キミに触れたら

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レンカ( 1fuT )
08/02/14 19:14(更新日時)

これは"キミとワタシ"という作品から思いついた、フィクションの物語です…


下手ですが、ご意見ご感想お待ちしています🙇

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No.597343 07/07/31 15:03(スレ作成日時)

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No.151 07/10/12 23:46
レンカ ( 1fuT )

~127~
釣り針に餌を付け、川に投げ込む。
小型ボートが揺れる音と、風で葉がこすれる音…蝉の鳴き声……これだけなら、凄く癒されるんだけど…。

「見ろよシズカ!この餌きもち悪いぞ!!」

「ヤ~!!そんなの触れなァぃ!!」

離れてる位置にいるはずなのに…2人の声はよく響く…。


「あ~ぁ……釣りの何が楽しいか分かんない…。玲は釣り好き?」

「…嫌いじゃないよ。唯は嫌いだろ?」

「大ッ嫌い。」

「…だと思った。」

「なに?それどういう意味よ?!」

「そのまんま…。こんなジッとしてる作業、唯は嫌いそうだからな。」


近くの木に蝉がとまり、鳴き声が大きく響く…。


「…嫌いじゃないよ、キミとなら。」

「………クサい事言うなよ。」

「本当の事だもん…。」

2度もこの川で、キミとキスした…。その事が…私に勇気を与えてくれる……

「ねぇ…私の事、好き??」

「……はっ???」


少し戸惑うキミ……私は見つめたまま、キミに近付く…。

2人の距離が…鼻がかする位まで近付いた時
何かが落ちた様な、大きな水音と…
『由さんっ!!』
って叫び声…

気がつけばキミも…水音と共に居なくなってた……。

No.152 07/10/13 13:15
レンカ ( 1fuT )

~128~
つい…玲を庇ってしまった……。でも、あのまま聞いてるだけなんて…私には出来ない。大好きな玲…その存在を、あんな風に言われて……私は許せない。


「良い天気ですね、由さん。…水が気持ち良いですよ。」


斜め前の方に、玲と唯ちゃんが乗ったボート…。……仲良さそうに話してる…。


「そんなに気になるなら、話しかけたらどうですか?」

「えっ??」

「やっと返事してくれましたね。俺の言葉が耳に入らない位……ずっと見てるでしょ、玲君の事………。」

「ッッ!!!私は別に…!!!!」


焦った私が立ち上がる…揺れるボート……落ちて行く瞬間は、凄くゆっくりで…私は意外と冷静だった。

でも私…泳げないんだっけ……。



水の中…沈んでいく体……息ができない……私…死ぬの??






…怖いよ………そんなの……嫌だよ………もう一度…あなたに触れたかった……………玲………。






薄れていく意識の中……私の手を誰かが握る…。

No.153 07/10/13 13:16
レンカ ( 1fuT )

~129~
《由!!!!》

沈んでいく彼女の手を握り、抱き寄せる…。
懐かしい感触に浸ってる余裕は無い……俺は急いで、水面に向かって泳いだ。

「玲!!!!」

「由さん!!」

唯と川本の声……そんなの、どうだっていい。

「由?!大丈夫か?」

「………れ…い…??」

「良かった…もう大丈夫だよ…。」

由の腕に力が入り、俺を抱き締める……。

「玲…玲っ………」


耳元で由が泣く…俺は浅瀬まで泳ぎ、彼女を抱えた。

「医務室まで運んでくる!!皆は続けててくれ!!」

「玲かっこ良いッッ!!!!」

「進!!!」


野次を無視して、俺は歩いた……。
体が弱かった俺の為に、父さんが作ってくれた…医務室に向かって……。

No.154 07/10/13 13:17
レンカ ( 1fuT )

~130~
由をベットに座らせ、棚から出したタオルをかける……。

「大丈夫か?気分…悪くない??」

「…少し水飲んだだけ……大丈夫。」

「そう……とりあえず、服脱ぎなよ…風邪ひくだろ?」

俺も着ていたシャツを脱ぎ、タオルを被る。


「……見ないでね?」

「…分かってるよ。」


背を向け髪を拭く……一時はどうなるかと思ったけど、なんとか元気そうだ…。


「…良いよ、こっち向いて。」

「ん……もう一枚、タオルやるよ。」


振り向くと、由は少し恥ずかしそうに…ベットに横になってた。

白いシーツから見える肩に…思わず視線が行き、俺は慌てて下を向く…。

「はい…髪……乾かしなよ…。」

「ありがと………。…もう私……大丈夫だから…帰っていいよ?唯ちゃんの所…」

「まだ顔色悪いし…ここにいるよ…………。」


「……変わってないね………そうやって…優しくされると…………」

「……されると…??」


見つめ返した俺の視線を…由はそらす………。

No.155 07/10/13 13:55
レンカ ( 1fuT )

~131~
「……玲…少し痩せたね……ちゃんと食べてる??」

「由こそ痩せたよ…。前から細かったのに、それ以上痩せてどうすんだよ?もっと食べなきゃ…」

さっき見た肩…鎖骨の辺りや頬も、前より細い……。


「…"重い"って言ったくせに……。」

「…あれはっ!!!……階段が悪い……。」

「ふふっ…ほんと、変わらないな……。」


由の方こそ…変わってない……あの頃と同じ…心地良い声…………。


しばらく…部屋は無言だった……目のやり場に困った俺は、うつむいたまま…髪を乾かす…。


……その時………俺の手に由が触れる…



「…ごめんね…玲……私無理だよ…あなたの事…忘れられない………。」

あの時と同じ……由の寂しそうな瞳…俺は………俺だって……

「忘れられなかったのは……俺の方だよ………由…」



由の頬に触れ……水に濡れて冷たくなった唇に…俺はそのまま…唇を重ねた……。

由が俺を抱き締める……もう二度と…離れないよう…。





静寂に包まれた医務室は、まるで時間が止まったみたいだった………。

世界には……俺と由しかいないんじゃないかって……そう…錯覚するほどに………。

No.156 07/10/13 16:37
レンカ ( 1fuT )

