ヨロコビは鹿と淋に

レス88 HIT数 2355 あ+ あ-

自由人
06/09/21 08:19(更新日時)

小説です!
頑張って書きますので、もしよろしかったら見てやって下さい!!







―――――――――――

「鹿ちゃん、君は何処に行っちゃったの?」

…―死んじゃったの?

淋は言いながら、彼女も何処か真っさらな場所へと歩む。

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No.165012 06/08/25 18:56(スレ作成日時)

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No.1 06/08/26 14:19
自由人0 

…―この先に行ったら、鹿ちゃんに会えるのかなぁ?


彼女は何も知らない。

何も知らないまま、歩みだしたんだ。


それをただ私は、冷いまでの笑みを浮かべ、静かに見送った。

No.2 06/08/27 01:39
自由人0 

「だーかーら、女の子が居たんですってば!」
「はァ…」

相手は、呆れた表情で俺を見やった。

俺は咲田淋。
友達に今重大なことを話している最中だ。

「だからさ、女の子が二人いて、なんか話してたの!!」
「またかよォ、リン…もう聞き飽きたって」

No.3 06/08/27 17:54
自由人0 

「お前は視なかったのかよ!?さっき其所で小さいコと俺らくらいのコがぁ!!」
「はいはい。授業始まるぜェ」

俺がいくら話しても相手は全然聞いちゃいねえ。

それもそのハズ。

俺はヒトに視えねぇモンが視えるんだ。

No.4 06/08/27 18:00
自由人0 

といっても、幽霊とかが視える訳じゃあない。

なんつうか…その…幻?

たまにだけど、三分後の世界だとか、多分だけど、何十年も昔の景色だとか。

No.5 06/08/27 18:09
自由人0 

だからあれも多分、きっとずっと昔の光景だと思うんだけれどな…―

「咲田くん…あのっ」「あ?」

振り向くと其処には、クラスメイトの名鹿がいた。

No.6 06/08/27 22:48
自由人0 

名鹿は俺に声を掛けると、苦笑めいた表情になる。

「咲田くんの後ろに…あの…ぇ…と」

何やらもじもじしていたので、「早く言えよ」と返すと、咲田は、顔をぐばあっと上げ、急ぎ声で言った。

「着物を着た女の人が居る…よ…?」

No.7 06/08/28 22:55
自由人0 

瞬間、俺の頭は理解し損ねたが、数秒後、俺は無意識にか、「ひっ」と声を上げてしまった。

「な、ななななな名鹿、なぁに嘘ついてんだ、よ!!!」

No.8 06/08/28 23:28
自由人0 

俺は、自慢じゃないがマボロシが視える。
だが、幽霊の類は、決して、決して、決して…。
「…んな、だぁれも居ないじゃねえかよぉ、名鹿ァ!!俺はそんなこと信じねぇぞ!!バっカかてめえ…」
「…あっ、咲田くんの肩に…手…置いたよ?」

No.9 06/08/29 03:20
自由人0 

「どわあッ!!!!!」
「咲田くん、幽霊さんのこと、信じないの?」

名鹿はおっとりとした口調で話す。
「あぁ!信じねぇよ!」

そうだ。
俺はマボロシのことは信じるが、それ以外の奇怪現象は決して信ねぇんだ。

そういや俺は、名鹿とこんなに話したのは初めてだ。

名鹿はおとなしくて、あんまりいっぱい友達がいてギャアギャア騒ぐタイプじゃねえ。

おっとりしてて、そこそこ美人で、頭よくて。
結構男子にはモテるタイプだと思う。

だが、その名鹿が霊感があったとは、初めて知った。

「名鹿、」

No.10 06/08/29 03:29
自由人0 

すいません、一ヶ所、
“名鹿”のところを“咲田”としていました。

本当にすいませんでした!!

あと、著者(私)紹介です。

名前…夏みかん
歳…十一歳。もうすぐ十二歳。

こんな私ですが、よろしくお願い致します!

No.11 06/08/29 12:56
夜宵 ( JgMf )

はじめまして☆
『゚:。+悲観+。:゚』と言う物語を書いている夜宵と申します♪物語、毎回楽しく読ませてもらってます☆(o^∀゚)bこれからも頑張ってください♪(*´艸`)゚:。+

No.12 06/08/29 15:01
自由人0 

>> 11 あ、ありがとうございます!!!
まさかコメントを頂けるなんて…!!!
大変恐縮です!!
これからも頑張って書きますので、お互い頑張りましょうね!(≧∀≦)

本当にありがとうございました!!

