麗香の微風
私は麗香
そう、名前なんてどうでもいいの
毎日生きて行けるだけで
こんな私に興味を持ってくれた貴方
そう、貴方の事です
好きになってもいいですか?
遠い昔にそんな事を言われた記憶が
あったわね
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するとその隣にいた洋子さんも「麗香さん、はい」と包みを渡してくれた
「うわー、嬉しいありがとうございます!」
多い時は6人いた事務の女の子も2人だけになってしまった
餞別まで貰えるとは思っていなかったので本当に嬉しかった
それから30分程過ぎた頃、これでお開きにしたいと思います
最後に麗香さん一言と言われた
「本日はお忙しい中私の為にお集まり頂きありがとうございます。至らない私が今日まで仕事を続けられたのは皆さまのお陰だと思っています。
どうか皆さまもお身体に気を付けてください。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げるといつの間にか拍手が起こった
みんな、みんな本当にありがとう
あれから20年が過ぎた今
この会社は10年前に倒産してしまった
そして社長は3年前に亡くなった
会社を辞めて1週間、これからの生活を考えるとのんびりしていられない
俊の紹介で面接を受ける事が決まっただけでもまず第一歩だ
俊と付き合っている事は知られないようにしなくてはいけない
送別会は近くの飲み屋さんでやる事に決まった
当日には現場の人達もたくさん来てくれた
もちろん経営サイドは社長初め娘の理恵さんも顔を出していなかった
ベテランの近藤さんが音頭を取って「麗香さん、お疲れさまでした。まずは乾杯!」
そう言うとみんなで乾杯してくれた
近藤さんは職人気質の人で仕事に厳しくて気難しい人だった
初めてやる仕事でミスをすると、「こんなもん知っていて常識だわ!」と頭ごなしに言われた事があった
現場の仕事は初めなので知らない事ばかりだった
だから不安を抱えながらやっていた時にバーっと言われた時は泣きそうになった
そんな人だけど仕事を離れると気さくなところがある人だと解った
全部で14,5人も来てくれたらだろうか、本当にありがとう!
2時間も過ぎる頃隣に座った順子ちゃんが「はい!」と何やら手渡してくれた。
「まあ、嬉しい!ありがとうございます。」
朝になって目を覚ますと俊はいなかった
慌てて階段を降りて行くと俊が「麗香ちゃん、おはよう!」と言った
「おはようございます」と言うと
「コーヒー飲むかい?」
「はい!頂きます!」
「そこに座ってて!今からパンを焼くから」
そう言うと
食パンにオレンジマーマレードを乗せてその上にチーズを乗せてオープントースターに入れた
私は椅子に座って俊のやる事を見ていた
「はい!コーヒー出来たよ」
「ありがとう!」
(チン!)パンが焼けたので取りに行くと俊がお皿を出してくれた
テーブルには目玉焼きとサラダが並んでいた
「いただきます!」
手を合わせてパンにかじりついた
「美味しい!」
オレンジの甘さと濃厚なチーズが混ざりあって美味しかった
「美味しいだろう!」
こんな風に焼いて食べるのは初めてだった
私は今でもたまにこのオレンジマーマレードのチーズ焼きトーストを作って食べている
気が強そうな奥さんの顔が浮かんだ
いつだったか俊に写真を見せて貰った時に奥さんが移った写真が混ざっていたことがあった
若い頃の奥さんが写真の中で笑っていた
洗い物が終わるとビールを飲みながらテレビを見て過ごした
「そろそろ寝ようか」時計を見ると0時近かった
2階に上がって俊の部屋に入るとキスをしてきた
そのまま布団の上に倒れこんだ
俊が胸をまさぐって来た、気持ちよさに身体をよじると胸にキスをしてきた
「あっ、あっ、あー、」思わず声が漏れた
俊は私の秘部にキスをしてきた
そして私の中に入って来ると激しく腰を動かした
私はたまらず声を上げた
お酒をたくさん飲んだからかとても気持ちが良かった
そしてそのまま2人とも眠ってしまった
「俊はギターが弾けるんだ凄いね!」
「若い時にちょっといじったぐらいだけどな」
「どんな曲を弾いていたの?」
「それこそ大昔だから忘れちまったわ」そう言いながらギターを置くと
「そろそろ夕食の支度をするから、先にお風呂に入っておいで!」
「えー、でもそんなの悪いから何か手伝いますよ~」
「いいからお風呂に入って、もういい湯加減だから」お風呂の蓋を開けながらお湯をかき混ぜている
「じゃあ、お言葉に甘えましてお先に入ります」
身体を洗ってお湯に浸かっていると台所からいい臭いがしてきた
服を着て台所に行くと「もう出たのかい」
そう言いながら嬉しそうに器にカレイの天ぷらで揚げたのを載せて別に作ったタレをかけている
「うわあ!こんな手の込んだもの作れるんだね!」タレには細かく刻んだ人参等が入っていた
出来上がった料理を運んでいると俊はお鍋を洗っている
「あ、洗い物は私がやりますから」と言うと「麗香ちゃん、料理はこうやって洗いながら作ると効率がいいんだよ!」
確かにそうだけど、私はいつも食べ終わってからお茶わん等を洗ってお鍋を洗っている
「俊が料理するのが好きだなんて知らなかったわ」
「そうだろ!」そう言うと俊はニコニコしながらビールをついでくれた
「はーい、コーヒー出来たよ!」
そう言いながら俊はコーヒーとお菓子を持って来てくれた
「ありがとうございます!」
「仕事を辞めて欲しいと理恵さんに言われたの。他にも辞めた人がいるし仕事を探さなくては、、、」
そう言うと「麗香ちゃん、良かったらうちの会社に来ないかい?図面が見れるなら検査の仕事があるから」
「そうなの?確かに図面は解るけど、、、」
