ある日の藍沢みき
あれー?
ちょっとコンビニで立ち読みしてたら、出勤時間に遅れちゃった。
まぁいいよね。
たったの10分くらいだし。
タイムカードを押し忘れちゃったってことで。
さぁ。
お仕事お仕事。
14/12/01 16:14 追記
「ため息はつかない!」に登場した藍沢さんの短編です。
ご感想は「ため息はつかない!」感想スレにお願いします( ´ ▽ ` )ノ
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「あ、藍沢さん。おはよう」
着替えてロッカールームから出たところで、営業部の赤城さんに声をかけられた。
「おはよう」
とりあえず挨拶。
赤城さんは営業部の人なんだけど、まぁ普通の人だから、それなりに仲良くしておこうかな、という程度の付き合い。
もう33歳だから、まだ27歳の私とはちょっと話が合わないんだけど、ランチくらいなら誘ってあげようかな、って思う。
前は私も同じ営業部にいて、そのときはちょっと意地悪されたりしたけど、黒田さんっていう優しい営業さんが私を庇ってくれたこともあって、いまの総務部へ移ることになった。
そのときはその黒田さんにちょっと憧れてたから、黒田さんのためにも私が我慢すればいいんだって思って、大人しく異動したんだった。
だから、赤城さんとも仲良くしてあげないと悪いかなって。
赤城さんがちゃんと仕事を教えてくれなかったりしたから、私も苦労したんだけど、赤城さんはエライ人に取り入るのが上手くて腹が立つ。
ちゃっかり正社員になっちゃって、取引先の人からチヤホヤされていい気になってるみたい。
もうオバサンのくせに。
「赤城さん、いいよ」
小さい会議室のドアが開いて、営業部の部長が赤城さんを呼んだ。
「はい、すみません」
赤城さんは「じゃね」と言って、部長がいるその部屋へ入っていった。
………なんだろう。
なんか、秘密っぽいニオイがする。
ちょっと気になるな。
「………」
「………で……です」
部長と赤城さんのいる部屋のドアを細く開けると、話し声が聞こえてきた。
「で、挙式はいつ?」
「10月の予定です」
キョシキ?!
………キョシキ、って、なんだろ。
「仲人はたてないんですけど、青木さんはX機材の部長さんを主賓でお呼びするんで、部長にも私側の主賓としてご出席いただきたいんです」
「いいよ、喜んで出席させてもらうよ」
「ありがとうございます」
「それにしても、赤木さんと青木くんが結婚か。彼は優しいから、いいダンナになりそうだね」
「今度本人に言ってあげてください」
………これって。
もしかして。
えー?!
赤城さんと、X機材の青木さんが。
結婚するってこと?!
ウソ!
そんなの、初耳!
どういうことなのよ!
「ねー、知ってる?」
総務部に戻って、さっき聞いた赤城さんのことを女の人を選んで話した。
「え?藍沢さん、2人が付き合ってること知らなかったの?」
3人に話して、3人からそんな返事。
みんな知ってたの?
私は知らない!
しょっちゅうランチに誘ってあげてるのに、私には教えてくれなかった。
ひどい。
友達だと思ってたのに!
しかも、赤城さんと年の近い人は、とっくに2人が結婚するってことまで知っていた。
どうして私には教えてくれなかったの?
私が青木さんファンだって、赤城さんが一番よく知ってるはずなのに!
赤城さんがそんな抜け駆けをするなんて思わなかった。
もうずいぶん前から青木さんにメールしたりしてるけど、どうもツレないと思ったら………。
赤城さんが私の邪魔をしてたなんて!
私はまだ27歳で、男の人にモテるほうだから、赤城さんが私にヤキモチ妬いてるのは知ってたけど。
そりゃ赤城さんはもうオバサンだから、結婚焦るのも分かるけど。
だからって、私の邪魔をすることないのに!
いい人だと思ってたけど、やっぱりうわべだけだったんだ。
だから女ってイヤなのよ。
「なんで教えてくれなかったの?」
悲しくなって、私は赤城さんの仲間のオバサンにそう言った(この人も31歳だからオバサンだ)。
「え?だって、聞かれもしないのに、わざわざそんな話はしないでしょ」
しれっとした顔でオバサンはそう言った。
「だってみんな知ってて、私だけ知らないなんて、仲間はずれみたいじゃない」
「そんなことで仲間はずれって言わないでしょ」
オバサンはそう言って笑った。
「じゃあなんで知ってるの?」
「赤城さんから聞いたからだけど?」
「私は聞いてないもん」
「あんまり噂にしたくないから、ペラペラあちこちで言わなかっただけじゃないの?」
「普通、そんな大事なことなら、私にも言ってくれるはずなのに」
悔しくて、少し泣きそうな気分でそう言ったのに、オバサンは「はい、総務です」とか言って内線電話に出てしまった。
みんなで隠し事なんて、ひどい!
………でも、もしかしたら。
私が青木さんのファンってことはみんな知ってるから、赤城さんに意地悪されて、青木さんを横取りされた私が可哀想だと思って、みんな黙ってたのかもしれない。
私が遅刻したって、ちょっとだけミスをしたって、うっかり土曜出勤を忘れちゃったって、誰も私を叱らないもん。
みんなして、私を気遣ってくれたんだ。
じゃあ、文句を言うのは。
本人だ!
「赤城さん、お昼いきましょうよ」
お昼休みを待って、私は営業部までいって赤城さんを誘った。
「いいよ」
私が傷ついて怒ってることをグッとこらえて言ったから、赤城さんはいつもと同じ態度だった。
会社を出て、いつものファミレスに。
赤城さんが日替わりパスタにしたから、本当は私もパスタが良かったんだけど、なんかムカついて私は普通の日替わりランチにした。
「ねー、赤城さん。ちょっと小耳に挟んだんだけど、結婚するってホント?」
料理がきて食べ始めたところで私がそう言うと、赤城さんは「うん」と言った。
『今日は天気がいいね』『うん』みたいな、なんかフツーの答え。
私が青木さんのこと好きなこと知ってるクセに!
いき遅れのオバサンのクセに!
私の冷静で鋭い指摘に、もっと驚いたり、恥ずかしがったりするとこじゃないの?!
なんか、なんか。
なんか!
ムカつく!
