漫画・アニメ・特撮・小説など名言名文の板📝
漫画・アニメ・特撮・小説などの名言名文を記してゆく板📝。
- 投稿制限
- 参加者締め切り
クソ・・・・カザミ・・・・ 負けたぜ
へへ・・・・だが どうだい途中までは 俺にまんまとはめられたろうがよ
ゲホ ゲホ
家族の話 あれもか?
へ・・・・いや・・・
ありゃあ・・本当さ
言ったろ・・・・俺は 墓荒らしの家系だってな
ヤバイ仕事さ 犠牲がつきもんの・・・・
しかし俺が組織に肉体(カラダ)を売ればあいつらももうヤバイ仕事する必要ないって言われてよ
後はよく知らねえな
会ってないのか?
ケ・・・・会えるかよ こんな体で・・・・
あんたもそうだろう
カザ・・・・・・ミ・・・・
かも・・・・な
だが・・・・
今はこの体が
俺のプライドだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』1巻 第五話 熱砂のプライド〔後編〕風見志郎 ベガ より
アンリさん・・・か
さすがね
インターポール伝説の捜査官があんな直情的なタイプだったとはね・・・・
あんた・・・・
インターポールから来たんだったな・・・・
だったら・・・・
水城涼子 そして霧子って人を知ってるか?
・・・・知ってるわ
二人とも私の部下だった
!?
しかし秘密工作機関「GOD」に潜入し Xライダーに協力して殉職したわ・・・・
二人ともね
すまない・・・・
あやまる必要ないわ
涼子はあなたの恋人・・・・そして霧子はその妹でしょ・・・・
もうこれ以上 愛した者を失いたくない
だからどこかで人を愛せなくなってしまう
その気持ちはわかるわ
それが父親なら なおさら・・・・ね
オヤジーー!!
敬介・・・・!!
お前はもう人間ではない!!
お前の命を救うにはこれしかなかった
許してくれ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第8話 機鎧(きかい)の海〔後編〕 神敬介 アンリエッタ・パーキン 神啓太郎 より
ヒェ〜〜〜〜
スッゲェ武装だぜ
ケドよ たった一人で いい肝っ玉だな
ま・・・・この俺がいれば 楽隠居したって
銀のクジラで
大漁にしてやるがな
この密航者が 死にてえのか
待った待った
死にたくないって
・・・・ちっ
敬介ならいいってのか
あんな冷血漢
うっちゃっとけよ
俺と組んだ方が
おもしろ楽しいぜ
おお!!
今度はなんなんだよ!! !!
確かにケースケは
おせっかいで
大ボケヤロウかもしれん
だが・・・・
アレをワルく言うのは
ワシ以外に許さん!!
・・・・やっぱ
そうくる
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第8話 機鎧(きかい)の海〔後編〕 滝和也 グレコ爺さん より
!!
今だ!!爺さん!!
ロッサァアアアアア!!
チィィ
フ・・・・ フフフ・・・・・
オシカッタワネ オバカサン!!
クソォ
!! !! !!
ナッ・・・・
ナニ・・・・!!
ヤツはそこだああ!!
X キイイイーーック!!
ギ・・・・
ギャアアアアアアアアア!!
ギ・・・・
覚エ・・・・テ
オイ・・・・デ・・・・
イズレ・・・・
選バレシ民ニヨッテ・・・・
オマ・・・・エタチ・・・・ハ
!・・・・爺さん
アレ・・・
!!
ロッサ・・・・
ドメニコ・・・・
なあ・・・・
タキっての
え?
ケースケの奴
行っちまうんだろ
漁の時期になったら
また使ってやるから
遊びに来いって
伝えといてくれや
・・・・・ああ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』2巻 第8話 機鎧(きかい)の海〔後編〕仮面ライダーX(神敬介) 滝和也 グレコ爺さん バラロイド(ロッサ)より
この山 人を惑わす風が吹く
てっぺんも 霧でいっぱい空飛ぶ機械で 行くのムリ!!
それにオレ 機械キライ!! ビクトルわかった!?
ぜんっぜん わかんないね!!
それでなんでオートバイになるのさーーー!?
しかも何かヘンなバイクだし
ムカ・・・
だいたいコレだってただの機械だろ!!
ちがう!!
“ジャングラー”!!
オレのトモダチ!!
う・・・・わああ
落ちるーーーっ!!
役に立つ
・・・・・・・・
ビクトル バナナ 食うか?
いい・・・・食欲ない
ったく理解を超えてるね
それにバイクが友だちなんてさ異常だね
ビクトル
!
ナニ・・・・これ?
これ「トモダチ」という意味
ビクトル
オレが怪我したとき クスリくれた
お前もオレの
大事なトモダチ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』2巻 第9話 密林の破壊神(前編) アマゾン(山本大介) ビクトル・ハーリン ジャングラー より
ワルいが三影クン・・・・
せわしいあいつらの居場所などわからんよ
それに・・・・
知ってても
教えんなぁ
ワシはもう
懲りたんだ
・・・・ク・・・・
オヤッさん・・・・
一人でいいならここにいるぜ
!!
オヤッさん帰ったぜ!!
な・・・・あ・・・・あいつ・・・・
この・・・・バカ!!
インターポールのおまわりさんよぅ
俺が城茂
バリバリの改造人間ってわけだ
お・・・・俺はFBIでい
あっそ
い・・・・いやそーいう問題じゃなくて
茂〜〜〜〜
だってオヤッさん
こいつらの言い方
ナマイキなんだから
ヨロシク
フン
マナーがなってないな
握手はグローブを取ってするもんだぜ
やめときな
俺の握手は熱すぎて
黒コゲんなっちまうぜ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第11話 彷徨(さまよい)の雷鳴 城茂 立花藤兵衛 滝和也 三影英介 より
三影
テメェ・・・・・
何が正義の戦士だよ
この夢想家め
それが勝利者の姿かよ
腐れきったこの世に
善も悪もねえ!!
強い者が生き残る!!
勝ち残った者こそ
正義よ
あっそ
じゃあやっぱり
俺が正義じゃん
!!
これから 楽勝で
闘ってくるんだからよ
チィ・・・・
そんなボロボロで
何を言ってやがる
立花藤兵衛・・・・
滝和也・・・・
城茂・・・・キサマらが
勝利者だと?
俺は認めねえ
・・・・・
俺は違う
俺はキサマらとは
三影・・・・
!!
・・・・・・・
あ・・・・ああ
ストロンガー!!
キヘヘヘーー
殺セ殺セ
殺セ殺セ殺セ
殺セ殺セ殺セ!!
カクゴしな・・・・
キクぜ・・・・コイツはよ
その技・・・・
まさか・・・・!!
タックルと同じ・・・・
へへ・・・・・・・
使えるぜ
俺はタックルと
同時期に改造されたんだからな
や・・・・
やめろ!!
やめてくれ茂・・・・!!
オヤッさん
命にゃあ懸け時って
やつがある・・・・
あいつも・・・・
そうだったんだ
超電子
ウルトラ
サイクロン!!
コーヒーが入ったわ----
ヘエーーめずらしいこともあるもんだ
ユリ子とは長い付き合いだけれど
コーヒーを入れてもらったのは
初めてだぜ!!
ねえ茂・・・・・・・
いつか悪い怪人がいなくなって
世の中が平和になったら・・・・
二人で・・・・どこか遠い所へ行きたいわ・・・・
いいねえーー・・・・
俺も行きてえよ
ホントに?
約束してくれる?
ああ・・・・
約束だ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第12話 彷徨(さまよい)の雷鳴〔後編〕 仮面ライダーストロンガー(城茂) 岬ユリ子 立花藤兵衛 滝和也 三影英介 ムラサメ コマンド より
ちぇ・・・・
ったくよ
とんだ三枚目だぜ・・・・
再改造で埋め込んだ
超電子ダイナモが
俺の自爆を抑え込んでくれたとはな・・・・
そうそう簡単に・・・・
死ねる体じゃねぇらしい・・・・
茂ーーーー!
茂ぅ〜〜〜〜
その体・・・・
大丈夫だよ
それよか俺よ・・・・
ボチボチ
行かなくっちゃな
そうなんだろう 滝さん
え・・・・
ああ・・・・
茂・・・・
行くって
お前・・・・
約束だからよ
なあ
約束って・・・・
!!
・・・・・・・・ああ
ああ・・・・・
いつか-----・・・・
世の中が平和になったら-----・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第12話 彷徨(さまよい)の雷鳴 城茂 立花藤兵衛 滝和也 岬ユリ子 より
どや・・・・
まいったか・・
まいったんなら 撤回するんや
洋はんも
フレイアはんも
人間や・・・・ってなあ
・・・・・
ゲ・・・・ゲボ
ゲボゲボ ゲエエエ
フン・・・・
モロい・・・・
何を
こだわってるか
知らないが
それが人間さ・・・・
人間は弱いから
裏切り・・・・
奪い合う・・・・
ヒューー
ヒュ・・・・
人間は弱いから
恐れ・・・・
殺し合う・・・・
それが
人間さ・・・・
それが・・・・
スカイ・・
変身!!
へェ・・・・
生きていた・・・・か
だったら・・・・
もう一度
死ぬんだね!!
ナ・・・ニィィ
毒が・・・・
効かない・・・・!?
ライダーーブレイク!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3話 第14話 約束の蒼空 スカイライダー(筑波洋) がんがんじい ドクガロイド(フレイ)より
これで
大丈夫だ・・・・
培養液にとびこむ事で
一時的にフレイアさんと同じ力を得るとはな・・・・
げん・・・・
え?
ひろ・・・・しは・・・・も フレ・・・アはん・・・・も
にん・・・・げん・・・・や
・・・・・・・・・
人間は弱いから
裏切り・・・・
奪い合う・・・・
人間は弱いから
恐れ・・・・・
殺し合う・・・・
それが人間さ・・・・!!
そうかもしれない
それでも俺は
人間を信じる・・・・
人間のために
戦う
俺は・・・・
それだけでもいい
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第14話 約束の蒼空〈後編〉 スカイライダー(筑波洋) がんがんじい ドクガロイド より
大 回 転
スカーーイ
キイーーック!!
!!
フレイ・・・
泣いてた・・・・
・・・・
そうですか
兄が空を見上げて・・・・・・
・・・・
・・・・
フレイアさん
お・・・・俺・・・・
!?
ねえ洋さん
私・・・・
この城を
孤児院にしようと思うの
父と二人だった時も
もてあましてたし
これからは
なおさら・・・・
これからは
兄の分も・・・・
人を好きになろうって思うの
だから
洋さんも
これからは
兄の分まで笑っててほしくって・・・・
わかった・・・・
笑うよ
ずっと・・・・
この蒼空(そら)に誓って----・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第14話 約束の蒼空(そら)〈後編〉 スカイライダー(筑波洋) がんがんじい グレゴリオ警部 フレイ フレイア より
チェック1 チェンジメカ OK
OK
チェック2 エネルギーメカ OK
OK
チェック3 パワーメカ OK
押忍・・・・
今日の任務(ミッション)終了だ・・・・
おい
S-1 いや・・・・
カズヤ・・・・オキだったか?
ハイ!!どちらでもけっこうであります!!
セルゲイ・コリバノフ班長!!
コォラ!!
敬礼はやめろっつってるだろう!!俺たちゃ 海軍じゃねえんだ!!
ハイ
それに班長はやめろ!!
セルゲイで けっこーだ!!
ハイ
っとに テメーは
かたっ苦しい ヤローだぜ
ハイ
ち・・・・
ホラよ 地球(おか)からテメーに届けもんだ
俺に・・・・
ですか?
心して受け取れよ
なんせ1kgの荷物をここまで運ぶのに
2千万ドルは
かかってるんだからな
セルゲイさんは・・・・
なんだったんですか?
お・・・・
俺か・・・・?
息子からの
ビデオメールだ
そうですか
よかったじゃないですか
ま・・・・まあな
後ろからでも笑顔が見える
ケド・・・・これ
いったい誰が・・・・
!
プ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第15話 流星の神話〈前編〉 沖一也 セルゲイ チェックマシン より
御託は もう いいからさー
早く一也と話をさせてくれんかなー
そーーよ
そーーよ!!
がやがや
スッゲーなー
カッコいーなー
これってセットじゃないんだよなーー
ちょ・・・・
ちょっと・・・・
そーだろー
その気になりゃあ 世界中の銀行にパッキングして
チョロ
お願い!
早く一也さんに
会わせて❤
私 一生
ついていくって
心に決めてきたの!!
ハルミ〜〜
あの〜〜谷さん
困りますよ!!
こんな大勢で
来られては
え? しかし
これはあんた達が
月面基地で
長期工事をしている
アストロノーツ達を
ねぎらうためにって
企画されたはずでしょう?
ですから・・・・
私どもは 家族のみと
ナニィ・・・・
な・・なめんなよぉ
俺たちゃなぁ
微力ながらも
兄貴とともに
戦ってきたんだぜ!!
そーーよ
そーーよ
このガキどもだって
このちっちゃい
目ん玉ひんむいて
兄貴を見守り続けて
きたんだ!!
あの・・・・
戦いって・・・・
フ・・・・
ま・・・・
あんた達の知らん話ですよ
とにかくだ
この谷 源次郎と
ジュニアライダー隊は
誰がなんと言おうと
沖 一也の
家族ってワケだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第15話 流星の神話〈前編〉 谷源次郎 草波ハルミ チョロ ジュニアライダー隊 国際宇宙開発研究所職員 より
ま・・エレナには
ワルイことしたよ
結婚したって俺は
めったに帰る事もなかった
マシムも
俺の顔すら覚えちゃいねぇよ
自業自得ってやつさ
ったくよ・・・・
何をしにきたのかね・・・・
こんな所まで・・・・
結局 月面にきても
兎なんていやしなかったなあ・・・・
兎?
へ・・へへ ほら あるだろ アジアの童話に
月には兎が 住んでいる・・・・ってね
昔 オヤジが俺に話してくれてよ
なんのことはねえ・・・・
そいつが俺のワガママな夢のキッカケさ
セルゲイさん!!
マシム君が セルゲイさんの顔すら覚えてなかったとしても
きっとそのうち
あなたを想うようになりますよ
俺も・・・・
そうだったから・・・・
俺の両親は
旧国際宇宙開発研究所の研究員でした
だから・・・・
俺も・・・・
じゃ・・・・
じゃあ
S-1に志願した理由って・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第15話 流星の神話〈前編〉 沖一也 セルゲイ より
キサマは何者なんだ?
・・・・・・・・
ここには・・・・
人類の夢があった
そして・・・・
その夢には人生をかけた人たちも・・・・
それを・・・・
よくも・・・・
赤心小林拳か・・・・か
こんな所で味わえるとはな
我が名は「アスラ」
きさまの名を
聞いておこう
仮面ライダー・・・・
スーパー1
トオ!!
スーパーライダーー・・・・
旋風キィーーック!!
!!
重力をあやつる・・・・か 面白い
・・・・なんだ!!
クッ・・・・
間合いがつめられない!!
フウム・・・・
人類の夢か・・・・
愚かな生き物どもめ・・・・
!!
おのれらは・・・・
己が生き そして増えるために 源である地球を掘りかえし食いつくしてきた
イナゴのようにな・・・・
そして次は
月をだと? させん
おのれら愚者のみる夢など 破滅の夢にすぎぬ
ゲ・・・・
ボ・・オ
ク・・・・ソ
チェーーンジ
冷熱ハンド!!
超高音火炎!!
月に眠りし力・・・・
あれは・・・・渡せぬ
!!
ツィオルコフスキーの
巨大な採掘跡・・・・・・
あれはお前たちが
あの力は
神のものなり
愚者にくれてやるわけにはいかぬ
キサマ・・・・・
ドグマ・・・・
ジンドグマか!?
・・・・・・・・
否・・・・
我が組織の名は・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第16話 流星の神話〈中編〉仮面ライダースーパー1 アメンバロイド(アスラ)より
妙です・・・・
研究所の
全てのモニターが・・・・
ステーションから送られてくる映像をうつしだしています
しかも・・・・
強制的に・・・・
ナニィ?
電波ジャック?
ココの映像が?
ニューヨーク・・・・
モスクワ・・・・
シドニー・・・・
ヨーロッパ全土・・・・
せ・・・・
世界中にに送られています!!
世界中だと・・・・
いったいなんのために!?
・・・・・
チーフ・・・・
私は疲れているんでしょうか・・・・
ヒ・・ヒイ
うあああああ
あ・・・・あ・・・・
隕石・・・・いや
要塞・・・・?
バカな!!
それに・・・・
まわりにいる編隊は・・・・
UFO・・・・・
・・・・・・
チーフ
塊の中央のものが
醜い顔のようにも見えます
!!
あ・・・・あ・・・・か・・・・
顔の上に人・・・・
人がああ!!
ザーー・・
ザ・・・・
ヒトよ・・・・
見えて・・・・
いる・・・・か
ヒトよ
聞こえている・・・・か
タキさん
神は・・・・
嘆き・・・・
悲しんでいる・・・・
愛さなければよかった・・・・
・・・・・とな
そうして流した
黒い涙の中から
俺たちは来た・・・・
俺たちは「BADAN」
神に愛されし者
ク・・・・クク
上出来です
なんだ・・・・
どうかしたか!?
ルミ!!
は・・・・
博士・・・・
「バダン」・・が・・・・
ヒトよ・・・・スデに手遅れだ
キサマらに未来はない
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第16話 流星の神話〈中編〉 ZX ニードル 国際宇宙開発研究所職員 国際宇宙ステーション職員 一条ルミ 海堂博士 他 より
ぬ・・・・
ぬけたぁ!!
な・・・・ち・・・・
地球じゃねぇか!!
!?!?!?!?バカ言え!!
まともに帰ったら
3日の距離だぜ!!
と・・・・とにかく
減速しろお!!
ダメだ 間に合わねぇ!!進入角が深すぎる・・・・
このままじゃ・・・・
大気圏で
燃えつくちまうぜ!!
くそお・・・・
ジョーダンじゃねーーぞ
燃えきるなんて
イヤだぜ
俺はよーー!!
!
カズヤ・・・・!
なんのツモリだ
俺・・・・外に出て
機体を支えみます
!!
S-1
カズヤ
カズヤ
カズヤ
テメェ
死にに行く気じゃねぇだろうなあ!!
・・・・・・・・
死ぬわけには
いきませんよ
俺はまだ・・・・・
人類が未来を
つかむ姿を
見ていない
・・・・
上等
変 身
セルゲイさん!!
やっぱムチャじゃないのか!?
ウルセェ!!
あいつが生きて帰るって言ったんだよ!!
仮面ライダー
スーパー1
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第16話 流星の神話〈中編〉 仮面ライダースーパー1(沖一也) セルゲイ セルゲイ班員 より
オイ!!
だまってろよ!!
こちらシャトル「ムーンディスカバリー」うろたえちまってスマなかったな
生存者は?
きみが機長なのか!?
いや・・・・俺は
セルゲイ・コリバノフ
一介のB・Sだ
生存者は俺のチーム8名だけ・・・・
!
セルゲイ・・・・だと
パパ・・・・
ねぇ パパ・・・・
状況は残念ながら最悪だ
シャトルの操縦は軽い講習(レクチャー)しかうけた事がねえし
しかもほとんどの制御装置がイカレちまってる
そんな・・・・
神様・・・・
だがよ・・・・
まだだ
S-1が
外でふんばってる
機体を支えるためにな・・・・・
兄貴が・・・・
外に・・・・
姉ちゃん・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
セルゲイ君・・・・
あんたへの伝言だ
「兎」は・・・・・
「月に兎はいたのか!?」
!! ナニ・・・・?
あんたの息子だ!!
マシム君が知りたがっているんだよ!!
!!!!!!!
・・・・・・・マ
マシムが・・・・・
生きて帰って 教えてやってるくれ!!なあ!!
ちょっと・・・・谷さん!!
いいじゃないか
帰りの燃料代みたいなもんだ!!
大丈夫だぞ
絶対に大丈夫だ!!
あんたらには
スーパー1が!!
仮面ライダーがついているんだからな!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第17話 流星の神話〈後編〉 セルゲイ 谷源次郎 チョロ ジュニアライダー隊 マシム 国際宇宙開発研究所職員 他 より
マシム・・・・
覚えてやがったのか・・・・
いいか・・・・マシム
俺の一番好きな話をしてやる
昔 一匹の心やさしい兎がいたんだ・・・・
兎は人のためになりたいと思っていた
そんな時 兎は腹ペコで
野宿している旅人を見つけたんだ
兎のヤツは困っちまった
なにせサルみたいに
木の実はとれねぇし
キツネみたいに
獲物をとることも
できねえんだからな
そこでだ
ハラを決めた兎は
自分から焚き火の炎の中に とびこんだ
これで自分を食べて
元気を出してくれってな
!! なんだ!!
かわいそうだって!?
心配すんなよ
最後まで聞けって
実はよ
その旅人ってな神様だったのさ
スゲェ感動した神様は
兎を空に連れていって
月の神殿に葬ったんだ
だからよ
月には兎がいるのさ
俺はな
スゲェイカした
そいつに
会いに行くんだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第17 流星の神話〈後編〉 セルゲイ マシム より
!
チェーーンジ
冷熱ハンド!!
超低温冷凍ガス!!
千四百度で 機体温度の上昇が止まった
それに・・・・
速度も・・・・
カズヤだ!!
船首にたどりつきやがった!!
セルゲイさん・・・・
スイマセン
俺らも あきらめんの やめます!!
生きて 地球(おか)に 帰りましょう!!
上等!!
よぉし マシム!!
帰ったら バッチリ 話してやる!!
いたぜ
兎がな
話のとおり
バカがつくぐらい
お人よしの兎だ!!
だがな
そいつは
スゲェ タフな
ヤツだ・・・・
炎の中に
とびこんだって
絶対に
死にはしねえ!!
話してやるぜ マシム!!生きて・・・・
帰ってなぁ!!
パパ
パパ
ねえ パパ 兎は!?
パパ
パパ
ねぇ マシム
あなたそんなにパパに・・・・
兎にね・・・・
勇気ねある兎に
パパを守ってもらうの
え?
だってね・・・・
パパは
一人ぼっちだからね
そしたらパパは大丈夫
ママも大丈夫だよ
ママは
マシムが守ってるから
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第17話 流星の神話〈後編〉 セルゲイ セルゲイ班員 エレナ マシム より
グ・・・・
ウ・・・・
セルゲイ・・・・さん
死んだか
!! !!
ヒトとは・・・・
モロきものだ
我もヒトであった頃は
強さを求めて生きた
あらゆる拳法家を屠り
拳神とまで呼ばれた・・・・
だが
しょせん短きヒトの命
老いとともに
拳神の名も地に堕ちた
そんな虚無の中で
我が神と出会った・・・・
そうして得た
永遠の命と
永遠の拳を・・・・
我の為に・・・・
カメンライダーよ・・・・
己も拳士ならば
その力 己が拳の為に
あるのではないか
そうだな・・・・
だが俺は
拳法家である前に
サイボーグ S-1として
生まれた
人の夢の為に生まれた
この拳・・・・この命は
その為のものだ
フン・・・・
人の・・・・
夢の為・・・・か
そういう奴から死ぬ
その腕で・・・
なにを守る!?
クッ・・・・・
カズヤ
飛べ!!
!!
!!
ヌ・・・・
ウ・・・・
!!
スーーパーー
ライダーー
月面ーーーー
キィーーック!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』3巻 第17話 流星の神話〈後編〉 仮面ライダースーパー1(冲一也) アメンバロイド(アスラ) セルゲイ より
お・・・・おい
世界はどうなっちまうんだよ!!
マジ・・・・かよ
たった・・・・
2時間で・・・・
!!
これがあの
アメリカ空軍か
たわいもねぇ
次だ・・・・ゼクロス
ああ・・・・
ヤ ロ・・・・オオオオオオ
クソオオオオ
まちやがれ!!
!
・・・・・
あの男は
・・・・・相変わらず
正義の使者きどりだな
言った筈だ
腐れきったこの世に
善も悪もねぇ
強い者が生き残る
勝ち残った者こそ
正義・・・・とな
!!
テメェ・・・・
三影・・・・
ククク・・・・
楽しい話を
聞かせてやろうか
俺たちはこれから
ガモン共和国を
襲う・・・・
な・・・・
に・・・・
ククク・・・・
追いかけてみるか
キサマが今ここで
ジェット機を
ヒッチハイクしても
追いつけやしないぜ
世界中の軍隊も
この惨状を見れば
自国を守るのに必死で
ガモン(他人)の事なんざ
かまっちゃくれまい
テメェは
そこで指でも
くわえて見ているんだな
クッ・・・・
・・・・・・・・
・・・・ク・・・・
・・・・
クッソオオオ
あんたは
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第1話 強襲 ZX(ムラサメ)タイガーロイド(三影英介) 滝和也 結城丈二 より
光・・・・
いや・・・・
人・・・・・
だ・・・・誰だ・・・・
なぜ 泣いている
まさか 俺の事を・・・・知っているのか
お・・・・
俺の事を・・・・
頼む!!
教えてくれ!!
クッ
はあ はあ
キサマ・・・・
キサマは・・・・
俺が・・・・誰か
知っているのか
知らんな・・・・
俺にわかる事は
たった一つ
キサマが今
刻んでいるのは
最悪の記憶だ
!!
チイイ
お おおおお
原作/石ノ森章太郎
仮面ライダーSPIRITS
仮面ライダーZX(ゼクロス)タイトルデザイン=石ノ森章太郎
--Forget Memories--
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第1話 強襲 ZX(村雨良) 村雨しずか 仮面ライダー1号(本郷猛)より
クク・・・・
クククク
どうした色男・・・・
ずいぶんと
足手まといをつれてるようだが
仮面ライダー----
キサマも戦士なら
そいつらの盾になろう
なんて考えない事だ
たとえお前が犠牲に
なったとしても どのみちそのひよわな生き物は
これから始まる地獄の中で
のたれ死ぬことになる
なんのなんの
心配無用!!
仮面ライダーにかかれば
トラさんの豆鉄砲なんか
屁でもないぞォ!!
隼人さん
面白い奴だ
きゃあああ
あ・・・・・あ
・・・・・
は・・・・
隼人さん!!
ムチャだよ
もう やめて!!
・・・・やっぱ
屁でもねえ
やせがまん・・・・か
真実を見ない理想主義者
クソみたいな美学だな
ナルシストめ
ヘドがでるぜ
超高温のエネルギー弾だ
こいつは俺もまだ
ためした事がねえ
楽しみだぜ・・・・
無論 俺は
撃った瞬間に離脱
させてもらうが
キサマは・・・・
どうする?
・・・・・・・・
・・・・・・・・
どうしたらいいの・・・・?
まみセンセェ・・・・
走るんだ
泣いてるだけじゃ
死んじゃうよ
・・・・・・・・
・・・・・・・・
そうだな
お前たちは
足手まとい
なんかじゃないよな
先生を頼むぜ
!?
いい話だ
泣かせてもらったぜ
どいつもこいつも
美談とともに
消し飛びな!!
!!
隼人さん!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第2話 遭遇 仮面ライダー2号(一文字隼人) 真実先生 少年少女たち タイガーロイド(三影英介) より
99%の改造・・・・
そして99%のシンクロ率か・・・・
!!
上出来だ
ゼクロス
ついに
見つけたぞ・・・・
神の器に宿りし
この世の王と
なる男・・・・!!
!!
まて
「地獄大使」!!
「地獄大使」・・・・
そうか・・・・
「ダモン」はそう
呼ばれていたのか
・・・・ダモン・・・・
だと・・・・
ならば余は
「暗闇大使」とでも
名のろう!!
あんな輩と
いっしょにするな!!
!!
ヌ・・・ウ
う・・・・
動けん・・・・
死ぬがいい
二匹の虫けら(ワーム)ども
ぐ
ああああ・・・・
本郷さん
一文字さん
間に合ってよかった!!
風見!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第3話 暗闇 仮面ライダー1号(本郷猛) 仮面ライダー2号(一文字隼人) 仮面ライダーV3(風見志郎) ガモン大佐(暗闇大使) ZX(ムラサメ) より
世界中に宣戦をつげ
アメリカの主だった
空軍基地を襲撃した
未確認破壊組織
「BADAN(バダン)」
ノーラッド襲撃より
20時間経った今も
ロシア 中国
NATO諸国
中東 中央アジア
各地の軍事拠点に
猛威をふるい
続けています・・・・
もはや被害の確認は
おろか 救援すら
できない状況です!!
おそらく世界中で
下図千人におよぶ
死傷者が予想され・・・・
クゥ・・・・
クソォォ
どうすりゃ
いいんだよ!!
バダン・・・・
なにもんだよ
奴らの目的は
いったい・・・・
世界・・・・
征服
滝和也・・・・
君が幾度も
戦ってきた
言葉だ
人ならば
決して屈しては
ならない
言葉だ
だがな
結城さんよお!!
けたがちがうぜ!!
奴らはたった
20時間で世界中の
軍隊をぶっつぶし
ちまったんだぞ!!
確かに人間には
爪も牙もない
武器を奪われた
今 弱者になるしか
ないのかもしれない
!!
だが中には
その体に
爪を 牙を
与えられた
者もいる・・・・
私たちのように
エ〜〜〜〜!!
一也さん もう
いっちゃったのーーーー!!
おい・・・・
ハルミ!!
・・・・・
一也さん・・・・
ううん
きっと
勝って
仮面ライダー
!!
そうそう
そのツラだ
そのツラには
ちょいとカリが
あってなあ
一人残らず
ぶっこわして
やるからよ
かかってきな!!
ケケーーッ!!
まてよ
ライダーマンっての
さっきの話
ガラにもなく
弱気になっちまった
忘れてくれ
さあ
行こうや
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第3話 暗闇 滝和也 ライダーマン(結城丈二) 草波ハルミ 谷源次郎 仮面ライダーストロンガー 仮面ライダーアマゾン 仮面ライダーX スカイライダー 仮面ライダースーパー1 コマンド兵士 アナウンサー より
グ・・・・
グエェ・・・・
ゼ・・・・
ゼクロス
・・・・さま
追っても・・・・
無駄だ・・・・
俺は もう
バダンの
言いなりには
ならない
・・・・アギ ギ
・・・・・・・・
ヒェ・・・・・
ヒェッ
ヒェヒェ
ヒェッ
ヒェヒェヒェ
ゼクロス様ぁぁぁ
わがままは
そのくらいになさって
くださいよぉぉぉ
バァダァンは・・・・
暗闇大使は・・・・
大きな
大きな愛で
あなたの帰りを
待っておられます
よぉぉぉぉ
それに・・・・そう
ミカゲ様・・・・
ミカゲ様も
寂しがっておられます
ヒェヒェヒェ
バァダァンは
あなたの記憶を
取り戻してくれると
言ってるのですよ
俺の
記憶・・・・か
それはバダン(きさまら)が
奪ったんじゃ
ないのか・・・・
!!・・・・・・・
あんた・・・・誰に
その話を
聞きなすった!?
それとも・・・・
記憶が・・・・
記憶は
戻っちゃ
いない
・・・・ただ
こうしなければ
女が・・・・
女・・・・?
が・・・・?
女が
涙を流すのだ
女あ?
涙あああ!?
ヒェヒェヒェ
なあんの話か
知らねえが・・・・
そんな
なまっちょろい
理由で
バァダァンを・・・・神を
敵にまわすってのかぁぁぁ
ムラサメェェェェ!!
!?
・・・・痛み か
これで
いいんだろう
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第4話 逃走 ZX(ムラサメ) カメレオロイド(ラ・モール) コマンドロイド 村雨しずか より
・・・・・・・
兄さん
変わったナリ
しとるなぁ
?
ま ええわ
どうせワケあり
なんやろ
そうや
ケガしとったんやったな
具合どうですの?
・・・・・・・
治った
治ったぁ?
若さのなせる
ワザやなあ
ま それでも
念のため
診てもろうたほうが
ええやん
ついてきいや
仕事教えたる
仕事?
そうや
自分の治療費は
自分で稼ぐんや
アルミ?
そうそう
アルミ缶だけ
選ぶんや
で・・・・な
こう・・・・
踏みつぶして・・・・
このぐらいにするんや
そのぐらい・・・・か
そうか
ま・・・・
仕事といっても
アルミ缶のみを
選別 回収して
業者に売る
それだけのことや
やけどな
ワシのこの姿
仮の姿なんや
本職はな・・・・
正義の味方や!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第5話 怒り ムラサメ 金富のじいさん より
そういや名前も
聞いとらへんかったな
兄さんの名前は?
・・・・“ゼクロス”
は?ゼ?
そう“ゼクロス”・・・・だ
・・・・・
なんや知らんが
やっぱワケありか・・・・
ま・・・・
いやな事は
はよう忘れるや
いや・・・・俺は
なにも覚えて・・・・
いいから・・・・
もうなにもいいなや
時にゃ兄さんにとっていいもの・・・・
守りたいくらい
大切なものはあるか?
わしはな
あるんや
なあ兄さん
ワシはこう思うんや
たとえば
自分という人間が
どうしようもなく
荒んでヨゴレて
しもうとったとする・・・・
たった一つでもいい・・・・
自分にとって守りたい
ものが一コでもあれば
その命に生きていく
価値がある
その人生は
ピカピカに
なれるんや・・・・・・・・てな
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第5話 怒り ゼクロス(ムラサメ) 金富のじいさん より
い〜〜
いた・・・・
いたい・・・・
ぐ・・・・
ぐうううううううう
ワシ・・・・
このまま野垂れ死に
するんやろうか・・・・
落ちるとこまで
落ちたもんや
半年前・・・・ワシも
たった半年前までは
都内でも
有数の金融企業の
オーナーやったのに・・・・
でも・・・・しゃあないなあ
法スレスレのあくどい貸し付け取り立て・・・・
夜逃げしたり
首つったりした者もおったなあ
バチが当たったのかもしれんなあ・・・・
金も人も
なあんもおらんように
なってしもうた
な・・・・なんや!!
触らんといてえな
同情なんか
まっぴらや!!
ワシみたいな人間
どうなったって
いいんや!!
ほっといてえな!!
向こう行き!!
・・・・・ね・・・・がい
お願い・・・・
あなたの命を
助けさせて・・・・
言うとおりにして
やってくれないか
その子は昨日・・・・
父親という命を・・・・
失ったばかりでね
いい顔ですねええ・・・・
!
ヒュヒュヒュ
実にいい顔をなさる
己の醜さも哀しさも
優しさも含んだ
徳のある素晴らしい
笑顔だ・・・・・
私はそういう顔が・・・・
大嫌いでねえええええ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』4巻 第5話 怒り 金富のじいさん 一条ルミ 海堂博士 カメレオロイド(ラ・モール) より
おい
見ろよ!!
!?・・・・・・・・・・・・・
なんだよアレも
バダンか!?
核か
核兵器!?
!!・・・・
マズい!!
なんだ・・・・・
ヒ・・・・イイ空に・・・・吸われる!?
ちょ・・・・
マジ!?
これが・・・・
第二段階・・・・
虫ケラどもの
体でも
今のバダンに
必要な力が
また・・・・か
またか
ミカゲ
また奪うのか
バダン
俺の・・・・
体を・・・・
俺の記憶を
奪ったように
!!
もう・・・・
させん
りょ・・・・
良さん・・・・
なの?
! ルミ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』5巻 第9話 魔渦 ゼクロス(ムラサメ) 一条ルミ 海堂博士 市民たち 三影英介 より
アンリさん!!
結城さんから映像が届いています
ちぇっ なんだよ こんな時に
!!
結城・・・・
これは!!
・・・・そうだ
バダンがついに沈黙を破った
ロス パリ モスクワ・・・・そしてシドニー
世界中の都市が
いいようにバダンに
襲われている
バダンが空軍をたたいた
意味が これだ
人間狩り・・・・
とにかくよ!!
東京(ここ)は俺たちで
なんとかしようぜ!!
よそはほっといても
なんとかならあ
・・・・そうだ
まかしとけって
風よか速え
奴らによ
--モスクワ--
あのヴォルテックス(渦)間違いない
スゴイ風だな・・・・
どこまでも高く飛べそうだ
--パリ---
遅れるなよ敬介・・・・
おお 先輩もな
--シドニー---
あぁ・・・・
こわいよぉ
ガウウウ
吠えるな
吠えるなってね
ガル?
しのごの言う前に
ぶっちめてやろうぜ
なあ
--ロサンゼルス--
早くビルの中へ
クソォ どうしたらいいんだ!!
軍を失った人間(おれたち)はもう いいようにされるしかないってのか
行こうぜ本郷
ああ一文字
変 身
うおおお
漫画『仮面ライダーSPIRITS』5巻 第10話 接触 ゼクロス(ムラサメ) 滝和也 アンリエッタ・パーキン 結城丈二 仮面ライダー1号(本郷猛) 仮面ライダー2号(一文字隼人)仮面ライダーV3(風見志郎)仮面ライダーX(神敬介) 仮面ライダーアマゾン(山本大介) 仮面ライダーストロンガー(城茂)スカイライダー(筑波洋)仮面ライダースーパー1(沖一也) シドニーの子どもたち ロサンゼルス市民と軍隊 より
結城さん
あなたの言った通りになりましたね
突発的にもかかわらず
彼らは間に合った・・・・
そして
救ってくれた
世界の危機を・・・・
当然です
・・・・いやそれに
まだ 始まったばかりだ
クス・・・・
そうでしたね
一刻も早く
あなたたちと共に・・・・
我々のできる事を・・・・
いてて
博士
湿布それに包帯
持ってきました
ルミ・・・・
・・・・はい
私は・・・・
隠し事が ニガテでね
確かにお前の
言った通り
あの男・・・・
あの赤い怪人は・・・・
良クンだよ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』5巻 第10話 接触 結城丈二 本部長(佐久間ケン)一条ルミ 海堂博士 他 より
フーーーー
良クン・・・・
君は・・・・・
一条亨という生化学者を知っているか・・・・
一条?
そう・・・・
あの子
一条ルミの
・・・・父親だ
殺されたのか
バダンに・・・・・
!? !! !!
そ・・・・そうだ
バダンの協力を
拒んだばっかりに・・・・
俺が殺したかも
しれんな
な・・・・
なにも
そんな事を・・・・
俺には
バダンの兵士(コマンド)になった殺しの記憶しか
残っていない
殺した・・・・
この空っぽの記憶からも
あふれでてしまう数の
人間を・・・・
・・・・・・・・
ゴク・・・・
一条という男
よく知らない
だが・・・・
俺は誰を
殺していても
おかしくは
ないんだ・・・・
キサマが
刻んでいるのは
最悪の
記憶だ
今さら・・・・
償いようも
・・・・ない
・・・・どうした?
戦えばいい・・・・
たしかに
その体は
バダンがつくった
ものかもしれない
・・・・・
だが・・・・
君は君だ
その力・・・・
君の力だ
償えのならば
戦えばいい
漫画『仮面ライダーSPIRITS』5巻 第11話 償い ムラサメ 海堂博士 仮面ライダー1号(回想) より
・・・・あいつゼクロスとかいったな・・・・
(さんざん人を
ぶっ殺しといて
今度は人助けだあ?
テメエいったい
なに企んでやがる)
なんだあ・・・・
テメェは逃げねえのか
ま・・・・
逃げるヤツも逃げないヤツもどの道同じだがなあ
逃げる・・・・?
逃げるかよ
テメエに借りがあるんだ
ゼクロス(あいつ)の借りが・・・・
オラァ
へっ
痛みもねえ
恐怖もねえ
タイクツな怒りだぜ
ならあ
こっちは・・・・
!!
電撃か・・・・
ククク・・・・
それで?どうする?
一瞬の間 俺の動きを
止めた程度で
テメエに何ができる?
クッ・・・・
!!
一瞬で・・・・十分だ
ゼクロス・・・・!!
・・・・そ
その技は・・・・
ライダー
きりもみ
シューート!!
ギギ
!?
あれは・・・
!!
なにい
そうか・・・・
その位置から
一瞬でも光れば・・・・
この死にぞこないがああああ
この力・・・・
どこまで衰え
ようとも
討ち続けてやる・・・・
ゼクロス キック
クッソオオオオオオ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』5巻 第13話 閃光 ゼクロス(ムラサメ) 滝和也 アンリエッタ・パーキン ジゴクロイド より
はい・・・・バダンはなぜ 高速道路を襲ったのか 以前までの攻撃拠点にくらべて目的が不明瞭すぎます
もし・・・・
理由があるとすれば・・・・
彼らが「ゼクロス」と呼称する赤い怪人を誘引する場としてつかったとしか・・・・
それだけの
理由で・・・ですか
アンリエッタ それは
あなたの推測ですね
はい・・・・推測
でしかありません
しかし私にはそれだけ
バダンは「ゼクロス」に執着しているように思えます
そのための犠牲者は
彼らにとって大した問題ではありません
それが・・・・
バダンです!!
なるほど・・・・
「ゼクロス」とは何か
そしてバダンの
目的は?
フム
例の世界中の空に
出現した巨大な渦
あれ以降バダンは再び沈黙を守ってきました
しかし
そういう期間ほど
水面下で次の進撃を
組みたてているものです
9人の仮面ライダーも今
我々と同じく
休む事なく世界中で
バダンの動きをつかもうとしています
・・・・ですが本部長・・・・
フフ・・・・
解ってますよ アンリ
このまま日本を
ほうっておけませんよね
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第14話 変身 アンリエッタ・パーキン 本部長(佐久間ケン) より
!!
ク・・・・
フ・・・・
ウフフフ・・・・
ジゴクにやられた傷と
私にやられた傷
どっちがいたむ?
当然
私だよねぇ・・・・
あんたは今
傷も痛みも
癒えにくい
体になっている
弱々しい人間
みたいにね・・・・
だからさ
私がつけた傷から
さっさと切りおとされて
ラクになりなさいゆ
治癒能力が
おちてる・・・・だと
甘えるんじゃねぇ
!
俺の知ってる
ヤツらは
ボロボロになっても
勝ちつづけて
みせたぜ
テメエはまだ
力の使い方が
わかってねえだけだ
チッ
どこまでだって
強くなれる
テメエが
「仮面ライダー」
であればな
カメンライダー
俺が・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第15話 秘密 ゼクロス 滝和也 カマキロイド より
!!・・・・
こ・・・・
これは・・・・
ルミ・・・・
そこに いるか・・・・?だとしたら 私はもう生きてはいないのだろうな・・・・
おとう・・・・
さん・・・・
ルミ・・・・君のいるそこは今・・・・
バダンの荒野になってしまっただろうか・・・・
それとも・・・・・
ギ・・・・・・・
ギギ
ギャアアアァァァァァ
ヒィィ
助けてええ
テエメエエ
ギ・・・・ギィ・・・・
それとも・・・・・
ルミ・・・・
今 君の側に“ゼクロス”という戦士がいるとしたら・・・・?
だとしたら・・・・
幸いだ・・・・・
君にも・・・・
人間にも・・・・まだ・・・・
未来はある・・・・
海堂・・・・・
!
ああ・・・・
一条・・・・
君の手元にメモリーキューブは届いているか・・・・
!!・・・・・
そうか・・・・アレ
ある!!
届いているぞ!!
俺は“ゼクロス”となった若者に償いをしなければならない・・・・
それで“ゼクロス”を救ってやって欲しい・・・・・
海堂・・・・すまない・・・・お前には 迷惑ばかりをかける
バカヤロウ・・・・
一条・・・・
もう
慣れちまったよ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第16話 私闘 ゼクロス カマキロイド 一条ルミ 海堂博士 一条亨博士
!
なんだあ
テメエらは・・・・
ん・・・・
彼らは・・・・
!!
良さん!!
うおおぉ!!
滝
やめなさい!!
正攻法で
勝てる相手じゃないわ!!
だからって
引けるかよ!!
ZX(あいつ)だって
ヘロヘロんなか
戦ってんだぜ
!!
・・・・・・・・・・
なにい・・・・・
滝!!
まだまだあ
と・・・・・
バカヤロオ!!
民間人はひっこんでろ!!
フン・・・・・・・
あんだけにやらせちまったら
二人の先輩に
会わす顔が
ないんでね
変身
な・・・・
に・・・・・
トオオ
シュシュ
ギシュ・・・・
V3ーーーー
反転キイック!!
V3・・・・
あいつが
本郷と一文字の・・・・
佐久間本部長
現場に
仮面ライダーV3が
現れました
スンマセン
風見センパイ
日本を・・・・
そしてZX(彼)の事を
頼みます
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第17話 JUDO 滝和也 アンリエッタ・バーキン 仮面ライダーV3(風見志郎) ライダーマン(結城丈二) 仮面ライダースーパー1(冲一也) 一条ルミ 海堂博士 ジゴクカマキロイド カニロイド 佐久間ケン より
え・・・・
・・・・・・
!?・・・・
ヘェ・・・・
まだ戦えるってかあ?
チィ
させん
ふん
暗闇の子らか
この身体に傷を
つけるとはな
不粋な事をしてくれる
なに・・・・?
知らない言葉・・・・
良・・・・さん?
でも意味が
頭の中に伝わってくる
!!
・・・・な!?
!?
一条の
子か
お前の父にには
感謝しているよ
え・・・・
あの者は
喜んで
この器を
創ってくれた
だからお前には
無残な結末を
見ずにすむよう
この手で
その命を
止めてやろう
ちがう
人格・・・・
良クンじゃない!!
やめろ!!
グア・・・・ア
・・・・・
あなた・・・・
誰・・・・なの・・・・?
我が名は
JUDO
すべての生命の
長
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第17話 JUDO ライダーマン(結城丈二) 仮面ライダースーパー1(冲一也) 海堂博士 一条ルミ ジゴクカマキカニロイド 大首領JUDO より
あ・・・・あ・・・・
そう・・・・
その音だ・・・・
いや・・・・もっとか
この器を創るため
研究を続け・・・・
やつれはてた者・・・・
一条亨の命は・・・・
もっともろい
音をたてていたなあ
・・・・ゲホゲホ
!?
ゲホ
・・・・・・・・・
また・・・・
お前・・・・か
チ・・・・イ
ジャマを・・・・
する・・・・
な・・・・
・・・・・・
だれか・・・・
もう一人・・・・・
いるの?
う・・・・・
!!
し・・・・・
しずか・・・・クン
あれを・・・・
良のベルトの中へ・・・・
え?
お願い
良を・・・・
救って・・・・
そ・・・・
それは・・・・
チ・・・・
一条め・・・・
くだらん
小細工を・・・・
良----・・・・
これからは私が良を
守ってあげるわ・・・・・
----・・・・でもね・・・・
わかってるよ・・・・
俺だってスグに
強くなって・・・・
守ってみせるさ・・・・
姉さんを----・・・・
良・・・・
・・・・さん?
ク・・・・
ムウ・・・・・
ふざけ・・・・
やがってえ・・・・
いったい・・・・
なんだったんだ・・・・
良クンの体を
一瞬だけ支配して
消えていった
金色の怪人・・・・
それに・・・・今の
しずか君は・・・・
わからん・・・・
良さん・・・・
守ってみせるさ・・・・
姉さんを----・・・・
思い・・・・
だした・・・・
やっと・・・・
良・・・・さん
そして・・・・もう
二度と忘れん・・・・
バダンの無情
姉さんの無念
そして俺の・・・・
無力を・・・・
変身
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第18話 覚醒 村雨良 一条ルミ 海堂博士 ライダーマン 仮面ライダースーパー1 ジゴクカマキロイド JUDO 村雨しずか より
設備の依頼は
済ませておいたわ
ありがとう
あと風見さん
佐久間部長が・・・・
くれぐれもよろしく・・・・と
・・・・そうか
本部長って・・・・
いつも声だけの
おえらいサン
知り合いなのか?
本部長が
第一期生の
デストロンハンター
だった頃
風見さんと共に
闘った経緯があって
それ以来の付き合い
だそうよ
ヘェ・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
風見丈二
結城丈二
冲一也・・・・か
ニヒ・・・・・
ヒヒヒヒヒ
?
うれしそうね
そりゃそうさ
仮面ライダー1号
2号
V3
ライダーマン
X
ストロンガー
スーパー1
そして俺はまだお目にかかっちゃいないが・・・・・
アマゾン
スカイライダー
人間にとって
これほど心強い奴らが・・・・・
9人もいるなんてよ・・・・
・・・・いや
10人か・・・・
いや・・・・9人だ
滝さん
!
ナ・・・・ナニィ
おい
あいつ自身が
そう言ったハズだ
ま・・・・
まあ そういうなよ!!
風見
あいつはあん時
どうかしてたんだよ
血い出しすぎちまってさ
奴の闘い方をみればわかる 復讐に固執するヤツを仲間にできない
あの体・・・・
あの力を・・・・
なぜ人の為に
つかおうとしないんだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 19話 決別 滝和也 アンリエッタ・バーキン 風見志郎 結城丈二 冲一也 より
これが今までに
起きた各地のヴォルテックスによる
人間狩りの資料・・・・・
調査は進めているけど
次の予測は未だに・・・・・
・・・・だろうな
知りたい事は
バダンが大量の
人間を集めて何をしようとしているのか・・・・
ムスーー・・・
各紛争地域で見られる
改造兵士の素体収集とか
しかし・・・・奴らは
エジプトの黒いピラミッドに十分すぎるほどの数を保管していた
あれが一つだけ
とは思いがたい・・・・
それに敬介が
追っている銀の骸骨(ドクロ)の事もあるし・・・・
月面の
ツィオルコフスキーの採掘跡も謎のままです・・・・
とにかくバダンが
複数の計画を同時に進めているのは
確かだわ
ズズン〜〜☕
なに?
別に
(復讐に固執する奴とは仲間になれない)
もう一つ・・・・
村雨の存在もあるわ
新宿 横浜の件を見ても
バダンは執拗に
彼を追っているわ
たった一人の離反者の処分にしては
事を荒だてすぎている
それに昼間に見た黄金の怪人・・・・
村雨自身に何か秘密があるのでは
・・・・だったらよ
直に聞きゃ
いいじゃねえか
本人によ
素直に答えてくれるとは・・・・
思えんがな
だああああ
ったく本郷も一文字も・・・・
後輩に
どーいう教育してんのかね!!
