KAO-ブスな私は、私が一番の理解者-
[KAO]
タイトルはKAO(カオ)
思い付きで小説書いてみようかなと。
あらすじ
ブスでネクラな主人公がある日
美女になっていた。
だけど元の姿の主人公はそのまま生きて生活をしている。
美女になった主人公は本来の姿の自分に声をかけ、一番の理解者となるが…。
主人公 木野 美鈴(きの みすず)20代
美女な主人公 一条 楓(いちじょう かえで)20代
「あの子、美鈴の事キモいって
言ってたよ」
自分の顔の善し悪しを意識し始めたのは中学生の時の友人の言葉からだった
鏡を見て初めてブスを自覚した瞬間だった
あぁ、私ブスなんだ
だけどメイクしたら可愛くなるかも
ブスと自覚しつつもまだどこかで自分は可愛い部類に入ると淡い期待があった
成人して、合コンもそれなりに行った
だけど後日に誘いがあるのは連れの友達だけ
友達は、すごく可愛い顔だった
<美鈴ちゃん、今週の土曜空いてる?>
舞い上がった私はその土曜日で、一瞬で体を許した
「可愛いね」「好きだよ」「また会える?」
彼女という名のセフレになり、都合よく使われ音信不通
だけど ブスなのにヤってくれた
なんて良い人なんだろう
皮肉っぽく感謝をして違う方向にポジティブになる
ブスでもしてくれる
ブスなんだから体くらい許せ
むしろ感謝しろ
ブスなお前を抱いてくれる男が居るんだから、勿体ぶるな__
目が覚めた
そんなはずないと体を勢いよく起こす
「……夢?……病院?」
目の前に見える光景
それは自分の部屋でもなく、病室でもない
モノクロで統一されていてアクセントに色物のアイテムがあるオシャレな女の子の部屋だった
どこだろう此処は
誰か助けてくれたのかな
ベッドから降りて家の主を探しに部屋を出た
もうひとつ部屋があり、コンコンコンとノックをしそっと開けてみる
衣装部屋と言うのだろうか
洋服がびっしり綺麗に並べられている
その真ん中に女性が立っていた
「あ!あの、助けてくれてありがとう……」
違和感を感じた
目の前に居るとても綺麗な女性はどことなく私の動きを真似している
いや、完全に真似ている
「あの……」
おかしい
もっと近付いてみると、生身の人間ではない事に気付く
「鏡?」
鏡だとしたら、私の顔が映るはず
どうして、こんな美女の顔が?
「え……?え……??」
イーッと歯を見せてみたり両手で両頬をぎゅっと潰してみたり
まるで、私の顔のように
そう言えば、私は髪が短めなのにさっきから長くて綺麗な髪が視界に入る
触ると自分の頭と繋がってるではないか
私はただ、状況が理解できず立ち尽くしていた
惨めなブス
誰からも愛されない酷い顔
親友すら居ない
自分を蔑んでいたがあるひとつの感情が芽生える
私がもう一人居たら、私を慰めてあげるのに
自分は自分を愛し、許して
一番の理解者として、親友としてずっと傍に居てあげるのに……
ハッと目が覚める
夢の中で前の顔でこんな事を思っていた
いや、美女になったのが夢かもしれない
私は急いで衣装部屋に駆け込んだ
目の前の鏡は端整な顔立ちの美女
一条楓だ
ふと、前の私はどうなってるのか気になった
死んだならもう居ないはず
もしくは元から存在がないものになっているか
リビングのテーブルにあった食パンを食べ朝食もそこそこに私は以前独り暮らしをしていた部屋へ向かう事にした。
すれ違った男性がこちらを見た
わざわざ顔を動かして、私を目で追う
一人だけじゃない
スマホ歩きしてる人や、少し距離のある人を除いてすれ違う人ほぼ全員私を見ていた
不安になる
やっぱり美鈴なんだろうか
人の視線が嫌だったので下を向いて駅へと急ぐ
楓の住んでいる所が知ってる場所で良かった
