勉強させてもらいます
一人でノートをとるより
勉強内容をまとめたり把握するのが
何だかはかどるので失礼致します。
14/12/07 08:25 追記
閲覧ありがとうございます。
皆様のお陰で新しい発見や再確認ができて新鮮だったり、良い息抜きになっております。
もしお役に立ちそうなものがありましたらご活用ください。
不要な方は引き続きスルーでお願い致します。
文章は教わったことを再び自分に向けて理解するための作業ですので
意見みたいなものも誰かへの訴えではありません。
悪しからず。
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3) 相手の尊厳を傷つける言動
・侮蔑的な言葉で相手に対する評価を下す
・ため息をつく、馬鹿にしたように見る、肩をすくめるなど軽蔑的な態度をとる
・標的にした社員について、同僚や上司、部下の信用を失わせるようなことを言う
・悪い噂を流す
・精神的に問題があるようなことを言う
・身体的な特徴や障害をからかったり、その真似をする
・私生活を批判する
・出自や国籍をからかう
・信仰している宗教や政治的信条を攻撃する
・相手が屈辱的だと感じる仕事をさせる
・卑猥な言葉や下品な言葉で相手を罵る
4) 言葉による暴力、肉体的な暴力、性的な暴力
・殴ってやると言って相手を脅す
・わざとぶつかったり、軽いものでも肉体的な攻撃を加える。目の前でバタンとドアを閉める
・大声で喚いたり、怒鳴りつける
・頻繁に電話をかけたり手紙、メールを書いたりして、私生活に侵入する
・道であとをつける。家の前で待ち伏せをする
・言葉や態度でセクハラを行う。性的な暴行を加える
・相手の健康上の問題を考慮に入れない
◆仕事に関連して相手を傷つける言動◆
これは例えば標的にした社員の意見に全て反対したり、その社員が行った仕事を必要以上に批判することである。
その目的は、相手に能力が欠けていると、周りも本人にも思わせることで
いくらでも相手を非難でき、解雇する理由を見つけるのも容易になる。
このモラハラは上司から部下に対して行われる場合は、比較的はっきりした形をとる。
しかし、やり方が巧妙であれば、加害者の悪意を証明するのは難しい。
仕事をするのに必要な情報を与えなかった時も同様である。
例えば書類の提出が期限に遅れた時、上司が必要な情報を隠していたせいだと証明するのは難しいのである。
◆コミュニケーションを拒否して相手を孤立させる言動◆
相手に話し掛けなかったり、飲み会に誘わなかったりするやり方で
被害者が苦しむ一方、加害者は容易に悪意を否認できる。
「話しかけていないことはないと思うよ」
「会社は仕事をする場所で、おしゃべりをする場所じゃないからね」
「確かに一人だけ席が離れているけど、何しろ部屋が狭くてね」
という具合である。
上司、同僚からも口をきいてもらえない場合もある。
こういったことは取るに足らないことのように見えて
毎日続くと被害者を大きく傷つけることになる。
◆相手の尊厳を傷つける言動◆
特定の社員を馬鹿にしたり軽蔑した態度をとるなど、その手の言動は職場では決して珍しくない。
モラハラの常套手段である。
だが、たいていの場合、悪いのは被害者ということにされる。
「あのくらいで傷つくなんて」
「これじゃ冗談も言えやしない」
「被害妄想なんじゃないのか」
「あの人と一緒じゃ、問題が起きない方が不思議」など。
このタイプのモラハラは被害者に対する妬みが原因で、同僚から行われることが多い。
被害者は馬鹿にされた恥ずかしさからひどいことを言われても、なかなか応酬できない。
◆言葉による暴力、肉体的な暴力、性的な暴力◆
このタイプの暴力は既にモラハラが定着して、誰の目にも明らかになった時に現れる。
この段階になると、被害者は「被害妄想」の烙印を押され、訴えは誰にもきいてもらえない。
「暴力行為」の証人がいても、証人自身も恐怖して味方になってくれることが少ない。
従って、職場の外部から助けがない限り、被害者はこの状態から抜け出すのは難しい。
◆◆加害者のタイプ別によるモラル・ハラスメント◆◆
まず「上司によるモラハラ」と「経営者によるモラハラ」は区別して考えるべきである。
確かに経営者は従業員の行動を監督する責任がある。
しかし、管理職が部下にモラハラをしたからと言って「経営者によるモラハラ」ではない。
特に大企業でこの二つははっきりと分かれている。
もう一つ加害者が複数いる複合型モラハラについては、本当の加害者と
状況のせいでやむを得ず加害者になっている人を区別して考えなければならない。
例えば、被害者が精神的に不安定になって仕事のミスを重ねた時、同僚達がイライラして被害者を非難する場合。
またはその反対に被害者が気難しくなって、同僚達が被害をこうむる場合。
これは本人のせいというよりは状況のせいである。
◆上司から◆
同じモラハラでも、同僚から受けた場合と比べて
上司から受けた場合の方が健康にもたらす影響が大きい。
被害者は助けを求める相手が見つからず一層孤立感を深める。
その結果、精神的にも肉体的にもバランスが崩れてくるのである。
幾人かの研究者は「上司によるモラハラ」をさらにいくつかのタイプに分けている。
・権力を維持し、相手を傷つけることだけを目的とする「自己愛的な変質者」による「変質的な」モラハラ
・辞めさせたい社員を解雇するのではなく、その社員が自分から辞めるように仕向ける戦略的なモラハラ
・従業員全体を管理する目的で手段として用いる、制度を維持するためのモラハラ
これについてはもっと曖昧な部分を考慮した分類が必要との話もある。
全員が「自己愛的な変質者」であると限らないし、その行為が全て部下を傷つけることを目的とする「変質的な」行為だとも言えない。
職場におけるモラハラは実行者だけでなく、会社のやり方やシステムに問題があることもある。
いくつかの経営のやり方はそれだけで「変質的」ではないか。
少なくとも恥知らずなやり方ではないか。
いずれにしろ上司の行動が職務上必要なものか、相手を支配することを目的としたものか、
それを見分けるのは難しい。
また自分に自信がなかったり、権力にのぼせてしまうと、職務上の上下関係を絶対的だと思い込んで、
相手を支配することに喜びを覚える上司が少なくないことも事実である。
◆同僚から◆
同僚から(水平型)のモラハラは
昇進をめぐってライバル関係にある社員同士の間で起こりやすい。
◆複合型◆
水平型のモラハラは、しばらく続く内に上司からのモラハラの性格も帯びてくる。
それが続いているのは、上司が黙認しているということだからである。
被害者は上司にも見放され一層孤立感を深める。
その意味で、上司はモラハラの共犯になる。
同僚、上司のどちらから始まったにせよ、モラハラがグループで行われるという形をとりはじめると、
その動きは瞬く間に職場全体に広がり、被害者はスケープゴートに仕立て上げられる可能性もある。
そうなると、職場でうまくいかないことは全て被害者のせいにされる。
またモラハラに加担しない人々も攻撃が自分に向くことを恐れて
被害者の助けになることはできない。
その結果、被害者はあらゆる支えを失い、孤立する。
こうしたことが続くと被害者は心身ともに具合が悪くなり、態度や行動が変わってくることがある。
それだけでなく、誰からも見放された気持ちから、生きることも困難になってくるのだ。
◆部下から◆
部下から上司に対するモラハラはそれほど重要なものだと考えられていない。
だが、他のタイプのモラハラ同様、破壊的であることに変わりはない。
被害者は組合や裁判所に訴えても真剣に取り合ってもらいにくいため、誰に助けを求めて良いかわからなくなるのである。
このモラハラにもいくつかのタイプがある。
代表的なものは次の二つである。
・セクハラを受けたと虚偽の訴えをする
このケースは多い。
映画「ディスクロージャー」も典型的な例である。
加害者の目的は相手の評判を傷つけ、社会的な立場を貶めることにある。
セクハラは「された」「していない」というどちらの証拠も提示するのが難しい。
従って、いくら無実を主張しても、なかなか信用されない。
マスコミに事件を取り上げられでもしたら
虚偽の訴えをされた方は計り知れない被害をこうむることになる。
話がこじれて裁判沙汰になったら、その痛手はますます大きくなる。
では、セクハラではなく、モラハラを受けた、と虚偽の訴えをされた場合はどうか。
マスコミによる風評被害がどの程度になるのかはまだ判断できかねるが
上司を攻撃するには劇的な効果のある方法だと考えられている。
・職場中が結束して嫌がらせをする
気に入らない上司が配属されてきた時に、その上司を追い払う目的で行われるものである。
このケースは会社の合併や吸収などが行われた時に起こりやすい。
上層部では納得していたとしても、下は不満を持っていることが多い。
ポストなども、現場の社員達の意見を聞かず、政治的、戦略的に配分されると
不満が鬱積した社員達が、よその会社から来た侵入者を排除するために、このモラハラを行ってしまうのである。
