勉強させてもらいます
一人でノートをとるより
勉強内容をまとめたり把握するのが
何だかはかどるので失礼致します。
14/12/07 08:25 追記
閲覧ありがとうございます。
皆様のお陰で新しい発見や再確認ができて新鮮だったり、良い息抜きになっております。
もしお役に立ちそうなものがありましたらご活用ください。
不要な方は引き続きスルーでお願い致します。
文章は教わったことを再び自分に向けて理解するための作業ですので
意見みたいなものも誰かへの訴えではありません。
悪しからず。
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◆職権の濫用◆
これは組織の上下関係をもとに部下に苦痛を与える行為である。
部下を人間として尊重せず、乱暴に扱い、恐ろしい圧力をかけたり、口汚く罵ったりする横暴な上司がこれにあたる。
モラハラによる暴力は人知れずふるわれるのに対し、こういった横暴な上司の暴力は、誰の目にもはっきりわかる形でふるわれる。
巧みに立ち回る少数の例外を除き、こういった上司の被害を受けずに済む部下はいない。
こうした上司が自分のしていることを意識の有無に関わらず、その行動は腹立たしく許しがたい者も多い。
だが、その上司の行動は、まだモラハラとは一線を画している。
しかし、部下を互いに反目させるといった陰険なやり方をした場合はモラハラと区別するのは難しい。
上司が部下の一人一人に対し、個人的にその弱点をつくようなハラスメントをした場合は
「横暴な上司」の段階を越え「モラハラ」の段階に移行していると言える。
「職権濫用的モラル・ハラスメント」はこれにあたる。
◆一時的な攻撃◆
モラハラの特徴は、攻撃が執拗に繰り返されることである。
敵意ある言動のいくつかが、少なくとも週に一度、短くても六ヶ月にわたって続く必要があるとしている。
私自身はこのような制限を設けるのは適当ではないと思っている。
ハラスメントの重大さは長さや頻度と同時に、その攻撃がどれほど暴力的かということによっても測られるからだ。
その証拠に六ヶ月にわたらなくても相手を破壊する攻撃は存在する。
だが、あまりにも単発的なものは、その攻撃がいくら暴力的でも「モラハラ」とは言わない。
裁判の時にも、例えば異動命令に悪意があったかどうかを判断するには、それ以前の一定の出来事を調べることが要求される。
侮辱や嫌がらせのように悪意がはっきりしている場合は、その行為が繰り返し行われたかどうかが確かめられるのである。
一時的な攻撃は反射的、衝動的なものであることが多い。
モラハラの場合は、攻撃は意図的で永続的である。
だが、一回きりでもその行為が相手に屈辱を与える目的で行われれば、モラハラだと言って差し支えない。
例えば、事務所に入れない、机の中のものをダンボール箱に入れて廊下に出す、相手を避ける態度をとる等。
これは被害者を辞めさせるために使われる嫌がらせだが、この場合も詳しく事情を調べてみると、この行為が行われる以前から、被害者に小さな悪意が示されているケースが多い。
ただ被害者がそれを認めるのを拒否していただけである。
このように企業が残酷なやり方で社員に屈辱を与え、人間としての価値を貶め、会社から追い出すのであれば、間違いなくモラハラである。
◆違う形の暴力◆
次に挙げるものはどれほど暴力的であっても、モラハラとは言えない。
・社外からの暴力
顧客や得意先が失礼な態度を取ったり、暴言を吐く。
また強盗など凶器を持った人間が精神的な暴力をふるう。
顧客や得意先はモラハラに類似した行為を行うこともある。
その場合、企業は必要な措置を講じて社員を守らなければならない。
・身体的な暴力
モラハラによって状況がこじれた結果、ふるわれたとしてもモラハラには入らない。
こうした暴力はすぐに告訴すべきである。
国際労働機関(ILO)によると、労働者の中で身体的な暴力がふるわれている人の割合は役所などの公的機関の方が、私企業より高いという。
・性的な暴力
これはすでに刑罰の対象となっているので、モラハラには入らない。
モラハラとセクハラは互いに移行することが多いという考えもある。
ILOによると、労働者の中でセクハラを受けている人は二%、地位的に不安定な25歳以下の女性が多い。
◆厳しい労働条件◆
「モラハラ」を「厳しい労働条件」あるいは「劣悪な労働環境」と見分けるのは難しい。
それを見分けるためのポイントは「悪意の存在」である。
体に合わない椅子を使わせ、照明の暗い狭い部屋で働かせる自体は、モラハラというわけではない。
また意識的にせよ無意識的にせよ、オーバーワークになるほど仕事をさせるのも、
社員の心身を消耗させようという歪んだ目的がない限り、モラハラとは言えない。
ある特定の社員だけがそういう目にあったり、労働意欲を削ぐ目的でそういう環境を与えたとすれば、モラハラである。
労働環境が劣悪かどうか判断するのは労働監督官の役目である。
監督官は訴えがあり次第、現場に赴き、処罰に値するかどうかを判断する。
モラハラであった場合、労働環境は次第に悪いものに変えられていくので、
被害者の方はどの時点で労働環境が正常な状態から逸脱し、劣悪な状態に変わったのかよくわからない。
その職場で働く社員全員が、労働環境が劣化したと感じれば、集団で行動を起こすことも可能だろう。
しかし、小さな部署で一人で働いている社員は「環境が劣悪になった」と言うのに、自分の感覚を頼りにするしかない。
モラハラ加害者はそこに目をつけて、被害者が他の同僚の状態と比較できないよう隔離して、労働環境を悪くしていくのである。
現在のように労働条件が厳しくなっていると、働く人間に大変な状況があったからといって、
「これは悪意によるものだ。モラハラだ」と判断するのは、これまで以上に難しい。
雇用がパート・アルバイトのシフトように不安定な時、
客観的な基準をつくるのが難しいだけに、どんな決定も不当だと感じられる。
少しでも誰かの都合に合うようにすれば贔屓だと受け取られ、特別な事情に対して配慮しなければ、今度はモラハラだと非難される職場も多い。
労働条件が厳しくなればなるほど、従業員に対して細かい心配りが必要になる。
それは考えてみれば、すぐにわかることだろう。
◆職務による正当な要求◆
上司が部下にモラハラを行う時、そこでは必ず権力が濫用されている。
従って、契約にもとづいた異動や配置転換のような職務上の正当な決定をモラハラと混同してはならない。
また仕事に対する評価や建設的な批判も、その評価や批判が明瞭なものであり、嫌がらせなどの目的がないものはモラハラではない。
どんな仕事にも職務による正当な要求やそれに対する服従はつきものである。
そうは言っても、モラハラとの境は簡単に見分けられるものではない。
「仕事に対する評価」に関することで言うと、
公的機関の評価システムは、モラハラとの絡みで微妙な問題を生じさせることがある。
公的機関は部署によって、誰に対しても最高の評価を与えるのを常態にしていることがあるからだ。
この時、減点はわずかでも、重大な意味を持つ。
このシステムだと、例え上司に悪意がなくても、部下が傷つく可能性は高い。
「契約にもとづいた正当な決定」にも問題がないわけではない。
労働契約書には、健康にどんな影響が出ようが、与えられた目標を達成すること、といった条項が盛り込まれていることが多いからだ。
裁判所も、無理な目標が設定された場合は、
「契約に盛り込まれた目標は達成不可能であり、労働者を隷属状態におくものである」
という判決を下すことが多くなってきている。
雇用者は労働者がその職務を果たすのに必要な手段を提供し、
給与や身分、能力に見合った職務を与えなければならないのである。
「仕事に対する批判」の問題は、
例え上司がやる気を起こさせようとしたのだとしても、少しばかりきつく叱ると、
ハラスメントを受けたと感じる部下達もいる。
そのことを頭に入れておかなければならない。
上司が部下にやる気を起こさせようとするのは当然である。
しかし、結果としてハラスメントになってしまったのだとしたら意味がない。
それなのに、多くの管理職は部下の自尊心のことを考えずに、アメより鞭をくれたがる。
こうした場合、大半は逆効果である。
労働者の「やる気」に関しては多くの研究が行われている。
「やる気」を起こさせるのに一番良い方法は、これまでより興味のある仕事を与えること、
そして、その仕事を快適な環境でさせることである。
もちろん「職務による正当な要求」と「モラハラ」との境は見分けがつきにくい。
だが、管理職が部下に対して「職務による正当な要求」を行うのであれば、
部下の人格を尊重し、礼儀にかなった伝え方をすべきである。
■モラル・ハラスメントであるもの■
ここで「どうしてモラハラが行われるのか」
「どのような方法で行われるのか」
を中心に、何がモラハラであるか、
最後にモラハラとは切り離して考えることのできない「悪意」の問題について記述するつもりである。
◆◆どうしてモラル・ハラスメントが行われるのか◆◆
モラハラが行われる時、その裏に「この出来事が原因だ」と断定できるようなことはほぼない。
堂々と口にすることができない感情的なものが重なって、モラハラの原因になっている場合が多い。
◆自分とは違うものに対する拒否感◆
モラハラは自分とは異質なものに対する拒否感から行われることがある。
これは「差別」にきわめて近い。
例えば、男性が多い職場で女性が嫌がらせを受けたり、同性愛者に対して野卑な冗談が言われる。
それが「差別」だと取られると罰せられるので、そうならないように、被害者に対する嫌がらせはより巧妙な形で行われる。
また、あるグループの中でそのグループのやり方とは違う考え方や行動の仕方が違っていたり、
あるいはそのグループに対して批判的な意見を持っている人がいると、