「X機材の青木さんなんでしょ?」
「うん」
「いつから付き合ってたの?」
「1年ちょっと前」
「なんで教えてくれなかったの?」
「聞かれなかったから」
………赤城さんみたいなパッとしない年増に彼氏なんかいるわけないと思ってたから、可哀想で彼氏がいるかどうかなんて聞けなかっただけなんだけど。
「赤城さん、私が青木さんのこと好きだったの、知ってたじゃない。それなのに青木さんと内緒で付き合うなんて、酷くない?」
赤城さんはパスタをフォークに巻きつける手を止めて、ポカンとした顔で私を見た。
「藍沢さん、2~3ヶ月前に彼氏できた、って言ってたじゃない。ほら、六本木で合コンするんだって言ってて。広告代理店の人だったよね。で、去年は違う人と付き合ってたよね?歯医者さんとか言ってなかったっけ?」
「なんで赤城さんがそんなこと知ってるのよ」
「………えっ?………藍沢さんがここで話したんじゃない」
………覚えて、ない。
私、口は堅い方なのに、彼氏のいない年増の赤城さんにそんなこと話したり………、してたかなぁ?
あ、そうだ。思い出した。
広告代理店の人。
あれ、○○堂とかの大手かと思ってたら、本当は地方の求人広告の会社の人だってすぐに分かったから、付き合うのなんて止めたんだった。
で、歯医者。
確かに付き合ってた。
見た目はイマイチだったけど、歯医者で優しかったから。
開業してるって聞いたし。
聞いたことは全部本当だったんだけど………。
こっそりその彼の歯科医院を覗きに行ったら、なんか、古くて汚いビルで。
待合室見たら、患者さんなんて1人もいなくて。
彼を知ってる人にそのことを聞いたら、借金して開業したのはいいけど、もう何年も全然流行ってなくて、借金が増えてる、って言われた。
それじゃ、歯医者と付き合ってる意味ない!
赤城さんには、ちょっと私を羨ましがってもらって、それがいい刺激になるかと思って、わざわざ教えてあげたんだった。
多少その場のノリで、話は盛ったかな?刺激は強い方がいいしね。
結局、その2人とはちょっとしか付き合ってないし、変なのに運悪く引っかかっちゃった、って感じだったから、やっぱり青木さんみたいにオトナでちゃんとした会社に勤めてる人がイイ、って最近思いなおしたとこなんだ。
もう。
私ったら、傷付きやすいからイヤなことはすぐに忘れちゃうんだよね。
「赤城さんて、結構素早いんだね。まぁ30歳過ぎてるんだから、焦らなくちゃいけないよね」
私は広ーい気持ちでそう言った。
赤城さんはさすがに恥ずかしいのか、苦笑いみたいな顔をしてる。
最近、私が青木さん以外の男の人と、ちょっとだけ色々あった隙を狙うなんて、年増のクセに図々しいな、とは思うけど、私と違って赤城さんなら、チャンスがあったら必死にならないと結婚できなさそうだもんね。
また青木さんと仲良くしようと思ってたとこだったから、抜け駆けされてホントはちょっと不愉快なんだけど、青木さんは照れ屋さんなのか、なかなか私を誘ってくれない感じだったし、ここは気持ちよく譲ってあげようかな。
っていうのも、最近ちょっと気になる人がいるから♡
「ところでさ、営業部にこないだからいる営業さんなんだけどさ」
「T営業所から異動してきた灰原さんでしょ」
「彼女、いるのかなぁ?」
「………今度は灰原さんなの?本人に聞けばいいじゃない。そんなプライベートなこと、私は知らないよ」
赤城さんはそれ以上灰原さんのことは話してくれなかった。
きっと赤城さん、悔しいんだ。
だって。
灰原さんて、すごくカッコいいんだもん!
赤城さんが教えてくれなくたって、基本情報はリサーチ済み!
灰原 一臣さん。32歳。
3年前に中途採用されて、ずっとT営業所勤務だったけど、最近本社勤務になった。
噂によると、趣味はテニス。
身長はそんなに高くないけど、バランスのとれた、スポーツマンらしい体型。
なにより顔が。
この間女優と結婚した俳優に似てて、とにかくカッコいい!
営業なんだけど、T営業所でも1番くらいに売上を持ってた人らしい。
今度こそ、正真正銘、私にピッタリの素敵な人だと思う!
青木さんなんか目じゃないもん!
灰原さんが独身なのは確認済み。
閲覧禁止の人事ファイル、ちょっとだけ見させてもらったから。
東京23区西部でひとり暮らしなのもチェックしたし。
午後、私は書類を届けに営業部へいった。
噂をすれば!
総務へ戻るときに、灰原さんが休憩室へ入っていくのが見えた。
これはチャンス。
灰原さんは休憩室の自動販売機で飲み物を買っていた。
「お疲れ様でーす」
私がさり気なく声をかけると、灰原さんは振り返って爽やかに笑った。
「お疲れ様。えーと、総務の……」
「総務の藍沢です。藍沢みきっていいます」
「この間、伝票届けてくれたよね」
「はい!」
ちゃんと覚えててくれてる。
経理担当の子が届ける伝票、灰原さんに渡すやつだって聞いて、先回りして届けた甲斐があったみたい。
「藍沢さんて、赤城さんと仲がいいよね」
「はい、まぁ」
………どうしてここで赤城さんの名前が出てくるのよ。
「赤城さんて、X機材の青木さんと付き合ってるってホント?」
「結婚するらしいですよ」
灰原さんたら、あんな年増に興味があるの?
冗談じゃない。
赤城さんはもう結婚するんだから、やめといた方がいいって。
「青木さんてもう40歳くらいだよね。赤城さん、年上が好きなのかな」
「どうなんでしょうね」
「でもさぁ、同僚なんだから食事くらい誘ってもいいよな。………そうだ。藍沢さん、赤城さんと仲がいいなら、藍沢さんが誘ってみてよ。ご馳走するからさ」
………どういう、こと?
なんで私が赤城さんを誘わなくちゃいけないの?
…………。
そうか。
灰原さんたら、いきなり私みたいにハイスペックな女の子を誘うのが恥ずかしいから、赤城さんを利用したのかも。
青木さんもそうだったじゃない。
まぁ、青木さんは結局赤城さんに抜け駆けされちゃったんだけど。
今度は同じ失敗はしない!
「いいですねぇ。じゃあ、LINEのID交換しましょうよ。赤城さんに聞いて、私から連絡します」
「よろしくね」
灰原さんはそう言うと、喫煙室に入って行った。
タバコ吸うんだ。
あんまりタバコ吸う人は好きじゃないんだけど、灰原さんならカッコいいから許しちゃう。
でも、やったぁ。
灰原さんのIDゲット~。
普通に考えたら、婚約者がいる年増の赤城さんより、若くて可愛い私目当てに決まってるよね。
赤城さんに青木さんを気持ちよく譲ってあげたんだもん、今度は赤城さんが私に協力する番よね!
