快楽の果て
その時、私はベッドの上で
不安な気持ちを抑えていました。
タグ
新しいレスの受付は終了しました
私はベッドの上で仰向けになっていた。
部屋の壁が不気味なほど白い。
天井の蛍光灯で照らし出され、白さが際立って見える。
静かだが、耳をすますことに集中すると、部屋の外に人の気配を感じることができた。
ひとり…ふたり…?
違う。もっと多くの人だ。
ベッドのマットが硬い。
だけど、私は身動きせずにじっとしていた。
恐怖心は大きかったが、「ここにいなければいけない」という強い考えがあって、動くことができなかった。
その時、小さくドアを2回ノックする音が聴こえた。
ドアの方にゆっくりと顔を向けると、男が入ってくるのが見えた。
「こんにちは」
男は小さな声でそう言うと、手に持つ何かをカチャカチャと鳴らしながら、薄笑いを浮かべている。
私は口の中がからからになってるにも関わらず、残りの水分を全部集めたようにごくりと喉を鳴らせた。
男が近付いて来ながら小声で、でも慣れた口調で「初めて、なのかな?」と薄笑いのまま続けた。
私は小さくうなずいた。
壁の色よりも白い顔に細いフレームの眼鏡が光って見えた。
口元は笑みを含んでいるが、眼鏡の奥に見える目は笑っていなかった。
「ね、上…脱いでくれる?」
私はのろのろと上半身を起こしてジャケットのボタンに手を掛けた。
すぐそばに立って、男が見ている。
脱ぐ姿をじっと見られていることに、私の下腹部はきゅっとなる。
「じゃあ、横になってくれる?」
私は黙って男に従った。
男は「緊張してるんだね」と、言いながらいきなり私の腕を掴んだ。
男の手が触れ、私は小さくびくっと体を縮ませた。
男の手は驚くほど冷たかった。
慣れた手つきで男は私の腕をきつく縛った。
「力を抜いて」と、またささやくように言われたが、私の体は硬直したままだ。
恐怖。
不安。
ぎゅっと目をつむった。
「そうだね。目を閉じてていいよ。すぐ終わるから…」
男は何かをカチャカチャと鳴らせている。
その音が止んだ。
そして「いい?」と聞いた。
私はまた、小さくうなずいた。
「動かないで…!」
男がこれまでになく強い口調に変わった。
私は委縮した。
「もうちょっと…湿らせた方がいいかな」
そう言って、上下に指を動かしているのが目をつむっていてもわかる。
私、なんか…変。
体中の力が抜けてきたみたい…
「いい?入れるよ?」
あ…
だめ、怖い…
無意識にベッドの端を強く握った。
「怖がらないで…、僕は上手いから大丈夫だよ」
男があまりにも優しい声に変わっていて、私は薄目を開けて見た。
うそっ。
あんなに太いの?
無理!ムリムリムリ!
ぜったい、あんなの入らない!
痛いっ!
痛みに、思わず足を突っ張らせて体をよじった。
「動いちゃだめだよ!」
再び男の声がきつくなった。
ただ、時間が過ぎるのを待った。
それが終わるのを待った。
早く、やめて。
もう、いやだ。
そう思ってるはずなのに、
ああ…
歯を食いしばっているはずなのに、私の唇から声が漏れ出た。
男は私の顔をちらっと見ると、
「もう少し…だから」
そう言った。
もう、だめ…
不思議と、もう痛みはなかった。
私は身を任せていた。
「やっと…力を抜いてくれたね」
男の声に対する不快感も薄れた。
あ…ん…
これって、気持ちいいってことなのかな?
もっと
してほしい…
そう思った時、男が「終わったよ」と言った。
「忘れ物ないように、ね」
私は起き上がってジャケットを引き寄せた。
「すぐに終わったでしょ?」
「怖くてお腹が痛くなりそうでした」
「かなり緊張してたみたいだね」
「ネットでは、採血とか献血したら気持ちよくなるってあったのに…」
「ああ。体の中の血液が入れ替わって気持ちいいって思う人もいるみたいだね」
「ふーん。…アルコール消毒って、あんなにするものなんですか?」
「用意してたのが乾いちゃったからね。じゃあ結果は来週出るから、予約入れて帰ってください」
男はゴムチューブや血液が入ったガラス管をカチャカチャと鳴らせながら入ってきたドアから出ていった。
あーちゃん…
あーちゃんってば!
