100万回の嘘
出会いは5年前…
友達の紹介で知り合った私たち……
お互い
ただ遊びたいだけだった……
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『みぃ!焦ったらダメだよ!紹介の話回ってきたら言うからさぁ!』
そんな話をしていた時だった。
アミのケータイが鳴った。
『もしもーし!………あっ!ちょっと待ってね!』
アミは電話の相手を待たせて私に話始めた。
『マサ先輩の後輩で女欲しがってる子がいて誰か紹介してほしいみたいなんだけど……!みぃ……どぉ?』
私は目を輝かせた。
『まぢぃー?!どんな子?どんな子?』
私は興味津々だった。
マサ先輩の話では…
となり町の子でちょっとヤンチャな子。
明るくて、よく喋るしおもしろい子。
『いいぢゃんッ!』
私は思わず口に出していた。
もちろん失恋したばかりの私は、ただ鳴らないケータイが淋しかったからメールや電話をして誰かと楽しく話したかっただけ。
(恋愛に発展したらいい…)
なんて全然思っていなかった。
『了解ッ!ぢゃぁ後輩に伝えておくね!すぐメール来ると思うからヨロシク』
そしてマサ先輩との電話は終わった。
……ブー…ブー…
5分もたたないうちにメールがきた。
相手はもちろんマサ先輩の後輩。
『初めまして!マサ先輩に紹介してもらったよ!ヒロです!よろしく!』
私はメールを見て無意識に頬がゆるんでいた。
そしてすぐに返信した。
『初めまして!みぃです!何才なの?』
送信ー
すぐにメールは来た。
『19だよ!タメだよね?てか今日暇?遊ばない?』
この男軽すぎッ!!
とくに断る理由もなかった私……
『別に暇だけど…2人で会うのは緊張するからお互い友達誘わない?』
送信ー
ブーブー
ヒロからのメールだ。
『いいよ!ぢゃぁ8時に待ち合わせね!ちゃんと来いよ!』
『わかったよー!』
送信ー
アミと別れてから家に帰り、私は準備を始めた。
あっ!誰か誘わないと!
私はフリーの友達を誘い、8時前に待ち合わせ場所に着いた。
ドキドキするぅー☆
ただ遊ぶだけなのに緊張する私。
そこにヒロは現われた!
『みぃ?俺ヒロ!どっか行きたいところある?』
私は定番の場所を指定した。
『カラオケー!!』
ヒロは、そんな私を見て笑っていた。
『ぢゃぁ行こうか!』
ヒロは自分の車に戻り、お互い別々の車でカラオケに行った。
9時に入店し3時間歌って騒いでいた。
私もヒロも特に会話もしないまま、お互い友達と騒いでいた。
12時になり予定の時間が来て、私たちはカラオケを出た。
『久しぶりにあんなに騒いだよー!』
私は満足気に言った。
ヒロは少し笑っ言った。
『ぢゃぁ、明日もみんな仕事だから帰ろうか!また連絡するね!』
『うん!またねッ☆』
そう言って私たちは別れた。
家に着いた私は久しぶりに騒いだせいか、すごく疲れていた。
さぁ!お風呂入って寝よーっとッ☆
お風呂に入り、寝ようとしたその時……
ブーブー………
(着信ヒロ)
私はすぐに電話に出た。
『もっしぃー!おつかれッ!』
『おつかれッ!今家?』
『そうだよ!お風呂入って今から寝るトコ!どーしたの?』
……………?!
長い沈黙のあとヒロはゆっくり話始めた。
『あっ…あのさぁ……』
『何ッ?』
『俺と付き合わない?』
?????
えッ?!
私はわけがわからなくて笑ってしまった。
『あははッ!何言ってんの?まだ今日会ったばっかだし、お互い何も知らないぢゃん!』
『ダメ?』
ヒロは真剣だった。
それでも私は納得できなかった。
『今は無理だよ!あたしまだ元彼引きずってんだよねぇ… 』
『そっか…』
ヒロはそれ以上話さなかった。
時計を見ると午前3時。
私が沈黙を破った。
『明日仕事で朝早いから寝るね!ヒロも仕事でしょ?早く寝なよ!』
『おぉ!ぢゃぁまたね!』
私は電話を切った。
疲れていたせいか即効爆睡。
その日から私たちは毎日会うようになった……
1週間後……
仕事を終えた私はケータイを開いた。
(不在着信5件)
誰だろ……??
着信の相手はアミだった。私はすぐに電話をした。
『もっしぃー!電話ゴメンね。今仕事終ったんだぁー!』
『何回も電話しちゃってゴメンね……私…彼氏にフラれちゃった……』
アミはその日、彼氏に突然別れを告げられたらしい。
『そっかぁー。アミ!次だよ次!終った恋なんて思い出にしてさぁ!』
私は明るく振る舞った。
『あっ!そうだッ!今日ヒロと会うんだけど、アミも一緒にどぉ?ヒロに友達誘ってもらうからさぁ!みんなで遊ばない?』
アミの返事は速答だった。
『まぢぃー?!賛成ッ☆遊ぶ遊ぶぅー!』
アミはいつもの元気を取り戻した。
私はヒロの仕事が終るのを狙って電話した。
ヒロにアミが来ることを伝えるとヒロもすぐに賛成してくれた。
その日、私はアミも一緒ということで、いつもよりハイテンションでヒロとの待ち合わせ場所に向かった。
今日はヒロの友達も来て4人で夜景を見に行く事になった。
待ち合わせ場所に着くとヒロたちはすでに到着していた。
私は車を止めると走ってヒロの元に行った。
『ごめーん!待った??』
『おれらも今ついたとこ!こいつがタッチャン!こいつ失恋したばっかだから今日の出会いを楽しみにしてるらしいよ!』
ヒロは笑いながら言った。
『タッチャンね!よろしく!こっちはアミ!今日はみんなで楽しもうね!』
そして私たち4人は山道を歩き夜景の見える場所へ向かった。
山を少し登と、そこには先が見えないくらい暗くて長い階段があった。
『えッ?もしかしてココ登の??』
私とアミは声をそろえて言った。
そんな私たちにはお構いなしのヒロとタッチャンは子供のような笑顔で階段を走って上がって行ってしまう。
『ちょっと待ってよ!』
私とアミは必死で追い掛けた。
『遅いよ!アミチャン頑張れよ!』
ヒロが振り返って言った。
『アミチャン大丈夫?!頑張って!』
タッチャンがアミに向かって言った。
『待ってよ!早すぎだってぇー!』
アミは息切れしながら叫んだ。
その光景を後ろで見ていた私はなんだかうれしかった。
アミが元気になってくれればそれでよかった。
頂上に着くとそこにはキラキラと絶景が広がっていた。
『すっごーい!キレイっ!』
4人は目を輝かせた。
私はヒロと…アミはタッチャンと語り始めた。
私はヒロに元彼の話をした。
『実はさぁ、私失恋したばっかなんだぁ…私、すごいスキだった。でも向こうには彼女ができちゃったんだって…』
私の話をヒロは、ただただ黙って聞いてくれていた。
1時間がたち、ヒロは急に立ち上がった。
『そろそろ下りようかッ!』
その呼び掛けで4人は再び集まった。
その時………
えっ…………??
私は目を疑った…
なんとそこには、手をつないで仲良さそうに歩くタッチャンとアミがいた。
私は驚きを隠せずに口を開いた。
『えっ?何?何があったの?手………』
アミとタッチャンは見つめ合ってケラケラ笑っていた。
『俺ら付き合うことになったからッ!』
タッチャンは照れ臭そうに言った。
『まぢでぇー?!』
私とヒロは見つめ合い思わず笑ってしまった。
そして声をそろえて言った。
『おめでとぉー!!』
私は2人が羨ましかった。
駐車場に着くとアミとタッチャンは語り足りなかったらしく、また話始めた。
私もヒロと話始めた。
その時、ヒロは急に黙り込んだ………
どうしたんだろ……
ヒロの異変に気付き私も黙った。
『みぃ………俺と付き合ってくれない?』
えッ……
私は固まってしまった。
そして少しずつ想いを口にした。
『ありがとう。すごくうれしいんだけど……私やっぱりまだ元彼忘れられてないし……なんて言うか……その……ヒロの事好きってゆう感情もないし……だからゴメン……』
ヒロは一点を見つめて何か考えている。
そしてまたヒロは話し始めた。
『元彼を想っていてもいい!そんなヤツ、俺が忘れさせてやるから!だから……俺と付き合って?』
私は今までに言われたことのない言葉を聞いて戸惑った。
そして答えた。
『返事……ちょっと待ってくれない?考えさせて…』
『わかった!』
そして私はアミと、ヒロはタッチャンと帰宅した。
私は帰り道、アミに相談してみた。
『私、ヒロに告られたんだけど………』
アミは目を輝かせた。
『よかったぢゃんッ!!もちろんオッケーしたんでしょ?!』
『それが……待ってもらってるんだよ……』
アミは不思議そうに私の顔を見た。
『何で?ヒロくんぃぃ人そうぢゃんッ!何に迷ってんの?』
私は言葉に詰まった。
『私まだ元彼好きぢゃん。だからさぁ……』
アミはため息をついた。
『みぃ!終った恋は忘れて次の恋!でしょ?みぃが言ってた言葉だよ!』
私は我に返った。
確かに!ここに来る前に私がアミに言った言葉だ。
私はアミのその言葉で決心した。
次の日の夜……
私はヒロを呼び出した。
『急にゴメンね!』
とりあえず謝った。
『全然いいよ!』
ヒロは笑顔で答えた。
そしてゆっくりと本題に入った。
『あの……この前の返事だけど……私まだ元彼忘れられないけど、それでもよかったら……』
ヒロはうれしそうに言った。
『付き合ってくれるの?!』
『うん。お願いします。』
私も笑顔で答えた。
そして私たちはカップルとなった。
その日から私は魔法にかけられたようにヒロにはまっていった………
付き合って1ヵ月がたったある日……
『話しがあるんだけど今1人?』
アミからのメールだった。
『そうだよ!どうした?!』
送信ー
ブーブー……
(着信アミ)
私はすぐに電話に出た。
『もっしぃー?!どうした?』
アミは言いにくそうに話し始めた。
『みぃ………
まだヒロと続いてるよね?』
『もちろんだよ!仲良しサンだよ?!』
アミは続けて話した。
『落ち着いて聞いてね。
マサ先輩から今連絡があって………
ヒロクン他にも付き合ってる子いるんだって。
3又かけてるみたい……
気を付けるように言ってあげてって言われたんだけど………』
はッ?
そんなわけない。
ヒロと私は毎日会っている。
怪しいところなんて1つもない。
私は何が起こっているのか把握できなかった。
『嘘でしょ?だってヒロといつも会ってるし怪しいトコなんてないよ?』
アミはマサ先輩が言っていた事を話しはじめた。
『マサ先輩、昨日ヒロに会ったんだって。その時、ヒロが「俺、また女増えましたよ!この前紹介してもらった女。落とせました。まぢ忙しいっすよー!」って笑ってたって。ヒロ今モテ期みたいで調子にのってるらしいよ!』
『うそッ…………』
それ以上、言葉が出ない私……。
アミも、どうしていいのかわからなかったのだろう。
私は気持ちを切り替えた。
『アミ!ありがとう!私今日ヒロと話してみるよ!』
私は電話を切った。
辛い………
人生で初めての経験だった。
ただの噂かもしれない。
決め付けてヒロに話したらきっと怒るだろう……
とりあえずヒロを家に呼んだ。
ヒロはいつもとかわらずリラックスしていた。
私は話を切り出した。
『ねぇヒロ!なんか隠してる事ない?』
ヒロの顔が見れない私……
『何もないよ!なんで?』
ヒロは冷静に答えた。
『ヒロ……他にも女いるんでしょ?今日ある人から聞いちゃったんだぁ…ホントなの?』
ヒロは…………
キレた!!
『はっ?誰だよ!そんなデタラメ言ってるヤツ!ありえねぇーんだけど!てか、俺の事信じてねぇの?おまえもそれ聞いて浮気してると思ったんか?意味わかんねぇ!!もぉいいよ!別れよ!』
ヒロは一方的に別れを告げ、歩いて帰っていった…
気付いたら私は泣いていた。
初めての経験。
どうしたらいいのかわからない。
ヒロを信じる?
まわりの人を信じる?
………
私はヒロを信じた。
そして家を飛び出し、走ってヒロを追い掛けた。
『ヒロ!待って!ゆっくり話そう!』
『いまさら何話すの?おまえは俺が信じれないんだろ?何も話すことねぇーよ!』
ヒロはまた歩き出す。
私はヒロの腕をつかんだ。
『私…ホント最低な事した。初めての経験でどうしていいかわからなかった。でもヒロが好き!大好きなんだよ!お願いだから!別れるのは嫌!』
しばらく沈黙が続いた……
そしてヒロが口を開いた。
『まわりの言うことなんて気にするなよ!俺もおまえが大好きだよ!でも信じてもらえないのは辛すぎる!俺はお前だけ!わかってくれる?』
ヒロは私を抱き締めた。
私はヒロの腕のなかで泣いた。
なんてバカな事をしたんだろ…
大好きな人を悲しませた私…
最低だ…
わたしは反省した。
それから数日たったある日、ヒロは私の家に初めてのお泊り。
私はウキウキしていた☆
その日の夜、私たちは初めてキスをした。
そしてヒロの腕の中で眠りについた……
次の日…
私はヒロより先に目が覚めた。
今何時だろ………?
私の部屋の時計…壊れてるんだった……
私は近くにあったヒロのケータイを開いた。
時間を見たいだけだった。
しかし………
待ち受けには知らない女の写メが…………
誰??
一般人だよね?
嫌な予感………
私は頭が回らない。
寝起きだから?
違う……
そうじゃない……
私は無意識のうちに送信ボックスを見ていた。
そこには目を覆いたくなるようなメールがたくさんあった……
TOマユ『俺のところに戻ってきてくれてありがとう』
TOアユナ『昨日は楽しかった。絶対幸せにするからな!』
何これ………
何???
私は現実を見てしまった…………………
その時だった……
ヒロが目覚めた。
私は開かれたままのケータイを慌てて閉じた。
『みぃ!起きてたの?早いぢゃん!』
ヒロは眠そうな目をこすりながら言った。
『うん………』
私は
冷静に!
と自分に言い聞かせた。
………が
私は態度に出やすい。
隠し事ができない。
ヒロはそんな私の態度にすぐに気付いた。
『何?どうしたの?怒ってんの?』
……………
沈黙が続いた。
私は怒りを押さえ、冷静に話始めた。
『私……ヒロのケータイ見た。その待ち受けの女の子は誰?』
ヒロはすぐに答えた。
『あぁ!この子は後輩の妹!超可愛いから待ち受けにしてるの。』
ヒロは笑って答えた。
『へぇ……!ぢゃぁ、メールしてる女は誰?あんた彼女いるの?モテるんだねッ!』
私は怒りを押さえられずについにキレてしまった。
ヒロの表情は一瞬にして凍り付いた。
『あっ!このメール送ったの俺ぢゃないんだ。なんかツレにケータイ貸したら、面白がって勝手にメール送ったりしてさぁ……………………』
はッ?
そんな言い訳が通用すると思うのか?
バカぢゃん!
もっとうまく嘘つけないのかよ!
私はしばらく黙っていた。
聞いてやる!
あんたの言い訳、最後までしっかり聞いてやるよ!
私はヒロのメチャクチャな言い訳をひたすら黙って聞いていた。
しばらくしてヒロの言い訳は終った。
ヒロは許してもらえると思ったのだろう…
『誤解招くような事してゴメンね!俺のツレはみんなノリでこーゆー事するからさぁ!あははッ』
ヒロは笑っている。
私はヒロの目を見た。
そして………
『別れよ!』
静かに別れを切り出した。
ヒロが帰った……
1人になった部屋で私は一点を見つめ座り込んだ。
そしてヒロからのメールを一気に削除した。
夜7時……
突然ケータイが鳴った。
(着信ヒロ)
『何?なんか用?』
私はキレぎみに言った。
『今家にいる?』
ヒロは悲しそうに言った。
『家にいたら何?』
私はさらに冷たい態度をとった。
すると電話は切られてしまった……
ちょっと言い過ぎた………?
考えていたその時
玄関が開き、誰かが入ってきた。
『おじゃまします!』
ヒロだ………
私は布団に潜り込んだ。
ヒロはノックをして部屋に入ってきた。
『みぃ!話がしたい!全部正直に話すから……お願いします!』
土下座をしているヒロ。
私は仕方なく布団から出た。
そしてヒロはゆっくり話始めた。
『ミィ!俺浮気してた。最初にミィに「女いるの?」って聞かれた時、正直おどろいた。でも俺はミィが一番好きなんだ!あの女達とは縁を切る!だから別れないでほしい…俺とずっと一緒にいてくれ!』
気付くと私は泣いていた。
みんなは浮気を許すのだろうか…
1回の浮気も許せない私は…
心が狭いのか??………
私の頭の中はグチャグチャだった…
そして私は決めた!!
私はまだヒロが好き。
ホントは期待している…
私との別れをつなぎ止めてくれた事に安心している……
だけど……
浮気は許せない!
『ねぇ、ヒロ?あの女の子たちとはどうなったの?はっきり言って!』
ヒロはケータイを開いて見せた。
『別れたよ!あの二人には彼女がいる事を伝えた。見てみ!』
ヒロは私にケータイを見せながら説明した。
ヒロは二人に
(実は彼女がいるんだ。別れて!)
とゆうメールを送っていた。
二人からの受信メールは
(わかったよ!ばいばい!)
