†春‡時を越えて†
「良いか、茨苑…」お父さんの声が聞こえる…何年振りに聞いただろうか、懐かしい顔が思い出される…あっ!気が付けば目の前にお父さんとお母さんが立っている。「お父さんとお母さんが居なくても泣くな。強くなれ…」やだ、何言ってるの?行かないで…手を伸ばしたと同時に目が覚めた ☆上手く進むかわからないけれど物語を作ってみようと思います。ただ、進みは遅いかもしれません…(^_^;)いちよう高校生なので。感想とかレスして頂けたら嬉しいです
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誤字っ子ですいません…Σ(`△´;)今後は気を付けます;また間違ってたらごめんなさい(・ω・;)オイオイ 頑張りますっ
†1-秘密†
「茨苑(しおん)っ、来たよぉ!」
茨苑の家にはチャイムはない。美咲(みさき)は大声で呼んでみた。ちゃんと聞こえただろうか?隣にいる由紀(ゆき)が言う。
「ねぇ、アレって本当なの?」
「アレって茨苑の事でしょ、見ればわかるよ」
「貴族暮らし(?)で家内には池があって、お婆様は茶道と華道の家元…」
目が輝いている由紀…妄想モードに入っちゃったよ…。
私達から見れば羨ましいかもしれない。でも実際本人は凄く苦労してるんだ…
その時、中から物音がしたのと同時に、着物を着た茨苑が笑顔で出てきた
「貴族暮らしなんて大げさだなぁ」
私達は机を挟んで話している。由紀はカワイイッ!て隣ではしゃいでいる。
-今更だけど連れてきて良かったのだろうか…
私、茨苑はさっきからこんな事ばかり考えていた。
理由は2つ。1つは私がこんな風に暮らしているというのがクラスメイトにばれないかという事。古い和風の家で着物で過ごしているのを皆に知られたくない(それにも理由があるんだけどね…)
そしてもう1つは…
私はおそるおそる後ろを振り向いた。鋭い視線を感じる…
お婆様が立っていた。その目は怖い…
お婆様は自分の家に他人が入るのが嫌なのだ。最初は優しい目をしてたのに「友達を家に-…」と言った途端周りの空気がピシッと凍った。説得するのに1時間もかけてしまった…
でも私だって自分の家に友達呼んで遊びたい。お婆様の件はともかく、ばれる心配は無いだろう。2人は親友だ。由紀は家に呼んだのは初めてだけど、美咲は2回目。実際、美咲は一言も周りに話した事はない。
私は由紀にこの事は秘密にしておいて欲しい、と頼んだ。すると、由紀からお決まりの言葉
「なんで~?茨苑カワイイよぉ。何か理由でもあるの?」
黙り込む私。
「知られたくなければ話さないよっ☆」
由紀…良い子だ…
「そのかわりに由紀も着物着て良-…」
私は慌てて由紀の口をおかえる。お婆様が聞いたらどうなるかと考えるだけで恐ろしい。さっきの視線が更に鋭くなった様に感じるのは気のせいだろうか(遅かったか…)
私はここから立ち去るのが1番だと思い、庭へ移動した。中よりかは安全…だろう。
そこにある桜の木の前ら辺に私達は座った。
†2-桜と思い出†
「由紀、来年からここで花見しようかな」
桜を見上げ、呟く由紀。そして頷く美咲。私は首をブルブル振る。お婆様に睨まれる私の身にもなって欲しい。
満開の桜。ここは私のお気に入りの場所だ。
「ねぇ、茨苑のお父さんお母さんってどんな人?」
「どんなだろう…お母さんは勉強にうるさい人かなぁ…」
なんとなく言う私。
「お父さんはぁ?」
しばらく沈黙…そして
「小さい頃亡くなったからよく覚えてないな―…」
途端にシーンとなる。私の馬鹿~、明るくしなきゃっ!
「まぁ小さい頃だからっ」「ごめんね、余計な事聞いて…」
更に暗くなる。ため息…
その時、私はあの夢を思い出した。お父さんの隣にお母さんがいたのが違う意味で辛かった。
もしお母さんもいなくなったら…お婆様もいなくなったら…
私、こんなに弱虫だったんだ
「この桜はね、お父さんとの思い出の桜なんだよ。2人に見せてあげられて良かった」
私はそれについて話し始めた。
小さい頃私はよくお父さんとここに来て色々な事を教えてもらった。残念ながら記憶力のない私は話の内容は覚えてない。
「ここで毎日話したという事、それが唯一の記憶かな」
「優しかったんだね」
美咲が言う。
心地良い風が吹く。ポカポカしてて眠くなってしまいそう。
この話をしたら自然に気持ちが楽になったって感じ。2人も気持ち良さそうだ。
春って良いなぁ…
-と、その時
「ターンターンターンタッタターンタッタターン…♪」
…まるで昼寝を邪魔された気分だ。
誰よ、ダークベーダーの着メロ鳴らしてるのは…。
「うわっ!お母さんだ!」
由紀が携帯を出す(アンタか…)
アレ、由紀の着メロ別のじゃなかったっけ?