年増の赤城さんが結婚できるのは、私のお陰みたいなものなんだもん。
さっそく赤城さんを誘わなくっちゃ。
でもなぁ。
赤城さんて真面目そうだし、誘ってもきてくれないかも。
誘い方を工夫しなくっちゃダメかな。
そうだ。
赤城さんは親切ぶりたいところがあるから、それを利用すればいいかも。
私は3時のお茶の時間を狙って給湯室にいった。
思った通り、今週お茶当番の赤城さんが、コーヒーメーカーの手入れをしていた。
「ねー、赤城さん」
「あ、藍沢さん。なに?」
赤城さんはチラっと私を見て、洗い物の手は止めずに言った。
「灰原さんから食事に誘われたんだけど………、いきなり2人きりだと緊張しちゃうから、赤城さんも一緒にいってくれない?」
「えー?やぁよ、お邪魔虫みたいで」
「そんなことないわよ。ねー、お願い。協力してぇ」
上目遣いで赤城さんを見てみる。
「赤城さんしか頼める人がいないのよ」
「もっと若い子のほうがいいんじゃないの?」
「頼りになるのは赤城さんだもん。実はもう灰原さんにも赤城さんと一緒なら、って言っちゃったの」
なんか少し灰原さんが言ったこととは違ってるけど、まぁだいたい同じだよね。
赤城さんは片付けをしながら考えているみたいだったけど、最後には「分かった。いいよ」と言ってくれた。
赤城さんはなんだかんだ言っても、仕事でも頼ると手伝ってくれたりすることが多いもんね。
もー、私ったら、甘え上手!
さ、LINE、LINE。
総務部に戻ってさっそく灰原さんへLINEを送る。
>>赤城さん、オッケーですって
すると、5分もしないで灰原さんから返事。
>>本当?さすが藍沢さんだね。さっそくだけど今日空いてないかな?
えぇ?
今日?
灰原さんたらせっかち。
それだけ早く私と会いたいのかも。
>>赤城さんに聞いてみますね
いきなり今晩なんて、ちょっとオドロキだけど、赤城さんの気が変わらないうちにセッティングするのも悪くないかも。
私はオバさん先輩にジーッと見られていたけど、大事な用事だし、おトイレにいくフリをして、また営業部へいった。
「赤城さん」
営業部を覗いて手招きすると、赤城さんが廊下に出てきてくれた。
「えっ、今夜?」
やっぱり赤城さんも驚いている。
「ダメ〜?」
みんなイチコロ、必殺上目使いでそう言うと、赤城さんは少し考えて
「………まぁ別に予定もないし。いいよ」
そう言ってくれた。
「ありがとー、赤城さん!」
嬉しくて、つい赤城さんに抱きつくと、赤城さんは「はいはい」と苦笑いした。
もー、赤城さんもいいとこあるじゃん!
冴えない年増だけど、親切なのは赤城さんの長所なのかも。
まぁそのくらい周りに気を遣うくらいじゃないと、年増はやってけないのかもね。
ゼンは急げ。
……って俳句があったっけ?
字はよくわからないけど、なんとなくいいことは早くぅ、ってことだよね。
総務へ戻りながら、灰原さんへまたLINE。
>>赤城さんも今夜空いてるって♡
ハートつけちゃったりして。
>>良かった。本当に赤城さんと仲がいいんだね
返信、早っ。
午後から営業に出てるはずなのに、それだけ待ち遠しく思ってくれてたのね。
>>仲良しなんですよ〜
>>俺ひとりだと緊張しちゃうから、桃井も誘いたいんだけど、いい?
桃井さん………。
営業部の、………どんな人だっけ?
黒田さんが指導してる、若い営業さんなのは知ってるけど、イマイチ覚えてない。
そう、カッコいい人じゃないのは確か。
でも、灰原さんは仲良しなのね。
>>ゼンゼンいいですよー
>>ありがとう♪
そして灰原さんから7時に池袋で待ち合わせときた。
わー。
灰原さんはどんなところへ連れて行ってくれるのかな。
楽しみ!
今日は朝からなんとなくウキウキした気分だったから、お気に入りのワンピース着てきたんだよね。
ウキウキの予感はこのことだったんだ。
うー。
早くお仕事終わらないかな。
時計の針が止まってるみたい。
あ。
赤城さんに知らせにいかなくっちゃ!
楽しみで、仕事なんて手に付かない感じで、やっと5時半に仕事が終わった。
5時ピッタリにタイムカードを押して、さっさと更衣室で着替えて、念入りにメイク直しをしていたら、5時を10分も過ぎて赤城さんが入ってきた。
「もー、赤城さん、おそーい」
「終業5分前に電話でつかまっちゃって」
赤城さんはそう言いながら制服から私服に着替えた。
今日の赤城さんのファッションは、クリーム色のニットの中にブラウス、落ち着いたブルーグレーのスカート。
ふんふん。
物はそれなりに悪くなさそうだけど、やっぱり地味!
それでも、最後に可愛い花のついたペンダントを付けたら、まぁそれなりに華やかにはなった。
「そのペンダント可愛いね」
「あ、そう?」
お世辞で誉めたら、赤城さんがはにかんだ。
む。
これはきっと、青木さんからのプレゼントね!
こういうことには勘がますます冴えるんだから!
赤城さんのメイク直しは簡単みたいで、すぐに支度が終わった。
赤城さんと一緒に会社を出た。
「まだ早いよね」
電車に乗り、池袋が近付いてきたけど、時間はまだ6時20分。
私は赤城さんとお茶を飲んで時間を潰した。
赤城さんに青木さんとのこと、いろいろ聞いてみたんだけど、どうも赤城さんはノリが悪くて、あんまり面白いことは聞けなかった。
せっかくノロけ話を聞いてあげようと思ったのにな。
約束の7時5分前に私と赤城さんは待ち合わせ場所のT銀行前に行った。
「あぁ、よかった。本当に来てくれた」
私と赤城さんを見つけた灰原さんが駆け寄ってきた。
赤城さんに向かって笑いかけてるような気がするのは、気のせいよね。
「お疲れ様です。桃井さん、今日は栃木だったのにお疲れじゃないですか?」
赤城さんは桃井さんに向かってそう言った。
桃井さんて、あいかわらずぼんやりした印象の人だな。
赤城さんたら、灰原さんの前だからって、冴えない桃井さんに優しいこと言って点数稼ぎ?