このモラハラは上層部が現場の意見を十分汲み上げれば、容易に防ぐことができる。
◆◆頻度と期間◆◆
モラハラは職場ではどのくらいの頻度で起きるのだろうか。
給与所得者全体の中で「精神的な嫌がらせ」を受けた人の割合を調べてみると
言葉の定義によって違ってくる。
例えばハインツ・レイマンの質問表LIPTを使って
「敵意ある言動」について尋ねた結果は
3〜7%(D・ツァプフの研究より)にとどまる。
また「敵意ある言動」の範囲をもっと広げてより巧妙に行われたものまで含めると9〜10%まで上がる。
そして具体的な定義を行わず「あなたはこれまでモラハラを受けたことがありますか?」
と尋ねると30%にまで達する。
同じ問題についてストラスブールの調査では9.6%
プロヴァンス=アルプ=コートダジュール地方の調査では8.4%
という結果が出ている。
モラハラの続いた期間については、平均三年四ヶ月という結果が出ている。
他の複数の調査結果でも平均は三年以上と出ている。
一般的に「給与所得者全体」を対象にした場合に比べて
「自分が被害者だと感じている人」を対象にした場合の方が深刻なケースが多く含まれるので、
それだけ平均の期間も伸びる傾向にある。
◆公的機関と私企業の違い◆
この問題についてはモラハラの続く期間に
公的機関(官公庁、公企業)と私企業では大きな違いがある。
公的機関ではその期間が非常に長く、十年以上に及ぶこともある。
私企業では一年を越えることはほとんどない。
理由は必ずしもそうではないが、公的機関は私企業と比べて給料が安い反面、雇用が保障されているからである。
公的機関の職員は滅多なことでは解雇されない。
自分から辞めることも少ない。
その結果、一旦モラハラが始まると長期間続くことになるのである。
「職場における嫌がらせ」であるモビングの研究がドイツやスカンジナビア諸国で盛んになったのは
その国々では雇用が安定しているからである。
雇用が安定していない国ではモラハラが報告されることは少なく、その研究は始まったばかりである。
◆◆病気休職について◆◆
モラハラは被害者の健康に重大な影響をもたらす。
それはよくわかっていることだが、調査の数字もそれを裏付ける結果となっている。
病気休職をしたことがあるのは74%
休職期間の平均は約四ヶ月半である。
モラハラの行為は外から見ただけでは取るに足らないことのように見えても
被害者の心身の健康を大きく破壊する。
人間というのは、悪意が日常的に繰り返し示されると持ちこたえられないのだ。
その悪意を示す人に対してやり返すことも、弁明することもできない状態であれば
最後には病気になってしまうのである。
◆健康に対して特に重大な被害をもたらす場合◆
これは加害者と被害者の関係やモラハラに関わった人数によって違ってくるが
一般的には次のようなことが言える。
・一人の被害者に対して、加害者がグループで行われた方が重大な結果をもたらす。
・同僚よりも上司から受けた時の方が被害は大きい。
上司からモラハラを受けると、被害者はもう誰からも助けてもらえないと感じ、暗に解雇の不安も感じるからである。
・モラハラを「純然たるモラハラ(標的にした人を孤立させ、徐々に追い詰めていくタイプのもの)」
「職権濫用的なモラハラ(上司が部下達の尊厳を踏みにじるタイプのもの)」
に分けると、健康に対する長期的な影響を与えた場合
「純然たるモラハラ」の方が被害者の心身に重大な結果をもたらす。
「職権濫用的なモラハラ」は、部下達が慰めあったり、結束して立ち上がることができるからである。
・一般的に、被害者の健康上の影響は次の三つによって決まる。
①モラハラの期間
②攻撃の激しさ
③被害者の抵抗力
この場合、被害者の抵抗力は以前モラハラを受けたことがあるか
その時に自己評価が下がらなかったか
家族や友人の支えがあるかどうかなどによって変わってくる。
「純然たるモラハラ」と「職権濫用的なモラハラ」は
そのプロセスから言っても明らかに違うものである。
だが、その区別をつけるのが難しいこともある。
会社の中で「職権濫用的なモラハラ」が恒常的に行われていると
その状態を利用して「自己愛的な変質者」が「純然たるモラハラ」を行い
ライバルを蹴落とそうとすることも有り得るからである。
◆◆被害者がこうむる社会的、経済的な影響◆◆
モラハラと辞職や解雇の関係について。
調査によるとモラハラによって会社を辞めたと答えた人は37%。
内約は
・仕事上のミスを犯して解雇された 20%
・会社側との交渉の結果、会社を辞めた 9%
・辞表を提出した 7%
・定年を待たず、早期退職をした 1%
これに
「長期の病気休職を余儀なくされている」
「健康上の理由で再就職できない」
と答えた人など計30%を加えると、モラハラによって67%が職場から閉め出されたことになる。
これは驚くべき数字である。
モラハラは予防する必要があるだろう。
「健康上の理由で再就職できない」と答えた人の中には、モラハラの傷跡が
心的外傷後ストレス障害(PTSD)やアイデンティティの喪失という形で生々しく精神に残っている人もいる。
これでは確かに再就職は難しい。
そういった人々は自信を失ったり
今度もそうなるのではないかと異様に警戒心が強くなったり
精神的に折れた状態になってしまっているので
新しい職場でもう一度がんばろうという気持ちが失われているからである。
モラハラの暴力によるトラウマはこれほど大きい。
被害者は次の仕事を見つける気力もふり起こせないほど、自信を失ってしまうのである。
モラハラが行われると、被害者はもちろん、企業から見ても社会的に考えても
その経済的損失は計り知れないほど大きい。
被害者個人にとっては、失業すれば収入がなくなり、医療費や心理療法の費用、
場合によっては弁護士の費用もかかる。
企業にとっては、病気休職による生産性の低下、他の社員の士気が落ちる問題もある。
社会にとっては、健康保険、失業保険の支給、退職が早まった場合は、年金を前倒しで給付する必要も出てくる。
こういったことを国家規模で計算すれば、その損失は凄まじい額にのぼるのではないだろうか。
現在、会社の合併や組織再編の結果、モラハラは起こりやすくなっている。
モラハラが恒常的に行われるようになれば、働く人々は自信がなくなり、職場全体が活力を失ってくる。
社会全体にも不安が広がるようになる。
そうなると、一国の経済にとって深刻な損失ではないのではないだろうか。
■職場のタイプとモラル・ハラスメント■
モラハラはどんな職場でも行われる可能性がある。
だが、職場のタイプによって起こりやすさに違いがある。
この点では、どの研究結果も一致している。
それによると、サービス関係や医療関係、教育関係の職場で特に頻繁に起こりやすい。
仕事の内容が一つに決まっておらず、評価基準も曖昧なので、
仕事に関して誰かを非難しようと思ったら、容易に非難することができるからである。
これに対して製造関係の職場ではモラハラが起こりにくい。
技術的に専門性が高い場合はなおさらである。
◆◆公的機関◆◆
公的機関と私企業ではどちらがモラハラが起こりやすいか。
複数の調査を見るといずれも半々の数である。
だが、公的機関と私企業に勤める人の割合は1:3の割合である。
よって、公的機関の方がモラハラが起こりやすいと言える。
また公的機関と私企業ではモラハラの性質も違ってくる。
私企業はモラハラの続く期間が短い。
やり方はより直接的で、たいていは被害者が会社を辞めることで終わることが多い。
公的機関はモラハラの続く期間が長い。
数年はおろか、時には十数年続くこともある。
これはよほど重大なミスを犯さない限り解雇されないからである。
また加害者と被害者がともに同じ職場に長くいるため、嫌がらせはより間接的、また陰湿なものになり、
その結果、被害者の健康に計り知れない影響をもたらす。
公的機関というのは、公共にサービスを提供する機関である。
そこでモラハラが行われる理由も
「組織としての効率を高めて、激しい競争に勝ち抜く」ためではないことは明らかである。
「組織内部で権力争いをする道具」としてモラハラが使われるのである。
モラハラは職務上の必要からではなく、心理的な衝動から行われているからである。
組織がきちんとしていれば、こういった職務から逸脱した行為はチェックされ、
あまりに目に余るものがあれば処罰される。
だが、公的機関の組織は責任の所在が曖昧で、きちんとしたチェックは行われにくい。
そこでモラハラが行われやすくなるのである。
仕事の性質もモラハラを行うのに好都合と言える。
特に官公庁の仕事では、長期的な展望を与えられないまま、大量の書類の処理を命じられることが多い。
よって、職員は一つ一つの仕事の重要性を理解することが難しい。
重要性の低い仕事を残業をしてまでやらされることも起こり得る。
また、仕事に必要な情報を与えられない場合もある。
そこにモラハラの入り込む余地がある。