「お母さんからの着信はダークベーダーにしてるの」
あぁ、なるほど…
その後、お呼ばれされた由紀は帰ってしまった。
「由紀はぼーっとしてて危ないから私も帰るね」
と、言って美咲も帰ってしまった。
さて、私も戻らないと…
さっき私達がいた所でお婆様は黙ってお茶を飲んでいた。
机には湯呑みと巻物らしき物が置いてあった。
※前回についての注意
某映画にはダークベーダーは登場しません。詳しくは映画をご覧下さい。
†3-cryptogram†
相変わらず黙っているお婆様。ずっと巻物とにらめっこしてる。
「お婆様、その巻物は何?」
「巻物です」
…相当機嫌が悪いみたい。私はそっと立ち去ろうとすると
「宝探しをする気はあるか?」
いきなりの言葉に私は困惑した。
宝探し?
宝探し…か。
「で、その巻物が宝の地図?お婆様お暇なの?そんなのすぐ見つかるよ」
違和感を持ちながらも、私は冗談半分で言った。
困った様な顔をするお婆様
「なに勘違いしてるの。これは地図ではない。暗号だ」
暗号…?
私がそれを解くの?
「あなたのお父さんの部屋にあったんだよ。おそらくこれは…」
言葉を切って、言う。
「家宝だろう」
家宝…!ホントに?!
「私の母上から聞いた話しによると、今までに家宝は何度か掘り出されているらしいが、また元に戻されている様だ」
隠し通しているのね
まぁ面白そうだけど…
「暗号なんて私なんかに解けないよ」
「私が保証する!」
そうですか…
「私も見てみたいしね、家宝」
「お婆様が解けば良いじゃない」
「今の代の者が解くのが決まりさ」
別に嫌でもないしな。やってみるかな。
でも私が言葉を言う前に後ろからお母さんが現れた
「お母さん…」
オロオロする私。お母さん、どうやら怒ってる様だ。
「お母さん、茨苑をどうするつもりですか?」
「どうするって聞いてたんだろ?この巻物の事を。解いてもらうんだよ」
…ヤバイ。小さくなる私。
さっき由紀に言ったけれどお母さんは勉強にうるさい人だ。ちなみに私は中3…
「茨苑は今大事な時期なんですよ?来年は受験!そんな時に勉強〈暗号だなんて!難しいんでしょうよ、それ。お母さんは希望高に行かせてあげたいって思わないんですか?!」
「勉強勉強うるさいね、あんたは!」
お母さんvsお婆様start…私は少し後ずさり。
「わかってないね」
フッと笑うお婆様
「勉強は一気にやるものじゃない。私が思うに茨苑は今からスパルタでやれば後々やらなくなるね!」
「そんな事ないです!私がビシバシやらせますから!」
私の目の前で好き勝手言わないで欲しい…
「絶対そうだねっ」
そしてお婆様のとどめの一言
「お前の子なんだから!」
そういや私はお母さん似だ。図星をつかれたお母さんは黙ってる…
私はお婆様から巻物を持たされ、その場を追い出された(無理矢理…)
※入れ忘れてたんですけどこれは第3部です。
私は、はっとした。そうか…今日は『The☆テストデイ』じゃん。
¢『The☆テストデイ』とは?
これは我が3年1組の担任、田代先生オリジナルの日だ。毎月22日テストをする(休日、行事中は除く。但し、追試あり←6:30~)
始業式に田代先生が言ってた。
「私の生徒の生徒である以上、この『The☆テストデイ』から逃れる事は出来ません。ところで何故22日かわかりますか?」
月の終わりら辺だからかなって思ったけど違った。
「22はあひるが並んでいる様でかわいいでしょ」
と、言ってあひるの絵を描く先生。私達は黙り込む。先生の気持ちもわかるけどね‐…受験生だし…
「おはよう…茨…苑」
「わぁっ!」
いきなり暗~い声がしたので飛び上がってしまった。そこには眠たそうな由紀。きっと夜遅くまで起きてたのだろう。無理しちゃって…
※訂正
田代先生の言った「私の生徒の生徒である以上」は「私の生徒である以上」です。意味からして変ですよね、間違えてすみません。
「由紀~…遅くまで勉強してたの~?ただでなくても…朝弱いのに…」
そういう私も眠い。でも私の場合暗号。勉強なんて全くしてない
ヤバイなぁ…追試かな。
教卓には既に田代先生がテストの準備をしていた…
私は机に着く。と、同時に睡魔が襲って来た。
首を振ってもまだ眠い。軽く頭を叩く。
‐眠い!!
徐々に瞼が落ちてくる。その時…
ペシッ!
‐な、何?!
ふと見ると教科書を持った隣の席の及川駿(おいかわしゅん)がいる。
「い…いきなり何…?」
きっと教科書で殴った(大袈裟)のだろう。
「テスト用紙来てるっつの。テスト中に寝るなよ。追試が待ってるぜ♪」
『そんなのわかってる!』って言いたかったけど言えなかった。私は男子は苦手なのだ…
そして田代先生が先生お気に入りのヒヨコタイマーを押した。
「始めっ」
残り時間はあと数秒…
‐人生諦めも必要ね
私は最後の問に意味不明の式を残して用紙を裏返した。隣の及川は居眠りをしている。
‐『追試が待ってるぜ♪』じゃないのかよ!
「ピヨピヨピヨピヨ」
「はい、おしまいっ」
ヒヨコタイマーが鳴り、せっせと用紙を集めていく先生。
「HRの時返すからネ♪ちなみに追試は明後日よ~」
‐早っ!