その人はグループ全体から拒否されることも多い。
ショーペンハウアー曰く
「ある集団に属する人々にとって、自分達とは違う考えを持つメンバーの存在が許せないのは、何もそのメンバーが自分達と異なった意見を持っているからではない。
自分独自の考えを持つという、その高慢さが許せないのである。
逆に言えば、その集団に属する人々は自分の考えを持ったことがないのであり、そのことに心の奥底では気づいているのである」
実際、被害者達はこの点に関しては事の本質に気づいていて、口を揃えてこう言う。
「私は他の人達とは違っていたんです!」
自分が周りの人達とは違った「スタイル」を持っていたことが被害者にはわかっているのだ。
グループの中で受け入れられるためには、働き方だけでなく、生き方や服装の選び方、話し方、反応の仕方など、様々なことについて他のメンバーと同じであることが要求される。
この同じであることは、大人になるまでに受けた教育や出身の社会階層と関わる場合も多い。
従って、拒否される危険を感じると、自分の受けた教育、出身階層を否定し、周りに合わせて最終的にはグループと同化する人もいる。
また別に、部署の中で一人成績の悪い人がいると、
全体の足を引っ張るとか、部署のイメージを悪くするという理由で仲間外れにされることもある。
反対に誰もがそれほど努力しなくてもうまくいっている部署で一生懸命働き過ぎると、
仲間外れの原因になることがある。
企業は型にはまらない社員を嫌う傾向にある。
そこで組織に合わない人間を追い出したり、その人間をダメにしようとしたりして、モラハラが行われる。
同じ型の社員であれば管理もしやすい。
そうして社員が企業の思う通りに動けば、生産性が高まり収益が上がると考えるのである。
「社員を同じ型にはめる」のが、企業ではなく、職場の同僚によって引き継がれる形で行われる場合もある。
企業は他の社会的グループと同様、内部に自動管理システムを持っている。
それがグループの基準から外れた人間を矯正する仕組みになっているからである。
この時、基準から外れた人間はどれほど嫌でもグループの論理を受け入れなくてはならない。
モラハラはグループの論理を押し付ける一つの方法である。
◆羨望、嫉妬、ライバル関係◆
羨望は相手と自分を比較したりライバル関係にあったりする人間の間に否応なく生まれる自然な感情である。
この感情は時に人を醜く争わせ、その結果、組織に対して計り知れない損害を与える。
経済学など社会科学の分野では、この感情が存在しないかのように無視されてきた。
個人レベルで見ても、この感情は堂々と口に出せるようなものではない。
そこで人は行動する。
相手を貶めて自分の方が優れていると感じようとするのだ。
そのために、相手をけなす方法が使われる。
ライバル関係というのは同僚だけでなく、上司と部下の間にも生まれる。
これはどの組織のどの階層でも起こり得る。
ライバル関係は自然に発生するばかりではない。
特定の社員を追い出すために、企業が利用する場合もある。
ある社員と別の社員を意図的に争わせて、どちらかを辞めさせるといった場合である。
古株の社員達と若手の社員達を競争させ、若手の社員達に肩入れすることによって、古株の社員を追い払うということもある。
このような形で社員間のライバル関係を利用するためには、
まず何よりも職場における団結心が失われており、社員同士がバラバラになっている必要がある。
そのため、企業は社内の競争を激しくして刺激を与えるという口実のもとに
グループと別のグループに格差をつけ社員同士の連帯を弱める経営管理の方法を用いることがある。
自分達は特別で何でもする権利があると思い込んだ社員は、一般的な社員とのコミュニケーションなど成り立たない。
レベルの低い者と話しても学ぶものはないと思っているので、同タイプとしか話さないからだ。
会話というのは関係がどうであれ、互いに対等な人間として認めるところからしか始まらない。
様々な立場の人々と会話をすることによって、初めて進歩が生まれるのである。
ライバル関係を利用するというやり方が高じてくると、社員自身がライバルの足を引っ張る不幸な事態も起こってくる。
これは結果としては社員間で起こったモラハラである。
だが、企業が初めからそうなることも考えに入れて双方の競争を助長していたとしたら、
企業、具体的には二人の上司によるモラハラである。
◆恐怖◆
恐怖はモラハラを行わせる大きな原動力の一つである。
人は恐怖を感じた時、相手に対して暴力的になるからだ。
自分の身を守るために、相手を攻撃するのである。
この場合、恐怖は次の恐怖を生み出すといった形で、複雑に絡んでいく。
誰もが加害者になると同時に被害者にもなる可能性があるのだ。
会社員にとって恐怖は仕事と切り離せないものになっている。
仕事がうまくできないのではないか、
上司から嫌われているのではないか、
同僚から馬鹿にされているのではないか、
ミスをして処罰されるのではないか。
口にこそ出さないものの、誰もが心の底では恐怖を抱えているのだ。
会社員の抱える恐怖は、昔と比べて一層複雑で、容易に逃れにくいものになっている。
現在では社員をあかさらまに服従させようという経営者は少ない。
そのかわりに自主性を重んじ、自立を勧めることによって、
「うまくいかないことがあったら自分のせいだ」
と社員に罪悪感を持たせようとするやり方が行われている。
会社の言うことを聞かずに困ったことが起こったら、それは全て自分の責任なのだ。
こうして恐怖は陰険なやり方で社員の画一化に利用されているのである。
いくつかの企業では従業員を管理するのに「恐怖を利用する」といった方法が使われている。
上層部から圧力がかかると、社員は恐怖を感じ、その恐怖は上から下へ伝えられていく。
彼らには恐怖を感じたというのは恥ずかしいことなので、そのことを認めるのは難しい。
その結果、特に性格的に弱い人間は自分が上司から受けた暴力をそのまま部下に向けてしまうのである。
他人に恐怖を覚えると、周りの人全員を警戒せざるをえなくなる。
他人に利用されないよう、弱点を隠す必要も出てくる。
誰かを潜在的な敵だと考えるならば、やられる前にやってしまわなければならない。
こうした恐怖に衝き動かされると、人はあたかも正当防衛をするように相手を攻撃する。
「自己愛的な変質者」はとりわけ他人に対する恐怖が大きい。
自分に服従しない人、自分の魅力に屈しない人はそれだけで危険と見なすのである。
恐怖を抱くと、他人は悪魔のように思える。
自分は弱く、脅かされていると感じるので、相手が攻撃的に見えるのだ。
実際には脅かされていないのに、相手に対してモラハラを行う場合もある。
特に「自己愛的な変質者」は
「今度は自分がハラスメントを受けるのではないか」
と思うと、卑怯な行動をとることが多い。
例え上司から圧力がかかっていなくても、
叱責されるのではないか、
仕事ぶりを咎められるのではないか、
という子供っぽい気持ちから恐怖を抱くこともある。
悪事が露見するのを恐れる場合は、証人を追い払いたいという誘惑に駆られることもある。
◆口には出せない理由◆
はっきりと表にあらわれた仕事上の対立がモラハラの原因になることは滅多にない。
それよりも、「口に出せない理由」であることが多い。
例えば、会社にはその会社なり職場に特有の「暗黙の規則(了解)」というものがある。
この暗黙の規則を破る者は、その会社なり職場から弾き出されるのだ。
組織の一員となるためには、表にあらわれない規則も遵守しなければならないことも多い。
企業は仕事の効率が良くなるのであれば、就業規則に反することでも、ちょっとした違反には目をつむる傾向にある。
そういった小さな違反が行わなければ、仕事はうまく機能しないものなのだ。
それは、遵法ストライキが、ストライキとして効果があるということでもわかる。
だが、その違反も、ある限界を超えれば軽犯罪になる。
こういった問題に労働組合が絡んでくると、事は一層複雑になる。
社内で違反行為が行われていたとしても、
労働組合がそれを認めていれば、現場の管理職は注意できない。
上層部も現場の管理職にその行為を黙認するように命じる。
社員間の揉め事や労働争議を恐れて、企業がこの手の事柄に及び腰になっていると、規則違反は横行する。
問題は企業の事なかれ主義にあるだけではない。
それをする社員から見ると
「普段から会社にこき使われているのだら、これくらい当然だ」
という復讐、埋め合わせの気持ちからこういったことをする場合も多い。
利益のためなら規則を平気で破る会社の姿勢がそのまま社員に反映している場合もある。
残業時間をごまかしたり、必要経費を騙し盗ったりするのである。
それ以外にも、誰もが知っているが、決して口にしてはならない「公然の秘密」を持つ企業もある。
秘密は企業の運営に直接的に関われば関わるほど重大で、箝口令も厳しくなる。
その影響は様々なところに波及する。
企業の上層部はわざとモラハラが起こるように仕向けることさえある。
仮に加害者が罪に問われたとしても、上層部には責任がない。
これは仕事に関しても同様である。
数字的な目標を設定して
「ともかく何をしてもいいから、これだけの利益を上げろ。できなければこの会社にいることはできない」
と言って、切羽詰まった社員が目標達成のために違法行為を犯すと、
自分達は知らぬ顔をするのである。
責任は全て社員に押し付けてしまえば良いので、企業自体はある程度、法律から自由な状態でいられる。
こういったことは口に出してはいけないことなので、非難されることもない。
言葉にして「名付ける」ことができないものは存在しないことと同然にされるのだ。
だからこそ、何か問題があったら、その問題に相応しい言葉で「名付ける」ことが大切なのである。
◆◆モラル・ハラスメントの方法◆◆
では実際にモラハラはどのような方法で行われるのか?
