二つの意思

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2007/09/24 23:51(更新日時)

神は昔、この世に二つの卵を生み落とした。その二つの卵から出てきたのは別々の生き物。それぞれ独立し、別々の意思を持っていた。一方の生き物は不思議な能力を操り"ルザーク"と呼ばれ、もう一方の生き物は能力は使えないが高い知能を持った"人間"だった。ただその双方の間にあった問題は決して互いを相容いれない事だった……。

No.577914 (スレ作成日時)

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No.1

―神は遥かの昔、我々ルザークと忌まわしき人間を、この世にお産みなさった。我々と人間を同等に産み落とされたその思惑は、我々に試練を与える事だ。我々は神の試練を喜んで引き受け、祖先より与えられしこの血を大切にし、見事人間を制圧せねばならない―。




人間……?なんだそりゃ。そんなもの見た事もない。祖先より与えられし血?じゃあギーディスを与えられなかった俺はどうなんだ?


そんな事を考えながら爽やかな風の吹き抜ける丘で横になる。民家の洗濯物が揺れる。こうして居る時が一番心地いい。至福の時というやつだ。
「おーい!」
なのに、向こうからそんな時間を裂くようにやってくる声がある。

No.2

>> 1 「おーい!ルウド!」しきりに俺の名前を呼んでいる。よし、無視しよう。自分の時間を取り戻すんだ!向こうからやたら大きい声でやってくるのは俺の親友(村で唯一)のコアだ。とりあえず普段はウザい奴なのだ。そいつを横目で気にしながら一人事を言ってみる。そう、まるでお前の存在になんか気付いてないよとでも言わんばかりに…。
「ああ、爽やかな風だ。ハハハ」
そんな事を行ってみた直後、頭に激痛が走る。気付くと俺はコアの前で見事に倒れ込んでいた。(くそっ…殴られた)。
「なあ~に爽やかモードやってんだ!!人の声が聞こえないか!?え!?」
あ~そうだ、こいつは雰囲気をすぐにぶっ壊してしまう奴でもあった……。頭、痛い…。









二つの意思

No.3

>> 2 「で、一体何?人の時間を潰しやがって!」いつのまにか爽やかな風が吹き抜ける丘で俺はコアと佇んでいた。こいつはいつもズカズカとやってくる。でも、何故か憎めない。そんな奴だ。そんなコアは明らかに動揺して必死に言葉を発した。
「お…怒るなよ…さっき貸した本、読んだかなと思って…」
ニヤリと笑ってこちらを向いている。こいつは俺が「ああ!おもしれえな!」とか言うのを期待しているのだろうか?しかし、俺はあいにくこういうものに全く興味はない。人間がどうだのルザークがどうだの…。そんなの知った事ではない。
「あんなのの何が面白いんだ?お前って変だな」
すると機嫌を悪くしたように一度膨れ、今度は目を輝かしながら身を乗り出して俺に言ってくる。
「なんで分かんないかなあ……。ルザークの試練とかそういうのドキドキしね?あ……お前はギーディスが使えないからあんま実感湧かない?ハハハハハ」
俺の言われたくない事をサラリと言われてしまった。ルザークならば誰もが産まれた時から授かる人それぞれに違う特異能力、ギーディスが何故か俺にはない。

No.4

>> 3 「お…お前なあ~!いいんだよ俺は!ギーディスなんか使えなくてもちゃんと生活していけるだろ?」
コアは嘲笑うような目でこちらを見ている。別にギーディスを使えないから強がりで言ったりしている訳じゃない。本当にギーディスなんて要らないと思う。まあ小さい頃は少しギーディス騎士に憧れたものだが……。
「ま、お前はギーディス使えなくても剣術は得意だよな!そこらは羨ましいですよ~。ルウドさ~ん」
俺はそのコアの言葉に少し嫌悪感を覚えた。
「な…なんだよ。気味悪い……お前もしかして」
コアは何かお願いをする時必ずわざとらしい敬語を使う。何かやらかしたか……。
「そんな剣術がお得意なルウド様に…お願いがありまして~…アハハハハハ」
コアがそう言いながらじっとこちらを見……いや、その目は何か威圧的なものがあった。これにはどうも弱い。
「な…何だよ。お願いって……」
コアは勝ったと言わんばかりににやける。
「さすが!お話が早い!実は…エドワードの奴にちょっと怒り買っちゃってさ……アハハハハハハ」
その言葉には驚く……というか厄介な事になった。エドワードって言うと村で一番のタチの悪いナルシ野郎だ。