電車に乗り、ドアの手前の端っこで背を向いて立つ
窓の景色から視点を自分の顔に変える
やっぱり美しい、楓だ
ふと反対側に立っている二人組の女子高生の視線に気付く
「めっちゃ美人じゃない?」
「ね、すごいね!」
とても小声だが、この距離だ
聞こえる
私の容姿を褒める声が
ニヤつく顔を抑えて窓の景色をずっと見てた
美鈴の時に住んでいた私の家に着いた
2階の、窓際の部屋
ポスト付近まで来て何て言おうか迷って足を止める
そもそも前の私は存在しているのか
ふと、ポストの中を覗いてみると美鈴宛の封筒があった
美鈴は存在しているらしい
ガチャ、と2階から音がした
慌てて近くの木の裏に隠れて降りてくる住民を伺う
私だ……
さんざん見慣れたはずの容姿
生で自分の顔を見るなんて不可能な事だった
でも私が居た
美鈴は顔を下げて猫背ぎみに歩いて行った
「ダッサ……」
思わず私は声に出した
服は特別ダサくはないはずだ
黒のパーカーにデニム
姿勢のせいでダサく見えるのだ
改めて木野美鈴という人物がブスだという事を痛感させられた
美鈴の後をつけしばらく監察してみた
今日は何かを買いに行くらしい
電車に乗ったので私も同じ車両に乗った
私はドアの前に立つ事にした
美鈴は席に座るとスマホをいじり出し睨むように画面を見つめている
あぁ…ブスだなぁ
あれっ法令線が出てる…!
まだ20代なのに!?
私がこんな事を思ってるとふと美鈴をじっと見つめる前の席の男性に気づいた
その男性はしばらく美鈴を見たあとフッと笑って自分もスマホをいじりだし、それ以上美鈴を見る事はなかった
今、美鈴は品定めをされていた
点数か、いけるかいけないかなど思ったのだろう
フッと笑ったという事は″ナシ″なんだろう
ブスなうえに老けもあるなんて
美鈴は本当にかわいそうだった
今すぐ自分を抱きしめてあげたい
私が一番の理解者になる
唇をきゅっと、噛みしめ私は美鈴をじっと見つめた
どのタイミングで声をかけようか
友達になって、親友になってあげたい
生活用品の買い物をしている美鈴
しばらくかかりそうだ
そうだ、この方法なら…!
私はスタバで飲み物を買い出入口付近で美鈴を待った
「あの…今お暇ですか?」
ふと、男性に声をかけられた
「え……あ、はい…」
きょどっていると男性は続けて言う
「わたくし、芸能事務所に勤めておりまして、芸能界とか興味ありませんか?」
名刺をを差し出され見てみると誰もが知る大手な所だった
「えっと、」
答えに困っている暇もなく男性は話す
「あなたのレベルならすぐにテレビで活躍できます!
モデルからまずやってみませんか?もちろん謝礼は出ますしレッスンも無料です。
一回だけでも良いので、モデルしてみませんか?」
私がモデル…
大手の芸能事務所が目をつけるほど楓は美しい
今、自分で楓の顔を確認出来ないながらも
サラサラの長い髪を指で撫でて自分は本当に美しいのだと実感した
「考えてみます」
名刺だけ貰いこの場は立ち去って貰った
買い物をしようとお店に入る男性達は私に気付いては驚くような顔をしたりじっと見たりしてくる
子連れの女性客は「あの人綺麗だね」と子供に言われている
そして「ほんとだね~!お人形さんみたい」と返していた
私は美しいんだ
周りから美しいと認められるたび私の心は強くなっていった気がした
自分の美しさにうっとりしていたら美鈴が買い物を終え出てきた
よし……やるぞ!
私は駆け足で美鈴の方へ向かった
そして
ドンッ
びしゃっ
「うわっ…!」
「あっ…ごめんなさい!!」
私は美鈴にわざとぶつかり飲み物をこぼした
洋服の腕の所が見事に染みた
美鈴は顔を歪め染みた部分を確認している
「本当にごめんなさい!お代はちゃんと払います!