~132~
私はしばらく、キミが消えた水面を見ていた…。
釣竿が一本しかない……キミと一緒に、落ちたみたいだ…。



あの時……キミが消える瞬間
『由…泳げないのに…』
って、聞こえた気がする……。


由さんが"ユイ"だっていう私の勘は、当たったみたい……。
当たって欲しくないって、思えば思うほど……それは当たってしまう…。



キミが"由"を抱えて歩いて行く……"由"もしっかり、キミを抱き締めて………。


私は……その光景を…ただ"綺麗"と思った……。


何でかな?私……分かんないよ………。


「相川?大丈夫か??」

でも今、分かってる事は……


「ついて来て、先生……私…確かめなきゃいけないの。」

「………相川……。」




私はボートを岸まで漕ぎ、医務室に向かって走った……。


夏の日差しが突き刺さるほど暑い中…キミの元へと…………。

No.157 07/10/14 08:56
レンカ ( 1fuT )

~133~
冷たかった体に……熱がこもっていく…。


「由…………俺………」


その時、廊下をバタバタと走る足音が近付いてくる……。

俺は急いで由の体から離れ、布団を掛け直す。


「玲ッ!!!!!」


予想通り…やって来たのは唯だった。……後ろには川本もいる…。


「……どうした?」

「えっ……いや…由さん大丈夫か…気になって………。」

「見ての通り…眠ってるよ………。」

「……そう…。玲も着替えなきゃね。行こう?」

「……ああ。じゃあ川本さん…後は頼みます。」


俺は…濡れたままのシャツを拾う。

「そうだ……彼女の着替え、友達の人に頼んで貰えます?」

「分かった。琉梨さんに聞いてみるよ…部屋にいるはずだから。」

「……じゃあ行こうか…唯。」


「うん。」



キャンプといってもテントで寝るわけじゃなく…俺と唯は、荷物が置いてある部屋に向かった。

合宿で泊まった部屋と…同じ部屋に………。

No.158 07/10/14 14:34
レンカ ( 1fuT )

~134~
2人の足音が小さくなるのを待ってから、川本は口を開いた。

「本当は…起きてるんでしょう?」

「……何で分かったんです?」

由は目を開け、天井を見つめたまま問いかける。

「……見えたから…………。」

「………………」

「俺……2人の関係に…口出し…したいとかじゃなくて…………ただ……相川の事が………。」

「ごめんなさい………」

「…………琉梨さん…呼んできます……。」




扉が閉まり……啓二さんは出て行った。…結局、啓二さんと琉梨には……悪い事したな…………。



今も残る、玲の香りと感触……。

唯ちゃんの元へ帰そう……って…あれだけ頑張ったのに……。

たった一瞬で、その決心が揺らいで…壊れるなんて………私は……どうしたら良いんだろう……。

No.159 07/10/14 20:01
レンカ ( 1fuT )

~135~
唯が鍵を開けると、その部屋は…少し色褪せて見えた……。


「軽くシャワー浴びてくる……。」

「………待ってるね…」

真顔のまま…唯はベットに座る……。
俺は何となく、嫌な予感がした………唯が真顔になった時は、ろくな事無いから。



きっと…由の事だろう……。でも俺は………ようやく決心がついた……。

俺がする事は、間違ってるかもしれない………けど…………俺は……自分の気持ちを…はっきりと確信したんだ……………





…俺が好きなのは……唯じゃない…由だって………………。

No.160 07/10/14 20:02
レンカ ( 1fuT )

~136~
窓から見える景色は…5年前と何も変わってない……。

私の心だって……変わってないのに…………。


私は結局、5年前から成長して無い。皆が前へ…前へ進んで行く中……私は1人、その場に残ってた……。

月日が流れていく中で……私は1人…過去を見ていた………過去の中にあるキミを……。

キミも同じように、立ち止まったままだって……そう思ってたんだけど…



…………違ったみたい。

No.161 07/10/14 20:46
レンカ ( 1fuT )

~137~
キミがシャワーを浴び終わり、洗面所から出てくる…。

「ねぇ…私に言う事…あるでしょ?」

「ある…ね…」

心臓が…ビクッて痛くなる、キミの冷たい目…久しぶりに見たから…。

「……私さ…本当は毎晩、起きてたんだよ?キミが寝るまで…不安で眠れなかった。"ユイ"って女の所へ…行っちゃうんじゃないかって…。」

キミの表情が、一瞬だけ…動揺して見えた。

「唯…ずっと?ずっと起きてたのか??」

「…うん。私は……怖くて、本当に怖くて…聞けなかったよ………"ユイって誰なの"って…。まさか…こんな形で会うとは、思ってなかったけど…。」

「…………。」

「知らなかったでしょ?私の気持ちなんて…。だっていつも、由の事考えてたもんね?!」

「……………。」

「…何で?……何で返事なんか?他に好きな女いるのに!!???それならいらなかった!!"待ってる"なんて返事も、全部!!……あのまま…2度と会わない方が…良かったのに……。何でよ?!!ねぇッッッ!!!!!!!」