そこまで疑り深えのも
どーーよ!!
バダンを倒すって
ところじゃ目的は
同じじゃねえか!!
俺たちの闘いは
人間を守るためだ
復讐じゃない
奴がそのために
人間を犠牲に
しないとも
限らんからな
!
へっ
ちげーーな
あいつは
女の子を助けた
そいつを俺は
見た
ったくへりくつこねて
垣根つくりやがって
だいたいがよ
村雨(あいつ)だって
お前らだって
人間だろうが
確かに疑ってる間は
敵を見抜けるかも
しれんがよ
信じてみなきゃ
「仲間」は見つかんねえだろ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第20話 嘘 滝和也 アンリエッタ・バーキン 風見志郎 結城丈二 冲一也 より
ねえ・・・・
良さん・・・・・
お姉さん・・・・・よね
空に消えていった
あの・・・・
綺麗な人
綺麗な人・・・・か
どうかな
俺は姉弟だから
そんなふうには
見えなかったが・・・・
そうだな
優しかった・・・・
優しくて
強い姉-----・・・・
だった-----・・・・
え!?
なぜかは解らんが
この体になってから
俺には・・・・ずっと
姉の姿が見えていた
そして
いつも・・・・
泣いていた・・・・
俺の事を・・・・
俺のしてきた事を・・・・
愁(うれ)うように
・・・・
ごめん・・・・
なさい
な・・・・
なんだ急に
私・・・・お姉さん
事はよく解らない
けど・・・・
でも・・・・
良さんが・・・・
そんな体になったのも・・・・
哀しいお姉さんが
見えるのも・・・・
お父さんが・・・・
バダンに協力
しなかったら・・・・
謝られても困るな
そのルミの父さんもこの体が・・・・
やめよう・・・・
俺たちが咎め合う事はない
憎むべきは・・・・
倒すべきは・・・・
バダンだ
!!・・・・・ム
ムチャよ!!
バダン相手に
良さんたった一人で
どうやって
・・・・・・・・
ムチャ・・・・か
そうか・・・・
そうかもな・・・・
じゃあ やめるか・・・・
!?
・・・・・・
ウソ・・・・
良さん記憶は戻ったけど・・・・
そしたら・・・・
嘘もつけるように
なったのね・・・・
そうですねえ
嘘はよくない
!!
!?
ニーードル!!
良さん・・・・・
変ん・・・・身っ!!
ゼクロスパンチ!!
クク・・・・
記憶が戻っても
相変わらずの気の短さですねえ
その憎しみ・・・・
その怒り・・・・に
このヤマアラシロイドが力を貸しましょう
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第20話 嘘 ZX(村雨良) 一条ルミ ヤマアラシロイド(ニードル) より
まぁてえ!!
!!
ゼクロス
そいつは俺たちに任せるんだ!!
(疑ってる間は敵を見抜けるかもしれんが信じてみなきゃ「仲間」は見つんねえだろ)
それとも・・・・
俺たちといっしょに・・・・
!
ナニ!?
キサマ・・・・
待ってろよ
村雨ぇ!!
ゼクロス・・・・
なんのツモリだ
ロープアーーム!!
エレキ光線!!
ナ・・・・ニ
良さん
ゼクロス・・・・
キサマ・・・・
ククク・・・・
そうですゼクロス
彼らとでは
バダンは倒せない
バダンへの怨み
それのみに戦う
私と組んでこそ
あなたの願いは叶えられる
それを・・・・
忘れては・・・・
いけない・・・・
姉さん-----・・・・
う・・・・・
おおおお
おお・・・・お
フ・・・・
その程度か・・・・
ぬ・・・・
ううう・・・・
あ・・・・
ああ・・・・
りょ・・・・
良さんやめて!!
え?
クク・・・・
ククク
そうですゼクロス!!
ジャマ者を殺しなさい!!
!
!!
チィィ
V3キック!!
ゼクロスキック!!
!!
ゲホゲホ
ク・・・・・
チ・・・・チィィ
なにをやって・・・・
!!
赤心小林拳 梅花(ばいか)
梅花ぁ?
そうだ・・・・花を包み込む「梅花」の形意
守る力は復讐の力に
敗れたりなどしない
チ・・・・
ゼクロス
また後ほど・・・・
こういうの・・・・
キライです・・・・
でも・・・・・
戦わなくちゃ
いけないんですよね・・・・
でも・・・・
もう少し
良サンを待って・・・・
!
待つさ・・・・
俺たちも初めは
そうだったんだ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』6巻 第20話 復讐 ZX(村雨良) 一条ルミ 仮面ライダーV3(風見志郎) ライダーマン(結城丈二) スーパー1(冲一也) 滝和也 ヤマアラシロイド(ニードル) より
ケイ・・・・スケ
わたしに診させてくれないか・・・・
さっきの声の・・・・
そう
我々はバダンに
拉致された科学者だ
・・・・・・
ウム・・・・・
命に別状ないが
早く救出して
処置をした方がいい
ウウ・・・・
ミンナ
いっしょに逃げる!!
・・・・・・
私たちは・・・・・!!
足手まといになる
それよりも
君に仲間が
いるのならば
急いで日本に
その力を集めて
くれないか!!
バダンは日本で
“JUDO”の復活を
目論んでいる!!
ジュ・・・・ドゥ
そう
“JUDO”
バダンは
彼の事を
“大首領”とも
呼ぶ・・・・!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 第23話 救出 仮面ライダーアマゾン(山本大介) 伊藤博士 より
!!
おい・・・・なんだ!?
どんどん狭くなってるぜ・・・・
!!
超電子
ドリルキック!!
茂!!
キサマ・・・・
この上空にどうやって潜入した・・・・
へっ・・・・
そんな事
俺が知るか
スカイ
スクリューキック!!
!?
先輩たち早く!!
洋!!
てめ・・・
なーにがそんなこと知るか だよ
はこんだのオレ
ナニ!?
バダンが日本で大首領の復活を企んでいる!?
うう・・・・
それに・・・・
バダン・・・・「大首領」のコト
「ジュドー」・・・・呼んでる
JUDO・・・・
JUDOならば
俺たちは日本で
会っている
なに!!
ムウ・・・・
ゼクロス・・・・
そしてJUDOの
秘密・・・・か
急ごう
日本へ----・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 第23話 救出 仮面ライダー1号(本郷猛) 仮面ライダー2号(一文字隼人) 風見志郎 仮面ライダーX(神敬介) 仮面ライダーアマゾン(山本大介) 仮面ライダーストロンガー(城茂) スカイライダー(筑波洋) 地獄大使 より
うんまあ
こんなもんだろう
博士
開業届けは?
なあに新宿の時も
無許可でやってたんだ
なんとかなるさ
私たちは
バダンから
逃げてる身だしな
はあ
じゃ良クン
頼む
・・・・・はい
「はい」・・・・だって
記憶が戻ってから
妙にスナオで
調子くるうね
(まいったね ズンズンささってくよ)
つかクイの方がコワレそう・・・・
良さん
もう・・・・
ちゃんと
道具使って
おサルさんじゃ
ないんだから
ウ キ・・・
そうか 反省
おーーい
見てくれよ
大漁だぜ大漁
たいしたもんだぜ
オレ樣
ルミちゃん
三枚におろせる?
うっ・・・・
どれどれ
なあんだ滝さん
小鰺じゃないかよ
この時期 満ち潮に防波堤に糸たれてりゃあ
子供だって
こんぐらい釣れるって
かわはぎの子も
いただろ
あ・・・・
そう
ルミ!
さばくも何も
唐揚げにして
南蛮漬け!!
これにつきる!!
・・・・うん
さすが地元
なんでえ・・・・
気持ちワリぃぐらい
明るいな
そんな事ないです
あれが本来の
良さんなんです
そうか・・・・
うん・・・・
そうかもな・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 第24話 征服 村雨良 一条ルミ 海堂博士 滝和也 より
--ニューヨーク--
な なんだよ
日本・・スゲェことに
なってんじゃ
なんで
日本が・・・・
そうですか
・・・・
よりによって
日本に・・・・
・・・・と
そういうワケです
ぜひあなたの
頭脳に協力を
あおぎたい
わかってるよ・・・・
人間の・・・・そして
トモダチのためさ
どっどど
どうしよう!!
こんな大軍団
9人ライダーだけじゃ
とてもムリだよ!!
バカヤロウ!!
ほら
チョロ〜
あいつらを信じないヤツが あるか!!
それにな
あいつらの力が
ギリギリ届かなかった時こそ
俺たちの出番
だろうが!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 第25話 進攻 ブリジット スパイク 真実 佐久間ケン ビクトル・ハーリン 草波ハルミ チョロ 谷源次郎 より
!!
見たか!!
炎だ!!
バダンめ・・・・
やっぱりここで騒ぎを起こすつもりだ!!
クソオオオオオオ
まずいな・・・・
なんとかこの騒ぎを止めないと
やめて!!
今に良さんたちがなんとかしてくれるわ
コノ・・・・
今なにしたコノヤロウ!!
「やめて」ってってんだろーーーー!!
あの赤いヤツは
俺たちのために
戦ってくれてんだぜ!!
みんな!!
よ
こーいうの
キライなのよね
アケミさん!!
よかった!!
ホントによかったあ!!
ホラ!!あかんて!!
みんなワイの歌を聞いて
おちつくんや
がーん
がーん
がんがらがんがん
ウルセーー
どけーー!!
おお!?
と・・・・
あぶね・・・・
ったくーー
男でしょ大人でしょ!!
みっともなく
パニクってんじゃないわ!!
立花さんですね
谷です
チョロでぇす
それにジュニアライダー隊ね
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 一条ルミ 新宿のアケミたち がんがんじい 一条ルミ 草波ハルミ ジュニアライダー隊 谷源次郎 立花藤兵衛 市民たち より
猛いい!!
!!
なにをしとるか!!
ライダー車輪だ!!
ハイ
オヤッさん!!
ギギギギ
村雨ぇ お前もだ!!
早く後を追え!!
チイ・・・・
・・・・!?
ヒイイ
・・・・なにを
する気なの!?
あのまま 敵を巻き込んだまま回転を上げていくんだ
F1でいうスリップストリームを連ねるようにな・・・・
見な 今 百五十・・・・いや二百キロか
すでに肉眼じゃ 捕らえられないほどの高速に入っている
そして・・・・あいつら二人がタイミングを合わせて跳ぶんだ
上空の一点をめがけてな・・・・
すると後続のヤツらが コンマ00数秒遅れて・・・・跳ぶ
二人は点でお互いの体をすれちがわせる
絶妙のタイミングでな・・・・
だが一瞬あとから来る六人はそうはいかねえ
かわすための空間を失ったまま 高速でぶつかり合い自滅する
それがライダー車輪だ
そ・・・・
そんな・・・・
それじゃ もし良さんたちが少しでもタイミングを崩したら
(・・・・・・・・・そうだ あれは本郷と一文字が血のにじむような特訓の末に完成した技・・・・)
ぶっつけ本番の村雨に・・・・
できるのか・・・・
・・・・
ク・・・・ロス・・・・
聞こえるか・・・・
ゼクロス!!
!?
俺の声に周波数を合わせるんだ 早くしろ!!
チィ
俺に視界をまわせ!!
ヨシ・・・・そうだ
見えるぞ!!
・・・・・・
・・・・・!!
今だ!!
跳べ!!
!!
本郷のタイミングが・・・・狂った!?
殺(ヤ)れええ
ク・・・・・
・・・・ゼクロス!!
ギギイイ
!?
ギ・・・・ギギ
な・・・・・・・なにいいい!!
ハハ・・・・・
やりやがった・・・・
いやなもんだな・・・・
あいつらと同じ姿をした者が壊れていくところなんざ・・・・
いつ見ても・・・・
オヤッさん・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』7巻 第28話 大首領 ZX(村雨良) 仮面ライダー1号 仮面ライダー2号 一条ルミ 滝和也 立花藤兵衛 ショッカーライダー 地獄大使 より
我が名は
JUDO・・・・
クッ・・・・
神経に割り込んでくる・・・・
まさか・・・・
こんな力を
日本中の人間に・・・・・
そして・・・・
バダンの大首領・・・・・
だ・・・・・
大首領だと・・・・!?
バカな・・・・・
ショッカー
ゲルショッカー
デストロン
ゴッド
ゲドン
ガランダー
ブラックサタン
デルザー
すべての組織を
統率してきた大首領は
あいつらが倒した
はずだぞ!!
ネオショッカー!!
ドグマ・・・・
ジンドグマの首領は
洋や一也が
確かに・・・・・
ククク・・・・
あれらは
我が尖兵に
過ぎぬ----・・・・
!! な・・・・
今・・・・・
俺だけに・・・・
直接
話しかけてきた・・・・
ちょっとぉ
勝手に決めないでよねーーーー!!
オサってなんだあ
ウルサイ!!
ライダーがこないわけないだろうー!!
ウソよ・・・・
信じられない
そんなの俺の自由だろーー!!
だまれだまれだまれ
・・・・
まさか・・・・
人間一人一人に・・・・
同時に話しかけるなんて・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』8巻 第29話 出現 仮面ライダー2号 立花藤兵衛 谷源次郎 草波ハルミ ジュニアライダー隊 市民たち JUDO より
そうだ・・・・
良クン・・・・
戦え・・・・
博士・・・・
何よりも自分自身と
たとえ数えきれない
犠牲者の上に成り立ち
いつか人類を滅ぼすかもしれない体だとしても・・・・
その時には・・・・その時は・・・・
俺たちが総力をあげて
ZX(あいつ)を破壊する
・・・・・・
そうだな
その時まではあがいて・・・・そして生きるべきだ
それが
村雨しずか・・・・
彼女の願いかもしれんのだ
え?
もし・・・・ニードルの
話が事実だとすれば
しずか君は・・・・
良クンが選ばれる直前にZX改造の被験者になっている・・・・
!!
そんな
じゃあお姉さんも
あの体に・・・・
私はずっと考えていた
数ある犠牲者の中で なぜ良クンが選ばれたのかを・・・・
単なる可能性か
だが・・・・もし・・・・もしあの体(ボディ)に残留したしずか君のデータが
良クンの精神を拒絶反応から守り JUDOの支配をも封じているのだとしたら
(海堂教授!今度の合宿もう一人誘ってもよろしいですか?「良」です 私の弟----)
科学的根拠はないのだが・・・・
私にはそう思えてならない・・・・
う おお
博士・・・・
博士・・・・
あれ
(略)
・・・・・グッ グホオ
うえ・・・・・
うええええ・・・・
うえええええ
うわああああ
・・・・・
なっ なんで・・・・
なんで死なせてくれなかったんですぅ
どうせ生きてたって人間は・・・・もう
あんな恐ろしいもにあうぐらいならいっそ死んだ方がましだ!!
ダメだよ!!
死んじゃ・・・・ダメだ・・・・
死んじゃだめだよ!!
僕・・・・
ばだんなんか怖くないもん
だから・・・・
ねえ・・・・
死なないで・・・・
茂・・・・
あいつが「村雨良」という人間に戻れずJUDOの器としても生きられないのならば
仮面ライダーとして
生きればいい
仮面ライダーZX・・・・として
漫画『仮面ライダーSPIRITS』8巻 第32話 称号 ZX(村雨良) 本郷猛 仮面ライダーストロンガー(城茂) 立花藤兵衛 一条ルミ 海堂博士 村雨しずか(回想) 良に助けられた家族 より
・・・・・・・
夢・・・・
我が夢など見るのか・・・・
ちがう
それは私の夢だよ・・・・
JUDO
私とお前の記憶だよ・・・・
この惑星に生物が宿る前の・・・・な
・・・・・・・
JUDO・・・・・か
お前が呼称を持つとはな・・・・
我々に名など意味がないものだろう・・・・・
フ・・・・
必要なのだ
人間のように
感知する力に
乏しい者たちには
支配者を恐れ唱える
呼び名がな
ク・・・・ク・・・・
どうだ・・・・
一つ戯れに
キサマも 何かの
名で呼んでみるか?
・・・・そうだ
我らが降り立った「聖地」・・・・
ヤマトに造らせた神話では
キサマ人間に
こう呼ばれてたな
「ツクヨミ」・・・・と
そして我は「スサノオ」
キサマに破壊されたあれは・・・・
「アマテラス」・・・・とな
ムダだ・・・・
JUDO
・・・・ここは私が造りだした虚空の牢獄だ
抜け出せやせんよ
チ・・・・
黙れ!!唱うな!!
我の幽閉と引きかえに
己の肉体を失い
頭蓋をさらした
裏切り者が
そうだ・・・・
まるでキサマの魂を
受け継ぐように
人間の中からも
反逆者が出ようとはな
一条亨
村雨しずか
ZX
そして
カメンライダー
まさか・・・・
キサマが
やらせているのか
ちがう
人間の意志だ
自由と命を
求める人間の・・・・な
自由・・・・?
命・・・・?
やはりキサマは
壊れてしまった様だな
・・・・
しかし・・・・ZXへの
移り身へのかなわぬ
今・・・・
JUDO お前の自由も潰えた
フ・・・・
いい気になるな
ツクヨミ・・・・
ZX(あやつ)がどれだけ
愚行を続けようとも
その肉体はより
安定に近づき
我が帰還の
なによりの祝いと
なるのだ
・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』8巻 第3部 序章 JUDO(スサノオ) ツクヨミ より
千弘くん
千弘くんどこお!?
う・・・・
泣くな!
あ〜〜〜〜っ!!
良はん!! パンでっせ!! ワイ 腹ペコペコ やったんや
ダメーー
それは千弘くんの!!
おい
・・・・( ̄¬ ̄)
(/≧◇≦\)
ジョーダンでんがな
ちょっと魔がさしただけやないか
----っとに
洋はん いったいどこで戦っとんのやろ
せっかくこのがんがんじいが応援にきたってのに
北の空は広すぎるで・・・・
・・・・・
「仮面ライダーとして生きればいい」・・・・?
そう!
本郷さんが・・・・
仮面ライダー・・・・
俺が・・・・か
ルミ!!
ちょっと手伝ってくれ!!
はーーい!!
だからね
いってらっしゃい!!
私もがんばる!!
・・・・・
だが・・・・俺は
バダンとして血に
染まった過去がある・・・・
それに・・・・
俺の体は・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』8巻 第3部 第1話 症候群 村雨良 がんがんじい 海堂博士 一条ルミ 君治 より
俺はよ・・・・
!!
俺はガキの頃から
負けるのも折れるのも
大きらいでよ・・・・
俺らしいって思うことを
つらぬいて生きてきた
ツモリだった・・・・
でもよ・・・・そのうち
みんな俺から離れて
いっちまってよ・・・・
大人も
ダチも
そんな時に
バダンのせいで
みんなおかしく
なっちまって・・・・
さらに
ネオショッカーだろ・・・・
けどよ・・・・
こんな世の中に
なっちまった時に
あいつらは俺を頼りに
してくれたんだ
俺の事・・・・
必要だって・・・・
俺はよ・・・・
本当の事 言うと
心のどこかで
人や町がこんなに
なっちまった事を
喜んでたのかもしんねえ
あいつら・・・・
そんな事も
知らないで・・・・
俺を・・・・
信じて・・・・
それなのに・・・・
ちくしょーーーー!!
ダラーーーーッ!!
ボケがーーー!!
だからよ・・・・
俺はもっぺん
変わるぜ!!
!
いや あいつらが
俺を変えてくれるんだ
ネオショッカーの
怪人に勝ちめが
ねえからってよお
それでも俺は
あいつらを守る・・・・
そのために
戦えるんなら!!
それが今度の・・・・
本当の俺だ!!
・・・・・そうか
そうだな・・・・・
俺も・・・・本当は・・・・
あいつらのように・・・・
なんでぇ
あんたもワケありっぽいな
じゃ・・・・俺ら
仲間か・・・・
ああ
仲間だ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』8巻 第3話 参戦(後編) 仮面ライダーZX(村雨良) 村上千弘 より
知っている・・・
僕はこの瞳を・・・!!
ずっと以前(まえ)にこの目で見たことがある・・・!!!
そうだ・・・
間違いないあれは・・・
僕と父さんを・・・
ずっと見つめていた瞳だ・・・
--そしてあるとき・・・
大作・・・
起きなさい大作・・・
私はお前に
謝らなければ
ならないんだ・・・
すべてをお前に
背負わせようと
した父さんが・・・
私が間違って
いたのだ・・・
何か父さんが
大切なことを
言っている・・・
父さん・・・?
けど・・・
この時のことを
僕は・・・
忘れて
しまって
いいんだ
お前は何も
きいていない・・・
お前は何も
覚えていない・・・
・・・そうだ お前は
誰にも
だまされては
ならない
・・・お前の
信じていいのは
あの瞳・・・
あの瞳を信じて
いる限り・・・
お前に恐れる
ものはない!!!
頼んだぞ大作・・・
頼んだぞ・・・
漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』1巻 第2話 誕生編2・重撃!!九大天王 草間大作 草間博士 より
大作…お前さんは
以前に俺と
会っている…
それは6年前…
ロボを製造中の
BF団アジトで…
オラオラッ BF団の
腰抜けどもぉ〜〜ッ!!!
あんた…
草間博士…!!
竜作クン
君が来たのか…
あんたのうしろに
あるのは何だい?
世界の運命を
握っているものだよ…
ならぶっ壊す!!!
待つんだ
竜作君!!!
へっ あんたが
どう止めようと
この俺を止められ…
!?
ムッ…!?
何をする博士!!?
たのむ…!!
『彼』を壊しては
ならない…!!
『彼』を壊せば
大作も殺されとしまう…
だが それは!!
世界を滅ぼす事を
意味するんだ!!!
や…
やめるんだ
草間博士!!!
あれは…父さん…?
そうだ…私は
とんでもないモノを
作ってしまったんだ!!
そして気付いたときには
すべて…
草間博士
あんた…
大作を守って
やってくれ
この恐ろしい運命から
大作を守ってやってくれ…!!!
博士っ!!
まてっ!!
その引き金を
引くんじゃ…!!
な……!!!!
はっ!!!!
博士〜〜〜〜っ!!!
う…
あああ あああ
ああ…
あああ あああっ
漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』2巻 誕生編6・決意の始まり 草間大作 草間博士 村雨竜作 より
----以上が『幻惑のセルバンテス』死亡報告だ…!!
ふう-----
全く……
情けない----
こうも易々とジャイアントロボを奪われるとは
これではBF団が姿を隠した10年間が
ムダになってしまったようなものです…
----そうは思いませんか? 衝撃のアルベルト
なにィー!!?
やめておけアルベルト
セルバンテスの『舞台演劇』は死を覚悟したもの
奴のビッグファイア様への忠誠心はここにいる者皆よくわかっているよ…
その通り!
彼は長い年月かけて九大天王まで舞台に引きずり出した
惜しむらくは我々に
『舞台演劇』に侵入する力がなかった事
何の手助けもしてやれなんだワシらこそがむしろ
恥ずかしい
おやおや…その声は
『赤影』殿
『暮れなずむ幽鬼』殿
『激動たるカワラザキ』殿
そして十傑衆の皆さんが
勢揃いしておられるとは----
----当然だ
孔明----
元はといえば今回の作戦 全て貴様の発案 この始末つける----
次の案がないとは言わせんぞ!!
だまらっしゃい!!
私にぬかりはありせん
『GR計画』はセルバンテスだこに任せていたわけではありません…
ム…キサマは…
ごぶさたしております
この『白昼の残月』----
このような時のため十傑衆末席を与えられたようなもの
ホォ…?
この若造もエンシャクと同じ 孔明の犬であったか
まてまて衝撃の…
末席とはいえ十傑衆…
お手並み拝見といこうではないか
結構です!!
----それでは…
『GR計画』第2段階…
本格始動といたしましょう!!
各々よろしいな!?
うむ!!
ああ!!
全ては我ら
ビッグファイアのために!!!
漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』2巻 第二部“白昼の残月”編 第7話 白昼の残月編1・逃げてきた男 衝撃のアルベルト コ・エンシャク 赤影 暮れなずむ幽鬼 激動たるカワラザキ 混世魔王・梵瑞 策士・諸葛亮孔明 より
クク・・・
ククク
ゼネラルモンスター
そして魔神提督が沈黙したか
お前達も気をつけることだな・・・・
よいか・・・・・
役立たずを二度も蘇らすほど甘くはない
作戦を完全に遂行せよ・・・・・
日本に巣喰う人間を捕獲せよ 従わぬ者は殺せ・・・・
浄化した聖地をバダン帝国とし 大首領の復活に備えるのだ
暗闇大使
!
バダンの命令には従う
だが 俺はあくまでもブラックサタンのデッドライオンとして戦わせてもらうぜ
フン・・・・
好きにするがよい
・・・・・
・・・・・
地獄大使・・・・
まだなにか・・・・?
フン・・・・
やはり愚者の魂など
無用だったか・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第5話 旅立ち 暗闇大使 デッドライオン 地獄大使 より
おい
あれ
よっと
千弘くん!!
千弘くん!!千弘くん!! 生きてたんだね!!
バッカ
俺が死ぬかよ
村上ぃ!!
先生
スマンかったなぁ・・・・・
お前にばかり
迷惑かけてなぁ・・・・
アレ
アライグマ
死にたがりなおったのかよ
フレイアはん
次々いきまっせ
!がんちゃん
おつかれさま
が・・・・
がんちゃん ええなあ
フレイアはん
ワイも頭が・・・ぐはあ
仮病は治せません
しかもそこはおなか
でも・・・・けっこうな人数でっせ
体力もつんでっか?
じっさい
だいじょうぶ
私はそのために来たんだから
ええ人や
じわあ ワイなんで 体 大丈夫やねん
ええ?
ネオショッカーが逃げ出した?
ああ もうちょいで
全滅だったんだけどな
ス・・・・
スゴイ!!
じゃあ 千弘くんが!?
俺じゃねえよ
俺もちったあ がんばったけどな
やったのは
仮面ライダーーよ
カメン・・・・
ライダーー---
・・・・って千弘くん
キライじゃなかったけ・・・・
俺はさ・・・・
本当はそんなたいしたヤツじゃねえんだ
千弘くん・・・・
少し変わった・・・・
たいしたヤツに
なるのはこれからだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第5話 旅立ち フレイア がんがんじい 村上千弘 公治 荒井先生 学生たち より
京都で滝が待っている
行ってやってくれ
お前も「仮面ライダー」ってやつの一人なんだろ
!
・・・・・・
まだ抵抗あるかい?
・・・・だよな
!
あるよなぁ
普通・・・・
筑波君!!
筑波君!!
私は・・・・
この青年を死なせたくない!!
これは・・・・
この顔は・・・・
これが俺の姿か・・・・
俺が目を覚ました時は
すでにネオショッカーの
改造人間計画に
巻き込まれてた後だった
そして
その科学者は
俺の姿をみて・・・・
罪悪感に押しつぶされ
そうになっていた
君には詫びる
言葉もない
私を憎んでくれ!!
博士・・・・
見てください
この・・・・力を・・・・
セイリングジャンプ!!
そ・・・・
そんな話・・・・
ただのやせ我慢じゃないか
・・・・
・・・・かもね
だけどあの時
俺は一人の科学者の
涙を止めた
あれが俺にとって
仮面ライダーとしての
最初の仕事だった
ば・・・・
ばかな!!
俺にそんなマネできるか!!
おい・・・・
俺はな・・・・
バダンの尖兵として・・・
何百何千の人間を
殺してきたんだぞ!!
この・・・・
この俺の体は・・・・
いずれJUDOのものとなる!!
その時・・・・
俺はまた人間を殺して・・・・
そしてキサマらも!!
だから
いいんじゃないか
それでも・・・・
それでも
戦ってもいいんだぜ
村雨良
君は・・・・
人間のために
戦っても
いいんだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第5話 旅立ち 村雨良 筑波洋 グレゴリー警部 志渡敬太郎(会長) より
よしっ!!華山に
着いたぞっ!!
問題は淋中が
どこに居るかだが…
大作くんと十郎太は
そこに居てっ!!
心当たりを捜してくるっ!!
見つけたら すぐに連絡するわっ!!
あっ…あの お銀さん…
何かいつもと違う気が…
無理もないさ
淋中という男は
お銀にとって
『命の恩人』だから中
『命の恩人』?
そうだ…
10年前の----
『草間博士の乱』の
あの日…
あの時お銀は上海にいた
目の前で
両親が死に
生きているのは能力で
バリヤーを張った
お銀だけだった
いや…
そこに影がもう一つ
BF団 十傑衆
『命の鐘の十常寺』…
たまたま上海の支部に
居たそいつは
完全にキレまくっていて
目につくものはすべて
攻撃し 破壊しようとしていた
そのとき現れて
お銀を十常寺から
救ったのが----
そのときはまだ国際警察連合に居た竜作の兄キと…
『豹子頭・淋中』
だったってワケさ----
十常寺が
姿をくらました後
お銀は国際警察連合に身を寄せ
それから竜作兄キと
淋中によって
能力を鍛えられた
----だから
----お銀にとっては淋中は命の恩人----
それ以上の存在(ひと)と思っているんじゃないかな----
お銀さん…
それであんなに……
漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』2巻 第9話 白昼の残月編3・雨の追撃者!! 草間大作 お銀 十郎太 村雨竜作(回想)豹子頭・淋中(回想) 命の鐘の十常寺(回想) より
・・・・何が
カメンライダーだよ
物好きがたった9人
集まって何ができる
アンリさん!!
グレゴリー警部から
通信です!!
!
・・・・・・・・・
スカイライダーが・・・・
ネオショッカーの大首領を撃破したようです
しかし
スカイライダーもまた・・・・
消息・・・・・・・・不明
!!
・・・・・・・・
そ・・・・そんな
洋はん・・・・
グ・・・・
グフフ
見ろ
ざまあねえ
コラ・・・・
オッサン・・・・・
今なんて・・・・
ム?
グウウ
エ
あいつは死にはしない
絶対にな
それにさっき
仮面ライダーは9人だと言ったな
違う・・・・
10人だ・・・・
この俺を
入れてな
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第6話 部隊 村雨良 がんがんじい アンリエッタ・バーキン ゴードン ヘリパイロット より
京都----・・・・
ギイイ
あ・・・・
!! ノリちゃん早く!!
!!
ったく鴨川のせせらぎが
台無しだぜ
こいつら風流って
もんをわかっちゃいねえ
なあ 滝
まあな 一文字
しかし一文字
いくら変装ったって
こりゃ 逆に目立っちまうんじゃねえか?
そうか?
ホラ・・・・もう大丈夫
クエエエ
ギェ・・・・
ヒッ・・・・
ギエ ギエ ギエ ギエ
ク クエエエエエ
!!
おかあさん!!
おうおうおう!
出やがったな
ナメクジキノコ エイドクガー
ノリノリだろ お前
京の町を
騒がす 悪党どもよ!!
このベルトが目にはいらねえか!!
ギエエエエ
目・・・・つぶってな
変 身
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第6話 部隊 仮面ライダー2号(一文字隼人) 滝和也 ノリちゃん 母 ナメクジキノコ エイドクガー ゲルショッカー戦闘員 より
降下!!
YAAAAA!!
ムリムリ!!そりゃムチャすぎまっせ!!
!
かんにんして良はん!!
いーーやーー
変んんっ 身!!
その姿・・・・
間違いねえ
10人目・・・・
俺にとっちゃあ
テメエも今回のターゲットの一人だぜ
うわっ・・・・
つぅか はやっ・・・・
メチャクチャ 特殊部隊しとるやんか
こらあ ウカウカしとったらナメられまっせ
良はん!!
ん? ヨダレ?
きったいなあ
良はん いくらなんでも興奮しすぎや
お・・・・おお?
良はん・・・・
胃酸吐くほど緊張しよったとは・・・・
安心しい・・・・
これからがんがんじいがキッチリと正義のイロハを教えたるかるな
あらーーーー!?
あらホントに
実弾でもきかないみたいネ
みたいネ・・・・って
あんた・・・・
ベイカーはん?
HI(ハイ)
だったら アタシ流で
いかせてもらうわ!!
ヒョオオ オ オ ォ オ
ス・・・・ゴ・・・・
(オカマやのに・・・・)
あら!しぶといわね
ギク!! ま・・・・またでた
ヒェ・・・・
な?
なるほど
飛び道具など
威嚇にしかならない
滝隊長の言ったとおりですね
ヒ・・・・
ヒイエエエ
大丈夫
ボク達は
対怪人用の装備と技術がありますから
な・・・・なんや
この人ら・・・・
メチャクチャ頼りになるやん・・・・
!!
「飛び道具」など・・・・とは聞き捨てならないな ウェイ・ペイ
お前達は精度と
それを支える集中力を
持ち合わせていないだけだ
ごめん
アルベール
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第7話 魔京 仮面ライダーZX(村雨良) がんがんじい ゴードン ベイカー ウェイ・ペイ アルベール アンリエッタ・バーキン より
この高度だ・・・・・
どうせもう誰も助かりゃしねえ・・・・
だったら・・・・
俺は俺の目的を果たすまでだ
ゴードン
キサマ・・・・
ゴードンさん
やめるんだ
ち!!
僕たちの役目を・・・・
滝隊長の言葉を忘れたんですか
ウルセエ
あんなFBIの犬が
なんだってんだ!!
ヤツに指図される
筋合いはねえ!!
俺に指図していい人間はもう死んじまったよ
父と・・・・
兄の仇か・・・・
!!
チイイィィ
また分身か!!
ゴードン
ノーラッドの惨劇で
お前の両親を殺したのは
おそらく・・・・
俺だ
そ・・・・そやかて
海堂博士は
あの時の良はんは
洗脳されてたって・・・・
もし俺が直接
手を下してなかったとしても・・・・
それを指揮していたのは・・・・
俺だ
チイイイ
!!
ク・・・・
今度は何を・・・・
!!
ゴードン
お前にはカリがある
このままお前に殺されるのもいい・・・・
・・・・だが
これからバダンに
殺されゆく人間は・・・・
そこにあるお前の命は・・・・
俺でなければ
救えん・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第8話 盾 仮面ライダーZX がんがんじい ゴードン ウェイ・ペイ より
・・お前ら・・
改造手術を
望んで受けようってのか
やめとけやめとけ
仮面ライダーなんざ
ロクな事ねえぞ
全身機械になんて
なっちまった日にゃ
ホレた女も愛せねえし
うかうかしてりゃ
やわな子どもの手
なんか“グシャッ”
・・・・だぜ
それによ
あんな体じゃ
まともな老いも
こねぇだろ?
どんな死に様を
晒すんだか・・
それによ 争いのない
平和ってやつが
来ちまった日にゃあ
もう お払い箱だ
誰も必要として
くれなくなる
まったくワリに
合わねえったら・・
やめときなって・・・・
あんな生き様
お前らみたいな
ふぬけに務まるかよ
ま・・・・
かくいう俺も・・・・
お前らと
同じふぬけなんだがな
・・・・
そうよ・・・・
この体じゃあ
ライダーの能力(ちから)には
遠く及ばねえ
だがな・・・・
魂くらい・・・・
魂くらいは・・・・
それでも・・
まだまだ つりあわねえんだがよ・・・・
なあにを
ウダウダぁ
「言言肺腑(げんげんはいふ)を衝(つ)く」
熱い想いの籠った言葉が
聞く人の心の底に
染み渡るという言葉ですよ
ボクはあなたの魂に・・・・
参加します
魂・・・・
・・・・フム
魂が
群像となりましか・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第9話 魂の結成 滝和也 佐久間ケン ゴードン ウェイ・ペイ コンラッド ユン バリオム SPIRITSに集った者たち より
黒色の積乱雲が
ガス状の防壁となって
完全に四国を孤立させて
しまっている
SPIRITS第4分隊は
雷雲の厚い上空を避けて
地上から装甲車での
侵入を試みたが
次々と大破していった
あの雷雲の
放電速度は
異常なまでに速い
スピードが必要なんだ
雷を
振り切れるほどの
スピードが・・・・
これ以上 犠牲者を
増やすわけには
いかない
そして・・・・
事態は一刻を
争う・・・・
第10分隊は
山口に向かって
くれないか
敬介は今
最悪の力に備えて
蘇った鉄の巨人と
戦っている
アンリ・・・・
ここは私が行くよ
私も・・・・・
仮面ライダー4号だ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第11話 突入 結城丈二(アンリエッタ・バーキンの回想) より
現在
櫃石島インターを通過
時速・・・・
489・・・・
491
495
よ・・・・
499
・・・・ヨシ
ご・・・・
500キロを
突破したぞ!!
しかもエンジンから
ノイズから消えている!!
やったーー!!
500キロに乗ったら
逆にマシンが
安定したってよ!!
結城さんの
言った通りだぜ!!
一気に与島PA(パーキングエリア)を越えるぞ
グングン伸びている
行けるぞ これは・・・・
結城さん ムチャですよ
四国に突入した後でも
ライダーマンマシンは
必要になるハズです
いや・・・・これで行く
行った後の事を
考える者に
今を越える事は
できないよ
・・・・
頼んますよ・・・
あんたにはもっと
教えてもらいたい
事があるんだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第11話 突入 ライダーマン(結城丈二) 技術者たち ヘリコプターからのアナウンス より
!? !?
うわあぁぁ
ナニィ!?
キバ一族
オニビセイウチ!!
何ぃ!? ヘリが
爆破された!?
まさか!?
デストロン・・・・
クッ・・・・ソォ
ジャマさえなければ
完全に行けたのに
結城さん!!
マシンガンアーーーム!!
ぬうううう
チイィ
ダメ・・・・か
!!
来い!! 先輩!!
!! ちぃ・・・・
・・・・ゼクロス
なぜ来たんだ!!
山口に向かえと
伝えたハズだぞ
・・・・・
伝えた・・・・だと
そうか あんたが
ウソを言わせたのか
オイ どういう事だ!?
俺は・・・・
女の哀しむ顔が
キライだ
山口には必ず
間に合ってみせる
あんたと
風見志郎を連れてな
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第11話 突入 仮面ライダーZX(村雨良) ライダーマン(結城丈二) 技術者たち ヘリコプターパイロットたち オニビセイウチ より
ユン!! ハリオム!!
ライドルホイップ!!
あ・・・・あんた
バダンじゃないのか?
バダンじゃない
人間の味方だ
その顔
仮面ライダーNo.5
そうだ
俺は
ライダーX
神 敬介
それに正確にはさっきの
奴らもバダンじゃない
奴らの組織の名は
“GOD(ゴッド)”
ゴッド・・・・
まあ・・・・
今はバダンの配下
として動いてる
ようだが・・・・
過去にGODは巨人キングダークを使って
日本を占領した後
そこを拠点として世界征服を
目論んだ
しかし その時は
キングダークの操る科学者ごと
俺が破壊した
だが呪博士が
キングダークの2号機を
造っていたとはな・・・
まさにGODの亡霊に
再会した気分だ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第15話 迷宮 仮面ライダーX(神敬介) コンラッド・ゲーレン より
いだ
グエ
ちょっとちょっと
開けろよ 早く!!
わかってまんがな
ゴク・・・・
ワイ またやってもうた
ヒィ
今度はなによ
こいつら
救出に入っていた
第10分隊の・・・・
落石で
やられたんだな
クソ・・・・
おい
!!
遅いぜ
何やってんだよ
滝隊長!!
さ 行くぜ
あ・・・・
はい
待てよ
ゴードンはん
・・・・・・
・・・・・・
そいつは隊長じゃねえ
ゴードンさん
まだそんな事を・・・・
んなぁ!?
ぐええええ・・・・
ぎ ぎゃあああああ
あ・・・・
あが・・・・
ケ・・・・
見やがれ
じゃあ・・・・
本物の滝はんは?
!!
おい・・・・
まわり・・・・・
ヒトデヒットラーー!!
G G
ああ・・・・あかん
大ピンチや!!
あんたちょっと
黙ってなさいよ
ちょっと待って!!
取り巻きは洗脳された
人間の可能性があります
だからなんだ
できれば
手加減を
できるかしらね
そんな微妙な事
アタシら第10分隊は
SPIRITSの
危険人物の
寄せ集めよ
できますよ
それが第10分隊(みなさん)の強さでしょ
アラ❤
俺には
向かねえやり方だな
ザコに気ぃ遣う
くらいなら
こいつとやるぜ!!
!!
ヒットラーー!!
ぬ お
ゴードンさん
!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第15話 迷宮 がんがんじい ゴードン ウェイ・ペイ ベーカー にせ滝和也(カメレオンファントマ) ヒトデヒットラー ヒトデヒットラー親衛隊 より
ヒ・・・・
ヒイ・・・・
グ・・・・ウ
立て・・・・
今のは
ゴングにすぎんぞ
立て!! 鉄クズ
ク・・・・
逃げろ!!
奴は強すぎる
最悪だ!!
に・・・逃げ・・・・
“ユン”・・・・そして
“ハリオム”・・だったな
!!
死んだ
二人の名前・・・・
お前の名前は
いずれ教えてもらう
・・・・・
だから今は生き延びろ
ク・・・・
クッ・・・・
!!
しま・・・・
・・・・・・
ヒ・・・・ヒ・・・・イィ
ヌウウ・・・・
!!
あ・・・・ああ・・・・
・・・・・
弱い・・・・
一度は死んで
手に入れた体が
その程度とはな・・・・
そんな“死”に・・・・
なんの意味がある
恨むんだな
キサマの創造主を
聞け
Xライダー!!
俺の名は
コンラッド!!
コンラッド・ゲーレンだ!!
全方位に
拡散するレーザー・・・・
その力で第5分隊を
全滅に追いやった・・のか
だが・・・・
マーキュリー回路を
撃ち抜かなかったのは
誤算だったな
見せてやる
俺の死の・・・・意味を!!
真空・・・・
地獄車ぁ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第16話 地獄車 仮面ライダーX(神敬介) コンラッド・ゲーレン タイガーロイド(三影英介) より
あ・・・・あ
オヤッさん
あいつほんとに
大丈夫かよ!!
ク・・・・
くらえ・・・・
十字・・・・
ヌグ・・・・
駄目だ
それじゃあ!!
空中戦は不利だと
言ったはずだ!!
歴代のライダー達も
苦戦してきた・・・・
「スカイライダー」という 男がそれをものに
したらしいが
こっちが月面じゃ
助けを呼ぼうにも
・・・・
月面?
なんの話だよ
クッ なんでもない!!
アレン 来い!!
!
・・・・クッ
あいつらゼクロスを
空中に突き上げながら
弄んでやがる!!
お前は・・・・
仮面ライダーを
名乗る事で
弱くなった
・・・・・
う おおおおおお
!!
なぜ 光らない!?
黒雲による電磁波が
お前の力を包み込んでいる
リミッターをかけられたまま出せる力はおそらく・・・・
20%に満たないだろう
光らなくてもいい!!
それでもだ!!
ゼクロスキィック!!
かかってこい
怪人ども!!
はっ・・・・
なんて 頑丈な奴・・・・こいつは鍛え甲斐がありそうだ
!!
翼を持たぬ
虫けらよ・・・・
デストロンの
贄(にえ)となるのだ
・・・・キサマは
ツバサ大僧正!!
!!
グ・・・・
アア・・・・
仮面ライダー!!
今 助けてやるぜ!!
め・・麺太郎・・・・
小麦粉ぉ!?
アレンくん
あとヨロシク
ヌ・・・・ウ・・・・
!!
!!
ムウ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第18話 特訓 仮面ライダーZX(村雨良) 風見志郎(回想) 結城丈二(回想) 立花藤兵衛 麺太郎 アレン ツバサ大僧正 ツバサ一族 より
これ どういう事?
みんなを
家に帰して!!
姉ちゃん ムダや!!
ふざけんな バカヤロウ!!
ロクに休ませもしねぇで
穴ばっか
掘ってられっか
こん中には年寄り
だっているんだぜ!!
アレって
麺太郎の
お父さん!!
おーーーーっ!!
そうかあ
お嬢さんまで
捕まっちまうとはなあ
麺太郎の奴は
助けてくれなかったのかい?
それは・・・・
一応・・・・
かーー情けね!!
帰ったら新開発の
「おやじ突き」で
ぶっとばしてやる!!
もお!!おじさん!!
仲良くしてね!!
父一人子一人なんだから!!
麺太郎はおじさんが
行方不明になった後も
一人で店を続けているのよ!!
あいつ素直じゃないけど
陰ではおじさんの事を・・・・
陰では・・・・
そうやな
おっちゃんの写真に
ハナクソをなすりつけとったわ
もぉ〜〜〜〜っ
どーして本当の事言うの!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第18話 特訓 小麦 掛ノ助 麺太郎の親父さん より (これまた迷場面)
---鳴門海峡---
うひ〜〜
鳴門の渦おっかね
今 ちょうど満潮で
渦が一番でかい時じゃん
なぁ オヤッさん
ここで何しようっての?
それよか ホラ
村雨さん
ほったらかしていいのかよ
よくまだ生きてるよ
って感じだぜ
どうだ良
ボロ負けした
感想は
実はな・・・・
志郎の奴も
ツバサ一族には
二度負けているんだ
あいつが・・・・
いや〜 そん時は
ひどい負けっぷり
だった
だが その度に
あいつは挑んでいった
血の滲むような
特訓にな
・・・・・・・
特訓?
空を飛ぶだと!?
志郎・・・・お前
どうかしちまったのか
第一怪我をしてる
じゃないか!!
オヤッさん!!
少しでもいいんです
空を飛べれば・・・・
怪我は治るかもしれない
・・・・だが ツバサ一族に 捕らえられた人達は
二度と帰って
来ないんですよ!!
強化された体・・・・
造られた能力・・・・
その 定められた
限界を超えるんだ
そいつは・・・・
死を伴うかも
しれん・・・・
もしかしたら
戦わずして・・・・
特訓・・・・・・・・か
!
懐かしいな・・・・
え・・・・
7歳の頃か・・・・
俺は7歳になっても
自転車を補助輪なしで
こげなくてな・・・・
みんなに
バカにされて・・・・
悔しくてよ・・・・
バッ・・・・
バッカヤロウ!!
そんな特訓(もん)と一緒にするな!!
まったく・・・・
なんて奴だ・・・・
お前が10人目だなんて
先が思いやられるわい
!
・・・・スイマセン
オヤッさん
漫画『仮面ライダーSPIRITS』11巻 第18話 特訓 村雨良 立花藤兵衛 風見志郎(回想・V3本編) 麺太郎 より
!! !! !!
ツバサ一族!!
ク・・・・ソオ
来るの早すぎだぜ!!
まだ特訓も
ハンパな状態だってのに!?
“捻り”だ!!
渦の中で
感覚をつかめ
そして技に
捻りを加える事で
失った力をカバーするんだ
クッ・・・・
待て 良!!
まだだ
間合いが遠い
ギリギリまで
引きつけてからだ
そうでないと
今のお前では
回転の中で敵に
照準を合わせる
事はできない
クッ・・・・
下がれ
良!!
ちくしょお
また4対1かよ!!
それじゃ前みたいに
一人相手しているスキに
他の奴らの
いい的になっちまうぜ!!
Shi・・・T(シット)
一度にまとめて
倒す事 できれば
んな事できりゃ
苦労しねえよ!!
この ゴリラ頭
あっ
・・・・良
わ・・・・わ わ
これは・・・・
空(から)の・・・・
きりもみシュート・・・・
あ・・・・
ああ
渦の中心に集まって・・・・
ヌ ウ・・・・ウ
もっとだ・・・・
もっと回転を
上げて!!
お おおお
ドガ アア アア
や・・・・やった
やりおったあ!!
!!
しまった・・・・
一番やっかいなヤツを・・・・
キイィィイイ
グ・・・・ウッ
おお・・・・
チィ・・・・
フン
そのマシンで
我が翼と
張り合うつもりか!!
!!
・・・・・
チ・・・・
!!
良ぉーーーー!!
良!一人
大丈夫か
良ぉーーーー!!
!!
どうた・・・・
風見志郎・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』12巻 第20話 新必殺技 仮面ライダーZX(村雨良) 立花藤兵衛 麺太郎 アレン 風見志郎 ツバサ一族 ツバサ大僧正(死人コウモリ) より
!!・・・・
クルーザーをここまで
乗りこなせるとはな・・・・ やるじゃないか
コンラッド
なめるなよ
俺は元 海軍(マリーン)だ
俺だけじゃない
キサマを支援するはずだった5分隊は
海上 海中の
プロフェッショナルで
編成されていた
それが・・・・
クソッ・・・・
・・・・・・・
!!
!!
どうした
!!
GOD悪人怪人軍団!!
ギェエエエェェ
ウ・・・・ワアァァ
ギ・・・ギギギ・・
フン
神さんですね
10分隊 援護に来ました!!
アンリさんは
僕らを降ろして
先回りしています!!
・・・・おい
そのPWCは
・・・・はい
全滅した5分隊が
残してくれた装備です
仇をとりに
行こうか コンラッド
落し物だ・・・・
もう壊れちまった
みたいだが・・・・
ありがたい
この程度なら
復元できるぜ
こいつも それに この体も
昔・・・・
このライドル そして
水中活動用改造人間(カイゾーク)の開発に尽力した科学者がいた
ついでに
どうしようもない
変人でガンコ者だった
!
俺の・・・・
オヤジさ
GODに殺されちまったがな
そうか・・・・
お前も・・・・
ガ〜〜ッ!!
ケケ〜〜ッ!!
行くぞ
コンラッド!!
おお Xライダー!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』12巻 第20話 新必殺技 仮面ライダーX(神敬介) コンラッド・ゲーレン ウェイ・ペイ ゴードン コウモリフランケン GOD悪人怪人軍団 より
お・・・・
また光った
やっぱアレ
戦闘じゃん
やばいな
バダンじゃないか?
