修道院で働かなければならないと前にもいったが、その厳しい見返りを拒否する者も多いのも事実で、半分以上の者は一度は逃げ出そうとして失敗し厳しい罰をうけた経験者たちだ。逃亡が失敗する原因は院長を含め院の人の大半が魔法使いで、修道院には至るところに監視魔法がかけられており、外には強力な結界も張られている。監視魔法をなんとかかいくぐったとしても結界はどうしようもないだろう。故に今まで逃げ出せた子供は一人もいない。だが、そんな無敵の監獄を破る者が出たのだ。
>> 190 本を夢中になって読んでいると廊下から院の人の叫び声が聞こえてきた。俺は何かあったのかと思い慌てて、廊下に出た。目の前を走っていく院の人の後についていくと残酷な風景が目に飛び込んできた。見慣れた修道院はあちこち破壊され、何人もの院の人が血を流し倒れている。俺は言葉を失いその場に座り込んでしまう。周りから悲鳴に似た叫び声しか聞こえこない。俺は這って前に進む。この場から逃げたい一心で、ひたすら前に進んだ。すると前方に聞きなれた声が3つ聞こえてきた。「命だけは」と何度も繰り返す院長の声、そして、修道院を殺戮の場にした二人の見慣れた男子…一人が長剣を振る。院長は力なくその場に倒れ、もう人の男子が院長が首から下げていた門の鍵をはぎとる。雷は俺のことに気がつくと「なんだ。お前か…クリスは頼んだ…俺はしなくてはならないことが出来たんだ」 そう言った。キルトから鍵を受け取り重そうな扉を開き、早々と外に出ていく。俺はそんな二人をただ見守ることしかできなかった。
>> 191
あの時、雷を止めていればクリスも後を追うようなことは言わなかったし…兄弟同士殺し合うようなことにはならなかった。俺はあの時から何も変わっていない。クリスと雷の関係は悪化するばかりで、止める力もない。だが、クリスは…
⑤「俺が…」
⑭「どうした?大丈夫か?顔色悪いぞ?」
⑤「あっ…あぁ大丈夫だよ」
⑭「なら…いいが…あまり思いつめるなよ。似合わんしな」
⑤「はっはは」
⑱「貴様らは大戦…つまりこの連合軍との戦いのキーらしい」
①「キー?」
オジオン「さよう…この大戦で勝利するためにはクリスお前たちの力が不可欠と出ておるのだ。大戦の英雄となる者たちの力が必要だ」
ナナ「たいそうな名がついたな。凱。くっく」
⑦「大戦の英雄か…くすぐってぇな」
⑱「俺様も姫さん拐って、手荒の真似までしてこんなこというのは気がひけるが…どうか…俺様に力を貸してくれねぇだろうか!」
ドグロは頭を下げる。
>> 192
⑭「貴様。よくそんなことを言えたものだ」
セレナを拐い、キック自身も拐われ牢獄で監禁されていたのだ。当然ながら、キックは聞く耳をもっていない。
①「確かにやり方はまずかったけど…連合軍と闘うためには力(仲間)が必要なのよ」
⑭「私はこのような奴と手を組むつもりは断じてない」
⑤「あらら~時期、竜王候補が反対じねぇ」
⑱「そう言われても仕方はない。だが、銀狼族の次に滅ぼされるのは竜族やもしれんぞ」
⑭「なっ!我らは貴様銀狼とか違う!連合軍にやられはせん!滅ぶのは貴様らだけだ!」
⑱「なんだと!低種族がぁ!」
今にも斬りかかりそうな両者。
オジオン「止めよ」
杖で床を二度叩く。すると地鳴りと共に小さな泉が現れた。ダンテスティン星のハークの部屋、エルフ国の塔の最上階にあったものに類似する泉だ。
⑭「それは…魔法の泉」
※魔法の泉:賢者以上の魔法使いにだけが扱える魔法界との通行口。また大賢者ともなれば世界中の泉間での移動も可能。主に世界をのぞく窓として使用される。
オジオン「さて…お客様が来られるお時間だ」
泉は金色に輝く。
>> 193
⑦「なんだぁ」
ナナ「こりゃまた…」
金色に輝く泉の水面に人影が現れる。
①「ハーク殿!」
泉から現れたのは風の大賢者ハークであった。ハークに続くように雷の大賢者マリーンが出てくる。
②「いやぁ…変わった建物じゃな」
崩れ落ちた天井をみやげ、床一面の瓦礫に目をやりそう呟く。
ナナ「ふふ。俺ら凄いとこにいると思わねぇか…」
隼「と?言いますと?」
タカの子「……」
ナナ「7人の大賢者のうち三人がいるんだぜ…ずげぇ」
ハークはマリーンの手をとり、泉から引き上げる。
マリーン「皆さん。お久しぶりです」
⑦「マリーン!良かったぜ!元気そうで!」
凱は直ぐに駆け寄る。
マリーン「凱!会いたかったわ!心配してくれて有り難う!」
飛びかかるように凱に抱きつく。
⑦「あわわ…なにすんだ」
凱は顔を真っ赤にし、マリーンから離れようとするがむやみに身体を触るわけにもいかず、どうすることも出来ずにいるようだ。
マリーン「ふふ。この通り人間同士の仲になったんだから堅いこといわないの」
マリーンは髪を上げ、隠れていた耳を見せる。エルフ族の尖った耳はそこにはなく、普通の耳になっている。
>> 194
⑦「マリーン…耳が!?」
凱は驚きを隠せないようだ。思わずそう言う。
マリーン「そう。私はあの時、魔力を使いきったでしょ。そしてぇ、魔法老のお力で、一命はとりとめたわぁ。でも、魔力を使い切ったってことはエルフでもなくなってしまったの。今は少しは魔力は戻っているけど…エルフに二度と戻ることは出来ないわ…だから今、私は人間よ!種族の境もこれでなくなっね!」
マリーンは更に強く凱を抱きしめる。
⑦「っておい」
逃げようとする凱だがマリーンは強く抱きしめ逃がさない。
⑤「おっ!ラブラブだねぇ。人間なった大賢者様…なんか、若返った感じだなぁギャルぽい」
ローナ「あら?羨ましそうね」
①「ふ…」
⑤「う…羨ましくなんて…な…ないよ!」
横目で見てくる二人に慌てて、背を向ける。
⑫リオ「凱。子供の前で見せつけてくれるね」
⑦「馬鹿!見るなぁ!」
マリーン「あら?いいんじゃなくってぇ?」
今にも押し倒されそうな凱はリオに見られまいと必死だ。
⑫「クリス。瓦礫の中でいいもの見つけたんだけど」
①「いいもの?」
⑫「これさぁ」
リオは黒い毛玉を差し出す。クリスはこれが何なのかは直ぐに分かった。
>> 195
①「デビル。何処行ってたんだ」
クリスは毛玉を摘まみ持ち上げる。すると毛玉は一回り、二回りと大きくなっていく。そして、手足が飛び出すと最後に顔が現れた。
デビル「珍獣族王!デビル様の登場じゃぁ~い!寂しかったかい?クリス」
デビルの第一声はクリスの機嫌を損ねたようだ。デビルは一度バウンドさせられ、投げられる。
デビル「てって…痛いよぉ」
デビルは頭から生えた先端が矢印型の触覚二本を交差させる。
①「もとを言えば!デビルお前が勝手にいなくなったからこんなややこしいことになったんだから!」
⑭「まったく」
デビル「まぁ~いいじゃんか!一件落着したようだしねぇ!」
デビルは跳ねまわり、能天気にそう言うとオジオンの肩に乗る。
オジオン「お主、いつから地上に出たのだ」
どうやら二人は知り合いのようだ。デビルはオジオンの問いに歯茎まで見える笑みを浮かべ答える。
デビル「つい最近ね。この通り…アンタの封印で、力は戻ってないけど」
オジオン「お前の力が戻る時、それはお前が本当の善者になる時だけだ。封印前にいったはずだがの」
デビル「半殺しにして言われてもねぇ…」
>> 196
ハーク「お主がしでかしたことが元凶で封印されたのじゃ…オジオン殿にあたるのはよさぬか」
デビルは過去を思い出したのか、急に大人しくなった。
⑤「デビルって…大賢者に封印されるようなことしたの?争いをさけるために自らを封印したんじゃなかったのかよ」
⑦「さぁな」
声を潜め、セロは言う。だが、オジオンには筒抜けだ。
オジオン「こやつはエルフ族の争いに巻き込まれたくなかったのは本心じゃった。だが、自らが人柱になり、珍獣族を地界に封印したと言うのは歴史を都合のよいように変えたエルフの話よ」
ハーク「真実はのぅ…もっと複雑でな」
デビル「そうそう」
①「聞かせては貰えないでしょうか?ハーク殿」
ハーク「この話は地下の扉に深く関わる話になるゆえ…この場では話せんのだ理解してくれ。これはダリル・タカ・7大賢者との約束じゃ」
①「そっそうですか…」
クリスは肩を落とす。あのシーラ星で見た地下の扉は今でも鮮明に頭に焼き付いて離れていないのだ。覇と名乗る男の言葉も気になっている。それにあの扉の向こう側に…求めるものがあるような気がしてならない。
ハーク「さて…本題に入ろうかの」
>> 197
⑦「本題?」
マリーン「そうそう」
マリーンはまだ凱に抱きついている。凱も慣れたようで、顔は赤らめてはいない。
ハーク「おや?儂が何も用がなくてきたと思ったかのぅ?」
長い髭を触りながら、キックに抱えられているセレナに近づくと呪文を唱える。
⑭「おっ!姫!」
優しい光がセレナを包む。
ハーク「お目覚めのお時間ですぞ。セレナ姫」
するとセレナはゆっくりと目を開ける。
③セレナ「あっ…わ…私…」
ハーク「では…状況だけ説明しておこうかのぅ…水の大賢者殿に空の大賢者殿のお二人方もこのピンタゴ星雲に来られておる。霧の賢者に嵐の賢者も呼び寄せておる最中じゃ」
クリスたちは話についていけず、ただ、大賢者同士の会話に聞きいる。
オジオン「弟子の霧の賢者・嵐の賢者まで呼ぶとは…今回の敵はそれほど強敵と言うことか…私も弟子の賢者を何人か呼び寄せてはおる…役に立つかは分からんが」
ハーク「うむ。キメラの奴も前にも増して、力を増幅さておる。それに大賢者クラスの魔力を持ったものが一人…7大中将もきておる」
>> 198
②「7大中将は真紅の鎧を身につけているグラカスと言う者を筆頭に女性ただ一人のカラスに、昔剣豪風神タカと互角のサム、鞭使いのベンガル、二本の曲刀をブーメランのように飛ばすジャッカル、体中に虫を飼っているボリック、リュートを奏で催眠をかけるコイルと調べはこんなとこじゃ。だが、素性が知れない者ばかり気を抜くと痛い目にあうぞ…」
ハークは蓄えている白い髭をさすりながら皆に言った。
①「ああ、十分に分かっている。」
⑦「こんだけいりゃ大丈夫だろうぜ。」
凱は皆を見回した。
カリーナ「おもろくなってきよった。」
ザック「切り刻んでやるぜ。」
シュイー シュイー
手を電ノコみたいな形に変形させニヤついている。
ローナ「ザック!また、残酷な事考えて…」
呆れ顔で顔を横に振る。
>> 199
ナナ「武器と戦艦は俺が何とか調達しよう。ただ資金がな…。」
ドグロ「ふ~っ!心配しなくてもよい。我等一族の財宝で買うがよい。」
勢いよく煙草の煙りを吐き出すとドグロはミスチルに指示を出した。
ミスチル「御意に!」
かしこまると、数人の銀狼を連れて何処かに行ってしまった。
オジオン「何やら、弧人たちも動いているみたいだが…今は、さほど気にしなくても良いじゃろ。」
⑦「チッ!また、砦の野郎じゃねぇだろうな。今度はギタンギタンにしてやる。」
足をジタバタささせているとドグロが凱に尋ねた。
ドグロ「お前は混じっているな…然もまだ覚醒していないようだな。」
⑦「覚醒!?」
マリーンは驚く凱にべっとり引っ付いたまま離れようとはしなかった。
ドグロ「そのうちに分かる。」
>> 200
ドグロ「しかし…今は急がんでもいい」
今にもウマンダ星に乗り込もうとするクリスたちを見て言う。
①「だが…」
ドグロ「説明してやれ」
ミスチル「はっ」
ミスチル「ですが、この散乱した場では話も進まないでしょう。此方に」
ミスチルに先導され、一同は隠し通路を通り、椅子並び、中央には長机、会議室といった風景の部屋に行く。
ミスチル「どうぞ。お座り下さい」
部屋には何人か先客がいた。中年の男たち数人はひげ面に威厳たっぷりで、席についている。恐らくは宇宙海賊の幹部であることが伺える。
②「ふぅ…やっと落ち着けたわい」
③「ハーク、元気でなによりです。心配したんですよ」
②「いやはや…すいませんのぅ」
各々、席について行く。隼とエルフの子はナナの背後にたち警備に余念がない。
デビル「ねぇ?なんか食べ物ぐらい出してもよくない?」
小さな身体には不釣り合いの大きな椅子に座っている。
⑤「お前、相変わらずだなぁ…」
ミスチル「あっ…これは失礼致しました。直ぐに」
手を叩き合図を送ると部屋に銀狼の女たち数人が彩りどりの豪華な料理を運んできた。女たちは料理を運び終えるとドグロの両脇にひえる。
>> 201
デビル「へへぇ…いだだきま~す!」
待ちにまった食事を夢中になって、口に運んでいく。直ぐに自分の分を食べ尽くし、隣のセロとリオの分にも手ならぬ口を出す。
⑤「あっ!お前ぇ!」
⑪「食いしん坊ぉ~!」
必死に二人は食事を守るが、飢えたデビルの口の中にどんどん入っていく。
ミスチル「いやぁ…そんなにお気に召して頂いて光栄です」
①「ゴホン、お話を聞かせて貰いませんか?」
ミスチル「これはっ…すっすいません。凄い食べっぷりに見とれていました」
ミスチルは姿勢をただす。
ミスチル「政府軍は今や連合軍と化しました。ウマンダ星の軍力は凄まじいものになっています。これ程の軍を壊滅させるのは…我ら宇宙海賊では到底不可能です。しかも…この星に連合軍・政府軍の大艦隊が向かってきています。もはや1日ほどの猶予しか残っておりません」
ローナ「まさに絶望的状況な訳ね。こっちに来ている軍力はどれほどなの?」
ミスチル「敵は我らの軍力の十倍です」
ザック「話にならねぇな」
⑦「だな。軍力の差を埋める手は何かあるのか?」
ミスチルはため息をつく。
ドグロ「あったら、藁(クリスたち)にすがらねよ」
>> 202
ナナ「あらら…」
カリーナ「あかんやん」
ドグロ「そう言うな。虚しくなるだろがっ」
ドグロは葉巻を机に擦りつけ、視線を中年の男たちに向ける。
「ドグロ様。命令通り、部隊を星の周りに配置済みです。2日は持ちこたえてみせますぞ」
一人の男がそう言うと他の男たちは頷く。
ミスチル「と…言うことですので、連合軍がこの星にくるまでの猶予は3日ですね。ただ、宇宙線で2日持ちこたえた場合、宇宙海賊の半分は壊滅しているでしょう」
オジオン「時間さえ稼げれば…空に水の大賢者方も来られる。そうなれば5大賢者が揃う。星をおおう大結界を張ることも可能だ」
②「じゃが…オジオン殿。結界を張ろうとも時間稼ぎにしかならぬ」
オジオン「時間稼ぎさせ出来れば…他星から援軍を…」
⑭「お言葉ですが、それは無理でしょう。竜人族はムーク・ライジング星の連合軍との戦いで精一杯です。エルフ族は復興だけで精一杯。何処の星も力は残っていません」
①「そうです。周りの星からの援軍は望めません。今この星にいる軍だけでどうにかしないと」
ドグロ「ふっ。だから…それが出来たら苦労しねぇよ」
ドグロは女たちを両脇に抱きながら、呆れている。
>> 203
マリーン「敵の総大将を倒せば…指揮は落ちるのでは?」
マリーンは凱の右腕にしがみついきながらそう言う。
ナナ「だがよぉ…敵の大将ってのはキメラ将軍だろ?」
ハーク「うむ。力を増したキメラを倒すのは軍を倒すのと同等以上に難しい」
ナナ「それに…7大将軍も一人一人が雷総将軍なみだと聞くぞ(裏界で)。キメラに近づくことすら難しいだろうよ」
⑦「乗り込む。やっぱ小人数精鋭でウマンダ星に乗り込むべきじゃねぇか?」
ローナ「まぁ…死にたかったらね」
オジオン「討論ではらちがあかぬな」
ミスチル「では…今日はこのぐらいにし、明日にしますか。皆さん。お疲れでしょう」
デビル「そうそう。そろそろ寝る時間だしね」
デビルは机に並んだ。食事をほぼ一人で平らげると早々と部屋を出ていく。
⑤「あっこら!また勝手に!」
③「待てぇ。私も行くわ」
二人は直ぐ後を追う。
ハーク「オジオン殿にドグロ殿。今日はこれにて…でよろしかのぅ」
オジオン「分かった。また明日に」
杖で床を一度叩くとオジオンは姿を消す。
ドグロ「ミスチル。客方を部屋に案内してやれ」
そう言うとドグロは女たちと何処に行ってしまう。
>> 204
⑭「姫とセロでは心配だ。私もデビルを追うか!」
キックは鞘に手を当て、慌てて、セレナの後を追う。
ナナ「ところで…商売の話なんだが…賞金稼ぎ7を…」
ミスチル「はい。傭兵として雇わせて頂きます。青の惑星での大ダコ討伐は見事でした。是非我らとともに戦って下さい。」
ナナは回答を聞くなり、懐から請求書を取り出す。
ナナ「7人分の傭兵費はこれぐらいかな。前金はこれぐらいで」
ミスチルは請求書に目をとおす。クリスは横から覗き見るが【0】の数が多く目眩がした。
ミスチル「少々…お高いですね…」
ミスチルは頭をかく。
ナナ「大錬金術の俺がいる分、値もはりますねぇ」
ミスチルは少し考え、渋々、了承した。ナナの大錬金術を見たからには味方にしたいという気持が勝ったのだろう。明らかに不当な金額に捺印する。
ミスチル「では…部屋へご案内致します。近き戦いに備え皆さんゆっくりお休みなって下さい。此方です」
ミスチルに先導され、長い廊下を進んでいく。建物全体がまるで迷宮のようだ。隠し扉はいたる所にあり、何もなかった壁から銀狼が出てくることが、度々おこり、何度も驚きながら、クリスたちは進んでいく。
>> 205
ミスチル「すいません。黒の惑星はご覧になられたとおり、死の星です。地上は砂漠でとても住めるところではありません。ですので、銀狼族は地下に都市をつくり生活しております。海賊の住みかですので、複雑な作りになってはおりますが、以外と快適ですよ」
リオは突然、隠し扉から出てきた銀狼族の女の子と正面衝突し、尻餅をつく。
「あっ…ごめんなさい。大丈夫?」
⑪「痛ててぇ…あっうん。どうにかね」
ミスチル「あなた!この方々はドグロ様の客人ですよ!無礼な!」
ミスチルは剣に手をかける。
「あっ…お許しを…ミスチル様…客人とは知らず」
ミスチル「客人への無礼はドグロ様への反逆と同じです!」
剣を抜く寸前のミスチルをクリスは制止する。
①「止めて。無礼なら貴方の方よ」
⑪「そう。僕はなんともないからさぁ。君、早く行って!」
女の子は今にも泣きそうな顔で、リオに礼をすると逃げるように走っていった。
ミスチル「失礼いたしました。部屋は直ぐそこです」
剣から手を離したミスチルは小さな声で、何か呟くと肩を落とし、再び歩を進める。
>> 206
②「いやぁ…ダンテスティン星を出てから、色々な星の建物を見てきたが、建物を見る度に驚かされるのぅ」
地下というのに明るい通路は照明のようなものは一切なく。壁自体が光を放っている。壁はきめ細かな美しい絵が描かれており、とても海賊の基地とは思えない。
⑦「やけに女が多いよな。なんでだぁ?」
今まで、会った銀狼たちは皆、女であることに疑問をいだいた凱は言う。
ナナ「そりゃそうだろ。宇宙海賊の男たちは宇宙船に乗って年中、仕事だぞ。それに今は戦争準備で宇宙にかりだされてるだろうしな」
ミスチル「皆さん!着きましたよ!」
ミスチルが突然止まり、何もない壁を指さす。
カリーナ「なんもあらへんやんか…隠し扉かいな?」
カリーナはミスチルが指さす。壁を押す。すると扉か現れた。
隼「面倒くさい建物だな」
⑪「迷っちゃうよね」
カリーナ『きゃあぁぁ!凄いやん!』
一番乗りで、部屋に入っていくカリーナは中で叫んでいる。
ミスチル「ご安心を…何処かへ行かれたい時は銀狼がつきそいますので…中は十部屋ありますのでご自由に」
>> 207
マリーン「さぁ!私たちも入りましょう!も・ち・ろ・ん!相部屋でぇ」
⑦「わぁぁ。止めろって」
凱の腕を掴み強引に引っ張っていく。魔法でも使っているのかと思うぐらい強い力だ。
ローナ「恋の力って偉大ね」
ローナは一人マイペースで、中へと消えていく。
①「ミスチルとか言ったっけ?セレナとキック…デビル…あとセロの4人は連れてきてくれるだろうな?」
ミスチル「勿論です。お連れいたしますよ。では、私はこれで」
頭を下げると来た通路を戻っていった。
ナナ「クリスちゃん!俺と相部屋どう?」
自分では決めているつもりだろうか、足を交差させポーズをとる。
①「クリスちゃん…私は慣れ慣れしい奴は嫌いでな。じゃ」
ナナとは目すら合わすことなく部屋の中に入っていく。
ナナ「あらら…」
隼「頭…」
エルフの子「……」
ナナ「う?ありゃ?」
軽く傷ついたナナであったが、向こうから歩いてくる集団に気がつくと急に身構える。
隼「協会の連中がなぜ」
こちらに歩いてくる集団の先頭は赤い十字架のマークが入った鎧を身につけた。裏界の中心、謎多い財団協会の協員である。
>> 208
ナナ「これはこれは…協会の方とこんなとこで会えるとは」
協会員「ナナ様。賞金稼ぎ7も傭兵として銀狼側におつきになられるのですか?」
協員は全身、近未来的な鎧をまとい。声は音声機を通し、男か女すら変わらない。
ナナ「そうなるねぇ。後ろの剣士たちは傭兵か?」
協会員三人の後ろには強者揃いの剣士数十人が、殺気にみちた表情でナナを睨んでいる。
協会員「そうです。銀狼族の長、キャプテン・ドグロ様からの依頼で、傭兵を集めれるだけ集めております」
隼「貴様ら協会が、連合軍の敵に手を貸すとは珍しいな」
協会員「おや…心外ですよ。協会はあくまでも皆様に平等にサービス(傭兵依頼・暗殺依頼・賞金依頼)を提供しております。連合軍様はただ大口のお客様に過ぎませんよ」
ナナ「ふふ。ならもっと傭兵連れてくるんだな。そんな数じゃ連合軍は相手に出来ない。裏界には腐るほど暇人がいるだろうがっ」
協会員「そうしたいのですがね。連合軍様の大口の依頼で傭兵が出払っておりまして」
兜ごしだが、協会員が笑みを浮かべているように感じる。
ナナ「ふっ…協会の考えそうなことだ」
協会員は会釈し、その場から離れていく。
>> 210
⑭「竜王…竜王様」
キックは一部屋に閉じこもり、竜紋鏡に向かい何度も話かけていた。だが、向こうからの返事はこない。
※竜紋鏡:竜人たちの通信機のようなもので、映像と音声のやりとりが可能である。特殊な魔力を込めた鏡で、見た目は手鏡といったところである。
⑭「やはり…距離が遠過ぎるか…」
諦めかけた時、音声は大分と荒れているが、竜王の声が聞こえてきた。
『ガッ…キック…とれるか?』
⑭「はっ!竜王様!聞こえます!」
『ガッ…ツ…そうか。そちらは順調か?』
⑭「順調とは言い難いですが…近々、連合軍と再び交えます。今回ばかりは…私とて弱気になるほど相手は強大です。まさか…敵に老剣士サムがいるなんて…」
竜紋鏡からは音声が一時聞こえなくなる。通信が、途切れたのではなく竜王がサムの名を聞き動揺しているのだろう。昔、竜斬りサムとうたわれた男は老剣士と名をかえている。
『サム…ガ…奴にやられた多くの同士…我肉体に残るこの傷跡…ガッ』
⑭「私は自信がありません。偉大な竜王様(竜型時)に傷を唯一つけた男に勝つ自信など…」
>> 211
『キックよ。我ら竜族は多く子を生む。お前の亡き母も25人、子を生んだものだ。言うまでもないが、25人の我子の中でお前は飛び抜けて強い自信を持て』
⑭「ですが…私は竜王の足元にも及ばない」
『お前は私を超える竜よ。キックお前は知らんだろうが、【竜剣】は【試しの剣】と言われておる。代々、竜王は次期竜王となるものに【竜剣】を授ける。』
⑭「試しの剣…」
キックは自分が身につけている剣に目をやる。まさか、ただ貸してもらっているだけだと思っていた剣が、そんな大事なものだったとは…
『その剣は竜に目覚めるための剣。武器にして、武器にはあらず、竜剣の真の力を目覚めさせば…ガッ…私でも勝てなかった。サムにも勝つことができよう」
⑭「目覚めさせる?」
『そうだ。おっと…ガッ…ヒントはここまでだ。これ以上言うと地下で、眠ってやがる爺ども(先代の竜王たち)が怒るんでな。次合う時は竜の姿で会おう…期待しておるぞ…ガガガガガ」
それっきり竜王との通信は途絶えた。キックは竜剣を握りしめながら、竜族の宿敵サム打倒を決心する。
⑭「私が倒してみせる」
>> 212
①「カラス…まさかな」
クリスはベットに横になりながら、ダンテスティン星で、1年余り一緒に用心棒の仕事をしていた女性を思い出していた。連合軍の7中将のうちの一人と同名のカラスという女性である。
①「あり得ないかぁ…アイツは国に帰ったんだし」
バタン!!!
部屋の扉が勢いよく開く。寝ているローナを抱えたカリーナが入ってきた。
カリーナ「クリスはん!一緒に寝えへん!」
①「えっ…あの…あっ!ちょっと!」
カリーナは有無を言わさず、クリスと同じベッドに寝転がる。抱えていたローナは隣のベッドに放り投げた。
ローナ「むにゃ…」
起きていたなら激怒しているローナだろうが、静かなものだ。
カリーナ「まぁまぁ。せっかく仲よおなれる機会なんやし、部屋別れて寝るのもなんやろ!な!」
①「そっ…そうですね」
カリーナ「クリスは連中と旅してながいん?」
①「連中?凱とかセロとですか?」
カリーナは大きく何度も頷く。
①「3ヶ月ぐらいですかね。セロとは長いですけど…凱・セレナ・リオとはまだそれぐらいです」
カリーナ「そうなんかぁ」
>> 213
①「カリーナは…ナナさんのチーム?に入って長いの?」
何処から持ってきたのか、お菓子を口に運ぶカリーナは満足そうに食べいる。
カリーナ「うちは賞金稼ぎ7に入って、もう3年になるでぇ」
カリーナ「あっ!」
扉がゆっくり開く。
③「私も一緒にいいかなぁ?」
カリーナ「歓迎やでぇ!姫さん!」
①「セレナ」
③「クリス。心配させてごめんなさい」
①「ほんと…無事で良かったぁ」
クリスはセレナを抱きしめながら涙を目になっている。
カリーナ「感動やねぇ」
ローナ「そのようね」
カリーナ「え?起きてたん?」
ローナはカリーナの間抜け面を見て、呆れる。
ローナ「あんたが…うるさいせいでよく寝れたわ。勝手につれてきてくださるしね」
カリーナ「どういたしましてぇ」
本気でお礼を言われたと勘違いしたカリーナは真顔でそう答えた。
ローナ(天然って…気が楽でいいわ…ほんと)
ローナは布団にくるまるが、三人の明け方までの話声のおかげで中々眠れないのであった。
ローナ「はぁ…早く寝たい」
>> 214
①「あっ…そういえばデビル見つかったの?セレナ?」
③「それは……」
部屋でクリスたちが寛いでいる一方セロはと言うと…
⑤「はぁ…キックの奴も旨いこと言って逃げやがって…ったく」
セロは一人薄暗い廊下を歩いていた。
⑤「もう夜が遅いから姫の身体にさわる。姫一人でいくのもなんだから、私も一緒にもどる。セロ…頑張って探しておいてくれ…く~キックの奴ぅ~俺も休みたいんだよぉ~」
数分前のことを思い出しながら、ぼやく。
⑤「だいたい…デビルなんて探さなくてもまた戻ってくるよ」
とは言うもののセレナが別れ際、デビルの事が心配だからお願いしますと泣きそうな顔で言われ頷いた手前、手ぶらでは帰れないのであった。
⑤「セレナもあれだよなぁ…お人好しにも程があると言うか…デビルのせいで拐われたみたいなもんだし、それでもデビルの事心配してるんだもん。夜も遅くてしんどいだろうのにキックが無理にでも休ませなきゃ俺と一緒に今もデビル探してんだろうなぁ。可愛いいよなぁ~ほんとクリスとは大違い」
⑤「う!?」
セロは突然、背後に気配を感じ、後ろを振り向く。
⑤「なんだ…誰もいないじゃん…気のせいか」
>> 215
⑤「クリスの悪口いうとつい身構える癖がついちゃったよ。はは…」
後ろに誰もいないことを確認するとセロは再び、前に向きなおる。
「どうも」
⑤「って…わぁぁあああ」
前方にマントを着た男が立っているではないか、しかも、間近に…男は尻餅をついたセロに手を差しだす。
⑤「だ、だ、だれだ!」
男の手にはつかまらず、素早く腰の短銃を抜く。
「おっと…物騒な」
男はマントの下から、杖を取り出し、一言唱えるとセロの銃を弾き飛ばした。
⑤「なっ…早や」
早抜きには自信があるセロだが、男の方上手だ。杖を出すのを目で追うことすら出来なかった。
「さぁ…手につかまって」
⑤「あ?い?」
どうやら危害を加えるつもりはないらしい。魔法使いの男は笑顔で再び手をさしだし、セロを起きあがらせる。
⑤「で…あんた…誰?敵ではなさそうだけど…」
飛ばされた銃を拾うセロだが、男は止めようとする気配はない。
>> 216
⑤「敵なら撃つけどね」
セロは拾った銃を男に向ける。30歳半ばの男は短めの青マント、長めのズボンとバランスの悪い服装で、長い髪を後ろでくくっている。杖には不気味な頭蓋骨が埋め込まれている。
「どちらかと言えば味方かな。私の名はラ・ドルといいます。名前が【ラ】なもんで、皆からはフルネームで呼ばれてるよ」
⑤「ラ・ドル…その頭蓋骨はなんなのさ」
セロは銃で杖についた頭蓋骨を差す。
ラ・ドル「あぁこれは…私の愛する人だよ。うん彼女は美しかった。今でも美しいが、生きていた当時は…そりゃ美しかったぁ」
ラ・ドルは頭蓋骨を撫でながら言う。
⑤「あんた…友達いないでしょ」
ラ・ドル「あっよくわかったね。なんなら君が私の友達第1号になってくれてもいいよ」
⑤「遠慮しとく…ラ・ドル十分あんた怪しいよ。まずは武器(杖)を捨ててくるないかな」
引金を引き、ラ・ドルの頭に銃口を向ける。
ラ・ドル「おいおい。私と彼女の仲が羨ましからって…捨てろはないだろ」
ラ・ドルは杖についた頭蓋骨にキスをする。
⑤「う…こんなタイプ苦手だ」
ラ・ドル「はっはは…よく言われるよそれ」
>> 217
コトン…コトン…コトン
⑤「う?ハーク様!?」
後ろから杖をつきながら、ハークがやってきた。
②「やっと…きよったかぁ。嵐の賢者よ」
ラ・ドル「師匠…お久しぶりです」
ラ・ドルは彼女(頭蓋骨)とお辞儀をする。
②「そちも元気そうでなによりだ」
ハークは頭蓋骨に手をおきそう言うので、セロは少し後ろにひいた。
⑤「えっと…あの…」
②「おぉ。すまんすまん。コイツは儂の弟子でのぅ…嵐の賢者の称号を得たそれなりに魔法使いじゃ」
ラ・ドル「いやぁ…師匠にほめられると嬉しいなぁ」
②「うむ…性格はこんなんじゃが、嵐の名にふさわしく素早い魔法発動が得意な奴でのこの戦いの助けになってくれるだろう」
ラ・ドル「あんまりあてにしないで下さいね」
②「にしても…セロ。こんな所でなにをしておるんじゃ?」
ハークは長いひげをさすりながら言う。
⑤「あ…そう。そう。デビルを探してたんだった」
②「あやつまた何処かへいったのか…ふむ。どうやら…食糧庫にいるようじゃ」
ハークは水晶を覗き込み、水晶に息を吹きかける。すると光る蝶々が現れた。
②「この蝶々を追っていけばデビルの元に連れて行ってくれるはずじゃ」
>> 218
⑤「あわわ…待てぇ~ハーク様!有り難うございます!」
飛んでいく蝶々をセロは慌てて追っていった。
②「で…ダンテスティン星はどうじゃった?」
セロの姿が見えなくなってからハークは口を開く。
ラ・ドル「はぁ…実に厳しい状況です。連合軍は予想以上です。ダンテスティン星の人々も多くとらわれています…人質に使われたら星を奪還するのは難しいでしょう」
ラ・ドル「捕虜となって連合軍の動きを監視するようにと命を受けておりましたから…突然の呼び出しに驚きましたよ」
②「うむ…お主たち二人には監視役としてダンテスティン星に残っておってもらいたかったが、どうも人手不足でのぅ…ところで、霧の賢者はどうしたのじゃ?」
ラ・ドル「アイツは霧のようなもんですから…それに王子もおこしですのでそちらの警護の方に」
②「エリトリア王子が来られておるのか!それはセレナ姫もお慶びになられる!」
ラ・ドル「それはそうでしょう。生きておられると思ってもいないでしょうからね。私も姫が喜ぶ顔はみたいです。ですが…」
>> 219
ラ・ドル「我ら賢者二人はエリトリア王子を今まで守ってまいりました。あのお人は人間族の王となられるお方です。今は誰の目にもつかず、身を隠された方がよいのです」
②「分かっておる。ならなぜ?ピンタゴ星雲まで来られたのじゃ?」
ラ・ドル「エリトリア王子はセレナ姫が連合軍を倒すため戦っておられることを耳にし、自分だけが隠れているのを許せなかったのです。私たちがセレナ姫のもとに行くと聞いてついてこられました。あの方の命には逆らえませんから」
②「……」
ラ・ドル「しかし…王子は姫に合う権利はないと言っておられるのです。自分は逃げてきた…だが、姫は自分が隠れていた今まで戦ってきたのだからと」
②「じゃが…姫はそんなこと咎めはせん」
ラ・ドル「エリトリア様は自分に厳しいお方です。けじめをつけられれば姫と会われるでしょう。今は別の目的で来られたようです」
②「ふむ…」
ラ・ドル「師匠…私疲れてまして…彼女も休ませてあげたいですし」
彼女の頭をさすりながら、わざとらしく疲れているかのように装う。
②「分かった…話は部屋に行ってからにしようかの…全く困った弟子じゃわ」
>> 220
ドンドン
カリーナ「どないしたんや?こんな夜更けに。」
腫れぼったい瞼を擦りながらドアの鍵を開けるとそこには、ナナ・隼・タカの子・ザック・ヤンが立っていた。
①「ふあ~っどうしたんだ…」
クリスは剣を構えていた。その横でスースーとセレナまだ寝息を立てている。
ナナ「ガッハッハッ!海賊王キャプテン・ドグロから資金はがっぽり頂いた。早速だが賞金稼ぎ7は武器・食糧・戦闘鑑の調達に動いて貰う。連合軍は待っちゃくれねぇからな。」
ローナ「はぁ結局、私はあまり睡眠とれなかったわ。」
不機嫌な顔をしてカリーナの方を見る。
ヤン「頭の言葉は絶対じゃ。」
巨体を揺らして笑う。
ザック「ったく、頭にはいつも振り回されるぜ。」
隼とタカの子は黙って立っている。
ナナ「じゃあ、ちょっくら行ってくるぜクリス。姫さん守ってなっ」
①「ああ、分かってる。」
カリーナ「話し楽しかったわ。ほな、行って来るで!」
カリーナはウインクすると、まだブツブツ言っているローナを引っ張ってドアから出て行った。
>> 221
ナナたちを見送ったクリスは再びベッドに横になる。
①「可愛らしい寝顔だこと」
くすっと笑いながら、セレナの無邪気な寝顔を眺める。
①「セロは結局デビル見つけられたのかな」
少し横になっていたクリスたが、どうやら目が覚めてしまったようだ。眠気はすっきりとれている。
①「それに凱はどうなったことやら」
カーテンを開け、両開きの小窓を開けると清々しい空気が部屋をかけめぐる。外は徐々に明るくなってきており、小鳥も所々で鳴き始めている。
①「少し早いけど…」
クリスは防具を手慣れた動きで身につけていく。そして、剣を腰につけ、いつもの身なりを整える。
①「傷が酷いな。今度新しいのを買うかな」
戦いを通し、傷ついた防具を渋々と眺めながら、部屋にいつのまにやら用意されていた銀狼族の朝食(堅いパンに生肉がのり、紫色の酸味が強いソースがかかったもの)を食べ。簡単に朝食をとると寝ているセレナを起こさないよう部屋を出る。
>> 222
①「セレナを一人にするのもなんだけど…この部屋通らないといけないから大丈夫か」
この客室は個室が十部屋からなる部屋で、廊下に通じる中央の大部屋から各個室に行く構造になっているため、今、クリスいる大部屋を通らない限りはセレナがいる個室にはいくことはできない。
①「ふぅ。気がきくな」
大部屋に置かれているテーブルには入れたての紅茶が置かれている。紅茶を口に運び、椅子に腰を下ろす。
②「早い目覚めじゃの」
①「あっ!ハーク様!」
後ろから気配を消し話かけてきたハークに驚きつつも軽く会釈をする。
ラ・ドル「お綺麗な女性だ。まぁ彼女ほどではないが…始めまして、私はラ・ドルです。名前がラなもんで皆からはフルネームで呼ばれています」
ハークの横には頭蓋骨を撫でながら笑みを浮かべる見知らぬ男が立っている。クリスは少し身構えたが、ハークが自分の弟子であることを説明し、ようやく警戒をとく。
①「始めまして、ラ・ドルさん。私はクリスといいます」
⑪「この人変わってるし、面白いよ!」
ラ・ドルの後ろからリオが顔を出す。リオが言うに友達第1号になったらしい。
ラ・ドル「ね~」
①「ね~」
二人は嬉しそうだ。
>> 223
オジオン「ふぅ。私を殺しにでもきたか…」
地下深い一室にオジオンはいた。魔法の泉からは黒いローブを着た男が不気味に笑いながら、姿を現す。
オジオン「魔法の泉の結界を破って私の元までくるとは…既に私の力を越えておったか」
男は深くかぶっていたフードをゆっくりと上げ、鋭い眼光でオジオンと目を合わす。オジオンの目は男とは違い穏やかな目で、弟子である男を見つめる。二人の距離はほんの数mだというのにまるで、間には高い山が立ちはだかるようだ。
オジオン「裏切り者がよく私の前に出てこれたものだ」
「私は裏切ったつもりなどないがな。私は信念は昔のままだ…ただオジオン殿とは並行線だが」
オジオン「……」
「隠居されたと聞いたが…わざわざ死期を早めるために出てこられるとは昔と変わらずお人好しなお人だ」
オジオン「私を殺すか?キメラよ」
⑪「いえ今日は止めておきましょう。それに殺さずとも老体の貴方は勝手に死なれる。今日は挨拶がてらに寄っただけです。ついでに銀狼族を皆殺しにしていってもいいがね」
オジオン「一人で敵陣に乗り込むとは…よほど力に自信があるのだな」
>> 224
⑪「まさか…私を倒そうとでも?」
オジオン「ここには風の大賢者ハークもおる。それに賢者もの」
⑪「ふっふ…ハークなど今の私の力なら、なんら問題ない」
キメラは黒の惑星にいる全員相手にも勝つ口ぶりだが、それを保証するかの魔力を身体の内に秘めている。そして、魔力とは別の何かを隠し持っているような秘めたものを感じる。
⑪「こちらに向かっている空・水の賢者が来られれば少しは勝負になるかもしれないがね。魔法界の賢者たちもいつこられるやら」
オジオン「なっなぜそれを…まさか」
⑪「ドイス閣下と我が魔力の力でこのピンタゴ星雲と魔法界との繋ぎを断ち切りる強力な結界を異空間にはっておる。ここにくるには何処かの星を経由せねばこれんだろう。宇宙船でこられるとなれば魔法界の一団がこられるのは…後数日かぁ」
オジオン「完全に…封じるつもりか」
⑪「貴方たちの死に場所はここ…この黒の惑星です。私が手を下さずともリード将軍だけで手は足りるでしょう。私はウマンダ星で政府軍の馬鹿どもを上手く動かさなければいかないので失礼」
キメラは魔法の泉へと入っていく。
オジオン「くっ」
止めはしなかった。いや止めれないのだ。
>> 225
⑱ドグロ「ちっ…連合軍ども」
ドグロはメインモンターに映る連合軍の艦隊を見つめそう言う。
ミスチル「奇襲作戦は失敗に終わったようです…」
連合艦隊近くの宇宙海賊船の信号が次々に途切れていく。奇襲部隊として、攻撃をしかけた一千隻の戦艦である。
ミスチル「どうやら敵は奇襲をよんでいたようです。部隊は壊滅です」
⑱「くそっ…連合艦隊には損害ゼロでこの様か…」
ミスチル「連合軍は三大兵器のX砲を全艦に装備しているもようです。奇襲部隊も集中放火のX砲で壊滅。連合軍は速度を増し、進行中です」
⑱「くそ…」
ミスチル「我らはこの攻撃で一割近くの船を失い。指揮の低下…前線部隊が連合軍と交戦になった場合、1日もつか…」
⑱「……」
宇宙海賊の戦況は悪化するばかりであった。
>> 226
奇襲作戦で敗戦した宇宙海賊、一方、幸先よく勝利をおさめた連合軍は悠々と黒の惑星に向かっていた。
④バジリス「将軍。新型のX砲の実験には丁度よい機会になりましたな」
一隻で、従来の威力と堂々の破壊力、エネルギー注入時間短縮を得た【新X砲】は予想以上の出来栄えであった。宇宙戦では種族屈指の宇宙海賊を数分で退けたのだ。
⑯「美しい…実に素晴らしい破壊…破壊だ!」
長い髪をかき分けながら、宇宙に浮かぶ宇宙海賊船の残骸を見つめ不気味に笑う。
④バジリス「黒の惑星にはセレナ姫の一行が来ているそうです。また我らの邪魔をするつもりらしい」
⑯「そのようだな…だが、私の美の前では無力…ふふ」
二本の杖の先端についた水晶にはセレナとクリスが映されている。
④「勿論。こちらには大艦隊…それに閣下から授かった失敗作もあります」
バジリスはドイスの強力な縛り魔法で縛られた化物を一瞥し、懐から注射器三本をとりだす。
④「いざとなれば…私がこの薬を使ってもいい」
⑯「なに…この者たちもいる。完全なる美(勝利)で終わるだろう」
この者たちと呼ばれた二人は黙ってリードの後ろに立っている。
>> 227
②「困ったもんじゃ」
ハークは無邪気にリオと戯れているラ・ドルを見て頭をかく。
①「いいじゃないですか。リオも楽しそうだし」
ラ・ドルに肩車されているリオはいつになくいい笑顔だ。
②「うむ…そうじゃが…賢者としての自覚をのもっとしっかりと…かりにも【嵐の賢者】の称号をもつ者が…」
①「ハーク様。気になっていたのですが…賢者にも大賢者と同じ称号があるんですね?」
②「そうじゃ。だが、賢者が皆称号を持っておるわけではなくてのぅ…賢者のごく一部だけじゃ。ゆえに称号をもつ賢者はそれなりの力・才能を認められた優秀な賢者というわけじゃ」
②「大賢者は7つ(風・雷・地・水・空・?・?)称号の上でなりたっておるが…賢者の称号は十人十色、本人の個性により魔法老が称号を授けて下さるのじゃ。昔、【恋の賢者】という者にあったことがあるぐらいじゃ」
①「そうなんですか」
そんな話をしていると凱がお疲れ顔で小部屋から出てきた。もちろん横にはマリーンがいる。
⑦「はぁ…いい加減離せよ」
マリーン「いいじゃない?一晩一緒に過ごした仲なんだし…」
⑦「ったぁ!誤解をされること言うなぁ!なんもねぇからな!」
>> 228
「一夜を…男女二人きりで過ごして…なにもないとは…ありえるか…うん…どうだか」
⑦「なっ!!」
突然、凱の後ろから白いローブに身を包んだ男が現れる。
①「敵か!」
クリス・凱は素早く剣を抜いたが、ハークが止めに入った。
②「おっ!そやつは敵ではない。儂の弟子じゃ」
それを聞いたクリスは剣をおさめたが、凱は警戒を解くことなく剣をかまえる。
「私の…名…そう名は…【スモッグ】…偉大な霧の賢者で…もある。そう…偉大だな」
スモッグと名乗る男は無造作な髪型、顔色は青白くまるで死人のような顔をしている。ローブ・靴・杖・髪にいたるまで、全身真っ白な色で統一しており、まるで幽霊のようである。白杖は光魔法師の証でもあるため、それなりの魔法使いであることが伺える。
※光魔法師:高等魔法に位置する光魔法を極めた者だけがなることができ、白い杖は光魔法師の免許のようなものである。
⑦「なんだぁ~この気味の悪い男は!」
ラ・ドル「見た目もこれだけど。中身はもっと酷いよ」
スモッグ「くくっ…我も好きで…ここに来た訳ではない…こんな小汚ない連中とは…一秒もいたくないのだ」
>> 229
スモッグ「そう…君たちのような薄汚い奴らとは…」
そう言いながら、ラ・ドル・クリス・凱・リオを指差す。
⑦「ってめぇ!!」
スモッグの挑発に短気な凱は斬りかかる。
①「凱!!」
②「ふむ…」
直ぐにクリスが止めようと動いたが、時既に遅し、凱の剣はスモッグを真っ二つ切り裂く。ハークはこの間なんの手も出さす見守っている。
⑦「なっ…手応えがねぇ」
真っ二つに斬り裂かれたスモッグからは血は一滴も出てこない。それどころか、倒れることすらないのだ。
スモッグ「馬鹿が…分身魔法も知らんの…か」
二つに別れた身体は直ぐに元通りになっていく。
⑦「っ…なんだぁ」
マリーン「コイツは分身魔法の分身よ。本人は別の所で高見の見物かしらね」
スモッグ「私は…偉大な霧の賢者…低レベルな…お前たちに私を見られることも不愉快…なのだ」
斬りられた箇所は既に元に戻った分身は身体を動かし、動きを確認している。
②「見ての通り…こやつは食えん奴での。師匠の儂ですら、本人を見たのは数えるくらいじゃ。霧の賢者と言われる所以…高等魔法の分身術を得意とする魔法使いじゃ」
①「分身魔法…始めて聞きました」
②「うむ…そうじゃろう」
>> 230
②「分身魔法を扱える魔法使いは世界でもほんの一握りだからの…儂ですら使えん魔法じゃ」
⑪「え!ハーク様も使えない魔法を使えるってことは…そんなに凄い魔法使いなの!」
明らかに軽蔑した目つきでスモッグを見つめる。
スモッグ「やっと…私の…偉大さを…理解したか…」
②「分身魔法は幻覚で己を見せる単純な魔法ではなくての…分身は己そのものなのじゃ…分身自体に意思があり、本人と違うところは単に肉体が無いと言うことだけじゃ。分身と本人とは意思がつながっておっての分身が感じたことを本人も感じておる」
マリーン「つまり…そう言うことぉ」
凱に抱きつくマリーンは相槌をうつ代わりにそう言う。
ラ・ドル「んで…スモッグは本来一人しか出せない分身を20人だせる分身魔法のスペシャリストでね」
スモッグ「21人だ!!」
ラ・ドル「だって…魔法では偉大でも人間としては小さいんだけどね」
⑪「はっは。言えてる」
楽しそうに笑う二人にスモッグは怒りを忘れ呆れているようだ。スモッグは二人を無視してハークに話かける。
スモッグ「あのお人は我が肉体が守っております…ご安心を」
②「そうか。で…何の用できたのじゃ」
>> 231
スモッグ「師匠のハーク殿に挨拶をと…参りました…得に理由などないです…なにせ師匠にはお世話になっておりますので」
深々と頭を下げる。
②「お前がそんなことを言うと気味がわるいのぅ」
スモッグ「ふふ…おっと…長居は私にはふさわしくない…【我は現実しない霧の中の生人】ですから…」
そう言うが早いか、スモッグの身体は霧のような蒸気となり、空気中に散乱し消えてしまう。
①「変わった人ですね」
②「そうじゃな。じゃが、頼もしい力の持ち主じゃ…戦いには力になるじゃろう」
⑭「皆、早起きだな」
小部屋から欠伸をしながらキックが出てきた。太陽が顔を出し、外はすっかり朝を迎えている。
⑭「どうも…竜族は朝に弱くて…ハァァ」
何度も欠伸をしながら寝ぼけ顔で、ソファに座る。
⑦「おいおい。いい加減離れろって」
マリーン「いいじゃない」
凱とマリーンは相変わらずである。
①「私、少し外の様子見てきたいのですが?姫をお願いできますか?」
②「行ってきたらいい。姫は儂が責任をもってお守りしよう」
⑪「あっ!僕も行く!」
ラ・ドル「私も行きますよ」
>> 232
三人は意気揚々と部屋を出ていった。ハークはそんな三人をみて微笑むと椅子に腰を下ろし、机の上の飲み物を口に含んだ。だが、口に合わなかったようで、眉間にシワをよせ一口で飲むのを止める。
