*同居*
+相川鈴奈はちょっとした理由で夏休み中、母親の友達の家に行くことになった。
はじめて物語を書きます。続くかも全然わかりませんが頑張って書こうと思います。
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*1
「大っきい家…」
鈴奈は綺麗な家を前に、小さく呟いた。
─今日から夏休み最後までここが私の家になるんだ。─
私の親が両方とも夏休み中ずっと仕事で居なくて私を1人家に残して置くわけにはいかないらしく、お母さんの友達の家に行くことになったのだ。
ボーッと立っていた鈴奈は軽く肩をたたかれた。
んっ??
後ろを振り向くと、少し背の高い女の人が立っていた。
「もしかして鈴奈ちゃん?」
「そうですけど…」
いきなり言われ、びっくりしながらも答えると女の人はすぐに家の中に鈴奈を入れてくれた。
*2
家に入ると、そこには3人の男の子が居た。3人は鈴奈を見るなり母親の瑞希に言った。
「その子誰…?」
「この前言ってたでしょ。夏休みの間、家に女の子が来るって」
「あぁこの子がそうなんだ。…っていうか何でそんなに急いでんの?」
瑞希は家に入ってからバタバタと準備をしていた。
「急に仕事が入っちゃって今日から行かないといけないから3人とも宜しくね!!」
そう言うと瑞希は家を出ていった。
「へっ…宜しくって…」
こうして突然鈴奈と3人の同居生活が始まった。
*3
鈴奈はあまりにも突然のことでびっくりしていると、その内の1人が鈴奈をイスに座らせた。
「とりあえず紹介するね。俺は霧原隼斗(ハヤト)隣が彼方(カナタ)で向こうが煌河(コウガ)。名前何て言うの?」
「相川鈴奈(スズナ)です。」
鈴奈がそう言うと、彼方は笑みを浮かべた。
「鈴奈だから鈴ちゃんって呼ぶね~」
「はい~」
*4
彼方と話していた鈴奈は煌河と目があい、あの…そう言いかけた時煌河は冷たく言った。
「早く帰れよ。」
煌河の言葉に鈴奈はガタッと席を立つと、玄関に行った。
「鈴ちゃん何処行くの!?」
「…家に帰ります」
「ダメだよ!!夏休みの間家で絶対預かるって決まってるし、雨降ってきてるじゃん」
隼斗は靴を履こうとしていた鈴奈の手を引っ張ると、リビングに連れ戻した。
「煌ちゃん、こんな子を雨の中帰らせて家で1人にさせちゃうの?風も強くなってきたし。」
煌河は鈴奈をじっと見たあと、隼斗に視線を戻した。
「勝手にしろ。」
「おぉー!!煌ちゃん優しい」
「黙っとけお前」
煌河はそう言うと2階に上っていった。
「煌ちゃんも本当はここに居てほしいんだよ。恥ずかしくて言えないだけでさ。」
─煌河さんも優しい人なんだなぁ…─
*5
これから夏休み最後まで霧原家にお世話になる鈴奈は2階の部屋を使わせてもらうことになった。
「じゃあ此処使ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
隼斗は頭を下げると、鈴奈の部屋を出た。
「さて、と。」
鈴奈は持って来た荷物を簡単に片付け、白いソファに腰かけた。
─いいなぁ…兄弟が居るって。─
鈴奈の目からは一筋の涙が頬を伝い、その光景を彼方は見てしまった。
*6
彼方は何も言わずに1階に下りてきた。
隼斗と煌河はテレビを見ていて、2人はいつもと様子が違う彼方にすぐ気が付いた。
「彼方、どうかしたのか?」
「何でもない…」
