香港ナイト
雑多な喧騒の街が、男と女の運命を変えようとする。
頂点と底辺の間で、人々は傾き、揺れ動き続ける。
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香港に行きたいと言いだしたのは、ユキのほうだった。
香港。カジノバーにルーレット場。ネオンがきらめく歓楽街。食べ尽くせないほどの広東料理。怪しげなブランド品を値切って買う闇ルートの店。
ーーたしかに、どれをとっても、ユキの好きそうな街ではある。
そして、いつものように、ユキのもくろみ通り、「香港行き」は、あっけなく決定された。まあ、俺も別に異存はなかった。
次に会う時にはもう、ユキは、香港のパンフレットを一揃(ひとそろ)い持って来ていた。ページをめくると、わざとらしいくらいエスニックな色彩が並んでいる。
「あなた、広東(かんとん)語できる?」
「まあ、日常会話ぐらいはね。でも、あそこは、英語を使う人間も多いだろ?」
「そうね。よく考えたら、日本語だって、わりと通じるかもね」
「ああ。アジアの定番の観光地で、日本語が通じない所はないよ」
ユキは、すごく楽しそうに、真っ赤なネイルの指先で、パンフレットのページをめくっていた。
「ねえ、なんだか、いい旅になりそうよね」
俺は、気だるい気持ちで、革張りのソファーに体を伸ばし、「そうだな」と、適当に相づちを打った。
考えてみれば、それは、「婚前旅行」といってもよかったのかもしれない。結婚を念頭に置いて付き合う期間が婚約期間とするならば、俺達は、けっこう長い間、婚約者のままだった。
結婚までいかない理由は、まず「仕事」だ。
ユキは、外国人でも名前を知っている、国内の大企業に勤めていた。そこの、社長秘書なのだ。
もうずいぶん長い事、秘書についていたため、ユキは、その会社の幹部でも知らないような機密事項さえも、しっかり把握している。事実上、彼女の地位は、幹部達より上のようだった。
しかし、彼女はわりと控え目なタイプなので、その立場をカサにきるという事はない。ただ、自分の置かれた位置にきちんと座って、会社を見渡しているだけなのだ。
俺はといえば、イベント関連の会社で、精力的に仕事をこなしていた。ユキの会社のように大きくはない。どちらかといえば、こじんまりとした会社だ。
イベントといっても、バカ騒ぎ系のイベントではなく、各企業の接待としてのイベントだ。うちでは、それの総合プロデュースをしている。
俺も最初は、使いっぱしりのような事ばかりしていた。
新しい会社だったので、俺が入った頃は、暗中模索状態だった。いやな思いもたくさんした。一応、代表は、俺の学生時代の先輩だったが、同じ苦境を乗り越えるうち、ほとんど同志といってもいいような間柄になっていた。
俺は時々、想像してみる。俺の日常生活に「結婚」という二文字をインプットしたシュミレーション。それは、今の生活と何も変わりはないようで、何かが違っている世界。
ユキがいる。それは当たり前だ。妻となったユキは、今と何かが変わるのだろうか。
彼女は、結婚というのを意識しているようでもあり、まったく執着がないようにも見える。どちらともつかない。
はたして彼女は、会社での今の地位を捨てて、俺との結婚生活という枠の中に入ってくれるのだろうか?
いや、仕事は、続けたっていい。結婚したらそれまでという決まりはないだろう。それよりは、ユキ自身のあり方だ。彼女は、生活の中に、仕事を持ち込まないでいてくれるだろうか?
いろいろと考えを巡(めぐ)らせるうち、「結婚」という事が、ひどく煩雑で面倒な事に思えてくる。
俺は、結婚には、向かない男なのかな、
ーーいつか見た昔の映画のビデオの中で、若い男が、そうつぶやいていた。いかにも、ジェームス・ディーンの影響を受けた、という感じの、B級専門の役者だったが。
あの時、となりにいたユキは、何か言っていた。
記憶の中で、ゆっくりと情景が形となる。俺の部屋で、背丈ほどのシュロの葉が、エアコンの風に揺らいでいてーー
結婚は、適性じゃなくて、判断力よね。
そう思わない?