②「それにしてもセロはデビルを見つけたのかのぅ」
朝食を食べ終えたキックは座りながら眠っている。どうやらお腹が膨れ眠気がまたぶり返したのだろう。凱とマリーンは完全に二人の世界だ。ハークはそんな中、人数分用意された朝食に手を伸ばすが、飲み物同様口に合わなかったようである。渋い顔をしながら、朝食を少しずつ口に運んでいく。
②「年寄りの口にはどうも合わんのぅ」
油分の多い朝食に四苦八苦するハークであった。
⑪「クリス。ところで…何処いくの?」
スキップしながら、リオはクリスの後についていく。
①「連合軍は直ぐそこまで近づいてるし、私たちも少しは銀狼族を手伝えることがあるかもしれない。手伝えることがないか聞きにいくの」
ラ・ドル「それはナイスアイデア」
⑪「流石!クリス!」
①「…」
大げさに拍手する二人。二人としては真剣に誉めているのだろうが、どうも馬鹿にされているようで聞こえが悪いクリスであった。
>> 233
その頃…
⑤「はあ~ッ デビルの奴どこに行ったんだよ~ッ」
まだ、デビルの行方を捜し地下に降りる階段を下っていた。
ピチョン
いつ造られたのか砂石を削ったような造りで今にも崩れそうな階段をセロはゆっくり進んでいく。
グウ~ッ
「腹減ったな…」
チラッとメタルゴールドの腕時計を見るとハ~ッと溜め息をついた。この時計は物心ついた頃からはめているお気に入りで裏にはダッドからセロへと小さく掘ってある。
余り自分の父親の事は覚えていないが、修道院に入る前、自分が銃を習ったのは体に染み付いている。銃に関しては厳しかったが、他の事は優しく父親の背中を大きく感じていた。母親も優しく朗らかでいつも笑顔を絶やさないのを覚えている。
>> 234
自分の街にアイツが現れ黄金の二丁拳銃で父親は仲間と闘った。
その銃は変わっていて撃つと炎や雷が出たり、仲間の体を癒やしたりしていた。最終的に街は壊滅的ダメージを喰らい大好きな父親や母親、仲間は全滅していた。
ズズズッ
(んっ!何で昔の事なんか思い出したんだ…)
セロは目に涙を溜めていた。
どれくらい進んだろうか広場に出ると幾つもの扉がありセロは無造作に開けると金銀財宝がある宝物庫や食べ物が沢山ある貯蔵庫があった。
(鍵も掛けず不用心だな。)
ガツガツと音が聞こえセロはソーッと歩いて音の方に近づくとその奥で黒い物体が蠢いていた。
チャキ
銃に弾をソウテンさせ構えながらセロは声をかけた。
⑤「動くな!!」
しかし、黒い物体は動きを止めない。
良く目を凝らして見てみるとデビルが象一頭分の肉に一心不乱に食い付いていた。
ガツガツ ガツガツ
⑤「全く、もう!!デビル、みんなの所へ戻るぞ。」
ガツガツ…
デビル「んぁ!?セロか…まだたべたいよう…」
大きな肉の塊を離そうとしない。
⑤「みんな心配してるから行くぞ!!」
デビル「これやるから、許してよ。」
⑤「こっこれは…」
>> 235
デビル「さっき間違って宝物庫に行ったときに、何かカッコいいから持ってきちゃった。エヘッ」
悪びれた様子もなく黒い体毛から出てきたのは、見覚えのあるものだった。
⑤「父の形見の銃だ…」
黄金の銃を握り締めセロの手はワナワナと震えた。あの時は逃げるのが精一杯で銃の事など忘れていたが。紛れもなくこれはあの時、父親が使っていた物だ。何故なら家紋が掘ってあるから…
しかし、よく見ると弾を込める所がない。
⑤「どう使うんだ!?」
セロがグリップを握ると突然呼応するかのように光輝いた。
⑤「うわっ!!」
《念じるのだ…》
⑤「頭に鳴り響く声は…父さん!?」
《この銃は自分が思い描いた魔法を撃つことが出きる》
⑤「父さんなんだろっ!!」
《我が念の全てをこの銃に託した…我が一族にしか扱えない銃だ…威力は己の精神力によって変わる強い意志をもて…》
⑤「……。」
《我が愛しのセロよ…先に逝く父を許してくれ…》
⑤「父さん!父さん! 父さーーーんっ!!」
シーーン
デビルもセロの異変に気付き食べるのを止めていた。
辺りは静寂に包まれた。
>> 236
協会員「さぁ。遅れずについて来て下さいよ」
第2団体、第3団体と傭兵が宇宙船から降りてくる。傭兵は種族は様々で、武器も十人十色である。傭兵たちは協会員が仕切るのが気に食わないのか、どれも表情は堅い。
協会員「よし…出ろ」
操縦士「了解」
協会マークが入った宇宙船は傭兵を下ろすと直ぐに飛び立っていく。そして、入れ違いのように新たな船が着陸場に降り立つ。その船からも傭兵がぞろぞろと降りてくる。
ミスチル「ちっ…戦闘が近いと言うのに傭兵は5千人にも届いてない…」
そんな様子を見ていたミスチルは愚痴のようにそう呟く。宇宙海賊の司令官という立場であるミスチルだが、この戦いは戦闘が始まる前から戦況は悪いのだ。やはり、兵力不足は致命的である。
ミスチル「協会は恩も忘れたのか…日々、宇宙海賊の恩恵を受けていたにも関わらず、肝心な時には…役も立たない僅かな傭兵だけとは…」
協会員「ミスチル様。我々も全力で傭兵をかき集めております。決して…」
カシャ
ミスチル「貴様らは連合軍となんらかの関係があるようだな」
剣を抜き、協会員の兜に剣を突きつけ、今は人間型ではあるが、普通の人間よりは尖った歯をむき出す。
>> 237
協会員「おやおや…冷静なミスチル様が、こんなことをなさるとは」
協会員は感情のない機械音声でそう言う。
協会員「ミスチル様。どうなさいました」
他の協会員たち数人も剣を突きつけられている協会員の近くに駆け寄ってくる。片手はレザー銃に触れている。
ミスチル「連合軍とは深い関係どころか協会自体が連合軍という説も満更嘘ではなさそうだな」
だが、剣を下ろす様子はなくオーラをまとい更に協会員を威圧する。
協会員「ふっ…ねもはもない噂ですよ。協会は協力。独立機関です」
ミスチル「連合軍にとっては国や組織は潰しやすいが…個人の強者たちほどやっかいな奴らはいない。ゲリラ戦やるようなものです…傭兵・暗殺者・賞金稼ぎを管理する協会は年々、その協会加入し、仕事をするはぐれ者を増やし…ついには協会を通さねば金を貰えないまで、裏界の中心たる組織になりました…だが…」
協会員「言いたい事はお察ししますよ。ですが…我らに剣を向けるということは…協会に対しての攻撃意思となりますよ?そうなれば…我らと宇宙海賊は敵対関係となってしまいます」
>> 238
ミスチル「まぁいいでしょう」
剣を鞘に収め、協会員に会釈をする。
ミスチル「失礼した」
意味ありげに協会員を舐めるように見たあとミスチルはゆっくりとその場から離れていった。協会員たちはただ機械のように微動だにせず立っている。
協会員「では…監視役もいなくなったことですし」
ミスチルが建物の中に入っていくのを確認すると協会員の一人が船に指示を出す。すると船からは先程の傭兵とは別格のオーラを感じる男たちが降りてくる。男たちは協力員の前まで来ると立ち止まり、各々の武器を抜き整列する。男たちがもつ剣に暗殺者の証である×点の傷が彫られている。
「仕事の内用は?」
協会員「セレナ姫以外の邪魔者の始末です。報酬は貴方たちの望む金額を出しましょう」
「望む金額?ふん…なら100億…と言ってもいいのかな」
冗談のつもりで、一人の男が言う。周りの暗殺者たちからは微かに笑いがでた。
協会員「いいですよ。100億出しましょう。ですが…敵は強いですよ」
予想を反する答えに暗殺者たちはどよめく。100億なんて、一生かかっても稼げる金額ではないから、流石に暗殺者たちも冷静ではいられないようだ。
>> 239
プラス「マジかよ!数人殺しただけで!100億なんてよぉ~超ラッキーじゃんかよ!」
暗殺者の中でも一際強いオーラを放つ二人組の一人が言う。
マイナス「いや…それほどの金額…敵は我らより強い…絶対…死ぬのはやだな」
もう一人の男が言う。
協会員「では…好きに行動して貰って結構です。ただし、戦闘が始まる前に片をつけて下さい」
暗殺者たちはそれ聞くなり、銀狼族の地下町へと入っていく。
⑪「いないねぇ…銀狼の人…はぁ」
クリスたちは薄暗い通路をひたすら進んでいた。もう1時間は歩いたが、銀狼とは一人もあっていない。
①「ため息つかないで!こっちまでしんどくなる!」
⑪「あっ!なんだよ!その言い方!」
①「うるさいの!だから子供は…」
⑪「あっ!子供っていったなぁ!」
ラ・ドル「まぁまぁ。二人とも喧嘩はよくないですよ。私と彼女のように仲良くなければ…ね?」
杖の先の頭蓋骨にキスをし、笑顔を見せる。
①「うっ…そうですねぇ」
⑪「だいたい…ラ・ドルは魔法使いなんだろ~魔法使って銀狼族見つけてくれたらいいじゃんか~」
>> 240
ラ・ドル「あっそうですね!私、魔法使いってこと忘れてました!…彼女との世界に入ってしまっていて…はは」
頭蓋骨の頭を撫でるとラ・ドルは壁の一部を指差す。
ラ・ドル「そこ隠し通路があります。その先に銀狼が一人」
⑪「さっ~すが!嵐の賢ちゃん!」
リオは早速、壁に手を当てるすると壁に扉が現れた。
①「私は何してたんだか…」
1時間歩き続けた自分に突っ込みを入れるクリスであった。
⑪「アレ?開かないや…」
リオは小さな身体でめいいっぱい押したり引いたりするが扉は空きそうにない。見かねたクリスが手を貸すが、やはり開かない。
⑪「ラ・ドル。出番。魔法魔法!」
ラ・ドル「任せといて下さい!親友の頼みとあらば」
ピカッ
一瞬、扉が光ったと思った瞬間、クリスとリオは吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
⑪「痛い…」
①「ハーク様の弟子と言うのは…嘘じゃなさそうね」
扉はこっぱみじんに吹き飛ばされ、跡形もなくなっている。力の加減って奴を考えてほしいものだ。クリスとリオは身体を擦りながら立ち上がる。
⑪「ラ・ドルの馬鹿!僕たちまで吹き飛ばしてどうするんだよ!」
ラ・ドル「はは…すいません」
>> 241
ラ・ドル「ですが!道は開かれました。私と彼女の間にも最初はこの扉のように閉ざされていたのです…ですが私はそこをこじ開け!ふふ」
ラ・ドルはやっとの思いで立ち上がったクリスたちを尻目に一人扉に向かって歩いていく。
⑪「あっ。一番乗りで入っていったぁ…ズルイ」
①「さぁ私たちも入りましょう」
後に続こうとクリスが前を向いた瞬間、鈍い音が鳴り、前方のラ・ドルが倒れる。
ラ・ドル「ぎゃふん…」
⑪「え!?」
鉄球を慌てて、取り出す。リオだが、錬金術を使うまえにラ・ドルを殴った犯人をクリスが捕まえる。
①「さぁ。そのフライパンを捨てなさい」
クリスは小さな犯人に手に持っているフライパンを捨てるよう指示する。クリスの手は剣に触れている。
「あ……こ…ろさないで」
カラン
フライパンを放し、後ずさる。まだリオと変わらない歳の銀狼の女の子である。
①「どうして…殴ったの」
間抜けな顔をし、伸びているラ・ドルを指差しながら言う。
「あの…そ…そっちが」
女の子は鳴きながら片言にクリスに言う。
>> 242
「そっちが…私の…い…家に入ってきた…うぅ」
女の子はしゃがみ込んで鳴いてしまう。
①「家?ここ貴方の家なの?」
女の子は頷く。たしかに細い通路の先に部屋があるようだ。クリスたちは人の家に押し入ったようである。
①「ご…ごめんなさい!ほんと…なんていったらいいか…ごめん…ごめんね」
クリスは自分たちがしたこと…状況を飲み込み慌てて、謝る。鳴いている女の子を抱きしめ、落ち着いてもらうのを待つ。
「うぅ…」
①「安心して…家の玄関潰しちゃんたけど…あ…怪しい者じゃないから」
いきなり扉を吹き飛ばし入ってきて、怪しくないとは変だが、クリスも必死である。
⑪「あっ!その子昼間あったよ!」
そうこうしていると鉄球を直すのに手間取っていたリオがやって来た。リオの顔を見るなり女の子は「あっ」と声を出し、大声で鳴き出す。
「うわぁぁあ」
①「ど…どうしたの?…大丈夫大丈夫よ」
「客…人様…を殴った…ミスチル様に…うぅ…殺されちゃ…うぅ」
どうやらリオが客人であることを知っていた女の子はラ・ドル・クリスが客人であることに知ったようである。
①「大丈夫…私たちが悪いんだから気にないで」
>> 243
「うぅ……」
クリスが必死に宥めて、やっと女の子は泣きやんでくれる。
①「良かった。私はクリス。怖い思いさせてごめんね」
⑪「僕はリオ。夢は世界一の大錬金術者になること…んで、そこで寝てる奴は親友のラ・ドル」
リーマ「す…すいません。取り乱しちゃって。私はリーマです」
女の子は頭を下げるとリーマと名乗った。リーマは背丈はリオより少し低く。肩まで伸びた綺麗な白髪。髪に目が隠れているため雰囲気は何処か暗いが、声は明るく活気のある女の子である。
①「さぁ。扉直さなくちゃね。ラ・ドルさえ起きたら直ぐに直して貰えるわ」
床に横たわっているラ・ドルは「素晴らしい…一撃でした」と何度も呟き白目をむいている。
⑪「駄目だ…コレ…当分は起きないよ」
身体をゆすってもラ・ドルが意識を取り戻す気配はない。
リーマ「いいんです。扉なら2日あればもとに戻るので」
①「元に?」
リーマ「はい。この地下町は生きているんです。この壁・床…全て…時間はかかりますが、自己修復で扉も直ります」
①「生きてる…ってこれは建物でしょう?」
リーマは頭を左右に振り、本棚まで駈け足でいくと一冊の本を手にとる。
>> 244
リーマ「この地下町は巨大な建築物であって…そうではないんです」
本のページを数ページめくり、広げて見せる。そこには【巨大都市にして、巨大戦艦キング】と書かれており、地下町の地図が描かれている。
⑪「凄い…」
①「これは…」
地図の形は船のようであるが、まさか、この地下町が地中に埋まった巨大艦だったなんて驚きである。まさか今も飛べるのであろうか。
リーマ「キングは今から500年前この黒の惑星に着陸した以来、ずっとここにいます。戦艦だったのですが、今では住まいになっています」
竜族の巨大戦艦(竜王の戦艦)など比較にならない大きさ巨大戦艦キングは中惑星である黒の惑星と堂々の大きさであることが、本には書かれている。
①「……」
言葉を失っているクリスたちにリーマはキングの説明を続ける。
リーマ「キングはただ単に大きい戦艦ではありません。キングは生命体です。魔力を持つ戦艦なんです」
①「魔力(命)を持つ戦艦…」
リーマ「キングは今動くのかは私には分かりません。例え動かせたとしてもドグロ様以外は操縦できないですし」
⑪「動くとこ見てみたい~な!」
>> 245
①「ドグロ様以外動かせない?何か理由があるの?」
リーマ「えっと…ドグロ様は人柱のような存在で…キングから外には出ることができないんです。キング=ドグロ…私も学校で習った知識なんで…詳しくは分からないんです」
①「そうなの…う?」
クリスは剣に手を当て、厳しい顔で外の通路を見つめる。
リーマ「ど…どうしました?」
①「一瞬だけだけど…殺気がしたの」
クリスは警戒しながら通路に出る。が、通路には誰もいない。
⑪「どうしたの?クリス?」
①「いや…気のせいだった…それ」
それよりラ・ドルはどう?と言いかけた瞬間、警戒を解いたクリスに天井から男が降ってきた。
「まず…一人」
男は剣を振る。クリスの身体は軽々と切り裂かれ、暗殺者である男は満足そうにそう言った。
リーマ「きゃあぁぁ」
①「幻影だ!」
「なっ馬鹿な」
男はクリスの声で後ろを振り向くが時既に遅しである。クリスの剣撃を受け、吹き飛ばされたきり動かなくなった。
①「暗殺者か…一体誰の差し金だか」
男の剣の×点を見て、そう言うとクリスはリーマに駆け寄る。
①「大丈夫よ。さぁ奥に入ってまだ敵がいるかもしれないわ」
「はい…」
>> 246
①「リオ。リーマをお願い」
誘導をリオに任せたクリスは通路に出る。
⑪「了解。さぁ行こう」
リーマ「はぃ…」
リオとリーマは奥の部屋に入っていくのを見てからクリスは剣を抜く。
①「さぁ!まだいるんだろ!出てこい!」
クリスの問いかけに答える代わりに影から三人の男たちが出てくる。
「マジかよ。グラックの奴。瞬殺されてや~んの。バ~カ!」
先程クリスが倒した男の顔を三人の内の一人が蹴る。
「やめろ。まだターゲットを殺ってないんだ。気を抜くな。雑魚とはいいグラックを軽々と倒した女だ」
「問題ないだろ。こんな女なんてよ」
三人の男たちは剣を抜く。男たちの剣には×マークが彫られている。
①「お前ら誰に雇われてる。命を狙われる覚えはないけど」
「雇主の情報は漏らさない。それが俺ら暗殺者の掟でね。残念ながらおし…ぐわぁ」
①「風よ…舞え」
男は最後まで言い終える前に剣撃を受け、力なく倒れ込む。
①「暗殺者ってのは意外に喋りが多いようね」
一度、剣を振り。構える。明らかに男たちとは別格のオーラを放つクリス。
「お…お前!」
>> 247
①「暗殺者って言ってもたいしたことなかったな」
クリスは素早く剣を鞘に収め、倒れている三人に冷たい視線を送るとリオ・リーマの元へと戻っていく。
⑪「クリス!大丈夫だった?」
①「えぇ。問題なかったわ…でもあんな雑魚だけが私たちを狙ってるとは思えない。早く皆と合流した方が無難ね。リーマ。道案内お願い出来る?」
リーマ「はっはい…」
⑪「問題はコイツだね」
ラ・ドル「……」
三人は床に伸びている男を見て、ため息をついた。
②「ふむ…ちと厄介じゃの」
ハークの杖の水晶は客室の外にいる暗殺者たちを映していた。暗殺者たちは外から客室の様子を伺っている。入ってくるのは時間の問題だろう。
⑭「誰からの刺客と思われます?やはり連合軍ですか」
竜剣をかまえ扉の前で仁王立ちし、暗殺者を待ちかまえる。
②「連合軍やもしれんが…今はこやつらをどうにかせんとの。儂たちは別にして、ここには銀狼族の女子供が多い…早いこと片をつけねばの」
⑦「楽勝楽勝!数分で片付くぜ!」
マリーンから一時解放されている凱からは強いオーラが放たれている。
マリーン「さぁ!頑張りましょ!」
>> 248
ミスチル「なんです!どうしたと言うのです!」
一方、クリスたちだけではなく地下町キングでは暗殺者が至るところに現れ人々を襲っていた。
銀狼兵「ミスチル様!侵入者です!」
銀狼兵たちは暗殺者と戦ってはいるが、戦闘員の殆どが宇宙に出払った現状で神出鬼没で現れる暗殺者たちに苦戦している。
ミスチル「はぁ!敵の数は!」
ミスチルは目の前で女たちを躊躇なく斬りつけていた暗殺者を斬り倒し、銀狼兵の指揮をとる。
銀狼兵「分かりません。ですが、この広いキングの中で至るところで確認されています。おそらく数百は!」
ミスチル「民衆を避難させなさい!暗殺者の大半は殺人好きの殺人鬼です!目的(ターゲット)はなんであれ出くわす人が危険です!」
兵士たちは走りながら指示を聞き、各自、走っていった。
ミスチル「ドグロ様に報告せねば…」
オジオン「騒がしくなってきたようだな」
⑱ドグロ「連合軍に手一杯って時に暗殺者集団とは…めんどくせぇな」
ドグロは今、キングの中心部に位置する部屋にいた。戦艦だった当時は操縦室とされていた部屋だ。
>> 249
ゾロゾロ
次々と扉を開け何かを探している暗殺者多数がハークの水晶に映る。
②「この近くじゃの。銀狼族の女子供達を助けるんじゃ!」
⑭「ハーク、そのつもりだ。凱行くぞ!」
⑦「おぉっ!!ハークとマリーンはサポート頼んだぜ。」
バタン
凱とキック各々の剣を抜くと足早に扉から出て行った。
「きゃあ~っ助けて!」
「ヘッヘッヘッ 上玉だ。体をいただいて殺すとしよう。」
「姉ちゃんをどうするつもりだっ!」
ボガッ
小さい男の子は棒を持って後ろから殴りつけた。
「何だ~このガキっ!死ねっ」
ギラッ
暗殺者は×記しのついた剣を抜くと振り被った。
「うわぁぁぁっ」
男の子は頭を手で覆いしゃがみこんだ。
「やめて~っ!!」
姉が叫んだ。
ガキッ
⑦「間に合ったか…てめぇら、許さねぇ!!」
ゴゴゴゴ…
⑭「同じく。」
いつの間にか、数人の暗殺者が近寄って来ていた。
>> 250
⑦「三重残像剣っ!!」ブーン
「ガイッブレイドーッ!!」
ドゴオォォン
⑭「竜人剣、一閃!!」スパーン
ズババババババッ
チン
「ヒィー!歯が立たない」
後ろからマリーンその後からハークが追いつき挟みうちの形になった。
マリーン「弱い奴を手に掛けるなんて最低の人達ね!」
チリ~ン
鈴がついた杖を掲げると呪文を唱えた。
マリーン「怒号雷電!!!」
バリバリバリバリッ
「ぎゃぁぁっ」
ドサドサ
次々と凄まじい雷に包まれ暗殺者達は黒こげになり倒れてゆく。
②「銀狼族のみんな、早くこっちへ…」
⑦「サラムよ!」
ゴオッ
黒魔剣に炎が灯り相手の鎧を容易く切り裂いて燃やす。
⑭「竜人剣、怒号烈波!!!」
ドゴゴゴゴッ
「ぐはぁっ」
「おれがやられ…」
「めきゃあっ」
辺り一帯の暗殺者は皆沈黙した。
>> 251
②「こやつら以外にもまだ沢山おるようじゃ」
周りの暗殺者はあらかた倒したが、銀狼族の叫び声は今だ止んではいない。
マリーン「固まって動くのは効率が悪いわ!」
マリーンは杖から稲妻を放ち天井に張り付いた暗殺者を叩き落とす。
⑭「だが…敵の数・力が分からない以上。迂濶に動くのは危険だ」
⑦「何言ってやがる!俺は行くぜ!」
凱は早々と一人、何処かへ行ってしまう。いつものことだが、キックはため息をつきながら、竜剣を大きく回し、オーラを高めていく。
⑭「では…各自で動くとしましょう。皆気をつけて」
②「何、儂らは大丈夫じゃ。大賢者を舐めるでない」
マリーン「あっ!凱待ってぇ~!待っててば!」
⑦「勘弁してくれよ…ったく」
後を追いかけてくるマリーンに凱は小声でそう漏らした。
プラス「作戦通り!雑魚どもを好きにさせれば…奴らはそれを止めるためバラバラになったな」
凱たちの動きを監視する二人がいた。望遠鏡片手にプラスは肉に食らいつく。プラスが手に持っている望遠鏡は魔法で加工されているようだ。壁など関係なく凱たちの姿を手にとるように見るてとれる。
マイナス「ふふ…では我らも行くとしよう」
>> 252
プラス「リミッターは外していいんだろ?」
プラスは両腕についた銀色のブレスレットを外そうとするが、マイナスに制止される。
マイナス「止めろ…我らが本気を出すまでに片はつく」
プラス「だな…大賢者ハーク以外は敵じゃねぇし」
二人は背中に背負った剣を抜く。剣は【機械剣】と呼ばれる常人が持つだけでも剣豪と渡りあえる機械制御の最新技術の結晶のような剣である。
プラス「んじゃ…まずは挨拶といくか」
銀色に輝く機械剣を大きく振り抜く。すると剣からは凄まじい衝撃波が放たれ、地中深くのキングに大きな穴があく。
マイナス「レザーを活用しろ…既にターゲットのデータはインプットされている」
プラス「分かってるぜ」
ポケットからレザーを取り出すとスイッチをいれる。すると画面上に黄色の点が現れクリスたちの名前が表示される。
プラス「え~と…クリス…リオ…セロ…ん~まずはクリスって奴を殺りに行くかな」
マイナス「私は別件がある…ターゲットはお前に任せた」
プラス「あいあい。任せとけ」
二人は腕を交差させるとキングの中へと入っていく。
>> 253
ドカアァァァァ~!!
①「なに!?」
凄まじい爆音とともにキングが揺れる。
⑪「地震!?」
リーマ「きゃぁ」
①「いや…爆発かなにかが起こったんだと思うわ」
②「来よったか…どうやら相当な力の持ち主のようじゃの」
杖の水晶にはプラスとマイナスが映されているが、映像はかなり荒れており、とても見れるものではない。少しすると映像は完全に途絶えてしまった。
②「儂の魔法を妨害するとはの…協会の回し者…魔科具か厄介じゃのぅ」
科学を擁護する連合軍、それに反して、魔法を擁護する種族たちだが、それの中間のような組織こそが協会である。魔法と科学の共存。それが協会の意思である。魔法と科学を合わせれば力は更に強くなるそれを実現した物が魔科具である。古来より魔法剣のような魔法武器に始まり、魔法銃・マンチマジック製品に至るまで協会の発明品である。
②「魔科具使いとなれば…クリスたちでは厳しいやもしれん」
ハークはクリスたちと再び合流すべく足取りを早めたのであった。
>> 254
マイナス「馬鹿(プラス)のお陰で大賢者様が動き出してしまったか…」
マイナスはプラスと分かれ、一人身を隠し様子を伺っていた。手にはモニターつきのレザーが握られている。
マイナス「せっかく電波妨害粒子を放出しながら移動してハークの魔法監視を妨害してたというのに…気づかれてしまっては意味がないな」
モニターには慌てて移動を始めたハークが映されれている。
マイナス「まぁ問題はないがな」
マイナスはアンチマジック製の鎧についた多種多様の魔科具から一つを手にとり、壁に取り付ける。取り付けた魔科具はデジタルタイマーが作動しカウントを始める。
マイナス「ハーク様には雑魚とお相手願うとしよう。低級の暗殺者たちでも時間稼ぎにはなるだろう」
そう言うとマイナスは無線機で部下たちにハークの位置を告げると次の場所へと移動を始める。
マイナス「せいぜい頑張っているがいい…プラスに勝とうが負けようが…お前たちは死にゆく運命だ」
魔科具の爆弾を設置し歩くマイナスは高笑いで上機嫌で進んでいく。
>> 255
①「さっきの爆発いやな感じだったわ。一瞬だけど強力なオーラを感じたし…急いだほうがいいわ」
⑪「うん。分かってるけどさ…」
リオはラ・ドルを錬金術で作った台車に乗せ運んでいるが、ペースは中々進まない。
リーマ「手伝いましょうか?リオ?」
⑪「いい。いいよ。これは男の仕事さ…はぁ」
先程からクリスたちが手伝うと言っても聞かないリオは一人必死に台車を押している。どうやらリーマの前で男らしいところを見せたいようだ。
①「まったく…リオも強情なんだから」
クリスは周りを警戒しながら進むが、今のところ周りで殺気は感じない。キックほど敏感にオーラを察知は出来ないが、クリスも戦いの中で磨いた感知能力には自信がある。暗殺者と言っても遅れはとならないと思っていたが…
プラス「いいねぇ…綺麗な女は好きだぜ」
①「はっ!?いつのまに!?」
だが、背後に突然全身銀の鎧をまとった男が現れクリスに強烈な蹴りをくらわす。
①「ぐっ…」
⑪「クリス!」
プラスの放った蹴りは腹部を捉え身軽なクリスは吹き飛ばされ壁に叩きつけらる。
プラス「俺の名はプラスだ。てめぇらを殺しにきてやったぜ」
>> 256
プラスと名乗った男はクリスに蹴りをいれた右足をゆっくりと下ろす。足からは煙が出ており、蹴りの威力が並ではなかったことが伺える。
⑪「クリス!大丈夫?」
①「うっ…」
クリスは口から血を流し、蹴りを受けた腹部は黒く焦げついている。
プラス「おいおい。まだ生きてんのかよ。タフな女だ。パワースーツを着た俺様の蹴りを受けて生きてるとはよぉ驚きだぜ」
剣を抜きプラスはゆっくりとクリスたちに近づいていく。剣は不気味な音を立て赤く輝いている。
⑪「くそっ…よくも!」
リオは鉄球を投げるが、プラスは手の平から衝撃波のような電磁波を放ち錬金術を無効化する。
⑪「そんな…錬金術を止めるなんて…」
プラス「お前みたいな餓鬼の錬金術なんぞ。くらうかよ」
⑪「くっ!舐めるなぁ~!鉄鉄砲!」
リオが鉄球を取り出すより早くプラスは鎧についた魔科具をリオに投げつける。投げられた魔科具はリオの身体に当たるとワイヤーでリオを縛り上げ、完全に動きを封じる。
⑪「うわぁ…なんだよ…コレ」
プラス「ただの縛るだけじゃねぇぜ。魔力も完全に封じちまう代物よ…あと…多少の電流もな」
>> 257
⑪「でん…うわぁあああ…」
電流という言葉を頭で認識する前にリオは電撃を受け意識を失う。
プラス「まず…一人捕獲と…お嬢ちゃんも眠むってもらうぜ」
プラスは鳴いているリーマにリオに投げた魔科具を投げつけ、動かなくなるのを確認するとうずくまっているクリスに近づく。
①「くっ…」
プラス「どうだ?調子はいいかな?はっはは」
①「最悪に決まってるだろ…」
一撃でこの様とはクリスは痛みを必死に堪え剣を杖代わりに立ち上がる。
プラス「おうおう。まだやる気かよ」
①「私はこんなところでは死ねないんだ」
クリスは足取りすらままならない状態でプラスに斬りかかるが、軽く流され剣を弾かれてしまう。
カラン
プラス「あらら…剣も握ってられないようだな。おら!」
①「ぐはぁ」
剣を弾かれ無防備なクリスに強烈な蹴りを再びいれる。クリスは吹き飛ばされ苦しそうに咳き込む。
プラス「二人目っと…おらよ」
①「あ……」
リオ・リーマに投げつけた魔科具をクリスにも投げつけるとプラスは腰を下ろす。クリスも意識を失い動かなくなってしまう。
プラス「さぁて…こいつらで仲間をおびき寄せるとするかな」
ラ・ドル「……」
>> 258
プラス「さっきから…気になってはいたが…この男誰だ?」
プラスは台車の上で横たわっている魔法使いを剣を向ける。
ラ・ドル「……」
だが、魔法使いは動こうとはしないどうやら気絶しているようだ。
プラス「コイツは…ターゲットに入ってねぇな。捕獲魔科具使うのももったいねぇし…殺しとくか!」
機械剣が唸りを上げる。
プラス「恨むんなら…俺様じゃなく運の無い自分を恨みな!じゃな!…な!」
⑭「悪いが…好きに出来るのはここまでだ!」
剣を振り抜こうと動いた瞬間、背後からの剣撃が迫ってきた。プラスはキックの攻撃を紙一重でかわすと鎧についた魔科具を一つ手にとる。
⑭「変わった玩具を沢山お持ちのようだな!」
プラス「楽しいぞ…この玩具はよぉ」
球体の魔科具の空中に放り投げると電光石火のごとくキックに迫っていく。
プラス「りゃあぁ!」
⑭「はあぁ!」
お互いの剣は激しくぶつかり、火花を飛ばす。右に左にと繰り出される剣撃だが、両者共に敵を捉えることが出来ない。
プラス「やるな…くっ!」
⑭「仲間を傷つけた礼もある。お前には痛い目にあってもらうぞ!」
竜剣が吠え凄まじいオーラに包まれていく。
>> 259
⑭「竜剣一閃!!」
低い体勢で剣を突き出す。プラスは後ろに引き剣を避けると手の平をキックに向ける。
プラス「くらいやがれ!」
手は青白く輝き衝撃波のような電磁波が放たれる。だが、キックは飛び上がり、難を逃れた。電磁波を受けた床は大きく凹んでいる。
プラス「反応がいいことで…ちっ」
⑭「竜龍!!」
お返しと言わんばかりに竜剣からオーラが放たれる。オーラは竜のようで、オーラの竜は大きく口を開け、プラスを襲う。
プラス「なんだぁ!ちっ!」
凄まじいオーラに反応し、プラスも魔科具を慌てて使用する。魔科具は空中で分散し赤い電磁シールドをはるが、キックが放った竜に簡単に飲み込まれる。
プラス「なっ!耐久シールドがっ!くっ!」
慌てて、次の魔科具を鎧からはぎとるプラスだが、オーラの竜の方が早い。プラスは避ける間もなくオーラに飲み込まれ、激しい音とともにオーラは消える。
プラス「がぁ…マジかよ…」
直撃したプラスは膝をつく。普通なら倒れても可笑しくない攻撃だが、流石は協会の最新型鎧である。が、鎧はびび割れ、鎧についていた魔科具の大半は消し飛んでしまっている。
>> 260
⑭「まだやるか?」
キックは竜剣を頭上で大きく回す。強気に出ているが、内心は最大奥義の【竜龍】を受け、倒せなかったプラスの力に驚きを隠せない。
プラス「くっ…久々だぜ…俺様の身体の一部(膝)が地べたにつくのはよぉ」
ゆっくりと立ち上がり、機械剣を肩に担きながら苦笑する。
プラス「魔科具ってのは高いんだぜ。お前さんのさっきの攻撃で魔科具を殆ど失っなちまった」
⑭「貴様は協会の回し者だな。噂には聞いたことはあったが…魔科具使いに会ったのは初めてだ」
プラス「まぁ言わなくても分かることだし…言ってやるよ!そうよ協会から命を受け、お前さんら一行を殺しに来てやったってわけ」
⑭「協会まで敵に回してしまうとは…これから先厄介になるな」
プラス「先?お前さんに先はないから安心しな!」
先に先手をとったのはプラスだった。素早く剣を繰り出す。お互いの剣は再び、ぶつかり合い二人はじりじりと剣を押し合う。両者は絡み合う剣の隙間から鋭い目で睨み、お互いを牽制しつつ隙を伺う。
プラス「まさか…さっきの技が全力じゃねぇだろうな!オーラが随分と減ってるぜ!」
⑭「そう言うお前も技をくらってオーラが弱くなってるがな」
>> 261
⑭「竜剣一閃!」
プラス「らあぁ!」
お互い凄まじい速さで剣を繰り出し、剣撃が飛び交う。ぶつかり合う影響でオーラの気流が発生し、周りも荒れ始める。
⑭「くっ!」
プラスの重い剣撃を受けるたび、竜剣を通しキックに強い衝撃が伝わる。長期戦になれば竜剣が折れてしまうだろう。
プラス「ほらほら!まだまだ!」
⑭「くっ…なんて重い剣撃だ…くっ」
時間が経つにつれて、徐々にキックが劣勢になってくる。機械剣の力が加わっているプラスの剣に流石のキックですら止めきることができなくなってきている。
プラス「んじゃ!そろそろ!終わりにしようか!」
鎧から魔科具を手に取る。させまいとキックも剣を繰り出すが、プラスは軽く流すと魔科具を作動させる。
プラス「もうちょっと剣の殺り合いを続けたかったけどよ。俺様も忙しいんだわ」
円筒の魔科具からはいきよい良く白煙が吹き出る。2・3秒で部屋一面に煙が広がり、視界は完全に封じられる。
⑭「なんのつもりだ。竜人の感知能力を甘く見すぎだ。オーラでお前の位置が手にとるように分かる」
プラス「確かにな!この煙の中じゃ人間の俺様の方が不利だ。まぁその自信が命とりになるんだがな」
>> 262
⑭「なっ!?」
プラス「気付いたか…んだが…もう遅い」
煙の中、オーラ探知に集中していたキックだが、迂濶にも足には蜘蛛のような小型ロボットが数匹まとわりついているではないか。
⑭「くっ!」
直ぐに払おうとするキックだったが、プラスは「止めたほうがいいぜ」と宥める。
プラス「下手にソイツに触れたら竜人の頑丈な身体でも耐えれない電流が流れちまうことになるぜ」
プラス「感知能力に優れた奴ほど…こういう罠にはまりやすいんだよな。ソイツは察知されることがないよう魔法と最先端の技術で作られたロボットよ」
キックの足をよじ登ってくる蜘蛛型ロボットを指差しながら言う。
⑭「この煙は俺を警戒させ気配(オーラ)にだけ集中させその隙にロボットを俺に近づけたとは…なんて奴だ」
プラス「本来、魔科具使いはこういう戦い方が主。まぁ~剣の勝負は趣味みたいなもんよ」
手に持っているスイッチを押す。するとキックに貼りついているロボットから電流が放たれ、力なくキックが倒れる。
>> 263
プラス「んじゃ…いいよ魔科具ちゃん」
戦闘の最初に投げた魔科具が天井から降ってくる。クリスたちを拘束している魔科具だ。魔科具は倒れているキックの真上に落ちるとキックを縛り上げ動きを止めた。
プラス「三人目と…あとは…おっとその前に魔法使いを始末しねぇと」
プラスは重い出したように周りを探す。だが、さっきまで台車があった場所には何もなくなっている。それどころか、クリスたちの姿も消えているではないか。
プラス「なっ!おいおい!何処行ったんだぁ~!まさか…拘束魔科具から逃げた?」
ふっと先程拘束したばかりのキックに目をやるとそこに拘束したはずのクリス・リオ・リーマの三人が集まっている。既に拘束魔科具は外されており、更にキックの魔科具も外れている。
プラス「馬鹿な…戦艦で攻撃してもびくともしない拘束魔科具だぞ…アンチマジック製で魔法も受けつけないはずだぞ!」
驚きを隠せないプラスの背後から一人の男が話かけてきた。
ラ・ドル「マンチマジックが完全に魔法を封じれると思ってるのかな?」
プラス「お前か…余計なことを」
慌てて、振り返り、機械剣を構え魔科具を一つ手にとる。
>> 264
ラ・ドル「初めまして。私はラ・ドル名前がラなもんで皆からはフルネームで呼ばれています」
杖の先端は水晶の代わりに頭蓋骨をつけている魔法使いはそう名乗り軽く会釈をする。
プラス「くっ!舐めるな!」
状況にふさわしくない態度に機嫌を悪くしたプラスは怒鳴り声と共に魔科具を投げる。だが、作動する前に空中で爆発してしまった。
プラス「なんだと…お前…」
プラスは次の魔科具に素早く手を伸ばすが、手が触れる前に鎧についた魔科具は飛ばされてしまう。
プラス「くっ…」
ラ・ドル「無駄です。私の前では何一つ使えませんよ」
杖の頭蓋骨を撫でながら、不気味に笑ってみせる。
プラス「舐めるな!」
斬りかかるプラスだが、ラ・ドルから放たれた縛りの魔法で思うように動けない。
プラス「最新のアンチマジック製の鎧だぜ…なんで縛りの魔法が…くそ」
ラ・ドル「その…まだ一杯ついてる魔科具じゃまですね…彼女もお気に召してないようなんで!失礼!」
プラス「な…がぁあ」
そう言うが早いか、鎧についた魔科具は突然爆発し、プラスは倒れ込む。
>> 265
⑪「強ぇ…ラ・ドルってほんとは凄い人なの」
リーマ「……」
プラスを圧倒するラ・ドルの様子を見ていたリオは思わずそうもらす。
①「そりゃハーク様の弟子だし…凄いでしょ。ほら…大丈夫立てる?キック?」
⑭「あぁ。あの人は凄いな…この頑丈な魔科具を破壊するのと同時に私の体力も回復させてくれている」
クリスに支えられながら、立ち上がりるとラ・ドルの戦いの様子を4人は見守る。
プラス「くそ…魔科具も全てアンチマジック製なんだが…簡単に破壊されちまったな」
倒れ込んでいるプラスは起き上がろうとする気配はない。どうやら縛りの魔法がまだかけられているようだ。
ラ・ドル「なんてことないですよ。アンチマジックは単純に言えば魔法耐久製品です。物と同じで耐久力は徐々になくなっていくものです…例え最新のアンチマジックでもね」
プラス「一回魔法使っただけで粉々にしやがった…あんたに耐久力なんたら…言われても虚しくなるぜ…ぐ」
>> 266
ラ・ドル「おっと…誤解だな…私は貴方の魔科具を破壊するのに数十回の破壊魔法を放ってますよ。ただ、貴方には一回の魔法を使ったようにしか見えなかったようですがね…いやぁ~年々、マンチマジック製品を破壊するのに時間がかかって仕方ないですよ」
プラス「あの一瞬で…数十回の魔法を発動するだと…ふざけやがって…」
ラ・ドル「さぁ…お話はお開きにしましょうか…私は殺しは好きじゃない…安心して下さい気絶してもらうだけです」
プラス「くく…止めをさすのをお勧めするが…まぁ最後にいいこと教えてやるよ…俺様の仲間がこのキング中に強力な爆弾を仕掛けて回ってる…早いとこ止めねぇとな…は…」
⑭「なぜ?わざわざ教える?敵に塩を送るようなものなのに」
プラス「楽しませって貰った礼よ…ふ…」
プラスはそう最後に言うと意識を失う。ラ・ドルが魔法で眠らせたのだろう。
①「もし…ほんとうなら早くソイツを止めないと!大変な事になるわ!」
⑭「それ…鎧についてるのはなんだ?」
キックはプラスの鎧についた通信機を手にとる。通信機にはモニターがついており、そこには凱やハークといった仲間の現在地や暗殺者たちの位置が映しだされている。
>> 267
①「早くいこう」
ラ・ドル「それがアレば手っ取り早く済みそうですね」
⑭「ラ・ドル殿は皆に魔法で爆発魔のことを伝えてください」
ラ・ドル「分かりました」
⑪「あっ!まだなんか色々持ってるや…貰っとこ」
リーマ「駄目ですよ…人の者勝手に…」
⑪「いいじゃん…いいじゃん」
リオはプラスが隠し持っていた魔科具を何個か自分ポケットに詰め込む。
①「リーマ案内お願いね」
リーマ「任せて下さい」
キングの地理には疎いクリスたちから通信機を受け取るとリーマは「こっちです」と誘導を始める。
⑤「さっきから…ハァハァ」
セロは右手に黄金銃を二丁持ちながら、左手でレーザー銃を持っている。
⑤「なんなんだよ…なんで命狙われなきゃいけねぇんだ」
レーザー銃で襲ってきた暗殺者を撃ち抜くとセロは物陰に隠れる。
デビル「3人目だね」
嬉しそうにセロが倒した暗殺者の数を数えるデビルは全く手を貸そうとする様子はない。
⑤「おい…お前も手を貸せよ!意外と強いだろ!」
デビル「やだやだ…腹減るもんね~」
>> 268
⑤「なっ!なんだよそれ!あっおい!待てって!」
デビル「ひひ~ひ」
物陰に隠れていたデビルは突然飛び出し、走っていく。慌てて、セロが止めるが、遅かった。暗殺者に見つかったのだ。数人の男たちが走ってこっちにやってくる。
「おい!ターゲットだぜ!こっちだ!」
暗殺者たちは大声で叫びながらこちらに向かってくる。
デビル「見つかったちゃたね…ひっひ」
⑤「お前ぇ!!どういうつもりだよ!」
セロはデビルをレザー銃を持つ左腕で抱え上げ、暗殺者と逆方向に走る。全速力で走るが、間隔は徐々につめられていく。
⑤「ハァハァ…くそ」
デビル「その右手に持ってる銃は使わないの?」
抱えられているデビルは追いかけてくる暗殺者たちに暢気に手を降っている。
⑤「お前なぁ…状況をだな…この銃は駄目だ。さっきも何度か試したけど弾を込める場所もないし…トリガーを引いても何も出てこない…もしかしたら潰れてるのかもな…ハァハァ」
何度も後ろを振り返えりながら、走っていく。
デビル「ふ~ん。やっぱり…セロに魔力のコントロールは難しいかぁ」
意味ありげにデビルは言うが、暗殺者に気がいっているセロには聞こえていないようだ。
>> 269
⑤「くそ」
逃げ切れないと踏んだセロは立ち止まり、デビルを放りなげるとレザー銃を連射する。
「ついに足を止めたか!な!」
「避けろ!」
「ぐっはぁ」
だが、一人の暗殺者は捉えたが、残りの暗殺者たちはレザーを巧みに避け、斬りかかってくる。
⑤「ついてないよ。ほんと!」
セロはポケットから小型爆弾をとり出し、安全ピンを抜き取る。
「な!」
暗殺者たちの動きを止め、爆弾から後退りする。
⑤「爆弾だ!こいつは見た目はちっこいが威力はでかいよ!」
「お前死ぬ気か」
⑤「殺されるぐらいなら…ドカ~ンってね」
「やっやめろぉ!」
セロは爆弾を床に放り投げる。爆弾は何回か回転し、目映い光を放つ。
「わあぁ」
暗殺者たちは喚きながら、床に伏せる。
⑤「バ~カ!閃光弾だよぉ!」
セロは閃光弾が光を放っている間に、暗殺者たちを的確に撃ち抜く。視界は全く見えないが流石はセロリである。暗殺者たちは反撃することなく倒されていく。
デビル「やるじゃん!セロっち!」
⑤「はい。全滅っと」
閃光弾が消えた時には暗殺者たちは床に倒れ動かなくなっていた。
>> 270
⑤「コイツら…一体何者だよったく」
周りを警戒しつつ、クリスたちと合流するため歩き始める。デビルはセロの後を軽快なリズムでついてきている。相変わらず暢気なものだ。
デビル「セロ♪」
⑤「なんだよ!」
警戒するセロの緊張感を破る気の抜けた声でデビルは言う。
デビル「その銃使いなよぉ~ピカピカ光ってカッコイイじゃんかぁ~」
右手にもつ2丁の黄金銃は薄暗い通路の中で鈍い光を放っている。
⑤「だから!この銃は使えなかったって言ったろ!弾も出ないし!ほら!」
苛つきを感じたセロは黄金銃のトリガーを引いて見せる。
ガアァ
⑤「うわあぁ」
するとさっきまで何も出なかった黄金銃から閃光が放たれる。閃光は壁にぶつかり、壁の一部を粉々に粉砕する。セロは黄金銃の反動を受け、尻餅をつき目を丸くして、粉々になった壁に見入っている。
デビル「やっぱりね♪セロは感情が高まるとオーラが高まるようだね♪人間ってのは魔力のコントロールが下手だし…仕方ないか♪」
⑤「はぁ?なんだよそれ?お前何か知ってるのか?」
跳ね回るデビルにセロはそう問うが、笑顔を見せるだけで返事は返ってこない。
⑤「お前!おいったら!」
>> 271
デビル「ヒントはここまでぇ~」
デビルは機敏に跳ねそう言うと暗闇に消えていく。
⑤「あっ!待ってって!また勝手に…う!」
直ぐに後を追おうとしたセロだが、背後からの殺気を感じ後ろを振り返る。後ろには銀色の鎧を身につけた男が赤い剣を抜き、立っている。
⑤「またかよ!デビルに逃げられたらお前のせいだからな!」
「私の名はゼロ。貴様を殺しにきてやった。光栄に思いたまえ」
ゼロの鎧には無数の魔科具がついており、その一つを手にとり、セロに向ける。
⑤「魔科具使いかよ…厄介だなぁ」
頭をかきつつ、レザー銃をゼロに向ける。
ゼロ「……」
⑤「ほんと今日はついてない…はぁ」
ゼロ「では…始めよう」
一瞬で間合いを詰め、斬りかかってくる。だが、セロもレザー銃を数発放ち、ゼロを後退させ距離を保つ。
ゼロ「中々の腕前だ。私のスピードについてくるとは…だが勝負はこれからだ」
消えた。と思わせるほどの速さで、移動するゼロに対し、セロは銃を連射する。
⑤「やだな…スピードタイプって苦手なんだよね…特にクリスとか!でもクリスに比べたら遅すぎですよってね!」
ゼロ「何!?」
>> 272
⑤「いい鎧だことで…ったく」
高速で移動しているゼロにレザーが直撃し、動きが止まる。
ゼロ「貴様ぁ…私の鎧に…」
レザーが当たった箇所は小さな穴があいている。セロの最新型レザー銃でこの程度のダメージしか与えられないところをみると鎧の性能の高さが伺える。
⑤「手持ちはコレ(レザー銃)しかないんだけどな…はぁ」
セロは動きを止めたゼロにレザーを打ち込んでいくが、鎧に米粒程度の穴があくだけでダメージは与えられない。
ゼロ「くらわぬわ!今度はこちらの番だ!」
手の平をセロに向ける。ゼロの手からは衝撃波が放たれ、セロを襲う。
⑤「ぐわぁ」
セロは衝撃波をまともに受け、吹き飛ばされてしまう。手からレザー銃が離れ、銃は床に転がる。
カラン
ゼロ「雑魚は雑魚らしくしておけ」
床に落ちたレザー銃を剣で突きさす。銃は粉々に砕け、小さな爆発音を上げる。
⑤「その…銃…プレミアついてんのに…くそ」
セロは背中を擦りながら立ち上がる。腹は所々破け、身体は傷だらけだ。
⑤「っ…」
(手持ちの武器は小型爆弾1個にこの役にたたない黄金銃が2丁か…マジ死ぬかも…)
ゼロ「死んでもらうぞ」
>> 273
⑤「くっ…」
レザー銃を破壊したゼロはゆっくりとセロの方に近づいてくる。衝撃波のダメージは大きいようで、セロは壁に背をつけ、立っている。
ゼロ「死にゆく時間だ…」
近づいてくるゼロに黄金銃を向け、何度も引金を引くが、先程のように光線は出ない。
⑤「っ…」
(おいおい…出てくれよぉ…マジヤバイって!おいったら!)