彼方はそのままイスに座ると、テーブルに頭を乗せ、鈴奈がどうして泣いていたのか気になった。
*7
夜になり、鈴奈がおりてくると下には彼方・煌河しか居なかった。「あれ…隼斗さんは??」
「隼斗、買い物行ったーそろそろ帰ってくると思うよ」
鈴奈にそう答えながらも彼方はさっきあったことが気になったが、聞かないことにした。
「ただいま。あ、鈴ちゃん下りてきてたんだ?」
「はい、これからお世話になるんで私もお手伝いしようと思って。」
手伝おうとする鈴奈のところへ煌河が来た。
「鈴、隼斗に迷惑かけるから手伝うな。」
煌河にはっきり言われた鈴奈は静かに2階に戻っていった。
*8
「鈴ちゃん、下りてこないね…」
煌河に言われてから上に行ったっきり鈴奈は1階にこなかった。
「煌ちゃんは何ですぐ鈴ちゃんをいじめちゃうかなぁ。」
彼方に言われ、煌河は黙りこんだ。
「煌ちゃん?どしたの?」
「…うっせぇ。彼方うざ」
煌河は文句を言いながら階段をのぼっていった。
*9
翌朝。
鈴奈は足音も立てずに下におりてきた。
「鈴ちゃんおはよ…」
昨日のことを引きずっているのか遠慮がちに言う隼斗と彼方に鈴奈は何事もなかった様に笑顔を見せた。
「おはようございます。隼斗さん彼方さん煌河さん。」
鈴奈は3人のカップに飲み物が入ってないのに気付いた。
「あっおかわりいりますか?」
「う、うん。」
煌河も何も言わなかったがすっとカップを鈴奈の前に出した。
鈴奈は煌河のカップを取ると飲み物を注ぎ、彼方の隣に座った。
「あ゙ー眠っ!!」
彼方は目をこすっていた。
「彼方さんちゃんと寝てないんじゃないですか?」
「うんー。昨日遅くまで勉強してたから」
─夏休みはじまったばっかりなのにすごい─
驚いている鈴奈に彼方は突然聞いた。
「そういえば鈴ちゃんって何年生??」
「高校1年生です。」
「えっ!?…っていうことは煌ちゃんと同じ学年じゃん。」
─私と煌河さん、同じ学年なんだ…─
「ちなみに俺は高2で、隼斗が高3。」
「隼斗さんも彼方さんも高校生なんですか!?もう少し歳上かと思ってましたー」
鈴奈はそう言ってから急に真面目な顔をした。
「彼方さん、ちょっとでも寝て下さい。じゃないと大変ですから!!」
彼方は頷くとリビングを出ていった。
*10
彼方はパリーンという皿が割れる音で目を覚ました。
「鈴、何やってんだよ!」だから昨日やるなって言ったのに。」
彼方が急いで行くと、鈴奈は割れた皿の破片を集めていた。
「彼方さんごめんなさい、起こしちゃって。」
「いや全然いいんだけど…って鈴ちゃん血、出てるじゃん!!」
鈴奈の指からは破片で切ったのか血が出ていたのだが、鈴奈は笑って気にせずに、片付けを続けていた。
「鈴ちゃんこっち来て」彼方は鈴奈をソファに座らせると、手当てをした。
「こんな傷、すぐ治りますよ?」
「そういうのほっとけないんだよ。あとは俺がこれ片付けるから。」
─彼方さん…。─
割れた皿の片付けをしている彼方を見ていた鈴奈に、煌河は大きく溜め息をついた。
「ったく鈴ってホント迷惑な女だよな。こっちまで大変な思いしなきゃいけねぇし」
煌河の言葉に鈴奈はまた黙ってしまった。
*11
それから数日が経ったが、煌河はまだ鈴奈に対する態度が冷たかった。
「煌ちゃん、少しは鈴ちゃんに優しくしたら?」
「はっ!?何でこいつに優しくしねぇといけないんだよ。大体、俺はこの女が大っ嫌いだ。」
煌河が言った言葉に鈴奈はとうとう怒った。