あのまま
移動してくと・・・・
島根に
向かってくぜ
あら
ちょっとぉ!!
こんな慣れない物に
乗ってちゃ
戦えないわよ!!
泣き言
言ってんじゃねぇ!!
ちょ・・・・
やだ・・・・
やめて・・・・
ライドルホイップ!!
大丈夫か
?
ずっと前から
好きだったの
え?誰
Xライダー
今だ!!
ああ
真空地獄車ぁ!!
!!
つ・・・・
強い!!
さすが
アタシのダーリン!!
いつからだ💢
漫画『仮面ライダーSPIRITS』12巻 第21話 海戦 仮面ライダーX(神敬介) コンラッド・ゲーレン ベーカー ウェイ・ペイ ゴードン 市民たち より
クッ
!!
クク・・・・
クククク
そうだ・・・・
来いアマテラス
その余りある
力で・・・・
ツクヨミの造りし
牢獄を破壊するのだ
牢獄・・・・だと
ニードルの話が
真実だとすれば
JUDOは今・・・・
牢獄の中にいる・・・・と
大首領の・・・・
復活・・・・
やはり
!!
情報はもれていたか
ならば
カメンラーイダーV3
キサマに問おう
見よ・・・・
神に見放された
途端にこの様だ
元より
神と人との間に
縁などありはしなかったのだ
人間は己を
特別だと
思っていたのか・・・・
人間など・・・・
神から見れば
ただの土塊(つちくれ)と大差ない存在だというのに
神と・・・・
人と・・・・
この真理を前に
貴様はどちらに
就くというのだ
人・・・・か
もはや人ですらない
男が・・・・
無様だな
カメンラーイダアァ
ヌ ウン
!!
ダメだ 風見・・・・
変身しては・・・・
変ん・・・・身
V 3・・・・
風見!!
!! ダメですよ 一文字さん まだ安静にしていないと・・・・
・・・・・
本郷・・・・
聞こえたか・・
ああ・・・・
今・・・・
志郎が・・・・
仮面ライダー
俺を改造人間にしてくれ!!
グ・・・・ウ
クァハハハ
なんだその残骸は!!
フン・・・・
こいつか・・・・
こいつが俺の・・・・
力と・・・・
技と・・・・
命のベルトだ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』12巻 第22話 命のベルト 仮面ライダーV3(風見志郎) ライダーマン(結城丈二) 一文字隼人 仮面ライダー1号(本郷猛) ドクトルG(カニレーザー) 暗闇大使 海堂博士 より
!!
チ・・・・
ゼクロス・・・・
この三幹部
お前一人で倒してみろ!!
!?
V3・・・・
俺の命・・・・
あと一撃のために
取っておかねばならん
やれるか
一人で
・・・・・
まずは観てもらおうか
粉砕・・・・した
切断・・・・した
!!!!!!
ほんの寸分かわしただけで
また・・・・
そうだ・・・・
どんな攻撃も
恐れなければ
寸分でかわせる
恐怖を克服した時になしえる
その間合いが次の反撃を生かす
良
ZX穿孔(ゼクロスせんこう)キックだ!!
孔(あな)を穿(うが)つ!!・・・・だ!!
まとめてぶち抜いてやれ!!
ZX 穿孔キック
・・・・
強い・・・・
強くなったな
10号ライダーーー
ZX(あいつ)の事・・・・頼む・・・・
! なに・・・・
風見・・・・
まさか・・・・
やめろ!!
やめるんだ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第24話 継承 仮面ライダーZX(村雨良) 仮面ライダーV3(風見志郎) ライダーマン(結城丈二) 立花藤兵衛 吸血マンモス 死人コウモリ ザリガーナ より
十傑衆!!
草間博士の技術を世界の破壊に使うことは許せん!!
この豹子頭・淋中!
これ以上梁山泊にも大作君にも手出しはさせん!!
淋中さん…!!
ホホゥ…?
お待ちをヒィッツカラルド殿 ここは私にお任せください…
ウッ!
今回の首謀者はこの『白昼の残月』作戦の邪魔をされ…このままでは
私の…腹の虫がおさまりませぬ…!!
お前が『白昼の残月』…!! たたき伏せるっ!!どれぁつ!!!
こちらは…『針』
なっ!!くっ!!
ぬぅ!!
ハッ…!!
この私の…『針』をよけるとは…
さすがは豹子頭・淋中!!
ムッ!!
フオオッ!!
ハハハッ!! だがまだだ!! こんなモノではないハズいくぞ!!
黙らせる残月!!
くっ……!
……!!
『残月』… この男の動きは…!?
そこまでにしておけ残月… どうやら時間が来たようだ
梁山泊の守りが復活しようとしている…!
おおっ これは…!?
見よ!!! 幻妖斎殿の意志の力が!!
“NEW・梁山泊”の誕生だ!!
梁山泊の守りであった幻妖斎殿は… 首だけになっても『光球』の爆発を抑えようとした…
幻妖斎殿がカゲで守っていたからに相違ない
おおっ!!幻妖斎殿の胴体が…!! 首のないまま…!! NEW・梁山泊の祈祷所に…!!
おおおっ!! 鎮座された!!!
幻妖斎殿…!!
死してもこの梁山泊をお守り下さるとは…!!
我ら三度の叩頭をもって礼をのべますぞ!!
さて我々も再びこの結界に閉じ込められる前に去るとしよう…だが油断はするな!!
近々我々はもう一度現れる!!その時こそ…!!
その日まで草間大作 お前に ロボを預けておくぞ!!
ところで
神父殿は気付いておられるか…?
まさに彼は“白昼の残月”ただ本人も気付いていない事だけが 哀れ
うむ さすがだ
漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』4巻 第19話 白昼の残月編13/汝の道を 草間大作 豹子頭・淋中 静かなる中条 韓信元帥 白昼の残月 混世魔王・梵瑞 素晴らしきヒィッツカラルド 衝撃のアルベルト 幻夜 より
一文字さんおちついて!! あなたの肉体はヒルカメレオンによって大量に血を奪われています とても戦線に復帰できる状態ではない!!
あなたがたの血は
その・・・・特別だ
そのための精製と輸血にはもう少し時間が・・・・
その・・・・特別な血をよ・・・・
え?
俺達の血を分けた弟が最後の技を使おうとしてるんだ こんな所で寝てられるかよ
最後の・・・・技
仮面ライダーーーー
頼む・・・・俺を
俺を改造人間にしてくてくれ!!
HIBASHIRA Kick
志郎・・・・
お前はもう わかってるはずだ それが 命と引き変えにする技という事を
やめろ!! やめるんだ風見!!
レッドランプ
レッドホーン
ダブルタイフーン
すべての力を解放しおった
なんだあの技・・・・
知らん・・・・
ワシも知らんぞ!!
志郎!!
ヌゥ・・・・
なんだ・・・・ぁぁ
アマテラスを追う
もう一つの熱量は・・・・
ZX(ゼクロス)・・・・
続け・・・・ZX
誰だ・・・・
お前を“仲間”と呼ぶ者の死を 意味のないものにしたくはあるまい
クッ・・・・
良!!
ぬ・・・・
おの・・・・れ
はやく・・・・
アマテラスを・・・・
そして大首領を・・・・
急げ・・・・
ZX・・・・
なにぃ!!
大首領自ら ツクヨミの門を破壊した・・・・
しかし なぜぇ・・・・
フ・・・・
生還への欲望を
抑えきれなくなったようだな
だが大首領
お前はここで
俺と死ぬんだ
う おおおぉぉ
V3火柱キック
ヒィ・・・・
キャアァ
志郎おおおお
ゼクロスは!
村雨さんは大丈夫なのかあ!!
クッ・・・・ V3
!!
後退だ
サザンクロスを回避させよ・・・・
おのれ ツクヨミ
わざと 門を・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第25話 奪還 仮面ライダーV3(風見志郎) 仮面ライダー1号(本郷猛) 一文字隼人 ライダーマン(結城丈二) 仮面ライダーZX(村雨良) 立花藤兵衛 麺太郎 科学者たち 暗闇大使 ツクヨミ より
ヌ・・・・ゥ
おのれ・・・・
ツクヨミイィィ
ネットアーム
来た
ヌウゥ・・・・
風見!!
風見!!
!!
風・・・・み
受信(きこ)える・・・・
この鼓動は
志郎のものだ
よく無事だった・・・・
ダブルタイフーンの
破損のせいで
「火柱キック」の負荷が
抑えられた
おかげか・・・・
・・・・・・・・
まあ・・・・いい
風見・・・・
お前も死に損なってしまったな
だが・・・・
おそらくもう
二度と変身は・・・・
・・・・それでも
クッ・・・・
大首領は
生きているだろう
それほどに
奴は・・・・
強い・・・・
ライダーマン・・・・
いや結城丈二よ・・・・
バダンに還れ・・・・・
風見・・・・
俺は
この戦いの中で
ずっと考えて
いた事がある
!
・・・・来たか
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第26話 胎動 ライダーマン(結城丈二) 仮面ライダー1号(本郷猛) 一文字隼人 風見志郎 ヨロイ元帥(回想) 暗闇大使 より
--高知城--
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・志郎
志郎
・・・・・・・・
ム
オヤ・・・・ッさん・・・・・
志郎おお!!
よかったあ生きて・・・・・ そう・・・・・ 死ぬわきゃない・・・・
ゼクロス・・・・は?
ああ・・・・
良は・・・・
お前の後を追ってそのまま・・・・
なあに
四国のどこかに帰ってきてるさ・・・・
お前みたいにな
(風見・・・・俺はこの戦いの中でずっと考えていた事がある)
オヤッさん・・・・
結城は・・・・
!!
ゆ・・・・
結城は・・・・
結城は・・・・ワシが
来た時には もういなかった
ただ・・・・
これが・・・・
腕のアタッチメントと
このカートリッジが
お前のそばに・・・・
チ・・・・
結城め・・・・
わかってるよ
変身などできなくても・・・・
俺はまだ
戦える
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第27話 進化 風見志郎 結城丈二(回想の声のみ) 立花藤兵衛 より
そ・・・・
その姿は・・・・
フッ・・・・・そうか
お前は知らぬか・・・・
これはショッカーに
よって生まれし
仮面ライダー第一号
その進化以前の姿だ
な・・・・・・・・に
ヌ・・・・・・ウ
ク・・・・なぜそんな姿を見せる!!
うぬが言ったのだぞ
早く傷ついた体を
治癒してみせろ・・・・とな
それを我は快(たの)しんでいるだけの事よ
空中を蹴って・・・・
反転・・・・した
ZXパンチ
ライダーパンチ
ZXキイイック
ライダアアキック
!!
クク・・・・・
やはりこの体では相手にならぬか
!!
な・・・・・
なにぃ
どうしたゼクロス
・・・・!?
横たわってたハズの
巨大な腕が・・・・
いや・・・・
巨大な腕など最初からなかった
な・・・・に
ここはJUDOを幽閉するために作った存在しない空間だ
おそらく
物質文明の中で生きてきたお前の作り出した虚像だろう
それはお前がJUDOに抱いている巨大な恐怖のイメージにすぎない
ムゥ
・・・・な
変んん・・・・ 身!!
トオ・・・・・
変身・・・・だと
・・・・また
変わった・・・・
仮面ライダ第二号
!!
はや・・・・い
ライ・・・・・
ダアアアァ
パンチ!!
グ・・・・ウ・・・・
トオ
ライダーーーー返し!!
強い・・・・
破壊力が・・・・
増している・・・・
増している・・・・だと
当然だ・・・・
それが進化ではないか
進・・・・化
そうだ・・・・
JUDOは今再生を進化として演じている
ZX(ゼクロス)といえ最終形態に近づいていく事でな
・・・・!!
ムウン
変んん・・・・ 身
V3!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第27話 進化 仮面ライダーZX(村雨良) ツクヨミ 大首領JUDO より
V3・・・・だと・・・・
・・・・・
そうだ
過去デストロンを使って窮地に追い込み
仮面ライダー1号・2号によって造らせた第3の実験体
どうしたZX
なぜ目をそらす
先の戦いでオリジナルは潰えた
この左腕と引き換えにな
だから今や
我こそが唯一の
仮面ライダーV3
どうだ?
再会を果たした気分は
ク・・・・
JUDO・・・・
ハ・・・・・
ハハハ
ク・・・・・
?
クハハ
クァハアハハ
ハハハハハ
グフ ゴホゴホ
ゼ・・・・ZX(ゼクロス)
フハ・・・・ハハハ
狂乱か・・・・
脆き心よ・・・・
ゲフ クク ククク
黙れよ 偽者
V3・・・・だと
ハハハ・・・・
キサマの・・・・
何が?
・・・・・
ならば・・・・
とくと味わえ
この・・・・力と技を
V3 回転
かわせ・・・・ZX
三段キィッック
ナニ
やめろ 見苦しい
V3 プロペラチョップ
グゥ・・・・
・・・・・・
ち が う
風見志郎は
こんな性能に
頼った戦い方はしない
・・・チィ
V3サンダー!
!!
ヌ・・・・ウ
ZX穿孔キック
V3スクリューキック
グゥ・・・・
ゴフゥ
ク・・・・
フン・・・・
!
!?
・・・・・
!!
JUDO・・・・
やはりキサマは違う
!!
あいつほどの
プライドがあれば
ここで膝を
ついたりなどしない
V3だと・・・・
風見志郎の魂を
宿さん限り
キサマは断じて
仮面ライダーV3
などではない
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第28話 再進化 仮面ライダーZX(村雨良) ツクヨミ JUDO より
哀れな・・・・
あまりにも哀れな・・・・
ツクヨミなどにそそのかされおって・・・・
ZXよ・・・・
キサマはここに来るべきではなかった・・・・
ここは
ツクヨミが我を封じ込めるために造りし空間・・・・
光の速度で無限の距離を飛ぼうとも
何億トンもの破壊力をぶつけようとも
一瞬にして見飽きた場所へ立ち尽くさせる
虚空の牢獄だ
さしずめ
ツクヨミは その門番といったところか
ZX・・・・
キサマに我と同じ体(ボディ)をあたえたのは
牢獄の外に存在する
キサマと我の魂を交換する事で
我が復活を果たす為
「捨て石」・・・・それが キサマの存在意義
その捨て石に牢内へ
ノコノコ現れられては・・・・
おそらく ツクヨミは・・・・
キサマをも
この牢獄へと閉じ込め
巻き添えにする事で
我の目的を絶とうとしているのだろう・・・・
フ・・・・もはや
聞こえぬか・・・・
エレクトロ
ファイヤーーーー
このままZXを殺してしまっても
キサマの目的は果たせるわけだ
それとも
器にすぎぬコヤツが
我を倒せるとでも思ったか・・・・
ヌ・・・・ウ
!!・・・・
傷が・・・・
癒えて・・・・
こんなもんじゃ・・・・
ない
あいつのは・・・・
もっと体がバラバラになるように・・・・な
!
この・・・・光は
ククク・・・・
あてが外れたようだな
ツクヨミ
ZX(こやつ)の体は・・・・
生かさず殺さず
鍛え上げる事で
鋼のように
強さを増す
99%の同質化(シンクロ)と・・・・
その残り1%の抵抗・・・・
この戦いの中で
その1%を埋めて
ZXは
我の器として
完全な体になるのだ
その時にツクヨミ・・・・
キサマは耐えられるか
二つの荒れ狂う力を封じ込めたまま
この空間を維持できるのか・・・・
そのボロボロの体で
ZX
強くなろうとしない
生命など
有りはしないよ
JUDO
フ・・・・
さらに何かを
目論んでいる様だな
愉しいぞ
ツクヨミ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第29話 最終進化 仮面ライダーZX(村雨良) ツクヨミ JUDO より
!!
!?
来るぞ・・・・
ゼクロス
スカイ・・・・
変 身
ウ・・・・オ
・・・・・・
・・・・・・
!!
全方位が・・・・
空・・・・だと
!!
ガ・・・・ァ
ク
なに
クッ・・・・
雲が・・・・
どこだ
スカァイ キイイツク
ア ガ・・・・
グ・・・・
・・・・
筑波・・・・さん
あんたならば
この太陽のない空で
どう戦う・・・・
!?
!
ヌ・・・・ウ
ち・・・・がう
いくら変身を
くり返しても
JUDO・・・・
キサマは
何かが違う
ク・・・・
!?・・・・大地・・・・
ク・・・・
次から
次に・・・・
!!
クク・・・・
我が肉体の治癒と
ZXという器の
完成・・・・
これが最終段階だ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』13巻 第29話 最終進化 仮面ライダーZX(村雨良) ツクヨミ JUDO より
我が進化とゼクロス(きさま)という
器の完成
これが最終段階だ
スーパーー
ライダァーーーー
閃光キック
ク・・・・ウ
・・・・フ
!?
・・・・・
!
ホオ
赤心小林拳
梅花
・・・・
何のつもりだ
どうした
JUDO
この技を知らないのか
フ・・・・
そんな
腐れ花
!!
ク・・・・
・・・・
どうした
JUDO・・・・
受け売りの
技だぞ
仮面ライダー
スーパー1
冲一也の・・・・な
・・・・
器めが・・・・
身の程を知るがいい
変んん 身!!
ク・・・・
どうせこれも
JUDOのの
創り出した
イメージ・・・・
!!
ヤツ・・・・は・・・・
!!
ジュドオオオ
光を・・・・
取り戻したか
ZX
キック
お おお おおおお
!!
この・・・・光は・・・・
・・・・・・
解ってるよ
ZX・・・・
穿孔
キック
JUDOが退いた
やはり・・・・
この技も知らないか
ナニ?
JUDO・・・・キサマ
この戦いの中で
1号と2号の進化を
演じなかった
そして
スカイ・・・・
ストロンガーの
強化型までも
どういう
事だ
キサマは歴代の
仮面ライダーを
ZXボディーの
プロトタイプと
言ったな
ツマリ
キサマはあいつらが
戦いの中で進化した
力までは持っていない
ちがうか
だから・・・・
どうした
負傷・・・・復元
そして更なる進化
それが仮面ライダー
としの本質
そして人間の持つ
可能性・・・・・・・
チ・・・・
ゼクロス(ヤツ)は・・・・・
!!
・・・・・バカな
これが我の
イメージだと・・・・
恐怖・・・・
これが
恐怖だと言うのか
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第30話 戦士の本質 仮面ライダーZX(村雨良) ツクヨミ JUDO
ク・・・・・・
・・・・・・・
そういう
・・・・事か
ツクヨミ・・・・
まんまと
キサマの思惑通りに
なった様だな
クク・・・・
この月面で・・・・
どこへ逃げる
ゼクロス・・・・
・・・・・・
!?
ゼ・・・・
クロス・・・・・
な・・・・
何だ?
聞こえるか・・・・
人工衛星を通じて
やっとだ
!? ・・・・その声
冲さん!!
すまない・・・・
月面ならば俺が
助けに行くべき
なんだが・・・・
まだ動けそうに
・・・・
ない
だが・・・・
そろそろ
迎えがいくはずだ!!
!?
迎え?
ム・・・・
何か・・・・
来る・・・・
!!
・・・・・・・・
・・・・・・・・
これは・・・・・
Vジェット
前の戦いで置き去りにした俺のマシンだ
ゼクロス・・・・君なら
乗りこなせる
共に地球に
帰還してくれ!!
なん
だと・・・・
!!
・・・・・
なんてパワーだ
ええい
さっさと焼き払え
!!
おのれ・・・・
又しても
ツクヨミ
そうだ・・・・
ここに来る時も
時速600キロという
速度で・・・・
こいつなら
かるい!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第32話 帰還 仮面ライダーZX(村雨良) 仮面ライダースーパー1(冲一也) 暗闇大使 JUDO より
ククク
クヒヒヒヒ
キングダーク
そしてRS装置(エネルギー物質変換装置)
悪魔の巨人は
神の雷(いかずち)を得た
ついにGODは・・・・
神をも超えたのだ
やめてくれ
呪博士
南原か
この偽善者め
RS装置の設計者は・・・・
キサマではないか
GODによる
監禁・・・・
脅迫・・・・
私に拒否する
事などできなかった・・・・
ヤメロ・・・・
ヤメテ・・・・クレ
!!・・・・
科学者(俺たち)が望んだのは滅亡の光じゃない
次世代への
エネルギー開発
人類を活かす
希望の光だ!!
黙れ
・・・・・・
記憶の情報に
無駄な感情が多すぎる
もっとシンプルに
できなかったのか
キサマも何か
言いたそうだな
・・・・え?
・・・・どいつも
こいつも・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第32話 帰還 呪博士 南原博士 科学者たち 神啓太郎 より
ちょっと・・・・みて!!
しぶといヤロウだ
まだ動いてやがる!!
!!
ゼ・・・
ゼク・・・・ロス
スマン
待たせた
チ・・・・
別に待っちゃいねえ
!!
ったく今まで
どこで何やってたのよ
え・・・・ああ
月面で・・ちょっと
月面?
話はあとあと
ダーリンを助けに
ダッシュよ!!
ダーリン?
変わりました・・よね
!
いったいどんな修羅場を
越えてきたんでしょうか
チッ
そうか
帰って来はったんか
良はん
ほな・・・・お目付け役の
ワイの出番という
事やな
アルベールはん
?
一寸法師という
日本の民話を
御存じか?
それによると
巨大な敵を討つには
その体内に入り戦うべし
とある・・・・
ホォ・・・・
捨て身のサムライ
魂だな・・・・
さよう
では・・・・参る!!
いやあーーーー!!
やっぱ高い所
恐ーーーーっ!!
・・・・なぜあいつに
スカイライダーの相棒が
務まったんだ
さあ
あた
んぎぎ
?
安心しい仲間や!!
はよっこれに掴まって
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第33話 燃える巨人 仮面ライダーZX(村雨良) ゴードン ウェイ・ペイ ペーカー アルベール がんがんじい コンラッド・ゲーレン 他 より
やめろ・・・・
おのれ・・・・
暗闇大使・・・・
!!
・・・・
隊長じゃないな・・・・
キサマが動かしているのか・・・・これを!!
チイィ・・・・
こんな時に・・・・
聞けよ!!
ヒ・・・・
たとえキサマが
隊長でなくとも聞け!!
そして伝えろ!!
あの時
隊長は
こう言った
生身の体では
仮面ライダーの能力には
遠く及ばない
だが・・・・
魂くらい・・・・
魂くらいは・・・・
そこで言葉は
とぎれてしまったが
今なら解る・・・・
魂くらいは
共にありたい・・・・
そう
言いたかったのだと
俺も神敬介という
男と出会った・・・・
だから
どうせ俺達も
キングダークを
道連れに逝く!!
え?
そうなん?
先に逝ってくれ
滝和也!!
・・・・・・・・・
フン・・・・
呪め・・・・・
死んじまった後まで
臆病な男だ・・・・
あんな小さな男では
科学者など
務まらんがな
君は・・・・敬介を知ってる様だな
!?
・・・・・・・・あんたは
俺のオヤジさ
GODに殺されちまったがな
チィ
神啓太郎めが・・・・
!!
ほお
たいした精神力だな
滝という男は・・・・
?
は・・・・
はなせ・・・・
サブシステムに
避難した呪を
そのまま押さえ
こんでいる
意識など
ないはずなのに
少しだけ
待ってくれ
脳神経を傷つけない
様にデータを消去
してみる・・・・
ほんなら
滝はんは・・・・
ああ・・・・君達を
無事に返さないと
あいつをためらわせて
しまうからな
・・・・
争いに巻き込んで
肉体まで切り刻んで・・・・
その償いが
戦わせる事とは・・・・
まったく・・・・
科学者ってやつは・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第34話 魂と共に コンラッド・ゲーレン がんがんじい 神敬介(回想) 呪博士 神啓太郎 より
残すは・・・・
アポロガイスト
・・・・そして
キングダーク
ち・・・・い
・・・・・
離せえ!!
暗闇大使は
キングダークごと
大首領の牢獄を
破壊しようとして
いるんだぞ
そうはさせんよ
呪・・・・
!!・・・・
神啓太郎か!?
!!
こいつら・・・・
南原・・・・
堂本・・・・
雨宮・・・・
ちぃ・・・・・
科学者共が
・・・・離せ・・・・
離せええ!!
!
おのれ・・・・
Xライダーーーー!!
ライドル
風車火炎返し!!
ヌ・・・・
ウ・・・・
!!
ライドル脳天割り!!
おの・・・・れ
いい気になるな・・・・
RS装置は
ロックされたままだ!!
大首領の復活は
止められはせんぞ!!
・・・・・・
!
ゼクロスキック!!
チイイ
!
!!
ツクヨミ
!!
み・・・・かげ
三影・・・・だと
!
!!
・・・・・
!!
魔方陣が
収縮してゆく・・・・
・・・・ねえ
・・・・さん
!?
・・・・これ
落下してへん?
そのようだ・・・・早く
脱出した方がいい!!
ヌ・・・・
グ・・ア
ぬ・・・・う
!!
!!
Xライダー!!
高っ
いいから行くぞ
敬介----・・・・
そうか
まだ終わって
なかったな・・・・
大 変 身
マーキュリー回路が
作動しない!?
さすがに・・・・
戦いが長びき
すぎたか・・・・
・・・・だが
俺には
まだ・・・・
親父に貰った
ダイナモがある
セッタップ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第35話 セットアップ 仮面ライダーX(神敬介) 仮面ライダーZX(村雨良) がんがんじい コンラッド・ゲーレン アンリエッタ・バーキン 南原博士 堂本博士 雨宮博士 三影英介 アポロガイスト 呪博士 神啓太郎 より
セッタップ!!
あ・・・・
あかん
Xライダー
!!
おのれ・・・・
Xライダー!!
呪博士・・・・
GODとの
二度目の戦いか
・・・・それも
悪くない
戦う事しかできない
この体だが・・・・
だからこそ
戦いの中に
思い出が渦巻く・・・・
敬介--・・・・
・・・・・・・・
敬介----・・・・・
決着をつけるぞ!!
ヌ・・・・ウ
目覚めろ
マーキュリー!!
!!
マーキュリーだと?
真空・・・・
地獄車ああ!!
う・・・ああ
ああああ
・・・・・
マーキュリー・・・・
ワシの知らん・・・・
思い出・・・・か
強く・・・・
なったんだな・・・・
あの
泣き虫が・・・・
おの・・・・れ・・・・二度も
仮面ライダーに・・・・
倒される・・・・とは
ヒ・・・・
ヒヒ・・・・ヒヒ
どうだ・・・・
神 啓太郎
我が子に
殺される気分・・・・は
ヒヒヒ・・・・ヒ・・
頭を
動かさないで
強い洗脳を
受けたらしいわ
こっちは大丈夫です
・・・・
大丈夫だよ
神さんは・・・・
5分隊 唯一の
生き残り・・・・か
ち・・・・また やっかい者が 増えやがるぜ・・・・
あら?
仲間に入れてあげるの
さすが
・・・・
おい
! えっ
おい・・・・
動いていいのか
滝さん
立て・・・・
敬介
泣くな・・・・
強くなれ
敬介----・・・・
・・・・
・・・・!
あれ・・・・?
俺何やってんの?
クス・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第36話 父 仮面ライダーX(神敬介) 村雨良 コンラッド・ゲーレン ゴードン ベーカー ウェイ・ペイ がんがんじい アンリエッタ・バーキン 滝和也 呪博士 神啓太郎 より
博士の
おかげです
そうか
単身で
ネオショッカーの
大首領に・・・・
ええ・・・・
奴は断末魔に
こう言ってました
大・・・・
回・・・・転
スカァイキック!!
おのれ・・・・
仮面ライダアアァ
覚えて
おくがいい
ここでネオショッカーが
潰(つい)えても・・・・
バダンは幾重にも
策を構えて
大首領JUDOの
復活を遂げて
みせる・・・・
・・・・・・・
JUDOの
復活・・・・・か
・・・・・
洋・・・・・
この戦い
勝てると思うか?
そう考えた
事は
一度や二度じゃ
ないですから
病み上がりで悪いが
お前には向かって
もらいたい所がある
はい
日本中に展開された
バダンの作戦も
各地に散ったライダーと
SPIRITS部隊によって
4つの組織を鎮圧
残る組織は
関東・東海・東北
北陸・九州・沖縄の
6地区となった
現在関東地区では
仮面ライダー1号が
「ショッカー」と交戦中
九州・沖縄地区
「ゲドン・ガランダー」を
アマゾン
東海地区
「ブラックサタン」を
ストロンガー
東北・北陸地区
「ドグマ・ジンドグマ」を
スーパー1が
戦っている
当初は戦った経験の
ある組織に戦力を
振り分けたらしいが
ゲドンとガランダーの
様に拠点を
分けられる事で
アマゾンライダーを
欠いた6分隊は
沖縄地区で苦戦
強いられている
ドグマ・ジンドグマと
戦う9分隊も
同じだ
スーパー1は
東北での戦いの半ば
北陸の支援を
するべく
奔走している
グレゴリー刑事は
9分隊と共に
東北に残った
・・・・・
そうか
頼むよ
ゼクロスと10分隊は
沖縄に向かいました
俺は東北に
行きます!!
洋・・・・
たとえ・・・・又
ボロボロになっても・・・・
必ず私が治してやる
博士として
じゃない
お前の亡き
親代わりとしてだ・・・・
解ってますよ
会長!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第38話 影の切り札 筑波洋 志度敬太郎 ネオショッカー大首領 より
静岡県 富士山麓----・・・・
超電・・・・
三段・・・・
キイック!!
フゥ〜〜
チィィ
余裕のツモリか
ストロンガー!!
余裕も余裕・・
超電子の技を
以てすれば
奇械人など大余裕だぜ
キ・・・・イィ
へ・・・・・
そうさ
妙だ妙だと
思ってたんだ
肝心の奴等が
まだ出て来ちゃ
いねえってな・・・・
キ・・・・
キサマは・・・・
なあ・・・・そうだろう
ジェネラル・シャドウ
東京----・・・・
はあ はあ
グ・・・・
まさか・・・・
まさか・・・・
奴等が参戦して
くるとは・・・・
!!
!!・・・・・
しまっ・・・・
どうした本郷
お前が
苦戦するなんてな
一文字
ま・・・・
しょうがねえか
テメエらまで
出てきたんじゃな
なあ
デルザー軍団!!
油断するな
一文字!!
奴等には
過去の記憶がある
俺達と戦った
記憶が・・・・
ナニ・・・・
ククク・・・・そうだ
我ら改造魔人は
大首領JUDO様
ある限り
何度でも蘇る!!
下等な人間の魂など
元から持ち合わせて
おらぬわ
ダブルライダー!!
キサマらの伝説も
これで終わりだ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第38話 影の切り札 仮面ライダー1号(本郷猛) 仮面ライダー2号(一文字隼人) 仮面ライダーストロンガー(城茂) デッドライオン ジェネラル・シャドウ デルザー軍団 より
だから
怖いものじゃないって・・・・
なあ・・・・本当に覚えてないのかよ
ラジオ・・・・
・・・・あ
チ・・・・
チ
あのさ
なんでラジオなんです?
ウホン
マサヒコ・・・・俺にも
それ・・・・貸せや
?・・・・
モグラがラジオどーすのんさ?
これからも俺も生きていくために社会勉強しないとな
バッカみたい!!
そりゃ・・・・
ムリでしょ・・・・
え?
説明しましたよね
バダンが再生した獣人は過去とは全く無縁のものだって・・・・
そんな・・・・
ラジオの記憶なんて・・・・
ま・・・・
臆病な性質は受け継いでいるみたいですがね
ムカ・・・・
ほっといてくれません?
記憶なんかなくったって
こいつは俺の「トモダチ」すから
そいつはなぜ
アマゾンに協力したんだ?
村雨・・・・さん
いや・・・・
俺はまだ彼の事を知らなくて・・・・な
どうせ捕虜だろ
ムリヤリ協力させただけだろ 食料として取っておいた・・・・とか
愛よ!二匹は愛し合ってたのよ
あ・・・・
あんたらなあ
く・・・・
苦しいよお
体がひからびてゆく・・・・
!!
水・・・・!?
水だ・・・・
キサマ・・・・
アマゾン・・・・
やめろ・・・・
キサマの情けなど
受けるか・・・・
黙れ!!
水・・・・飲む!!
・・・・そうか
会ってみたいな
アマゾンという男・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第40話 ガランダー アマゾン(山本大介) 村雨良 岡村マサヒコ モグラ獣人(回想含む) ウェイ・ペイ ゴードン ベイカー より
うわああ
死ぬんスか!?
死ぬんスか!?
オレたち
チ・・・チチユー
速く回避を!!
しかし・・アンリさん
なぜヤツらはレーダーに映らなかったんですか!?
黙れ!!
バダン相手に「なぜ」などない!!
う・・・・お
アルベール
チイ
変 身
スマン・・・・
ク・・・・
クソ・・・・
袋の鼠か・・・・
!!
10分隊だ
10分隊が一方的に・・・・
あれは・・・・
まずい・・・・
ローターが・・・・
!!
ヌ・・・・う
ウッ
ウウ・・・・ウ
行こうか
他のライダーも
動き始めている
そして・・・・
10人目の
仮面ライダーも
10人目・・・・
「ゼクロス」
あちあち
!!
モグラ急げ!!
ゲホゲホ
モグラ・・・・
オレ・・・・「アマゾン」・・・・
ダメなんだよ・・そいつ
バダンの再生怪人ってだけで・・・・
別人っていうか・・
俺達の知ってる
モグラは・・・・
死んじまったまま・・
・・なんだ
チ・・・
チチ・・
・・・・・・・
そうか
あれが
「アマゾン」・・・・
6番目の
仮面ライダー・・か
ゼクロス
守るぞ・・・・!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第40話 ガランダー 仮面ライダーアマゾン(山本大介) 仮面ライダーZX(村雨良) 仮面ライダーX(神敬介・回想) 岡村マサヒコ 滝和也 アンリエッタ・バーキン ウェイ・ペイ アルベール 10分隊 6分隊 より
7分隊・・・・だいぶ苦戦しとるようだな
志郎・・・・
茂の様子は・・・・
・・・・・・・・
酷すぎる・・・・
これじゃ自己修復は
おろか
生命活動の
維持すらも・・・・
そ・・・・
そんな
茂・・・・
タックルに・・
ユリ子に
やられたってのは・・
本当なのか・・・・?
電波投げ
あれは・・・・
ユリ子じゃなかった・・・・
知ってんだろ・・・・・
バダンの
再生改造人間に
魂はねえ・・・・って事
・・・・・・
コク
つまり・・・・
過去の記憶なんざ
さらさらねえ
コクコク
まったく別の
素材から
でっちあげた
ニセもんだってな・・・・
んな事ぁ・・・・
わかってたはず
なのによ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第41話 愛 城茂 風見志郎 立花藤兵衛 電波人間タックル(バダン再生改造人間・茂の回想) より
わしらが
撹乱するから
早く撤退してくれ!!
あれは
ネットアーム!!
志郎
そいつは
奇械人じゃ・・・・
ええ・・・・
しかし・・・・
へ・・・・
似てんだろ
・・・・俺に・・・・
当然だな
そいつは・・・・俺
ストロンガーの
プロトタイプ
キ・・
奇械人「スパーク」
それじゃあ
コイツは・・・・
よう五郎
テメェは
改造手術の失敗で
廃棄されたはずだぜ
お・・・・
おい!!
よっぽど
この世に未練が
あるらしいな!
ウルトラサイクロン
ユリ子・・・・
いや・・・
ユリ子じゃねえか
・・・・
けどよ・・・・
お前になら
殺されても・・いいか・・・・
なんてよ・・・・
らしくもねえ
どんな犠牲を
払ってでも
戦わせてもらうぜ
なにせよ・・・・
俺達はまだ
勝っちゃいねえ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第42話 強 城茂 風見志郎 立花藤兵衛 奇械人スパーク 電波人間タックル(バダン再生改造人間・回想) より
おい 見ろよ----・・・・
城ってQB(クォーターバック)じゃなかったか?
FB(フルバック)だってよ
ええ〜〜
じゃQBは?
沼田だってよ
城だろやっぱ
ワアア
おいおいねばりすぎだよ
QBサック
されちまうよ
城はなにやってんだよ
いつもの機動力は
どうした!!
まだだ・・・・
出るな・・・・
茂!!
うおおお
ST RON GERRR(ストロンガー)
!!
はや・・・・・い
追い着く気か
あれに・・・・
いけえ
茂!!
STRONGERだ!!
おおおおおお
お
・・・・・
・・・・・・
ああああ
五郎よう
今回のアレはなんだ?
なんだって
なんだ?
すとろんぐ・・・・とか
がー・・・・ってやつ
「STRONGER」
の事か?
俺のボールコントロールと
お前の俊足をいかした
アサイメント名(さくせん)だ
「より強く--・・・・」
今の俺達に
相応しいだろうが
見てろ!!
“今日は”負けたが
次は勝つ!!
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第42話 強 城茂 沼田五郎(茂の回想) 記者たち より
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
五郎ーーーー!!
バッカヤロウ
テメェ
何やってんだよ
なにが
「より強く・・」だ
俺達はまだ
勝っちゃあいねえ!
ああ・・・・
そうなんだよ
「ブラックサタン」?
聞いたないか
海外からの
思想テロ集団か
人体実験てあたりが
いかにも宗教批判
って感じで
おい
その話・・・・
聞かせてくれよ
茂は
沼田五郎の
事はロクに
話さなかったが
だがその男の
敵を討つために
自らブラックサタンに
その体を改造させた
そこまでできる
ほどの親友だったと
いう事だ
それが・・・・・
ストロンガーの
失敗作として
ゴミみたいに
廃棄されて・・・・
今・・・・また
目の前に現れる
とはな・・・・
・・・・しかし
そのおかげで
ストロンガーの
破損したオリジナル
パーツを移植できる
!
それじゃ・・・・
まさか・・・・
茂は・・・・
自分で・・・・
・・・・だめですよ
おやっさん・・・・
茂は俺達
・・・・いや
神の助けをも
拒むでしょうね
だからよう・・・・
俺の方が強えって!!
だったら俺は・・・・
もっと強い!!
----・・・・
五郎・・・・
ミュウ
ミュ・・・・
!?
バチバチ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』15巻 第42話 強 城茂 沼田五郎(回想) 風見志郎 立花藤兵衛 ブラックサタンを知る記者(回想) ブラックサタン戦闘員 より
ブラックサタンの
害虫駆除は
俺専門の
仕事なんだからよう
ぬかせえぇ
バッ バチィ バリバリバリ
!!
あれは・・・・
電撃の中に・・・・
タックルが・・・・
変 身
!!
・・・・・
スパーク・・・・
STRONGERRR
・・・・
残像・・・・・
・・・・・か
・・・・・?
!!
しまった
来るぞ
天が呼ぶ
地が呼ぶ
人が呼ぶ
悪を倒せと
俺を呼ぶ
俺は正義の戦士
仮面ライダー
ストロンガー
チ・・・・チィ
調子に乗りやがって
オヤッさん
ピラミッドへ
回り込んでください
何をする気だ
そいつは茂に
聞いてください
!!タイタン
こっちだ!!
チィ・・・・
ヌウ・・・・まだまだ
!?
なんだ・・・・
真っすぐだと!?
つまらん小細工を・・・・ タイタン ストロンガーを先にやれ!!
グ・・ ウウ・・
今だ
・・・・・
タイ・・・・タン
この力・・・・
カブトローが
いただくぜ!!
・・・・へっ
周りが止まって見えやがる・・・・
!! チ・・・イイ
う・・・・おおおおお
行けえ 茂!!
おお 五郎!!
!!
ST RON GERRRRR
う・・・・・わあ
茂ー!!
あいつは病み上がりなんだぞ タイタンの火力に巻き込まれたら・・・・
!!!
? なんだ?
まだ戦っとるのか?
大人しく
姿くらましてりゃいいものをよ・・・・
キサマ・・・・
ヒ・・・・ヒイィ
まてコラあ
バダン デルザー ブラックサタン なんでもこいや一匹残らず
ぶっ潰してやる!!
回復しすぎだ
まったく・・・・
いつまで続ける気だ・・・・
・・・・さあ・・・
そこは茂(あいつ)のこだわりでしょう
こだわり?・・
ええ
天に召された女と・・・・
大地に眠った男の分まで
悪を倒せと・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第43話 正義の戦士 仮面ライダーストロンガー(城茂) 沼田五郎(回想) 風見志郎 立花藤兵衛 デッドライオン 百目タイタン より
コラアアア
何してくれてんだ
あんたら・・・・
そいつは・・・・
俺の・・・・
んげ・・・・
と・・・・
こいつが
テメエの・・・・
何だって?
あ
いえ
昔・・・・
「モグラ獣人」ってのが
ゲドンを裏切って
人間の味方をしたって
話だが
そんな奴と
こいつとはまったくの
無関係だ
こいつはな
バダンが貯め込んだ
肉と骨から作った
紛い物なんだよ
バダン製なら
俺達の怨みを買っても
しかたがねえだろう
ペッ
ル・・・・セエ
ウルセェぞ
ゴリラ
たとえ
何ベン作り直された
としても
そいつは俺の
トモダチなんだよ
アマゾン・・・・
と・・・・
どうしたんだ?
モグラ・・・・アマゾン
忘れても・・・いい
・・・・
トモダチ
なくても・・いい
それでも・・・・
モグラの生きている
この世界・・・・
アマゾン・・・・守る
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第45話 交錯 アマゾン(山本大介) 岡村マサヒコ 滝和也 ゴードン モグラ獣人(再生) より
ピギ
チ・・・・
チチュ・・・・
目ぇ覚めたか
小僧
テメエが「トモダチ」とか ぬかしてる その獣(ケダモノ)はよ
バダンがでっちあげた
亡霊にすぎねえんだよ
ゴキイ
ゴ・・・・
ゴードンさん
ほっとけよ オッサン
俺達の友情は バダンとか亡霊とか すでに超越しちまってるんだよ!!
よく言った!!
じゃあテメエも
いっぺん死ね!!
殺してやるから
あとはバダンに
頼むんだな!!
ム?
ガウウウ
モンキー
アタッーーーク
わ・・・・と
ア・・・・
アマゾン!!
・・・・じゃ
なくて・・・・
村雨さん・・・・?
くそ・・・・
まだだ
どうにもうまくいかん
良は〜〜ん
ムチャしすぎや
!
がんがんさん
だけど・・・・
先人にあれだけ
いわれたらな
ムラサメやる!!
お前
できる!!
恐ろしい・・・・
恐ろしいライダーの
縦社会や・・・・
おいソレ早く
どいてやれよ
・・・・あ
・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第46話 双頭の牙 村雨良 アマゾン(山本大介・村雨の回想) 岡村マサヒコ モグラ獣人(再生体) がんがんじい ゴードン 他 より
そうか
ガランダーの毒を
採取して血清を
造るために・・・・
あの臆病な
モグラがね・・・・
しかしまず
アレだな
ウウ?
(それがたとえ再生怪人でも「そいつがいる世界を守る」・・・・か
しかも泣くし)
いいやつじゃん
滝和也←ライダーいいやつだと超ウレシイ人
それなら
ムラサメ
「イイヤツ」
え?
ムラサメの目・・・・
哀しさ知ってる目
大事な何かを
失って・・・・
それを越えてきた
強い目・・・・してた
・・・・
そうか・・・・
・・・・
そうだな
ま・・・・
それでも
奴もまだまだ
ライダーとして
半人前よ
色々と鍛えて
やってくれっつうか
それでもなにか
あったら この俺に
ん?
いねえ?
なあ・・・・?
落ちたあっ
おい・・・・
大丈夫か!?
タキ・・・・
魚!!
魚食うか!!
タキも早くくる!!
青い魚かよ・・・・
・・・・・
俺・・・・ナメられ
てんのかな・・・・
ん?
アマゾン?
あーームリムリ
あいつを手懐(てなず)けようなんて・・・・
あいつは
文明というか
そういう階層制(ヒエラルキー)
みたいな価値観
ないから
クッソオオオー
なら実力で
示してやろうじゃないか
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第46話 双頭の牙 アマゾン(山本大介) 滝和也 立花藤兵衛(滝の回想) より
村雨さん!!
重くない?
ああこのガタイだ
重いんだろうな
でも 俺は 平気だ
スゲェ!!
やっぱり 仮面ライダーだよ この人!!
!
おーいモグラはん
急がへんと置いてきまっせ!!
チ・・・・
チュ〜〜ン
おい
やっと帰れるぞ!!
チ・・・・
クソッ・・・・
どっから射って
きやがったんだ!!
ガウッ
ウウウウ
これで2度目だ
愚かなる魂の群れよ・・・・
覚悟を決めるがいい
備えていた
・・・・だと
!!
うまく
いったようですね
ゼロ大帝も
よもや無人とは
思わなかったでしょうね
しかし
1億2千万ドルの
囮とは・・・・
対価が
ガランダーなら
安いものです
漫画『仮面ライダーSPIRITS』村雨良 アマゾン(山本大介) 滝和也 岡村マサヒコ モグラ獣人 がんがんじい アンリエッタ・バーキン 佐久間ケン ゼロ大帝(真) 他 より
ガアアアアウウ
??
むむ!!
アマゾン!!
さすが本家だ
は?
大丈夫か
モグラ!!
アマゾン
ムラサメ
守るぞ!!
おお!!
(・・・・・・・
会ってみたいな
アマゾンとかいう男)
(あれがアマゾン
6番目の仮面ライダーだ!!)
(ZX・・・・)
「守る・・・・」
あん時と同じか・・・・
滝さん
おそっ
どこまでも
シンプルなやろうだぜ
ま・・・・そこに村雨は
シビレたみたいだが
シビレた?
ああ
ここに来るまで
紆余曲折あった
やつだからな
すべてを敵に回し
何を守るのか・・・・
何故守るのかも
解らずに・・・・
そんなの
決まってるだろ
なんだ
・・・・ソレ
アアアア
変んっ
マアアアア
ゾオオオオン
身
おおお
スッゲー!!