あざとーい。
青木さんと結婚するくせに、まだ男の人から好かれたいって思ってるのは、年増の本能なのかしら。
ま。私みたいに素で可愛い若い女の子なら、そんな小細工しなくったって、男の人はみんな優しくしてくれるけど。
「赤城さんは優しいな。良かったよ、一度赤城さんとゆっくり話をしてみたかったんだ」
灰原さんたら、まんまと赤城さんのサクリャクに引っかかってるし。
もう、純情なのね。
「じゃあいこうか」
灰原さんはそう言って、駅から少し離れた場所にある和風のダイニングバーへ連れていってくれた。
照明が控えめで、落ち着いた雰囲気のお店。
さすが、センスがいいんだ。
案内されたのは、小さな個室だった。
カウンター席以外はほとんど個室になっているみたい。
なんとなく私が最初に席に着く形になって、灰原さんが私の隣にくるかと思ったら、空気読めない赤城さんが、サッと私の隣に座ってしまった。
私の前の席に桃井さん、灰原さんは赤城さんの前に座った。
ちょっと席順に不満。
でも、そんなことで不機嫌になるほど、私はコドモじゃないから。
灰原さんが「まず飲み物だね」と言って、ドリンクメニューを赤城さんに差し出した。
赤城さん赤城さんって、なーんか、気に入らないんだけど。
あ、でも赤城さんがここでは一番年上なんだ。
そうそう、ネンコウジョレツ、ってやつ?
お年寄りは大切にしましょう、ってね。
で、飲み物が揃って乾杯。
灰原さんは目の前の赤城さんにばかり話しかける。
赤城さんは灰原さんになにか聞かれると「ね?」とか言って、私の方を向いて声をかけるんだけど、灰原さんはやっぱり赤城さんばかり。
桃井さんといえば、ずっとビールをちびちび舐めていて、灰原さんから「なぁ?桃井!」とか声をかけられたときだけ「ええ、はい」とか答えるだけ。
ときどき盛り上がるのは「○○の現場に入れた新しい建材が」とかいう仕事絡みの話で、赤城さんも桃井さんも、灰原さんに乗っていろいろ話すんだけど、そんな難しい仕事の話、私には分からない。
つ!
ま!
ん!
な!
いーーーーーーーーーーーーー!
それでも、ここでそんな顔したら、灰原さんに嫌われちゃう。
頑張って楽しいフリをしなくっちゃ!
きっと灰原さんは、そんな控え目で気配り上手な私に気付いてくれるから。
そうよ。
結婚の決まった年増なんか、メじゃないんだから!
店に入って1時間。
赤城さんがバッグを持って立ち上がった。
お手洗いかな。
「あ、赤城さん、私も~」
もう少し赤城さんに、私が灰原さんと仲良くなれるように気を使ってもらわなくちゃ!
赤城さんたら、珍しくチヤホヤされて、いい気になってるみたいだから、私がハッキリ言ってあげないと、きっと分からないもんね。
赤城さんについて部屋を出ると、なぜか赤城さんがすぐに立ち止まった。
「赤城さん………」
『おトイレはあっちでしょ』と言おうとしたら、赤城さんが「シッ」って怖い顔で人差し指を立てた。
文句を言おうと思ったけど、赤城さんの顔が真剣で怖かったから、私はなにも言えなくなってしまった。
赤城さんは、仕事のことで私に文句を言うときだって、こんな顔しない。
そんなときだって、いっつも苦笑いしながら、最後には「もう、仕方ないわね」って言うだけなのに。
どうして赤城さんはこんなに怖い顔をしてるの?
赤城さんは私の腕を引っ張って、私たちがいた個室から少し離れたところに行った。
<藍沢さん、しばらく口きいたらダメだからね>
赤城さんはヒソヒソと言った。
<なんで?>
協調性のある私は、つい赤城さんに合わせてヒソヒソ。
<あとで教えてあげる>
<いいこと?>
<………どうかな>
赤城さんは困ったような顔をしながら、私を手招きした。
訳が分からないまま、赤城さんに付いていくと、結局また個室の前まで戻った。
赤城さんは私を振り返ると、また人差し指を立てた。
「……から…………だろ」
「………ッスよー」
中から話し声が聞こえる。
灰原さんと桃井さんしかいないんだから、2人の声なんだろうけど。
………。
赤城さんたら。
女性陣がいない間の男性陣の本音を、コッソリ聞いちゃおうってコンタンね。
見かけによらず、けっこうコソクなことするんだ。
意外〜。
きっと灰原さんは、私と仲良くなる作戦を桃井さんと練り直してるんじゃないかな。
「なんで俺があのノータリンと消えなくちゃいけないんスかぁ?」
ん?
この声、桃井さん、なの?
「ヤれりゃ誰だっていいだろ?セックスするだけなら、賢くないほうが楽じゃねーか」
この声は?
灰原さん、なの?
「灰原さん、どうして赤城さんがいいんスか?まぁ、見た目は悪くないけど、クソ真面目だし、だいたいX機材の青木と婚約したって話じゃないッスか。なにもそんなメンドーな女、落とそうとしなくたっていいじゃないッスか」
「だからいいんじゃねーか。藍沢みてーなお天気娘、簡単すぎてつまんねーよ。どうせヤるなら、お局サッちゃんみてぇな、いかにも固そうで、浮気なんかしなそうなオンナをヒーヒー言わせるほうがコーフンすんだよな。オトコいんなら、余計なこと言わねーだろうし」
「灰原さん、ヘンタイだなぁ」
「桃井だって、人畜無害そうな顔を逆手にとって、オンナ食いまくってんだろ。藍沢なんてアタマ空っぽなんだから、桃井なら秒殺だろ」
「単純そうですけどねぇ。2、3回ヤったら、すぐ飽きそう。そしたら灰原さん、慰めてやったらどうッスか?」
「やだね、めんどくさい。ヤリ捨てできないオンナはイヤなんだよ」
「えぇ~。じゃあ俺、めんどくさいの担当?」
「その辺はうまいことやれよ」
赤城さんが私の腕を引いて個室の前から静かに離れると、今度は本当にトイレへいった。
「赤城さん、どういうことなの?」
化粧台の前で私は赤城さんに言った。
「まぁ、ああいうこと、みたいよ?」
「よくわかんない。ホントにあれ、灰原さんと桃井さんなの?」
「そう。彼らの情報が入ってたから、ちょっと確かめようと思ったんだけど、やっぱり情報どおり、ろくでもない人たちみたいね」
「情報?」
「まぁ、詳しい話はあとで。藍沢さん、灰原さんはやめたほうがいいことはもう分かったでしょ」
あれが灰原さんと桃井さんの会話なら。
とてもじゃないけど、灰原さんは想像してたような素敵な男の人とはいえない。
「このあと彼らがどう出るのかは分からないけど、藍沢さんは黙ってニコニコしててくれればいいから」
「えー」
「………」
赤城さんがまた怖い顔をした。
私はなにも言えなくなって、「うん」と言った。
「あんまり長く席を外すと、ヘンに思われるから、戻ろうか」