引金を引く音が虚しく鳴るが、光線は出る気配はない。
ゼロ「ふん。立派な銃はお飾りのようだな」
剣を振り上げ、そう吐き捨てる。
⑤「マジ…か…よ…」
ゼロ「さらば」
ガシャン
⑤「……」
セロは振り下ろされた剣から目を背ける。
ジリジリジリジリ
プラス「やれやれ…参ったね」
気絶していたプラスは鎧の電子音で目を覚ますと鎧についたボタンを操作し始める。
プラス「参った参ったハーク意外敵じゃねぇと思ってたが…嵐の賢者までいやがるとは…こりゃこんな戦力じゃ勝てないぜ」
「ジドウシュウフクモウドニハイリマス」
愚痴を漏らしながら立ち上がる。鎧からはコンピュータ音声が聞こえている。
プラス「さぁて…本部(協会)に戻って報告としますか」
>> 274
プラス「しかし…再生機能つきの鎧で助かったぜ」
鎧は少しすると鈍い光に包まれ、傷は消え、完全に元通りになっていく。
プラス「鎧は元通りっと…後は魔科具と体力か」
自分の口に手を入れ、歯の中に隠し持っていた小さなカプセルを二つ取り出す。
プラス「流石にアイツらも口の中までは見なかったようだな」
赤と青の二つのカプセルの内、青のカプセルを再び、口の中に入れ飲み込む。すると身体の傷は消えていきオーラも完全に回復する。
プラス「うぅ~効くね。協会推薦の回復薬は流石だねぇ」
背筋を伸ばし、一呼吸すると赤のカプセルを握り潰す。するとカプセルからは黒い煙が吹き出し、身体と同じ大きさの円形に形を変えると急に小さくなり、軽い閃光とともに爆発する。爆発の後には魔科具が数十個山積みに置かれていた。
プラス「いつ見てもすげぇな。空間圧縮でこの小さなカプセルにこんだけの魔科具が入るとは…科学ってのは底が見えねぇな」
魔科具を一つずつ丁寧に鎧に取り付けていく。
プラス「マイナスには悪いが…俺様は一先ず退散させてもらうぜ。あとは後輩のゼロ共と楽しみな」
魔科具を手にとり、操作すると閃光とともにその場から姿を消した。
>> 275
「ぐわぁ」
目映い閃光に包まれ暗殺者たちは倒れていく。
②「きりがないの」
「死ね~!」
ハークの杖から光が放たれ、暗殺者たちを飲み込んでいく。だが、暗殺者の数は減る様子はない。逆に時間が経つにつれ人数が増えているようだ。
②「全く…困ったものじゃ」
「おい!何人で戦ってると思ってんだ~!早いとこ倒しちまおうぜ!」
「おぉ~」
ハークの周りには銀色の鎧をまとった魔科具使いの暗殺者たちが群れをなしている。
②「儂の魔法は…そんなちんけな機械では防げんぞ」
「何を!」
杖を高々と上げ、先端の水晶からは目映い閃光が放たれる。暗殺者たちは魔科具を手にとりハークに投げつけようとするが、閃光に遮られ投げつけることが出来ない。
②「渦潮」
閃光は風となり、渦と化す。風の渦は暗殺者たちを飲み込み、更に大きくなっていく。渦は凄まじい威力で暗殺者たちを吹き飛ばすと静かに消えた。威勢の良かった暗殺者たちは力なく倒れ込んだまま動かなくなっている。
②「さて…行くかのぅ」
>> 276
マリーン「怒号雷電!!」
バリバリッ
「ぎゃ~っ」
「がががががっ」
他の部屋に入ったマリーンに魔科具を持った暗殺者達が次から次へと襲いかかる。ダークエルフから人間になった体は悲鳴を上げていた。
マリーン「ハァハァ…凄い数ね…倒しても倒してもきりがないわ…」
肩で息しながら鈴の音を鳴らし杖を振り被り雷系の呪文で相手を焦がしていく。
「こいつ弱ってきたぜ。」
「ヒヒッ!」
シュパッ
シュパッ
銀色で刺繍が施されている真っ白な絹のローブが切り裂かれていく。
マリーン「くっ!雷の大賢者を舐めないで欲しいわ。」
指をパチンと鳴らすと深緑色の目がひかった。
マリーン「雷龍降臨!!」
ガリッガリッガリッガリッ
龍の形をした雷が暗殺者の魔科具ごと破壊していく。
「わがああぁぁ…」
「馬鹿ながががががっ」
「ぐぎぎぎっ」
数十人の暗殺者は消し炭になるのを見て少し仲間たちはたじろいだ。
マリーン「ウフッ…まだ、やる気坊やたち…」
色気たっぷりの体をくねらせハッタリをかませた。
その時、マリーンは急に青ざめ口から吐いた。
- << 290 マリーン「ゴハッゴハッ…私どうしたのかしら…」 気分が悪いが口を拭い立ち上がった。 「チャンスだ!」 「殺るぞ」 暗殺者たちは魔科具を取り出すと一斉にマリーンに襲いかかった。 マリーン「しまった!」 目を閉じたその時… ギュンギュンギュン 風を切る音と暗殺者たちの悲鳴が聞こえる。そっと目を開けると周りを囲んでいた、暗殺者の首が吹き飛んでいた。 「おい!大丈夫か…」ガシッ 聞き慣れた声の方を見るとそこにはオーラを帯びた巨大な手裏剣を持った凱が立っていた。 マリーン「凱!!」 凱の顔を見てホット安堵した。 マリーン「でも、どうしてここに…?」 ⑦「いや、なに顔色が悪そうだったからよ…」 ボリボリと頭を掻いた。 マリーン「うっ!!」 まだ、地面にうずくまる。 ⑦「様子が変だな。幼なじみのアイシスの所で診て貰った方が良いみてえだな…ヨイショっと。」 手裏剣を小型化させ腰にはめると、床に落ちている杖を拾いマリーンを担ぎ上げた。 マリーン「私はまだ戦える…」 「おい、いたぞ!!」 別の暗殺者たちが現れた。 ⑦「チッ…無理すんなって。行くぜ!」 シュン 走りながら三人に分身し真ん中がマリーンを担ぎ、左右2人が剣で攻撃をはじき暗殺者たちの間を駆け抜けて行った。
>> 277
【番外編 過去の遠き日】
これから語る話はドイスにより、連合軍が結成され【大戦】が始まる数十年前の話である。
話の舞台はダンテスティン星のとある集落。【あの事件】が起こる前のダンテスティン国は栄え豊かな星であった。そんな星の小さな集落に一人の男の子が生まれた。
「なっ…なんと…魔力の強い子じゃ」
年老いた助産師は母親から取り上げた赤子を抱えるが、その手は震えている。母親はそんな助産師を不安そうに見つめてはいるが、我が子が無事生まれた喜びに浸っていた。
いつもなら静かな集落だが、この日は強力な魔力を持った赤子の話で持ちきりであった。
「あぅの子は…この村の災いとなりまする」
村長に魔女や魔法使いたちは口を揃えて言う。
「普通…人間族が生まれた時にはあのような強大な魔力は持ってはおりません。アレは人間というより魔族の子です…災いですぞ」
「災い災いというがの…魔法使いの方々。何をしろというのじゃ?」
詰め寄る魔法使いたちに村長は頭を抱える。
魔族:人間族意外の種族を指すが、この場合は悪魔・災い人の意味が強い。
>> 278
【番外編 過去の遠き日】
「あの赤子は村から追い出すべきです。さもなければ…村に災いがふりかかるでしょうぞ」
「なっ…赤子を追い出せとな!?生まれたての子を村から追い出せなどと…それに母親が許すはずかない」
「村長。あの子は災い元ですぞ。村と一人の命計りにかけるまでもないでしょう」
「む…しかし…」
「お忘れか…隣村で昔あのような赤子が生まれ…その年に疫病が流行ったことを。あの赤子を置いてはいけません」
数日後、赤子を産んだ母親の家に数人の兵士がやってきた。兵士はダンテスティン国の印の入った紙を母親につきつけると赤子を無理矢理取り上る。
「えぇい!離さんかぁ!国の命状もここにある!この子は我らが預かる!」
「そんな…私の子なんですよ!」
母親は一人の兵士の足にしがみつき、泣きながら「止めて」と叫ぶが兵士たちは与えられた命を冷酷に実行する。
「えぇい…国王の命に逆らうか!」
「こんな命令が許さるるわけがありません」
「命に従えなければ…反逆ぞ!」
赤子を抱えた兵士の足にしがみついたまま離れようとしない母親に一人の兵士が銃を向ける。
- << 281 【番外編 過去の遠き日】 「ドオ~ドオ~止まれ」 突然、赤子を抱え兵士が馬を止める。他の兵士たちもならうように止まり、馬から降りる。 「俺は赤子を殺した…そうだろ」 赤子を草むらにそっと置くと兵士はそう言う。 「そうだな」 兵士たちは再び、馬に乗り、走りさっていく。 「小さき子よ。俺はダンテスティン国の兵長【トケイ】だ。俺はお前の母を殺した男よ。もし…お前が生きぬくことが出来たなら…俺を恨んで殺しにこい…命令とはいいこのような行為が許されるとは思っていない。運があれば生きることが出来るさ…じゃな」 最後の兵士がそういい立ち去ると赤子は人気のない草むらで一人泣き出す。 「オギャ~オギャ~」 赤子はひたすら鳴いていた。既に兵士に捨てられてから1日はたっている。赤子の命は風前のともしびであった。空は曇り雨もちらついてきている。 「風は~♪人を導き~♪」 「オギャ~オギャ~」 「あっ?赤ちゃん?」 人気のない草むらに一人の男がやってきた。男は鳴いている赤子に直ぐに気づくと慌てて、駆け寄る。
>> 279
【番外編 過去の遠き日】
「もう一度聞くぞ。命令に大人しく従え!」
母親は横に首を振り、離れようとはしない。その行為が何を意味しているのかは理解している。だが、離れようとしないのだ。
「仕方ない…」
乾いた銃声が村に響いた。先程まで騒がしかった家の中は静まり、兵士たちは赤子を抱え外に出る。
「まさか…殺したのではないじゃろうな!」
母親の家の外には銃声を聞きつけた村長が立っている。兵士たちは進路を遮る村長を無理矢理退かすと吐き捨てるようにこう言う。
「命は実行された。犠牲は最小でな」
村長は自分は村のためとは言いなんてことをしてしまったんだと嘆き、力なく倒れている母親に泣きながら謝っている。兵士たちはそんな村長や悲しそうに見つめる村人をしりめに早々と馬に乗り、村を後にする。兵士たちは無口で山地の駆け抜けていく。
「嫌な仕事だったな」
村から少し離れた場所でようやく一人の兵士が口を開いた。他の兵士たちも頷く。
「そうだな。だが…まだ仕事は終わってない。赤子の始末をつけよう」
「おい…そんな小さな赤子まで殺すのか」
赤子を抱えた兵士を他の兵士が意味あり気に見つめる。
- << 282 【番外編 過去の遠き日】 「おい?泣くなよ…お母さんはどおした?」 男は着ていたローブを脱ぎ、赤子に被せると腰につけた杖を手にとる。 「こんな山奥で…まさか…集落で噂になってた赤子ってのはコイツかよ」 魔法使いであろう男は赤子に手を当てると強力な魔力を感じ尻餅をつく。雨は次第に大粒になっている。 「な…なんて…魔力だ。こいつぁ…磨けば化けるぞ…ふっふ。どういう経緯で命が助けかったかは知らねぇが、この【恋の賢者】様にあったのは運がいい」 男は杖を掲げ、呪文を唱える。すると赤子と男は光に包まれ、その場から姿を消した。それと同時に激しく雨が降りだした。この出会いが赤子の運命を変えることになる。 「おっ…やっと泣き止んだかぁ」 赤子は暖かい部屋で寝かされていた。どうやらここは男の家らしく。山の山頂に立った木製の奇妙な形をした家で、まさに魔法使いの家という感じの家である。 「いちよ…自己紹介してやるよ。まだ言葉は分からないだろうけどよ…俺はラブ。恋の賢者の称号持ってる偉い賢者様だ~!」 ラブは可笑しな素振りでそう言うので、赤子は笑顔を見せる。
>> 279
【番外編 過去の遠き日】
「あの赤子は村から追い出すべきです。さもなければ…村に災いがふりかかるでしょうぞ」
「なっ…赤子を追い出せとな…
【番外編 過去の遠き日】
「ドオ~ドオ~止まれ」
突然、赤子を抱え兵士が馬を止める。他の兵士たちもならうように止まり、馬から降りる。
「俺は赤子を殺した…そうだろ」
赤子を草むらにそっと置くと兵士はそう言う。
「そうだな」
兵士たちは再び、馬に乗り、走りさっていく。
「小さき子よ。俺はダンテスティン国の兵長【トケイ】だ。俺はお前の母を殺した男よ。もし…お前が生きぬくことが出来たなら…俺を恨んで殺しにこい…命令とはいいこのような行為が許されるとは思っていない。運があれば生きることが出来るさ…じゃな」
最後の兵士がそういい立ち去ると赤子は人気のない草むらで一人泣き出す。
「オギャ~オギャ~」
赤子はひたすら鳴いていた。既に兵士に捨てられてから1日はたっている。赤子の命は風前のともしびであった。空は曇り雨もちらついてきている。
「風は~♪人を導き~♪」
「オギャ~オギャ~」
「あっ?赤ちゃん?」
人気のない草むらに一人の男がやってきた。男は鳴いている赤子に直ぐに気づくと慌てて、駆け寄る。
>> 280
【番外編 過去の遠き日】
「もう一度聞くぞ。命令に大人しく従え!」
母親は横に首を振り、離れようとはしない。その行為が何を意味しているの…
【番外編 過去の遠き日】
「おい?泣くなよ…お母さんはどおした?」
男は着ていたローブを脱ぎ、赤子に被せると腰につけた杖を手にとる。
「こんな山奥で…まさか…集落で噂になってた赤子ってのはコイツかよ」
魔法使いであろう男は赤子に手を当てると強力な魔力を感じ尻餅をつく。雨は次第に大粒になっている。
「な…なんて…魔力だ。こいつぁ…磨けば化けるぞ…ふっふ。どういう経緯で命が助けかったかは知らねぇが、この【恋の賢者】様にあったのは運がいい」
男は杖を掲げ、呪文を唱える。すると赤子と男は光に包まれ、その場から姿を消した。それと同時に激しく雨が降りだした。この出会いが赤子の運命を変えることになる。
「おっ…やっと泣き止んだかぁ」
赤子は暖かい部屋で寝かされていた。どうやらここは男の家らしく。山の山頂に立った木製の奇妙な形をした家で、まさに魔法使いの家という感じの家である。
「いちよ…自己紹介してやるよ。まだ言葉は分からないだろうけどよ…俺はラブ。恋の賢者の称号持ってる偉い賢者様だ~!」
ラブは可笑しな素振りでそう言うので、赤子は笑顔を見せる。
>> 282
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「そうだ?お前名前なんってんだ?」
そう聞いても赤子は笑顔を見せるだけである。当然のことではあるが、ラブは肩を落とし、赤子の服を調べるが名前は何処にも書いていない。
「しゃない…どうせ帰るとこもないんだ。俺が世話してやる。その代ちゃ~なんだが、名付けさせてもらうぜ。お前は今日から……」
10年後、赤子は元気に育ち。生まれながらの強力な魔力生かし、魔法の上達も早く10歳ながら力は既に並の魔法使いを勝っている程まで成長した。
「師匠!師匠!見つけましたよ!言われてた薬草です!」
身体中、泥々になりながら、薬草を片手にラブの元に駆けてくる。
ラブ「おう。早かったな。どれ」
薬草を受けとると何度か頷く。そして、笑顔を見せる。どうやら採ってこいと言われていた薬草に間違いなかったようだ。
ラブ「お前も大分使えるようになったな」
「ありがとうございます!師匠!」
ラブ「【ハーク】もそろそろ…いい時期かもな」
ハーク「え?」
ラブはローブの中から杖を取り出す。
- << 285 【番外編 過去の遠き日】 ラブ「杖を貰ってテイション上がってるとこ悪いが…修行は更に厳しくいくからな」 ハーク「えっ!?」 はしゃいでいたハークの動きが止まる。 ラブ「当たりまえだろうが!杖を使う高等魔法を今までのぬるい修行で身につけられると思うなよ!けっけ!」 ハーク「そんなぁ…」 杖を授かった日から5年が経過した。ハークは今年でもう15歳である。幼かった顔つきから凛々しい顔だちとなり、もうすっかり少年から青年となった。魔法の方もラブの厳しい修行のお陰?もあってか、既に賢者と並ぶほどの実力を身につけていた。 ハーク「師匠。過去見の魔法を使う許可を頂けないでしょうか?」 ラブ「なんだぁ…改まってよ。過去見の魔法は使うことを許さんと言ってたはずだが…代々あの魔法は生半可な力で使うとだな」 ハークは成長すればするほど過去を知りたいという思いが高まる一方であった。自分の親はどうしているのか…自分の過去の事を知っている師匠は一切何も教えてくれない。ハークは過去を知りたいという気持を押さえられないほどになっていた。
>> 283
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「お前ももう十歳だ。杖を持ってもいい歳だろ?」
ラブは杖を差し出す。杖は木製で先端には水色の水晶がついている。ハークは杖を受けとると突然泣き始める。予想外の反応にラブは慌る。
ハーク「しっ…しっ」
大粒の涙を拭いながら杖を大事そうに抱えている。
ラブ「どうしたぁ…あっ俺なんか気にすること言ったか?」
ハーク「しっ師匠に…杖を貰えて…う…嬉しくて…うぅ」
ラブは泣くハークを引き寄せ抱く。
ラブ「知ってると思うが…杖を貰うってことは正式な魔法使いと認められたってことだ。今日からお前は立派な魔法使いの一員よ」
ハーク「はい。分かってます。師匠に恥じない魔法使いになってみせます」
ハークは泣くのを止めると笑顔を見せ杖を畏まって持つと皮のマントにくるまり、ポーズをとる。
ハーク「師匠!魔法使いっ感じでしょ!?」
ラブ「お前なぁ…ぽいってか魔法使いだろっが…ったくまだまだ子供だな。杖持ったぐらいではしゃぐとはな」
杖を嬉しそうに掲げるハークを見て、ラブは微笑む。
>> 283
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「そうだ?お前名前なんってんだ?」
そう聞いても赤子は笑顔を見せるだけである。当然のことではあるが、ラブは…
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「杖を貰ってテイション上がってるとこ悪いが…修行は更に厳しくいくからな」
ハーク「えっ!?」
はしゃいでいたハークの動きが止まる。
ラブ「当たりまえだろうが!杖を使う高等魔法を今までのぬるい修行で身につけられると思うなよ!けっけ!」
ハーク「そんなぁ…」
杖を授かった日から5年が経過した。ハークは今年でもう15歳である。幼かった顔つきから凛々しい顔だちとなり、もうすっかり少年から青年となった。魔法の方もラブの厳しい修行のお陰?もあってか、既に賢者と並ぶほどの実力を身につけていた。
ハーク「師匠。過去見の魔法を使う許可を頂けないでしょうか?」
ラブ「なんだぁ…改まってよ。過去見の魔法は使うことを許さんと言ってたはずだが…代々あの魔法は生半可な力で使うとだな」
ハークは成長すればするほど過去を知りたいという思いが高まる一方であった。自分の親はどうしているのか…自分の過去の事を知っている師匠は一切何も教えてくれない。ハークは過去を知りたいという気持を押さえられないほどになっていた。
>> 285
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「はい…危険は承知しております。過去見の魔法は過去の世界に精神を取り込まれる危険がある。ですが…私はこの魔法を扱うことが出来る力をこの数年で身につけました」
ハークは杖を地面に突き刺し、魔力を放出する。
ラブ「いつ見ても…凄い魔力だな。確かにお前なら簡単に使うだろうな。だが…過去見の魔法は使うな!これはお前のためでもある」
ハーク「なっ…なぜです。私は…」
ラブ「お前のためだ。と言ったろ。ハーク。辛い過去を進んで見るな」
ハーク「真実を知る権利はある。私はどんな過去からも目を背けたくないのです」
ハークの真剣な眼差しからラブは目を反らす。
ラブ「駄目だ…」
そう言うと家の中に入っていった。ハークは杖を投げ捨て、薪割りの仕事に戻るが、邪念は消えない。どうしても知りたいのだ。
ハーク「知る権利はある…はずだ」
ハークは再び、杖を手にとり、森の中に入っていく。師匠の言うこに逆らったことは一度もなかった。だが、こればかりは長年の思いだ。どうしても知りたい。
ハーク「師匠…すいません。過去見の魔法を使わせてもらいます」
>> 286
【番外編 過去の遠き日】
ハークは森の湖の前で立ち止まると呪文を唱え始める。木々は魔法に共鳴し、微かに動いている。
ハーク「湖よ…私の過去を映しだせ」
湖に少しずつ映像が映し出される。額からは一筋の汗が流れる。過去見の魔法は高等魔法の中でも上位に位置する魔法である。過去の情報を得るとはそう簡単なことではない。数日前ならまだしも、10年以上前の過去を精細に見るのは賢者とて出来るものは少ないだろう。
ハーク「魔導書に書かれてるほど簡単にはいかないか…くっ」
一瞬でも気をゆるせば過去の膨大な情報が逆流し、己を飲み込む。ハークは必死に魔力をコントロールしつつ映像に目をやる。
ハーク「……」
ハークは見てしまった。母の顔、父の顔はもちろん。母が王国の兵士に殺さてしまったこと…【トケイ】という兵士の名を…ラブが草むらで自分を拾ってくれたこと…全てが一気に頭の中に入ってくる。
ハーク「ぅ…」
ハークは頭を抱え込んでしまう。過去見の魔法は一気に逆流し、術者であるハークに襲いかかる。
ハーク「なっ!くっ!」
映像の波となった魔法を必死に防ぐが、既にコントロールが出来なくなっている。
ハーク「くっ…」
- << 289 【番外編 過去の遠き日】 ラブ「で…見れたのか…お目当てのもんは」 ハーク「はぃ。見れました」 ラブ「んで…どうするつもりだ…」 ハーク「何をです?」 ラブ「村人はお前を悪魔の子だって言って村から追い出した…村人に復讐するのもいいな。いや親を殺した兵士でも殺しにいくかい?」 ハーク「いえ…確かに恨みはあります。でも…復讐なんて考えてはいませんよ」 それを聞いたラブは安堵の息を吐く。 ラブ「俺はお前を今まで必死に育ててきた…復讐なんて馬鹿なことをする人間にはなってほしくないと願ってな。だが、実際…真実を知ってお前が復讐するかもしれないと…不安があったんだ。でも今のお前の目には嘘はねぇ…どうやら育て方は間違ってなかったようだな」 ハーク「はい。暴力が多いのはどうかと思いますけどね」 ラブ「お?まだ殴られ足りないようだな?」 ハーク「あっ…嘘…冗談です!冗談!はっは…」 ラブ「さぁ…家に帰ろうや」 そう言うと早々と帰途の道を歩いていく。ハークはそんなラブの後を慌ててついていく。 ハーク「師匠。質問いいですか?なぜ私を拾って下さったんですか?」 ラブ「さぁな~気まぐれかもね」
>> 287
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「魔法発動中は常に平常心と教えたはずだがな」
ハーク「師匠!?」
過去見の逆流に飲み込まれそうになった時、凄まじい閃光と共にラブが現れる。
ラブ「世話がやける弟子だことで」
ラブは杖からは凄まじい魔力が放たれ、過去見の魔法を打ち消すとその場に膝をつく。
ハーク「師匠!大丈夫ですか!」
ラブ「俺ももう歳かぁ…力をオーバーに使うとこうだわ」
立ち上がろうとするラブにハークは手を貸す。
ハーク「師匠…すいません」
ラブ「おや?それは助けてもらった礼か?それとも…過去見の魔法を勝手に使った謝罪か?」
ハーク「どちらもです…」
ラブ「けっ…お前が逆らったのはこれが始めてだな…初回サービスで許してやるよ」
笑顔を見せたラブに安堵するハークだが、油断した瞬間、ラブの右ストレートが飛んできた。
ハーク「痛いぃ」
ラブ「って!簡単に許す訳ねぇだろっが!ったく死にかけやがって!犬死されたら俺が育てた苦労が水の泡よ!」
ハーク「すっすいません…ひぃ!?」
ラブ「馬鹿弟子が!」
お次は足蹴と散々殴られ蹴られのハークは説教が終わると顔は腫れたくっていた。
>> 287
【番外編 過去の遠き日】
ハークは森の湖の前で立ち止まると呪文を唱え始める。木々は魔法に共鳴し、微かに動いている。
ハーク「湖よ…私の過…
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「で…見れたのか…お目当てのもんは」
ハーク「はぃ。見れました」
ラブ「んで…どうするつもりだ…」
ハーク「何をです?」
ラブ「村人はお前を悪魔の子だって言って村から追い出した…村人に復讐するのもいいな。いや親を殺した兵士でも殺しにいくかい?」
ハーク「いえ…確かに恨みはあります。でも…復讐なんて考えてはいませんよ」
それを聞いたラブは安堵の息を吐く。
ラブ「俺はお前を今まで必死に育ててきた…復讐なんて馬鹿なことをする人間にはなってほしくないと願ってな。だが、実際…真実を知ってお前が復讐するかもしれないと…不安があったんだ。でも今のお前の目には嘘はねぇ…どうやら育て方は間違ってなかったようだな」
ハーク「はい。暴力が多いのはどうかと思いますけどね」
ラブ「お?まだ殴られ足りないようだな?」
ハーク「あっ…嘘…冗談です!冗談!はっは…」
ラブ「さぁ…家に帰ろうや」
そう言うと早々と帰途の道を歩いていく。ハークはそんなラブの後を慌ててついていく。
ハーク「師匠。質問いいですか?なぜ私を拾って下さったんですか?」
ラブ「さぁな~気まぐれかもね」
>> 277
マリーン「怒号雷電!!」
バリバリッ
「ぎゃ~っ」
「がががががっ」
他の部屋に入ったマリーンに魔科具を持った暗殺者達が次から次…
マリーン「ゴハッゴハッ…私どうしたのかしら…」
気分が悪いが口を拭い立ち上がった。
「チャンスだ!」
「殺るぞ」
暗殺者たちは魔科具を取り出すと一斉にマリーンに襲いかかった。
マリーン「しまった!」
目を閉じたその時…
ギュンギュンギュン
風を切る音と暗殺者たちの悲鳴が聞こえる。そっと目を開けると周りを囲んでいた、暗殺者の首が吹き飛んでいた。
「おい!大丈夫か…」ガシッ
聞き慣れた声の方を見るとそこにはオーラを帯びた巨大な手裏剣を持った凱が立っていた。
マリーン「凱!!」
凱の顔を見てホット安堵した。
マリーン「でも、どうしてここに…?」
⑦「いや、なに顔色が悪そうだったからよ…」
ボリボリと頭を掻いた。
マリーン「うっ!!」
まだ、地面にうずくまる。
⑦「様子が変だな。幼なじみのアイシスの所で診て貰った方が良いみてえだな…ヨイショっと。」
手裏剣を小型化させ腰にはめると、床に落ちている杖を拾いマリーンを担ぎ上げた。
マリーン「私はまだ戦える…」
「おい、いたぞ!!」
別の暗殺者たちが現れた。
⑦「チッ…無理すんなって。行くぜ!」
シュン
走りながら三人に分身し真ん中がマリーンを担ぎ、左右2人が剣で攻撃をはじき暗殺者たちの間を駆け抜けて行った。
>> 290
何とか暗殺者たち振り切って、ひと息つくと左のブレスレッドに声をかけた。
⑦「シャドー、すぐ発進出来るようハイパーブースターを温めといてくれ!」
PPP
「リョウカイ! アンサツシャノ イチヲオシエルカラ スカウターヲ アタマニソウビシテ!」
⑦「面倒くせ~なぁ。」
ゴソゴソ腰袋からスカウターを取り出すと耳にかけ左目の所にモニターを装備した。
ピッ
スイッチを入れると、マップと敵の位置が映し出された。
⑦「よし、しめた。このルートで行けば、最短距離で敵に会う確率はひくい。偶には役にたつな。」
グッタリなっているマリーンを見ると、また走り出した。
どうにか、退け港に着くとシャドーmkⅢに乗り込み寝室にそっと寝かせた。
デッキに着くと通信ボタンを押した。
ブーン
⑦「アイシス!頼みがある。」
スクリーンパネルにアイシスの顔が映るや否や頼み込んだ。
⑮「どうしたの?」
⑦「仲間が病気みてぇなんだ!診て貰えるか…」
⑮「分かったわ。直ぐにこの星まで連れて来て。」
⑦「あぁ、直ぐにコスモワープで行くからな頼むぜ!」
ブーン
凱はシートに座るとレバーを握った。
- << 303 黒の小惑星を何とか脱出すると凱は赤の小惑星に座標を合わせコスモワープした。 ギュイーン ⑦「マリーンもう直ぐ赤の惑星だ、頑張れよ。」 そう呟くと赤い色に輝く海に着水した。 ブーン ⑦「アイシス、島までの誘導を頼む。」 ⑮『了解!!』 スクリーンパネルに映ったアイシスに頼むと自動操縦に切り替えた。 ウィーン デッキから出た凱はマリーンの居る寝室に駆けていった。 ⑦「マリーン大丈夫か?」 ベットでグッタリ横になっているマリーンの髪を撫で心配した。 マリーン「大分、楽になったわ。どこに向かっているの?」 心配そうに凱に尋ねるとベットから起き上がろとした。 ⑦「あぁ心配するな、幼なじみの医者に見せるだけだ。」 マリーンはその言葉を聞くと安心したのか眠りについた。 滝の水が上がり秘密医療基地の港にシャドーmkⅢが着くとアイシスと医療スタッフの乗っているバスが到着していた。 ⑦「頼んだぜ、アイシス。」 ⑮「凱まかせな!それにしても、あんたが慌てるなんて、この人に惚の字かい。」 ツンツン胸をつつく。 ⑦「ばっばっきゃろ~っ」 凱は慌てた。
>> 291
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「師匠~ちゃんと教えて下さいよぉ!」
ラブ「だから!気まぐれだ!気・ま・ぐ・れ!」
木々に囲まれた獣道を二人は帰っていく。ラブの後について歩くハークはいつにも増していい笑顔である。全てを知った事で、心の中のもやもやも吹き飛んでいた。母は死んでいた事は悲しい…でも過去を知りたかったのは過去を引きずる自分と離別したかったからだ。ラブの魔法使いとしての修行はハークを人間としても大きくさせていた。今のハークに悩みは無いし、恨みもない。親はいなくともラブがいる。ハークにとってはラブとのこの平穏な暮らしが一番なのだ。
ラブ「さぁ!飯の支度はお前に任せて…俺はひと寝いりするかな!」
ハーク「えっ…今日の当番は師匠でしょ!?」
ラブ「助けてやった賃金だ!安いもんだろ!くっく!」
ハーク「えぇ~」
だが、そんな日々を壊す来客者がやって来ようとはこの時のハークには思いもしないのであった。
>> 292
【番外編 過去の遠き日】
その日は朝から雨が降り、分厚い雲に空は覆われていた。いつもなら木に多く止まっている小鳥たちの姿もない。
ハーク「今日は青空を見れそうにないなぁ」
窓越しに空を見つめるハークは朝から気分がそぐわなかった。空気が湿気ているせいもあるかもしれないが…朝からどうも落ち着かないてのだ。
ハーク「師匠は気楽でいいよな」
もう昼間というのにベッドから離れようとしないラブを横目で見つめる。いっそ【雨避けの魔法】で雨雲を飛ばしてやろうかとハークは考えたが、【魔法は肝心な時にしか使うな】と日々口癖のように言うラブの言葉を思い出し、止めた。
ハーク「師匠にバレたらリンチだもんなぁ」
ハークは杖を手にとる。10才の時貰った杖だが、ハークの成長と合わせ杖も丈を伸ばしいるため、サイズはぴったりである。部屋の隅の本棚に置かれた魔導書を手に取り、ハークは椅子に座る。本来魔導書はそう簡単に手に入るものではないが、ラブが生涯をかけて集めたというご自慢の魔導書が数百冊、本棚には無造作に置かれている。そのお陰で、ハークの魔法に関する知識は国のお抱え賢者にも引きをとらないほどのものだ。
>> 293
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「えっと…初歩移動魔法っと」
魔導書をめくりながら、ハークは片手で魔法文字を空に書き、魔導書に示された魔法を頭に刻んでいく。通常なら低級魔法一つ覚えるのに数日をよおするが、ハークにかかれば数分でことは足りる。数ページめくった頃、扉を叩く音が聞こえる。どうやら訪問者のようだ。ハークは杖を片手に扉まで歩いていく。訪問者は複数のようで何人かの話声が聞こえる。
ハーク「なんのようです?」
ハークは扉の覗き窓を開け、訪問者たちを確認する。扉の前に3人の兵士。少し離れたところに10人以上の兵士たちがいる。鎧のマークからして王国の兵士たちだろう。
「我らはダンテスティン王国より参りました。名高い【恋の賢者】様にお知恵を拝借したく…」
山奥の家だが、師匠に会いに来客は別に珍しいことではないため、ハークは扉を開ける。ラブは普段は威厳もあったものではないが、賢者の称号を持つだけあり、国にはそれなりに名が通った魔法使いなのだろう。国の兵士もよくやってくる。だが、これだけの大人数でやってくるのは始めてである。
ハーク「中隊率いてやって来られるとは…何事です」
>> 294
【番外編 過去の遠き日】
「貴方が…【恋の賢者】様ですか?これほどお若いとは…」
ハークの顔を見て、兵士がそう言う。ラブは来客をあいてにしないため、来客対応はハークの仕事になっていた。大抵の来客者の相談はハークの力でも解決出来るので、ラブも安心して任せている節もあるようだ。
ハーク「幼い賢者は不安ですか?兵士殿?なんなら他を当たってくれてもいいんですよ」
兵士の言葉に機嫌を悪くしたハークは扉を閉めようとするので、兵士が慌てて、頭を下げる。
「すっすいません。どうか、お力をお貸し下さい」
ハーク「で、何があったんです」
「あちらに」
3人の兵士は10人以上の兵士たちが警護する馬車を指さす。
ハーク「馬車に何があるのです」
兵士に先導されハークは馬車の前まで行くと馬車の扉を兵士が開ける。中からは綺麗なドレスに身を包んだ女性が出てくる。
ハーク「あっ」
その女性はダンテスティン星で知らない人はいないほど有名な…驚きを隠せないハークは女性に釘付けになる。背後の兵士はこん棒を振り上げる。
ハーク「っ……ぁ」
頭に強い衝撃が走り、もうろうとする意識の中、魔法を使おうとするが、意識が途切れる。
>> 295
【番外編 過去の遠き日】
「あれ?ハークの奴何処行ったぁ?」
夕暮れ時に目を覚ましたラブは暢気に欠伸をし、ハークを探していた。一方、ハークは…
暗い石造りの牢屋にいた。息苦しい牢屋の中にはハーク以外にも数人の男たちが鎖で縛られている。
ハーク「くっ…うぅ…痛てて」
目を覚ましたハークは後頭部に強い痛みを感じ、手で動かそうとするが、鎖で縛られ動けない。
ハーク「手荒い真似をしてくれるよ…ほんと」
呪文を唱える。が、鎖は外れない。何度も呪文を唱えてみるが、鎖は外れる様子はない。
「少年…魔法避けの鎖だ。止めておけ…体力の無駄じゃよ」
縛られていた老人が言う。
ハーク「貴方は?ここは何処ですか?」
ハークは手は拘束されているが、足は自由だ。立ち上がり、石造りの扉に体当たりするが、ビクともしない。
「止めておけ…今は冷静に対応せねばならぬ時ぞ。儂は【根の賢者】スス…ここは恐らくダンテスティン城じゃろうな」
ハーク「【根の賢者】スス様!マンリス村のですか!」
スス「そうじゃ…昨日王国の兵士に連れて来られての。お主もじゃろ?まぁ…ここにおる全員だろぅが?」
>> 296
【番外編 過去の遠き日】
周りの男たちはススの言葉に頷く。ハークは改めて、男たちの顔を見渡すが、皆、名も顔も通った賢者たちである。
ハーク「では、皆さんも王女を見て…背後から殴られたって訳ですか?」
そう馬車から降りてきた女性こそダンテスティン王国の若き王女セリスであったのだ。
スス「儂らも油断したものじゃ…まぁ突然、王女を目の当たりにしたら当然かのぅ」
ハーク「ですが…なぜ王女はこのような事をなされるのですか?王国の命を出せば…なぜ?こんな手荒な真似を?」
スス「はたして、王国の命に従う者がここにどれだけいるかのぅ…」
殆どの者は頷く。どうやら賢者たちは王国に対し、友好的でない者が多いらしい。
「確かにな。それに…これは国王の意思ではないように感じる」
黒い服に身を包んだ黒魔術師がそう言う。たしか…【黒の賢者】のファ。
ハーク「国王の意思でないと?では…王女は国王の意思に逆らい。なんらかの行動をされているのですか?」
ファ「そうだ。王国は元々内部で分裂が酷かったが…ふん…貴族ってのは血柄がなんやら下らんことで、よく揉めるしな」
スス「今は推測に過ぎんがな」
>> 297
【番外編 過去の遠き日】
スス「しかし…王女のバックには相当な魔法使いがいるようじゃ」
鎖に書かれた魔法文字から強力な魔力を感じる。賢者たちは各々、魔法文字の【解】にとりかかっているが、術者の力には対抗出来ていないようだ。
ファ「王国のお抱え賢者に俺様以上の力の持ち主はいなかった。恐らくダンテスティン星の担当…大賢者様だろうよ…っけ」
ファは唾を吐く。
スス「風の大賢者殿かぁ…あの方の魔法なら解けぬ訳よのぅ」
ハーク「大賢者様がなぜこのような事に手を貸されるのですか」
ファ「餓鬼…それが分かったら苦労しないだろうが!」
ハーク「すいません」
ファ「おい!餓鬼!お前みたいな奴がなぜここにいるんだ?」
ハーク「えっ…それは…」
スス「止めんか…その子は【恋の賢者】じゃ…儂が保証しようぞ」
ファ「恋の賢者?ふざけた野郎だ…けっ」
>> 298
【番外編 過去の遠き日】
牢屋の中は静かになっていた。賢者たちもいくら話合ったところで、どうにもならないと踏んだのだろう。おそらく外はもう夜だ。賢者たちは眠気にやられ眠りに落ちている。
ハーク「スス様…さっきは有り難うございます」
眠っているススにハークは小声で言う。
スス「なに…ラブの奴にはお互い苦労しているな」
返事は期待していなかったが、ススは目を開け、ハークを見つめる。
ハーク「おっ…起きてたんですかっ…」
スス「ラブは元気かのぅ…奴は便りもよこさんからの」
ハーク「師匠の事をご存知なんですか?」
スス「ふふ…奴が師匠のぅ…偉くなったものじゃ。儂はラブの弟子じゃ」
ハーク「そっそうなんですか!」
驚きで声が大きくなったが、賢者たちは目を覚まさなかったようだ。
スス「ふふ…どうせラブと間違われ連れて来られたのじゃろう」
ハーク「はい」
スス「若くしてその力とは…将来が楽しみよのぅ。無事に帰れれば良いが…」
その日、ハークは石造りの牢屋で一夜を過ごした。明日に備え眠りにつく。明日に備えて……
>> 301
【番外編 過去の遠き日】
山頂の一軒家では…洗濯物を入れ忘れていた事に気づき慌てて、家の中にしまうラブがいた。昼間からハークを探さず酒を飲んだくれていたようだ。ほは赤らみている。
ラブ「こりゃ…」
満月の光に照らされ、馬の足跡をはっきり確認出来る。ラブは洗濯物をしまいながら、足跡の数を数える。
ラブ「十以上か…中隊とは…何事やら。今日はもう遅いし…寝るかな。ハークなら上手くやるだろうしな。くっく」
心配している様子が全く無いラブは欠伸をしながら寝室に向かった。
明朝、怒鳴り声でハークは目を覚ました。
『おら!起きろ!』
王国の兵士たちが牢屋に入ってくる。賢者を無理矢理叩き起こし、整列するよう指示する。
ファ「貴様らぁ!私を誰だと思っている!この扱いはなんだ!灰になりたいか!」
「なんなんじゃ!」
「こんなことをして」
指示に従おうとしない賢者に兵士は銃を向ける。
「我らは射殺許可も貰っている。死にたくなければ従うことだ」
ファ「くっ…」
兵士が冷酷な口調でそう言うと賢者たちは大人しくなる。魔法が使えず無力なのだ当然の反応だろう。
>> 291
何とか暗殺者たち振り切って、ひと息つくと左のブレスレッドに声をかけた。
⑦「シャドー、すぐ発進出来るようハイパーブースターを温めとい…
黒の小惑星を何とか脱出すると凱は赤の小惑星に座標を合わせコスモワープした。
ギュイーン
⑦「マリーンもう直ぐ赤の惑星だ、頑張れよ。」
そう呟くと赤い色に輝く海に着水した。
ブーン
⑦「アイシス、島までの誘導を頼む。」
⑮『了解!!』
スクリーンパネルに映ったアイシスに頼むと自動操縦に切り替えた。
ウィーン
デッキから出た凱はマリーンの居る寝室に駆けていった。
⑦「マリーン大丈夫か?」
ベットでグッタリ横になっているマリーンの髪を撫で心配した。
マリーン「大分、楽になったわ。どこに向かっているの?」
心配そうに凱に尋ねるとベットから起き上がろとした。
⑦「あぁ心配するな、幼なじみの医者に見せるだけだ。」
マリーンはその言葉を聞くと安心したのか眠りについた。
滝の水が上がり秘密医療基地の港にシャドーmkⅢが着くとアイシスと医療スタッフの乗っているバスが到着していた。
⑦「頼んだぜ、アイシス。」
⑮「凱まかせな!それにしても、あんたが慌てるなんて、この人に惚の字かい。」
ツンツン胸をつつく。
⑦「ばっばっきゃろ~っ」
凱は慌てた。
>> 303
タンカーに乗せマリーンをすぐさまバスに医療スタッフが移動させる。
⑦「俺様はもう一度黒の惑星に戻る。暗殺者がウジャウジャいるから仲間が心配だからな。」
⑮「気をつけな、こっちがつかんだ情報によると、あんた等が賞金稼ぎ頼まれる幹部と連合軍は繋がっているみたいだからね。」
⑦「あぁそのようだな…だが俺様の相手に不足はねぇ!後のことは頼んだぜ。」
アイシスにそう告げると小型艇に乗り込んだ。
⑮「バカ凱、私の気持ちも知らないで…」
凱に聞こえないくらいの小声で呟くと近くの小石を蹴りバスに乗った。
⑦「シャドー、行くぜ!」
PPP
「オンナゴコロ ワカッテナイネ!」
⑦「何か言ったか?」
「ベツニ…」
凱はレバーを握ると港を出て黒の惑星に舵を取った。
⑦「クリス達、俺様が着くまで死ぬんじゃねぇぞ!!」
ザバザバッ
真紅色に輝く海を離れ凱はマリーンがいる島を横目に大気圏に突入するとコスモワープの準備をした。
>> 304
【番外編 過去の遠き日】
「では…今から女王の元に貴様らを連れていくが…少しでも勝手な行動をとれば…おっと?言わなくても分かるだろう?」
綺麗に整列した賢者たちを取り囲む兵士は一斉に銃を構える。
「では…参ろう」