廊下へ出ていく先生。そして入れ替わりに数学の先生が入って来る。
「では、号令を」
休みなく授業は始まる(しかも数学のテストの後に数学って…)
私達はくたくただ
「ほら、皆しっかり授業受けて」
先生、せめて生徒の気持ちぐらい読んで下さい…
やっと終わった…
美咲と由紀が来る。
「茨苑はどうせ満点でしょ、良いね~勉強出来て」
「まさか。1回目から出来悪いよ、今年」
そう、私らは2年の時も田代先生だったのだ。
別に頭良いってわけではないけどな…
「ねー、茨苑。これ何?」
美咲があの巻物を指指す。げっ、見付かっちゃった。「え~…っとこれは…」
私は暗号の事を教えた。
「わーっ、すごい!そんなのも残ってるんだぁ」
由紀が大きな声で言ったのでビクッとした。それを運悪く後ろの男子が聞いてた。「えっ、何これ?すげーボロいな」
「これ~?秘密☆ネー茨苑」
私はまだビクビクしてる。
「でも言っても良いんじゃない?」
ドキッとする私。バラすという事は私にとっては良くない!
「ごめん!」
私は巻物を持って教室を飛び出した。
「茨苑…!」
「由紀、気にする事ないよ」と、美咲。由紀は我慢出来なくなってきてた。
「美咲、茨苑の事…クラスにバラしたくない理由知ってるんだね?」
「…由紀?」
「私にも教えて!私、茨苑の役に立ちたい!」
「私と茨苑は小5の時に同じクラスになってね…」
美咲少しためらったが由紀に話す事にした。誰にも聞かれぬ様、周りを気にしながら-
-茨苑はね、今よりもおとなしい子だったんだ。私も最初どう接すれば良いのか困ったくらい。
でも仲が良くなるにつれて茨苑はとても明るい子だって知ったの。色々な事を話してくれた。勿論あの暮らしの事も。でもおとなしかったからかあんまりクラスの子は知らなかったと思うな。
1番話してくれたのは親の事かな。茨苑、2人が大好きだから-…
-でもそんなある日、父親が亡くなったんだ
茨苑はとても健康的な子だから欠席した時は驚いたよ。父親を亡くしたショックで何日も寝込んでたみたい…
数日後に久し振りに登校して来たんだけど、クラスの男子が茨苑をからかい始めたの。
『泣き虫~っ!』
『私、パパママがいないとさ~み~し~い~!はははッ!」
5.6年ってすごくウザイ!イライラするよねっ!(美咲の文句)
でもそれ6年の3学期だったから茨苑は頑張って耐えてたんだ。私もなるべく茨苑の側にいた。茨苑、友達も多くはなかったから…
そして中学に入学。茨苑は前より明るくする様努力した。でもどうしても男子には普通にする事が出来なかった。あの時のがトラウマになったのね…
2時間目の中頃に茨苑は帰ってきた。
「保健室にいました」
って言ってたけど見た目は元気そうなので美咲と由紀は安心した。
そしてそのまま昼休みになった。美咲と由紀は茨苑をお弁当を持って屋上へ連れてった。
「茨苑、さっきはごめんね」
と、由紀。
「気にしないでっ!もう元気ッ」
茨苑の言葉が無理に言っている様に聞こえる。
由紀は思い切って言った。「私、茨苑の事聞いたんだ…小学校の事…」
私、茨苑は戸惑った。あの事を聞いた?美咲が由紀に話したの…?
「茨苑…」
美咲が心配そうに言う。
-…私…2人を家に呼んだのは間違いだったのかな…でも2人は悪くない
私はただ強がっているだけの泣き虫だ…
「ごめん、私別の所で食べるね」
「茨苑!」
立ち去ろうとする私の腕を美咲が掴んだ。
「私は遊び半分で言ったんじゃない。私達、茨苑の力になりたいからなんだよ!」
「美咲…」
「忘れないでよッ、私達は茨苑の見方さぁ」
由紀が笑顔で言う。
…私は周りにからかわれるのが嫌だった。怖かった。我慢の毎日で…でももう怖くないかも
「こ…こんな弱虫で頼りない私でも…良い?」
「当たり前だよ!」
私って馬鹿だな…こんなに見方がいるのに気付かないなんて。
「あの暗号、難しいんでしょ?人が多ければ多い程、答えは見えてくるよ」
私は本当に良い友達を持った…
「ありがとね…」
†4-迷宮†
帰りのHRになって貰った物1つ。
先生が来て見覚えのある紙(赤いペンの線が目立つ)を配った。
初めての『追試』だ…
何度も言うけどお母さんは勉強にうるさい人。小テストだろうが何だろうが悪ければ怒る。
『あんた、勉強すればもっと良い点とれるでしょうが!甘く見てんの?!』
これは普段の場合。でも今回は絶対
『あの暗号だかマンゴーだかよくわからないのを遅くまでやってたのね?!あんなの解けなくても勉強さえ出来れば良いのよッ!』
て、言われそう…困ったなぁ…
でもあれは-
今解くべき暗号だと思う。…けどなぁ
私は巻物を見る。
何かおかしいんだなぁ…さっきから何かが引っ掛かてる気がする
「茨苑帰ろう」
由紀が言う。私は我に返って帰る支度をした。
「に山野。りまいふ者けじと…」
意味不明…
「か向へ川花いならば…」
駄目だ…きっとこれはそのまま縦に読んじゃいけないんだ。
私はさっきから暗号に四苦八苦してる。ここは私の部屋だ。
あと5分経ったら勉強しないと…でも5分じゃ解けっこない…
その時、私のケータイが鳴った。メール…美咲だ。
「暗号のコレ→●何だろうね?」
●…?