そうだ。そう言ってた。ソファーにもたれ、ピザの断片を食べながら、そう言ったユキの言葉自体が、映画のセリフのようだった。
それで俺も、何か、気のきいた事を言おうとして、少しひねりがある言葉を言ったような覚えもある。しかし、自分がその時、何と言ったか、どうしても思い出せない。
あの時はたしか、おごってやると言った友人が、なかなか約束のバーに姿を現さず、あげくのはてに携帯で、「悪い、今度必ず」とキャンセルを告げられ、怒る気にもなれず、ひとりぼんやりと喧騒の中で壁の木目を眺めていた時だ。
ひどく酔っ払ってしまおうか、それとも軽く済まそうか、少し考えて、一人で酔いつぶれるほど飲むような年でもないなと思い、ジントニックをゆっくりと味わっていた。
さっきから、気になるカップルがいる。男はTシャツにジーパンというラフな格好で、女は体の線に沿(そ)った薄いデニム地のワンピースだ。
男が何か話しかけるたびに、女の艶のある黒い髪がゆらりと揺れる。女は男に微笑み、相づちをうつ。
ここからでは、前髪でかくれて、女の赤い口元しか見えない。
特に目立つというわけでもないのに、視線が、いつのまにかその二人へと引き寄せられる。
そのうち、会話は、途切れたようだ。
なんとなく、男は、女をもてあましているようにも見える。その男に対して、女のレベルが数段高いのだ。
そのまま言葉を交わさずにいるのは不自然なようにも思えてきた。
しかし、相手には男がいる。男が席を立った時を見計ろうかと思って、じっとグラスを握っていたら、ふと、女のほうから、やってきた。
「こんばんは」
すごく親しい相手に声をかけるように、女は、気軽に、俺の前の席へ座った。
「この店にはよく来るの?」
「今までに2、3回くらい。それほどよく来るわけじゃない」
「そう。私は初めて。ね、タバコ吸ってもいい?」
そう言って、女は、細いタバコに火をつけた。
しばらく沈黙が続き、俺は、一応聞いてみた。
「連れの人は、いいの?」
「ああ、あの人?うん、大丈夫じゃない?もともと、お仕事の延長みたいなものだし。あの人、しょっちゅう携帯でメールのチェックしてるのよ。たぶん、私がいなくても、そう淋しくないと思うわ」
彼女の話し方は、外国映画の吹き替え版の声優のように、洗練されつつくだけていた。
俺は、彼女と向かいあっていると、不思議な心地よさを感じた。
他の女達に一分間くらいしゃべって説明しなければならない事柄を、ほんの一言でわかってもらう事ができるような、そういう、お互いの心の「共有感」というのだろうかーー 深い部分でふれあう事ができた。
別れぎわ、俺は、彼女に聞いた。
「また会える?」
彼女は、ペルシャ猫のように肩をすくめて、言った。
「ごめんなさい。私、自分のスケジュールが、すごく立てにくい状況なのよ」
でも、それは、断りの言葉ではないように思えたので、もう少し押してみる。
「携帯は?」
「私、『仕事用の携帯』しか、持ってないの。 、、、、あなたの携帯は?教えてくれる?」
そこで俺は、自分の携帯の番号を教えた。女は、自宅の電話番号を教えてくれた。
「一人暮らしなの。留守電にメッセージを入れてくれればいいかもしれないわ」
女は、ほとんど酔っていないように見えた。
それから半月ほどして、電話が入った。
「私。ユキよ」
「ああ、、」すぐにわかった。しかし、初めての電話で、昔からの友人のように話しかけてくる。
「このあいだ会ってから、時々ふっと、あなたにまた会いたいなと思ってたの。あなたは?」
「俺は、ずっと、会いたいと思ってた」
電話の向こうで、クスクスと笑う声が聞こえる。
俺は、思わず、ソファーの上にきちんと座り直した。
今までの女たちからの電話といえば、ソファーに寝ころんで、音を消したテレビのリモコンを操(あやつ)りながら応対したものだが、その時の俺は、まるで、部活帰りの高校生が、少し前かがみにベンチに腰をかけて、彼女と電話しているような感じだった。