ある部署では予算を獲得するため、必要もないのに忙しく、ある部署ではほとんどすることがないといったこともある。
この状況もモラハラに利用されやすい。
公的機関では私企業以上に組織内部で権力争いが行われる。
それが端的に表れるのはポスト配分である。
誰もが自分の勢力を広げるために部下を増やしたがるのだ。
上層部が職員の適性も考えず、勝手に人事を決めてしまうことも多い。
これは権力の濫用である。
こういった体質の中で、相手を支配しようとする本当のモラハラも始める。
私企業に比べて公的機関はモラハラの加害者になりやすい人が多いというわけではない。
それよりもシステムの問題だと思われる。
公的機関は職員が辞めることが少ないので、人間関係の軋轢はモラハラといった形を取りやすい。
また組織内の調停が難しいので、一旦モラハラが始まると長く続いてしまうからである。
実際、公的機関では、直接の上司と問題があった場合、
その上の役職にいる人には仲裁を頼みにくい。
誰かに話を聞いてもらおうと思ったら裁判所に訴えるしかないことさえある。
直接の上司からモラハラが行われる時、まず勤務評定の低下という形で現れる。
これは職員にとって重要な問題である。
公的機関の場合、給料が上がるかどうかは仕事能力ではなく、どこまで昇進したかによって決まる。
昇進には上司の評価がかなり大きな比重を占める。
組織によっては、部下の評価は「最高」をつけるのが当たり前のところもある。
その場合、少しでも低い評価は処罰的な意味を持つ。
激しく抗議すれば評判が悪くなる。
そして一旦悪い評価が立ったら、どのポストに異動しても、昇進が止まってしまうのである。
一般的に、公的機関でモラハラを受けた時、被害者は異動を願い出ることしかできることはない。
だが、その願いが認められるまでずいぶん時間がかかる。
それまでは病気休職するしか方法がなくなる。
被害者は身を守る手段は限られているのである。
◆仕事をさせない◆
異動が認められないということは、能力、相性の問題があっても
気に入らない職員を異動させるのも難しいということである。
この場合、標的にした職員を追い払うのに仕事を取り上げ、ほとんど何もさせない方法が使われる。
その時々と場合によってやり方は微妙に違ってくる。
反りが合わない部下を追い払う場合は、どうして仕事をさせないのか理由は明らかにされない。
上司とやりあったために組織に適合しないと漠然と感じさせるのである。
そして自分から辞めると言い出すのを待つのである。
能力に欠ける職員を追い払う場合は
「お前には能力がないから仕事から外した」ということがはっきり示される。
この方法はとりわけ、終身雇用が保障されているタイプの公的機関で用いられる。
公企業の場合、新しい経営手法を学んだ若い社員に仕事の中心を移しながらも
年配の管理職の社員も手元に残したいと思った時、同じ手法が使われることがある。
年配の社員を一線から外し、重要な仕事を与えないのである。
この社員が高級管理職であれば、形だけの任務を伴った名誉職に祭り上げられることもある。
これを社員側から見ると、仕事を取り上げられた人間の威厳はおおいに失われる。
高い給料が支払われていたとしても、仕事が与えられなければプライドが傷つく。
また仕事が失われることは、アイデンティティの喪失も意味する。
私達のアイデンティティは「自分が何をしているのか」に懸かっている部分が大きいからである。
さらに仕事を奪われるということは、組織内の交遊関係を奪われるということでもある。
何も仕事をしていなければ、すぐに話題が続かなくなる。
相手も気を遣って、お互いに気まずくなる。
仕事を取り上げられた多くの人が口にすることには
そういった状況になると、廊下で会っても誰もが目をそらし話しかけてくれなくなるという。
本人はひたすら恥ずかしく感じる。
仕事を取り上げられたということは
「能力がなく、組織には不要だ」
と判断されたということだからだ。
働く人間にとってこれほどひどい仕打ちはない。
◆ホイッスルブロワーに対するモラル・ハラスメント◆
公的機関におけるモラハラの中で一番陰湿な形をとるのは
組織の腐敗を告発するホイッスルブロワーが標的にされた場合である。
標的にされた人間は精神的に追い詰められ、家庭生活が崩壊することもある。
そうなると告発そのものの信用性が失われてしまうこともある。
公的機関の腐敗を執拗に告発することは大切である。
その告発が活きるためには、何よりもその告発する人が最後まで戦い続けなければならない。
一度この戦いを始めたら、途中で引き返すわけにはいかない。
ふりあげた拳をおろしてはいけないのである。
この戦いが本人にとってどれほど辛いものかは言うまでもない。
◆非人間的なシステム◆
公的機関の「システム」は、それ自体に悪意はなくとも、仕事上の対立をモラハラに変質させることがある。
仕事上の対立は、普通お互いが思慮ある人間として調整をはかれば、何とか解消する。
ところが当事者の一人がシステムを利用したり、規則を盾に相手を厄介払いしようとすると
その時点からモラハラが始まる。
この場合、相手はもはや人間ではなく、自分の邪魔をする障害物なのである。
こうしたモラハラが始まると、誰かが止めに入らない限り
その行為はエスカレートしていく。
被害者側から見ると、戦う相手はいつのまにか人間から「システム」にすり替わっている。
この状態でモラハラと戦うのは難しい。
特にモラハラが上層部で起こり、周りの関心をひかない場合はなおさらである。
公的機関においては、集団からはみ出した行動を取ると
その人間は精神的に問題があるという言われ方をすることがある。
「君は最近疲れているみたいだな。うつ病じゃないのか?一度医者に行った方がいい」
といった具合である。
そしてこういった上司の悪意ある言葉は、上司の言いなりの人々を介して
瞬く間に職場全体に広まっていく。
管理職にとっては、扱いにくい部下を精神病者に仕立てて、病気休暇をとらせたり
退職させることができたら、問題は簡単に解決するだろう。
その結果、社会的に精神病がつくられていくのである。
◆軍隊における嫌がらせ◆
軍隊では数多くの精神的な暴力が日常的にふるわれている。
階級がものをいう世界なので、そういったことがあってもなかなか告発されない。
上官からひどい仕打ちを受けたとしても、告発しようとしたら上層部から圧力がかかるのである。
軍隊が「無言の巨人」と呼ばれるのは決して根拠のないことではない。
軍隊では他の役所以上に文書によるコミュニケーションが行われている。
だが、上からの一方的なもので、それ以外の手段は大きく制限されている。
よって上官から不当に非難されたり、モラハラを受けたとしても
被害者は抗議の声を上げることができない。
またこれを外部に告発したら、組織を脅かしたということで
軍全体を敵にまわすことになる。
被害者は少なくとも軍内部では誰にも訴えることができない。
訴えるとしたら、さらに上の上官に聞いてもらうしかない。
だが、軍隊の制度から言えばそれは難しい。
国民議会では「防衛委員会」の議員が二人、国防大臣に対して
「軍内部に民間人による調停機関を設けて、懲罰や昇給や転属など人事に関する問題解決にあたるようにしたらどうか?」
と提案している。
◆医療機関◆
医療機関ではことのほかモラハラが多い。
これは多くの研究結果も裏付けている。
例えば公立の医療機関で働く一千人の看護師に対して行われた調査によると
38%がモラハラを受けたことがあり、
42%が「同僚がひどい仕打ちを受けた所を見たことがある」と回答している。
また被害者の三分の二はモラハラに抗議したがモラハラは続いたという。
確かに医療の現場は体力、精神的にもきつい職場だろう。
その一方で、病院は医局と事務局の争い、医師同士の軋轢など
人間関係の問題が深刻化しやすい体質を持っていることも事実である。
病院というのは伝統的に上下関係が厳しい所だが、
医師は特別な地位に置かれているので、事務局の支配はきかない。
そこで医局長と事務局長が権力争いをすると、誰にも止めようがなくなってしまうのである。
医局の中で権力争いが起こった場合も事態は解決されにくい。
こういった軋轢が起こると、被害をこうむるのは患者である。
現代では病院も一つの企業になった。
仕事は増える一方で、技術の進化とともに働く人のストレスも高くなっている。
経営を考えれば、一人でも多くの患者を診療して、生産性をあげなければならない。
その中で一番大変なのは、現場の看護師達である。
看護師達はこの厳しい労働環境の中で
モラハラの被害者にも加害者にもなりやすくなっている。
看護師達は、師長と医師による二つの命令系統に属している。
そこで生じた誤解から不当に叱責されたり、権力を濫用する医師から横暴なふるまいを受けたりすることも多い。
師長や医師だけでなく、気難しい患者に嫌な思いをさせられることもある。
患者の中には要求が多く、時には攻撃的な態度をとる人も沢山いるのだ。
そういった形でモラハラを受けていても、同僚は助けない。
