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義母の愚痴です。皆さんも聞かせてください。
叱らない・怒らない育児の結果って
経済的な理由で大学に行けないことはおかしいですか?

🍇Blueberry✨Eyes👒

レス67 HIT数 3340 あ+ あ-

主婦
07/09/15 12:05(更新日時)

✨✨平凡で何の取り柄もない不細工男のこんな僕にとって毎朝乗る通勤電車の15分間は正に至福の時だった…彼女に逢えるッ!…栗色の長い髪を束ね、口元の小さなホクロが印象的な白い杖を持った盲目の美人…いつしか僕は彼女の事が頭から離れなくなっていた…彼女の目以上に僕の心は彼女という天使にいつしか盲目になっていた…この先起りうる辛い現実を受け止められぬ位に…✨✨

あの👛《万引きGメン57》の作者が贈る甘酸っぱくも儚い一人の駄目男の一途な恋の行方…貴方は素敵で儚い恋の目撃者となります!

No.555693 07/08/17 12:27(スレ作成日時)

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No.1 07/08/17 12:45
主婦0 

🍇序章🍇

『大丈夫だって…小夏は何にも心配要らないんだぞッ…全てこの俺に任せとけって…』

ダブルベッドの上で煙草をふかしながら箕島圭一は隣で寝ている馬原小夏の髪の毛を撫でた…

『圭一さん…私…』

『大丈夫だよッ、角膜移植の手術が終わったら君は晴れて俺のこの透き通るような美しい顔とご対面出来るんだ…だからもう少しの我慢だ…いいかい?』

『………』

圭一は小夏の唇にキスをした…

『綺麗だ…とても綺麗だよ小夏ッ…綺麗な俺と綺麗な君、まさに似合いのカップルだよ…フフフ…』

圭一は小夏の顔を自分の方に向かせた…

『離さないよ小夏…こんな綺麗な君を俺は絶対に離すものか…フフフ…』

『……!』

圭一は嫌がる小夏の頭を抑え今度は無理矢理にキスをした!

『!…や…ヤダァ!アァ、ンッ!』

必死にもがく小夏の体を押さえつけながら圭一は煙草臭い唇でさらに小夏の喉に吸い付いた!

『いいかい小夏ッ…俺の言う事さえ聞いてりゃ間違いないんだッ…ハァッ、ハァッ…』

部屋の灯りが窓の外の夜景に反射して幻想的な背景を映し出していた…

No.2 07/08/17 16:12
主婦0 

>> 1 🍇1🍇

駅のホームに発車予告のベルが鳴った…蓮沼秀樹はいつもの電車のいつもの時間のいつもの前から3両目の入口付近に立ち彼女が乗り込んで来るのを今日も首を長くして待っていた…

(!あッ…いる…今日もいるゥ~、フフフ…)

彼女は白い杖をカツカツと突きながら盲人障害者用の黄色い点字帯の上を歩き、秀樹と同じ車両の一つ前の扉から中に入った…

(おはようございますッ…ウフフ…)

蓮沼秀樹は目立たぬように苦笑いを浮かべながらいつも同じ場所に立つ白い杖の彼女に心の中で挨拶をした…

(可愛いよなぁ~綺麗だよなぁ~…ウフフ…)

髪の毛をストレートに伸ばし、今日は白いワンピースにジーパン姿だった…

『ねぇねぇ見て見てッッ!あそこに立ってる女の人スッゴク美人だよねッッ!ほら、いつもこの電車に乗ってるじゃん!』

秀樹がいつも見かけるブレザーの女子高生達がその白い杖の彼女を見てヒソヒソ話を始めた…秀樹は聞こえてないフリをしながら耳だけはその女子高生達に傾けていた…

『背高いしッ…モデルみたいじゃん!』

『けど見てよッ…ほら、白い杖ついてるよッッ…目ぇ見えないんだよッッ!』

『…勿体無いよね~、あんなに美人なのにねッ!』

No.3 07/08/17 16:32
主婦0 

>> 2 🍇2🍇

(勿体無いって…君達それって完全に障害者に対しての偏見だよッッ!)

そんな事を口に出して女子高生達に言える訳もなく秀樹はただ彼女と共有出来る唯一のこの時間をゆっくり楽しむかのように揺れる吊革を持ちながら白い杖の彼女ばかり眺めていた…

蓮沼秀樹24歳…外見はデブでないという以外は《いじめ》の対称にドンピシャな容姿を持つ限りなくさえない独身男だ…ニキビ面に無数のホクロがあり出っ歯で天然パーマ…その異様なまでの独特で奇抜な容姿ゆえ、学生時代のあだ名は《マダライボオコゼ》…顔はお世辞にも普通とも言えない、いやむしろ不細工極まりない救いようのないパーツの羅列であった…その究極な容姿の為かなかなか人付き合いが上手くいかず、何処に居ても嫌われ、バイ菌扱いされる虚しい運命に翻弄される青年であった…高校を苛めで中退した後、職業を転々としながら今現在は建設会社の契約社員として現場に赴く毎日であった…何にもない虚しい生活に一筋の光が差したのは20日程前…彼女がこの電車に乗って来た時からだった…

(何て綺麗な女性なんだろ…癒されルゥ~!)

秀樹は一目で彼女の虜になってしまったのだった…

No.4 07/08/17 16:55
主婦0 

>> 3 🍇3🍇

彼女は白い杖を小脇に抱え、周りの人に当たらないよう気を使いながら吊革を握っていた…

(!いつもながら何て人達だッッ…席を譲ってあげようという気はないんだろかッッ!)

その白い杖の彼女の前に座る背広のサラリーマンやOLは彼女の事を見て見ぬフリをしているのか一向に席を譲る素振りも見せない…一番端の身体の不自由な人の為にある優先座席には運動クラブの鞄をドカッと置いて高校生達が席を占領していた…

(これが今の日本の悪しき現状なんだッ…自分自身さえ良ければそれでいい…最低な社会なんだッ!)

散々毒を吐いた秀樹だったが、じゃあもし自分があの場にいたら席を譲ってあげれるのか…そう考えた時、自分にもその勇気がない事を痛感した…

(もし僕の前に彼女が立っていたとしても…きっと僕は恥ずかしくて席を譲る勇気なんてない…秀樹ッッ!お前もあの人達と何等変わりない無責任無誠実な人間じゃないかッッ!)

軽くため息をついた秀樹は自分のふがいなさとそんな無神経な人々に注意出来ない情けなさに改めて頭を抱えてしまっていた…

(勇気、勇気…そう、結局そこなんだよなッ…アァ…)

そんな事を考えながら今日も夢のような15分間が終わった…

No.5 07/08/17 17:23
主婦0 

>> 4 🍇4🍇

(彼女…何処に勤めてるんだろ…この近くかな…?)

秀樹と白い杖の彼女の降りる駅は偶然にも同じで階段を降りて秀樹の現場は東口で、彼女の通る改札は真反対の西口だった…おぼつかない杖裁きで西口の改札を通り抜ける彼女に今日も頑張って!と心の中でエールを送り秀樹は東口の改札を抜けて現場に向かった…

(勇気カァ……)

建設現場で材木を電動ノコで伐採しながら秀樹は白い杖の彼女の事を考えていた…

(僕に勇気があれば…ダァハハァ~…無理無理ッッ!こんな容姿であんな綺麗な人に告白出来る訳ないじゃないか…OK貰えるのは天文学的確率だよッッ…ハァ…)

『コラッ、オコゼッッ!ブツクサ言ってないでしっかり仕事しろッッ!』

いきなり現場監督から頭をこつかれ秀樹は我に返った…

(…けど…あんなに綺麗なんだもん…きっと彼氏とか、居るんだろなぁ…アァ、彼氏が羨ましい~…)

『コッラァァァァァッッ!オコゼェェッッ!上の空で仕事やってると電ノコで腕切っちまうぞバカヤローッ!!』

『!!は、あ、はい、すみませんッッ!!』

とにかく明けても暮れても秀樹の心の中は白い杖の彼女の事で一杯でそんな妄想を抱いている時だけが秀樹の唯一の幸せな時間だった…

No.6 07/08/17 17:52
主婦0 

>> 5 🍇5🍇

(勇気がなくったって構わないじゃないか…別に彼女に告白する訳じゃない…ただこうして毎日同じ電車に乗り、同じ時を共有している…その事実だけあれば僕はそれで充分幸せなんたから…)

諦めと落胆に近い思いが秀樹の脳裏を支配したのはそれから5日程経った頃だった…どう考えても所詮彼女は高嶺の華…自分には釣り合わない、いや、釣り合うなんて言葉自体使ってはならないくらい自分と彼女は余りにも違い過ぎていると秀樹は感じていた…付き合う付き合わないどころか、まだ何も始まってもいないのだ…

(いいんだ…僕はこうして今日の彼女をじっと遠くから見守ってさえいれば…)

吊革に捕まり彼女を眺めながら秀樹はため息をついた…

(けど…僕がもう少しマシな顔に生まれていれば…欠片程の勇気も搾り出せたのかな…)

そんな事も考えながら秀樹は今日ももう間もなく終わる束の間の幸せを楽しむように白いブラウスの綺麗な彼女の事を眺めていた…満員電車の中で今日も彼女は申し訳なさそうに学生が座る席の前の吊革に捕まり我慢強く立っていた…

No.7 07/08/17 18:12
主婦0 

>> 6 🍇6🍇

…時に恋の神様は悩める者達に試練を与える…蓮沼秀樹の前にその神様が降りたったのはそれから2日後の木曜日の朝の事だった…秀樹はいつものように電車に乗り、白い杖の彼女を眺めていた…駅について彼女が電車から降りた時、それは起こった!思いの他強い力に押され、下車中の彼女の背中に数人の乗客が雪崩のように乗っかかって来たのだ!