以外にもあっさりしていた。
それから2ヵ月がたったある日………
私はいつものように仕事に向かった。
高校を卒業してから雑貨屋で働きだした私は入社1年で店長になった。
毎日の朝礼、終礼は私の役割だ。
半年前に高校2年生の田中と高橋がバイトで入ってきた。
田中は、いつも下ばかり見ている暗そうな子…
接客には不向きな感じだった。
高橋は明るい性格。
私はいつの間にか仲良くなっていた。
ある日、私は仕事が終って駐車場に向かって歩いていた。
そこに………
『店長ー!!』
元気な声が聞こえた。
私は振り返った。
そこにいたのはバイトの高橋。
『おつかれー!どうしたのッ?また恋の話ッ??』
私は笑いながら聞いた。
『店長と最近恋の話してなかったからぁー!最近どうなんですかぁー?彼氏できましたかッ?』
高橋はいつも明るい。
『やっとできたよー!今4ヵ月くらいだよ!超ラブラブ!!』
高橋は目を輝かせた。
『超うらやましいんですけどぉー!!てか何でおしえてくれなかったんですかぁー!』
高橋はすねている。
妹みたいで可愛い。
『ごめんねッ!なかなか話す時間なかったからぁ!』
高橋はいつもハイテンション。毎日が楽しそうだ。
『店長の彼氏サンは、どんな人ですか?どこの人ですか?』
高橋の質問攻めが始まった。
『隣町の人だよ!私とタメで………今はギャル男!』
知り合った当時はカジュアル系だったヒロ。
私はココルル大好きの原色ギャル。
ヒロは私の影響を受けココルルにはまっていった。
私もヒロもココルル。私はうれしかった。
ヒロは私が付けていたココルルのブレスレットが気に入ったらしく、二つ持っていた私は一つヒロにあげた。
ヒロはそれほどココルルにはまっていた。
そして次の日……
いつもと変わらず仕事が始まった。
今日は高橋が何か変…
どうしたんだろ……
私は高橋の異変に気付いて声をかけた。
『元気ないぢゃん?どうしたの?』
高橋はうつむきながら言った。
『店長……帰り、話す時間ありますか?』
『いいよ!ぢゃぁ仕事終ったらゆっくり話聞くから仕事頑張ろッ!笑顔笑顔!』
私は元気ない高橋を励ました。
その後、高橋から何が語られるのか気にもせずに………
仕事が終り、店を出ると高橋が待っていた。
『ごめんねぇー!遅くなっちゃった!』
私は元気よく高橋の元に向かった。
『店長すいません…』
相変わらず高橋は元気がない。
『何があったの?』
私はさっそく話を進めた。
黙り込む高橋。
そして………
『店長……店長の彼氏サンって、隣町のタメでヒロって名前なんですよね?』
ヒロ?
ヒロの事?
私はなぜか心臓がバクバクしていた。
『そうだけど……それが何?』
私は冷静に聞いた。
高橋はうつむいたまま話はじめた。
『あの……私と同期の田中サンっているぢゃないですか。昨日、田中サンと恋の話していたんです。』
田中は見た目、すごく暗そうな女の子。
しかし、高橋とは同期ということもあって仲がいい。
高橋は続けて言った。
『田中サンも彼氏いるらしいんですけど……店長の彼氏サンと同じ人って感じがして………』
えッ?何?
何言ってるの?
ヒロは……
田中とも付き合ってるの?
私はパニック状態だった。
『店長の彼氏サンってギャル男って言ってましたよね?ココルルの服着てないですか?』
私はドキっとした。
『着てるけど……こんな身近で二股とかしないでしょー?!』
信じたくなかった。
間違えであってほしいと何度も願った……
その時、私はある事に気付いた。
田中の下の名前って何だろ…
私の会社はバイトの面接はすべて社長が行う。
田中と高橋が入った時も
『今日からバイトしてもらう、田中サンと高橋サン。よろしくね!』
社長からは名字で紹介されただけ……
私は恐る恐る高橋に聞いてみた。
『ねぇ…田中って……
下の名前何かわかる?』
次の瞬間……
私は耳を疑った。
『アユナだよ!』
……………………………
私は開いた口がふさがらなかった。
こんな身近にアユナがいた。
高橋の言っている事は当たっていた。
間違いであってほしいと願った私がバカだった…
『田中サンと恋の話したの昨日なんで、今も付き合ってると思いますよ。
あっ………!!』
高橋は何かを思い出したのか、急に大声で叫んだ。
『そいえば今日、田中サンがココルルのブレスレットしてましたよ!彼氏にもらったとかで…超うれしそうに自慢してましたよ!』
その言葉で私の中の何かが切れた。
ははっ……
私があげたブレスレットぢゃん…
お気に入りだった私のブレスレット……
ヒロだからあげたのに……
アイツは……
田中にプレゼントしたんだ………
最低な男……
私は家に着くとすぐにヒロを呼んだ。
ヒロは慌てて来たのだろう。
仕事着のまま持ってきたお茶を一気に流し込んだ。
『急に、来てってゆーから何事かと思ったよ!どうした?』
ヒロはすぐに私の異変に気付いた。
『何か…怒ってるよね?』
ヒロは恐る恐る聞いた。
『私があげたブレスレット、今どこにある?』
ヒロは目を見開いた。
そして………
『あーッ!あれ!仕事中は汚れるから家に置いてあるんだ!俺、超気に入ってるからキレイに使いたいし!』
私はヒロから目を反らさず続けた。
『へぇ!そんなに気に入ってるのに、あげちゃったんだ。幸せだねぇ!アユナちゃんは!』
ヒロは驚きを隠せない。
『えッ?!何言ってんの?お前?俺あいつとは別れたんだよ!』
ヒロの顔色はどんどん変わっていった。
『別れた?そーなんだ。ぢゃぁ明日本人に聞いてみるね!』
ヒロは焦っていた。
『何?あいつと知り合いなの?どーゆー事??わけわかんねぇ!』
ヒロは相当テンパっている。
そんなヒロから目を反らさず私は冷静に答えた。
『知り合いだよ!今日知ったんだけどね!近くにいたんだ。ずっと前からね!』
そして………
そしてまた、ヒロの言い訳が始まった。
『違うんだよ!一度は縁を切ったんだ。だけど1週間後にアイツ、やり直したいって言ってきたんだ。俺、断りきれなくて………』
だから何?
アンタはズルイよ…
ズルイ………
『私の事は忘れて!アユナちゃんと、お幸せに!!話はそれだけ。バイバイ!』
私は茫然と立ち尽くすヒロを無理矢理家から押し出した。
そして泣き崩れた私……
悲しかった…
悔しかった……
悔しいけど……
ヒロの事が大好きなんだ……
私は大親友のヤスに電話をした。 男の意見が聞きたい時は必ずヤスに聞く。 何でも正直に答えてくれるヤス。 私はすごく頼りにしていた。
プルルルル………
『もしもーし!久しぶりぢゃんッ!いい恋してるぅ?』
いつものハイテンションで電話に出たヤス。
『聞いてよー!!』
泣きながら叫ぶ私。
『どうした?何かあったのか?ゆっくりでいいから俺に話して。』
ヤスはいつもやさしい。 優しすぎて堪えていた涙があふれる。
私はすべてをヤスに話した。
『浮気されたんだ…私はホントに大好きだった。アイツは遊びだったのかなぁ?私はヒロにとって、1番ぢゃなかったのかなぁ………』
一通り話終るとヤスはゆっくり口を開いた。
『俺、思うんだけど……泊りにきたりする?そいつ、始めからヤリ目だったんぢゃない?俺のまわりにも、そーゆーヤツいるんだよ!』
私はすぐに答えた。
『ヤリ目?!私たち付き合って4ヵ月だけど、確かに今まで何回か泊りにきたよ!でも……まだエッチはしてないの!』
ヤスは黙ってしまった。
しばらく沈黙が続いた。
そしてヤスは言った。
『ごめん。俺、まぢわからねぇ!そいつが何考えてんのか、さっぱりわからない。俺はヤリ目だと思ったけど……手だされてないなら、そいつの目的は何なんだろ…』
そうだよね……
わからないよね……
あいつの考えは誰にもわからないよ……
誰か教えてよ………
電話を終えると、メールが来ていた。
嫌な予感……
私はゆっくりとメールを開いた。
ヒロだった。
『ごめん。アユナからのメールで俺は浮かれていた。バレなければいいと思ってた。でもこれだけは信じてほしい。俺が一番好きなのはミィだ!アユナとは本当に別れるから。考え直して!』
またこれか……
前にも許してるんだけど……
『無理!』
送信ー
私は一言だけの返信をした。
それから1ヵ月がたった。
ヒロからは毎日メールが来る。
『もう一度付き合いたい!』
私は返信をしない。
ずっと……
電話もメールも無視し続けた。
そんなある日、高橋から話があると言われた。
仕事が終わり、高橋と話を始めた。
『店長!やっぱり田中サンの彼氏と一緒の人だったんですね……。でも田中は別れたらしいですよ!1ヵ月前に。「好きな人ができたから、やっと吹っ切れた!」って言ってましたよ!店長!よかったですね!』
よかった……?!
そっか……
高橋はまだ私たちが別れた事も知らないんだ……
『私たちも別れたんだよ!1ヵ月前にね!今だにヒロからはメールくるんだけど、もぉいいんだ!』
私は明るく振る舞った。
『えぇー!!せっかく田中と別れたんだから戻ればいいのに!もったいないぢゃん!もぉヒロサンの事好きぢゃないの?』
好きぢゃない……?!
好きだよ…
大好きだよ……
どんなにヒドイ事されても……
大好きすぎて仕方ないんだよ…
高橋からの情報を聞き、安心している私がいた。
その日もまたヒロからのメールは来た。
私は無視を続けた。
こんな人と一緒にいちゃいけない……
でも一緒にいたい……
一体どうすればいいんだろ………
私は毎日そんなことを考えていた。
もう一度信じてみようかな……
ヒロとゆう一人の人を信じてみよう……
その時………
ブーブー………
(着信ヒロ)
ヒロだッ!
私は1ヵ月ぶりにヒロからの電話に出た。
『はい……』
『あっ………俺だけど……やっと出てくれた……ありがとう!』
ヒロは私が出ないと思っていたのだろう。
すごく驚いていた。
『うん………』
『みぃ!何度も浮気してゴメン!もう一度信じてください。もう一度付き合ってほしいんだけど………』
『いいよ!もう絶対浮気しないでよ!!約束だからね!』
『やったぁー!!ホントありがとう!』
ヒロはすごく喜んでいた。
この時は………
そして私とヒロは寄りを戻した。
ヒロとまた付き合えた。
私は大きな不安もあったけど、嬉しさの方が強かった。
仕事にもいつもより力が入った。
その日から、私たちはまた毎日会うようになった。
どこかに行くわけでもなく、ただ車のなかで話していたり、思い出の夜景を見に行く程度。
けれど私はヒロと一緒にいれるだけで嬉しかった。
ヒロとはケンカもなく、順調に1ヵ月がすぎた頃だった……
仕事が終ると、また高橋に呼ばれた。
嫌な予感………
そんな事を考えながら私は高橋の待つ場所まで向かった。
『おまたせ!!』
私は明るく振る舞った。
『店長!待ってましたよー!』
高橋はいつもの笑顔だった。
少し安心した私……
そういえば、まだ高橋にヒロと戻った事、伝えてなかった……
私が口を開いたその時……!!
高橋が先に話し始めた。
『店長ー!!何でヒロサンの事フッちゃったんですかぁ?!好きだったら戻ればよかったのにー!!もしかして………次の彼氏できたんですかぁ!??』
高橋は、からかうように言った。
ヒロをフッた?………
フルも何も、私たち戻ったんだけど……
てか私…
高橋には何も話してないよね?!………
何で?!……
誰が高橋に私たちの事、伝えてるの??………
私は探るように答えた。
『まぁねぇー!あははー!!てか何で高橋が知ってるの?』
私は平常心を保ち、聞いてみた。
『何で知ってるって……決まってるぢゃないですかぁ!田中ですよー!あの子、聞いてもないのにペラペラ話してくるんですよー!』
高橋は笑いながら言った。
私も笑った。
だけど心の中は疑問だらけ……
『もしかして…あの二人、付き合ってんの?』
私はさりげなく聞いてみた。
『付き合ってないですよ!何か「最近ヒロからメッチャ連絡くるー!まっ、私も今の好きな人と付き合えるまでは暇だから、暇つぶしに電話とかメールは全然OKなんだけど!」とか言ってましたぁー!今の好きな人は………… 』
私はかなり怒っていた。
またか………
高橋はそんな私に気付かず、田中の今の好きな人の話を楽しそうにしている。
だが、私の耳には何もはいってこなかった。
『店長聞いてますか?!』
高橋の呼び掛けに私は我に返った。
『ん?ゴメン!ボーッとしてた!』
私は笑って答えた。
私たちは笑いあった。
『何か今日は疲れちゃったぁー!そろそろ帰ろうか?』
私は早めに切り上げた……
私にはやるべき事があったから………
そして私は怒りに耐え切れずヒロに電話した。
『もしもーし!』
ヒロは上機嫌だった。
『あんたアユナとまだ連絡とってたんだね!一体何がしたいの?私なんか悪いことした?何で裏切るの?信じてたのに!』
ヒロは焦っていた。
『誤解だよ!俺は「連絡してくるな!」って何度も言ってるんだよ!だけどアイツが連絡してくるんだ!俺も困ってるんだよ!』
私の怒りは治まらなかった。
『あの子に私と付き合ってる事言ってないからこうなるんでしょ!はっきり言えばいいんだよ!アンタが曖昧にするからいけないんでしょ!もぉアンタなんてどうでもいいよ!好きにしなよ!』
私は勢いで電話を切った。
電話を切ってから1時間がたった頃………
ブーブー……
(着信ヒロ)
何だよ……
何で連絡してくるんだよ……
でもいい…
この際、正々堂々勝負してやろう………
私は電話に出た。
『なに?』
『今から出れるか?来てほしいところがある。どうしても誤解を解きたいんだ。アユナにも来てもらうから、ミィにも来てほしい!』
『は?いかないよ!行ってどうなるの?』
拒否する私にヒロはさらに続けた。
『来てよ!ホント誤解なんだよ!信じてよ!』
私はもう全てヤケクソになっていた。
どうにでもなれ……
好きにすればいい……
『好きにすれば!』
私は開き直った。
『ぢゃぁ、今から迎えに行くからな!!』
そしてヒロは電話を切った。
ヒロはすぐに家に来た。
電話をかけながらウチに向かっていたのだろう……
そして荒々しく部屋に入ってきた。
『来て!』
座っていた私を強引に引っ張り、私はヒロの車に乗せられた。
向かった先は来たことのない公園。
そこには田中の姿があった………
会社にいる時と同じ。
田中はズット下をみている。
そしてヒロは口を開いた。
『みぃ!コイツに言いたいこと全部言え!!』
はっ?
言いたいこと?
聞きたいことがありすぎて………
どれから話せばいいの?
私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
先に口を開いたのは田中だった。
『みぃサンすいません。ホントにごめんなさい。』
すいませんってなに?
ごめんなさいって何が?
『あのさぁ、ヒロは田中から連絡くるって言ってるんだけどホントなの?』
私は冷静に聞いた。
『はい。全部私からです。ヒロから、ミィサンと付き合っている事も聞きました。本当にすいませんでした!』
『何がしたかったの?私からヒロを奪いたかったの?目的は?』
私はさらに聞いた。
『いや……その……奪いたいとかぢゃなくて…ただ………暇……だったカラ………とか……』
田中の答えはすごく曖昧だった。
暇だったから……?
なにその理由………
意味わかんないよ………
てか田中。まだ何か隠してるよね………?
さっきから田中はチラチラとヒロを気にしている。
まだ何かがあるに違いない……
ヒロは私に目を向けた。
『これでわかっただろ!俺から連絡したんぢゃないって事!お前は俺を疑ったんだ!謝れよ!』
ヒロは私に向かって強い口調で言った。
私の胸騒ぎはまだ治まらない。
今田中が言った事は全てぢゃない気がしたから……
田中は言った。
『もう絶対連絡しません。みぃサン!ヒロと仲直りしてください!』
私は………
『ごめんなさい……』
ヒロに向け、謝った。
曖昧なまま……
謝ってしまったんだ……
『ったく!俺は悪くないのに疑われるし散々だよ!』
ヒロは呆れたように言った。
『誤解も解けたし、もういいな!帰るぞ!』
ヒロは私の手を引っ張った。
そして私は立ち上がった。
その時だった……
田中はヒロを止めた。
『ヒロ!やっぱりこんなんダメだよ!よくないよ!ミィサンにホントの事言っていいよね?』
田中の発言にヒロは戸惑いを隠せない様子。
『なっ、なんだよ!ホントのことって今言っただろ!もう話は終ったんだ!』
ヒロは何か焦っている。
そして…………全てが明らかになった……
『みぃサン!すいません。あの……今言った事、全部嘘です!ホントは連絡してきたの全部ヒロからなんです!私からは一切していません。ココに来る前、ヒロから連絡がありました。「これから話し合いをするから全部お前から連絡してきた事にしてくれ!」と。嘘ついてすいません。でもヒロはホントにミィサンのこと好きです。私に電話をしてきても内容はミィサンのことばかり。だからヒロの事、許してあげてください。お願いします。私は今後一切、連絡がきても無視します。電話に出たり、メールを返していた私も悪いんです。ゴメンなさい。』
私の中のモヤモヤしたものが一気に取りのぞかれた。
『わかったよ!ありがとう』そして、私は田中を帰らせた。
ヒロを見るとヒロは化けの皮が剥がれ、肩を落とし下を向いていた。
『どーゆー事だよ!』
私の怒りは爆発した。
『全部嘘かよ!ふざけんなよ!』
あまりの怒りに私は言葉が出てこなかった…
言いたい事がありすぎて……
全ての事を一気に言ってしまいたくて……
言葉につまる………
情けない……
悔しい……
パシッー………
私はヒロの頬を叩いた。
そしてヒロは言った。
『俺はお前がどうしようもなく大好きなんだ!でも時間がたつと浮かれて欲が出てしまう。自分が情けないよ。』
バキッー………
音のする方に目をやると、無残にも真っ二つに折られたケータイがあった。
『俺。1からやりなおす!今までの俺にさよならする!ミィのために俺、変わってみせるよ!』
それから1週間がたったある日……
ブーブー…………
(着信)
登録されていない番号だった。
私は知らない番号だったので出なかった。
ブーブー……
(メール受信)
電話が鳴り終るとすぐにメールがきた。
誰だろ………
そこには、
『ミィ』
と、私の名前が入ったアドレスがあった。
『ミィ!俺は今までミィにはつらい思いばかりさせてきた。本当にゴメン!新しいケータイを買ったんだ!俺はココからスタートする!だから……もう一度信じてくれ!!』
ヒロからだった。
『私は、今までヒロにたくさん裏切られてきたんだよ!もぅ信じられないよ!私たち……もう無理なんだよ!』
送信ー
私の頬には涙が流れていた。
ブーブー……
受信ー
『本当にゴメン。今すぐに信じてくれとは言わない。これからの俺を見てほしいんだ!俺、変わるから!』
ヒロ………
ヒロの事は、大好きだよ……
大好きだから信じたいんだ………
でも私…………
怖いんだよ………
そして、ヒロからは何度も電話やメールが来たが無視し続けた。
どうすればいいか…
自分はどうしたいのかがわからなかったから………
その日の夜、考えながら眠りについた私。
そして次の日の朝。
私は決心した。
今日は仕事が休み。
私は朝からある事を決めていた。
身仕度をすませた私はヒロに電話した。
『もしもし!ミィー!』
『おはよ!あの……夜景みた場所いこ!』
私は付き合うキッカケになった、あの夜景が見える山にヒロを誘った。
ヒロは喜んでいた。
そして、約束の場所に向かった。
ヒロはすごく急いで来たのだろう。
私が着くと、ヒロはすでに待っていた。
『待った?』
私は笑顔で話した。
『全然!それより誘ってくれてありがと!』
ヒロは喜びに満ちた笑顔だった。
私は静かに頷くと、その場でヒロに話をした。
『ヒロ。私はホントに大好きなんだよ!ヒロと付き合ってから、辛くて何度も泣いた。でも私、それでもヒロが大好きなんだ!自分でも不思議なくらい大好きなんだよ!今は信じれる自信がないけど……ヒロはそれでもいいの?』
ヒロはゆっくり私を抱き締めた。
そして……
『ミィが傍にいてくれるならそれでいい。俺が信用なくすような事をしたからいけないんだ!俺、これからはミィを大事にする!絶対に!!』
私たちは見つめ合いキスをした。
するとヒロはクスクス笑いだした。
『なにがおもしろいの?』
私は不思議そうに聞いた。
『いやッ。俺、こんなに本気になると思ってなかったから……』
えッ?!