「ここに来た時から人に文句ばっかり!!私、煌河さんに何もしてないのに!!」
外では大雨になっていたが鈴奈は家を飛び出した。
「マジであいつ嫌い。」
煌河はそう言って2階に行った。
*12
鈴奈は大雨の中、公園のベンチに座っていた。雨で着ていた服も髪も濡れていたが鈴奈にはそんなことはどうでもよくなっていた。
「鈴ちゃん、帰って来ない…」
あれからもう2時間経ち、時刻は22:00になっていて、2階にあがった煌河もさすがに心配になり、下へおりてきていた。
「…鈴ちゃんさ、我慢してるとこあったよ。」
「…それって俺が鈴に酷いことばっか言ったことだよなー。」
彼方はうんと言ってから更に鈴奈がここに来た時に自分が見たのを2人に話すことにした。
「それだけじゃないよ」
「えっ?」
2人は彼方が言った言葉に驚いていた。
「それだけじゃないって彼方、何か知ってんのか…?」
「鈴ちゃんがここに来た日、俺なんとなく部屋覗いてみたんだよ。そしたら泣いてた。俺、あれは煌ちゃんのせいじゃない気がするんだ。」
「じゃあ鈴ちゃんには何かあるってことか…とにかく早く鈴ちゃん探しに行かねぇと!!」
3人は鈴奈を探しに家を出ていった。
*13
─このままいなくなれないかな…─
鈴奈は煌河に言い過ぎたのを後悔しながらそんなことを考えていたが、この間にも雨は強くなってきていて鈴奈の体の温かさをどんどん奪っていった。
でも今の鈴奈には寒くもなんとも感じられなかった。
「鈴奈!!」
そう自分の名前を呼ばれ、思わずベンチを立つと、鈴奈は抱きしめられた。
─誰…?─
「鈴ちゃん、ここに居たんだー…」
「彼…方さん…?」
「うん。」
彼方の声に安心し、話そうと思った途端、鈴奈は急に頭が痛くなり、その場にしゃがみ込んだ。
「鈴ちゃん!!大丈夫!?」
彼方はそう言って鈴奈を抱きかかえると急いで公園をあとにした。
*14
家に着くと、鈴奈はふらふらしながらもお風呂に入ると部屋まで隼斗に運んでもらった。
「ごめんなさい迷惑かけちゃって。」
「ううん。あ、俺ちょっと下行って片付けてくるからちゃんと寝ててね」
隼斗は部屋を出ると静かに下に行った。
*15
隼斗が部屋を出てからすぐに煌河が入ってきて、煌河はいきなり鈴奈の髪を撫でた。
「ごめん。俺、鈴に酷いこと言い過ぎた。」
「私の方こそ煌河さんにあんな言っちゃって…」
「鈴は悪くないから。それより早く風邪治せよ」
鈴奈は頷くと、そのまま目を瞑った。
*16
「んっ…」
鈴奈が次の朝、目を覚ますと煌河がベッドに頭を乗せて寝ていた。
─煌河さん、ずっと居てくれたのかな…─
鈴奈はベッドから起きると、煌河に布団をかけ、服を着替えるとリビングに行った。
「おはようございます。隼斗さん、私手伝います」
「鈴ちゃんは治りきってないからダーメ。そこに座ってて」
隼斗は鈴奈をイスに座らせると、またキッチンに戻っていった。
じっと座っている鈴奈の隣に彼方は座ると、鈴奈の額に手を当てた。
「熱下がってないねー。鈴ちゃん、今日は絶対無理しないで。」
「はい。…彼方さん、昨日はありがとうございました。」
彼方は笑うと鈴奈の頬にそっと触れた。
「鈴ちゃんてホント、可愛いよね」
─えっ…?─
鈴奈がびっくりしていると煌河がおりてきた。
「煌河さんっ!!ずっと居てくれたんですね。」
「あーうん。鈴、看病してたんだけど俺まで寝てた。」
煌河はまだ眠そうな顔をしていた。