へっ
ちとスゴすぎだろ
この異色の
ダブルライダーはよ
ウルセエ!!んな
ダブル天然に負けてられっかあ
くらいやがれ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第46話 双頭の牙 仮面ライダーZX(村雨良) 仮面ライダーアマゾン(アマゾン・山本大介) 滝和也 岡村マサヒコ ゴードン モグラ獣人 より
月曜、朝八時三十分。
俺は、病院長室の窓からの景色に見とれていた。
こうした所に呼び出されると、自分が大学病院に向いてないことをつくづく思い知らされる。とはいっても俺のような下っ端が病院長からじきじきに呼び出されることは滅多にない。それはつまり自分が組織に合わないという事実をつきつけられる機会も少ないということで、その点から見ると、自分は案外幸運かも知れない、と思う。
それでも、本当についているのかっ自問すれば、月曜朝一番に呼び出しを喰らうのが、今週一番の幸運な星座の運命だとはどうしても思えない。
眼下に広がるのは桜宮市街だ。低層の建物の中に時折、調子はずれの中高層のビルが混じる。そうした病院長室の窓からの景色には、密かな愛着と憧憬がある。滅多に足を踏み入れたことがないため、その風景にはかえって強く惹き付けられる。
こう言うと、そんなのはスカイ・レストラン『満天』からの景色からと同じさ、とちゃちゃを入れるヤツが必ず出てくる。そんなセリフを吐くのは、「もののあはれ」を解さない無粋なヤツに決まっている。重厚な調度品に囲まれた静謐(せいひつ)な窓からの風景と、白衣をだらしなく着込んだ医師が一杯三百円のうどんをすする猥雑な空間からの景色が同じだと強弁する輩に、俺のささやかなあこがれを理解できるはずもない。
あれは権力の残り香かも知れない。
下層階級の俺は、いつも権力からの距離の取り方に苦労している。つかず離れず権力はわずらわしいお客様だ。それでもこの景色を堪能できるなら、たまには病院長室に招待されるのもそんなに悪くないと、場違いな夢想をして時をやり過ごす。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』1章 遠景 冒頭 本文 より
「桐生恭一です」
よく通るバリトン。自己紹介の一言で、部屋の空気が真夏に塗り変えられる。
一重瞼の細い顔、通った鼻筋、大きな口。目の前に立たされるだけで感じられる風圧。隠しきれず溢れ出る自信。全身を覆う、うんざりするほど強烈な生命力。
派手なヤツ。ミーハー体質の女なら、一目でいちころだろう。ただし俺にとっては一緒に飲みにいきたくなるようなタイプではない。
猛禽類を思い浮かべた。鷲?鷹?それともハゲタカだろうか。
「田口公平です」
名は体を表す、とはよく言ったものだ。彼はどこからどう見ても「桐生恭一」だし、俺の方は「田口公平」以外の何ものでもない。なぜ、世の中はかくも不公平なのだろう。自己紹介をするたびに俺は、公平と名付けた親をこっそりなじる。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』2章 監査を望む鷹 本文 田口公平 桐生恭一 より
きびすを返す桐生の背中越しに、俺は声をかけた。
「すいません、あと一つだけ。初対面の方に、私の趣味で訊いていることがあるのですが」
振り返った桐生の眼が、「何でしょうか?」と問いかける。
「先生のお名前は確か恭一、でしたよね。どういう由来があるのですか」
「私の名前の由来、ですか……」
桐生は一瞬、遠い眼をした。
「一番になっても恭しさを忘れるな。……外科医だった父がそう言っていました」
次の瞬間、白衣の裾を翻した桐生は風のように姿を消していた。
一番になって恭しさを忘れるな、か。凄いものだ。一番になることが当然のことのように折り込み済みなのだから。
俺は日溜まりの中で、ひとりぼんやり、エレベーターの表示灯の往復を眺めていた。頭の中で、その上下する光のリズムに合わせるように、「はーちみつ・きんかん・のどーあめ」というのどかなコマーシャル・ソングのリフレインが鳴り響いていた。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』2章 監査を望む鷹 本文 田口公平 桐生恭一 より
部屋のたたずまいは古風で物静かだ。
病院棟は俺が医学部最上級生になる少し前、バブル経済絶頂期に完成した。考えてみるともう十七年前になる。いけいけどんどんの時代。細部をきちんと詰めることよりも、ジュリアナのお立ち台の勢いとスピードが優先された時代。最終確認を怠ったため、構造上の欠点に気づかないまま、建物は完成した。設計途中で出された隣の資材倉庫拡張という要望に、うっかりこの部屋に続く廊下を割り当ててしまったというあたりがコトの真相だろうと俺は睨んでいる。
完成直後、部屋の処遇に困った事務方は、隣の資材倉庫の延長の空間として使うことにした。まあ妥当な手段だ。きっとそれくらいしかこの部屋の用途はなかっただろう。
実は俺は、学生時代からこの部屋の存在を知っていた。
サボり魔だった俺には、隙間の空間を見つけ出す才能があった。サボるためには他人に見咎められることのない空間を見つけることが最優先する。そのようにして探し当てた秘密基地。それがこの部屋だった。
こうしたことに上手くなるにはちょっとしたコツがある。それは、他人とは毛色の違う好奇心を持つことだ。
どんづまりの部屋に、はめ殺しのくもり硝子から、光が陽射しの形状を徐々に喪失しながら、部屋に染み込んでくる。その光は柔らかく、昔も今も少しも変わらない。こうしていると、学生の頃を思い出す。
学生時代、ここは俺の一番のお気に入りだった。床に寝そべり古本を読みながら、意味もなく天井のシミを数えたりもした。いつの日かここでぼんやりと時を過ごせるようになればいいなあ、と夢見ていたあの頃。
夢はかなう。ただし、半分だけ。
ここで時を過ごすという夢はかなったが、ぼんやりと暮らしたい、という残り半分はかなっていない。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』3章 愚痴外来 本文 より
「最後に一つ、皆さんにお名前の由来やエピソードについて質問させていただいてます。これは私の個人的な趣味ですので、答えていただかなくても結構ですが」
「貴之というのは、人から尊ばれる偉い人になれ、という気持ちを込めてつけたのだそうです。之の方は、適当につけたようです」
浮かした腰をもう一度落ち着けて、羽場は続けた。
「立派な名前をもらうと息苦しいので、自分の子供は思い入れの少ない名前にしようと思っていました。例えば一郎、とかね。でも、親ってどうしようもない生き物ですね。自分が同じことをやって初めて、自分の親を許せるようになりました。代わりに今度は、私が中学生になる息子に恨まれる羽目になりました。因果は巡る糸車、自業自得ですわ」
「ちなみに息子さんには、どんなお名前をつけたのですか?」
「雪之丞」
即答に、俺はコケた。冗談かと思って羽場を見たら、真顔だった。
羽場雪之丞クンには、これからどんな人生が待ち受けているのだろう。俺は密かに、未だ見ぬ彼に同情した。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』7章 聞き取り調査2日目 本文 田口公平 羽場貴之 より
桐生は眼を閉じて、静かに続ける。
「手術には、表には出ない部分を引き受けてもらうことで、術者が精神的に安定する部分があるのです。酒井君はそのことをまだ理解していない。手術を指先の反射神経勝負だと思っているうちは、一人前の外科医とは呼べません。こういうことはいずれ骨身で知る日が来るでしょう」
意外にも垣谷に対する評価は高く、反比例するかのように酒井の評価は低い。
桐生は二つのことを同時に言っている。一つは酒井の技量に対する評価は低いわけではないこと。そしてもう一つは、垣谷の技量が低いと繰り返すことで酒井は、自分が外科医として未熟だということをさらけ出してしまっているということ。
言葉にできないものを感知する能力。それが器というものだ。桐生の評価はその意味で厳しい。外科医としての酒井の器は小さい、と言っているのだ。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』8章 外科医の血脈 本文 桐生恭一 より
桐生の眼が赤黒く光る。吐き捨てるように呟く。
「移植で助けられる命を、なぜむざむざ見殺しにするんでしょうか、この国は」
それは、誰もが悪人になりたくないからだ。心の中で呟きながら、俺は桐生の迫力に気圧される。間合いを外すように釣り球を投げてみる。バチスタ・リストを眺めていた時の違和感の追求がが裏の意図だ。続けて起こった術死の最中でも、不連続な断層のように小児症例は成功裏に終わっている。その結果、子供の症例に関しては連勝が途切れずに続いている。
「明日の手術は先生にとって、マスコミのストレスが強いですか、それとも小児心臓手術というご専門だから気楽ですか?」
桐生は笑う。
「いつもと同じ、ベストを尽くすだけです。子供でも大人でも、私の手技には関係しません。普段と違って大変なのは高階病院長と黒崎教授の方ですよ」
桐生の選球眼なら、こんな悪球は当然見送るだろう。試すまでもなくわかっていることでも、試してみたくなる時はあるものだ。
桐生の眼から、ぎらぎらした光が消え失せ、透明な表情になる。
「明日の手術は成功させます。子供の無限の可能性を潰したくはないですから」
俺は、桐生の煙草を持つ指が、かすかに震えているのに気づいた。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』8章 外科医の血脈 本文 田口公平 桐生恭一 より
目の前に垂れ下がった蜘蛛の糸をぼんやりと見つめる。高階教授は続ける。
「医師の仕事は、口頭試問で適性が測れるほど底の浅いものではありません。知識なんと些細な枝葉、臨床の海に飛び込めばイヤでもついてくるものです。それ以前にもっと大切な資質があるのです」
「それは何ですか」
高階教授は俺をじっと見つめた。それから静かに言った。
「それを卒業試験の追試課題としましょう。よく考えてみて下さい」
ちょっぴり不親切だと思ったのか、高階教授は思い出したようにつけ加えた。
「ひとつだけ、ヒントを差し上げましょう。ルールは破るためにあるのです。そしてルールを破ることが許されるのは、未来に対して、よりよい状態をお返しできるという確信を、個人の責任で引き受ける時なのです」
それから、俺の眼の奥をのぞき込んで、にっこり笑う。
「ま、少なくとも今の君の答えを聞いて、私が未来の責務を免除していただけそうなことは確信しましたがね」
高階教授の言葉は、その日暮らしの俺にとっては難解すぎた。その後の呼び出しがなかったことをいいことに、俺は追試をバックれた。
おかげで卒業証書は手にできたが、代わりに追試課題はずっと心にひっかかり続け、今日に至っている。高階病院長の前に立つと、落第生の落ちこぼれ気分になるのはそのためだ。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』8章 外科医の血脈 本文 田口公平 高階権太(教授) より
何事も実際に体験してみなければ、本当のことはわからない。俺は今日、「再鼓動せず」という言葉を疑似体験した。術死は、カルテの薄さという洒落た表現に収まりきるものではなかった。それは、暗黒の絶望感だった。
俺に反感を抱く酒井でさえ、調査に素直に協力した理由が納得できた。この恐怖を取り除いてくれるのなら、俺でもきっと親の仇にだってすがりつくだろう。これと比べたら、俺と酒井のいざこざなんて、取るに足らない笑い話だ。
現実に横面を張られ、俺は自分の使命を再認識した。術死は二度と起こしてはならない。そのためには立て続けに起こった術死の原因を明らかにすることが、何よりも最優先だ。
垣谷が言うように、偶然が重なっただけなら、それに越したことはない。俺の努力が無駄になるくらいで済むのなら、それくらいの不利益は喜んで引き受けよう。
けれども、手術に立ち会って、俺の中に確信が生じていた。あれだけ冷静な桐生がおかしいと言っている。それだけで、もうすでに十分おかしいことなのだ。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』9章 アフリカの不発弾 本文 より
二人の間に沈黙が流れた。俺は最後の質問に移った。
「全員に質問していることがあるんですが、個人的な趣味ですので、答えたくなければお答えにならなくても結構です」
前置きをしてから、涼という、彼の名前の由来を尋ねてみた。鳴海は一瞬きょとんとしたが、次の瞬間シニカルな微笑を浮かべて言った。
「田口先生の発想は実にユニークです。日本には珍しいタイプですね。義兄が田口先生のことを気に入った理由がよくわかりました」
俺の質問には答えようとせず、鳴海は、はぐらかすように俺を評価し返した
鳴海は断じて桐生の影などではない。鏡だ。相手を映し出すが、自分の裏側は決して見せない。鳴海の心の裏側を見るためには、鏡は砕かなかければならないだろう。但しその時には、鳴海の存在自体が砕かれてしまうかも知れない。
俺は鳴海に、桐生の印象を尋ねようとして、やめた。それは二枚の鏡を合わせるようなものだ。言い伝えでは、合わせ鏡から飛び出してくるのは悪魔だったはず。
俺は、オカルト系の話は苦手だった。
俺は鳴海の話を打ち切ることにした。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』10章 聞き取り調査3日目 本文 田口公平 鳴海涼 より
俺は実験から手を引いたが、代わりに臨床の雑用を一手に請け負った。当直の肩代わりも引き受けたので、先輩たちから重宝された。連続一ヶ月、病院に泊まり込んだこともある。
こう言うと、さも俺が身を粉にして激務に励んでいたかのように聞こえるが、現実は違う。神経内科の患者は大半が長期慢性疾患だ。病棟の仕事は、老人ホームのヘルパーに近かった。しかもヘルパー業務の大半は看護師がこなしてくれる。だから病院を住処(すみか)にしてしまえば、大した仕事ではなかった。
下界では、研修医が緊急出血の患者対応で、点滴、採血、クロスマッチ(輸血用交差試験)と地べたをはいずりまわっていたちょうどその頃、天国に最も近い十ニ階病棟では、お茶菓子をいただきながら、お婆ちゃんの孫自慢を延々と聞かされ続けている俺がいた。
そんな俺のことを、先輩医師たちは、“天窓のお地蔵さま”と呼んだ。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』12章 廊下とんび 本文 より
首をひねる俺を見て、白鳥が貧乏揺すりを始める。いきなり言葉遣いが変わる。
「なんで、こんなに鈍臭いかなあ。これじゃ、氷姫といい勝負だな。どうも買い被りすぎたみたいだな。いい、よく聞いてね。あんたは対象を自分の繭の中に取り込んでそこでゲロさせる。これがバッシヴ・フェーズ。僕は相手の心臓を鷲掴みして、膿んでいる病巣にメスを突き立てる。これがアクティヴ・フェーズ。わかった?」
これが白鳥が自分でも自覚している欠点、「相手が単なるバカだとこらえ性がなくなっちゃう」というやつだろうか?それでも言っていることは全然わからない。
ひとつだけうっすら理解したことは、この短いやりとりの間に、俺は白鳥から「あんた」と呼ばれるくらい、仲良しの一人にカウントされてしまったということだ。
友情や恋愛は、いつだって片想いから始まるのだから、俺がとやかく言うべきことではないのだが。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』13章 火喰い鳥 本文 田口公平 白鳥圭輔 より
どさくさに紛れて、俺は過去の負債を精算することにした。
「これでようやく、学生時代の借金をお返しできます」
「何のことですか?」
卒業試験の口答試問での出来事を話す。高階病院長は視線を窓の外にさまよわせていたが、記憶の小部屋にたどりついたのだろう、しばらくしてから、にっと笑う。
「まだそんなことを気に病んでいらしたのですか。あの時私が、先生を合させたことを恩に着る必要なんか、全然ないのですよ」
「でも温情だったのでしょう?」
「とんでもない。あの時私は、たかが外科の知識が少々足りないこっくらいで、こういう素直でアホな男を一年遅らせるのをもったいない、と思っただけです。余計に大学病院の雑務に埋もれることになっただけです。なのに、私は君に長く感謝される、大学も助かった。田口先生はそこそこの医者になって世の中の幸せを少し増やしている。私の裁量ひとつで誰も損はしていないし、みんなハッピーじゃないですか」
ハンマーでガツンとやられた気がした。俺は一体何を見て、何を考えてきたのだろう。白鳥のセリフがよぎる。
----もっと自分の頭で考えなよ。先入観を取り除いてさ……。
今ようやく俺は、卒業試験を終えたのだ。俺は一生この人には頭が上がらない。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』22章 後日談 本文 田口公平 高階権太 より
「私は、間違っていたのでしょうか」
桐生の問いかけに俺は立ち止まる。二、三歩進んでから、桐生はゆっくり振り返る。俺の眼を真っ直ぐに見つめる。俺は首を横に振る。
「わかりません。桐生先生は正しかったし、間違ってもいたでしょう」
桐生は桜吹雪に眼を細め、俺の言葉の続きを待っている。高く青い空に、俺と桐生の視線が吸い込まれいく。やがて、俺の言葉が空の彼方からゆっくり降りそそぐ。
「光には必ず闇が寄り添います。光をどれほど強めても、闇は消えません。光が強いほど、闇は濃く、深くなるのでしょう」
桐生は俺の言葉に耳を傾ける。やがて、ぽつりと言った。
「氷室君という闇は、ぞっとするほど深かった……」
それから、さくらの花びらの吹き溜まりに視線を落とす。
「私にはふと、あの闇の深さが懐かしく思えることがあります」
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』終章 さくら 本文 田口公平 桐生恭一 より
「……33分の1」
俺が呟く。桐生は、えっ、という表情を俺に向ける。
「桐生先生のバチスタ術死率です。大した外科医です」
桐生は首を横に振る。
「いいえ。33分の5、です。オペの結果は私一人の力ではありません。失敗も成功もひっくるめてチーム・バチスタ、グロリアス・セブンの成績です。成功率八割は、まさしく私たちチームの実力です。結局私はそこそこ凡庸なバチスタ術者だったということです」
「そんなことありません。明確な悪意は除外すべきです。素晴らしい数字ですよ」
「そう言っていただけて嬉しいです。けれどもそんな数字は、もうどうでもんです。数字で人は救えません。失われた命を前にしたら、数字なんて何の意味も持たないのです」
俺は、桐生がそう答えるだろうということを知っていた。そして今、桐生に伝えなければならない言葉が俺の目の前にある。
「おっしゃる通りです。でも数字にも意味はあります。それは一人の外科医の航跡。未来の外科医が目指す、輝ける銀領への道標なんです」
桐生は照れ臭そうに笑う。
「その言葉、外科冥利に尽きます」
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』終章 さくら 本文 田口公平 桐生恭一 より
桐生と並んで、ぽくぽく歩く。
不意に立ち止まり、桐生はあおぞらに向かって大きくひとつ、のびをした。指先を溢れかえる桜の梢に届かせようとせんばかりに。春の陽射しを掴みとろうとせんばかりに。
桐生は日輪にむけてつま先立ちになり、一瞬、真剣なまなざしをした。
その姿を振り返りながら、俺はぼんやり考える。
コイツは、これから先もずっとこうやって生きていくのだろう。
桐生は息をつき、つま先立ちの姿勢を戻す。それから蕩けるような笑顔を俺に振り向ける。
「あとは頼みます」
桐生は、ポンと軽く肩を叩くように、何かを俺に託した。それが何か確認せずに、俺はうなずいた。確認しなくてもわかっている気がした。確認してはいけないような気がした。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』終章 さくら 本文 田口公平 桐生恭一 より
田口は言う。
「患者を救おうというあなた方の姿勢は尊い。ですが、最後まで面倒を見られないのに引き受けるのは少々無責任です」
田口の言葉に小夜は凍りつく。翔子が助け船を出す。
「患者を受け入れたのはあたしです」
小夜はほっとする。そして、好ましくない状況でも、自分の行動の責任を取る翔子を、尊敬のまなざしで見つめる。そのつよさが羨ましい。田口が言う。
「これからは周囲を見回してから、判断するこてをお勧めします」
穏やかな口調の田口に、翔子は噛みついた。
「先生のお話は正論です。でも、それならあたしたちは一体どうすればよかったんですか。吐血している患者を手をこまねいて見てろ、とおっしゃるんですか」
田口の眼に深い色が浮かぶ。一瞬の間。田口は穏やかな表情で、続けた。
「今のは大学病院に属する組織人としての言葉です。次に残り半分、医療人のひとりとして、私自身の意見をお伝えします。今夜のあなた方の行動は医療人として適切でした。その結果、一人の患者の命が助かった。あなた方は立派に責務を果たしました」
田口はそこで言葉を切り、窓の外をちらりと見た。そして、更に続けた。
「口やかましいことを言ったのは、大学病院のスタッフなら誰でもこう言うからです。手続きを飛ばして正義を貫こうとしても、刃は肝心の所に届かない。いつかしっぺ返しに遭って、叩き潰される。お二人を見ていて、少し心配になったものですから」
身構えていた翔子は、田口の言葉に拍子抜けしたようだ。
「勝手をして、申し訳ありませんでした」
翔子がこんな風に素直に謝るのは珍しい、と小夜は思う。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』3章 ドア・トゥ・ヘブン(天国への扉) 本文 田口公平 如月翔子 浜田小夜 より
冴子は田口を見つめる。
「行灯先生ってそういうタイプの先生なのね。ま、あたしとしては助かるけど」
「お酒は止められません、よね?」
冴子はふっと笑う。
「人間って大半は水でできているんですってね」
「確か八五%は水のはずですが」
「あたしの場合、それが水ではなくてお酒なの。人が水を飲まなければ生きていけないのと同じで、あたしはお酒を飲まないとダメなのよ」
「それは、アル中の決まり文句です」
冴子は首を振る。
「そうかも知れない。でも、すべての言葉はもうじき意味を失う……」
語尾をぼかし、冴子は田口に尋ねる。
「ところで、スペシャル・アンプルはどうしてミニボトルばかりなの?飛行機に乗ってるみたいな気分になるわ」
「当たりです。機内で貰うのを集めているんです」
「セコいのね」
「学会出張の度にこつこつためたコレクションです。ナンバー1からナンバー30まで、一ヶ月のストックがあります。全部別種類ですから、飽きませんよ」
冴子は、目をきらきらさせて、田口を見つめる。
「毎日、違う種類のお酒?素敵ね……。だけど、一ヶ月は要らないわ。せいぜい半分ね。あたしが頂戴できるのは……」
冴子は物憂げに窓の外を見る。田口は、首筋に冷気を感じた。慌てて明るく言う。
「そんなこと言わずに、全部片づけて下さい。処分に困っていたんです。いまさら捨てるわけにはいかないし」
「自分で飲めばいいじゃない」
「私は下戸ではありませんが、一人では飲めません。友人と飲む機会も少ないもので」
「それなのにお酒のボトルを集めているのは、なぜ?」
「綺麗だからです。ミニボトルを眺めていると、その時の記憶が浮かんでいます」
冴子は田口を見つめる。唇の端をきゅっと持ち上げ、微笑む。
「行灯先生って、淋しい人なのね」
冴子の不意打ちに、田口は黙り込む。冴子は穏やかに続ける。
「大切な思い出の品を、あたしなんかがいただいてもいいのかしら」
「酒は飲むためにある。私のような楽しみ方は邪道です」
「よくわからないわ。でも、ありがと」
田口は部屋を後にする。部屋には冴子と城崎、そして琥珀色のボトルが残された。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』8章 ミニボトル・コレクション 本文 田口公平 水落冴子 城崎 より
小児科診療にはマンパワーが必要だ。子供は小さな獣で、注射一つにも力づくで押さえつけることが必要な時もある。一般患者なら本人聴取で済むが、小児科は両親の話も聞き、その上本人の聴取に途方もない根気が要る。愛情が深い分だけ、両親に客観事実を納得させるのに、手間がかかる。
官僚システムが生み出した、書類上で組み立てられた場当たり的な医療改革案は、医療現場に害悪と混乱をまき散らし続けている。副島真弓助教授は徹夜明け勤務時間で疲れ切った顔を霞ヶ関の方角へ向けて、静かに宣告する。
----子供と医療を軽視する社会に、未来なんてないわ。
副島の鋭い視線を受け止めた窓硝子のハーフミラーに、白髪の奥寺教授の穏やかな笑顔が重なる。小児科教授回診は粛々と雨中の行軍を続けた。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』5章 オレンジの黄昏 本文 副島真弓 より
目覚めた時、窓に陽の光があふれていた。寝坊した、とあわてて起き上がる。それから寝呆けた視線を壁のカレンダーに走らせ、休みだったことを思い出す。
テーブルの上には書きかけのレポートが乱雑に放り出されていた。頭の中では、もうとっくに完成しているが、書き下ろすことができない。眼球摘出という単語のところで小夜ねペンは凍りつく。
----患者への過度の感情移入は危険。共感は大切だけど、過度だと看護が壊れる。
猫田師長の言葉。その言葉を聞いた時は意味が全く理解できなかったけれど、今ならよくわかる。
窓を開ける。真冬の朝の冷気が部屋に流れ込む。再び猫田の言葉が甦る。
----迷った時は患者に還ること。医療の原点は患者にあるの。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』10章 天窓の黙示録 本文 浜田小夜 猫田麻里(師長) より
猫田がゆっくりと眼をつむる。眠りに溶けていく時と、考えごとで眼をつむる時、周囲に発散する空気が変わる。それを看護師たちは「千里眼が開いた」と呼ぶ。
今まさに千里眼が開こうとしていた。
おもむろに眼を開けた猫田は、うなずきながら独り言のように言う。
「そうね、そうしましょう……」
周りは猫田の言葉を待つ。猫田が厳かに言う。
「二人を愚痴外来にお願いしましょう」
部屋は静寂に包まれる。次の瞬間、大爆笑が広がる。猫田は、きょとんと周りを眺めている。笑い転げる看護師の中、猫田と小夜は笑いから取り残された。
「な、なに?あたし、そんなに面白いこと言ったかな」
猫田の質問に、笑いをこらえながら権堂主任が答える。
「田口先生にお願いするのはいいんですが、田口先生が子供と向かい合って、真剣に“お加減はいかがですか”と言う姿を想像したら、思わず……」
笑いを再開した権堂の隣で、「主任、それ以上はやめて」と机を叩き笑い転げる看護師たち。
「そんなに可笑しいかしら」
猫田は解せないという面持ちで目の前の笑いの渦を眺める。看護師が笑いながら尋ねる。
「猫田師長は子供にも愚痴があるってお考えですか?」
猫田は不思議そうな顔で、答える。
「あら、みんなはもう忘れてしまったの?自分が子供だった頃のこと。子供は大人と同じくらい複雑な感情世界に生きている。愚痴どころか権謀術数、三角関係、足の引っ張りあい、何でもありだったでしょ」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』12章 吊し上げカンファレンス 本文 浜田小夜 猫田麻里(師長) 権堂昌子(看護主任) 看護師たち より
この阿鼻叫喚の一体どこが猫田師長の差配なのか。適当に選んだガキを野放しにしているだけではないか。田口は苛立って心中でぶつぶつ呟く。
だいたい今の怪獣はごてごてしすぎだ。見栄えも名前も昔の方がずっとエレガントだ。
ハイパーマン・バッカス。ハイパー兄弟の一員だそうだが、そもそもバッカスは酒の神様、呑んだくれてグレたヒーローが幼児番組にふさわしいのか?ハイパーマンは一般市民の要求に疲れ果てて、とうとう酒浸りになってしまったのか。考えてみればハイパーマンやウルトラマンの姿は、どことなく医者や救急隊員に似ている。最初は感謝されるが、いつしか当然の義務だと思われてしまうところなんて、瓜二つだ、と田口は思った。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』13章 小児愚痴外来 本文 田口公平 より
由紀は、はめ殺しの窓に目を細める。長い長い間。田口は静寂の重さに耐える。
「この部屋は、私の窓なんです」
由紀はやがてくる未来図、医療の密室に幽閉される自分の姿を予見している。
長い沈黙の後、由紀はふっと笑う。
「こういう時に何も言わないでいてくれる人は、初めてです」
田口が言う。
「黙って立っているだけなら、案山子(かかし)にだってできる、と言われたことはありますが」
由紀は一人の女性として田口の前に座る。それならせめて、華やかな女性が経験する輝かしい未来のひとかけらでも、ひとときに凝縮し感じさせてあげたい。この時間は、きっと天の配列だ。
二人は黙る。由紀の視線を感じながら、田口は手にしたボールペンを見つめる。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』15章 ハイパーマン・バッカス 本文 田口公平 杉山由紀 より
看護師は再び部屋を出ていく。猫田は二人の刑事に言う。
「浜田が来たら戻ります」
猫田は部屋を出ていく。後ろ姿が視界から消えたのを見届けてから、玉村が言う。
「……それにしてもおそろしい婆さんですね」
そう言いながら、玉村は猫田の仕切りながら問題なさそうだと確信していた。どうやら幸先よいスタートだ。捜査は、人との出会いがすべて。科学捜査という概念は玉村にはない。科学捜査をする人から生きた情報を受け取る。それが玉村のスタンスだ。
「捜査はやっぱり、人との出会いですよね」
玉村はうっかり口を滑らせた。物質主義の権化、加納にこんなことを口走れば笑い飛ばされるのがオチだろうと身構えていたら、意外にも、加納は同意した。
「同感だな。だがあの師長に対して婆さんは失礼だろう。もう少し若いし、よく見ればかなり別嬪だ」
玉村は少し驚く。加納が女性の容姿に対して肯定的に言及することは、極めて稀なことだったからだ。加納が煙草をくわえ、マッチを捜しあちこちのポケットを叩くのを見て、玉村は煙草をつまみ上げる。
「病院内は禁煙です、警視正どの」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』17章 隠密捜査 加納達也 (警視正) 玉村誠 (刑事) 猫田麻里(看護師長) より
(略)白鳥が言う。
「お前って、昔からそういうヤツだったよな。
加納は笑う。それから真顔になって、続ける。
「そもそも中立的第三者機関とかエーアイという話から、この俺にまでとばっちりが降りかかったんだぞ。お前が死亡時医学検索の方法論の変換だなんて大それたことを言い出すもんだから、法務省は厚労省が法律の不備を突いて喧嘩を売ってきたと邪推するし、警察庁はエーアイが普遍化した場合、捜査方法を一から構築し直す必要があると怯えるし。裏トップ会談で、霞ヶ関内第一種警戒警報が発令されたわけ。桜宮に妙ちくりんなものを作られたら面子は丸つぶれ、とばっちりは必定だと予見して、講じた予防的非常手段が、桜宮への先遺派兵さ。それを考えれば捜査の手伝いくらい、大したことではないはずだ。
「都落ちは無能で省内政治の綱渡りに失敗したか、有能すぎて緊急事態の収拾を一任されたかのどちらかで、僕のせいじゃないさ。説得力はないね」
冷静さを取り戻した白鳥は、加納に言い返した。強気同士のアクティヴ・フェーズ、オフェンシヴ・トーク(攻撃的話法)がぶつかりあうと、こういう事態になるのか、田口は心の中の学習帳に観察日記を書きとめた。
メモのタイトルは“どつき合い”だった。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』21章 火喰い鳥 vs. 電子猟犬 本文 田口公平 白鳥圭輔 加納達也 より
白鳥は考え込む。そして独り言のように呟く。
「百聞は一見に如かず。説明するより見せちゃった方が早いな」
白鳥は立ち上がり、検査中のMRI室の扉を開け放つ。金属バケツを叩くような、特有の検査音に小夜の歌声が混じり合い、部屋に流れ込む。
「何をする」
島津が声を荒げる。指を唇に押し当て、白鳥は答える。
「MRI検査は、扉を開けても支障ないでしょ」
「それはそうだが、非常識だ」
「しっ、黙って。浜田さんの歌声に集中して」
白鳥が虚空を指し示す。全員、扉から流れ込む小夜の肉声に耳を傾ける。その途端、人々は、明るい光に包まれた。白鳥が言う。
「眼をつむって、そうすればわかるから」
全員眼を閉じる。しばらくして、島津が放心したように白鳥の顔を見る。
「そういうことだったのか……」
「何だ、これは一体、どうなっているんだ?」
田口の問いかけに、白鳥の貧乏揺すりが始まる。
「相変わらず自分の頭で考えないね。田口センセは、自分のことぐらい、自分で解析してみてごらんよ。スピーカーを通じた音はある音域がカットされ、情報が不充分なので、画像が完成しないんだ。浜田さんの肉声に直接触れた今、皆さんの脳内に初めて完璧な情報が揃ったわけ」
白鳥は、ぐるりと周囲を見回し、言った。
「今ご覧になっている画像こそ、ジャイアント・ブリッツの正体です」
人々の脳裏に、清楚な女性の笑顔が浮かぶ。その面影を全員がうっとり見つめた。
気づけば、単純なことだった。自分でも辿りつけそうな答え。だが同時に思う。
これこそ白鳥の真骨頂。アクティヴ・フェーズの最終極意・すべての事象をありのままに見つめることまま単純であればあるほど、極意の体得は困難を極める。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』23章 マリアの肖像 田口公平 白鳥圭輔 島津吾朗 浜田小夜 他 より
冴子は首を振る。
「いいえ、運命と人生は違う」
二人の間に閃光が走る。城崎は一瞬、冴子を真剣に見つめた後で、話題を変える。
「ところで一番始めに脱落した白鳥とかいうダンゴ親父、本当はアイツが一等賞だな」
冴子は驚いて、城崎を見つめる。
「あれはどう見たってフライングでしょ」
城崎は首を振る。
「いや、歌い始めた瞬間に、ほんのわずかだが音はブレていた。お前も入院生活が長くなって、少しなまっていたんだろうな」
「あの小デブが、あたし自身も認識できなかった微細な音のブレを聴き取った、とでも言うの?」
冴子は信じられない、という表情をした。城崎が答える。
「当てずっぽうかもしれない。ま、どうでもいいことだ。どのみち結果的には田口先生の一等賞は、ベストさ。ダンゴが選ばれていたら、ヤツは絶対、トレーニングなんてサボるだろうからな」
冴子は黙り込む。思い出したように呟く。
「いずれにしても結末は近いわ。それまで生き延びられるといいのだけれど……」
城崎は窓の向こう側の白く凍えた水平線に、目を凝らした。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』25章 マタイ受難曲 本文 城崎 水落冴子 より
硝子のショーウインドウの向こう側で、感染防止の紙マスクを着用した小夜が、由紀の枕元に佇んでいる。玉村が呟く。
「……そうだったのか。これですべての輪が閉じた……」
小夜は眼で挨拶する。由紀が力なく微笑み返す。小夜は歌い出す。
冴子のバラード、『La Mer(ラ・メール)』。
病室に旋律が流れる。荒かった呼吸が静まり、由紀の顔が穏やかになっていく。
「あ、海……」
由紀の最後の言葉を、小夜の耳はしっかり捉えた。
由紀の呼吸がが次第に浅く、弱くなっていく。医師と看護師が部屋に乱入してくる。怒濤のような奔流の中、とぎれとぎれのメロディと共に小夜は漂う。その視線は岩に食い込む浮き草の根のように、由紀の最後の微笑みに釘付けになっている。
小夜は人々の流れに押し出されるようにして、部屋を出た。入れ替わりに家族が駆け込んでくる。
その様子をぼんやりと見つめながら窓辺に佇む小夜。そこへ玉村が歩み寄る。
「お姿を拝見して、ようやく思い出しました。名字が変わっていたし、部検室ではマスク姿しか拝見したことがなかったので、これまで気づきませんでした」
玉村は一礼する。
「お久しぶりです、桜宮小夜さん。その節はどうも。巌雄院長には今でもお世話になっています」
玉村は、加納と共にその場を去った。小夜は紙マスクをはずした。
「桜宮病院と浜田小夜の間には、昔、何かあったんですか?」
田口の問いに、小夜はうつむいて答える。
「私は桜宮家の養女だったことがあるんです。中学時代に両親を亡くしてから、看護学校を卒業するまでの、短い期間のことなんですけど」
「そうだったんですか……」
田口は小夜を見つめた。
一時間後、由紀は亡くなった。浮かんだ最後の表情は、穏やかな笑顔だった。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』33章 La Mer(ラ・メール) 本文 田口公平 浜田小夜 玉村誠 杉山由紀 加納達也 より
二曲目は『花畑のロンド』だ。七色の花が咲き乱れる中、由紀は軽やかに踊る。ステップを踏む度に、色とりどりの花びらが舞い上がる。輝きの中、少女の姿は花びらの渦へと溶けていく。
「鎮魂歌か(レクイエム)……」
田口は呟く。斜め後ろをちらりと振り返る。瑞人の顔は白く濡れていた。
小夜の歌声に冴子の歌が寄り添うと、由紀の感情が裏打ちされていく。由紀が笑う。夏の砂浜で、高原の花畑の中で。小夜が映し出す風景の中で、由紀は何度でも復活する。小首を傾げ、笑いかけてくる。
----ねえ、私はここにいるよ。
聴衆は、由紀の笑顔に魅せられる。いつまでも、その笑顔を見続けたい、と願う。
突然、城崎の饒舌な伴奏が暴走を始めた。何事か耐えきれず、すべてを吐き出すかのような音符の嵐の中、小夜は城崎の暴れ馬のような伴奏にしがみつく。そうしてかろうじて歌を終曲に運ぶ。それは城崎を吹き抜けた一陣の海風のようだった。
歌は終わり、最後の音の余韻がホールに残留する。
気がつくと、その海風は、由紀を水平線の彼方へ旅立たせていった。
小夜と冴子は顔を見合わせる。ホールが現実世界に戻っていく。
城崎のアルベシオが、小夜に語りかけてくる。
----死者は弔うもの。よみ返らせるものではない。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』34章 クリスマス・キャロル 本文 田口公平 浜田小夜 牧村瑞人 水落冴子 城崎 幻影の杉山由紀 聴衆 より
小夜の胸に熱い感情が迸る。
「嬉しいけど、私は自首する。相手が悪くても、罪は罪だもの」
「小夜さんは悪くない。親父の身体を傷つけたのは俺なんだ。それに俺は病気だからどうなったっていい。小夜さんが自首したっていいことないよ。そしたら俺も捕まってしまうし、さ」
「無実の罪をかぶってどうするの。あなはまだ子供なのよ」
瑞人はぎらりと小夜を見る。
「俺は子供じゃない。誰にも頼らず、一人で生きてきたんだから」
「そうだね。辛かったね」
不意に胸を衝かれ、小夜は瑞人を抱きしめる。
小夜は考える。
こうなってしまったら、今さら私が自首しても、この子の関わりを消し去ることはできない。それなら逆に考えてみたら?私は疑われるかしら?この男とは一度会っただけ。容疑者にすらならないかもしれない。そして私を助けるためなら、この子も自分の身を守ろうとしてしとくれるかもしれない。もしもこの子が裏切ったら?その時こそ、自白すればいい。だってもともと、これは私の罪だもの。
罪という言葉の響きが、忘れかけていた感覚を呼び覚ます。
----力があれば罪は飛び越えられるものだ。
記憶の底から野太い男の声が浮かび上がる。小夜の瞳が妖しく輝き始める。
(略)
赤裸々な告白。瑞人は立ち上がる。
「でたらめ歌うな、小夜さん」
田口は荒れ狂う瑞人を押さえ込む。
「女が本気なら、その時には男は見届けるしかない。それは力が要ることなんだ」
瑞人の動きが止まる。振り返り、田口の眼の奥を見つめた。
田口は言った。
「君以外誰が浜田さんを守るんだ?君はそこに、そのままでいろ。それだけでいい」
全身に張りつめていた緊張感が抜け落ちる。田口は呟く。
「君はそのままで、そこにいろ。それが、何より大切なんだ」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』34章 クリスマス・キャロル 本文 田口公平 浜田小夜 牧村瑞人 記憶の中の男(桜宮巌雄?) より
奥寺は首を振る。
「悪いとは思っていない。さっきも言ったが内山君は正しい。猫田君も正しい。だが、内山君には足りないところがある。それがさきほどから君の言葉の端々に現れといるんだ」
「たとえ奥寺教授のお言葉といえども、納得できません」
「そこだよ。君は周囲の人間の言葉に耳を傾けなさすぎる。スタッフの声に耳を傾け総合的に判断できる、という資質こそ、医師を医師たらしめている黄金律だ。医師だって人間だ。決して万能ではない。だからこそ看護師やその他、多種多様な関係者の手を借りなければ医療はできない」
蒼白な聖美の顔を穏やかにのぞき込み、奥寺教授は言う。
「内山君は間違っていない。医者だって人間だ。休みたい時もあるし、嘘をつく時だってある。だが今のままでは、君は将来禍根を残す。その禍根は、君自身の未来に傷痕を残す。悪いことは言わん。ここは老いぼれの顔を立てて、負けておきたまえ」
奥寺教授は、聖美を見つめて、続けた。
「こども病院の真咲部長は、仏の真咲、と呼ばれる人格者だ。彼からマンツーマンの薫萄を受けて、もう、一度ゆっくり考えておいで。本来これは私の仕事なんだが、残念なことに私にはもう時間が残されていないんでな。君はいつまでも、どこにいても教え子だ。これまでも、そしてこれからもずっとそうさ。たとえ君が小児科を辞めることになったとしても、だ」内山聖美は両手で顔を覆い、声をあげずに泣き始めた。奥寺教授は聖美の肩をそっと抱いた。
「内山君、小児科は確かに大変だが、そう捨てたものではないんだぞ」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』35章 堕天使と聖天使 本文 奥寺隆三郎(教授) 内山聖美(医長)より
白鳥の言葉を引き取り、田口は小夜から聞いた碧翠院桜宮病院の逸話を伝えた感動を堪えた田口の口調に冷や水を浴びせるように、白鳥は言う。
「それでやっと最後の謎が解けた。浜田さんを犯人と仮定した場合、どうしても一点だけ無理があったんだ。偶発的な事件のはずなのに、発生直後の処理速度はめちゃくちゃ早かった。ここだけはどうしても解けなかった。だけどこれでようやく謎の輪が閉じた。彼女にとって屍体処理は手慣れた作業だったんだね。そう考えると、今回の事件の根は桜宮病院にあったとも言えるわけか……」
「桜宮巖雄院長がしたのは悪いことなんでしょうか?おかげで、浜田さんは救われたんですよ」
田口は高階病院長の言葉を思い出す。
----ルールは破られるためにあり、それが赦されるのは、未来によりよい状態を返せるという確信を、個人の責任で引き受ける時だ。
白鳥は、田口を突き返す。
「田口センセ、一時の感情に引きずられてはダメだよ。こうしたやり方ど浜田さんが救われたのか、罪を深めてしまったのかは、誰にもわからないさ。この事件は偶発的要因が強く、はじめから自首していれば大した罪ではなかった、とも考えられる。なのに、罪を隠蔽しようとしたために、おおごとになってしまった。幸い加納が理性的な初期対応をしたのでこの程度で済んだんだ。どう考えても浜田さんの選択ミスさ」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』35章 堕天使と聖天使 本文 田口公平 白鳥圭輔 高階権太病院長(田口の回想) より
白鳥は田口を見つめた。
「一度境界線を越えた人間は何度でも踏み越える。一度踏み越えれば、それはもはやタブーではなくなる。ましてソイツが罪を償うことがなければなおさらさ。そうやってすべてが正当化されていく……すべては過去に経験があったからこそ、さ」
白鳥は眼を閉じた。地の底から響くような声で厳かに言う。
「碧翠院桜宮病院の桜宮巖雄院長の罪は、無垢な魂の前で境界線をまたいでみせたこと。その血脈は浜田さんに受け継がれ、そして今、牧村君へと手渡された。悪意の血脈には時効も境界もない」
白鳥は眼を開き、きっぱりと言い放った。
「やはり桜宮病院は、叩き潰す必要があるのかもしれません」
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』35章 堕天使と聖天使 本文 田口公平 白鳥圭輔 より
「ベッドが空いていたからよかったですが、空いていなければどうするつもりでしたか?患者を救おうという行為は尊いですけど、最後まで面倒を見られないのに引き受けるのは無責任だと思いませんか?」
田口の思いもよらない厳しい言葉に、小夜が凍りつく。
翔子の胸の中に、きな臭い感情が沸き上がる。それをそのまま口にする。
「それなら、あたしたちはどうすればよかったんですか。吐血患者を目前に手をこまねいて見てろ、とおっしゃるんですか」
田口の眼に、深い色が浮かぶ。視線を、暗い窓に投げかける。雨音が部屋に満ちる。
やがて、静かな声が答えた。
「今のは大学病院に属する組織人としての言葉です。残り半分、私自身の意見をお伝えします。今夜のあなた方は医療人として立派に責務を果たしました。その結果、ひとりの患者の命が助かった。口やかましいことを言ったのは、大学病院のスタッフならば誰でもそう言ったはずだからです。手続きを飛ばして正義を貫こうとしても、刃は肝心の所に届かない。いつか必ずしっぺ返しに遭って叩き潰される。おふたりを見ていて、少し心配になったものですから」
翔子は、穏やかな言葉に拍子抜けした。
「勝手をして、申し訳ありませんでした」
素直に謝罪し、唇を噛む。おっしゃる通り。あたしってば、いつもそう。同時に翔子は、田口の淡々とした物言いに、凛と筋が通っているのを感じ、嬉しくなる。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』1章 オレンジ・スクランブル 本文 田口公平 如月翔子 浜田小夜 より
※『ナイチンゲールの沈黙』にもほぼ同じ表現された場面あり。興味ある方は両作品をくらべて読むもよし📖📖。
速水はとろんとした眼を開ける。モニタに眼を遣り、尋ねる。
「その患者(クランケ)は何番?」
「ご存じの通り今夜は満床ですので、病棟に引き取ってもらいました」
うつらうつらと速水の首が揺れる。うなずいているようでもあり、首を横に振っているようでもある。どうやら御機嫌を損ねずに済んだか。ほっとした次の瞬間。
「ぶぁかやろう!」
チュッパチャプスが一直線に飛んできた。佐藤は反射的によけようとしたが、思いとどまる。背後の液晶モニタを保護するため、飴玉の銃弾を白衣の胸で受け止める。
速水は立ち上がった。獲物を唸り声で威嚇する。虎だ、と佐藤は思った。
「急性期患者処置後は容態安定するまで眼を離さないというのは、救急医のイロハのイ、だろうが。何考えんてんだ、このあんぽんたん!」
あんぽんたんというのはいつの時代の罵倒用語だろう、この人、まだ四十代半ばのはすだが。
(略)
転科後に心のメモから素早く削除した、うろ覚えの患者データをゴミ箱から取り出す。
「ビリルビン12、LDH32、だった、です」
「ぶぁかやろう。LDHは35だろうが。それに肝硬変を疑ったら血小板数も報告しろ」
うっかりした。頭の中のゴミ箱をあさっても、血小板の数値情報は浮かんでこない。Hbの低下は印象に残っているんだが。速水は肩をすくめる。
「血小板五万二千。佐藤ちゃんの見立ては正解。でも点数は30点、試験は落第だ」
ご存じならわざわざ訊くなよ。佐藤は心の中で吐き捨てた。それにしても、あの短い間に、俺よりデータを正確に把握してしまうなんて。佐藤はげんなりし、同時に自分の医療センスの容量の小ささに絶望する。思わず、駄洒落が口を衝く。
「肝臓はどうもいかんぞう」
速水は物も言わず、佐藤の頭をはたいた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』2章 血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ) 本文 速水晃一 佐藤伸一 より
「なるほど……」
そう言うと高階病院長は、遠い眼をした。
「それでは、田口先生がご存じない情報をひとつ、お伝えしましょう」
「速水先生の外科学の卒業試験成績は歴代を通じて、断トツのトップでした。学生時代、すでに外科医の基礎が完成されていた、と言っていい。どこかの誰かさんとは雲泥の差ですが……」
「その件も、チャラになっているはずです」
田口は言い返す。高階病院長のお目こぼしで外科最終口頭試問を合格し、卒業できた事実を気に病んでいた田口は、負債をバチスタ醜聞解決に貢献して返済した、つもりでいた。
「失礼。つい、口が滑りました。私が言いたかったのは、速水君を口頭試問しながら感じたことです。あの時に私はこう思いました。彼はある部分、私とよく似たタイプの方だ、と」
「それはつまり、速水は理想的な外科医だ、ということですか」
意趣返しのように田口が誉め殺しの言葉を吐く。高階病院長が顔をしかめる。そして言った。
「彼は既存のルールを軽視する傾向がある。そうしたメンタリティの人間が修羅場に直面し、しかも自分の思うように動けない場合、往々にして境界線を踏み越える。私とて、速水先生の高潔さは、微塵も疑っていません。しかし調査にあたっては、私の懸念を心のどこかに引っかけておいて欲しいんです」
田口はそな言葉を心に刻んだ。ただし、真意は理解できなかった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』8章 ピンストライプの経済封鎖 本文 田口公平 高階権太(病院長)より
「俺なら許可を取らずにいきなりCTにぶっこむ。結果を知ってから解剖を勧める。そうすればいざとなったら自信を持って強制解剖できるだろ」
佐藤は肩をすくめる「ズルいですよ、それ」
速水はからりと笑う。
「ズルだっていいさ。少なくとも、ズルくない佐藤ちゃんの対応よりよっぽどマシだ」
「それにしてもエーアイもせずに、あの女の子が異状死だとよくおわかりになりましたね」
佐藤が速水に言う。
「俺は女の涙を信用しないんでね。それを差し引いて見ると、胡散臭さがぷんぷん漂っていた。でも決め手は、女の子の涙、かな」
佐藤は驚いて、速水の顔を見つめた。
「あの娘は涙なんて流していませんでしたよ。まさか速水先生は、お嬢さんの死に問題があったかどうか実は確信はなかったとか?」
「当たり前じゃないか。あんな所見、体表から見ただけでわかるわけないだろ」
佐藤は呆れたように首を振る。
「そんな不確かな考えの上に、ご自分の辞表を乗っけたんですか。もし解剖して所見が何もなかったら、一体どう責任を取るおつもりだったんです?」
「佐藤ちゃんは俺の話を聞いていなかったようだな。その時は辞めるつもりだったよ。ほら」
速水はポケットから封筒を取り出す。墨痕黒々と、辞表願、とあった。
「この稼業で自分の意志を通すには、辞表の一枚や二枚、いつでも用意しておかないとな。佐藤ちゃん、これが救命救急医の心意気ってヤツさ」
佐藤はため息をつく。これだからジェネラルには誰も逆らえない。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』10章 沈黙の少女 本文 速水晃一 佐藤伸一 より
速水に正対するように三船事務長が腰を下ろす。
「現場の人間が役所批判をするのは当然だと思いますが、少しお控えになった方がよろしいかと。厚労省みたいなところは、気に入らないと陰干ししたり、などという陰険なことを平気でしますから。それに、全国の病院のあちこちに役所のスパイ網が張り巡らされていますし」
速水は肩をすくめて、笑う。
「ご忠告どうも。だが、今さら良い子ぶりっこしてみても手遅れだ、という自覚症状はあるからご心配なく」
「ドクター・ヘリやエーアイがシステムとして進展しないのも、速水先生の物言いが役所の反感を買っているのが原因かもしれませんよ」
「腐っても地方医大の雄、東城大学医学部付属病院の事務長に就任する実力を持ったあんたのことだ。役所に気を回したくなる気持ちはわかるがね。俺はご機嫌をとるつもりは全くない」
三船事務長の眼が細くなる。
「天上天下唯我独尊、ですか」
速水は首を振る。
「とんでもない。俺は誰にだってかしずく下僕(しもべ)さ。ただその相手は、ベッドの上の患者だけだ、ということさ」
三船が唾を飲む。速水が続ける。
「患者には、ベストを尽くす。状態の悪い人は、少しでもマシにしてお返しする。心臓が止まれば引き戻す。戻らなければ死因を追求する。もしも医者が患者の死に際して何もしないなら、医者と坊主はちっとも変わらない」
「いくら何でも、言い過ぎです」
三船事務長が反論する。速水は続ける。
「さすが今の言葉は少々不謹慎だったな。撤回しよう。死体をきちんと医学検索しない医者よりは、生臭坊主の方がまだマシだ。念仏を上げてくれるからな」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの沈黙』10章 沈黙の少女 本文 速水晃一 三船事務長 より
三船事務長は、速水の背中に刃のような言葉で切りかかる。
「逃げるんですか?」
速水が動きを止める。ドアノブから手を離し、振り返る。 三船の眼を真っ直ぐ見つめる。
「逃げる?俺が?なぜ?寝呆けたことは言わない方がいい」
「それならこの件を説明していってください」
速水は肩をすくめる。
「それはまた今度、時間ができた時にでも。あいにくコールされたんでね」
「コールですって?」
三船の疑問文が波動として空間を震わせようとした瞬間、三船の背後で警報音が鳴り響く。
「速水先生、処置室です。止血が止まりません」
「あいよ、今行く」
速水は、点滅を始めた赤ランプをちらりと見る。部長室の重い扉が開く。冬の日の午前の、冷たく清潔な光が暗いコックピットに差し込み、一瞬部屋を消毒した。
速水は光の中に一歩踏み出す。速水のシルエットが光の中に溶けていく。三船事務長はその姿を、取り残された暗い部屋の片隅から見送った。
三船は、赤いランプの点滅をいつまでも見つめ続けていた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』11章 ドクター・ヘリ 本文 速水晃一 三船事務長 より
※同じ描写は『ジェネラル・ルージュの伝説』にもありそちら三船事務長側からの描写📝
ICUに戻る。モニタはグレー一色。不愛想なモノトーンに、速水は安堵する。
結局、俺には他に行くところなんてない。
田口の言葉の欠片がふわりと浮かぶ。
----お前らしくないな。
相変わらず遠慮のないヤツ。俺らしいってどういうことだ?学生時代、麻雀卓を囲んで徹夜した頃の俺が、俺らしいのか?それとも竹刀を握り、面金の向こう側の敵の目を見据えていた時だろうか。長い月日が経つうちに、俺は本当の自分をどこかに置き忘れてきてしまったかもしれない……。
思いがけないタイミングで、思わぬヤツから、思いもよらない指摘を受けたな。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』19章 天窓の歌姫 本文 速水晃一 田口公平(回想) より
「ええと、ICUの如月さん、ですよね?」
初対面の人間のテリトリー侵害地点まで侵入した後、いきなり急停止した白鳥はだしぬけに質問をぶつける。防御する暇もなく反射的にうなずく翔子。白鳥はにまっと笑う。
「オレンジ踊り子部隊のヘッド、東城大学美形男性検索ネット代表にしてICUの爆弾娘、でしたよね」
翔子は一瞬ぎょっとしたがすぐ態勢を立て直し、投げつけられたピーンボールを打ち返す。
「名称が違います。美形男性検索ネットではなく、美男子愛好同盟・ネット検索エンジン部長です」
相手をやりこめたつもりだったが、次の瞬間、男は肩透かしで翔子をうっちゃりに沈める。
「そのリップ、五星堂この秋の新色『ヘリカルパープル』ですよね。さすが東城大学屈指のファッションリーダーだけのことはありますね」
翔子が発動した心理ガードは“シカトでスルー”という、攻撃と防御が一体化した高度な技の前に、一瞬にして崩壊させられてしまった。自分がウザいと認定したはずの男に、流行最先端のリップを正確に言い当てられた衝撃はあまりに大きすぎて、翔子には呆然と見つめるしかなかった。
----一体何なの、この人?