『ち、ちょっと、お、押すなッッ!』

『キャァァァァッッ、痛いッ、痛いッッ!』

辺りが騒然となった…満員の電車から一気に降りようとした乗客達が将棋倒しになったのだ!

(!あっ…う、嘘ッッ!?)

すぐ目の前でその一部始終を見ていた秀樹は仁王立ちとなり、次の瞬間頭が真っ白になった!

『痛いッ!早くどいてッッ!』

『誰だよッッ!無茶苦茶押しやがってッッ!』

幸い倒れた被害者達にケガ人はなく、人々は何もなかったかのように立ち上がり、蜘蛛の子を散らすかのように各々去って行った…

(!…あ…か、かッ…彼女ッッッ!?)

秀樹は愕然としたッ!重なり合っていた乗客の一番下に白い杖の彼女が未だ立つ事が出来ず、たった一人で蹲っていた!

(!…だ、誰かッ、助けてあげてッッ!彼女ッ、彼女目がッ…見えないんだッッ!)

No.8 07/08/17 18:28
主婦0 

>> 7 🍇7🍇

泥だらけに踏みつけられたブラウスには誰かの足跡が付けられ、持っていた彼女の白い杖は彼女の倒れている遥か2m程先の彼方に飛ばされていた…

(誰かッ!助けてあげてッッお願いだからッッ!)

秀樹はこの瞬間程人間のエゴイズムという悪魔を間の当たりにした事はなかったであろう…倒れている彼女に手を差しのべようとする者は誰一人なく、まるでそこに倒れている人間などいないかのような空気で人々は白い杖の倒れた彼女に気にも止める事なく各々慌ただしく歩いているではないかッ!

『あ…あのぅ…す、すみません…ど、どなたか…私の杖を…杖を知りません…か?』

必死に自力で起き上がりながら彼女はその泥だらけの手でしきりに落とした杖を手探りで探していた…

『す、すみません…どなたか…杖をッッ…』

秀樹は何で誰も助けてあげないんだッ!と周りの人間に怒鳴りつけたい気分になっていた…無責任、無関心、無神経…お前らそれでも人間かッッ!こんなに彼女が…一人の人が困ってるじゃないかッッ!誰か何とかッ…何とかしてあげてッッッッ!

《勇気……》

その時秀樹の脳裏にこの2文字がはっきり鮮明に現れたッ!!

(そうだ秀樹ッ…勇気…勇気を持てッ、秀樹ィッ!)

No.9 07/08/17 18:44
主婦0 

>> 8 🍇8🍇

『どなたか…お願いですッ…私目が…目が不自由なんですッ…杖がないと…お願いですッ…どなたか杖をッッ!』

『だ、だ、だい、だい、だいじょ…あ、大丈夫…で、です…かッッ?』

次の瞬間白い杖の彼女の肩に誰かが手を置いた…

『!……あ…』

『こ、こ、これッ…この、この杖ッ…は、はいッ!』

蓮沼秀樹の人生最初で最後の勇気が噴火した瞬間だった!秀樹は震える手で彼女の手にそっと杖を差し出したのだ!

『……あ、…有難う…ございますッッ…アァ良かったァ~…』

白い杖の彼女は心底ほっとした安堵の表情を浮かべながら杖を両手でギュッと抱き締めた…

『…けッ、怪我…ケガ…ないで、です、すか?』

『は、はい…大丈夫ですッ…すみません私…取り乱しちゃって…』

白い杖の彼女はゆっくり起き上がり笑顔で秀樹に答えた…

『と、とにかく落ち、落ち着いて…そ、そこのベン、ベンキ…じゃない、ベンチにすわ、座りましょう…』

秀樹は白い杖の彼女の肩に手をかけゆっくりすぐ側にあるベンチに腰掛けさせた…今までに経験した事のない心臓の鼓動が秀樹を襲った…

(アァ…や、やっちゃったヨォ~…やばいよッ…ど、どうしよォォォ~ッッ!!)

No.10 07/08/17 19:06
主婦0 

>> 9 🍇9🍇

『お、落ち着きました…か?あ、これ…はい、ハンドバッグ…』

ホームのベンチに腰掛けながら秀樹は白い杖の彼女が落としたハンドバッグを手渡した…

『有難うございます…ホントに助かりました…何てお礼を言ったらいいのか…ハハハ…ドジでしょ私…たまにあるんです…こんな事…』

『い、いや…あれ、あれは貴方が悪いんじゃあり、ありませんよ…後ろの人達がもっと注意してれば防げた事故です…はいッ…』

綺麗に整った長い髪を耳に掻きあげた仕草にドキッとしながら秀樹は顔を真っ赤にさせながら語った…

『…あなたが助けて下さらなかったら…大事な杖を一本無駄にする所でした…ホントに…ホントに有難うございましたッッ…』

白い杖の彼女は秀樹のいるであろう方向に向かって深々とお辞儀をした…

『あ、い、いや…お礼だなんて…ハハハ…僕はただ…ハハハ…』

生まれてこのかた女性とこんな間近で話した事のなかった秀樹はただ顔を赤らめながら頭を掻いて謙虚に振る舞った…

『小夏です…馬原小夏ッて言います…貴方は?』

白い杖の彼女は秀樹に名乗った…

『あ、ぼ、僕ぅ?…ハハハ…はす、は、蓮沼…蓮沼秀樹ッ…ですはい…』

No.11 07/08/17 19:26
主婦0 

>> 10 🍇10🍇

(小夏…《こなつ》って言うんダァ…超可愛い名前ッッッ!!)

『秀樹さん…ですか…フフフ…いい名前ですね…』

小夏は笑顔で返した…笑うと右側だけに出来るエクボに秀樹はまた感激した…快速電車が勢いよく通過してベンチに座る二人の髪を高く巻き上げた…

『フフフ…まだ居たんですね…』

『!…え?誰が?…ですか?』

小夏は乱れた髪を手櫛で直すとしみじみと言葉を発した…

『東京にもまだ貴方みたいな親切で優しい人が居たんだなって…』

『………』

小夏は杖を握り直してその柄の部分を顎にそっと置いた…

『見ての通り…私、目が見えないんです…だからって人に必要以上に優しくして欲しいだなんてこれぽっちも思ってません…だけど…何か…何か切ないんですよね…障害者であるって事が…見えないって事実が…』

『………』

秀樹は少し困った表情の小夏の整った横顔をただじっと眺めていた…

『あ、ゴメンなさい、私ったら…蓮沼さん、お仕事あるんじゃないんですかッ?こんな場所で長々と話込ませて…私ったらホントに無神経でッ…ハハハ…どうぞ行って下さいねッ…あ!…助けて貰って行って下さいって…また無神経ですよね、私ってホントに…バカヤローです!』

No.12 07/08/17 19:44
主婦0 

>> 11 🍇11🍇

『あ、こ…こぉ…なァ…ア…つさんもお仕事あるんじゃないんですか?』

『アハッ…そんなに言いにくいですか?《小夏》って…』

秀樹は恥ずかしさと緊張の余りまた顔を赤らめた…間近にいる憧れの女性の名前を言葉にするのがこんなに困難なものだとは夢にも思わなかった…

『私は今日はお休みしますッ…こんな汚れた格好じゃ恥ずかしいし…フフフ…自分の姿が見えなくても一応これでも女!…ですから身だしなみはねッ…フフフ…』

小夏の発する言葉の一言一言が秀樹には凄く心地よく入ってくるような気がした…こんなに綺麗なのにツンケンした所もまるでない、飾らない、気取らない、そのまんまの自分を惜しみ無く出せる素敵な女性なんだと話してみて秀樹は初めて気が付いた…

『僕、この駅のすぐ裏で働いてますッ…』

『そうだったんですね…私もすぐ近くの陶芸教室で講師をしてます…じゃあ毎日一緒の電車に乗ってたかもッ…フフフ…』

見れば見る程素敵な女性だと秀樹は感じていた…外見だけでなくきっと内面も…同時にこんなネガティブで不細工な自分なんかにはヤッパリ釣り合わない、そんな虚しさも痛感していた…彼女が素敵であればある程に…

No.13 07/08/17 20:35
主婦0 

>> 12 🍇12🍇

『実は正直言いますけど…毎日同じ時間の同じ車両に乗ってるの見かけて…で、さっきの事故に遭遇したという訳で…ハハハ…』

小夏の足元に視線をやりながら秀樹は恥ずかしそうに告白した…

『そうだったんですね…だけどそのお陰で蓮沼さんに助けて貰えたんですよね…何か凄く嬉しいサプライズッて感じですねッ…フフフ!』

(駄目ッ、超可愛いィ~ッ…僕、どうにかなりそうッッ!)

