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🍁光と影🍁

レス5 HIT数 1086 あ+ あ-

璃呂( 5vzTi )
07/08/23 01:04(更新日時)

case1.

記憶の奥深く、暗い闇の中で、いつも子供の泣き声が聞こえた。

…えーん…えーん…

子供の泣き声は止まない…。

オレは必死に泣いている子供を探す。多分、オレと同じぐらいの子供。
足が思う様に動かない。
進みたいのに進めない。

でも声だけは遠ざかっていく…。



「オレはその子を助けたい」

白い壁に囲まれた部屋で、奈緒希(ナオキ)は呟いた。
部屋には両腕、両足を拘束された奈緒希と白衣を着た精神科医がパイプ椅子に座って机を挟んでいた。
「その子というのはキミの弟、奈緒己(ナオミ)クンかね?」
眼鏡をかけ、小太りの医者は尋ねた。奈緒希は、俯いたまま「分からない」と呟いた。

No.557642 07/08/15 14:18(スレ作成日時)

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No.1 07/08/15 14:58
璃呂 ( 5vzTi )

🍁再会🍁

コンコン

「奈緒己サン、お父様が呼んでいますよ」
養母の秋絵がドアの向こうで、消え入りそうな声で伊集院奈緒己(イジュウイン ナオミ)を呼んだ。奈緒己は持っていたペンをノートの隣に置き、椅子から腰を上げた。
「今行きます」
出来るだけ明るく、返事をすると奈緒己は傍に置いてある古ぼけた鏡に目を向けた。
くっきり二重の大きな目と、スッと通った鼻筋。自分の顔がハッキリと写る鏡を見て、奈緒己は少し微笑んだ。日本の何処かに居る、もう一人の自分に向け、笑顔を送る事が奈緒己の最近の日課になっていた。
養父が呼んでいた事をハッと思い出し、奈緒己はパタパタと足早に自室を出た。



今や次期総理大臣とさえ言われている養父、伊集院利久(イジュウイン トシヒサ)を前にして奈緒己は柔和な顔を崩さない。
「奈緒己よ、今日はな…」
養父も奈緒己には弱いのか、皺だらけの顔を和ませ、嬉しそうに声を弾ませた。
「お前が喜ぶと思うてな、お前の兄を探したんじゃ」
薄くなった頭を撫で付け、利久はカカカ、と笑った。

No.2 07/08/15 15:24
璃呂 ( 5vzTi )

🍁ふたり🍁

奈緒己は驚きを隠せなかった。
本当に、兄が見つかった???
それだけで鼓動が高まる。
「慌てるでない。もう連れてきておる」
利久は秘書の宗方(ムナカタ)に彼を呼ばせた。
宗方が奈緒己そっくりの男を連れて、部屋に戻ってきた時、奈緒己は嬉しさで飛び上がりそうになった。
「………ナ、ナオ?」
駆け寄る奈緒己に男、柏木奈緒希(カシワギ ナオキ)は微笑む。
「そーだよ♪ナオ」

ボクと同じ背格好。
ボクと同じ顔。
ボクと同じ声。
笑い方、仕草、全てコピーしたように同じ。
もう一人のボク。

カカカ、と笑う利久に奈緒希と奈緒己が同時に振り返る。
「顔も声も一緒とは。区別がつかんのう、宗方」
急に呼ばれた宗方は、仮面のような笑みを浮かべる。
「今も服装でしか区別つきませんね」
その言葉を聞いて、利久は養母の秋絵を呼んだ。
「秋絵!この日の為に用意した衣装をココへ!」
秋絵の「ハイ」と言う返事の後で、利久は奈緒己と奈緒希をソファに座らせた。
「今日はお前達の為にパーティを開いたんだがな、再会を祝して…どうかな?」
奈緒希と奈緒己を交互に見て、利久は微笑んだ。

No.3 07/08/15 16:45
璃呂 ( 5vzTi )