「唯……俺は…」


もう良い…聞きたくないよ……由が好きなら、それは全部言い訳でしょ?
そんな言葉…欲しくないよ
私が欲しかったのは…ただ一言……それだけだったのに…

No.162 07/10/16 21:29
レンカ ( 1fuT )

~138~
「唯……聞いてくれ…」

「嫌………もう聞きたく無いッ!!出てってよ!!!」

「こんな別れ方……それで…良いのか?」

「…すぐ……"別れる"って結論にいくんだね………キミ本当は…今すぐ別れたいんでしょう?」

「違う!!…………俺はっ………。」

泣き崩れたままの唯……その震えた肩に…俺は触れたくても………触れられない……。

「……もう二度と…私の前に現れないで。……それがキミの…望んでる事なら………。」


「唯ッ……違うんだよ!!俺は……………」



俺が出来るのは…言葉を濁す事だけで………。だって本当は、別れたいって思ってる…。でも……こんな形で別れるのは………嫌だ…。

「……私が…何かした??キミが……嫌がる…ようなこと…嫌われるような…こと……したの?」

「…嫌いになってなんか…………」

「じゃあ何で?!キミの頭の中にあるのは"別れる"って結論なの??……それ以外に…道は無いの………?」

「………………」

「私…別れる為に、キミに手紙書いたんじゃない…………。」

No.163 07/10/17 12:47
レンカ ( 1fuT )

~139~
「俺は……本当に唯が好きだった…。………でも…………あいつに会って………あいつ……由は…俺が居なきゃ駄目なんだ。俺が側に居なきゃ…………。」

それは……私だって同じ…キミが居なきゃ………私は1人で…歩いていけない……キミが居なきゃ…ずっと過去を見たまま、前に進めない……。

「守りたいんだ……由を…………由…だけを。お前は……大丈夫だよ…俺が居なくたって……唯なら、ちゃんとやっていける。」

「分かってない………キミは私の事…………全然分かってない!!!!」

私が……どんな気持ちで…キミと別れた5年間を過ごしてきたか………。
キミとの約束……その為だけに、私は必死で勉強して…………。


「強い人間なんていない………でも…唯と俺は……合わないんだよ?唯にはもっと…しっかりした男が合うんだ……。俺みたいな…………奴じゃ…………」

「私は玲が良い!!玲じゃなきゃ嫌ッ!!!」

「……………唯……」

「キミが合わないって思ってるなら……全部直すよ?!キミの嫌いな所…直すから…………お願い……もう……1人にしないで…………」


無理やりキミに抱き付く……冷たい体温が、私を余計…不安にした……。

No.164 07/10/17 12:48
レンカ ( 1fuT )

~140~
相川の声が、廊下まで響いてきた…………。

俺はソッと扉に近付き、耳をあてる…。


玲君と相川の会話……聞いている方も辛くなる。
それと同時に、俺の中で怒りが込み上げてきた……。

………彼氏のくせに…相川の事、全然わかって無い玲君に……。


喧嘩の原因は…よくある内容かもしれない……だけど………こんなに感情的な相川は初めてで…玲君への想いが、痛い程伝わって来る…………。


……お節介だとは思ったけど…相川は……俺にとって…凄く大事なんだ。

俺は急いで、由さんのいる医務室に向かった…。

No.165 07/10/17 17:42
レンカ ( 1fuT )

~141~
突然扉が開き、啓二さんは着替えたばかりの私の腕を掴んだ。

「早く!!来て下さいっ!!!」

「啓二さん?!一体…」

「良いから!!!」


まだ少しフラつく足元…なのに彼は、早歩きで私を引っ張っていく……。

しばらく歩くと、唯ちゃんの声が聞こえてきた。

「…聞いて下さい。2人の会話を……」

そう言い、目の前の扉を指差す…。
私は一歩……扉に近付いた。



中から聞こえてきた会話に、私の体が震える……

No.166 07/10/17 19:52
レンカ ( 1fuT )

~142~
「直さなくて良いよ…簡単に人の性格は……心は変わらない。」

「変わる!!変われるよ?!……キミの為なら、どんな風にだって…私は変われる…!!」


私は必死に、玲にしがみついた…少しでも……少しでも良いから…抱き締め返して欲しくて………
あの日…初めてキスした時みたいに………もっとキミの体温…感じさせてよ……………。



「唯が…どんなに変わったって……俺の為に変わったのなら、意味ないよ…。自分で気付いて…自分の為に変わらなきゃ……それはただ…自分を偽ってるだけだから。自分に嘘つく辛さ…唯には味わってほしくない。」

「これだけ頼んでるのに…好きだって言ってるのに……??」

「…ごめん……俺は変えられない…この気持ちを……。」

「私に対しての気持ちは…すぐ変わるものだったんだね…。……私…信じてたのに…キミとなら……ずっと一緒に居れるって…信じてたのに……」

「…………………」

キミが私の髪を撫でる…………。

キミの優しい所が好きだったのに……今ではその優しさが、何より痛くて………愛しかったその存在でさえ…………憎く感じてしまう……。

私は…どうすればいい?…………どうすれば……??