No.13 06/08/29 15:13
自由人0 

俺は、少し力を込めて名鹿の肩に手を乗せると、語調を柔らかくして聞く。
「お前は、もし俺が三分後の世界が視えるだとか、大昔の景色が時々、マボロシとなって視えるとか言ったら…」
俺は一旦そこで切り、続ける。

「信じるのかよ?」

No.14 06/08/29 19:21
自由人0 

俺が問うと、名鹿は少しの間黙り込んだ。

しばしの間沈黙が流れた後、名鹿は口を開く。
「…信じるよっ」
は?と、思わず俺は返す。
「咲田くんが…そう言うのなら、私は信じるよっ!…だから…―」
名鹿はそこで切り、そして…
「咲田くんも、私のこと…信じて、よね…」
名鹿がそう言い終えると、チャイムがなり、名鹿は「じゃあね」とだけ言い、ぱたぱたと教室に入って行った。
俺はしばらくそこに立っていた後、教室に戻った。

No.15 06/08/29 19:53
自由人0 

「はい、じゃあここ解る人…」

授業中、俺の頭の中は、名鹿のことでいっぱいになっていた。

「信じてよね…かぁ」

多分、名鹿は“自分には幽霊が視える”ということを信じて、と言ったんだと思うが、それにしては何かあの言い方が引っ掛かっていた。

「そんなに俺、冷たくあしらったか?」

時折声に出してみると、さらに気になる。
…って、やべ。
何で俺、名鹿のことばっか考えてんだろ。

No.16 06/08/29 20:14
自由人0 

自分でも不思議なくらい、名鹿のことが無償に気になりだす。
昨日までは、ただのおとなしくて、そこそこ美人のクラスメイトだったのに。

授業なんか聞いてないのに、何だか頭が痛くなってきた。
少し疲れたので、授業そっちのけで目を瞑ってみた。
すると、俺の右瞼側の世界に、さっき見たマボロシがぼんやりと浮かんだ。

No.17 06/08/29 20:20
自由人0 

―…
「淋は、鹿ちゃんのこと、そんなに大好きなの?」
同年代の女の子が、リンと呼ばれた女の子に問う。
「うん!すっごく、すーっごく大好き!…だから、すっごく、すーっごく心配なの…」
するとリンは、下を向き、哀しそうな顔をした。
「すっごく…心配なの…」
…―

No.18 06/08/29 20:44
自由人0 

そこで話は終わり、瞼には暗闇だけが残った。
「リン…って、俺の名前…?でも、女の子だったしなぁ」
俺は目を開けることなく、口の中で呟くと、リンが、“鹿ちゃん”と、誰かを呼んでいたことを思い出す。
「鹿ちゃんて…鹿?鹿…?」
俺が色々考えては口の中で呟やいていると、後ろから頭に衝撃が走った。

No.19 06/08/29 21:36
自由人0 

「こら咲田!なぁに寝てんだよ!」
「痛っ」
振り返ると、目に飛込んできたのは、数学教師の山川だった。
「お前はまた、幻だとかなんだとか言うんだろ?…ったく、今日は居残り!放課後、日直と教室掃除!」
「はぁ?…待って下さい先生!いつも掃除なんてしないっしょ?それじゃあ日直に迷惑…」
俺は言うが、山川はまるで聞かず、教台へと戻る。
「お前が迷惑掛けたんだろ?日直にはお前から謝っとけ!」
とだけ言って、山川はまた、授業を再開した。

No.20 06/08/29 22:18
自由人0 

キーンコーンカーンコーン…
「あーあ!何で掃除なんかしなきゃならんのかなぁ?」
「いいじゃねぇかよ、咲田。今日の日直、アイツじゃねぇかよ」
俺は放課後、教室で友人の八埼と会話をしていた。
「アイツ?アイツって…誰だよ?」
「お前さァ…今日の日直も覚えてねぇの?…今日の日直は」
八埼は苦笑してから、続ける。