皆、自分の患者の世話で手一杯だからだ。
反対に看護師達が同僚や患者に対してモラハラの加害者になる場合もある。
「死」「病」などと日常的に接する職業柄、看護師達は、その恐怖から身を守ろうとすることがある。
ある看護師達は感情を閉ざして、患者の状態に心を動かさないようにする。
そして、ただ毎日のルーティンワークをこなすだけで
必要な配慮に欠けたり、患者が手間をかけさせると傷つけるようなことを言って
精神的な暴力をふるうことが起こってくるのである。
厳しい労働環境の中にいると、それを口実に誰かに当たることもある。
この時、同僚の一人が標的にされれば、仲間外れなど集団によるモラハラが行われる。
こうした状況を背景に、障害者や老人のための専門施設では、
患者に対する虐待が半ば制度化されてしまったような所もある。
そこで内部告発が行われれば、今度はその告発者が嫌がらせを受ける。
患者の状況を見るに見かねて立ち上がったりすれば
たちまちモラハラの標的にされてしまうのである。
◆教育機関◆
医療と並び、あるいはそれ以上にモラハラが多いのが教育機関である。
だが、全国教員共済組合(MGEN)の調査を除くと
これに関する研究はほとんど行われていない。
学校内のモラハラは生徒に対するものが注目を浴び
教職員に関係するものはあまり問題にされることがないからである。
MGENの調査を見ると、教職員の中でも被害に遭いやすい人々がいる。
それは四十歳から四十五歳の独身か、子供とだけで暮らしている女性で
大都市郊外の荒れた地域にある教育優先地区の学校で働いている。
こういった人々は病気休職をすることが多く、
転勤を申請する頻度も被害者ではない教員と比べて三倍に及んでいる。
それ以外は一般給与所得者と比べて特に際立った数字上の違いはない。
だが、教育現場におけるモラハラは、生徒に対するものも教職員に対するものも
根本のところで結び付くところがあり、この二つをはっきり分けるのは
簡単ではないということは言える。
教育機関の場合、実際のモラハラの形で典型的なのは
標的にした教員(臨時教員が多い)に問題のあるクラスを押し付けたり
風紀係をさせることである。
教員の仕事はきちんとした規範があるものではないため、そういった困難な職務をさせれば、
「禁止された持ち物を没収しなかった」
「生徒に対する接し方が悪い」
「生徒同士の諍いを止めに入らなかった」
など、必ず難癖をつけることができるのである。
◆研究機関◆
研究機関は、ある意味モラハラが行われるのが当たり前の状態である。
モラハラは生存競争の手段であるとさえ言える。
研究者として有名になるためには、
激しい競争の中でライバル達を蹴落とさなければならない。
競争に勝ち抜いた者だけが名声を獲得できるからである。
時には、相手を出し抜くために平気でアイデアを盗むこともある。
一刻でも早くその論文を公表してしまえば、そのアイデアは自分のものになる。
先に世間に知られた方が勝ちなのである。
そこには科学の発展を目指して、お互いに協力しあう研究者達の姿はない。
ある研究者が名声を博すと、その上にいる研究者達は自分達の影が薄れるのを恐れ、
専門の領域にその若い研究者を立ち入らせないこともある。
そのために必要な道具を与えず、物理的に相手の研究の邪魔をすることさえある。
研究者としていかに華々しい活躍をしていようと、大学や研究所などの職場では、
そこのシステムに合わせて行動するよう要求される。
中には「自分は素晴らしい業績を上げているのだから、特別扱いされてもいい」
と考えている研究者達もいるが、システムは相手が誰であっても鋳型に入れようとする。
それに抵抗すれば、モラハラが始まるのである。
◆◆私企業◆◆
これについては、私企業の中でもとりわけ特徴のあるものを取り上げてみよう。
◆中小企業◆
公的機関、大企業と同じように中小企業にもモラハラは存在する。
モラハラが起こったとしても、それは長く続かない。
中小企業では働かない人間をいつまでも抱えているわけにはいかない。
社員から仕事を取り上げるなどして、心理的に追い詰めている余裕はないからである。
また、そうした理由から別の形のモラハラが行われる。
能力が不十分だと判断した社員に様々な嫌がらせをして
その社員がなるべく早く自分から会社を辞めるように仕向けるのである。
中小企業は組織が小さいため、社員の人間関係を調停する機関もない。
よって、職場のトップが変わると良くも悪くもそこで働く社員にとっては大きな影響が表れる。
モラハラがこれみよがしに、時には加虐的に行われるのも、中小企業の特徴である。
それが上司から行われた時、職場の人々はこれを止める術を持たない。
◆家族経営の企業◆
家族のメンバーが他のメンバーからモラハラを受けた場合は
ある意味もっと大変なことになる。
外部の人間は産業医、労働組合員も
「それは家族の問題だ」
と言い、なかなか間に入ってくれないからである。
実際、こういったケースでは、共有財産などお金の問題も含め、
色んな問題が絡んでいて状況が複雑になっていることが多い。
その結果、外部の人間が調停に入ってもあまりうまくいかないのである。
◆大手量販店◆
大手の量販店は苛酷な世界である。
その一例として著名なビジネス書で絶賛された
あるスーパーマーケットの社員に対する訓辞を紹介しよう。
「目標を定めよ。そして、もしきみの両親がその目標達成の邪魔になったら、両親を殺せ!」
こうした体質を持っているせいで、スーパーマーケットはまず成果至上主義の方針が徹底的に社員に教え込まれる。
同時に、売上という目標のもとに全員が一致団結する体制がつくりあげられる。
そこでは社員全員が会社と一体化するのだ。
そうなったら、会社の方針に抵抗する者や個人主義的な傾向が強い者は
会社から追い出されることになる。
モラハラを用いれば、難しいことではない。
人前で罵倒したり、わざと失敗を犯させたり、
場合によっては職場の人間が全員、標的にした人の敵になるよう仕向けることさえ行われる。
徹底して社員を締め付ける体制が整えられているので
定められた標語は嫌でも実践しなければならない。
主任といえども、売上が上がらなかったり、
お客様アンケートなどで上層部からマイナスの評価が下されれば、
降格や減給などの処分を受けることもある。
◆ベンチャー企業◆
ベンチャー企業では、他の伝統的な企業と比べてモラハラが行われることは少ないと考えられる。
これはベンチャー企業では実力だけが問題になること、
また常に新しい動きが出てくるので、それについていくために対人関係の問題に時間を使う暇がないこと、
この二つの理由からだと思われる。
普通の企業よりも、社員達が使命感を持っていたり、挑戦欲にあふれているため
どんなことにも耐える覚悟ができているということも関係しているだろう。
その仕事に向かないと思った者は自ら辞めていくし
能力がないと判断された者は、退職を直接的な形で要求される。
もともと雇用契約が短期である場合が多く、
誰かを辞めさせるのに、遠回しの手段を用いなくても済むのである。
会社を退職した方も、そんなことは気にかけない。
市場は拡大しているので、新しい仕事はすぐに見つかるからである。
一般にベンチャー企業の世界は平等主義を原則とする。
働く時間も給料も同じ。
実力によって与えられるストック・オプション(自社株の取得権利。会社の業績が上がればその分利益を得ることになる)の量が違うだけである。
こうした形を取っているのは、ベンチャー企業は資金が不足しているので、
ストック・オプションの契約を交わしたり、将来の地位を約束する他に
優秀な人材を確保できないからだ。
これを働く側から見ると、実力さえあれば
そこで得意なことをやって、会社の業績が上がれば、報酬も増える。
それがベンチャー企業の魅力である。
だが、これは「会社の業績が上がれば」の話である。
成功がそれほど簡単ではないと分かってくると
それにつれて厳しい労働条件に対する社員の不満も高まってくる。
またベンチャー企業の起業家達も、一刻も早く業績を上げて会社を軌道に乗せようと思うあまり
人事の問題をおろそかにして、社員の置かれている状況を真剣に考えないことがある。
そうなると、モラハラと無縁ではなくなってくる。
ネットビジネスをはじめとするベンチャー企業の仕事は
できるだけ多くの敵を倒すことを目的とするコンピュータ・ゲームに似ている。
一刻も早くビジネスチャンスを捉えて、競争相手を蹴散らした者が勝利を収めるのだ。
仕事の最大の動機は勝利の快感である。
そうなると会社を起こす若者は仕事をしているとは感じない。
テレビゲームをする感覚なのだ。
よって、ゲームの中の登場人物と同じように、自分の思い通りに動くものだと思っている者もいる。
だから、社長の決定に異議を唱えることは許されない。
労働組合も組織されない。
そのため、一旦モラハラが始まると手がつけられなくなるのである。
◆慈善団体◆
慈善団体など、社会に奉仕することを目的とする団体にはモラハラが多い。