「社長に聞いてみるわ。検査の人間が欲しいような事を言ってたから」
なんと社長は俊と同い年だと言う事だった
「解りました。すみませんけどよろしくお願いします。」
「仕事の話しはこれくらいにして、このお菓子は美味しいぞ」
そう言うとテレビを付けてニュースの画面を見た
しばらくするとギターを持ち出して来て何やら引き始めた
それから何日か過ぎたある日、俊が「今日は家のおっかあが2、3日友達と旅行に行くから家に来るかい?」と言った
「ふーん、でも良いの?」
「良いよ!こんな時でもないと家には来れないから」
車で15分程走ると俊の家に着いた
2階建てのお洒落な家だった
「俺は20歳で結婚して20歳で家を建てたんだよ」
「凄いね!20歳で家を建てるなんて」そう言いながら家に入って行った
「ちょっと中を見せるからね」
そう言うと台所、お風呂場そして階段を上がって行き「ここがおっかあの部屋、そして隣が俺の部屋だよ!」そう言いながら戸を開けた
どの部屋もこぢんまりとしてかたずいていた
「テレビの部屋でコーヒーでも飲んでゆっくりしておいで」
そう言うと俊は台所に立ってコーヒーを入れ始めた
「麗香さん、本当に申し訳ないだけど、仕事が少なくなってきてるので辞めて欲しいのだけど」
「そうですか、、、」
現場の人が定年で1人、若い人が1人いつの間にか辞めていた
「会社都合の退職にして、退職金はちゃんと出しますから、、」
社長の娘、理恵さんの申し訳無さそうな顔を見ていると何も言えなかった
「こちらこそワイヤーカットとか放電とか色々な機械を触らせて頂いていい経験になりました。ありがとうございました」
私は感謝の気持ちでそう言った
辞めると決まった時に、社員の人に挨拶に行ったら事務の山本さんが
「麗香さんお疲れ様でした。送別会をやるからまた日にちが決まったら連絡するからね」
「ありがとうございます。送別会やって頂けるなんて嬉しいです。皆さんによろしくお伝え下さい」
そんなみんなの気持ちが嬉しかった
そんな事があったからか、現場に活気なくなっているように思えた。
ある日、週末に俊に「モーニングに行こう!」と言われた
いつもの通り俊は10時過ぎに迎えに来た
コーヒーを飲みながら俊は「市原は仕事のやり方が協力的ではないと社長に話をしたら、社長は渋い顔をしていた」と言った
あの気性の激しい社長に睨まれたら会社に居ずらくなるのは目に見えていた
それから2ヶ月程して市原さんは会社を辞めていた
同じような製品を他社も作り始めたらしいと言う事で会社の仕事の量が減って来た
しばらくして仕事が減って来たので危機感を感じたのか俊が「昔、働いていた会社から声がかかったから会社を辞めるわ」と言った
それから1ヶ月もしないうちに俊も会社を辞めてしまった
事務の女の子が2人辞めると言う事で女の子だけ集まり近くのレストランで送別会を開いた
それから10日程したある日、社長の娘さんに「麗香さん、ちょっと話があります」と呼ばれた
それから1週間ほど過ぎた頃、市原さんの仲の良い人達の態度がおかしい事に気がついた
仕事の話をしていても何やら訳ありの視線で見てくる
中には目があうと慌てて反らす人もいた
これは市原さんが私と俊の事を話したに違いない
そう感じた、、、、
悪いのは自分だから仕方がない、仕事だけはちゃんとやるようにした
ある朝、仕事のやり方についての集まりがあった
俊が効率的な仕事のやり方について説明をした後、みんなに協力してくれるように頼んだ
すると市原さんが「現場の事は現場の人間がよくわかっている。現場のやることに口出しをして欲しくない」と言う事を言った
すると俊は「自分は生産管理をしているので会社の利益を優先に考えているのだから、協力して欲しい」
どちらも譲らず話し合いは平行線のままだった
年長者がそろそろ仕事に取り掛かりたい、、、と言う事で結論が出ないままに終わってしまった
「麗香ちゃんから電話くれるなんて珍しいね。どうした?」
「あの、、話したい事があるんです。」
「今度の日曜日にモーニングでも行こうか?」
「はい、お願いします」
日曜日の朝、10時過ぎに俊が迎えに来た
「どうした?何かあったのか?」
「実は、前に市原さんと付き合っていてこんな手紙を渡されて、、、」
と仕事中に渡された紙を3、4枚俊に見せた
「なんじゃこれは!凄い事が書いてあるな!!」
「市原とはもう付き合ってないんだろう!他って置けばいいよ!」
俊は紙を見ながら呆れたように言った
市原さんとは将来の約束をした訳でもないし、こんな手紙を書いて来るのなら
もう、終わりにするしかない、、、
市原さんの怒りを含んだ目を思い出すと話をする勇気がなかった
市原さんが怒るのも無理もない事かも知れなかった
それから2、3日過ぎた頃仕事中に現場を通りかかると
市原さんが怒ったような顔をして言った「あんた、加藤と付き合ってるのか!」
突然の言葉に黙っていると
「あんたが加藤の車に乗るのを見たんだ!!」
「、、、、」
「やつと付き合ってるのか!!はっきり言え!!」怒りを含んだ声で言った
どうしていいか解らず、私は黙って立ち去った
次の日、現場に行くと市原さんにメモらしき紙を渡された
「俺が先に付き合ったんだろ!!人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ!!」
と書かれていた
また別の日には
「二人とも会社を辞めろ!!会社のみんなにやつとの事を話すからな!!」
と書かれていた。とりつくしまもなかった
私が悪いのは解っていた、、私は怖くなり俊に電話をした
部屋の番号のランプが点滅している部屋の前に来ると俊が振り返り
「麗香ちゃん」と私を呼んだ
私は言われるままに部屋に入った
部屋に入ると俊はキスをしてきた