兵隊を指揮する中年兵の後に賢者たちも続く。赤じゅうたんが敷かれた廊下を進むと両脇に兵士が厳重に警備する通路に出た。重厚感がある石作り通路は流石はダンテスティン城と思わさされる作りである。天井の照明は豪華なガラス細工がついており、夜空の星にも負けない美しさである。先には美術品でも可笑しくない両開きの扉があった。扉の前の兵士は賢者たちを先導する中年兵に敬礼すると扉を明ける。
スス「王女に二度もあえるとは光栄じゃな」
ハーク「そうですね!帰ったら師匠に自慢しますよ!はは!」
ファ「能天気な奴らだ…けっ」
扉の先には王女の間があった。彫刻が掘られた柱が、何十本も向かい合い並んでいる。その奥には金で装飾された椅子に座った王女をがいた。もちろん厳重な警護、金鎧の近衛兵が20名ほどが警備している。
「女王様。命令通り連れてまいりました」
中年兵は頭下げる。
>> 305
【番外編 過去の遠き日】
セリス「ご苦労…トケイ。下がってよいぞ」
「はっ」
女王は20m程先にいる賢者たちを見つめ、手の平を払い総兵長のトケイに指示する。
ハーク『お前が!トケイ!?』
『トケイ』と言われ返事をする中年兵は敬礼をし、女王の間から出ていこうとするが、ハークの大声で立ち止まる。まさか…先程から一緒にいたこの男が…母の仇トケイだったとは…
「貴様!」
「押さえろ!」
列からはみ出したハークに近衛兵たちが取り押さえに駆けつける。外の警備兵たちも騒ぎを聞きつけ直ぐにやってくる。数秒もたたないうちにハークは兵に取り押さえられ、床に押し付けられる。
ハーク「ぐぅ!はなせ!」
「貴様ぁ!暴れるな!狼藉者がぁ!女王の前だぞ!」
暴れるハークを数人係りで押さえつけ、銃を持った兵士がハークの頭に標準を合わせる。
トケイ「止めんか。女王様の前で殺しとはもっての他だぞ。お前たちも首が飛んでもいいのならやればいい」
「はっ…すっすいません」
不機嫌そうに見つめる女王を見た兵士は慌てて、銃をしまう。
「離してやれ…なんだか知らんが、私に用があるようだ。そうだろ?賢者様?」
>> 306
【番外編 過去の遠き日】
「はっ…」
兵士はハークを解放し、鋭い視線を送りつつも元の持ち場に戻っていく。
ハーク「貴方が…兵長トケイですか」
服を払い立ち上がるとトケイに近づいていく。(女王とは反対方向・出口側へ)
「貴様!動くな!」
セリス「構わぬ。好きにさせてやりなさい」
直ぐに止めに入る兵士たちだが、女王の一言で止(とど)まり、持ち場に再び戻る。
トケイ「いかにも…数年前まで、兵長をしていたトケイとは私の事よ。今は総兵長だがな」
ハーク「私は貴方の15年前の任務放棄のお陰で、命が助かった者…と言えば分かって貰えると思います」
トケイは暫く沈黙するが、思い出したのか、、驚きを隠せない様子でハークを見つめ、数歩後退りする。
トケイ「まさか…本当に生きて私を殺しに来るとは…驚いたな」
ハーク「誤解されてるようですから…言っておきます。私は貴方を殺したいとは思っていない…恨みはありますけど」
トケイ「はは…そう言わず…殺せばいい。その気なら躊躇せず命を差し出そう…私はそれだけの事をお前にした。それにしても大きくなったな」
トケイは腰の剣を抜きハークの方に投げる。
>> 307
【番外編 過去の遠き日】
トケイ「拾え…鎖で縛られていても剣ぐらい持てるだろ」
足元へ鈍い金属音を上げ、短剣が落ちる。
ハーク「どういうつもりか…知らないけど。私は貴方を殺したいとは思わない。そんなことをすれば…結局貴方と同類になってしまうから…貴方が大義名分で母を殺したように」
トケイ「私は……なら!どうやって!生きてやってきたお前に顔向けすればいいのだ!私は!私は!どうやったら…」
崩れ落ちるようにその場に座り込む。部下らしき兵士が外から駆けつけくる。
ハーク「悔いて下さい。それだけです…」
スス「実に立派な男に育てたなラブよ。わしゃ…師匠として誇らしいわいぃ…うぅ」
二人の様子を伺っていた女王を含め・兵士・賢者たちは状況を飲み込めていないが、全てを承知するススは涙を流し、ハークを見ていた。横にいたファはそんなススを見て、呆気にとられつつも…
ファ「この爺…ボケ入ってんな…けっ」
そう漏らしたのだった。
>> 308
【番外編 過去の遠き日】
トケイは部下に連れられ、女王の間から出ていく。トケイを見つめていたハークは強引に兵士に腕を引っ張られ、元いた場所に戻される。
セリス「トケイはどうしたと言うのかしら…」
女王も困惑しているようで、近衛兵にそう問いているが、当然ながら事情を知らない兵は首をかしげるだけである。
スス「ハークよ。良き判断じゃぅ…うぅ」
ハーク「スス様ぁ…あ」
泣いているススを見て、ハークも自然に涙がこぼれる。この涙はなんなんだろう…母の仇をとれる絶好の機会をふいにしてしまった悔しさからか…嫌違う…トケイは本当に悔いているのだ…それが、分かったからだ…トケイは恐らくこれまで悔いて過ごしてきた。大粒の涙がハークのほを伝い床へと落ちる。
ファ「コイツら…馬鹿か?なんで泣き出すんだ?…だから餓鬼と爺は嫌いなんだ…けっ」
事情を知らないファはそう言いながら、二人を睨んでいたのであった。
セリス「まぁ良いわ。それより…事を進めなくては一刻も早く」
「はっ」
女王の一言で兵が反応し、再び整列し直しす。引き締まった空気に賢者たちも女王を見つめ、女王からの言葉を待つ。
>> 309
【番外編 過去の遠き日】
セリス「始めに言っておきたいことがあります。賢者方…」
女王の気品のある声は静まりかえった女王の間に響く。
セリス「こんな手荒な真似をして本当に申し訳なく思っております…どうかお許し下さい」
以外な言葉に賢者たちはどよめく。どうやら危害を加えるつもりはないらしい…このような行動をとったのは深い訳がありそうだ。
セリス「こんな形にはなりましたが…ダンテスティン城へようこそおいで下さいました」
ファ「けっ」
スス「止めんかい」
前置きは結構だと言わんばかりにファは唾を吐く。
セリス「いえ…根の賢者スス様よろしいのです。私が悪いのですから…ですが!これには理由がありまして…どうしてもこのように手荒になってしまいました」
スス「女王…儂らも事情があることは察しております。どうが…この鎖をほどいて下さらんかのぅ。年寄りにはキツイのです」
女王「お許し下さい…その鎖は外せないのです…」
ハーク「なぜです?」
賢者たちからの質問に女王は答えに困っていると突然、移動魔法で魔法使いが現れる。
「私からお答えしよう」
>> 310
ファ「誰だ。てめぇ」
魔法使いはハークより、5・6歳上の男。白い杖を携えている。どうやら光魔法師のようである。
エア「私は女王の護衛魔法使い。エア。」
スス「【奏者の賢者】エア殿。その歳にして次の大賢者に推薦されているという噂の…」
エア「いえ…私の力など大したものではありません。現に今の状況は私の力不足の次第です…」
後に【空の大賢者】となるエアだが、それはまた本編で……
ハーク「今の状況?私たちには話が掴めません…教えて貰えないでしょうか?」
エア「えぇ。私もそのためにここにきました」
エアは女王の方を一度見てから話始めた。
エア「この国は数年前から大変なことになっているのです。実は…王は魔王に操られております…」
ファ「魔王だと?ぷっ…笑かしてくれるぜ。おとぎ話じゃねぇんだぜ…代々。数年前なんてありえねぇ…国王や国に変化があってもいいがそれもないしな」
エア「正確には魔法王と名乗る魔法使いが王に催眠術をかけている。笑いたければ…笑えばいいが、これは事実だ」
ファ「魔法王?まっ…確かに略したら魔王だな。はっははは」
>> 311
【番外編 過去の遠き日】
スス「止めんか」
ファ「だってよ」
エア「魔法王はこの城の地下にいる。王と大賢者様を人質とり、簡単に手は出せない…それに魔王の魔力は我ら比ではない」
スス「大賢者様を人質にじゃと?大賢者より力を持っておると申されるのか」
エア「そのようです…私もつい最近この星に来たばかり…敵の力は正確には把握していませんが…おそらく」
ハーク「話からして…私たちを呼んだ理由は魔王討伐ですか?」
エア「そうです。なにしろ私一人では荷が重い」
スス「じゃが…そのような力の持ち主相手なら魔法界に助けを求めたほうが懸命じゃろうて」
賢者たちの殆どが頷く。大賢者が人質に取られているのだ。魔法界とて、放っておく訳にはいかないだろう。
エア「それが出来たら苦労しない」
エア「魔王の力によってこの星は魔法界との連絡を断ち切られています…」
賢者であるエアは魔法の泉(魔法界との出入口)を出す。
スス「なんじゃ…これは…」
ファ「満更…嘘じゃねぇてことか」
通常なら澄んでいるはずの泉が黒く濁っている。
>> 312
【番外編 過去の遠き日】
エア「ここにいる賢者方…18名はここ数年魔法の泉を出しておられなかった。そうでしょう」
エアの質問に苦笑いをしながら賢者たちは頷く。
エア「魔法界に定期的に顔を出すのは賢者…賢者で称号を得たものなら義務にも近いのに…数年も泉すら出さなかったとは呆れます」
スス「うっ…儂は隠居の身じゃったし」
ファ「俺はあんな光の中(魔法界)は苦手でね」
エア「だが…今回はその無関心さが、いい判断になりました」
エア「ダンテスティン星には100を超える賢者がいました。ですが、今は貴方たち18名以外はあの世です」
ファ「冗談だろ…」
エア「いいえ。貴方たち以外の賢者は魔法の泉を使って魔法界に行こうとして…皮肉にも殺されてしまったのです。魔法の泉の先にはおそらく魔王が待ち構えていたのでしょう。」
スス「異空間の出入口をねじ曲げる力を持っておるのか…厄介じゃの」
エア「私の推測ですが、最初に大賢者様を異空間で待ち伏せし…力を奪ったのではないかと」
ハーク「力(魔力)を奪う?」
>> 313
【番外編 過去の遠き日】
エア「そうです。異空間での力…風の大賢者様でも異空間では勝てませんでしたから…驚異ですが、魔王にはどうやら魔力を奪う能力を持っているようです。今まで倒した魔法使いの力を得て、強力な魔力を得たようです」
スス「そのような能力者はよく聞くが…方法が問題じゃ」
ファ「ごちゃごちゃ言ってねぇで!ようするに!魔王を倒せば事は済むんだろ!早く鎖をほどけ!」
エア「鎖は貴方たちが魔王に感知されないように…大賢者様が作っておられた物を拝借して使っています」
ファ「なんだと」
ハーク「納得です!」
黙って話を聞いていたハークはそう言うと淡々と話始める。
ハーク「なぜ?こんな手荒な真似をしたか?それは…魔王って奴に勘づかれないため。だから…城の地下にいるなら当然、賢者クラスが城内に入れば魔王に気づかれ、行動を起こすにも起こせなくなる。つまり…察知されることなく力(賢者たちの協力)が欲しかった。でも…生き残っている賢者たちは協力的ではないし…ましてや魔法封じの鎖で縛ることを許してくれるはずはないと踏んだ貴方たちはこのような行動をとった訳ですね」
>> 314
【番外編 過去の遠き日】
エア「その通りです。お若いのに流石です…それに比べて、この方は…」
フォに目線を送る。
ファ「あぁ!言いたいことがあるのなら言え!けっ」
ハーク「納得いかないのは…貴方です」
エア「私ですか」
ハーク「貴方は星に来て間もないと言ってましたが…当然、魔王は魔法界にも外部にも自分の存在を知られないよう努力しているのですよね?」
エア「はい。ですので…貴方たちも…私のように他星の者もこの深刻な状況に気づきませんでした」
ハーク「なら…貴方はなぜ?気づいたのですか?」
エア「私は数日前にダンテスティン星にやってきたのですが…勿論、魔王の存在など知らなかった私は魔力も隠さず入ってきました。当然、魔王に感知され、落雷魔法で船を追撃され……重症を負いました。ですが…幸いにも魔王は力の弱い魔法使いには関心がないようで…今も城でも低級魔法使いは自由に動いていますし…私も重症で魔力が極端に落ちたのが救いでしたよ」
>> 315
【番外編 過去の遠き日】
エア「攻撃された後、私は治療を受けるため…ダンテスティン城へ向かいました。今、思えば魔王を知らなかったといえ…敵陣に乗り込んだようなものでした。更にここでも幸いのことに女王の部下に助けられ…一命をとりとめました。あの時、城で王側(魔王の手下・操られた者)に会っていたなら私は死んでいた」
ファ「ふん。代々の話は分かったが…まだ疑問だらけだ」
スス「そうじゃの。エア殿は星に入って追撃されたと言うのなら…他にも追撃され死亡した者は一人や二人ではあるまい。ダンテスティン星に行ったきり戻ってこないなら…他星も気づいても可笑しくなかろう」
ハーク「それに魔王は王を操り、部下も多く操っているような口振りですが…なら、なぜ?女王を含め、ここにいる兵たちは洗脳されていないのです?城中の人を洗脳すれば今の我らのように反乱するような者は出ないのに」
エア「まず…追撃ですが、他星からの来客者は殆どが…魔法使いではありません。魔法使いの来客者となれば…年に数人でしょう」
スス「では…なにか。魔王は魔法使い以外は警戒しとらんということかのぅ」
>> 316
【番外編 過去の遠き日】
エア「えぇ。ですので…手はうっています」
スス「手とな?」
エア「あちらを」
扉の前にはエルフが立っている。いつの間に現れただろうエルフは腰に剣を携え、軽装の鎧を身につけている。外形は初老だが、エルフ族なら700歳はこえている歳だろう。
タカ「依頼は受けよう。エア殿。私は強者を求めている」
エルフからは凄まじいオーラを感じる。本編【話つく】では長老として隠居の身であったタカであるが、半世紀前の【番外編 過去の遠き日】では現役の戦士として、各星に飛び周り、【タカ伝】を築き上げていた。
エア「有り難うございます。タカ殿。貴方が力を貸して下さるならこれほど頼もしいものはない」
ハーク「エルフ族のタカって…あの…」
ファ「世界一の剣豪のお出ましとは…ねぇ」
エア「役者が揃ったところで…ハークさんの問いにも答えておきましょう。なぜ…王女は魔王に操られていないか!それは…この女王の間は魔法避けの石で作られているからです。ここにいれば…魔王とて簡単には手を出せないのです。それに…」
>> 317
【番外編 過去の遠き日】
エア「いくら強大な魔力を持ち合わせている魔王と言えど…城には数千人の人々が働いています。王(国の上層部)関係だけでも100人以上…操るにも限界があるのです。最低限有力な者を操られば国を自由に動かせます。あえて政治に関わらない女王を操る必要もないということでしょう」
スス「ふむ…話の大筋は理解したが…魔王を倒すのは難しいじゃろうな…ましてや人質つきでは尚更じゃ」
セリス「賢者方…人質の安全より、魔王討伐を優先して下さい」
女王は悲しそうな顔している…セリスの胸のうちは国のためただそれ一心であろう。例え王の命を失おうとも…国のためなら―――
ファ「なら。遠慮せずに突っ込めるな」
タカ「片はすぐつく…」
ハーク「女王。心配なさらないで下さい。私が命にかえても王を助けだします」
ファ「おい。てめぇ言葉では軽くいえるがな!そう簡単には…い……」
鋭い目でファを睨む。ファはハークの目に怯んだが、言葉につまり…それ以上ハークに文句をつけるのを止めた。
ハーク「助けだすさ。絶対に」
セリス「有り難う…賢者様…」
エア「では……地下に案内します」
>> 318
【番外編 過去の遠き日】
ファ「おいおい。いきなりかよ…少しは休ませろよ」
エア「一刻も早く。魔王を倒さねばならないのです。我慢して下さい」
女王にお辞儀をし、エアは連いてくるように指示すると女王の間から早々と出ていく。ハーク・賢者たちは女王に軽い会釈をし、エアの後を追う。
セリス「どうか…我が国を救って下さい」
祈るように賢者たちの背中を見つめ、セリスは手を合わせる。
エア「足元に気をつけて」
豪華絢爛の城内とはうってかわって、地下は暗く何処か不気味であった。エアの杖から放たれる光が無ければ何も見えないだろう。光に照らされ、鼠が逃げ、天井には蜘蛛の巣が広がる。ハークたちの足音以外は何も聞こえない。本当にこの奥に魔王がいるのだろうかと疑ってしまうほど辺りは鎮静だ。
ハーク「寒気がする」
エアに先導され地下深くに続く階段を降っていく。細い階段の先は見えず、何処までも続いているような錯覚さえ与えられる。
エア「この階段は【死への道】と呼ばれています。最下層には王族の墓が置かれていると聞きましたが…魔王がなぜこんな所を根倉にしているかは謎です」
>> 319
【番外編 過去の遠き日】
ファ「ぴったりの名前じゃないか。クック」
スス「それにしても…いつまで歩くのじゃ。年寄りの儂は魔王と戦うまえにくたばってしまうわい」
エア「もう直ぐ最下層へと繋がる扉につきます」
エアの言う通り、先程まで暗闇だった先に薄暗い光を確認出来る。どうやら光源があるところが、最下層への扉があるのだろう。
ファ「ところで…鎖はいつになったら外してくれるんだ」
ファ「魔王に気づかれるのは一秒でも送らせたいのです。最下層への扉を明ける瞬間まで我慢して下さい」
ファ「ふん」
階段を降りる足音が止まる。エアが立ち止まるのに合わせて、賢者たちも止まる。そこには何年も開けられていないだろう蜘蛛の巣に覆われた扉があった。扉の両脇には魔法石がついており、半永久に光りを放っている。
「お待ちしておりました。エア殿。タカ殿。そして…18名の賢者殿」
扉の前には20名以上の屈強な兵士がいた。どうやら彼らも魔王討伐に参加するようだ。トケイの姿も確認出来る。
ファ「俺たちだけで行くんじゃなかったのか…兵どもなんぞ足でまといになるだけだぞ」
>> 320
【番外編 過去の遠き日】
エア「ここにいる兵士たちは国の精鋭団です。魔王との戦いに大きな助けになるはずです」
トケイ「我らは賢者殿の身を守るため、女王より命を受けております。命に変えても貴方方をお守りします」
兵士は敬礼する。
エア「では…鎖を。杖をお渡します」
賢者たちの鎖は兵士の手によって、外されていく。自由となった賢者たちは各々、背筋を伸ばしたり、愚痴を溢したりと様々だ。エアは魔法で、賢者たちに杖を配る。
スス「やっと…自由の身か」
杖を受けとった賢者からは安堵の表情が伺える。
ファ「餓鬼。精々、一秒長生き出来るように頑張りな」
ハーク「どうも…でもファさん。そのセリフ、そのまま貴方に返しますよ」
ファ「なっ…貴様…俺様を誰だと思ってる」
ファは黒光りする杖をハークに向ける。ハークも杖をファに向け、お互い水晶からは目映い光が放たれる。
スス「止めんか!」
魔法発動寸前にススが二人の間にわって入る。
ファ「どけ!爺!餓鬼に大人の偉大さを教えてやろってんだ!」
スス「頭を冷やせ」
ススの鋭い眼光で睨む。
ファ「ちっ…運がいい奴だ」
ハーク「……」
>> 321
【番外編 過去の遠き日】
エア「では…魔王の巣へ」
兵士が最下層への扉を明ける。鈍い音とともに砂埃が舞い、最下層から吹く冷たい空気がハークのほをかける。扉の向こうには不気味な銅像がならび、霧がたちこめている。肉眼では地下深くにいる魔王の姿は到底確認できないが、発せられる魔力は凄まじく飲み込まれそうになるほど邪悪で、黒いオーラを感じる。
「わしは降りるぞ」
「わ…わしも」
「俺もだ。やってられるか」
その濃く邪悪な魔力に臆したのか、数人の賢者は来た道を逃げるように走っていく。気づけば18人いた賢者は10人にまで減っていた。
タカ「使えない奴らだ」
ハーク「皆さん!待って下さい!」
ハークの呼び止めも虚しく8人の賢者は足早に去っていった。
エア「ハークさんいいんです。私もこれ以上無理強いはしません。魔王の力(魔力)を目の当たりにしたら…逃げ出す者が出て当然でしょう。実際、私も逃げ出したいぐらいです」
確かに魔法を足しなんでいる者なら、魔王の力の強大さを肌で感じたのだ。勝算があるか無いかなどすぐに分かることだ。
>> 322
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「意外ですね。ファさんは無謀なことはしなさそうなのに」
ファは逃げ出すどころか、杖を片手に黒いローブをなびかせ、魔力を高めている。
ファ「ふん。俺様の唯一の欠点でな。強い奴とは戦いたくてしょうがないんだ」
エア「いざ」
エアが先人きって最下層への扉をくぐる。
スス「では…儂らも行くとするかの」
ハーク「はい!」
ファ「けっ」
トケイ「我らも!国の名誉のために!進め!」
『おぉ~!!』
タカ「……」
魔王討伐のため、彼らは最下層への道に足を踏み入れた。国のため、己のため、各々の思いとともに――――
それが、壮絶な死闘の始まりと知りながら―――
彼らの運命を予測するかのようにダンテスティン城の天候は雷雨にみまわれ、大荒れであった。空の分厚い雲は希望(光)を遮り、絶望を象徴していた―――
ドガアァァ
ゴロゴロゴロ
>『やってきたか…力無き者たちよ』
>> 323
【番外編 過去の遠き日】
スス「不気味なところじゃ」
手荒く岩を掘った通路は道も悪く暗い。両脇にはゴブリンの石像が並んでいる。恐ろしい形相のゴブリンたちは今にも動き出しそうだ。
ファ「魔王って奴は謎が多いが…趣味が悪いってのは分かったな」
冷たい石のゴブリンからは『死』を連想させられる。なんとも不気味な雰囲気である。
エア「気をつけて下さい。魔王は我々のことに気づいているはずですから」
道は悪いが、それなりの広さがあるので、兵士が賢者を警護しながら進む。兵士たちは身体ほどの巨大な盾、厚い鎧をまとい防御重視の装備のようだ。
タカ「どうやら…敵のお出ましのようだ」
ハーク「えっ?」
無口だったタカが突然そう言う。兵士は反応し、身構えるが、何人かは剣を抜く手前で、動き始めたゴブリンに吹き飛ばされてしまう。
ゴブリン「ギャアァァ」
突然の事だった。石像のゴブリンが動き出し、鋭い牙、爪で襲いかかってきたのだ。
>> 324
【番外編 過去の遠き日】
ファ「ただの置物にしたら良くできてると思ったが…ちっ」
賢者たちは魔法でゴブリンに応戦し、兵士は剣で戦う。だが、石ゴブリンの堅さに苦戦している。
ハーク「風の刃よ!」
風が線となり、放たれる。ゴブリンの身体を二つにする。
スス「ほっほ…やるのぅ」
負けじとススは大地から木の根を出現させゴブリンたちを縛り上げていく。
ファ「闇に呑まれろ」
ファはハークを意識しながら、黒い煙のようなものを操り、一匹でも勝るようにゴブリンを消していく。これで5匹目―――
タカ「準備運動程度にはなるか……」
剣筋が、線光となるほど早い剣さばきでゴブリンを細切れしていく。タカは一人・二人と倒れていく仲間を見て、苛立ちを強め、剣を握る手にも力が入る。
エア「くっ数が多いな」
先程から通ってきた道にいたゴブリンが全て集まってくる。ざっと数百体はあっただろう石像の群れ。
トケイ「怯むな!よく見て剣を叩き込んでやるんだ!」
流石は国の精鋭だけあって、賢者すら倒れていくなか、兵士たちもゴブリンと渡りあっている。
>> 325
【番外編 過去の遠き日】
トケイ「はっ!進め!進め!我らが道をあけるんだ!」
兵士は連携のとれた動きで、剣を槍のように突き出し、ゴブリンの群れを掻き分け、道を切り開く。
ファ「けっ!兵が5人に賢者が2人か…」
戦乱の中、冷静に犠牲者の数え、ゴブリンを吹き飛ばしながら、切り開かれた道を進む。
ハーク「やっ!」
「ギャアァァ」
四方八方から襲いかかってくるゴブリンに風の刃を浴びせる。実力はあると言っても実戦は始めてのハークはススに助けられながら、前に進む。
エア「くっ…こいつら(ゴブリン)は恐らく人形です!」
目映い光を放つ白い杖に照らされ、ゴブリンが粉々に砕ける。
タカ「ならば術者を倒せばゴブリンはまたお人形か…」
辺りにはゴブリン以外に術者らしい魔法使いはいない。これだけ、大量の石像を生きたように動かすなら、それなりに近くにいなければいけないはずだが―――
スス「じゃが…魔王なら離れていても出来るやもしれん」
エア「だとしたら…このゴブリンを全滅させるしか…」
>> 326
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「変化の魔法でゴブリンに化けている可能性があります。姿消しの魔法も」
エア「それは無い。私の杖から放たれる光は真実を暴きます。何人も私から姿を隠すことはできません」
確かに光魔法師の中でも一目を置かれるエアなら初歩魔法に欺かれはしないだろう。
ファ「俺様の感だと…ゴブリンの親玉(術者)は俺ら(賢者)の中にいる」
ハーク「まさか…」
スス「いや…そうかもしれん」
ファの言う通り、それなら―――
エア「私たちの中にいるなら魔力をビンビン放ってゴブリンを操ろうとも疑われませんからね」
タカ「木を隠すなら森か」
ファ「俺様は完璧な男だ。もちろん観察力もな。ゴブリンが動き始めた時、剣士(タカ)より早く反応した賢者がいた」
口を塞ごうとゴブリンの攻撃がファに集中するが、軽く受け流す。やはり、術者は近くにいるようだ。
ファ「あの緑の服のヤローだ」
指さす先には緑のローブを着た中年の賢者がいた。その賢者は不気味に笑うとゴブリンは動きを止める。
エア「まさか…賢者にも魔王の手が伸びていたとは」
>> 327
【番外編 過去の遠き日】
『気づくの遅いつ~の!ははっは!』
「ギャアァァ」
緑のローブの男が腹を抱えて笑うとゴブリンも声を発する。
『魔王様は寛大なお方だ。殺そうと思えばお前らみたいなゴミすぐ殺せるのにな!はは!』
タカ「悪いが先を急ぐ!お前の話を聞く暇はない!」
一瞬で男の背後に移動したタカは凄まじい速さで剣繰り出す。だが、剣は男をとらえず、見えない壁に弾かれる。
タカ「……」
『はは!剣士に俺が殺せるかよ!魔法使いは最強!魔法が世界を制してるんだ!』
男は杖をタカに向けるとゴブリンが一斉に襲ってくる。
ハーク「加勢します!」
スス「まぁ待て…見ておれ」
加勢しようと大半の賢者・兵士が動いたが、それより早く…ゴブリン共々、男はタカの繰り出す剣撃を受け、派手に血を噴き出す。
『馬鹿なぁ…ぁ』
タカ「つまらん」
エルフ族の紋章が入った剣は赤く色を変え、凄まじいオーラを放っている。男が倒れるとゴブリンは崩れていった。
>> 328
【番外編 過去の遠き日】
ファ「賢者クラスの魔法使いを簡単に倒しちまうとは…世界最強の剣豪と呼ばれるだけはあるな」
タカ「……」
ファを無視し、一人先に歩いていく。既に剣は元の銀色に戻っている。
ファ「なんだよ…つれねぇ野郎だ…けっ」
先々行くタカを慌てて、皆は追う。転がっている無数のゴブリンは更に不気味さを増している。
エル「魔王にどれだけの手下がいるかも分からないのに…一人目でこれほどの犠牲者が」
トケイ「兵は残り、13名です」
ファ「賢者は緑の男が減って…あと6人か」
ニシ「なに…4人の賢者の力が弱かっただけのこと…石(ゴブリン)ごときに殺られるなら邪魔になるだけじゃ」
ハーク・スス・ファ以外の残り3人の賢者はススと同じくかなりの年齢だ。
ファ「言うな。たしか…囲いの賢者ニシ」
スス「じゃが…儂ら年寄りに何ができようのぅ」
ニシ「まだまだ現役じゃわい」
トリ「鳥の賢者の名に恥じぬように戦うまでじゃ」
ゴウ「さよう」
>> 329
【番外編 過去の遠き日】
ゴウ「ダンテスティン星で4賢者と呼ばれていた我らの力を見せつけてやろうぞ」
筋肉質のゴウなる老人が言う。
エア「
北の賢人
【根の賢者 スス】
南の賢人
【剣の賢者 ゴウ】
東の賢人
【鳥の賢者 トリ】
西の賢人
【囲いの賢者 ニシ】
魔法戦争末期、戦争を終わらし、世を平和に導いたと…歴史書には書かれていました。頼もしいかぎりです」
魔法戦争とはダンテスティン星もシーラ星と同じく争いの絶えない星であった。100年以上もの魔法使いたちの衝突も数年前に事は収まり、ダンテスティン星は平和な国となった。その時、今の国王に手を貸し、平和に貢献したのがこの4人だ。
ファ「生きた伝説…化石のような奴らに…そうそう期待は出来ないけどな」
ニシ「ほっ…厳しい厳しい」
スス「おっと会話ここまでじゃ」
タカが立ち止まり、剣を抜く。
ハーク「敵ですか!」
タカ「そのようだ」
コツン
コツン
前方から何者かが歩いてくる足音が聞こえる。1人…2人…いやもっと大勢だろうか。
>> 330
【番外編 過去の遠き日】
ファ「何人来やがる!」
足音は近づくにつれて、増えていく。
エア「兵隊前へ!敵からの攻撃に備え!防御態勢!」
トケイ「了解!配置につけぇ!」
賢者6人の前に盾を構えて、兵士が陣どる。
『始めまして…いきなりで悪い貴方たちにはここで死んでもらう』
闇から姿を現した魔法使いの男が、杖から燃え盛る炎玉を放つ。トケイが巧みに盾を操り、炎玉を弾くと素早く動き、斬りかかる。隊長に続くように残りの兵士も闇から次々姿をあらわす魔法使いたちに斬りかかる。
『ショーの始まりです』
多種多様の魔法が魔法使いから放たれる。敵は30人はいる。
ファ「やってくれるぜ」
ドガアァァ
魔法攻撃の嵐をかわしながら、反撃の魔法を放つ。
ファ「吹き飛べ!カスが!」
黒光りする水晶から大量の魔力が放出され、黒い雷が無数に枝分かれし、魔王の手下を飲み込む。
『ぐわぁぁ』
凄まじいファの魔法は一瞬にして、10人以上の敵を飲み込み消える。
エア「天よ!光の裁きを!」
凄まじい閃光が敵を襲う。光は衝撃波と化し、敵を紙切れのように吹き飛ばす。
>> 331
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「残りは任せて下さい!」
杖が光を放ち、強風が吹く。風が魔法を弾き、術者である敵の魔法使いを吹き飛ばす。30人以上いた敵は誰一人立っている者はいない。
スス「儂ら出番はなかったの」
ゴウ「うむ」
エア「ふぅ。魔王め…どういうつもりだ」
ファ「まさか…雑魚と戦わせて魔力を消費させるつもりかぁ?それだったら魔王も大したことはねぇな」
タカ「今はそんなことを考えるよりも先に進むことだけを考えろ」
再び、歩き始める。先程の戦いで、また兵士が1人やられたようだ。これで、残り12人。
エア「寒いですね」
暗い通路をひたすら進む。周りからは『生』を感じず、草一本生えていない。冷たい空気に身体を冷やされ、吐く息は白い。
ファ「もっと厚着してくるんだったぜ。おい誰か衣服出す魔法使えねぇのか?」
スス「何言っとる。無駄に魔力を使う馬鹿が何処におる。先は長いんじゃ。我慢せい」
ファ「けっ」
ハーク「はっ!…はくしょん!」
鼻をすするハークは天井に出来た氷柱を見て、溜め息をつく。
>> 332
【番外編 過去の遠き日】
地下深くに進むにつれ、気温は下がり、空気も薄くなってくる。茶褐色の岩肌の道も、氷の道と変わり、魔王の魔力も一層と強く感じる。
スス「あれから…かれこれ一時間。音沙汰なしかぁ」
エア「このまま無難に魔王の元までいけるといいのですが…」
《漆黒の氷世界》と名をつけるに相応しい道は賢者たちの体力・魔力ともに蝕んでいく。このまま延々と進むなら魔王と戦う云々ではなくなるだろう。
ファ「はぁ…」
ハーク「つらそうですね」
ファ「うるさい!俺様は肉体派じゃなく頭脳派なんだ!けっ」
先を行く四人の賢者は老体でありながら、軽やかな足取りで前を歩いている。そんな老賢者の後を追うファは杖に重心をのせよおよお歩いていた。
トリ「若いのに情けないの~」
ゴウ「ふむ」
エア「あっ…皆さん!前方に扉です!」
先頭を行くタカ・エアが立ち止まる。前方に細い道には不似合いな大扉があった。扉は異質な魔力を放ち妙な存在感がある。
まるで――
この世とあの世の境目の扉――
>> 333
【番外編 過去の遠き日】
トケイ「安全を確認しろ!」
「はっ」
一人の兵士が警戒しながら扉の前まで行き辺りを確認する。安全を確認すると両手をふり、サインを送る。それを見たトケイは残りの兵隊を進める。賢者はその後に続く。
エア「扉を開けて下さい」
トケイ「はっ」
大扉を兵士12人が力いっぱい押す。だが、巨大な鉄扉は動かない。鍵がかかっているのか…
エア「開かないですか…なら…あっ」
ファ「どけ!」
じれったい兵士に痺れをきらせたファはエアを押し退け、兵士に扉から離れるよう指示する。
ファ「消し飛べ」
閃光とともに大扉は細かく砕け、吹き飛ぶ。土煙の中、扉の先に見えたのは……暗闇の道とはうって変わって、高いドーム状の天井に並ぶ魔法石(光を放つ石)に照らされた明るく広い部屋。円形の部屋の壁には観覧席のようなものがあり、そこには数百の魔法使いが歓声を上げている。
『オオォォ!!』
ハーク「これが…皆魔王の手下たちなのか」
中央には剣士3人・魔法使いが3人が立っている。
スス「コロシアムのようじゃな」
ニシ「あの中央の奴らと戦えと言うことか」
ファ「魔王もふざけたことしやがる…けっ」
>> 334
【番外編 過去の遠き日】
「よぅきた…遥々地上からごくろぅじゃったなぁ」
3人の魔法使いの真ん中に立っている老人が今にもかれそうな声で言う。
エア「歓迎されていてなによりです」
スス「早いとこ…全員で、かかってこんか」
周りにいる数百の魔法使いは手を出すつもりはないらしく観客席に座り、傍観者に徹している。
「なぃを…いぅ。きさまぁら…すぅにんぁぃてに…魔王団がぁ…ぃちだんとならぁんでも…よぃわぃ」
老人は見た目は今にも倒れそうだが、魔力は底知れぬものを感じる。両脇にいる二人の魔法使いからも…同等程度の魔力を感じる。今までの手下とは別格―――
ハーク「……」
敵の力を感じ、杖を握る手にも力が入る。
ファ「死にかけの爺には用はねぇ!」
「わかぃ…わかぃのぅ」
ファが放った電撃魔法はいとも簡単に老人に消される。
ファ「なぁ…」
「がきぃ…おまぇがどれだけぇ…むぼぅかおもいしることになろぅて」
「ルールは簡単…我ら6人を倒せば魔王様の元まで行くことができる後ろの扉が開く…」
老人の横にいる一人が言う。
スス「ならば早いとこ倒さして貰うまでじゃ」
「できぃるならぁやってぇみろぉ」
>> 335
【番外編 過去の遠き日】
ついに魔王軍との死闘が始まろとしていた時、地上は激しい雨にみまわれていた。
ドカアァァン
雨は次第に強くなり、ダンテスティン国に轟音が響く。
セリス「近くに落ちましたね」
女王は虚ろな目で外を見つめていた。雷は凄まじい光を放ち、雷雲は益々、活発に活動している。
「はっ…このような大荒れは珍しい」
近衛兵も不安そうに外を見つめる。
ザアアアアアア
「ちっ…ひどい雨だな」
激しい雨に打たれ一人の男がダンテスティン城に向かっていた。男は杖の水晶からの光を頼りにまだ見えぬダンテスティン国を目指していた。足場のぬかるんだ深い森は男の足取りを重くさせている。
ラブ「こんなことなら…長距離の移動魔法おぼえておくんだった」
大空に広がった歪な黒い雲にラブは弟子の危機を感じていた。
ラブ「ハーク…俺が行くまで無理はするなよ」
ドカアァァン
すぐ近くの木に雷が落ちる。それを見たラブは溜め息をつき、足取りを早めたのであった。
>> 336
【番外編 過去の遠き日】
「やれるぅもんならやってぇみろぉ」
スス「…ふ」
両方の間に緊張が走る。つかの間の沈黙の後、老人は笑い出し、兵士たちを指さす。
「きさまぁら…へぃしとこのうしろぉのさんにんとしょうぶとぉいこぉう」
無言で立っていた3人の剣士は剣を抜く。
「けんをぉ…もつぅどおぉしのたたかぃじゃって…われらぁ(魔法使い)はぁてだしぃむようぅじゃぁ…ひぃぃ」
老人を含む魔法使い3人は剣士の後ろに控える。
スス「敵に従うか…どうしたものかの」
エア「ここは…」
迷う賢者たちだったが、兵士たちは剣を抜き敵と向き合う。
トケイ「ここは我らにお任せを」
タカ「安心しろ。私一人で片付ける」
トリ「死ぬでないぞ」
スス「うむ…仕方あるまい。彼らもああ言っとる我らは見守るとしよう」
ファ「けっ…めんどくせぇ」
ハーク「皆さん!頑張って下さい!」
賢者7人は兵士12人とタカに委ね、見守る。
「いい度胸だ…我ら3剣フランジ兄弟と戦おとするとはな」
3人は同じ動きで剣を振り、かまえる。
トケイ「王国の兵をなめるな!」
兵士たちは盾を前に出し、剣の鋭い刃先を敵に向ける。
>> 337
【番外編 過去の遠き日】
王国の兵士たちは盾を巧みに使う剣術を得意とする。防御主体の剣術だが、その剣術は崩しずらく世界の兵隊の中でも一目を置かれる兵たちである。
「亀さんよぉ!盾に身を隠し!鈍い兵が俺らの剣捌きについてこれるかな!」
一方、フランジ兄弟は身軽な装備に細い剣。スピードを生かした剣術を使うのだろう。重装備で動きがどうしても遅くなる王国兵には相性のいい相手とはいえない。
タカ「ちっ」
タカは既に敵の力量を把握していた。長年の戦いを通し得た感のようなもの、敵のオーラはもとより、動きから敵の実力を瞬時に把握出来る。王国兵たちもこれまでの戦いの中でそれなりの実力があるとは分かってはいるが、フランジ兄弟相手では荷が重いだろう。だが、フランジ兄弟の力はタカには到底およばない。最初の一撃で二人を殺るとタカは剣をかまえる。
「兄貴」
「分かってるな。タカは世界最強の剣士だ…戦おうとするなよ…作戦通りにだぞ!」
「あぁ。これで俺たちが世界最強になるわけだ」
フランジ兄弟は不気味に微笑み、老人の方にサインを送る。
「ひいぃ…まずぅはやっかいぃなタカぉやるぅとしよぉうのぉ」
>> 338
【番外編 過去の遠き日】
ゴウ「あの老人…何かする気だ」
ニシ「任せろ。奴が魔法を使おうとしたら儂が妨害魔法を使うまでじゃ」
老人と剣士とのやりとり(サイン)をタカすら見逃すなか、ゴウとニシだけは見過ごしてはいなかった。いつでも動けるよう鋭い眼光で老人を見つめる。
「ひ…けんじゃのぉなかにもそれなりにぃできるぅやつぅがおるぅようだ」
視線に感ずき老人はそうもらしたが、当然、賢者たちには聞こえない。
タカ「受けてみろ!」
先制をとったのはタカであった。剣は燃えるように赤く輝き、閃光を放つ。
「頑張ってこい。痛いが、直ぐに治してやるからな」
「分かってるよ兄貴」
長男にそう言われ三男は頷く。
タカ「烈火!」
オーラをまとった剣を振り抜く。剣からは凄まじい炎が剣撃となり、放たれるはずだったが……
タカ「なに…」
「ぐはぁ」
だが、炎は消えタカの剣はフランジ兄弟三男の腹を突き刺している。剣にフランジ兄弟が刺さり、技が不発になったようだ。
タカ「お前…自ら剣に向かってくるとは」
「ぐふ…予想外だろ」
>> 339
【番外編 過去の遠き日】
タカ「くっ」
技を放つ瞬間は技(炎)に隠れ正面の視界は奪われていた。まさか、技に向かって己の身体で止めるとはタカとて思いもしなかったのだろう。
「ぐはぁ」
引き抜かせまいと三男は剣を更に深く刺しこむ。
タカ「馬鹿な奴だ」
剣にオーラを集中させ再び赤く輝く。
「させねぇ」
タカ「う!」
三男に続き次男がタカに襲いかかる。タカは三男の剣を紙一重で避け、足蹴を浴びせ次男を弾く。
「やるな…」
『おい!作戦通りにいけ!』
王国兵を相手にしている長男は次男に大声で叫ぶ。
「分かってる」
タカ「くっ」
「がぁはぁ…へへ」
三男は更に剣を深く刺し込み、タカの手を握る。三男も再び、タカに向かってくる。
「さぁ!いくぜ!」
手を取られ身動きがとれないタカに容赦なく剣を振る。だが、タカを捉えることは出来ずに宙をきる。
タカ「その程度のスピード…ハエも殺せんぞ」
「なっなめやがって!」
タカ「はっ!」
一瞬の隙をつき、足蹴で三男の剣を弾く。三男はならばと態勢を低くし、タックルしてくる。もちろん足蹴を喰うが、タカに抱きつき押し倒す。
「くっ」
タカ「っ…」
>> 340
【番外編 過去の遠き日】
タカ「こんな形とはいえ倒されたのは久々だな」
上に乗りかかっている次男に強烈なパンチを食らわし、のけぞったところを一気に押し退ける。次男は吹き飛ばされ意識を失う。
タカ「ふぅ」
「あ…安心するのは…まだ…早いぞ…ぐぁ」
三男も次男に続きそう言うと意識を失う。
タカ「これは…」
服に血で魔法文字が描かれている。三男が命と引き替え魔法文字を書いたのだ。次男は魔法文字を書いているのに気づかせないためのおとりだったのだ。
タカ「くっ…くは」
慌てて、服を脱ぎ捨てようとするが、魔法文字が光を放つ。タカは激しい吐き気に襲われ倒れる。
「よぉやったぁ…いくらぁおまぇさんでも…ちょくせつぅまほぅはふせぇげんやろぉ」
ニシ「直書き(魔法文字を魔法対象に書き魔法発動すること)とは!」
呪い魔法に苦しむタカを救おうとニシは妨害魔法を放つが、呪いは払えない。
ゴウ「直書きじゃ…魔法文字を消さねばならん」
ニシ「くぅ」
直ぐ様、タカに駆けよろうと動く。
「させぬぅぞぉ…ひひ」
老人の両脇に控えていた魔法使い二人が、突如、タカとの間に現れる。
スス「やはり、正々堂々と戦う気はなかったか」
>> 341
【番外編 過去の遠き日】
「全面戦争だ」
二人の魔法使いから黒い球体が賢者に向け放たれる。
トリ「避けい」
賢者たちかわし、杖を敵に向け、魔法を放つ。球体は壁にぶつかると凄まじい爆発を起こし、土煙を巻きあげる。
ドカアァァン
ハーク「渦風!」
風が渦となり、敵を襲うが、敵も魔法を放ち相殺させる。
ファ「くそ餓鬼!どいてろ!俺様がやる!」
エア「皆さん!気をつけて下さい!」
スス「観客が乱入か…」
観客席の魔法使いたちも一斉にハークたちに襲いかかってくる。
トケイ「賢者方をお守りしろ!」
「はっ」
王国兵たちも魔法使いとの抗戦に参加する。
ゴウ「早く…タカの元へ行くぞ」
ニシ「分かっとるわい」