秀樹は自分の鼻の下が伸びきっているだろうと思っていたがもうどうだっていいや!という気持ちになっていた…

『あのぅ…蓮沼さん?…私、初対面でこんな事頼むの凄くわがままで自分勝手だと思うんですけど…きっと蓮沼さんは優しい方だと思ったんで私思い切って言ってみようかなって…』

いきなりの小夏の言葉に秀樹は慌てた…

『は…はいッ…な、何でしょうか?』

小夏は迷惑ならはっきりと断って下さいねと念を押した上で秀樹にある頼み事があると切り出した…

(まさか…まさかだよな…天文学的確率で付き合って下さい…ンナァァァァ~ッッッあり得ないあり得ないッ!地球に巨大隕石が衝突するくらいそれは絶対あり得ないヨォ~ッッ!!)

秀樹の心臓に身体中の血液が集結した!

  • << 15 🍇13🍇 『実は私今の職場転職したばかりで駅からの道のりがイマイチ解りずらくて毎日四苦八苦しながら通勤してるんです…始業は10時なんですけど毎日迷いに迷うからなるべく早く行動に移さないとなかなか職場に到着しないんですね…』 (ヘェ~…だから毎日あんなに早い電車に乗ってるんだ…) 秀樹は朝早くから同じ電車で通う小夏の意図が理解出来た… 『た、大変ですもんね…目が不自由なんだし…けど凄いと思います…なのにいつも誰の助けもなく一人でここまで来てるんですもんね…ホント凄いですッッ…』 『有難うございます…でですね…もし蓮沼さんさえ迷惑でなければ私が慣れるまで駅から職場まで私を送って頂きたいんです…』 『…え?』 秀樹はいきなりの小夏の提案に目を丸くした… 『無茶苦茶な事頼んでるのは重々解ってるつもりです…私が職場までの道のりに慣れるまでで結構なんです…あ、駄目なら駄目ってそうおっしゃって下さいねッ…わがまま言ってるのは私の方なんですから…』 『駄目だなんて…だって大変ですもんね…解りました!喜んで…ハハハ…』 秀樹の心臓は爆発寸前だった!まさかまさかの展開に今もうこのまま死んでもいい!と秀樹は興奮した…

No.14 07/08/17 21:24
主婦0 

>> 13 📝🍇ご意見ご感想お待ちしてます…

✨冴えない不細工君が盲目の超美人に恋をした!?24年目にして初めて出会った運命の恋?…超オクテ駄目男の蓮沼秀樹が織りなす微妙な愛の形…今後の二人の恋の行方はどうなって行くのかッッ!凡人💀が描く完全オリジナル巨編を読み逃すなッッ!✨😁✨

No.15 07/08/18 07:56
主婦0 

>> 13 🍇12🍇 『実は正直言いますけど…毎日同じ時間の同じ車両に乗ってるの見かけて…で、さっきの事故に遭遇したという訳で…ハハハ…』 小夏の足… 🍇13🍇

『実は私今の職場転職したばかりで駅からの道のりがイマイチ解りずらくて毎日四苦八苦しながら通勤してるんです…始業は10時なんですけど毎日迷いに迷うからなるべく早く行動に移さないとなかなか職場に到着しないんですね…』

(ヘェ~…だから毎日あんなに早い電車に乗ってるんだ…)

秀樹は朝早くから同じ電車で通う小夏の意図が理解出来た…

『た、大変ですもんね…目が不自由なんだし…けど凄いと思います…なのにいつも誰の助けもなく一人でここまで来てるんですもんね…ホント凄いですッッ…』

『有難うございます…でですね…もし蓮沼さんさえ迷惑でなければ私が慣れるまで駅から職場まで私を送って頂きたいんです…』

『…え?』

秀樹はいきなりの小夏の提案に目を丸くした…

『無茶苦茶な事頼んでるのは重々解ってるつもりです…私が職場までの道のりに慣れるまでで結構なんです…あ、駄目なら駄目ってそうおっしゃって下さいねッ…わがまま言ってるのは私の方なんですから…』

『駄目だなんて…だって大変ですもんね…解りました!喜んで…ハハハ…』

秀樹の心臓は爆発寸前だった!まさかまさかの展開に今もうこのまま死んでもいい!と秀樹は興奮した…

No.16 07/08/18 08:13
主婦0 

>> 15 🍇14🍇

『じゃあ私は明日からもいつもの時間の同じ電車に乗ります…』

『あ、けど始業は10時からでしょ?…早すぎやしませんか?』

小夏は背筋を伸ばして秀樹の方を向いた…

『何を言ってるんですかッッ!無理言ってるのは私の方です…職場に送って貰うのに自分勝手な時間に合わせられませんよッ…蓮沼さんのお時間に私、合わせますから…』

毅然とした態度で小夏は秀樹に言った…

(ヤッパリ何か凄くしっかりした思い遣りのある女性だ…何て優しいんだろッッ!)

秀樹は今時珍しいこんな小夏の細やかな気遣いに感動さえ覚えていた…

『じゃあ私は次の電車で帰ります…いつもの電車に乗って毎朝このホームに降りて待ってますので明日からどうぞ宜しくお願いします…あ、お仕事お休みの時は私に遠慮なくお休みして下さいねッッ…!』

そう告げると小夏は向かいホームの下りの電車に乗り、帰って行った…

(イッョッシャァァァァァァァ~ッッッ!!やったやったやったァァァァ!!神様ァァ~!!)

小夏の電車が消えた後、秀樹はホームで跳ね飛び上がり歓喜の声を上げた!

(こ、これ夢じゃ、夢じゃないょなッッ!?僕が…この僕が彼女を毎朝ッッ…イヤッホォォォォォ~ッッ!!)

No.17 07/08/18 09:32
主婦0 

>> 16 🍇15🍇

『やったやったやったァァッ!夢見てるみたいだッッ!チキショウこの野郎ッッ、やりやがったなッ、遂にとうとうやりやがったなァァァッ!憎いぜチキショウッッ!』

ミジンコのような小さい勇気でも振り絞ってみるもんだと秀樹は痛感した…明日から夢にまで出てきたあの憧れの彼女、馬原小夏さんの職場までのエスコート役を仰せ遣わされたのだからこれが興奮せずにいられるかッッ!と秀樹は有頂天になっていた…遅れて現場に着いた秀樹に監督から容赦のない説教を浴びせられても秀樹は全然頭に入っていなかった…

(どうしよ…な、何着て会えばいいかな…あ…そっか、彼女見えないからそこは気にせ…そうだよッ、それより匂いだよ匂いッッ!汗臭かったらいっぺんに嫌われちゃうな、ヨォ~し!)

夕方仕事が終るや否や秀樹は駅前のディスカウントストアに飛び込み店員に薦められるまま、男性用の香水を購入した…

(これでよしッッ!ンハァ~どうしよどうしよッッ、明日何て声を掛けたらいいんだろッッ!こんな事生まれて初めてだから分かんないヨォ~ッッ!)