そしてベッドの上に私を押し倒して服を静かに脱がせた
私は布団の中に入ると俊は服を脱いで入ってきた
私の胸にキスをしながらゆっくりと秘部をまさぐると
私は「ああ、、」と声が漏れた
私の秘部にキスをすると静かに私の中に入ってきた
俊は強く激しく腰を動かした
その度に「あっ、あっ、」と溢れるように声が漏れた
そして静かに俊は果てた
「麗香ちゃん、どこで覚えたんだい」
「え、何の事、、」
「あそこを締め付ける事、、凄く気持ちいいんだよ」
「そうなの?よくわからないけど、、、」
それから1週間後加藤さんから電話がかかってきた
「お久しぶりぶり、麗香ちゃん元気にしとるかね。明日、コーヒーでも飲みに行くかい?」
「はーい、良いですよ」
次の日の朝、10時過ぎに加藤さんが迎えに来た。
車に乗り込むと、「お正月はお母さんの所に行ったの?」と聞いてきた
「うん、3日の日に実家に行って買い物に連れて行ったよ。」
「そっか、そっか~。家は娘が来たけど、大きなお腹をしていて大変だったな」
「そうなんだ~、奥さんも大変だったでしょう?」
「ん?ああ、おっかあはいつも通りだわ」
『ハーフタイム』に着くといつものモーニングを食べながら会社の事を色々話をした
「今日は初詣に行こうか?」
「何処でも良いですよ」
それから2時間ほど車で走ると白馬伝説で有名な神社に着いた
車を降りて階段を上がって行くと白い馬が建物の中にいるのが見えた
その日はモーニングを食べただけで用があるからと1時間ほどで別れた
私は別に結婚がしたい訳ではない、もちろん嫌いな訳でもない
でもこのままでは良くないと思っていた
拓と紅白歌合戦を見てまんじりとしていると
2時過ぎに市原さんが迎えに来た
拓には市原さんと初日の出を見に行く事は話していた
夜の暗い道をひたすら海に向かって車を走らせた
白々と夜があける頃には少し小高い丘の上に車を止めた
驚いたのは周りの駐車場に日の出を見ようとする車でいっぱいになっていた
小高い丘の回りにも車が止まっている
やがて海の上がオレンジ色に染まって来た
神々しい光が辺りに広がってゆく
人生初の初日の出だった
今年1年の無事を祈った
ある朝、会社のロッカーに行こうと階段を上がっていたら前に市原さんがいた
周りを見渡して近くに来ると「ブラの紐が見えてるぞ!」と小さな声で言った
私は「あっ!」と慌てて肩に手をやるとブラジャーの紐が服から少しはみ出していた
その時はノースリーブの服を着ていたのでブラジャーの肩ヒモが横から出ていたのだった
「あんたのブラの紐が出ているのを他の奴に見られるのは嫌だった」
後になってそんな事を言われた事があった
ある日「新年の初日の出を見に行こうか」市原さんが言った
私は今まで初日の出を見に行った事がなかった
紅白歌合戦が終わると拓と二人で近くの神社に初詣をして
神社にある小さな鐘をひとつ鳴らした後
甘酒とお付け物を食べたらお菓子を貰って帰るのが常だった
そんなこんなで加藤さんのパンティをはいていく事になった
仕事中の真面目な加藤さんの顔を思い出すと
女物のパンティをはいていると思うと何故かにやけて来た
それから外に出ると日が沈みかけていた
2時間ばかり車を走らせるとラーメン屋さんがあった
「ラーメン食べて行こうか?」
「うん」
気を使う高いおしゃれなレストランもいいけど肩の凝らないお店が好きだ
ラーメンセットを2つ頼んだ
「ここの餃子は美味しいな!」
「うん、美味しいね!」
それから1時間ほど走ると家の前に着いた
「今日はありがとう!楽しかった!また電話するから!」
そう言うと握手を求めて来た
「こちらこそごちそうさまでした!楽しかったです」
加藤さんは私が知らない会社の事情をいろいろと話をしてくれた
そして1時間も過ぎた頃、出ようかと言う事になり車に戻ると
何処に行こうか?と言いながら車を走らせた
「そうか子供さんと二人暮らしとは知らなかったな」
「昔、付き合っていた人の事を旦那だと回りには言ってたから、、、余計な詮索されなくて済むし」
「なるほど、、、うちもおっかあとはここ何年何にもないんだわ」
「そうなんですか」(だから何?)
「そう言えば最近、ヴィッツと言う車の名前をよく聞くけどどれかしら?」
その時前から赤い車が走って来た
「あ、あれだよ!あの赤い車!」
車に詳しくない私はよく解らなかった
しばらく車を走らせると高台に着いた
「風が吹くと気持ちいい!」
車を降りて下を見ると町並みが広がっていた
「この前の飲み会どうだった?楽しめた?」
家の近くの田んぼ道に車を停めると市原さんは聞いて来た。
「料理が新鮮で美味しかったし、お酒も楽しく飲めたし久しぶりにみんなと楽しめたわ」
「それにあのお酒、姫善?飲みやすくて美味しかったわ」
「あーあのお酒は女の人に人気があるんだよ。飲み会の時は兄貴が何本かサービスで出してくれたんだよ!」
「そうなんだ~、あのお酒だけなら何本でも飲みたいわ。フルーティーで飲みやすかったから」
「あんたね、そんな事言ってるけどオレとは飲みに行かないでしょう」
「うーん、どうかしら」
「あれから、彼とはどうなったの?」
沈黙の後、聞いて来た
「うん、、、別れた、、、」
「そっか、、、」
市原さんはカーステレオのスイッチを入れた
それから1時間近く過ぎた頃だろうか、
突然会場の電気が突然消えて真っ暗になった
みんなは一瞬何事が起こったのか解らずに静まりかえった
すると突然、隣の人が私の手に何かを握らせた
しばらくすると電気が付いた。その後は何事もなかったかの様に飲み会が続いた
私は恐る恐る手に握らされたものをそっと見てみた
それは営業の加藤さんの名刺だった
裏返して見ると『もし宜しければ電話を下さい!』と書いてあり携帯番号が乗っていた
思わず隣の加藤さんを見ると向かいの人にビールをついで話をしていた