これはモラハラという行為が単に市場の競争や利益の追求など
「経済的な要因」とだけ結びついているわけではなく、
権力欲や支配欲など「人間的な要素」と関わりが深いことを示している。
普通に考えれば、慈善団体では思いやりに満ちた人々が協力して働いているように思われるが
実情は必ずしもそうとは言えない。
感情的な雰囲気の中で相手を傷つけようとする行為が行われることも、決して珍しくないのである。
「困った人に手を差し延べる」という看板を掲げながら、団体の幹部は恵まれた待遇を受けていることも多い。
だが、そこで働く職員は幹部のモラハラに苦しんでいる場合もあるのだ。
◆スポーツの世界◆
スポーツの世界は「沈黙の掟」に支配されている。
内部の秘密を外に漏らしてはいけないという掟だ。
スポーツの世界では、ドーピングや性的な暴力の問題、金銭関連の不祥事を告発して
この掟を破ると、厳しい制裁が加えられる。
告発した人間は様々な圧力や強迫を受け、特定の試合や大会に出場する機会を奪われるのだ。
スポーツ選手にとって、告発することは大きな危険を伴うのである。
1991年に陸上競技のフランス代表だったカトリーヌ・モワイヨン・ベック選手が
「世界陸上の合宿中に性的暴力を受けた」
とコーチを訴えてからは、他の選手達もセクハラの事実などを告発するようにはなったが、
モラハラについては、事実上、野放しになっている。
しかし、少しずつこの状況に対する抗議の声があがりはじめ、
1998年に選手をはじめとしてスポーツクラブに通う子供の両親、クラブのコーチ、経営者に向けたサイトがカナダで立ち上げられた。
スポーツの世界に関することになると、モビングの研究者のほとんどが
「例えハラスメントがあったとしても、大した問題ではない」と考えている。
スポーツは仕事ではないのでいつでもやめられる、という理由からである。
だが、スポーツもトップレベルになれば仕事以上に懸けているものが大きい。
選手からすれば、簡単に諦められるものではない。
このような場合、ハラスメントはスポーツ選手にとっても重大な問題である。
■一般的に見られる症状■
モラハラを受けると、被害者の心身には性別や年齢に関係なく、共通した症状が現れる。
その症状の重さは、モラハラの程度の激しさや、それが続いた期間の長さに密接に結びついており
被害者の性格的な傾向にはそれほど関係がない。
被害者がヒステリックであろうと、強迫的であろうと、恐怖症的であろうと、
症状の重さが変わったり、症状そのものが違ってくることはない。
モラハラはどんな性格の人にとっても、
まずはトラウマ(ショックが強烈なため、精神的に処理できず、そのまま抑圧されてしまう体験)
として経験されるからである。
被害者は疑問を持つ。
だが、たいていは何があったのかわからないまま、もがき苦しむ。
性格的な差が出るのは、それがモラハラだとわかり、何があったのかを理解した後のことである。
では、被害者に共通する症状とはどんなものか?
それは比較的一般的なものから始まって、段々ひどくなっていくタイプのものであるが
最後にはモラハラ特有の症状に至るので、経験を積んだ診療医であれば
それが本当にモラハラのせいかどうか、被害者の健康に対する影響を見ただけで判断できるくらいである。
◆ストレスによる機能障害◆
モラハラが始まったばかりで、まだ相手の攻撃に反撃したり、事態を解決できる可能性がある時
被害者の心身に表れる症状は、ストレスを受けた時の反応に似ている。
イライラや倦怠感、不眠、頭痛、食欲不振、腹痛などの機能障害が起こるのである。
これは被害者がストレスを受けたせいで、心身を緊張させてこの事態に備えようとしているのだ。
機能障害はその結果として起こる。
だが、通常のストレスと違うのは、
無力感や屈辱感、「これは正常なことではない」という違和感がつきまとう。
この段階で加害者と接することがなくなれば、症状はすぐ改善される。
滅多にないが、加害者が謝罪した場合も同様である。
被害者は精神の安定を取り戻し、長期に及ぶ健康の被害も出ない。
◆抑うつ状態◆
もし前述のままモラハラが続くようだと、被害者はかなりひどい抑うつ状態に陥ることになる。
憂鬱で悲しい気分になり、自分が何の価値もない、社会不適合者だと思えてくる。
周りで起こったことは全て自分がいけないせいだと思い、何をする気もなくなる。
それまで興味のあったことさえ、関心を失ってしまうのだ。
この状態までいくと自殺の可能性もあり、医者による治療が必要である。
だが、うつ状態になっても被害者は周囲の人間、場合によっては医者に対しても
それを隠そうとすることが多い。
これは「自分はもう会社の期待に応えられなくなった」という思いが
罪悪感になって言い出しにくくなってしまうからである。
モラハラの結果、
69%にかなりひどいうつ状態の症状が見られた。
7%が中程度のうつ状態を経験していた。
24%が軽いうつ状態を経験していた。
これほどの割合で被害者がうつ状態に陥ってしまうことは、決して軽視できない。
この状態になると被害者が自殺する可能性が高まるからである。
調査によると、モラハラの被害者だと産業医に認められた517人の内、13人が自殺未遂を経験している。
◆心身症◆
・ある一般医からの話
「私の前に座ると、患者さんは偏頭痛や下痢など、身体の不調を訴えます。
こういった症状は本当に体調を壊している場合とは別に、心身症の症状としても表れることがあって、
中には注意深く話を聞けば心身症による頭痛や下痢だとわかるはずの患者さんもいます。
ただ、患者さんが職場であったことを話してくれなかったり、
医師もそこまで突っ込んで話を聞かなかったりすると、心身症を見逃す恐れもあります。
これは非常に大きな問題ですが、患者さんからすれば無理もありません。
しかし、心身症であれば、薬を使ってもあまり効果がありません。
心身症にはそれなりの対処の方法が必要なのです」
モラハラの過程が進むと、被害者の身体にはかなり高い確率で心身症の症状が表れる。
攻撃を受けても、心の方はまだ何が起こったか理解できず、事実を拒否しているのに
身体は既にその攻撃に反応しているからである。
こういった身体の反応は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)として
モラハラを受けたずっと後になって表れることもある。
心身症の症状は様々な形で表れる。
短期間に体重がびっくりするほど増減したり、胃潰瘍、大腸炎、甲状腺異常、月経不順などが起こる。
また薬を飲んでも血圧が下がらなかったり、目眩がしたり、気分が悪くなったりする。
皮膚病として表れることもある。
怪我などで身体がショックを受けると、その影響は精神にも表れる。
それと同じように、精神がショックを受けると、その影響は身体にも表れるのだ。
実際にショックな出来事を体験しなくても、それを心配しただけで同じような症状が表れることもある。
■心的外傷に関係する症状■
モラハラが始まったばかりの頃は、被害者の心身にはストレスを受けた時とほぼ同じ症状が表れる。
だが、加害者の攻撃が数ヶ月も続くと、将来もっと重大な精神障害が表れる可能性がある。
これはほとんどの被害者に言えることだが、モラハラが終了したとしても
被害者はその後、かなり長期にわたって精神的に不安定な状態で過ごすことになる。
「職場における不安」でも、他のものとは違う。
例えば、その不安が責任の重い仕事を任された時など
仕事上のプレッシャーによるものであれば、その仕事が終わればプレッシャーはなくなり、不安も解消されるだろう。
モラハラの場合は、攻撃を受けるという事態が終わっても、傷が残り、重大な後遺症を引き起こすことがある。
その時に受けた屈辱感を何度も再体験したり、次第に人格が変わってしまうこともある。
加害者とはもう会うこともなくなっているのに、加害者に言われた言葉のせいで、
「自分は駄目な人間だ」という思いがつきまとう場合もある。
モラハラで受けた心の傷によって、精神的にもろく不安定になり、
ちょっとしたことでびくびくしたり、人を疑って暮らすようになったりするのである。
◆心的外傷後ストレス障害(PTSD)◆
ナイフで怪我を負わされたり、レイプされた時と同じように、
モラハラを受けた場合もその体験はトラウマとなって、心の奥深くに残る。
精神分析学では「強いショックを引き起こすような強烈な体験をすると
それが精神的に適切に処理されないまま、いつまでも心の深層に残って
被害者の心理に継続的な影響を与える」と考える。
心的外傷は神経症的な症状を生み出す他に、もっと重大な精神障害に繋がる場合もある。
それがPTSDである。
この障害は「DSM-IV 精神疾患の診断・統計マニュアル第4版」にも取り上げられているが
そこで見られる症状は、心的外傷になった出来事によって変化することはない。
同じ症状が表れる。
その症状の中で、とりわけ被害者に苦痛を与えるものは、苦痛の再体験だろう。
心的外傷となった出来事が何度も思い出されて、そのことを考えずにはいられないのだ。