◆孤立させる◆
モラハラは、相手を孤独に追い込んだ時に効果が上がる嫌がらせの方法である。
被害者は周りから孤立した人が狙われる。
孤立していない人は、仲間から引き離される。
例を挙げると、母子家庭の母親、あるいは臨時雇用など不安定な職についている労働者で、
助け合いのための「人とのつながり」を持たない人。
こういった人達はモラハラの被害に遭いやすい。
モラハラではないが、それに関係の深いセクシュアル・ハラスメント(以下セクハラ)の例で言うと
議会は、「基本的な社会的権利に関する活動計画」の中で、その被害に遭いやすい人々を特定している。
「離婚した女性、正規の労働契約を交わしていないため不安定な地位にいる女性社員、障害を持った女性、女性同性愛者、人種的にマイノリティである女性、
こういった人々はセクハラの被害に遭う危険性が高い。
男性同性愛者や若い男性もハラスメントの対象になることがある」
特に社会的な弱者ではなく、エリートでも、常に味方をつくっておく必要がある。
現在では会社員の世界でも個人主義が当たり前になってきたと言われる。
逆説的に言えば、だからこそ現在の会社員には「人とのつながり」が大切になってきているのである。
端的に言うと、それは
「上司と問題を起こさない」
「職場で荒波を立てない」
「グループの他の人達と違ったことをしない」
ということを意味する。
例えそれまで職場で友好関係を保っていたとしても、モラハラの標的にされたら安心はできない。
特に加害者が上司である場合は、勝手に規則をつくって同僚とのコミュニケーションができないようにしてしまうからだ。
上下関係に関する規律が厳しく、上層部に直接訴えることができない会社では、こういった締め付けはさらに激しくなる。
加害者が標的の人物を孤立させるのは、その人物が不満を訴えて味方をつくらないようにするためである。
しばらくの間ハラスメントが続くと、その人物は拒否されるのを恐れて、
自分の方から周りの人々に近づかなくなる。
もし加害者が「自己愛的な変質者」であれば、職場の人々の心を巧みに操り、被害者に向かわせることができる。
仮にそこまでいかなくても、周りの人々は対応に困って、事態に対して沈黙してしまうことが多い。
この沈黙を被害者は敵意の沈黙と解釈する。
こうして悪循環が始まり、今度は被害者が敵意を返すことによって、
最初は中立だった人々も最後には敵になってしまうのである。
この周りの人々の沈黙は様々に解釈できる。
ハラスメントを受けているのが自分ではないので、事態に気づいていないのかも知れない。
嫌がらせの凄まじさに、こんなことを行われるはずがないと
ハラスメントが起きていることを心の中で否認しているのかも知れない。
だが、「自分さえ良ければいい」という恐怖と卑劣な気持ちから
見て見ぬふりをしていることが多い。
「触らぬ神に祟りなし」と沈黙しているのである。
経営管理の手法では、仕事は個人単位でさせることが多くなってきている。
この場合、追い払いたいと思った人間を孤立させることは簡単である。
孤立させる方法はいくらでもあるのに、それを実行しても目立たないからである。
周りの人が事態に気づかないということも本当に有り得る。
こうして標的にされた人物の周りは沈黙で囲まれてしまうのである。
社員が連帯するシステムが消滅したら、そのかわりに「人のことはどうでもいい」という雰囲気が職場を支配する。
◆仕事に託けて個人攻撃をする◆
仕事を利用して嫌がらせをするのもモラハラの方法である。
例えば、ある仕事を言い付けて、その一方でその仕事ができないようにするといった方法である。
あまりに露骨な個人攻撃をすると、非難された時に言い逃れができない。
そこで、仕事のことで批判しているのか、個人攻撃をしているのか、見分けがつきにくい巧妙なやり方を用いられることが多い。
職場におけるモラハラが見定めがたいのは、この理由からである。
攻撃がはっきりしていれば
「それは不当だ。自分はちゃんと仕事をしている」
と言い返すこともできる。
仕事に託けてモラハラが行われる場合、まず労働条件の悪化という形で現れる。
例え抗議をしても、企業側は「職務上しかたのないことだ」と申し開きをする場合が多い。
例えば
オーバワークになるほど仕事をさせておいて、それは職務の範囲内だと言い訳する。
反対に他の人達が忙しく働いているのに、標的にした人物から仕事をとりあげ「それぞれの仕事には専門的な能力が要求されるので、分担することができない」と言うなど。
また、仕事上のミスを細かく指摘する
実現不可能な目標を設定する
意味・必要のない仕事をさせるというのも
仕事に託けてモラハラを行う有効な方法である。
これをされたら、標的にされた人物は動揺する。
仕事を言い付けて、その仕事を達成するのに必要な手段を与えないというのも、効果的なやり方である。
真面目に働こうとしている社員に対して
「自分には能力が不足している」
と思わせる方法である。
◆仕事の批判ではなく人格を攻撃する◆
モラハラが行われる時、被害者の「仕事」が標的にされることは滅多にない。
仕事の出来不出来とも関係がない。
加害者が意識しているかどうかはともかく
「仕事」ではなく「人格」が攻撃されるのである。
加害者が複数だとしても、攻撃は個人的な形をとる。
この場合、加害者の目的は相手を支配することにある。
従って、まず相手の弱点を攻撃して自信を失わせようとする。
加害者は相手が容易に変えられない性格や習慣を非難する。
仕事について何か言う時も
「これこれこうだから、君の仕事はいけない」と具体的に指摘するのではなく
「お前は駄目だ」と人格を攻撃する形で言う。
そこには問題を解決しようとか、対立を調整しようといった意思はない。
あるのは相手を力ずくで捩じ伏せようという気持ちだけだ。
モラハラの目的は、相手を心理的に不安定な状態に追い込んで、逆らうことができないようにすることである。
そのためには、対等な関係ではなく、支配と服従の関係ができていることが望ましい。
戦う前に相手は鎧を外しているからである。
そういったことから、加害者は純粋に仕事のことで相手を非難したりはしない。
相手が痛みを感じる個人的な事柄を攻撃するのである。
個人的な事柄を攻撃するという点で言えば、「性」に関することが一番だろう。
男性優位主義者、性差別主義者などからの女性に対する攻撃は、相手が女性であることに向かう。
例えば、女性性器を意味する卑猥な言葉を口にする
性的に屈従させるようなことを言う
わざと相手の性的な魅力を称える
女性の武器を使って仕事をしていると非難する
など数え上げればきりがない。
男性が標的にされる場合は、男性としてのアイデンティティを揺るがすようなことを言われる。
こういった言葉はとりわけ、卑猥な冗談の仲間に入らなかったり、
他の人達とは違ったことをする男性に向けられる。
政治的な攻撃は、ある人物を通じてその人物が属しているグループを傷つけようとする。
モラハラの場合は、その人が属しているグループや、その人のした仕事を理由に、その人を傷つけようとするのである。
こういったモラハラは、企業がより少ないコストで人員削減しようとする時にも行われる。
企業は職業的な能力ではなく、性的な問題を理由に削減の対象を選ぼうとするのである。
◆正常な感覚を失わせる◆
モラハラで恐ろしいのは、ハラスメントを受けた人間が正常な感覚を失ってしまうことである。
これは不思議なことではない。
同僚や上司から、どうして非難されるのか理由もわからず、知ることもできず、
虐待され、仲間外れにされ、辱められるのだ。
被害者は類推して自問自答するしかない。
これでは正常な感覚が失われるのは当然である。
モラハラの嫌がらせは、たいてい偶然起こったような形をとる。
それが日々、形を変えて行われるのだ。
少しでも事態を把握しようと思うと、標的になった人物は果てしない自問自答を繰り返すことになる。
時には同僚に忠告を求めてみることもあるが、満足な答えは返って来ない。
同僚達は加害者によって被害者から切り離されているのが普通だからだ。
加害者に言われた「悪いところ」を直したとしても攻撃がやむわけではない。
モラハラは被害者が加害者の前からいなくなるまで続く。
加害者は個人、組織問わず、嫌がらせをしたことを認めない。
あるいは、責任を被害者に押し付ける。
「確かに仲間うちから遠ざけたけれど、それはあの人が難しい性格をしているからだ」
このように加害者は、例え自分がしたことを認めたとしても、その非は認めようとしない。
モラハラ加害者に対してはまともな論理は通用しないのである。
その結果、事態を論理的に把握できないことにより
被害者は自分がおかしくなったのではないかと疑うようになる。
その一方で加害者は被害者に対して「お前は狂っている」と言う。
被害者は他に仲間外れにされる理由が見つからないので、それを信じるようになる。
これまで仕事に打ち込んでいた人間が突然、
一線を外され、ろくに仕事も与えられず、孤立させられ、辱められたとしたら、
一体どんな気持ちになるのだろう?