まるで名刺を渡すタイミングを見計らった様に、突然電気が消えた事が不思議な感じがした
その後、加藤さんと特別に話す事もなく飲み会はお開きになった
それからは宮町の事を忘れようと仕事に没頭した
定時が近い時間の納品も進んでやるようにした
そして、ある日糸がぷつりと切れた
いつしか妹に電話をしていた
妹と待ち合わせをしたのは奇しくも如月と言う喫茶店だった
宮町の行きつけの如月だった
如月は名前こそ変わっていないが時代の流れに押されたのか
喫茶店に変わっていた
店の奥を見ると着物を着た女の人がおしぼりを用意していた
かって「ちあきなおみ~」と私を迎えてくれたあのママだった
相変わらず着物が似合っていたが少しくたびれたような後れ毛が淋しげに見えた
ママはおしぼりを置いてコーヒーの注文を取るとさっさと店の奥に戻って行った
妹の顔を見ると思わず涙がこぼれてきた
「どうしたの?彼と何かあったの?」
妹は宮町とは顔を合わせた事があり知っていた
今までのいきさつを話した
「それは姉さんが悪いわ。すんでしまった事は仕方がないけど別れたくなかったら本当の事を話しちゃダメだわ!」
「話したら許してくれると言ったから本当の事を話したんだけど、、」
「男は口ではそういうけど、そんなもんじやないわ!」
「、、、」
「いくら嘘でも何にも無かったと言わなきゃ!そんなもん男が許す訳無いんだから」
「、、、」
「私は女優よ!みたいな気持ちでやらなきゃ!本当の事なんて黙っていたらわかりゃあしないんだから」
恋愛経験豊富だとのたまう妹の言葉にますます落ち込んでいった
後からわかった事だが妹はこの時不倫をしていた
旦那さんと子供3人いての不倫に旦那さんの顔が浮かんだ
相談した相手を間違えた、とさすがの私も冷静さをなくしていたのだった
車の中でどれくらい時間がたったのだろう
まさか宮町と別れる事になるなんてなんて、、、
テレビで誰かが言っていた
好きな人が浮気をしたら本当に好きだったら許せないから別れる、好きな人の事がどうでもよかったら別れない
宮町は本当に私の事を愛していたのだろう
それから2日仕事を体調が悪いと休んだ
3日後、朝7時頃、宮町から電話があった
「麗香、、なんでなんだ、、」
「あの、、宮町、、ごめんなさい」
宮町も苦しんでいるんだ
それきり電話は切れた
宮町と別れる事がこんなに苦しいなんて、自分を責めて苦しんだ
ただ、ただ涙がこぼれた
私が初めて愛した人、そして身体で愛し合う歓びを教えてくれた人
それから何日も眠れない日が続いた
私は宮町に本当の事を話そう、きっと宮町ならわかってくれる
嘘は付きたく無かった
それから1週間後、宮町から電話があった
「話したい事があるの」
「そうか、、、明日朝、マーメイドに来れるか?」
マーメイドは宮町の街にある喫茶店だった
朝、マーメイドに着くと宮町が車の中で待っていた
宮町は車に乗るように手招きをした
車に乗り込むと「話しがあるんだろ、どうなんだ、、、」
「ごめんなさい、、、私もなんて言っていいのかわからなくて」
「、、、」
「会社の人に誘われてて、1度だけ、、、」
「その人の事は好きなのか?」
「、、、」
「好きでもないのか!好きならわかるけど好きでもないのになんでや!」
「そんなの相手の男がかわいそうやんか!」
「そんなんでなんで俺に抱かれたんだ!あんたのやってる事は如月のママと一緒やんか!けがわらしい!!」
「もう、降りてくれ!!」
宮町の怒りは凄かった
私は黙って車を降りた
「そうか、、、」
宮町はチラッと私を見て
「麗香、本当の事を言ってくれ!今なら許してやるから、、、」
「、、、」
「家に行った時に連絡してくれと書いてあったのは何の事なんだ!」
やっぱり宮町は家に来て書いてある伝言を見たのだ
「あれは拓に連絡が取れないといけないから書いておいただけなの!拓の携帯の調子が悪いから、、、」
最初は何を言っているのかわからなかった
「宮町の事が嫌いなら言ってくれれば良かったのに、、、」
「もう、別れようか!」
「なんで?どうして、、、」言葉に詰まった
気まずいまま仕度をして、黙ってホテルの階段を降りて行った
そのまま宮町を家の近くまで送って行った
宮町は振り向きもせず自分の家に向かって歩いて行った
(私だって8年待ってるのに)
言葉にならない呟きだった
その週の土曜日に宮町から電話があった
「宮町だけど、今日飲みに行こう。今から迎えに来てくれ。」
「はーい。解りました」いつもと変わりない宮町の声
迎えに行くと宮町はすでに来ていた
「しおんに飲みに行こうか!」
しおんは最近見つけた飲み屋だったが、如月と違って騒がしい店だった。
12時近くになり、コンビニで宮町の好きなワンカップを買って近くのホテルに入った。
シャワーを浴びてベッドに入り、いつものように愛し合った。
そしていつしか眠ってしまった。
明け方に目が覚めると宮町は静かに煙草を吸っていた。私は宮町の煙草の匂いが好きだった。
ふと、宮町が私に気が付いた。
宮町は「麗香、木曜日の夕方はどこにいた?」
「会社の人とお茶してた、、」
私はドキドキしながら平静を装って言った
木曜日の午後、仕事中に市川が麗香さん、と呼び止められて紙を渡された
そこには「今日、会えない?仕事終わったらいつもの喫茶店で待ってる」と書かれていた。
私は迷ったけど行く事にした
仕事が終わって喫茶店に行くと市川の車が止まっていた
「車を置いておいでよ!迎えに行くから。」
「わかった!」
私は家に車を止めに行き市川さんの車が来るのを待った
しばらくすると市川さんの車が見えた。私は慌てて車に乗り込んだ。
「この前は俺が言い過ぎた!ごめん。」
「別に気にしてないから良いです」