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』20章 火喰い鳥の告知(ノーティス) 本文 如月翔子 白鳥圭輔 より
田口は壁の時計を見る。定刻を少し過ぎた。主役の速水が遅刻しているため、田口が開始時間を少し延期しようとした時、前方の扉が開いた。のっそり部屋に入ってきたのは東城大学守旧派の巨魁、臓器統制外科の黒崎教授だった。手には大きなボストンバッグを提げている。
「家内から連絡を受けていたんだが、リムジンが渋滞に巻き込まれてしまってな。仕方なく家に寄らず、空港から直行した。遅れたことをご容赦いただきたい」
珍しく謝罪をした黒崎は、ためらわず田口の右隣に着く。低い声で田口に言う。
「田口君、定刻を過ぎている。さっさと始めたまえ」
これこそ東城大学医学部オールスター・キャスト。いよいよ撮影開始だ。映画のタイトルは、“血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)の仁義なき闘い・桜宮死闘編”になるだろう。
田口はため息をつく。リスクマネジメント委員会が出席率百パーセントの時は、いつもロクなことがなかった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』25章 リスクマネジメント委員会 本文 田口公平 黒崎誠一郎(教授) より
田口は黒崎に言う。
「黒崎教授、主役が到着しておりませんので、しばらくお待ちを」
「ウィーンから帰ったばかりのワシが休日を押して出席しとるというのに、主賓が遅刻とは不届き千万だ。相変わらず無礼な男めが。こんな茶番、とっとと済ませてしまいたまえ」
押し殺した黒崎の言葉が終わらないうちに、後ろの扉ががらりと開き、速水がひらりと現れた。
「遅れて申し訳ない。出がけに気管切開をしてきたものでご容赦を」
ジェネラル・ルージュの降臨。タイトルロールの華やかな登場に、ざわついていた場が一瞬で静まり返る。黒崎教授の不平は、うたかたの泡のように吹き飛ばされる。
良きにつけ悪しきにつけ、コイツは主役にしかなれない男だ。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』25章 リスクマネジメント委員会 本文 田口公平 速水晃一 黒崎誠一郎(教授) より
沼田は速水に向き直り、追撃する。
「先ほどから黙って伺っていれば、まるで自分こそが医療の体現者だと言わんばかりの放言三昧。いい気なものだ。あなたの土台は足下から崩れ始めていることにお気づきになっていない。部下の掌握さえロクにできない半端者だから腹心の部下に告発されてしまうんです」
「どうやら沼田先生告発者が誰か、心当たりがあると見える。」速水は末席のICUスタッフの塊に視線を投げる。佐藤が、花房師長が、うつむく。ただひとり如月翔子の視線だけが、速水を真っ直ぐ見つめる。
速水は翔子の瞳の切っ先を外し、田口を見た。
「おい行灯、とっとと俺の処分の協議を始めな。でないと余計な火の粉が周りを傷つける。
田口は、速水を見つめた。ざわついてた場が、次第に静まっていく。
瞬間の静寂を捉えて田口は言った。
「速水先生、本当にそれでいいんですか?それは責任回避ではありませんか?」
「何が言いたい?」
速水の眼が細くなり、カミソリのような光をたたえる。田口は臆せず続ける。
「速水先生が責任を取ってお辞めになる。先生はそれでもいいでしょう。ですが、先生が去った後もオレンジは残る。そこに残された人たちはどうなるんです?」
「それは俺の知ったことじゃない」
速水の後方、オブザーバー席が揺れた。その気配を感じ取りながら、速水は続ける。
「正確に言おう。それは俺の次の人間が、のたうち回りながら何とかすることだ」
速水は田口に歩み寄る。胸ポケットから封筒を取り出すと、手早く机に置く。
速水は振り返り、視線をぴたりと佐藤に当てる。
「あとは頼んだぞ、佐藤ちゃん」
机の上に置かれた『辞職願』。黒痕鮮やかに記された白い封筒を、田口は黙って見つめた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』25章 リスクマネジメント委員会 本文 田口公平 速水晃一 佐藤伸一 花房美和 如月翔子 沼田泰三 より
「僭越(せんえつ)ではあるが、ワシに断を下す役割を委譲していただけるかな」
ここま来ては、ルールやパラダイムなんてすっ飛んでしまう。力こそルール。田口は黒崎の答えにうなずきで答えてから、僅かな望みを高階病院長に託す。
高階病院長は黒崎教授を見つめた。ふたりは視線を交錯させた。
やがて、高階病院長は静かな声で応じた。
「黒崎教授にお任せします」
黒崎教授は立ち上がる。嬉しそうな笑顔を浮かべた沼田をちらりと見て、咳払いをする。
「速水君、リスクマネジメント委員会委員長代行、及び東城大学医学部附属病院病院長代行として勧告する」
ぐるりと場に視線を巡らせてから、速水に向かって鋭く言い放った。
「直ちに辞表を撤回したまえ」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』25章 リスクマネジメント委員会 本文 田口公平 高階権太 黒崎誠一郎 沼田泰三 より
黒崎教授は沼田を見つめる。
「ワシがコイツと相容れることは金輪際ない。コイツのルール違反は許し難い。今回の一件もそうだし、過日の越権行為だって同じこと。あの日のことを思い出すと、今でも腹わたが煮えくりかえる」
「それでは、なぜ?」
「たとえワシが気に喰わなくても、桜宮の医療にはコイツが必要だ。ワシは規則という枠を守って生きる。コイツはその枠を破壊しながら前進する。ワシたちは互いに互いを必要としている」
そう言うと、黒崎は沼田を見つめた。
「君にはわからないだろうな。救急現場は神でなければ裁けないのだ。そして、あの城東デパート火災の時、ワシはコイツの中に神を見てしまった。たとえ破壊神だとしも神は神。人間に逆らえる道理はない」
黒崎は遠い目をして続けた。
「勘違いするな。ワシは速水が神だと言っているのではない。ああいう場があり、あの時の流れの中で、たまたまほんの一瞬、神がコイツの肩の上に舞いおりた。ただそれだけのことだ。だが、多くの凡庸な医師が生涯一度も神に遭遇することなく朽ち果てていくことを思えば、なんという祝福だろう。あの時ワシは初めて知った。神の指図で動くことが、あれほどまでの愉悦を伴うものだということを……」
黒崎教授は言葉を切った。そして続けた。
「ワシのプライドや肩書きなんて、そうした瞬間には、すべてすっ飛んでしまうくらい、ささやかで他愛もないものなんだ」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』25章 リスクマネジメント委員会 本文 黒崎誠一郎 沼田泰三 より
その時、黒崎教授が退場して以来、沈黙を守り続けてきた速水がついに口を開いた。
「そこまでだ、沼田さん。辞表を叩きつけたばかりだから黙っていようと思ったが、そこまでうちのスタッフを悪しざまに言われては、これ以上我慢できない」
速水はひと息吸い込むと、沼田に向かって一閃、言い放つ。
「あんたにはこの場で発言する資格はない。告発文書のオリジナルは、エシックスの沼田委員長の手元に届けられているはずなのだから」
「何を言い出すんです、速水部長」
平然と答える沼田を見て、速水は続ける。
「あんたは受け取った告発文書を握りつぶした。おそらく、どう対処すれば一番有利か、>計算したのだろう。沼田さん、あんたが出した結論は最もタチが悪いやり方だ。裏で三船事務長に情報を流して赤字のオレンジを潰す。違いますか?」
「そんな文書、受け取った覚えはありません」
沼田の顔が蒼白になる。「何を根拠に、そんな侮辱を……」
「事実だからだ。証拠はある」
速水は胸ポケットから封筒を取り出す。
「沼田委員長に送った告発文のコピーだ。これは、確実にあんたの手に渡っているはずだ。俺は、このコピーを三船事務長から見せられたぞ。それは沼田さん、あんたが差配しなければ、決して起こらない事態だ」
「どうしてそんなモノを速水部長が持っているんですか?」
震える声の質問に、速水はからりと笑って答える。
「簡単さ。告発文書をエシックス委員長に送りつけたのは、俺自身だからだ」
第三会議室を、沈黙が覆い尽くした。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』29章 エシックスの終焉 本文 速水晃一 沼田泰三 より
田口は速水を見つめて尋ねる。
「黒崎教授の勧告に従うつもりはありませんか」
「ありません」
速水は答える。田口は諦めたように、肩をすくめた。
「それでは高階病院長、御判断をお願いいたします」
田口に促され、高階病院長が口を開きかけたその時、議場の後方から鋭い声がした。
「待ってください」
一斉にみんなが振り返る。立ち上がったのは、速水の腹心、助手の佐藤だった。
「こんな形で速水先生の受理するおつもりなんですか。そんなバカな。滅茶苦茶だ、そんなの。私は断固主張する。速水先生は罷免されるべきです」
一同驚きの表情で、佐藤を見た。佐藤は周りが一切眼に入らない様子で、ただ、速水だけを見つめて、続けた。
「皆さんはオレンジの惨状をご存じないから、勝手な議論ができるんだ。速水先生おひとりのために、周囲はどれほどの緊張を強いられていることか、速水先生が喪われそうになった命を引き戻せば戻すほど、救命救急病棟は緊張が高まる。普通の救急センターならとっくに亡くなっている患者が、ここでは死なない。途切れそうな命の糸をぎりぎりで紡ぎ続けなければならない緊張。これが毎日延々と続くんです」
佐藤の言葉が迸る。タガが外れたかのように、一気呵成に話し続ける。
「おまけに速水部長は経済観念ゼロ。神がかりの医療を支えるため、湯水の如く注ぎ込まれる医療費のつじつま合わせは全部他人任せ。それが私の仕事です。五十嵐副部長が体調を崩したのもそのストレスからです。なのに速水部長だけ賞賛され続けるなんてどうかしてる」
佐藤は激した口調で続ける。
「先ほど沼田先生は告発文書を提出したのは私ではないか、と勘繰られました。もちろん、私は犯人ではない。ですが、告発文書を眼にした時、ひょっとしたらこれは自分が書いたものかも知れないと感じてしまった。そう思えるなら、それは私が告発したのと同じです」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』27章 ジェネラルの退場 本文 田口公平 高階権太 速水晃一 佐藤伸一 他 より
佐藤は速水から視線を外さない。
「速水部長は命を救う天才です。だけど組織維持の面から見れば、ワガママな三歳児のような人だ。そんな人が辞表を提出し、批判も受けずに賞賛されつつのうのうと辞めてしまうだなんて、とても耐えきれない。部下として、そしてオレンジに残された敗戦処理担当者として言わせていただきたい。私、佐藤は副部長代理として断固、速水部長の罷免を要求します」
長年積もり積もった想いを、一気に吐き出し、佐藤は肩で息をつく。
「まだまだだな、佐藤ちゃん。いつも言ってるだろ。救命救急医はいかなる場面でも決して激してはならないってさ」
速水は続ける。
「さっきの言葉、ほとんどすべての点で佐藤ちゃんの主張は正しかった。見事だったが、最後にひとつ間違えた。それも一番肝心のところを。惜しいな、佐藤ちゃん。いつも最後でずっこける」
速水はからりと笑う。佐藤を穏やかな眼で見つめて、続けた。
「佐藤ちゃんは、俺がワガママだから、部長を名乗るのをおこがましいと言った。だが、それこそトップというものだ。よく覚えておく」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』27章 ジェネラルの退場 本文 速水晃一 佐藤伸一 より
速水は、視線を高階病院長に転じる。
「救命救急センター副部長代理、佐藤医師から同部長速水に対し罷免動議が提出されました。本来、教授会での討議を要する事案でありますが、センター部長である速水が辞表提出下であることを鑑み、迅速な対応を要します。当院における後任候補選出を早急に行うため、明後日、辞表案件及び罷免請求事案のご検討を、部長権限において高階病院長に委託いたします」
一気に言い終えると、速水は佐藤に言い放つ。
「というわけだ、佐藤ちゃん。明後日、オレンジの後継者としてふさわしいかどうか、口頭試問を行う。黙っておとなしく辞めてやろうかと思ったが、気が変わった。そんなに俺のクビが欲しいなら、さっさと自分で取りにきな」
速水は佐藤を見つめた。それから深々と礼をして、その場を後にした。後に残された面々は、呆然とその後ろ姿を見送った。
主役の退場により、張りつめていた場の緊張が解けた。参集していた人たちが散会していく。そんな中、高階病院長が田口に歩み寄ってきて、小声で言った。
「こうやって頭ごなしに指図されてみると、確かにむかつきますね。黒崎教授の気持ちが少しわかったような気がします」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』27章 ジェネラルの退場 本文 田口公平 速水晃一 佐藤伸一 高階権太 より
グレーのモニタ群を眺めていた速水は、ふと左端のテレビに目を落とす。その瞬間、深海魚の生態を映していた画面に、一筋のテロップが流れた。
『桜宮バイパスで多重事故。タンクローリー炎上中』
速水は画面から視線を切らずに、マイクのスイッチを入れる。
「佐藤副部長代理、外電、入ってる?」
電子変換された佐藤の声が答える。
「いえ、入っていません」
「ふうん、そう」
腑に落ちない、という顔で、速水はモニタ群をぼんやり見つめる。
すべてのモニタが、真っ赤に炎上していた。
再び、スイッチ・オン。速水の声がICU病棟に響く。
「オレンジ・スクランブル(緊急事態)。第二種警戒態勢に入る。今から救命救急センター長の権限をもって、オレンジ新棟全体にスタッド(緊急召集)をかける。副部長代理はトリアージ(患者重傷度分類)の準備。看護師長はオフ・メンバーを可能な限り呼び出せ」
モニタの中でばらばらに蠢いていた看護師、一斉にモニタ越しに速水の姿を見つめた。
サイレンも電話連絡もない。だがICUのスタッフは誰ひとり、速水の判断を疑ってはいない。なぜなら速水は絶対専制君主、救急現場という名の戦場の軍神、血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)なのだから。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』28章 カタストロフ 本文 速水晃一 佐藤伸一 モニタに映る看護師たち より
ホールは戦場だった。熱傷の患者が圧倒的に多い。運び込まれた患者は、一様に洋服が黒こげで、うめき声を上げていた。佐藤の声が響く。
「病棟から生食ボトルと包帯をありったけ持って来い。熱傷は意識レベルを確認して、生食で傷を洗浄、とりあえずガーゼをかぶせておけ」
ふと気づくと、姫宮が四色のカードを手に、うろうろしている。見ると、手早く患者を色分けしている。ちらりと見て、判断が妥当であることを部分的に確認し、二人の研修医に命じる。
「トリアージ・レッド最優先。次に黄色。青と黒は放置。姫宮はトリアージを続行」
姫宮は顔を上げ、こくりとうなずく。黒、黒、赤、黄、赤、青、青、黒。姫宮は手際よく、トリアージ・タッグを患者の上に投げかけていく。その判断の正確さとスピードに舌を巻きながら、佐藤は呟く。
「コイツ、一体何者なんだ?」
だがすぐに、目の前に押し寄せる患者の奔流が、佐藤から雑念を消し去る。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』28章 カタスロフ 本文 佐藤伸一 姫宮香織 より
速水は部屋を飛び出し、階段を駆け上がる。オレンジ新棟の屋上ヘリポートからは、遠く水平線まで見通すことができる。碧翠院桜宮病院の貝殻の上空が真っ赤に爛(ただ)れていた。数羽のヘリコプターが鳶(とび)のようにゆるやかに旋回している。張りつめた神経の弦には、ヘリコプターの羽音が耳障りだ。
速水は拳を握る。両腕を一杯に広げ虚空を抱き止め、蒼天に向かって怒号を上げる。
「取材のヘリは飛ぶのに、ドクター・ヘリはどうして桜宮の空を飛ばないんだ」
血まみれの白衣が肩から滑り落ちたのにも気づかず、ジェネラル・ルージュ、速水は虚空に向かって吼え続ける。救命救急の虎の咆哮を意に介さず、ヘリコプターは桜宮の夕空を優雅に旋回し続けていた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』本文 28章 カタスロフ 本文 速水晃一 より
「では、リスクマネジメント委員会に提出された救命救急センター速水部長の辞表は不受理とします。速水部長には本委員会による処罰を受けていただく必要がある」
速水は唖然として田口は見た。
「何を言ってるんだ、行灯?」
田口は速水の問いかけを無視して、手元の鞄からノートを取り出す。花房師長が提出した赤いノートだ。
「速水部長、先日あなたは個人的供与は一切受けていない、とおっしゃっていました。すべては病院の経費を捻出するため。だとすれば、当リスクマネジメント委員会が裁くべきは速水部長ではなく病院の医療経営システム、ということになります。その点に関しては後日、改革案として病院長に提出することで代替します」
高階病院長はぼんやりとうなずく。田口は続ける。
「問題は、速水部長が個人的に利益供与を受けていた場合です。この場合、個人の倫理問題が生じ、リスクマネジメント委員会として勧告を行うことになる。その場合、勧告を受諾しますか、速水部長?」
速水は笑う。
「天地神明に誓って、自分用の経費は一切つけていない。そうでないという証拠でもあったら、行灯、いや田口委員長の勧告に従うさ」
田口はにっと笑う。その笑顔に速水の古い記憶が呼び覚まされる。卒業記念麻雀の最終局での国士無双。大逆転の手を上がったあと、田口はずっと申し訳なさそうな顔をしといた。だが、速水ははっきりと思い出した。百パーセント安全だと信じて疑わなかったラス牌の紅中が、速水の手牌からこぼれ落ちた瞬間、田口は今日みたいに、にっとわらった。絶対にそうだった。
速水の背中に冷や汗が一筋流れた。
田口は付箋をつけたページを開く。一同、ページを覗き込む。速水の顔が、みるみる青ざめる。
「こ、これは……」
そこには『四月分チュッパチャプス代金千二百円六十円也』と記載された領収書が添付されていた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』29章 口頭試問 本文 田口公平 速水晃一 佐藤伸一 高階権太 より
田口は速水から視線を切らずに言う。
「救命救急センター速水晃一を本日付けで部長職より降格、今後三年間、病院長が指定する業務に従事することで、東城大学に対する背任行為の責を果たしてもらいます。ただし……」
そこで言葉を切って、速水の顔を見つめる。しばらくして、田口はつけ加えた。
「着服額が少額であることと、速水部長が当院に対し長年行ってきた多大な貢献を併せ考え、仮に速水部長が本勧告を無視し自主退職したとしても、当院としては公的訴追をするつもりはありません。速水部長、この処分を受諾しますか、それとも拒絶しますか」
速水はうめく
「行灯、てめえ……」
速水の様を見ながら、田口が呟く。
「お前は昔から、肝心のところで勝負弱かったよな、速水。だからラス牌の中(チュン)で国士無双にぶちこんだりするんだ」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』29章 口頭試問 本文 田口公平 速水晃一 より
どれほど時間が経過しただろう。ふと、速水がひと息ついた。
「さて、それではこのケースはどうする?」
語調の変容に、佐藤は次の言葉を待つ。いよいよ大詰めの気配を感じ取り、傍観者と化していた高階病院長と田口は緊張する。速水は眼を閉じて、腕を組む。やがて静かに語り出す。
「救急搬送されたのは三歳児、DOA。体表に傷はなく、死因不明だが両親は解剖に応じようとしない。あまつさえ、解剖を勧めた病院を訴える、とまで言う。さて、どうする?」
佐藤は、考え込む。それから速水の表情を確かめながら、ゆっくり答える。
「両親の感情を刺激しないように、まずCTで事前検査をして死因探求を目指します」
その場にCTがなかったら?」
佐藤はぎょっとしたような表情になり、考え込む。そして顔を上げて答える。
「解剖を勧めます」
「両親は解剖に反対しているんだぞ」
「何が何でも、解剖を取ります」
「何が何でも?それでも取れなかったら?」
「解剖して、もしも異状がなかったら私が全責任をとって辞職しますから、と言って説得します」
佐藤の言葉に、高階病院長と田口が驚いて、顔を見合わせる。速水はにやりと笑う。
「勇ましいな、佐藤ちゃん。それでは覚悟の程を聞かせてもらおう」
そう言って速水は佐藤を見つめて笑う。
「説得が功を奏し解剖が取れ、その結果、問題所見が発見されなかったら、その時はどうする?」
佐藤は速水を見つめ返す。二人は沈黙の海に沈み込む。
「……バックれます」
「え?」
「しらばっくれます。死因に問題ないことが判明してよかったですね、と両親に告げて、その場でごまかします」
場が静まり返った。やがて、速水がくっくっと噛み殺した笑い声を上げ始める。その声は次第に大きくなり、やがて部屋いっぱいに満ちた。
「合格だよ、佐藤ちゃん。見立てのひとつやふたつ外れたくらいで、いちいち辞表を提出していたら、救急医なんてこの世界からひとりもいなくなっちまう」
そう言うと、速水は佐藤の顔を見つめて続けた。
「それは責任感が強い、というんじゃない。そういうのは“へなちょこ野郎”っていうんだ」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』29章 口頭試問 本文 速水晃一 佐藤伸一 田口公平 高階権太 より
速水は立ち上がり、高階病院長に告げる。
「佐藤副部長代理は、次期救命救急センター部長への推挙に値する人物であると認めます。前任者の権限にて、彼を次期部長候補として、ここに推挙します」
言い終えると速水は、高階病院長と田口に向かって深々とお辞儀をした。
「これが東城大学救命救急センター部長としての、最後の仕事です。長い間お世話になりました」
頭を上げ、佐藤に言う。
「佐藤ちゃん、他大学からの競争相手は自力で闘え。なに、心配はいらない。俺に正面切ってたてつくことができれば、誰にも負けはしないさ」
速水は、踵(きびす)を返し部屋を出て行った。
呆然としていた三人は、扉が閉まった音を聞いて我に返る。佐藤があわててお辞儀をしてから、速水の後を追って出て行く。
残された高階病院長と田口はソファに沈み込んだ。
高階病院長は田口を見、満面の笑みを浮かべる。
「お見事です。ババの引き方などはさすがに手慣れたもの。お上手でした」
田口は、げんなりした顔で、高階病院長を見つめる。
高階病院長は続けた。
「それにしても、セコい手を考えついためのですねえ」
のんびりした高階病院長の口調を耳にして、田口はゆっくり笑顔になった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』29章 口頭試問 本文 田口公平 速水晃一 佐藤伸一 高階権太 より
速水は三船に言う。
「ドクター・ヘリ構想を潰したくて仕方なかったあんたのことだ。さぞかしほっとしただろう」
速水の言葉に、三船は強く首を振る。
「いいえ、無念です」
速水は驚いて、尋ね返す。
「今さら何を言っているんだ?」
三船は、懸命に速水に訴える。
「私は病院経営の観点から、導入は不可能だと判断しました。だけどそれは、ドクター・ヘリを導入したくない、ということではないんです。個人的にはドクター・ヘリを導入できればどんなにいいだろう、と思っていました」
「まさか」
「本当です。ドクター・ヘリが桜宮の空を飛ぶのを、この眼で見てみたい。そのために速水先生に自分が打ち破られることを、心の底では密かに望んでいたんです」
三船の言葉に黙り込む速水。しばらくして、ぽつりと言う。
「それなら佐藤ちゃんに協力して、実現してやってくれ。アイツは俺よりも現実で、ずっと誠実で、そして何よりも、俺よりもずっとずっと粘り強いからな」
三船はうなずき、会釈した。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』終章 岬 本文 速水晃一 三船事務長 より
速水の問いかけを意に介さず、姫宮は桃色眼鏡のブリッジを押さえて、言う。
「実は私、看護師ではありません。医師免許を持っていますので、れっきとした医師です。今回は私の所属する組織から命じられ極秘ミッションのために、看護師としての研修が必要になりました。そのため、直属の上司が無理矢理高階病院長に頼みこんで、ICUにお邪魔することになりました。私なんか、もっとのんびりしたところでないかと心配していたんです。だけど、おかげさまで、何とかやっていけそうだ、という自信がつきました」
そう言うと姫宮は、はっとした顔をして、両手で口を押さえた。
「あ、いけない。肝心のことを言い忘れてました。私の正式な肩書きは、厚生労働省大臣官房秘書課付医療技官、それから医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長……」
そこまで言うと、姫宮は息が切れたのか、ひと息つく。それから、ぽつんとつけ足した。
「……ホサです」
「……ホサ?……ああ、補佐のことか」
そう言ってから、速水は首をひねる。
「お前の肩書き、最近どこかで聞いた気がするが……」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』終章 岬 本文 速水晃一 姫宮香織 より
「本当に知らなかったのね。その調子だと看護師が師長になるために経験しなければならない四つの節目のことも知らないでしょう」
花房はうなずく。
「ええ、知りません。教えていただけますか?」
「それはね、“生・老・病・死”、それぞれの看護を経験することよ」
「“生・老・病・死”ですか?」
猫田はうなずく。
「“生”の看護は、命を生みだし育む看護よ。産婦人科と小児科ね。“老”の看護にはお年寄りや障害者介護が含まれている。“病”は言うまでもなく、通常の看護ね。同じように、死に際しても看護は必要なの。死者にまで看護の領域が拡張されなければ、真の医療には到達できないの。それが“死後看護”。」
猫田は表情を曇らせる。
「死後看護は、死をタブー視してきた医療現場ではおざなりに扱われてきた。でも考えてみて。死んだ後まで看護してもらえると思って初めて、人はよりよい生を送ることができるのではないかしら」
猫田は遠い眼をして呟く。
「二年前、オレンジ・ドラフト会議であたしが浜田小夜を選んだのは、彼女が日本では珍しく、“死後会議”の経験を豊富に持っていたからよ。彼女に小児科病棟で、“生”の看護を叩き込めば、あとの二つはどこでも経験を積める。あたしは、真の看護の体現者を育成したくて浜田を選んだ。でもどうにもならない因縁があって、彼女はここに留まれなかったのだけれど」
猫田はため息をついた。「……本当に、残念なこと」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』終章 岬 花房美和 猫田麻里 より
「それにしても、今回は白鳥調査官はおとなしかったですね」
田口は笑う。
「そうでもなかったんですよ。エシックスやリスクマネジメント委員会では、ロジック・モンスターぶりは健在でした。でもリスクマネジメント委員会が終わった後、こう言ってました」
田口は咳払いをして、白鳥の口調を真似る。
「目の前で理想と仰ぐアクティヴ・フェーズの進化型、アグレッシヴ・フェーズのお手本を見せられては、僕の出番はありません……」
田口はひと息ついて、笑う。
「……だそうです。速水とのつき合い長かったおかげで、私もこれまで白鳥調査官と何とかやってこれたのかも知れませんね」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』終章 岬 本文 田口公平 藤原真琴 白鳥圭輔(回想・田口の口真似) より
田口は野村を見た。野村は続けた。
「現実的なアドバイスをひとつ、差し上げましょうか。日本は起訴至上主義でして。微罪は起訴の時点でかなり酌量されます。たぶん田口先生が懸念されている件は、私のカンでは重く見積もっても起訴猶予にすらならないでしょうね」
それから野村はぽつりっ呟く。
「速水先生や島津先生は論理というものを頭からバカにしていらっしゃる。確かに論理はまだ、ひ弱なヒナ鳥だ。その鳴き声は小さく、翼は伸び切っていない。だが、忘れてはならない。長年、医学研究の美名の下に患者不在の傲慢な研究が数多くなされてきた。被験者である患者の人権は護らなければならない。だから倫理委員会は絶対に必要なんです。だから、何から何までケチをつければいいといいものでもない。研究結果から利益を受けるのもまた患者なのですから」
そこで言葉を切ると、野村は空を見上げる。つられて田口も天を仰ぐ。強い風が、層雲を吹き散らしている。
野村は、言葉を続けた。
「速水先生のような方を裁くことができるのは論理ではない。それは恐らく……」
言葉が途切れた。田口が視線を天から地に戻すと、野村弁護士は片手を挙げてタクシーを止めていた。野村は車に乗り込む。
走り去る車に向かって、田口は深々と頭を下げた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』終章 岬 田口公平 野村勝 より
----どうしてあなたはこの街を去るのですか、賢人よ。
街人よ。私はこの街にうみ疲れただからだ。
----なぜお疲れになってしまったのですか。
この街の人々は、私の知によって利を得ている時はその恩を語らず、私の間違いにより害を得た時には声高く責め立てるからだ。
----賢人よ。その声に応えることは、優れているあなたの責務ではないのですか。
賢人は街人を見て、微笑む。
街人よ、あなたから見ればその通りであろう。だが、あなたに従えば、この街で私は滅びる。私が滅びたら、その時は世界も滅びる。だから私がこの街を去ることは、この世界のためなのだ。私がこの街を去れば、私は自分の身を守ることができる。
----生まれ育ったこの街を、私利私欲のために捨てるとおっしゃるのですか。
違う。この街を去れば私は、私を大切にしてくれる新しい街で、生き永らえれであろう。そうすれば、私は別の街でこの世界の一部を救い続けることができる。それは世界のためであり、そのためには、たとえこの街が滅びようとも仕方がない。
その言葉を聞いて、街人は賢人に跪く。
----賢人よ、どうか今一度、私たちに希望をください。
賢人は目を閉じ、考え込む。やがて厳かに言う。
街人よ、ならば一夜の猶予を与えよう。明朝までこの街の家の窓という窓すべてに、ミモザの花をいっぱいに咲かせてほしい。その光景を見たら思い直してもよい。
----季節はずれの花で、この街をいっぱいにしろなどと、そんな無理を言うなんて、この街に留まるつもりがないから、意地悪をおっしゃるのですね。
そうではない。これは、街人が私に求め続けてきたことと同じことを、最後に私の方から街人にお願いしてみただけのことなのだ。
翌朝、街人は、賢人がその街を去っていくのを、黙って見送るしかなかった。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』序章 賢人と街人 本文 より
隣に建設中の建物を見上げる。桜宮市に初めて出現する超高層ビル。桜宮丘陵の頂上に建設される二十階建ての超高層病院だ。新病院の通称は『ホワイト・サリー』。ビートルズのナンバー、『ロング・トール・サリー』のもじりだろう。のっぽビルにサリーなどという洒落た愛称をつけるセンスは、それ以外に思い浮かばない。
『サリー』の売りは、上層階にVIP病室を多数設置した点だ。十二階以上すべてが現在本館神経内科病棟に一室だけ存在するVIP特室『ドア・トゥ・ヘブン』と同じ状態になる。
希代の名院長と謳われた佐伯清剛・総合外科学教授が教授会の反対を押し切って設置した鬼っ子の特室が、スタンダードとして桜宮のスカイスクレイバーに君臨する。
何が正しくて、何が間違っているのか。俺は自分の座標を見失いそうになる。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』4章 廊下トンビの献身 本文 田口公平 より
「それにしても、最近の救急患者の増加は異常だな」
「いっときより、かなり増えている気はしますけど、どうしてかなあ」
首をひねる兵藤に、部屋の隅の椅子に座って話を聞いていた藤原さんが、言う。
「長期療養のお年寄りを自宅療養に切り替えるため、厚労省が医療制度を作り直したからですよ。それまで病院で看取ってた入院患者が家に帰され、亡くなる直前に容態が急変すると、救急患者として戻ってくる。それで救急患者が増加したんです」
「なるほど。死ぬ前の患者が全員救急患者になってしまうわけですね。そりゃ大変だ」
これも、医療費削減を近視眼的視野で断行した厚労省の失政だろう。
「患者さんの不定愁訴外来が、医療従事者の不定愁訴外来になってしまいましたね」
藤原さんの言葉に、俺と兵藤は顔を見合わせ苦笑した。俺はしみじみ思う。
“無為無策”というのはそんなに悪いことではない。現実にはその下があるからだ。
それは“有為愚策”だ。
大きくなったサイレンの音が、窓から見える木立の向こう側で、消えた。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』4章 廊下トンビの献身 本文 田口公平 藤原真琴 兵藤勉 より
西郷は珈琲を飲み干し呟いた。俺は、スプーンの生クリームをなめながら尋ねる。
「西郷先生は、法医学を志して何年目ですか?」
「足かけ十年、です」
三十代半ば、見た目と実年齢が合致するタイプ。
「どうして法医学を志したんですか?」
西郷はにんまりと笑う。
「教授になりたかったんですよ」
異次元の生物を見るような視線で、今の世に、教授というしち面倒くさいものになりたい人種が残存しているとか。なんて酔狂なヤツ。だが俺には、本当は自分の方が妙な存在だという自覚はあった。
西郷は続けた。
「教授になるためには、競争相手が少ない分野の方が有利。その観点から見ると、法医は競争率が低く、教授成就率が高いんですよ」
「基礎医学の系列は、どこも同じでは?」
「もっと楽に見えても業績を挙げなければダメ。法医学教室は司法解剖に邁進(まいしん)していれば必ずどこかの教授になれる。確実性はナンバーワンです」
それがこの若さでこの教授就任に繋がったわけか。西郷の用意周到さに感心する。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』11章 上州大学法医学教室教授・西郷綱吉 本文 田口公平 西郷綱吉 より
だが、俺はハナだけはそこそこいい。何しろ魑魅魍魎渦巻く大学病院で曲がりなりにも二十年近く在籍し続けているのだから、俺は、西郷の呟きに重要な秘密の鍵があることを嗅ぎ当てた。だが今回は深追いする時ではない。
代わりにひとつ質問を投げる。
「あの、初めて会った人に必ずする質問があるんですが、お尋ねしていいですか?」
西郷は首を傾げ、どうぞ、という表情をする。俺は尋ねる。
「西郷先生のお名前の由来を教えてください」
西郷は一瞬考え込んで、言う。
「綱吉は、僕が生まれた時にオヤジが可愛がっていた土佐犬の名前です。僕が生まれるのと前後して死んだので、僕は綱吉の生まれ変わりだ、と言っていました」
犬の名前をつけられたのか。これは初めてのパターンだ。だが、土佐犬と言われれば、そう見えてくるから不思議なものだ。
西郷は明らかにつけ加える。
「ちなみに綱吉は、土佐闘犬界では生涯無敗、永世横綱だったらしいです」
白い綱を巻いた土佐闘犬の姿と、目前の西郷が一瞬重なる。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』11章 上州大学法医学教室教授・西郷綱吉 本文 田口公平 西郷綱吉 より
田上医師、警察官ふたり、加納警視正、白鳥室長、そして俺の六人が見守る中、遺体CTが施行された。スライスが胸部にたどりついた時、俺たちの目の色が変わった。
白鳥が呟く。「肺が水浸しだね」
「死因は溺死だな」と、加納警視正が俺を見て、続ける。
「死因は陸(おか)の上にあった。間違いないな」
俺はうなずく。加納警視正はふたりの警察官を振り返ると、言った。
「これはコロシだ。直ちに捜査本部を立てる。いいな?」
それから田上医師を横目で見ながら、言う。
「この遺体は司法解剖に回す。直ちに横浜港湾大学の法医学教室へ搬送」
ふたりの警察官が身を縮めてうなずく。加納警視正は吐き捨てる。
「陸の上の溺死、ねえ。こんなもんに心不全だなんて診断書を平気で書くもんだから日本はコロシ放題の国になっちまったんだ」
警察官ふたりが遺体の搬送に取りかかる中、田上医師は、加納警視正の言葉に突き刺されたかのように、ぴくりとも動かなかった。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』16章 東京都23区外の死体 本文 田口公平 白鳥圭輔 加納達也 田上医師 警察官ふたり より
白鳥は目を細めて、ぽつりと言う。
「科学捜査を標榜しながら、画像ひとつ標準化できないんだから」
加納警視正は煙草を投げ捨てて白鳥に言い返す。
「その点は、ひとこと言いたいね。お前のお膝元、厚労省だっていまだにエーアイを認知しようとしないのはなぜだ。費用もつけない。費用がつけば、死亡診断書記載の際の義務化だってできる。担当の医療安全課は何をぐずぐずしてるんだ?警察庁(ウチ)はお前に言われてから俺が細々始めたのに、こっちが先に予算をつけちまったぞ」
白鳥はため息をつく。
「仕方ないよ。だって厚労省には新しいものを作る気概はないんだから、医療事故調の設立だってどうなるやら」
加納の眼が光った。
「そうか、やっと医療事故調が立ち上がるのか」
すかさず俺は、昨日の会議で聞きかじった知識をもっともらしく披露する。
「そうなんです。それで、白鳥室長の『モデル事業』はお役御免になったらしいですよ。なんでも医療安全啓発室というところがやるらしいです」
何となく気持ちがよく、いつもウワサを運んでくる兵藤の気持ちが少し理解できた。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』17章 湾岸線の夜明け 本文 田口公平 白鳥圭輔 加納達也 より
目を細める。
ボストンバッグを両手に提げ、小柄な女性が佇んでいた。ほっそりした身体を包むのは薄紫のコート。グレーのつば広帽子に細かい雨粒を真珠のように飾りつけている。
「来たのか」
帽子を目深にかぶった女性は、目を合わさずに、言う。
「戻れ、と命じられましたので」
「クリフが伝えたのか」
女がうなずく。彦根は目を細める。
「バカなヤツ。僕なら絶対に伝言なんか伝えない」
女は顔を上げ、まっすぐ彦根をにらむ。次の瞬間、白く華奢な手が彦根の頬を打つ。
華やかな音に、異国の人々が振り返る。短い指笛と含み笑いと共に、ふたりの傍らを通り過ぎていく。
女はひとこと、言い放つ。
「人の心をもてあそぶのはやめてください」
打たれた頬を押さえて、彦根は微かに笑う。
「クリフに口説かれたか、シオン」
シオンは小さく首を振る。
「あの人は紳士(ジェントルマン)でしたから」
「そうか、それはよかった」
佇むシオンの肩に手を置き、彦根は言った。
「では帰ろうか、シオン。いざ黄金の国、そして汚濁の国、ジャパンへ」
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』24章 ミラージュ・シオンの帰還 本文 彦根新吾 桧山(ひやま)シオン
懸命に復帰の道を模索する葉子の脳裏に、ひとつの言葉が浮かび上がる。
「あの、警察医の現場にエーアイがあったらどうなっていたと思いますか」
須永医師は首をひねる。
「エーアイ?何だね、それは」
「死体の画像診断です。現場での判断材料に画像診断を使えたら、須永先生の心労もかなり減るのではないでしょうか」
葉子の言葉に、須永医師は遠くに視線を投げた。
「そうか、今ではエーアイというのか。私も十数年前、警察にCTを使わせてもらいたいと頼んだが、費用は出せない、と断られて以降、考えもしなかった。あの時そうなっていれば、今回の事件も未然に防げただろう。だが、もう遅い」
最後は自分に対する呟きのように、須永医師は大きく伸びをした。
「散歩に出るから、このあたりにしてもらおうか。記事は勘弁してくれ。警察医資格の取り消しは、今の私にはむしろ有り難い。今となっては、ただ、静かに暮らしたい」
葉子は肩をすぼめ、診察室を後にした。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』26章 警察医・デッドエンド 本文 別宮葉子 須永医師 より
白鳥はため息をつく。高嶺が言う。
「短期決戦だから、心してかかろうぜ。それにしても、確研カルテットが一堂に会するなんて、な」
「確率研究会、略して確研か。ひどい集まりだったね」
高嶺は立ち上がりながら続ける。
「俺が不思議なのは、お前みたいなバリバリの合理主義者が、どうして坂田局長みたいなおバカな人の下にいるのかってことだ。よく我慢できるな」
白鳥は笑う。
「それは誤解だよ。坂田さんはバカじゃない。アホなんだ」
どこが違うんだ、とむっとした口調の高嶺に、白鳥は目を細めて答える。
「アホじゃなければ、僕の上司は務まらない。局長でありながら、次官になりたいのは自分をバカにした連中を見返すためだなんて無邪気に本音を語れる人が他にいるかい?僕に出世欲はないけど、出世を目標に掲げる人をバカにはしない。組織の中で生きるならその方が健全さ。そんな心を無理に隠そうとするから、霞ヶ関の連中は性根が歪んでしまうんだ」
「お前が無能にそこまで寛容だとは、初めて知ったよ」
白鳥は笑う。
「無能には二通りあるんだ。害悪な無能と、役に立つ無能。前者がバカで後者がアホ。もっとも財務省にいたら、無能という言葉自体が死語なんだろうけど」
「それなら俺を支持しろ」。俺はいずれこの国のトップになるんだから」
「相変わらず格好いいね、高嶺」
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』27章 プリンス高嶺 本文 白鳥圭輔 高嶺宗光 より
昼飯時の『満天』は満席だった。ランチセットを注文した俺が会計を終えて振り返ると、彦根はすでに窓際のテーブルを確保し、俺に手招きをしていた。
----これじゃあ、どっちの勤務先かわかりゃしない。
俺は苦笑する。煌めく才覚は日常のささいな挙動にも見てとれる。その行動は早く、そして明晰だ。そういえばコイツは昔からものおじしないヤツだった。
雀荘に入り浸っていた学生時代の俺たちは『すずめ四天王』と呼ばれていた。他の面子放射線科准教授・島津と救命救急センター部長の速水。そこにこの彦根と俺を加えた四天王で打った、卒業記念麻雀を思い出す。最下位独走中の俺がオーラスで一矢むくい、速水をトップから引きずり下ろした。だがその局のトップは、面子の中でただひとりだけ卒業とは無関係の、二学年下の彦根だった。
彦根とは、そういうヤツだった。
(略)
「検討会で知り合った法医学者にも同じことを言われた。外からはそう見えるんだな」
「その法医学者って、ひょっとして西郷教授ですか?」
俺がうなずくと、彦根は嬉しそうに言う。
「西郷教授とも面識があるなら、話は早い」
世界の輪がひとつ縮まった。世界は有限で思っているほど広くはない。誰でも六つのコネクション・リンクをたどれば、米国大統領にさえたどりつけるという話を聞いたことはあるが、医学の世界は狭く、リンク三つで知り合いの庭にたどり着く。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』28章 遠来の旧友 本文 田口公平 彦根新吾 より
「今の話が本当なら、お前は信頼してくれた仲間を売って、自分が望むポジションを手に入れたように見えるが」
彦根はうっすらと笑う。
「はたからそう見えても不思議はないです。でもそんなことはない。医師会でこんなポジションを取ることなど、僕の性格とは合わない。田口先輩なら理解してくれますよね?」
「まあな。だが俺の知る彦根は、医師のストライキのフィクサーなんて大それたことをするようなヤツではなかった」
彦根は笑う。
「僕が上昇志向にあふれ、腹黒く動くとウワサするのは、道理がわからない連中です。だけど先輩にはわかってもらえるのでは?いや、先輩にしか理解してもらえないかも。バチスタ・スキャンダルでただひとり、リスクマネジメント委員会委員長という要職を手に入れた『焼け太りの田口』という世評を得ている先輩にしか、ね」
ぐうの音も出ずに黙る。相手のふところに踏み込んだ説得法。そういえばコイツは合気道部だった。相手の力を用いて投げ飛ばす。見事な切れ味だ。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』29章 フィクサー・ヒコネ 本文 田口公平 彦根新吾 より
小倉委員は肩をすくめた。彼の胸に渦巻く憤りはきっと、俺の中にあふれる疑念と同じだろう。
----この事故調は、何のため、そして誰のために作られるのだろう。
西郷が俺に教えてくれた、解体される社会保険庁を失職する職員の受け皿施設、という言葉が脳裏をよぎる。さすがに口には出せなかったが、その憤りのおかげで忘れかけていた任務を思い出す。場を見回すと、まるで天があつらえてくれたかのようなチャンスボールが目の前を転がっていた。議論が噴出し、熱し過ぎた時に発生する一瞬の沈黙のはざま。
----解剖を土台に置けば、解剖制度は崩壊していますから。
彦根の言葉が脳裏をよぎった瞬間、俺はマイク・スイッチを入れた。
「解剖主体の制度設計に無理があったんです。ここで新しい手法を提案します」
田島座長と八神課長の視線のホットラインが行き来する。ふたりの意志は即座に一致、俺の発言の封殺を決定。だがアイ・コンタクトでは実働部隊の発動はできない。
一瞬のエアポケットの中、俺が蹴り込んだボールは、ゴールネットを揺らした。
「解剖の代わりに、エーアイをベースに置いた制度を構築すればいいんです」
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』30章 田口、奮闘す 田口公平 彦根新吾(回想) 小倉勇一 田島勇作 八神直道 より
俺はふと尋ねる。
「白鳥調査官は携帯が大嫌いのはずだが、よく持たせることができたな」
「そうか、それでか……」
彦根は呟くと、顔を上げ、俺に言う。
「終わった後で、まるで一刻も早く手放したいと言わんばかりに投げ返してきたから変だなとは思ってたんだけど、白鳥さんって実は携帯アレルギーだったんだ」
さすがは病理医、たった一言で、白鳥の病状を診断してしまう。彦根はくすりと笑う。
「実はもうひとつ妙なことがありまして、白鳥さんから携帯を返してもらってからというもの、携帯の『圏外』表示がなぜか『論外』になってしまうんですよ」
俺と彦根は顔を見合わせて、黙り込む。次の瞬間、ふたりして大笑いした。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』終章 海風の行方 本文 田口公平 彦根新吾 より
彦根は笑って答える。
「白鳥さんはモンスター官僚ですからね。でも、もっと手強いのは、官僚という名のモンスターです。白鳥さんの本当の敵は案外、身内である彼ら一般官僚なのかもしれません。だったら僕たちはその突然変異の力をうまく利用するに限る」
俺は、その表現の妙に、ふと笑う。
「なるほど、毒を以て毒を制すか、か。モンスター官僚の最大の敵は、官僚という名のモンスター、というわけかもしれないな」
俺の呟きは、たいそう彦根のお気に召したようだった。
「今の言葉を聞いて、なぜ僕が、無礼で傲岸な白鳥さんにシンパシーを感じてしまうのか、わかった気がします。官僚の鬼っ子である白鳥さんの敵は、僕たちの敵。共通の敵を有しているから、味方だと勘違いして近しく感じてしまうのだな」
俺は思わず言う。
「今の台詞を聞いたら、白鳥調査官は気味悪がるぞ。『悪いけど僕たちって言うのやめてくれないかな。ロジカル的には納得できるけど、どうも胸がもやもやする』くらい言いそうだ」
白鳥の口調を真似た俺の台詞に、彦根が即座に反応する。
「うわ、そっくりですね。田口先輩は白鳥さんのよき理解者なんですね。ひょっとしておふたりは仲良しなんですか?」
俺はフォークを皿に投げ出し、ナイフの先を彦根に突きつけて、言った。
「お前、その台詞は二度と口にするな」
ドスを利かせた俺の声にびびった顔をして、彦根は俺を見つめた。それから勢いに気圧されたように、黙ってこくこくと何度もうなずいた。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』終章 海風の行方 本文 田口公平 彦根新吾 より
黒崎は黙り込む。
「天才って、本当にいるんですね」
黒崎助教授は世良を怒鳴りつける。
「今の言葉、教室員の前では二度と口にするんじゃない。ただでさえあの生意気な小坊主は、医師を引っかき回している。そんな評価を若手の筆頭のお前が言ったとわかれば、さらに図に乗る」
部屋を出ていこうとしてた黒崎助教授は、振り返って言い放つ。
「そうなったら、あたら才能を腐らせる。渡海(とかい)の二の舞だ」
三年前に医局を去った手術室の悪魔、渡海征司郎(せいしろう)の後ろ姿を、世良は思い出した。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』伝説----1991 本文 世良雅志 黒崎誠一郎(助教授時代)より
「どいたどいた」
救急隊の言葉によろけた黒崎助教授の傍らを一陣の赤い風が吹き抜けた。
血染めの白衣を身にまとった速水だった。速水はストレッチャー上の患者を手早く診察すると、隣の黒崎助教授の存在に気づいた。
ちらりと黒崎助教授を見て、言う。
「大腿骨折です。黒崎助教授、整復をお願いします」
それが自分に対するオーダーだということに、黒崎はすぐには気づかなかった。やがて速水の言葉の意図を理解した黒崎は、顔を真っ赤にして怒鳴り声をあげた。
「研修医風情がワシに向かって命令するな。まず、状況報告だ」
血染めの将軍、速水は即座に言い返す。
「患者は屋上から飛び降りて大腿骨折。ただちに整復を要する。補液など、周辺処置を含め、整復後、整形外科病棟に上げる必要あり。確認は後日」
「指示を訊いているんじゃない。状況を報告しろ、と言っているんだ」
速水は腕組みをし、傲然と言い放った。
「見りゃわかるだろ。火事の修羅場でひっちゃかめっちゃかだ。グズグズ言わずにとっとと自分の仕事にかかれ」
搬入された次のストレッチャーに駆け寄った速水は手早く見て取る。
「あんた、歩けるだろ。奥のぼさっとしたヤツのところで話を聞いてもらえ」
言い残した速水は、風のように別のユニットへ向かった。
黒崎は呆然と速水の姿を見送った。世良が黒崎の背中に手を当てて押す。
「叱るのは後でもできます。今はヤツの指示に従いましょう。ほら、あそこが私たちが貢献できる場所のようです」
世良助手が指さした場所では整形外科の数人が骨折の処置を行っていた。
黒崎助教授は何かを言いかけた。だが結局黙り込み、世良に従った。
速水は戦場を視察する将軍のように、ゆっくりとホールを歩き回る。ホールの片隅の机を積み上げた一画にたどりつくと、その上に上り仁王立ちになる。肩から掛けた血染めの白衣が、風もないのにふわりと揺れた。
