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夜明け華( 30代 ♂ sb6sye )
23/12/19 01:28(更新日時)

深夜の空港では、人がいよいよ少なくなって、残るはただ、暦の悪い旅行に遭って空港の廊下を彷徨い続け、或いは歩く、或いは寝込む、一人寂し気な旅人であって、そして私のような、深夜までの夜勤を務むべき、閉店近くの、お店の掃除を終えようとする従業員である。私は、薬局での仕事をしているので、夜まで急病のお客様に手を貸す義務を負っていて、そう言っても実は、深夜で薬局を探すお客様はなかなか稀なのである。
とはいえ、空港の薄暗い灯し火の奥からは、或る薬の缶を抱えているみたいなお客様が現れ、何かを探すような眼差しをもって、遂に私が佇み待っている薬局の入口を気付いてたら、私のカウンターへ寄ってくる。そしてその薬の缶を見せ掛けて、私に、「その薬は置いていますか」と、優しい声で問ってみながら、私も目を凝らして、その缶の表から「リルゾール」の文字を書いているのが見られているし、それは、筋萎縮性側索硬化症に効くらしい薬なので、効くというのは、二三月くらいの命が増えるしかなくて、遂に患者さんは数年を亘って、自分の体の衰えを自分の目で見なくてはいけないまま、避けはしない死亡を迎えにいくべきである。私の薬局では、そのような専門的な薬を持ってはいないので、申し訳ない気持を伝えようとして、その薬の効用、ブランド、探し方、それらの情報を丁寧に説明すると、彼も私に感謝の気持を答えてお店を離れ、深夜を響かす清らかな足音で、空港の廊下の何処かへ姿を消していく。
一面しかない縁に過ぎなくても、私の心には、何となく濁る江波のような、仄かで嫌な感じがしている。それは、一体何のかを分からないが、多分、医療従事者としての静けさで、或る避けられない死亡を見ながらも、その同時に、普通な人としての哀れみをもって、或る命の儚さ、そしてそれに対する医学の無力感を、受けなくてもならないという、複雑な気持である。

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No.3941799 23/12/19 01:28(スレ作成日時)

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