No.5

>> 4 その後のコア話に寄るとどうやらコアはエドワードのギーディスをはずみで馬鹿にしてしまったらしい…。そしてプライドの高いエドワードは怒り心頭。ケンカを売られてしまったのだと言う。そして「そんなに言うなら俺を倒してみやがれ!ハハハハハハ」とか言われたらしい。要は村の小さな学校の前で決闘だ……。


俺達が学校の前に行くと、そこには既にエドワードといかにもいじめっ子って感じの子分が二人ニヤニヤ笑っていた。
「フハハハハ!来やがったなこの落ちこぼれ!よくも俺の風のギーディスを馬鹿にしてくれたもんだな!」

後ろの子分もそうだそうだと叫ぶ。エドワードがふと俺の方を見る。そしてハハハハと笑い出した。

「なんだ?一人ぐらい味方を連れてきてやってもいいって言ってやったのに、お供は"ギーディス無しのルウド"か?」
そのエドワードの言葉の後に子分達が笑う。コアはそれに言い返す。
「なんだと!ルウドは剣術が凄いんだぞ!お前達なんかに負けるもんかあ!」
すぐにこうやって口答えしてしまうのがコイツの悪い癖だ。あのエドワードから怒りを買うのもおかしくない。そしてまたエドワードを怒らせてしまったようだ。

No.6

>> 5 「はっ!そういう事なら予定変更だ!!ギーディス無しと俺の一騎打ちで白黒つけてやらあ!!!」

うわっ!そりゃないだろ…。なんか俺がヤバイ事になってきた。コアのせいだろうが!ってもう既にエドワードは手を掲げ、ギーディスを発動させようとしている。
「あーもう!仕方ねえな!!コア!貸し一つな!後でちゃんと返せよ!?」
するとエドワードが高笑いをする。
「飛ばされろ!俺の風に!!」
するといきなり風が起こった。コアが飛ばされる。涙を流して叫んでいる。
「助けてルウドー!」
が、幸いな事にコアは後ろにあった木の枝に引っ掛かった。そしてブラブラと揺れている。どう見てももう大丈夫なのに、当の本人は大袈裟に泣いて助けて助けてと呼んでいる。まあ自業自得って感じもするから放っておこう。
「大丈夫だから…後で助けてやる。」
エドワードがまたまた高笑いをする。

「ハハハハ!これでギーディス無しのルウドだけだ!」
俺は剣代わりの木の棒を構える。エドワードはまた手を掲げた。確かにエドワードのギーディスは村の子供の中では一線を画していた。が、俺の剣術はもっと凄いぞ!何故か少しやる気になっている自分がいた。

No.7

>> 6 そしてまたエドが風を起こす。が……俺はそれを剣(厳密に言うと木の棒)で切り裂く!文字通り、風を切り裂いた。エドワードが「えっ」と驚く。俺はそのままエドワードに向かって一直線だ。

「ひいいいー!」
今度はエドワードが怯えた様子で声をあげる。そして俺はエドワードを一刀両断!とかじゃなくて腹に木の棒を当てただけ。端からこいつ自体に身体能力はほとんどない事は分かっている。だから当てただけ…。だがそれだけでも効いたらしくエドワードは倒れこんで許しをこった。