No.167 07/10/17 20:33
レンカ ( 1fuT )

~143~
《これ以上…2人の会話、聞いてられない》

由は走り…外に飛び出した……。その腕を、川本が掴む…。

「こんな事してまで…私を玲から離したいんですか?!」

掴まれた腕を、由は勢いよく振り払った。

「違いますよ!!俺はただ、知ってほしかったんです!!人が人を好きになる事は、誰にも止められない…でも……あなたと玲君が惹かれ合う事で、相川が…どれだけ苦しんでるのか……それを知って欲しかっただけです。」

「……私だって…唯ちゃんを傷付けたくない…。玲の為に一番良い事は、唯ちゃんと一緒に居る事だって思ったから……私は玲と別れたの…。だけど、玲の顔を見た瞬間…私は自分の気持ちを…抑えられなくなった…。」

「俺も同じ様な経験したんで……その辛さは…よく分かります。」

「……どうしてそこまで…唯ちゃんにこだわるんですか?啓二さんは…本当は私に…玲から身を引けって言いたいの……どんなに言葉を足したって、私には分かります。」

「………。」

「元教え子だから?本当にそれだけですか??私には……」

「相川は…俺の――――。」


その時、急に大きな風が吹いた…だが由の耳には…確かに聞こえた…川本の言葉が……

No.168 07/10/18 13:17
レンカ ( 1fuT )

~144~
「しばらく……考えてみてくれ………。唯と俺にとって、何が一番良い選択になるのか………。」

玲は上着を取ると、そのまま部屋から出て行った……。

《考える必要なんて…無いよ………。》


私はベットに横になる……合宿の時より疲れるなんて…思ってもみなかった………。

体は休息を求めてる…なのに、キミの事を考えると……眠ることさえ出来ない…。

腫れた瞼に熱がこもって………こんなに泣いたの…初めてだよ……。



辛いって…苦しいって思ってるのに……空は晴れたまま………。これは…私に対する嫌味??



「…雨……降ってくれないかな…………。」


鬱陶しい蝉の声に…私は溜め息をついた……。

No.169 07/10/18 13:18
レンカ ( 1fuT )

~145~
「由…何やってるの?」
突然背後からした声…

「脅かさないでよ……琉梨。」

「何やってるの?!」

「……帰る準備。」

怒られそうだったけど、私は素直に話す事にした…。

「………分かった…。何か理由…あるんでしょ??」

「……うん……ごめんね…せっかく、誘ってくれたのに………」

「…理由……いつか…教えてね??」

「………いつか…ね…」


気持ちの整理……出来るか自信無いけど………それでも………忘れなきゃ…いけない……。


「じゃあ……またね…………。」

「うん。気をつけてね………由…………」




勝手に帰る私を……あなたはどう思うかな?

たった数時間だったけど、もう一度会えて…本当に良かった………。



………ごめんね…玲……

No.170 07/10/19 14:50
レンカ ( 1fuT )

~146~
夏の日は長い………。もう7時だというのに、辺りは明るく…まだ夕日が照らしている……。


俺は川岸に座り…水面に映った夕焼けを眺めていた………。

たった1日で、こんなにも人の心は変わる……。変わらない気持ちなんて、元々無いだけかもしれないけど………。



唯の事……嫌いじゃないんだけどな…………。

地面に寝そべると、日中に熱を吸収していたのか……ぽかぽかと温かかった…。


その温かさと疲れのせいで…気が付くと……俺は眠っていた…………。




…夢を見る事もなく……

No.171 07/10/19 20:20
レンカ ( 1fuT )

~147~
《私って…何でいつも……こうなんだろ。》

由は1人、それほど広くない森の中をさまよっていた…。

《少し散歩してから帰ろうって思ったのが、まずかったな…。自分で方向音痴って分かってるのに…。携帯は電池切れてるしさ……。》

「あぁッ…暗いの嫌だょぉぉ…怖いょぉ……」

少し"ガサッ"と物音がしただけで、由は飛び上がり走って逃げる……同じ所をグルグル回っているのも気付かずに………。

「誰かあ~居ませんか~???助けて下さいっっ………」


虚しく響く声に、うぅっと泣きたくなるのをこらえて…由はその場にしゃがみ込んだ……。

No.172 07/10/19 20:22
レンカ ( 1fuT )

~148~
夏とはいっても、夜になれば気温は下がる…キャミ1枚しか着てなかった由は肩をさすった。

「寒っっ………川に落ちたせいかな……………」

「そんな薄着してるせいだろ……。」

「!!!??」

肩にかけられた上着…見覚えがある……もしかして…

「玲?!!」

「何やってんだよ…こんな所で……。この森、迷うほど広くないぞ?」

「玲……私このまま迷って…迷って餓死するかと思って………怖かったよぉ……」

「…大袈裟な……。」

呆れた顔で、私を抱きしめる……。

「あったかい………」

「…由が冷たいだけだよ。」

「ううん……本当に…暖かいよ………。」


私の言葉に、玲はさっきより強く…抱きしめてくれた………。

No.173 07/10/20 00:19
レンカ ( 1fuT )