誰かが呼んでる…?
「あーちゃん!なに、ぼーっとしてんの?」
「ああ…ナナ」
「大丈夫?ねえ、昨日、病院に行ったんでしょ?どうだった?」
「結果は来週だって」
担任が大声で私を呼んだ。
「おーい、野村朝陽。今日、当番だろ?職員室にプリント取りにきてくれ」
「はーい。ナナ、行ってくるね」
私は席を立って廊下に出た。
高校に入学して、もうすぐ半年。
暑い季節が終わろうとしている。
「失礼しまーす」
職員室に入ると、すぐに担任の加納先生がこちらを向いた。
「おお、野村。悪い、準備室の方に行ってくれ。プリントは置いてある」
「はーい」
加納は化学教師だ。
私は化学準備室に向かった。
準備室に入ると、埃っぽい臭いがした。
棚にはなんだか分からない古い本がぎっしりと並んでいる。
スチールの机にはフラスコとかビーカーが乱雑に置かれていた。
「野村、具合はどうだ?」
加納がそう言いながら入ってきた。
後ろ手でドアを閉めながら、もう一方の手でネクタイを緩めている。
新しいレスの受付は終了しました
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
「しっぽ」0レス 66HIT 小説好きさん
-
わたしとアノコ55レス 592HIT 小説好きさん (10代 ♀)
-
また貴方と逢えるのなら0レス 82HIT 読者さん
-
おすすめのミステリー小説はなんですか?6レス 154HIT 小説好きさん
-
日々を生きています。55レス 403HIT 小説好きさん
-
日々を生きています。
最高の予感がする 私は本当に本当に幸せ者だ(小説好きさん0)
55レス 403HIT 小説好きさん -
神社仏閣珍道中・改
(続きとなります) お焼香の作法は、宗派によって異なります。 …(旅人さん0)
147レス 4358HIT 旅人さん -
「しっぽ」0レス 66HIT 小説好きさん
-
Journey with Day
リリアナは、そっと立ち上がり、壁のモザイクを指でさわった。 「この白…(葉月)
74レス 895HIT 葉月 -
西内威張ってセクハラ 北進
何がつらいのって草こんな劣悪なカスクソ零細熟すべてがつらいに決まってる…(自由なパンダさん1)
57レス 2176HIT 小説好きさん
-
-
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 469HIT 旅人さん
-
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 898HIT 匿名さん
-
閲覧専用
勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー78レス 1751HIT 作家さん
-
閲覧専用
神社仏閣珍道中・改500レス 14754HIT 旅人さん
-
閲覧専用
真田信之の女達2レス 366HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1366HIT 檄❗王道劇場です -
閲覧専用
今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 469HIT 旅人さん -
閲覧専用
神社仏閣珍道中・改
この豆大師についての逸話に次のようなものがあります。 『寛永…(旅人さん0)
500レス 14754HIT 旅人さん -
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて
『次の惑星はファミレス、ファミレスであります~』 「ほえ?ファミレス…(匿名さん)
25レス 898HIT 匿名さん -
閲覧専用
勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー
「チェンジ!マッドキャノン!!三魔将撃て!!」 マッドガイストはマッ…(作家さん0)
78レス 1751HIT 作家さん
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
嫁がいるのに恋してしまいました
ありきたりかもしれませんが、、 相手は会社の3つ年下の上司 いつも優しくしてくれて自分の仕事…
28レス 605HIT 叶わぬ恋さん (30代 男性 ) -
付き合った彼氏実は結婚していた
お医者さんと出会いご飯に誘われ2、3回会っていたら告白されました。 私も会うにつれ惹かれてしまい付…
11レス 278HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
話し合いを嫌がるのってなんでですか?
話し合いって大事だと思ってます。 付き合いの浅い友達ならまだしも、恋人は付き合いが浅くても話し…
21レス 379HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
車中泊で職質されますか?
私は節約のために遠出してもホテルではなく、車中泊します。 大体、他の車もいる道の駅が多いですが、道…
28レス 895HIT 社会人さん -
結婚しないの?と聞かれることが苦痛
私は31歳で、少し前まで彼氏がいて、その彼からは結婚したいと言われていました。 でも一人でいること…
11レス 225HIT 相談したいさん (30代 女性 ) - もっと見る