そう言った赤城さんは、もういつもと同じ赤城さんに戻ってた。
「おかえり」
私と赤城さんが個室に戻ると、灰原さんも普段通り、爽やかな笑顔で迎えてくれた。
桃井さんも、いつものように、ちょっとオドオドした感じ。
この2人がさっきみたいなヒドいことを言ってたなんて、信じられない。
すごくすごく、感じの悪い、嫌な笑い方で、私や赤城さんのこと、あんな風に………。
ホントは、違う部屋だったんじゃないかな。
うん。きっとそう。
世の中には声が似た人も、苗字が同じ人もいるんだから。
………きっと、なにかの間違いなんだもん。
赤城さんは何事もなかったように、灰原さんの話を聞いては、ときどき答えている。
「おかしいね、藍沢さん」
赤城さんは灰原さんの話を私にそう振りながら、素早く私の足を蹴った。
「痛い」と文句を言おうと思ったけど、一瞬私を見た赤城さんの目がやっぱり怖くて、私は戻る前に言われたように、ニコニコしてうなずいた。
なんかなんか。
灰原さんと桃井さんよりも、赤城さんのほうが怖いような気がする。
楽しい飲み会になるはずだったのに。
なんなのよぅ。
それでも、みんな最初と変わらない雰囲気だったし、それどころか、だんだん打ち解けた感じになってきて、私はさっきのことがやっぱり夢かマボロシみたいに思えてきた。
灰原さんは話し上手で、ちょっとした自分の失敗や、学生時代のことを話してはみんなを笑わせてくれた。
やっぱり、灰原さんがあんなヒドい人のわけがない。
そう思っていたら、桃井さんが席を立った。
「おい、桃井。大丈夫か?」
「大丈夫です………」
なんとなく、桃井さんの顔色が悪いような気がした。
「飲みすぎたのか?」
「……はい、多分……。トイレ、行ってきます」
桃井さんはヨロヨロした感じで部屋を出ていった。
「桃井、大丈夫かなぁ」
灰原さんは私に向かって心配そうに言った。
「あ、私、見てきましょうか?」
この店のトイレは狭くて、男性用のトイレは女性兼用だったから、ちょっと覗くくらいならできるかも。
「私がいこうか」
赤城さんがそう言って腰を浮かせたので、私は
「いいのいいの、赤城さんは座ってて」
と言った。
私は気が利く女の子だから。
すると赤城さんはいつの間にか座布団の横に置いてあったスマホを、灰原さんに見えないように指差した。
『きをつけて』
メモの画面かなにかに、そう見えた。
…………。
『きをつけて』
桃井さんに気をつけろ、ってこと?
おトイレに向かいながら、私はさっき個室の前で立ち聞きした灰原さんと桃井さんの会話を思い出した。
確かに、普段とまるで違う2人の会話が本当なら、桃井さんは普段会社で見るような地味で冴えない男の人じゃないってことなのかもしれないけど。
でもでも。
みんなお酒飲んでるんだし。
男の人って、ふざけてちょっとあんな感じの話をするのかもしれない。
私みたいな女の子に、本気であんなヒドいことするなんて、あんまり信じられない。
おトイレの前に着いたけど、男性女性兼用トイレのドアをノックしようかどうしようか、少し迷った。
でも、せっかくきてあげたんだから、声かけなくちゃ。
「桃井さん?」
声をかけて、軽くドアを叩くと、中から「……藍沢、さん?」と桃井さんの声が聞こえてきた。
カチ、って音がした。
桃井さんが鍵を開けたみたい。
出てくるのかと思ったけど、桃井さんは出てこない。
やっぱり具合悪いのかな?
私はドアのノブに手をかけた。
「ご気分悪いんですかぁ?」
そう言いながらドアを引くと、蓋をしたトイレに腰かけた桃井さんがゆっくり顔を開けた。
「藍沢さん、来てくれたんですね」
「お水、もらってきましょうか?」
「大丈夫です」
桃井さんはそう言って立ち上がると、開いていたドアを閉めてしまった。
ゲロでそうなのかな?
と思ったら、桃井さんの体がフラフラ揺れて、私のほうへ倒れそうになった。
思わず後ろのドアに背中をつけると、桃井さんは私の顔の横に手をついた。
私に向かって吐くのはやめてぇ~!
「………ホントは気分が悪いわけじゃ、ないんだ」
桃井さんは私に接近したままそう言った。
「アタマでも痛いんですか?」
「そうじゃないよ。実は僕、赤城さんのこと好きだったんだ」
「えーーー?」
桃井さんて私より少し年下だったよね。確か25歳くらい?
なんで赤城さんみたいなオバサンがいいのかな。
「だけど灰原さんも赤城さんのことが好きだって言っててさ。今日も本当は赤城さんともっと話したりしたいんだけど、灰原さんの手前、なにもできなくて。灰原さんが赤城さんと仲良くしてるのを見るのが辛いんだ」
………どうでもいいけど、桃井さん、お昼にギョーザかなにか食べたのかな。
クチ臭い。
ギョーザじゃないなら、お口の病気かもしれない。
「灰原さんには世話になってるから………。でも、藍沢さんがきてくれて、ちょっと嬉しかった。藍沢さんなら僕を慰めてくれるんじゃないかと思って………」
あー、もう、臭い。
あんまり顔、近づけないで欲しい。
また顔が近寄ってきた!
勘弁してぇ!
ガチャ!
ドアのハンドルに私の手が当たって、寄りかかっていたドアが後ろに開いた。
「はー!」
もー、このトイレ狭いから、ニオイこもって辛かった!
「なんだよ、ここで普通ドア開けるか?」
桃井さんがブツブツ言ってるけど、私は深呼吸に忙しくてよく聞き取れない。
やっと落ち着いて桃井さんを見ると、なんだか不機嫌そう。
「桃井さん!」
「?」
「こんなとこで不機嫌そうにしてたって、なんにもならないでしょ!赤城さんのことが好きなら、とりあえずお話すればいいじゃない。そりゃ赤城さんはもうすぐ結婚しちゃうけど、お友達くらいならなれるでしょ」
「いや、だから、そうじゃなくて、僕は藍沢さんに………」
「私?そりゃあ赤城さんと私、レイセイになれば私のほうがいいと思う桃井さんの気持ちは解らなくもないけど、そんな誤魔化しはダメ!」
「だから、そういうことじゃ………」
「ほら、早く戻らないと、赤城さんが灰原さんに口説かれちゃう!いきましょう!」
私はそう言って桃井さんの腕を引っ張って個室へ向かった。
桃井さんは「いや、藍沢さん、ちょっと」なんてブツブツ言ってたけど、シャイな桃井さんの言い訳を聞いてたら、日が暮れちゃう!(もう夜だけど)
桃井さん、さっきは私と赤城さんがいないところで悪ぶってたけど、やっぱりただの気が弱い男の子なのね。
「やめてください!」
個室の前まできたら、中から赤城さんの声が聞こえた。
桃井さんの腕を引いたまま中を覗くと、灰原さんは赤城さんの隣に………
っていうか、壁に背中を付けた赤城さんに灰原さんが………
ん?