~149~
「それよりさ……その荷物、何??」

「……ははっ…これ?」

「うん。…何でそんな荷物持ってうろついてんの??」

「…………ごめんなさい…。」


「……………。」

寂しそうに謝る由…何となく……その理由が分かった…。

「ちょっと付き合ってよ……。見せたいもの…あるんだ。」

「???」

由の手を引き、さっきまで寝ていた川岸まで歩いた。

「此処で寝てたら…助けてって聞こえてさ………。」

「……………」

「この川は、俺と唯にとって…色々思い入れがあって……そんな場所で…こんな事言うの…不謹慎かもしれない……。」


俺はポケットを探る……何度も捨てようとしたけど、捨てれなかった物。

「俺は……もう…お前じゃなきゃ…駄目なんだよ……。由じゃなきゃ……駄目なんだ…。」


そっと由の指に通す……ちょっとサイズ…大きい指輪を………。

「玲っっ………」

「もう…誤魔化さなくて良いから……。あの時みたいな嘘………強がりなんて………しなくて良いよ??」


声を漏らして泣く由…あの時だって、きっと彼女は泣いてた……。

…でも…今度はちゃんと、受け止める……俺はきつく…由の体を抱き締めた。

No.174 07/10/21 13:28
レンカ ( 1fuT )

~150~
「……私…あなたに黙って……帰ろうとしてた……。」

「………でも…会っちゃったね?」

「…ふふっ……さっきまで、寄り道せずに帰れば良かったって…思ってたのに。こうやって……また玲と会えたから…」

「…俺も嬉しいよ……指輪、渡せたし…。ずっと持ち歩いてて……無くならなかったのも凄いよな……。」

「そうなんだ??……なんかちょっと"運命"って感じしない?」

「……女って、そういうの好きだよな…俺は"偶然"って感じだけど。」

「うわっ!?玲ってそんな奴だったの?」

「今頃知ったんだ?」


悪戯っぽく笑ってみせる……そういえば…こういう性格だった…。

頼りないくせに、頼られるのが好きで……クールなくせに、誰より優しい………。

「好きだよ……玲…。」

「なんだよ?急に…」


「照れたでしょ??今照れたでしょっ?」

「照れて無い!!!」


すっかり照れ、後ろを向いてしまった玲に抱き付く………。


ごめんなさい…啓二さん……あなたとの約束、守れませんでした………。

No.175 07/10/21 13:29
レンカ ( 1fuT )

~151~
「唯???」

誰とも話したく無い……だからさっき進と美里ちゃんが来た時と同じ様に、私は返事せずに布団に潜ってた…。

「ビール買ったんだけど…一緒に飲もうよ?」

返事が無いのに、氷吾君は扉を開け…室内に入って来る。

「今飲みたい気分じゃない……。」

「愛しのダーリンはどうした??ケンカ?」

「関係ないでしょ…。」

「………飲めよ?話し聞いてやるから。」



布団から顔を出すと…氷吾君は玲が寝るはずだったベットに座り、ビールを飲み始めた……。

ちゃんと…つまみも用意してある。


私はヤケになって、氷吾君とビールを飲む事にした…………。





………この時、氷吾君と一緒に飲まなかったら………あんな事には…ならなかったのに………。

No.176 07/10/21 22:38
レンカ ( 1fuT )

~152~
「なあ?玲のどこが良かったんだ?」

私は数本目のビールを飲み干す……。

「どこだろ??あ~んな冷たい男…もう嫌い。」

プシュッ…と泡が飛び散る、私は気にせずつまみに手を伸ばし…ビールを口にする…。

「…飲む気分じゃないとか言ってた割に、よく飲むな?でも俺…酒強い女好きだよ。」

「氷吾君に好かれてもね~嬉しくないな…。」


その言葉に、氷吾の表情が歪む。

「俺のどこが嫌い??」

「へっ?嫌いなとこ??え~分かんない……」

「嫌いなとこ無いなら、好きって事だろ?」

「そうなのっ?ハハッ…それは違うって!!」


「好きじゃなきゃ……困るんだよ…。」

「ん???」

ボーっとする頭で、氷吾君の言葉の意味を考えてみるけど………分かんない…。

「どーいう意味よ??」

氷吾君が微かに笑う…次の瞬間、私の視界が歪んで倒れた……。


…………状況を理解した時には…もう目の前まで彼の顔が迫っていた………。

No.177 07/10/22 14:21
レンカ ( 1fuT )

~153~
「なに………???」

「分かんない?俺の親切な心が。」

「全然分かんない!!」

氷吾の体を離すように、唯は腕に力を込めた。

「弱いな……本当に嫌がってんの??」

「ッッ………」


グイッと腕を掴まれ、押さえつけられる…。

「離してよ!!どいて!!!」

「嫌だ。俺が、玲の事忘れさせてやるよ??」

「忘れられるワケ無いでしょ!?バカ言ってないでどいてッ!!!」

「試してみなきゃ…分かんないでしょ??」


「酔ってるからって調子に乗るなっ!!」

「ヴッッ………………」


唯の蹴りが……氷吾の股間に直撃する…………。
うずくまった氷吾の体の下から唯は抜け出した。

「これで分かった??私はあんたが嫌いなの!」

「………へっ…………こうなりゃマジで……ヤってやる………。」



《ヤバい………目が…正気じゃない…。》

「氷吾君も…変わらないね?合宿の時から、全然変わってない。」

「変わったさ……唯が思ってる以上にね。」

じりじりと近付いてくる氷吾から……なるべく距離をとり、唯は扉に近付こうとする…。

No.178 07/10/22 14:22
レンカ ( 1fuT )

