書き留めて

会社勤めしているというだけで、まっとうな人とは限らない。

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彼女にとっては、その言葉もまた詐欺だ。彼女にとっては、それこそが詐欺だ。

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苦い水を泳ぎ切らなくては、甘い水にはたどり着けない。

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どんなペテロにも、振り返って彼を見つめるイエスがいる。だから我々は嘘に堪えられない。だが、自分にはイエスなどいない、イエスなど必要ないと思う者には、怖いものは何もないだろう。
真実はけっして美しくはない。この世でもっとも美しいものは、真実ではない。終わらない嘘の方だ。

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悪は伝染するが、勝手に広まるわけではない。感染源がいる。

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播いた種のなかでは最も大きく開花した醜い花だったが、唯一の花ではなかった。

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身勝手で残酷で高飛車だ。生涯をかけて人を操り続けた人間にふさわしい審判の形だ。

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どんな報せを受けた後でも、人は働くし、電話に出るし、同僚との会話に応じる。私は上の空にはならなかった。
たった一度の憤懣の噴出を、そんなに後ろめたく思う必要はない。

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日常のなかに、非日常の残滓を持ち込んではいけない。

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デタラメな〈真相〉を言いたてる煽動者。

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行動を決めたとき、それが自分にとって最善であるという以上に、妻子にとって最善の手段であるかどうか考えたろうか。そうやって自分の思考や行動を吟味してきただろうか。
私は結局、好き勝手をしてきただけではないのか。
何を根拠に、私は甘えてきたのだろう。

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あなたはやっと、私の意思を問うてくれた。

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何か決定的なものを、決定的なところで助け損ねてしまったという焦燥感に似たものが、その苦い後味が、そこはかとなく、だがはっきりと感じられた。

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人生という道を舗装しているいちばん数多いレンガはやっぱり仕事で、レンガの隙間にタンポポの一輪ぐらい咲いたことはあるかもしれないが、百合や胡蝶蘭が咲くことはないだろう。

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身の平穏を保つため、常に気をつけて見守っていなければならない計器の目盛り。

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悪意ある小さな爪先で、胸の内側から蹴り上げられたような気がした。

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一時的な強い感傷に浸るよりも、その感傷の生まれ出る原因を冷静に見極める理性の方を優先する。

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たいへんだったね――労るように声を落として、そう言ってくれた。

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察していてくれたのだ。ずっと凍りついていて、絶対零度にまでなってしまっていたものが、ほっこりと緩むのを感じた。

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黙って、言いたいことを吐き出しきるのを待っていた。

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地平線の彼方に、小さな黒雲。今それを目にした。でもまだ遠い。近づいてくると決まったわけでもない――。

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母から子へ向かうベクトルは、他のどんな親密な繋がりよりも強い。比べようのないものだ。母親にとって我が子は分身なのだから。自分の身体から生まれ出てきた命なのだから。この世のどこを探しても、それに等しい人間の繋がり方は存在しない。

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視界を遮り、行く手を阻み、凍りつかせようとする猛吹雪に巻き込まれ、必死に雪中に穴を掘り、そのなかに隠れる。耐え凌げ。耐え抜け。嵐が通り過ぎるまで。

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表面的なことばかりを見て、内心深く抱え込んでいるに違いないストレスや寂しさや不安を、察してくれるだけの心がないのだ。

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心のなかで、きゅっと縮まっていたものが身じろぎした。ほんの一瞬だったが、取り返せない一瞬だ。

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とっくに気づいていてよかったはずの真実。｢まさか｣と退け、目をそむけ、そうすることでその増長に手を貸してきてしまった醜いもの。
これがこいつの本性だ。

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声高に自分の言い分を主張したところで無駄だ。そんなことをしたら、ますます深く罠にはまってしまうだけだ。

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自分を守ることの方が大切だ。自分が守らなくて、誰が自分の人生を守ってくれるのだ？

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べとべとからみつく蔦をはらっているような気分だった。
自分は抜け出す。これ以上、犠牲になってはいられない。未来を危険にさらすことはできない。

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自身のなかで、真剣に向き合わねばならない〈何か〉を見つけてしまった者の顔。そこに大人と子供の線引きはない。

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願望は、どれほど濃く煮詰めたって真実にはならない。

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それは他者の言葉ではない。あなたがあなた自身に向かってぶつけている非難と自己嫌悪の言葉だ。

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濃くなる一方の妄想と煩悶に、慰めの水を注してくれる相手はどこにもいない。

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沈殿した悪いガスが抜けてゆく。

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世界の中心にいる自分自身の、そのまた中心にあるものが何か、ということだろう。

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いい大人のくせに、夢は現実の資本にはならないということを知らないのだ。

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｢好かれもしないし嫌われもしないってのは、つまんない人間だからね｣

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忙しい親は、自分自身にも子供にも寛大だ。

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孤島のような彼女――。

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ひたすら不毛だ。呆れるほどに不毛な時間の空費だ。

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心なのか精神なのか間違って配線されてしまっている。その配線のままでは同じことの繰り返しだ。

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永い時間かけて毟られ、息の根を止められかけてきた私には、どれが真実なのかがわかる。

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他人から間違ったことをされて、その間違ったことを基準にして何かを決めちゃいけない。

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唯々諾々と操られるタマなのか。

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傷つけられ、さらに傷がどんどん上乗せされ、治らない傷口がなおも抉られたあの時点で、もう耐えられないと思った。

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被害感情は甚大だったろうが、｢仕返し｣をするためには、積もり積もった恨みのエネルギーが必要だ。
それが足りているということは、恨みだけではなく、取り巻く環境そのものに対する怨念もあるのだろう。

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私は返事をしなかった。彼女と話すと、どうしても感情的な方向に行ってしまいそうで厭だったから。

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情報を仕入れて、懐に隠し持っていて、それを整理分析する能力もある。こちらが隠そうとしたり、言わずにおこうと思うことなど、百も承知しているのだ。

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人は嘘をつく。とことん嘘をついて、真実を語らないものだ。罪ある者ならなおさらだ。

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痒いところに手が届くような解説だ。

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