『どうゆう事??』
笑って話すヒロに、私はさらに問い掛けた。
『俺、2年前に付き合ってた彼女がいたんだけど、急に「彼氏できたから別れて!」って言われたんだ。何もできない自分が悔しかった。俺、その事があってから女が大嫌いになった。それから俺は女を騙して楽しんでたんだ。みんなに紹介頼んで、いっぱい女紹介してもらって……俺、ホント狂ってたんだ。ヤルだけヤって捨てたりね!ミィもその中の一人だった。
最初は体目的だったんだよ。好きだから付き合いたいとかぢゃなくて、ヤリたかっただけだった。ゴメンね!
でも何でだろ……
ミィには手出せなかったんだよね……』
ヒロは照れながら話していた。
私も言わなきゃ……
『ヒロ……
私もね、付き合った時は全然好きぢゃなかったんだ。元彼が大好きだったから。
てゆーか、ヒロの事は軽い男だって思ってたし、私も失恋したばかりで……誰でもよかった。淋しさが紛れるなら誰でもよかったんだ。
でも……気付いたら私、ホントに元彼の事忘れてたんだ。ヒロが大好きになってた。』
ヒロは笑顔で聞いていた。
『俺たち……お互い遊びだったんだな!』
二人は笑い合った。
そしてヒロは私にそっとキスをした。
それから私たちは幸せな毎日をすごした。
しかし、私からはヒロへの疑いは消えず、いつの間にかケータイを盗み見る癖がついていた……
私が浮気されたのはヒロが初めてだった。
浮気……
人それぞれだと思うが、私は
(浮気をしている人はコソコソ隠したり、何か怪しい行動をとるもの……)
そう思っていた。
しかし、ヒロは全く違った。
私と一緒にいる時……
・女から電話がかかってきても、ちゃんと出る。
・来たメールは、しっかり返信する。
・泊りに来て寝る時、ケータイは枕元に堂々と置かれている。
完璧な作戦だった…
人間は誰でも、隠されると余計に気になるもの。
それをヒロは、ちゃんと分かったうえで浮気していたんだ………
だから私も、まんまと引っ掛かった。
女からの電話に気付いた時も、堂々と電話するヒロを見て『友達なんだ!』と勝手に思いこんでいた。
私はヒロが泊りに来ると、毎回ケータイを盗み見た。
何もない事を確認すると、すごく安心できた……
私は、それでしか安心する事ができなかった………
何度も盗み見るが、何もない。
安心した私は、いつしかケータイを見るのを止めていた。
ヒロ……
ホントに変わってくれたんだ……
ヒロは私だけのヒロになったんだ………
すごく嬉しかった。
それから数か月、二人は付き合って1年を迎えた。
私の中では最長だった……
そして二人で迎えた初めてのクリスマス。
この日は二人でデート。
昨日ヒロと、ある事を決めていた。
『クリスマスプレゼントはペアリングにしよう!』
ヒロの提案に私は大賛成した。
二人でペアリングを探した。
二人の目は輝いていた。
そして……
私はヒロに、ヒロは私にペアリングを買った。
左手の薬指に輝くペアリング。
すごく幸せだった。
その日の夜、ヒロはウチに泊りに来た。
今までもヒロは何度も泊りに来ている。
何度もヒロと一緒に寝ている私。
だけど……
今日は……
今日は何か違う………
ペアリングのせいかなッ……
クリスマスだからかなッ……
私はヒロに抱きついた。
そして…………………
二人はキスをした……
見つめ合い、照れ笑いする私たち。
何度も何度もキスをした……
そして、付き合って1年。
私たちは初めて一つになった………
ヒロ……
大好きだよ……
私たちは何度も愛を確かめ合った……
5月のある日………
私は忘れていた事があった。
そーいえば………
生理が来ていない………
私は今日も、いつもと変わらずヒロに会った。
『ヒロ。私、生理こないんだ………』
ヒロは驚いている。
『まぢッ?!検査薬してみたら?今からやってみよ?俺、一緒に結果待つから!』
私たちは検査薬を買いに薬局に向かった。
結果は、陽性?!
うっすらと線が出ているだけだった。
見本のようにバッチリとは出なかった。
私はヒロの元に向かった。
『どうだった?』
ヒロの目は輝いていた。
『うっすら線が出たんだけど………妊娠してるのかなぁ……』
ヒロはすぐに答えた。
『ミィ!明日病院いこう!って言っても俺、仕事あるから……明日行ってきて!!』
『わかったよ。』
一人で行くのは心細い……
でも、今はそんな事言っていられない。
次の日、私は病院に向かった。
受け付けを済ませてドキドキしながら待つ私…
看護婦サンが出てきて、私の名前が呼ばれた。
そして内診が行われた。
『あっ!ココ!わかりますか?』
モニターを見ていた先生に問い掛けられた。
モニターに目をやると、ホクロのような黒い点があった。
そして先生は続けて言った。
『妊娠されていますね!これが赤ちゃんの入る袋ですよ!』
私は嬉しくて、いつの間にか涙があふれていた。
私とヒロの赤ちゃんだ……
すごく嬉しかった。
会計を終えると私はすぐにヒロにメールを送った。
『赤ちゃんできてたよ!これから頑張らなくちゃね!』
送信ー
ブーブー………
(着信ヒロ)
ヒロはすぐに電話をかけてきてくれた。
『もっしぃー?!』
『おめでとう!よかったな!俺頑張るよ!』
そして電話を切った。
私は赤ちゃんの写真を何度も繰り返し見た。
本当に幸せだった。
2日後の日曜日、私とヒロはこの、妊娠を親に伝えることにした。
ヒロは朝から緊張していた。
私の家に着いたヒロは、途端にトイレに駆け込んだ。
相当ビビっているんだ……
そんなヒロの姿を見て、私は笑っていた。
それもそのはず………
私の父親は普段は冗談ばかり言っている優しい父。
しかし、怒らせると怖い。
この話は隣町まで広まっていて、もちろんヒロも知っていた。
私も父親が怒ったところは一度しか見たことがない。
元ヤンのヒロでも、本当にビビっていた。
ヒロがトイレから出てくるのを待ち、私たちは深呼吸をした。
そして………
『お父さん!話があるんだけど……』
私は話を切り出した。
急に来た私たちの姿を見て、父もかなり驚いていた。
『どうしたッ?!』
『こんにちは。初めまして。ヒロです。』
ヒロの声は震えている。
『あの……私、ヒロと結婚したい!』
私は思い切って言った。
『何言ってるんだ?!何でそんな急に結婚したいなんて言い出したんだ?』
父の鋭い質問。
『私、赤ちゃんができたの……』
『はっ?赤ちゃん?ミィにか?………』
ヒロは、私と父親の話を黙って聞いていた。
そして父は静かに話はじめた。
『結婚か……。ヒロ君はどうなんだ?独身のように遊べなくなるし、お金も自由に使えなくなるんだぞ?!』
『はいッ!覚悟はできています!結婚させてください!』
ヒロは頭を下げた。
『わかったよ!ミィの事、大事にしてやってくれよ!あと、結婚式はちゃんとやりなさい。女の子の夢だからな!』
父は笑顔で言った。
そして私たちは顔を見合わせた。
『ありがとうございます!!』
父に許しをもらった私たちは、二人で抱き合い喜んでいた。
『お邪魔します!』
私は元気よくあいさつをした。
ヒロの家には何度も来たことがある。
だけど今日は雰囲気が違う。
ヒロの部屋に入ると、ヒロは落ち着きがなく、立ち尽くしている。
すると……
『親父呼んでくるね!』
ヒロは覚悟ができたのか、父親を呼びにいった。
服装を整えながらヒロを待つ私。
すると………
ガチャ………
ゆっくり扉が開けられた。
そこにはヒロとヒロの父親が立っていた。
私は立ち上がりあいさつをした。
怖そう………
とっさにそう思った私。
さらに緊張が増した。
『こんにちは。初めまして!ミィです。突然すいません。』
ヒロの父親は何も言わず座り込んだ。
ヒロは話を切り出した。
『子供ができた。ミィと結婚したい。』
ヒロの父は顔をしかめた。
『何だって?!お前が父親になれるわけがないだろ!結婚を甘く考えるな!お前に何ができるんだ!』
『俺はやる!やってみせるよ!だから……結婚する!』
そして、ヒロの父親は私の方を見た。
『ミィちゃん。こいつは、どうしようもない男だ。結婚は考え直した方がいいぞ!』
『お願いします!結婚させてください!』
私は頭を下げた。
長い沈黙がつづいた。
そして………
そして私たちは結婚式や、子供の話を、時間も忘れて語り続けていた。
私は次の休み3日後に結婚式場を探しに行く事にした。
私たちの両親は、離婚している。
私の親は18才の時に突然の離婚。
父親と一緒に暮らしているが、常に母と連絡を取っている。
ヒロの親はヒロが小学生だった時に離婚。
母とは、それ以来、会うこともなく、連絡も取っていなかった。
私は母に連絡をした。
プルルル………
『もしもし?』
母はすぐに出た。
『もしもしぃー!久しぶり!私子供できたんだぁ☆結婚するよ!』
『本当にッ?!おめでとう!!幸せになりなさいよ!』
『うんっ!絶対幸せになるよ!』
母には、報告をして電話を切った。
結婚かぁ………
こんなに早く結婚できるなんて思ってなかったなぁ……
高校生の時、みんなで結婚について語った事もあったなぁ……
なつかしい……
男っぽい性格の私。
こんな私が結婚なんて……
夢のようだった。
次の日………
この日は赤ちゃんの検診日。
私は、大きくなった赤ちゃんの姿を早く見たくて、朝一で病院に向かった。
病院に着き、受け付けを終えた私は緊張とうれしさで落ち着かなかった。
すぐに名前が呼ばれた。
『こんにちは!おねがいします!』
笑顔で診察室に入る私。
そして、先生から内診室へと案内された。
そして食い入るようにモニターを見た。
『はい!コレねぇー!わかるでしょ?少し大きくなったね!』
先生は赤ちゃんを指差して言った。
『まだ袋しかないんですね…??』
私は疑問に思った。
赤ちゃんの成長ってこんなに遅いのッ………??
赤ちゃんは、前に内診を受けた時と同じようなホクロみたいな黒い点だった。
違うところといえば……
少しだけ黒い点が大きくなっていること。
初めての妊娠だった私は、ただ先生の言うことを聞くことしかできなかった。
会計を終えて家に向かった。
私は、やっぱり納得できなかった。
私は、ふと思いついた。
そーいえば友達のマーチャン、今妊婦さんなんだ………
私はすぐにマーちゃんに連絡した。
プルルルル………
『もしもーし!』
マーチャンはすぐに出た。
『久しぶりッ!マーチャンお願いがあるんだけど………』
マーチャンは不思議そうに言った。
『どうした??』
『あの……赤ちゃんが2ヵ月くらいの時のエコー写真の写メ送ってほしいんだけど………』
『いいよ!ぢゃぁ今から送るね!』
『ありがとー!!ごめんね!』
私は電話を切ったあと、マーチャンからのメールを待った。
ブーブー……
(メール受信)
来たッ!!
私はすぐにメールを開いた。
あれッ………
やっぱり全然違う………
マーチャンの送ってきた写真は袋中にはっきりとではないが、赤ちゃんらしき形ができていた。
違う病院に行ってみよう……
私は夕方、違う病院に行くことにした。
午後の診察時間になるのを待ち、私は隣待ちの病院に向かった。
花産婦人科。
私がいつも行っている酒井産婦人科とは違い、ホテルのようにキレイな病院。
私は受け付けを済ませて呼ばれるのを待った。
緊張する………
しばらくして名前が呼ばれた。
そして内診が行われた。
『妊娠されてますね!』
先生にもらったエコー写真は、酒井産婦人科でもらったものと同じだった。
『最終生理日から計算すると2ヵ月目ですね!』
花産婦人科も酒井産婦人科も同じ事を言う。
私は会計を済ませて家に向かった。
個人差があるんだから……
みんな一緒ってわけぢゃないよね……
大丈夫だよ………
何度も自分に言い聞かせた。
次の休みの日……
私は9月の挙式に向けて結婚式場の下見に出かけた。
式場はどこもキレイですごく迷った。
しかし、式場で着るドレスは持ち込み禁止。
各式場に用意されているドレスの中からしか選ぶ事ができなかった。
1件目の式場は昔からある式場で建物は古い。
ドレスも渋い物しかなかった。
2件目の式場はチャペル会場がない。
私はどうしてもチャペル挙式がしたかった。
ココも却下……
そして3件目。
建物も新しく、ドレスも派手。
派手好きの私には着たいドレスがたくさんあった。
ここはチャペルもある。
決めた!!
私は即決した。
そして式場の担当者と話を始めた。
『いつごろ挙式予定ですか?』
担当者が言った。
『9月の土曜日にお願いしたいんですが……』
『あっ!ちょうど1日だけ空いてますよ!!』
『本当ですか?!やったぁー!!』
急遽決まった結婚式だったため、予約が取れなかったらどうしようと不安だった私……
予定どおりに決まってよかった………
そんな事を考えていると
『よろしければ、ドレスの試着されませんか?』
えッ………
『いいんですか?』
『もちろんです!どうぞ!』
担当者は笑顔で言った。
私には一目惚れしたドレスがあった。
私は迷いもなく、そのドレスを試着させてもらうことにした。
『ぢゃぁ、こちらの試着室にどうぞ!ドレス用の下着があるので下着着用したら呼んでください。』
担当の女は笑顔で言った。
私は付けていた下着を取り、ドレス用の下着を付けた。
『できましたぁー!!』
『はいっ!失礼します!』
そして担当者は試着室に入ってきてドレスを着せてくれた。
『こちらに鏡があるのでどうぞ。』
私は手を引かれ鏡の前に立たされた。
すごいッ…………
『よくお似合いですよ!』
『すごいッ!!結婚式が待ち遠しいです!』
私が選んだ純白のウエディングドレス……
いつもとはまったく違う自分が鏡に写っていた。
『よろしければ違うドレスも着てみますか?』
『ぢゃぁ………コレっ!!』
私はピンクのドレスを指差した。
『ぢゃぁ、お持ちしますので試着室でお待ちください。』
『はいっ!』
私は、とにかくワクワクしていた。
アレも着たい…
コレも着てみたい……
数あるドレスに目移りしていた。
そんな事を考えていると担当者がピンクのドレスを持ってきた。
『失礼します。こちらですね?』
『はいっ!それです!』
私は着ていた純白のドレスを脱がせてもらった。
その時………
えッ………
私は一瞬固まった。
今……
膣から何か出てきた………
何……??!!
生理………?
生理なんて来るわけないよね………
だって……
妊娠してるんだもん………
私の頭の中は混乱している。
『できましたよ!鏡の前にどうぞ!』
考え込んでいる間に、私はピンクのドレスを着せてもらっていた。
『うわぁー!このドレス超かわいいッ☆』
『このドレス、すごく人気があるんですよ!この式場の一番人気です!』
担当者が勧める。
『まだ着てみたいドレスありますか?』
担当者が聞いてきた。
『いえ……また次回着させてください!』
本当は、もっと着たかった……
でも………
血ぢゃない事を確認しないと不安で仕方なかったんだ………
私は試着室に戻り、ドレスを脱がせてもらった。
『では、下着を変えて出てきてください。ロビーでお待ちしていますね!』
そう言うと担当者は試着室から出ていった。
私は早く着替えてトイレに行こうと考えていた。
早く着替えなきゃ………
家に着いた私はすぐに着替えた。
そして酒井産婦人科に電話した。
初めての検診の時
『出血があった場合は休診でも関係なくスグに受診してください。』
と言われていた。
そして恐る恐る電話をかけた。
プルルル……
『はい!酒井産婦人科です!』
『もしもし……今妊娠2ヵ月なんですが…少し出血があって……』
『それでは今から診察に来てください!』
『はい……わかりました。』
電話を切り、病院に向かった。
病院までの道程。
私の頭の中は真っ白だった。
病院に着き、受け付けを済ませると、すぐに名前が呼ばれた。
私はゆっくり診察室に入った。
『今も出血は続いていますか?いつからですか?』
『2時間前に少し出血したのですが…今は大丈夫です!』
『ぢゃぁ、内診しますので、内診室入ってください』
そして、私は内診台に座った。
先生がモニターで確認する。
『あぁ……残念ですが今回は諦めてください。』
『何でですか?』
モニターには、前に診察を受けた時と同じ、黒い点が写っていた。
先生何言ってんの…?
