メアド変更から始まった悲しい話

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社会人さん（ 20代 ♂ ）
2019/07/23 22:14(更新日時)

2週間前、携帯のメアド変更をした時のこと。
普段連絡を取り合わない人を含め電話帳に入っている全員にむけて「登録よろしく」のメールを送信した。
程なくしてある人物から返信があった。

「○○先輩!!超久しぶりじゃないですか!!」

こんな内容のメールだった。
送り主は高校時代の後輩の女の子、当時僕が密かに好意を寄せていた一つしたの女性であったのだ。

彼女とは3年ほど前、他の友人も交えて食事会をしたきり、顔を合わせるどころか連絡をとることすらなかった。

今回メールをきっかけとして、お互いの近況報告だとか、たわいもない雑談に花が咲いたのである。

先に話しておくと、僕には女性との交際経験がない。世間一般で言う童貞と言う奴だ。
社会人になり女性との関わり合いも激減した僕はいつしか恋愛以前に人を好きだという感覚すら忘れていた。

そんな中で、メアド変更メールから突然始まった彼女とのやりとりは僕にとって良くも悪くも刺激となった。

たわいもないやりとりを繰り返す内に、高校時代に抱いていた彼女への想いだとか、好意やドキドキハラハラするような懐かしい感情が一気に思い出された。
洪水みたいに押し寄せて来る様々な感覚に脳みそのヒューズが吹っ飛んだ僕は完全に浮かれてしまい、気づけば彼女のことばかり考えるようになっていた。

調子付いた僕は彼女を食事に誘った。
「僕と２人っきりでも大丈夫？」
勿論この確認も付け加えた上でだ。

その返事が来たのが今日の朝、仕事の最中だった。
休憩がてらスマホを確認、着信あり。
なんと結果はOK。

瞬間僕は歓喜した。

しかし、その次の行を読んで僕の期待は底なしの奈落となったのだ。

「あ、今一応彼氏いるのでそれだけは知っといてください(*･ω･)ﾉ」

迂闊だった。アプローチをするなら誰もが真っ先に確認することであろう事柄。
僕は積極的にメールをくれる彼女の様子から高をくくり、最も基本的な手順をすっ飛ばしたのだ。

悪いのは僕だ。そんなことはわかる。明白な事実。
社会人にもなってなにをしているんだろう？
発作的に学生気分を思い出し、3年会うことさえなかった彼女に勝手に恋をし舞い上がり、そして勝手に失恋するというこの上ない愚を犯した。
そしてかつて先輩として慕ってくれた彼女やその他の後輩達も、みな異性と交際したり、経験を積んでいるというのに、僕は何をして居るのだろう？

僕は内心から溢れ出る悲しみや自己嫌悪にただ立ち尽くした。

「さぁ、仕事をしよう」

いくつもの負の感情を掻き分けて、気持ちを切り替える努力をした結果、たどり着いた結論だった。

そうだ、誰も僕を必要としてくれないのなら、今力を注ぐべきはこれだけだ。僕が存在価値を見いだす方法はこれしかないんだ。

そうして休憩を終えた僕は持ち場に戻った。
不思議なくらい体が動く、面白いくらい作業が捗る。本当は悲しいはずなのに、自然と笑顔すらこぼれてきた。可笑しな感覚。

300キロ近い台車をスイスイ運び、猛ダッシュで駆ける僕の姿に同僚達は目を丸くしていた。

これでいい、全部夢だった。俺には仕事という生き甲斐がある。彼女のことなんてどうでもいい。そう自分に言い聞かせてがむしゃらに仕事に励んだ。

続きます