これって、さっきの桃井さんと私の態勢と似てる。
灰原さんも気分が悪いのかな?
と思ったら、痛いくらいの力で桃井さんに引っ張られた。
「藍沢さん、邪魔したらダメじゃん。赤城さんだって満更じゃないだろうからさ。だから俺と………」
「もう!桃井さんたらまだそんな弱気なこと言って!そんなんじゃ、世の中渡っていけないよ!」
私は桃井さんの腕を振り払った。
こう見えて私、けっこう力持ちなのよね。
また桃井さんの腕を引っ張って「戻りましたよー」と元気よく言いながら、中に入った。
赤城さんに覆いかぶさろうとしていた灰原さんが、ギョッとした顔で振り返った。
「なっ………桃井!」
「………スミマセン」
なぜか怒ったような灰原さんと、謝る桃井さん。
すると、壁に寄りかかっていた赤城さんが、突然灰原さんを殴った。
しかも、グーの手で。
態勢がヘンだった灰原さんは「ぅオッ」みたいな変な声を出して、テーブルの角に頭をぶつけた。
「………よかった。藍沢さん、無事だったのね」
赤城さんは灰原さんを殴っておいて、いつもみたいに笑った。
「赤城さん、なにノンキなこと言ってんの?青木さんと結婚するくせに、灰原さんと仲良くしちゃって!」
私がそういうと赤城さんは「はあぁぁ〜」と大きなため息をついて、おでこに手を当てた。
「さすが、藍沢さん。ここまできて、その理解力………」
赤城さんはもう1回小さくため息をつくと、「いっ、てぇ〜〜」と頭を抑えている灰原さんを見下ろした。
「灰原さん。桃井さんも!まぁ座って?藍沢さんも」
笑ってるけど、なんか、怖い。
赤城さんは灰原さんと反対の席に座り、私は手招きされてその隣、向かいになんともビミョーな顔をした灰原さんと桃井さんが座った。
「さて」
赤城さんは自分のグレープフルーツサワーを美味しそうに飲んでから、バッグから何かを取り出した。
「なぁに?これ」
「ボイスレコーダー」
赤城さんはボタンを押した。
『なんで俺があのノータリンと消えなくちゃいけないんスかぁ?』
『ヤれりゃ誰だっていいだろ?セックスするだけなら、賢くないほうが楽じゃねーか』
さっきの、灰原さんと桃井さんが話してた声。
赤城さんたら、録音してたの?
灰原さんと桃井さんは、なんだか気まずそう。
「お2人とも、これはどう説明します?」
赤城さんはボタンを押してボイスレコーダーを止めると、首を傾げて灰原さんと桃井さんに言った。
「イヤだなぁ、赤城さん。ちょっと酔っ払って悪ふざけのクチが過ぎただけだよ。なぁ、桃井?」
灰原さんは赤城さんに殴られたばかりだというのに、爽やかに笑いながら言った。
「そうですね」
桃井さんも、いつもみたいに冴えない感じでそう言った。
「そうですよね。だから灰原さんがさっき私に『転勤してからずっと好きだった』とか『このあと2人きりにならない?』とか『藍沢さんは桃井と消えちゃうから』とか言いながら、私に迫ったのも、あれも冗談ですよね」
赤城さんも、普段仕事の話をしているみたいな落ち着いた口調で言った。
「冗談、ではないよ。俺は本当に赤城さんを………」
「うるさい」
赤城さんは灰原さんの言葉を遮った。
いつもみたいに少し笑ったような顔なのに、目が、笑ってないじゃん。
「灰原さん、私がなにも知らないと思って、やりたい放題だけど、いいのかしら」
「なんのこと」
「T営業所にいた、事務パートの主婦さん。どうして辞めちゃったのかしらね」
「………」
「それと桃井さん。会社で取ってる仕出し弁当屋さん。最近配達の女の子変わったけど、どうしてかしらね」
「………」
「そうそう、最近営業部の水野さんからLINEがよくくるのよね。水野さんは灰原さんと組むことが多いけど」
「………」
「桃井さんと同期入社の朱音ちゃん。最近様子が変なのよね」
「………」
??????????
なになに?
赤城さんの言ってること、よく分からない。
だけど、灰原さんも桃井さんも、赤城さんから話しかけられるたびに顔色が白くなっていくのは、なんで?