「ひいいいー!痛い!許してくださあい!せめて命だけは!」

さっきのあの自信満々はどこに行ったんだ?エドワードよ。俺はこれをいい機会と思い、エドワードを大人しくさせる事にする。

「許してやるから、自分が一番!みたいな態度はこれからするなよ?もししたら…そうだな…今度は…」
「やめてくれぇ!!もう大人しくします!だから許してぇ!」

俺の言葉をエドワードの奴が強く遮った。ちょっとやりすぎたかな?とも思う。でも問題児には良い薬だ。エドワードはこちらに背を向けて子分達と走り去って行くのだった。

No.8

>> 7 「すっげぇ!!」
後ろからの声に思わずビクッとする。コアが枝に吊されながら目を輝かせていた。

「まあこれからはお前もあんまり無責任な言動するんじゃねえぞ!いつも俺が苦労するんだからな!」

コアは言い返す言葉がないようで照れ笑いをする。
「でも!これでエドワードの奴も大人しくするだろうな!やっぱすげぇなルウドは!」

と言ってるコアにずっと俺が言いたい事を言う。
「どうでもいいけど、さっさと降りたらどうだ?」
コアは枝に引っ掛かったままだ。
「あ……」
そして必死にコアはもがく。そして俺に言った。
「悪い、手貸してくれるかな?…」
「あ…ああ」



木の幹をおそるおそる降りながらコア言った。
「なあ、ルウド…。お前って人間みたいな事が出来るんだな。剣とかさ!さっきの風を切ったって感じも凄かった!」
まあ、そこに至っては確かにそうかなとも思うな。ギーディス使えない代わりかな?

「なあ、ルウド…お前さ、人間の国に一回行ってみるべきだと思うんだよな!」
「はあ?」
いや、俺は確かに人間っぽいかも知れないけど、だからって人間の国に行く…とかって話がまた違ってくるだろうが!

No.9

ルザーク…。何かの本で書いてあるのを読んだ。ルザーク…。忘れられた存在。それくらいの意識……。いや、そんな意識を持っている人間すらほとんど居ないはず……。どっかのマニアでもなければ、そんな風に思っていない。ルザークって何だ?オレと一体なんの関係が?そう思いながらも、オレはあの謎の"何か"が言った言葉を何故か忘れられずに居た。

「君の力は本物……。君の力は幻じゃない。君はギーディスを持っている。」

"ギーディス"なんて聞いた事ない。ただの学校の図書館にそんな言葉の載った本があるとも思えない…。バカバカしい、止めよう。ほら、輝(てる)がやって来た。あいつがこんなとこ見たら、「なんだよ、お前の柄じゃないじゃん!」とか言ってからかってくるに違いないのだから…。

No.10

人間の国に行こうなどととんでもない事を言ってくるところは、こいつらしいっちゃこいつらしい。でも人間だぞ?コア、お前見たことあるか?もしかしたらとんでもない化け物かも知れないぞ?いや、人間はどちらかと言うと体を活発に動かす方じゃないらしい。文明とか言うのが発達しているからだ。でもコアは本気らしい。

「なあ、人間に会いたいだろ~?国に行きたいだろ~?俺以外にも気の合うオトモダチにも会えるんじゃないの?」
馬鹿にしたようにコアが言う。そう簡単に行くか!…でも、コア以上に仲良くなってくれるルザークは居ないかも知れない。そこだけは否定できないが、だからって人間の国に行くってどれだけ突拍子もない事を言い出すんだ。正直呆れるとかいうレベルを越えてしまった。俺はもう構わない事にした。

「今日はお前のせいでさんざんだったんだよ!もう帰るからな!じゃあな!」

コアが待てよと止めようとするが、もう構ってられないっての!俺はさっさと家に帰った。そして夕食を食べ、眠ろうとしたその時、今日コアに貸して貰った本が目に入る。なんだか寝苦しいし、暇潰しに目を通してみる事にした。

No.11

>> 10 そこには何となくルザークの歴史だの人間との関わりだのが載っているのが分かった。剣術ってのはルザークの様に個々の特異能力、つまりギーディスを持たない人間が使う戦法だ。俺はもしかして人間?いや、母にそれを聞いた事が何回かあったが間違いなくルザークだという。俺が産まれた時からそれは明らかだった。父は仕事がある、と母に一言言い残しどこかに行ってしまった。しかし俺が産まれた時はまだここに居た。父は出産時、母の手を握り「頑張れ、頑張れ」と声を掛け続けていたという。そして産まれた子供のギーディスは"神官"と呼ばれる人が調べる。しかし、俺のギーディスを調べた神官が顔を歪める。そして次の一言が、「ギーディスがない…力を感じない…この子にはギーディスがない」だったらしい。その時父は明らかに誰から見ても分かるような落胆の表情を浮かべたに違いない。だから俺は父が居ないのは、俺のせいと思った事がある。母は気にしなくて良い、と言った。が、それでも正直自分のせいと感じてならない。自分の子供に誰もが授かるはずのギーディスがないのだ。もうどこかへ行ってしまいたいと思うのも分かる。

