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記憶

レス1 HIT数 437 あ+ あ-

小説好きさん
21/11/22 17:01(更新日時)

「え…覚えて、ない?」

「あ、はい…すみません」

白い病室、頭にぐるぐる包帯を巻いたひびきは申し訳なさそうに目を伏せた。

残業を終えて帰るという連絡を最後にひびきは帰ってこなかった。
かと思えばひびきの親から事故にあったと連絡があった。
酔っ払いの車に撥ねられて記憶がほとんどないそうだ。

「なぁひびき、これりんご。好きだったよな?」

「うん」

「ふふ、よかった。好きな物まで変わってたらどうしようかと思った。これ剥くな?」

「ありがとう柊夜」

久しぶりだなと思いながらリンゴを剥く。
事故が起きて数日、毎日仕事帰りに病院に通った。

「はい」

「あっうさぎ…かわい」

「ひびきこの形じゃないと食べてくれなかったんだよ」

「何それ…僕子供っぽい…」

恥ずかしくなったのか顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。

「あのね、僕さ、記憶ないって言ったけどちょっと違うんだ。」

「え?」

「覚えてないっていうよりも分からないんだ。記憶にモヤがかかって、ぼんやりとしか見えない…でもさ、そのどの記憶にも冬夜の影いるんだ。大切な記憶に絶対にいる…」

「ひび、き?」

「分からないのがもどかしくて、こんなにも大切な人のことを…大切な記憶が…なくなって…悔しくて…」

ひびきは泣いていた。
それを嬉しいと思ってしまうのはダメなことだろうか。

「いいよ、ひびきは悪くない。過去はさ、忘れちゃうんだよ。だからさこれから作ろ?ひびきとの思い出、沢山」

「うん!冬夜!!」


あの約束をしたのは何年前だったっけ?
あれからどうしたんだっけ?
苦しい、なんで?何が?
大丈夫、ひびきが居るから
ひびきって…誰?

記憶が蝕まれていくような感覚に必死に抗おうとするけどだんだん意識も薄れていって


「ひびきさん?目が覚めましたか?」

「うっ…ここは?」

「病院です。」

「びょう、いん……?」

「あなたは過労で倒れてしまったんです。」

「過労…」

「しばらくは安静にしてくださいね。」

「は、はい…」

前にもこんなことなかったっけ?
あれはいつだっけ?
記憶にモヤがかかったように思い出せない、分からない。
親が見舞いに来てくれた。
りんごが沢山入った籠をもって。

「ひびき、りんご好きだったでしょ?」

「うん、そうだね母さん」

「剥いてあげる。そういえばひびきは小さい頃りんごはうさぎが良いって言って聞かなかったわよね」

「何それ、いつの話してんの?」

(りんごのうさぎ…)
なぜかそれを見ると胸が締め付けられるようで、目を背けた。
モヤのかかった記憶を必死に思い出そうとするも分からない。
それどころかより一層あやふやになってしまった。

沢山遊んだ、サプライズプレゼントをした、馬鹿なことをして笑いあって…
そういえば、いつも泣いてる時に誰かが慰めてくれたっけ?
誰だったっけ…
まぁ、いっか

No.3419757 21/11/22 17:00(スレ作成日時)

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No.1 21/11/22 17:01
小説好きさん0 

「ひびきはどうです?」

「上手く冬夜くんの記憶だけ思い出せていないようです。当分は大丈夫でしょう。」

「そうですか。あんなに幸せそうだったのに…まさか冬夜くんが亡くなっちゃうなんて…」

「この事は隠しておいた方が良いかもしれません。冬夜くんには悪いですが、もし思い出してしまえば酷くショックを受けるでしょう。」

「そうですね、ありがとうございました。先生」

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