しかも、それは能力が欠けていたからでも、仕事上の失敗をしたからでもない。
実際には仕事そのものの問題ではなく、別の理由によるものであることの方が多い。
社内に味方をつくっておかなかったとか
人とは違ったところがあるとか
逆に仕事の能力が高いことが誰かに脅威を与えたとか
そういった不運によるものであることの方が多い。
健全な論理から言えば、そんな風になるのは馬鹿げている。
だが、仕事は時として目的が倒錯して変質的になることがある。
利益の追求ではなく、権力の掌握が目的になってしまうことがあるのだ。
その権力とは
会社にとって長期の結果がどうなろうと、
自分が権力を持っていると実感して、
その権力をふるいたい、権力者になったことを味わいたい。
そういった権力である。
◆◆どこが変質的か◆◆
モラハラは「変質的な(pervers)」行為である。
その「変質的な」部分はどこにあるのか。
◆悪意があるということ◆
心理的な攻撃について考える時、「悪意」の問題を切り離して考えるわけにはいかない。
被害者が傷つくのは、相手の「悪意」に対してなのである。
一方、モラハラの加害者は、個人的なレベルでは自分の行為を誤解や行き違い、状況のせいにして悪意を否認しようとする。
「そんなことを気にしていたなんて知らなかったんだ」
「私は命令に従っただけだ」
「傷つく方が神経過敏なんだ」
このように悪意の否認には巧妙な言い訳が用いられる。
悪意そのものを意識していない場合もある。
人は誰かを傷つけたことは認めても、自分の悪意を認めることは難しいからだ。
悪意の存在は加害者が気づいたとしても、曖昧にされてしまう。
「ほんの冗談だよ。気にする方がおかしいんだ」
被害者は同じひどいことをされたのなら、加害者に悪意を認めて欲しいと思うのが普通である。
悪意がはっきりしているなら、それに抗議することができるからだ。
自分では暴力をふるわれていると思っているのに
「暴力をふるったつもりはない」
と言われると、自分の感覚が信じられなくなるということもある。
正常な感覚を取り戻すためには、悪意を認めてもらうしかないのである。
だが、被害者自身が相手に悪意があることを否認したがっている場合もある。
その結果、相手の悪意に気づくのは会社を辞めてからなど、遅くなることも多い。
◆悪意に気づいているかどうか◆
モラハラを考える上では「悪意の存在」に加えて、
「加害者が悪意を意識していたかどうか」ということが重要になる。
相手を傷つけようと意識していたか、
意識はなく思わずやってしまったか、
そうせざるを得なかったのか、
という問題である。
傷つけようという意識がなかった場合は、同じ悪意でも衝動的に表れたものだと言えよう。
ここで一つ問題がある。
「悪意を意識していたかどうか」は簡単に区別できるだろうか。
その観点から「意識-無意識」の形で二分化しない。
その間にいくつかの段階を設けて、
加害者がどの段階まで意識していたらモラハラだと言えるのかが考えられた。
これは複雑な問題で、場合によっては、企業の持つ体質そのものの中に
「変質的な行為」の種が埋め込まれていることがあるからだ。
その場合は相手にどんなひどいことをしても
「人を傷つけようと、悪意を持って嫌がらせをしている」
という意識は、なかなか表にあらわれない。
「仕事のためだから、しかたがない」といった形で、企業の体質の中に悪意が吸収されてしまうからである。
しかし、実行者の責任が大幅に軽減されて良いものだろうか?
「仕事のためだから、しかたがない。私がいけないのではない」
そのような言葉が事態を軽くするのだろうか。
誰かがある人の行為によって傷ついたのだとすれば、傷つけた人の意識はどうであれ、その結果を重く見るべきではないのか。
はっきり意識して行ったことだけが重大だと考えるのか。
意図的に行われたものだけをモラハラとするならば、その「意図」をどのように証明すれば良いのだろうか。
ある行為が組織によって行われた場合、その組織に「悪意の意図」があったということはできない。
「悪意の意図」は、組織の「変質性」を利用した人々の中にあるからだ。
世間ではよく組織再編がモラハラの原因だと言われる。
だが、組織再編そのものがモラハラを行っているわけではない。
実際は、権力に貪欲な人間がこの状況を利用して力を拡大しようとし、邪魔になる人間の精神を破壊しようとしているのである。
組織再編に伴う混乱した状況が「変質的な」行為を隠してくれると、彼らにはよくわかっているのである。
モラハラを行ってしまった時、人は上司の命令だと言って、自分の行為を正当化できるだろうか?
実際、モラハラの責を問われた中間管理職の人達は、上層部の命令に従っただけだと申し開きをすることがある。
よく調べてみると、上層部がそういった命令を具体的に伝えていることは滅多にない。
大抵は「誰それを辞めさせたいので何とかしろ」という形で伝えられているだけである。
モラハラに頼ったのは、本人が決めたことなのだ。
同じ会社を辞めさせるにしても、上層部の意向をきちんと伝えながら、相手を尊重したやり方で話し合いを進めるもっと良い方法があったはずだ。
中間管理職も「不服従の義務」を利用し、不当な命令には従わないこともできるはずなのだ。
ハラスメントに追随してしまった者の責任はどうか。
モラハラが行われているのに、見て見ぬふりをしてしまった責任はどうか。
という問題もある。
もちろん、一番責任があるのは中心になってモラハラを行った人間である。
それに追随してしまった人、それをそのままにさせておいた人も責任を免れるものではないと考えられている。
私達はもう少し他人を尊重することを学ばなければならない。
モラハラの暴力は、相手の存在を否定することから始まるからだ。
対等の人間と認めないから、相手の苦しみなどどうでもよくなるのである。
◆不器用なだけか◆
モラハラは、単にそれまで受けてきた教育のせいでコミュニケーションの仕方を知らず、付き合い方が下手なだけではないのか?