賢者たちは敵を吹き飛ばし、タカの元に向かうが、二人の魔法使いの強力な魔法に遮られ中々、いきつけない。
「ほっほ…せかいぃちのけんしをぉころすとぉしよう」
老人は戦乱の中、悶え苦しみながら服を脱ごうとするタカに冷静に杖を向ける。
「まて!爺!先に俺の兄弟を治療しろ!」
「うぅ?」
老人の首に背後からフランジ長男が、剣を回す。
>> 342
【番外編 過去の遠き日】
「約束通りに俺たちはタカに呪文を書いた。あとはお前らが報酬と治療をするだけだ」
「ひ…ざこのぉくせぇして…かねはぁしっかりとるのぉじゃな」
「身体傷つけてまでやったんだ。早く治療と金だ!じゃなきゃあんなこと出来るかよ!」
「わかぁた…わかぁたわいぃ…ほれぃ」
老人は懐から金貨を数十枚を取り出し、地面に落とす。
「へっ!頂くぜ!あと弟たちの治療だ!」
フランジ長男は金貨を拾いながら言う。自由となった老人は金貨に目を眩んでいるフランジを見下し、呪文を唱える。
「まほぉつかぃはぁつそぉつきぃがおぉい」
「え…」
金貨は石と変わり、フランジ長男が、老人を見やげる。
「しにぃさらせぇ…めざぁわりぃじゃぁ」
「なっ…ギャアァァ」
老人の杖から光が放たれ、フランジ長男の身体は砂となり、消える。
「さてぇ…」
杖を再び、タカに向け、不気味に笑い呪いの呪文を唱える。
タカ「ぐはぁあ」
更に強くなった呪いにタカは血を吐き、悶える。
「かぁんたんにはころぉさんよぉ…くるぅしみぃしにさらせぇぃ」
タカ「ぐぐ…」
>> 343
【番外編 過去の遠き日】
タカ「がはぁ…お前かぁ…ぐ」
呪いの呪文の術者(老人)を睨み。苦痛に耐える。
「ほ…まだぁそんなぁげんきぃがあるのぉか…ほらぁ」
老人は更に魔力を込め、呪文を唱える。
タカ「ぐはぁああ!」
常人なら既に死んでいるだろう痛みにタカは耐え、剣を杖がわりに立ち上がる。
「なぁあ…ばけもぉか…おまぇはぁ…ひひ」
タカ「死に直面したことなど数えられないほど…これぐらいでは死にせん…ぐはぁ」
「わしゃぁ…しつこいぃやつぅはすかんのよぉ」
呪いの呪文を更に唱える。
タカ「ぐはぁ…ただではやられん!」
タカは渾身の力を振り絞り、剣を投げる。剛腕から繰り出される剣は凄まじい速さで老人に向かって飛んでいく。同時に力を使い果たしたタカはその場に倒れる。
「なぃ…は」
予期せぬ。タカの攻撃に老人は避けることすらままならず、剣は老人の杖を砕き腕に突き刺さる。
「ぎゃあぁ…し…しにぞこぉないのけんしめぇ!よくもぉ…わしのからだにぃきずぉぉ!」
>> 344
【番外編 過去の遠き日】
「しねぃい!!」
怒った老人は息すらままならないタカに魔法を放つ。歪な球体の黒い魔法球である。
ゴオォォォ
タカ(ついに…私も死ぬ時がきたか…出来れば地上で死を迎えたかったが、しかし、戦いの中で死ぬという願いは叶ったからいいとするか…)
タカは迫る魔法を見て、微かに笑い目を瞑る。
ドカアァァン
タカ「うっ?」
だが、再び、目をあけることが出来た。魔法はタカに当たる前に爆発したのだ。
ハーク「大丈夫ですか?」
ハークの魔法である風の盾がタカを包んでいる。
タカ「ふっ…まさか君のような若者に助けられるとはな…」
タカはそう言うと気絶する。呪いの魔法で体力を失ったのだろう。
「じゃまぁを…しよぉって!!」
老人は腕から血をながし、ふらつきながらも立っている。
ハーク「貴方の汚いやり方は!さいやくです!」
杖を天につき上げ、水晶に風が集まる。
「ここしゃくなぁ!」
老人は砕けた杖から水晶を手にとり、腕に刺さった剣を抜き呪文を唱える。
ハーク「風よ悪を飲み込み!この場を正せ!」
閃光となった風は老人の魔法を消しさり、吹き抜ける。
>> 345
【番外編 過去の遠き日】
「がは…」
風(魔法)を受けた老人は崩れるように倒れ、身体から邪悪な魔力が吹き出すとみるみるうちに砂へと変わる。
「一体なんなんだ…魔王って」
砂と化した老人。闇の力に手を出した人間の末路である。
ファ「おい!何ぼっ~としてんだ!前を見ろ!」
ハーク「フォさん」
激しく魔法が放たれている中、前方の扉、つまりは魔王への道を塞ぐ扉がゆっくり開いていく。どうやら3人の魔法使いを倒せたようだ。だが、周りには数百の魔法使い。
ドカアァァン
ニシ「儂らがこやつらを足止めしておく先にゆけ!」
トリ「はよぅ魔王倒して~きてくれぃ」
ニシは囲いの賢者の名称に相応しく結界魔法を唱える。トリはトリの賢者の名通り、多種多様の大鳥を召喚魔法で呼び出し、数で勝る敵を多数の鳥で牽制する。
エア「分かりました!皆さん!いきますよ!」
スス「ほぉ」
ゴウ「また会おう戦友よ」
賢者二人の残し、賢者5人と兵士たちはコロシアムを後にする。
「逃がすな!追え!」
ニシ「行かせぬ。儂らを倒してからにせぃ」
「くっ」
追おうとする魔王軍だが、ニシの結界魔法に道を塞がれ進めない。
>> 346
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「お二人だけで大丈夫ですかね」
扉の先は整備され松明で照らされた石作りの道だった。ハークたちはその道を走る。
スス「心配いらん。この歳まで生きてきたんじゃ悪運強さで乗り切るだろう」
ゴウ「確かにな」
ハーク・ファ・エア・タカ・兵士たち引き離し、前を走る二人は言う。
エア「兵士は3人まで減り、私を含め5人の賢者で魔王に勝てるか…」
不安そうなエア。もちろん他の誰もが不安だろう。この先に魔王の手下があと何人いるのか…それとも魔王だけなのか。
フォ「ふん。元々無理がある作戦だ。敵の戦力が分からないまま突っ込んだんだ。今さら不安になっても遅いだろう」
タカ「同感だな」
エア「どうやら…まだ魔王の元には着かないようです」
エアの杖の光に照らされ、前方には先程のコロシアムの扉と同じく小道には相応しくない大扉が見える。
スス「ふむ…参ったのぅ」
【我が最強のしもべに勝ってみるがよい】と魔法文字で書かれた大扉は一瞬、光を放ち粉々に吹き飛ぶ。
ファ「最強だかなんだか知らんが…目障りだ」
破壊魔法を唱え終えたファは不機嫌そうだ。
ハーク「アレは…」
>> 347
【番外編 過去の遠き日】
先程のコロシアムと似た円形の部屋の中央にはこの世のものとは思えない恐ろしい化物がいた。
『ギャアアァ』
竜に似た化物の肉体は朽ち果てており、得体の知れない液体が流れだし、身体に巡る血管は生き物のように動き筋肉細胞は常に変化し、形をかえている。
スス「竜か…」
ファ「ふん。何にしろ化物なのはちげえねぇな」
金色に光る化物の目は周りを囲む賢者たちを見つめる。
ゴウ「死んだ竜を蘇らせたと言ったところか」
ハーク「屍を魔法で操るなんて…なんてことを」
化物は変化する肉体を激しく震わせる。身体から出る液体は飛び散り、賢者たちにもかかる。
ファ「くっ…汚ねぇ野郎だ」
エア「皆さん!この液体は…」
液体を触れた部分は煙を立て溶けていく。慌てて、服を脱ぎ捨て、どうにか事なきを得た。
スス「酸かぁ。厄介じゃの」
タカ「強敵だ」
化物は激しく震えた後、口を大きくあけ、紫色の液体を賢者たち吐きかける。360度首を回し、液体を放つ。
エア「バリアーを!くっ」
防御魔法で守りに徹すが、魔法の効力は液体を浴びる度に弱っていく。
スス「どうやらただの酸ではないようじゃ」
>> 348
【番外編 過去の遠き日】
タカ「液体から魔力を感じるな」
赤く光る剣から出される赤いシールドに守られながら、タカは化物に近づく。
ゴウ「これでは長くは持たんぞ」
防御魔法を液体に破られ、新たに発動する。
スス「分かっとるわい。エア殿は兵士の守りに徹して下され。儂らが戦うでの」
エア「しかし…くっ」
魔力がこもった強力な酸の雨の中、賢者すら自分一人を守るのに必死の中、エアは兵士3人を守っている。
ハーク「くっ…なんて…攻撃だ」
苦しみながら液体を吐く化物は肉体から鋭い触手を無数に出し、賢者たちを襲う。
ファ「なんなんだ。酸攻撃でも精一杯だってのに」
触手での一突きで防御魔法は破られ、次の防御魔法を発動させる。これでは魔力も数分で底をつき、防御魔法すら出す力が無くなってしまう。
ゴウ「うむ…化物め」
剣の賢者の称号を持つ、ゴウは無数の大剣を出現さし、化物の身体を串刺しにする。
『ギャアアァ』
だが、化物の身体から出る酸に溶かされ、剣は溶けてしまう。傷も直ぐに元通りとなる。
>> 349
【番外編 過去の遠き日】
ゴウ「化物め…くっ」
タカ「任せろ!昇剣!!」
剣にオーラを集中させ下から上に振り上げる。凄まじい剣撃は化物を切り裂き、真っ二つにするが、数秒で傷が塞がる。
タカ「くっ…なんて再生スピードだ」
凄まじい速さで技を繰り出すタカだが、化物に傷をつけても直ぐに元通りになってしまう。
『ギャアアァ』
ゴウ「いかん」
化物は肉体から変形させタカを包みこみ、取り込もうとする。間一髪、ゴウの移動魔法でタカは逃げることが出来た。
タカ「くっ…すまない」
ゴウ「礼はいらん。奴を倒してくれたらな」
変化に変化を重ね。化物の肉体は大きくなっていく。
スス「無尽蔵の力じゃな」
ススの植物を操る魔法は化物に触れることなく酸に触れ、溶けてしまう。
ファ「ふん!どいつも役に立たないな!俺がやる!」
高く飛び上がり、ファはそう叫んだ。杖に魔力を極限まで集めている様子を見ると持てる魔力を使い最大呪文を放つ気だ。
ハーク「まさか僕らまで巻きぞいにする気じゃ」
ファ「お前らはお前らでどうにかしやがれ!」
ハーク「えっ~」
>> 350
【番外編 過去の遠き日】
眩い閃光に包まれていく。
スス「全く…若い者は周りの気配りが出来ないの」
化物は大きな口をあけ、溶けかけた鋭い牙を見せ、頭上で魔法を放とうとするファに酸を吐きかけようとする。
ファ「遅せぇよ…けっ」
唾を吐くと同時に化物の内部から爆発がおこる。
『ギャアアァ』
肉体から泡が吹き出し、複数の爆発がおこる。爆発は連鎖し、大きな爆発えと変わっていく。
ドカアァァン
『ギャアアァ』
ドカアァァン
ハーク「くっ…」
爆風にさらされるハークは魔法でどうにか耐える。
ドカアァァン
ファ「やったか…」
黒煙が立ち込める中、目を凝らし、鳴き止んだ化物の状態を確認する。化物は繰り返す爆発で肉体は粉々に飛び散り、見るかげもない残骸と化している。
ファ「っ…」
魔力を使い果たしたファは落下してくる。エアがすかさず、魔法で地面への直撃は避けたが、ファは軽い衝撃を受け、意識を失う。
エア「ファ殿。大丈夫ですか…」
抱え、揺すってみるが、返事はない。
スス「休ませてやるんじゃ…当分は目覚めんじゃろう」
>> 351
【番外編 過去の遠き日】
ゴオォォォォォ
スス「なんじゃ」
突然、地鳴りとともに地震が起こる。揺れは次第に強くなり、立つことすら困難になってきた。
エア「先程の魔法(爆発)で地下洞が崩れかかっているんでしょう。先を急ぎましょう」
天井から砂や石が落下してくる中、魔王の元に誘う扉の前までいくが、化物を倒したはずなのに扉は一向に開こうとはせず、見下すように口を閉じている。
トケイ「開きませんね」
ゴウ「ふむ」
ハーク「なぜ?でしょうか…化物は…」
タカ「まだだ…」
タカが剣を抜き身構える方向に一同の視線は釘付けになる。粉々になった化物の肉体が、結合し、徐々に元の形に戻っていく。
スス「なんと…」
エア「凄まじい生命力ですね…」
タカ「いや…奴は既に死した者だ。倒すことは出来ないのかもしれない」
ハーク「そんな…だったらどうやって…」
『ギャアアァ~!!』
化物は最早、形すら維持することが困難なのか、液状となった身体を振るう。
ゴウ「まだ手はある心配するな」
>> 352
【番外編 過去の遠き日】
スス「!?」
ゴウはお得意の大剣出現魔法を放ち、道を遮る扉に一人がやっと通れる穴を開ける。並の魔法使いでは魔王の魔力を帯びた扉に傷一つつけることが出来ないだろうが、流石は【剣の賢者】だ。
ゴウ「いけ。儂があの化物を足止めしておく…倒せは出来ぬとも足止めぐらいは可能だ。それに魔王さえ倒してくれればコヤツも動かなくなる」
ローブを脱ぎ捨て、服を脱ぐ。鍛えぬかれた上半身は老体とは思えず、逞しい胸板に割れた腹筋からは若々しさすら感じる。
フェ「じぃさん。最後の仕事精一杯頑張りな」
エア「なっ…なんて失礼な…」
フェはそう言うと早々と穴から外に出ていった。
ゴウ「若造がっ…まぁよい。早くゆけ。化物が動き出すぞ」
化物は徐々に整ってきた身体を動かし初めている。
ハーク「お気をつけて…絶対に魔王を倒します。それまでどうか持ちこたえて下さい」
ゴウ「言葉はいらん。気持は十分伝わっとる。ゆけ」
杖をくわえると両足につけた短剣を抜き、胸前で、交差させかまえる。
エア「いきましょう。早く」
スス「また会おう友よ…」
>> 354
【番外編 過去の遠き日】
骸骨が敷き詰められた扉があった。それは触れてはならない扉のように思えるぐらい暗く闇に満ちていた。
スス「ここに…魔王がおるようじゃな」
間違いなく魔王はこの扉の先にいる。だが、誰一人扉を開けようとする者はいない。それほど魔王の力は強く恐ろしいのだ。
エア「我ら6人(ハーク・エア・スス・トケイ・兵二人)で戦はなければならないのか…」
逃げ出したい。扉越しに感じる力に身体がふるえる。こんなことで魔王を直視できるのだろうか。
ハーク「開けますよ」
スス「いや…まて…ハークよ。お前は逃げるのじゃ…まだ死ぬには早すぎる」
ハーク「いえ。僕は既に幼い時に一度命を落としました。師匠(ラブ)がくれたこの命。恥じない人生を送りたいんです。ここで悪に怯え逃げ出したら…僕はこの先、師匠に顔向けできないんです」
スス・エアすら身震いしているなか、ハークは精一杯の笑顔で話す。
スス「本当に良い弟子をもったものじゃ。うらやましい。儂はあんなん(ラブ)じゃたからな」
既に皆の恐怖は消えていた。ハークの笑顔は魔王の暗く重い魔力を払っていた。
エア「では。いきましょう」
>> 355
【番外編 過去の遠き日】
ギィィィィ
ハーク「ぁ…」
扉に手を触れると歓迎するように開いていく。7人(タカが抜けてました。すいません)の視線は扉の先程にいる魔王に注がれる。
『ようこそ。地上の者よ』
骸骨の仮面を被り、黒いローブに身を包んだ魔王は手招きし、ハークに入ってこいと言いたげだ。
スス「隙を見せたら分かってるな」
ハーク「はい」
エア「もちろんです」
トケイ「はっ」
小言で、お互いの意思を確認する。
エア「あっ」
7人が入った瞬間、扉は鈍い音を上げ、閉まる。
『良き日だ…死ぬには…良き日』
長髪をなびかせ、仮面の隙間から見える鋭い目は黄色く輝いている。
『さぁ…』
力なく手を上げ、兵士二人に手を向ける。
エア「なっ…させるか!」
防御魔法を発動させるエアだが、いとも容易く防御魔法を打ち破られ、杖を破壊される。
エア「なっ…く」
「うわぁあぁ」
兵士二人は苦しみながら灰へと変わる。
『死は美しい。醜い人間もこの時ばかりは私の目をそそる。そう思わんか?』
ハーク「よっ…よくも!」
>> 356
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「風よ!悪を飲み込め!」
風が集まり、多数の渦が出現する。
『弱き者よ…私には勝てん止めておけ』
魔王は魔法を放とうとするハークを相手にする気がないのか、背を向け、奥にある妙な威圧を放つ石椅子に向かって歩いていく。
ハーク「まっ待て!」
背を向けられ一瞬、躊躇したハークだが、直ぐ様魔法を放つ。魔王は振り返ることもなく魔法を打消し、石椅子に座る。
ハーク「な…」
魔法を打消したのは魔王の影であった。生き物のように動く影は人の影とはかけ離れている。
ハーク「ぁ…」
不気味な異形な者・闇の塊である魔王の中身が見えたようで―――
ハークの身体は勝手に震え出す。それほど濃い濃厚な闇。全て飲んでも余りある膨大な力―――
スス「下がってなさい。ハーク」
エア「我らは王を救いにやってきた!魔王!覚悟しろ!」
ファ「貴様を倒して俺が魔王と名乗ってやるよ!この【闇の賢者】ファ様がな!」
タカ「貴様の行為は死に価する。エルフ族の聖なる罰受けよ」
トケイ「部下の仇は命に替えてもとらせてもらうぞ」
『ふっ…』
>> 357
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「……」
ハークはただ見守ることしか出来なかった。既に魔王の力に触れ心が闇に侵されていた。
『誰が……闇が悪と決めつけたのか……』
魔王は凄まじい衝撃波を放ちながら宙に浮き、手を天に掲げる。
スス「なんと…凄まじい」
エア「くっ」
ファ「ほんものの化物ってやつだな…けっ」
『光は誰が正義と決めつけたのか……全ては偽り。闇があるから光があるのだ。所詮はこの世界は矛盾だらけの下らぬ世。魔法老の作った世界だ……だが、私が変えてやろうと言っておるのだ。なぜ?弱き者たちも私に盾つく?より良い世界の構築をなぜ阻む?』
エア「貴様の作る世界なぞ!良き世界とはいえない!悪は滅びろ!」
エアは手を胸に当て、全身は眩い光に包まれていく。魔王の魔力で闇に包まれていた部屋は徐々に光を取り戻していく。
『私は悪ではない。闇を拒むな。望むもの全てがこちらにあるのだ…』
スス「エア殿を援護するんじゃ」
ファ「けっ」
>> 358
【番外編 過去の遠き日】
『私は闇そのもの…貴様に闇は消せまい』
エア「神は我らに光を下さり、闇を滅する力を下さった。魔王!光魔法師の力!受けてみよ!」
邪悪な魔力をかき消すようにエアの身体からは光が、聖なる力が溢れ、魔王の魔力を払ってくれている。そのお陰で、ハークをはじめ邪悪な足枷で身動きが取れなかったススたちは魔王を取り囲み、魔法を放つ。
ファ「くらえ!」
黒炎弾を放つ。だが、魔王は素手で黒く燃え上がる黒炎弾を弾く。
『くらわぬな』
ファ「闇の賢者様をなめるな!カスめ!」
だが、そんな魔王に恐れをなすどころか、ファは次々に黒炎弾を放ち、魔王も防戦を強いられている。
スス「魔王!!」
『ぬぅ?』
無数の黒炎弾に魔王は両手で応戦している。流石の魔王でも防御しながら反撃は出来ないのだろう。もっとも賢者であるファが魔力を振り絞り、1秒すら暇を与えていないのだ。短時間での大量魔力の消費に加え既に限界を越えているファは命の危険すらある。
スス「貴様が企みもここまでじゃ!」
タカ「秘技…千斬」
背後をとった。ススとタカは持ち得るの最高の技・魔力を放つ体勢をとる。
>> 359
【番外編 過去の遠き日】
タカ「うおぉぉ」
剣撃が光の線となり、魔王を切り裂く。無数に繰り出された線光は巨大な一本の光となる。
魔王『……』
タカの渾身の技を受け、肉体が粉々となった魔王だが、邪悪な念の塊のようなその肉体は結合し始める。
スス「させぬ!木々の精霊よ!!」
移動魔法で魔王の背後に移動したススは木製の杖を魔王に突き刺す。
魔王『ぐぅ』
スス「滅せよ!邪悪なる者よ!」
杖は木が根を伸ばすように魔王に巻き付き、眩い光を放つ。更に魔王を取り囲むように森族の精霊3人が呪文を唱えている。
魔王『ぐおぉ』
『闇に戻れ闇の住民よ』
周りを取り囲む、精霊のうち逞しい身体の緑の精霊が言う。
『天はお前を地上に出すことを許されてはおらぬ』
赤い短髪の精霊が言う。
『消えよ』
唯一、女性の精霊がそう言うと淡い青色の光りとともに魔王は徐々に浄化されていく。
スス「儂の魔力は冥土の土産じゃもってけぇ…くっ」
己の器を大きく上回る魔力の消費をしたススは最後まで見守ることなく意識を失う。
>> 360
【番外編 過去の遠き日】
魔王『ふぬ。生温いの』
既に半分以上の身体を浄化されている魔王は倒れこんだススを指さす。当然、精霊は浄化魔法を更に唱える。
魔王『己の力(魔法)を失って…私と差し違えようとは』
半透明の精霊が魔力が乱れる。
魔王『たかが、精霊3人を呼ぶのがやっとで…私を倒せると本気で思っているのか』
魔王が天に手をかざす。すると魔王からは再び、邪悪な力が戻り、身体も完全に元通りになる。
『なんと…恐ろしい力…』
魔王『神の使いどもか…なにかはしらぬが…目障りだ消えよ』
魔王の魔力にかき消され、精霊たちは消える。
ファ「馬鹿な…」
魔王『貴様らの実力は分かった…暇つぶしにもなりはせんな』
魔王は倒れているススに手をかざす。
エア「聖なる槍よ!」
消滅魔法を唱える魔王を突き刺し、金色に輝く槍が出現する。
魔王『くらわぬな』
だが、なんらダメージを与えていない。
タカ「ちっ」
ススを抱え、魔法から逃れようとタカが駆けよる。だが、抱えたと同時に闇の魔法は放たれ、二人は吹き飛ばされてしまう。
トケイ「タカ殿!スス殿!」
ハーク「!!」
>> 361
【番外編 過去の遠き日】
『脆い生き物よ。人間は…』
魔法を浴び、傷だらけとなったススとタカはなんとか息はあるようだが、放置しておけば命が危ない。
エア「今すぐ!回復魔法を!」
出血の酷いススに駆け寄る。だが―――
『死を与えてやっておるのだ…邪魔するな』
邪悪な魔法は今度はエアを飲み込み、凄まじい爆発を起こす。
ハーク「エアさん!!」
『ははは。脆い脆いわ』
爆発の後に横たわるエアは白い腹は黒く焦げ、痛さに悶え苦しんでいる。
ファ「てめぇ!好きかってにしやがって!」
既に魔力を使い果たしているファは最後の力で立ち上がり、杖を魔王に向ける。その杖からは力は感じない。
『それほど死を望むか…いい選択だ』
ハーク「やっ止めろぉ~!!」
風玉の魔法を放つが、邪魔な魔力に遮られ、ハークでは魔王を止めることすら出来ない。
グサッ
『ぐっ?』
ファに向け、魔法を放とうとする魔王の背後から腹部に剣が突き刺さる。剣は銀色に輝きダンテスティン国の紋章が掘られている。
トケイ「油断したのが運の尽きだったな。魔王」
>> 362
【番外編 過去の遠き日】
『何をぬかす。たかが、剣を刺したぐらいで強きな奴よ』
トケイは剣を更に差し込む。
トケイ「そうだな。邪悪な念の塊。肉体を持たないお前なら剣を刺されるぐらいではなんともないだろうな」
『!?』
剣が刺さった魔王の腹部から赤い血が流れ出てくる。
『なぜ…血が…バカな』
トケイ「油断したのが運の尽きだといっただろう?この剣は《命》を吹き込む剣。ダンテスティン国の国宝だ。命(意思)を持ち、肉体を持たないお前にこの剣を刺せば…この通り肉体が…ぅ…くっ」
魔王は腕を剣に変形させトケイの腹部に刺し込む。
『お返しだ』
トケイは口から血を吐き、倒れ込む。腹部からは滝のように血が溢れていく。
『ぐっぐ…く』
魔王は腹部に刺さった剣を抜くと淡く輝く剣を半分に折り、投げ捨てる。
『まさか…こんな剣が存在するとは。再び、魔法老の作った憎き枷(かせ:肉体)を得てしまうとは……』
トケイ「ぐふぅ…貴様も終わりだ…っ……」
『勘違いするな。なにも肉体を得ようが…私の力は弱まらん』
>> 363
【番外編 過去の遠き日】
『消し飛べ』
魔王の手から魔力が放出され、トケイは黒い炎に包まれる。
ハーク「やめろぉ!やめろ!やめてくれぇ…」
その間もハークは必死に魔法を放つが、皆がやられ悪夢と化したこの場に混乱し、上手く魔王に向けて魔法が飛んでいかない。
トケイ「ぐぉお…君ならやれる…ぐあ…君なら…魔王…を…ぐあぁぁぁ」
『ふははは!消えろ!』
ハーク「止めろぉ…ぅ」
トケイ「頼んだ…ぞ……」
『さぁ…どうしてくれようか』
泣き崩れるハークに魔王はゆっくり近づいていく。闇はゆっくりゆっくりと―――
ハークを飲み込もうと近づく。
『ふふっ…死をやろうか?』
目の前に魔王がやってきてもハークは膝をつき泣き崩れていた。魔王は呪文を唱え始める。
ファ「俺を忘れてんじゃねぇ…よ!!」
『なに!!』
魔王が折った剣を拾いファは背後から斬りかかった。回避しようと魔王も動くが、剣は魔王を斬りさく。
『ぐおぉぉ』
血渋き上げ、狼狽える魔王に更に斬りかかるファだが、魔王の身体から出た無数の触手に身体を射ぬかれてしまう。
ファ「ここまで…か…よ…」
>> 364
【番外編 過去の遠き日】
ファ「ぐふ…がぁ」
触手に無数の穴を身体に空けられたファは力なく倒れてしまう。
『寄生虫に救われるとは…な』
触手は不気味に動き回ると魔王の肉体の中に戻っていった。
『で、お前はどう死にたい…ぅ!!』
ハークに目線を戻した魔王だが、いなくなっている。
ハーク「悪は滅びるものって本で読んだよ」
魔王の頭上から杖に鋭い風の刃をまとわたハークが降ってきた。
『消えよ!!』
魔王は魔法を頭上に放ち、ハークともども闇に飲み込む。
『決着が早くつき過ぎてしまったな…う?』
魔王は肉体の違和感を感じる。
ハーク「終わりだ…魔王…」
背後には膝をつき、息もたえだえのハークがいた。魔王の身体はゆっくりと二つに別れていく。
『小僧…泣いていた…のは…演技か…最後の…私が魔法を放った瞬間に…移動魔法を使って…背後に…か…くっ』
ハーク「お前の敗因はその力に溺れ油断から出た隙だ」
『死を死を死を…我が…力は絶対なり…』
魔王は倒れ、黒い炎に包まれていく。
ハーク「っ…早く皆に回復魔法を…」
立ち上がり、回復魔法を唱えようとした時―――
>> 365
【番外編 過去の遠き日】
『壮絶なる戦いが…遥か昔にあった…のだ』
ハーク「なっ!!」
燃え上がる魔王は立ち上がる。服は燃え、仮面は焼け落ち、その隠された身は表わになっていた。
『闇の勢力と光の勢力…どちらが神かを決める戦いだ…永き戦いだった…天は割れ、海は枯れた…そして…』
ハーク「顔が…」
なかった。
仮面の下には何もなかったのだ。
身体すらない。
ハーク「なんなんだ…お前は一体…」
目には捉えぬことが出来ない魔王だが、確実に奴はそこにいた。
『我らは戦いに敗れた…そう…我らをこのような身体になった…実態のない…だが、存在する者に』
異する者、肉体すら失い、だが、生にしがみつき生きようとする者。そこには人間が、生きようとするならなんでもする悪の部分が見えた気がした。
『私は…人間の心の闇…お前たちが持つ不の部分!!』
『お前たちが隠したがる邪悪な心よ!!』
ハーク「お前は…」
身の毛もよだつ、深い闇がハークを覆う。
『闇に心を預けよ』
ハーク「くっ」
思わぬ反撃に悪払いの魔法を唱え対抗するが、魔王の空間(闇の中)では思うように力を使えない。
>> 366
【番外編 過去の遠き日】
『力が欲しいか?』
ハーク「っ…」
目を開けているのを疑ってしまうほど暗い闇の中で、必死に魔王の誘惑から逃れようと呪文を唱える。
『闇からは逃げられぬ。さぁ…受け入れよ』
ハーク「くっ…」
重い重圧が、ハークにかかる。身体は冷たくなっていき身動きがとれなくなる。
『我が物になれ…』
ピカッ
ハーク「ぁ…」
闇の中に光が注ぐ。
『なにぃ…』
最初は弱かった光は徐々に強さを増し、闇を照らしていく。
ラブ「死にぞこないが、俺の弟子に手を出してんじゃねぇよ!!」
ハーク「師匠!!」
目映い光を放ち、闇を払ったのはラブであった。
『ぐうぅぅ…』
ラブはため息をつくとハークの胸に杖の先端についた水晶を当てる。
ハーク「師匠!助けに来て下さったんですね!」
ラブ「痛いと思うが…我慢しろよ」
ハーク「えっ?」
一瞬、身体に雷が落ちたと思うほどの衝撃と痛みが走り、ハークは激しく横転する。
ハーク「が…殺す気ですかぁ!」
ラブ「文句を言うな。アレを出してやったんだからな」
そう言いながらラブはハークの背後を指さす。
>> 367
【番外編 過去の遠き日】
後ろには闇の塊、暗い煙のようなモノが、立ち込めていた。アレが魔王の本来の姿なのだろうか。
ラブ「勝手にどっかに行ったと思ったら…こんな化物と戦ってたとはな」
ハーク「師匠…」
『邪魔をしよって!邪魔を…私の邪魔を…魔法老の使い者がぁ!』
ラブはハークに下がるように指示し、魔王に向かっていく。
ラブ「勘違いするなぁ俺はなぁ。魔法老が一番嫌いなんだよ。この杖(光魔法師の証である白杖)は好みなんだよ」
『ぐぅ…死ね!!』
闇は拡散し、ラブを襲う。
ラブ「あぁ。嫌なんだよな。こういう奴…」
ラブは聖なる光を放ち闇を浄化する。
『なぁ…貴様ぁ…』
ラブ「お前はろくに力も残ってない。そろそろ消えてもらうぜ。弟子、師匠(スス)にまで、傷つけた借りは高い」
『滅びはしない…滅びは…私は何度でも…蘇るのだ…』
ラブ「なら、何度でも倒してやるよ」
光は闇を完全に消しさり、ラブは頭を垂れ、ハークに近づく。
ラブ「お前は迷惑かけるのが好きだな」
ハーク「そっそんなことは…」
呆気なく魔王を倒したラブに困惑気味にハークは答える。
>> 368
【番外編 過去の遠き日】
ラブ「おや…空気読めない奴等が来たようだ…アイツらいつも終わった後に来るんだよ」
ハーク「え?」
入口の扉は大きな破壊音が上がり、粉々に吹き飛ぶ。同時に何人もの白装束に身を包んだ光魔法師たちが入ってくる。
マリーン「直ぐに傷ついた者に回復魔法を」
先頭をいくダークエルフの女性は手慣れた動きで、指揮をとり、続々と光魔法師たちが続く。
オジオン「我らの出番はないようだ。」
ラブ「魔法老の緊急徴集で遥々、ダンテスティン星まで、ご苦労さま…まぁ無駄足だけども」
暢気な声で、ラブは言うとハークの身体を無理矢理摘まみ、引き寄せる。
ハーク「なっ何するんですか」
ラブ「帰るぞ。あとはコイツらに任せたらいい」
ハーク「でっでも」
スス「傷ついた師匠を置いて帰ろうとするとは…とんでもない奴じゃ」
ラブ「げっ…もう回復しやがったのかよ」
ハーク「ススさん!良かった!助かったんですね!」
スス「まだまだ。死ねんわい。こんな馬鹿弟子残して、ろくろくあの世にもいけん」
ラブ「はぁ~だから…早く帰りたかったんだ…このじじぃは馬鹿しか言わないからな!」
>> 369
【番外編 過去の遠き日】
スス「なんじゃ。馬鹿を馬鹿と言って何が悪い」
ラブ「はぁ?誰が?馬鹿だと!!」
ハーク「二人とも止めて下さいよ…せっかく魔王を倒せたんですよ!喧嘩なんて!」
止めに入るハークだが、二人は唾を飛ばし凄い勢いで言い合っている。
ファ「ふっ…おいしいところだけ、もっていかれるとはな。けっ」
遠くからラブを見つめるファはそう言うと姿を消す。
オジオン「大丈夫か?エアよ?」
エア「ご心配おかけしました。マリーン殿の治癒のお陰で、この通りです」
オジオン「彼らに救われたな。お前から知らせを受け、光魔法師をかき集め、駆けつけたが…その必要もなかったようだ」
その後、ハークは1時間余り、ススとラブの喧嘩の仲裁をする羽目になった。やっと地上に出た時には全てが、光魔法師たちによって片付けられたあとであった。魔王軍と名乗る魔王に協力していた魔法使いたちは連行され、魔王がいた形跡は全て抹消されていた。
オジオン「君は全てを忘れなさい」
地の大賢者オジオンの最後の一言が、ひかかってはいる。なぜ魔王の存在を消したがるのか―――
>> 370
【番外編 過去の遠き日】
魔王界が、魔王の存在を消したがる理由―――
それは今のハークがいくら悩んでも分かることがない事だった。
今はそんな事を考えるより、この時を楽しもう。
ハークはお祭り騒ぎの城を歩いていた。
魔王討伐メンバーは英雄となっていた。
魔王のことは隠され、国の窮地から救った英雄とすっきりはしないが、英雄扱いは悪い気はしない。
トリ「お前さんならやりきると思ってたよ」
ニシ「今日は倒れるまで飲もう。祝いじゃ!祝いじゃ!」
セリス「皆さん。思う存分、宴を楽しんで下さい」
エリト王「私を救って下さり、貴方たちにはなんとお礼を言っていいか」
トリとニシは無事であった。光魔法師たちがやってきた時には数百の魔王軍は倒れていたと言うから二人の実力は底知れない。腐竜と戦ったゴウは片腕は失いはしたが、無事であった。《剣の賢者》から《片腕の賢者》と名を変えるんだと本人は意外に暢気なものだ。
ゴウ「また会えるとは…腐れ縁よな」
スス「お互いまだ歳恥じを重ねなければならんようじゃな」
>> 371
【番外編 過去の遠き日】
エリト王「実にいい日だ」
セリス「そうですね。王」
王はと言うと
魔王の魔力で、身体が蝕まれていたものの雷の大賢者マリーンの力で、回復し、今は王座に座り、ハークたちを讃えていた。
ラブ「うめぇ…山で食う飯とは格が違うぜぇ」
ハーク「師匠!みっともないから止めて下さいよぉ!」
宴に並ぶ、彩りどりの食事を勢いよく食い荒らすラブは最早誰にも止められなくなっている。
オジオン「終わったか」
マリーン「えぇ。地下の入口も魔法石で塞ぎましたわ」
城が宴一色に染まる中、魔法老の徴集で、集められた魔法使いたちは自分たちの仕事を済ますと早々と去っていく。
オジオン「風の大賢者を失ったのは大きな痛手となったが…魔王の所在を掴み、また消し去ることが出来たのは魔法界にとって、大きな利益をうむだろう」
マリーン「そうですね。でも…風の大賢者の後任はどうされるおつもりです?」
オジオン「運命は既に動き出しておる。運命が、大賢者を選ばれるだろう」
マリーン「??」
オジオンは必死にラブを止めているハークを一瞥し、姿を消す。
>> 373
【番外編 過去の遠き日】
ハーク「師匠。どうしてるのかなぁ」
国の正式魔法使いになり、《風の賢者》の名称を貰ってからと言うもの、ハークは忙しい日々を送っていた。毎日、山ほどの仕事をこなし、見習い魔法使いの指導に明け暮れ―――
王と王妃の間に生まれたお子の世話係までこなした。
いつしか、《風の大賢者》と呼ばれるようになったが、ハーク本人は当時、大賢者になったと言う実感はなく。賢者として、名乗っていたと言う。
師匠(ラブ)とはあれから(宴)一度もあってはいない。
生きているのか―――
死んでいるのか―――
ハーク「まぁ…あの人なら世界の何処かでバカやってるか」
運命があるのなら
いつしか、また二人は巡り会うのかもしれない。
それが、最悪の形になろうとも―――
過去の遠き日《終》
>> 374
本編再開
マイナス「これでよし」
魔科具をとりつけ、タイマー作動を確認すると早々とその場から立ち去り、次に向かう。
マイナス「あと3箇所で、巨大戦艦キングの破壊が可能となる」
協会が出した命令内容はこうであった。ハークを含め一味の暗殺、主要任務は脅威となる巨大戦艦キングの破壊である。
マイナス「うっ!?」
①クリス「まちな!!」
マイナス「見つかりましたか…」
立ち去ろうとするマイナスを呼び止め、クリスは剣を構える。物陰にはプラスから奪ったレザーマップを手に持つ銀狼の女の子リーマもいる。
マイナス「おやおや。お綺麗な人だ。美人に呼び止められるとは普段は嬉しいんですが…今はそう喜ばしいことではないようです」
マイナスはプラスのレザーマップを視界に捉え、プラスがやられたことを知ると一層警戒を増し、クリスに向き合う。
①「爆弾の設置場所!はいてもらう!」
マイナス「時既に遅しですよ。爆弾のタイマーは動きだしています。あと5分もすれば爆発するでしょう」
先程、マイナスが柱に設置した爆弾のタイマーのカウントは5分を切り、着実と爆発(ゼロ)に近づいている。
>> 375
⑭キック「5分もあれば十分だ」
マイナス「!?」
背後からキックが斬りかかる。
⑭「竜人一閃!!」
マイナス「ちっ」
線光となるほど早い剣撃を機械剣でなんとかガードする。キックは直ぐに体勢を立て直し、再び、剣を振る。
⑭「怒号烈波!!」
下から斬り上げる剣激はオーラを巻き上げ、マイナスの肩を捉えたが、最新の鎧に弾かれ、ダメージは与えられない。
マイナス「くっ…やりますね」
マイナスは反撃と言わんばかりに銀色の鎧についた多種多様の魔科具を手にとる。彼らのような銀色一色の鎧を身にまとい。魔科具と言われる科学と魔法の力を合わせた武器を使用する者を《魔科具使い》または《魔科(マカ)》と呼ぶ。協会の近世代戦士である。
ラ・ドル「させませんよぉ。彼女の前ではね」
杖の先端に水晶の代わりに頭蓋骨をつけた魔法使いがマイナスに杖を向ける。ラ・ドルが言う彼女というのはこの頭蓋骨らしい。
マイナス「なっなんです」
すると鎧についた魔科具は粉々に吹き飛ぶ。
>> 376
⑭「貰ったぁ!!」
魔科具の爆発で、よろめいているマイナスの隙をつき、キックはオーラを竜剣に集める。
⑭「竜龍!!」
竜のごとし、オーラは生き物のように放たれマイナスに食らいつく。一段とオーラは強さを増し、最新の鎧すら耐えれないほどの破壊力をほこっている。
マイナス「があぁぁ」
鎧は無数の亀裂が入り、マイナスは倒れ込む。
⑪リオ「くらぇ」
すかさず、リオはプラスから頂戴した捕獲用魔科具をマイナスに投げる。
マイナス「これは…っ」
魔科具はワイヤーを出し、一瞬で、縛りあげ身動きを封じる。
①「ふ…出番がなかったか」
クリスは剣を鞘に収め、縛りあげられたマイナスの腹を掴み、無理矢理立たせる。
①「さぁ。電撃をくらいたくなかったら…爆弾の設置場所を言いな」
リオは魔科具のスイッチを高々と上げて見せている。
マイナス「っ…参りましたね。い…」
①「早くいいな!」
誤魔化そうするマイナスをひっぱたき、クリスは鋭い眼光で睨みつける。
マイナス「あ…ぁ…分かりました…命だけは助けてぇ」
完全にクリスの威圧に折れたマイナスは震えながらそう言う。
①「早くしろ!」
>> 377
マイナス「この…場所です…ひぃ」
鬼のごとくのクリスの問い詰めにマイナスは腕につけた機器を操作し、ディスプレイに表示された赤点が爆弾の設置位置だと言う。
①「よこしな!ったく…手間をとらせて!」
マップを奪いとるとリーマに手渡す。
リーマ「……」
リオ「はいよっと!もう用なしだねっ!」
マイナス「えっ…ちょっ…ぅげぇ」
リオは無邪気な笑顔でスイッチを押す。マイナスは電撃を受け、気絶した。
①「どう?」
リーマ「多過ぎます。今からじゃ…全ての爆弾を止めれないです」
①「そんな…」
爆弾のタイマーは3分を切っている。マップの赤点は数十個あり、到底、あと3分では無理だ。
⑭「とにかく!被害を最小限にするためにも一つでも多く止めるんだ!」
ラ・ドル「ですね。彼女も生きていればそう言うでしょう」
柱に設置された爆弾はラ・ドルの魔法で無力化される。
リオ「ラ・ドル!魔法でどうにか出来ないの!もう時間が…」
悩んでいる内にも時間は2分を切ろうとしている。
2:15
>> 378
ラ・ドル「魔法使いがなんでも出来るとは思わないで下さいよ…私でも行ったことない場所の爆弾を破壊するのは無理ですよ」
2:00
リオ「そんな…」
⑭「とにかく!早く案内してくれ!」
リーマ「はっ…はい」
1:55
①「ちっ」
『我、空想の産物なり、実態はなく霧のように立ち込める』
⑭「なんだ!?」
突然、霧が発生し視界が奪われる。
ラ・ドル「これは」
霧は濃くなり、1m先も見えなくなる。
『我!霧の中の生人なり!』
濃い霧はなかったかのように一瞬で消えてしまう。
スモッグ「喜べ…手を貸してやろう」
霧が晴れるとスモッグが立っていた。一人ではない20人以上のスモッグがいるではないか―――
⑭「霧の賢者殿」
スモッグ「そこの子供!見せろ!」
リーマ「ぇ…ぁ」
リーマから半ば無理矢理、マップを受け取る。
ラ・ドル「おい…早くしろよ…彼女はいらついてるんだ。時間ももうないぞ」
0:58
既に爆発まで、1分もない。
スモッグ「だまれ…我に不可能はない」
>> 380
「我に不可能などない」
地から響くような声とともにスモッグは再び、クリスたちの前に現れる。
爆弾のタイマーは
0:01
のカウントのまま停止している。
⑭キック「流石だ。あの少ない時間に爆弾を破壊するとは」
ラ・ドル「まっ…私ほどではありませんが…まっ…彼女も褒めていますよ」
スモッグ「お前たちの礼などいらぬ。ではな…ふん」
見下すようにクリスたちを見渡すと煙のように姿を消す。
①「確かに性格はアレだけど…頼もしいわ」
⑭「だな。私はさっきの《魔科(魔科具使い)》のところに戻る。こいつらをネタに協力の連合軍との繋がりを全世界に認めさせてやる」
気絶したマイナスをキックは抱える。
①「私たちは残りの暗殺者たちを!」
リーマ「はい」
クリスはリーマを連れ、プラスから奪ったマップ片手に走っていく。
ラ・ドル「では、我らも行きましょう」
⑪リオ「了解」
マイナスのマップを持つリオとラ・ドルはクリスたちとは別方向に向かう。
>> 381
シュゥゥゥ
数秒前、セロはゼロ(協力からの刺客、魔科使い)が振り下ろした機械剣から目をそらした。
⑤セロ「ぐぅ…」
ゆっくりと目を開けたセロは身体に走る激痛に悶えながら、目の前に倒れている魔科(魔科具使い)を見つめる。
⑤「俺がやったのか…くっ」
腕に刺さった機械剣を一瞥し、ため息をつく。目の前に仰向けに倒れている魔科の鎧にはた大きな穴が空き動く気配はない。手に握られた二丁の黄金銃の銃口から微かに煙が、出ている。おそらく無我夢中に引金を引いた時に魔法弾が出たのだろう。
⑤「やべぇな…っ」
協力の最新の鎧すら一撃で、風穴をあけるとはただの魔法銃ではないようだ。
⑤「ぐ…威力に関心してる場合じゃ…ねぇか…くそ」
剣が刺さった部分からは血が勢いよく流れ出ている。早く止血しないと命が、危ない。だが、剣により、壁に串刺し状態のセロは身動きがとれない。
⑤「ふっ…俺にしちゃ…上出来な死に様だな…くっ」
深く息を吸うと目を静かに閉じる。
手に握られた黄金銃は
血がかかり
より一層
輝きを
増していた。
>> 382
⑤「……」
セロ
⑤「ぅ……」
セロ
⑤「ぅう…」
セロ!!