彼女と親密な関係になるのに、時間はかからなかった。
俺の経験からいって、付き合う女には二種類ある。
付き合いだすと、お互いに下降していくタイプと、上昇していくタイプだ。
二人して下降していくのも、楽といえば楽だが、あとに何も残っていかない。
具体的にいうと、能率が悪くなってくる。自堕落な休日、というのが増えてきたりする。そのうち、相手がいないほうが、自分を律することができる、という事に気づく。そうなると、別れは目の前だ。
ユキとは、上昇していけるタイプだ。お互い仕事が忙しい事もあって、たまに会える日は、秒単位で貴重だった。
そのうち、俺達は、旅行に出かけるようになった。
バリ、グアム、ハワイ、そういうおだやかな所から始まり、やがて、ブラジル、モロッコ、スペインなど、やや刺激的な所を選ぶようになってきた。
社長秘書という仕事のわりに、ユキは、けっこうスムーズに休暇をとる事ができた。ボスである社長が、年に数度、きちんと休暇をとる人物だったからだ。
外国に出ると、ユキは、少し大胆に、年齢より若い格好をする。
渋谷や新宿の若い者たちがしているような、動くとヘソが見えるようなやつだ。
俺が、彼女から聞かれる前に、「似合ってる」というと、彼女はうれしそうに微笑む。
そういう大胆な格好をする反面、見知らぬ男から声をかけられたら、俺の後ろに隠れてしまうようなしおらしさもある。
俺は、だんだんと、そういうユキのことを、大切に思い始めていた。
彼女といると、男と女の関係を越えた、人間愛のようなものを感じた。人は、こうやって家族というものを見つけていくのかなと考えたりする。
結婚という漠然とした概念をたぐり寄せ、現実に形作っていかなくてはと思う。ユキのために。
家庭のやすらぎというものをなんとなく想像して、まあそういうのも悪くないかもしれない、と思いはじめたのも、その頃だった。
香港には朝着いたが、二人して半日眠っていたので、動きはじめたのは昼すぎだった。
二人とも、いつも、出発の前日まで(どうかすると直前まで)仕事に追われている。追ってくる仕事をふり払うように飛行機に乗り込み、現地に着くと、まずとりあえず半日くらい眠るのだ。
それは、我々の、日常から非日常への通過の過程の一部だった。目を覚ましたとたん、二人ともすっかり非日常の国の旅人になりきっている。
とりあえずホテルを出て、にぎやかにざわめく街を歩きまわり、目についた食堂でチャーハンを食べた。厨房のほうで、勢いのある広東語がとび交っている。日本で嗅いだ事のない香辛料の匂いが、俺達のテーブルまで漂ってきた。
「今夜は、うまい中華を食べに行こうか」
「いいけど、お店はわかるの?」
「友達に教えてもらった所がある。かなり香港通のヤツだから、信用できると思うよ」
席に着いた俺は、グラスのミネラルウォーターを飲み干し、深く息をついた。
小ぶりの北京ダックのコースを頼み、明日の予定について、ユキと話し合う。
「海岸のほうへ出て、うまいビールが飲みたいな」
「思いきって、マカオのほうに出てみる?」
「それもいいね」
やがて、ダックが運ばれ、コックが慣れた手つきで切り分けていく。
ユキが先に一口食べて、「おいしい」と言った。
「うん。俺が前に仕事で食べたのより、こっちがうまい」
大雑把(おおざっぱ)に仕切ってあるまわりのテーブルのあちこちで、歓談する声が聞こえてくる。テンションの高い広東語が、四方八方を飛びまわっている。
そういう店内の騒がしさの中に、何か異質な響きを感じた。
何か、トラブルか。この街では、トラブルは珍しくない。
まあ、そのうち収まるだろうと思いつつ、俺は、本能的にその騒ぎの根源を探して、視線を飛ばした。
皿が割れ、料理がこぼれる音がする。
店の中にいた客達が、男の様子をうかがいながら、おびえた表情で足早に出口へと向かう。
それを見つめるユキの表情が、こわばっている。