布団に倒れ込むと秀樹は未だ止まらぬ胸の鼓動にただ困惑しているだけだった…

No.18 07/08/18 12:06
主婦0 

>> 17 🍇16🍇

結局その晩は一睡も出来ずに秀樹は次の日の朝を迎えた…いつもの時間に家を出た秀樹はいつもの最寄り駅から電車に乗り込んだ…各停電車で秀樹の最寄り駅から3つ目の駅でいつも馬原小夏は白い杖を突きながら秀樹と同じ時間の各停電車に乗り込んでくる…

(あ~ヤベッ…どうしよう…昨日の晩から何も食べてないから胃が痛いヨォ…)

しきりにお腹の上辺りを押さえながら秀樹はいつもの場所で小夏が乗り込んで来るのを待っていた…

(つ、次だ…どうしよう…電車の中で声、かけよっかな…いや、ヤッパリ降りてからの方が紳士的だろうか…)

あれこれ考えを巡らせているうちに電車が駅に停車した…

(えッ…嘘…い、いな…い…)

秀樹は愕然とした…いつもこの駅から乗って来るはずの小夏の姿が何処にも見当たらなかったのだ…

(ヤッパリ…冗談だったんだ…ハハハ…だよね…こんな僕にそんな夢みたいな事…あるはずないもんね…ハハハ…)

秀樹の胸の中の積木が一気に崩れていく瞬間だった…発車のベルが鳴り響き、ドアが閉まった…

(アァ…嫌われたんだ僕…別の電車に乗ったんだ…きっと…)

何度も自分に言い聞かせながら秀樹は吊革をギュッと握り絞めた…

No.19 07/08/18 13:03
主婦0 

>> 18 🍇17🍇

だいたいよく考えれば解る事だ…誰がこんなヒネクレ者の不細工イモ野郎を相手にするかって事だよッ…その気になってヌカ喜びまでしてさ…僕は何て浅はかで情けない男なんだろう…秀樹は何回も自分自身への愚かさに唇を噛み締めた…電車が秀樹のいつも下車する職場の駅に停車した…ガックリと肩を落とし、この世の終わりでも来たかのように秀樹は何度もため息をつきながら見慣れたホームに下りたった…秀樹はふとつい昨日二人で話したベンチの方に目をやった…

(ハァ…昨日あそこで小夏さんと色んな話したっけ…まさか夢だったんじゃないだろうな…)

秀樹は意気消沈した体をゆっくり階段の方に向け歩き出そうとした…

(……ん!?待てよッッ?)

何かに気付いたように秀樹の足は再びさっきのベンチの方を向いた!

(!!…いッ…いッッ…い、いいい居たァァァァァァッッッッっ!!)

秀樹は思わずその場でつまずいてこけそうになった!秀樹の目線の先に、昨日話し込んだベンチに、あの馬原小夏が確かに座っていたのだ!!

(アァ…アァッッ…ど、どしよッ…ヤバイッッ!!)

小夏は腕に填めた音声付きのデジタル時計でしきりに時間を気にしていた…

No.20 07/08/18 13:19
主婦0 

>> 19 🍇18🍇

(どどど、どうしようッッ…小夏さんだッ…小夏さんが居るッッ!…こ、声をかけるべきか、ウ~ン…まさかぼ、僕を待ってくれてる訳じゃないよなッッ…で、でも昨日確かに言ってたよなッ…こ、この駅で待ってますって…じゃああ、あ、アレは僕の事を待ってくれてるのかなッッ…ゥエェッ、ま、まさか…けど…)

秀樹は頭が混乱して収拾がつかなくなっていた…ホントに声を掛けていいのだろうか…同じ電車に乗っていなかったとしたらまさか別の誰かに頼んだのだろうか…いつまでも煮えきらない態度でただ時だけが過ぎて行った…

《勇気…勇気…》

いちかばちか当たって砕けてみろ!という勇敢な思いが何故か秀樹を後押しした…

(よ、よしッ!シカトされて当然なんだ、やるだけやってみようッッ!)

恐る恐る秀樹はベンチに座る小夏の前に立った!大きな澄んだ瞳でじっと前だけを見つめている小夏はもしかして見えているんじゃないかと思う位に凛としていた…

(か、神様…ど、ど、どうか…この僕にッ奇跡をッッッ!!)

『あ、あ、あのッ、そのッッ、お、おは、おはは、おはよう…アッ、おはようござ、ござ、ございま、まままますッッ!!』

秀樹は小夏の前で勇気の声を搾り出したッッ!

『!……』

No.21 07/08/20 07:59
主婦0 

>> 20 🍇19🍇

『…蓮…沼…さん?…蓮沼さんですよねッッ!?おはようございますッッ!』

満面に笑みを浮かべて小夏は確認するかのように秀樹に言葉を返した…

『あ、…あのッ…その…』

『すみません…同じ電車だって言ったからもしかして私の事探して下さってたんじゃないですか?』

小夏はその場に立ち上がり少し困惑の表情を浮かべた…

『私ね、いつもの電車に乗ってもし時間に間に合わなかったら申し訳ないなと思いまして…いつものより早い時間の電車に乗って待ってたんです…ハハハ…』

(そうだったんだ…僕、嫌われた訳じゃなかったんだ…)

秀樹は心底安堵の表情を浮かべホッとした…小夏さんは自分の事を気遣いそんな事まで考えていてくれたんだ…秀樹は何故か胸が熱くなった…

『えぇ~と…じ、じゃあ…行き、行きましょうか…』

秀樹は小夏に促すとはい、宜しくお願いします!と頭を下げた…

『……』

『あの…蓮沼さん…肩…持たせて貰っても宜しいですか?』

『!……え、え?』

秀樹は慌てた…次の瞬間小夏は自分の左手を秀樹に向かってゆっくり差し出した…

『あ…アァ…ンと…』

秀樹は恥ずかしそうに小夏の左手をゆっくり自分の右肩に乗せた…

No.22 07/08/20 08:18
主婦0 

>> 21 🍇20🍇

24年間生きてきて初めての経験だった…女性に触れられている…それも心底大好きな一目惚れの女性に…自然と秀樹の動悸は激しさを増した…

『…あ、あ、歩く早さは…こ、こ、こんな感じで宜しいでしょ、しょうか!?』

『はいッ!大丈夫ですッ…早く歩くのには慣れてますから蓮沼さんのペースで…』

ゆっくり階段を降りて西口の改札を出た秀樹と小夏は小夏の指示通り歩き出した…

『目の前に郵便局があると思うんです…そのすぐ右の筋を入って200m程行った十字路で左手に曲がり、商店街の中の散髪屋さんと呉服屋さんの間の小さなビルの3階なんです…』

『え~郵便局…あ、ありました…そこを…』

いつも下車している駅にもかかわらず秀樹はこの駅の西口には全然土地勘がなく辺りをキョロキョロしながらぎこちない歩幅で歩いた…

『…背…低いでしょ僕…ハハハ…腕疲れませんか?』

『と、とんでもないッッ!全然ッッ!気を使って下さって有難うございますッッ!』

秀樹は肩に置かれている小夏の手に全意識を集中させ、小夏に出来るだけ粗相の無いように歩くのに必死だった…

『蓮沼さんってお幾つですか?…』

後ろから小夏の澄んだ声が聞こえてきた…

『あ…僕、24です…』

No.23 07/08/20 11:49
主婦0 

>> 22 🍇21🍇

『ヘェ~24歳なんですか…』

『…あ、いや、その《ヘェ~》っと言うのは…?』

秀樹は自信なさげに聞いてみた…

『ぃえ…声の感じからしてもっと歳上かなって思ってました…お歳の割に随分しっかりされてますよねッッ!』

秀樹はゆっくり歩幅を確かめるように歩いている小夏に気付いてハッとした…

『あ!す、すみませんッ…もしかして駅からの歩幅確認されながら歩いてました…かッ?』

『あ、大丈夫…気にしないで下さいねッ…ハハハ…実はそうなんです…毎日こうして一定の歩幅で歩いては目的地までの道のりを計算してはいるんですが…真っ直ぐに歩いているつもりでもどうしても上手くいかないんですよ…』

秀樹は駅からの道路を歩いていて気付いた事があった…黄色い点字帯の上に無造作に置かれた放置自転車、店の前に停められた違法駐車の車…小夏のように一人で歩く視覚障害者にとってこれらは歩行を遮る無用の産物でしかない…障害者に配慮のないこの自分さえ良ければいいという現代社会の《無頓着さ》を秀樹は初めて実感させられた気がした…

『…気持ち…解りました…これじゃぁ…歩くのもままならないじゃないですか…』

秀樹の中に小さな憤りが生まれた…

No.24 07/08/20 16:26
主婦0 

>> 23 🍇22🍇

『仕方ないですよ…我々障害者だけの道ではないですから…』

『僕達健常者だけの道でもありませんッ!…』

思わず秀樹は声を荒げてしまった…十字路を左に折れると目の前に商店街のアーケードが見えて来た…

(ここも放置自転車が多いなぁ…)