「名鹿だろ」

俺はそれを聞いた途端、思わず八埼に寄っていた。

「ほんとかよ!?」
「ほんとでーす」

八埼はふざけた声で言う。
「何、お前、名鹿狙い?ライバル結構多いかもしれないぜ?」
八埼は机に椅子を入れ、教室を出るところまで行く。
「ちょっ、お前何言って…」
「じゃあ、また明日な!精々このチャンスに頑張れよ!応援するからさ!」
八埼はそう言うと、ドアをぴしゃりと閉めて、廊下を歩いて行った。
俺はしばらく動くことができず、そこに立ち尽くしていた。

No.21 06/08/29 23:10
自由人0 

「…咲田くん?」
不意に声を掛けられ、俺は「どぅわっ」と間抜けな声を出してしまう。
「お、おう名鹿…」
俺が言うと、名鹿は僅かに口元を緩め、話し掛ける。
「咲田くんは黒板消して。私はホウキで掃くから、ね?」
女子からそう言われて断れる筈もなく、俺は頷き、黒板の方へと行く。

「…咲田くんさ、信じてくれた?」
名鹿は口を開き、此方を真っ直ぐに見つめ、言う。
「いいや」
俺は即答する。
すると名鹿が、なんだか淋しそうな顔をしたが、俺は構わずに続ける。
「やっぱり俺は幽霊とか信じらんないし、実際に目に視えねぇもんは、簡単には信じない。…―けど」


「名鹿が言うなら、信じてもいい…って、思った…。なんとなく、信じてみようかなって。それだけ。理由なんてねぇよ」
俺がそう、ぶっきらぼうに言い終えると、名鹿は、にっこりと柔らかい笑みを浮かべた。

No.22 06/08/30 06:55
自由人0 

「それで…ね、もう一つ、信じてほしいこと、あるんだけどね」
そう言って名鹿は微笑むと、話し始める。
決して、手は停めずに。

「私ね…昔、あるお爺さんの幽霊さんに、『お嬢ちゃんには、人の前世を視ることができるだろ。いや、間違いない!絶対できるぞ!』って言われたんだけど…ね、」
名鹿はそこで一度切り、ちりとりを持ち、ちりとりの中のゴミを、ゴミ箱に捨てる。
そして続けた。
「試しに、そのお爺さんの幽霊さんに言われた通りに、友達の方を向いて、目を瞑って…念じたの。そしたらね、」


「私のアタマの中に、どんどん…入ってくるの!その子の過去いたバショが、その子のカタチが。だから私、それ以来、誰かの前世を視るのが怖いんだ…」
名鹿はそこまで言うと目を伏せ、此方を窺うように、黙っていた。

No.23 06/08/30 08:59
自由人0 

「ふーん」
俺がそう返すと、名鹿は目を上げ、此方を見る。

「なーんか、うさん臭ぇ話だよな」
「…え」
俺がそう言い、笑うと、名鹿は少しだけむくれる。
「信じないなら…いいけどっ!…多分…そう言うと思ってたから」
名鹿は瞬間、哀しそうな顔をするが、後に、明るい笑みへとすぐに変えた。
「咲田くんのばかっ」
短く言い放たれたその言葉が、俺の耳に届くのは少し時間がかかったが、きちんと耳には届く。
「あ?誰がバカだって?」

「なんでもないよっ」

そんな風に、下らない話をしながら、教室掃除を進めていたのは、まだ夕陽が落ちる前。
アイツが出てくる、少し前の出来事だった。




『鹿と…淋…か』

No.24 06/08/30 16:20
自由人0 

「あ?」
俺は名鹿と俺以外の気配がした気がして、無意識に振り向いた。
「え?」
名鹿もそれに吊られる。

「気のせい…か?」
口の中で呟いて、俺はあることを思い出す。
「そうだ、名鹿…―」

「ごめんな、俺のせいで。放課後、掃除とかさ…」
「嬉しいよ」
俺が思いもしない言葉に、目を丸くしていると、名鹿は屈託のない笑みを浮かべた。
「私、男の子苦手だった…けどね、なんだか咲田くんとは…色々、友達に言えないことも話せたし。ありがとう」
「…!」
まるで予想していなかった言葉に驚いていた。

何故か、ココロが揺さぶられた。

まぁ、このときの俺が、それが感情の動きだとは考える筈もなかったのだが。





『―…時を視る者と、時の元を視抜く者…コトは充分満ちた…か』

No.25 06/08/30 16:39
自由人0 

―…

ふわり、ふわり、少女は歩く。

とことこ、とことこ、少女も歩む。

一歩、歩けば百歩の一糧。

歩もう一歩を、ふわり、とことこ。

…―

「歌…?」
突然現れたマボロシに、動揺していた。
「咲田…くん?」
声の先は、何処に向けられたのだろうか?


