注目の話題: 子供を産むことに前向きになれない; 自撮り彼女が無理すぎる; わかっていてもやってしまいます

🎁ただ・愛のためにだけ…✨

No.78　07/06/28 08:04
旅人0 あ+あ-

🎁66🎁

『…病院には行ったの？』

濡れ髪をﾀｵﾙで拭き取る事も忘れ誓子はただ軍司の横で背中を擦っていた…

『行ったよ…でも何処に行ったってどの医者も言う事はみんな同じ…《力にはなりたいが…現代の医学では特効薬もなければ最善の治療方法もない…ｳﾁの病院ではこれが限界です》って…せいぜい筋萎縮の進行を止める薬くらいしか出してはくれない…』

御子柴から告知されたのと軍司本人の口から告知されたのではやはり誓子にとってその恐怖感は雲泥の差だった…誓子の背筋にいいようのない悪寒が走った…

『…ごめん…ね…言いにくい事何か…無理矢理聞き出したみたいで…』

『うぅん…ｾｲちゃんには感謝してるんだ…いつもこんな僕なんかを気にかけてくれて…ﾎﾝﾄ､感謝してる…』

軍司の言葉に下を向くと思わず涙が落ちそうになり､誓子は軍司とは反対側の壁のほうを向くと掛かっている絵を見るﾌﾘをした…

『初めて自分の体の異常に気が付いたのはね…2年前の秋…新人絵画ｺﾝｸｰﾙで銀賞貰った日の数日後からだったんだ…』

軍司は時折激しく咳込みながらもゆっくり自らの病気の経緯を誓子に話し始めた…窓の外はすっかり日が暮れて遠くで烏の群れが哭いた…