赤ちゃん写ってるぢゃん……
ちゃんとお腹のなかにいるぢゃん……
何で産めないの……?
私の頭の中は疑問だらけだった。
『モニター見てください。赤ちゃん、成長していないでしょ?前の診察の時にも思ったんです。成長が遅いと……』
やっぱり……
マーチャンにもらった写真と比べても小さかったもん……
あの時からおかしかったんだ……
『でも、前よりちょっと大きくなってますよ!』
私は必死に反論した。
『赤ちゃんは1日1ミリずつ大きくなっていくんですよ。前の診察から4日たっていますね?成長していないんです。明日手術しましょう!』
『明日?もうすこし様子見てたらダメですか?』
私は赤ちゃんを無くしたくなかった。
生きていると信じたかった。
『死んだ赤ちゃんをお腹に持っていると子宮がダメになります。早く出さないと子宮が危ないんです!』
それ以上、私は何も反論できなかった。
『明日の朝、もう一度内診してみましょう!それで今日と大きさが変わらないなら、そのまま手術しましょう!』
私は手術の承諾書や説明書をもらい、看護婦さんから手術の説明を受けた。
病院からの帰り道、私はひたすら泣いていた。
何で赤ちゃんは死んでしまったの…?
私が走り回ったから…?
ひたすら自分を責め続けた。
そして次の日、先生に言われた通り、朝一で病院に行き診察を受けた。
『うーん………
やっぱりダメですね。手術しましょう!』
私は何も答えなかった。
悔しかったから……
私は先生や看護婦さんの指示で動くだけ。
頭の中は真っ白だった。
午前11時。
点滴が始まった。
私は泣くことしかできなかった。
12時。
分娩台に移動した。
足と手はベルトでしっかり縛られている。
そして麻酔をして手術が始まった。
私はすぐに麻酔が効き眠った。
痛い………
痛いよ………
やめて………
麻酔が効いているはずが、私はあまりの痛みで目が開いた。
そこには暴れる私の腕や足を押さえ付ける5、6人の看護婦がいた。
意識が朦朧とする中、私は手術を終えて病室のベットに移動させられた。
痛い………
痛いよ……
何で私がこんな思いしないといけないの……?
何で………
手術が終ってからも続く激痛に耐えながら私は、赤ちゃんを産んであげれなかった事など、やるせない気持ちでいっぱいだった。
その後、診察を終えた私はすぐに帰宅し、布団に潜り泣いていた。
ブーブー…
着信(ヒロ)
『はい……』
『もしもし?大丈夫か?今仕事終ったんだけど今から行くね!』
『わかった!』
ヒロはすぐに来た。
『体調どぉ?』
『……今は大丈夫……』
『そっか!よかった!』
そしてヒロは寝ている私に背を向け、テレビを付けた。
ヒロはテレビを見て、ケラケラ笑っている。
ねぇ……
ヒロは…
どうして笑えるの……?
なんで……?
悲しくないの……?
赤ちゃん……
いなくなっちゃったんだよ……
なんで笑っていられるの……?
止まっていた涙が再び私の頬を流れはじめた。
そんな私に気付いたヒロは私を抱き締めた。
『なんで私は赤ちゃんを産んであげれなかったんだろ…くやしいよ!!』
『みぃのせいぢゃないから!自分を責めるなって!』
私が落ち着くとヒロはまた私に背を向けてテレビを見て笑いはじめた。
『私……本当にくやしい。今日もすごく怖かった。一人だし、何されるのかもわからないし……看護婦さんに聞いても麻酔するから寝てる間に終るって淡々と言うし。でも、すごく痛くて……目開けたら、その看護婦さんたち暴れる私を押さえ付けてた……』
ヒロは私の言葉を無視するようにテレビを見て笑っている。
『ヒロ!聞いてるの?』
ヒロは私に背を向けたまま答えた。
『聞いてるよ!つーか、そんなん俺が手術うけたわけぢゃないし、痛かったとか言われても俺にはわからない!手術受けたのはミィだろ?だったら、その辛さはミィにしかわからないぢゃん!』
………えっ?!
嘘でしょ?…………
こんなのヒロぢゃない………
ヒロの言葉は私の頭の中で何度も繰り返された。
『………帰って………』
『はっ?』
『帰って!!さっきからテレビばっかり見て何なの?テレビが見たいなら帰れよ!!』
『心配して来たのに何だよ!帰るよ!』
ヒロは部屋を出ていった。
ヒロとなら、この辛さを分かち合えると思っていた……
だけど……
私だけだったんだね……
ヒロが出ていってからも私は泣き続けた。
それから2週間。
私はやっと子供を失った辛さから立ち直り始めていた。
6月10日。
私たちは入籍をした。
そして新居となるアパートを探し歩いた。
旦那の実家の近くにあるアパート。
そこが私たちの新居に決まった。
これから始まる新婚生活が楽しみだった。
6月25日。
この日は引っ越し。
私の実家の親や姉夫婦、みんなが引っ越しの手伝いをしてくれた。
私の父は
『嫁入り道具だ!』
と言って家具一式、すべて揃えてくれた。
そんな父にヒロはお礼も言わず、すべて新品で揃えられた家具を見てはしゃいでいた。
無事に引っ越しを終えたある日、ヒロの父から電話がかかってきた。
ブーブー…
(着信ヒロパパ)
『もしもし!』
『あっ!みぃチャンか?ヒロの親父だけど…今ヒロと一緒か?』
『ヒロは今出かけているので一緒ぢゃないですよ!どうしました?』
『今アイツの部屋に来たんだが……アイツ借金あるみたいなんだよ!ミィチャン何か知らないか?』
『えっ?借金!?ヒロが?どうゆう事ですか?』
『いや……今、部屋にゴミが落ちてて、見てみたら金融会社の利用明細だったんだ!しかも100万もある!』
『えっ…私は何も知りません!』
『そうだよなぁ……本人に聞いてみるよ!』
そして電話を切った。
しばらくするとまた電話がなった。
ブーブー……
(着信ヒロ)
『はい!』
『もしもし。今親父から電話があったんだけど今から二人で家に来いだって!』
『あんた借金あるって本当なの?』
『あぁ……親父から聞いてたんだぁ……黙っててゴメン!!とりあえず今から帰るから一緒に家行こう!』
私はその場に立ち尽くした。
10分後。
ヒロが帰ってきた。
そして二人でヒロの実家にむかった。
移動中は二人とも無言だった。
旦那の実家に着くとヒロの父はあぐらをかいて待っていた。
『二人ともここに座りなさい!!』
あいさつもないまま、私たちはヒロの父の前で正座した。
そしてヒロの父はすぐに話し始めた。
『で……ヒロ!!これは何だ!』
そこにはクシャクシャになった明細があった。
『金……借りたんだよ!ツレに金借りたんだけど、期限までに返せなくて……それで金融で借りてきてツレに返したんだ……』
『ツレにまで金借りてるのか?いったいいくら借金してるんだ?』
『ツレと金融で200万くらいはある……』
私は驚きを隠せずに、二人のやりとりを、ただ黙って聞く事しかできなかった。
ヒロの父も驚きを隠せず、沈黙が続いた。
そして私は沈黙を破った。
『あのさぁ…何で友達に100万も借金があるの?』
『実際に借りたのは10万なんだ。だけど、俺らのまわりでは、金を借りると期限が決められて、それを過ぎると1日毎に金利が付くんだよ。それが当たり前なんだ…』
私には理解ができなかった。
そんなのが友達なの……?
友達って呼べるの…?
友達ぢゃないぢゃん…
私はそれ以上話さなかった。
そして、ヒロの父が話始めた。
『ヒロ!よく聞け!結婚するのに借金があるなんて絶対許されない。今回は俺が払ってやる。だから今後一切、絶対に借金はしないとココで誓え!』
『わかった。誓います!絶対に借金しません。』
そして私とヒロはアパートに帰った。
それから1ヵ月。
私たちはケンカもするけど新婚生活を楽しんでいた。
が……
1ヵ月を過ぎた頃から、ヒロは独身気取りで遊び始めた。
仕事が終わり、ご飯の支度をしてヒロの帰りを待つ私。
しかし、帰ってきたヒロは
『俺、ご飯いらないから!』
そしてパチンコに行ったり、ツレの家に遊びに行ったりと自由気ままに過ごすようになった。
それでも私はヒロが大好きだった。
離れたくなかった。
嫌われたくなかった。
だから、どんなに辛くても耐え続けていたんだ。
そんな生活が2ヵ月たった。
9月10日。
挙式。
前日の夜は挙式準備のため、お互いに実家で過ごした。
そして当日。
式の最中、急に司会者がヒロにマイクを向ける。
そして……
『ミィ!一生大切にする!黙って俺についてこい!!』
力強いヒロの言葉に感動し、涙があふれた。
子供ができて結婚が決まった。そのため、プロポーズはされていなかった。
そのサプライズに本当に感激した。
あっとゆう間に式は終わった。
次の日からは新婚旅行。
私たちは、新婚旅行はまったく考えていなかった。
しかし、私の父がプレゼントしてくれたんだ。
『結婚式が終ったら、またいつも通りの生活になる。結婚した祝いだ!費用は俺が出してあげるから、新婚旅行にいっておいで!』
父のおかげで私たちはハワイに行くことができた。
ハワイでは、もちろんケータイは繋がらない。
ヒロに誘いの電話がかかってくる事もないし、知らない土地だから一人で遊びに行くこともない。
ハワイにいた5日間。
ヒロを独り占めできて本当にうれしかった。
ハワイでヒロはシルバーアクセばかり見ていた。
私はもちろん服とブランド品。
私はブランドのサングラス、化粧ポーチ、デニムなど、たくさんの買い物をした。
最終日、ホテルに戻るとヒロは私を呼んだ。
『みぃ!ここに座って!』
『なにぃー?』
私はヒロの言うとおり、ヒロの隣に座った。
『これ!オソロなんだぁ!大事にしろよ!』
そこにはシルバーのピンキーリングがあった。
私は一瞬驚いた。
ヒロ……
私にプレゼントする指輪をズット探してくれてたんだ……
ありがとう……
ヒロと結婚できてよかったよ……
そして私たちはスグにオソロのピンキーリングを付けた。
その日からずっと外すことはなかった。
ハワイでの5日間もあっとゆうまだった。
帰りの飛行機の中は二人とも爆睡。
そして空港に到着した。
『寒ッっ!!』
外に出た私たちは声を揃えていった。
それもそのはず……
ハワイはとっても暑かった。
が……
日本は9月。
しかも夜とあって、風が冷たい。
空港にいる人はみんな、上着を羽織っているが私たちはタンクトップだ。
かなりの場違い。
すれ違う人みんなに見られながら私たちは空港を離れた。
無事アパートに到着。
そして何事もなかったかのように、いつも通りの生活が始まった。
ヒロの独身気取りは再スタートし、私はほとんど1人ぼっちだった。
仕事を終え、ご飯を作り、ヒロの帰りを待つ。
ヒロが出かけるのを見送り、テレビを見ながらヒロの帰りを待つ。
そんな生活が続いた。
秋が終わりに近づいた11月。
妊娠発覚。
子供が欲しかった私はすごくうれしかった。
ヒロも大喜びだった。
この子は絶対に産んでみせる!!……
前の流産の事があり、安定期に入るまでは凄く不安だった。
その反面、診察に行くたびに大きくなっていく赤ちゃん。
順調に成長しているのを確認すると、安心できた。
私は仕事を辞めた。
流産が怖かったから……
2月。
安定期に入り、私はバイトを始めた。
ある日、バイトが終って家に帰った私は先にお風呂に入る事にした。
いつもの様に頭を洗っていると、
カランカラーン……
フと見るとピンキーリングが落ちていた。
『あっぶなぁぁぁい!!セーフ!!』
ヒロからもらったピンキーリングは少し大きくて、洗剤をつけるとスポっと抜けてしまう。
私は転がった指輪を拾い、石けん台に置いた。
すべて洗い終えた私はお風呂を出てご飯を作り、いつものようにヒロの帰りを待った。
ヒロは帰ってくるなりお風呂にむかった。
お風呂から出てきたヒロは
『ご飯いらない!パチンコ行ってくるから!』
またか………
ヒロは子供ができて大喜びだった割に、自分の生活は変えようとしなかった。
そんなヒロを見送り、いつものようにテレビを見る。
ふと自分の手を見て気が付いた。
『あっ!いけない!指輪外したまま忘れてた!!』
私はすぐにお風呂に向かった。
あれッ……
ない……
ココに置いたはずなのに…
どこ……??
私は流れたかもしれないと思い、排水溝をのぞいた。
が……
受け皿が付いているから流れるわけがない。
私の後にヒロお風呂に入ったよね……
ヒロに聞いたらわかるかも……
どこか別の場所に置いてくれたのかな……
でも……
なくした事言ったら怒られるかもしれないし……
私はその後も探したが、指輪はどこにもなかった。
ガチャー……
『ただいま!』
ヒロが帰ってきた。
『あっ!おかえり!』
『何してるの?』
『あのさぁ……私今日お風呂に入った時、指輪が外れちゃって、危なかったからお風呂入ってる間、外してたんだぁ……さっき気付いてお風呂に見に行ったんだけど……なくて……』
『はっ?!俺、大事にしろって言ったよな?探せよ!見つかるまで探せよ!!』
『本当にごめん!!絶対見つけだすから!ヒロがお風呂入った時、石けん台に指輪なかった?』
『知らねぇし!!』
『そっか……本当ゴメンね!!探すから!!』
しかし、お風呂はどこを見てもない。
お風呂に入った後、私が行動した範囲をすべて回ったがどこにもなかった。
午前3時。
私は次の日も仕事があったため、その日は諦めた。
次の日も、またその次の日も仕事が終ると指輪を探した。
探し始めて3日がたった頃にはアパートすべてを見回った。
キッチンの排水溝、洗面台、ごみ箱のなか、生ごみの中、タンスの裏、押し入れ、トイレ。
しかしどこにもない。
そんな必死で探す私に、ヒロからは、
『ガタガタうるせーよ!静かに探せ!寝れないだろ!!つーか、早く指輪見つけろよ!俺が買ってやったヤツなのに!!いい加減な扱いしやがって!!』
『ごめんね……本当にゴメンね……』
私は謝る事しかできなかった。
そして探し始めて1週間ほどたった。
今日は日曜日。
私はヒロより先に起きて指輪を探していた。
『おはよ!』
ヒロが起きてきた。
『おはよ!ごめんね!うるさかった?』
『出かけるよ!用意して!』
『でも私、指輪探さないといけないし…』
『指輪は、もぉいいよ!帰ってきてからでいいぢゃん!』
『そぉ………ぢゃぁ用意するね!』
そして私たちはドライブに行った。
その日の晩ご飯は外食した。
ご飯を食べ、家に帰ると、私は、お風呂の用意をして指輪を探し始めた。
『みぃ!たまには一緒にお風呂に入ろうよ!』
『うーん……。指輪探したいから。後で入っていく!先に入ってて!』
そして押し入れの布団をだし、指輪を探した。
ない……
やっぱりない……
何でこんなに探してもないんだろ……
独り言のようにつぶやき、手を休めてリビングを見渡した。
……………………
なぜだかわからない……
女の感!!ってやつ?!…ピンときたんだ………
私の視線の先にはヒロの財布があった。
ヒロはお風呂に入っている………
今しかない………
私は恐る恐る財布を開けた。
ーッ……………………… なんで……?!
なんでヒロが持ってるの……
嘘でしょ?!……
私が探してるの、ヒロ見てたぢゃん……
一体何のために……?!
指輪を発見してしまった。
ヒロの財布の中から。
指輪が見つかった喜びなんて、全くなかった。
しばらくするとヒロがお風呂から出てきた。
『お先ッ!!ミィ遅かったから出てきちゃったよ!』
『うん……』
『指輪あった?』
『あったよ!』
『えッ?!どこに?』
『ヒロの財布の中だよ!!』
ヒロはクチを開けたまま立ち尽くしていた。
『ねぇ!私が探してたの見てたよね?!何でヒロが隠してるの?何で?一体何のためにこんな事したの?』
しばらく沈黙が続いた。
『ごめん!!置いたまま忘れられてて悔しかったんだ!困らせるためにやった!本当はスグに渡す予定だったけど……ミィがあんまり必死に探してるからタイミングがわからなくて………』
ヒロは土下座して謝ってきた。
『演技だったんだね!今まで演技してたんだね!!ひどすぎるよヒロ!最低だよ!!』
私は、ヒロにだまされた…
怖い……
あれだけ演技していたヒロが怖い……
演技は自然で完璧だった……
そんな事が平気でできるヒロ……
あんた怖すぎるよ……
それでも結婚生活は続いた。
ヒロの生活態度も悪くなるばかり。
いつものように仕事を終え、家でご飯の支度をする私。
ブーブー……
(メール受信ヒロ)
『社長にどこかに連れていかれるから、ご飯いらない!』
『どこかってどこ?』
送信ー
受信
『わからない!また連絡する!』
いつしかヒロは無断外泊をするようになっていた。
ある日、ヒロはまた朝帰りをした。
私は何か証拠があるだろうと思い、ヒロの財布を手にとった。
えッ……
何これ……
嘘でしょ………
そこには『差し引き金額』と書かれた明細があった。
ヒロはまた金融会社に借金していた。
しかも45万も。
私はヒロの父に電話をした。
『もしもし…ヒロの財布から明細が出てきたのですが、また借金しているみたいなんです!』
『またかっ!!あいつは何考えてるんだ!俺から話しておくよ!』
『お願いします。』
それでも私の怒りは治まらなかった。
私はヒロが寝ているのを無理矢理起こした。
『ヒロ!起きて!』
『なんだよ!眠いんだけど!』
『コレなに?!』
『あぁ……てか俺の財布勝手に見るなよ!』
『いいからコレは何なの?』
『金借りたの!見ればわかるだろ!』
『何でそんなにお金が必要なの?』
『ハワイで遊ぶ金がなかっから!小遣いとして借りたんだけど、パチンコも行きたくなって45万になったの!わかった?寝ていい?』
完全にヒロは開き直っていた。
私は堪えていたものが爆発した。
『もぉ、あんたなんてどうでもいいよ!離婚しよ!子供も堕ろす!あんたなんか、父親になる資格ない!』
私は我を忘れ、泣き叫んだ。
そして私は興奮のあまり、自分のお腹を殴ったりぶつけたりしていた。
大事な赤ちゃんがいるお腹を…
一生懸命に生きている赤ちゃんを、私はいじめていた。
そんな荒れ狂う私をヒロは必死に止めた。
『ごめん!ミィ!ちゃんと借りた金は返すから!やめろよ!』
数時間がたち、私はやっと落ち着いた。
私、何してたんだろ……
赤ちゃんのいるお腹殴っちゃった……
赤ちゃんが………
もしもの事があったら……
私のせいだ……
『ミィ!おまえ、病院に行け!赤ちゃん大丈夫か見てもらえ!』
ヒロは心配そうに言った。
ヒロ……
心配なら『行け!』ぢゃないでしょ?!……
一緒に行ってはくれないんだね……
私は一人で病院に向かった。
『すいません……階段を踏み外して転んでしまって……赤ちゃん大丈夫か見てもらえませんか?』
そして内診が始まった。
ドキドキしながらモニターを見る。
よかった……
生きててくれた……
ありがとう……
ごめんね………
私はモニターを見ながら泣いていた。
『無事でよかったですね!気を付けてくださいよ!一人の体ぢゃないんだから!』
先生はほほ笑みながら私に言った。
会計を終え、家に着いた。
『ただいま!』
『………』
返事がない。
リビングに行ってみるがヒロの姿はなかった。
ふと寝室に目をやると……
ヒロは爆睡していた。
ねぇ……
本当に心配ぢゃないの……?