そう反論する人もいる。
もしそうなら、その人は自分のコミュニケーションの仕方が悪かったことを認め、
謝罪したり、それ以後のやり方を改めようとするはずである。
そういったことをするなら、その人のしたことはモラハラではない。
自分が相手を傷つけ、苦しめたことは理解できるはずだし、
そのことを後悔して謝罪や償いをすることもできるはずだ。
モラハラの被害者は加害者にそれほど多くを望まない。
ただ、自分のしたことを認めて、謝って欲しいと願っていることが多いのである。
だが、悪意があろうとなかろうと、決して越えてはいけない一線がある。
それを越えたら病的だと思われる行為もある。
この境界は、ある意味では客観的なものである。
社会的に見て、しても良いこと、いけないことの区別が存在しているからだ。
それは同時に主観的なものでもある。
相手に悪意がなくても、小さなことで傷つく場合もあるからだ。
どんなことに傷つくかは、その人によって違う。
モラハラを考える時には、個性の違いも考慮する必要がある。
企業の経営者達がいつでも悪意を持って社員を苦しめているわけではないが、
結果を考えずにしたことが、その結果として相手を傷つけてしまうことはある。
その場合、社員が粗略に扱われたと感じても不思議はない。
また誰かを傷つけようと微塵も思っていなくても、
相手のことを考えて、自分の行動に気をつけることも大切である。
相手がどんな反応をするのか、普段から注意して見ておくことが必要である。
相手を思いやるなら、相手を理解し、相手の状態に合わせる必要もある。
◆権力を得るために人を物扱いするということ◆
原因が組織にあるにせよ、個人にあるにせよ、職場におけるモラハラというのが、
目的の倒錯した「変質的な」行為であることは間違いない。
そこでは正常な企業活動を目的にするかわりに、ただ権力を増大させ、自分達が利益を得るためだけに、
人から自由を奪い、人を「思い通りに動かす」ことが目的になっているからである。
人を「思い通りに動かす」とは
人を「物扱いする」ということでもある。
そういった状態が当たり前になったら、もともと「変質的な」人間は何のためらいもなく
例えば自分の出世の邪魔になる人間を排除しようとするだろう。
自分達のしていることは悪いことではないと申し開きができるからだ。
そうでなくとも、企業の中では「誰かと競争して権力争いをする」のが普通になってしまっている。
そこでは人は相手の言うことに興味を持って耳を傾けるのではなく、
どうやったら相手を蹴落とすことができるかばかり考えている。
その結果、社内には警戒心ばかり強まると同時にあらゆる創造性の芽が摘まれてしまう。
これは企業そのものの体質がモラハラ的になっているということである。
企業の経営者が気に入らない社員を低コストで追い払おうとした時、
その方法としてモラハラを用いたり、コスト・キラーを雇ったりする。
これはその社員を人間ではなく「物扱い」していることに他ならない。
この時、経営者は「会社を経営していく上で、どうしてその社員を辞めさせなければならないのか」
その理由を見失っていることが多い。
権力を行使することに気を取られて、会社経営のことを忘れてしまったからである。
「目的の倒錯」とはこのことである。
■モラル・ハラスメントの間違った使われ方■
モラハラという言葉が一般の人々に広まって以来、この言葉が本来の意味とは違った形で使われることも多い。
全くそうでないものをモラハラだと言いくるめる「変質的な」使われ方をされることもある。
モラハラをきちんと理解するためにも、
こういった言葉の濫用には注意する必要がある。
その言葉の濫用は具体的にどういう形で行われるのか。
「被害者ではない人が被害者になりすます」
「加害者ではない人が加害者にされてしまう」
この二点に絞って記述する。
◆◆被害者の立場になりたがる◆◆
世の中には被害者の立場になりたがる人達がいる。
その人達は自分から進んで困難な状況から抜け出そうとはしない。
自分が被害者であれば、不平を言えて、自分の不幸な人生に意味を与えることができるからである。
この種の人々はいつでも自分が被害者でいるために絶えず加害者を探し、償いを要求しようとする。
その償いに満足することは決してない。
その人達は「私は被害者です」と勝ち誇った顔で診察室に入ってくると、
その状況からどうやって抜け出せば良いのか相談するのではなく、
「これはモラハラだ」という診断書を出すよう要求する。
その診断書を自分が置かれていると思い込んでいる不幸な状況に復讐するために使うのである。
また別のトラウマをそのままにしておいたことにより、
被害者でいる生き方から抜け出せない人もいる。
小さい頃に虐待された人間が、大人になってからも無意識の内に権威を持つ人々と対立し、
自分を困難な状況に置こうとする、といった場合がそうである。
この場合は、セラピーを受けてこのメカニズムに気づくことが大切である。
確かに被害者の立場でいることには、利点がある。
失敗をして困難な状況に陥っても、責任を免れて文句を言うことができる。
「私のせいじゃない。誰それが私を陥れようとしたのだ」というわけだ。
悪いのはいつも他人なのである。
自分を振り返ることもなければ、罪悪感を持つこともない。
いつでも潔白でいながら同情を買うこともできるのだ。
これほど心地の良いことはないのだろう。
世の中では、このように他人に責任を押し付けることが一般化している。
政治の裏工作が暴露された時のことを考えてみるといい。
それに関連したと見られる政治家や政党は、まだ証拠があがっていない内から
「誰それのせいだ」
「誰それに強要されたのだ」
と責任のなすり合いを始めている。
実際に証拠が揃って裏工作をした人物がはっきりすると、自らの責任を軽くしようとする。
「私益を求めてやったわけではないのだから、大した問題ではない」
「確かにやった。だが、他の人達もしていることだ」という具合である。
彼らにとって一番大切なことは
「自分の過ちを認めないこと」
「権力や富を少しでも多く手に入れること」なのだ。
こういった自称被害者は、実際にはそうではないのに
「モラハラを受けた」と主張することがある。
話を聞く場合は十分な注意が必要である。
◆◆実際にはそうではないのに被害に遭ったと主張する◆◆
前述の通り、実際には何もされていないのに
「被害に遭った」と主張する人々も出てきている。
こういった風潮をそのままにしておくと、
本当の被害者の訴えまでが信用されないことになりかねない。
従って、これについては、十分な注意が必要である。
ここでは特に質の悪いものについて触れておこう。
◆妄想症◆
実際には被害を受けていないのに「モラハラにあった」と主張するのは
被害妄想ぎみの人であることが多い。
このケースはすぐにわかる。
まずどれだけひどい目に遭ったかを躍起になって説明する。
その内に加害者の数も一人から二人へと増えていき、
「モラハラに遭った」という言葉を疑っただけで、加害者の仲間にされてしまうのだ。
それに加え、妄想症の人は「加害者」を糾弾する手紙を様々な部署の責任者に送り付ける。
その手紙は大きな文字で、乱暴な言葉を使って書かれていることが特徴である。
また人と話をする時、被害を説明する時以外はあまり興奮せず、どちらかと言うと大人しいが、
ひとたび自分の話を疑われると、急に暴力的になることもある。
従って、「加害者」と一緒の席で話を聞かれることを嫌う。
このような典型的な妄想症であれば、診断はたやすい。
被害を訴えた人がもう少し大人しく、それほど好戦的でなければ、判断は難しくなる。
それでも見分けるポイントはある。
本物の被害者と違って、妄想症の人の場合は
問題が解決されることを望まない。
被害を訴える状況が長続きすることを望む。
もし誰かが介入しなければ、加害者にされた人は一生恨まれることもある。
こうしたポイントを見ていれば、時とともに必ずこうした特徴が表れるので
最後には妄想症であると突き止めることができる。
いずれにしろ、妄想症は病気なので、産業医がそう診断するか
診断に自信が持てなければ、精神科に相談すると良い。
だが、ここで言っておきたい。
確かに被害を訴える人の中には、妄想症の人もいる。
しかし、全ての人が妄想症ということは絶対にない。
このことは何度でも強調しておく必要がある。
妄想症の人と関わりを持つのを恐れる気持ちはよくわかる。
そんなことになったら、話し合いで問題を解決することもできず、巻き込まれてしまう心配があるからだ。
モラハラの訴えを聞いた時、それが妄想症の人の被害妄想からくる訴えではないかとためらってしまう気持ちもよくわかる。
だが、そのために本当の被害者が泣き寝入りするようなことがあってはならない。
本当の被害者と妄想症による偽の被害者では訴える口調に違いがある。
本当の被害者は、それがモラハラであるかどうかを疑い、