確かに2つの文に●が同じ場所にある。文字が穴埋めになってるのだろうか…同じ文字が…でも…う~ん
私はまだ気付いてなかった。それが重要な印だという事に
眠い…追試の朝。いつもより早起きして学校に向かっている。教室には美咲と由紀はまだ来てない。すると後ろから先生が来た。「おはようございます茨苑さん、爽やか~な朝ですね。頭が働くでしょう」「おはようございます」私はなるべく爽やか~に言った。席に着く。隣には及川がいる。「お前も追試組?珍し~い」「勉強何もしなかったから」話し掛けないで欲しい。私は時間があったので勉強をした。それでも時間があったので予めメモしておいた暗号を出した。「に山野。りまいふ者…何が言いたいんだ?」及川が顔を突っ込む。「暗号」「暗号??そんな趣味があったんだ」うるさいなぁ!!「だから何」「俺もやりたい!貸して」解けるわけないだろうに…でも及川は驚く様な事を言った。「お、解けるかもしれない」
†5-導き†
嘘?!
「え…本当に??」
「俺結構パズルとか得意なんだぜッ」
なんかショック…少なくとも及川よりは頭良い自信あったのに
「でもわからない。俺の不得意な分野が入ってる。記憶力ないからなぁ」
え…どういう意味?
「見覚えあるんだけど…う~ん」
「待ってよ、ヒントは?」
一人で考え込んでる及川にイライラして来た。
「早速かよ…」
早く解きたいんだから!
「…maze…m・a・z・z」
??
「メイド?!」
「ちげぇよ!『メイズ』」
英語?
「コレがヒント。こんな勉強駄目な俺が意味のわかるまだ習ってない英単語(笑)」
「意味は?」
「駄~目、あくまでヒント」
しまった!辞典忘れた…先生が前を通る。
「先生~『メイズ』の意味…m・a…」
「は~い、茨苑さん。座って~♪それは自分で調べましょうネ☆テスト始めま~す」
……
隣では及川が笑ってた。
【maze】-迷路・困惑…
美咲の電子辞書にそう出た。コレがヒント??
「及川、私達に喧嘩売ってるわけ?!何がヒントよ」
由紀が文句を言う。今はお昼休みで屋上にいる。
「迷路…」
私は呟く。
何だろう?わからない。
迷路-…startとgoalがあってグニャグニャ曲がりながら進んで行く…。
私は暗号文に目を移す。
迷路か……アレ?
『あのマーク』が目に入る。同じ所にある。そして2つの文。その時
まるで暗闇がいきなり明るく照らされた様だ
「紙とペン貸して…?」
「茨苑…わかったの?」
「うん、確かに及川はちゃんとしたヒントを言ったよ」
私はある文を書いた。それは-…
《今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。》
「かぐやひめ……」
2人が声を合わせて言う。
「この①の文…コレが[かぐやひめ]だよ」
「????」
私はあのマーク…●を書く。
「コレは何のマークか…コレは〔迷路のstart〕だよ」
「あ…あ~!なるほど!!」
美咲が声を上げる。
「え、何??どういう意味??」
と、由紀。
「つまりね…」
┌──┐┌────┐
└─┐└┘┌┐┌┐│
┌─┘┌┐│└┘││
└──┘│└┐┌┘│
┌───┘●┘└─┘
│┌┐┌→
└┘└┘
「こういう風に●から→に向かって読んでいくの。〔かぐやひめ〕の一部分が出るでしょう。②も同じルートで●から→に読んでいくと…」
〔この暗号を解けたのならば、紫陽花川へ向かい、川の下流へ(行←間違い)向かって歩け。但し足元に注目して歩くこと。次への手がかりをつかめ〕
「紫陽花川って…名の通り紫陽花が沢山咲くトコ?今は咲いてないだろうけど」
「放課後行ってみるよ!」
私は興奮し始めた。暗号が解けた…及川のおかげでもあるけど、何か気持ち良い!
-キーンコーンカーンコーン…「あ、予令だ。2共行こう!あと、ありがとね!」
私は軽快な足取りで教室へ向かった。
「あ!茨苑私も放課後…」
そう言う由紀の言葉を美咲が遮った。
「私達は手助けしてるだけ…ココは茨苑1人に任せましょう」
「美咲…」
「それよりさ…あの文変だと思わない?」
何が?という顔をする由紀。
「あの巻物って昔から受け継がれているんでしょう?なのに何で『現代語で書かれてるの?』」
私は紫陽花川へ向かって歩いている。すごく緊張して落ち着かない。
紫陽花川に着いた。紫陽花はまだ咲いてない。でも梅雨になるとコレが綺麗なんだ。
『下流へ向かって歩け』
一体何が待ち構えているのだろう…
私は足元を見ながら歩き出す。そういえばお父さんがよく私をココに連れてきてくれたっけなぁ…
紫陽花よか、鯉に夢中でまるで子供みたいだった。
アレ…向こうにお父さんがいる??鯉に夢中になっている。時には虫に気付いて捕まえようとしてる。でも失敗ばっか。なんか…タイムスリップしたみたい…
-と、その時
「おぉ!お前解けたんだな!」
私は我に返った。今の言葉はお父さんが言った…いや違う…
及川だ。こっちに手を振ってる。
私…及川=お父さんに見間違えたんだ。
「?どうしたんだ??」
私はブルブルと首を振る。『及川がお父さんに見えた』『タイムスリップしたと思った』なんて恥ずかしくて言えない!