~154~
「……何で私にこだわるの??」

「…お前だけなんだよ。俺を拒んだ女………。」

「そんな理由??!」

「ああ!俺にとってこれ以上、重要な理由は無いね!!」


《…やっぱバカだ……この男。》

扉まであと少しの所で、氷吾が動く……。

「逃げようとしたって…ムダだよ?」


「っ!!!」

みぞおちに氷吾の蹴りが当たり、唯はその場に倒れた。

「…さっきの仕返し。手加減したからさ……。」

《気持ち悪い……》

ゲホゲホと咳き込む中、氷吾君が私に触れた…。


………もう駄目だ…。
この男を部屋に入れた私も悪いかもしれない……けどこんなの…酷すぎるでしょ……………。

No.179 07/10/22 14:22
レンカ ( 1fuT )

~155~
「相川?今凄い音したけど………」

《…せ……んせ?》


色んな音が…渦を巻いたみたいに混ざって聞こえる………。



その時、私の意識は…ほとんど無かった……。

No.180 07/10/22 22:03
レンカ ( 1fuT )

~156~
あとから聞いた話しがこうだ……

偶然やって来たセンセが、氷吾君にキレて殴りかかった…。

……でも…センセがかなう相手じゃない。逆に氷吾君に殴られ、ボコボコにされたらしい…。


センセの大ピンチ……って時にやって来たのが

陸太君。


空手5段の陸太君…その強さは凄かったらしく、一発で氷吾君は倒れたって…。

No.181 07/10/22 22:04
レンカ ( 1fuT )

~157~
「相川??大丈夫か?!しっかりしろ!!」

何度も顔を叩かれ、私はようやく意識が戻った。

「……誰???」

「俺だよ!相川の大好きな川本先生!!」

「……顔…腫れてる…」

「ああ…桜井にやられちゃったよ……。でも大丈夫…相川はどうだ?」

「…お腹がちょっと痛いけど……あとは大丈夫………」

まだ酔いが残ってるせいか、頭がクラクラする……私はセンセに支えられて立ち上がった。

「陸太君??進に美里ちゃんも…何でいるの?」

部屋の隅で、進が氷吾君を縛っている…それを止めようとする美里ちゃんに……キャンプに来てないはずの陸太君。

「唯ちゃん?!良かった!!意識戻ったんだ!」

「美里ちゃん……何があったの?私…………」


「大丈夫だよ。川本先生と陸太君が助けてくれたから。唯ちゃん何もされてない。」

「……陸太君は…何でここに?」

「……それが…私もまだ聞いてなくて………。」


私に気付いた陸太君が、側にやって来た。

「良かった…。大丈夫そうだね?」

「うん、ありがとう。」

「本当に良かった……何もなくて…。」


嬉しそうに笑う陸太君…こんな笑顔…初めて見たかも……。

No.182 07/10/22 22:06
レンカ ( 1fuT )

~158~
「姉ちゃんも起きたし、教えろよ!!兄ちゃんがここに来た理由!」

「………そうだな…。」

深刻そうな顔で私と進を見つめる……少し間をあけてから、陸太君は喋り始めた…。



「………真琴さんと…父さん…………離婚する事になったんだ……。………明日…市役所に、離婚届……持って行くって…………。」


「……うそ………嘘だよね?だってあの2人…」

「…真琴さん……忘れられない人が居るって。」


それって……柳清司??

「………それに俺は…この離婚に…賛成だよ。」

「陸太君?!何言ってんの??」


「姉ちゃん落ち着け!」

陸太君に掴みかかった私を、進が引き剥がす…。

「だって陸太君が!!」

「……これで…姉弟じゃなくなるだろ?俺と…"唯"………。」

「えっ???」

「………俺と唯は…血繋がって無いし、2人が離婚すれば問題無くなる。俺と唯が………付き合う事だって…出来るんだよ?」


「何言ってんの?!今は、そんな話し聞きたく無い!!」


玲とは別れそうになって…氷吾君には襲われて……さらにお母さんが離婚って時にそんな話し…………言わないでよ……。

No.183 07/10/22 22:07
レンカ ( 1fuT )

~159~
「兄ちゃん……今は告るタイミングじゃないって…。それにさ、姉ちゃんには玲って彼氏が……って玲は?!」


「そうよ!!玲は何処??!あいつ唯ちゃんが大変な目にあったのに……何処にいるのよッ?!」


怒った美里ちゃんが玲に電話をかける………。
"別れたい"って言われた……なんて言えずに、私は俯いて会話を聞いてた…。

「…相川……大丈夫か??」

「…センセしつこい。大丈夫だってば!!」

「先生???そういえば俺…まだ名前聞いてないです……。唯を助けてくれたお礼もしたいし…」

「いや…君が来なかったら俺は……。陸太君…だったよね?俺は相川の元担任の川本です。」


「………川本って…??川本啓二???!」

「センセ…名字しか言ってないのに……陸太君よく名前分かったね?」


私の言葉に、陸太君は困惑した顔をする…。


「…………もしかして唯に……言ってないんですか??!!!」

「何??どういう事???」



陸太君の言葉の意味を理解するのは……もう少し先のお話し…………。






~地獄のキャンプ完~

No.184 07/10/22 22:28
レンカ ( 1fuT )

第4章も終わりました😃
ここまでのご意見ご感想お待ちしています🙇✨

No.185 07/10/22 23:59
匿名44 

>> 184 レンカさん 読んだ感想を 少しだけ..