近くの田んぼ道の空いてる所に車を停めて1時間ぐらい話をしている内に辺りは暗くなってきた
「あのさ、、、」と言うと突然市川さんが覆い被さって来た
助手席の椅子を倒してキスをしてきた
私は抵抗したけど無理だった、そのまま結ばれてしまった
「これからも会ってくれる?」
「あんたの彼は子供いないんだろ。気を付けなくてもいいからなんて言ってるけど種無しだろ、、、」
「そんな事関係ないけど、、、」
「もう暗くなってきたから送って行くから」
いつしか家の前に着いた。
気まづい空気を振り払うように「気を付けてね。おやすみなさい」と言うと
市川さんは黙って頷いた
私が家に入り窓のカーテンを開けて市川さんの車を見ると
それを合図の様にして市川さんは車を走らせて帰って行った。
次の日、出勤すると市川さんは何事も無かったかの様に忙しく働いていた。
その夜、宮町から電話があった。
「今週、飲みに行こう!元気でやってるか?麗香」何やらバックから騒がしい声が聞こえて来た。
「飲んでるの?」
「飲んでるよ!今週飲みに行こう!」
「はーい、解りました。あんまり飲み過ぎないでね」
「じゃあ、また電話する!」
何なんだ、今の電話、、
私と宮町の関係が落ち着いている証拠何だろう。勝手にそう思っていた。
その後は、市の図書館に行った
隣街の図書館に行ったのは初めてだった
自分の住んでいる街の図書館よりも大きくてビックリした
帰りにびっくりドンキーでハンバーグセットを頼んだ
今日のデートはお金のかからない所ばかりでとても新鮮に感じられた
家に着く途中に田んぼ道に入りしばらく音楽を聴いていると
市川さんは静かにキスをしてきた
「送って行くね!ありがとう。」
「楽しかったわ」
しばらく車を走らせた。
「何で、あんたは俺に付き合ってくれたの」
市川さんが聞いて来た
「あんたは旦那がいるんでしょう?俺が可哀想だと思ったの?」
「違う。そんなんじゃない、、」
何故か私にも解らなかった、理由などなかった
宮町の顔が頭に浮かんでいた
次の週の金曜日、仕事中に市原さんが「明日、デートしようよ!お昼一緒に食べよう!11時に迎えに行くから。」
そう言って会社の更衣室に入って行った
土曜日、11時に外を見ると市原さんの車が止まっていた。慌てて私は階段を降りて行った
『キャットカフェ』でお昼を食べようと言う事になりとなり街まで車を走らせた
もうサングラスは掛けていない。そこはサンドイッチが美味しいお店だった。
食事が済むと車を走らせながらがんこな社長のエピソードなどをこことばかりに話した
車はプラネタリウムに着いた。
プラネタリウムは拓が中学生の時に行ったきりだった
家族連れや若いカップルに混じって久し振りにはしゃいだ気分になった
こんなデートは久し振りだった。その時は宮町の事は忘れていた。
車を家に置いて窓から外を見ていると市原さんの車が近付いて来るのがわかった
私は慌てて階段を降りて行った
車に乗り込むと市原さんはスピードを上げて走らせた
となり街に入ると「この街は原田さんが住んでるんだよ。見つかるといけないからこれを掛けてくれる?」
そう言うとダッシュボードからサングラスを出しては私に掛けるように言った
私がサングラスを掛けると「あんた以外とサングラス似合うね。謎の女になるね!」
いつの間に私は「あんた」と呼ばれた
別に「あんた」の女でもないのに、、、
市原さんは結婚していて子供が3人いる事や奥さんが夜の相手はしたくないから
よそでわからないようにやってと言われたとドキッとするような事をポツポツと話した
何でも保育園に行ってる子供と一緒に寝てしまうので
後で寝室に戻って来いと言ってもそのまま寝てしまうので喧嘩になると言う事だった
挙げ句の果てにもう疲れて面倒くさいから夜の相手はしたくないから私にわからないようにやってと言われたらしい
仕事が終わって『アラン』に行くと駐車場に市原さんの車が止めてあった
ドアを開けて『アラン』に入って市原さんを探すと窓側の席に座っていた
私の顔を見て照れたように笑った。仕事以外に外で会うのは何故か新鮮な気がした。
市原さんの前の席に座ると「何飲む?コーヒーでいい?」と聞いた。
「この店よく来るの?」
「いや、会社から近いのはこの店だと思ったからね」
「麗香さんが頑張ってくれるから助かるよ~。ところで麗香さんて年いくつなの?」
「いくつに見えますか?」
「いや、女の人は化粧するからね。年はわからないんだ」
「そうか、、44歳です。会社の人には内緒にして下さいね」
「そうなんだ~、俺と4つ違いだね。もっと若いと思ったよ。」
「やっぱり年下だったのね。なんとなくそんな気がしてたわ」
「あっ、今俺の頭見ただろう。だめだよ!誤魔化したって!」
何故か二人して笑いこけてしまった
週末の土曜日、宮町は約束通り拓を焼き肉に連れていってくれた。
最初は遠慮していた拓も宮町に「好きなだけ食べていいから」と言われ肉を焼こうとしたら
「最初はタンから焼かないとダメだ」と言われ自由に食べられなかった
考えると私はタンを拓と食べたりした事がなかった
「タンは焼きすぎると固くなるから焼きすぎない内に食べた方がいいぞ」宮町は拓に言いながら食べ始めた。
その後はどんどんハラミ等を網に乗せていきみんなでたらふく食べた。
1時間もするとお腹がいっぱいになり拓も満足そうだった。
拓はあまり話をしなかったが宮町に「受かって良かったな!」と言われ軽く笑っていた。
私は宮町が「俺はあいつの父親にはなれないからな」
と言っていた事を思い出した。そうだね子供がいない宮町には子供の気持ちは理解出来ないんだわね。
理解しようとしないんだね、、
面接の当日、朝から緊張して落ち着かなかった
午後1時の面接に合わせて家を出た
5分前に会社に着いた