ヒロは赤ちゃんの事、気にならないの…?
そんなヒロの姿をみながら、こぶしをにぎり唇を噛み締め、私は声を押し殺して泣いた。
数時間たつと、ヒロが起きてきた。
『あぁぁぁぁ!めっちゃ寝た!ちょっと店のぞいてくるわぁ!』
ヒロはそう言うと、いつものパチンコ店に向かった。
結局ヒロは、赤ちゃんの事は何も聞いてこなかった。
次の日……
私は仕事を終え、家に帰ると先にヒロが帰ってきていた。
『あれ?早いぢゃん!今日、仕事早く終ったの??』
『まぁねっ!今暇だから!』
あれっ……?!
そーいえば………
ヒロの車……
駐車場になかったような………
??
私はベランダから外を見た。
やっぱりない……
『ヒロ!車は?どうやって帰ってきたの?』
『あぁ!車ねぇー!売ったよ!80万で車屋に売った!』
『はっ?!何で?』
『何でって……金ないからぢゃん!ほらっ!見てみー!』
ヒロはうれしそうに封筒に入った80万を見せて言った。
『これがあれば今ある借金も全部なくなるよ!いい考えだろ?!』
あのさぁ……
ヒロ!!…………
あんたが乗ってた車は、ヒロのお父さんが買った車でしょ………?!
自分で買ったのならともかく………
人に買ってもらったものまで簡単に売る事ができるあんたって………
一体なにものなの?………
もぅ何がなんだかわからなかった。
どうにもできなかった。
『ぢゃぁ、ちゃんと借金返してきてよ!!』
『わかってる!!明日返しに行ってくるから!!』
そしてヒロは家を出ていった。
もちろん行き先はパチンコ。
そんな日々が数日続いた。
しかし……
私は事実を知ってしまった。
ある日、部屋の掃除をしていると。
見つけてしまった。
ご利用明細。
差し引き金額45万。
日付は最近。
もちろん車を売った後。
あいつ………!!!
私は怒り狂い、アチコチ殴り暴れた。
そこに帰ってきたヒロは玄関を開け、立ち尽くしていた。
私は手を洗い、血を拭き取ると、そのまま車に乗り込み実家に向かった。
実家に向かう途中、ヒロの父に電話をした。
『もしもし!お父さんですか?私、もう限界です!実家に帰ります!』
『どうしたの?落ち着いて!あいつまた何かしたのッ?』
『また借金作っているんです。車売って、そのお金で返すって言っていたのに、返すどころか増えているんです!』
『車を売ったのはヒロから聞いてるよ!だが、車を売ったお金はミィちゃんに全部渡したって言っていたぞ!ミィちゃんが返しに行ってくれたんぢゃないのか?』
『私はヒロには何も頼まれていません。返し方なんて知らないですし…私はお金受け取ってません!』
『どーなっているんだ!?ヒロに連絡してみるから待ってなさい!』
数分後、ヒロの父親から電話がかかってきた。
ブーブー……
(着信ヒロ父)
『もしもし…』
『今ヒロに電話して聞いてみたよ!アイツ、車売った金でパチンコ行ってたみたいだ!パチンコで全額使ってしまったんだと……』
『………………』
私は呆れて何も言い返すことができなかった。
『わかりました。とにかく私、実家に帰ります!』
私は実家の隣町に住む母の家に向かった。
母の住んでいるアパートに着きインターホンを押した。
(ピンポーン………)
『はぁーい!……ミィ!どうしたの?』
連絡もしないで急に母の家に行った私。もちろんたくさん泣いた目は赤くて腫れている。手には無数の傷。
母は、そんな私を見て驚きを隠せないでいた。
『急に来ちゃってゴメンね……もぉ疲れちゃった……』
『何があったの?とにかく上がって!!』
私はゆっくりと家のなかに入った。
私は母に今までの出来事を1つずつ話していった。
もちろん、母は何も知らない。
今まで私は1人で耐えてきたから。
それは………
『離婚しなさい!』
そう言われるのが嫌だったから…
ヒロの事は大好きだった……
自分でも不思議なくらい……
ヒロが大好きで一緒にいたかったから………
すべてを話し終えると母はゆっくり話しはじめた。
『ミィはどうしたいの?お母さんは、こんなヒドイ目にあっている娘を見捨てる事はできないわ!』
『私は………別れたくない。ヒロが自分の生活態度見直して、良くなればいいと思ってる…』
『そうだね……ちょっと考えさせて!時間ちょうだい!ミィ!落ち着くまでココ住んでもいいからね!一人の体ぢゃないし、ストレスためたらダメだよ!』
私は落ち着きを取り戻した。
そして、その日から出産を迎えるまで母の家で暮らした。
出産まであと2ヵ月……
私は、不安でいっぱいだった……
ヒロからの連絡は毎日あった。
が………
すごく冷たい内容ばかりだった。
『どこにいるの?』
『お母サンの家!』
『帰ってこねぇの?』
『今は帰れない!』
『あっそ!元気で暮らせよ!俺はアパートでのんびり生活するから!』
毎日がそんなやりとりだった。
ヒロからの連絡が来ると、うれしくなる私………
しかし、内容を見てスグに現実を知り、怒りや悲しみに落ちる私………
完全に情緒不安定になっていた。
次の日、私は実家のお父サンに話をしに向かった。
もちろん、父にも私たちの生活の事は話した事がない。
『お父さん!チョット話があるんだけど……』
『どうしたッ?』
ただそれだけの会話でも、私の目からは大量の涙が流れていた。
涙が邪魔して、ゆっくりしか話せなかったけど父は最後までしっかり聞いてくれた。
『そっか……ミィ!何でお前は今まで黙ってたんだ?何でスグに言ってこなかった?ミィは昔から人一倍我慢強い子だからな!今回も相当我慢しただろ?悩んでいるんだったらすぐに言え!1人ぢゃ解決できない事も2人なら解決できるかもしれないだろ?
今回の事はヒロクンと話してみるよ!』
お父さん………
ありがとう……
お母さん………
ありがとう……
やっぱり一番の味方は家族だね………
そして私は母親の家に戻り、しばらく住ませてもらうことにした。
私が家を出てからはヒロからの連絡はない。
心配もしていないのだろう。
誰にも邪魔されずに好き勝手できるから居心地がいいのか。
ヒロの気持ちはわからないが、ヒロと連絡をとる事はなかった。
次の日曜日、私は母に起こされて出かける準備をした。
向かった先は、ヒロのいるアパート。
私は今から何が起こるのかもわからず、ただ車に揺られていた。
母と私が乗った車内は、静まり返っていた。
30分ほどでアパートに着いた。
……が、
ヒロの姿はない。
アパートにいないとなれば、行き先は1つ。
例のパチンコ店。
私と母はすぐにパチンコ店に向かった。
母と私は車から降りてヒロの元に向かった。
『おまたせしました!何でしたか?』
ヒロは上から目線で話してきた。
『あのね、ヒロくん。もぉミィとうまくやっていく気ないの?』
『ありますよ!結婚した時と気持ちは変わっていません。』
『ヒロくんが毎日パチンコ行ってる事は聞いてる。ミィのお腹にはあなたの子供がいるんだよ?ミィもお腹大きいし、初めての出産ですごく不安だと思う。だから、ちゃんと側にいて支えてあげてくれない?』
『わかりました。でもパチンコはやめれません。』
『やめろとは言わない。ただ、家族の時間も大切にして!』
『はい。』
『本当に、よろしくお願いします!』
母はヒロに向かって深々と頭を下げた。
ヒロは、地面に唾をはき、エラそうな態度をとっていた。
私はヒロの態度が許せなかった。
その後も私はヒロの元には帰らず、出産まで母の家で過ごした。
出産予定日1ヵ月前のある日。
私は母の家で出産準備をしていた。
あっ………
デジカメがない……
ヒロのいるアパートに置いたままだ…………
私はすぐにヒロに連絡した。
『アパートにデジカメあるよね?』
送信ー
受信ー
『あるよ!』
次の日、私はデジカメを取りに行くことにした。
アパートに着くと、ヒロは家にいた。
私はインターホンを押してヒロが出てくるのを待った。
が…………
何回押しても出てこない。
出てくる気配もない。
きっと、知っていて出てこないのだろう……
インターホンは家の中でうるさいくらい大音量で鳴る………
寝続けていられるわけがない……
私は仕方なく、近くのコンビニに行き、時間をつぶした。
ヒロが外出するのを願って。
しばらくしてアパートに戻るとヒロはいなかった。
今だ………!
私は持っていた鍵で中に入り、デジカメを探した。
しかし、どこを探してもない。
私はヒロに電話した。
『もしもし!今アパートにいるんだけど、デジカメどこ?』
『探せばいいだろ!』
『置いておいた所にないの!ヒロあるって言ったよね?どこにあるか教えてよ!』
『自分で探せよ!あるんだから!』
そう言って電話は切られてしまった。
私はその後も必死に探したが見つからなかった。
デジカメ………
それは、20歳のお祝いに母が買ってくれたもの。
私にとっては思い出の品だった。
7月15日………
午前6時。
まだ爆睡状態だった私。
しかし、尿もれのような感覚があり、目を覚ました。
もしかして………
私、お漏らしした………?
出産予定日までは1週間以上もあるし、破水だとしたら、こんな小量なわけがない。
不思議に思いながらも私は再び眠った。
午前10時。
私は再び目を覚ました。
どうしても気になったので病院に電話して聞く事にした。
『すいません。今日の朝、尿もれみたいな感じがあったのですけど……』
『一度診察に来てもらえますか?入院準備をして来てください。』
私は母の車に乗せてもらい、病院に向かった。
病院につき、内診台にあがった。
すぐに診察が行われた。
『破水ですね!最初に気付いたのはいつですか?』
『朝6時頃です!』
『何でもっと早く来なかったんですか?!破水を甘く見ないでください!今から薬で陣痛を起こします』
そしてすぐに分娩室に移された。
私はすぐにヒロに電話した。
『ヒロ!もぉ産まれるよ!デジカメ持って大至急病院に来て!』
『わかった!すぐ行く!』
30分ほどでヒロは息を切らせて現われた。
ヒロは慌ててきたものの、痛みに耐え苦しんでいる私の横でケータイゲームをしていた。
徐々に陣痛が強くなっていく。
午後4時。
先生が診察に来た。
ヒロは前から立ち会い出産を希望していた。
先生もそんなヒロを誉めていた。
先生はヒロに言った。
『まだ産まれないですね!旦那さん!夜中に出産になっても病院から、そのまま仕事に行けるように、今のうちに用意してきたらどうですか?』
そしてヒロは仕事の準備のため、家に帰っていった。
ヒロの家から病院までは車で40分。
私は陣痛がピークになり、ついに分娩台に移動した。
午後7時30分。
元気な赤ちゃん誕生。
ヒロにそっくりな女の子。
予定外の早さにヒロは間に合わず母が立ち会いをしてくれた。
母はすぐヒロに電話してくれた。
『赤ちゃん産まれたよ!今どこ?早く来てね!』
30分後、ヒロが来た。
手には何ももたず、さっききた時と同じ格好だった。
コイツ………
家に帰ってないな……
約4時間、何してたんだょ……
ヒロは赤ちゃんを一目見るとソファーに寝転び
『疲れたぁぁぁ!!』
と大きくあくびをした。
ヒロが持ってきた私のデジカメで赤ちゃんの写真を何枚も撮った。
夜9時。
ヒロは帰っていった。
入院生活5日間。
ヒロが病院に来たのは2日だけ。
『忙しい。』
『風邪ひいた』
などと理由を付けてヒロは来なかった。
普通なら嬉しくて毎日でも暇さえあれば来るだろう…
母も私もそんなヒロを不信に思っていた。
5日目。
今日は退院の日。
朝から会計や退院診察があった。
ヒロは結局、お金を持ってくることはなかった。
“ヒロクンはちゃんと持ってくるかわからないから念の為…”
と父が用意してくれたお金で支払いを済ませた。
ヒロからの連絡はない。
逃げていたのだろう……
私は母に迎えに来てもらい、母の家に戻った。
私は出産を終えても落ち着く事なく悩み続けた。
ヒロとの、これからの生活を……
一体どうするべきか…
離婚……?!
それとも
我慢……?!
どっちを取れば良いのかわからず、毎日悩み続けた。
母でさえ、
『何で?こんなに泣く子なんて聞いた事ないわ!』
と言っていた。
夜も抱っこして寝かせても布団に降ろすとパチっと目が開いて泣き喚く。
落ち着くのは朝3時頃。
私は毎日寝不足だった。
きっと胎教がよくなかったに違いない…
赤ちゃんがお腹にいる時、私は毎日ヒロの事で悩んでいた。
悩んで泣いていた。
それをヒロに伝えてもわかってもらえなくてストレスがたまり、常にイライラしていた。
そんな生活すべてが、赤ちゃんをそうさせたのだろう……
思った以上に大変な育児に出産1ヵ月で既に疲れ切っていた。
出産1ヵ月半後。
私はヒロとの生活を再スタートさせた。
母の家で過ごした産後1ヵ月半。
ヒロは赤ちゃんを見に来る事はなかった。
私たちは、前に暮らしていたアパートを引き払い、ヒロの実家で生活する事にした。
私が母の家にいる間に、ヒロは転職していた。
夜勤、日勤がある2交代制の会社。
ヒロの実家で暮らす初日。
ヒロはこの日も夜勤の仕事があった。
私はお弁当を作り、ヒロを送り出して、家族みんなのご飯を作った。
小さい赤ちゃんがいる私を誰も気遣うことなく、私は初日からバタバタ動かされた。
次の日曜日、ヒロの友達夫婦が赤ちゃんを見に来てくれる約束をしていた。
ヒロはその友達夫婦を張り切って迎えに行った。
私は家で洗濯物をしたり、家事をして留守番をしていた。
プルルルル……
突然家の電話が鳴った。
ヒロのおばぁチャンが電話に出て、何か難しそうな顔をしている。
すると……
『みぃチャン!ヒロの会社の人みたいだけど、何かはなしあるみたいだから電話出てくれる?』
そう言っておばぁチャンは私に電話を差し出した。
ヒロの会社の人……?
何で家にかけてくるんだろ…?
ヒロに用があるなら携帯に電話すればいいのに……
私はいくつもの疑問を持ちながらも電話に出た。
『もしもし!いつも旦那がお世話になってます!』
『あっ!どーも。奥さん。あの…ヒロサンと連絡が取れないんですけど、今どこにいるかわからないですか?』
『ヒロは今外出しているので、帰ってきたら連絡するように伝えましょうか?』
『はぃ……。実は……ヒロサンここ1週間、無断欠勤してるんですよ。辞めるのであれば、手続きに来てもらいたいし、続ける気があるのなら今回の事は目瞑るので、はっきり答えが聞きたいんです……』
私は頭が真っ白になった。
うそ……
ぢゃぁ、いつも夜勤と言ってどこに行ってたの?……
お弁当も持って行ってたぢゃん……
『どうゆう事ですか?旦那は毎日お弁当持って夜8時に家出ていってましたよ?』
『奥さんも知らなかったんですね…。かなりビックリされてるようですが、一度ヒロサンに、はっきりした返事がほしいと伝えてください。』
『わかりました。ご迷惑おかけして申し訳ありません。』
頭が爆発寸前。
ヒロは今いない。
怒りのブツケ先がない。
とにかくヒロの帰りを待った。
1時間後、ヒロは帰ってきた。
が……
友達夫婦を連れてきているため、こんな場でヒロと話す事はできない。
とにかく冷静を装い、友達夫婦を笑顔で迎えた。
ヒロの友達の嫁とは何度か会ったことがあり、何かあれば相談したりできる仲。
わが子(杏)が寝ている2階に上がろうとすると旦那の友達の嫁(ノン)に呼ばれた。
私は、何だろうと思いながらノンと家の外に出た。
ノンは言いにくそうに話し始めた。
『ミィチャン……みぃちゃんとヒロクンって最近まで別居してたでしょ?』
『うん……別居してたよ!どうかした?』
『ミィちゃん達が別居してる時、私旦那とヒロクンのアパートに遊びに行ったんだ。そこにはヒロクンの後輩とかいて、何か、女の話ししてたよ!私の感が当たってればヒロクン、浮気してるよ!話しの内容がそんな感じだったから……』
一体今日は何の日……?