─私のせいで煌河さんあんまり寝てないんじゃ…─
鈴奈が心配そうな顔で見ているのに煌河は気付いた。
「鈴、俺ちゃんと寝たから。」
「そうですかーそれなら良かったです」
鈴奈は煌河に笑ってみせた。
*17
「鈴ちゃん、ちょっと話あるんだけど。」
朝食を食べ終わり、2階に行こうとした鈴奈を隼斗が引き止めた。
─何だろ??─
鈴奈は隼斗のところに行き、イスに座ると、彼方が聞いた。
「この家に来た日、鈴ちゃん部屋で泣いてたよね?何で泣いてたの?」
─見られてたんだ…─
鈴奈は彼方の真剣な目に、答えるしかなかった。
「私、兄弟っていうのが羨ましかったんです。だからいいなって思って…」
鈴奈が答えると、隼斗は鈴奈の目を見た。
「本当にそれだけ?他に理由があったんじゃない?」
─この3人には隠せない…─
鈴奈は頷き、ゆっくりと言った。
「私にはお姉ちゃんが居ました。今生きてたら高2です。」
「生きてたらってどういうこと…?」
隼斗が聞いたが、鈴奈はその前にと話をとめた。
「私も聞きたいんですけど、どうして煌河さんは私にいろいろ言ってきたんですか?」
*18
煌河は何も言わずにただ黙っていたが、鈴奈は頼んだ。
「お願いします、教えて下さい!!私どうしても知りたいんです!!」
鈴奈の必死さに煌河は口を開いた。
「鈴が、俺の彼女だった奴と似てて、もう思い出したくなかったから冷たくしたんだよ。」
─私が煌河さんの彼女だった人と…?─
「彼女だった奴って煌河さん、別れたんですか?」
「いいや、彼奴は事故で2年前に亡くなった。…俺も話したんだから鈴も話せよ。お前の姉ちゃんはどうしたんだよ?」
今度は鈴奈が黙っていた。
「鈴ちゃん、どした?」
「…偶然ですね。私のお姉ちゃんも2年前に事故で亡くなったんです。煌河さんの彼女の名前何て言うんですか?」
「遥香(ハルカ)」
その名前を聞いた瞬間、鈴奈は息をのんだ。
それに3人は気付き、隼斗が言った。
「どうしたの?鈴ちゃん?」
*19
「煌河さん、彼女の名前って相川遥香じゃないですか…?」
「そうだけど何で鈴が知ってんだよ?」
─やっぱりそうだ…─
「煌河さんまだ気付かないんですか…?私の名前…、相川鈴奈ですよ」
この言葉に3人とも気付いた。
「もしかして遥香は鈴の…」
「お姉ちゃんです。」
鈴奈はそれだけ言うと2階に行ってしまい、残された3人も驚きを隠せなかった。
「鈴ちゃんが遥香の妹…」
「まさかこんなことで会うなんてねー。」
*20
鈴奈は部屋に戻り、ベッドに顔を伏せた。
─煌河さんお姉ちゃんのこと思い出したくないのに私が居たら思い出させちゃうじゃん─
ガチャ…部屋のドアが開き、煌河が入ってきた。
「鈴。俺…」
鈴奈は煌河の言葉を遮った。
「お姉ちゃんのこと、思い出させてごめんなさい。私荷物まとめたら帰ります。」
そう言って荷物をまとめようとする鈴奈を、煌河は抱きしめた。
─煌河さん…?─
「帰らなくていい。…俺、遥香のことは思い出したくないけど、鈴奈と遥香は違うからだからここに居ろー。」
「煌河…さん」
鈴奈は煌河に抱きしめられたまま泣いていた。
*21
煌河は抱きしめていた腕をほどくと、鈴奈と同じくらいの目線になった。
「鈴、お前まだ熱あるから寝とけ。」
鈴奈は煌河に言われた通り、ベッドに入ると目を閉じ、やがて小さな寝息を立てて眠りはじめた。
「あれ。鈴ちゃんは?」
「寝てる。」
ソファに座る煌河の隙を見て、彼方は鈴奈の部屋に行こうとした。
