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ザッツだだーんその9

No.190　17/11/27 01:28
もうねる ( 40代 ♂ Tco31b ) あ+あ-

4 じいちゃん

じいちゃんの夜は早い。
すぐ寝る。

ところがすぐ寝るもんだから、またすぐ起きる。
困った時間に起きたりする。

それが11時すぎ。

中学生になった俺だが、相変わらずおかずは少ない。

そんな俺の最大のご馳走は、11時すぎのテレビ、11PMとトゥナイトだった。

当時の情報は少ない。
新聞のテレビ欄に記されたわずかな番組情報。そこで推測しあたりを付ける。

今夜は当たりだろうと思ったら、そうっと下に行きイヤホンを差し静かにテレビを付ける。
スイッチを入れるのだってゆっくりゆっくり余計な音を立てないように。
音量はもちろんイヤホンで聞こえるかどうかのギリギリラインに。

何しろ襖を隔てたとなりの部屋にはじいちゃんが寝ているのだから。

そして、テレビのコードを手元に手繰り寄せ、右手にコンセントを左手にそれを差しているテーブルタップをそれぞれ握る。
じいちゃんに動きの気配があったら、即座にコードを抜きテレビを消せる寸法。これがリモコンのない時代のテレビ遠隔操作のベストな手段だ。
しかも音も出ないのだ。

これでは両手はふさがってしまうのだが、そこは問題ないのがイモムシ型の利点。
手など当時の俺には必要ない。
擦り付ける床さえあればそれで良いのだ。

ホント情報難の当時はやり方なんて知らなかったんだわ。

さて、あとは手元にカモフラージュのマンガを置いたら、万全の緊急時回避体勢は整い、ティッシュをセットしうつ伏せに。

ホントあの2番組にはお世話になったっけな。
でもハズレの時もあるんだ。

間違いないのは、山本晋也監督が出てきた時。
もうそれは神の降臨にも等しい。
監督が登場したら俺は勝利を確信し、心の中で雄叫びをあげたものだ。

だけど‥

そんな時に限って、じいちゃんが起きたりする。

もう今から晋也監督がお店に入るって時なのに。

俺は失意のどん底にたたき落とされながら音もなくコンセントを抜くんだ。

じいちゃんは襖を空けて便所にいって帰ってきて、『なんだマンガ読んでんのか？』などと俺に声をかける。

読みたくて読んでんじゃないわ。
俺は心の中で呟く。