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通りすがりさん
21/08/27 20:03(更新日時)

少しだけ書きます。

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No.3360943 21/08/27 18:37(スレ作成日時)

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No.1 21/08/27 18:39
通りすがりさん0 

彼の生い立ちは複雑でした。


両親の離婚後、父親に引き取られた彼は外国人を含む見知らぬ人たちの間を転々と預けられ、招かれざる客として邪魔者扱いされ、また食事内容すら差別されるような過酷な子供時代を過ごしました。


そんな生活や環境から、彼が悪事に染まっていくのは決して不思議な事ではありませんでした。
生まれつき肉体的な能力に恵まれていた事もあり、彼の内なる憤りは暴力で発散するようになりました。

父親に引き取られ、学校に通えるようになっても、彼と父親は常に絶対的な主従関係にあり、その抑圧から彼の素行は非道とも呼べるものに成り代わっていきます。

No.2 21/08/27 18:42
通りすがりさん0 

些細な事ですら我を忘れて狂ったように暴れる彼を諌めていた唯一の存在は祖母でした。
その祖母が亡くなり、彼は鎖が外れた狂犬のように更に暴れまくるようになりました。

喧嘩に行く前に、「とりあえず飯を食え。人間、腹いっぱいな時は馬鹿な事はしないもんだ」と、温かい食事と常識を与えてくれた祖母はもういません。


19歳で父親になった彼は、初めて手に入れた家族を大切にしようとしました。
2人目の子供も産まれ、30歳までに3千万円を貯めるために365日働き、不自由がないようにと家族を養っていました。
ある日、妻はお金を持ち出し、子供たちを置いて男と逃げました。


彼は再婚した父親と継母に子供を預け、東京に働きに出ました。
彼の地元では彼の悪行が響き渡り、誰も彼を雇い入れようとはしなかったからです。
幸い、父親もやはり孫は可愛かったようで、月30万の養育費で引き受けてくれました。

No.3 21/08/27 19:09
通りすがりさん0 

東京に出た彼がAと出会ったのはその頃です。

とある高級クラブのNO1だったAと彼は恋に落ちますが、Aの献身さが彼には重くのし掛かりました。
一人暮らしの彼の部屋で、食べない夕食をAは毎日作り彼の帰りを待ち続けます。
決して声を荒げず、言いたい事も言わず、ただ彼の側にいるAから彼は逃げるように家にも寄り付かなくなります。

何度も別れ話をしますが、Aは受け入れません。
ただ「絶対に別れない」と、どんなにぞんざいな扱いを受けようとも彼から決して離れようとしませんでした。
彼の父親に、自分を養子にしてくれと、身内になれば絶対に縁は切れないからと懇願してまでも、彼の側に居続けようとしました。

No.4 21/08/27 19:10
通りすがりさん0 

愛情を受けずに育った彼は、Aのそのひたむきな愛情を突き放す事が出来ません。

一般の社会で働きながらも悪事から抜けられず、命に関わる不祥事に巻き込まれた時に、助けてくれたのはAでした。


その時、彼はもう自分はダメだと思いました。
ここで死ぬんだろうと。
しかし、何故か彼は解放されました。

その裏では、Aが自分が用意できるありったけのお金をかき集め、その全てを差し出して、自分の命と引き換えでも構わない。彼の命だけは助けてくれと土下座をして命乞いをしていました。


お前はどうして俺から離れないの?と聞くと、言葉少ないAはいつもただ一言、好きだからと答えます。

No.5 21/08/27 19:22
通りすがりさん0 

そんなAとの関係を持ちながら、ある時、彼はBと出会いました。

彼とは正反対の環境で生きてきた自由奔放なBと彼は、不思議と惹かれ合いました。
そしてBとの関係も始まります。

しかし彼はBに彼の全てを隠していました。
Aの存在も、自分が身を置いている裏の社会の事も。


出会いから暫くの後、Bは彼と肉体関係を持ちました。
その事自体は不自然なものではなく、いつかこうなるだろうとお互いに感じていました。

しかし、Bからの連絡に彼が出る事は殆どありません。
Bからの連絡に折り返す事もほぼありません。

Aの存在、そして裏社会での関わりで、精神的にまともな時や拘束されていない時しか、彼はBと話したり会ったりする事が出来なかったからです。

No.6 21/08/27 19:24
通りすがりさん0 

彼はBと会える状態の時だけ、Bに連絡をして会いに行きました。

体の様子がおかしい時は事前に酒を飲み、酒の匂いを強くさせて酔っ払ってるという事にして誤魔化しました。

そしていつしかBからの連絡も段々と途絶えるようになり、数年が過ぎました。


彼は田舎に戻り、子供達を引き取り暮らせるようになり、AもNO1という立場を捨て彼の元に行きました。

裏家業で大金を荒稼ぎし、金銭感覚が狂ってしまっている彼の金銭管理を任せるほどに、彼はAを信用していました。
彼とA、子供達の4人の生活は、Aが東京に戻るまで続きました。