秀樹はあまりの放置自転車の多さに目を丸くした…普段一人ならここまで感じなかっただろう…でも小夏と同じ障害者目線で街を歩いた時、やはり障害者に優しい社会を推進する日本国の浅はかさと偽善心に心が痛んだ…

(え~と、散髪屋、呉服屋…)

商店街に入ると一気に人の波が増えた…

『あ!原田理髪店と河野呉服店の間…こ、このビルですねッッ!』

秀樹は小夏に確認を取り間違いない事を確かめた…

『有難うございましたッ!何とか感覚掴めそうです…』

『明日も是非お、お、送りますよッ…良かったら…』

小夏の不安げな顔つきに思わず秀樹が言葉を発した…

『いいんですか?ホントに無理させてませんか?私の方はそうしてもらえたら嬉しいんですが…』

『し、心配しないで下さいッ…僕の方は大丈夫ですッッ!』

小夏は満面の笑みを浮かべながら秀樹に向かってじゃあ宜しくお願いしますと頭を下げた…

  • << 29 🍇23🍇 これは神様からの嬉しい贈り物なのか、はたまた心底駄目な男を奈落の底に突き落とす為の密かな予兆なのか…秀樹には知る由もなかった…とにかく今は馬原小夏の事がいつも頭から離れなくて明日からどんな話をしたらいいだろうと嬉しい悲鳴を挙げていた… (まず…お幾つですか?ってこんな感じで行けばいいだろうか…で、次にん~と…趣味は?…ハァ…何かそれって堅苦しいというか、ありきたりというか…まずどうして目が不自由になったのかを…ってか、やっぱそこは触れられたくない箇所かな…危ない危ないッッ…デリカシーがないヤツだなんて思われちゃうよなッ…) 一人で考えれば考える程秀樹は小夏に明日からどんな話題を振ればいいのかに迷っていた…だが今までは空想の世界の出来事でしかなかった彼女の事をこんなにも現実的に考える事が出来る幸せは何物にも変えがたい大切な時間だと秀樹は痛感していた… (とにかくわずかだけど与えられた時間は毎日10分間はあるんだ…それを大切にしなきゃな…それが出来なきゃ僕は恋愛なんてする資格はないんだッッ!よし!) 秀樹は今後小夏に尋ねたい事をメモ張に箇条書きにして残した…

No.25 07/08/20 16:32
主婦0 

>> 24 📝ご意見ご感想お待ちしています✨

🍇皆様からのお便りが継続へのエネルギーです😂どんな些細な事でも構いませんのでメッセージ下さいませ💕淋しがり屋の作者より✨💧

No.26 07/08/21 19:53
匿名26 

>> 25 泣かないで

声をかけにくい

そんな
性格の人もいますから

泣かないで

お願いします

No.27 07/08/21 20:23
主婦0 

>> 26 匿名26様✨有難うございます…🍇読んでくれている方がいたんですね😢感動です…何か嬉しくて嬉しくて涙が止まりません😿書き手にとって読んで下さっているという証がどんなに勇気付けられる事か…有難うございました✨🍇

No.28 07/08/21 20:44
匿名26 

>> 27 読んで
レスするの
遠慮する人
沢山いますよ

このレスも
きっと
誰か見て

あっ 良かった

読んでいましたが
主さん泣いている

ああ良かった
レスをいれた匿名さん

じゃあ
大丈夫かな

元気を出して

そう
納得して レスをいれない

ロムしてる人が
いるんです

自分は
そんな人間です

では
あまり
外出するのは
疲れますから

これにて 失礼します

おやすみなさい

No.29 07/08/22 17:02
主婦0 

>> 24 🍇22🍇 『仕方ないですよ…我々障害者だけの道ではないですから…』 『僕達健常者だけの道でもありませんッ!…』 思わず秀樹は声を荒げて… 🍇23🍇

これは神様からの嬉しい贈り物なのか、はたまた心底駄目な男を奈落の底に突き落とす為の密かな予兆なのか…秀樹には知る由もなかった…とにかく今は馬原小夏の事がいつも頭から離れなくて明日からどんな話をしたらいいだろうと嬉しい悲鳴を挙げていた…

(まず…お幾つですか?ってこんな感じで行けばいいだろうか…で、次にん~と…趣味は?…ハァ…何かそれって堅苦しいというか、ありきたりというか…まずどうして目が不自由になったのかを…ってか、やっぱそこは触れられたくない箇所かな…危ない危ないッッ…デリカシーがないヤツだなんて思われちゃうよなッ…)

一人で考えれば考える程秀樹は小夏に明日からどんな話題を振ればいいのかに迷っていた…だが今までは空想の世界の出来事でしかなかった彼女の事をこんなにも現実的に考える事が出来る幸せは何物にも変えがたい大切な時間だと秀樹は痛感していた…

(とにかくわずかだけど与えられた時間は毎日10分間はあるんだ…それを大切にしなきゃな…それが出来なきゃ僕は恋愛なんてする資格はないんだッッ!よし!)

秀樹は今後小夏に尋ねたい事をメモ張に箇条書きにして残した…

No.30 07/08/23 12:15
主婦0 

>> 29 🍇24🍇

『蓮沼さんおはようございますッッ!今日はいい天気ですねッ…今日も宜しくお願いしますッッ!』

次の日もいつもの駅のホームに馬原小夏は立っていた…春らしい淡いチェックのセーターにデニム地のジャンパーというカジュアルな服装の小夏はいつもより濃いめのサングラスを掛けていた…駅の階段を降りて西口の改札を出た二人に初春の暖かな風が吹き抜けた…

『気付きました?今日私から蓮沼さんに声を掛けたの…何故だか解ります?フフフ…』

『え?…そ、そういえば…そうでしたね…』

秀樹と小夏はコンビニの前を通り郵便局を抜けた…

『蓮沼さんいつも香水つけてらっしゃいますよね?…私見えない分匂いに敏感だから近づいて来る方が誰だか解るんですよッッ…』

秀樹はドキッとした…小夏に嫌われないようにと毎日付けていた香水の匂いに彼女は敏感に反応していたのだ…

『す、凄いですねッ…目の不自由な方には普通の人よりも集中力があると聞きましたが…さすがです…あ、こ、香水…とか…嫌いですか?』

秀樹はつけている香水の匂いが気掛かりになった…

『あ、別に…私は大丈夫ですよッッ…フフフ…』

No.31 07/08/23 16:48
主婦0 

>> 30 🍇25🍇

『ただ…男の人はあまり香水とか…付けない方が素敵だと思いますよッ!…蓮沼さんがもし私に逢う事で変な気を遣わせてたんならごめんなさい…』

(………図星だ…何て感性の鋭い人なんだろ…!)

秀樹の心の中は完全に見透かされていた…

『あ!わ、私また…ヤダ…す、すみません…気を悪くなさったんじゃないですか?駄目なんですッッ、私のこういうデリカシーのない性格がッッ!ホントにすみません!悪気があって言ったんじゃないですからッッ!』

『解ってます…ハハハ…解ってますよ…気にしないで下さい…正直な意見で凄い、な、何か…素敵ですッッ…』

頭を抱えてしきりに舌を出して反省する小夏の仕草に秀樹は魅了されていた…オブラートに包まれる奥歯にモノが刺さったような言い方よりも全然いいと秀樹はまた納得した…

『着きましたよッッ…』

職場のビルの前に着くと小夏は 秀樹に今日も有難うございましたと丁寧に頭を下げた…

『楽しかったです…色んなお話聞けて…明日から香水つけるの、やめにしますねッッ!』

秀樹が皮肉混じりにそう言うと小夏はモウッ!と半分口を尖らせて意地悪ですねッ!とおどけて見せた…その困った顔に秀樹はまた恋をした…

No.32 07/08/23 17:03
主婦0 

>> 31 📝貴方にはあるでしょうか…平凡でつまらない日常で唯一自分が輝ける場所、自分が大切にしたい時間、かけがえのない人…モテナイ男が神様から貰ったたった一度きりの【贈り物】…蓮沼秀樹は今生まれて初めて味わう試練という時の中を必死に進んでいます…その先にどんな困難が待ち構えているのでしょうか…それは神様のみぞ知りうる事…《平成版美女と野獣の恋》に果たして光はあるのでしょうか…皆様からのご意見ご感想お待ちしてます🍇✨💀

No.33 07/08/23 17:35
主婦0 

>> 32 🍇26🍇

それから一週間秀樹にとって夢のような時間が流れた…毎朝憧れの女性の手を肩に乗せ、職場までの貴重な10分間の浪漫飛行…この7日間、秀樹は馬原小夏という女性を全身で感じ、全てを心の奥に忘れないように記憶しておこうと必死だった…