なんでこんな爆弾ばかり落とされるの……?!
もぅ嫌だ……
消えたい……
でも……
この怒りを何とかしなければ………
私とノンは、とりあえず杏がいる2階に上がり4旦那達4人で話した。
1時間ほどたち、ノン達夫婦は帰ることになり、ヒロは二人を車に乗せて送っていった。
私と杏は家で留守番。
するとタイミングよくヒロの父親が仕事から帰ってきた。
『お父さん!ちょっと話があるんですけど……』
ヒロの父は、急に顔色を変えた。
『どうした?またアイツ何かしたか?』
『今日、昼過ぎにヒロの会社の人から(ヒロが会社に来ない)と連絡があったんです……会社の人に(ヒロクンに続ける気があるのか聞いてほしい)といわれました…』
『で…アイツは今どこだ?』
『今は友達を送りに行っています!すぐに帰ってくると思います!』
『ぢゃぁ、帰ってきたら話をするよ!』
私はヒロの帰りを待った。
ブーブー……
(着信ヒロ)
私は冷静にと自分に言い聞かせた。
『もしもし?』
『あ!俺!今日、給料日だから銀行寄ってから帰るね!』
『わかったよ!』
給料………?
あるのかよ……
転職して初の給料……
いったいいくらあるんだろ………
少なかったら、それだけ仕事に行ってなかったと言うことだ………
私はドキドキしながらヒロの帰りを待った。
しばらくするとヒロが帰ってきた。
が……
なかなか給料を渡してこない。
それどころか、私を避けている。
怪しい………
私はヒロのいるリビングに行った。
『お帰り!給料ちゃんと入ってた?』
『入ってたけど………メッチャ少ない!』
『いくら?』
『1万5千円!』
『はッ?なんって?何でそんなに少ないの?1ヵ月働いたのにたったそれだけ?』
私は昼間の電話の事は言わずに問い詰めた。
すると………
『俺……ミィには言ってなかったんだけど、会社の車乗ってて事故したんだ……て言っても、ぶつけられたんだけど相手が老人だったから責めるのかわいそうで、そのまま俺がぶつけた事になってる。その車の修理代が今回の給料から引かれてるんだと思う……』
ははっ………
コイツって………
何でこんなに頭が回転するんだろぅ……
どんな質問にも戸惑うことなく嘘でパッと答えるァンタは………
すばらしいよ………
私『ヒロ!今日、ヒロが家にいない時に会社の人から電話があったよ!仕事行ってないんでしょ?』
ヒロ『は?行ってるよ!お弁当持って毎日行ってるぢゃん!』
私『ここ1週間無断欠勤してるんだってね!会社の人がこれからどうするのか聞きたいって!』
ヒロ『……………』
父『おまえ!本当の事を言え!嘘つくな!!』
ヒロ『わかったよ!行ってません。俺にはあの仕事合わなくて……』
父『それでも父親か!恥ずかしくないのか!ふざけやがって!!』
私『ヒロ!もう一つ……アンタ女いるでしょ?』
ヒロ『そりゃ、地元の女友達はいるよ!』
私『違う!地元の女ぢゃない!別の女いるんでしょ!?』
父『お前そんな事までしてたのか?どうなんだヒロ!』
ヒロ『いるよ…』
私『何で知り合った?どこの女?』
ヒロ『〇〇ゲーで知り合った隣町の女……』
私『へぇ……』
私は怒りが爆発。
常にタバコを吸い続けた。
言いたいことがありすぎて何から話せば良いのかわからない。
そうしているうちにヒロの父がブチキレた。
ヒロの父はソファーに座っていたヒロの髪の毛をつかみ、振り回した。
ヒロは立ち上がり痛みに耐えていた。
父『ミィちゃんに謝れ!ちゃんと謝れよ!!』
父はヒロを蹴り、床に座らせた。
『頭下げれないのか!!早く謝れよ!なんで謝れないんだよ!!』
父はヒロの髪の毛をつかんだまま、ヒロの頭を床に何度も叩きつけている。
父の行動はどんどんエスカレートしていった。
私は、黙ってその光景を見ていた。
頭の中が真っ白で何も考えることができなかった。
ヒロ『すいませんでした……』
私『アンタ、子供いるのわかってる?あんたみたいな父親で杏がかわいそうだよ!!あんたがやってる事は独り身とおなじだよ!!』
ヒロ『わかってる!』
父『お前はいつも口だけだ!だからいけないんだよ!』
ヒロ『今ミィと話してるから親父は関係ねぇだろ!』
父『何だと………』
パンーッ…………
ヒロは一瞬にして殴られた。
そして、ヒロと父はお互いの胸元を掴みヒロと父の取っ組み合いが始まった。
私は戸惑っていた。
とゆうより、私にはドラマでしか見たことがない光景だった。
私は女2人姉妹。
父は普段はすごく優しいが怒るとすごく怖い。
だから怒られるような事は一切しなかった。
目の前で人の殴り合いを見たのは、この時が初めてだった。
その光景をじっと見ていた私は気が狂いそうだった。
『いい加減にしてください!!』
私は無意識のうちに二人の間に入り、二人を引き離した。
『こんな家最低だ!!』
そう言い残し、ヒロは家を出ていった。
次の日、父とヒロが顔をあわせた。
『ヒロ!今度こそいい仕事を見つけろ!ゆっくりでいい!それまで俺が何とか3人を養ってやるから!』
父はそっとヒロに言った。
甘すぎる……
だからヒロはいつまでたっても変わらないんだ……
自分が動かなくても誰かが何とかしてくれる……
借金だってそう……
自分が返さなくても親が返してくれる……
だからまた簡単に借りられる……
なぜ父親は気付かないのだろう………
私は不満を感じながらも、ヒロの再就職に向けて協力した。
そして1週間がたったある日、私は久々に実家に行き息抜きをしていた。
夕方、家に帰り部屋に入った私は驚いた。
部屋にあったはずのテレビがない…………
部屋にあったテレビ。
それは私のお父さんが嫁入り道具として買ってくれた電化製品の一つ。
ヒロとアパートで新婚生活を送っている頃から使っていたが、ヒロの実家に入る事に決まってからヒロがすべてアパートから実家に運んだ。
電子レンジや食器乾燥機などは実家にもあったので、倉庫にしまってあるとヒロは言っていた。
ヒロの部屋には元々テレビがなかったので、テレビだけはそのまま使っていた。
新品の液晶テレビ。
当時はまだ液晶テレビが出始めたばかりで、値段もすごく高かった。
が………
そのテレビが消えた………
私は家中ヒロを探したが、どこにもいない。
それから1時間程でヒロはどこかから帰ってきた。
私はすぐにヒロに問い詰めた。
『ヒロ!何でテレビないの??』
『あるよ!』
『どこに??どこに持っていったの?』
『倉庫!』
『えっ?なんで?使ってるのに何で倉庫に持ってくの?』
『すぐに戻すから心配しなくていいよ!』
まったく意味がわからない……
何のために……?!
何がしたいの……??
ヒロの考えがわからない…………
私はすぐに倉庫にむかった。
それは………
ヒロの言っている事が曖昧すぎたから………
嘘だと分かったから………
倉庫に入り、あちこち見回してもどこにもない。
やっぱり…………
やっぱり嘘ぢゃん………
『ヒロ!ないぢゃん!本当はどこなの?正直に言いなよ!!』
『………あるって!』
『どこにあるの?倉庫にないぢゃん!!あのテレビはお父さんが買ってくれたテレビだよ?!何だと思ってんの?!早くテレビ戻してよ!!』
『………ごめん……』
『ごめんって何ッ?!』
『質屋入れた………』
私はその言葉にハッとした。
私はすぐに部屋に戻り、捜し物をした。
私は必死に部屋中を探した。
それは……
新婚旅行で私が買ったブランドのサングラス。
社会人になって初給料で買ったブランドのカバン。
最近見てない………
もしかして………
私の物も質屋に入れたの………?!
だから無いの………??
私は全身の力が抜けてその場に座り込んだ。
しばらくするとヒロも部屋に来た。
『みぃ……ホントにごめんな……』
『ヒロ……!!私のサングラスはどこ?カバンがないんだけと、知らない??』
『…………………質屋……だよ…』
『最低だね!!あのカバン……アンタには分からないだろうけど私の思い出のカバンなんだよ!!テレビだってそう!!今すぐ戻して!!』
私の怒鳴り声を聞き付けたヒロの父は慌てて部屋に入ってきた。
『みぃチャン!!落ち着いて!どうした?』
『コイツが………ヒロがテレビを質屋に持って行ったって……。それだけぢゃない。私のサングラスもカバンも!!人の物を勝手に質屋に入れるって最低です!!』
『みぃチャンごめんな……テレビなら新しいの買えばいいから……』
『新しいの?!あれは、ウチの父が買ってくれた嫁入り道具ですよ?それを捨てろと言うんですか?あれぢゃないと許せません!!』
『そっか……ヒロ!質屋なら戻せるだろ?お金用意してあげるから今スグ戻してこい!』
そう言うと、ヒロは父からお金をもらい質屋に行った。
2時間ほどでヒロが戻ってきた。
そこには、父に買ってもらったテレビと初給料で買った大事なカバンがあった。
私はホッとした。
が……
1つ足りない。
新婚旅行で買ったサングラス。
ハワイなんて一生に1度しか来れないと思い、思い出としてかったサングラス。
『サングラスは??』
『流されちゃった。期限が切れてたんだ………』
『あんた………とことん最低な男だね!!売るなら自分の物売れよ!!何で私の物にまで手を出すの??信じられない………』
私はある決意をした。
しかし………
外に出ると運悪く、ヒロの父がいた。
『どこいくの?』
『私もう限界です!実家に帰ります!』
『ちょっと待ってくれ!テレビやカバンだって戻ってきた。もう少し頑張ってくれないか?』
『もう無理ですよ……』
そこにヒロが来た。
『みぃ!!本当にゴメン!戻ってきてください!お願いします!』
『はぁ………もし次何かあったら、その時は私、本当に家出るから!』
そして私は渋々家に戻った。
それから1週間がたった。
ヒロはやっと仕事を見付けた。
近所にある工場だった。
私はそんなヒロを見て一先ずホッとしていた。
2007年9月1日。
ヒロの父が部屋に来た。
『これ、1ヵ月分の食費だからこれで家族8人分のご飯を頼むよ!』
そう言って5万が手渡された。
『ありがとうございます!あの………部屋に置いておくとヒロに取られる可能性があるので、どこか隠し場所ないですか??』
ヒロの父は呆れて笑っていった。
『みぃチャン、もう少しヒロを信じてやってくれんか?』
『でも…………』
ヒロの父は『大丈夫だよ!』と言って部屋を出ていった。
私は、その5万を杏の洋服タンスに隠した。
それから数日後……
夜ご飯を食べてお風呂に入り、私は杏と遊んでいた。
ヒロは私の横でテレビを見ていた。
ブーブー………
ヒロのケータイが鳴った。
ヒロは部屋から出ていき、廊下で電話していた。
話方から、先輩だ!とすぐにわかった。
ヒロは何か深刻そうに話をしていた。
しばらくすると電話が終わった。
しかしヒロは部屋に入ってこない。
『みぃ!ちょっと外出てくる……』
ヒロは廊下から私に呼び掛けた。
ヒロの声は震えていた……
何で急に外にいくのだろう……
様子がおかしい………
私はすぐにヒロに電話をした。
『もしもし!どこ行くの?』
『………ちょっと外に……行きたいだけ………』
ヒロは泣いていた。
私はヒロのおばぁちゃんに杏を預けてヒロを探しに外に出た。
ヒロは家の裏で泣いていた。
『どうしたの?何があったの?』
『俺………またやっちゃった………』
『何を………??』
『実は………先輩や幼なじみの親友に金借りてたんだ。でも期限までに返せなくて………さっき先輩から電話がかかってきて「今からみんなでお前の家行く!」って……』
『はっ??何で借りたの?何に使ったの?』
『………』
『とにかく逃げてたって終わらないぢゃん!家に戻るよ!』
どんなにヒロを引っ張っても動こうとしない。
ブーブー………
今度は私のケータイが鳴った。
(着信ヒロ父)
『もしもし!ヒロいたか?今家に電話があって、アイツの先輩が今から金取りに来るんだと!!今スグヒロを連れてきてくれ!話が聞きたい。』
『わかりました。すぐに帰ります!』
電話を切り、私は強引にヒロを連れて帰った。
家に帰るとすでにヒロの先輩達は来ていた。
親友や先輩。
5人くらいの人達とヒロの父は向き合って座っていた。
私はヒロを父の隣に座らせた。
先輩『俺、コイツに3万貸してます!返してください!』
親友『俺は5万。この金返してもらったらコイツとは縁切らせてもらいます!』
先輩たちは、1人1人金額を言っていった。
私はただ茫然と話を聞いていた。
父『みんなごめんな!コイツばかだから……今週中にかならず返すから、許してくれ………』
『わかりました。絶対返してくださいよ!』
そう言って、先輩たちは帰っていった。
父はヒロに言った。
『お前、今ある借金全部書き出せ!』
すると…………
ヒロはズラズラと書き始めた。
全部で7件ほど。
総額20万。
ありえない…………
しかしヒロの父は何も言わなかった。
『本当にこれで全部だな?』
『あとは絶対にない。』
『みぃちゃん!明日俺が20万用意する。悪いけど、ヒロと一緒に金返しに行ってあげてくれないか?1人で行ったら、何されるかわからないから………』
『わかりました。』
そして、次の日、父は20万を私に渡した。
私とヒロは早めに夜ご飯を食べて、金の返済に回った。
『遅くなって本当にすいませんでした!』
私は1件1件頭を下げて回った。
情けなかった………
私ぢゃない……
夫婦になった以上、2人の問題……
知らないとは言えない……
すごく情けなかった……
7件すべてまわり終えて、私はひたすら泣いた。
そして数日後………
ご飯の買い物に行こうとした時だった。
アレッ…………
おかしい………
父にもらった食費が、3万になっていた。
5万のうちの1万は私が既に使っていた。
が……
残りは4万のはずなのに3万しかなかった。
私は財布に入っていたレシートを取出し、計算をした。
レシートの金額をあわせても1万。
何で………
私は父にもらったお金を無くしてしまった罪悪感に襲われた。
やばい……
私他に何に使ったかな……
思い出せない……
1万なくなったなんて父には言えない……
その時は、「無くしたのは私だ。節約してなんとか1万浮かせよう」と思っていた。
2、3日たったある日……
私はヒロのオバアチャンと父と3人でご飯を食べていた。
オバアチャン『みぃチャン!ヒロちゃんと謝ってきた??』
私『謝る……?何がですか?』
オバアチャン『あら……やっぱり謝ってなかったんだね。ちゃんと正直に言いなさいって言っておいたんだけどね…』
私『ヒロが何したんですか?』
オバアチャン『ヒロがこの間、「食費を1万、勝手に抜いて使っちゃったからミィにバレる前に返したいから1万ちょうだい」って言ってきたの。だから、正直にミィちゃんに言ってから渡しなさいって言っておいたんだけど………』
私『えっ…………やっぱり。私1万なくなってるの気付いたんです!私使った覚えもないし、不思議に思ってたんです……』
私はすぐに杏のタンスを確認した。
すると、ちゃんとお金が戻してあった。
アイツ……………
ふざけるな………
どこまで最低なんだよ………
昼間、ヒロが仕事から帰ってきた。
こんな時間に仕事が終わるわけがない……
『仕事は?』
私はおかしいと思いながら聞いた。
『お腹痛くて早退してきた!』
なんだその理由……
お腹が痛くて早退したのにヒロは笑いながらテレビを見ている。
絶対嘘だ………
私はわざとらしく声をかけた。
そして日曜日、私は朝からかばんに荷物を詰め込んだ。
ヒロが寝ている間に。
もちろん家を出るため。
『何してるの?』
ヒロが起きた。
『今までありがとね!出ていくね!』
『は?意味わかんねぇし!!』
『あんた隠し事あるよね?お金持っていったんでしょ?何で正直に言えないの?コソコソしてて腹立つんだよ!』
はじめは冷静に話していたつもりが気付けば怒鳴りあいになっていた。
『金?持っていってねぇよ!』
『は?それが嘘なんだよ!嘘つき!!』
私たちの声は家中に響き渡っていたらしい。
騒ぎを聞き付けオバアチャンが部屋に来た。
『二人ともやめなさい!!そんな大声出して!いったい何事なの?』
私『こいつが悪いんだよ!全部コイツのせいだ!もぉ限界なんだよ!』
オバ『限界って……今の若い子はやっぱり我慢って言葉を知らないんだね!情けない!』
私『はぁ?!こんな孫を持って情けないと思えば?』
オバ『まぁ、出ていきたいなら出ていけばいいよ!』
私『言われなくても出ていくよ!』
そして私は家を出た。
それからまた母の家での生活が始まった。
母の家に着いた私はすべてを話した。
母は激怒し、
『みぃ!もぅ離婚しなさい。あの子と一緒にいても幸せにはなれない。今ならまだ杏も父親の顔がわからないから今のうちに離婚しなさい。』
『………離婚…………かぁ……』
離婚したら幸せになれる…?
杏はどぅ思う……?
やっぱりパパと一緒にいたいよね……?
私は……………………
私は自分の答えが出せなかった。
その日、私は杏を母に預けて幼なじみの優チャンとファミレスに行った。
優チャンとは保育園からの仲で一番の親友。
お互いに何でも言い合える仲だ。
私がヒロと付き合うと決めた時、優は大反対した。
けれども私はヒロを信じてしまった。
それでも優は真剣に相談に乗ってくれる。
優と1時間ほど語っていると、見るからにチャラそうな男の子2人が私達の方にむかって歩いてきた。
『こんちゃーすッ!!』
………………………
『あぁー!!タカぢゃん!!おひさぁー☆』
タカは地元の2個下の後輩。
何年ぶりかの再会に話が盛り上がり、私たちは4人で語りはじめた。
タカ『そいえば……ミィさん最近ヒロさんとどーなんですか??』
私、優『えっ?!何でヒロの事知ってんの?!』
私達は声を揃えていった。
タカ『知ってますよ!前の職場が一緒でヒロさんとよく話してたんで!!』
私『そーなんだ!初耳!!』
それはまだ結婚したばかりの頃。
ヒロが帰ってこない日が毎日のようにあった時。
その時にヒロが働いていた会社でヒロとタカは同僚として働いていたらしい……。
私『うち離婚するかも………』
タカ『まぢっすか?!………まぁ、でもわかる気がします!』
んッ………?!