建物の横に階段があり、階段を上がって行くと会社の入り口らしき物があった
「あの、今日1時に面接をする事になっている麗香と申しますが、、」
事務員らしき人が出て来て「どうぞ、こちらでお待ち下さい。」と長椅子に案内された。
5分ぐらい待っていると年配の社長らしき人が部屋に入ってきた
慌てて立ち上がると「あ、そのままで」と言いながら手前の長椅子に座った
履歴書を差し出すと袋から出しては「ふん、ふん、」と言いながら「図面を書いていたのかね」と聞かれた
「はい、少しだけですが」
「なるほど、いつから来れるかね」
「はい、明後日からで宜しければ」
「じゃあ明後日の9時に来て下さい。社の者には話しておくから」
話が上手く行き過ぎて驚いたが生活の事を考えると正直、嬉しかった。
2日振りに出勤した。今日は店長が2階の靴の店にいるとの事だった。
休憩時間に店長の所に行き、周りりに迷惑をかけていて体調も良くないので仕事を辞めたいと話をした。
「えっ、どうしたの?突然そんな事言われても、、代わりもいないから。困るよ」
「申し訳ないんですけど、もう無理なんです」
「せめて今週いっぱいは出てくれないかな」
「わかりました」
あの後、どうやって帰ったのか全く覚えていなかった
最後の日、店長に保険証を返しに行ったが居なかった
私は仕方なく社員室の入り口にある事務所に店長に伝えてくれるよう言付けて帰る事にした
事務所を出る時、近藤さんが私を探していたのかバタバタとかけてきた
「本当に辞めるんだね!また店に遊びに来てね。」
「ありがとう、今までありがとうございました。」
宮町とは相変わらず週末に車で近くまで迎えに行き
行きつけの居酒屋で飲んだ後、ホテルに泊まる日を送っていた
ある日宮町を送って行く前に行きつけの喫茶店でモーニングを食べていた
ポロン♪ポロン♪
宮町の携帯が鳴った
宮町は携帯を取って着信を確認するとテーブルに置いた
まだ鳴り続けている携帯を見た私は
「出なくてもいいの?出たら?」
宮町は携帯を取り「もしもし宮町ですけど、、、」
「電話ありがとうね。はい、はい、じゃあまたね」
私は黙ったままコーヒーを飲んでいた
宮町の家の近くまで来ると車を降りるとき
「麗香に余計な詮索をされたくなかったから電話に出たんだ。また電話するから」
宮町はそういいながら車のドアを閉めた
それから半年過ぎた頃、仕事が終わって家に帰ると拓が指に包帯をしていた
「何で包帯してるの?指にケガでもしたの?」
「宮町さんが包丁の使い方教えてくれると言ったので教えて貰ったら指を切った。」
「えー!何も聞いてないけど大丈夫?」
「大丈夫。大した事ないから、、、」
その夜宮町から電話が掛かってきた。
「拓の事なんだけど包丁使わせたの?」
「いや、拓が包丁使った事ないと言ったから教えてやろうと思ってね。まさか指切ると思わんかったよ。」
「今まで包丁使った事ないから!最初から上手く包丁を使うなんて!無理だよ!」
「はじめから本物の包丁を使った方が使い方を覚えると思ったから!」
宮町の郷里は漁師だったから宮町は魚を捌いたりするのは得意だった
「ありがたいけどケガをするような教え方をしないで欲しいの。宮町みたいに包丁を使いなれて無いから」
「わかったよ!もう何もしないから!電話切るわ!」
こんなやり取りは仕事で疲れた身体には余計に応えた
それから数日が過ぎ近藤さんと私はバイヤーの山崎さんに呼ばれた
「あなた達もっと真剣に仕事をして下さい!」
「はい、、、」
(だったら大きい箱のラッピングの仕方をもっと練習させてくれたら良かったのに)
私達はどれだけ大変だったのか、、、
一方的にあーだこーだ言われるだけでは話が何も頭に入って来なかった
確かにバイヤーさんは大変でしょうね
お客様がいない時の社員達の無駄話は何?
そんな時2階の靴売り場で面白い出来事があった
何と展示していた靴をお客様が履いて行き代わりに汚れた汚い靴が置いてあったらしい
は?社員の人達は何をしていたの?
何のお咎めもなし、、、ですか
ひどい目にあったような話になってる、、
何だかね、、、
それから3ヶ月ぐらい過ぎて接客にも慣れた頃
お店に年輩のお客様がやって来た
大きなブランドのバッグをお買い上げになり、プレゼントにしたいから箱に入れて欲しいとの事
その日は生憎私ともう一人準社員の2人で対応した
バックヤードに行って箱を探し、箱の大きさに合う包装紙を取り出した
お客様の前でもう一人の準社員の近藤さんが得意と言う事で包装をする事になった
包装を見ていたお客様の顔がだんだん険しくなってきた
近藤さんのラッピングが上手くいかないみたいだった
慌てて駆け寄るとラッピングの終わりの始末が端に寄ってしまっててこずっているとの事だった
2人でラッピングしようにもどうにも上手く出来ない、、、
お客様は呆れた顔で「まぁネ○ステージの社員ともあろうものが、、、」
「申し訳ありません、、、」
何とかラッピング出来たものの2人して汗だくになってしゅんとしてしまった。
気を取り直して接客しているとあっという間に正社員の人とシフトの時間が来てしまった
息子が中学生になるまでは宮町は毎週末は家に泊まっていた。
さすがに中学生になった今は家に泊める訳にはいかなくなった。
そんな私達が愛し合うにはホテルに泊まるしかない。
一緒にお風呂に入ると私の身体中に石鹸を付けて優しく洗ってくれた。
スケベ椅子と言うものがあるのを初めて知った。
お返しに今度は私が宮町の身体を洗う番だった。
お風呂に浸かると宮町がキスをしてきた。そのままお風呂の中で結ばれた。
ある時は宮町が激しく動く度に空気が入るのかあそこの中でキュッキュッと音がした。
その音がお風呂中に響き渡り恥ずかしさでまた興奮して来るのだった。
終わると宮町は優しくキスをしてベッドに戻って行った。