速水の横顔を、夕陽が赤々と照らしている。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』伝説----1991 本文 速水晃一 世良雅志 黒崎誠一郎 より
※『ジェネラル・ルージュの凱旋』にある黒崎教授の場面と興味ある方は読み比べてみてください📝。
二日後、入院患者があらかた退院し、平穏に戻った東城大学医学部付属病院には、国際学会を成功させた佐伯総合外科の面々が凱旋した。医局の面々はテレビ報道や新聞で城東デパート火災を知り、各々が持つ病院との情報ネットを駆使し、未曾有の大惨事に対応したのが医局の暴れ馬、速水であることを知った。
医局員は、速水がこれまで以上に増長すると予想し、叱責できないであろう自分の姿を思い浮かべ、げんなりしていた。だがいざ医局に戻ってみると、意外にも速水は以前よりおとなしく、上司の命令にも歯向かわず、他の一年生と同じように、淡々と日常業務に励んでいた。そのあまりの変貌ぶりに怪訝に思った指導医(オーペン)たちは、速水は今回の件で重大なミスを犯したのではないか、などと邪推した。だがどこをどう調べてみても、そのような事実はなかった。
やがて城東デパート火災事件もいつしか日常業務の中に埋もれ、風化していった。事件後も相変わらず速水の姿は付属病院新棟の屋上で時々見かけられた。屋上の速水は手すりにしがみつき、遠く水平線を見つめていた。
そんな速水をいつしか、上司連中は煙たがる気持ちから、そして速水より下の人間は畏敬の念を込めて『ジェネラル・ルージュ』と呼ぶようになった。
東城大学医学部に語り継がれる『ジェネラル・ルージュ』の伝説は、こうして今日の桜宮の医療へと連綿と続いていく。それから十数年後、速水は東城大に創設された救命救急センター、通称オレンジ新棟の輝ける星として、桜宮の医療に君臨することになるのだった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』伝説----1991 本文 速水晃一 他 より
そんな風に三船の希望を打ち砕いた元凶は、よくわかっている。
オレンジの悪魔。救急患者なら何でも受ける。収益という概念が現代社会を支配しているという、当たり前の真実を理解しようとしない大馬鹿者。金の話を持ち出すと、鼻で笑って相手にしようとしない。
まあ、悪いことばかりでないことは認めよう。東城大学医学部付属病院救命救急センターはメディアが医療を貶めようとする時に使われる差別用語、「たらい回し」という言葉と対極にある。桜宮市はそうした悪評から逃れている、全国でも数少ない都市だ。
しかし、と三船は思う。
それがいったい何だというのだろう。「たらい回し」をすればメディアから一斉砲火で叩かれるが、その「たらい回し」のない素晴らしい街、桜宮市が賞賛されたことなど、一度もない。だからこうした縁の下の力持ち的な素晴らしい業績を達成しても経済効果は低い。我が厚生労働省は経済的な自立という大原則を医療現場に課しているのだから、オレンジの悪魔を飼っていることは、東城大学医学部付属病院にとっては極めてコストパフォーマンスが悪いわけだ。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』疾風----2006 本文 三船事務長 より
三船は昨日の大荒れの会議を思い出す。
あのオレンジの悪魔があんなあっさりすべてを投げ出すとは思わなかった。
だが、三船の思惑が狂った部分もあった。オレンジの悪魔を退治したあと、大学病院の切り札と目してた沼田准教授の裏の顔も見えてしまい、彼を中軸にして病院経営の立て直しを図ることに不安を抱いてしまったのだ。
その点では、三船事務長も速水同様、沼田にハメられた被害者だった。
三船の希望はオレンジの悪魔を退治することだった。だがその目的がいざ叶ってみると、オレンジの悪魔イコール速水ではなかったことに気がづいた。
速水は、本物の悪魔が東城大を蹂躙(じゅうりん)するのを、水際で防いでいた防人(さきもり)だった。
----私は、その守護神を東城大から追い出す算段に手を貸してしまった。
ちらりと後悔がよぎる。だがすぐ次の瞬間、その想念をを振り払う。
速水がいる限り、目の前に積まれる書類の山はは永遠に増殖し続ける。それは三船の精神を侵食し、やがて破壊してしまうだろう。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』疾風----2006 本文 三船事務長 より
タクシーは走り続ける。車の振動に合わせ、千春は華奢な身体を三船の方に倒してきた。消毒薬の匂いがかすかに鼻をつく。
千春がささやくような声で言う。
「救急車が病院に着いた時、あなたの顔が見えて、ほっとしたわ」
「そんなことないさ。私は君に何もしてあげられなかった。現場では私は無力だ。何もできない。それは君だって知ってるだろう」
「ううん、それは違う。私、あなたが一生懸命、怪我した人に声を掛けてるところを見てほっとしたもの。私、あなたのおかげで気が楽になった人も大勢いるはずよ、絶対に」
最後の言葉に力を込めて、千春は言う。
脳裏に、颯爽(さっそう)と戦場を駆けめぐる速水の後ろ姿が浮かび、流星のように消えた。
千春が、暗い車窓に映った三船の横顔を見つめながら、ぽつんと言う。
「いい病院ね、東城大って」
千春の、握りしめた指先に力がこもる。三船は唇を噛むと俯いた。
いい病院なんて、ない。いい医者がいる病院があるだけだ。
胸の中に熱いかたまりが込み上げてくる。
噛み殺しても噛み殺しても、嗚咽(おえつ)を抑えることができない。
車は、怪我をした女と心を痛めた男を乗せ、東城大学から遠ざかっていった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』疾風----2006 本文 三船事務長 三船千春 より
隣で髑髏革ジャンがわめき立てる。
「何をのんびりしてるんだよ。モエが信じまうだろ。早く治してくれよ」
「静かにしろ」
佐藤部長代理が 一喝する。膝の傷を翔子に巻いてもらっている髑髏マークは一瞬黙り込む。佐藤部長代理は続ける。
「救急医は、こうやって症例を学びながらでないと育っていかない。君を助けられるのも、過去に同じようにして先輩たちが俺たちに教えてくれた結果なんだ」
「そんなの俺たちゃ、関係ないじゃん。モエが助かればどーでもいいんだ」
佐藤部長代理はため息をつく。
「そう思う人間には何を言ってもムダなんだけど」
田上研修医に向きを変えると、声を張り上げる。
「これでまっさきに頭部外傷を浮かべるセンスだと患者を殺す。顔色を見ろ。真っ青だろ。大量出血が疑われるが、一番に疑うべきは腹部外傷による腹腔内出血だ」
佐藤部長代理は顔を上げる。
「隣のCTで緊急撮像。部位は胸腹部優先、続いて頭部を撮る」
田上研修医はのろのろとストレッチャーを運ぶ。深夜四時、人間の活動能力が低下する時刻。佐藤部長代理の耳に、電話のベルが鳴り響く。
「妊婦の陣痛?無理です。他を当たってください」
受話器を置いた佐藤はストレッチャーを追う。追いすがり、小松が問いかける。
「佐藤部長代理、今のはまさしく受け入れ拒否、救急患者たらい回しの現場では?」
佐藤部長代理は足を止める。そしてゆっくり振り返る。
「マスコミの報じる“たらい回し”とは、こういう状況を指しているんですか?」
冷ややかな語調に、小松は息を呑む。せれから勇気を絞り出すように言う。
「患者さんの視点から考えればそう言われても仕方がないのでは?」
佐藤部長代理は小松を見つめた。それから静かに答える。
「あなた方がそのように報じるなら、きっとそうなんでしょう。でもこんな状況で、いったいどうしろというんです?この状況の下、未知の患者をほいほい受けて救命できなければ、その時は医療ミスとして非難されるんですかね」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照----2007 本文 佐藤伸一 如月翔子 田上研修医 小松ディレクター 髑髏革ジャンの男 より
何も言わずに通り過ぎようとする。その背中に髑髏は追い打ちをかける。
「医療ミス、するんじゃねえぞ」
佐藤部長代理は振り向いて、髑髏男を見つめた。視線がぶつかる。
その間に如月翔子が割って入る。
「何を言っているの。そんなにモエさんが大切なら、どうして事故った時、黙ってたの。ぎゃあぎゃあわめくヒマがあったら、モエさんがどこかにすっ飛んだくらいこと、救急隊に告げられたはずでしょ。あんたは自分のことしか考えてない。モエさんが危なくなったのは、搬送されてくるまでに時間が掛かりすぎてしまったから。モエさんが死んだら佐藤先生のせいじゃない。あんたのせい。こっちのせいにしないで」
翔子の啖呵に、髑髏男は言い返せない。佐藤部長代理が肩をぽん、と叩く。
「もういいよ。命との闘いの代理戦争に指名さろたのはソイツじゃない。俺たちさ。無駄口を叩かずに急ごう」
遠ざかる足音。外来ベッドの上にひとり置き去りにされた髑髏男は、憮然として天井を睨み続けた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照----2007 本文 佐藤伸一 如月翔子 髑髏革ジャンの男 より
佐藤部長代理は静かに答える。
「君は怪我の範囲は広いけど、傷は浅くてどうってことないから、帰宅してもらう」
一瞬、髑髏男は佐藤部長代理の言葉が理解できなかったようだ。やがて言葉の意味が傷だらけの身体に沁みわたってきたのか、吠えるように罵る。
「何言ってんだ、あんたは。俺は交通事故の怪我人なんだぜ。そんな扱いしていいのかよ。頭を打ってるかもしれないんだぞ」
佐藤部長代理は微かに笑う。
「こんな扱いは、本当はよかないさ。でも仕方ないんだ。明朝、改めて整形外科外来を受診し直してほしい」
「仕方がない、だって?それが医者の台詞かよ」
佐藤部長代理はカメラを意識の片隅にしながら、きっぱりとうなずく。
「そうだ、それが今の医者の台詞だよ。古き良き時代は終わったんだ」
髑髏男は上半身を持ち上げて、テレビカメラを指さして言う。
「あんたたちテレビだろ。聞いたか、今の横暴な台詞。だから医者は信用できないんだ。この事実をしっかり報道してくれよ」
隣で聞いていた如月翔子が身を乗り出して髑髏男に言う。
「何勝手なこと言ってるの。ICUベッドは満床よ。そこへ君たちカップルが事故で運び込まれ、本当ならあと二日ICUで様子を見るはずだった水上さんというお婆ちゃんが小児病棟に押し出された。そこに入るのはあんたの恋人。彼女は仕方ないわ、手術したばかりだから。でも、あんたが酔っぱらい運転で事故らなければ今夜の病院は平穏で、水上さんを心ゆくまで看護できた。あんたの軽率な行為がみんなに迷惑を掛けた。その尻拭いをどうしてあたしたちがしなければならないの?手術中、電話が四件掛かってきて、中身も聞かず断った。その様子をテレビが記録してる。この人たちがその場面を垂れ流したら、オレンジの評判はがた落ちになって潰れちゃう。そしたらもう、あんたの行き場所はないし、あんたの恋人だって助けられないのよ」
髑髏男は翔子の剣幕に気圧され黙り込む。ふたりを、テレビカメラが凝視していた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照----2007 本文 佐藤伸一 如月翔子 サクラテレビスタッフ 髑髏革ジャンの男 より
小松がおそるおそる尋ねる。
「あのう、お気に召しませんでしたか?」
夢から醒めたように、佐藤部長代理が顔を上げる。それからゆっくり笑顔になる。
「気に入らない?とんでもない。素晴らしい出来です。個人的にも素晴らしすぎる。とっても気に入りました」
「よかった。じゃあ、オンエア、オッケーですね?」
小松の安心した声が響く。スタッフルームに明るい空気が流れた。幸運にも画面に映ったスタッフは心なしか頬を上気させ、映らなかった者たちは、つまらなさそうな顔になる。そんなスタッフの表情を見回してから、佐藤部長代理が答える。
「残念ながら、オンエアは承諾できません」
メンバー全員、驚いて佐藤部長代理を見つめた。小松が小声で尋ねる。
「なぜです?みなさんの素晴らしさを前面に押し出した番組を作ったつもりですが」
佐藤部長代理はうなずく。
「ですから正直な感想を申し上げました。個人的には素晴らしい出来です、と。でもこのままこの番組をこのまま放映されては困るんです」
「先生方が非難される場面など、ひとつもなかったはずですが」
佐藤部長代理は首を横に振る。
「その通りです。だからこそ、これは現実を映していないんです。救急受け入れを断った場面が入っていない。外来で怪我した患者にからまれた場面も削られている」
「まさかそこをオンエアしろ、と?」
佐藤部長代理は首を振る。
「そういう短絡的な話ではないんです。要は比率の問題です。この番組は、私たち救急現場のスタッフががんばってる、という映像です。だけど私たちだってヒマな時はぐうたらしているし、患者を受け入れられなければ拒否もする。その場面も同時に流し、どうしてそうなるのか伝えないと、正確な救急現場の報道にはならないんです」
「お話はわかりますが、不可能です。番組の尺は限られているんですから」
「でしょうね。だから不正確な情報を流されるくらいなら、流さない方がいいと判断しました」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照----2007 本文 佐藤伸一 小松ディレクター より
小松は佐藤部長代理を見つめた。やがてため息をついた。
「わかりました。放映は諦めます。私も怒られますし、当てにしていたスタッフはバタつきますけど、もともとこういう判断もありうるという前提の上での取材でしたから、取材先のご意向は最大限に尊重させていただきます」
美人ディレクター・小松は潔い。頭をひとつ下げるとあっさり撤退した。それでも未練ありげに、スタッフルームを退出する寸前、吐息のようにひと言残した。
「……でも、本当に残念」
スタッフは、小松の後ろ姿を呆然と見送る。やがて久保副師長が言った。
「いい出来でしたのに。もったいないです。オレンジの宣伝にもなったのに」
佐藤部長代理は肩をすくめる。
「でも正確ではないのでね」
「速水部長だったら、直ちに放映しろ、という鶴の一声だったかもしれませんね」
久保副師長の何気ない言葉に、その場の空気が凍りつく。時計の針がこちこちと時を刻む音が響く。
やがて如月翔子が明るい声で応じた。
「久保副師長、それは間違っています。速水部長だったらこんな取材、来た瞬間に一喝して断ってます。それなら結論は一緒でしょ」
次の瞬間、居合わせたスタッフは顔を見合わせた。そして、全員、笑い転げた。ひとしきり笑い終えると、何かの呪縛から解き放たれたかのように立ち上がり、三々五々部屋を出ていった。
ひとり残った佐藤部長代理は笑みを浮かべることもなく、腕組みをして何かを考え込んでいた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』残照----2007 本文 佐藤伸一 如月翔子 久保副師長 スタッフ 小松ディレクター より
「佐藤部長代理はどうして取材を受けたんですか?」
佐藤部長代理は腕組みをほどいて、答える。
「一度テレビに出てみたかったんだ」
翔子は笑顔になる。
「正直ですね。でも本当はそれだけじゃないでしょう?忙しい病棟のみんなを巻き込んだんですから、他に何かお考えがあったはずです」
佐藤部長代理は再び腕組みをする。それから静かにうなずいた。
「ショウコちゃんには敵わないな。確かにもうひとつ狙いはあった。実はメディアがウチの仕事をどう放映するのか見てみたかったんだ。よくわかったよ。メディアは現場をフィクションに加工して、人々をどこかの桃源郷に導こうとしている。でもその場所は絶対に桃源郷じゃないってことさ」
翔子は、佐藤部長代理を見つめた。
「そんなことを考えていらしたんですねえ。そんな風にメディアを手玉に取れる立派な方が部長に昇進すれば、オレンジ新棟も安泰ですね」
(略)
「今ここであんな番組が流れたら、上層部や市民はこう思うだろう。救急現場は大変そうだけど、まだ現場は頑張れそうだ。現状でここまでやれるなら、このまま見守ろう。そして結局何もしない。やがて俺たちは擦り切れて壊れていく。だけどそれまで救急現場を死守すればそれでいいと考えている。上層部や市民は俺たちを安く使えればそれでいいんだ。あの素晴らしい番組は、そうした気持ちを呼び覚ます。いい出来だった。だからこそ、あんな番組を流されては困るんだ」
佐藤部長代理は、立ち上がってのびをする。
「それにさ、俺が患者に暴言を吐いたのも事実だし、入院させるべき患者を追い出したんだ。そんな場面を流さず、カッコいい所だけを流すのはやっぱり反則だろ。俺は、本当はあの革ジャン野郎を入院させたかった。あの時の判断は、救命救急センターの部長代理としては正当だった、と今でも自信を持って言える。でも、救急医としては最低の判断だったんだよ」
佐藤部長代理はうつむいて、呟く。
「ああ言った瞬間、舐めかけのチュッパチャプスを投げ付つけられたような気がした」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』残照----2007 本文 佐藤伸一 如月翔子 より
1973年◆六年生。吉川英治の『三国志』を読みふける。すぐさまパクり、クラスメートを主人公に『四国志』を執筆、大学ノート三冊の作品はクラス内大ベストセラーに。その後この作品は散逸。散逸したから言うのではないが、処女作でありながら世紀の大傑作だった。
生徒会長に立候補(させられ)、見事当選。後期に惰性で再び立候補したら、いいかげんさがバレて落選。人心掌握と、選挙の難しさを思い知る。
1974◆中学。夏の間しか稼動しない水泳部に入部。
『刑事コロンボ』にハマる。ノベライズを全巻読破。連動して、エラリー・クィーンなど海外ミステリーにハマる。あと、筒井康隆にハマる。
生徒会役員に立候補(させられ)、性格に合わない、「会計」に当選する。生徒総会で、会計報告の数字が合わないことを指摘され、「計算機が間違っていました」という答弁で乗り切る。だって本当なんだもの。当時の電卓は四〇項目の足し算をすると、毎回数字が違っていた。これは言い訳でなく事実である。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 義務教育時代 本文 より
1983◆教養から医学部に上がるバリアで留年。落としたのは人類学という半期の授業ひとつ。剣道部(麻雀同好会?)の悪友に「お前の今年の道場使用料だ」と言われ納得した。ひどい仕打ちだと思い、非常勤講師に抗議し東大に出向いたところ「なら五点プラスするよ」と言われ脱力。当時より東大との相性が悪かったわけだ。あまりにヒマなので、母親のへそくりで御茶ノ水大とのアテネ・フランスでフランス語を学ぶ。こうして浪人時代の願いは叶った。
留年したおかげで、秋の医師薬獣大会団体新人戦(二年生までが出場資格)に大将として三回目の出場をし、見事優勝する。周囲からズルだと言われなかったのは、剣道一筋にかけた当時の私の人徳ゆえだ。だが帰りの電車で、同級生に預けた金メダルをなくされ、天網かいかい疎にして漏らさずということか、と酔った頭で納得し始めた。金メダルは手にしても、手元に残らない。しくしく。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 医学生時代 本文 より
1995◆結婚をした。やがて私は論理ではどうにもならない世界があることを思い知らされる。翌年、第一子が生まれる。人格として相手を認める気になる最低限の条件は、シモの世話を自分でできることだ、と心底実感する。
瀬名秀明さんの『パラサイト・イヴ』が大ベストセラーになり、小説の舞台と同じ分子生物学教室で研究をしていたことがあって、これくらいなら自分にも書けると思い込み書き始める。「健康な男子がある日怪我をし、入院先の病院で、真面目な看護婦が一生懸命ケアしてくれるのに、何故か病状が悪化していく」という物語を何も考えずに書き始め、五枚で挫折。この程度の思いつきで小説を書けると信じていた。あの頃の自分の能天気さが信じられない。だがふと今も同じようにやっている自分に気づき愕然とする。
この時のプロットは十年後『螺鈿(らでん)迷宮』として復活する。『螺鈿迷宮』は構想十年というホラを吹いたが、ウソではない。それにしても、どうしてある日突然、書けるようになったのだろう?謎だ。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊時代 大学院生時代(外科医+病理医) 本文 より
1999◆治療効果判定病理学の構築が不可能だと気づき、惰性で従来の方法で判定をしていた。そんな時、亡くなった患者さんを供養する「慰霊祭」があった。
供養の席でうつらうつらしながら読経を聞いていた時、ふと閃いた。
「死体の画像を撮れば解決するではないか」
オートプシー・イメージング(Ai)を思いついた瞬間だった。
(略)
2003◆某医療系雑誌で「治療効果判定病理学」なる連載を始める。
Aiについての世界初の英語論文が受理される。
筑波メディカルセンター病院でPMCT(検死CT)を実施していることを知り、責任者のS先生に会いに行く。この時S先生が「十年後にAiの厚生労働省研究班でも立ち上がるといいですね」と言ったので、私は「五年以内に立ち上がりますよ」と予言した。後に私の予言は的中する(というか、強制的中させた?)。ただし当たったのは半分だったが。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 病理医時代 本文 より
2005◆海堂尊0歳
(略)
10月 宝島社で顔合わせ。I局長の第一声は「本は売れません」。続いて「今度の作品(『容疑者xの献身』でおそらく)『このミス』一位も直木賞も手にする大作家、あの東野圭吾さんですら(註・本当にこうおっしゃった。今思うとおそるべき予言力である)年三冊以上出版されてます。海堂さんも、書店に並べば東野さんとはライバル。東野さんくらい蹴散らせないと生き残れません。なので、次作をとっとと書いてくださいね」
I局長が言いたいことを言って嵐のように去った後、編集Sさんがててて、と寄ってきて「あの、とっても面白かったです。一気読みでした」と言ってくれた。
その後、最終選考委員の書評家の先生三人(大森望さん、香山二三郎さん、吉木仁さん)と、特別賞の水田さん親子を交えて食事会。最終選考委員の茶木則雄さんがバックレ(選考結果の講評の締め切りが間に合わなくトンズラしたらしい)たが、「ま、だいたいこれでいいんじゃない」という話で、アドバイスはほとんどなかった。大森さんが「タイトルが崩壊だとネタバレだからなあ」と言い、「内容が失墜なら、タイトルは上昇させれば?『チーム・バチスタの奇蹟』なんていいんじゃない」と提案したが、帰途で第一回大賞が浅倉卓弥さんのミリオン『四日間の奇蹟』だと気づき、ダメじゃん、と頭を抱える。だがすぐに「栄光」という単語が浮かび、ほっとした。
宴席でAiがミステリーのトリックとしていかに斬新かと力説したが、反応が鈍い。ようやく編集Sさんから質問があり、謎が氷解した。
「あの、死体の画像診断って、実際は行われていないんですか?」
みんな、Aiは当然行われているんだろうなと考えていたわけだ。これではミステリー的には評価は下がるだろうな、とがっかりしつつも、逆にAiは、一般市民には支持されるんだ、とわかって喜ぶ。立ち直りが早いのは私の美点である。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 本文 より
2006◆海堂尊・1歳
(略)
10月 『ナイチンゲールの沈黙』出版。『バチスタ』以上の初速で売れ、発売前重版という未曾有の経験をした。といっても、まだ二作目だから未曾有もないものだが。同時にアマゾンを始めとして、ネット書評では悪評が噴出。判で押したように「前作と比べると」「『バチスタ』を読んだあとでは」と書いていた。違う作品だから、読後感は違って当たり前なのにねえ……。
悪口は愛情の裏返しだと思い、ネット書評には全部に目を通した。だが『ナイチンゲール』に対する 「前作と比較して」の枕詞攻撃はすさまじく、この現象を「チーム・バチスタの呪縛」と名付けた。他の新人作家でここまで呪縛力の強いデビュー作品はあまり見かけないので、まあよしとした。
(略)
12月 ミステリーランキングの季節。「週刊文春 のランキングで三位になった。一位は宮部みゆきさん『名もなき毒』、二位は大沢在昌さん『浪花 新宿鮫IX』、そして四位は東野圭吾さん『赤い指』と連なり、えらいところに来た、と思った。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 本文 より
2007◆海堂尊・2歳
(略)
4月 『ジェネラル・ルージュの凱旋』刊行。またも発売前重版がかかった。書店訪問をすると行く先々で、本屋大賞のポップに閉口した。「本屋さんが一番売りたい本」というコピーは、優等生をひいきする教師みたいだ、と思う。以後あちこちで「本屋大賞の主旨はいいけど、あのコピーは変えてほしいなあ」とぼそりと言っては反感を買っている。こんなことでは本屋大賞の道のりは遠い。でもあのコピーは作家の心情に対する配慮を欠いている。「本屋さんが一番売りたいと本」というなら、その時期は本屋大賞の本だけ残せばいいのに、と思う。
本屋大賞の主旨は面白いと思っているので、コピーは変えてほしい。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』海堂尊物語 本文 より
1『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)
(略)
主人公の田口が捜査を投げてしまったのだ。読み返してみると、確かに彼にこれ以上捜査を任せるのは酷だとわかった。なので諦めのいい私は「もはやここまで」とこの物語を封印することにした。それでも初めてニ百枚書けたので、もったいなく感じた。何とかならないかな、とぼんやり考えていた時、天啓がやってきた。それは猛吹雪の中、ガーラ湯沢の四人乗り高速リフトに、ひとり震えて乗っていた時だった。
「そうか、田口と正反対の性格のヤツが、外部から調査にくればいいんだ」
白鳥圭輔誕生の瞬間である。
思いついてから、宿に着くのももどかしく即座に原稿に向かった。というとカッコいいのだが、セコい私は、午前券を使い切るため、震えながらリフトを何往復かして死ぬほど後悔した。
後半の初書きは三日で終了。多くの読者が、後半に突然白鳥が登場してびっくりしたというが、当然だ。なにしろ作者自身が彼の登場にびっくらこいていたのだから。
格言1 敵を欺くにはまず味方から(笑)
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 より
2『ナイチンゲールの沈黙(宝島社)』
(略)
格言2 案ずるより生むが易し
この作品は、生まれて初めて、本になることを前提に書いた物語である。
『バチスタ』がど真ん中の速球とすると、『螺鈿』は外角低めのスライダー。だから新作は、スローカーブにしようと思っていた。それが配球の組立てというものである。
(略)
「上下はダメです、売れないので。でもいいことを考えついちゃいました。ふたつに分ければいいんですよ」という編集Sさんの提案は、それができれば二度おいしいが、それって、上下巻とどこが違うのだろうなどと思いは千々に乱れた。
その時、ひらめいた。----上下がだめなら、左右に分ければいいのでは。
(略)
なおも食い下がる私にぼそりと言う。
「文庫本のスタンダードサイズはこの厚さが一番美しいんです」
あう。世の中、なかなか私のロジックは通用しない。
この物語で、「ハイパーマン・バッカス」なるウルトラマンのパクリ作品を登場させたところ、一部読者からはかなり好評だった。当初はウルトラマン・バッカスとして円谷プロで映像化を目指した野心満々の企画だったが、「著作権上、問題なので絶対に変えなさい」とI局長に言われ、泣く泣く変えた。私は編集さんのチェックも校正さんの指摘も九割は採用し、一割は我を通す。その一割は曲げたことがないが、唯一の例外がこのウルトラマン問題だ。ああ、円谷プロで見たかった。だが私にも意地がある。いつの日か書き下ろし作品を特撮ドラマにしよう、と一回り大きな野心を抱いて、挫折感に折り合いをつけた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 本文 より
3『ジェネラル・ルージュの凱旋』(宝島社)
ど真ん中の剛速球、あとは野となれ山となれ、という気持ちで一気に書き上げた。脱稿寸前の六月『ナイチンゲール』進行を止め、一気に『ジェネラル』を書いた。苦労はすべて『ナイチンゲール』が引き受けてくれた。糟糠(そうこう)の妻である。モチーフは「飛ばないドクター・ヘリだ」。NPO法人の國松理事長とお会いした後、「吊るし」にあっていたドクター・ヘリ法案が国会を通過した。
◆格言3 江戸の仇を長崎で討つ(ちょっと違うかも)
(略)
後日、シリーズ四冊目が出た時にI局長は、「宝島社の西村京太郎先生を目指しましょう」とおっしゃった。当然、私は聞こえなかったフリをした。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 本文 より
9『夢見る黄金地球儀』(東京創元社ミステリ・フロンティア)
海堂作品はミステリーじゃない、という声が聞こえ始めていた頃なので、一度きちんとミステリーを書いてみたかった。どうせ書くならオファーをいただいた中では東京創元社さんだ。何しろ『ミステリ・フロンティア』だ。これならさすがにミステリーと認知されるだろう。我ながら負けず嫌いである。
(略)
コンゲームを書いてみたかった。私の中でのコンゲーム最高傑作は初期ルパン三世テレビ版だ。まあ私の教養などその程度である。そんな折、一億円の地域振興費の記事を読んだ。土佐高知の金のマグロ像が盗まれたという話が面白く、その時、黄金でできた地球儀のイメージがぽっかり浮かび、あっと言う間にストーリーが出来上がった。
(略)
よろよろと書き上げた時、自分はつじつま合わせの天才だと思った。でも残念ながら『このミス』にはかすりもしなかった(泣)。
◆格言9 捕らぬタヌキの皮算用
作品自体の評判は二分している。他の作品を読んでから流れてきた人にはおおむね不評である。だが、この本から入った人にはかなり好評だったりする。そしてこの作品から他へ流れていった人は、逆に他の作品を読んでおったまげているらしい。
こうしたこともシリーズ物の功罪なんだろう、と思う。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 本文 より
13『極北クレイマー』(朝日新聞出版)
(略)
取材後、あまりに夕張を意識しすぎた作品をやめようと思った。夕張で起こった医療問題は実は日本中の地域で起こっている普遍的な事態なので夕張に囚われすぎると一般性は消失する。そこで北海道の架空都市、極北市に舞台設定した公立病院が潰れるというセンセーショナルな物語にしようと考えた。ところが私の物語ではよく起こることだが、物語が直後に現実化した。千葉の銚子市立病院の閉鎖問題が起こったのだ。『極北クレイマー』連載中で、このまま銚子市立病院事件をひき写しただけだと思われてしまうと焦ったりしたが、何しろ連載は週一回、どうにもならない。目の前でフィクションが現実に追い抜かれていくのを指をくわえて見送るしかなかった。
◆格言13 兵は拙速を尊ぶ
週刊連載は楽しかった。深津千鶴さんのイラストが楽しみで、駅の売店でちら見をすると立ち読みしてしまう。自分が書いたはずなのに……。バカである。
(略)
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 本文 より
14『イノセント・ゲリラの祝祭』(宝島社)
(略)
この物語では、準主役スカラムーシュ・彦根が、内閣府が主導する省庁横断の「死因究明に関する検討会」に召還される場面で終わる。実はこうした会議でもしなければ日本の死因究明制度は機能しないだろうと考えて創作したのだが、その会議が実存していることを知って驚いた。なんと相当する会議から講演依頼が来たのだ。依頼されたのは十月二十四日。『イノセント・ゲリラ』は十一月七日発売だから、原稿は著者の手を離れている時期でこの依頼は、物語を予言したことになる。こういうことは私の物語で時々起こるのだが、知らない人が読めば、「海堂は自分の体験を物語にする私小説作家なのだな」などと決めつけられてしまうだろう。
うんざりである。
それにしても『バチスタ』を書いた頃、私の物語は現実を一〜二年先行していると自負していたのだが、このあたりで現実の速度に創作スピードが追いつかなくなりつつあった。
物語と現実未来が融合していく感覚を何度か経験した。これが物語の予見性というものだろう。精微に現実を写し取ったフィクションは、時に未来を創造するものなのだ。なんちて。
(略)
ちなみに私は政治的にはノンボリで、自民党支持でも民主党支持でもない。あえていえば、Aiを支持してくれる議員、あるいは団体の支持者である。
◆格言14 義を見てせざるは勇無きなり
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 本文 より
(略)
あの朝、ひとりの友人が死んでいた。死因は不明だったが、解剖されなかった。その結果、この桜宮(さくらのみや)の地に大いなる災厄がもたされることになった。
大切なのは、目の前に横たわる友人の死に真摯に向き合う姿勢だった。だが社会システムの壁に阻まれ、叶わなかった。では、俺たちはどうすればよかったのだろう。
そう、エーアイという鈴を打ち鳴らせばよかったのだ。そして俺たちはそうした。
医者の本能というより、友人を悼むという、人として自然な感情の発露だった。
死者に哀悼の意を持たない社会に未来はない。ひとりの死をなおざりにすると、そこに潜む悪意は増幅され、取り返しがつかなくなる。悪意は密かに増殖するが、その姿や立ち居振る舞いは一見親しげにさえ見える。だから俺たちはその腐臭にこそ、警戒しなくてはならない。
一番大切なこと。
エーアイという鈴を鳴らすのは、捜査や医学の進歩のためではない。
ただ、友人の死を悼むためなのだ。
物語は、俺がある日突然、望まぬ権力闘争のまっただ中に放り込まれた、あの日に始まった。東城大にエーアイセンターを作ろうという試みは、すでに一年前に始動していた。提案者は厚労省の火喰い鳥こと白鳥圭輔。その試みが露見したのは、厚労省関連の、とある検討会の席上だ。そうした背景を理解していれば、その動きを司法の走狗が座視するはずがないということなど、簡単に予見できたはずだ。
だが、のんきな俺は、ある日トラブルに遭遇し、ようやく事態の深刻さに気づいたのだった。
しかし今、この初夏の惨劇を振り返ると、脳裏に浮かぶのはショスタコーヴィチの、華やかな、しかし憂いを含んだシンフォニーの一節だったりする。
それはこの物語が、ひとりの友人に捧げられた鎮魂歌(レクイエム)であることの証なのだろう。
海堂尊『アリアドネの弾丸』序章 人間が死ぬということ 本文 より
その時、草原の果てにタクシーが停まり、男性がふたり乗り込んだ。目を凝らすと、背広姿の男性はどこかでみたことある風貌だったが、思い出す間もなくもう片方の銀縁眼鏡の男性に意識が集中した。遠くからタクシーが近づき、俺たちの側を土埃を舞い上げて走り抜ける。車を止めようと手を挙げたが間に合わず、タクシーは俺の目の前を走り去って行った。
俺は呆然としたが、隣に佇む高階病院長の衝撃の方が俺よりもはるかに大きいようだった。
「あの人が……、いや、まさか」
やがて気を取り直した高階病院長は、午後の日差しに鈍く輝く海原を見つめて言う。
「昔、この地に桜の木を植えようとした人がいました。だが私は、その苗木を引っこ抜いてしまった。あの時の自分の行為を、私はいまだに責め続けています……」
振り返り、建設中の建物を見上げる。
「時は流れ、その私が因縁の地に、まさに桜の木を植えようとしている。果たしてそれは根付くのでしょうか。いずれにしても、時の流れが私を断罪することでしょう」
高階病院長の呟きが、草原のざわめきに溶けていく。
海堂尊『アリアドネの弾丸』6章 桜宮岬の邂逅 本文 田口公平 高階権太 彦根新吾 村雨弘殻(すれちがうふたりの男性) より
俺は小声で尋ねる。
「どうして会議に出席してないのに、斑鳩さんが出席してたなんてことをご存じなんですか?」
俺の疑問に、高階病院長は呆れた声で答える。
「何をおっしゃるんですか。厚生労働省のホームページを見れば誰でもわかりますよ。全部、議事録に書いてありますよ。そんなことを知らない委員がいていいんですか?」
今のはダジャレか?いや、まさかあのダンディな高階病院長が、こんな初歩的な佐藤先生みたいなダジャレを言うなんて、ありえない。
高階病院長の言葉を測りかね、顔を見つめたが、飄々としたその表情からは、その真意を読み取ることはできなかった。
高階病院長は腕時計を見る。
「すっかり長居をしました。では看護学校に参りましょう。」
黒塗りの公用車に戻った三人の脇を、老人クラブと思しき集団が通り過ぎる。
“ひねもすのたりのたりかな”、などと俳句の断片を口ずさんでいたので、どこぞの句会の集まりなのだろう。
海堂尊『アリアドネの弾丸』6章 桜宮岬の邂逅 本文 田口公平 高階権太 より
扉を開くと、珈琲の香りが流れてきた。さわやかな香りを胸一杯吸い込む。藤原さんは、ふだん俺が現れてからサイフォン式の珈琲を淹れるので、俺が部屋に入る時に珈琲の香りがしているということは異常事態が起こっていることになる。ただし今日に限っていえば、誰がいるのかはおおよその見当がついている。俺はため息をついた。
「大いなる災いを自ら招き寄せるとは、ほんに人間とは罪深い生き物よのう」という特撮ドラマ「ハイパーマン・バッカス」の悪役、シトロン星人の台詞が脳裏をよぎる。
そう、その災厄を招いたのは自分自身だ。
海堂尊『アリアドネの弾丸』11章 火喰い鳥、襲来 本文 劇中特撮ドラマ ハイパーマンバッカス シトロン星人の台詞 より
斑鳩は肩をすくめる。立ち去ろうとして振り返る。
「加納警視正のことはご存じですか?」
宇佐見警視がぴくり、と肩を震わせる。そしてうなずいてにい、と笑う。
「喧しい電気狗、ぜよ」
「彼に拳銃を向けたことは?」
そっぽを向けた宇佐見警視の視線が、まっすぐに斑鳩広報室長に注がれる。
「どうしてそんなことを聞くんぜよ」
「加納警視正が同じことをされたらどうしただろう、とふと思いまして」
宇佐見警視は斑鳩広報室長に小声で言う。
「その質問に答えられないですきに。電気狗はウラの上司ではないですけんのう」
「愚問でした」
一瞬口ごもったが、宇佐見警視の目が細くなる。
「実は、電気狗に拳銃を突きつけようとしましたけど、やりそびれたんぜよ。突きつけようっ思った矢先に、冗談はよせ、と言われてしまったんぜよ」
斑鳩広報室長は目を見開き、肩をすくめた。
「さすが加納さんですね。ちなみに私を過大評価されても困ります。私が平然としられたのは、銃の安全装置が掛かっているのが見えたからです。むき身の銃口を突きつけられて平然としていられるほど、私は大物ではありません」
「霞が関では、大物と書いて、“バカ”と読むそうですきに」
海堂尊『アリアドネの弾丸』17章 キラー・ラビットの蠢動(しゅんどう)本文 斑鳩芳正 宇佐見荘一 加納達也(宇佐見の言葉)より
白鳥は疑わしげな目で南雲を見つめた。南雲も白鳥を見つめ返す。
やがてぷい、と目をそらすと、南雲は笑顔になった。
「しかし、ウワサ通りの礼儀知らずだな。せっかくの好意の申し出を、あそこまであしざまに罵るとは」
すかさず宇佐見警視が言う。
「仕方がないぜよ。厚生労働省は三流官庁だけあって、礼儀がなってないですきに」
北山元局長が補足するように、言う。
「この方を霞が関の一般論に当てはめたら、日夜一生懸命霞が関を支えてる同志に申し訳ない。彼は官僚の中の突然変異、上を上をとも思わない傲慢さで有名な方だ」
警察絡みの三人に、よってたかって嘲笑され、さすがの白鳥の鉄面皮の白鳥の頬にほんのりと赤みが差した。しかしそこで黙り込まないところがいかにも白鳥らしい。
「そんなこと言われても、痛くも痒くもないさ。今、まさに自分の口から言ったでしょ。あの連中は、確かに霞が関を支えてる。偉いよね。でもよく考えれば、彼らが支えてるのは霞が関だけ。そりゃ、連中から見たら、僕は的外れなことばかりしてるように見えるさ。だって僕が支えようとしてるのは霞が関じゃなくて、日本の市民社会なんだもん」
見事な一撃だった。
海堂尊『アリアドネの弾丸』18章 ミッシング・リンク 本文 白鳥圭輔 南雲忠義 宇佐見荘一 北山錠一郎 より
俺と白鳥を迎えた笹井教授は、手にした新聞を机の上に置く。白鳥が言う。
「僕たちがわざわざここにやってきた用件はわかるよね、笹井教授?」
笹井教授はお茶をすすりながら言う。
「北山元局長の遺体にエーアイをやりたい、というのだろう」
「Bravo(ブラヴァー)!)ご名答だよ」
両手を広げ、白鳥は答える。笹井教授はハイテンション気味の答えにむっとしながら、言う。
「これまでの議論を前提にしながら、今、ここで、しかもこのタイミングと状況で、それをこの私に申し出ようというのかね」
白鳥はへらりと笑って答える。
「だってエーアイをやって悪いことはないもの。遺体を損壊しないから司法解剖の手技に影響しない、解剖で得られない医療情報を入手できる。エーアイ情報ん基にして詳細な情報もできる、結果を返すのも早い、ほらね。いいことずくめでしょ?」
海堂尊『アリアドネの弾丸』24章 開かずの扉 本文 田口公平 白鳥圭輔 笹井浩之 より
白鳥は時折画像処理の合間にその弾丸を、腕組みをして睨みつける。そうしていれば、弾丸が溶けてしまうかのように。そして、弾丸が溶けないことを確認し、再び碧翠院の画像処理へ戻っていく。
これは知恵比べなのだ。捜査現場に白鳥のロジックを呑み込ませるには、物量的にも社会制度的にも膨大なエネルギーが必要だ。俺は思わず愚痴をこぼす。
「果たしてこんな画像だけで、もつれた謎が解けるんでしょうか?」
白鳥は画像から目をそらさずに答える。
「すぐに弱音を吐くのが田口センセの悪いところだよ。いいかい?この弾丸こそ迷宮を打ち破るアリアドネの赤い糸なんだ。だけどその細い糸は、謎を解くという強い意志がなくては役に立たないんだよ」
古代ギリシャ神話。クレタ島の迷宮に住まう怪物、ミノタウルスを退治するために勇者テセウスを助けた女神、アリアドネ。彼女の赤い糸がテセウスを迷宮から救い出した。珍しく詩的な白鳥の表現を耳にして、俺は本当にぎりぎりまで追い詰められているのだ、と感じた。
海堂尊『アリアドネの弾丸』25章 論理打撃戦 本文 田口公平 白鳥圭輔 より
(略)
俺は驚きの視線でふたりのやり取りを眺める。彦根は笑顔で言う。
「この状況で、白鳥さんが僕の手助けを必要としている、ということは……警察庁の非合法破壊兵器、キラー・ラビットの弱点を知りたい、とか?」
白鳥は気味の悪い生物でも見るような目つきで言う。
「何でお前がそんなことまで知ってるの?」
「蛇の道はヘビでして、ね」
彦根はそう言って、俺の方に向き直る。
「実は警察庁には非合法特命組織があって、犯罪すれすれどころか、犯罪そのものを行う部署があるんだそうですよ。都合悪くなった人間を非合法的に消し、その事件を合法的に処理することが業務なんですって。警察庁の闇の部署だそうです。その中でも跳び回る陽気なウサギが一番派手らしい。でも派手な分、仕事は粗い。穴だらけの仕事を現場がつじつま合わせしてるんです。この組織が落ち度を見せるとしたら、ウサギだろうと言われているらしいんです。知ってましたか、こんなウワサ?」
俺は激しく首を振る。知るわけないだろう、そんな危険なウワサ。
彦根は満足そうにうなずく。
「ま、そうでしょうね。何しろ霞が関データのレベル5、深々度レベルですから」
「それじゃあ殺し屋集団じゃないか。警察内部にそんな人間がいるはずないだろ」
俺が言い返すと、彦根は笑顔で答える。
「いないという証明は、いるという証明の背理だから大変です。でも、傍証はあります。何にでも噛みつく白鳥さんが妙におとなしくて、何も言わないでしょう?」
俺は白鳥を見る。何かミスがあればすごい勢いで反論とも暴論ともつかない言葉を乱射する白鳥が、そ知らぬ顔をして画像をいじっている。
……まさか。
海堂尊『アリアドネの弾丸』27章 停滞 本文 田口公平 白鳥圭輔 彦根新吾 より
遠くから会話が聞こえてくる。
----MRIは磁場が強いから、金属を持って入ってはいけないんだな?
----ゆうべも申し上げましたが、MRIの強い磁場にひっぱられて吸着事故になりますから。五ガウスラインの中に入らないでください。
宇佐見警視と友野君の声。何でこのふたりが会話しているんだろうと考える。夢の中は何でもアリで、その人の欲望の発露だというから、これは俺の欲望なのか。
無関係なふたりを会話させることで満たされるものはなんだろう。俺が夢うつつに考えている間も会話は続く。
----吸着事故は一歩間違うと大爆発を起こすクエンチを引き起こします。液体ヘリウムの温度が一度上がると気化が始まり体積が七百倍に膨れ上がり、大爆発になります。こうした事故は小規模ながら年に数件は起こっているんです。
----物騒な機械ぜよ。
----基礎知識はそんなところですね。もうじきこちらもチェックが終わります。
俺は、友野君の講義をもう一度学び直す必要があると思ったのだろうか。
だとしたら、潜在意識の自分を偉いものだと褒めてやりたい。
海堂尊『アリアドネの弾丸』30章 画像検視官(イメージ・インスペクター)シオン 本文 田口公平 友野優一 宇佐見壮一 (夢の中の会話?) より
「私が理解するところでは現在の三テスラMRIでは気体成分の検出は技術上不可能です。いかがですか、島津先生?」
斑鳩広報室長の問いかけに、島津は苦い顔でうなずく。
「そのとおりです。世界に三台しかない七テスラのモンスターマシン、リヴァイアサンなら可能ですが」
斑鳩広報室長は淡々と続けた。
「つまり宇佐見警視を追いつめたデータはでっち上げだったのです。なのでこの件は最終的に物証ゼロ。間接証拠ばかりで、被疑者は無実を訴えながら自死。さらに被害者と目される人物は、解剖すらされておりませんので公判維持は困難と判断します」
「つまり友野さんの一件は事件にすらならないのですか?」
俺は行き場のない憤りを抱え、うめく。斑鳩広報室長はうなずく」
「この案件は最初から警察マターではなく、その判断が追認されただけです。もちろん田口先生や白鳥技官が遺族を焚き付け、刑事告訴させることは可能です。ですが果たしてそれが遺族の幸せになるでしょうか。仮に刑事告訴しても、現状ではどう扱われるかは明らかでしょう」
遺族の心理を無闇に動かすより、そっとしておいた方が親切だ、と斑鳩は暗に俺たちに告げていた。
「その方が警察にも都合がいいし、ね」
白鳥が精一杯の皮肉をこめて言う。
「それが現実です。日本は今、死因不明社会なのです。ご理解下さい、白鳥技官」
誰も言葉を発しなかったが、それが無言の同意に思われるのは本当に悔しかった。
海堂尊『アリアドネの弾丸』37章 ミス・ファイヤー 本文 田口公平 白鳥圭輔 島津吾郎 斑鳩芳正 より
つやつやと顔色のいい高階病院長は、大きく伸びをした。
「まあ、もう少しあそこで休養してもよかったんですけど」
それから白鳥の顔を見て、目を細める。
「姫宮さんから聞きましたが、今回は白鳥さんにずいぶんお世話になったようですね。この際、きちんと御礼を申しあげなければなりません」
高階病院長は咳払いをする。
「……どうもあがと、あがりと」
ふざけているのかと思ったら、真顔だった。もう一度深呼吸すると一気に言う。
「この度は本当にあがりとう」
俺は吹き出す。
「高階先生は、よっぽど白鳥技官にお礼を言うのがイヤなんですね」
「そんなことはないです。ただ私の舌が、コントロールから外れてしまって……」
白鳥は肩をすくめる。
「いいんです。別に高階先生に礼を言わせたくてやったんじゃないですから」
「……本当に申し訳ありません」
殊勝に謝罪する高階病院長の様子があまりにも切実で、申し訳なく思いながらも、俺と島津は顔を見合わせて大笑いした。
海堂尊『アリアドネの弾丸』終章 因縁の萌芽 本文 田口公平 白鳥圭輔 島津吾郎 高階権太 より
病院玄関に戻ると、黒崎病院長代行が出迎えに立っていた。
高階病院長が車から降りると、黒崎教授に歩み寄る。心なしか、やつれた黒崎教授はふんぞり返り胸を張ると、ぼそぼそ言う。
「多忙なワシに雑用ばかり押しつけおって、昔からちっとも変わらんな、お前は。もううんざりだ。お前が戻ったのを確認した今を以て病院長代行権を返上する」
「ありがとうございました」
滑らかな御礼の言葉に、先ほどの高階病院長の様子に、拘禁障害を疑った俺は、特定の対象物に対する単なる精神的アレルギー反応だと断定した。
黒崎教授は高階病院長を凝視し、ふん、と鼻を鳴らし姿を消した。
高階病院長はその背に向かって、もう一度深々とお辞儀をした。
海堂尊『アリアドネの弾丸』終章 因縁の萌芽 本文 田口公平 高階権太 黒崎誠一郎 より
高階病院長とて人の子、今なら白鳥の言うがままだろう。いくら白鳥をなじったところで、放出してしまった液体ヘリウムはもう元には戻らないだろうし、白鳥の独断行為がコロンブスエッグのみならず、診断室の計器類や隣の三テスラMRIも守ったことは間違いない。
銃弾が発射されてしまえば、白鳥の行為は容認されてしまうわけだ。
まったく、つくづく悪運強いヤツめ。
賞賛と非難が相半ばしている俺の視線にいたたまれなくなったのか、白鳥は言う。
「だけどこれは僕の手柄じゃないんだ。4Sエージェンシーのアイデアだからね」
青年の気配を漂わせ始めた牧村瑞人の面影がよぎる。十代で親を失い、重い障害を抱えた瑞人の後見人として、城崎がそっと見守っているのだろうか。
すべての真相が明らかになった途端、気が抜けた。そして、ふと、白鳥の気遣いに気がつく。4Sエージェンシーと白鳥の合議の時、俺は利益相反だといって退席させられた。ヘリウムの無断除去は病院に不利益をもたらすから、確かにコトがバレたら俺のクビも危ない。
それにしてもこんな状況の中でも、最後までエキストラ出演に固執し続けた、なりふり構わず自分の欲望に忠実になれる黒崎教授の性格が本当に羨ましい。
たぶん、組織のトップに立つには、わがままなところが必要なんだ、と思う。
海堂尊『アリアドネの弾丸』終章 因縁の萌芽 本文 田口公平 白鳥圭輔 牧村瑞人 城崎 黒崎誠一郎(回想) より
高階病院長が、しみじみ言う。
「今回の件では、エーアイの存在がどれほど市民社会の安寧に結びつくか、ということがとてもよくわかりました」
「どれもこれも、すべてはエーアイセンター長の薫陶の賜物ですな」
下手に出て、俺の褒め殺しを企む島津の言葉に、俺はげんなりして言い返す。
「肩書きで呼ぶのをやめてもらえないか」
「わかった。悪かったよ、行灯」
「大昔のあだ名もやめろ」
「じゃ、腹黒タヌキの懐刀」
俺は絶句した。隣に病院長(本人)がいるんだぞ。
高階病院長は平然とうなずく。
「ま、おふざけはこのあたりでやめておきましょう。それにしても本当によかった。ひとつ間違えば、こんなのんびりした会話もしていられなかったでしょうし」
「まったくですよ。警察の呼び出しにのこのこついていったりするからですよ」
「でも、善良な市民なら、警察は信用するでしょう?」
確かに、俺でものこのこ出て行っただろう。ならば、これも必然だったのか?