でも何でココにいるんだろ?及川が私が言いたい事を感じ取って言った。
「そろそろ解けたかなぁって思って来たんだよっ。そしたらドンピシャ☆」
私はゲッソリする…なんか及川に馬鹿にされた感じ…
悔しくなって私は言った。
「『かぐやひめ』…私は何も見ずにわかったよ。記憶力のない誰かさんはわからなかったみたいだけど」
「うっ」
よし、やり返せた。私はガッツポーズする。
すると何故か及川が微笑んで言った。
「なんだ、話せば面白い奴じゃん」
え?
「学校ではおとなしいって感じだけどさ、皆とそう変わらねぇよっ。自信持てよ」
私は不思議に気分が軽くなった。
私は下流へ向かって歩いている。後ろからは何故か及川。
私は、言う。素直に言おうじゃないか。
「ありがと、暗号」
「別に~?」
「私、絶対あのヒントがなければ解けなかった。そしたらココに来れなかった…」
本当に感謝してる。さっきちょっとした勇気をくれたのも及川だもんね。私は振り返る。
「でもね次は私が先に解いてみせる。最後まで諦めない!」
及川は固まった。こんなに熱心なコイツ、初めて見た…
「あーーー!!」
ビクッ!とする及川。一体何だ?
「見て見て、コレ」
そこには木箱の様な物が埋まっていた。きっとお父さんがわかりやすい様に埋めたんだ。でももし他人に掘り起こされたらどうするつもりだったんだろう?
私は木箱を出し、開けて見た。するとまた巻物が出てきた。
†6-第2の挑戦†
・を-。 ・ぬ-待
・色-星 ・ど-に
・り-我 ・匂-公
・る-つ ・散-て
・は-草 ・へ-園
・ぞ-す ・む-ら
・我-君 ・た-を
・世-花 ・な-の
・が-が ・れ-愛
・常-る ・ら-な
・酔-こ ・浅-我
・き-最 ・ず-る
・見-ま ・せ-居
・ひ-こ ・夢-期
・じ-で ・も-に
「また暗号??」
本当に解けるかどうか私は心配になってきた…
私は居間であの暗号を考えている。そして焦っている。
もしかしたら及川はもう解けちゃったのかもしれない、言わなきゃ良かったかも…駄目駄目ッ!落ち着かなきゃ
私は生け花をすることにした。私の趣味だ。花は私の分身の様なモノっていうくらい花が好き。
しばらくしてから再開。頑張るゾッ!
-…がその時
「茨苑…」
お母さんが立っている。ヤバイかも
「こんなのばっかやって…お母さん知っているんだからね」
お母さんの手にあるのは…えぇ?!
「何であの小テストを持っているの??」
まだ学校にあるはず(?)のテストが…
ため息まじりにお母さんが言う。
「まるで見て下さいって言ってるかの様に廊下に落ちてたわ」
勘違い…?持って帰って来てしまったのかしら??(そして運悪く落とした…)
そしてお母さんが、言う。
「来年は受験よ。どうでも良いの?」
「あッ!」
お母さんが巻物を取る。
「コレは…しばらく預かっときます」
「お母さんお願いッ!私、勉強も頑張るから、絶対志望高行くから!」
コレは今解くべき暗号…私は思っている。でもそれがお母さんに迷惑をかけてるのなら…それは私の為だから。
「お願い…それで成績が下がったら……」
「わかったわ、もう良いよ」
お母さんが肩に手を置く。
「茨苑を信じるわ」
「ありがとうお母さん!」
でも私は気付かなかった。後々傷付くのは自分なのに
「んん~…アレ~~??」
約1週間家で勉強やらなかっただけでこんなに出来なくなるなんて…
その日、私は夜中まで勉強をした
「茨苑おはようッ!」
「…おはようッ」
朝。私は皆になるべく元気に接した。迷惑はかけたくないから。それでも
「茨苑、大丈夫??」
と、美咲。
「え?何が?元気元気!!」
素直に言えば良いのに…と思うのに強がっている自分がいる。
-…私は弱くなんかないんだから
こんな心の整理が出来てない時にあんな人達に会ってしまうなんて
†7-不運な再会†
「はぁ~ぃ、僕ミッキー♪」
ギョッとする私。目の前にはミッキーのうちわを顔の前で持った及川。
「何ビクッてるんだよ、文化祭に使うお面だよ、コレ」
今は10分休み。勉強中の私の前にいきなり僕ミッキーなんて言われたらビビるに決まってる。
「もぅ文化祭の準備かぁ…」
私の学校は文化祭が他校より早い。だから準備も早い。私のクラスのテーマは「Disney」。
「俺うちわ係だからなっ、それよりさ…」
私がやってる問題集を覗き込む及川…何?
「いつもなら巻物取り出すのに今日は勉強?あ、もう解けたとか?」
「まだ…だよ」
「あー、なるほど」
さっきから何よ…
「この間の結果、結構ショックだったんだな」
私はドキッとした。
「別に…最近勉強してないからしようと思っただけ」
私はまた問題集に目を戻す。
しばらくの沈黙の後、及川が口を開いた。
「放課後空いてるか?」
は?