「ま、プライベートなことは当人同士の問題だから、それはいいんだけど」
赤城さんは喉が渇いたのか、またサワーに口をつけて、にこっと笑った。
「だけどねぇ、あんまりオイタが過ぎると、私、偉い人に余計なこと、言っちゃうかもしれないな」
なんのことかな。
「灰原さん。P大学病院の現場だけど。仕入れ金額と売り金額、おかしかったんですよね。黙って計上しといたけど、あれ、なんでC物産がかむことになったんでしょうね」
「………赤城さん、どこまで知ってるの?」
赤城さんは「さて、どこまでかしら」と首を傾げた。
「桃井さん。この間の埼玉の市民ホールの物件。見積書と納品書、数字がどうもおかしくなってたような気がするんですけど」
「………」
「どっちも会社に損害がでなかったから、そのまま処理したけど、粗利は何%消えたんでしょうね」
「……………」
灰原さんも桃井さんも、雪見大福並に白い顔になって黙ってしまった。
「他にもねぇ、いろんなところから、ちょっと気になる話が入ってきてるんだけど………。余計なお喋りはしないつもりですけどね」
「……………」
「だけど、これは教えてあげますね。灰原さんは来月から寒いところに行くみたいですよ。あと桃井さん。桃井さんはM社の中部工場で1年研修ですって」
「寒いとこ、って、東北営業所か?あそこ、定年間近のオバチャンとジジイの所長がいるだけだろ?」
「東北は復興事業でまだこれから忙しいですからね。営業強化みたいですよ」
「M社の中部工場って、男ばっかで体育会系の工場長がいるっていう………」
「ちょっと山奥で街までは車で1時間かかるみたいだけど、独身寮もコンビニもあるみたいですよ。M社には有望な若手を研修に出すのが慣例ですからね。頑張ってくださいね」
「………楽しく飲ませていただきましたけど、そろそろお開きかな」
赤城さんはニッコリ笑った。
「今日楽しくお話した内容は、お2人ともお分かりだと思うけど、オフレコです。私は必要がなければ、余計なお喋りはしませんから」
灰原さんと桃井さんは、小さく頷いた。
「じゃあ、これから私が言うことも、オフレコでお願いしますね」
赤城さんはそう言って立ち上がった。
帰るなら、私も荷物を持ったほうがいいのかな?と思ったら、赤城さんが「スゥ」と音をたてて息を吸う声が聞こえた。
「あんまりオンナのことナメてんじゃないよ!私だって、ダテにこの年まで生きてるんじゃないんだから。アンタたちが思ってるほどウブでもなけりゃ、単純でもな・い・の!それからね、藍沢さんは確かにバカよ。バカだけどね、アンタたちみたいに腹黒いことはできないバカなの。バカなのに、なんでクビにならないか、分かる?バカはバカなりにみんなから愛されてるの!その藍沢さんをいいように利用しようなんて考える汚い男は××××が《ピーーーー》なって、地獄に落ちればいい!」
………
あ
か
ぎ
さ
ん
が
壊れた。
「………これから先、私や藍沢さんに関わることはもちろん、オイタみたいな話が私の耳に入ったら」
赤城さんはバッグを担ぎ直した。
「ただじゃ、済ませませんよ?」
赤城さんの笑顔が。
真面目に、怖い。
「さ、藍沢さん、そろそろ帰ろう。灰原さん、私と藍沢さんの分、ザックリですけど計算しときましたから、ここに置いておきますね。それじゃ、失礼します」
赤城さんがテーブルの上に揃えた千円札を何枚か置いて出ていき、私は慌てて赤城さんに付いて店を出た。
「ねーねー、赤城さんてばー」
私は早足の赤城さんを追いかけた。
赤城さんは黙ったまま駅とは違う方向へ向かい、いまいた店からずいぶん離れて駅の近くまでくると、やっと立ち止まって私を見た。
「あぁ、怖かった」
赤城さんは大きく息を吐いてそう言った。
怖い?
怖かったのは、私のほうだって。
灰原さんも桃井さんも、ちっちゃい雪見大福みたいになっちゃって、きっと赤城さんのこと、怖かったんだろうな。
「もー、わけわかんないんだけど!」
「分かったわよ。マズいお酒飲んじゃったから、そこで軽く飲みなおそうか」
赤城さんはそう言って近くにあったチェーンの居酒屋を指差した。
お店に入り、奥まった席に案内してもらった。
私がトイレにいっている間に店員さんが飲み物とおつまみにとったフライドポテトを持ってきて、私が席に戻ると、赤城さんは「あぁ、疲れた」と苦笑いした。
「ねぇ、赤城さん。私にはなにがなんだか、さっぱり分からないんだけど」
私は頼んだ巨峰サワーを飲みながら赤城さんに言った。
「まったく、一部始終聞いてて、どうして分からないの」
「だって、展開が激しくて、ついていけないんだもん」
「もう。まぁ、それが藍沢さんか」
「ちゃんと説明してよ」
赤城さんは美味しそうに梅酒サワーを飲みながら話し始めた。
あのね、灰原さんがT営業所からこっちにきたのは、不祥事を起こしたからなの。
さっき言ったでしょ?
灰原さんはT営業所で、既婚者の事務パートさんに手を出したの。
灰原さんは遊びのつもりだったみたいだけど、パートさんが本気になっちゃって、ご主人は営業所に乗り込んでくるし、灰原さんが他にもちょっかい出してた女の子は死ぬの生きるのって騒ぎ出すし。
ずいぶん会社にとっては迷惑な騒ぎだったんだけど、プライベートなことだって灰原さんは言い張ってね。
そのパートさんは辞めることになって、灰原さんはとりあえずT営業所から本社に異動することになったの。
で、桃井さんはおとなしそうな人に見えるけど、けっこうあちこちで女の子に手を出してるの。
同類だからかしらね。
灰原さんと桃井さん、最近はつるんでナンパばっかりしてたみたい。
私はあちこちからそういう相談とか噂を聞いてたんだけど、まぁ仕事さえちゃんとしてくれればいいと思ってたの。
相談された女の子には「やめたほうがいい」とは言ってたけどね。
だけどねぇ、あの2人は仕事でもちょっと困ったことを仕出かすのよ。
灰原さんも桃井さんも、けっこう大きなミスをしても、いままでなんとか課長とか部長にバレないように誤魔化してきたのよ。
不正はないんだけど、利益を大幅に削ったり、他の会社に損を被ってもらってたりね。
書類は形だけちゃんと整ってるし、お金の流れも一見普通の取引と変わらないから、上の人にもバレなかったんだけど、私には分かっちゃったのよ。
でもね、他の人も誤魔化せないようなミスならともかく、おおごとにしないで処理することはあるから。
会社に損失がないなら、まぁ仕方ないかと思って目を瞑ってたの。
だけど会社に損は出てないけど、確実に利益を失ってるから、本当は課長や部長が事情を知っていないといけない話なのよ。
そうなると灰原さんも桃井さんも、評価は下がるでしょうね。
「でもさぁ、どうして赤城さんがそこまで詳しくいろんなこと知ってるの?そりゃ営業部で処理することなら赤城さんにも分かるだろうけど、仕事以外の噂とか、異動のこととか、赤城さんみたいに真面目に仕事してるだけの人が、どうして?」
「緑さん、覚えてる?」
「誰だっけ?」
「営業部にいた、50代のベテランだった人。藍沢さん、よく叱られてたでしょ」
「あーあー。あの怖いオバサン」
「なに言ってんの。さんざん庇ってもらってたくせに」
「えー、知らなーい」
「もう。まぁいいわ。私ね、緑さんから仕事も引き継いだけど、他のことも引き継がせてもらったの。例えば、専務とか常務とのラインとか、取引先との繋がりとか。だからけっこう顔が広くなったの」
「へー。専務とか常務がLINEやるなんて意外~」
「そのLINEじゃないってば。……まぁいいか。それにね、緑さんからトラブルシューティングの方法もたくさん教わったから、他の営業所とか、ウチの営業さんとか、トラブルがあったときに私が手助けする形になることがけっこう多くて、そのお陰か、ときどき私に内緒の話をしてきてくれる人が何人かいるの」
よく分からないけど、赤城さんは二代目お局様ってことね。
だから、おっかないお局様のところには、いろんな話が集まる、ってことか。
「灰原さんが本社に異動になってから、相談事が増えてね。あちこち聞いて回ったりしなくても、灰原さんと、子分の桃井さんの悪い話はすぐに集まってきてたの。人事の話は、常務が世間話のついでに口を滑らせたんだけどね」
「もう、なんで私に教えてくれなかったの?」
「そんな噂話、あんまりひとには言わないものなの。でもね、だから藍沢さんから灰原さんと桃井さんとで飲みに行くって聞いたときには、なんだか嫌な予感がしたの。なにか企んでるんじゃないか、って。だからボイスレコーダーも用意しておいたわけ」
「ふーん。だけど意外~。さっきの赤城さん、怖かったぁ。みんな赤城さんがあんなに怖いなんて知らないよねぇ」
なにげなく言ったつもりだったのに、赤城さんの目が怖くなった。
「藍沢さん、今日のことは内緒だからね」
「えー。さっき最後に言ってたことなんて、けっこうカッコよかったのにぃ」
「誰にも言ったらダメ」
「え~。こんな面白い話、黙ってられないかも~」
赤城さんは黙ってバッグからスマホを取り出して、なにかを見ている。
「………この間、お歳暮にきた、『とらや』の羊羹セット。プレミアムビール詰め合わせ。あれ、どうしたのかな?」
「!」
なっ、なんで赤城さんがヨーカンとビールのこと、知ってるの?