「彼方、鈴奈の部屋には行くなよ。」
「何で~?いいじゃん。鈴ちゃんの部屋に居たいんだけど!!」
煌河は彼方の方を振り返った。
「いいから鈴の部屋には行くな。」
「何でだよ…俺にも鈴奈のとこに行かせろよ。煌河ばっか鈴奈のとこにいんじゃんか!!」
彼方は大声で言うと、自分の部屋に戻っていった。
「彼方…?」
*22
鈴奈が起きた頃には外はもう暗くなりかけていた。
─寝過ぎちゃった…─
階段をおりると、そこには隼斗と煌河しかいなかった。
「彼方さん居ないですけどどうしたんですか?」
「自分の部屋に戻ってからずっと出てこないんだよね…」
隼斗からそれを聞いた鈴奈は階段をのぼっていった。
*23
「彼方さん…?」
鈴奈が部屋に入ると、彼方はベッドで寝ていた。
─寝てたんだ…─
鈴奈が部屋を出ようとすると彼方は腕を掴んだ。
「行くな…少しだけでいいから側に居て。」
いつもは笑って言う彼方が今日は違っていた。
「彼方さん、どうかしたんですか?いつもと何か違いますけど。」
「何もないよ。ただ今日は側に居てほしいんだ…」
彼方は鈴奈の肩に顔をうずくめた。
鈴奈はそっと彼方を撫でることしか出来なかった。
*24
「鈴ちゃん、ありがと。そろそろ下行かないと隼斗と煌ちゃんに何言われるかわかんないから行こっか。」
「はいっ!!」
彼方は笑顔で言う鈴奈を下に連れていった。
「隼斗さん煌河さんー!!彼方さん寝てましたー」
下におりるなり、鈴奈はソファに腰かけると2人に言った。
「あ、ホント?鈴ちゃんありがと。」
「いえっ。あっ隼斗さん、私結構気分よくなったんで手伝います」
鈴奈はそう言ってキッチンに行こうとソファを立った瞬間、バタンと倒れてしまった。
*25
「いやぁぁっ!!!」
鈴奈は大きな声をあげ、ベッドから体を起こした。
─夢か…。─
ふっと溜め息をつく。
この時期になるといつもあの日の出来事が夢に出てくるー。
─私まだ信じられてないのかな…お姉ちゃんが亡くなったこと─
「鈴ちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫です。びっくりさせてごめんなさい。あの…3人ともどうしてここに?」
滅多に鈴奈の部屋に来ない隼斗も居て、鈴奈は不思議に思った。
「どうしてって心配だからに決まってんじゃん。昨日部屋に運ぶ時、鈴ちゃん泣いてたし」
「泣いてた…?」
そんなの覚えてない。でも何で泣いたんだろ…鈴奈が考えていると煌河は言った。
「なぁ、鈴。今どうしたんだよ?大っきい声出してたけど」
「何でもないです。この時期は私いつもこんな感じなんで。」
─煌河さんにあの日の出来事が夢に出てきたなんて言えるわけないよ─
「何でもないわけないんだけど?マジでどうした?」
鈴奈を見る煌河はなにもかもわかっているようで、鈴奈は怖かった。
─そんなの…─
「そんなの煌河さんに言えるわけないです…」
鈴奈は夏休みの課題を持つと、部屋を出た。
*26
─とりあえず課題片付けなきゃ─
鈴奈は持ってきたものを静かにやりはじめた。
「鈴ちゃんが課題するなら俺達もやる。」
鈴奈と同じように隼斗達も課題を持ってきていて、鈴奈の隣には煌河が座った。
「鈴、あんまり問題解けてない。もしかしてわかんねぇのー?」
煌河は意地悪そうな目で言った。
「…これくらいわかります!!」
鈴奈はそう煌河に言ったが、本当はわからなかった。