🍁宴🍁

用意された服は、計ったようにピッタリだった。
奈緒己に白を基調としたタキシード、奈緒希には黒を基調としたタキシードが渡された。
「凄いな…金持ちは」
皮肉げに笑う奈緒希に、奈緒己は何も言えなかった。
だが、金持ちになりたかった訳じゃない。奈緒希と離れたかった訳じゃない、と奈緒己は言いたかった。
「…ナオ…」
おずおずと自分を呼ぶ奈緒己に、奈緒希は笑みを浮かべる。
「…ん?」
「ボクは…金持ちになりたかったんじゃない…ナオと離れたかったんじゃない」
奈緒希は、笑った。知ってる、とでも言いたげな顔。
少し、意地悪な笑顔。
「冗談だよ、ナオ」

奈緒己の頭をクシャクシャにすると、奈緒希は優しくそう言った。




宴の始まりを、緩やかに昇っていく月が告げた。



華やかな衣装、豪奢なシャンデリア。
全てが伊集院利久の力であると見せつける様なパーティ会場。
そこに何百人居るであろうか。政治家、有名大学教授、医師、各界の有名人がここぞとばかりに着飾っている。
「本日は先生の息子サンがお見えになるようで」
利久の機嫌を取ろうと、誰かがそう言った。

No.4 07/08/16 18:47
璃呂 ( 5vzTi )

🍁兄と弟🍁

「今日のパーティは息子達の為に開いたんじゃよ」


息子達…??

奈緒希の表情に変化があった事を奈緒己は見逃さなかった。

本当に嬉しそうに話す利久の顔を、ジッと睨む奈緒希。
奈緒己には何が何だか分からなくなってきた。

「儂の息子の奈緒己と奈緒希じゃ」
利久に紹介された瞬間、会場を静寂が包んだ。
「…なっ!?」
奈緒希には驚きが隠せない。

弟と会わせてくれるだけじゃなかったのか??大体、オレには…養父も養母もいるんだ…。
「お父様?!」
隣では奈緒己がオロオロと、奈緒希と利久を見比べている。

奈緒希は瞬時に理解した。

奈緒希は奈緒己と違い、状況を理解するのが早い。相手を見ただけで、どんな人間かすぐ分かる。
一方、奈緒己は感情を読むのが得意だ。相手の喜怒哀楽に対して普通の人間より敏感なのである。
利久が奈緒希に近付き、耳元で囁いた。
「…奈緒希…お前の養父母には、もう話を付けてある。今日から儂らと一緒に暮らすんじゃよ」
カカカ、と豪快に笑い、奈緒己に目を向けた。何処か、いやらしい目付きで。
目があった奈緒己もガタガタと震えている。

No.5 07/08/23 01:04
璃呂 ( 5vzTi )

🍁養父🍁

「奈緒己…パーティが終わったら、私の部屋に来なさい」
あのいやらしい目をしたまま、利久は奈緒己の肩に手をかけた。ビクッと奈緒己の体が震え、顔は恐怖に染まった。

「…ナオ…お前…」

両腕で自身の肩を抱き、震えを止めようとする奈緒己。それを見て、奈緒希は利久に怒りを感じた。
奈緒己に何をしているかは分からないが、弟を、たった一人の肉親を自分の片割れを苦しめる奴は許さない…。

奈緒希は、奈緒己の腕を引っ張った。

「いいか、ナオ」

耳元で囁く奈緒希の声が、悪魔のような声に聞こえた………。


パーティは終わり、白いタキシードを来た少年が利久の部屋をノックした。

「奈緒己か…入りなさい」

少年が部屋を入ると、初老の男がベッドに座り、タバコに火をつけていた。

「…今日も儂を楽しませてくれよ?」

ニヤリと笑う初老の男を見据えたまま、少年は一歩、足を踏み出した。
「…今日はやけに素直じゃな」


笑う男の顔が氷ついた。


「ああああああああああああッッ!!!!!」

男の腹に、少年が握り締めていたナイフが突き刺さり、血が止めどなく溢れた。

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