あるいはその時の場面が現実と同じくらいはっきりと蘇ってくるフラッシュバック、
眠りについた後は悪夢となって現れるなどがそうである。
こういった苦痛の再体験は長期にわたって続く。
場合によっては一生続くこともある。
モラハラの被害者達によれば、その多くが出来事から十年、二十年も経った後に
「当時の状況を思い出させる書類を見て泣いてしまったことがある」
「あれから何年も経っているのに、そのことを思い出すと、当時の苦痛がいま現実に体験しているように蘇ってくる」
と語っている。
屈辱を受けた時の場面が頭の中で再現され、
その時と同じように胃が痛くなったり、目眩がしたりするというのだ。
そして大半の方は最後にこう付け加えている。
「当時のことを思い出すのは、私にとっては大変辛いことです。
でも、この状況は誰かが変えていかなければなりません。
私の苦しみが誰かのお役に立てばと思って、筆をとりました」
心的外傷はまるで身体に染み付いてしまったようなもので
機会さえあれば、いつでもどこでも必ず姿を現すのだ。
例えば街を歩いていて、かつてモラハラをした加害者に似た人とすれ違ったとする。
この時、被害者は頭の中で当時の場面が蘇ってきて、反射的にびくっとする。
これはPTSDに見られる驚愕反応の一つである。
PTSDを発症すると、心的外傷となった出来事を思い出させる人や物、場所を避けようとする傾向が出てくる。
ある意味での恐怖症にもかかってしまうのである。
他にも「時間の感覚が失われる」といった症状が出ることもある。
心的外傷となった出来事を経験したところで時間が止まってしまい、
現在のことが現実とは感じられなくなるのだ。
それで日常生活が立ち行かなくなることがある。
感情が萎縮することもある。
◆モラル・ハラスメントと心的外傷◆
かつてモラハラを受けたことのある被害者は、その出来事を何度も思い出しては
「ああすればよかった」
「こう言えばよかった」
と心の中で別のシナリオを描き、屈辱感を反芻することがある。
これもPTSDの一つの表れだが、被害者があまりにも同じ言葉を繰り返すので
家族や友人は、被害者が苦しみから抜け出そうという努力をせず
不平を言って喜んでいると受け取ってしまうことがある。
だが、それは違う。
被害者が過去のことをくどくどと繰り返すのは
自分の身に起こったことを理解しようとして、理解できないからである。
モラハラの行為は常識で理解できる範囲を超えているので、
それを知らない限り、被害を受けた方は何が起こったのか、さっぱり理解できないのである。
モラハラが心的外傷となって、被害者がその出来事を心の中で繰り返し思い出すのは、
加害者がそれほどひどいことをする状況が普通では想像もできないからなのである。
そういったことから、モラハラの被害者達はよく孤独感を訴えることがある。
自分の苦しみがなかなか理解されないせいだ。
被害者自身も、その苦しみをうまく伝えられないもどかしさがある。
何しろ、モラハラは普通では考えられないタイプの暴力なのである。
その暴力に名前をつけることもできず、本当にそれが暴力かどうか確信が持てないのであれば、
どうやってそれを人に説明することができるだろうか。
被害者達は自分達が暴力を受けて、それに苦しんでいるのだと理解された時にようやく心の慰めを感じる。
そのためには、世の中にはそういったタイプの暴力が存在すると、誰もが認識する必要があるのだ。
◆幻滅感◆
モラハラのような外傷体験をすると、人は大きな幻滅感を味わい、人生に希望を失ってしまう。
とりわけ職場におけるモラハラの場合
被害者が自分の人生の中で仕事に重要な価値を見いだしていたとすれば、
そこで傷つけられたことは残りの人生に重大な影響を及ぼす。
また幻滅を感じたことで、考え方が変わってしまう場合もある。
◆過去の心的外傷との関係◆
モラハラによって精神的な攻撃を受けると、過去に受けた心的外傷が蘇ってくる場合もある。
その心的外傷とは、両親から受けたものである場合が多いが、学校や別の職場で受けたという場合もある。
いずれにしろ、職場でモラハラを受けると、屈辱が屈辱を呼び覚まし、
忘れていたと思っていた過去の傷や不安が蘇ってしまうことがあるのだ。
こういった「過去の心的外傷となった出来事」がモラハラではなく、
家族から受けた性的暴力だということもある。
過去に心的外傷を負った人が過剰に反応したり、普通の人以上に傷ついてしまうのは決して不思議なことではない。
過去に何もなかった人はいないし、過去に傷を負ったことを隠す必要もない。
モラハラが起こった時、責任を問われなければならないのは
あくまで加害者である。
被害者が過去にそういった経験を持っていたとしても
加害者がそれを言い訳の材料にしてはならない。
モラハラによって思い出したくもない過去の出来事が被害者の心に蘇ってくることはある。
だが、順番を間違えてはいけない。
被害者の過去の出来事が原因でモラハラが起こったわけではない。
モラハラが起こったことによって、被害者が過去の出来事を思い出したのである。
■モラル・ハラスメント特有の症状■
◆◆屈辱と恥の意識◆◆
仕事に関連する苦しみで、モラハラが他のものと違っているのは、
被害者がまず何よりも屈辱と恥の意識を感じるということである。
これに付随して、もちろん例外はあるが
「被害者は加害者に対して憎しみを感じない」
というのもモラハラの大きな特徴である。
被害者は加害者に復讐したいとは思わない。
ただ人間として踏みにじられた尊厳を回復したいだけなのである。
モラハラを受けたことに対する被害者の恥の意識は強く、
被害者達は「人里離れた場所に隠棲したい」と思っているくらいである。
モラハラが個人を標的として行われた場合、被害者は機会を与えられても
その出来事をなかなか語り出そうとしない。
語り出しても全てを話そうとはしない。
事実は被害者が最初に話したものより、もっと悲惨な場合が多いのである。
これはいろいろな意味で恥の意識が先に立つせいだ。
人から攻撃を受けた場合、多少遅くなってからでも、結果的に身を守ることに成功すれば、
そのことで長期にわたって思い悩むことはない。
被害者が一番傷つくのは、攻撃をやめさせるのに必要なことをしなかった、あるいはできなかった時である。
何でもないような顔をして屈辱に耐えたとか、相手の言葉の裏には毒が含まれていたのに
言われた時にはその毒を理解できなかった、といった場合がそれにあたる。
そうなると、どうして適切に対処しなかったのだろう、できなかったのだろうと思って
恥の意識を感じるのだ。
◆◆自分の感覚が信じられなくなる◆◆
もうひとつ、モラハラに特有の症状は
「正常な感覚が失われる」ということである。
それはどうやったら相手を傷つけることができるか、というモラハラの方法と密接に結びついている。
その方法の一つ
「表面的な意味の他に、裏に別の意味が込められた言葉を使う」ことをされると
その言葉をどう受け取っていいかわからず途方に暮れてしまう。
また、そんなことが続けば、精神的におかしくなってくる。
実際、こういった二重の意味を持つ言葉が使われると
家庭の場合、言われた方は統合失調症に追い込まれる可能性がある。
職場においては、妄想症的な傾向が表れたり、
ひどい場合には精神を破壊されてしまうこともある。
そこまでいかなくても、職場で使われている言葉を素直に受け取ることができなくなれば
働く人間にとっては大問題である。
何が本当で何が間違っているのかわからなくなり
仕事をする上でも、大切なこととそうでないことの見分けがつかなくなってしまうからだ。
何でもない言葉の裏に非難の意味が込められていると思えば
正面から言い返すこともできず、自分を疑う気持ちも出てくる。
自分で自分の感覚が信じられなくなるのだ。
そうなったら、加害者は責任をなすりつけるのも、相手を無能呼ばわりするのも簡単である。
他のモラハラの方法にも
「矛盾した指示を与える」
「仕事に必要な道具を与えない」
「その仕事ができなくなる他の仕事を命じておきながら、前者の仕事をしないと非難する」
など相手を不安に陥れるようなことをされると
被害者はどうしたらいいかわからず、身動きが取れなくなってしまう。
仕事に対するまともな感覚を失わせるには
同じコピーを百回も取りに行かせるなど、誰の目から見ても無駄な仕事をさせる方法もある。
そこで誰かが「あなたは間違っていない。間違っているのは上司の方だ」
と言ってくれれば良いが、誰もが何事もなかったような顔をしていたり
上司に便乗する人がいたりすると
「自分は本当におかしくなってしまったのではないか」という不安が募り、
ついには相手のちょっとした言葉に過剰反応して、直接的な暴力をふるうことになりかねない。
自分の感覚が信じられなくなるというのは、常識的な感覚が信じられなくなるということである。
モラハラの場合、直接的な暴力は被害者が常識的な感覚を信じられなくなり
加害者には何を言っても理解されないと思った時に被害者側からふるわれるものだ。