自分の行動に非はなかったかと反省し、現在の苦しみを終わらせるために問題解決をはかろうとする。
だからこそ、状況が悪化して手遅れになるまで、行動を起こせないでいることが多いのだ。
また、その望みは相手を糾弾することではなく、
人間として失われた尊厳を取り戻すことである。
これに対して、妄想症の人は自分が被害にあったことを疑ったりはしない。
自分はモラハラを受けたと迷わず判断し、相手を糾弾するのである。
◆自己愛的な変質者◆
実際にはそうではないのに被害に遭ったと主張するのは
「自己愛的な変質者=モラハラの加害者に一番なりやすい人」の得意技でもある。
この種の人々は自分の不幸を嘆き、仲間の同情を引くために、
誰かをモラハラの加害者に仕立てあげる。
そして、その誰かを貶めて満足感に浸るのである。
その人達は被害に遭ったことを専門家に説明すると、
どうやったら、その「加害者」を痛い目に遭わせることができるか尋ねてくる。
「自分にも悪いところがあったのではないか」などとは一言も言わない。
彼らの目的は、相手を傷つけることだけである。
一般的に言って、こうした「偽の被害者」は、本当の被害者に比べて、声高に被害を主張する。
また何よりも現在の状況から利益を引き出すことを優先しているので、
問題を明らかにして、平和的な解決をすることも望まない。
モラハラの被害が過度に語られるようになると、
逆に被害者の救済が難しくなるという問題が起こってくる。
大勢の人が「自分はモラハラを受けた」と言うので、被害者の言葉が信用されなくなってしまうのである。
本当の被害者を守るためにも、偽の被害者には注意する必要がある。
◆◆「加害者にされる」という被害を受ける◆◆
上司が少し行き過ぎた行為を行った時、
その行為の被害者である部下達が結束してマスコミや労働組合に訴え、
その上司にモラハラをされたと言うことがある。
この時、本当にモラハラがあったのならともかく、
そうではなくてもマスコミや労働組合は事実関係を確認する前から
訴えられた人間を加害者扱いすることが多い。
そうなると、会社側も加害者だと言われた人間を解雇するなど即座の対応を迫られ、
例え無実でも、その人間を守りきれないことがある。
この加害者にされる被害は、とりわけマスコミが絡んできた場合に大きくなる。
これについては、社会的制裁を加える前に慎重になってもらうことをマスコミに望むしかない。
職場の状況というのは複雑なのが当たり前だし、隠された事実もあるだろう。
その中で真実を正確に伝えるというのは難しいことである。
社内でモラハラの噂が広がっているのに、
上層部が介入しなかった場合は、マスコミが動き出すこともある。
「被害者を守る」あるいは「モラハラを予防する」というスローガンに
「野蛮な経営管理」を告発するのである。
そうすると企業はイメージが傷つくのを恐れ、即座に対応しようとする。
この場合も、本当にモラハラが行われていなければ、
加害者にされた人が被害を受けることが多い。
■他の国でも問題になっている■
モラハラに似た現象は、どこの国でもある。
その国の文化的、社会的な背景によって、色合いが異なるだけである。
この種の嫌がらせは昔からあるが、研究が始まったのは比較的最近のことである。
そこでモラハラに似た現象を取り上げ
現象に対する様々なアプローチを通じて、それぞれの違いを明らかにしたい。
◆モビング◆
心理学者で産業医を務めたハイレンツ・レイマンは1980年代に、
組織における「精神的な嫌がらせ」に関して新しい概念を導入した。
モビングである。
この言葉はもともと動物行動学者のコンラート・ローレンツが
「侵入者を追い払うために動物が集団でとる攻撃的な行動」
を指すのに使ったものである。
その後、1960年代になって、医師ペーテル=パウル・ハイネマンによって
学校で子供達が別の子供達に示す敵意を指すのに用いられるようになった。
ハイネマンは1972年にモビング(子供の世界における集団暴力)についての最初の本を出した。
モビング mobbing は英語の mob から来ていて
この mob という言葉は動詞で使うと「群がって襲う」の意味になる。
名詞として使うと「群集」や「暴徒」の意味になる。
英語では大文字で Mob にすると「マフィア」の意味にもなる。
モビングは「集団で暴力を加える」ということであるが、暴行の種類は限定されていない。
では、この言葉を初めて「職場における嫌がらせ」の意味で使った
ハイレンツ・レイマンは「モビング」をどう定義しているのか。
レイマンによれば
「職場において、同じ人に対して頻繁に、また徹底的に繰り返される攻撃」であり、
その原因は「仕事上の対立がうまく解消されなかったこと」にある。
また「社会心理的なストレスが深刻な形で表れたもの」であるという。
1993年、レイマンがそれまでの研究をもとに「モビング-職場における嫌がらせ」という本を出版すると
その本は十以上の言語に翻訳され、モビングという言葉を世間に広めた。
レイマンはスウェーデンでモビングに関する統計調査を行い、同時に研究者を育成することに努めた。
1990年の調査では、給与所得者の内、3.5%がモビングの被害に遭っていて
レイマンの推定によれば、自殺者の内15%がモビングによるものだという。
こうした研究によって「職場で受けた精神的な傷害」に対する認識が広まり、
1994年には「モビング」に関する政令まで発布された。
そのモビングはこう定義されている。
「従業員に対して繰り返し行われる侮辱的な行為、
見るからに悪質で非難すべき行為、
それによって職場における共同体からその従業員を弾き出してしまうような行為である」
この政令には、被害者は手厚く看護されなければならないという内容も含まれていた。
だが、被害者をケアする医療システムはできあがっていなかった。
そこでレイマンは専門の診療所を設立し、被害者が社会復帰を果たす手助けをした。
この診療所は圧力がかかって閉鎖されることになったが、
レイマンは1999年に亡くなるまでモビングについての研究に専念した。
レイマンの努力の結果、北欧諸国、スイス、イタリア、ドイツでは
「モビング」という言葉のもとに「職場における嫌がらせ」の研究が現在も行われている。
ドイツではフランクフルト大学のディーター・ツァプフ教授の研究
イタリアでは社会心理的なストレスとモビングについて関係を考察したエージェ教授の研究が有名である。
いずれにしろ、現在「モビング」という言葉は
「組織の中で行われる集団的な暴力」という意味で使われることが多い。
その中には「肉体的な暴力」が含まれることもある。
◆ブリング◆
同じようなことはイギリスにもあり、イギリスではこれをブリング bullying と呼んできた。
英語の bully は動詞で使うと「弱い者いじめをする」
名詞で使うと「いじめっ子」の意味になる。
ブリングも「職場における嫌がらせ」を意味する言葉ではなかった。
まず子供の世界の暴力を表すのに使われ、軍隊やスポーツの世界に広まっていった。
そして家庭内で老人を虐待することに対して使われた後、仕事の世界にも入ってきた。
現在では軍や警察内部にも、ブリングの被害者が助けを求めるための部署が設けられている。
どうしてブリングがこれほど問題になったのか。
それはこの行為の結果、特に青少年の被害者にとって
恐怖によってもたらされる心理的な影響が将来にわたって重大であると考えられたためである。
仕事の世界に「ブリング」という言葉を導入したのはラザルスという研究者で
1984年に出版した本の中で、社会心理的なストレスの一つにブリングを取り上げた。
以来、イギリスをはじめとする英連邦の国では「職場における嫌がらせ」を指すのに
「ブリング」という言葉が使われるようになった。
同じ英連邦の国でも、カナダのフランス語を使う地域では
「心理的な嫌がらせ-アルセルマン・プシコロジック」という言葉が用いられることが多い。
「職場における暴力」について報告した国際労働機関(ILO)のレポートの中で
ヴィットリオ・ディ・マルティーノは「ブリングは職場における嫌がらせであり、脅しである」と書いている。
またこうも書かれている。
「職場における暴力の概念は変化しつつあり、その意味で言うと、
これからは精神的な暴力も肉体的な暴力と同じくらい重要なものとして考えなければならないし、
暴力としては一見取るに足りないものでも、その結果が重大な影響を及ぼすものについては、
注視していく必要がある」
ディーター・ツァプフ教授は
「モビングが集団で行われるのに対して、ブリングは力のある者によって行われる」
と、この二つの違いを説明している。
専門家の見解として
「ブリング」は「モビング」に比べて意味する範囲が広いように思われる。
嘲笑や仲間外れの他に、モビング以上に性的な嫌がらせや肉体的な暴力が含まれているように見える。