No.12

>> 11 それにしてもこの本の内容は本当にくだらない。ほとんど神話のような話が並べられているだけ。だけど、バカにできない内容が一つあった。「ギーディスの使えないルザーク」というものだ。俺はその部分にはっとし、目を凝らす。眠くなりかけていたのに、一気に目が覚めた。話に寄るとギーディスを授からなかったルザークというのが、遥か昔の記録に残っているらしい。その者が普通のルザークの社会に居ると、災いが起こると言われている。それを見た時、俺はビクッとする。こんなのただの伝説みたいなもんだ。一々反応する事などない。俺はやめだやめだと呟き眠りについた。

翌日、俺はコアの呼び声で目が覚めた。俺が寝ているすぐ傍で俺を見ていた。
「ひっ!!」
俺は驚いて目が覚める。コアはにやりと笑った。
「へっへっへ~♪」

俺は頭をポリポリと掻きながらベッドから起きる。
「なんだよ、人が寝てるとこ覗きやがって…。気色わりぃな。」

俺がいやそうな顔をするのを見て、コアはご満悦な表情を浮かべた。根はいいやつだけど、なんともこういうところは好きになれないな。

No.13

>> 12 「何だよベッドまで来やがって!」
まだ少し眠気が取れない。頭がボーッとする。なんだかコアはニコニコしている。
「なあ、人間の国に行くんだろ!?」

またこの話か…。馬鹿かお前は。
「バーカ行くかっての!!アホな事ばっか言うな……それより今日は村長さんとこに家で取れた果物を持っていけって言われてんだよ。お前も付き合え!」
いつもこいつには迷惑かけられっぱなしだ。たまにはこいちを逆に道連れにしてみよう。
「なんだよつまんない奴だな……ちぇっ」

そういってすねるコアを引きずって村長の家を訪ねる。―コンコンッ―。ノックすると村長本人ではなく、この家で使用人をするガイルが出てきた。
「よっ!ガイル!」
ガイルはにこっと微笑んだ。
「よう!ルウドにコアじゃねえか!ルウド、ギーディスは使えるようになったか?」

No.14

>> 13 「それが……」
俺は思わず言葉を止めてしまった。それをガイルは察してくれたかのようだった。
「ま、ちょっとずつでいいさ!だからお前も努力することを止めちゃいけねえぞ!ところで今日はどうした?」
そして改めて目的を思いだし、家の果樹園で取れた果物を差し出した。
「これを持ってくように言われて…村長さんにってな!」
ガイルは目をぱっと見開いて果物を受け取った。
「おー、そうだったか!悪いな!オヤジの奴が自分で取りに行かないからな…」
ガイルは使用人というだけで村長と血の繋がりはない。なのに、村長をいつも「オヤジ」と呼ぶ。まあそんなに気にした事はないが…。ガイルはまあ少し上がってけと言い、俺の後ろで座り込んでいたコアに今頃気付き笑っていた。村長の家は広い。ここは王都からも離れた田舎だ。皆そんな金持ちではない。村長って資産家だっけ……?

No.15

>> 14 長い廊下を歩き、村長が居るという部屋に着く。ガイルはそこで立ち止まりノックした。
「おい!オヤジ!果物が届いたぞ!」
すると村長の声が聞こえた。
「ああ!今行くぞ」

そういえば俺ってあまり村長に会ったことないんだよな。少し緊張しながら村長を待つ。―ギィ―。開いた。

「ガイル、果物だって?わしの好きなメロンかな!?ガハハハハハ」
そう豪快に笑うと俺とコアの方を見て更に微笑んだ。
「いやールウド君にコア君だな。ルウド君のお袋さんにはいつも世話になってるよ。まあガイル、この子達に茶でも」
とても優しそうな人だ。怖そうな人かと勝手に想像してたけどι

「指図するなオヤジ!」
ガイルはそう言って笑いながら俺達を椅子へ誘導した。

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