─わかんない…少しも解けないよぉ─
何度もペンが止まる鈴奈を見て隼斗と彼方はくすっと笑っていた。
「隼斗さん彼方さん、さっきから私のこと笑ってますよね!?」
隼斗は笑いを抑えながら言った。
「笑ってないよー」
「ウソ!!今も笑ってるじゃないですかぁ!!」
煌河は鈴奈のやっていた課題を見た瞬間、2人と一緒になって笑いだした。
「鈴、できるつったけど進んでねぇじゃんー」
─煌河さんが笑ってる…─
鈴奈は煌河が笑っているところを見れて嬉しかったが、すぐに言った。
「3人して笑って…もうこんなの飛んでいっちゃえ!!」
鈴奈は課題をばらまくと庭に出た。
*27
「あらら。鈴ちゃん、すねちゃった。隼斗が最初に笑うからー」
「俺かよ!?彼方も笑ってただろ」
隼斗はそう言いながらも鈴奈の横に来た。
「鈴ちゃん、俺が教えてあげるからこっち来よ?」
「はい!!じゃあ隼斗さんに教えてもらおっ」
鈴奈は彼方と席をかわるとばらまいた課題を戻した。
「鈴ちゃん、どこがわかんないの?」
「全部です」
鈴奈は笑顔で言っていたが、3人はびっくりしていた。
「全部…!?」
*28
驚いていた3人に鈴奈から笑顔が消えた。
「…だってわかんないんだもん。」
下を向いて言う鈴奈に隼斗は慌てて言った。
「ご、ごめん!!鈴ちゃん!!」
「…わかんないところ教えて下さい。」
鈴奈はじっと隼斗を見ていた。
「あ、うん。じゃあまずー。」
隼斗はイスに座り直すと鈴奈に教えていった。
*29
「とりあえず今日はここまでね」
─やっと終わった…─
鈴奈はテーブルに顔を乗せていると、隼斗が鈴奈の髪をくしゃくしゃにした。
「隼斗さんっ!!何するんですかぁ!!」
「ちゃんと頑張ってたから偉いと思って」
隼斗は悪戯っぽく笑って、また髪をくしゃくしゃにした。
*30
夕方になり、鈴奈が隼斗と夕食の準備をしていると携帯が鳴った。
「鈴ちゃん、携帯鳴ってるよー?」
「あ、はーい」
鈴奈はテーブルに置いてあった携帯を取ると電話の相手はお母さんで、うるさいくらい元気な声が聞こえた。
「鈴奈?お母さん仕事、明後日で終わるから明後日には家に帰って来てね。それじゃ」
ツーツー…と電話はきれ、鈴奈は思わず携帯を床に落とした。
─明後日…?夏休み中ずっと仕事じゃなかったの…?─
「鈴ちゃん、どした?」
3人は鈴奈の顔を見ていた。
─隠そう。隠しとけばバレない!!─
「何でも…ないです。」
その場に居られなくなった鈴奈は自分の部屋に戻った。
「鈴ちゃんどうしたんだろ…」
*31
翌日ー。
「鈴ちゃん今日、花火大会あるから行こ~」
─花火…今年はまだ見てないなぁ─
「行きますっ!!」
時間はあっという間に過ぎ、夜になった。
「鈴、準備できたー?」
鈴奈は返事をして階段を下りると彼方は不満そうな顔をした。
「え~鈴ちゃん浴衣じゃないの~!?」
「だって浴衣ないじゃないですかぁ」
そんな会話をしながら4人は暗い道を歩いていた。
*32
「ここでいっか。」
4人は人が少ないところを選んだ。
しばらくすると大きな音を立て、花火が空にあがった。
「綺麗じゃんー。」
横に座って花火を見ている3人を、鈴奈は見られずにはいられなかった。
─自分の家に帰りたくないよ…─
「鈴ちゃん、花火見ないの?」
隼斗は鈴奈が花火を見ていないのに気付いたのか鈴奈の方を向いていた。
「いえっ。ちゃんと見てますよ!!」
「そう?それならいいけど。」