わかる……???
タカ何か知ってるな………
タカ『俺、行きたくもないのにピンサロとかヘルス連れてかれて最悪だったんですよー!!俺そーいう所キライなんですけど「おごるから!」ってまぢ強制的に!5回くらいは連れてかれてますよ!それで金使いすぎて給料前借りして、それでも行ってたんですよ!』
私『給料前借りって……給料日には給料もらってきてたよ?!』
タカ『あぁ…金融会社から金借りてきて封筒に入れてたんで……ぶっちゃけミィさんだまされてたんですよ!』
私『でも……………』
信じたくない……
そんな事が起きていたなんて………
てか………
知りたくなかった………
私はそれ以上は話さなかった。
これ以上、新たに何かを知ってしまったら私が私ぢゃなくなる気がしたから………
私はタカの言葉がショックで、それからも4人で語っていたが、まったく内容を覚えていない。
そんな衝撃的な事実を知ってから1週間。
考えないようにしても考えてしまう。
私は自分の感情をコントロールできなくなっていた。
おまけに杏は昼間は泣き続ける。
抱っこしている間は眠り、布団におろすと起きて大泣き。
毎日私が寝るのは夜中の3時だった。
それでも朝7時ごろに起きる杏。
私はゆっくり眠れず寝不足がつづいた。
私『お邪魔します!』
ヒロ祖母『あら……どうしたの?』
私『ベットやテレビ持って行きますね!』
ヒロ祖母『もう本当に帰ってこないんだね?』
私『戻りません!』
ヒロ祖母『あっそ!ヒロ可愛そうに………アンタに捨てられちゃって!!あぁー!可愛そう!!』
私『捨てられた?アイツが悪いんでしょ!!』
ヒロ祖母は、嫌味を言うと台所に行ってしまった。
うざい………
なんなんだよ…………
私はさっさと荷物を車に詰め込んだ。
すると、ヒロ祖母がビニール袋いっぱいに何かを持ってきた。
ヒロ祖母『これ!アンタが買った食材!こんなもの、うちの冷蔵庫に入れておかれても作り方わからないし邪魔だから持って帰って!!』
とことんウザイ……………くそババ!!………
私はそれを奪い取り、ヒロの実家を出た。
私はイライラする気持ちを押さえる事ができず、事故を起こさなかったのが奇跡な程、車の運転も荒かった。
家に着くとヒロからメールが届いていた。
『ばぁチャンが家を出ていっちゃった!私が悪いんだって……どうしよう………』
『しらねぇょ………』
送信ー
受信ー
『ミィもバァチャンにお世話になっただろ?!何でそんな冷たいんだよ!!』
『どーでもいい!!』
送信ー
それから1ヵ月。
ヒロからは毎日メールが来た。
内容はすべて同じ。
『真面目になるから戻ってきて!!』
私はすべて無視した。
しかし杏の事を考えると答えが出なかった。
どうしたらいいんだろ……
杏の幸せはどっち……?!
どっちなの……?!
パパがいない子って……
可愛そうなのかな………
うちの親も私が高校卒業してスグに離婚している。
小学生の頃から両親は頻繁にケンカしていた。
毎晩のように。
私はそんなケンカの声を聞くたびに怒鳴り込んでやろうと思っていた。
すごく嫌だった。
仲良くしてほしかった。
私がヒロの家を出てから、ヒロは新しい仕事を決めた。
ヒロは私に通帳とカードを渡しに来た。
『俺、頑張るから!信用取り戻せるように頑張るから!給料はこの通帳に入る。これはミィに持っててほしい!!頑張りを見てほしい!』
それからヒロは真面目に仕事に行っているらしく、給料は毎月通帳に振込まれていた。
それでも私はどうする事もできなかった。
とゆうより、自分自身、どうしたらいいのかがまったくわからなかった。
確かに私は異常なほどひどい目にあっている……
だけど杏にとってはパパ……
その二つが交互し、決心する事ができなかった。
ただ一つ言えること……
それは………
ヒロが父として、夫として家族の大黒柱として真面目に生活してくれる事……
家事を手伝ってほしいわけでもない……
育児を手伝ってほしいわけでもない………
ただ普通に生活したかっただけ………
ある日、杏が昼寝をしている間、私は母とゆっくり話をしていた。
『みぃ……これからどうするつもりなの?』
『うん………それが、どうしていいのかわからなくて……』
『どうしたらいいのかって何?アンタもしかして戻る事も考えてるの?』
『…………杏が………杏にとっては父親ぢゃん。それを無くしてしまうのって可愛そうで……』
『はぁ………そーやって何回もやり直してるでしょ?まだわからないの?私、あの時ヒロくんに頭下げてお願いしたよね?それが2ヵ月もたたないうちにコレだよ?いい加減気付きなさい!!』
『それはわかってる………』
しばらくすると杏が泣きだした。
そして母との話は気まずい空気のまま終わってしまった。
その日の夜、ヒロからメールが来た。
受信ー
『今から杏に会わせてくれない?』
どうしよう………
ダメだよね……
でも………
杏の顔を見て気持ちを入れ替えてくれる可能性もあるかな………
『少しだけなら………』
送信ー
許可してしまった…………
ヒロは15分くらいで来た。
母は買い物に行っていて留守だった。
私は杏を連れて外に出た。
ヒロ『久しぶり!!』
私『うん!』
ヒロ『杏…ごめんな………』
ヒロの目からは次々と涙が落ちていた。
その涙は本物なの………?!
偽物…………!!?
ねぇ………………
ヒロ………
どっちなの?!………
家に入ると母は私を待っていた。
『みぃ!あの子、何しにきたの?』
『杏に逢いにきたみたい……』
『あんた何考えてるの?逢わせる必要ないでしょ?考えてることが甘すぎる!!』
私はわけがわからなくて泣くことしかできなかった。
何がいけないのかわからない………
私はただ、杏の顔を見て、真面目になってくれたら………
そう思っただけ……
何でそんなに怒られるの………?!
まだまだ懲りずにヒロの事が好きだった私。
自分でも不思議なくらい、ヒロはムカツク存在だけどキライにはなれなかった。
キライになれたらどんなに楽だろう……
気持ちが冷めてしまえばすぐに離婚に踏み切れるよね………
けれど、そんなに簡単に気持ちのコントロールはできなかった。
次の日曜日、私は母と、母の実家のお婆チャン家に遊びに行った。
母は私の現状をお婆ちゃんに話したらしい。
お婆チャンもすごく心配していた。
お婆ちゃん家に行った帰り道。
沈黙が続く中、母は急に話はじめた。
『みぃ………この間はゴメンね……。言いすぎちゃった!今日ね、お婆ちゃんに言われたんだ……。(傷つけられた娘の母として、あんたの気持ちもわかるけど、一番大切なのはミィちゃんの気持ちだよ!ミィちゃんがまだヒロくんの事が好きなら反対したらいけない)って…。ミィの今の気持ちはどうなの?やっぱりまだヒロくんが好きなの?』
『好き…………だよ……。自分でも何でこんなに好きなのかわからない。どれだけ傷付けられたかわからない……その度に、まわりに助け求めて………なのに……………バカだよね私……最低だよね………』
『そっか……でもね、ゆっくり考えなさいよ!慌てなくていいから!私の家にはどれだけいてもいい。もし、離婚ってなった時は一緒に暮らすことだっていいんだよ!ゆっくり考えなさいね!』
『ありがとう………』
母の家に引っ越しをしてから3ヵ月がたった。
私は母に迷惑をかけている事が限界になり、仕事を探すため、まずは保育園探しをはじめた。
しかし、そんなに簡単にはいかなかった。
住所はヒロの実家のままで体は母の家。
地域がまったく違うため、母の家の近くの保育園は行くことができなかった。
しかたなく、誰でも行ける託児所の見学に行った。
見積もりを出してもらうと……………
月々5万円。
撃沈。
託児所は諦め、町営の保育園を探しはじめた。
杏はまだ4ヵ月。
ヒロの実家の近くの市役所に行き4ヵ月の子供を見てくれる保育園を探してもらった。
担当をしてくれたのは福祉科の山崎さん。
私は全ての事情を山崎サンに話した。
そして、問題がいくつか出てきた。
まずは、住所がヒロの実家にある事。
山崎サン『今、住所は旦那サンの実家にあるんですよね?とゆう事は………一緒に住んでいる方いますよね?』
私『はい。父と姉と弟と祖母と祖母の妹がいます!』
山崎サン『その中で、働いてみえるのは?』
私『姉と父と弟です。』
山崎サン『うわぁー!!だとすると、家族全員の給料を足して保育料が決まるので最高額になるかもしれませんね………』
私『なんとかならないですか?だいたい何で家族全員の給料合算なんですか?お金払うのは私たちですよ?姉や弟や父なんて関係ないぢゃないですか………』
山崎サン『普通は世帯分離っていって、実家に住んでいても旦那さんを世帯主にしてミィさんと杏サン3人の世帯にできるんです。そうすると旦那サンの収入だけで計算できるのですが………旦那サンの収入が少なすぎて世帯分離できないんです………』
だろうね………
働いてなかったんだもん………
恥ずかしい。
役場の方も私をバカな女だと思っただろう。
情けないよ………
それでも私は働くしかなかった。
私『わかりました。保育料は大体いくらくらいになりますか?』
山崎サン『3万円ですね……』
私『わかりました。おねがいします。』
山崎サン『ぢゃぁ、手続きをはじめます!住民票見させてくださいね!』
これで仕事ができる。
すこしでも働いて家にお金を入れなければ……
すぐに大きくなっていく杏に服も買ってあげたい………
私は今まで以上に気合いが入った。
山崎さん『あれ?お婆さんの妹サンって身体障害者なんですね?障害者手帳のコピーってもらってくる事できますか?』
私『旦那に頼めばもらってこれると思います。』
山崎さん『ぢゃぁ、近いうちにコノ書類に旦那サンにサインしてもらって、障害者手帳のコピーもらってきてください。』
私はたくさんの書類を渡されて、その日は一先ず手続きが終わった。
私はすぐにヒロにメールをした。
『杏を保育園に入れて仕事をします!保育園の書類があるので書いてください。それとお婆さんの妹の障害者手帳のコピーがいるのでもらってきてください。』
送信ー
受信ー
『保育園って本当?ミィは働かなくていいよ!俺頑張るから!杏と一緒にいてあげて!』
『もう決めたから!とにかく今日、夜8時にファミレスで待ってるから!』
送信ー
受信ー
『わかった。』
そして夜、私は待ち合わせをしたファミレスにむかった。
ファミレスに着くと、ヒロはすでに待っていた。
『俺、本当に頑張るから保育園は反対!』
『お母さんに迷惑かけてるんだよ!だから少しでもお金入れたいの!』
『俺の給料からお母さんに生活費としていくらか入れてくれていいから!』
『それだけぢゃないよ!私だって小遣いないのはつらいし、お金なかったら自分の病院だって行けないし車も乗れないぢゃん!』
しばらく沈黙が続いた。
『わかったよ………』
ヒロは渋々だったが書類にサインした。
『で、バアチャンの妹の障害者手帳のコピー持ってきてくれた?』
『それが……バァチャンが管理してて理由話したんだけど、(頼み事があるなら直接言えってミィちゃんに言っといて)っていわれちゃった……だから持ってこれなかった……』
『はぁ?まぢうざいんだけど!いいよ!ぢゃぁ電話するよ!』
そして私たちはファミレスをでた。
帰り道、ヒロの実家に電話した。
プルルルル………
『はい!』
『もしもし!ミィですけど!障害者手帳のコピーください!』
『あぁ、ヒロが言ってたやつね!あんた障害者の人がいるから子供の世話ができないって理由付けようとしてるんでしょ!きたないわねぇ!渡しませんから!』
『はぁ?!そんなんぢゃねぇよ!いるっていわれたからしょーがないだろ!』
『アンタ子育てしたくないなら何で子供産んだの?』
『ふざけんぢゃねぇ!!そんな理由ぢゃねぇ!信じれないなら役場に電話して聞けばいいだろ!』
『はははッ!!』
私は怒りのあまり、電話を切った。
私は怒りに震えながら母の家に帰った。
家に帰ると母は杏と遊ぶ手を止めた。
『みぃ!おかえり!大丈夫だった?』
『ただいま!杏みててくれてありがとう!もぉ最悪!ヒロは書類にサインしてくれたけど、ヒロのバァちゃんが訳のわからないこと言ってるから書類が揃わないの………』
私はヒロのバァチャンに言われたコトを母に伝えた。
母も怒っていた。
『はぁ?!自分の孫がダラダラしてるからこうなってるのに何なの?バカな祖母だね!きっとヒロくんのコトが可愛くてしょうがないんだろうね!』
『私明日、役場の山崎さんに話に行ってくる!全部正直に話せば何かいい方法があると思うから!!』
『そうしなさい!』
その頃から杏は目がしっかり見えるようになり、生まれた時のように一日中泣き続ける事はなくなっていた。
そんな杏を見て、母は私に言った。
『みぃ!私今日、杏を見てて思ったんだけど……杏は生まれた時からミィが寝る暇ないくらい手のかかる子だったでしょ?!私もこんなに泣く子供って今まで見たことも聞いた事もなかったの……
それって杏がミィのお腹の中にいるときの胎教が一番関係してると思うの』
『胎教………?!』
『うん…
ミィは杏がお腹できた時からヒロくんの事でズット悩み続けてきたぢゃない…。
不安は常にあったでしょ?毎日のようにミィは泣いてたよね?!ストレスもいっぱいだったでしょ?!その中で育ったから、すごく胎教が悪かったんだと思う。生まれて数か月は目がしっかり見えないでしょ?だから杏も不安だったんだよ!怖かったんだと思うよ!それに比べて今は目が見えてきて、自分でママは近くにいるって確認できるでしょ?だから落ち着いてきたんだと思うの……』
私は杏を強く抱き締めた。
『ごめんね……杏……ごめんね……』
私がストレスいっぱいだったから………
不安がいっぱいだったから……
悩みがいっぱいだったから……
だから杏も不安だったんだよね………?
それなのに私は……
何で杏は泣いてばかりなの?
何で杏は一人で寝ていられないの?
何で杏は……………
って何もかも他の子と比べてた。
どうして杏だけがこうなのか、不思議でたまらなかった。
私が悪いのに……
次の日、集められただけの書類を持ち、山崎サンを尋ねた。
私『すいません……書類、できるかぎりやったのですが………障害者手帳のコピーだけが持ってこれませんでした。』
山崎さん『もらえそうなの??』
私『それが………』
私はすべて山崎さんに話した。
山崎さん『困ったバァさんだねぇー』
そう言うと大きなため息をついた。
しばらく沈黙が続いた。
山崎さん
『うーん………本当はいけないんだけど、手段がこれしかないから!!』
山崎さんの協力のおかげで、なんとか保育園が決定した。
そして次は仕事探し。
迷う暇もなく、私は派遣会社の登録会に行った。
そして仕事はすぐに決まった。
産後4ヵ月で仕事開始。
朝8時に保育園に送り、私は朝9時から夕方5時半まで毎日働いた。
本当は3歳までは杏を自分一人で育てたかった……
でもお金がなければ何もできない………
杏………
ごめんね………
仕事と育児は本当に大変だった。
けれど、私は居候。
せめて母親に生活費だけは渡したかった。
資格がない私は、工場内での立ち仕事。
重い荷物の持運び。
仕事内容はとてもキツかった。
でも、不思議と杏のためなら頑張れた。
仕事を始めて2ヵ月。
仕事、育児の両立もだいぶ慣れてきた。
そして最大の問題が私には残されていた。
ヒロとの今後………
私は毎日悩み続けた。
しかし、母親には一切言わなかった。
まわりの意見を聞いてしまったら、余計に決めれなくなってしまうから………
それは……………
ヒロを信じる事!!
自分がスキになった相手を信じたい……
まわりのみんなが、どんなに反対しようと、私だけはヒロを信じてあげたい……
ヒロは杏の父親だから……
遠回りしてでも真っすぐな道を歩くようになってくれれば、それでいい………
『あのさ……私、もう一度ヒロの事信じてみるよ!でも次ぎ裏切ったら先はないから!!』
『ホントに?!ホントに戻ってくれるの?!俺、ミィも杏もマヂ大事にするから!!ありがとう!!』
『次はない!!それだけは覚えておいて!!』
『うん!わかったよ!』
『それで、アパート契約しようと思ってるんだけど、前のアパートで使ってた家具、全部ヒロの家にあるよね?』
『全部あるよ!』
『引っ越し決まったら全部持ってきて!!だから今のうちに揃えといてね!!』
『わかったよ!!確認しとくよ!!』
私はヒロに電話した。
プルルルー
『もしもーし!』
『もしもし!引っ越しが11月15日に決まったから!家具確認してくれた??』
『もぅすぐぢゃん!!あっ!家具まだ確認してなかった!でも絶対あるから大丈夫だって!!』
『いいから確認しといてよ!!』
『了解!!』
そして引っ越し1週間前。
私はアパートの管理会社に入居費用の支払いに行った。
支払いが終わると同時にケータイが鳴った。
ブーブー………
(着信ヒロ)
『もしもし?』
『もしもし!あのさぁ……家具の事なんだけど、全部ないんだよ……』
『……………どうゆう事?!』
『俺も必死に探したんだけど、どこにもなくて……家の人に聞いてもみんな知らないって言うし……』
『はぁ?!どうするつもりなの?』
『ホントごめん!!俺の給料で全部揃えてくれない?!』
『ホント最悪だね!!』
電気屋に着くとすぐに店員を呼んだ。
『すいません!!』
『いらっしゃいませ!!』
『あの、電化製品一式ほしいので安い商品教えてください!』
『ありがとうございます!』
私は値切りに値切り、10万以内に収める事ができた。
平成20年11月15日。
1年ぶりにヒロ、私、杏、3人での生活がスタートした。
ヒロは運送業。
朝は私たちが寝ている間に出勤。
昼休みが長く昼間は家で昼寝。
夕方にまた出勤。
そして夜10時に帰宅。
そんな生活のため、夫婦、親子の会話ができるのは寝るまでの数分だった。
私とヒロは些細な事で度々ケンカしていた。
喧嘩の耐えない夫婦。
しかし、仲がいい時は、そこらにいるカップルよりも断然ラブラブだった。
決して裕福な暮らしではない。
ヒロも仕事のわりに給料は少なく、私もパート勤め。
節約すれば貯金ができる……
そんな生活が続いた。
アパート生活をスタートして半年がたったある日………
また私たちの生活が崩れ始めた……………
それは、8月。お盆。
ヒロは仕事柄、お盆休みはない。
私は杏と二人で実家に遊びに行っていた。
お昼になるとヒロからメールが来た。
受信ー
『昼休憩で家に帰ってきたよ』
『おつかれー!!』
送信ー
ブーブー………
(着信ヒロ)
『もしもぉーし!!』
『今日ケータイの請求書がポストに入ってたんだけど、金額ヤバイよ………』
『そんなに使ったの?!