⑤「う…っ」
デビル「セロってば!生きてるかい!」
⑤「っ…デビルぅかぁ…く」
意識が、もうろうとする中、セロはまぶたを半分程度開ける。
デビル「派手に刺されたね!」
毛を伸ばし、傷口を押さえつけるが、血は止まらない。
デビル「止まらないなぁ」
腕を縛り、止血はどうにか出来たものの、セロの顔色は悪い。相当量の血を失ったようだ。
⑤「はぁ…だんだん…目が、かすんできやがった…っ」
デビル「セロ!眠るなよ!目瞑っちゃだめ!」
虚ろな目で、必死に手当をするデビルを見て、セロは微笑む。
⑤「俺もう…だめだわ…お前(デビル)が天使に見えてきた…はは…く」
デビル「頑張れってば!直ぐにハーク呼んでくるからさ!」
ハークの元にいこうとするデビルをセロは自由のきく右腕で、押さえる。その顔は既に覚悟を決めた男の顔だ。
⑤「無駄だよ…もう…」
デビル「セロぉ~!」
>> 383
デビル「セロ!セロってば!」
⑤「ふ……」
既にデビルの声は耳には入ってこなかった。
意識は薄れ
クリスとの思い出が、走馬灯として蘇る。
そして、目は自然と閉じていった。
⑤「ぇ?…アレ?」
死んだ
⑤「え?」
死んだと思った。
だが、突然、身体中に力がみなぎる。傷は塞がり、みるみる精気が戻っていく。
この感じ―――
この感じは魔法のような魔力を得た―――
そんな感じだ。
⑤「治った…ハーク様が?」
今まで、死にかけていたとは思えないほど軽快に立ち上がると辺りを見渡す。だが、飛び跳ねるデビル以外は誰もいない。ハークの力ではないようだ。
デビル「やったぁ!やったぁ!治った!治った!」
⑤「おい…ど…どうやって」
珍獣族の王であるデビルは回復魔法を使えたのか、いや、魔法は使えないはずだが―――
デビル「へへぇ。俺っちの心臓移しちゃたぁ~!」
⑤「へぇ?」
心臓移し!?
突拍子のない発言にセロはデビルの言葉を頭の中で、なぞる。
>> 384
⑤「な…なにしたって?」
セロは自分の身体に確かめように手で触る。
⑤「なっ」
違和感がある。左肩に脈打つ物が―――
デビル「そう。それ俺っちの心臓ね。お礼はまた今度払ってもらうかんね」
ま・さ・か
⑤「マジかよ…」
左肩を押さえる。確かに心臓が肩にある。肩に心臓が、しかも、デビルの心臓!?
⑤「お…お前、大丈夫なのかよ」
ってか、俺は大丈夫なのかよ
デビル「うん。魔族だしね…心臓を他に移すなんて、なんてことないよ」
恐るべし魔族―――
⑤「俺は…どっどうなったんだぁ」
胸に手を当てると心臓は確りと動いている。
デビル「死んでないよ。ただ、放っておいたら死んでたけど…でも死ぬ前に俺っちの心臓は移植して、補助役として、セロの助けたんだ。魔族なら多少の傷も塞がるしね」
⑤「魔族って…俺が?」
デビル「そう。俺っちとセロは一心同体って奴になったわけ。つまり、セロが死ねば俺っちは死ぬ…セロも魔族だし、寿命は千年、年もとらないことになるね」
⑤「そっ…おい!戻せよ!戻せ!お前と運命共同体になるなんて!ごめんだぞ!」
>> 385
デビル「無茶言うなよぉ…俺っちだって、こんなことしたくなかったけど。セロ。死にそうだったし」
⑤「そりゃそうだけど…戻せるんだろ!?」
デビルを捕まえ、大きく揺する。
デビル「戻せなくないけど…俺っちの心臓とった時点で…ぽくりあの世って可能性もあるよ?それでもいいの?」
⑤「ぅ。そんなぁ…」
デビルは笑顔で、そう答えるとセロの手から逃れ走っていく。
⑤「まっ待てて!」
デビル「それに魔族になったって、あんまり変わらないさぁ…ひひひ」
⑤「まぁ…死なないよりましか」
セロは走りながら二つ心臓が鼓動するのを感じながら生きている嬉しさに浸っていた。
⑱ドグロ「ららら…ら~らら」
不気味な唄を口ずさみ、宇宙海賊トップのドグロは巨大戦艦キングだったころは操縦室として使われていた部屋にいた。
広い部屋には中央の椅子と青い球体以外は何もなく殺風景で、傍らには世界の指導者、地の大賢者オジオンもいる。
オジオン「動かす気か…ドグロよ」
⑱「まさか…キングは隠居の身だぜ」
青い球体をさすり、ドグロは寂しそうに言う。
>> 386
オジオン「隠居の身にしたのはお主じゃろう」
ドグロ「何がいいたい…」
中央に位置する青い球はキング内部を映していた。暗殺者集団が、クリスたち・銀狼の活躍で、鎮静化し、そのほとんどが、拘束されている。
オジオン「500年前の事をまだ…引きずっておるのだろう」
500年前、そう、巨大戦艦キングが、黒の惑星に降り立った年である。
ドグロ「……」
色眼鏡を外し、丁寧にケースにしまい胸ポケットに入れると悲しそうな目で、天井を見やげる。
オジオン「世界のために…戦う時が来たのだ。ドグロよ」
天井には銀髪の女、つまりは銀狼の美女が、描かれていた。ドグロにとって、かけがえのない人、しかし、500年前、亡き人となってしまった。
オジオン「この地、今、キングがいるこの場が、彼女の死に場所…いつまでも彼女の墓として、キングを置くのは止めにしないか」
オジオンも天井の彼女を見つめる。美しい。誰よりも華麗な女を―――
ドグロ「俺様は…」
>> 387
その頃、赤の小惑星の銀狼で幼なじみの医者アイシスに雷の大賢者マリーンを託した凱はクリス等が居る黒の小惑星にシャドーmkⅢをコスモワープさせ到着していた。
ザクッザクッ
⑦「暗殺者たちが、だいぶん減っているな…だが、宇宙海賊の銀狼たちもやられたみてぇだな。」
凱は辺りを見回しながらクリス等を捜した。
バシュバシュ
「ふひ~ッ!コイツ独りだ。死ね~ッ!!」
暗殺者たち数人が凱に一斉に襲いかかった。
チャキ
⑦「サラムよ!炎を宿せ!」
ゴオッ
凱は黒魔剣を背中から抜き迎え撃った。
⑦「三重残像剣…」
「なんだ、三人になったぞ!?」
「構わないから、首とるぞ。」
ガキガキッ
「ぐぎっ」
「うごぁ」
ズシャシャッ
暗殺者たち数人は何が起こったか分からないうちに素早く凱に斬られ地面に突っ伏していた。
チンッ
⑦「チッ…早く、みんなと合流した方がいいな…」
凱は背中の鞘に剣を戻すと先を急いだ。
>> 388
ドグロ「俺様にとって…アイツが全てだったのだ!」
鋭い牙をむき出しにし、大きな素振りで、手を掲げる。
ドグロ「アイツが死に…俺様も死んだ…半永久になったキングとともに永遠とルーラを守る。それが…俺様の役目なのだ」
500年前、ドグロは不運にも天井に描かれた美女、ルーラを失った。そして、自らを人柱とし、巨大戦艦キングに命を与え、永遠にルーラの死に場所であるこの場に居座ることに決めたのだ。そう。彼女を忘れられないために―――
ドグロは失ってもなおルーラから離れられなかったのだ。
オジオン「ルーラはお前にここに居てもらうのを望んではおらぬ。昔のように宇宙を駆けるお前に戻って欲しがっておるに違いないぞ」
ドグロ「だまれぇ!!貴様に何がわかる!」
オジオン「……」
オジオンはそれ以上なにも言わず、ただドグロを見つめた後、静かに姿を消す。
『ウオオオォォオッ!!』
ドグロは狼人間となり、凄まじい雄叫びを上げると崩れ落ちるように床に座った。
>> 389
暗殺者集団の騒ぎにより、混乱しているキングから飛び立とうとす戦闘機があった。
協会員「さぁ。撤収ですよ」
最新鋭の戦闘機に乗り込む協会員の腹には協会のマークである赤い十字架が刻まれている。
ザッザッ
ミスチル「まて…逃がさんぞ」
銀狼「包囲しろぉ!!」
「はっ。いけいけいけ!」
宇宙船置き場にミスチルを含む、武装した銀狼が雪崩れ込んでくる。
協会員「計算よりも早くに来ましたね」
協会員「流石は銀狼っといったところか」
戦闘機を囲まれても冷静さを失わず、協会員たちは暢気に話す。
ミスチル「協会側は我らを裏切ったようだな。貴様らはただで返すわけにはいかん」
協会員「ふふ。裏切った?勘違いするな。協会はお前たち獣と手を組んだ覚えなどないわ!!」
協会員の一人が、レザー銃をミスチルに向ける。だが、引金を引く前にその協会員の頭が吹き飛ぶ。銀狼兵の狙撃を受けたのだ。
ミスチル「大人しくしろ。お前たち程度など簡単に鎮圧出来るんだ」
協会員「ふっ…我らは協会の意思のまま動くだけ」
>> 391
ドゴオオォン…
⑦「何だあの爆発は!?」
凱が歩いている少し先で戦闘機らしきものが爆発するのが見えた。
⑦「行ってみるか…」
ザシュ
地面を蹴り暗殺者や銀狼たちの死体を避けながら隙間をジャンプして行く。
ミスチル「んっ!? 何か、こっちに向かって来るな…者ども戦闘態勢をとれ!!」
銀狼たちはミスチルの号令で構えをとった。
バシュー
バシュー
黒い影が物凄いスピードで向かって来た。
⑦「おっと、待った待った!俺様だ!凱だ!!」
銀狼たちの攻撃態勢に気が付いた凱は慌てて叫んだ。
ミスチル「大丈夫でしたか?」
⑦「ああ、何とかな…で、さっきの爆発は、いったい…」
ミスチル「協会の戦闘機ですよ。」
⑦「チッ、やっぱり連合軍と連んでやがったか。アイシスの言ったのはガセじゃ無かったみてぇだな。」
ゲシッ
カランカラン…
足元の残骸を凱は蹴飛ばした。
⑦「ミスチル、クリスたちは何処だ。」
凱は辺りを見回した。
>> 392
ミスチル「36ブロック付近に居られると思います」
地下に埋まったキングは50ブロックに区分けされており、凱がいる場所、つまりはキングの上部の地上部分は1ブロックである。
⑦凱「よし!いくぞ」
ミスチル「はっ…は」
②「皆、無事じゃったか?」
①「えぇ。どうにか」
⑭「ハーク殿もご無事でなによりです」
クリスたちは銀狼の女・子供が集まり、避難所となっている36ブロックにいた。戦艦だったころは砲弾庫として、使用されていたシェルターである。現在も昔の名残があり、古びた砲弾が置かれている。
⑪リオ「リーマ。大丈夫?」
小刻みに震えているリーマに優しく話しかける。
リーマ「はッはい。また…暗殺がいるような気がして…」
⑪「大丈夫!誰がきようが!僕がやっけちゃうからさぁ!」
胸を叩く。勢いよく叩き過ぎて、むせるリオを見て、リーマは笑顔を見せた。どうやら、不安を少しは取り除けたようだとリオも笑顔で返す。
>> 393
⑤セロ「リオの奴も隅に置けないねぇ」
遠くから二人のやり取りを見守っていたセロは避難しにきた銀狼の中に混じり、座っていた。左腕で新たな心臓(右肩)を押さえている。
デビル「ムシャムシャ…うまいうまい」
横には避難所に運ばれてきた配給食・52人分を平らげ、53人分に手を出そうとするデビルがいる。
⑤「ったく…こんな奴と運命共同体なんて…はぁ」
ラ・ドル「一段落ってとこかな」
スモッグ「ふん。これからが…本番。宇宙には連合軍・政府軍の艦隊が直ぐそこまで迫ってるんだ。死ぬ準備でもしとくといいぞ」
ラ・ドル「お前と違って、私は師匠(ハーク)のためなら命など惜しくはない。師匠と共に戦って死ぬなら本望だよ」
スモッグ「ふん…綺麗事を…」
ラ・ドルは強い眼差しでハークを見つめる。そんなラ・ドルに呆れ、スモッグは煙と化し姿を消した。
③セレナ「皆、無事で良かったわ」
⑭「えぇ。協会までもが敵だったとは…さらに厄介なことになりそうです」
>> 394
銀狼兵「お待ちを…しょ」
兵「あっ…」
激しい音が鳴り、閉ざされたシェルターの扉が開く。シェルター内の人々は動揺し、視線は開く扉に集中する。
レッガ『があ!ってめぇたちだな!客人ってのは!』
普通の銀狼の二倍以上はあろうかという巨体の銀狼の男が入ってくる。男は真っ直ぐクリスたちの方に歩いてくる。
⑭「なんだ!貴様は!」
③セレナ「キック!止めて」
竜剣に手をかけるキックをセレナは止めると向かってくる男に自ら近づいていく。クリスも男に近づく。
レッガ『客人!俺は宇宙海賊!戦闘隊長のレッガだ!敵襲との知らせを受け、待機してた宇宙から戻ってきた!』
雄叫びにも似た勢いのある喋り方で、体格差が余りにもあるクリスとセレナに叫ぶ。放つ言葉の風圧で、二人は飛ばされてしまいそうだ。
レッガ『まず…客人よ。言いたいことがある』
レッガは腰に付けた大剣を抜き、獣のような鋭い牙を見せる。
①「やるつもり?なのかしら?」
レッガが持つ大剣と比べれば余りにもか弱い剣を抜き、クリスは挑発的に言う。その態度に拍子抜けたようにレッガは肩を垂らす。
レッガ『がははは…変わった女だ』
>> 395
レッガ「気に入ったよ。姉ちゃん!がっはっはっ」
クリスの肩をバンバンと叩くと奥に歩いて行った。
①「はぁ~ッ 何なんだ、アイツは…」
チン
溜め息を付くと鞘に剣を納めた。
⑭「疲れるやつだ…」
キックも同様に溜め息を付いた。
③「あっちもね…」
セレナが指差す方を皆が見る。
カチャカチャ
デビル「んぐんぐ、ジュース追加ね。」
そんなのはお構い無しにデビルは54皿目を平らげていた。
のっしのっし
レッガが酒樽を抱え戻って来た。
ドガッ
レッガ「一緒に戦う仲間だ!飲もうぜ!!おらよっ」
酒樽から木のコップに並々と注ぐと皆に手渡した。
クリスとキック、セレナは呆気にとられコップを受け取った。
⑪「僕は遠慮しとくよ。」
レッガ「んなこと言わねぇで飲めよ。」
リオは手をブンブン振ると代わりにキックがコップを飲み干した。
レッガ「いけるねぇ」
⑭「フン…」
⑤「この右肩で脈打ってるのがデビルの心臓何だから、いきなり止まるってこと無いよな…」
少し離れて座っているセロは、みんなの近くに座ると気が気で無く一気に飲み干した。
バンッ
⑦「捜したぜ!おめぇ等…」
そこへ、息をきらしながら凱が現れた。
>> 396
宇宙の何処かに
暗殺者・傭兵などの裏社会の人間をまとめる組織、通称《協会》の本部はある。
しかし、実際、協会員が帰る場所は不明であり、本部自体も別次元の空間にあるとまで言われる謎の組織、それが、《協会》だ。
赤い縦長の十字架を背負った協会員はまるで、未来の住民かのように逸している。
協会の歴史はドイスにより、フラク星雲が支配され連合軍の旗が掲げられた頃と同時期に《協会の活動》は始まった。
派閥争いで、荒れ狂う裏社会を絶対的な力で鎮静化し、ルール無用の裏社会を秩序の名の元にその手の内にいれたのだ。
《協会》を通さねば仕事は出来ない。もし、協会を通さず行動するようなら協会にコントロールされた裏社会の人間から報復を受けるだろう。
そう
協会は裏社会では絶対なのだ。
協会の最新鋭の戦闘機が規則正しく並ぶ巨大宇宙船発着場に一隻の戦闘機が降り立つ。
協会員「G(ギガ)クラス。プラス様。お帰りになさいませ…早速ですが、T(テラ)クラス。グレー様がお呼びです」
プラス「分かってる。どけ!!」
戦闘機から降りてきたのは死闘の末、逃げ帰ってきたプラスであった。
>> 397
出迎えに来たh(ヘクト)クラスである協会員を投げ払らい協会本部である巨大な球体状の建物に向かう。
「よくきたな」
Tクラス:グレーはプラスを見るなり、眉間にしわを寄せそう言った。
プラス「……」
グレー「Gクラス二人(プラス・マイナス)にM(メガ)クラス一人(ゼロ)の三人がかりで…任務失敗とはな」
失態を犯したプラスに冷たい視線を送る。
プラス「で…ですが。最初からこの作戦には無理があった」
グレー「言い訳はいい。私はキング爆破の命令を言い渡したのだ。ハークを殺れとは言ってはいない…まさか、宇宙船一つも潰せないとはな」
グレーは銀色の鎧に数多く装備した魔科具の一つを手にとり、握り潰す。まるで、自分なら簡単にこなせると言いたげだ。
プラス「ハーク以外にも強敵がいたんです…Gクラス程度の力の者が多数いました」
グレー「この連中かね?」
クラスたちの顔写真とともに書類を無造作に投げる。
グレー「ダンテスティン国王女セレナ戦闘レベルK(キロ)クラス。世界最強の剣豪の雷の妹クリスはGクラス。竜王の子キックはGクラス…」
>> 398
更にグレーは続ける
グレー「賞金稼ぎの凱Gクラス…錬金術の見習いリオ、Kクラス…珍獣族の王デビル、Mクラス…銃使いのセロ、hクラス…ふん」
プラス「なっ…なぜ?情報を知っていて俺たちに知らせないんです…」
グレー「やれやれ…敵とやりなえとは言っておらん。やり合わない以上、情報も必要あるまい…キング爆破のため、総勢数百の暗殺者を使わせてやったのに…無駄なことをして失敗するとは」
グレーはゆっくりと
しかし
確実に鎧の魔科具に手を伸ばす。もちろん、プラスは素早く反応し、機械剣を抜く。
グレー「失敗した者はゴミだ…廃棄せねばならん。協会の意のままに…」
プラス「くっ…くそぉ!!」
「お呼びですか」
グレー「あぁ。部屋にゴミができた。掃除してくれ…」
「はっ…」
《物》と化した《ソレ》をグレーは興味など全くないような冷たい目で見つめ、静かに部屋を出る。
グレー「協会の意のままに…ふッふふ」
>> 399
②「凱か…無事じゃったか」
⑦凱「おうよ。俺様にかぎって、あの程度の輩にはやられねぇよ」
③「凱。マリーン様は?一緒じゃないの?」
⑦「あぁ。マリーンは色々あって…赤の惑星で、アイシスの治療を受けててな」
⑤「えっ治療を!?大丈夫なのかよ?」
⑦「大丈夫。心配いらねぇよ…」
心配いらねぇ…心配は
何があったかはそれ以上聞く者はいなかった。なにより、アイシスに任せておけば安心だろう。
⑭「さぁ。全員揃ったことだし、ここに居ても仕方ないだろう」
①「そうね。でも…どうするの」
避難所には銀狼の兵士が集まり、既に敵もいなくなっている現状ではここにいる必要もなくなっている。
ミスチル「凱様…お早いですね…はぁはぁ」
凱に遅れて、ミスチルがやってきた。息は上がり、汗だくである。
⑦「まだまだ…だな」
ミスチル「はぁ…精進します」
汗を拭きとり、冷静さを取り戻すと
リオと酒を交わすレッガを見つける。
ミスチル「レッガ隊長!?こんな所で何をしておられる…」
レッガ「おう。ミスチル。騒ぎを聞いて前線からコスモワープですっとんできたんだ」
>> 400
ミスチル「ここは私が守っております!連合軍は直ぐそこまで迫ってきてるんですよ!隊長が前線から離れるなんて!」
ミスチルがドグロの右腕ならばレッガは左腕だ。頭を使う仕事はミスチルが、力を使う仕事はレッガの担当である。
レッガ「安心しろぃ。連合軍が宇宙海賊の前線部隊と交えるのはあと3時間程度あるからよ」
3時間程度ある?しかの間違いだろう。
ミスチル「とにかく!早く戻って戴こう!暗殺者は完全に排除したのでね!」
レッガ「はいはい。分かった。じゃな」
重い腰を上げ、人一人程度の大きな酒ダルを持ち、歩いていく。
⑦「しゃあ!俺も前線に出るかな!」
⑭「なら俺も宇宙に出よう。敵を待つのは好かんからな」
②「お主らだけが、危険を冒さすのはの。儂もいこう」
レッガは「好きだぜ無謀な奴は」と言いたげに大きな声で吠える。
①「私もい…」
着いてこようとするクリスにハークは小声で耳打ちする。
②『クリスよ。前線は儂らに任せて…姫たちを任せて構わんかのぅ』
①「は…はい」
ハークの頼みにクリスは渋々返事をする。
>> 401
⑤「頑張ってこいよ~!!」
③「あれ…セロはいかれないんですね?」
三人を元気よく見送るセロに手厳しい意見が飛ぶ。
⑤「はは…俺はコイツのお守り係ってことで」
デビルを抱え上げ、苦笑いで返す。それを見たクリスはセレナの肩に手を置き
①「ヒビリちゃんなのよ」
⑤「あぁ!また余計なことを!」
⑭「本当の事だろ。そう騒ぐな」
⑤「い…キックまで」
⑭「あとコイツの事も頼む」
キックは下着姿にされ縛られたマイナスを指差す。捕獲用魔科具の電撃を受け、気絶したままだ。
⑪リオ「まっ…任しといてぇよぉ…僕ちゃんに」
リーマ「お酒弱いのならあんなに飲まないで下さいよぉ…大丈夫?」
顔を赤らめたリオはリーマに支えられながら言う。
①「分かった。コイツから出来るだけ、協会の情報を聞き出しとくよ」
クリスは不気味な笑顔を見せる。どうやら戦場に出れなかった悔しさを尋問で晴らすつもりらしい。マイナスに皆が同情する。
⑭「まッ…ほとほどにな…では」
>> 402
①「さぁ!いくよ!」
マイナス「ひぃい」
強烈な足蹴で目を覚ましたマイナスはクリスに連れていかれる。
⑤「ありゃ…半殺しはかたいね」
デビル「ムシャムシャ…そうだね」
自分でなくて本当に良かったと安堵しながら和やかな表情で見送る二人であった。
③「…あ」
ラ・ドル「姫…何処に行かれるおつもりかな?」
ハークたちについて行こうとしていたセレナを彼女(杖の先端の頭蓋骨)を優しく撫でるラ・ドルが止めに入る。
③「ハークたちが心配ですし…私も皆の役に立ちたいんです。行かせて下さい」
ラ・ドル「姫。貴方自信も狙われている事を忘れたとは?言わないでしょう?今は動く時ではありませんよ」
③「でも…」
ラ・ドル「駄目です。師匠のお気持ちも御察し下さい」
⑤「そうそう。身の安全を第一に考えなきゃ…アイツら見たいに人間離れしてないんだから俺たちはさ。それにセレナはダンテスティン国復興には欠かせない人なんだよ」
③「そうですね」
リオ「安心して!僕がいれば百人力さぁ…ヒック」
③「ふふ。有り難う。リオ」
>> 403
ミスチル「皆さん。ドグロ様がお呼びです」
③「ドグロさんが?」
ミスチル「えぇ。お暇な方で結構ですので…お付き合いを」
横目で、マイナスを引きずっていくクリスを見てそう言うと返答も聞かず、一人先に歩き始める。
③「行きましょう。私たちもここで避難し続けるわけにはいきませんから」
⑤「了解!お前も行くぞ!デビル!」
デビル「えぇ~やだやだやだぁ!やだったら!」
⑤「駄目!ほっといたらまた勝手にいなくなるだろう!お前を探しに行って、死にかけるのはもうごめんだ!ほら…こい」
デビルを抱え上げ、逃げられないようにがっしりと押さえる。
⑪「僕もぉ…い…いく…いくよぉ…あ」
酔っ払いリオは一度は立ち上がるが、すぐ座り込んでしまった。
ラ・ドル「親友よ。暫く休んでおくといい。リーマさん。すいませんが…我が友を頼みます」
リーマ「はい。任せて下さい」
⑪「ムニャ…ハィウ」
リーマに膝枕してもらい眠りに落ちたリオは幸せそうに寝息をたてている。
>> 404
レッガ「乗ったな?行くぞぃ!!」
ド派手な塗装で塗られた帆船型の宇宙船は異常に振動し、徐々にエンジンの回転を上げていく。相当な年期を感じさせる船だ。
⑭「こんな…ボロ…いや…船で宇宙に出れるのか…ぁ」
何かに掴まっていないと立つことすら出来ない船の中で、キックは不安気にそう漏らした。
レッガ「なにぃ…今日は少しばかり、暴れるが、でぇじょうぶ!」
壊れるのではないかと思うほど激しくモニターパネルを叩くレッガにキックは呆れる。
②「レトロ感がいいではないかのぅ」
⑭「しかし…ッ」
ゴオォォォォ
離発時の激しい横揺れに耐えるキックは必死の形相だ。対して、ハークは旅を楽しむかのようににこやかな表情で、一面砂漠の黒の惑星に見入っている。
レッガ「しっかり!着いてこいよ!にぃちゃん!」
『俺の船をなめるな。置いてかれるかよ』
通信機からは凱の声が聞こえる。レッガの帆船宇宙船の後方からはシャドーmkⅢ、凱の愛船が着いてきている。
>> 405
⑦「しゃぁ!飛ばすぜぇ!シャドー!」
「リョウカイ フルネンショウ カイシ シールドカンリョウ」
ブースターから黒い煙を上げ、先を行くレッガの船に追随するようにシャドーmkⅢは大気圏をでる。
『もう直ぐ…宇宙海賊本隊と合流だ。あと少し頑張ってついてこいよぉ』
⑦「あのボロ船。相当な馬力だな…ちッ」
フルスロットで飛ばすシャドーmkⅢだが、前方のレッガ船との距離は縮まらない。
「シャアナイネ アノフネ コノフネノ ニバイノエンジン ツンデルシ」
⑦「お前!エンジンのせいにするな!根性だ!根性でいけぇ…おりゃ」
「ムチャイウナヨ バカガイ」
⑦「馬鹿じゃねぇ」
「ヘィヘィ」
レッガ「見えてきたぜ」
⑭「ほぅ…凄い数だな」
流星群と見間違えるほどの宇宙船が見えてきた。全ての船が宇宙海賊の旗を掲げいる。これほどの数でも連合・政府軍の艦隊の半分にも満たないとは―――
これから起こる戦闘の激しさを物語っているようだ―――
>> 406
『レッガ隊長。船体コード確認しました。誘導致しますので、そのまま低速でお進み下さい』
通信機に艦隊からの通信が入る。レッガは返事は返さなかったが、言われた通り、速度を落とし、操縦ハンドルから手を放した。シャドーmkⅢも従う。
⑭「でかい戦艦だな」
誘導される前方には通常の大型戦艦(全長800㍍) の2~3倍もある戦艦がいる。大きさでは過去に見た最大級の竜戦艦(竜王の愛船)の半分程度ではあるが、攻撃重視に作られた戦艦だけあって、攻撃性は竜戦艦にも劣らないだろう。
レッガ「だろう!だろう!このサイズはキング・ジュニアって俺ら(宇宙海賊)言うてんだ」
キング・ジュニアは一隻だけではない100隻はゆうに超えている。宇宙戦では種族屈指の銀狼だけのことはある巨大艦隊だ。連合軍と言えどこのサイズの船をこれ程多くは作れないだろう。
②「まいったのぅ…ふむ」
銀河を見つめ、ハークは独り言を言う。近づくる連合軍のリードの魔力を感じたのか、未知の生物の存在を感じとったのか、定かではないが、大賢者ハークすら弱音を吐く敵が迫っているのは確かだった。
ゴオォォォォ
>> 407
⑦「シャドー。いつでも飛べるようにエンジンを温めとけよ」
「ハイハイ リョウカイイタシマシタデゴザル イッテラッシャイ ゴシュジンサマ」
キング・ジュニアのハッチが開き、誘導されるがまま自動操縦で船は船内へと着陸した。
「隊長。お待ちしておりました。連合軍との抗戦も直ぐそこまで迫っています」
レッガ「分かってるぞぃ!中央ルームに案内しろぃ」
「イエッサ!」
銀狼の屈強な男たち、言わば海(宇宙)の男たちに先導され、凱たちは全ての情報が集まっている中央ルームへと案内される。
⑭「この赤い点…全てが敵の戦艦なのか…」
キックは中央ルームに入るやいなや絶句する。中央の円形のモニターには敵艦隊の位置が示されており、間近に迫っていることはもちろんのこと敵の数すら明瞭に映し出されていた。
レッガ「百万人単位の軍勢だ。微かな勝機にかけるしかねぇんだよ」
モニターに入りきらないほどに赤点が表示されている。
②「戦は数ではないぞ。力ではなく知で戦うのじゃ」
⑭「そうですな。ハーク殿の言われる通りです」
⑦「知?」
頭をかく凱であった。
>> 408
ゴオォォォォ
⑯リード「もうすぐですね」
両手に持った二本の杖を交差させ、あと一時間もしない内に目視で確認できる距離にいる宇宙海賊の壊滅を思い描いているリードは不気味に微笑む。
④バジリス「はッ…」
⑯「では。挨拶でもするとしましょうか」
控えている兵士に投げやり指示を出す。兵士は敬礼し、命令を伝えるため駆けていく。
『各艦に次ぐ!ミサイル発射許可がおりました!MMLの発射を認めます!』
『ミサイル発射許可』
『ミサイル発射』
数万の大小様々な戦艦から連合軍の最大飛距離を誇る通称MMLが、次々に発射される。MMLの破壊力は中型戦艦程度なら簡単に爆破できる。威力・飛距離とも世界一の技術ミサイルである。
⑯「さぁ…政府軍の小型艇を全艇発進させなさい」
「ハッ!」
真っ直ぐ宇宙海賊の艦隊飛んでいくMMLを追うように政府軍の戦艦から数十万の小型艇が発進していく。リード将軍はそんな小型艇団を冷酷な視線で見つめ、長い金髪をなびかせる。
⑯「小型艇にコスモワープをさせなさい」
「え…しかし…それでは」
⑯「私の命令に背くのですか?」
「いッ…いえ。了解致しました」
>> 409
④「残酷な命令を下すお人だ」
逃げるように命令を伝達しに行った兵士の背中を見て、バジリスは言う。
⑯「ゴミ(政府軍)も使い方によっては資源となるという教訓を伝えたまでです」
『宇宙座標D‐1‐2531へのコスモワープを開始します』
何も知らない政府軍の小型艇団は青紫の光に包まれ、次々にコスモワープに入っていく。
そう
その座標が宇宙海賊艦隊がいるど真ん中とは知らずに―――
⑯「さぁ…人間花火の鑑賞といきましょう…ふふ。実に死とは美しい」
無数のコスモワープの線光は一見、流れ星のように神秘的であった。先に《死》が待っているというのに―――
なんとも
美しい。
④「主人には…似るなよ化物」
人の死を芸術のように扱うリードに聞こえぬよう。頑丈な魔法牢に入った《ソレ》に言う。
④「ふッ気味の悪い奴だ」
『……』
《ソレ》は金色の眼球を剥き出し、身体を震わせた。
>> 410
ウゥゥゥゥ
ウゥゥゥゥ
ウゥゥゥゥ
⑭「なっ…なんだ?」
中央ルームは赤い照明に切り替わり、警報が鳴り、監視モニターは無数のミサイルの接近を警告している。
「隊長!敵艦隊からのミサイルです!」
レッガ「直ぐに!レーザー砲で撃墜だ!」
「イエッサ!」
銀狼の戦闘員は慌ただしく操縦席につく。
⑦「ついにおっ始まるのか!わくわくするぜぇ!」
⑭「不謹慎だぞ!まったく…」
②「ふむ」
ズキュゥゥ
ズキュゥゥ
ズガガァァ
宇宙海賊の艦隊から一斉にレーザー光線が放たれ、ミサイルを破壊し凄まじい爆破が起こる。だが、全てのミサイルは撃墜できず、レーザーをかいくぐって、ミサイルが艦隊に向かってくる。
レッガ「全艦!バリアーを展開!ミサイルをギリギリまで、近づけ近距離砲で撃ち落とすんだ!」
「イエッサ!近距離砲準備!」
「エネルギーチャージ完了!」
レッガの指揮のもと無駄のない統率のとれた動きで、銀狼たちは動く。流石は宇宙戦に慣れた宇宙海賊だ。
>> 411
バアァァァァァ
⑭「くっ…」
キング・ジュニアは大きく揺れる。どうやら近距離砲をも逃げ延びたミサイルが当たったのだろうが、バリアーのお陰で、船には損傷はない。
ズガガァァ
バアァァァァァ
②「激しいのぅ」
他の戦艦にもミサイルが直撃し、周りは爆発の嵐となっている。
レッガ「状況は!」
ズガァァァオ
「応答のしない船は数隻…撃墜されたようです。被害は軽度です」
レッガ「ちっ。連合軍め…遠くから卑怯な攻撃を」
反撃しようにもこの距離では宇宙海賊に打つ手はない。
⑭「MMLだな。このミサイルで、どれ程の船が撃墜されたことか」
爆破された船の残骸は四方に広がり、宇宙へ溶け込み、まるで、そこには船などいなかったように何もなくなっていく。
レッガ「連合軍の強みの一つよ。だが…宇宙戦殺しの通り名のMMLをこの程度の被害で耐えたんだ!幸先いいぞぃ!」
②「連合軍がただのミサイル攻撃で終わらすとは思えんがの」
レッガ「爺さん!目でも悪いのかい!ミサイルは全て爆発した…それにモニターには何も…ん!?」
⑭「ぁ!?」
>> 412
バアァァァァァ
突如、船の目の前に小型艇が現れ、バリアーに直撃し、爆発する。
⑦「まさか…」
凱は身を乗り出し、周りを見渡す。次々に小型艇が現れ、宇宙海賊の戦艦に体当たりしているではないか―――
レッガ「ぐぉ…なんと…」
小型艇の体当たりを受け、キング・ジュニアは激しく揺れる。
⑭「コスモワープか…なんて愚かなことを」
宇宙海賊の艦隊は次々にバリアーを破られ爆発していく。
「隊長!エネルギー率53%に低下…バリアーが破られます…」
バアァァァァァ
流星のような小型艇団の捨て身の突進にバリアーは悲鳴を上げている。
レッガ「エネルギーをバリアーに全集中!耐えろぉ!」
「イ…イエッサ!」
『うわぁああ』
コスモワープをし、次々に現れる小型艇団は前方の戦艦をかわすことなど出来ず、ただ突っ込むしかなかった。
バアァァァァァ
>> 413
『艦!損傷!操縦不能!うわぁ…ガッ』
『出力低下…飛行を維持でき…ガガッ』
各艦からの通信が次々に途切れていく。
「隊長!サーズ艦!リーナス艦!ダギ艦!応答なし」
レッガ「くそ…連合軍めぇ」
レッガは拳を握り、鋭い牙をさらけ出し、スクリーンに映る味方艦隊が激しく燃える様を見つめる。
②「人の命など…勝つためなら躊躇もせずに使い捨てるとはの」
⑦「ちくしょお!!あの小型艇たちはウマンダ星の船だぜ!連合軍の奴らなんて…ひでぇことを!!」
凱は故郷の人々が死にゆく光景を直視できず目を反らす。コスモワープによってやってきた数十万の政府の軍人が一瞬にして、命を落としてしまったのだ。今は敵同士の関係ながらも連合軍にいいように扱われている政府軍には宇宙海賊すら同情の気持を持ったことだろう。
ズズズズズズ
⑭「やっと…おさまったか」
「被害率15%…艦に問題はありません」
レッガ「直ぐに陣を立てなおせ!連合軍の艦隊との直接対決は近いぞぃ!」
「イエッサ!」
>> 414
『全艦に次ぐ!艦を立て直し!配置に戻れ!繰り返す!艦を…ガガッ』
レッガ「どうした!?」
『…ガガッ……ガッ』
通信にノイズが入り、音声が途切れる。
「電波ジャクです!連合軍から信号が送られています!」
通信士たちは通信の復帰作業にとりかかる。船内の全てのモニターの映像は途切れ、強制的に男の映像が映し出される。
『み…ガガッ…み…ガッ皆さん。ご機嫌よう』
男の映像が徐々に鮮明になっていく。金髪の長髪、整った顔つき、そして、冷酷な濁んだ目をもつ、連合軍3大将軍のリードであった。
『私はこの艦隊の総指揮官のリード将軍だ。お前たち獣どもを狩りにはるばる来てやったのだ…有りがたく思うがいい』
レッガ「なっなんだと!貴様ぁ!」
「隊長…こちらの声は彼方には届いていませんよ」
レッガ「分かっとるわぃ」
「すっすいません」
『そうだ。挨拶は気にいってもらえたかな?そちらは大分と被害が出ているようだな』
⑦「へっ…気に好かねぇヤローだぜ」
⑭「いえてるな」
>> 415
『私は寛大な人間でね。虫けら以下の君たちにチャンスをあげようと思っている』
レッガ「虫けらだとぉ!!」
モニターに向かっていこうとするレッガを銀狼の戦闘員たちは必死に止めに入る。
『考えてみろ…その中身のない頭でも分かるだろ?我々と貴様ら獣集団のどちらが勝つぐらいはな?』
『そこで、提案だ。素直に道を開けるのなら…見逃してやろう。どうだ?獣どもでも命は惜しいだろ?』
レッガ「こいつ!銀狼をどこまで侮辱するきだぁ!がぁ!」
「隊長ぉ!落ち着いて下さい!」
『死を選ぶか…私に恐れをなし逃げるか…せいぜい残り少ない時間で考えるがいい』
『あぁ…そうそう。そこには大賢者様も居られるんでしたな?忠告しておこう…老いぼれの魔法など私には一切通用しない。魔法界にでも避難しとくがいい…ガッ…ガガッ』
「信号遮断。連合軍との通信を断ち切ります…通信復帰」
通信士たちにより、リードの通信は途切れモニターは元の監視画面に戻る。
>> 416
レッガ「ええい!いい加減!放さんかい!」
「は…イエッサ!」
屈強な銀狼五人は手を放し、配置に戻る。
②「リードか…手強い相手じゃ」
⑭「ご存知なんですか?」
②「うむ。奴は魔法界の異端児…革命者と言った方がよいやもしれん。科学が進歩しているように魔法も日々進歩しておるが…奴はその進歩の先進者よ」
⑭「では…力は未知数と?」
②「……」
「隊長!」
レッガ「どうしたじゃい!?」
「離脱者があとをたちません。おそらく…先程の…」
宇宙海賊の艦隊から次々に戦艦が離れていく。
レッガ「な…宇宙海賊の誇りを忘れたのか」
②「恐怖は感染するのじゃ。先程の敵の攻撃で奴らの恐ろしさに臆しても仕方あるまい」
レッガ「ぐう…連合軍め…これを詠んで…通信を送ってきやがったのか」
レッガは離脱者を止めることはせず、見守る。おそらくは逃げるような輩を止めたところで、戦闘には役に立たないということを知っているのだろう。
⑭「今回の親玉は力だけではなく頭もきれるようだな」
レッガ「うむぅ…くそ!!」
>> 417
ゴオォォォォ
⑯リード「さぁ。開戦と行きましょう」
連合軍艦隊から政府軍の戦艦が徐々にスピードを上げ、先をゆく。
⑯「お手並み拝見といきますか」
④「はっ…我々(連合軍)が出るまでもないかと」
レッガ「先制をとれ!前艦メインキャノン砲を12時の方向へ!」
「イエッサ!!」
レッガ「前方にシールドエネルギー集中!敵も小型艦を出してくるだろう!小型艦戦に備え、小型艦に搭乗しろぃ!」
多く戦艦を失い、離脱者を多く出し、浮足ぎみの宇宙海賊艦隊をレッガは完璧ともいれる指示で、再び、艦隊をまとめ上げる。既に連合艦隊は射程距離に入っている。
⑦「俺もいちょ!かりでるぜ」
敵が近いとの報告を聞くやいなや凱は素早くシャドーmkⅢに乗り込みにいく。
⑭「私も宇宙戦といこうか…」
キックも小型艦に乗り込み、キング・ジュニアから飛び立つ。
②「凱・キックよ。任せたぞ…儂は奴を止めるでな」
>> 418
ゴオォォォォ
指揮官「獣どもに人間様の力を見せつけてやれ」
政府軍人「はっ!」
宇宙海賊からの一斉にキャノン砲が放たれる。政府軍艦隊はその攻撃を最新防御システムシールドでなんなく防ぐ。その間にもお互いの距離は迫っていく。
「敵艦接近!!敵艦から小型艦の発進を確認!」
レッガ「こちらも小型艦を全機出せぃ!艦は小型艦を援護に回るんだ!」
大型艦から嵐のように放射されるレーザー光線の間を縫うように宇宙海賊・政府軍の小型艦が飛び交い宇宙戦を繰り広げる。
⑦「キック!撃ち落とされるなよ!」
⑭「ふ…心配いらん。私は《飛ぶ》ことは得意だ。戦闘機の操作ぐらいわけないさ」
⑦「へッ…宇宙で羽が使えるといいのにな」
⑭「これが羽(戦闘機)がわりさ」
シャドーmkⅢとキックがのる戦闘機はそう交信を交わすとお互い別方向に別れていく。周りでは次々に戦艦が撃墜され爆発している。一瞬の油断で宇宙のもくずとなることだろう。
⑦「りゃあ!暴れるぜ!シャドー!」
「リョウカイ タイリョウセイサンヒンノ セントウキ ナンザ テキジャナイネ」
>> 419
④「将軍…政府軍と宇宙海賊の抗戦が始まったようです」
通信機からは絶え間なく政府軍からの交信が送られてきている。戦況は五分五分といったところのようだ。
⑯「政府軍は宇宙海賊と長年戦争を続けてきましたからね。因縁の戦いと言う奴ですか」
ホログラムマップには政府軍・宇宙海賊・連合軍と3つの艦隊が表示されている。
軍義(グンギ)「獣(銀狼)と人間どちらが優秀か…つまらぬ争いを続けてきた両者もこれで決着がつくということ」
戦義(センギ)「さよう。連合軍が誇るX砲に仲良く飲まれてな」
④「だ…誰だ貴様ら!ここは司令官室だぞ!」
無機質な全身黒ずくめの二人の剣士は黒い仮面ごしに凄まじい殺気を放つ。
④「なんだ!やる気か!」
バジリスはカプセル型の薬を手に持つ。連合軍が巨額な投資、長い年月をかけて、パーフェクト(全種族融合生物)ともに研究をつづけてきた新薬である。
⑯「待ちなさい。私の直属の部下です」
④「う…それは早とちりを…ふん」
>> 420
軍義「改X砲のエネルギーチャージの完了をお伝えにきたしだい」
戦義「ご命令あらば…いつでも」
どこか協会員のような近未来的な恰好の黒剣士二人は膝をつき、リードの前に控える。
⑯「思ったより早いですね。しかし…まだ少し馬鹿どものお遊戯見学といきましょう。慌てずともゴミ掃除はいつでもできます」
連合軍艦隊は主力砲であるX砲に最大出力のエネルギーを貯め、待機している。そう政府軍は所詮時間稼ぎの手駒でしかなかったのだ。
⑯「種族間の争いなど連合軍の研究に比べれば下らぬもの…我らは神の領域させ踏み越えパーフェクトを作ろうとしているのですからね」
軍義「はは。パーフェクト…早くお目にかかりたいものですな」
戦義「巨人族の力、竜人の飛行能力、狐人の俊敏さ、エルフ・小人族の魔力、人間族の英知、様々な種族の長所を集めた完璧な生物」
⑯「流石は我らの指導者ドイス閣下よ。やることが違うと思わぬか」
軍義「そう思いまする」
⑯「パーフェクトが誕生すれば…こうして弱き種族争いなどなくなる。残り少ない貴重な対戦を見るのも悪くないだろう」
戦義「はは。待機いたします」
>> 421
ヒュゥウウウ
ドガアァァァ
バアァァァァァ
宇宙から炎に包まれ黒の惑星に1隻の宇宙船が墜落する。宇宙船は砂漠の上で粉々となり、破片は激しく燃える。
ピピッ
同時刻
黒の惑星、管制局、つまりはキングの内部にある惑星全土を監視するレザー室に宇宙からの未確認飛行物体が落下したことを伝える信号が鳴る。
「隕石か!?まさか…連合軍!?」
管制員の銀狼の一人が慌てて、落下拠点のデータに目をやる。
「いや。この反応は金属だ…宇宙船だな。救難信号を出してないところを見ると味方船ではないようだ」
別の管制員は通信機を操作し、偵察船の出動を要請する。
ゴオォォォォ
「放射能反応なし…これは政府軍の船だな」
「撃ち落とされて、ここに落下したって落ちか?」
偵察にやってきた銀狼の戦闘員数名は機器を用い安全を確認すると灰と化した宇宙船の残骸を調べる。
「こちらコード96。落下物を確認。政府軍の船と思われる…生存者がいないか念のため船内の確認を実施する」
「これで、生きてたら乗組員は化物だな」
「だな。だが…気だけは抜くなよ」
「了解」
>> 422
「どうだぁ?」
「ひどいもんです。乗組員の死亡確認」
一人の戦闘員は全焼した宇宙船に乗り上げ、元はコックピットであった場所を覗き込む。そこには乗組員である兵士二人が変わり果てた姿となって座っていた。
「こちらコード96から本部へ。乗組員の死亡確認」
『ご苦労様です。帰還して下さい。あとは処理班を送ります』
通信からの返答をきき偵察隊は早々と小型艇に乗り、キングへと帰還する。
そんな小型艇がいったのを確認し、砂の中に隠れていた男が姿を現す。男は大きく背伸びをし全身の砂を払う。
コイル「さぁてと…狩りを始めるか」
金髪の男は金属リングを無数につけた舌を出し、唇を丹念に舐める。
コイル「来るのを待ってたら日が暮れるっての」
男は7大中将の一人コイル中将であった。キメラの命令、ウマンダ星の警護に背き単身、黒の惑星に乗り込んできたのだ。
>> 423
一方、コイル中将が乗り込んできたとは知るよちもないセレナたちはキングの中心部もとは操縦室であったドグロの部屋へと足を運んでいた。
ミスチル「どうぞ…お入り下さい」
屈強な銀狼二人かがりで扉が開かれる。さっそく中心にある青い球体に優しく手を置くドグロが見てとれた。その球体は純粋で、まるで、小さな小さな惑星のようである。
⑤「へぇ…ここがキングの心臓部かぁ」
分厚い壁に覆われており、この場所の重要度が伺える。
ミスチル「キングは生命体です。この核があるかぎり、永遠に形を失うことはありません」
④「生命体?ここは宇宙船ではないのですか?」
ミスチル「えぇ宇宙船ですよ。ただし…生きた船ですが」
デビル「食っても不味そうだけどね」
壁をペロリと舐め、渋い顔をして見せる。
⑱ドグロ「キングについては…この俺様が話そう」
④「聞かせてもらえますか」
⑱「その昔、俺様の愛する人が…」
天井に描かれた美しい銀狼の女がその人なのだろうか―――
⑱「ここで死ぬんだのだ。俺様はもっと大事なものを失い戦いに勝利した…だが…もはや彼女を失った俺様は羽の折れた鳥だった」
>> 424
⑱「この俺は死んだも同然だった…そして…俺は彼女の死に場所に居座ることを決めた」
⑱「この船に命を与え俺はこのキングに縛られる身となったのだ」
⑤「なんで、そんなことをしたの?わざわざ…船に命与えてまで、ここにいなくてもさ」
⑱「ふッ。貴様にはまだ分からんさ。本当に大事な人の死の重みなど…その重みは俺をここから離させてくれんほどに…そう。己にかかる重みで羽すら折れてしまうほど」
彼は遠い眼差しで、天井をみやげる。セレナはそんなドグロの真正面まで歩み寄り、手を差し出す。
⑱「……」
③「ダンスティン星にはこんな言葉があります。《死は終わりではなく始まりだ》と…確かに死ぬほどの辛い思いをした貴方は…自分を亡くしてしまったのかもしれません」
⑱「……」
④「ですが…新たな貴方が始まっているんですよ」
⑱「……」
④「立ち上がって貰えませんか…私たちに力を貸して貰えないでしょうか?」
ドグロは目を瞑る。
なぜ?