話の展開がスピーディーで 読者を退屈させません
どんどん 続きが読みたくなります(プレッシャーは 感じないでくださいネ)

前に レンカさん 暗い展開になってきた..と 気にされてましたが 読む側からすれば 話のアップダウンがないと 退屈しちゃいます
みんなが そうなのかは 分かりませんが 少なくとも アタシはそう思いますょ

少し気になった 限られたメンバーの中で 色んな事情がありすぎ?感も 携帯小説ならではかもデスネ


少し書くつもりが 長々と 書いてしまいました
感想デスガ アタシは読む専門なので 話半分で 流してください(笑)
実際に 書かれている方の意見なら もっと参考になると思うので 他の方も 色んな意見 書いてほしいデスネ

  • << 187 レスありがとうございます🙇 匿名さんと小悪魔さん…同じ方だったんですね😃 昨日更新した分は、前日寝る前に書いたものです。…話しの展開早すぎるかな💦と心配してたんですが、そう言って貰えて良かったです✨

No.186 07/10/23 00:11
バトー ( ♂ MtbU )

度々失礼します。
確かにテンポが良いですね。
キャラの魅せ方も上手いですし、何より読んでて飽きません。

氷悟は嫌な奴ですが、コレからどうなるのか期待しています。

陸太…かっこいいです。
お気に入りです。
コレからの流れに期待してます。

  • << 188 バトーさんレスありがとうございます🙇 クセのあるキャラ達が多くて……💦 そんな中、陸太お気に入りって言って貰えると嬉しいです✨
  • << 195 失礼します 陸太について 陸太は このストーリーの中で一番普通、ノーマル、素、プレーンな感じします。

No.187 07/10/23 12:08
レンカ ( 1fuT )

>> 185 レンカさん 読んだ感想を 少しだけ.. 話の展開がスピーディーで 読者を退屈させません どんどん 続きが読みたくなります(プレッシャ… レスありがとうございます🙇
匿名さんと小悪魔さん…同じ方だったんですね😃

昨日更新した分は、前日寝る前に書いたものです。…話しの展開早すぎるかな💦と心配してたんですが、そう言って貰えて良かったです✨

No.188 07/10/23 12:14
レンカ ( 1fuT )

>> 186 度々失礼します。 確かにテンポが良いですね。 キャラの魅せ方も上手いですし、何より読んでて飽きません。 氷悟は嫌な奴ですが、コレからどうな… バトーさんレスありがとうございます🙇

クセのあるキャラ達が多くて……💦
そんな中、陸太お気に入りって言って貰えると嬉しいです✨

No.189 07/10/24 08:06
レンカ ( 1fuT )

第5章 懺悔 真琴編
~160~
今でも忘れられないあの日…………。



冷たいベットの感触と、冷たい清司の視線…。

あの日……私が信じていたものが…全て崩れた…………私自身も……。



名前なんか……どうでも良かった…性格だって……。

ただあなたに求めたのは………清司への…復讐。




私が今でも引きずってるのは……清司?それとも………………??

No.190 07/10/24 12:39
レンカ ( 1fuT )

~161~
「真琴………」


………私を呼ぶ声……。


私に触れるこの男……今の旦那。
この人とは、一番長く続いてる………その理由は…仕事でほとんど家に居ないから……。

そう……そんな理由…。


私はいつも、誰かに頼って生きてきた。自分で働くのが……嫌になったから…。


"昔は…こんな女じゃなかったのに……"


これはただの言い訳…。
気付いているのに、私は変わろうとしない……変わろうとすら…思わない………。



でも1人だけ……頼りたくないって思った男がいた…。

あの人にだけは………何があっても、頼りたくない…。



『真琴さん……僕の名前…知らないでしょう?』

皮肉とは違う彼の言葉。
ほんとは、否定して欲しかったんだろう……でも私は…本当に彼の名前………知らなかった…。


『………名前なんて、どうでも良いんですけどね。』

寂しそうな笑顔でそう言う………。



彼は今………どうしてるんだろう??

唯を見るたび、そう思う。



………彼に良く似た唯を見るたびに……。

No.191 07/10/28 23:43
レンカ ( 1fuT )

~162~
あれは高2の夏休み……私はようやく、清司と結ばれた…。

思えば長い片思いだったけど………その時間は辛くはなかった……どちらかというと、片思いの時の方が…幸せだった。


"清司"って男に……夢を見れたから…。



付き合いだした2人…でも……時々私は彼に他の女の影を感じた………。


「彼女とは別れたの?」

って何度か聞いた……その度彼は…

「うん。」



って笑う……。



心のどこかで疑いながら、私は彼の言葉を信じた………バカみたいに…。

No.192 07/10/28 23:47
レンカ ( 1fuT )

~163~
「清司!!私ッ……私妊娠したよ!!!」

「本当に?!スッゲエ!!!!」


無邪気な笑顔に、私の不安が吹き飛んだ…。

清司と一緒なら……清司とお腹の子と3人なら…絶対幸せになれる………そう信じてた…。


……"絶対"って言葉の脆さも知らずに…。




「親にも……言ってみるよ…。」

「私も一緒に行こうか??」

「大丈夫だよ、明日には説得も終わってる……。また明日…会いに来るから。体大事にしろよ?」

「分かってるよ!!」

「じゃあ、また明日!」




「……清司!!!ありがとう!!」


彼は振り返り…私に笑顔を向ける………これが私が見た……最後の笑顔。

No.193 07/10/29 20:53
レンカ ( 1fuT )