最後に残ったオールバックの男が、何か言いたげに俺のほうを見ていたが、やがてあきらめ、何も言わずに立ち去って行った。
男は、俺に向かって、銃口を向けたまま、
「お前は、広東語はわかるのか?」
と、鋭い目つきで言った。
「ああ、でも、英語のほうが得意だ」
俺がそう答えると、男はしばらく黙り、やがて、英語で、
「わかった。いいか、これから俺の言う事に逆らうな。男が電話する間、そこから動くな」と言い、壁際(かべぎわ)のコードレス電話へと向かい、受話器を取った。
男は、どうやら警察に電話したようだ。
広東語で何かを要求を告げている。
最初、冷静に話していた男も、途中から少し興奮して早口になってきたので、ほとんど聞きとれなかった。何か、病院、と言っているが、よくわからない。
ただ、わかるのは、警察たちが要求を飲まない限り、俺達の安全は保障されない、という事だ。
男は、唐突に電話を切り、俺達のほうを見て、再びライフルの銃口をこちらへ向け、「そこに座れ」と言った。
ユキは、おそるおそる座り込んだ。顔が青白くなっている。
俺も、指示通り、ユキに寄りそうように座り込み、そっと彼女の背中に腕をまわした。ピンと張りつめた背中が、小刻みにふるえている。
男は、俺達を冷ややかに見おろしていた。
浅黒い肌で、骨ばった顔つきだ。動物的な鋭い視線で、俺達二人を観察するかのように、じっと見つめ続けている。
俺は、この事態が現実のものだという事が、実感として理解できなかった。なんでこんな事になったんだ。ただ恋人と二人で中華料理を食べに来ただけじゃないか。
男は、なおも、俺達一人一人をじっと見つめている。
俺は、頭の中で、もしこいつがユキに手を出した時にどう対処するかを考えていた。隙(すき)をついてライフルを奪えれば一番いいが、そう簡単にはいかないだろう。
さっきまで俺達が座っていたテーブルに、ナイフがある。
テーブルまで、約1メートル。あのナイフを、どうにかできないだろうか。
もし今とっさにナイフに手をのばし、俺が撃たれたら、ユキを守る者がいなくなってしまう。俺は、ゴクリとつばを飲みこんだ。
ふいに壁際の電話が鳴り、ユキがビクッと体を震(ふる)わせた。
男が受話器を取り、広東語で話しだした。なにやら、苛立(いらた)だしいニュアンスが伝わってくる。どうやら、交渉は、うまくいってないようだった。
再び男は、叩きつけるように電話を切った。
男が話をやめた後、鋭い静寂が辺りを包みこんだ。
「お前たちはーー」突然、男が、クセのある英語で、静寂を破った。
「夫婦か?」
「いや、まだ結婚はしていない」
俺が答えると、男は、「そうか」と言い、再び俺とユキを見つめたが、その瞳から少し険(けわ)しさがとれたような気がする。
俺は、思いきって、男に尋ねてみた。
「なぜ、俺達を人質に選んだ?」
男の視線が、鋭くなった。しばらくたって、男は、きっぱりと言った。
「日本人だからだ」
「なぜだ?日本人が嫌いなのか?」
「俺は、日本人を憎んでいる」男の動物的な目が、まっすぐに俺を見据える。「俺の祖父は、中国人だ。お前ら日本人が戦争中、中国大陸でやってきた残酷な仕打ちを知らないとは言わせない。俺はずっと、祖父からその事を聞かされて育ってきた。日本人は、野蛮な血が流れた、金儲けがうまい人種だ」
男は、椅子から立ち上がった。
「俺は以前、食堂で働いていた。その時、日本人の観光客を山ほど見てきた。一緒に働いていた女の子は、何度も、酔った日本人から卑猥な事を言われてきた」
「ちょっと待て」
俺は、男を遮(さえぎ)った。
「それは、一部の下らない日本人だ。俺のまわりにいる日本人は、みんなまともな人間だ。お前は、あまりに日本に対して偏見的すぎる」
「なんだと、、、、」
男の視線が鋭さを増す。となりで座っているユキが、おびえた表情で俺を見つめている。
「それに、俺達日本人も、戦争でアメリカから原爆を落とされた。だが、今アメリカを憎んでいる日本人なんてほとんどいない。その当時の世相が、人々の心を狂わせたんだ。お前は憎むべき対象を間違えている」