………で、支払い金額は、いくらなの??』
『約6万……………』
『はぁ゛ーーーッ?!
ヒロ!!お前一人でいくら使った?!』
『俺ので5万くらい…』
『バカぢゃねぇの!!どーすんだよ!!』
私は怒りのあまり震えていた。
『しょーがないぢゃん。仕事で道がわからなくて、アチコチ電話したりするんだからさぁ………』
『だったら、そのように会社に言って仕事用の電話持たせてもらって!!こんな請求初めてだわ!!最悪!どーやって生活してけってゆうの?!もっと家の事考えてよ!!』
私は電話を終えると大きなため息をついた。
『どーしたんだ?すっごい怒鳴ってたけど、また何かあったのか?』
父だった。
『あのバカ男!ケータイ5万も使ったんだって!!』
『………5万?!普通に使ってて5万もいくか?!俺も仕事でよく使うけど、1万前後だぞ!』
そうだ……
父も運送業だった。
完全にヒロは何か別の目的で使用しているな………
洗濯物や食器洗いなど、一通り家事を済ませた。
そして私は銀行に向かった。
家賃、光熱費、食費、ケータイ代など必要な金額を銀行から引き出し、ケータイ代以外の支払いを済ませた。
ケータイ代は請求書がまだ来ていなかったため、この日は支払うことができなかった。
そのケータイ代を………
私は押し入れの奥の方に隠した………
本当は自分の旦那を疑うような事はしたくない。
旦那だから信じたい。
でも……
もし、このケータイ代3万円をヒロに取られてしまったら、生活できなくなる……
あと5日でケータイの請求書は届く。
そしたらすぐに払いに行こう……
そう思っていた。
予想どおり、ケータイの請求書は5日後に届いた。
私はスグに支払いに行こうと、押し入れのケータイ代を出した。
しかし、そこには2万……
3万円入れたはずの封筒の中には2万円しか入っていなかった。
泥棒かヒロか………
そんなの考えなくても答えはすぐに出る。
プルルルー……
『はい!!』
『ヒロ!あのさぁ、家に置いてあったお金使った?』
『金?知らないけど……どこに置いてたの?』
『押し入れの奥の方だよ!』
『俺押し入れなんて触らないし、ホント知らないよ!!まぁ、前の俺からしたら疑われてもしょーがないけどね!!』
『ホントに使ってないの?私3万入れていたんだけど1万減ってるんだ……あきらかにおかしいでしょ!!』
『何?俺だと思ってるの……??』
『…………』
(そうだよ!思ってるよ!!)
そう言いたかった………
でも言えなかった……
もし違っていたら悪いから……
『あのさぁ、俺はもぅ金取ったりしないって!!ホントに反省したんだから!!てか、ケータイも使いすぎた時あったでしょ?俺バイトするよ!知り合いにバイト頼まれたんだ!』
『そぅなんだ!でも休みの日は大事にしてよ!日曜日しか休みないんだから、家族で過ごす大切な1日が潰れてしまうようなバイトならやらないでよ!!』
『わかってるって!!』
電話を終えた私は、モヤモヤした気持ちが消えないままだった。
1万……
どこに消えたんだろ……
ヒロだと思う……
ヒロしかない……
だけど、証拠がないから、違うと言われればそれまで……
すると、ヒロからメールが来た。
ブーブー……
(メール受信ヒロ)
『今日、仕事終わったらさっそくバイト行くよ!!とりあえず今日と来週は行くから!!』
『夜?!どんなバイトなの?』
『お店の閉店後の内装工事だよ!バイト代は日払いだからスグお金もらえるから!!』
『わかったよ!』
その日の夕方。
ヒロは仕事を終えて、一旦家に帰ってきた。
そして、慌ただしく作業着に着替えて午後6時に家を出た。
私の家は車は一台。
この日はヒロが乗っていくため、私と杏は家でおとなしくテレビと睨めっこしていた。
『おはよ!昨日のバイト代はいくらもらったの??』
『あぁ!一万の予定なんだけど……昨日は社長が手持ち金がなかったみたいでもらえなかったんだぁ!』
『日払いぢゃないぢゃん……』
『今度もらってくるからいいよ!!』
『ホントにもらえるの?』
『もらえるよ!働いたんだもん!!』
『そぅ。ならいいんだけど………』
次の週の土曜日も、ヒロはバイトに出かけた。
夕方6時に作業着で出勤。
その日の帰宅は朝方5時半だった。
朝8時。
私は目が覚めてトイレにいった。
廊下を歩いていた時………
気付いてしまった…………
そこには、無造作に脱ぎ捨てられた私服と袋があった。
なんで………?!
バイトだったんだよね?………
何で私服があるの………?!
いつのまに私服を持っていってたの??………
私はすぐにヒロを叩き起こした。
『ヒロ!!昨日どこ行ってたの?正直に言って!!』
『バイトだよ!てか朝から大声で何?』
『バイト?私服で?昨日は作業着着て行ったよね?何で私服がいるの??』
『は?私服なんて持って行ってないし!!あの服ならもっと前から置いてあったよ!』
『うそ!私昨日掃除したんだよ!その時に服はなかった!!』
『ずっとあの場所にあったよ!!俺はとにかく持っていってないから!!』
『絶対になかったよ!あったら掃除した時に気付くでしょ?』
『気付かなかっただけぢゃないの?てか、そこまで言うなら証拠あるの?』
『証拠?!』
『なかったってゆう証拠!!』
『……………ないよ!!』
またヒロに負けてしまった………
ダメな女………
それなら………
『そうだ!バイト代は?昨日、2日分もらえたはずでしょ?』
『まだもらってない!!絶対もらってくるからいいって!!』
『あのさぁ、日払いなんでしょ?!何でそんないい加減なの?もうバイトなんて行かなくていいから、2日分お金だけもらってきてよ!!』
『はい!早いうちにもらってきます!!』
それから2ヵ月がたった。
2009年も終わりを迎えた年末。
12月29日。
ヒロが仕事から帰宅し、家族3人でまったりしていた。
『明日、俺休みなんだけどどこか行く?』
『うーん………出かけるとお金使うし……何も考えてなかったけど……』
『俺、実家から電話あって、手伝い頼まれたから行ってきていい?!』
『手伝い?!いいよ!手伝い終わったら真っすぐ帰ってきてよ!』
『当たり前ぢゃん!!』
12月30日。
ヒロは朝9時に家を出た。
もちろん、ヒロは私の車で実家に迎うため、私と杏は家に引きこもって遊んでいた。
夕方6時。
ブーブー……
(着信ヒロ)
『もしもーし!!』
『遅くなってごめんね!!今から帰るから!』
『はぁい!!気をつけてね!』
『あっ!今日、社長のところ行ってバイト代もらってきたよ!!2万!』
『そっかぁ!とりあえず一安心だね!!』
『うん!ぢゃぁ帰るから待っててね!!』
そして無事、家族3人で仲良く新年を迎えた。
2010年。
1月2日。
私は杏とヒロと3人でヒロの実家に新年のあいさつをしに行った。
新年のあいさつを終えて早々、ヒロはタバコを吸いに外に出た。
部屋に残された私と杏は、ヒロのオバアチャンとお茶を飲みながら話をしていた。
すると………
とんでもない話が始まった………
『そうそう!年末30日にヒロが急に家に来たんだよ!!』
『急にって……手伝いがあったんですよね?!』
『えっ?手伝い?何の?』
『実家から手伝い頼まれたから行ってくるって朝9時頃出ていったんですけど………』
『あはは!手伝いなんて頼んでないよ!だいたい、家に来たのは夕方だしね!』
『……………また嘘か……』
私は笑ってその場を乗り切った。
そしてヒロのオバアチャンが席を立ったと同時にヒロの元に向かった。
『ヒロ!どーゆうこと?あんた30日どこに行ってたの?』
『は?30日は家の手伝いだって!』
『手伝いなんて頼んでないってばぁちゃんが言ってたけど!?』
『………』
『正直にいいなよ!!』
『ゴメン……会社の掃除に行ってた……』
『は?ぢゃあ何でいちいち嘘つくの?』
『会社全員で掃除って強制だったから、行かせてもらえなかったら困ると思って……』
『やっぱりあんたは信じても信じても簡単に裏切るんだね!もういいよ!信じてきた私がバカだったよ!』
『ホントごめん!もう嘘つかないから……』
『うるせぇー!!お前はいつも口だけなんだから!!』
私は杏をつれて家を出た。そして車に乗り、ヒロを実家に残したまま杏と2人で帰宅した。
私はあふれ出す涙を止めることができなかった。
杏の前では泣いたらダメ……
何度自分に言い聞かせても、流れる涙は止まらなかった。
しばらくするとヒロが帰ってきた。
『ホントにごめん!許して!』
ヒロは何度も謝っていた。
が………
私はもう許さない………
絶対に………
母の家に着くと、私の持っていった大荷物を見て母はすぐに状況を把握したようだった。
『で、何があったの?』
私は母にすべて話した。
『やっぱりあの子は変わらないね!離婚しなさい!』
『そうだね!これで私も決心したよ!』
この日から私は離婚に向けて動きはじめた。
私はインターネットで離婚について調べ、町で行っている無料弁護士相談を予約した。
1月20日。
待ちに待った弁護士相談。
30分間しかないため、私は今までヒロにされてきた事すべてを紙にメモをし、持っていった。
緊張しながら待合室で待っていると、ついに名前が呼ばれた。
『みぃさん!!どうぞ!!』
『はいっ!!失礼します!』
『どのような状況ですか?』
『あの、今までに旦那は浮気や借金を何度も繰り返してきました。そして嘘が多いのです。もう限界でこれ以上信用できません。別れたいのですが旦那は「絶対別れない!!」と言っています。どうしたら離婚に持っていけますか?』
『旦那サンは今現在、浮気や借金はされてますか?』
『今は……ないと思います!』
『………………はっきりいいますけど……………』
弁護士さんは、ゆっくり口を開いた。
『はっきりいいますけど、あなたに勝ち目はありません。普通、相手の方が離婚に応じてくれない場合は離婚調停をするのですが、離婚調停をするにしても離婚理由が弱すぎます!旦那さんが勝ちますよ!』
思いもしなかった事を言われてしまった私は頭が真っ白になった。
理由が弱いって何?………
これだけひどいことをされても、ヒロが有利なんだ……
ありえない………
『ぢゃぁ……旦那の事を許すしかないんですか……?』
『そうですね……自分達で解決させるしかないですね!』
『わかりました。』
30分で話が終わるわけがないと思っていた私。
けれど思いもよらぬ弁護士の言葉に返す言葉がなくなった私は15分ほどで話が終わってしまった。
次の土曜日、ヒロから連絡があった。
ブーブー………
(着信ヒロ)
『はい!!』
『今から親父とミィの実家に行くから来てほしい!!』
『何しにくるの?』
『話を聞いてほしい!!』
『わかったよ!!』
私は用意していたサイン済みの離婚届けを持ち、実家に向かった。
実家に着くと、リビングにはヒロの父、ヒロ、私の父が話をしていた。
私はゆっくり席に着いた。
ヒロ父『ミィちゃん!今回は本当に申し訳なかった。ヒロも反省してるし、もう一度だけ信じてやってくれないか?』
私『無理です!今まで何度もチャンスはありました。お父さんも知ってみえますよね?これ以上はありません!!』
ヒロ父『頼む!!コイツはバカな男だ!ミィちゃんがいないとコイツはもっとダメになる!あと3ヵ月でいい!もう一度チャンスをあげてくれ!3ヵ月生活して、ダメなら離婚でいい!頼むから3ヵ月様子を見てやってくれ!!』
ヒロ『本当にすいませんでした!最後のチャンスをください!おねがいします!!』
ヒロは床に額を付け土下座した。
私『あんたには今までチャンスは何度もあげたよね?それで変われなかったヤツに何を期待すればいいの?』
ヒロ『本当にもう一度だけチャンスをください!!』
私『ぢゃぁ、本当の事話して!!前に私、家に置いてあったお金なくなったって言ったよね?それはどぉ?』
ヒロ『俺が持っていきました………』
私『あんたバイトって言ってたけどホントは?』
ヒロ『バイトはありませんでした……』
私『あんたがバイト代としてもらってきたお金はどうしたの?』
ヒロ『バァチャンからもらいました。』
私『ヒロのお父さん!これでわかっていただけましたか?こいつはこんなヤツです!これから真面目にやっていく見込みはありません!』
ヒロ父『…………情けないな………』
父『娘もこれ以上は無理だと言っているし、俺もヒロクンが頭を下げている姿を何度も見てる!今回はあきらめてください!』
ヒロ父『バカ息子ですいません!けれど……もう一度だけお願いします!』
私は用意していた離婚届けを机の上に広げた。
私『私はサインしてあります!サインしてください!!』
ヒロ『できない!!』
私『あんたにどれだけ傷付けられたと思ってんの?早く書いて!!』
ヒロ『わかった…。書くけど、次何かしてしまったら提出してほしい!もう一度チャンスをください!!』
私『わかったよ!とりあえず書いて!!』
私は母の家に帰った。
そして月曜日、私は市役所の相談窓口に話を聞きに行った。
『すいません。離婚届けって勝手に提出したら、やっぱりダメですよね?』
『それはダメですよ!!てゆうより、相手の方に離婚届けが提出された通知が届きますので取り消されてしまったら、それまでですよ!』
『そうですよね……』
私は仕方なくヒロとの生活に戻ることにした。
3ヵ月間……
その間にアイツはかならず何かをやらかすだろう………
そんな気がしていた。
2010年2月14日。
私と杏はヒロとの生活に戻った。
ヒロはなぜか、家事や育児を積極的にやるようになった。
けれど、私は何を言われても信用することができなかった。
離婚で頭がいっぱいだった。
またいつお金が取られるかわからない……
だから家には自分の財布さえ、置いておく事ができなかった。
財布はいつも車の中に隠していた。
2010年3月21日。
久しぶりに家族3人で動物園に行った。
ゆっくりでかけるのは久々で、私が描く理想の家族そのものだった。
その日の夜。
ヒロ『ちょっと友達から連絡あったから行ってきていい?!』
私『いいよ!気を付けてね!』
送り出したあと、私はある事に気付いた。
あっ…………
食費のお金……
車に入れたままだ……
しかし、トランクのシートの下。
バレないだろう………
そう思っていた。
アイツ……………
ついにやらかしたな…………!!
『ねぇ!!ヒロ!食費使ったよね?』
『食費?!しらないよ!』
『ぢゃぁ泥棒だねぇ!!警察呼ばないとね!』
『おぅ!!呼んだほうがいいよ!!』
コイツ…………
また演技が始まったよ………
そして演技を続けて1週間後………
『ホントにどこ探してもお金ないわぁ!!なんでだろ!!?』
『不思議だね………』
『正直に言えば許してあげるのに………』
『ごめん………』
『何が?!』
『俺がやった。てか俺、もう病気だからこの癖は治らない………』
『あははは!!認めてるんだ!!ぢゃぁ、終わりだね!!離婚届け出すから!!』
『俺、もう死ぬよ………』
『どうぞご自由に!!』
死ぬ………
その言葉も今まで何回も聞いている……
それでもコイツは生きている……
私にはそんな脅しも効かなかった………
そしてヒロを家から追い出した。
5分後……
ヒロは戻ってきた。
そして寝室に行った。
そーっと覗くと、ヒロは寝ている杏の頭をなでて泣いていた。
『杏に触らないで!!早く出ていってよ!!』
そしてヒロは再び家を出ていった。
次の日、杏を保育園に送り出し、アパートにある家具や電化製品、すべてを運びだした。
私は、いろいろ考えた末、実家に住ませてもらう事にした。
実家にいれば、杏も保育園を変えなくていい……
それが一番の理由だった。
長かったようで短かった5年間。
毎日必死に生きていた。
何度泣いただろう……
どれだけ悩んだのだろう………
何も考えない日はなかったほど、毎日何かに悩んでいた。
『結婚してからメッチャ老けたよね……』
久々に会う友達からよく言われていた。
疲れていたのだろう………
自殺を考えた時期もあった……
それだけヒロは私を苦しめた………
やがて杏が産まれ、自殺の思いは一気に吹っ飛んだ。
私がいなくなったら杏が悲しむ……
私は杏の母親として強く生きていく事ができた。
結婚生活は人それぞれ……
『相手に愛人がいるけど子供のために………』
『旦那が全然働かない。だから私が働くしかない。』
世の中にはいろいろな夫婦がいる事がわかった。
人からは
『我慢が足りないんだよ!』
『いつまでもだまされ続けてバカな女!』
そう思われると思う。
杏3歳♥
ミィ25歳♥
2人で頑張って歩んでいきます✨
ヒロに付けられた心の傷はまだまだ消えそうにないし、かなりのトラウマになっていますが、次の幸せを信じて杏と2人で頑張ります♥
『100万回の嘘』を読んでくださったみなさん、応援してくださったみなさん、本当にありがとうございました😄
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