「手伝うぜ。あと、星乃(美咲)と七瀬(由紀)も呼べよ。もちろん巻物を持って、な」
-…という事で
「2人共わざわざゴメンネ…」
「別に良いよ。それよりなんで解読に及川が関わってるのか意味不明なんだけど」
「俺これでも解読得意なんだぜ!面白そうだしなっ」
「へぇー、誰が?」
私達4人は学校の机をつけて解読会議。
「でもあの暗号、及川も解いちゃったんだってね。信じられないケド」
及川は頭が悪いってイメージがあるからね…にしても
本当に私は色々な人に助けられてるんだなぁ。こんだけ助けがあれば勉強なんて楽勝かも?!
「あ゙~喉渇いたw…」
ピクッ。私の耳が動く。
「そぉだね~カラカラ」
「私が買って来るよ!皆何が良い?」
私は言った。せめてお礼を。
「でも…自販機校外だよ」
「良いの良いの!行ってきます」
私は教室を出た。
「お茶お茶…っと」
中学の前に星草公園という公園がある。そこに自販機があるのだ。
お茶を4本買う。すると男子の声が聞こえてきた。5人くらいの集団だ。
「あ?もしかして…」
集団の1人が言う。
はっ…私は気付いた。
その男子は小学校の元同級生だったのだ。
「何、知り合い?」
「おぅ、小学校の時の同級生」
にっと笑う。その笑みがとても怖かった。
「へぇ、そっか。お前こっちの学校だったのか」
「……」
「どうせまだ泣き虫娘なんだろ」
やめて…もう聞きたくないのに!
「ははっ何それ」
「小学生のコイツの事。今もだろうがな」
-美咲由紀…及川!助けて!
「そういや…星乃だっけ?小学校の時そいつにベッタリだったよな。でもな」
美咲?
「きっとすげぇ迷惑してるんだぜ、そんな人に頼ってばっかだと嫌われるっつの」
嫌われる?私が?美咲に?
違う…由紀や及川も…
確かにそうかもしれない。皆がいる。だから私は勉強がやれる。楽勝だなんて自分勝手な考え。
今は大丈夫という甘い考え。
本当は1人でやらなきゃいけないのに
「おい!お前ら何やってるんだよ!」
振り向くと及川がいた。
「別に?同級生と懐かし思い出話しをしてただけ」
「…同級生?」
5人に絡まれてたと思ってた及川は安心した。
「…それよりさ」
その男子が及川に耳打ちする。
「人との付き合い方はよ~く考えた方が良いぜ」
「は?」
-5人は去っていった。
「…何、感動の再会?」
私は何も言わず、教室に向かった。
「あ、茨苑おかえりぃ」
「及川を手伝いにそっちに送ったケド、役立った?」
「俺モノじゃないんですケド」
私はお茶代をもらったあと言った。
「やっぱり今日は止めよう」「え、何で?協力するって」
と、美咲。その言葉がズキッときた。
「…やっぱりコレは私が解くべき暗号じゃん。なのに私、何も出来ないもん。この間のだって及川のヒントがあって解けたって感じだったし…だから」
「そうだよな。俺が余計だった」
え…?
目の前には及川。その及川がまた口を開く。
「1人で解きたいもんな、俺、口ばっか挟んで」
違う…!待って!
「及川は悪くない!私が…」
私が…『弱いから』?
1人で出来ない。だから人をあてにしてばっか。
じゃあどうすれば良いの?!1人じゃ出来ないのに…!
「ごめんね」
私は教室を出た。
†8-トラウマ†
家に帰って自分の部屋に入った後、私は泣いた。
頭の中がゴチャゴチャしてて何を考えれば良いのわからない。
わかってる。悪いのは私だ。あの男子が言ったのは本当の事。美咲ばっかをアテにしてた。
お母さんとの約束。それを守る為に3人を利用してる。というか、誰かが助けに来てくれるのを心のどこかで望んでただろう。大体学校で巻物なんて出してたら人が寄って来るに決まってる。
「茨苑!入るよ」
…!お婆様だ。
手の甲で涙を拭う。
「どうぞ」
ガチャ…お婆様が入ってくる。
「どうだい茨苑、暗号は解けたか?」
「はい、2個目の巻物を解いてます」
「へぇ!茨苑1人で解いたの?」
どう答えよう…お婆様はどう反応するだろう。
でも私は何も言ってないのにお婆様には伝わっていた。
「茨苑、私は別に1人で解けとは言ってない。でも本当にちゃんと考えてるか?」
ちゃんと解いてる…とは思ってるけどそう言われると…
「私…人をアテにしてばっかなんだ。でも1人じゃ何も出来ないし…」
「…怖がっちゃいけないよ。男に何を言われようが、ね」
え?お婆様もしかして
「知ってたの?私が小学生の時男子にからかわれてたの」
「私にはお見通しさ」
…そうだったんだ
「アンタの父親が亡くなって学校では言葉の矢を受け…精神的外傷を負った。大変だったんだね」
「お婆様…」
私はまた涙が出そうになった。
「"自分では何も出来ない"そんなのはわからない。第一アンタは暗号をまだ何も解いてないから」
「そうね…アレは及川が解いた様なものだったし」
「そうではないっ。本物の暗号を解いてないって事だ」
…?どういう意味??
本物の暗号…て何?