被害者が普通の人より衝動的であれば、怒りに駆られて職場の備品を壊したり
コンピュータのデータベースを破壊したり、加害者を罵倒することさえある。
もちろんそんなことをすれば、状況が悪化したり、悪く言われることはわかっている。
自殺行為だ。
しかし、暴力をふるう人間の心の奥にあるのは絶望である。
周りに理解されないと思ったら、いけないとわかっていても
そんな行為に出てしまう人もいるのだ。
◆◆性格が変わる◆◆
モラハラを受けると性格が変わることがある。
性格は子供の頃から段々形成されていくものだが、
一旦形成されたらあとはずっと変わらないということはない。
モラハラを受けて、心理的に戦うことができないと
「用心深く」「疑り深い」性格になる。
もっと深刻な状態になると
「自分が自分でなくなる」
「自分が見知らぬ他人に思える」
といった形でアイデンティティを喪失してしまうのである。
このような形で相手を破壊し、そのアイデンティティを奪うような攻撃が行われた場合、
被害者がやむを得ず身を守るための方法は二つしかない。
解離症状(多重人格もその一つ。意識の範囲を狭くし、耐え難いものを外へ出して全く意識できなくしてしまう)を起こすか
それまでのアイデンティティを放棄するかである。
いずれにしろ、モラハラを受けると大なり小なり人は変わる。
良い方向で起こる変化は、その出来事が教訓になり、同じような状況になった時に
注意深くなるといった場合だ。
悪い方向で起こった場合は主に次の二つの可能性が考えられる。
◆精神的に破壊される◆
モラハラを受けると、被害者は慢性的な抑うつ状態に陥り、自分を傷つけたその時のことばかり考えることがある。
起こったことを繰り返し思い出しては「ああすればよかった」「こうすればよかった」と思い悩むのだ。
目の前の人生を楽しむことやこれからの人生を計画するなど考えられない。
過去から一歩も抜け出せなくなるのだ。
この状態が一生続くこともある。
モラハラが「精神的な殺人」だと言われるのはこのことである。
被害者は肉体的には生きている。
精神的には死んでいる。
この状態になると、被害者の心には加害者が住み着いていて
被害者が何かしようとすると姿を現す。
被害者の言葉を借りれば、心の中で小さな声がささやいてくるという。
「おまえは駄目な人間だ。
おまえはなんかには何もできっこない。
おまえは失敗するだろう」
◆妄想症的な傾向が表れる◆
そこまでいかなくても、モラハラを受けると性格が用心深くなる。
その傾向がさらに強まると妄想症的な傾向が表れることもある。
精神医学的に言うと、正常に警戒心が強い状態から
妄想症に移行するのは、珍しいことではない。
その境界は曖昧で専門家も時には判断に迷うほどだ。
だが、被害者が強い警戒心を見せたからといって、妄想症になったわけではない。
もともと妄想症であったわけでもない。
ごく自然に警戒心が強くなっただけである。
実際、他人からひどい仕打ちを受けて裏切られたと思ったら
警戒心が強くなるのは当たり前である。
経験によって人は注意深くなるが、その経験が心的外傷になるほど強烈なものであったら
過度に警戒心が強まるのは当然のことだ。
こうした状況が毎日のように続くと、被害者は常に警戒を怠らず、
相手の攻撃に備えていつも緊張するようになる。
その結果、性格が変わってしまうのである。
心理療法や法律相談に行った被害者がセラピストや弁護士の態度によって
妄想症的な性格になる場合もある。
「どうして攻撃を予測できなかったのですか?」
「あまりに警戒心がなさすぎる」
などと言われている内に、次第に用心深くなり、全てを疑うようになってしまうのだ。
被害者はあらゆることに注意を払い、例えば提出する文書は控えを二部とったりするようになる。
この傾向が定着してしまえば、裁判などで相手の非が認められた後も
容易にやり方を変えることができなくなる。
被害者は絶えず迫害されているような気持ちを持ち
ひどい時には被害妄想にまで発展することもある。
だが、その場合も被害者が妄想症であるとは言えない。
◆◆一時的に精神病の様態を示す◆◆
モラハラによって繰り返し屈辱感を受けたり、その心的外傷が大きかったりすると
被害者は一時的に精神障害を起こすことで身を守ろうとすることもある。
モラハラが行われている職場において、その苦しい環境から抜け出すためには
やむを得ずではあるが「精神病に逃げ込む」のが一つの方便になる。
誰かを非難する時に、人はよく「頭がおかしい」「パラノイア」などと言う。
そういったことが繰り返されると、言われた方は本当に頭がおかしくなったり、被害妄想になる場合がある。
だが、仮にそうなったとしてもそこで人生がおしまいになったわけではない。
とりあえず自分の身を守るために人間があみだした有効な手段かも知れないからだ。
モラハラを受けると、人はその体験を忘れられずいつまでも思い悩んだり
妄想症的に警戒心が強くなったりする。
そういった人々を会社がケアしてくれるわけではない。
会社はそういった人々を本物の病気や狂気に追い込んで、切り捨てることも多いのである。
そして、そのツケは社会にまわって疾病保険で支払われるのだ。
多くの事例が物語るようにモラハラが
「非難された人間が非難された通りの状態になっていく」
独特の経過をたどるものだということがよくわかる。
「言葉の持つ力」が人を変えてしまうのである。
■モラル・ハラスメントの二大要素■
これまで行われた様々な研究を見れば
モラハラの原因は二つの重大な要素が絡んでいることがわかる。
「心理的な要素」…個人の性格や過去の体験の影響など。
「システムに関係する要素」…職場の管理方式など。
よって、モラハラが起こった時に被害者や加害者の性格的な問題だけに焦点を絞ったり
または全ての原因はシステムにあると言って、組織の在り方だけを問題にしてはならない。
「被害者には全く責任がない」
「加害者もまたシステムの犠牲者だ」
などとシステムの背後にある資本主義やグローバル化を非難するだけでは、問題は解決しない。
これではいつまで経ってもモラハラはなくならない。
この問題は「システム」と「個人」の二つの要素が合わさったものとして
考えていかなければならないのである。
実際、この二つは分かち難く結びついている。
職場における精神的な暴力は「システムの歪み」に関係していることが多いが
その歪みは様々なレベルでの「個人の暴力」を反映したものである。
その一方で「システム」と「個人」は別個の要素として考える必要がある。
モラハラが「変質的なシステム」の土壌の上に成り立っていることは間違いない。
しかし、「システム」を考えることが「個人」を考えることの妨げにはならない。
「システム」と「個人」を同一視してはならないのである。
例えば、いくら企業が社員を駒のように扱おうとしても、人間は駒になりきれるものではない。
受けた教育や生まれ育った社会的背景、過去の個人的体験などが合わさって
「生身の人間」のままでいるのだ。
それぞれの人の体験や考え方によって、モラハラはその持つ意味が違ってくる。
その人がどんな過去、家族、交友関係を持ち、社会や会社とどう関わっているか、
どんな経済体制のもとに暮らしているか、そういったことによって
同じ状況であっても、それをモラハラと言うかどうかは変わってくるのである。
このような形で「システム」と「個人」は表裏一体をなし、あるいは別個の要素として働くことによって
モラハラと複雑に関わり合っている。
だが、どんなにシステムが強かろうが個人は行動の自由だけは保証されている。
■モラル・ハラスメントが行われやすい環境■
モラハラ(精神的な暴力、嫌がらせ)は人間の本性と結びついている。
それだけに職場でも昔から行われてきた。
だが、最近その数が増え、程度も激しくなってきたように見られている。
職場におけるモラハラの場合、「被害者のタイプ」として心理学的に分類されるようなタイプは存在しない。
だが、モラハラが行われやすい環境は確かに存在する。
それはただ強いストレスがかかったり、組織の整備が不十分なだけの環境のことではない。
そこから出発して、経営管理の基準が曖昧だったり、
変質的な行為が暗黙のうちに認められてしまう環境のことである。
以下、程度の軽いものからモラハラが行われやすい環境について見ていこう。
◆◆環境そのものの変化◆◆
技術の革新や社会の変化に伴い、職場の環境はあらゆる意味で大きく変わってきている。
まずここでは労働環境の変化とモラハラの関係について。
◆ストレスを生む環境◆
前述の通りストレスがいかに心身を消耗させ、辛く苦しいものであっても
ストレスとモラハラは違う。
だが、ストレスを生む環境では、モラハラも起こりやすくなる。
例えば、部下が「オーバーワーク」の状態にすることが、そのままモラハラに結びつくわけではない。
部下が「オーバーワーク」だと知りながら、上司が内部的な調整も行わず、
絶対的な権力を行使して、その状態を部下に押し付けた時、初めてモラハラになる。