《馬原小夏さん…22歳独身実家で両親と弟の4人家族…趣味は陶芸と体を動かす事…好きな色はピンクとエンジ…沖縄料理と韓国料理が大好きでネコより犬派…》

二人の会話の中に隠されたどんな些細な事柄も秀樹は聞き逃さまいと真剣だった…そして結局核心の質問が出来ないまま、7日目の朝を迎えてしまった…

『蓮沼さん…ホントに有難うございましたッッ!蓮沼さんのお陰でここまでの道のりももう完全に熟知する事が出来ましたッ!明日からもう迷う事もないと思います…』

『…え…じ、じゃあ明日からはもう……』

突然の小夏の言葉に秀樹は動揺した…いつかはその時が来るのは予想していた事だったがまさかこんなに早くその運命の時が来るなんて…

『こんな私なんかに親切にして頂いてホントに感謝してますッ…正直世間は皆冷たい人ばかりだと感じていましたが貴方は…蓮沼さんは違ってました…誠実で実直でした…ホントに感謝してます…』

No.34 07/08/23 17:54
主婦0 

>> 33 🍇27🍇

こうなる事くらい最初から秀樹には解っていた事だった…二人の朝の散歩が永遠に続く訳がない事位…だが解っていても切なさとやりきれない想いが交錯して秀樹の中の何かが一気に崩れ落ちる音が聞こえた…肩を落とす秀樹の目の前に小夏はリボンのついた箱を差し出した…

『…な、何ですか?…』

『今日までの感謝の気持ちです…受け取って下さい!』

銀紙包みの細長い箱に真っ赤なリボンが十字に綺麗に巻かれてある…

『こ、これ…ぼ、僕に?』

『蓮沼さんの好みに合うかどうか解りませんけど…ハハハ…遠慮なく受け取って下さいッッ!』

小夏はその秀樹へのプレゼントを両手で笑顔で差し出していた…

『話していて解りました…蓮沼さんの優しい性格やチョッピリ恥ずかしがり屋な所も…フフフ…でも凄い芯のしっかりした真摯で素敵な男性でした…』

小夏はゆっくりとそう話すと秀樹の手にプレゼントを置いた…

『明日からは私一人でまた頑張ってみます…あ!もし電車で逢う事あったらまた遠慮なく声を掛けて下さいねッッ!』

小夏は秀樹に深々と頭を下げ礼を言うと職場のビルの中に消えて行った…

(こ…小夏サン…)

秀樹はただじっと小夏の後ろ姿を眺めていた…

No.35 07/08/23 19:18
主婦0 

>> 34 🍇28🍇

目を閉じると小夏の顔が浮かび上がる…部屋のベットの上で大の字に寝転がりながら秀樹は考えていた…

(終わったんだよな…そうだ、終わったんだ…今日で…)

何度も確認し、納得しようとするが秀樹の中の何かが未練となってしきりに邪魔をする…プレゼントの中身は銀色のセンスのいいネクタイだった…ベットの脇にそのネクタイを置き、秀樹はため息をついた…

(また明日から平凡な毎日の始まり…カァ…小夏サン、職場までの道完全に覚えたからもう…もう僕と同じ時間の電車には乗らないだろうし…ハァ…)

小夏サンにとっての僕との一週間て一体どんな意味があったのだろうか…そんな意味のない事を考える度に秀樹の心は惨めさに押し潰されそうになっていった…

(告白…ウンヤッッ滅相もないッッ!…だけどただ…ただいつまでも一緒に居たかった…ずっとこのまま小夏サンが道を覚えてくれなきゃ良かった…)

卑屈な妄想が秀樹の頭の中を漂っていた…

(もし逢ったとしても声…かけにくいよな…てゆうか何て声かければいいのか解んないよッッ…)

秀樹は一度大声を出して頭から布団を被った…

No.36 07/09/08 08:21
主婦0 

>> 35 🍇29🍇

蓮沼秀樹の平凡な毎日がまた始まった…毎朝同じ電車に揺られいつものように現場に向かい、日が落ちる頃には仕事を終え帰る日々…そして秀樹の乗る朝の電車の扉二つ前には必ず馬原小夏の姿があった…それは秀樹にとって意外な事ではあり、逆にいつまでも彼女の事を忘れられずにいる原因にもなっていた…

(道覚えたんだからもうこんなに早い電車に乗る必要なんてないんじゃないかな…)

小夏は相変わらず恐縮したように杖を小脇に抱え、周りの乗客に気を使いながら電車の吊革を持ち立っていた…忘れてしまいたいが今の状況下に於いては忘れようにも忘れる事が出来ない…もし本当に何もかも忘れたいのなら自分が他の時刻の電車に乗ればそれで済むことだ…でも秀樹にはそれが出来なかった…秀樹の心にまだ彼女への未練がありその気持ちが秀樹をそうさせないのだ…今はただ彼女をこうしてまた遠くから見守っていたい…自分には何も出来ないけど…秀樹は何度も自分にそう言い聞かせながらただ毎日馬原小夏を眺める10分間を過ごしているだけだった…

(もう彼女に声をかける勇気もパワーも僕には残っていないんだ…アァ…さよなら、情けない僕の恋ッ…)

No.37 07/09/10 16:48
主婦0 

>> 36 🍇30🍇

『ちょっと秀樹ッッ!アンタの部屋の匂い、あれ何とかならないッッ!?』

その日の夕食時に母親は浮かない顔の秀樹に向かって捨てるように言葉をかけた…

『匂い?…何の事だよッッ!』

『昨日アンタの部屋の掃除に行ったら何かよく分からない匂いが立ち込めてんだよッ!…臭くてかなわないよッッ!』

秀樹の母親はとんでもなく大袈裟なアクションで鼻を摘み眉間に皺を寄せた…

『…もしかして…こ、香水かな…』

『こ、こ、香水ッッ!?…秀樹アンタ血迷ったのかいッッ!?香水なんか付けてんのかいッ?道理で最近服装にもイヤに気を遣うようになっ…!…まさか…いや、ハハハ…まさかネェ…』

母親の次に出る言葉は秀樹には分かっていた…しかしその言葉を最後まで言わないように口を嗣ぐんだのは母親の秀樹に対しての細やかな愛情にも見て取れた…

『明日ちゃんと処分するから…ってゆうか勝手に人の部屋に入んないでくれるッッ?』

明らかに不審な目を秀樹に向けながら秀樹の母親は頼んだよッ!と念を押した…

『…好きな人でも出来たのかい?…』

台所に食器を置き、自分の部屋に戻ろうとする秀樹に母親がボソリと言った…

『………ウルサイよッ、いちいち…』

秀樹はバツが悪そうに階段を駆け上がった…

No.38 07/09/10 18:31
主婦0 

>> 37 🍇31🍇

翌朝秀樹は香水をビニル袋に丁寧に閉じ、鞄に放り込み出勤した…母親が部屋が臭いと言ったのも無理はない…香水の瓶は蓋が外れ中の液が秀樹の引き出しの中で染みだしていたからだ…自宅のゴミ箱に捨てたらまたお袋がウルサイだろうなと思い秀樹は途中どこかのゴミ箱にでも捨てるつもりで持ち出したのだ…秀樹は鞄に入った香水の袋を眺めながらため息をついた…

(…こんな香水まで買って一人喜んじゃってさッ…バカみたい僕ッ!)

秀樹は小夏と歩いた事を思い返していた…

《嫌いじゃないですけど、男の人はあまりそんなのつけない方がいいですよッ!》

屈託のない笑顔が最高に綺麗だった小夏を思い出す度に秀樹の心はやるせない気持ちになった…最寄り駅の構内のゴミ箱にその香水を捨てると秀樹はいつものように決まった電車に乗った…

(とか何とか言って僕もかなりのバカ野郎だよな…辛いなら他の電車に乗ればいいのにッッ!)

自分で自分をなじると秀樹はいつもの指定場所で小夏の乗車を待った…3つ向こうの駅のいつものドアから今日も馬原小夏は杖をつきながら乗り込んで来た…

(こ…小夏サンッ…!おはようございます!)

