後悔

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高校生
2018/12/05 22:34(更新日時)

「その時、パンを1つ手に入れたんだ。戦火の中ではパンはとても貴重だった。次、いつ食べ物が手に入るか分からなかったから。防空壕の中にいた人たちはみんな空腹で、隣の人に分けてあげなければ･･･と思いながらも、僕は隠れて一人で食べたんだ。最低な人間だと思うだろうけど、常に餓死と隣り合わせの日々で、栄養不良で何度か倒れていて、トカゲでもネズミでも何でもいいから、今、何か口にしなければ死ぬ･･･というのが自分で分かるんだよ。倒れて意識がなくなったら、そのまま死んでしまうというのが･･･。餓死寸前というのは極限状態だから、本当にネズミでも猿の脳みそでも、とにかく口すれば意識が戻る。気持ち悪いとか野蛮だとかいう問題ではなく、生命を維持する為に泣いてでも口に物を入れなければならないんだ。それは本当に辛くて、惨めで、それでも、そうまでしてでも人間って生きたいんだね。そういう状況だったから、パンは1億円くらいの価値に匹敵するくらい貴重で、だから僕はどうしても分け与える事が出来なかった。情けなくて、惨めで、声を殺して泣いたよ。極限状態の中では人間というのは醜いものだよ」

僕は彼からこの話を聞いたとき、ネズミや猿の脳みそなんて、本当にそんなもの食べられるの？と思いました。あまりの衝撃に、彼に「本当に！？」と聞いてしまいました。すると彼は、「うん、本当だよ。ごめんね、気持ち悪いよね」と、ちょっと悲しそうな顔で言ったので、「こっちこそごめん、イヤなこと思い出させちゃって、ほんとごめん」と謝りました。
彼と別れ、家に帰る途中、（あぁ、あんなこと聞くんじゃなかった）と後悔していました。自宅についてから、このことをお兄ちゃんに話すと、「どうしよう、きっと彼はイヤな記憶を思い出して、辛い気持ちになってるよね」と言うと、「大丈夫だよ。お前に悪気があって聞いたわけじゃないことを彼は分かってくれてるよ」と宥めてくれ、少しだけ落ち着きました。そんなつもりはなかったのに、結果として軽はずみな言動を取ってしまった事を悔やんでいます。

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