書き留めて

少しのあいだ心を固め直さなくてはならなかった。

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どんな悪い因縁を引きずっているかわかったものじゃない。その因縁がいつ何時ひょっこりと現れるかもわからない。
だから線引きは消せない。
それが大人のものの考え方というものだ。

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冗談にしていいことと悪いことがある。本気にしていいことと悪いことがある。それを見極められないと、大人にはなれない。

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身勝手で浅ましい。
助けてとすがれば許して貰えると、まだそれが通用すると思っている。
賭けて堪え忍んできた日々が無になったなったことが、情けなくて忍びなくてたまらなかった。

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そんな素朴なことのせいじゃない。
○は○でしかなく、◇をわかっていない。

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自分の背にのしかかっているものの形を知ることの意味。

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同じところで淀んでいる。だから遠く離れるしか術がない。

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気持ちの始末をつけてゆく。

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ひとつ悪いことがあっても、それがどんな悪いことでも、だからってみんな駄目になるわけじゃない。

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悪いこと、悲しいことはみんな終わった。もう済んだことなのだ。

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今の心情を汲んでやろうという思いやり。

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そんな方向からしか、物が見えなかった。

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心のなかに根を張り葉を繁らせていた何かが弱り、枝を減らし、入れ替わりに別の何かが根を下ろして、少しずつ育っている。

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不幸なのは自分だけじゃないと思うことで、少しは救われようと、そんなちまちました計算高いことじゃない。

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作り直す。お互いの立つ足場。お互いを結ぶ橋。お互いの領分を分ける小さな垣根を。

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これまでとは違う顔。

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愚かな過ちへの後悔、その胸の痛みを聞いてわかってくれた。心の内で涙を流してくれた。そんな酷い出来事は他人事だと、忌まわしい、愚かでくだらないと顔を背けたりせず、我が事のように悼んでくれた。その涙で浄められ罪は解き放たれた。

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苦しめようとそうしたわけじゃない。それでもそうやってしたことが苦しめた。想いは別でも、しでかしてしまったことは消しようがない。

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なかに潜んでいるのは、さして手強いものじゃない。ただの未練の塊だ。打ち負かせる。

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己でしでかした罪なのに、己で解き放つことが出来なかった。それどころか己の罪のなかに囚われて、動きがとれなくなっていた。

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空元気、あてのない希みではない。その手から自信が伝わってくる。

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寂しくて怖かったですね。でも、もう終わりました。すっかり終わりました。知ってもらえて重石がとれました。

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わからなかった。気づかなかった。それこそが騙されている証。
なんて酷いことを。非道で狡い。
あれはそういう者。

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私が知っていると思っているあなたと、あなたの胸の奥にあるものとは、きっと違う。

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あんな風に思い詰めさせたのは、私たちの傲りや意地悪のせいだ。

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空っぽですね。
こんな空っぽがあなたですか。

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こんなときは、本人がしたいようにするのが一番の薬だ。
せいぜい好きなことが出来るように、その舞台を整えてやることだ。

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哀しいことがあったからといって、そのたびに死んでいたら命がいくつあったって足りない。不幸比べをするのなら、世の中にはもっと過酷なことだってあるだろう。それでも生きていくのが人というものだ。

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ぐるぐると己を責める堂々巡りをやめて、世間というものに耳を傾ける。

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話を聞いただけで見捨ててしまっては後腹が病む。

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山に負けずに、登ってこられただけでも豪毅なものだ。

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何としても慰めてやらねばならないと思えてしまう。これを男気というのか。

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女の泣き顔を見て、鼻先がつんとした。
ああ、約束を守れてよかった。

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まだそんな気持ちになれない。〈まだ〉でさえ飾り言葉で、これから先、いつになったらそういう気持ちになれるかどうかもわからない。一生、なれないかもしれない。

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美しいには美しいけれど、時の停まった屋敷の庭には、人の心に響くものがなかった。
生き生きした景色ではなかった。

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長いこと胸塞ぎだった。ここらで肩の荷をおろす。

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意地悪なご近所雀。

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強いて心に蓋をして、あれこれ考えるのはやめた。我慢のしどころというのは、こういうときのための言葉だろう。

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迷信に目を塞がれる。

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互いにせっせと気持ちを転がして、黒い雪だるまのように大きく育てた。

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己の限られた見聞のみから、人の話を裁いてしまうのは軽率で乱暴だ。

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ぴしりと決めつけて、その場に言い捨てだった。それについて深く語り合いたくないために、言い逃げしたようにも聞こえた。

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ぎりぎり本音を吐かずに、どこにも亀裂を生じさせずに済んだ。

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今の窮状から何とかして逃れ出よう、この手詰まりをどうにかしようと思うなら、歳がいくつになっていようと、世間知らずで恥をかくことがあろうと、自ら動いてみるくらいの元気は出せないものか。ほかの誰でもない、自分の幸せのためなのだ。

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邪なモノや魔を祓い退ける強い力。

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じわじわと溜まってゆく口に出せないものを、どこかで、何かの形で外に吐き出さなきゃならなくなった。

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煩悶には実があり、空まわりのようには見えなかった。

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怖ろしいといったら、自分のしでかしたこと、自分の身に起こったことがいちばん怖ろしい。が、それはもう心の蔵にしまって、虫干しするときも一人でしようと決めた。

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何事も自分の立場の目で見おろし、自分の立場の頭で考えてしまう。相手の身になりきれず、結局、打つ手を誤るかもしれない。

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冷たい逆風のなかで、見知らぬ新しい顔ばかりに囲まれて、ぐらぐらと心が揺れ、ちょっとしたことにもカッとなり、声を荒げたり暴れたりしてしまう。
身の置き所、心の安まる場所がないのだ。

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