今の職場の環境はストレスが生まれやすくなっている。
例えば労働法によって、人々は同じ仕事をより短い時間で片付けなければならなくなった。
無駄な時間を減らして、休み時間も削り、退勤するまでに
少しでも多くの仕事をしなければならなくなったのだ。
そうなったら、上司や部下、同僚とのコミュニケーションに時間を割いている暇もない。
また、テクノロジーの急速な革新によって
人々は絶えず新しい動きについていかなければならず、多様な能力が要求されるようになってきた。
仕事のやり方が変われば問答無用にそれに対応しなければならないし
いつ組織のシステムが変わるかと注意していかなければならない。
そこで何よりも大切なのは目標達成である。
それができなければ能力がないと見なされるのだ。
こうして時間がなくなっていることに加えて人間関係も希薄になっている。
皆急いで仕事を片付けなければならないので、人の言うことを聞いている暇がないのである。
時間に追われて、つい目の前にいるのが「一人の人間」だということを忘れてしまう。
そんな所では本来の意味で「人と出会う」ことがなかなか行われにくいのだ。
仕事のやり取りはあるだろう。
会話はない。
心の交流など、望むべくもないのだ。
それもしかたがない。
仕事に追われ、自分の生活もないほど心身をすり減らしている状態では
他人のことを考えている余裕はないからだ。
結果、周りで苦しんでいる人がいたとしても気がつかない。
気づいたとしても時間を割いている暇はない。
そんなことをしていたら自分が目標達成できなくなってしまうからだ。
これではストレスが生まれないはずがない。
企業は「ストレス管理」や「時間管理」のセミナーに管理職達を出席させて
この状態に対応する術を学ばせている。
そのセミナーは時間をより効率的に使い、ストレスを先延ばしにすることを学ばせるものだ。
ストレスを先延ばしにするというのは、職場で自尊心が傷つけられるようなことがあった時でも
それに耐える強さを持つようにするということだ。
これはストレスを解消することにはならない。
管理職達は仕事の能力の他に、不安に打ち勝ち、欲求不満に耐える人間的な強さも求められているのだ。
プレッシャーに負けて働く意欲を失った場合、上層部はもう使いものにならなくなった人間として捨てるだけである。
「ストレス管理」のセミナーは管理職のためにあるものではない。
企業のためにあるものなのだ。
ストレス管理の目的は、どんなに厳しい環境でも社員が耐えて、生産性がより上がるようにすることだからである。
ストレスに強い社員を求める傾向は採用試験の時に表れている。
面接試験でわざと求職者を動揺させて、どれだけプレッシャーに強いか見る。
また管理職を採用する場合は、仕事の能力よりもストレス耐性に重きを置くという。
会社でこれほど強いストレスを受けていると、人間は外見的にもロボット化してしまう。
その人々は体を硬直させ、奥歯を噛み締めて、平板な口調で事実しか話せなくなっているからである。
その状態が人間らしい普通の状態に戻るにはしばらく時間がかかる。
彼らは自分の身を守るために、職場では鎧を身につけている。
その鎧の紐をあまりにもきつく締めつけているので
仕事が終わってからもはずせなくなってしまうのだ。
ただでさえこのような緊張がある中で
仕事のやり方や目標が頻繁に変更されたり
会社の合併や組織の再編が行われたりすれば
ついには緊張の糸が切れてやる気を失ってしまう社員が出てきたとしてもおかしくはない。
現代の職場は、まさにストレス社会の最たるものである。
社員達は、いつでも自分の仕事に責任を持ち、ミスすることなく、成績を上げなくてはならないのだ。
そこで社員が不合理な行動をしようものなら、たちまち問題視されてしまうのである。
人間はいつも元気で働けるわけではない。
時には病気になることもある。
だが、企業は「人間の弱さ」を見ないことにしている。
こうした企業には、非常に成績の良い優秀な社員か、病気になった駄目な社員のどちらかしかいない。
一方、これほどストレスのかかる中で、社員達はどう思っているか。
やる気のある社員は、与えられた仕事に興味があり、結果を評価してもらえるのであれば
ストレスがかかること自体はそれほど苦にしていない。
問題はただ一方的に仕事を命じられて、それをやっているのに
仕事の結果を始めとして、時にはその仕事をやったことさえ認められないことである。
多くの企業が社員からやる気を奪っているのはその点である。
仕事の世界からストレスをなくすというのは幻想である。
だが、職場のストレスが強くなっていけば、それだけモラハラも起こりやすくなる。
ストレス状態がモラハラの状態に移行しないよう、私達は厳しく監視の目を注ぎ、予防策を講じる必要がある。
◆コミュニケーションの衰退◆
管理職の研修セミナーで一番行われているのは
「コミュニケーションの技術」を高めるための研修である。
だが、現代の職場ではコミュニケーションの機会は減少し、やり方も乱暴になってきている。
こういったコミュニケーションの衰退もモラハラの温床になっているのだ。
年々職場におけるコミュニケーションは会話の回数が減少しただけでなく
近年では在り方そのものが変わってきている。
同時に、目立たないところで人間関係が変わってきていることも意味している。
通常のコミュニケーションでもメールのコミュニケーションでも
人々はできるだけ儀礼的な表現を簡略化し、要点だけを素早く伝えるようになってきたのである。
用件があれば職場の連絡帳を使ったり、もっと簡単にメモで済ませる。
顔を見て話をしようという気はさらさらないのである。
新しいテクノロジーの発展によって、関連用語を知らないと会話に参加できない事態も出てきた。
ニュービジネスに関係する職場では、そういった言葉を知らなければ仕事にもならない。
言葉が人間を排斥するのである。
こういったコミュニケーションの変容については、経営管理の分野も変わらない。
管理職は部下に対して人間らしい言葉で話すのではなく、数字で評価したり、マニュアルを示して仕事の仕方を伝える。
こうしたやり方は確かに効果は上がるが、年々希薄になっていく人間同士の関係を強化していくことはできない。
経営管理の手法の一つ「コミュニケーションの技術」を使って希薄な人間関係を補おうと努力はしている。
だが、このやり方はあまりにも技術的である。
人間的に未熟でも、学歴が高く、新しい経営手法に通じている若い管理職は
「コミュニケーションの技術」と「評価の物差し」だけを使って部下を管理しようとする。
そこには人間的な要素は入って来ない。
コミュニケーションから人間関係の要素がなくなった時、そこにはモラハラがしのびこんでくる。
人間と人間の関係が大切にされなくなったのは、現代の風潮である。
相手の話を聞くこと、相手と話をすること、相手を尊重すること。
それができれば、自分の間違いに気づき、考え方を修正することもできるのに
現代のコミュニケーションではそういった部分が消えているのだ。
そんな状況を反映して、企業では全般的にコミュニケーションの仕方が悪くなってきている。
組織の形態が縦割りで、あまりに細分化されているところでは、大切な情報が通らなくなっている。
本社と支社、経営陣と現場との間で意志の疎通がはかれないというのも
よく見られることである。
実際の人間関係を見ても、上司は部下を褒めて励ますことがほぼできない。
それどころか、上層部から中間管理職、下級管理職、平社員と続く職階の中で聞かれるものの多くは
「そんなことを言うなんて何様だと思っているんだ」
「まさか、そんなことをするほど馬鹿じゃないだろうねえ」
と相手を貶め、否定する言葉である。
また部下と面と向かってやりあう勇気がないために、頼みにくい仕事を口で伝えるかわりに
連絡日誌を使って命令したり、もうすでにそれが決まってしまったことのように会議で発表して
部下に反論する隙を与えず、暗黙の了解ができているようにして
相手を思い通りに動かすのである。
部下に地位を奪われるのが心配な上司は、
上から降りてきた情報を自分のところで止めて、部下に伝えないことがある。
こういったことは、いずれもモラハラの始まりである。
だが、多くの社員はそれに気づかず、問題をはっきりさせないまま事態を収拾しようとする。
上司との対立を避けるためだ。
しかし、それは間違っている。
口に出さないまま放っておけば、誤解が生まれたり、相手の思い通りに動かされる。
モラハラは被害者が加害者との対立をはっきりさせることができないまま進んでいくのである。
この点では、昔ながらの封建的な会社の方がモラハラは起こりにくい。
上司は言葉に出して命令を伝えてくるので、対立ははっきりした形で表れるからである。
その反対に、従業員が自社株を持って経営に参加するような一見自由な会社では
対立が表に出にくいため、それだけでモラハラが起こりやすいと言える。
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