「一番気付いて欲しい暗号だ、以外とその及川という者や美咲がもう気付いているんじゃないかな」
「あれ?ちょっと待って!お婆様はもう暗号を…?」
「さ、そろそろ葉月(私のお母さん)が買い物から帰って来るな」
そそくさと部屋を出て行こうとするお婆様。そして振り返り、言う。
「お前が暗号を解けたその時、強くなる勇気を得るだろう。今はそれに向けての第一歩だ」
ドアがパタリと閉まった。
あれから私は一生懸命考えた。
前は「かぐや姫」だったからまた古典が関係してるのかな。でも迷路とは違うな。
え、ちょっと待って。
『何で現代語で書かれてるの?』コレは昔からあるんじゃないの?
それは美咲が気が付いた事だった。そして段々と答えが見えてくることとなる
その夜は遅くまで起きてた。勉強、暗号を30分おきにやった。きつかったがその甲斐があった様だ。
「解けた…」
私は呟いた。でも…
どうすれば良いんだろう。お婆様の言う「本物の暗号」も完璧には解けてない。
私は紙に書いた答えをもう1度読んだ
○-× と並んでいるこの暗号…(○×は文字)
そこで○を並び替えてみると…
色は匂へど散りぬるを
我が世たれぞ常ならむ
浅き夢見じ酔ひもせず
『いろは歌』になる!その順番通りに×も並び替えると…
星草公園にて我待つ。
君が花を愛するのなら
我最期までここに居る
あるメッセージが出る!
(以上解説)
P.S.簡潔でわかりづらくてごめんなさいっ。質問もアリですι
私は大体「本物の暗号」を解いた。まず言える事はコレは昔からある暗号ではないという事だ。全部現代語で書かれてるし、この巻物はとてもわかりやすく埋まっていた。まるで"つい最近埋めた様に"。
ではそれを出来るのは誰か。お婆様しかいない。何で嘘を言ったのだろう?
「…真相はここにあるんだろうね」
星草公園…行けばわかるかもしれない。今は朝の6時。外は段々と明るくなっている。
行こう!ここに
その時あの3人が頭に浮かぶ。
…駄目駄目!1人で行かなきゃ!
私はまだ肌寒い空気の中、目的地に向かって歩き出した。
†9-莟†
早朝の公園。ジョギングしている人、犬の散歩をしている人…様々だ。でもそうはいない。
答えの紙を手に周りを見回す。星草公園はとても広い。一体どこにあるんだろう?
私はベンチに腰を掛ける。
「君が花を愛するのなら」
「我最期までここに居る」
「君」と「我」。
コレは最近の暗号…て事は「君」って私?
君が花を愛するのなら…確かに私は花が大好きだ。
では「我」は?
普通は暗号そのものだけど人に当てはめてみるときっとそれはお婆様だろう。お婆様はこの暗号の事を知っていた!
単純に考えてると次の場所は…
「花を愛するのなら我最期までここに居る」
だからきっと花のある所だ。
星草公園には小さい花壇がある。私はそこに行く事にした。
でも何かスッキリしない。
「お婆様は何が目的なの…?」
花壇には花が沢山咲いてた。私的には夏の花壇が一番好き。向日葵が綺麗に咲くんだ。
その隅に…
「あった…」
まるで玉手箱の様な箱が埋まっていた。私は手を伸ばす。が、その手が止まる。
-もしかしてコレが宝?
私はなぜかそんな予感がした。暗号の文脈とかからかもしれない。
ドキドキしながら箱を取り出す。開けてみるとそこには
「―…え?」
「冊子―…?」
紐でとめてある古い冊子。どこかで見た事のあるような……?
開くと文が連なっていた
『★4月5日 晴れ
今日はお父さんと桜見に行った。庭の桜はとても綺麗に咲いていた…』…
『★6月17日 雨
今日は大雨。凄く降ってたケドお父さんが迎えに来てくれた。夜は一緒にてるてる坊主を作って窓際に吊した…』…
「コレ…私の日記じゃん!」
小3から書き始めた日記。懐かしいな。でもなぜ?
この日記はいつもお父さんの部屋に置いてあった。お父さんが亡くなって以来書いてない。
「コレが宝?!」
私…自分自身の日記を求めてここまで来たの?この日記の為に…
-なんか脱力…お婆様ってこんなに人をからかうのが好きだったっけ…
というかなんでお婆様が日記を持ってたのか?置場所を知ってるのは私とお父さんだけなのに…
私はため息をつく。お婆様に隠し事は出来ないんだね。そしてこの日記は私が持ってろって事か。
「騙されたなぁ~、お婆様にはもう参っちゃうよ。ま、コレも私の宝の1つの様な物だし、忘れられてたから手に入って満足、かな!感謝感謝~」
そう言いながら何気なくページを捲る。かつて小さい頃私が書いた日記…最初の方なんてちゃんとした文が書けてなくて初々しく感じた。すると
「アレ…?最後に何か書いてある?」
短い文。
それを読み終わった時-一瞬時間が止まった様な感覚を覚えた。というより違う世界に入った感じに
まるでまだ莟だった花が開花した様な-…
次の瞬間気が付くと私は日記を抱えてある場所へと走り出していた。
†10-to bloom†
‐私にとっての宝は茨苑の宝であって欲しい
まだ幼い頃の思い出
忘れてませんか?