私は身体の火照りを静めるようにしばらく湯船に浸かっていた。
宮町によって心も身体も充たされていた。
次の日の夕方、仕事を終えてから拓と先生に聞いた本屋さんに謝りに行った。
拓に「この本屋さんだった?」と聞くと「うん」と頭を下げた
意を決して、レジにいる店員さんに「すみません、店長さんいますか?」と聞くと怪訝そうな顔をしながらも奥から年配の男性を呼んで来てくれた
「あの、うちの息子が本を万引きしてしまったと学校で聞いたものですから、、大変申し訳ありません」
すると店長は「本来なら警察に連絡するところですが、子供さんも小さいし初めてと言う事ですので、こうやって来られたと言う事もあり、今回は警察に連絡はしません。」
「私の不届きでご迷惑をおかけして申し訳ございません」拓と頭を下げるしかなかった。
「ただしこの次は警察に連絡しますので」
拓が持っていた本を差し出した。640円の車の本だった。「ごめんなさい、、」
小さな声で言った。
そんなある日、拓が通っている小学校の担任から拓の事で話をしたい。と連絡ノートに書いてあった
何の話だろうと小学校の職員室に行くと担任の青木先生がかしこまったように
「お母さん、実は拓君が本屋さんで本を万引きをしたと一緒にいた同級生の田中君が教えてくれました。」
思いもよらない話に心臓がドキドキした。「田中君がそんな事しちゃあダメだよ!」と言ったけどそのまま持って来てしまったとの事だった。
「私がその本屋さんに電話をして事情を話しましたら、初めてだと言う事で本人に謝りに来るように言われましたのでとの事です。」
私は「ご迷惑おかけして申し訳ございません。」と言うと青木先生は「お母さんあまり拓君を叱らないで下さいね。本人は反省してもうやりません、と言ってますから」
私はただ頭を下げるしかなかった。「お母さん私も父親が居なかったので拓君の気持ちがよくわかるのです」
「もっと拓君の話を聞いてあげて下さいね」「ご迷惑おかけして本当にすみません。その本屋さんに明日、拓と謝りに行って来ます」
先生の優しさに涙が出そうだった。
宮町とは毎週末に宮町の家の近くに私が車で迎えに行きその足で行きつけの「如月」に行く事が多かった
如月でお店の咲ちゃんが宮町が行くとよくカウンターについて水割りを作ってくれる
宮町がトイレに立った時、「前の彼女は歌が上手くてよく歌っていたのよ」
トイレから戻った宮町に「ねぇ宮町の彼女さんは歌が上手かったの?」「誰がそんな事を言った!」
「咲ちゃんが教えてくれたんだよ」「もう、、」
宮町は咲ちゃんがカウンターの前に来ると「やめてくれよ~、前の事話すなんてルール違反やろ」怒って言った
前の彼女は旦那さんがいて宮町とは5年付き合っていたと聞かされていた
宮町とエッチすると旦那とはしたくないと言っては宮町を困らせていたとの事だった
それから別の日久しぶりに義姉とお茶をする事になった
義姉は別れた旦那のお兄さんのお嫁さんさんである
「麗香さんとはこれからも会うからね。友達なんだから」と義理の兄に言って来たそうだった
本家の義理の姉の事をよく思っていない人だった。もちろん私もきつい本家のお嫁さんは苦手だった。
「麗香さんが『私は頼まれ仲人だからあんた達がどうなろうと関係ない!』と言われたと言ったら」確かにそう言ったわと言ったよ。」
私にはもう遠い過去の出来事のようだった
お義姉さんは「麗香さん達も離婚してからお互いに車を変えて今の方がいい生活してるんじゃない、、」と言った。
まさか私に好きな人がいてその人に買って貰ったと聞いたらどんな顔をするのだろうか。
週末の土曜日に久しぶりに宮町の行きつけの『如月』に行った
ママは私を「いらっしゃい!ちあきなおみ~」と言って出迎えてくれた。
宮町に「何で?ちあきなおみ?」と聞くと「たらこ唇が似てるんじゃない!あははっ」と笑った
私達の他に客がいなかったからかママはカウンター前の宮町の隣に座った
「お久しぶりねっ」と言ってママは宮町の膝に手を置いた
「の身体に勝手に触らんといて下さいよ~」そう言うと宮町はママの手を避けるように私の方に向き反った
ママは気を取り直してカウンターの中に戻った。宮町と私に水割りを作ってくれた。そして3人で軽く乾杯をした。
そして宮町はカラオケを歌った
とまどう時に 上目遣いで爪を噛む癖は なおってないんだね♪
お前も騙されて 俺とおんなじお人好し♪
似た者どうし 似た者どうし~♪
一緒に暮らしてみよう♪
久しぶりに聞いた宮町の十八番だった
その週末の土曜日の昼過ぎに宮町は団地まで車で迎えに来た
拓は友達の所に遊びに行くと出かけていた。車に乗り込むと宮町はさっそく「車を見に行こうか」と隣街まで車を走らせた。
軽自動車が並んでいる車の販売店に入って車を止めた
「どれにしようか?」いろいろ見ていたらある濃紺の車が目に止まった
「これがいいかなぁ」と言うと「この車気に入った?」「色がシックで良くない?」「じゃあこれにしようか!」
支払いの手続きは宮町がやってくれた「納車は来週の日曜日でいいか?」「はい、ありがとう!楽しみだわ!」
初めての新車に私はウキウキしていた。日頃の疲れが吹き飛ぶ気がした。宮町には感謝しかなかった。
その夜、宮町から電話が掛かってきた「もしもし、宮町だけど、、」
どうやら酔っているようだった「今、友達ん所」「そうなんだ~、今日母さんからお金借りてきたから、、」
宮町は長崎の県人会を作っていて同郷で20人位で月に1度集まっては飲み会をやっていると言っていた
前に県人会に彩ちゃんと言うスタイルのいい綺麗な子がいて宮町の事が好きで
飲み会の時はいつも宮町の隣に座っていて酔って来ると「宮ちゃん好き~」と言って来ると言っていた
「そうか~良かったな、来週車見に行こうか!」「はーい、楽しみにしてます。」