でも、今現金を持ってなくて……
どうしよう……あ!あの、あとで支払うので連絡先聞いても良いですか?」
我ながら大根演技だ
これで本当に上手く行くのか不安だったが私は押しに弱いのでとにかく押さなきゃ
「あ……いえ、大丈夫ですよ。
タオルとかで拭けばなんとか…」
美鈴は一瞬私の顔にビックリしたがすぐにそう返した
「タオルとりあえず使ってください!
お詫びを改めてしたいのでライン教えて貰えますか?」
ポンポンとシミになった部分をタオルでたたくのも早々に止め、スマホを取り出す
「あー…じゃぁラインお願いします。」
よし
美鈴のラインをゲットした
私はもう一度美鈴に頭を下げこの場を後にした
大丈夫
私が親友になるからね
美鈴の景色のアイコンを見つめて強く誓った
<一条楓です。先程は本当にすみませんでした。
お時間ある時会って頂けないですか?>
<そんなに気にしなくて大丈夫ですよ~
洗濯すれば落ちます!
明日も休みなので12時~ならいつでも大丈夫です。>
ラインで会う約束を取り付けた
美鈴との会話はとりあえずこれで終わったので楓のラインを見る事にした
途中で会話が終わっているのがいくつもある
未読件数が20数件もあった
見てみると数日連絡がないことを心配した内容だった
この人達と会うのは止めた方が良い
<ごめん!スマホちょっとなくしちゃってて>
バレないよう返信をし、楓になりすます
友達の数が100いくつかもあった
友達が多い子なのかな
そりゃこんだけ美人なら友達も多いだろう
全部に返信をし終えた後明日のために早めに眠りについた
「あの、楓です。」
早めに待っていた美鈴を見つけ声をかえた
美鈴は結構身綺麗にしていて化粧もしていた
美人な私と会うからせめて身だしなみをきちんとしよう、というところだろうか
私はお詫びの品を渡す
「気を遣ってもらって…
逆に申し訳ないです。」
「いえ、これでも足りないくらいだと思っていて、このあとって時間ありますか?カフェでご馳走したいのですが良いですか?」
美鈴は驚き、一旦は断ったがもう一度お詫びなのでと言ってカフェに連れていく事に成功した
パスタや紅茶などを頼み口にする
「…楓さんてすごく綺麗ですよね。
私ビックリしちゃいました。」
「そんな事ないです。自分で言うのもあれなんですけど、すごく努力したんですよ。ほら」
私は昨日の夜適当に探したブスで太っている人の保存した画像を美鈴に見せた
「えっ…これ楓さんですか!?」
違うけど、「そうなの。笑っちゃうでしょ!」
と返す
私は努力なしの元からの美人があまり好きじゃない
だからこれだけ努力したと見せれば好感度は上がるだろう
「すごいですね…私なんて努力しても無駄ってくらいブスで」
引け目があるように笑った美鈴
わかってるよ
努力したよね
でもダメだったんだよね
そんなあなたを少しでも変えてあげたい
「そんなことない!美鈴さんはもっともっと可愛くなれる!上から目線でごめんなさい。
でもこんな太っててブスだった私が言うんだから絶対可愛くなれます!」
力強く言った
自信をつけて少しでも人生を生きやすくしてほしい
「楓さん……ありがとうございます。
でもやっぱ美容にかけるお金もないし諦めてるんです。」
お金がないのは知っている
だから私に任せてね
「私、洋服いっぱいあるし買っただけで使ってない化粧水とかメイク道具たくさんあるの。
あといろんなサロンに友達居るからチケットも貰えるの。
全部美鈴さんにあげるから、頑張って欲しい!」
そんなものないから今日新しいのをお店で買う予定だ
あとはネットでチケットとか買えば良い
「そんな!悪いですよ。サロンなんて高いし…」
「良いの。使ってもらった方が無駄にならないし。処分のお手伝いするつもりで、貰ってくれないかな…?」
お願い、と手で表した
「じゃぁ…遠慮なく……!」
誰にも必要とされてなかった人生を取り戻すかのように美鈴を助ける事に燃えていた
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