今もきっと心の奥で輝いている
‐私は忘れない
あの時までの記憶
決して消える事はない
‐最期は
思い出の場所でまた出会える事を願う
-午前7時半頃
段々と人が増えてきてる。それでも休日のせいか少ない。学生もいる。部活等でだろう。
そんな事には目もふれず茨苑はひたすら走った。
『思い出の場所』へ
コレはお婆様が計画した事じゃないんだ。
茨苑は思った。
よく考えればお婆様が日記1つでこんな回りくどい事するハズはない!それにこの文。書いた主が私を待っている!お婆様が知っていてこの計画を可能に出来る人物-‥
私は呟いた。
「待ってて、お父さんッ」
私はそこに着いた。
あの桜の木だ。もう花は散ってしまっている。
私は根元を探しまわった。どこ?どこなの??
その時私の脳裏にはあの日の記憶が蘇っていた。
‥‥・
「茨苑それ綺麗~」
「コレ?お婆様がくれたの」
小学校の教室で私と美咲はいつも通りに話していた。
「お婆様?茨苑のお祖母さんの事?」
「はは、怒ると怖いからそう呼んでるの」
「へぇー‥なんかお嬢様みたい」
私はそれを出す。和風のハンカチだ。
「結構お気に入り♪お父さんは色違い持ってるの」
「なんか本当良い家族だよね、羨ましい」
茨苑は苦笑い。そうなのかな…
そんな事を話していると担任が教室に入ってこっちに近付いてきた。
「先生…なんですか?」
「えっと…お母さんから電話がかかってきてて」
電話…?
「はい、わかりました。ごめんね美咲」
「ううん、行ってらっしゃい」
私は先生についていった……‐‐
「……」
いきなり黙っていなくなってしまったお父さん。とても辛かった。私だってまだやりたい事が沢山あったのに…
ふと指が固い物に当たった。
「…あった」
同じ様な箱。私は恐る恐る開けてみた。そこには
花が一杯に詰まっていた。よく見ると手作りの花。
お父さんが残したモノ。
「なんでよぉ……」
私は涙が止まらない
「私は…お父さんの手からもらいたかったのに……」
私はしゃがみこんむ。
「黙ってたってわからないじゃない…」
その後ろから足音が聞こえてきた
†最終章-勇気†
「お婆様…」
お婆様は私の隣に来る。
「…お婆様は知ってたのよね」
お婆様は何も言わない。
「どうして何も言ってくれなかったの?お父さんは自分はもう長くないって事は知ってたんでしょ?!私…最後くらい一緒にいたかった!なのに-‥」
パンッ
お婆様の平手が飛んだ。
「あんたはなんでわからないの!全部あんたの為に…あんたに強くなって欲しかったからなんだよ!」
「え…」
「あんたが男子にイジメられてるって始めに知ったのは私じゃない!あの人なんだよ!」
「…」
「あんたはあの人が亡くなる前からイジメられてたんでしょう」
そうだ…お父さんはそれに気づいてたの…?
「もし私がもう長くないって言ったら茨苑は学校を行きたがらないだろう…あの人は言ってた。だから死ぬまで何も言わないって。その変わりに…この計画をたてた。勿論準備は私がしたわ」
「本当はもっと早くやりたかったんだケドね」
「だからって…」
私は花を手にとる。
「茨苑…あれはいきなりの事だったの。あんな早く」
泣き続ける茨苑
「…気づいてないみたいだね茨苑。2つ目の暗号の答えの最後の2文、読んでみな」
「?」
…君が花を愛するのなら
…我最期までここに居る
「…あ……」
『我最期まで「ここ」に居る』
「見守ってるって事だよ。あの人はこんなに近くに居るんだから」
手の中の花達…ここに居たんだね
「ここからはあんた次第。少しずつ強くなれば良い。あんたは独りじゃないんだから」
私は立ち上がった。
「お婆様、今日も満開だね」
いつまでも居るよ
私は散る事のない花だから
†‥最終話‥†
「おっはよう!!」
「お、おはよう」
月曜の朝。今日も良い天気!隣には美咲と由紀。
「元気だねぇ」
「そぉ?あ、今日先行く!早く行きたい気分なの!じゃ」
「へ?」
走り去って行く茨苑。ふと後ろを振り返った。
「この間はごめんね」
それだけ言うとまた走り出した。由紀が言う。
「茨苑どうしたんだろう?何かあったのかな」
「終わったんだろ」
いつの間にか後ろには及川が居た。
「うわっびっくりしたぁ!…て、それどういう意味??」
「多分宝が見つかったんだよ」
「えっ!本当?!」
「勘。なんか変わったじゃんアイツ」
「勘なんてあてになんないし!」
「…そうかもしれない」
美咲が口を挟む。
「あんな茨苑初めてだよ。なんて言うか…素直で、強がってない。そのままの茨苑。無理してる様に見えない」
「確かに…そうかも」
「ほら、男の勘を甘く見ちゃ駄目だぜぃっ」
及川を横目で見る由紀。
「へぇー。そんなに茨苑の事見てたんだぁ」
「ば…っ、なんでそうなるんだよ!」
「見てると相手の気持ちとかわかっちゃうもんだよ」
「黙れ!」
・・…
ここはあの公園。
「今年の春はそろそろ終わりかな」
私は空を見上げる。青々とした空…春の空。広々した公園だから私はここを選んだ。
お父さん、聞こえるかなぁ
私は大きく深呼吸する。
今まで言えなかったこの言葉。数年の時を越えて届くと良いな
‐お父さん、ありがとね
春の思い出をありがとう
心地よい春の風はまだ吹いていた
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