「黙れ!」
男は、ライフルの銃口を俺達に向けた。ユキが反射的に顔を背(そむ)ける。
「お前は人質だ!今の状況がわかってないのか!」
俺は、口をつぐんだ。
しばらくの間、緊張した空気が漂った。やがて、男はライフルを下ろし、俺達を見下ろして、静かに言った。
「俺は、お前達を殺すつもりはない」
二時間ほどが過ぎていった。
その間、一度電話が入ったが、どうやら男の要求は簡単には受け入れてもらえないようだ。男の顔に、静かな怒りが浮かんでいる。
「兄は、血液のガンだ。すぐにでも骨髄を移植しないといけないが、俺達には金がない。兄に治療をして、病気を全快させることーー これが、俺の要求だ」
「、、、、しかし、骨髄移植というのは、ドナーが必要だろう?ガンというのは、金さえ積めば治るという病気ではない。お前の兄さんと骨髄の型が一致するドナーがいない事には、どうしようもないだろう、、、、」
男は、きつい目で俺をにらみつけた。
「お前も、警察の連中と同じ事を言うんだな。男だって、こんな手荒な真似はしたくなかった。だが、苦しんでいる兄を見殺しにはできない。病院は、金がないと、ドナーさえも探してくれない。みんなそうだ。力のある奴らは、力のない者の事など、相手にはしない。俺には、こうするしか方法がなかった」
>> 38
次に、家族の事が思い浮かんだ。最近、腰を痛め、外出も少なくなった父。電話口で、体調を尋ねるたび、「片頭痛がする」と答え、このあいだ家に帰った時は、足を引きずっていた母。両親は、一人息子である俺に、早く家に帰ってきてほしいようだ。
顔を合わせる度に、俺と同年代の幼なじみの誰が結婚した、誰に何番目の子供が生まれたーー と、そういう話ばかり聞かせたがる。
暗(あん)に、「早く結婚して、孫の顔を見せてほしい」というプレッシャーをかけてくる。最近は、それがわずらわしくて、家へ帰る足も遠のいていた。
あの二人は、テレビの前で、怯(おび)えているんじゃないか。心ないマスコミが、家に押しかけたりしてないだろうか。
その次に、以前別れた女たちの事が、次々と脳裏を巡(めぐ)った。
わりといいかげんな付き合いばかりしてたけど、不思議と一人一人のやさしい思い出ばかりが浮かんできた。
俺が体調を崩した時、泊まりに来て看病してくれた女、仕事に行き詰まって会社に徹夜した時、数時間おきに、励ましのメールを送ってくれた女、別れる前に、俺の部屋を隅々(すみずみ)まできれいに掃除して出ていった女、別れた後、一年ほどして急に、プロジェクトの成功を祝うカードを送ってくれた女ーー
その女からは、しばらくして、「結婚する事にしました。あなたの事を思い続ける日々も、そろそろ終わりにしようと思います」というメールが届いた。
そのメールには、「消去してもいいよ」というP.S.がついていた。
俺はしばらく、ユキと付き合い出してからも、そのメールを取っておいたのだが、ある時はずみで、他のメールと一緒に消去してしまった。
最初にユキがトイレに行く時、リーは、「変な考えを起こしたら、こいつを撃つ」と、俺に銃を向けた。
「俺は、お前たちを殺しはしないと言ったが、場合によっては、手足くらいは撃つ覚悟はある」
そう言われても、ユキには、逃げ出したりする気力など、全く残っていないようだった。
俺がトイレに行く時も、同じ条件だ。リーが行く時は、俺を同行させた。銃を便器に立てかけて、用を済ませる。
次に奴がトイレに行く時から、俺も一緒に済ませるようにした。こんな場合でも、連れションというのは、何か連帯感のようなものを生み出す。何をどう連帯しているのかわからないが。
リーはいつも、じっと何かを考えこんでいるような表情で、壁にもたれ、座っていた。
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