誰にも気付かれないようにコッソリ………。
「それからこの前またお使いのときに私物買ったでしょ。マスカラとヘアクリップ」
えぇ!?
なんでそれもバレてるの?
ちゃんと叱られないようにしておいたのにぃ。
「もう、相変わらずオイタばっかりして。どうしようかな、総務の部長に言っちゃおうかなぁ」
「しっ、知らない、知らないもん!」
「そうよね、知らないよね。うん、私も知らない。だから藍沢さんも、今日のことは忘れちゃうよね」
「う、うん。わ、忘れた、忘れたよ!」
なんか、暑くもないのに、おでこに汗が出てきた。
見た目はいつもと同じ、地味で冴えないオバサンの赤城さんなのに、なんかなんか、いつもと違うような感じがするのは、どうしてなの?
赤城さんのバッグの中から、スマホの着信音が聞こえた。
「あ、着いたみたい」
赤城さんはスマホを見て嬉しそうに言った。
「誰かくるの?」
「黒田さんと青木さん。今日、2人で小田原の現場にいってて、下手すると今日は帰れないかも、って言ってたんだけど、早く終わったから合流するって」
「ここにくるの?」
「さっき場所だけ連絡しておいたから、もうすぐくるよ」
「沙知!」
5分ほどで、嬉しそうな顔をした青木さんと、相変わらずカッコいい黒田さんが現れた。
「やぁ、藍沢さん。お疲れ様」
青木さんは私にもそう声をかけてくれた。
こうして会うと、やっぱり青木さんは優しそうで、あっさり赤城さんに譲ったのは間違いだったかなぁ、なんてちょっと後悔。
「ずっと2人で飲んでたの?」
黒田さんからそう聞かれて、私は「さっきまで灰原さんと桃井さんと一緒でした」と言おうとしたら、最初の「さっき」と言ったところで、赤城さんから足を蹴飛ばされた。
「黙れ」という合図みたい。
うぅ。
そうだった。
ヨーカンとビールとマスカラとヘアクリップだ。
「お邪魔します」
後ろから知らない声が聞こえて振り返ると、黒田さんや青木さんとはまた違ったタイプで、テレビに出ている歌舞伎俳優みたいな顔をした人が立っていた。
「蒼太さんじゃないですか」
赤城さんが嬉しそうにそう言った。
「偶然、山手線で会ってさ。沙知がいるって言ったら混ざりたいって言うから連れてきた」
「わぁ~、蒼太さん、お久し振りです」
「慎ちゃんと結婚するんだって?おめでとう」
「ありがとうございます」
男性3人が上着を脱いだりしているところで、赤城さんがバッグを持って立ち上がったので、私は「私も~」と言って赤城さんと一緒にトイレへいった。
「ねぇねぇ、赤城さん、あの人誰?」
「蒼太さん?青木さんと黒田さんのツーリング仲間よ」
「何歳?なんの仕事してるの?」
「35~36歳くらいだったかな。羽田空港で飛行機の整備士やってて………。あのさ、これからそのくらい、青木さんと黒田さんがちゃんと紹介してくれるわよ」
「紹介してくれるの?!」
「初対面なんだから、普通紹介するでしょ」
「彼女いるのかなぁ」
「さぁ、独身だって聞いてるけど」
「ねぇねぇ、赤城さんと青木さんの結婚式、彼もくるんでしょ?私も招待してくれるよね、ね?」
「えっ。会社の人は営業部の人中心なんだけど………」
「えー、じゃあ、二次会!二次会ならいいでしょ?」
「…………」
今日はいろんなことがあったけど、朝のウキウキした予感は、灰原さんと飲みにいくことじゃなくって、彼と運命的な出会いをすることだったんだ!
もー、赤城さんたら、年増だけど、役に立つじゃん!
赤城さん見てデレデレしてる青木さんも、相変わらずオバサンの彼女一筋らしい黒田さんも、彼を見たらもうメじゃないじゃない!
「赤城さん、ヘンな顔して、お腹でも痛いの?大好きな青木さんが待ってるんでしょ~、早く席に戻ろうよぅ」
力持ちの私は「ちょ、ちょっと、痛いって」とブツブツ言ってる赤城さんを引っ張って、運命の彼のところへ。
赤城さんが「はあぁぁぁぁぁ」と大きなため息をついたような気がしたけど、どうしてなのかしら?
私はこんなにウキウキしていて楽しいのに!
もう年増だから疲れちゃったのね。
今度、栄養ドリンク差し入れてあげるからね、赤城さん。
☆☆☆了☆☆☆
なんとか短編で完結できました。
存在自体がギャグな藍沢さんワールド、いかがでしたでしょうか。
ちょこっとお遊びで書いた短編なので、いろいろツッコミどころはあるかもしれませんが、ご容赦いただけたら幸いです。
よろしかったらご感想をお願いします。
「ため息はつかない!」感想スレ
http://mikle.jp/threadres/2145612/
ようこです…
こんばんは🌃
[ある日の藍沢みき]
読みました
ため息はつかない
まだ途中なんですけど…
藍沢さん面白かったです✌
蒼太とどうなるのか?
気になります(笑)
てんこさん…
ごめんなさいm(_ _)m
ちょっとこの場かりマス‼
らぶちゃん‼
私はらぶちゃん大好きだからねっ‼
凄く楽しかったよ…
ありがとう…
伊達さん…
伊達さんの心遣い嬉しかったです…
ありがとうございます💕
てんこさん私図々しくてごめんなさいm(_ _)m
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