秀樹は声にならない声を今日もまた小夏に発した…

No.39 07/09/11 11:25
主婦0 

>> 38 🍇32🍇

長い髪を結い上げ、サングラス越しの凛とした小夏の横顔を眺めているだけで秀樹は心から幸せな気持ちになった…同時にずっとこのままなんだ…何にも変わらないんだ…そんな言いようのない哀しみにもさいなまれた…同じ車両のたった8m足らずの距離が秀樹には遥か彼方の果てしない距離に感じていた…秀樹は瞬きもせずにじっと吊革に捕まり左右に揺れる小夏の横顔を眺めていた…すると不思議な事に小夏は何故か突然何かに気付いたように軽い笑みを見せた…車内は特に変わった様子もなく目の見えない彼女に笑いのネタになるような広告の類も見えるはずもなく秀樹は少し戸惑った…

(笑ってる…何でだろ?…)

明らかに小夏の左右の口角は上に向かって引き上げられていた…隣の学生達の他愛もない話に反応しているのか、はたまた何かを思い出してほくそ笑んでいるのか秀樹には分からなかった…小夏は左手に持っていたハンカチを口に当てながら尚も微笑み続けていた…

(何が可笑しいのかな…でも小夏サンの笑顔は最高だからそんな事どうでもいいやッ!)

秀樹は一人納得すると微笑み続ける小夏の綺麗な顔をじっと見つめ続けていた…

No.40 07/09/11 12:16
主婦0 

>> 39 🍇33🍇

電車がいつもの駅に着いた…秀樹は小夏の行動に目をやりながらホームに降りて歩き出した…小夏は周りの人々に恐縮しながら杖を突き、階段を一歩一歩降りて行った…秀樹は毎日そんな小夏の後を5、6m位の間隔を置きながら後ろから付いて行く…また転んだりしたら大変だ…秀樹にとりそれはまるで子供の初めての御使いで心配でたまらなく後を付けて歩く親のような心境だった…階段を降りた所は左右のT字路になっており、右に行くと秀樹がいつも利用する東口の改札で、左は小夏の降りる西口の改札である…

(今日も気をつけて…頑張って下さいねッッ!)

秀樹は後ろ姿の小夏に微笑んだ…すると小夏は何故かT字路の真ん中で立ち止まり振り向いた!

(!…え、えッ!?)

いきなりの行動に秀樹の足も階段の3段上程で止まった…

(…な、何、してんだろ…)

秀樹は気を取り直したようにそのまま無言で小夏の脇をすり抜けるように自分の改札である東口に向かって歩き出した…と、その時秀樹に思いもよらない事が起こった!

『…ンモッ!蓮沼さんッッ!水臭いですよッッ!あんまり水臭いからこっちから声、かけますッッ!!』

(!………え、えぇッッッ!!?)

No.41 07/09/11 16:38
主婦0 

>> 40 🍇34🍇

秀樹は次の瞬間心臓の鼓動が早まった!小夏から発せられた突然のその言葉はあたかも秀樹がそこに居たかのような当たり前のような言葉だった…

『あッ…あ、…ど、ど、どうし…てッ…』

《見えるのかッッ!?》

…秀樹の脳裏に浮かんだ率直な感想だった…いや、そんなはずはッ!彼女は光を失った全盲の障害者のはずだッ!秀樹はどうしていいのか分からずただその場に立ちすくんでいた…

『おはようございますッッ!蓮沼さんッ!フフフ…お久しぶりですッッ!』

…も…もしかして…まさか彼女は超能力者ッッ!?見えるはずもない自分の姿を今いとも簡単に言い当てて目の前に笑顔で立っている、この事実を秀樹はどう理解していいのか分からなかった…

(な、何で分かったんだッッ!?…何で…)

秀樹は一人挙動不審に陥りながらただ目を丸くして小夏の側に立っていた…

『おッ…お…おはッ、おはようごじゃいま、ますッッ!あッ!』

あまりの突然の出来事に秀樹の舌はもつれにもつれた…小夏は秀樹からの言葉を聞いて初めて安心したようでクスクスと口にハンカチを当てながら笑った…

『この電車に乗っていたらいつかまた蓮沼さんに逢えるかなって…思ってました!』

(!……え?)

No.42 07/09/11 18:26
主婦0 

>> 41 🍇35🍇

『ど、どしてボクの事ッ…あ、あ…』

秀樹はまだ頭が混乱していた…久しぶりに声をかけられた喜びと緊張でどんな言葉をかければいいのか心底迷っていた…

『だってプンプンなんですもんッ、蓮沼さん!』

『はぁ?…プンプン!?』

秀樹の言葉が妙に面白かったのか小夏は声を出して笑った…

『蓮沼さんが付けてらっしゃるのはモロッコのバラッキっていう化粧品会社から出されている《テコ》っていう男性用香水です…地中海原産の柑橘系の果実を使って整合されたとっても珍しい香水ですッ!日本でそれを使ってらっしゃる人ってあんまり居ないからもしやと思って…』

秀樹は驚きのあまり声が出なかった…そしてゆっくり目線を自分の鞄の中に移すとその鞄をクンクンと匂ってみた…

(!…こ、この匂い…う、嘘ッ!)

『今日の電車に乗ったら車内にその香水の匂いがほのかにしてきて…あ、もしかして蓮沼さん?って…ハハハ…思わず笑ってしまいました!』

秀樹は小夏が車内で微笑んでいた訳を理解した…

(ボクの匂い…覚えてくれてたんだ…てゆぅか、す、凄いッッ!さっきまで香水の入っていた鞄の、それだけで…その匂いだけでボクって気付いてくれたの?…し、信じられない…何て感性だ…)

No.43 07/09/11 19:03
主婦0 

>> 42 🍇36🍇

『私以前輸入化粧品会社に勤務してた事があったんでだいたいの香水や化粧水の匂い解っちゃうんです…蓮沼さんのつけてらっしゃるのは結構高価な香水ですよねッ!』

秀樹は天を仰いだ…これが一番のオススメですよと買わされた4万円の香水…道理でディスカウントストアの店員がしつこく薦める訳だッ…向こうとしては香水の価値も解らないいいカモが来たくらいにしか思われていなかったんだろうと秀樹は急に恥ずかしくなった…

『鞄に匂い…ついてたんですね…来る途中駅に捨ててきたんですけど…』

小夏はもったいない!と困った顔をしておどけた…秀樹は久しぶりに真正面から見る小夏の変わらない笑顔に見とれていた…

『けど何か嬉しくなっちゃいましたッ!』

『……え?』

『あれからまだそんなに経過していないのに…何か…分からないんですけど…フフフ…』

それってボクに逢えてって事ですか?喉の先まででかかっていたその言葉を秀樹は飲み込んだ…

『じ、じゃぁボクは…こ、これで…』

立ち去ろうとする秀樹に小夏が声をかけた…

『明日も同じ電車に乗ります…』

『…はい?』

『同じ時間の同じ車両に乗ります…』

小夏はそう言うと一礼をして踵を返し、西口に歩き出した…

No.44 07/09/11 19:27
主婦0 

>> 43 🍇37🍇

『秀樹お前そりゃあ声をかけて下さいって合図だろがよッ!』

『…そうなのかな…ヤッパそうなんだろうかナァ…でもナァ~…』

現場近くの焼き鳥屋のカウンターで秀樹は職場で唯一といっていい友人の吉野保と酒を汲み交していた…吉野は秀樹の一つ歳上で職場の上司でもあった…

『明日も同じ電車に乗りまァ~すッ!ナァ~んて興味もない相手にいちいち言うか普通ッッ!脈あり脈ありアリアリだっつぅの!当たって砕けてみろよッ!秀樹ッッ!』

学生時代ラグビー部に所属していただけあり吉野はかなりの体育界系の激しい男だった…

『でも…何て言って声かければいいか…分かんなくて…』

焼き鳥の葱の部分を一気に口に放り込むと吉野は煮えきらねぇヤツだなぁ!と貧弱な秀樹の背中を叩いた…

『とにかく声をかけてもっと話しなきゃ始まらねぇじゃねぇかよッ!男は口だよクゥ~チッッ!唯でさえお前にゃ致命的なハンデがあんだからよッ!』

吉野の言葉に秀樹は不快に反応した…

『…何すかハンデって…チッ、吉野さんに言われなくても解ってますよッ、自分が超不細工だって事くらい!』

そんな意味で言ったんじゃないと吉野は気を使いながら秀樹をなだめた…

No.45 07/09/11 19:54
主婦0 

>> 44 🍇38🍇

『…けどヤッパ無理ですよボクッ…きっと彼氏とか居るだろうし…声掛けて仲良くなるなんて事ヤッパ…』

『あのな、秀樹いいかッ?…その娘に彼氏が居ようが居まいが関係ねぇんだよッ!今はお前の度胸ってもんが神様に試されてんだッ!24年間彼女も居ない童貞野郎に願ってもない恋のチャンスが訪れてんだッ!こんな男としての度胸を試す機会を自分からみすみす手放したら秀樹ッ、お前男じゃねぇぞッッ!うおッ?』