俺はこの地に止まったのか?
なぜ
未だに止まっているのだ?
彼女が事故で
いや
目を背けるな
奴に
殺されたのだ
そう
殺された事実から逃れたい一心だった
>> 425
奴から
俺は逃げてきたのだ
彼女の死から
アイツから
俺は
ずっと
逃げてきた―――
⑱「……」
ドグロはゆっくり目をあけ、差し出されたか弱い手に手を添える。
⑱「我、銀狼の長、キャプテン・ドグロ。姫、共に連合軍を打破しようではないか」
③「はっはい!」
人が変わったようにドグロは爽やかな笑顔を見せるとマントを脱ぎ捨て、青い球体の前に置かれた居座へと腰を下ろす。
⑱「俺は逃げてきた。だが…セレナ姫よ。姫は圧倒的な連合軍に恐れることなく挑んでいる。そんな姿を見せられたら…俺様もまた暴れてみたくなったぜ」
ゴオォォォォ
キングが揺れはじめる。
⑤「なんだぁ!地震か!?」
ラ・ドル「いえ…飛び立つ時がきたのでしょう」
デビル「え…飛ぶの!?」
キングの揺れが増していく。揺れが強くなるほど青い球体の輝きは強くなり、深い眠りからキングが徐々に目覚めていく。
⑱「相棒!まだ隠居は早かったようだ…行こうぜ!故郷(宇宙)によぉ!」
ゴオォォォォ
>> 427
その船は人の手によって作られた物とは思えぬほどに大きく他を寄せ付けぬ、存在感を放ち、己のあるべき場所へと徐々に高度を上げていく。
コイル「おたまげたぁ…こんなでけぇ船…わくわくしてきたぜぇ」
凄まじい砂埃・土砂を巻き上げ、天空へと上昇していくキングに招かれざる客が飛び乗る。だが、そんなことなど知ってか知らぬか、キングは悠々と飛んでいく。
ゴオォォォォォ
⑱「改めて言おう。ようこそ。巨大戦艦キングへ」
③「こんな凄い船を見たのは初めてです」
ラ・ドル「スモッグの奴も影で驚いてるんだろうなぁ…スモッグの驚く顔が見たかったな。ふふ」
土が落ち、キングは本来の姿を見せている。銃口のような巨大砲を船首につけ、特殊鋼で出来た船体は地中に埋まっていたとは思えないほど美しく銀色に輝いている。そして、その身体に何万もの銀狼を守っているのだ。
ミスチル「これが我らの母のお姿か…」
キングは銀狼族にとって、母星のような存在である。キングの中で育ち、死ぬその時までキングの中で過ごす銀狼は少なくなくない。彼らにとって、キングは船ではなく―――
母星
母なのである。
>> 428
ドカァ
薄暗い廊下に鈍い音が単発的に鳴り、男の掠れた声が続く。
マイナス「知ってることは全て…話したッ…も…ぅゆ…るしてくれぇ」
①「そうかしら?」
口から血を流し、身体中のあちこちが赤く腫れ上がっているマイナスは息も絶え絶え、にこやかな笑顔を浮かべるクリスに言う。
①「協会はクラス別に別れてて、数は数万程度。H2008の座標にコスモワープすれば協会本部へ繋がる異次元トンネルに行けるってわけね」
マイナスは必死に首を上下に動かす。
①「まだ聞きたいことは山ほどあるの…よね」
急に笑顔を崩し、冷たい視線をマイナスに浴びせる。
マイナス「た…たすけてぇ」
①「コイツからじゃ…この程度の情報が限度だな」
床に力なく倒れ、うめき声を上げているマイナスを見て、肩を落とす。マイナスが着ていた最新鋭の鎧は少し離れたところで、跡形もなく消し飛んでいる。もし脱がせていなければマイナスは粉々になり、何一つ情報を得られなかった。
①「いらないモノは処分するってわけか…」
粉々になった小型爆弾の破片を拾う。おそらく秘密保持のため任務失敗した協会員はこの鎧のような運命を辿ることになっているのだろう。
>> 429
「キングが飛んでるなんて夢みたいだ」
「ほんとうだぜ。信じらんねぇよ」
2ブロック地区を警備している二人の銀狼は窓に映る小さくなっていく地上に見入っていた。そんな二人の背後に舌を出し、無数の鎖を引きずりながら男が近づいていく。
コイル「夢なら俺は出てこないでしょう…へっ!」
一瞬
銀狼が男に気が付き声を発する前に二人の銀狼は身体を真っ二つに裂かれ、派手に血ぶきを上げる。
コイル「空飛ぶ巨大戦艦の中で狩りってのも燃えるねぇ」
①「今…一瞬、殺気が…まさか敵!?」
瞬時にはね上がり、姿を隠すように下がったオーラを感じたクリスは気配を感じた2ブロックに駆け出す。
コイル「ひゃぉ!!狼狩りってのは楽しいねぇ!」
2ブロックにいる銀狼たちは悲鳴を上げる間もなく斬り刻まれていく。
コイル「どいつも手応えない奴等だ。このコイル中将様を満足させてくれるやつはいねぇのかよ。ったく」
血の海と化した通路をなんともやる気のない歩き方で歩いていく。
>> 430
①「なんなんの…これ…」
2ブロックは壊滅していた。幾人もの銀狼たちが血まみれになって倒れ、所々に鋭い何かで裂かれた傷が残っている。
①「誰!!」
人気を感じ、咄嗟に物陰に身を隠す。暗い通路をゆっくりと何者かが近づいてくる。
コイル「さぁ。そこにいるのは分かってるよ~出てきて狩らせてよ?狼チャン?」
暗闇の中から姿を見せた金髪の若男は腰につけた無数の鎖を引きずり、金属音を上げながら近づいてくる。
①「お前がやったのか!」
物陰に隠れつつ、剣に手をかける。クリスの挑発的な発言にコイルは驚く。
コイル「あらら?…銀狼じゃなくねぇ?」
ただ者ではないと感じたのか、コイルは己の武器である腰につけた鋭い刃先のブーメランを構える。
コイル「へっ。運がいいね。もうターゲットと遭遇って…しかも好みだ」
①「暗殺者の生き残りか…」
カチャ
剣を抜き、クリスは物陰から男の前に姿を現す。
コイル「あんなごろつきと一緒にしないでよぉ。俺は連合軍のコイル中将ね。あんたら狩りにきたってわけ」
①「敵ってことか…じゃ遠慮せずいかせてもらうわ」
>> 431
コイル「ひゅ~やるねぇ」
両者の間に風が吹き抜ける。風は渦となり、クリスの剣に集まる。
①「風よ。我が身となり、お力をお貸し下さい」
風に身を委ね、高速で剣を繰り出す。コイルはブーメランで防ぐが、簡単に弾かれる。
①「はッ!!」
コイル「おっと…ッ!」
完璧な突きで、コイルを捉えた。
①「なっ…」
はずだった。
だが、刹那にして、コイルは視界から消えてしまう。
コイル「人の目ってもんはさぁ。欠陥だらけなんだよね。知ってたぁかい?」
突如、再び視界に現れたコイルは短剣を両手に握り、クリスに襲いかかる。
①「くっ。魔法使いなのか!?」
コイル「いいや。普通の人間だよ!!」
短剣をどうにか受け止め、後ろに飛び距離をとったクリスは投げつけられた短剣をなんなく避けてみせる。
コイル「早い早い。すご過ぎだって。神剣?だっけソレ?」
腰につけた派手に装飾された剣を抜き、戦闘中とは思えないほど暢気な口調で言う。
①「お前、ほんとに中将なのか…」
とても大軍の中将には見えない。街角の不良少年といったところがお似合いだろう。クリスは武器を変え手の内が詠めないコイルに中々、手を出せずにいる。
>> 432
コイル「あんたのスピード見切るのに苦労しそうだなぁ」
低姿勢で剣を構える。だが、方は荒く剣士としての実力は底が知れているようだ。
①「次は外すことはない。覚悟するんだな」
コイル「おお…こわ」
地面を蹴りだした音が後から聞こえるはどの超高速でコイルの背後をとる。そして、クリスは剣を振る。
①「な…」
だが―――
またしてもコイルの姿はなくなり、剣は宙を斬る。
コイル「人ってのは7割…う?8割だったかな?まぁそんぐらいの割合を目から情報得てるわけなんだわ」
①「ッ…」
真正面から突如、現れ剣撃を浴びせる。クリスはなんとか剣を受け止める。
①「いったい…」
コイル「そんな重要な機関である目なんだけど…目には欠陥がある。そこをついてやればあんた程の剣士ですらこうなっちゃうわけ!」
また視界から消えてしまったコイルを周りを見渡し必死に探す。だが、気配はするものの姿は見えない。
コイル「こっち!こっち!」
①「くっ」
神出鬼没に現れ剣を繰り出されクリスは防戦一方になっている。
コイル「すごいじゃん。これも反応するんだぁ」
①「くそッ」
>> 433
コイル「目ってのは死角があるし、錯覚現象で違うふうに見えたり、目で見ているものなんてほんとうに正しいとは限らない」
剣を交えながらコイルは言う。
①「死角・錯覚だと!?」
コイル「あぁ。そうさ」
また視界から消える。クリスは何を思いたったのか、目を瞑り、ゆっくりと剣を下ろす。
コイル「あら!潔いいじゃんか!」
①「……」
奴が―――
死角をつき姿を消していると言うなら
私は自ら目を封じるまでだ―――
もう惑わされない。
コイル「なっ」
背後からの剣撃を受け止め、クリスは剣にオーラを集中させる。
①「はっ!!」
風は刃となり、コイルの鎧を易々と砕く。そして、数十m先へと強制的に吹き飛ばす。
コイル「っ…目瞑って…逆に動きよくなるってどうよ…くそ」
口から血を流しつつも機敏に態勢を立て直し、追撃をしかけに迫ってくるクリスに立ち向かう。
コイル「ただじゃやられねぇよ!」
①「もうお前の手は通じない!風よ!」
>> 434
①「はぁ!」
コイル「まっ…ぐあぁ」
防御すらゆるさない剣速に当然、コイルは反応できず、腕を斬られ悲鳴を上げ剣をこぼす。
①「チェックメイトだ」
コイル「く…や…やるね」
落とした剣を拾おうとする。だが、クリスは剣を踏みつけ、喉元にその鋭い刃先をつきつける。もちろんコイルは動きを止めた。
①「素直に私の教えて欲しいことを喋ってくれたら…見逃して上げてもいいわ」
コイル「はは。何を聞きたいんだい?」
腕につけられた深い傷からの流血を渋い顔をしながら止血し溜め息混じりに言う。
①「連合軍はほんとうに人間を作っているのか…」
ドグロから聞いた真実のはずなのに
クリスはつい質問してしまう。
真実と認めたくない自分がいるのは確かだった。
コイル「ふ…どこで聞いたか知らないけど真実だよ」
①「お前も…なのか」
信じたくはない
だが――
急成長を遂げた連合軍
あの世界の軍をかき集めても足りぬほどの圧倒的な兵力
否定するにはあまりにも納得する事柄が多すぎる。
これは真実なのだ―――
>> 435
コイル「俺は天然ものだよ。ま…最前線に出ている連合軍のほとんどは養殖もんだけどね」
表情を崩すクリスを見定めるコイルは追い詰められた者とは思えないほど冷静でその内に何かを隠しもっているのか余裕すら感じられる。
①「そうか…まだ聞きたいことはある。パーフェクトは実在するのか?」
コイル「驚いた。あんたらそんな事までつきとめてたなんてさぁ」
①「誤魔化さず!言って!」
コイル「分かった分かったから。そう剣をつきつけないでよ。パーフェクトは存在するよ。ま…まだだけどね」
①「研究はどこまで進んでる!パーフェクトとはなんなんだ!」
コイル「研究の詳細までは俺じゃ分かんないけど…おそらく7~8割のあと一息まで進んでるだろうね。実際、未熟児と呼ばれる生物をこの戦闘にも連れてきているって情報も入ってる」
①「な…ピンタゴ星雲にパーフェクトが来てると言うの!」
コイル「いや…正確にはパーフェクトは全く別のモノだね。ほんとうのパーフェクトなら連合軍すら制御できない怪物だもの」
①「制御できない?連合軍は世界征服するためにパーフェクトを作ってるんじゃ…手に負えないものなんて作ってどおするの…」
>> 436
コイル「その通り、連合軍の目的はあくまでも世界征服だよ。だけど…ドイスの考えは違う。世界の破滅を望んでいるのさ」
予想外のコイルの言葉に耳を疑う。
ドイスはパーフェクトを作り世界を滅ぼそうとしている?
①「ならなぜお前はドイスに従って動いているんだ」
コイツ「面白そうだからさ…パーフェクトが世界を滅ぼす未来がね。少なくとも今の世界よりはより良い世界になる」
①「な」
コイル「完璧な生物(パーフェクト)がこの世界を治める。それが世界にとってもっとも理想的だ」
コイルの血は色を変え形を変え、スライム状のモノへと変化していく。
①「お前たちは間違ってる!パーフェクトを作ろうとしていることも!世界を滅ぼそうとしていることもな!」
コイル「なら!お前の手で連合軍を止めてみな!話は終わりだよ!」
スライム状の液体は一気に体積を膨張させてクリスに覆いかぶさろうと襲ってくる。
①「これは」
コイル「今度は俺の相棒が相手になるぜ!」
ゴオォォォォォ
>> 437
スライム状の液体は触手を無数に出し、クリスに攻撃を仕掛けてきた。右に左にと避けていくにつれコイルとの距離が開いていく。
①「これは…」
コイル「非力の俺がなぜ?中将か知りたいだろ?このマイペットのお陰さ!!!」
スライムに迂闊にも足を取られたクリスは必死に振り払おうとするが、斬っても切れない液体からは逃れられない。
コイル「死ぬ前にいいこと教えてやるよ。あんたらは連合軍には勝てないよ!今までは奇跡で乗り越えてきただろうけど!今度ばかりはそう上手くいかない!」
腕までも触手に封じられ完全に動きを止められたクリスの腹部に鋭く変形したスライムの触手がゆっくり迫ってくる。
コイル「連合軍は宇宙で戦っている宇宙海賊と政府軍もろともX砲で消しさるつもりなんだよね。バカな政府軍に手一杯のあんたらはX砲に呑まれちまうわけ!だから…直ぐ仲間も来てくれるよ!」
触手が腹部を貫こう とした時、閃光が視界をおおった。
コイル「なんだと…」
>> 438
①「風林火山!!」
超回転で触手から逃れ、クリスの斬撃がスライムへと容赦なく降り注ぐ。
コイル「うおぉ!そんなバカな!」
再生すら追いつかない超スピードの斬撃にスライムは押されていく。
①「私たちは連合軍を止めてみせるわ!!」
コイル「あんたらはドイス閣下の理想をなんにもわかちゃねぇんだ~!うおおぉ!」
ピカッ
剣撃は光となり、風ともなった。
そして
場に静寂を与えた。
①「終わった…」
技の反動で膝をつく。度重なる身体の酷使に全身が悲鳴を上げている。このまま戦いを続ければクリスの身は無事ではいられないだろう。だが、戦うのが彼女の運命なのだ。
運命からは逃れられない。
そう。
それが世界の法則。
世界の均衡―――
コイル「っ…やっぱ強ええわ…」
大量の血(スライム)を失い、意識すら朦朧の彼からは死の恐れは感じられなかった。既に回復魔法を唱えようと手遅れの状態である。
>> 439
①「それは…軍の生物兵器か…」
コイルの心臓の鼓動が弱くなるにつけ、残った破片を結合し元に戻ろうとするスライムの動きも悪くなっていく。
コイル「そうだ…パーフェクトの研究の一部…人体実験の犠牲者なわけ…ッ」
①「そんなことまでされて…なぜ…なんで…連合軍側につくんだ…」
コイル「ふ…あんたらには分からない…さ…」
①「間違ってるよ。お前は…間違ってる」
コイルを見つめるその目は敵へと向ける鋭い視線ではなく優しく悲しみに満ちた目だった。
コイル「これから…ほんとうの連合軍の恐ろしさを…あんたは体験するだろう…だけど…意思を強く持つことだ…っ…………」
①「ドイス。お前は私が止める」
誰からも返事は返ってこない。だが、クリスの心からは強い返事があったに違いなかった。
ドイス
人から逸する者
人であって人でない存在
連合軍の指導者
世界を滅ぼそうとする者
クリスの両親を殺した者
クリスにとっても世界にとっても大きな負の存在―――
それが
ドイスだ
>> 440
宇宙での戦闘は激しさを増していた。両軍一歩も引かぬ死闘になっている。実力では上の宇宙海賊だが、数では不良。政府軍も永年の戦いで宇宙海賊との戦い方を身につけており、簡単にはやられてはくれない。苦戦は必至であった。
⑦「ちっ…通信が乱れ合ってやくにたたねぇな」
「ソウダネ マァ リョウグン シキハメチャクチャダ リキセンノセメアイッテヤツダネ」
通信からは絶え間なく幾万もの通信が入り、ノイズにしか聞こえてこない。両軍が放つ妨害電波の影響も大きいようだ。
⑦「なら!俺たちは敵の頭をとりにいくとするか!」
「マタ ムチャヲイウ レンゴウカンタイニ イッキデ ツッコムナンテ キコウダ」
⑦「ゆせぇ!我が道を行く!それがこの俺、凱さまよ!やっほ~!」
シャドーmkⅢは戦闘の真っ只中を何の障害ともせず、高速で突破する。混乱の中、ステルス機能を持ったシャドーmkⅢに防衛線を破られるが政府軍に気づく戦艦はいない。
「ステルスキノウモ レンゴウカンタイニハ ムリョクダトオモウヨ」
⑦「分かってるっての。敵さんのレザーの過ごさはな!」
>> 441
「ワカッテタラ コンナムチャシヨウトハシナイ バカ」
⑦「あ?なんか言ったか?」
「イイエ ナン~ンニモ ゴシュジンサマ」
装甲の強度は従来の三倍を超えると豪語していたナナの姿が凱の脳裏に浮かんでいた。
フルスピードで戦艦に体当たりしてもご自慢の錬金術の超合金には差し障りないと高笑いしていたが―――
⑦「いっちょ…試してみるかな」
シャドーmkⅢ版のガイブレイドを
「ナンカ イツニモマシテ ヤナヨカンナンデスケド」
「潰れたら自信過剰の整備士さん(ナナ)を恨むんだな」
「コンドカラハ セイシキメカ-ニシュウリシテモラウ」
シャドーmkⅢは警告アラームが鳴ると同時に大きく左折し、機体はアクロバットな飛行を始める。
⑦「さっそく。きやがった!この距離からレザーにひかかったか!」
「MMLミサイルサンキカクニン ロックオンサレテルネ」
⑦「このミサイルには慣れっこだっての」
前方からのミサイルをなんとか避ける。だが、ミサイルは直ぐに転回し、後方から再び襲ってくる。
>> 442
⑦「おい!昔よりか性能上がってんじゃね~か!おもしれ!」
スピードでは圧倒的なミサイルに直ぐに追いつかれてしまうが、シャドーmkⅢは凱の巧みな操縦+シャドーのナビゲーションにより、またもミサイルの激突を避ける。
「ヤバイネ サンキガワカレテウゴキハジメタヨ サイキンノミサイルハAIヲツンデルラシイ」
⑦「3方向からのミサイルか…避けきれねぇな」
「シールドオープン ゲキタイホウジュンビカンリョウ タマタカイカラムダウチスルナヨ ガイ」
「分かってら。資金ねぇのはよ…だが!使わねぇのはもったいないだろ!」
「イッパツ イクラスルトオモッテルンダカ」
「え?…そんなに高いのか」
金欠の凱に対しての当て付けで、ナナが面白がってつけたメイン砲がこの銃砲だ。威力はお墨付きだそうだが。
「カルク ガイノイチネンブンノセイカツヒ」
「……マジか」
絶句する凱だが、容赦なくミサイルは襲ってくる。
>> 443
⑦「そんな高けぇ玉…今ある玉はどおしたんだよ!?」
「センベツニ ゴシュルイケイゴコ ナナガクレタカラネ」
⑦「んじゃ…5発まではタダってことだな」
「ダカラッテ ムダニハウカウナヨ キイテルノ ガイ」
「分かってる。分かってるって!よしゃぁ!ぶっぱなすぜ!」
「ダカラ ソレヲワカッテルトハイワナイッテバ」
操縦席の横にパメルが現れ、銃砲の照準が映されている。凱は手前についた短銃型の発射装置を握り、ついている引金を引く。
ズゴオオォォォォ!!!
銃砲から勢いよく放たれた金色の弾丸は四つに別れ、辺りに爆発し、小爆弾を撒き散らす。
ズオン
ズゴン
ゴオオォォォォ
小さな爆破が無数に起こり、もちろん、向かってきたミサイルも巻き込まれる。そして、MML3機分を巻き込む大爆発が起きた。
ドゴオォォォ!!
シャドーmkⅢは爆発を加速源に一気にスピードを上げたのであった。
>> 444
ピッピ
「MMLターゲット爆破確認しました」
「よし。監視を怠るな。政府軍を突破してくるやもしれんからな」
「はっ」
シャドーmkⅢは艦隊のレザー網から消えていた。爆発による範囲に電波障害が起こっているのだろう。運よくも連合軍はシャドーmkⅢを撃墜したと勘違いしてくれたようだ。
⑦「ミサイルはどうだ」
「イマノトコロハ モンダイナシ」
⑦「しゃぁ。この調子で頼むぜ…う!」
ピピ
「サンジノホウガクカラ セントウキセッキン」
大きく旋回し、迫っくるシャドーmkⅢと類似する銀色の戦闘機に背後を取られまいと進路を変えるが、戦闘機は凱の操縦に確りついてくる。
⑦「しつこいやつだぜ。お前はよ」
モニターには戦闘機の操縦士の映像が送られてくる。
凱には見慣れた狐人
砦であった。
砦「よぅ…連合軍と遊ぶ前に俺と遊ぼうや!」
⑦「お前のしつこさときたら世界一だぜ。ったく」
戦闘機からレザー光線が放たれた。シャドーmkⅢは船体を反らし避ける。
砦「最後に残しておきたい言葉は?」
⑦「くたばれこのヤロー!」
砦「貴様らしい最後の言葉だな!死ぬ!」
>> 445
⑦「俺の船を舐めてたら痛い目にあうぜ!砦!」
『ボロ船に遅れなどとらん』
狐人の最先端技術を積んだ戦闘機はシャドーmkⅢに遅れをとるどころか、機能面では上回っている。元々、シャドーmkⅢは狐族(狐人)のシャドーシリーズの戦闘機を改造したものだ。凱がフォックスから逃げる際に停泊船を盗んでウマンダ星から賞金稼ぎの第一歩を歩んだのだが、その時に盗んだ船こそが今のシャドーmkⅢなのだ。シャドーと凱との出会いについてはまた機会があれば触れることもあるだろう―――
レザーをぎりぎりのところで避けながら戦闘機から背後を逆に奪還しようと船体を回転させる。
だが、戦闘機は性能だけではなく操縦士の腕もかなりのもののようだ。砦は簡単に引き払われない。
⑦「シャドー!後方への攻撃砲は無いのかよ!」
「ナイネ カネノカンケイデ ソウビダイブケチッタカラネ」
⑦「おい!なんだ!金が無い俺のせいだって言いたいのかよ!シャドー!」
「スクナカラズハ フルソウビ ハイグレードノソウビナラ アンナキセイヒンセンニマケナインダケドナ」
⑦「っ…しゃねぇ根性だ!根性見せろ!」
「ムチャイウナヨ」
>> 446
狐人での宇宙船話で話題の最新作シャドーSH機に少しずつだが、確実に迫られてくる。このままではレザーの餌食になるのは時間の問題だろう。
2機の宇宙船は連合艦隊が先にあると言うのにお構い無し機体の限界、ブースターに火がつく寸前、フルスピードで飛ばす。
⑦「射撃の腕は相変わらず下手くそな奴だぜ」
『貴様も相変わらずゴキブリ並のすばしっこさには関心するぞ!凱!』
レザーが機体をかすめ、火花を散らしながらシャドーmkⅢは膨大な宇宙での追いかけっこを続ける。
『貴様は昔から逃げることにかけとは誰よりも優れているな。あの時のように《逃げる》だけはな』
⑦「俺は逃げねぇ!もう二度とな!」
『な!!』
シャドーmkⅢは突然ブースターを逆噴射し、急激にスピードを落とす。真後ろにつけていたシャドーSHは慌てて機体を傾け、激突をさける。
⑦「特大の一発くらわしてやれ!シャドー!」
「リョウカイ シャドーシリーズノセンパイトシテマケラレナイカラネ」
ドゴオォォォ!!
急減速で背後をとったシャドーmkⅢの銃砲が火を吹いた。
>> 447
砦「くそっ!ぐ…AI!状態は!」
「キキテイシ システムエラー ゼ ゼンテイシ……」
砦「くそぉ!!覚えておけよ!凱!くそがぁ!あああ!」
発射された弾丸は見事にシャドーSHに命中する。だが、爆発はしない。そのかわりに弾丸から発せられる電磁波により、機体の機器はことごとく破壊されている。もはや船と言うより箱の状態に近い。
⑦「敵さんの船はおだぶつしたようだな」
「マァネ ムダニマタタマヲツカチャッタケド」
シャドーmkⅢは颯爽と立ち往生する戦闘機の横を過ぎると直ぐに砦の視界から消えた。凱がとった奇策は無謀だった。ふつうなら船同時が激突して終わっていた。だが、凱は砦の腕を知っていた上で船を急停止させたのだ。結果は砦は見事に避けた。日頃から無謀な凱とて、砦の操縦技術高さを知らなかったらとてもではないが出来なかっただろう。
>> 448
「今何かレザーに映らなかったか?」
「あぁ、一瞬だったが…」
連合艦隊の最前列にいる長距離レザー監視システムを備えた戦艦のモニターに微かに探知反応が出ている。兵士はレザーの出力を上げ様子を伺う。
「どうした」
「はっ!先ほどの船がいた方角にまた反応が見られまして」
監視室を任されている男は眉間にしわを寄せながらモニターに目をやった。確かにレザーに反応がある。
「MMLで撃墜出来ていなかったのか」
反応は徐々に強くなり、監視室には警戒音が発せられる。
「MML搭載の小型船の発進許可を出す。ただちに抹消せよ」
「はっ」
兵士は機敏に敬礼し通信機のマイクを手にとる。他の兵士も慌ただしく持ち場の仕事につく。
「監視艦より…00123艦応答せよ」
『こちら。00123』
「小型船の出動命令がおりた。目標はDN1508からこちらに移動中…見つけしだい撃墜せよ」
『了解』
艦隊から十数機の小型船が指示された座標へと飛び立つ。小型船は両脇に船体ほどあるMMLミサイルをつけ、小型船らしからぬ火力を備えている。
ゴオオォォォォ
>> 449
シュゴーーッ
⑦「ったく!しつこいやつだぜ砦の野郎はよぉッ!!」
凱は頭をボリボリ掻いた。
PPP
「モシカシテ… オホモダチ…」
⑦「シャドー気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ!然し、あの調子じゃ又仕掛けてくるな…修行時代からしつこいからなぁ…」
ハアと小さく溜め息をついた。
Vi…Vi…
「ガイ レーダーニ スウジュッキノ コガタセンカクニン…」
⑦「流石にステルス走行も限度があるな。まぁ、敵が来たら叩き潰す。さぁ、行くぜシャドーッ!!
コアブースター解放フルスロットル全開!!」
カシャカシャ
「行くぜ!おらーっ!!」
ガチャ
凱は素早くキーボードを打ち込み左右のレバーを引いた。
ゴシューーッ
>> 450
シャド「テキセンタイカラ ミサイルハッシャカクニン セッカクキレイニナッタノニ ボディニコレイジョウキズヲツケナイデヨ ガイ」
⑦「多少傷ものの方がお前らしいぜ!シャドー!んだから気にするな!」
「キニスル キカイノハートハイガイトデリケートナンダヨ」
更に加速し、小型船から発せられたミサイル群を超スピードで突き抜ける。度胸・操縦技術を兼ね備えた無謀な男、または単なるバカにしか出来ない芸当だろう。
⑦「どうだ!見たかよ。今のは際どかったぜ」
「ジサツコウイハ レンタルセンカリテヤッテホシイモンダ」
もちろんミサイル群は転回し、先ほどのMML同様、後方からシャドーmkⅢを襲ってくる。前方には小型船十数機がレザー砲を構え迫ってきている。
⑦「ちょくら暴れるからよ。機体制御たのむぜ!」
「ハイハイ」
ピピピピピピピ
シャドーmkの船内では警戒音が鳴り、超スピード・変則的な操縦に機体が悲鳴を上げている。
>> 453
⑯「きましたか。あちらには行動派がいるようですね」
④「?」
星たちの輝きすらちっぽけに見えるほど連合艦隊の放つ光は強く、宇宙空間すら狭く思えるほど強大である。そんな艦隊に一機の小さな船の光が近づいている。
⑯「ちょうど…暇を持て余していたところです。大戦前の余興にはなるでしょう」
連合艦隊からは警戒音が発せられシャドーmkⅢの接近を全戦艦に知らせている。
④「監視艦は何をしてたんだ!ただの小型船にここまで近づかれるとは!早く撃墜しろ!」
「はっ。直ちに」
勢いを増すシャドーmkⅢに艦隊からの小型戦闘機が迎撃を仕掛けるが一発の弾丸と化したガイブレード状態のシャドーmkⅢは止められない。
「だ…駄目です!バジリス福将軍!艦隊へ突っ込まれます!」
④「何を…世界の連合艦隊が…たかが一機に防衛線を破られるとは…」
艦隊の主砲が火を次々に吹くが、シャドーmkⅢを捉えることはできない。
⑯「面白い…ただ美しいとは言えないか」
その気になれば魔法を放ちシャドーmkⅢを簡単に止められるはずのリードだが、手を出そうとする気配はない。まるで凱の来客を望むかのように何もしない。
>> 454
ゴオオオオオオオ
ピピピピピピピピピ
「イツバラバラニナッテモ オカシクナイネ カミサマオタスケクダサイ」
⑦「泣き言いうんじゃねぇよ!しゃ!あの一番でかいのに突っ込むぜ!」
機体は激しく揺れ機器は甲高い警戒音を上げているが、お構い無しに凱はオーラを注ぎ込む。
「なんとしても止めろ!」
「あの船!自滅する気か!」
⑦「へっぽこ操縦士に捕まるかよ」
戦闘機を巧みにかわし、戦艦への道を切り開く。
⑦「うおぉぉ~!!」
ドガガガガガ
ドガアアァァァ
シャドーmkⅢは減速することなく山と小屋ほどの差がある巨大戦艦へとその小さな機体をぶつける。
ガガガガガガガガカ
⑦「ぐおぉ」
「ギャア コワレル コワレルッテ」
凄まじい衝撃が凱を襲う。
ドガアアァァァ
巨大戦艦の分厚い装甲は鈍い音をあげ、大きく凹む。だが、それでも勢いが止まらないシャドーmkⅢは装甲をぶち破り、その身を艦内へと押し込んだ。
「あの船…か…戦艦に穴を…」
周りを飛ぶ戦闘機からの驚きの声が通信に絶え間なく更新されている。
⑦「くっ…」
ガアガア
ドガアアァァァ
>> 455
グワシャーッ
ドゴゴゴゴーッ
シャドーmkⅢの激突共に戦艦の分厚い装甲は何枚か剥げ落ち火花を散らす。
⑦「シャドー、船の状況はどうだ?」
PPP…
「シールド30%マデテイカ…
マッタク ムチャバカリスル ゴシュジンサマダ…」
⑦「まあ、帰りが大丈夫みてぇだな。行ってくるぜ!」
凱は外に出るハッチに走った。
④「何て、ムチャな奴だ。」
バジリス副将軍は、兵士たちに数名づつの編成を組ませ侵入者を叩くよう命令した。
⑯「面白くなってきましたね。バジリス副将軍!」
リードはデッキのシートで足を組むと、メインパネルで今起こっていることを観戦して楽しんでいた。
(フンッ…この若僧め…鬼才だか何だか知らぬが、余裕たっぷりでいるのも今のうちだ。敵にやられて将軍の座を失脚すればいい。そうすれば、私が将軍の座へ返り咲くのだ!)
バジリス副将軍はそう思いながらマントを翻しデッキの外へ出て行った。
⑯「さあ、ここまで来なさい。私が可愛がってあげましょう。」
リード将軍の目が怪しく光り舌なめずりをした。
⑦「おらおらっ!!凱様のお通りだ!死にたく無い奴は道をあけろッ!!」
凱は走りながら向かってくる兵士たちを次々と薙ぎ倒して行った。
>> 456
「か…かまえ!」
レーザー銃を持った兵士たちが通路を塞ぐように腰を下ろす。援隊が後方から次々に駆けつけ、その兵士たちも同じく臨戦体勢をとる。
⑦「どけ!どけ!じゃまだぜ!」
「ぐはぁ」
何人もの兵士を投げた押し現れた黒装束の剣士は銃を構えた兵隊に躊躇することなく突進してくる。
『撃てぇ!!』
⑦「そんなんで俺を倒せると思ってんのか!」
剣を盾にレーザーなどもろともしない男は兵士を次々に斬り倒していく。瞬く間に防衛線を破られ剣士は負傷した兵士を残し先に行ってしまった。
「部隊が次々に壊滅させられています!」
「えぇい!剣士一人に…」
⑯「戦い方に無駄が多いが…戦闘の才能は並外れたものを持っていますね」
指令室が混乱している中、リードは冷静にモニターに映る凱を見定めていた。その血の気を感じない冷たい目は獣すら恐れをなして逃げ出すことだろう。
軍義「我らが参りましょうか…将軍殿」
戦義「命令とあらば5分以内にあやつの首をお納め致しままするぞ」
⑯「いえ。お前たちは計画通り動きなさい」
軍義「はは」
>> 457
⑦「はぁ!!」
「く…くそ」
大扉の前を塞いでいた最後の一人の兵士を倒すと凱は剣にオーラを注ぐ。周りには何十人もの兵士がうめき声を上げ倒れているが死んでいるものはいない。
⑦「ガイブレ…ん!?」
扉を無理矢理にこじ開けようとした時、ゆっくりと扉が開いていく。
『遠慮せず入りたまえ』
感情が全くこもっていない冷たい口調で男の声が聞こえてきた。
⑦「へっ!気にくわねぇヤローだ」
凱は長い通路の先に見える円形の大きな部屋へと駆け出す。通路の側面の壁にはレーザーガンが備えられているがそれが動く気配はない。
⑦「お望み通りに来てやったぜ!」
中央で背を向けて立っている男に凱は挑発的に言う。
⑯「……」
モニターにあった男の視線はゆっくりと凱へと移される。その冷酷な瞳に凱は一瞬怖じけついたが直ぐに気をだだし剣を構える。
⑦「なんて…ヤローだ…」
身体から自然と汗が出てくる。雷とは別の恐ろしさに凱の身体が微かに震え始める。
⑯「私の魔力放出時に耐えれる者は多くないのだが…流石は大戦の英雄とオジオンが言うわけか」
>> 458
⑯「貴様では私の相手はつとまるまい」
⑦「くっ…」
手をかざされただけで心が凍ってしまいそうになる男の強力な魔力に凱は膝をつく。
以前闘ったキメラ将軍よりも
強く
冷たく
冷酷な力
最強最悪の魔法使いである。
⑯「私の名はリード将軍。死ぬ前に憶えておくがいい」
マントを翻し、魔力の放出を止めたリードは凱を無視し歩いていく。
⑦「ま…待ちやがれ!勝負は…」
悪の魔力の枷から解放された凱はすぐさまリードに斬りかかるが、剣を振ることなく動きを止めた。
⑯「君には実験を協力してもらう。その礼と言ってはなんだが…今は見逃してやろう」
(な…この俺が…睨まれただけで…)
リードの鋭い眼光に睨まれただけで凱は動けなくなった。早くこの冷たい目から逃れたいと凱すら思う。
⑯「この船は10分後爆発する。死にたくなければ早く逃げることだ…だが、その前に実験体をどうにかしないとな」
⑦「う!?」
リードの青白い指先で指す方向には身の毛もよだつ不気味な人形の生物が荒い息をしながらこちらに近づいてきている。
⑯「では…楽しめ」
リードは淡い光に包まれ姿を消す。
>> 459
⑦「なんだよ…あの怪物は」
黒い液体を垂らし、異臭を放ちながらその生物はゆっくりと近づいてくる。
『オマ…エ…を…コロス…!!』
⑦「人語も喋れんのかよ!ブレード!」
剣にオーラをまとい大きく振り切る。剣からは三日月形の衝撃波が放たれる。
しかし、衝撃波はその生物を捉えることなく床を切り裂いた。
⑦「ど…どこいきやがった!」
一瞬にして消えた生物を探すが周りからは気配すらしない。
ギャアアアア
⑦「あっちか!」
絶え間なく兵士の悲鳴が聞こえてくる。
どうやらあの生物が兵士を襲っているようだが。
⑦「なんだか知んねぇが…敵なことは間違いねぇな!」
凱は爆発のことなど忘れ未知との生物と闘うため悲鳴が聴こえる方角へと駆け出した。
>> 460
連合艦隊の中でも一際大きい指令艦のあちこちから黒煙が上がっている。
⑯「指令部はこの艦に移すように伝えろ」
「しょ…将軍!!た…ただちに」
移動魔法で現れたリードはモニターに映る指令艦の船内へと目を向ける。
④「遅かったですな」
⑯「直に見てみたくなったのでね。老いぼれが言う架空の英雄を」
モニターに映される船内の様子は悲惨な ものであった。取り残された兵士たちは次々に殺されていく。
⑯「醜い。あんなものはパーフェクトとは言えない」
④「ですが…戦闘能力は申し分ない」
未熟児は圧倒的な強さで重装備した兵士たちを肉の破片にしていく。その恐ろしさに監視室の兵士の殆どが目を背けている。
④「あとはあの賞金稼ぎと倒せるか…」
⑯「殺られたとしてもこの戦闘データは研究に大いに役に立つだろう」
研究員らしき白衣の男たちはモニターを熱心に見つめ、何かを用紙に書き込みながら歓喜の声を上げている。そんな研究者たちに兵士たちは何とも複雑そうな表情だ。
⑯「では良い実験結果を期待しよう」
モニターには未熟児へと向かう凱が映されていた。
>> 461
「こちら。B隊!指令室、応答願います!応答を…」
全身をプロテクター で保護し、大型の重火器を持った兵士数人は円形に隊列を組み進んでいく。
「隊長、指令室から応答がありません」
「まさか…全滅したのか…」
周りでは無惨な姿とかした兵士と血の海が広がっている。
「しかし!他の船から救援が来てもいいはずです!」
「大声を出すな。敵に気づかれるだろ」
「す…すいません」
彼らは歩調を合わせながらゆっくりと進んでいく。
カチャ
「っ!?」
物音を少しでも耳に捉えると直ぐに重火器をそちらに向ける。
「隊長…これは…剣士がやったんでしょうか」
「いや…傷口が獣に噛まれたような…斬り傷とはまた違う」
カチャ
「では…」
「今は模索するよりもこ……」
「!?」
部隊の隊長らしき兵士は言い終える前に頭が消えてなくなる。
ドサッ
首無しとなった隊長は力なく倒れ込んだ。
「……」
その一瞬の光景に他の者は絶句する。
「て…敵だぁ!」
沈黙を破るように一人の兵士がそう叫び見えぬ敵へと乱射する。
「うおおぉぉ」
他の兵士もつられて辺り構わず乱射していく。
>> 463
⑦「ひでぇな」
無惨な光景と化した艦内を警戒しながら歩く凱は鼻をつく異臭に堪らず鼻を押さえながら進んでいた。
辺りは悲鳴声も止み静まりかえっている。
艦内の生き残りが凱一人しかいないことを告げているようである。
凱には
この時、未熟児と無理に闘う必要はなかったはずだ。
選択肢は沢山あったに違いなかった。
シャドーmkⅢに戻り戦闘から脱出するのも良かったかもしれない。
だが、凱は一目見たあの生物を
そう。つまりは
未熟児と
奴と闘ってみたくなったのだ。
言うなれば
いち生命体である凱は
新な進化を遂げ生まれようとしているパーフェクトと
新な生命体と
本能・野生的に闘ってみたくなったのだ。
つまり、存続をかけた生命同士の闘いの第1幕と言える闘いだろう。
⑦「化物!いつまで隠れてるつもりだ!でてきやがれ!それとも怖じ気づいたか!」
大声出す凱に返事するかのように未熟児の甲高い唸り声が艦内に響く。
⑦「やっとやる気なったようだな。ヘドロヤロー!!」
ギャアアアアアアアアア!!!