『…俺とか?』


「えっ」
声の先には、同年代の男が居た。
茶色いフードを被り、黒のコートを着た少年だった。


そいつはまるで、ここが自分の支配下だと言わんばかりに、空気を凍りつかせた。

『聞いてたのと…少し違うな。…まぁ、いいだろう』
意味の解らない言葉を並べ、そいつはフードを降ろした。

「!?」

そこに現れたのは、日本人と呼ぶにはあまりにも色白い肌をし、そして薄青い髪、銀の瞳をした、顔立ちの良い少年だった。

俺は状況が全く読めず、ただただ、少年を凝視していた。

No.26 06/08/30 20:26
自由人0 

『“力”は、“力”を求める為には必要だ…』
そこまで言うと少年は、ぐっ、と俺たちに近付き、今までは遠く聞こえていた声が、急に近付く。
「だから、俺たちはお前らのことが…必要だ」
は…?
わけ、解んねェよ…!!
いきなり現れて、力がどうとか!
「てめぇ!てめぇは誰だ!?」
恐らく、今、一番簡単で、誰でも思い浮かぶ質問をすると、そいつは簡潔に答えた。
「俺の名はバイライン…―バイライン・フォルス」
そこで少年…―バイラインは一度切り、続けた。

「お前たちを迎えに来た」

No.27 06/08/30 20:42
自由人0 

「バイライン…フォルス?…貴方の、名前?」
「そうだ」
恐る恐る聞く名鹿に、バイラインは短く答えた。
「迎えに…って、全然話が読めないよ…。咲田くん、何のことだか解る?」
名鹿が言い終わった後、バイラインは首を傾げたが、特に気にしなかった。

俺に分かるわけ、ねぇじゃねえかよ…!

出そうになるが、すんでのところで止め、俺はそいつに聞こうとした。
「てめぇ、ちゃんと説明しやが…」
「貴方、この世界の人じゃないよね」

No.28 06/08/30 22:15
自由人0 

名鹿がきっぱりとそう告げると、バイラインは初めて、笑みを見せた。
「如何にも」
一言、呟くように言った。
「ですよ…ね?でも、幽霊さんとは違う…。一体…何なんですか?」
失礼な問いだが、それは俺が聞きたいことと同じで、俺は黙って様子を窺った。
「…俺は、清龍という名の国…いや、世界から来たんだよ」

No.29 06/08/30 22:33
自由人0 

「はァア?」
俺はいい加減バカらしくなり、遂に口を開く。
「何がセイリョウの国だよ!?違う世界とでも言う気かよ!?」
背世羅笑うように発すると、バイラインは笑みを崩すことなく、話続ける。
「如何にも。こことは違う別の何処か。お前たちも…」




「居たことが在るセカイだ」


バイラインの言葉を耳が聞き取った瞬間、俺の世界の右半分が、また、マボロシの世界に塗り変えられる。

No.30 06/08/31 02:07
自由人0 

―…

血にまみれた中、一人の同年代の少女が、辺りを見回し、返り血に舌を這わせた。
「淋、言ったよね?」
無惨な姿で横たわる“淋”を見やり、少女は静かに語り始める。

「鹿ちゃんはねぇ、貴方の大切な鹿ちゃんはねぇ…」


「あたしが、綺麗な灰に変えといてあげたよ?」

そう言って、美しい少女は、狂ったような笑みを浮かべ、動かない“淋”を見下ろしていた。

…―


「何だ…何なんだ…」

マボロシの意味も、バイラインの言葉の意味も、俺には全く解らなかった。

No.31 06/08/31 02:47
自由人0 

「お前は、淋…―咲田淋だろ?」
そいつの言葉に俺は、はっ、と我に返る。
「何で…俺の名前…?」
だんだん、怖くなった。
アイツは何者だ?マボロシとの関係は何なんだ?違う世界って何だよ?俺たちが前、そこに居ただと…?