司法の闇は深い。人が作り出した闇なのに、自然の闇よりも、人工物の社会の闇の方が深いというのは、どういうことなのだろう。
海堂尊『アリアドネの弾丸』終章 因縁の萌芽 本文 田口公平 島津吾郎 高階権太 より
「誰ですか、その大人物は」
島津の問いかけに、謎の女性はくすくす笑う。そして言う。
「あたしの上司、不定愁訴外来の田口先生です」
一瞬の間。その後、いきなり画面いっぱいに高階病院長の笑顔が広がった。
「確かに硬直した会議ばかり繰り返している私たちにとっては盲点の、まことに素晴らしい提案です。私としたことが、その方の存在をついうっかり失念しておりました。いかがでしょうか、みなさん。異論はありますか?」
笹井教授がすかさず答える。
「彼であれば、私の本意を汲んでくれたことになるので、同意せざるを得ないな」
そして付け加える。「……それに、彼は人畜無害だし」
笑い声と共に、謎の女性の咳き込む声が聞こえた。
俺はふと思い出す。あの頃、風邪を引いていた身近な女性。女郎蜘蛛のように俺の周りに見えない蜘蛛の糸を張り巡らせ、俺を東城大学医学部付属病院不定愁訴外来という小さな檻の中に閉じ込めようと画策する、陰謀好きの策士。
こんな風に、この俺に貧乏クジを引かせたがる人物は、東城大学にふたりほど心当たりがる。ひとりは今、隣で楽しげに会議ビデオを見ている病院の最高責任者、高階病院長。そしてもうひとりは、俺が主宰する不定愁訴外来の専任看護師にして、この高階病院長との腐れ縁の看護師、藤原さんだ。
そして“あたしの上司”という唯一の手がかりが、犯人を完全に固定してしまった。
結局、東城大学病院が誇る開闢(かいびゃく)以来の腹黒コンビを病院から放逐しない限り、俺に降りかかる災厄がなくなることはないのだ、という諦念を、妃の国の住人でないにもかかわらず、俺はしみじみと感じていた。
海堂尊『アリアドネの弾丸』終章 因縁の萌芽 田口公平 島津吾郎 笹井浩之 藤原真琴 高階権太 より
碧翠院の境内で、僕が葉子にこの話をしたのは十八年前、僕たちが小学校二年の時のことだ。葉子の家から、おすそ分けの和菓子をもらった御礼のつもりだった。僕の話に、葉子は興味なさそうに「ふうん」と言っただけだった。僕は拍子抜けし、気恥ずかしくなった。そしてとっておきの話はやたら他人に教えるものじゃないという教訓を得た。
十一年後の春、東京の予備校の学食で、離れたばかりの故郷の名前が、僕たちを追いかけてきたかのように、テレビから流れてきた。桜宮という故郷の地名の響きが耳に引っかかり、予備校でも同級生になっていた葉子と顔を見合わせた。
通り魔事件の速報だった。犯人は地味で目立たない少年で、大怪我をした人が何人かいるとテレビニュースは伝えた。両親がいない施設出身者だ、とのことだった。ニュースの最後に、幸い死者は出ていない、と一言添えられた。一体何が「幸い」なのだろう、と僕はふと思った。
葉子は箸を止め画面を見つめ、言った。
「アリグモみたいなヤツ」
へえ、覚えていたんだ、と僕はびっくりした。
最近、世の中には『アリグモみたいなヤツ』が密かに増殖している気がする。
僕たちはアリグモから決して目をそらしてはならない。
海堂尊『螺鈿迷宮』序章 アリグモ 本文 天馬大吉 別宮葉子 より
スズメのママは、値踏みすれように男を見つめた。それからうなずく。
「自分の不始末だから仕方ないわ。でも、天馬君を連れ出すなら、名乗っていきなさい」
男は頭を下げて、言う。
「結城、と申します」
こうしつ疫病神こと結城と僕は、スズメを後にした。
一緒についていくと言い張る田端を、僕は制した。金を払いさえすればひどい目には遭わないだろう、という楽観的な予感があったし、そうでないなら、コンクリート塊を抱いて桜宮湾の海底に沈むのは、落ちこぼれの僕だけで充分だと思ったからだ。閉まりゆく扉の向こう側に残された田端とスズメのママのやり取りが微かに聞こえた。
「天馬先輩、大丈夫っすかね」
「心配いらないわ。天馬君には、強力な守護神がついてるからね」
思わず、僕は笑った。
海堂尊『螺鈿迷宮』ニ章 スズメのお宿 本文 天馬大吉 田端 スズメのママ 結城 より
「時間通りだなんて、落第を続けている学生さんらしくないですね」
横付けして窓から顔を出すと、結城が抑揚なけ呟く。それから不意に、手で弄んでたコインを親指で弾く。銀色の放物線の軌跡の結末を、結城の手の甲が受け止める。
右手の甲に重ねた手を開いて、賭けの結末を確認した結城は、微かに顔をしかめた。
僕は結城に笑いかけた。
「当たりましたか」
結城は頬を痙攣させ、それから僕の愛車の屋根を撫でる。結城は肩をすくめる。
「ゲン担ぎです。ツイてない時には、ツイている人の持ち物に触れることにしてるんです」
百万円をむしり取った相手をツイているなんて、よく言えたものだ。
結城が眼を細める。見つめる先に、セピア色のでんでん虫が聳え立っていた。
その視線の強さに、“仮想敵”という言葉が脳裏を掠める。
海堂尊『螺鈿迷宮』五章 銀獅子 本文 天馬大吉 結城 より
(略)
巌雄は紙片を机の上に投げ出し、興味なさそうにちらりと見た。それから、突然紙を取り上げ、まじまじと見つめた。僕の顔と書類を交互に眺めている。
「これはこれは……」
少し大袈裟な気もするが、多分僕の名前に感心しているのだろう。よくあることだ。天馬大吉。『縁起いい名前コレクター』なら垂涎(すいぜん)モノのお目出度さ。巌雄は僕の顔を見つめながら、受話器を取り上げた。ニ、三言、短い指示を出す。視線を切らずに僕に尋ねる。
「東城大学医学部に在籍しているのか。ワシの後輩だな。出身は桜宮かね」
「ええ」
唐突な質問に、僕はうなずく。巌雄は僕から視線を切らない。
海堂尊『螺鈿迷宮』五章 銀獅子 本文 天馬大吉 桜宮巌雄 より
乱暴な巌雄の消毒のやり方は、おそらく戦友を弔うささやかや嫌がらせ、巌雄の背後に熱帯の緑濃い密林が広がって見えた。力強く黙り込んだ傷病兵を見て、言い過ぎたと感じたのか、軍医・桜宮巌雄はつけ加える。
「医学生に間違った認識をされると将来に禍根を残すから、素人向けの説明も追加しておこう。この傷に麻酔をしない理由は二つある。麻酔の時も二回針を刺す。つまり無麻酔で針を刺す。この傷二針。ならば麻酔をしてもしなくても、痛みを感じる回数は同じ。それなら麻酔は避けた方がいい」
そう言うと、巌雄の眼が深い光を湛えて(たた)、僕の顔を覗き込む。
「いいか医学生、麻酔や麻薬に限らず、すべからく薬というものは使わないで済むなら使うな。薬とは役に立つ毒だ。毒であることに変わらない。よく覚えておけ」
僕は巌雄の言葉に圧倒される。
海堂尊『螺鈿迷宮』九章 桃色眼鏡の水仙 本文 天馬大吉 桜宮巌雄 より
巌雄はフン、と鼻先で笑って腕を組む。
「少し見直した。これが医療の現実だ。誰でも死の前では平等だが死に際し誰もが平等に扱われるわけではない。だからワシは、せめて桜宮では誰でも等しく扱いたい、と思っている」
最後の言葉は、自分に言い聞かせているかのようだ。
「だがな、これしきでびびるな。医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた、クソッタレの学問だ。お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な」
巌雄の言葉が、僕の想念と同期(シンクロ)した。巌雄な言葉は、僕が真っ直ぐに道を追い続けていけば、いつか僕の目の前に立ち塞がるであろう未来の壁を、一足先に垣間見せてくれたのかもしれない。
巌雄は僕の瞳の奥底を覗き込む。
「人は誰でも知らないうちに他人を傷つけている。存在するということは、誰かを傷つけている、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかもしれない。このことがわからないうちは、そいつはまだガキだ」
僕には唐突な巌雄の呟きの文脈が理解できず、またその言葉が孕む不可知の重さを支えることもできなかった。
海堂尊『螺鈿迷宮』十章 屍体の森 本文 天馬大吉 桜宮巌雄 より
美智と僕は手を合わせ、代わる代わる焼香した。巌雄院長の短い一言「南無」
これが巌雄流の読経か。巌雄は振り返り、誰にともなく言う。
「トクは立派だった。今朝、解剖させていただいたが、身体中癌だらけだった。悪いところは身体で全部とってしまったから痛むこともないだろう。トク、ゆっくり眠れ」
巌雄の言葉は、百万個の読経より心に響いた。僕は瞑目した。美智が噛みつく。
「ジィさん、戯言をぬかすんじゃねえ。立派な死なんてありゃあせん。死んだら負けじゃ。トクは立派じゃねえ。負けたんじゃ。ワシは絶対負けんぞ」
巌雄は、美智を見つめる。
「大した婆さんだよ。薔薇の知らせに逆らって生き延びているのは、あんただけだ」
「大したことじゃねえ。あっちへ行きたくねえって言っただけじゃ」
「それが大したことなんだよ。婆さんは、桜宮最高のクソッタレさ」
巌雄はじっと美智を見つめる。
「生きるも地獄、死ぬも地獄……死ぬも極楽、どっちにしても同じこと」
巌雄の言葉に美智は答えず、棺を睨みつけて言う。
「トク、ジンジョーセーユーゼーはお前にやる。どこぞでも好きなところへ持っていけ。この根性なしめ」
海堂尊『螺鈿迷宮』十八章 煙と骨 本文 天馬大吉 高原美智 桜宮巌雄 より
ついでに言えば、疑惑と好意は両立する。片方は論理、もう片方は感情なのだから。
すみれは膝の上に肘をつき、両手を組む。手の甲の上に小さな顔を載せて微笑む。
「誘惑されるんじゃないか、と思ってるでしょう」
ど真ん中の剛速球にどぎまぎした。この状況でその可能性を考えない男がいたら、そいつはウスノロか大嘘つきだ。
「こう見えても、昔はモテたのよ」
すみれは朗らかに笑う。きっとそうだろうなと思う。昔は、という限定詞を外しても、おそらく僕は同意しただろう。
「でも、なかなかうまくいかないの。寄ってくるのはろくでなしだし、追いかけると逃げるいくじなしばかり。あたしってば、男運が悪いの」
男には二種類しかいない。勇ましいろくでなしと腰抜けのいくじなしだ。すみれに寄ってきたのは勇気があるろくでなしで、逃げ出したのは腰抜けの方だ。
「これは誘惑じゃない。それならもっとうまくやるわ。あたしは天馬君にあたしたちの本当の姿を知ってもらいたいだけ。でないと、あたしは……」
僕の顔を覗き込む。それから視線を窓に向け、呟く。
「でも、どうでもいいと思ってる相手には、こんなこと言わないから、やっぱり誘惑なのかな?天馬君て不思議。捨てられた子犬みたいに、つい頭を撫でたくなる。そうやって人の心を開かせてしまうのね。こういうタイプって、本当に始末が悪いわ」
かつて葉子はそれを、この世でひとりぼっちの赤ん坊の吸引力と呼んだ。
葉子が言ったことがある。
……天馬君は、一見優しいけど、自分の気持ちは絶対他人に見せないのね。
すみれの脳裏には他の誰かが浮かんでいて、僕と比較している。ふと、そんな気がした。僕たちは互いに向き合いながら、他の空間の相手と会話しているのだろうか。
海堂尊『螺鈿迷宮』二十二章 天空の半月 本文 天馬大吉 別宮葉子(回想) 桜宮すみれ より
白鳥は僕を見つめた。その眼には深い感動が読み取れた。
「僕は巌雄先生に心の底から敬意を表したい。この医学情報の存在は世の中に対する楔(くさび)になる。それがわかるのは、もっとずっと先のことだろうけど」
「オートプシー・イメージング・センター(エーアイ・センター)、ですか」
僕の問いかけに、白鳥はうなずく。
「巌雄先生はエーアイ・センター構想と碧翠院桜宮病院の検死システムが両立しないことを見抜いていた。同じエーアイだけど、桜宮病院では真実を覆い隠すために行われていた。それに対し、エーアイ・センターの設立理念は、ガラス張りの医療だ。実現すれば桜宮病院は歴史の徒花(あだばな)として叩き潰される運命にあることを予見してたんだね、きっと、一年半前のバチスタ・スキャンダルの時、この流れを読み切って、廃院に向けて舵をを切っていたとは、いやはや大した慧眼(けいがん)さ」
白鳥はため息をつく。
「失ってみて初めて、巌雄先生の言葉の意味がわかったよ。桜宮病院という闇がなくなって、これからの僕の仕事はやりやすくなった。そして……」
白鳥は言葉を切り、モニタの画像をぼんやりと見つめた。僕は辛抱強く次の言葉を待つ。あまりに長い沈黙に我慢しきれなくなり、とうとう、そっと促してしまった。
「……そして?」
ぼんやりと宙を見つめていた白鳥は、僕の催促に、夢から覚めたようにはっと我に帰る。
「そして同時に、とても難しくなった。光も闇も集めようとすると気が狂う、か」
海堂尊『螺鈿迷宮』三十五章 螺鈿の闇と光の中で 本文 天馬大吉 白鳥圭輔 より
「その件は誠に遺憾に思いますが……でも、それとこれとは話が別です。天馬さん、どうかご理解下さいますように」
「そんな杓子定規な、役人みたいな言い方はやめなさい」
姫宮はきょとんとした顔で言う。
「あのう、白鳥室長、私たちは国家公務員でれっきとした役人なんですけど……」
白鳥は肩をすくめる。どうやらコイツは今の今まで本気で身分と立場を忘れていたようだ」
天馬君、申し訳ないね。姫宮はどうしようもない石頭なんだ。真夜中の交差点でも、歩行者信号が点滅すると渡ろうとしないんだからね。ゆうべだって上司に向かって無理矢理シートベルト着用を命令してるし……」
昨日の口喧嘩を、まだ根に持っているようだ。やむなく、僕は二人をとりなす。
「僕は普通に労災認定していただければ、それで充分です」
白鳥はうっすらと笑って僕を見る。
「欲がなさ過ぎるなあ。そんなんじゃこの先、世の中渡ってはいけないよ。昔から、正直者はバカを見ると決まってる。かっぱげる時にかっぱぐつくす。これ、人生の極意その1ね」
「どうでもいいじゃないですか。本人は納得しているんだし」
葉子が一連の会話を一言で締めた。葉子が言うところの本人の納得とは、僕が正直者、という点だろうか。それともバカを見るに決まっている、ということに関してだろうか。
海堂尊『螺鈿迷宮』ニ十九章 火喰い鳥と氷姫 本文 天馬大吉 別宮葉子 白鳥圭輔 姫宮香織 より
「どんな些細なことでも構いませんから、立花さんに関するこてを教えて下さい」
茜は思案顔をした。何かを探しているのではなく、目の前にある何かを言おうか言うまいか迷っている顔。だが、やがて静かに話し始める。
「あの、おのろけだと思わないで下さいね。あの人、結婚指輪はダイヤモンドを奮発してくれたんです。小さいのでしたけど、嬉しかった」
茜の手元をみる。確かにダイヤのようだ。もっとも僕には硝子(ガラス)玉とダイヤモンドの区別はつかない。
「善ちゃんもお揃いの指輪を買いました。でも善ちゃんたら、それを左胸に埋め込んでしまったんです」
「わざわざそのためだけに手術を受けたんですか?」
驚いて、僕は尋ねる。茜はうなずく。
「あたしが、左の薬指にする結婚指輪の物語を彼に話したせいだと思うんです」
「ギリシャ人が、左の薬指が一番心臓に近いと考えていたというあの話ですか?」
スイッチの入った姫宮が、興味津々という面持ちで、とたとたと会話に乱入してきた。
茜はうなずく。
「ええ、善ちゃんはその話を聞いて、心臓に一番近いところに私への想いを埋め込むんだといって、手術しちゃったんです」
僕はあっけにとられて茜の顔を見つめた。立花とは一体どんなヤツなんだ。そんなのは絶対に愛の証ではない、と僕は思う。どこかが壊れている。
「ご主人はロマンチストなのね」
姫宮が呟く。茜は嬉しそうにうなずく。僕は途方に暮れた。ロマンチスト?
女心はわからない……。
海堂尊『螺鈿迷宮』三十章 沈黙のピアス 本文 天馬大吉 姫宮香織 立花茜 より
「ゆうべは大変だったぞ。まず、火事騒ぎで大騒ぎじゃ。非常ベルが鳴ったんじゃが、結局何でもなかった。きっと誰かのイタズラじゃったんだろう」
美智の言葉に、僕はちょっぴり、自分が責められているような気にもなったが、たぶん気のせいだろう。それから美智は、ぽつんと言った。
「それからな、千花が三階に上がった。明け方に亡くなったそうじゃ」
千花のポニーテールが、脳裏で優しく揺れた。美智が続ける。
「杏子は昼過ぎに、千花の火葬を見届けてから退院した。故郷の北国へ帰るんだそうじゃ。ワシが最後の患者じゃよ。今から家に帰るんじゃ。家といっても一人暮らしじゃがな。転院先もすみれに紹介してもらった。また、大学病院に戻れ、だと。難儀なコトじゃが、他に行くあてもないんで、仕方ない。それじゃあ天馬よ、達者でな」
「今度また、キャベツ丼をご馳走してよ」
美智は嬉しそうに笑って、小さくうなずく。その時、背後で涼しげな声がした。
「天馬さん、どうして?」
振り返ると、幽霊でも見るような眼つきで、小百合が僕を見つめていた。美智がじろりと小百合を睨む。
「小百合よ、ワシはお前には負けなかったぞ」
小百合は嫣然(えんぜん)と微笑む。
「そうね、美智さん。あなたの勝ち。でも誤解しないで。私は勝ちたいと思ったことなんか、一度だってなかったの」
海堂尊『螺鈿迷宮』三十二章 不顕性の原罪 本文 天馬大吉 高原美智 桜宮小百合 より
「大切なのは比率。光と影を黄金比に混ぜる、それこそ人生の秘訣さ。その調合をできるのは、真の闇を知る者のみ」
巌雄は白鳥を見つめる。その眼に敵意はなく、むしろ愛おしむような光さえ見えた。
「白鳥君、君は賢く優秀だ。ワシから見ると、きらきらして眩し過ぎる。だがおヌシはいつか、世の中か手ひどいしっぺ返しを食らうだろう」
「ご忠告ありがとうございます。せっかくですから根拠を教えていただけませんか」
白鳥が姿勢を正して教えを請う。巌雄は満足気にうなずく。
「ヌシは光の申し子だ。普通、人間は薄暗がりど息を潜めている。ヌシの強烈な光は連中に痛みを引き起こす。そして光を敵と誤認し、激しく攻撃するようになる」
白鳥は虚を衝かれ、黙り込む。
「最後に忠告だ。大きなことをやりとげるなら、薄暗がりに身を潜めろ。ワシには桜宮の血脈にこてんはんにされたヌシの、未来の泣きべそ顔が見える。そうなりたくなければ、鉈(なた)になれ。剃刀ではダメだ。これでもワシは、ヌシに期待しとるんだ」
巌雄は白鳥を長い間、じっと見つめていた。
海堂尊『螺鈿迷宮』三十四章 蝸牛炎上 本文 白鳥圭輔 桜宮巌雄 より
(略)
人は、残酷なもの、美しいもの、すべすべしたもの、耳障りなもの、そうしたありとあらゆる、五感を揺さぶるものを愛し、記憶に深く刻み込むものだ。しかしながらその評価は、感情の方向性はどうでもよく、持たされる感情の振れ幅に依存する。そしてその極限の姿が伝説という形式に昇華され、語り継がれていくわけだ。
だが、伝説とは異端であり、異端は普遍になり得ない。そして普遍になることこそが、真の勝利なのだ。名もなき末弟は、自らの名を「イヌ」という一般名詞にに溶け込ませることで、真の勝利を得た。だがその前に彼は、自分の前に立ちふさがっていた異形の兄弟、ケルベロスとオルトロスを倒さなければならなかった。
だが、語られなかった神話である。
だが、確実に起こった真実である。
なぜ、断言できるのか?理由は簡単だ。現在、ケルベロスとオルトロスの子孫は存在していない。そのことから逆算的に明らかではないか。
名もなき末弟による、異形の兄弟の粛清劇は酸鼻を極めたに違いない。
だからこそ、青史に痕跡に残されていないのだ。
なぜなら歴史というものは、すべからく勝者に都合良く書き換えられるからだ。
我々は、ケルベロスとオルトロスという異形が、粛清されたことを喜んでばかりもいられない。惨劇の立役者は今日、我々の周囲に、忠実な友人のような顔をしながらも、我が物顔で闊歩(かっぽ)し、徘徊している。決して油断してはならない。
次に「イヌ」に寝首を掻かれるのは、我々かもしれないのだから。
海堂尊『ケルベロスの肖像』序章 親愛なる犬たちへ 本文 より
すみれが生きている?
冥界に沈んだと思っていた女性が、いきなり生々しい息吹と共に舞い戻ってきた。
亡くなった恋人を追って冥界に下りてゆくオルペウスの気分だ。もっとも俺には竪琴を弾くなどという甲斐性はないけれど。
昔のスナップショットの一場面が蘇る。
あれは赤煉瓦棟の屋上で無理やり撮影された記念写真だった。
左に小百合、右にすみれを従え、両手に花状態の俺は、照れていた。
写真は対照的な双子の姉妹の印象を写し出していた。ちょっぴりな不機嫌な顔をして、唇を尖らせながらつん、と胸を張るすみれ。そして俺の左肩に華奢な身体を隠すようにして寄り添い、生真面目にカメラのレンズを見つめる小百合。
すみれの明るい鳶色(とびいろ)の瞳と、小百合のアルカイック・スマイルを湛えた赤い唇。
碧翠院の名花、若き日のふたりはかつて、東城大の神経内科学研究室に研究生として在籍したこともあったのだ。
あの写真はどこへ行ってしまったのだろう。
あの頃、目立っていたすみれは、小百合に劣等感を抱いていたように見えた。
碧翠院火災で、姉妹はふたりとも死んでしまったと思い込んでいた。それがいきなり、どちらか片方が生き残っていると告げられ、俺はすっかり動揺してしまった。
海堂尊『ケルベロスの肖像』2章 亡霊狩り 本文 田口公平 より
「えと、蟹座、です」
それなら最初から星座を聞けよ、と思いながら俺は素直に答える。
すると姫宮は天井を見上げて、しばらく何やらぶつぶつ小声で唱えていたが、唐突に滔々(とうとう)と喋り出す。まるでコンピューターの暴走みたいだ。
「蟹座のB型。アナロジーは猫、クラゲ、シメジ、レタス、キュウリ。そよ風、真珠、ラッコ、そして……螺鈿」
俺はぎょっとした。なぜここで螺鈿がからんでくるのだろう。
いや、その前にそもそもコイツは、一体何を言っているのだろうか。
姫宮はなおも滔々と続ける。
「さらに鏡とリンパ液。オパール、いぶし銀、青白い白、水っぽい陰鬱な味。寓意(アレゴリー)は、矢を放ちながら逃げる子ども。悪と同様、善にも強い感情の絶大な権力……」
「あのう、一体何をおっしゃっているのですか?」
とうとう我慢しきれずに、俺は口をはさむ。姫宮は小声で言う。
「田口先生って、ウワサ通りの方だったんですね。ちなみに、この評価は私がしたものではなく、国文社刊の『占星術の鏡』からの引き写しですから、どうかお気を悪くなさらないでください」
「いや、別に気を悪くしたりはしませんが、気になることはあります。今のお話は単に蟹座のアレゴリーで、血液型の要素が抜け落ちているように思えるのですが」
「すみません、またやってしまいました。だからいつも室長に叱られてしまうんです。お前は最後まできちんとしないからダメなんだ、と」
姫宮は自分の頬をぺちん、と叩いて、ぺこりと頭を下げる。
「では血液型を総合評価に反映させていただきます。蟹座の長所は鋭い感受性、繊細な心、想像力、短所は二重性、中傷、羨望、そこにB型の周囲の状況を顧みない、自己中心と呼ぶにはあまりに幼さすぎる突進力を加味しますと、先生の性格とは……」
そこで姫宮は、はっと息を呑む。俺は思わず引き込まれて尋ねる。
「……私の性格とは?」
「おしりぺんぺんしながら校長先生に刃向かうガキ大将……」
「おしりぺんぺんのガキ大将?」
「……のホサです」
途端にこれまで必死に何かをこらえていた高階病院長が、ついに大爆笑する。
海堂尊『ケルベロスの肖像』3章 ファンキー・ヒロイン 本文 田口公平 姫宮香織 高階権太 より
「ひとつ目の心残りは単なる説明不足のようですから、何でしたら不定愁訴外来で対応させていただきます」
高階病院長は、ふ、と笑顔になる。
「今のひと言で少し肩の荷が軽くなりました。それでもあの時、本当なら真正面から打ち倒すべきだった偉大な敵を、戦わずに葬り去ったという悔恨は消えません」
「その偉大な敵って、一体誰のことですか?」
「渡海征司郎(とかいせいしろう)という外科医です」
俺の中で、学生時代の外科実習の一場面が鮮やかに蘇った。医学生相手に容赦ない言葉を浴びせかけてきた、常識外れの外科医。その暗い瞳を思い出す。
----医者はボランティアではない。慰めの飴玉がほしいのなら、カウンセラーにでもなればいい。
そして、俺が懸命に言い返した時に返ってきた言葉。
----好きにしろ。世の中、そういう物好きな医者だって必要かもしれないからな。
俺が今、この立ち位置で残れているのも、あの言葉が原点だった気がする。
あの渡海先生と、高階病院長との確執はかくも深かったのか。
海堂尊『ケルベロスの肖像』4章 東城大の阿修羅 本文 田口公平 高階権太 渡海征司郎(回想・『ブラックペアン1988』) より
「ふたつ目の心残りは、ひとつ目よりもはるかに大きく、深いものです」
高階病院長は窓から遠く、海原を見た。
「昔、あの岬に桜の樹を植えようとした人がいた。私はそろを引っこ抜いた。それが正義だと信じていました。でも、長い時を経て今、自分の間違いに気がついたのです」
その話は以前も桜宮岬で耳にしたことがある。あの時は詳しくは聞けなかったが、今なら聞ける気がした。
「桜の大樹とは何のことですか」
「スリジエ・ハートセンターという大輪の花です。私はあの時、夜空に燦然(さんぜん)と輝くモンテカルロのエトワールを、地に叩き落としてしまったのです」
天才心臓外科医、モンテカルロのエトワール、天城雪彦。
その話は、医師になりたての頃、悪友の速水から聞かされたことがある。
天城先生が創設しようとした心臓疾患センターが頓挫したことを、速水はとても残念がっていた。時を経て救命救急センターのセンター長に就任した時、スリジエではなくオレンジになったが、桜宮に一本、大樹を植えることができたと喜んでいた。
「それはたぶん大丈夫です。速水のヤツがオレンジ新棟のトップに就任した時に、オレンジはスリジエの生まれ変わりだ、と言っていましたから」
「そうですか、あの速水君がねえ……」
こうして考えると、確かに俺は、東城大の歴史のど真ん中に近い場所にいるのかもしれない。高階病院長の跡目を継ぐなどとんでもないが、少なくとも東城大の一隅を支えていかなければならない宿命にあるような気がしてくる。
海堂尊『ケルベロスの肖像』4章 東城大の阿修羅 本文 田口公平 速水晃一(田口の言葉から) 高階権太 より
ここを開設してからというもの、いろいろなことがあった。東城大を襲った災難もバチスタ・スキャンダルから、ナイチンゲール・クライシス、オレンジ・ラプチャー、アリアドネ・インシデントなど、枚挙に暇(いとま)がない。
たとえば愚痴外来の設備投資にしてもそうだ。俺の根城であるこの部屋は、設計時のミスでできた袋小路のような部屋で、長年物置として使われていたが、俺がこの地に不定愁訴外来を立ち上げて以降、状況が激変している。最近では外付けの非常階段に風よけの覆いがつけられた。さらに驚いたことには、なんとこの外付けの非常階段の二階な扉を自動扉にして不定愁訴外来という麗々しい看板をつけよう、などというオファーがあったりしたが、さすがにそれは全力を挙げてお断りした。
看板をでかでかと掲げることほど、不定愁訴外来の実存と意義から掛け離れたことはない、というのが表向きの理由だったが、実は本音の理由もそのまんまだった。
不定愁訴外来は日陰の花。人知れずひっそりと咲く。
それが俺のモットー、いや、不定愁訴外来の理念、というヤツだ。
海堂尊『ケルベロスの肖像』5章 廊下トンビの墜落 本文 より
昨今、ネットの情報革命によって医療に対する社会の姿勢は大きく変わった。
そのひとつの原因に、これまで専門家しか知り得なかった専門知識が労せずに獲得できてしまう現状が挙げられる。だが検索で得る知識は実体験の裏打ちがないため、あまり有効に機能せず、結局は経験がものを言う専門家の必要性は損なわれていない。ただし、素人にそのあたりの阿吽(あうん)の呼吸がわからない。
つまり“生兵法は怪我の元”という格言を地でいく医療素人が増えているわけだ。
病気に罹(かか)ると、誰しも自己防衛本能に刺激されて知識欲が異常に高まる。それがきわめて稀で、かつ軽微な疾病だったりすると、専門職である医師の関心が低いため、意欲のある素人が知識量で凌駕してしまうこともある。すると診療現場で、主治医が患者から病気についてレクチャーされてしまうという悲喜劇が起こる。
そこまでなら、まだ可愛いものだ。
そうした検索知識の中には、あまりに先鋭的すぎて、臨床現場ではとても使えないようなものも混じっている。そんな専門家の説明を無視し、検索知識に固執し、声高に治療方針に異議を唱え、自分の主張を押し通そうとする患者がいる。
そうした患者は、モンスター患者と呼ばれている。
海堂尊『ケルベロスの肖像』5章 廊下トンビの墜落 本文 より
「私は責任なんて取れません」
俺の言葉を聞いて、渡辺さんはくわっと目を開く。
「お薬というのは、もともと毒なんです。ですから正常の人は絶対飲みません。ではどうして薬を飲むのか。それは毒の害以上に、病気の状態が悪いからです。薬は毒で身体には悪いんですが、病気に対する害の度合いが、身体に対する度合いより強いので、お薬を飲む意義があるのです」
「しかし、そのことで私の身体がダメージを受けたら……」
「ちょっと待ってください。私の話はまだ途中です」
俺は渡辺さんの話を途中で遮る。渡辺さんは口を開きかけたまま言葉を止める。根は素直なタイプのようだ。
「渡辺さんのお身体を治すのはお薬ではありません。渡辺さん自身の身体が治すお手伝いをするだけです。今回、渡辺さんの身体を治す薬を見つけながら、副作用でその薬が使えなくなっています。薬はこれまでの医学の叡智の賜物で、ひとつがダメならすぐに次というわけにはいきません。ですから微量成分によるアレルギーの可能性が考えられる以上、まずそれを除外してみる必要があるんです」
渡辺さんは頑迷な表情を浮かべ、きっぱりと言う。
「それはムダです。私の身体は、この薬が問題と叫び続けていますから」
「でも、夜は眠れているようですから、掻痒感は我慢できないほどでもなさそうです。なので、新しいお薬は必ず飲み続けてください。二週間後、もう一度、診察します」
俺はさらさらと処方箋を書き上げ、渡辺さんに手渡した。
「これは私の勘ですが、今回のお薬では身体は痒くならないと思いますよ」
渡辺金之助さんは、釈然としない表情をありありと浮かべながら俺を見つめたが、結局はその処方箋をひっ掴んで部屋を出て行った。
海堂尊『ケルベロスの肖像』5章 廊下トンビの墜落 本文 田口公平 渡辺金之助 より
美智はベッドに横たわっていたが、俺の顔を見るとごそごそ上半身を起こした。
「ああ、そのままで構いませんよ」
「ワシをナメたらあかん」
美智は不敵に笑い、ごそごそと咳き込んだ。
碧翠院桜宮病院では、乳癌の末期癌のホスピス患者だった。癌が全身転移しているにもかかわらず美智は飄々と生き続けている。治療しなくてもここまで生きられるのだ、という現代医療のアンチテーゼを、東城大の医療従事者たちに突きつけているかのように。
美智のケアをしている看護師の顔には時々、やるせない疲労の色が浮かぶ。それは自分たちの治療が、本当はあまり効果がないものかもしれない、と感じるがゆえの徒労感かもしれない。
海堂尊『ケルベロスの肖像』9章 碧翠院の忘れ形見 本文 田口公平 高原美智 より
「そんなことないですよ」
その場しのぎウソをつくと、美智は笑う。
「田口先生にウソをつかれるようになったら、いよいよお迎えは近ろうもん」
すべてを悟っている相手に、中途半端な慰めは意味がない。俺は、今日の訪問目的を果たすことにした。
「実は今日、美智さんに聞きたいことがあって、ここに来たんだ」
いきなり美智はがばりと、元気よく上半身を起こす。
「田口公平がワシに聞きたいこと?よかろうもん、何でも答えちゃる」
「何で急にそんな元気になるんです?」
「すみれのヤツが言ったことだで。人は病人でも、誰かの役に立てるなら、死ぬ間際まで働かなくちゃダメなんだろうもん」
その言葉に胸が熱くなる。
すみれの言葉が、いのちの火が消えかけている患者の口から蘇り、俺に手渡される。
すみれが生きている可能性は低い。
だが、すみれは美智の中で、今も生きている。
碧翠院桜宮病院。死を司る病院だと言われていたその病院で、すみれは末期患者を集めて企業を作り、自立させようという独自の試みをしていた。俺は、そのトライアルを遠くから興味深く眺めていた。
海堂尊『ケルベロスの肖像』9章 碧翠院の忘れ形見 本文 田口公平 高原美智 より
美智の話をたっぷり聞いた足で学生課に行き、天馬大吉について尋ねてみると、学生課の事務員は、ろくに書類を調べずに言った。
「また、天馬のヤツが何かやらかしたんですか?」
どうやら東城大では、天馬大吉は札付きの問題児として一目置かれているようだ。
「いや、学習状況とかの話じゃありません。別件でちょっと話を聞きたくて」
俺は医学生の学習状況が悪いからといって、お説教をするようなタイプではない。自分にそんなことを言う資格がないことは、俺自身が一番よくわかっている。
学生課の男性事務員は、過去の履修表をプリントアウトして手渡しながら言う。
「授業をサボっては、留年を繰り返し、放校寸前でかろうじて踏み留まっていれ怠け者の劣等生ですよ。まあ、最近は少し心を入れ替えたようですが」
履修表を見て、その評価が妥当なことを確認する。だが俺は成績表を改めて詳細に見直して、言う。
「でも、ここ二年はきちんと履修しているようですね」
「どうでしょうねえ。人間の本性ってそんなに簡単に変わりませんですから」
肩をすくめる。学生時代にサボリ魔だった俺は、ひとつ間違えば天馬と同じ運命をたどった可能性もあった。そうならなかったのは高階病院長がいい加減で、かつ度量が大きかったからだ。ただし、そのツケを今も延々と払わされている、というオチがあるのだが。
海堂尊『ケルベロスの肖像』9章 碧翠院の忘れ形見 本文 田口公平 学生課の男性事務員 より
立ち去る直前に、城崎は振り返る。
「そうだ、ケルベロスの塔が何か、という点について、裏付けはないのですが、見当がつきます。私の仮説をお聞きになりたいですか?」
俺はうなずく。まったく見当がつかないのだから、当てずっぽうの意見でも参考になるはずだ。
すると、城崎は静かに言った。
「ひょっとしたらケルベロスな塔とは、Aiセンターのことを指しているのかもしれません。ケルベロスは、冥界の入り口を守る地獄の番犬です。そしてAiセンターも死者が黄泉(よみ)の国へ行く時に通り過ぎる塔でしょう?ならばそこにケルベロスが棲みついていたとしても、決しておかしくはないはずですから」
城崎はその不穏で不吉な言葉を残し、姿を消した。
俺は呆然とした。なるほど、確かに説得力がある仮説だ。
海堂尊『ケルベロスの肖像』11章 4Sエージェンシー、不発 本文 田口公平 城崎 より
「ケルベロスの塔って何のことでしょうか」
それは俺も高階病院長も、最初から疑問に思っていたことだった。
すると思わぬ人間が回答した。それは南雲監察医だった。
「本庁に出回っている隠語ですな」
胸でくすぶっていた疑惑の一部が氷解したのを感じながら、俺は尋ねる。
「それって一体、何を指す隠語ですか」
すると今度は斑鳩室長が、俺の顔を凝視しながら、言った。
「ケルベロスの塔とはAiセンターを指す隠語です。発祥の地は警察庁らしいのですが、今では霞が関全体に通用する隠語になっているようです」
斑鳩室長の発言のせいで、俺は奈落の底に叩き込まれる。言葉の意味を理解したおかげで自分の居場所が大変な危険地帯であることが確定してしまったからだ。
「なぜAiセンターを、ケルベロスの塔と呼んでいるんですか?」
斑鳩室長は目を細めた。その無機質な視線に、背筋に寒気が走る。
だがそれは一瞬だった。斑鳩室長は静かに答えた。
「ケルベロスは三つの首を持つ地獄の番犬です。Aiは地獄の入口で受ける検査なので生息地域は同じ。三つの顔を持っているという点も共通しているからでしょう」
「Aiが三つの顔を持っている?どういうことですか?」
俺の問いに、斑鳩室長はうなずく。
「Aiは医療の最終検査であると同時に、犯罪捜査の端切にもなる。そして遺族にとっては救いの光です。このように司法、医療、そして遺族感情の三方向に顔を向けているので三つ首だ、と申し上げたわけです」
海堂尊『ケルベロスの肖像』14章 呉越同舟会議 本文 田口公平 別宮葉子 南雲忠義 斑鳩芳正 より
藤堂には、もはや言い返す気にもならない。
「あれがアントノフの機影です」
自衛官が指さした東の空に、きらりと光る輝点が見えた。その点はみるみる膨張し、ふとっちょでずんぐりむっくりの機体に変わっていく。遅れて轟音が響いてくる。
「マイボス、アントノフのウクライナ語の愛称、ムリーヤな意味は知ってますか?」
藤堂の問いに、俺は当然、首を振る。すると藤堂は言う。
「ムリーヤの意味は、“夢”。そして“希望”なんですよ」
俺は震えた。思い返せばそれは、自分が何か見えない枠組みに押し込められ、身動きが取れずに窒息させられていくことへの恐怖と畏怖のせいだったような気がする。
海堂尊『ケルベロスの肖像』17章 戦車隊司令官 本文 田口公平 藤堂文昭 自衛官 より
ためらいながら、重い足取りで階段を上り続けた俺は、ようやくその部屋にたどりついた。重い扉を押し開くと、薄暗い部屋に灯りが点(とも)る。人感センサーらしい。
灯りに照らし出された大講堂の内部を見て、息を呑む。
天井には青を基調てしたフレスコ画が描かれている。十二枚の扉には世界各地の神話の寓意が描かれている。つまりこの部屋は、十二の神話で支えられているわけだ。
よく見るとそれらはタイルを細かく貼り付けたモザイクでできている。
ステージ左側の絵画は三つ頭の犬、ケルベロスがモチーフになっていることに気がつく。“ケルベロスの塔を破壊する”という脅迫状の文言が浮かぶ。
その反対側、ステージ右側に美しい女性ね半裸像が配置されていた。笑みをたたえなふくよかな笑窪(えくぼ)が浮かんでいる。その目は真っ直ぐ、身を低くして今にも飛びかかってきそうな猛犬に注がれている。愛の女神、プシュケだろうか。
かつて、双子の女医に案内してもらった日に聞いた言葉が蘇る。
----この季節、この時間にこの窓から見える桜宮湾はきらきらとしてとても綺麗なの。
跳ね返りで俺に逆らってばかりいたその女性が、はにかんで告げた表情を、今でもありありと思い浮かべることができる。
海風の通り道だからとっても涼しいのよ、とも教えてくれたその部屋は確かに、真夏にもかかわらず今もひんやりしていた。
海堂尊『ケルベロスの肖像』19章 司法解剖が見落とした虐待 本文 田口公平 桜宮小百合・すみれ(回想?) より
季節はあの日と同じだが、この部屋には海風が吹き抜けることはもうない。
俺の中に保存されていた古い音源が、ところどころ雑音で途切れながら再生される。
----旧陸軍が設計したこの病院は、ある仕組みで簡単に崩れてしまいます。
どうしてあの時、あの女性は嬉しそうに笑ったのだろう。まるで破滅の淵をスキップしながら歩くのが楽しくて仕方がない、という様子で。
そう考えたその時、初めて俺は、記憶に保存されていた言葉がひとりのものではなく、ふたり分の女性の言葉が入り混じっていたものだったということに気がついた。
するとあの時、この部屋に俺は、ふたりの女性と一緒にいたのだろうか?