─本当はちょっとも見れてない。─
結局、鈴奈はまともに花火を見ることなく家に帰った。
*33
─お母さん帰って来てるかな─
鈴奈は携帯を握りしめソファに座っていた。
ふと時計を見ると時刻は18:00を指していて、するとピーンポーンとチャイムが鳴り、隼斗が玄関に行った。
─誰だろ…?─
そう思っていると、聞いたことのある声がした。
「鈴奈!!」
─あっ…─
「お母さん…」
「何で帰って来ないの!昨日言ったでしょ!!」
ちらっと後ろを見ると3人は鈴奈をじっと見ていた。
「今日帰るんだったのか?」
「…。」
鈴奈が何も言わずにいると、かわりに千尋が言った。
「もしかして鈴奈から聞いてません…?」
3人は揃って頷いた。
「どうして言わないの!!お世話になったんだからそれくらい言うのが当たり前でしょ!!」
─どうしてって…そんなの決まってる─
千尋が言った言葉に鈴奈は泣き出した。
*34
突然泣き出した鈴奈に千尋も3人もびっくりしていた。
「…何で言わないのってここに居たいからに決まってるじゃん!!」
遥香が居なくなってから1度も文句を言ったことのなかった鈴奈が文句を言っているのに千尋は更にびっくりしていたが、すぐに言った。
「あんたが言ってることはただのわがまま。だから家に帰るわよ」
「イヤ!!帰りたくない!!」
頭を振った鈴奈に3人は冷たかった。
「鈴ちゃん、帰って。」
「鈴、ここはお前の家じゃない」
それを聞いた鈴奈は泣きながら部屋に行き、荷物を鞄につめると1階に下りてきた。
「鈴奈、行くわよ」
「うん。…お世話になりました」
軽く頭を下げると鈴奈は千尋と2人、霧原家をあとにした。
─これで終わりなんだ…─
そう思うと鈴奈はまた泣きそうになった。
*35
自分の家に帰ってから1週間が経ったが、鈴奈はまだ3人のことを考えていた。
─どうしてるのかな。隼斗さんも彼方さんも煌河さんも…─
ボーッとしながら窓の外を見ると、隣には新しい家が建っていた。
「お母さん、隣新しい家建ってる。」
「そうみたいね。明日来るみたいよ」
「そっか…」
─誰が住むのかな…あの家。─
*36
「会いたいよ…3人に。」
「あら~そんなに隼斗君達が気に入ったの~?まさか、あの3人の内の誰かが…」
千尋はそれ以上言わなかったが、笑みを浮かべていた。
「ち、違うよ!!多分…」
ホントは私自身もよくわからなかった。お母さんが言いかけたように私はあの3人の内の誰かのことが…
チャイムが鳴り、鈴奈がドアを開けるとそこには…
*最終話
「隼斗さん、彼方さん、煌河さん!?」
─そんなわけない…─
鈴奈は信じられなくてドアをバタンと閉め、もう1度開けたが、やっぱりそこには3人と瑞希が居た。
「何でここに…」
呆然としている鈴奈に隼斗が抱きしめた。
─えっ…!?─
抱きしめられている鈴奈よりも彼方や煌河、瑞希、そして千尋の方が驚いていた。
「隼斗、お前…」
隼斗は腕を放すと鈴奈に言った。
「隣に引っ越して来たんでこれからもよろしくね。」
「…えーっ!?」
驚いている鈴奈に千尋も驚きながらも鈴奈の耳元で言った。
「隼斗君はきっと鈴奈が好きかもね。もしかしたら彼方君と煌河君も…」
「違ーう!!」
こうして隣には霧原家が引っ越して来て、同居生活から隣人としての生活が始まったのでした。
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