組織における暴力というよりは個人的な暴力などもある。
◆ハラスメント◆
1976年に精神科医のキャロル・ブロドスキーが
「ハラスメント」という言葉で「職場における嫌がらせ」を説明している。
「ハラスメント」とは
「相手を苦しめ、苛立たせ、挑発する目的で、執拗に繰り返される攻撃」である。
著書の中でブロドスキーは
「この行為は被害者の健康に重大な影響を与える」と述べると
自分の挙げた例は氷山の一角に過ぎないと指摘している。
◆ホイッスルブロワーに対する仕返し◆
ホイッスルブロワー whistleblower というのは「警鐘を鳴らす人」である。
そこから「秘密を漏らす人」「内部告発者」の意味でも用いられる。
「職場における嫌がらせ」関連で、これが問題になるのは
このホイッスルブロワーに対して、組織が仕返しを行うからである。
ホイッスルブロワーは自分の勤める企業や官庁の腐敗や法律違反を自らの判断で、
社内あるいは社外的に告発する。
その内容は国民の健康や国家の安全に関する重大な問題であることも多い。
現在、一番多い告発は、健康に関する部門や兵器に関する部門である。
こうしてホイッスルブロワーが組織の悪い部分を告発すれば、
今度は組織がその人物に対する報復を行う。
この場合、ホイッスルブロワーに対してモラハラとしか言いようのない行為が行われる。
内部告発の会は複数の国でつくられている。
ホイッスルブロワー達は互いに結束して、法的な保護を要求する必要があるからだ。
イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランドなど、アングロサクソンの文化圏の国々では、
実際に内部告発者を保護する法律も制定されている。
特にイギリスではこの法律の歴史は古く、中世にまで遡る。
アメリカでも「ホイッスルブローイング」に関する法が制定され、
1986年に談合に関する内部告発を促進する法律
「連邦虚偽申告法」が議会を通過すると、
内部告発者はますます強力に法律の保護を受けることなった。
◆いじめ◆
モラハラに似た現象は日本にも昔からある。
「モビング」「ブリング」と同じように
「いじめ」も、主に学校における子供達の暴力を指して使われる言葉である。
だが、仕事の世界でも新入社員を教育したり、組織の秩序を乱す者を排除したりするために
「いじめ」が行われることがある。
一般に日本の人々は個人主義を好まない。
「いじめ」の目的は個人をグループに同化させ、グループのやり方に従わせることにある。
「出る杭は打たれる」という諺は、まさにこのことを表現している。
日本の教育システムは、将来一流大学、一流企業に入ることを目的に、
できる子を選別する評価システムをとっている。
そのため、小学生の間には通常考えられる以上のライバル意識が植え付けられている。
まずこれが一つ目の背景。
子供を見守る立場にいる教師達も、これまで長い間「いじめ」は
子供が大人になるために必要な通過儀礼だと考えていたため、
下級生の時に上級生からいじめられた子供が
上級生になった時に下の子をいじめるという形が昔からできていた。
これが二つ目の背景。
その他にもこういったいくつかの背景が重なって、
1980年代から90年代にかけて「いじめ」は社会問題に発展するほど、大きな現象となった。
何人もの子供達が自殺し、多くの子供達が不登校になったのである。
また「いじめ」は生徒同士だけでなく、言うことを聞かせるために
教師が生徒に暴行を加えることもあった。
こういった問題は、何か事件が起こるとマスコミに厳しく追及されるので、
現在では学校側も十分注意するようになってきている。
このような日本教育の現状が「仕事の世界」と無縁であるはずかない。
「いじめ」は「人間を社会的にコントロールする道具」だからだ。
日本人ジャーナリストは言う。
「いじめという現象は、1972年頃、日本経済が急成長を始めた時期に表れた。
企業は若い社員に、個人主義を捨て、周りから突出せず、会社を批判しない型にはまった組織人になることを要求したからである」
規範に従わせたり、その規範からはずれた者を罰するために「いじめ」が行われたというわけだ。
これは教育とも連動した。
経済成長を支えるのに適した人材が育つようにと
財界の人々が教育システムを再編するよう政府に要求したのである。
その結果、戦後20年くらい経ってから生まれた人々は、
まず学校で「いじめ」というプレッシャーのもとに
組織からはみ出た罰を受けたり、自ら組織に合わせることに汲々としたりして
組織人として適合しているかどうか、選別されたのである。
ところが、日本経済が衰退し始めると、企業の方針が転換して、
「独創的なアイデアを思いつけること」
という新しい型の人材が求められるようになった。
経営のやり方も変わった。
終身雇用制は終わりを告げ、人員整理の時代が始まった。
そこで経営者に求められるのは、ただ利益を上げることだけである。
必然的に、「いじめ」もそれまでとは姿を変えるようになった。
例えば「窓際族」という名前のもとに、
年をとった社員や組織からはみ出た社員を飼い殺しにするやり方は
もはや生温いと感じられるようになってきた。
そのかわりに、様々なプレッシャーをかけたり、もっと露骨な嫌がらせを行って、
そういった社員を会社から追い出すようになったのだ。
「組織に社員を適合させる」ために用いられてきた「いじめ」は
もっと乱暴に「組織から社員を追い出す」ための「モラハラ」に姿を変えたのである。
最近ではマスコミなどを通じて、徐々にこの言葉が使われ始めている。
実際に起こった事件としては、ゲーム会社のセガが退職させようとした社員を
窓も電話もなく、外部との連絡が一切絶たれた部屋に閉じ込めたことがあった。
これは立派なモラハラである。
◆言葉の定義と労働界の実情◆
「職場における嫌がらせ」は世界中で見られる社会現象であり、
その国の実情に応じて様々な言葉で呼ばれている。
言葉が違えば、指し示される現象も微妙に違う。
英語の研究などでは「モビング」と「ブリング」が区別されずに使われているが
厳密に言えばこの二つは同じものではない。
言葉を正確に用いることは大切である。
言葉の違いは、それぞれの国における文化の違いや組織の違いに関係しているからだ。
その言葉がどんなふうに定義されているかによっては、
被害者の数が変わったり、統計的な研究の数字が意味を持たなくなる恐れがある。
ILOがEU諸国の「職場の暴力」について比較調査した時の数字を国別に見ると
そこに表れる数字には大きな違いがある。
これはいくつかの国々では、職場における嫌がらせや辱めが当たり前のようになっているので、
異常な暴力とは見なされないことを考慮する必要がある。
反対にセクハラやモラハラを受け入れがたいものと考えている国では、
そういった行動を暴力として指摘する可能性は高くなる。
そこで労働条件が厳しくなると、他の国の労働者より早く「暴力」だと感じる傾向にある。
同様に、これらの国々では労働者が組合員になる割合が高く、職場の問題は集団で解決しようとする。
ドイツや北欧諸国というのは、ヨーロッパ生活・労働条件改善団(ダブリン財団)のレイモンド=ピエール・ボダンが
「成熟した国々」と呼んだ国々である。
■被害に遭いやすい人■
◆年齢◆
専門家の実施したアンケートの結果、平均年齢は48歳。
年代別では46歳以上が全体の63%と圧倒的に多い。
これはそのくらいの年齢から、新しい技術についていけなかったり、成績の悪い人間が
「職場から追い出されていく」という事実と関連している。
数字を見ると25歳以下の人が一人もいないが、これは調査の方法によるものだと考えられている。
若い人達は郵便によるアンケートにはあまり答えないのが普通だからだ。
一般的に言って、若い人達が「精神的な嫌がらせ」を全く受けていないわけではない。
上下関係を利用した嫌がらせに限れば、むしろ一番の被害者であろうと見られている。
例えば、料理の世界。
この世界ではきちんと教わっていないのに難しい仕事をさせられて、先輩が助けることもないといったことが日常的に行われている。
18歳以下の徒弟修行中の若者386人を対象とした調査によると
侮辱を受けたことがある 6%
誇りを傷つけられたことがある 19%
ぞんざいな話し方をされたことがある 25%
その内6人が殴られたことがあると答えた。
他の調査においても、若者達は他の年代の人々よりも嫌がらせを受けている。
だが、他の年代に比べて嫌がらせを受けたとは感じていない。
これはモラハラがどれほど主観的なものかということを示している。
被害者の心の痛みを第三者が判断することはできないのである。
モラハラとの関連でどうして年齢がこれほど問題になるのか。
それは企業には「年齢による選別」が厳然と存在するからである。