頭の中で、上手く構成できない言葉がバラバラと音を立てている。「咲田…くん?」
異変に気付いたのか、名鹿が此方を見つめる。
前に、俺たちが違う世界に居たっ…て聞いて、名鹿は疑問に思わないのだろうか…?
「そしてお前は、鹿…―名鹿十雨だな」
ナジカ、ソウ。
名鹿の名前すら、そいつは簡単に述べた。

同年代の異国人風の少年なのだが、その威圧感は、とても同年代の者が発するものではなかった。

No.32 06/08/31 03:05
自由人0 

「他にも、俺はお前らの過去を…―」
バイラインは言いかけるが、突然、その生意気な―…同年代なのだろうが…―口を閉じた。
「?」
出来事に驚いている暇もなく、バイラインは床に蹲り、そいつの後ろから、高い声が聞こえた。
「全く、バイライン!言わなくていいことはペラペラと喋り、必要なことをこれっぽちも言わないのですから!」
「…?…?」
驚いた顔を俺と名鹿がそちらに向けていると、声の持ち主は、此方へと笑顔を振り撒いて近付いてきた。
「先程から聞いておりましたが、バイラインが大変失礼致しました。あ、わたくしはバイラインの友人、ショウラン・ライクイムですわ。どうぞよろしく、十雨さん、淋さん」
その少女も同年代かと思われたが、バイラインから感じる圧のようなものは無いようで、俺と名鹿は、顔を見合わせた。

No.33 06/08/31 19:05
自由人0 

「…ライクイム…つったっけ?」
俺がそう言うと、少女はにこやかに、「ええ」と言い、此方へ近付く。
少女の風貌は、バイラインと同様、日本人のものではとてもなかった。
肩までくらいのストレートヘアは、銀色がかり、瞳は紫で、漆黒に純白のレースがあしらわれた、ドレスのように思わせるワンピースを着ていた。
「何か、ご質問でも?」

No.34 06/08/31 19:48
自由人0 

ご質問でもって、お前、…はァア!?
質問疑問ありすぎて、これ以上なんか言われたらアタマが…割れる!!
「質問、あります」
名鹿が口を開く。
そうだ名鹿!ありったけの質問ぶちまけろ!!
「質問…っていうか、あれなんですけど…。バイラインさん、大丈夫ですか?」

No.35 06/08/31 21:53
自由人0 

「さっき、ごーんって…音がしたと思ったら、蹲っちゃって…大丈夫、ですか?」
心配そうに言う名鹿を見上げ、バイラインはきまりが悪そうな顔をした。
…大丈夫、だァ?
いきなりどこからか現れて、いきなり名前を勝手に呼び、いきなり過去がどうとかいうやつを心配だあ?
「おい、名鹿…お前ほんとに状況、把握してんのか?」
まぁ、実のところ俺も今の状況が全て解っているとはとても言えないのだが、やっぱそれは、的を射た質問ではないのでは…。
「あぁ、ご心配はご無用ですわ。わたくしが、少しばかり力を込めて、バイラインの後ろ首に手刀を入れさせて頂いただけですから」
そう言ってにっこりと微笑んだライクイムを見て、初対面ながらに俺は気付いた。

…こいつ、バイラインよりも恐ろしいかも…。

No.36 06/08/31 22:08
自由人0 

「あら、わたくしのことを恐ろしいかも、ですって?」
…!?
今、俺、口に出してねぇよな…!?

…え?

「あら、何を驚いていらっしゃるの?」

俺の心が…読ま…れ、て?
「あら、今頃気付きましたの。随分と遅くては?もしわたくしが貴殿方の心情が読めていないとすれば…」
「バイラインに致したことを、説明する必要はございませんわ。…だって、十雨さんは心の中から、本当にバイラインのことを心配していらしたもの」
そう言って、またにっこりと笑んだライクイムを見て、俺は訳が解らなくなり、アタマが割れるかと思った。

…不幸中の幸いにも、アタマは割れなかったが。

No.37 06/08/31 22:22
自由人0 

すると、今まで蹲っていたバイラインが、不意に口を開く。
「ライクイムの能力は心の透視だ。―…最も、此方の世界では能力のことを、ウィリーと…呼んでいるがな」
静かにそう言って、バイラインは立ち上がった。
「あ…あのっ、バイラインさん、大丈夫ですか?」
名鹿がそう言うと、バイラインは短く「ああ」と、答えた。
何故かそれに、ライクイムがむくれた様子だった。
「誰がむくれたですって?」
「うあぁっ!」
…ライクイムには何も“思え”ないな…。