すっかりその事実を忘れ去ってしまっていた自分の記憶の曖昧さに愕然とする。
自分の記憶でさえも定かでないのあれば、俺は一体この先何を信じていけばいいのだろう。
記憶の中の画像には、明るい瞳をした跳ね返りの女性の姿たしか映っていない。かくの如く記憶というものは、いともたやすく捏造(ねつぞう)されるものだ。
封印されていた古い記憶が、建物の構造と共鳴して呼び起こされ、古傷のように俺を苛(さいな)む。これは一体、何の因果なのだろう。
遠のいていく記憶を追って深い淵に沈潜し、自分を見失いそうになる。
俺は静かに部屋を出た。胸にうずく、古傷の痛みに耐えながら。
海堂尊『ケルベロスの肖像』19章 司法解剖が見落とした虐待 本文 田口公平 桜宮小百合・すみれ(回想) より
美人薬剤師の後ろ姿を名残り惜しく見送った俺は、改めて渡辺さんに向き合う。
「これでおわかりですね。この薬は片栗粉ではありません。今回のお薬では掻痒感は出なかったようですし、めまいの症状も治まったみたいですから、これからは今回のメマイトレールを服用してください」
「そんなバカな……それならどうして、診察後ににあんなことを言ったんだ?」
渡辺金之助さんは、兵藤クンを睨みつけながら、尋ねる。
「あの会話を立ち聞きしていらしたのなら、最後まで聞いていただけばよかったんです。片栗粉のフラシボを出すという提案はジョークです。そもそも、大学病院には片栗粉の錠剤がないなんて常識なのに、兵藤先生は知らなかったらしく感心されてしまい、私の方が驚いたくらいなんです」
俺の言葉に目を白黒させている兵藤クンを置き去りにして、俺は続けた。
「医者は患者に真実を伝えます。特に、私のような部署では信頼関係がすべてです」
渡辺さんは、俺の顔をじっと見つめた。やがて立ち上がると深々とお辞儀をした。
「これからは新しいお薬を飲みます。とても具合がよいものでね」
そうして、晴れやかな顔で部屋を出ていった。
海堂尊『ケルベロスの肖像』20章 フラシボの顛末 本文 田口公平 兵藤勉 渡辺金之助 田代(薬剤師) より
渡辺金之助さんを見送ると、兵藤クンは詰るような目で俺を見た。
「ひどいじゃないですか、田口先生。この僕まで欺すなんて」
「敵を欺(あざむ)くにはまず味方から、さ。それにさっきのは本音だぜ。まさかお前がこの病院に片栗粉のプラシボがあるなんてヨタ話を信じるなんて、思いもしなかったよ」
これにはさすがの兵藤クンも、ぐうの音も出なかった。
「すべて丸く収まったし、僕を味方だと思ってくれているのもわかったから文句はないんですけど、なぜか胸がもやもやするんだよなあ」
ぶつぶつ呟きながら、兵藤クンは部屋を出て行った。
藤原さんが新しい珈琲を出してくれた。
「お見事でしたわ。田口先生、老獪(ろうかい)さに一段と磨きがかかってきましたわね」
素直に喜べない褒め言葉に、俺は小さく「どうも」と頭を下げるしかなかった。
それは小さな誤解の集積だ。俺は患者にウソはつかない。欺したのは兵藤クンだけ。それだって仲間ウチのジョークで済む範囲だ。なのにどうして、そんな俺は誤解されてしまうのだろう。
海堂尊『ケルベロスの肖像』20章 プラシボの顛末 本文 田口公平 兵藤勉 藤原真琴 より
俺は、彫像のように動かなくなってしまった南雲に尋ねる。
「南雲さんは、この症例を解剖すべきだ、とおっしゃっていましたが、体表から見てモチによる窒息ではないと見抜いていたんですか」
南雲はうす笑いを浮かべて、首を振る。
「私は、解剖するぞと遺族を脅してみろ、と言ってみただけだ。こうなってしまった以上、今の質問に答えるのは野暮、というものだ」
俺は、半分は挑発する気持ちで、残り半分は好奇心から南雲に尋ねる。
「ちなみにこの症例、法医学者が解剖していれば真相はわかりましたか?」
南雲は振り返ると、俺を凝視した。それから、ふう、と笑うと、答える。
「私なら、解剖しなくてもわかった。大概の法医学者は、解剖すれば真相はわかる。だが一部の出来の悪い法医学者は見逃したかもしれない」
そして扉を押して外に出ようとして、振り返る。
「こんなゴマカシ症例は極北市にもごまんとあったが、私は解剖せずに見破っていた。だから極北市警の署長は私に頭が上がらなかったのさ。だが、検視の質が低下している今、Aiセンターは必要悪かもしれんな」
そういうのは必要悪とは呼ばないでしょう、と言いかけたが、その時にはすでに南雲の姿は忽然(こつぜん)と視界から消えていた。
桧山シオンが、風にそよぐ葦(あし)のような風情で、俺をひっそり見つめていた。一瞬目が合うと、シオンは目を伏せた。
その時、煌めくようなアルペジオの和音が清冽(せいれつ)に響いた。
海堂尊『ケルベロスの肖像』21章 Aiセンター、始動 本文 田口公平 南雲忠義 桧山シオン より
島津がライスケーキ症例で気道が確保されている事実を呈示すると、観客席からは嘆息が漏れた。真っ先に反応したのは、医療事故被害者の飯沼さんだった。
「素晴らしいです。こうして死因が市民社会に呈示され、それに対し説明が加えられると、医療の質の向上に役立つでしょうね」
すると白いマスクを装着した医療ジャーナリスト、西園寺さやかが音声サポートシステムを稼働させ、電子音声で答えた。
「真実ガ、露呈スルノハ、素晴ラシイ、コトデス。デモ、望マヌ、過去マデモ、露呈サレル、危険ガ、常二、ツキマトウ、デショウ」
それが一体、誰に向けられた発言なのか、誰にも理解できなかった。
海堂尊『ケルベロスの肖像』22章 サプリイメージ・コンバート(SIC) 本文 西園寺さやか 飯沼 より
栄えある講演会のトリには、センター長である俺が指名された。
俺は力の限り抗ったが、場に居合わせたメンバーの全員一致であれば抵抗もできない。最後は往生際の悪い俺に引導を渡すように、高階病院長が言った。
「謙遜も過ぎると、嫌味にしか見えませんよ、マイボス」
そのひと言で抵抗を諦めた。まさに耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、という苦渋の決断だ。ふだんなら相当に紛糾するはずの人選や課題が、さして揉めずに決まったため、Aiセンターの前途は洋々たるものに思えた。
だがそれは、大いなる誤解だった。真相は、正しい道筋に乗っていたのではなく、単に多くの人の多様な思惑がバッティングしなかっただけのことだったのだ。
海堂尊『ケルベロスの肖像』22章 サプリイメージ・コンバート(SIC) 本文 田口公平 高階権太 より
「つまりSICとは、10ミリのCTからコンマ1ミリのスライスを創出する技術なのですね。もっとも、それは見方を変えれば、単にすき間のデータをでっち上げているだけに見えますが」
低い掠れ声で異議を唱えたのは、斑鳩だった。
当然の疑念だ。10ミリスライスからコンマ1ミリのスライスを創出するというと聞こえはいいが、要は間に存在する99枚のスライスを「創作」するに等しいのだから。
「微分と積分すら、でっち上げと言い出しかねない、文系の方らしい異議ですね。ですが、数学的に証明されている理論の画像診断への応用なんです」
俺たちは彦根の口舌に煙に巻かれてしまった。コイツと話をしていると、学生時代からいつもこうなってしまう。だが、数学的事象に強い島津や藤堂の表情を盗み見ると、いたく感心している様子なので、彦根の言っていることは妥当なようだ。
こうした判断法は、俺の師匠ん騙る白鳥の受け売りだ。反射衛星砲的判断法とかいうらしい。ちなみにヤツの提唱する極意なひとつらしいが、ナンバーは忘れた。
俺に言わせれば、単なる他力本願的思考法にしか思えないのだが。
そんな些細なことはいいとして、とにかくこうして会議の流れは決定した。
つまり桜宮Aiセンターのデータ・アーカイブスに、碧翠院桜宮病院で蓄積された先行的CTデータをマウントすることが決定されたのだ。
俺はセンター長として決定を下した後で、しみじみ考える。
この地にあった病院の固有データが今、跡地に建設された新しい施設に基礎情報を提供することで輪廻する。これぞ、学術の精華というものだろう。
海堂尊『ケルベロスの肖像』22章 サプリイメージ・コンバート(SIC) 本文 田口公平 彦根新吾 島津吾朗 藤堂文昭 斑鳩芳正 より
高階病院長は大笑いを始めた。小百合は目を見開いて凝視する。
「私が跪いてまでして敬意を払いたい相手、それはあなたではない。あなたの父上、銀獅子の桜宮巌雄先生です。あなたなんぞ、世間知らずのお嬢ちゃん、桜宮の当主の資格などありません。それどころか、あなたは次の世代の東城大にも敵わない。あなたの捨て身の攻撃を受けた今でも東城大の魂である彼ら、そしてAiの未来はその輝きを失っていないんですから」
阿々大笑しながら、高階病院長は俺と彦根をぐいと両腕で引き寄せる。そして昂然と言い放つ。
「これが東城大の良心、そして医療の未来。打ち砕かれることのない希望の光です。彼らが生き残っている限り、東城大の命運が尽きることはない」
俺は、高階病院長の啖呵(たんか)に呆然としながら聞き惚れる。
海堂尊『ケルベロスの肖像』26章 天馬、飛翔す 本文 田口公平 彦根新吾 桜宮小百合 高階権太 (同様の表現は『輝天炎上』にもあり。興味ある方は読み比べをすすめます) より
炎が爆ぜる音の中、ばらばらと建材の破片が降り注ぎ始めた。
俺と彦根を、交互に凝視していた小百合は目を細めて、うっすらと笑う。
「腹黒タヌキの後釜は、優柔不断な懐刀とクソ生意気なスカラムーシュなのね」
小百合が言い終えたその瞬間、天井から太い梁(はり)が炎に包まれながら落ちてきて、ステージ上の小百合と観客席の俺たちの間を遮った。
「いかん、もう限界です。避難しますよ、田口先生」
俺は、高階病院長の呼びかけに我に返り、足元にうずくまる彦根をどやしつける。
「この程度でギブアップするとは、お前の野望はそんなチャチなものだったのか。目を覚ませ。自分の足で立ち上がれ」
俺は彦根の頬を張る。その声に彦根の目の光が蘇る。
「冗談じゃない。前線基地をひとつ失っただけ、本当の闘いはこれからです」
「その意気だ。一緒に逃げるぞ。とっとと走れ」
彦根はゆっくり歩き始める。
海堂尊『ケルベロスの肖像』26章 天馬、飛翔す 本文 田口公平 彦根新吾 桜宮小百合 高階権太 より
「ひょっとしたらあの脅迫文は、すみれ先生が私たちに対する挑発と忠告を兼ねて、冥界から送りつけらてきたのかもしれませんね」
高階病院長はまじまじと俺の顔を覗き込む。
「どうしたんですか、突然オカルトめいたことを言い出して。いいですか、碧翠院に焼け跡には四つの死体があり、昔亡くなったエンバーミングされた遺体が一体、含まれていた。つまり桜宮の双子のうち、ひとりだけ逃げおおせることができたわけです。そしてその生き残りは、私たちの目の前に姿を現した小百合先生で決まり、すみれ先生が生き残っている可能性は皆無です」
「それはその通りなんでしょうけど……」
俺は大海原を眺めながら、続ける。
「でも、それでもすみれは生きているような気がするんです」
「それは、ケルベロスの塔が焼け落ちてしまったからかもしれません。冥府の通り道を守護する番犬を焼き殺せば、冥界から蘇ることも可能になりますからね」
今度は俺が高階病院長をまじまじと見つめる番だった。
その視線に気がついて、高階病院長は言う。
「いや、やめましょう。お互い、オカルト趣味はないはずですから」
俺はうなずいた。だがその時、炎の中で聞いた声を思い出す。
----逃がさないわよ、小百合。
改めて思い出すと、あれはすみれの声に似ていた気がする。だとすると高階病院長の言う通り、地獄の番犬ケルベロスが桜宮の業火に焼かれている隙に、冥界を遡航(そこう)してきたすみれが、小百合を本来いるべき冥府へ連れ戻しに来たのかもしれない。
……いや、もうよそう。
世は科学による合理的世界で、もはや霊魂や地獄が存在する隙間はない。それが、科学の時代の現実だ。そしてその現実世界で脅迫状の予言通り、八の月にケルベロスの塔は崩壊させられた。ただそれだけのことだと考えるしかない。
海堂尊『ケルベロスの肖像』27章 飛べ、綿毛 本文 田口公平 高階権太 桜宮すみれ(回想?) より
「私をなかなか自由の身にしてくれない田口先生の執念深さは、よく存じ上げています。ですから私の一身上の都合などでは、最後のお願いなんて致しません」
「それなら、どういうことですか?」
「実はこのたび、東城大学は、大学病院経営から撤退することになりました」
「え?撤退ってつまりは大学病院が倒産するんですか?」
思わず聞き返す。自分が耳にした言葉が、にわかに理解できなかったからだ。
「大学病院は独立行政法人ですから倒産はできません。ですが閉院はできるんです。このままで診療をすればするほど赤字が膨らむばかり。勇気ある撤退を考えなければならない時が来てしまったのです」
「桜宮の医療を支えてきた東城大が撤退するとなると、影響は計り知れません。ここは三船事務長の改革案を採用して、もう少しだけ頑張ってみませんか」
言いながら、ああ、俺らしからぬ発言だな、と思う。
桜宮を長年支えてきた大学病院がなくなってしまうなど、想像もしなかった。
俺はずっと、こんな病院、いつか辞めてやるぞ、と思っていた。だが俺が辞めても大学病院は存続し、たまに酒場で大学を辞めた仲間と古巣の悪口を言い合うくらいはできるだろうと思っていた。だが、そんな悪口すら言えなくなってしまうのだ。
デラシネ、根無し草という言葉が浮かぶ。
デラシネになるのは俺たち医療従事者だけではない。毎日病院に通ってくる患者もまた、デラシネになってしまう。
そんなことを、腹黒タヌキの高階病院長がむざむざと容認するとは信じられない。
海堂尊『ケルベロスの肖像』最終章 東城大よ、永遠に 本文 田口公平 高階権太 より
「そこで田口先生に最後のお願いがあるんです」
「何でしょうか」
俺は顔を上げた。高階病院長が口を開こうとする前に、俺は右手を挙げた。
「あ、ちょっと待ってください」
目を閉じる。深呼吸をして走馬燈のように脳裏を駆け巡る。
目を開けた。深呼吸をして、咳払いする。
俺を見つめる高階病院長のロマンスグレーの髭を見下ろしながら、ひと言告げた。
「その依頼、お引き受けします」
高階病院長は開きかけた口をぽかんと開けたまま、目を見開いた。
「田口先生、あなたって人は……」
そう言ったきり、高階病院長は俺を見つめ続けた。
実はこの部屋に呼び出された時から俺は、それがどれほど無茶な依頼であろうとも絶対に引き受けようと決めていた。これまで酷い目に遭わされ続けてきた、腐れ縁の上司のラスト・リクエストに対応できなくては、懐刀の名がすたる。
海堂尊『ケルベロスの肖像』最終章 東城大よ、永遠に 本文 田口公平 高階権太 より
これでひとつの時代が終わった、と思う。高階病院長は、淡々と続ける。
「さて、ここからが本題です。もし世論がこの発表を黙認すれば、話はそこまで。でも、もしもそこで市民から再建を願う声が上がってきたら、その時は田口先生が院長代行として、可及的速やかに新生・東城大学医学部付属病院を再起動させてください」
俺は口を半開きにして、唖然とした。息が止まるかと思った。
そんな俺を高階病院長がじっと見つめているのに気がついて、大あわてで言う。
「じょ、冗談じゃありません。そんな大役、この私に務まるはずなど……」
「おや、どんな依頼であろうと、私の最後のお願いは引き受けてくれるのでは?」
「いくらなんでも、病院長代行なんて、そんな……だいたい、私には実績が……」
「構いませんよ。どうせ一度は潰れた病院なんですから」
「そこまで腹をくくっているなら、何も今、あえて病院を潰す必要はないのでは?」
「それはダメなんです。ケジメをつけなければ、社会が納得せず、再建への道も閉ざされてしまう。“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”という偈(げ)は、剣道の極意でして」
クソ、腹黒タヌキめ、しおらしい顔をして、とんでもないヤツだ。
だが、もはや俺には選択肢がなかった。
しばらくうつむいていたが、やがておかしくなってきた。
くすくす笑いながら顔を上げる。そして、うなずいた。
「わかりました。高階病院長のラスト・リクエスト、しかと承りました」
うろたえることなどなかった。これまでだって、ずっとこんな調子だったのだ。
海堂尊『ケルベロスの肖像』最終章 東城大よ、永遠に 本文 田口公平 高階権太 より
振り返ると、高階病院長が新たな煙草に火を点けながら、苦笑している。
部下が上司よりふんぞり返るであろう、そんな連中を引き連れて、一度は潰れた東城大学医学部付属病院の復興をしなければならないなんて、茨の道どころか、ガラスの破片があふれる瓦礫の山を裸足で歩くようなものだろう。
だが、それもいいではないか。所詮世の中はそんなものなのだから。
俺は病院長室の窓に歩み寄ると、窓の外の景色を眺めた。
自分の姿をハーフミラーになった窓に映し見る。すると一瞬、俺の姿が三つ頭のケルベロスに見えた。これから俺は冥界と現世の間を行き来する番犬になるのだろう。
あるいは、大学病院と市民社会の境界線を綱渡りするピエロだろうか。
いずれにしても長く険しい道になることは間違いない。
だが、俺は覚悟を決めた。
心配ない。いつでも俺は、そうやって綱渡りで生きてきたのだ。
振り返ると俺は、大勢の人々の温かい視線に包まれていた。
思わず照れてしまい、再び窓の外に視線を投げる。
ふと、この窓から見える桜宮の風景が大好きだったという古い記憶を思い出す。
院長代行になるということは、この窓からの景色を独り占めできるということだ、と気づいて呆然とする。それは長い間ずっと、叶わぬ望みだと思っていたからだ。
願いごとは叶う。ただし半分だけ。そして肝心の願いごとを忘れ果てた頃に。
どうやらそれが俺の宿命らしい。
桜宮湾の水平線がきらりと輝いた。
眼下では今、暑かった夏が終わろうとしている。
海堂尊『ケルベロスの肖像』最終章 東城大よ、永遠に 田口公平 白鳥圭輔 兵藤勉 黒崎誠一郎 藤原真琴 高階権太 より
公衆衛生学教室がある赤煉瓦(れんが)棟は、新病院が建築された後に基礎系の研究課になった。
冬は暖かく夏は涼しいという、井戸水みたいに身体にやさしい戦前の建物だ。
けれども昔の建物だから問題も多い。たとえばエレベーターは速度が遅い上、扉が閉まる瞬間、照明が落ち一瞬暗闇になってしまう。それは僕の入学当時の最上級生が新入生だった頃からそうだったらしいから、建築直後からの不具合なのかもしれない。
僕たちは急いでいたので、いくら待ってもこないエレベーターは諦め、階段の北側公衆衛生学教室へと向かう。
教授室をノックすると、清川教授は自ら扉を開けて招き入れてくれた。
公衆衛生学の授業は睡眠の補充に充てていたので、教授の顔をまともに見たのは初めてのような気がした。
教壇で喋っている時にはうすぼんやりした印象しかなかったが、間近で見るとなかなか渋い美形だった。一部の女子学生が“プリティ清川”と呼んできゃあきゃあと言うのもさもありなんと納得できる風貌だ。
海堂尊『輝天炎上』2章 公衆衛生学教室・清川司郎教授 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 より
学生のクレームに、こんな風に素直に恥じるなんて、なんて素直で伸びやかな先生なのだろう。プリティ清川というあだ名は伊達ではない。
「しかし、医学生の君が、なぜそこまでして碧翠院に執着するのかな」
碧翠院について誰かと語り合えるなんて、滅多にない。僕は勢い込んで言う。
「昔、怪我で入院したことがあって、その時に、院長先生に医者の心得や桜宮市の死因究明制度の実情と問題点を教えてもらったんです」
「それっていつ頃の話?」
「病院がなくなる直前、去年の六月です」
脳裏に巌雄先生の言葉が蘇る。
----医学はクソったれの学問だ。
「君が碧翠院に、ねえ……そうか、それでか」
清川教授は腕を組み考え込んでいたが、顔を上げる。頬には微笑が浮かんでいた。
「実は研修医の時、半年ほど碧翠院で研修させてもらった。すると君とは同門になるわけだね。私は今でも巌雄先生を尊敬しているよ。巌雄先生から大切なことをたくさん教わったからね」
僕は呆然とした。まさかこんなところで碧翠院との因縁の糸が絡み合うなんて……。
「それって、どんなことですか?」
急(せ)き込むように尋ねる僕に、清川教授は穏やかに答える。
「患者の死に学ぶ姿勢を忘れたら医学は腐る、という警句だ。基礎研究の世界に身を投じてからも、一日たりともその教えは忘れたことはない」
背筋に電流が走る。清川教授が抱き続けた言葉は、一見すると僕の教えられた言葉とは全く似ていなかったけれども、よく考えたら、僕の知っている言葉の裏返しのようにも思えた。
----死に学べ。そうすれば、いっぱしの医者になれるだろうさ。
海堂尊『輝天炎上』2章 公衆衛生学教室・清川司郎教授 本文 天馬大吉 清川司郎 桜宮巌雄(回想)より
頬を上気させた冷泉をみて、ひょっとしてコイツはファザコンかも、などと、冷泉に知られたらはったおされそうな不埒(ふらち)なことを考える。だけどそのファザコン度は相当高いと確信した。
そう考えると、突然巻き起こった冷泉の、清川教授への傾倒も理解できた。どこぞの歴史学教室の教室であるパパリンへ向けた冷泉の想いを、ミミックとし満たしてくれる人物。それが清川教授だったのだ。
僕はさっきから釈然としない感情を抱いていた。俗な表現をすれば、カチンと来ていた。冷泉が清川教授の説明にしきりに感心している様子が原因のようだが、どうしても自分がいらついているのかわからなかった。でもようやくその理由がわかった。
やっかみ、或(ある)いはもっともこころをえぐる表現として、嫉妬とい二文字が浮かぶ。
シット(クソ)、ファック・ユー。
中指を立て言い放つ僕は、「シット、かっこ、クソ」という表記を口にして、日本語と英語の麗しいアナロジーに感動する。確かにシット(嫉妬)はクソみたいな感情だ。
僕は人知れず、そっとため息をついた。
海堂尊『輝天炎上』2章 公衆衛生学教室・清川司郎教授 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 より
「その、まあ、メリットがあるからいいことかなあ、と思います」
「ほう、どういうメリットが考えられるのかな」
清川教授の連続質問に、冷泉深雪のツイン・シニョンの髪飾りが揺れる。
バカめ、知ったかぶりをし続けた当然の報いだ。しかし冷泉はとびっきりの優等生なので、ここに至っては見栄をかなぐり捨て、小声でこっそり尋ねてくる。
「Aiって何なんですか?」
「死亡時画像診断のことだよ」
今さらそんな堂々と聞くなよな、と思いながら僕は小声の早口で冷泉の耳にささやく。そして冷泉に投げかけられた質問を肩代わりして答えてやる。
「死因究明制度の基本である解剖にはデメリットがたくさんあります。解剖医が少なくマンパワー不足、遺体を傷つけるし、時間も金もかかる。その上、情報公開の仕組みもできていない。だから解剖率がニパーセント台にになってしまった。そこで救世主として登場したのがAiです」
「パーフェクトだね」
そりゃそうだ。現役の厚生労働省の変人医系技官から直接レクチャーを受けた、最先端の情報だもの。
といっても、聞いてからすでに一年も経過しているんだけど。
海堂尊『輝天炎上』3章 セピア色の因縁 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 厚生労働省の変人医系技官(白鳥圭輔)より
「なあ、冷泉、留年生のジンクスは知ってるんだろう」
冷泉深雪はうつむく。間違いなくコイツは知っている。ならばどうして僕を誘う?
とどめを刺すために仕方なく、僕は留年生のジンクスについて詳細に説明する。
「留年生が参加した勉強会では、高い確率で国試落第者が出る。留年生自身もしくは、留年生プラス一名のこともある。国試失敗率はふつうの勉強会の十倍。この数字は数年前の全国医師国家試験受験生に対するアンケート調査から出された、厳然たる統計学的な事実だ。だから留年したらひとりで勉強するか、留年生だけで勉強会のメンバーを固めるようになる。そうすればその中でひとりだけ、人身御供を差し出せば済むからね」
僕は冷泉深雪にながながと説明したけれど、このことは医学生の間ではシンプルに「バカはうつる法則」略して「バカウツ」と呼ばれている。その上僕は多重留年生だから、その定理からさえはみ出している。単なるバカではなく、格上のスーパーバカ、いや、エキストラオーディナリー・イディオット(規格外の大うつけ)とでも呼ぶべき存在だ。でも同級生たちは僕のことをわざわざそんな風に呼んだりはしない。
定理にするには普遍化が必要だ。そして普遍化とは、分離精製が主な作業になる。だがそうした不純物がたったひとつの例外であれば、普遍化のために分離精製するよりも単に除外した方が手っ取り早い。だから僕を通常の枠組みに嵌めこまず、無視する姿勢は集団的合理性が高いわけだ。
しかも、僕が属してるこの学年はこれまで留年生をひとりも出していない奇跡の学年だから、そうした傾向にいっそう拍車がかかっている。
冷泉はうつむいて僕の話を聞いていたが、やがて顔を上げると言った。
「私、そういうジンクスを見ると、ぶっ壊したくなるんです」
呆然と冷泉深雪を見つめた。道行く人が振り返るような美少女のクセして、社会の不合理に立ち向かう正義の騎士でもある。一体どうすればこんな正の要素ばかりをその華奢な身体に収められるのだろう。
海堂尊『輝天炎上』5章 放射線医学教室・島津吾朗准教授 本文 天馬大吉 冷泉深雪 より
じゃあ今、あの電話を掛けてきたのは誰だ?
電話を切り、着信履歴をチェックすると、見慣れない番号が確かにふたつ並んでいる。
ひとつは冷泉の番号で間違いないはずだ。すると、それに挟まれた未知の番号は一体誰なのだろう。
僕はしばらくその番号を凝視していたが、思い切ってリダイヤルしてみた。
息を潜めて、耳を澄ます。
数回の呼び出し音の後、電話がつながった。無感情な電子音声が定型的な文言が流れる。
----この電話は現在つながりません。発信音の後にご用件をお話しください。
僕は息を呑む。そしてひと言、言った。
「あなたは誰ですか?」
返事はない。
その瞬間、別世界へ電話したかのような肌触りがして、背筋に寒気が走った。
突然、周囲にジングルベルの音楽が溢れ返る。立ち止まり、その喧騒に耳を塞いだ。
海堂尊『輝天炎上』7章 ふたつの電話 本文 天馬大吉 より
フォギータウン・ナニワ。
浪速の街には、いつもうすぼんやりした靄(もや)がかかっている。排ガスと町工場の粉塵(ふんじん)が混合した空気が醸し出す猥雑(わいざつ)な雰囲気。それは環境に対する意識の低い都市だという低評価になりかねないが、今の日本が忘れかけた活力の噴出にも思える。
南米やアジアなど成長著しい都市に漂う匂いや熱気と似た、成熟極まった日本では忘れ去られた大気のかけらが、そこにある。
そんな靄に包まれた街なのに、冷泉内蔵ナビ・システムのおかげで躊躇(ちゅうちょ)なけ一切の無駄なく、浪速大学医学部に到着できた。
東京・帝華大学と並び称される西の雄、浪速大学は、市街地のど真ん中にある。都市の再開発で好条件による移転を持ちかけられたが、頑として市中に居座った。教育の現場は街のど真ん中になければ活力を失うという先々代の学長の信念を守り、さまざまな圧力に抗して頑張ったのだ。
僻地(へきち)に移転するなど学生の未来をナメている。そして、学生をナメる大学に未来はない。
海堂尊『輝天炎上』8章 浪速大学医学部公衆衛生学教室・国見淳子教授 本文 より
「僕があの病院に関わっていた間に、メンタルな問題を抱えてた若い女性が二人、立て続けに亡くなっている。日菜(ひな)と千花(ちか)という仲良しふたり組で、日菜は僕が入院した直後に、千花は碧翠院最後の日に亡くなった。でも、それは彼女たちの願いだった。だとしたら誰がその行為を非難できるというんだ?」
僕が饒舌になったというのはたぶん、秘密を酔いにまかせてベラベラ喋っている自分が後ろめたかったからだ。黙り込んでしまった冷泉に、最後の言葉を掛けた。
「要するにあの病院には色とりどりの死が一通り揃っていた。それが“死を司る病院”という言葉の、真の意味だ」
桜宮一族が復讐のために行った純然たる殺人については、あえて口にしなかった。それは個人的な事情による通俗的犯罪であり、碧翠院が内包していた医療の死とう範疇から外れていたからだ。
冷泉深雪は、僕の言葉に耳を傾け、懸命に何かを考え込んでいる。僕の言葉は冷泉深雪に届いたのだろうか。そんな僕の不安を裏打ちするかのように冷泉はぽつりと言う。
「天馬先輩の周りって、いつも美人さんばかりですね」
僕は脱力した。ここまで根を詰めて説明したことが空しくなった。だがそれにしても、今の話で、日菜と千花が美人だということが、どうしてわかったのだろう。
海堂尊『輝天炎上』9章 ナニワのクリスマス・イヴ 本文 天馬大吉 冷泉深雪 より
脳裏に、冷ややかで感情を読み取れない、能面のような小百合の表情が浮かぶ。
「天馬先輩はその時、部屋の中を確認しなかったんですか?」
僕は唖然とする。
「部屋は炎に包まれていたんだ。そこから逃げること以外、何も考えられなかったよ」
ひらりと炎に身を投じたすみれの姿に、僕に向けて投げられた銀なロザリオの輝線が重なり、真理を示す数式の曲線のように煌めいて、虚空の闇に消えた。
僕は、シャツの上からそのロザリオをそっと握りしめる。
冷泉は、ぽつりと言う。
「天馬先輩は、どうしてそのことを警察に言わなかったんですか?」
「もちろん話したさ。でも信じてもらえなかった。そもそもエンバーミングされた遺体が部屋にあったかとさえ説明は難しい。その上、四人家族の家の焼け跡から年齢性別背格好が一致する四つの遺体が見つかれば、わざわざDNA鑑定なんてしないさ」
冷泉深雪は必死になって、僕の説明の穴を見つけようとしたが、どうしても僕のロジックを崩せず、憮然とした表情になった。
冷泉、お前は圧倒的に正しい。だけど世の中は正義と論理だけではできていないのだよ、そんな風に訳知り顔で言いそうになった自分に対し、ささやかな嫌悪感を抱いた。
海堂尊『輝天炎上』9章 ナニワのクリスマス・イヴ 本文 天馬大吉 冷泉深雪 桜宮小百合・すみれ(回想) より
新幹線ひかりだと浪速・桜宮間は一時間半。何も話さないでいるには長すぎるし、実があることを話すには短すぎる。そんな中途半端な長さの時間に、僕と冷泉は、お互い黙り込むしかなかった。
新幹線の車窓は流れるようだ。前夜の不行状が祟り、うとうとしてしまった僕は、気がつくと隣の冷泉に寄りかかっていた。そのことに気がついたのは、耳元でぽつんとささやかれた言葉が聞こえたからだ。
「天馬先輩、ゆうべは、本当に、何もしなかったんですか」
僕は思わず身体を起こして冷泉を見る。
ツイン・シニョンの冷泉深雪は、生真面目な目で僕を凝視していた。
何と答えればいいのだろう。ちょっと迷ったけれど、思い切って顔を上げた。
「正直に言う。僕はちょっとだけ、した」
え?と目を丸くする冷泉深雪に、僕は一気に言う。
「酔い瞑れたお前をベッドに運んだとき、はずみでキスをした。でもそれだけだ」
冷泉深雪は目を見開いたまま、僕を見つめた。固まった空気が重く、息苦しい。
やがて冷泉深雪は、ぽつんと言った。
「はずみで、なんてひどいです」
それきり黙り込んでしまった冷泉の整った横顔を見ながら、これなら悪し様に罵られた方がはるかにマシに思えた。しかも最悪なことに、その時僕は、心の中で冷泉に対し裏切り、大いなる不実な行動を考えていた。
要するにその時の僕は最低のヤツだったわけだ。
それは今も、ちっとも変わっていないんだけど。
海堂尊『輝天炎上』10章 浪速市監察医務院・鳥羽欽一院長 本文 天馬大吉 冷泉深雪 より
「彦根先生はAiをすれば解剖がなくなると吹聴しているそうですが、本当ですか?」
さっそく冷泉が核心を衝く。彦根先生は、おもむろに身体を起こし前屈みになる。
「面白いことを訊くお嬢さんだね。せっかくだから真面目に答えよう。今の質問に対する答えはふたつ。ひとつ。僕は確かにそう言った。ふたつ、僕はそんなことは言っていない。これが誠実な解答だな」
「茶化さないでください。私たちは真剣なんです」
反射的に冷泉が言う。まあ、そうだろうなと思いながら冷泉の蛮勇に敬意を表する。
「今の言葉でお嬢さんの性格はだいたいわかった。では、そっちの坊やはどうかな?」
彦根先生は目を細める。僕は考え込み、そして答える。
「どっちも真実なのもしれません。ものごとには光と影がある。光あるとこれには必ず影が寄り添う。ですので、彦根先生のふたつの言葉は、片方が光、もう片方が影なんだと思います。でもどっちが光でどっちが影なのか、それはわかりません」
僕を見つめる冷泉深雪の視線を横顔に感じる。彦根先生は腕組みをほどく。
「まあ、正解だがね。ある人には僕がそう言ったと言いふらす。僕自身はそんなことは口でしていないと言う。でも、どちらも今の社会に流通している真実なんだ」
「彦根先生がおっしゃっていないのなら、片方は真実、もう片方は虚偽です」
海堂尊『輝天炎上』11章 房総救命救急センター・彦根新吾医長 本文 天馬大吉 冷泉深雪 彦根新吾 より
あからさまにバカにされているのがわかる物言いに、冷泉もかちんときたようだ。
「それって言葉尻を捉えた混ぜ返しじゃないですか」
「違う。他人が伝える言葉も真実だ。考えてごらん。ある人が僕の言葉を捏造している相手としかコンタクトがなかったら、どっちの言葉が真実になるのかな?」
「屁理屈です。そういうのは絶対に、真実とは言わないと思います」
頑としてゆずらない冷泉深雪を見つめ、彦根先生は黙り込む。やがて、ぽつんと言う。
「真実とは信念だ。百人には百の信念があるように、百人いれば百の真実があるんだ」
彦根先生と冷泉の相性は決定的に悪そうだ。
海堂尊『輝天炎上』11 章 房総救命救急センター・彦根新吾医長 本文 天馬大吉 冷泉深雪 彦根新吾 より
「清川教授に頼まれて、浪速大Aiセンターの情報をゲットしてきたのでお教えしましょうか」
「ほう、ボンボンの司郎にしては珍しく気が利くな。喜んで伺おう」
浪速大Aiセンターが法医学者主体で運営されるという最新ニュースをお知らせすると、彦根先生はふう、と息を吐く。そして天井を見上げた。
「そんなところだろうね。でも、心配は要らない。浪速には村雨府知事がいるからね」
浪速府の村雨府知事はメディアの寵児(ちょうじ)だ。その府知事と彦根先生は知り合いなのだろうか。だとしたらすごいけれど、そんな重要なことを、僕たちみたいな初対面の医学生に漏らすだろうか。そう考えると、ハッタリかもしれないと思う。同時に僕は、自分の中に黒雲のようにわき上がった不吉な予感を口にする。
「そんな反体制的な主張をしてると、いつか社会から抹殺されてしまいませんか」
「体制派も僕を粛清するつもりなんかないさ。僕は過去の悪行を暴くのではなく、Aiを社会導入すれば、未来の失態を防ぐことができる、と主張しているだけだ。組織がまともで、その構成員がほんの少し社会の未来を考えてくれれば、僕の主張は必ず取り入れられる。そして僕はこの社会がそれくらいは前向きだろうと信じているんだよ」
呆れて彦根先生を見た。天下無双の楽天家(オボチュニスト)がここにいる。
海堂尊『輝天炎上』11章 房総救命救急センター・彦根新吾医長 本文 天馬大吉 彦根新吾 より
僕は冷泉の目を覚ますために尋ねた。
「構成員が自分の利益しか考えない組織なら、百八十度違う結果になりませんか」
彦根先生はいたずらっ子みたいな表情を浮かべる。
「もちろんその通りだし、世界は概ねそんな風になっているらしい。僕にとってはサイアクの事態が今の、真実がふたつあるという状況だ。まあサイアクといってもその程度なんだけどね」
こともなげに言う彦根先生の顔を、僕たちは黙って見つめるしかなかった。
やがて冷泉は、思い切った口調で尋ねる。
「どうして彦根先生は、そんな風に達観していられるんですか?」
すると彦根先生は、目を細めて笑う。
「それが現実だからさ。現実に歯向かって物事を変えようとするよりも、現実に即して動いた方が効率がいい。これは学生時代に体得した、合気道の極意なんだけどね」
すると冷泉は目を見開いて尋ね返す。
「え?彦根先生も合気道部だったんですか?」
次の瞬間、怒濤のような冷泉深雪の言葉が飛び出してくるぞ、と僕は身構えた。ところが意外にも、冷泉は無言だった。ただ、彦根先生を凝視し続けていた。その時、僕は初めて、無言というのは最高の賛辞なのだ、ということを思い知らされたのだった。
海堂尊『輝天炎上』11章 房総救命救急センター・彦根新吾医長 本文 天馬大吉 冷泉深雪 彦根新吾 より
「光栄なお話ですので、陣内教授に、ご自由にお使いください、とお伝えください」
僕と清川教授は、同時に深々と吐息をついた。清川教授は言う。
「今さら私が言うべきではないが、私は自分が判断することから逃げ、天に任せた。今からひとつ、告白するが、それでもこの決定は覆さない。それでいいね?」
清川教授が何を言いたいのか、よくわからないままに、僕と冷泉深雪はうなずいた。
「実は陣内教授の申し出を受けると、彦根先生を裏切ることになるかもしれない」
「どういうことですか?」
「厚労省が内科学会と共同で主催してきたモデル事業は、解剖主体でAiを徹底的に無視してきた。彦根先生はその流れに抗い、死因究明制度にAiを導入しようとしている。しばらく休会していた検討会が久々に開催されるんだが、シノプシスを見て驚いた。内科学会はAiの導入を認めたが、運営は病理学会に任せようとしている。つまり陣内教授は彦根先生の主張に真っ向から反対しているわけだ。そんな人の発表をサポートする資料として、この研究が使われるのは彦根先生にとっては不本意だろうね」
「どうして、最初にそのことを言ってくださらなかったんですか」
冷泉深雪の当然の抗議に、清川教授は苦しそうに言う。
「それは、これが素晴らしい研究で、晴れ舞台で脚光を浴びるべきだと思ったからだ。だから余計な事を考えず、素の気持ちで結論を出してもらいたかったんだ」
「そんな……」
僕は絶句した。清川教授は続ける。
「公式に発表された科学研究は、その結果をどう使おうと自由なものなんだ。それは人類共通の財産であり、誰の所有物でもない」
「でも結果としてAiが不適切に使われるための道具にされたら、社会にマイナスです。それを阻止するのも、医学者の責務ではないのですか?」
脳裏に“相反するふたつの言葉が社会に広がっていて、そのどちらも真理なんだ”とさみしそうに語った彦根先生の横顔が浮かんだ。
海堂尊『輝天炎上』14章 プリティ清川、再び 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 彦根新吾(回想)より
「それならどうして、そんな素晴らしいAiとい仕組みがなかなか社会に受け入れらないのか、君たちは不思議に思わないかい?」
「もちろん、不思議です。ちっぽけな利権の話は伺いましたけど、そんなことくらいで社会全体の動きが阻害されるということがいくら考えてみてもわからないんです」
冷泉は身を乗り出した。清川教授は冷ややかに答える。
「簡単なことだよ。Aiの導入を望まない人たちが厳然として存在しているからだ。正しい、正しくない、ではない。重要なのは、そういう人たちが存在しているという事実だ。その人たちは、昨日と同じようにして明日も生きたいと願う人たちなんだ」
冷泉深雪は今にも泣き出しそうだ。冷泉がこうして壁に頭を打ち付けるのを見るのは何度目だろう。だが冷泉は、決して妥協しようとはしない。愚かしくも見えるその有り様は、僕には一条のひかりのようにも思える。
「私は自分の判断を度外視し、君たちを通じ天に可否を仰いだ。そして答えは出た」
清川教授の言葉に、僕は最後の抵抗を試みる。
「そこには清川先生の意志がありません。先生の意志だって、この世界を作り上げている部分のひとつです。その意志を通せば、世界は変わるはずです」
清川教授は首を振る。
「少しは変わるかもしれないが、大きな流れは変えられない。私の意志なんてちっぽけだから、すべてあるがままの流れに身を委ねる。それが私の生き方なんだよ」
海堂尊『輝天炎上』14章 プリティ清川、再び 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 より
穏やかな口調に微塵の乱れも見せずに言う。
「そうではない。少なくとも私にその考えを叩き込んだ先生は腰抜けではなかった」
清川教授は僕の目をのぞきこんで、臓腑(ぞうふ)をえぐるように言った。
「碧翠院桜宮病院の桜宮巌雄院長だよ」
ウソだ。巌雄先生がそんな腑抜けたことを言うはずがない。
反射的に僕は叫ぶ。でも冷泉よりも年を取っている分、その叫びを心の中で押しとどめるという嗜み(たしなみ)はある。だけど心中の罵倒は、冷泉よりも辛辣だ。
隣では冷泉が、清川教授の判断の誤りについて、そして自分の判断を考慮しようとしない学術姿勢について糾弾し続けている。その時、彦根先生の言葉が煌めいた。
---百人には百の信念があるように、百人いれば百の真実がある。
この時にやっと、彦根先生の言葉の真意が理解できた気がした。
清川先生は、巌雄先生からひとつの言葉を受け取った。そして、その言葉をロザリオみたいに、胸に抱きしめ生きてきた。だとしたらそれもまたひとつの真実なのだ。
清川先生が凍結保存していた言葉は、僕が受け取った言葉とは正反対に思えたけど、案外、僕のロザリオを裏返してみたら、ぴったり重なるのかもしれない。
それは光と闇の伝説に似ている。
光には分かちがたく闇がよりそう。だが闇は違う。闇は闇のまま、あまねく存在する。ただ、闇の存在を明らかにするために光が必要なだけだ。
巌雄先生の言葉は闇の真理だ。光を当てても切り取れる部分はひとかけらにすぎない。だとしたらそのかけらのどちらが正しいかと言い争っても意味はない。
海堂尊『輝天炎上』14章 プリティ清川、再び 本文 天馬大吉 冷泉深雪 清川司郎 彦根新吾(回想)より
すると今のは冷泉の視線だったのか?
いや、違う。それはこれまで感じたことがない種類の視線だった。
おそるおそる周囲を見回すと白衣姿の男性に目が入った。
視線が合うと男性は、おずおずと近づいてくる。よれよれの白衣、ぼさぼさの髪、中肉中背。全体にもっさりした印象。でもその目を見ていると、なぜか引き込まれてしまいそうになる。
初対面なのに、遠い昔に出会ったことがあるような懐かしさ。
「天馬君、だね?」
声を掛けて男性に僕はは怪訝な表情を隠さず、うなずく。知らない男性に声を掛けられれば用心するが、大学で相手が白衣姿なら問題はない。だが次の瞬間、男性の言葉に正真正銘おったまげて、手にした教科書を落としそうになった。
「神経内科の田口といいます。聞きたいことがあるんだけど、時間あるかな?」
男性の顔をまじまじと見つめる。
こんな唐突にお目に掛かれることになろうとさ。大学ってヤツはまさにドラマチック。
だけど目の前の田口先生の風貌は、ドラマチックという言葉からほど遠い。
海堂尊『輝天炎上』15章 神経内科教授・田口公平講師 本文 天馬大吉 田口公平 より
「それが東城大を守るために、でもかい?」
僕はうなずく。母校とはいえ、腐れた東城大を守るため、何かをしなければならないなんてバカバカしい。だからずばりと本音を叩きつけた。
「僕は横着者です。それに、東城大には何の思い入れもないですし」
田口先生は吐息をついた。愛校心のないヤツめ、と呆れているのがありありとわかる。
同時に、好奇心が動いた。東城大を守るため、という言葉の裏側には、東城大が攻撃されているという前提がある。僕が知っている限り、東城大を攻撃しようなどという酔狂な意志を持っているような人物は、桜宮一族の他にいない。だとしたら、その話を聞けば小百合先生、あるいはすみれ先生の消息のヒントが得られるかもしれない。
僕はさりげなく、話をしついだ。
「ところで田口先生は、一体何から東城を守ろうとしているんですか?」
田口先生は一瞬、逡巡(しゅんじゅん)した表情になる。だがすぐに観念したように、言う。
「実は東城大を破壊するという脅迫状が送られてきていてね」
この言葉にはさすがに!した。まさかそんな具体的な動きがあるなんて。
大それたことを告げたのに意外に平然としている田口先生の顔を、僕は見つめた。
海堂尊『輝天炎上』15章 神経内科学教室・田口公平講師 本文 天馬大吉 田口公平 より
僕の正面では、田口先生が薄いハトロン紙の死亡診断書を書いている。書き上げると、ポケットから印鑑を取り出し、はあ、と息を吹きかけてから、ぎゅう、と捺印する。それを美智の分厚いカルテの最終ページにはさんで、看護師さんに手渡した。
田口先生はうつむいたまま、別のカルテに何かを書き付けながら、僕を見ずに言った。
「何か言いたいことがありそうだね」
僕は田口先生を見つめた。やがて意を決して口を開く。
「美智さんは心臓マッサージで一度戻ったんです。もう少し、頑張れたんです」
「そうかもしれない。でもたぶん、美智さんは自分で逝く時を決めたんだよ」
「それならどうして、僕の心臓マッサージで戻ってきたんですか」
「天馬君と、きちんとさよならしたかったんじゃないのかな」
胸がいきなり熱くなり、目の前の景色がぼやけた。
反則だろ、この親父は。
そうした感情が裏返り、気がつくと目の前に棒のように突っ立っている田口先生に罵りの言葉を投げつけていた。
「結局田口先生は何もできずに、ただ愚痴を聞いてあげただけじゃないですか」
わかっていた。田口先生が悪いのではない。どんな名医でも美智に何もしてあげられなかっただろう。わかっていたけれど、罵る言葉を止められなかった。
田口先生は僕を見つめていたが、静かに僕の肩に手を置いた。
「天馬君、君は正しい。私は医者として失格かもしれない」
そう言い残し、田口先生は静かに部屋を出て行った。
海堂尊『輝天炎上』17章 医学のチカラ 本文 天馬大吉 田口公平 より
「このカルテを読んでみてください。田口先生の、不定愁訴外来専用のカルテです」
彼女が手にしていたのは、さっきまで田口先生が書き綴っていたものだった。
カルテを開いた途端、紙面から文字があふれ出し、膨大な記述の中から美智の姿が浮かび上がる。悪態が正確に書き留められている。僕のベッドサイド・ラーニングの様子も描写されていたが、思わず赤面したくなるくらいの忠実さと正確さだった。
そこに田口先生の姿はいない。ただひたすら、美智の言葉が書き留められていた。
そこに美智がいた。
美智は僕の手の中で命を失った。だけどぬくもりは今も手の中に残っている。同じように、美智はここにいて、今もカルテの中で息づいていた。
罵倒の言葉が羅列されている中に、一粒の真珠が交じっていた。
----天馬は必ず、立派なお医者さまになろうもん。
医療はこんなことまでできるのか。
カルテを机の上にきちんと揃えて置くと立ち上がり、ナースステーションを後にした。背中に看護師の視線を感じながら、屋上へ向かう階段を上がっていく。
屋上に出ると、強い風が僕の髪をくしゃくしゃにした。
桜宮湾をを見つめる。その手前には、さっきからずっと僕の胸に突き刺さっている銀のナイフ、Aiセンターの塔が輝いている。
脳裏に、自分の言葉がこだまする。
わかるの?僕がわかるの?
うなずいた美智の顔。虚ろな目を開け、僕の背後に女性の名を呼ぶ。
----おお、すみれも迎えに来てくれたんか。
最期にすみれ先生と僕を並べて旅立った美智の優しさに僕は、声を上げて泣いた。
僕の泣き声を吹き消すかのように、風が轟々と鳴っていた。
碧翠院に溢れていた愛を失い、代わりに怨念の塔が桜宮に出現したその時、僕の中でひっそりと、何かが変わったような気がした。
海堂尊『輝天炎上』17章 医学のチカラ 本文 天馬大吉 高原美智 より
茉莉亜は小さく咳き込んだ。白いハンカチで口元を押さえ、うつむいている。
やがて顔を上げると、掠れた声で言う。
「あなたの行く手を阻むのは、すみれちゃんよ。気をつけてね」
小百合は優雅にお辞儀する。
「ありがとうございます。せっかくのご忠告ですけど的外れです。すみれは碧翠院の火事で焼け死んでしまったんですから」
「それならすみれちゃんの想念に気をつけなさい。今でもあなたの周りにまとわりついているわ」
小百合は白いマスクの下で微笑する。
「叔母さま、私はオカルトを信じないんですよ」
「あら、私もよ」
茉莉亜の笑い声が響いた。それから深々とした息を吐いた。
「さあ、用が済んだら、さっさと帰りなさい」
「そうします。でも何だか急き立てられているみたいでさみしいですね」
「それくらい我慢しなさい。あなたが久広に何をしたのか、私は知っているのよ。それでもこれだけお話ししてあげたのだから、感謝してほしいわ」
小百合の、白いマスクの下の頬が青ざめる。
「どうしてそのことを……」
その問いに答える代わりに、茉莉亜の、凛とした声が部屋に響いた。
「理恵先生、お客さまはお帰りよ。お清めね塩を持ってきて頂戴」
海堂尊『輝天炎上』20章 羽化 桜宮小百合 三枝茉莉亜 より
小百合が女医と一緒に母屋を出た時には雨はすっかり止んでいて、雲間からは一筋の陽のひかりが、咲き乱れる薔薇にさしかかった。
「お気を悪くなさらないでください。最近、お加減が悪いせいか、茉莉亜先生は時々、ああして不安定になるんです」
低く涼やかな声は、耳にした者を落ち着かせる。小百合は傘を畳みながら、言う。
「いいえ、あれは叔母さまの本心でしょうね。でも、お気遣いなく、妹と違って私は、昔から叔母さには嫌われていたから慣れっこなんです」
そう言って女医を見つめた小百合は、おもむろに両腕を広げると、突然、その細身の体を抱きしめた。
「な、何を……」
唐突な抱擁に、女医は動揺を隠せない。女性同士とはいえ、初対面の相手に抱きしめられたら、びっくりして当然だろう。どうしていいかわからず身を固くする女医の耳元に、掠れたささやき声が響く。
「あなたは、私と同じ一族よ。いつかあなたの許(もと)に遣わされる子どもと共に、世界を呪い続けるでしょう」
一陣の風が庭を吹き抜け薔薇を吹き散らす。
不気味な呪詛(じゅそ)が、女医の耳に届いたかどうかはわからない。小百合女医から身を離すと、何か言いかけた女医の唇に人さし指を当て、抗議の言葉を封じ込める。
「桜宮の一筋の命脈は今、あなたに託したわ。これからは闇の世界を守って頂戴」
海堂尊『輝天炎上』20章 羽化 本文 桜宮小百合 女医(曽根崎理恵)より
エンタメ掲示板のスレ一覧
芸能🎭エンタメ情報何でもOK❗ 芸能界の気になる話題をみんなで楽しく語りましょう。タレント🎤への誹謗中傷🤬やアンチ行為は禁です。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
日曜劇場!え~!5レス 79HIT 匿名さん
-
漫画「あたしンち」の感想10レス 196HIT おしゃべり好きさん
-
推し活で生活苦2レス 138HIT 芸能すきさん
-
観てる~☺️0レス 82HIT 匿名さん
-
嫌いな芸能人12レス 253HIT おしゃべり好きさん
-
日曜劇場!え~!
一回も見たことないし、なんのドラマも知らないのだけど、気になる😅 起…(匿名さん5)
5レス 79HIT 匿名さん -
ガンダムでありますゲソ7?
『重戦機エルガイム』のオープニング曲は、若しかして当時は先駆けのサウン…(匿名さん113)
141レス 2501HIT 常連さん -
SMAP大好き💚💛💗💙❤&お笑い好き📺🍊
火曜日のうたコンに出るんとちゃう❓ 8時からだよね。 番組表チ…(おさる団長)
404レス 7317HIT おさる団長 -
キミとアイドルプリキュア♪
第19話 ふたりの誓い♪キュアズキューン&キュアキッスデビュー! …(キュアプリズム)
64レス 1671HIT キュアプリズム -
プリキュア シリーズ1000回 おめでとう 再々再々
プリキュアの美しき魂が! ズキューンキッスデスティニー(トーク好きさん126)
126レス 3273HIT キュアプリズム
-
-
-
閲覧専用
中居正広さんは▪️▪️▪️🥲10レス 355HIT 匿名さん
-
閲覧専用
なら全カットして疲れた人が~😂2レス 260HIT おしゃべり好きさん
-
閲覧専用
理不尽なファン…だと9レス 360HIT 通りすがりさん
-
閲覧専用
音楽が大好き 3500レス 10450HIT ヒロトシ (♂)
-
閲覧専用
音楽が大好き 2500レス 10236HIT ヒロトシ (♂)
-
閲覧専用
ガンダムでありますゲソ6?
『シティーハンター2』計63話の内、残り2話となりました♪😹✨ 冴羽…(常連さん0)
500レス 16432HIT 常連さん -
閲覧専用
中居正広さんは▪️▪️▪️🥲
管理担当です。 いつもご利用ありがとうございます。 本スレッド…(シスオペ)
10レス 355HIT 匿名さん -
閲覧専用
🎵YouTube 自曲を削除するミュージシャン💿
楽曲の中にはCD販売されているのもあり、そうなるとレーベル会社などにも…(サラマンドラ)
4レス 400HIT おしゃべり好きさん -
閲覧専用
理不尽なファン…だと
確かにそうかも! 期待しないで応援できますからね! (通りすがりさん0)
9レス 360HIT 通りすがりさん -
閲覧専用
なら全カットして疲れた人が~😂
羨ましい~ 芸能人~😂 幸せ~ (おしゃべり好きさん0)
2レス 260HIT おしゃべり好きさん
-
漫画「あたしンち」の感想10レス 196HIT おしゃべり好きさん
-
ガンダムでありますゲソ7?141レス 2501HIT 常連さん
-
プリキュア シリーズ1000回 おめでとう 再々再々126レス 3273HIT キュアプリズム
-
「二宮和也」またの名を「小さいオジサン」そして身長詐称疑惑?38レス 34340HIT ジャニーズ大好き
-
NHK23レス 796HIT 小木曽貴行 (50代 ♂)
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
なぜそこまで結婚にすがるのか?
30歳や35歳の適齢期を過ぎた独身の人が、結婚にすがるのはなぜでしょうか? 諦めて、独身生活の楽し…
34レス 429HIT 知りたがりさん (50代 男性 ) -
誰でも働ける世界になったらどうなる?
法律を改正して公私立小中学校の教育を選択できるようにしたりその学費を年間100万円(義務ではないため…
26レス 395HIT おしゃべり好きさん -
息子に言われたショックな一言
もしも留守の時、親がアパートに入ったら 嫌ですか? 一人暮らしをしている息子(20代)から、初め…
22レス 362HIT 相談したいさん -
これって私が悪いの? 普通に最悪
先日、私の送迎会がありました。 もちろん先輩である好きな人も来ていました。 結構場も盛り…
10レス 250HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
もう生きるのが辛い
なんかどうしてもタヒにたいです。 マスク外したくないって何回も言ってるのに中学言ったらマスク買…
28レス 555HIT 相談したいさん ( 女性 ) -
男性恐怖症でも彼氏がいるのは矛盾?
男性恐怖症だと自称しておきながら、彼氏がいるのはおかしいですか?? 私は学生時代ずっと女子…
10レス 161HIT おしゃべり好きさん - もっと見る