~164~
―柳家正面玄関―
「ただいま。」

「おかえり、兄さん。」

「母さんは??」

「多分…書庫だと思うよ。」

「………そうか。」

重い足取りで、俺は書庫に歩を進める……。
真琴には…ああ言ったけど……正直、説得する自信は無い。


「清司……帰ったのね?麻由さんとはどう??」
「母さん………」

まさか廊下ですれ違うとは……俺は急いで、言葉を探す………。


「…き…今日は……麻由さんとは会ってません…。違う………女性と会っていました…。」

母の眉がピクッと上がる……。

「母さんっ……俺の…俺の子供が、子供が出来たんです!!!」

「……………相手は?」

「市内の高校に通う……17歳の………」

「家柄はと聞いてるの!!!」

「………父親は…無職で……………」

自分でも、声がどんどん小さくなっていくのが分かる…………。

母の顔を見るのが怖くて、俺は自分の足もとばかり見ていた。


「…………すぐに別れなさい。勿論、降ろしてもらうのよ。」

「でも……でも俺は…」

「それが嫌なら、今すぐこの家から出て行きなさい!!」

No.194 07/10/29 20:54
レンカ ( 1fuT )

~165~
「そんなッッ!??」

「無理よねぇ……あなたにこの家を捨てるなんて…………。お金も何も無い中で、あなたは子供を育てれる?妻を養える??」

「…………………」

「あなたにとっても、相手の女性にとっても……道は1つしか無いの。」

「……わかりました。」

「良い子ね…。それじゃあ私が、病院の手配をしておくから……明日一緒に行ってあげなさい。」


母が去った廊下に1人………俺はずっと立っていた……。

俺にはできない………この家を失うなんて…俺には無理だ……。


「兄さん……今の話し……………」

「お前には関係無いだろ!!」





「……………無責任…………」

去り際に弟が放った言葉…………ほんと…その通りだよ……。




俺はなんて……無責任なんだろう…………。

No.195 07/10/30 01:18
ルナ ( 30代 ♀ 9HPVi )

>> 186 度々失礼します。 確かにテンポが良いですね。 キャラの魅せ方も上手いですし、何より読んでて飽きません。 氷悟は嫌な奴ですが、コレからどうな… 失礼します


陸太について


陸太は このストーリーの中で一番普通、ノーマル、素、プレーンな感じします。

No.196 07/10/30 12:42
レンカ ( 1fuT )

>> 195 レスありがとうございます🙇✨

確かに陸太は、一番普通なキャラです😃濃いキャラばかりなので…1人位は、まともなキャラを作ってみました😣

No.197 07/10/30 12:43
レンカ ( 1fuT )

~166~
「………どういう事??ただの検査なんじゃ…」

「良いから……早く来い!!!」

腕を引っ張られ……私は病院の個室に連れられる。

「手術は午後からだから……。」

「嫌ッッ!!!私は産むの!!何で急に?!昨日はあんなに………」

「迷惑なんだよ!!!」

「そんな…………どうして??何があったの?」


あんなに喜んで……笑ってくれたのに………。何でそんな顔するの??何で???


「結婚が決まってる………だからお前とは別れる…。お前に産まれちゃ迷惑なんだ。」

「……あの女???別れたんじゃないの?!」


清司はフッと馬鹿にしたように笑う。

「信じてたのかよ?!あの女は俺の婚約者だぞ?銀行の頭取の娘だ。」

「………じゃあ私は……清司にとってなんだったの?」





「……………暇つぶし………。」

No.198 07/10/30 12:44
レンカ ( 1fuT )

~167~
清司の言葉に、私は泣く事すらできなかった…。
ただ頭がぼーっとする………信じていたものが、一瞬で崩れて…壊れていった……。


手術台の上で…私は麻酔に包まれていく………。
………このまま…ずっと眠っていれたら…………どんなに幸せだろう…。


ずっと………眠っていたい……………それは、儚い望みだ……。

今の状況が、夢じゃなく…現実なのだから……。

No.199 07/10/30 20:07
レンカ ( 1fuT )

~168~
俺は1人、手術が終わるのを病室で待っていた…。


何処からか、赤ん坊の泣き声が聞こえる………。
産婦人科だから…仕方ない……けど…今の俺には……………。


今すぐ此処から出て行きたい………赤ん坊の声なんて……聞きたく無い!!



……俺は…殺したも同然だ………実の子供を…。




こんな事になるなら、最初から真琴と付き合わなきゃ良かった………。真琴になんて……………。



「クソッッ………!!」

馬鹿げてる……1人の女が原因で、こんなに悩むなんて…くだらない!!

俺にはやる事がある……やらなきゃいけない…父の跡を継ぎ、"柳"という家を会社を…大きくしなければ……。



………その為なら…どんな犠牲が出ても……構わないんだ…。

そう………犠牲はつきものだ……これ位の事で、立ち止まる訳にはいかない…………。

やってやる………俺は何だって…やってやるよ。



病室に掛けられた鏡……その中に映った自分の顔に、俺はただ見入っていた…。

No.200 07/10/30 23:16
レンカ ( 1fuT )

~169~
「……起きたか?一応、一泊だけ入院してもらうから…。じゃ、俺は帰るぞ。」

「…何も感じない?"暇つぶし"だったからって………赤ちゃんに罪は無いのに……何も感じないの??」


「ああ……何も。」



清司は振り向かず、部屋を後にした……。

下腹部の鈍い痛み………本当に…いなくなったんだね…………私の赤ちゃん……。

私がもっとしっかりしてたら……男なんて…信じたりしなきゃ、あなたは元気で産まれてたのかも………しれないのにね……。


……ごめんね…本当に………………私もう…信じないから………二度と、あなたと同じような目に………合わせたりしないから…………。





男なんてもう二度と………信じない…。

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