No.38 06/08/31 22:33
自由人0 

…と、いうかその前に、能力とか、ウィリーってなんなんだよ…?
あーもう、何か意味解らなすぎてやば…。
「簡単に説明致しますと、清龍の世界というのは、能力者の世界ですわ」
すると、ライクイムが話し出す。
能力者の…世界!?
俺は、聞いてみようと思い、耳を傾けてみた。

No.39 06/08/31 22:58
自由人0 

「ですから、殆んどの者が何かしら能力を使え、その能力を使い、戦うことが出来るのですわ」
ライクイムはそこまで言い、一度切った。
そして、続ける。
「何で戦わなければいけないかは聞かれる前に言っておきますわね。…清龍の世界では、ごく一部ですが、ウィリーを…能力を持たない者がいますの。その者は、ウィリーを持つ者を妬み、嫌う者が殆んどですわ。」
ライクイムは言って、一つ息を吐いた。
そして今度は、バイラインが口を開く。

No.40 06/09/01 00:41
自由人0 

「そしてそいつら…ウィリーを持たない奴らと手を組み、清龍の世界を引っくり返そうと…清龍の世界を、能力を持たない者が上の世界にしようと、企てる者が現れたんだ。それが…―」
バイラインは切り、続ける。
「チカラを使わなくならねばならなくなった理由だ。…そいつらは、ウィリーを皆殺しにしても、世界を変える気だからな…。ウィリーは、無能力者に、何もしていないというのに…」
バイラインは、哀しそうに言葉を吐いた。
下を向き、目を伏せた。

…話は分かった。
今、清龍の国…世界は、大変なことになっているんだ。
多分きっと、沢山の人…能力者の人の、命が危ないってことなんだ。
彼奴らや彼奴らの話を全て信じきった訳じゃあないが、二人の口調や声を聞いて、嘘だとはとても思えなかった。

No.41 06/09/01 00:54
自由人0 

そして、ライクイムが口を開く。
「幸い、わたくしたち能力者は能力を持たない者に比べ、元々の身体能力も高く、少し戦闘技術を学べば、ある程度は武装した者とも、戦えるようになりますわ。…もっとも、個人差はありますけれどね」
ライクイムの言葉が終わると、横から声が発せられた。
「そんなことが、私たちの…知らない世界で…」
…どうやら名鹿は、今の話を全て信じきっているようだ。

No.42 06/09/01 13:40
夜宵 ( JgMf )

こんにちは☆夏さん(勝手に省略しちゃってます 笑")
物語を大きく動かしそうな二人が登場しましたね(≧∀≦)
これからも楽しみにしてます♪♪
また遊びに来ます☆゚:。+(*^∀^)ノ

No.43 06/09/01 19:24
自由人0 

>> 42 夏みかんです!
ありがとうございます!!(*^_^*)
あの二人が、今後の物語の鍵になるかも…。まだ、自分にもよく分からないのですが、どうぞ遠くから見守ってあげていて下さい!m(_ _)m

省略ありがとうございます!ってかんじです!(笑)
それでは、これからも遊びにどうぞいらして下さい!此方もお邪魔でなければ遊びに行かせてもらいます!

それでは!

No.44 06/09/01 19:30
自由人0 

名鹿がそう言ったところで、俺は本題を思い出した。
「…で、俺たちはそれに何の関係があんの?…っていうか、お前らどうやって此処に来たんだよ?」
最大の疑問点を吐き出すと、俺は一つ息をついた。
「関係ならある。…いや、それどころじゃあないな…」
バイラインがゆっくりと絞り出すように言った。

No.45 06/09/01 20:58
自由人0 

「お前らもウィリー…能力者だ」
「!?」
一瞬意味が解らなかったが、俺はすぐに理解することになる。
「淋、お前は先の世界、そして遡る世界を視ることが出来るな…。そして鹿…十雨といったか。お前は、ヒトの元を視ることができ、霊を視ることも出来るらしいな…」
バイラインは真っ直ぐに、俺と名鹿を見据えた。