酒が入った時の吉野は手が付けられない位の腕白ぶりだ…そんな吉野の熱い語りを秀樹は半分呆れ顔で聞いていた…

(…ハァ…けど吉野さんの言う事は決して間違ってはないよナァ~…)

秀樹はライムチュウハイの残りを一気に流し込んだ…

『…で、その娘…美人なのかッ?うおッ?』

吉野がにやけ顔で聞いて来た…

『…は、はぃ…かなりの…だからボク余計にコンプレックス感じてるんですよッ!』

『じゃさ、もしお前が駄目なら…俺…イッてもいいか?イヒヒッ!』

下心満開の顔で吉野が秀樹に詰め寄った…

『えッ……マジで…ッてゆうか…えぇッ!?』

勿論吉野は冗談のつもりで言ったのだが秀樹はその問いに何の返答も出来ないままただ目を宙に浮かせて慌てているだけだった…

No.46 07/09/11 20:40
主婦0 

>> 45 🍇39🍇

二個のワイングラスがカチャンと鳴った…箕島圭一はソファーの小夏の横に座り直すと彼女の長い髪を撫で始めた…

『大丈夫…小夏はナァ~んにも心配要らないからね…全部僕に任せておきなッ…』

真正面を向き微動だにしない小夏の横顔に触れながら圭一はいつもの決まり文句を口ずさんだ…

『圭一さん、私…』

『今ね、叔父さんが君の為に必死で角膜ドナーの調達に奔走してくれてるんだ…ドナーの角膜が決まり次第すぐに手術してあげるからねッ…』

着ている真っ黒のシャツを一度パンと整えて圭一は小夏の唇の感触を楽しんだ…

『ん?…どうしたの、小夏…』

あまり乗り気でない小夏の雰囲気を悟った圭一は不思議な顔つきで小夏を見た…

『もしかしてまだ怒ってる?…君をこんなにしてしまった僕の事怨んでるの?』

子供に諭すように圭一は小夏に言った…

『君にはホントに迷惑かけたと思ってる…だからこれは僕のせめてもの君への償いなんだ…君の事僕は一生をかけてでも守り続けて行くよ…そしてその光を失った綺麗な瞳にまた輝く光を浴びて貰う為なら僕は何だってしてあげる!…』

『圭一さん、あのね…』

小夏が次の言葉を発する前に圭一はキスで彼女の言葉を遮断した…

  • << 48 🍇41🍇 小夏はさすがに今日は秀樹の存在に気が付かない…あの香水の匂いはもうとっくに秀樹の持ち物や体から消えていたからだ… (何か寂しいな…もし今あの香水付けてたら…小夏サン、僕にすぐ気が付いてくれたんだろうか…) 秀樹は香水を捨てた事を後悔していた…あの香水の匂いだけが自分と小夏を繋ぐ唯一の接点だという事を認識していた…快速電車が勢いよく通り過ぎた… 《当たって砕けてみろよッ!お前にはもう何にも失う物なんてないんだからッ!》 突然あの日居酒屋で言われた吉野の言葉が秀樹の脳裏をよぎった…このまま悶々とした日々を過ごしていいのか…いつまでたっても情けないヘナチョコ野郎でいいのか…その思いは秀樹の頭の中をまるで衛星のようにクルクルと回転していた… 《勇気…勇気…勇気…》 駄目で元々…秀樹の中で何かがふっきれた瞬間だった…どんな結末になろうとも…どんな惨めな気持ちになろうとも…僕にはこれ以上失う物はないんだ!僕の今の気持ちは小夏サンの事が好きだという事実…ただそれだけなんだ、いや、それだけでいいんだ…たったそれだけで…秀樹は息を吸い込むとゆっくり吐き出し、意を決したようにゆっくりと小夏に近づいて行った…

No.47 07/09/12 08:03
主婦0 

>> 46 🍇40🍇

それから幾日か過ぎたある日…神様はその機会を再び秀樹に与えようとしていた…あいにくの雨模様で仕事を4時で終えた秀樹は帰路につく為いつもの駅の改札に向かった…気象庁が先日梅雨入り宣言したせいかこの所曇りと雨のはっきりしない天気が続いている…

(あ、そうだ…携帯調子悪かったんだ…早く終わったしちょっと見てもらおうっと…)

先日からお気に入りの携帯電話の《3》のボタンの調子が悪く、機会があれば自宅近くの携帯電話ショップに持って行き修理を依頼しようと兼ねてから思っていた…今日は正にその絶好の日だ…東口の改札機に定期券を通し、秀樹はホームへの階段を登った…

(!……あ……ッ)

秀樹は思わず声を上げそうになった…いつも乗車するホームの脇のベンチにじっと馬原小夏が座っていたのだ…

(こ、小夏サン…だ…)

いつもなら朝の通勤電車の中の10分間の楽しみが今日はその倍になったと秀樹の心は踊った…

(仕事帰り…カナ…いつも帰りはこんな時間なんだ…)

秀樹は静かに小夏のすぐ傍の柱の影に体をもたげた…肩の辺りまで伸びた栗色の髪は時折風になびきサラサラと舞う…サングラス越しの彼女はいつもと同じピンと姿勢を伸ばしていた…

No.48 07/09/12 08:19
主婦0 

>> 46 🍇39🍇 二個のワイングラスがカチャンと鳴った…箕島圭一はソファーの小夏の横に座り直すと彼女の長い髪を撫で始めた… 『大丈夫…小夏はナ… 🍇41🍇

小夏はさすがに今日は秀樹の存在に気が付かない…あの香水の匂いはもうとっくに秀樹の持ち物や体から消えていたからだ…

(何か寂しいな…もし今あの香水付けてたら…小夏サン、僕にすぐ気が付いてくれたんだろうか…)

秀樹は香水を捨てた事を後悔していた…あの香水の匂いだけが自分と小夏を繋ぐ唯一の接点だという事を認識していた…快速電車が勢いよく通り過ぎた…

《当たって砕けてみろよッ!お前にはもう何にも失う物なんてないんだからッ!》

突然あの日居酒屋で言われた吉野の言葉が秀樹の脳裏をよぎった…このまま悶々とした日々を過ごしていいのか…いつまでたっても情けないヘナチョコ野郎でいいのか…その思いは秀樹の頭の中をまるで衛星のようにクルクルと回転していた…

《勇気…勇気…勇気…》

駄目で元々…秀樹の中で何かがふっきれた瞬間だった…どんな結末になろうとも…どんな惨めな気持ちになろうとも…僕にはこれ以上失う物はないんだ!僕の今の気持ちは小夏サンの事が好きだという事実…ただそれだけなんだ、いや、それだけでいいんだ…たったそれだけで…秀樹は息を吸い込むとゆっくり吐き出し、意を決したようにゆっくりと小夏に近づいて行った…

No.49 07/09/12 13:19
匿名49 ( ♀ )

主さん こんにちは😊

こっちがドキドキしちゃう展開ですね😁💦

更新 楽しみにしてますね💕

No.50 07/09/12 13:48
主婦0 

>> 49 匿名49様有難うございます🍇…つたない文章ですが末永くお付き合い下さい✨メッセージ凄い嬉しかったです💦作者より🍇

  • << 51 🍇42🍇 『こ、こッ…こん、こんにちッ、コンニチワッ…!』 額にかいた汗を服の袖で一度拭うと秀樹はベンチで電車を待つ小夏に言葉をかけた! 『………』 『……あ…あ、あのッ…そ、あ…』 小夏の予期せぬ反応に秀樹は一度たじろいだ…小夏は秀樹の声に答える素振りもなくただじっと真正面を向いて無言で座っていた…一度切り出した言葉を再び引っ込める訳にもいかず、秀樹はそんないつもと違う小夏の反応を見て困惑していた… 『あ、…そのッ…こ、こんにちはッ…ハハハ…』 秀樹は今度は聞こえるように少し大きめの声を出してみた… 『……!…あッ!…は、蓮沼…さん?…もしかして蓮沼さんですかッ!?』 小夏は我に返ったような顔つきで秀樹の声がするであろう方向に姿勢のいい体を向け直した… 『ハハハ…こ、こんにちは…蓮沼…です…』 『嘘ッ!やだ…すみませんッッ!まさか蓮沼さんだとは思わずッ…こんな時間こんな場所で逢うなんて予想もしてなかった事だったもので…』 小夏は秀樹を無視していた訳ではなく、全く知らない男性にいきなり声をかけられているのだと勘違いしていたらしかった… 『こ、こちらこそ…いきなりすみませんッ…ビックリさせましたねッ…』 秀樹は頭を下げた…
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