企業は、年をとって給料が高い社員を、若く給料が安い社員に代えたいと思っている。
この傾向は新しいテクノロジーと結びついている分野ほど強い。
50歳以上の社員は柔軟性に乏しく、適応能力に欠けるという偏見がどこの企業にも根強く残っているからである。
確かに古株の社員が新しいテクノロジーについていきにくくなった。
そこで社員の再教育を行わず、企業はただ収益性だけを考え、古株の社員を放り出すのだ。
技術の革新は日進月歩で行われていく。
「君は新しい技術に適応できていない」と非難するのはたやすい。
時にはある程度の経験が必要な分野においてさえも、50歳以上の人間は会社を追い出される。
古株の社員の経験や能力を蔑ろにするのは会社にとっても労力の無駄遣いである。
それでも企業は年齢による線引きを行う。
会社に長く在籍している社員は、その会社の過去や歴史を体現している。
同時に失敗も体現している。
従って、株主達から「会社を変革してほしい」と頼まれた新しい経営者は、手っ取り早く結果を出すために、古株の社員を切る方法を取りがちである。
そういった状況では「経験」は高く評価されない。
上層部から見るとベテランの社員の経験は、組織が起動力を発揮して、
柔軟に対処するのを妨げる「抵抗の砦」のようなものなのである。
経験が評価されないのであれば、年配の社員にとって若い社員は脅威でしかなくなる。
こうして年配の社員は、自分の地位を不当に暴力的に若い社員に奪われることによって、
ついには労働意欲まで失ってしまうのである。
◆性別◆
各国の調査による数字の違いは、社会文化的な背景を理解しておかなければならない。
北欧やドイツは、男女の機会平等が徹底して考えられている社会である。
フランスなどラテン系の国にはまだまだ男性優位の考え方が残っている。
フランス、イタリア、スペイン、ラテン・アメリカの男性の中には
女性が職に就くとその分男性が失業すると本気で考えている人が多い。
調査によると、女性はモラハラの被害に遭うことが多いばかりではなく
被害の遭い方も男性とは違ってくる。
男性優位主義者や性差別主義者の標的となりやすい。
この点でモラハラとセクハラは密接に結びついている。
どちらのハラスメントも相手を自分が自由にできるモノだと考え、
相手に屈辱を与えることで共通している。
またこの種の攻撃はそれが攻撃だと
はっきりわからない形をとっている限り、続けられるものだが、
被害者から見ると抗議の声をあげにくいことを意味する。
「どことなく悪意を感じる」「性差別的な空気を感じる」などは攻撃だと特定しにくいのだ。
もっとも法学者の見解では、性に関して
「差別的で、悪意があり、侮辱的な」雰囲気を職場にもたらした場合も
セクハラに含める解釈になってきている。
いわゆる環境型セクシュアル・ハラスメントである。
職場で性差別的な行為をしたり、同僚の女性に対して性的に侮辱を加えたり、
不愉快な思いをさせることが重大な過失であると認められるようになってきている。
そういった環境型セクハラをセクハラの中に含めるのなら
モラハラとの境界はますます重なり合うことになる。
・セクハラとの関連
上司や同僚から言い寄られて、その誘いを断るとその女性社員は侮辱されたり、邪険にされたり、仲間外れにされたりと
様々な嫌がらせを受けることがある。
セクハラとモラハラが混合した嫌がらせは
どこの職場でも、社内におけるどんな対人関係においても起こり得る。
だが、他に証人でもいない限り、この誘いとモラハラを関連づけるのは難しい。
加害者はそんなことは普通認めないからだ。
そういったことをする男性は、職場で女性に言い寄ることをそれほど異常なことだとは思っていない。
周りの男性も特別なことだと考えていない場合が多い。
「男らしさ」の表れくらいにしか思っていないのだ。
このようなケースでは、セクハラはモラハラの陰に隠れて
あまり表に出てこないのが普通である。
被害者からするとモラハラの方が被害を訴えやすいからだ。
被害者がすでに加害者に屈して、性的関係を持っている場合はなおさらである。
・性差別との関連
女性に対するモラハラはセクハラとだけ結びついているわけではない。
「性差別」とも密接に結びついている。
女性は女性であるという理由だけで、
職場で仲間外れにされたり、仕事の邪魔をされたりなど嫌がらせを受けることがある。
こうした企業では男女平等など問題にされない。
◆いくつかの差別◆
「嫌がらせ」というのはどれも差別的な性格を持っている。
「違い」や「特殊性」を拒否する気持ちが行動に出たものが「嫌がらせ」だからだ。
差別はあからさまな形では表れず、モラハラの形を取ることが多い。
以下、いくつかの差別とモラハラの関係について述べてみよう。
・人種差別と宗教差別
法律では、人種や民族、国籍、宗教を理由とした差別を一切禁じられている。
だが、就職の時には差別がなかったように見えても、人員整理の時にはそれが表にあらわれることもある。
「誰を辞めさせるか」ということが、差別的な考えをもとに決められるのである。
またモラハラを使えば、企業が辞めさせたい人間を自分から辞めさせるように仕向けるのは
それほど難しいことではないのである。
・障害者や病人に対する差別
身体および精神的な障害者に対する差別行為はなかなか発見されにくい。
例えそういう行為があったとしても、加害者は頑なに否認するからだ。
また企業では一定の割合で障害者を雇用しなければならないが
その基準が守られていることは滅多にない。
障害者に対する「嫌がらせ」は障害を直接からかう形で行われることが多い。
障害のために実行不可能な仕事を言い付けるなど、巧妙な形で行われる場合もある。
こういった場合、産業医は障害者が適切な職場で働けるよう
間に入って企業に要求することができる。
だが、障害者の人は能力に欠けると思われるのを恐れ、自分からは不満を訴えないことが多い。
・性的なことに関する差別
この種の差別では、同性愛者が同僚からの集団的な嫌がらせを受けやすい。
ある市役所の助役が同性愛者であることを明かした途端、
電話や手紙による嫌がらせを受けたという例が報告されている。
・従業員代表や労働組合の代表に対する差別
企業においては、辞めさせたくても辞めさせられない社員にモラハラが行われることがある。
その意味からすれば、従業員代表や組合の代表は一番標的にされやすい。
こういった人々は労働監督局の許可がなければ解雇できないし
労働時間内に組合活動をすることが許されているので、企業の経営者からすると
「どうして会社に刃向かう人間に給料を払わなければいけない」
と、その存在を不愉快に思うことが少なくないからである。
こうして差別は、モラハラという形で私的に行われるのである。
■モラル・ハラスメントを分類する■
◆◆敵意ある言動◆◆
「モビング」の著者、ハイレンツ・レイマンは「職場における嫌がらせ」の指標として
いくつかの「敵意ある言動」をリストアップした。
このような研究は様々な文化圏の研究者によっても行われている。
そこで取り上げられる言動が文化によって違っているということはない。
研究者によって分類の仕方が違っているだけである。
以下、「敵意ある言動」を一番気づかれにくいものから、はっきりとわかるものまで
四つに分類されたものである。
〈敵意ある言動〉のリスト
1) 仕事に関して相手を傷つける言動
・命令した仕事しかさせない
・仕事に必要な情報を与えない
・相手の意見にことごとく反対する
・相手の仕事を必要以上に批判したり、不当に非難する
・電話やファクシミリ、コンピュータなど、仕事に必要な道具を取り上げる
・普通だったら任せる仕事を他の人にさせる
・絶えず新しい仕事をさせる
・相手の能力からすると簡単すぎる仕事をわざと選んでさせる
・相手の能力からすると難しすぎる仕事をわざと選んでさせる
・きちんとした理由のある休暇や遅刻、早退、助成金など、労働者として認められている権利を活用しにくくさせる
・昇進できないようにする
・意志に反して、危険な仕事をさせる
・相手の健康状態を考えた時、負担の大きすぎる仕事をさせる
・職務上、相手の失敗の責任になるような失敗を引き起こす
・わざと実行不可能な命令を与える
・産業医の専門意見を考慮に入れない
・わざと失敗させるように仕向ける
2) コミュニケーションを拒否して相手を孤立させる言動
・標的にした社員が話そうとすると、話をさえぎる
・相手に話し掛けない
・メモや手紙、メールなど書いたものだけで意志を伝える
・目も合わせないなど、あらゆるコンタクトを避ける
・仲間外れにする
・一緒にいても、他の人達だけに話し掛けて、存在を無視する
・標的にした社員と話すことを他の社員達に禁じる
・他の社員と話すのを許さない
・話し合いの要求に応じない
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