…俺たちに…チカラがある…?
だけど、考えてみればそうかもしれない。
俺たちのチカラは、この世界とは比なるものだったのかもしれない。
「ですから、わたくしたちは貴方がたを迎えに来たのです。貴方がたのウィリーはとても強く、清龍の世界でも王位に値する程なのですから」
ライクイムはそう言うと、にっこりと笑んだ。
「無理強いは致しません。ですが、わたくしたち…いいえ、清龍の世界の人々は、貴方がたを待っていますの。ですから…」






「貴方がたを、清龍の世界に是非ともお連れ致したいのですわ」

No.46 06/09/01 21:14
自由人0 

これは歓迎の言葉と受け取ればいいのだろうか。

その世界に行ったら、何が起こるか分からないし、此方の世界はどうなるんだ、と思った。

けれど。

その思いは俺の好奇心に勝つことは出来なかった。

―…いつの間にか、話を信じていた自分にも驚いたが。

「俺は行くぜ」

唐突に吐いた俺の言葉が、静かな教室に響いた。
「楽しそうじゃんかよ。…そこら辺のゲームよりよっぽどな!」
俺が口にすると、バイラインとライクイムの間に、僅かな安堵感が流れるのが見てとれた。
「わ、私も…咲田くんが行くなら…ううん。私は、行きたい。行って、悪い人たちと、仲良くなってみせるよっ!」
名鹿が紡ぎだすように言った。
何故か俺の口元が緩んでいることに気付き、さらに笑んだ。

「お二人とも、覚悟はおよろしいようですわね」
ライクイムは笑み、バイラインも笑みを浮かべる。

「決まってるよ、俺はさ!いつだってよ!」

No.47 06/09/01 21:15
自由人0 

これは歓迎の言葉と受け取ればいいのだろうか。

その世界に行ったら、何が起こるか分からないし、此方の世界のことはどうなるんだ、と思った。

けれど。

その思いは俺の好奇心に勝つことは出来なかった。

―…いつの間にか、話を信じていた自分にも驚いたが。

「俺は行くぜ」

唐突に吐いた俺の言葉が、静かな教室に響いた。
「楽しそうじゃんかよ。…そこら辺のゲームよりよっぽどな!」
俺が口にすると、バイラインとライクイムの間に、僅かな安堵感が流れるのが見てとれた。
「わ、私も…咲田くんが行くなら…ううん。私は、行きたい。行って、悪い人たちと、仲良くなってみせるよっ!」
名鹿が紡ぎだすように言った。
何故か俺の口元が緩んでいることに気付き、さらに笑んだ。

「お二人とも、覚悟はおよろしいようですわね」
ライクイムは笑み、バイラインも笑みを浮かべる。

「決まってるよ、俺はさ!いつだってよ!」

No.48 06/09/01 21:17
自由人0 

すみません、間違えて二回送ってしまいました!
後の方が本当のやつです!
本当にすみませんでした!!m(_ _)m

No.49 06/09/01 21:32
自由人0 

「決まりだな」
バイラインが言うと、ライクイムは「そうですわね」と微笑み返した。
「では、今から出発してもよろしくて?…もちろん、此方の世界のことは心配なさらなくて結構ですわよ。清龍の1日は、此方の一時間にも満たないのですから」
ライクイムの言葉を聞き、安堵する。
俺と名鹿は、揃って頷いた。
「では、行きますわよ!…バイライン!」
ライクイムは叫ぶように言うと、バイラインは頷き、手を広げ、腕を前に突き出した。

「…淋、さっき、どうやって此処に来たかと聞いたな…」
俺は頷く。

「それは…こうやってだ」

瞬間、バイラインの目の前に大きな赤い渦が現れた。

No.50 06/09/01 21:48
自由人0 

その渦はまだ、まだ大きくなり、やがて一定の大きさで止まった。
「…すげ…」
思わず声に出すと、バイラインは腕を下げた。
「…これが俺の能力。“異次元空間”を造り出すことが出来る。…そこを通る時、術者が行きたい場所を思い、念じれば、違う場所に移動が可能だ」
何気無く言うと、バイラインは歩み出す。
ライクイムはそれに続き、名鹿と俺も、それに続いた。
赤い渦に向かって。


―…行ってきます!

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