>> 464
通路の奥に唸りを上げるものが現れた。
シュバ
シュバ
シュバ
耳鳴りがするような雄叫びを上げ壁を左右瞬時に蹴りながら怪物は凱に近づいて来る。
⑦「来やがったな!化け物!!」
チャキ
背中にクロス状に背負っている黒魔剣と妖刀覇王を同時に抜いた。
いや、圧倒的何かを感じ抜かされたと言っても過言では無かった。ブルっと武者震いをすると凱はしっかり床に足をつき重心を引くくした。
⑦「サラムよ!炎を宿せ!」
ゴオッ
右手の黒魔剣に炎の魔神サラムを宿す。そして、漆黒の鎧にオーラを溜め左手の妖刀覇王にオーラを流し込んだ。
⑦「しゃあっ、行くぜ!!」
シュタン
「おぉぉぉぉぉっ!!!」
気負けしないように雄叫びを挙げ怪物に向かい凱は一直線にジャンプする。
ギャアアアアアアアアアアア!!!
未熟児パーフェクトも更に高く跳躍すると奇声を発し鋭い爪を凱に向け振り下ろした。
ガギィーーン
火花が交差する。
>> 465
⑦「っ…な!?」
凱の身体が軽々と吹き飛ばされる。
完全に受けきった鎌のような奴の爪。
だが、予想以上の衝撃に踏ん張りがきかなくなったのだ。
『コ…ロス!コロス!』
それ程の威力。まともに食らえば大きな風穴が身体に空くだろう。
人間より小さなこの身体で巨人族すら顔負けのパワーを誇る。
⑦「なんちゅうパワーだ」
宙を舞う凱は
やけにスローモーションで見える《ヤツ》の動きを見ていた。
ヤツは空中を自在に移動し襲ってきたのだ。
翼もないのに
空中を泳ぐように
まさに竜人の飛行のように
⑦「くそっ!」
『ギャアアアア!!』
鋭い爪が凱を襲う。
ガシャン
しかし、簡単に殺られる凱ではなかった。空中に舞っていると言うのに飛び抜けた運動能力で身体を回転させ
二本の愛剣を
「ギャアアアア…」
⑦「お返えしだ!」
未熟児にお見舞いする。
⑦「なっ!」
だが、未熟児に傷一つつけることは出来なかった。銀狼・竜人・巨人族の強靭さを兼ね備えた最強ボディには
ただの剣撃では通じないようだ。
「コロス…コロス…オマエヲ」
⑦「へっ。口だけならいくらでもいえるぜぇ」
>> 466
⑦「七重残像剣!」
七人に分裂した凱は剣に炎を宿し未熟児に挑んでいく。
「ギャアアアア!!」
⑦「七重残像阿修羅斬り!!」
七人の凱は一斉に斬りかかった。1撃・2撃・3撃とそれぞれの凱は高速で斬り裂いていく。
右へ左へと衝撃を受け、左右に振られる未熟児は傷口から黒い液体を流しつつも倒れはしない。
⑦「タフなヤローだ」
七重残像を止め、単身となった凱は剣にオーラを注ぎ込む。
「オマ…エノ…チカラハソンナモノ…カ?」
片言で人語を喋るとその溶け落ちていく口を緩め、笑っているような仕草をとった。
すると呪文を唱え始め
⑦「お前…魔法を使うのかよ…」
身体は見るみる内に再生していく。
小人・狐人の魔法能力をも兼ね備えているようである。
「ヘドロマンのくせして洒落たことしやがって!」
大量のオーラを放出し
それを加速源とした凱は未熟児へと突っ込んでいく。
ゴオオォォォォォ!!!
⑦「ガイブレイド~!」
ゴオオォォォォォ!!
>> 467
凄まじい威力で
⑦「うおぉぉ!!」
未熟児へと凱はその身体を預ける。しかし、未熟児の強靭な爪によりガードされ技の威力は完全に無くなってしまう。
スガガガガガガガ
「ソノテイド…クラワナイ」
⑦「あまいぜ!!」
黒魔剣と妖刀覇王を交差させ身体を回転させる。未熟児の爪を弾き、その腹部へと二本の剣がめり込む。
「ギャアアアア!!」
「トルネードガイブレード!!」
七色のオーラを纏い凱は渦と化しありったけの力をぶつける。
スガアァァァァァン~!!
オーラは刃となり
艦内を破壊し
また
未熟児の身体を
斬り裂いていく。
轟音が鳴り響き
閃光が辺りを包む。
シュウウウゥゥゥゥゥ
⑦「はぁ…はぁ…」
『バクハツマデ アト295ビョウデス』
台風の後のように荒れた艦内は煙に包まれ、艦爆発を知らせるアナウンスが虚しく繰り返されている。
「コロス…コロス…オマエヲ…」
そんな中、深い傷を負いさらに醜くくなった未熟児はゆっくりと身体を起こす。
⑦「ほんとタフなヤローだ…っ」
>> 468
『アト275ビョウデス』
⑦「サラムよ剣に炎を宿せ!!」
「ギャアアアア!!」
雄叫び上げ、向かってくる未熟児に凱も果敢に挑んでいく。
既に大半のオーラを使いはたしている。
だが、決して負ける気はしない。
⑦「うりゃ!!」
絶対に
⑦「負けられねぇ!」
男なら勝負には
⑦「絶対にな!!」
黒魔剣と妖刀覇王を巧みに操り、剣術だけで未熟児を押さえ込む。
「ギャアアアア!」
⑦「はぁ!!」
未熟児とて、体力に限界が来ているようだ。先程までとは明らかに動きが鈍い。しかし、それは凱とて同じであった。
⑦「くら…い…やがれ!爆煙阿修羅斬り!!」
力を振り絞り放つ炎の剣撃は
未熟児を
捉え。
ゴオオォォォォォ
「ギャアアアア!!」
炎は爆発となり未熟児を包んだ。
ドガアァァァァ!!
>> 469
⑦「はぁはぁ…」
意思に反し膝をつき呼吸を整える。爆発まで時間が無いのに身体が動いてくれないのだ。
⑦「くそ…ッ」
大技の連発、凱の身体は休息を要求していた。強い睡魔が襲ってくる。
⑦「くそ!くそ!」
頭を左右に振りどうにか睡魔に打ち勝とうとするが徐々に意識が遠退いていく。
(もう…時間がねぇ…やべぇ…)
ゆっくりと
瞼が下がってくる。
爆発のアナウンスが聴こえるが、もはや凱の耳には入っていない。
だが、この時、神の救いか
『ギャアアアア!!』
⑦「っ!?」
皮肉にも倒したはずの未熟児の一撃により、凱の意識は戻る。鎧には鋭い爪後が残る。あと少し深く入っておれば死んでいただろう。
強い痛みは睡魔を簡単に払ってくれた。
⑦「くッ…しつこい…な」
「コロス…コ…ロス」
炎でやけ灰とも言える肉体となった未熟児は生きているとは思えないが確かに動き凱を襲ってきたのだ。
⑦「はぁ!!」
>> 470
⑦「はッ!!」
力を振り絞り、剣を振る。未熟児は剣撃を受け、大きく後退するが、まだ倒れはしない。しかも、また襲いかかってくる。
⑦「ちっ。てめぇの相手はまた今度だ!」
刻々と爆発へのカウントが告げられている。爆発まであと3分を切っている。
未熟児を適当に足払い凱はシャドーmkⅢへと駆け出す。
ドガアァァァァ!!
⑦「なっ!?」
ガガガガガガガガ
まだ爆発まで時間があると言うのに艦内に爆発音が響き大きく揺れる。そして、前方に爆煙が立ち込め、人影が見えるではないか。
新手!?
爆音と共に現れたのは
五本の尻尾もつ狐人
砦「よう。凱。楽しんでるようだな?あぁん?」
砦であった。
船を捨て、一人乗りの脱出機に乗り追いかけてきたようだ。傍らには瓦礫とともに壊れた脱出機がある。どうやら脱出機ごと戦艦に体当りしたようだ。
⑦「しっけぇな!てめぇもよ!」
砦「ここがお前の死に場所だ!死にさらせ!」
『ギャアアアア!!』
背後から迫る未熟児!
前方から迫る狐人!
退路を断たれた凱は足を止め剣を構えた―――
『アト118ビョウデス』
無情にも爆発へのカウントが告げらていく…
>> 471
砦「白歩!!」
剣を素早く抜き、五本の尻尾を大きく広げる。
蹴り出しにより舞い上がる砂埃をまとい
白いオーラ
鋭い牙(剣)
白き虎のごとき、凱へと迫る。
『ノコリ100ビョウデス』
砦「あぁん?」
⑦「っ…!?」
剣が振られる。既に砦のスピードについていけるほど凱には力は残っていなかった
だが…
砦は突然と動きを止める。砦の剣は凱の喉元、寸前である。
砦「なんだ?このアナウンスはよぉ」
剣の冷たさが伝わってくる程の近さで止まった剣に安堵の息を漏らす。
⑦「爆発のカウントダウンだ…」
砦「爆発だと?」
硬直状態の二人の間に割って入ってくるように
「ギャアアアア!!」
未熟児が襲いかかってきた。
砦「なんだ?化物がぁ!!」
素早い動きで顔面に蹴りを浴びせる。のけ反った未熟児へ更に連続して足蹴りを与え倒す。
砦「てめぇみたいな。ゴミは床を這うのがお似合いだぞ。ウジ虫がぁ!!」
「キ…キサマ」
オーラを手に集中し立ち上がろうとする未熟児へ向けられる。
砦「破滅しな!」
ドガアァァァァ~!!
玉となり放たれたオーラはターゲットを飲み込み爆発する。
>> 472
砦「化物が…」
「グウウゥ…」
爆発を直撃した未熟児は黒煙を上げながらゆっくりと起き上がってくる。
肉体が朽ちようと
動く
その姿からは―――
「恐怖」の二文字を砦すら思ったことだろう。
⑦「砦…一時…休戦といかねぇか?」
壁に寄りかかり、息も絶え絶えの凱がゆっくりと近づいてくる未熟児を見つめ言う。
砦「死にかけと?手を組めだと?…笑わせるな」
2発目のオーラ弾を放ちを未熟児を後退させるが、怯むことなく再び起き上がり向かってくる。
⑦「この船は言ってる間に爆発する。見たところ、お前はここから逃げようにも船なしだ…俺の船に乗せてやってもいいぜ…」
砦「つまり…自力で船までゆけぬ貴様を助けろと言うわけか…ふん」
3撃・4撃と連続してオーラ弾を浴びせるが、未熟児は先程のように倒れることなく近づいてくる。
砦「凱。貴様はとことん悪運が強い奴だ。いいだろう。その条件のんでやろう」
砦「だが、覚えておけ…死ぬことにはかわりはない」
⑦「へっ。分かってますよ…じゃ!船まで頼むぜ。砦ちゃん」
砦「っ…」
顔をひきつりながら砦は凱を担ぐのであった―――
>> 473
シュタタタタ…
砦「お前、重てえんだよ!!」
⑦「食い盛りだからな。」
砦「ふざけるな。」
長い通路を走りながら凱に文句を言うとチラッと後ろを見る。
ギャアアアアグルル…
遠くの方から徐々に未熟児の咆哮が近づいて来る。
⑦「シャドーmkⅢに着くまでに、少しでもあの化けもんを遅らせるか。」
砦「んなもん、あるのかよ。だったら、早く出せ。」
⑦「へいへい…」
ゴソゴソ
腰袋から小さい三角の針が出たやつを手一杯に取り出すと全部撒き散らした。
バララララ…
⑦「マキビシ型超小型爆弾だぜ。」
凱はニヤリと笑った。
『ノコリ 75ビョウ…』
無機質な音声が通路に響き渡る。
>> 474
砦「な…」
掠れた声で砦はそうもらした。
ドガアァァァァアアア~!!
⑦「うひょ~」
マキビシ型超小型爆弾は思わく通り、未熟児を爆煙に包んでくれたのはいいのだが…
砦「か…かげんを…」
その小さな見た目からは想像出来ない凄まじい爆発が起こったのだった。凱と砦もまともに爆風を受け、吹き飛ばされてしまう。
砦「ぐふぅ…加減をしらんのか!き…貴様!」
真正面から床に叩きつけられた砦は顔を赤くし、背中に乗る凱に言い寄る。
⑦「お前の足腰が弱えんだ!何こけてんだよ!時間ねぇんだぞ!」
砦「貴様!死にたいようだな!」
一触即発の二人に
『ノコリ60デス』
遠慮することなくタイムリミットは迫っていく。
⑦「お前と心中は死んでもいやだぜ!」
砦「単細胞バカが…心中はそもそも死ぬ意味であって…死んでも嫌だというのは不適切だろう」
⑦「んなの!どぅでもいいだよ!早く船まで連れていきやがれ」
砦「貴様!今の自分の立場が分かっているのか!?口の聞き方を考えろ」
⑦「あぁ!お前に何をきづかわなきゃなんねぇんだ!ぺっぽこ狐!」
砦「なんだと!狼もどき!…つまりは犬だな…犬!犬!犬!」
>> 475
⑦「はぁ?俺が犬ころならお前は…!?」
砦「な!?」
ガガガガガガガガガ
戦艦が大きく左に傾いていく。そして、艦内の電気が落とされ、赤い非常灯に照明が切り変わっていく。どうやら爆発準備のプログラムが働いたようである。原動機であるブースターの地鳴りもなく、制御を失った戦艦は宇宙に流されるまま連合艦隊から離脱していく。
⑦「やべぇな」
砦「ふん。狐人の移動能力を舐めるな。3秒あれば十分だ…場所をゆえ!」
『ノコリ30ビョウデス』
凱は悠長にシャドーmkⅢの場所の経路を説明していく…
『ノコリ15ビョウデス』
砦「分かった…その気に食わん口を閉じておけ…ふん」
もはや動くことすらままならない未熟児だが這いながら近づいてきていた。そんな化物を見下しながら
砦「次、生まれてくる時は…ちっとはマシになるんだな」
そう言い残し、砦はシャドーmkⅢへと走る。
>> 476
『ノコリ 10ビョウマエ…』
カウントダウンが進む。
砦「凱、急ぎやがれっ!!」
⑦「シャドー!ハイパーブースター点火!フルシールド…」
ガチャ
砦「来やがった!!」
ギャルオオオォォォォォッッ
雄叫びを上げながら未熟児が後方に迫って来る。
『ノコリ 5ビョウマエ…』
⑦「慌てんなよ砦…」
素早くボタンを押し左右のレバーを凱は引ひいた。
ガシャン
シャドーmkⅢのブースターが火を噴く。
ズゴオオオオッッ…
その爆風で未熟児は後ろに吹き飛ばされた。
バシューーッ
『ノコリ 3ビョウマエ…』
爆音を上げながら敵鑑から猛スピードで離れいった。
『ノコリ 1ビョウマエ…』
ドゴオオオオオオオオン
カーーーーーッ
戦艦は閃光に飲み込まれ凄まじい爆発を起こした。
砦「ぐわーっ!」
⑦「うおおぉぉっ…」
シャドーmkⅢはその爆風できりもみ状に宇宙へ投げ出された。
>> 477
ザザザザザザザザザ
砂嵐が表示されたモニター。
「いいデータが取れました」
白衣を着た研究員たちが次々と書類を片手に監視室から出ていく。そんな中、一人の年輩の研究員がリード将軍にそう言った。
⑯リード「たかだか…剣士一人も殺せずに爆死とは…パーフェクトには遠く及ばない」
将軍は眉間にしわを寄せ、爆発の最中に脱出した一隻の宇宙船を見つめていた。
「将軍。研究は我らの仕事…貴方は邪魔者を排除して下さればいい。全ては閣下の計画通りに進んでおります」
⑯「その言葉が真なら…気が長い計画だことだ。ハン・ディス博士よ」
ハン博士「くく…我らはこれで…レイカ星で良き報告をお待ちしております」
⑯「……」
去り際、お互い冷たい視線を向ける。その互いの心意を隠したまま…
⑯「余興に飽きた…ゴミ共を消せ」
④バジリス「はっ」
激戦を繰り広げる宇宙海賊・政府軍の両軍に今まさに【死】が送られようとしていた。
連合軍三大兵器の一つ。
X砲。
しかも、数万の艦隊から放たれようとしているのだ。
>> 478
数万のX砲が放たれようとしている。
だが、それに気づいている者はいない。
レッガ「おかしい…上手くいき過ぎてて気味が悪いぞ」
戦況は激戦ながらも宇宙海賊にやや軍配が上がっていた。にも関わらず、連合軍は政府軍を援護することなく、後方で様子を伺っている。誰が見ても何かがあることは明らかであった。
②ハーク「うむ。連合軍の様子を見ようにも敵方の魔法使いに妨害され…その全貌を見ることができぬ」
大賢者ハークですら連合軍の様子を掴めずにいた。
ゴオオオオオオオ
砦「あれは…」
シャドーmkⅢは宇宙海賊艦隊がいる方角へと引き返していた。
その際、目にしたのはX砲を放とうとする艦隊の群れである。
⑦凱「早く知らせねぇと大変なことになっちまう!シャドー!」
「ワカッテルケド ツウシンガコンザツシテ レンラクガトレナイ」
砦「なんて奴らだ。政府軍すら餌(おとり)に使ってたのか」
⑦「こうなったら直接伝えに行くぞ!ブースター焼けきるまで飛ばせぇ!」
妨害電波、通過渋滞、障害が凱の通信を遮っていた…
>> 479
『右辺を制圧、政府軍の動きに乱れが出てきました。このまま攻撃を続けます』
『敵艦、重量戦艦撃破!』
レッガやハークがいるキングジュニアの中央指令部には朗報が絶え間なく入っていた。
レッガ「くうう!なぜだ…すっきりしない!」
だが、指令官であるレッガ隊長は勝利の二文字が離れていっている気にしかなれないでいた。
②ハーク「レッガ隊長。敵方の動きを探るとしようぞ」
レッガ「風の大賢者様…分かりました。直ぐに連合艦隊へ偵察機を!」
②「いや…偵察機を送る暇はあらぬ。連合艦隊へ最も近い戦闘機を向かわせておくれ」
ハークは杖の先に付いた水晶を覗き込み、不穏な何かを必死に探ってはいるが、リード将軍の闇の魔力に遮られ暗闇を映すばかりであった。
レッガ「最も近い船へ通信できるか!」
兵「いえ…回線が…連絡がとれません」
通信兵が度々、交信を試みるが返事はない。
レッガ「無理か!仕方ない!偵察機を…」
②「儂に任せてくれぬか」
レッガ「は…で…ですが…戦闘機は100kmは先ですぞ」
ハークはそう言うと目を閉じた。そして、深く息を吸い呼吸を整える。
>> 480
大賢者であるハークなら普段なら例え惑星が違う遠く離れた人でも心に話しかける事など容易なことである。
だが、今のピンタゴ星雲は闇の魔力に包まれ、魔法の泉(魔法界との連絡口)すら閉ざさている。そんな強力な闇を打ち破って交信するのは安易なことではない。
②「ぬぅ」
ましてや闇の根源の片方、リード将軍が目の前なのだ。
その魔力は絶するものだ。並の魔法使いなら魔法すら使えぬほど暗く憎い闇の中なのだ。
ハークが必死に交信しようとしていた戦闘機の操縦士はキックであった。勿論、キックはそんなことなど知るよちもないのだが。
⑭キック「凱の奴は何処をほっつき歩いてるんだか」
もはや自分のモノにした操縦、戦闘機を巧みに操り次々と政府軍の戦闘機を打ち落としていく。
⑭キック「まぁアイツのことだ。死んではないか」
相変わらずの妨害電波・通信渋滞で通信がとれない通信機のスイッチを入れ、何度もシャドーmkⅢへ連絡を入れが返事はない。
⑭「やはり小型船の電波ではこの戦地では連絡がとれないな。アンテナがついた大型艦でないと駄目か」
>> 481
⑭キック「おっと」
左辺から攻撃をしかけてきた政府軍の小型挺を簡単に足払いお返しにレザー砲を浴びせる。小型挺は爆炎に包まれ宇宙の藻屑と化した。
巨大艦隊同士の撃ち合いの最中を飛び交う中小の宇宙船たちはまた一つ、また一つとその命を落としていく。
⑭「いつの世も戦争か…醜い争いはいつになれば終わるのだ」
地獄絵図。
戦場とは醜き争いの憎悪の生まれる場なのだ。
争いは争いを生む。
多くの者の命を失い。
得られるもどなど何も無いことを誰もが見失っている。
戦争が与えてくれるのは…
唯一、一つ…
滅びなのだ。
キックは戦場の中、思いふけっていた。数百年も生き、平和を心から愛しながら今だに戦場の中にいる。己もまた争いの中の一個体に過ぎないのだ。
⑭「龍神よ。だが、私はいつか世界に平和をもたらしてみせるぞ」
龍神:イース星の神と崇められ、世界に七ついる神々の一人である。別名は破壊神。
>> 482
⑦「見えてきたぞ!」
前方にようやく宇宙海賊と政府軍の交戦を捉える。シャドーmkのブースターは今にも火を吹き出しかねない限界ギリギリで稼働している。
「ガイ ブースターエネルギーリツテイカ ゲイカイダ」
砦「油圧計も振り切ってやがる」
⑦「くそっ!あと少しだってのに」
ブースターがついに火を吹き、速度が急激に低下していく。
砦「船内まで火が回るぞ」
「ソコニショウカキガアル」
砦「なんで…俺様がこんなことをしなきゃならん。く」
砦は消火器を携え船尾へと走っていく。コックピットには制御不能に近い操縦ハンドルを必死に安定させる凱だけとなる。
⑦「く…ナナの奴。エンジンけっちりやがったな!あとでたっぷり請求してやる」
「ガイ ゼンポウカラテキセントウキセッキンチュウ」
⑦「ったく!次から次に!」
政府軍に気づかれ戦闘機数機がこちらに向かってくる。もはや制御するのがやっとのシャドーmkⅢは格好の的以外の何ものでもなかった。
⑦「くっ」
戦闘機から放たれたレザーをまともに受けたシャドーmkⅢは大きく揺れる。だが、錬金術により作られた船体に損傷はないようだ。
>> 483
「アトナンパツモタエレナイヨ」
⑦「分かってらぁ!」
警報が木霊する中、必死に操縦に専念する凱だが、敵戦闘機の機動力から今のシャドーmkⅢでは逃げらることはできない。
砦「ぐお…凱の奴!何をやってやがる!」
再び、レザー砲をくらい大きく船体が揺れる。
⑦「万事休すか…」
敵は旋回してまた向かってくる。だが、今度はレザー砲を収納し船底にMMLミサイルが見てとれる。MMLを直撃すればシャドーmkⅢとてただではすまないのも明白である。
「シールドチャージ エネルギーブソク オープンフカ ウツテナシダネ」
⑦「けっ。シャドー…いい船だったぜお前は」
戦闘機の操縦士がミサイル発射ボタンに手をかける。シャドーmkⅢは制御系統にエネルギーを回しているため、反撃することも逃げることもできず、ただ、向かってくる戦闘機を待つだけであった。
「ガイノウンテンモワルクナカッタヨ」
⑦「クリスにもっと手助けしてやりたかったが、どうやら俺はここまでのようだ…あとは任せた」
凱の視界は光に包まれていく。
ドガアァァァァァン~!!
>> 484
ガガガガガガガガガ
⑦「あの世ってのは意外に揺れるとこなんだな…」
「アノヨネェ セイカクニハジコクカモネェ」
⑦「は!?シャドー!?」
凱は目を精一杯見開いた。
視界は炎に包まれていた。
だが、直ぐに雄大な宇宙へと視野が開ける。
ドガアァァァァァン
爆発したのは敵の戦闘機であった。次々に炎上し爆発してゆく。
『凱。死ぬには早いだろ?』
颯爽と目の前を横切った戦闘機から通信が入る。その戦闘機は巧みにレザー砲を放ち、あっという間に敵を全滅してしまった。
⑦「上手いもんだな」
「アララ イキテルヨウダネ」
数秒後にやっと自分が生きているのを自覚した凱は通信を送り返す。
『何、私は要領が良いのでな』
⑦「キック。礼を言うぜ」
キックが乗る戦闘機は低速で飛行するシャドーmkⅢの回りと飛ぶ。
⑦「キック!連合軍がX砲で俺たちを一掃するつもりだ!俺の船は見ての通りだ…頼む艦隊に知らせを入れてくれ」
『なんだと!?どういう…』
⑦「今は詳しい説明をする時間がねぇ!早く!」
『わ…分かった。任せておけ!』
キックは限界まで加速し、シャドーmkⅢから離れていく。
>> 485
レッガ「大賢者殿」
②「むぅ」
あまりの魔の力の反発に身体をふらつかせたハークをレッガが慌てて、支える。
②「すまぬ。じゃが…船は捉えた。交信できるぞ」
手にも持つ杖の先端についた水晶にはキックが乗る戦闘機が映しだされていた。
膨大な闇の中から手探りで、針の穴を探すようにあまりに困難極まりなかった。
だが、幸いにもキック自身がこちら(宇宙海賊艦隊)に戻ってきたことにより、ハークの手に触れたのだ。
②「キックか…キックだな。敵の動きを探ってほしいのだ」
水晶へと語りかけるハーク。
『ハーク殿!?敵はX砲を放とうとしています!!直ぐに艦隊を撤退させて下さい!』
②「なっなんじゃと」
レッガ「ど…どうなされた?」
ハークとキックの会話が聞こえないレッガが絶句するハークへと問いかける。
②「隊長!直ぐに全艦を黒の惑星へ撤退させるのじゃ!」
レッガ「は?しかし…敵(政府軍)は目の前…背を向け、逃げ出すなど…」
②「連合軍がX砲を放とうとしておるのじゃ!政府軍もろとも儂らを仕留めるつもりじゃ」
レッガ「なっなんと…くっ。た…直ちに!全軍撤退!黒の惑星の大気圏内へ逃げるのだ」
「はっ!」
>> 486
けたたましい警報と共に宇宙海賊艦隊は大きく転回し、黒の惑星へと進路を変える。
交戦の最中、背を向け後退してゆく宇宙海賊を政府軍が見逃すわけもない。この機運に劣勢を打開しようと猛追ともいえる集中放火をしかけてきた。
レッガ「耐えろ!エネルギーを切らしてもかまわん!母星まで持ちこたえろ!」
「イエッサ!!」
後方からの集中放火を受けながらも宇宙海賊艦隊は後退してゆく。艦隊からは射ぬかれた戦艦が次々に散っていく。キングジュニアをはじめとする巨大戦艦(主力艦)の撤退のため、小型中型戦闘機が死力を尽くすも焼け石に水、被害が大きくなるばかりで後方から迫る政府軍の猛追を止められない。
「レッガ隊長!ぜ…前方から未確認の巨大艦が…近づいてきています!」
レッガ「なに!新手か!モニターに映せ!」
「はっ。少々おまちを…大き過ぎて読み込みに時間が…今、表示致します」
レザーマップは巨大戦艦など赤子に見えるほど巨大な何かを感知している。乗組員全員が固唾を飲みモニターを見つめる。
②「敵か味方か…」
“災い”か“幸”か
宇宙海賊の運命は前方から迫りくるものにかかっていた。
>> 487
宇宙すら小さく見える。
雄大なそれは確かにそこに存在していた。
夢、幻と思うほど現実離れした圧倒的な存在。
肉眼ではその全貌を見ることなど到底できそうにないほど…
巨大!
巨大!
巨大!である。
神々の想像物かのように人知を超えたスケール。
だが、実際は人により作られた戦艦であるのだが…
ただでかいだけの戦艦ではない。魂持ち脈々と鼓動し、生ある唯一無二の創造物にして人々の住みかでもある。
レッガ「こ…これは…」
②「長生きはするもんじゃわい」
「おお…お」
敵に追われていることすら忘れてしまうほど宇宙海賊艦隊はその前方にいるそれに見いられている。
レッガ「これがキング」
そう。この圧倒的な存在の名はキング。
世界最大の戦艦。
世界にキングを超える船などありはしない。
他を寄せつけない君臨する王。
まさにふさわしい名キング!
⑱ドグロ「おめえら!宇宙海賊の名が廃るぞ!じきじきに君主様が出向いてやったぞ!」
銀狼の王が乗るキングは悠々と本来あるべき場所、宇宙へと飛び出したのだ。
>> 488
フシューッ
⑱「てめーら!宇宙海賊の凄さってもんを教えてやろうぜ!!」
ドグロは葉巻をくわえたまま舵をとる。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……
⑱「仲間を収納し次第フォースフィールド展開!!」
銀狼兵士「了解!!」
⑱「ふん、連合軍の奴ら政府軍もろとも俺達を葬り去るつもりだろうが、そうはいかねぇぞ。相手の攻撃をフォースフィールドで受け止め数百の各砲門を開くぞ!」
ズゴゴゴゴゴゴゴ……
連合軍艦隊…
兵士「何だ!あの巨大な物は…」
艦長「落ち着け…この連合軍が誇るX砲の前では巨大な建造物と言えど無意味。各鑑エネルギーチャージを急ぐのだ。」
兵士「ハッ!」
……
シュゴーーッ
レッガ「各機、あと少しでキングだ!みんな気合い入れて帰鑑するぞ!」
『おおーっ!!!』
②「然し、凄い船だ…小惑星に匹敵する大きさ…」
長年色々な船を見てきたハークも感嘆の声しか出なかった。
>> 489
軍義「失礼致します!将軍!お知らせが!」
天井には豪華なシャンデリア、床には重厚な赤絨毯、そして、宇宙を360゜展望できる円上の部屋にリード将軍はいた。艦隊の監視室を改造した豪華絢爛の部屋である。その中心にある昇降機(エレベーター)から険しい顔の兵士がやってくるが、リード将軍は至って冷静な表情で兵士に目をくれることもなく、ただ、宇宙を見つめていた。
⑯「なにを恐れているのだ」
軍義「はっ。黒の惑星より、巨大戦艦が…」
不気味な仮面に黒装束のその剣士から感じられるオーラは凄まじく、相当な力の持ち主である。だが、そんな剣士ですらリード将軍の前では赤子のようにか弱く見えてしまう。それほど圧倒的な魔の存在はゆっくりと視線を剣士へと移す。
⑯「あれはキングと呼ばれる戦艦だ。旧世界の遺物に過ぎん」
遠く離れた宇宙海賊 の動きをまるで見えているかのような口調で、リード将軍は再び宇宙へ視線を向ける。そう、常人では何も見えはしないがその見つめる先には宇宙海賊がいるのだ。
⑯「計画には支障ない。X砲を放つのだ」
軍義「はっは」
⑯「私自ら動くとしよう」
>> 490
政府軍艦隊は見守る中、宇宙海賊の艦隊は母艦(キング)へと収納されていく。
レッガ「政府軍の奴ら!キングにびびって手を出せずにおるわ!がっはは!」
圧倒的な存在。
目の前のキングを政府軍はただ見守る。
③セレナ「皆さん無事にキングに入れたようですよ」
⑱「そうかい!なら!いくぜ!」
キングの心臓部にして、操縦室、大きなドーム上の部屋の中央にただ一つある操縦席にドグロはいた。周りにはセレナを初め、リオ、ラ・ドル、クリスと黒の惑星に残ったメンバーもいる。
①クリス「鼓動してるわ。それに暖かい」
壁に耳を当て、キングの確かな脈動を感じたクリスは微笑みながらそう言った。
⑪リオ「ここスゴ過ぎだよ!」
壁にはまるでキングが見ている映像が映し出されており、政府軍艦隊の姿も確認できる。
ラ・ドル「敵方の戦艦もキングからして見れば小さいですね」
ミスチル「おお。我らの母よ」
キングは微かに揺れ初める。と同時にドグロの雄叫びが轟いた。
⑱「しゃあああぁ!フォースフィールド!発動!」
キングから青白い光が放たれてゆく…
>> 491
⑦凱「シャドー!開口してるハッチに入るぜ」
キングへと宇宙海賊艦隊の収納が完了し無数のハッチは役割を終え、次々に閉じてゆく。キング全体も青白く輝き何かの兆候を感じるが、なんとか凱が乗るシャドーmkⅢはハッチが閉じきる前にキングへと入ることが出来そうである。
砦「なんとかもったようだな。このオンボロ船は」
「ワルカッタネ オンボロデ」
船内の壁によりかかり、ブースターの消火作業で煤だらけとなった砦は溜め息混じりにそう言う。
⑦「あぁ。危うくキングに乗り遅れるとこだったぜ」
開口するハッチが目の前に迫ってきた時、突然、シャドーmkⅢの前に船が現れる。
⑦「なっ!ステルス機か!」
砦「慌てるな。俺の仲間だ」
ステルスモードで消えていただろう船はそのシャドーmkⅢと外見が似た船体を露にし、こちらに近づいてくる。シャドーシリーズの最新機、狐人の船である。
『横につけ、連結する。そのままのスピードで移動せよ』
前方で待ち構えていた船から命令的な口調で通信が入る。
>> 492
砦「AI。言う通りにしろ」
シャドー「ハイハイ」
⑦「砦、キングには乗らねぇのか?滅多にない機会だぜ?」
砦「ふん。貴様とは敵なのだ!一時休戦もここまで…今日は疲れた…見逃してやる」
砦は鋭い眼光で凱を一瞥し、連結し横についた迎えの船へと去ってく。
船は砦を乗せ終えるとあっけないほど何もすることなく離れていった。
⑦「今日はやけに素直に引きやがったな。よし!シャドー!早いとこキングに入るぜ」
シャドー「リョウカイ」
シャドーmkⅢはハッチが閉まるぎらぎりのところでキングへと船体を納めたのであった。
砦「何がおかしい」
銀色に輝くシャドーsXはスピードを上げ、キングは徐々に小さくなってゆく。
鳥「凱をまた殺りそこなったか。ははははは!くっく~笑えるな!」
船を操縦する狐人は大声で笑う。
砦「奴の運が良かっただけのこと」
砦は体裁悪そうに目を反らし、座席へと腰を下ろした。
鳥「ふふ。お前も素直に凱の方が強いって認めればいいのにな」
砦「な!俺様は凱より強い!」
砦は煤だらの服を脱ぎ捨て、乱暴に新たな服に着替えていく。
砦「冷静沈着のお前は凱のことになると感情的になるよな。はっはは」
>> 493
番外編
【未来へ】
小さな小屋の煙突から白い煙が上がっている。町から遠く離れた辺境の地だが、どうやら人が住んでいるようだ。小屋の脇に置かれた椅子には一人の老人が座っていた。
「今日も平和じゃな」
見渡すかぎり、林や湖、周りには小屋以外の人口物はなにもない。老人は椅子から立ち上がると欠伸とともに大きく背筋を伸ばす。
老人は70歳ぐらいだろうか。
白髪に顔には深い皺、長年の月日を感じさせられる。だが、肉体は若者も顔負けの筋肉質である。
「お?来客とは珍しい」
静寂な辺りの雰囲気を破るように小屋の頭上を一機の小型挺が通り過ぎていった。
老人は傍らに置いた奇妙な形の剣と神秘的な雰囲気を放つ剣の二本を手にとり、手慣れた動きで背中に背負う。
ゴオォォォォォ
小型挺はスピードを落とし転回すると、また小屋の方へとやってきた。
小型挺はメタリックな船体の銀色に輝く戦闘機である。大戦が終わり、平和となった今では戦闘機を見る機会が随分と減っていた。そのことはに老人は少なかなず寂しさを覚えていたが、なにもにも代えられない平和ほど喜ばしいことはない。
>> 494
【未来へ】
小型挺は今度は通り過ぎることなく、小屋の前に切り開かれた空地にゆっくりと着陸する。その際の風圧で危うく小屋の屋根が吹き飛ばされそうになった。
「儂の家を壊す気か。まったく」
老人はやれやれと言った具合に無事な小屋を一瞥し着陸した小型挺のハッチが開くのを待つ。
「じぃちゃん!地震だぁ~!」
「心配せんでいい。風圧で揺れただけじゃよ」
小屋からは一人の子供が飛び出してきた。4・5歳だろうか、剣士ごっこのつもりか腰には剣を携えている。
「す!!すげぇ!戦闘機だ!初めてみたぜ!」
はしゃぎ出す子供に老人は溜め息をつくもどこか嬉しそうである。子供が周りを走り回る中、小型挺のハッチが開いていく。
「久しぶりじゃな」
「大戦の後、姿をくらまし…今はこんなところに住んでいるとはな」
ハッチから出てきた男は腰に剣を携え、狐のような五本を尻尾がある。男は年老いた老人を金色の鋭い眼光で睨み付けた。
「大戦が終わり、約30年かの。と言うことは30年振りの再開じゃな」
老人はそんな狐人と呼ばれるウマンダ星の狐族の男の態度を気にすることもなく小屋へ入るように促す。
>> 495
【未来へ】
小屋の中は外見と同じく質素で、簡単な木製の机に椅子が置かれいた。老人は椅子に腰を下ろすが、狐人の男は座ることなく壁に寄りかかり、老人を見つめる。
「どうした?儂と殺りにきたんじゃないのかのぅ?」
老人は暢気な口調でそう言うと机に置かれた干し葡萄の粒を一つ手にとり口に運んだ。
「ふん。老いた貴様の様子を見にきただけだ…弱った貴様とやりあう気にもなれん」
狐人は窓越しに小型挺を触ってみたり眺めてみたりする子供を見つめている。
「年はとったが。まだまだ現役じゃわい。ほっほ」
胸を張り、勢いよく叩く。強く叩き過ぎたのか、老人はむせながら苦笑いして見せた。
「人間の血が混ざり、人間族の寿命に近いわけか。これだから人間は嫌いなのだ…直ぐ老いて死ぬわりには数が多い」
狐人は昔、老人と死闘を繰り広げていた砦と呼ばれる男である。外見は二十歳程度に見えるが、目の前にいる老人と年は大して変わらない。
「ほっほ。お主ら狐人には分からじゃれうが老うのもまた一興なんじゃ。身体がゆうこときかんのは不便じゃがの」
軽快に笑う老人からは
《老い》という言葉すら遠退いて見える。
>> 496
【未来へ】
「あのガキはお前の子供か?」
シャドーシリーズと呼ばれる狐族の小型挺の上に馬乗りする子供を指差す。
「いや。儂の娘の子じゃ。枠と言うんじゃが、誰に似たのか落ち着きがなくて困っとる」
狐人は微かな笑みを浮かべ、直ぐに強張ったいつもの表情に戻る。老人の言葉の返事に「お前に似たんだ」とあえて口には出さなかった。
「強いな。あの年で大したオーラだ」
「じゃろう!なんせ儂が鍛えておるからの」
孫である枠を誉められ素直喜ぶ老人からは枠に対する深い愛情が伺えた。
「さぁて…本題に入ろうかの?お前さんがただ世間話をしにきただけじゃあるまい」
「もちろんだ。牙の折れた狼に会いにくるほど暇ではない」
狐人の男の目は鋭い眼光から友を思う優しい目へと変わっていた。友の身の危険を知らせ遥々、ウマンダ星からやってきたのだから…
>> 497
【未来へ】
「ファックス様の予言を伝えにきた」
重い口調で狐人は言った。ファックスとは老人の剣術の師匠にして、狐人の長のことである。
「貴様は再び、戦闘に出ることになる。大戦の英雄が集い、再び、世界を救うであろう。だが、貴様は…」
「言わんでよい。最近、血が騒いで仕方なかったんじゃ。戦いが近いことは分かっておった。この老体、戦いに出ればどうなることも分かっとる」
狐人の言葉を老人は遮る。狐人は複雑な気持で老人をしばらく見つめ、口を開いた。
「大戦が終わり、直ぐは連合軍の残党が残ってはいたが、今となっては世界最強の軍力だったフラク星雲には統一された軍は何一つない。細々とした国があるだけ、過去の過ちから軍隊すら持たぬ国が大半だ」
狐人は淡々と続ける。
「他の惑星も大戦時代に比べれば軍事力はかなり落ちている。平和で本来なら良いことなのだが、今はそれが裏目に出ようとしている」
老人はただ目を瞑って話に聞きいっている。
>> 498
【未知へ】
「力の落ちた世界に新たな驚異が迫っているのだ」
「新たな驚異とな?」
老人は目を見開き、真剣な表情で狐人を見つめる。
「未知の惑星からの侵略…今は何も分からん。ファックス様の夢の中の話だからな」
狐人は壁にもたれかかるのを止め、小屋の扉に手をかけ、立ち止まる。
「俺様が貴様を殺す。その時がくるまで…誰にも殺られるんじゃないぞ」
「相変わらずじゃのぅ。どんな未知なる敵じゃろうと儂は負けんよ」
狐人は最後に何か言いだけに口を動かしたが、言葉を発する前に気が変わり、それ以上何も言うことなく小屋から出ていった。
「……」
老人は小屋から出て見送ることはせず、椅子に座ったまま思いにふけっていた。
「ガキ。邪魔だ!死にたくなかったらさっさとどけ」
小型挺の周りをうろつく枠に狐人は殺気に満ちた視線を送る。枠は咄嗟に狐人と距離をとり、剣を抜き構える。
「あんた。じぃちゃんとはどんな関係だよ!」
「ふん。敵同士…だった…昔の話だ」
狐人が小型挺に近づくと自動で閉じていたハッチが開く。
>> 499
【未来へ】
「じいさんを大切にな」
「え!?」
身構える枠は狐人の予想外の言葉に困惑する。
狐人はそんな枠を相手にすることなく早々と小型挺に乗り込んでいく。
「あ!俺と勝負しろ!あんた!強そうだし…おっおい!逃げるなぁ~!」
枠が叫ぶ中、轟音を響かせ、小型挺は去っていく。
「またの」
老人はそんな戦友を遠目から見送っていた。
狐人はウマンダ星へと帰還するため、コスモワープに入っていく。
「凱。次合う時は地獄でないことを祈ってるぜ」
本当はあそこに残り、近い将来起こるであろう戦いに老人と共に戦うつもりであったが、年老いてもなお、強い心を見てその必要がないと狐人は思ったのだ。それに力強い孫もいた。
凱ならば
再び、世界を救い。
無事に帰ってくるだろうと…砦は思うのであった。
【終】
本編は
話つく③へ…続きます。
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