Aが出て行った後、彼はBと連絡を取り始めます。

No.7 21/08/27 19:28
通りすがりさん0 

Bは彼に会いに彼の元へ行きました。

数年の空白の月日などなかったかのように、彼とBは昔話に花を咲かせ、お互いの縁と好意を改めて認識します。

だけど彼とBは、その縁と好意だけで一緒にいる事は出来ません。
見えない大きな隔たりがある事は、お互いに感じていました。


Bとのやり取りが再開してから、彼はBに全てを打ち明けました。
過去の悪行、犯罪、薬、暴力。
裏の社会での自分を全て。

それらの世界を知らないBは、話を聞いてもピンと来ません。
Bは「何があってもあなたを嫌いになる事はない」と言いました。

No.8 21/08/27 19:35
通りすがりさん0 

彼には理解ができませんでした。


高級クラブのNO1という立場を長年保っていた、華やかで美しいA。
一般企業の少ないお給料で質素な生活を送りながらも、明るく日々を送るB。


彼の周りには、彼のお金や立場、暴力から、彼を利用するか彼のお金を目当てにする人間ばかりでした。

それが当たり前の人間関係だった彼にとって、お金や力で動かない事は理解ができません。
子供ですら、彼のお金に甘えているのに、AもBもお金はいらないと言うのです。


彼は自分と肉体関係を持ち、自分を嫌いにならないBの気持ちが分かりませんでした。

だから、貞操観念がない女はそこらの乞食より信用出来ないとBに言いました。
Bはあなたは特別だったからと答え、私にとってのあなたの価値を過小評価するならあなたなんかいらないと彼を突き放しました。

彼は必死で止めました。
試しただけで本気じゃないと。
Bは人を試すような人間は私に必要ないと、更に彼を突き放しました。


Bから連絡が来る事はなくなりました。
彼からの連絡にもBはほとんど出なくなり、出ても冷たい反応が返ってくるばかりです。

彼は怖くなり、Bへ連絡をしなくなりました。

No.9 21/08/27 19:40
通りすがりさん0 

そして彼は子供達の進学等をきっかけに東京に戻ります。
暫くするとAは自分の部屋を引き払い、彼の住居へ移り住みました。


彼とAの生活が再び始まりました。

Aは彼が何をしようとどこに行こうと何も言いません。
仕事も辞め、彼の食事を作り、彼の帰りを待つ日常が戻りました。


ある時、彼は血を吐きます。
苦しくて苦しくて、その場に倒れこみました。
買い物から帰ったAが倒れた彼を見つけ救急車を呼びました。

彼の肉体はもうボロボロになっており、もう長くは生きられないと医師から宣告を受ける状態でした。


今までのような無茶が出来なくなった彼は、入退院を繰り返します。

Aは入院費のために慣れない事務仕事に就きました。
既に年齢を重ね、水商売しかやった事のなかったAには辛い日々です。
辞めては働きの繰り返しの中、精神的に疲労したAは食事を作らなくなりました。
仕事帰りにお弁当を買って帰ります。

だけどスーパーに彼の好きなフルーツがあれば必ずそれを購入し、そっと冷蔵庫に入れて冷やしておきました。

No.10 21/08/27 19:51
通りすがりさん0 

命の宣告を受けた彼は、今までの自分の生き方を振り返りました。


また数年の月日が空いた頃、彼はBへ連絡をしました。
以前と変わらぬ明るい声でBが出ました。

彼はBへあの時の言葉を謝罪しました。
Bは怒っていませんでした。
あの言葉自体は許せないけど、もう怒っていないと。そして嫌いになんてなっていないよと言いました。


彼は悲しくなりました。
一生かかっても償うと言いました。
そして自分の命がもう短い事、普通の生き方がしたいとBに打ち明けました。

あれから数年の後の事ですので、Bには恋人ができていました。

彼は自分が言えばBは自分のところに来ると思っていましたが、Bが彼の言葉に引き寄せられる事はもうありません。


思えば昔から、彼が望み憧れた普通の生活、普通の生き方、普通の人としていられるのはBといる時だけでした。

No.11 21/08/27 19:54
通りすがりさん0 

Bと彼はその後、一度だけ会いましたが、もちろん二度と肉体関係を持つ事はありません。

Bは現在の恋人との関係を着実に深めながら、彼とはたまに電話で話すのみとなりました。

Bと会うための部屋を借りる、生活費も出す、何でも買ってあげる。
彼はお金でしか、人と繋がる方法を知りません。

だけどBはお金なんかいらないと言います。
もうすぐ死ぬなら、最後の瞬間に普通のまともな人間として人生を終えてくれればいい。
それが私の望みだよ。
次の人生では私があなたの母親になり、愛情たっぷりの子供時代をあげるからと。


彼は諦めました。

Bに幸せになって欲しいと言いました。
だけど困った時は頼って欲しい。
決して邪魔はしないから、たまにはこうして話をしてくれるだけでいい。

ありがとう。電話に出てくれてありがとう。
大好きだよ。と、伝えました。

No.12 21/08/27 19:59
通りすがりさん0 

Aは変わらず彼の側にいました。

子供を産める年齢もとうに過ぎました。
人生の半分以上の時間を、Aは彼に費やしました。
何もせずにただ毎日いるか、ふらっと出かけて数日は帰らない彼に、一切の文句も言わずにただ黙って彼の側にいます。


彼はAに言いました。
他に男でも作れば?いつまでも俺といても幸せにはなれないよ。
Aは絶対に別れないとやはり言いました。
どうして?好きだから。

生きて。とAは言いました。
それが私の望みだと。


彼はAに財産の3分の1を残す事にしました。
残りの3分の2は子供たちへ。

彼のAへの愛情の存在は、彼自身も分かりません。
しかし彼はAに深く感謝しています。

自分といなければ普通の女としての幸せを得られたであろうAは、結婚という形も取らず身体を求める事もない彼と、運命共同体としての生き方を選びその想いを貫いてきました。


彼がAに出来る事はお金を残す事だけでした。

No.13 21/08/27 20:03
通りすがりさん0 

彼の命の火はまだ灯っています。


過剰なアルコール摂取で蝕まれた臓器、暴力で痛め付けられた肉体、薬物の乱用で萎縮してしまった脳。


その命の火は、そよ風ですら消してしまえる可能性を孕む弱いものです。


刻一刻と、彼は死に向かい時を刻んでいます。

彼の最期がいつ訪れるか分かりません。



最後の瞬間、彼が望むものは果たして何なのか。



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