あんな思いをして母からお金を借りてきた事などおくびにも出さずにただ新車に乗れる事が嬉しかった。
週末に車で30分の所にある実家の母を訪ねた
「久しぶりだね。身体の調子はもういいのかい」5年前に父を亡くし独り暮らしの母は嬉しそうだった。
「うん、もう大丈夫だよ」1時間が過ぎる頃私はきりだした。「母さん、お願いがあるんだけど、、」
「なんだね」「うん、最近車の調子が悪いから安い車に買い替えようと思って、、」
「ふん、、」「お金を貸して欲しいんだけど」
「いくらいるの?」「20万円、、夏のボーナスが出たら返すから」
「なんだね、あんたは!いつも来んくせに、こんな時だけ来やがって!」
「貰おうと思ってないから、、返すから!」
母は奥に引っ込んだ、、しばらくして出てきた手には封筒が握られていた
それをテーブルの上に置くと「持って行きん!」と言った
封筒を見ると20万円入っていた
「ありがとう!必ず返すから、、約束するから!」
その時は私にはどうしても必要なお金だった。宮町を引き留めておくためにも、、
私は学校に電話をして事情を話して拓の担任に電話を代わって貰った。拓の担任の30代のインテリっぽい顔を思い出した
担任は「お母さん事情は解りました。3学期ももう残り少ないんです。その女子達と話をしてももうすぐ春休みになるんです」
「もうすぐクラス替えがあるんです。だからここは何とか押さえて貰えませんか」
この担任には何を話しても無駄だとわかった。3学期も終わりに近付いている今面倒な事は避けたいのだ。
拓には「先生に相談したらもうすぐクラス替えがあるからと言われたからもう少しだけ頑張ろうね。」と言うしかなかった。
そして新学期を迎えた。新しい担任は優しそうな女の先生だった。
気になったいじめた女の子は1人だけ同じクラスになった。私は胸を撫で下ろした。
家のかたずけに追われてあっという間に1週間が過ぎた
久しぶりに会社に出社すると奥さんは「お見舞いに行こうとしたんだけど仕事が忙しくて」
と申し訳なさそうに言った。「身体はもう大丈夫なの?」と心配そうに聞いた
「お蔭さまで引っ越しも無事終わりました」と言うと「そうだわね。引っ越し祝いをあげなくちゃね」
「ありがとうございます。団地なので間取りは大きくないんですよ。息子と2人で住めればいいですから」
「玄関マットをあげたいから1度部屋を見せて貰わなくちゃねどんなのがいいかわからないから」私は気が進まなかったが「そうですね」と言った
結局玄関マットのお祝いは貰う事はなかった
ある日、仕事から帰ると拓の様子がおかしかった
「どうしたの。元気がないみたいだけど、、」顔を覗き込むとノートをサッと隠した
ノートには何か落書きみたいな字が見えた
「見せてごらん!」ノートを取り上げて見てみると『バカ』『クズ』とかいろいろ何ページかに落書きがしてあった
『これ誰が書いたの?」『女子が書いた」
新しい学校のやり方が解らなくて戸惑っていると4人の女子にノートに落書きされたと言う
そんな事が3日も続いて私は黙っていられなくなり学校の担任に電話をした
退院の朝、11時過ぎに宮町は病室に迎えに来てくれた
入院中の簡単な荷物をまとめていると同室の大野さんが「元気でな」と言った
私は「早く治して下さいね」と頭を下げながら言った
病院の会計を済ませて車に乗り込むとお昼近かった
何処かでお昼を食べて行こう。と宮町は言って車を走らせた
するとステーキの○○○○にしようか?と宮町は言った
お肉は大丈夫かな?と思ったが宮町は退院祝いだからと言って駐車場に車を停めた
私は1番小さいステーキを注文したがそれでも大きかった
もう何を食べてもいいんだろう?と宮町は全部食べるように言った
私は胃がパンパンだったが無理やり押し込んで食べた
「じゃあ部屋に行こうか」
お腹がいっぱいで苦しい私の気も知らず宮町は車に戻った
そう言えば私が緊急外来に乗ってきた車はと言うと
緊急外来の駐車場はスペースが少なく空いてなかったので路上駐車したのです
そのまま診察を受けて手術になってしまったので車はそのまま路上駐車のままになってしまった
妹が気がついて2日後に車を取りに言ったらあの黄色い『駐禁』の札が貼ってあった
警察に本人はそのまま入院して手術をしたから車を動かせなかった事情を説明したが
警察はとにかく2日も路駐していたからダメです!と言う事で聞き入れて貰えず
違反金を払う事にして車は私のマンションの駐車場まで乗って来て置いておいてくれたのだ
本人は入院して車を運転出来なかったのに警察は何でそれが解らんの!!
と妹は怒っておりました、、、
妹よごめんなさい迷惑をかけてしまって
やがて食事も普通食になった。看護師さんには運動をした方がいいと言われたので病室の廊下を1日2回一周したりして体力をつけたりしていた。
退院の日が近付いてきたが息子の拓が見舞いに来る事はなかった。
旦那の実家に電話をしても拓の事はよくわからないとと言われて電話を切られた。
そうこうしているうちに引っ越しの日がやって来た。
入院していたので細かい間取りは妹に任せて妹夫婦と男手がいるという事で友達だと言う事で宮町にお願いした
朝、9時に私のマンションに荷物やタンスを取りに行き公団まで30分の道のりを運んで貰った
引っ越しの当人は入院中と言うあまりに喜劇みたいな流れになったが
妹の旦那の仕事の都合でこの日しか空いていないと言う事で仕方がなかった
狭い団地に入り切らない和箪笥は車で20分ほどの所にある実家に運ぶ事にしたと言う
その日の夜、夕方宮町が仕事帰りに見舞いに来てくれた
「調子はどう?」「うん、大丈夫です」なぜかほっとする
「ご飯食べてるの?」「うんお粥を少しずつだけど」
短い会話の中に優しさを感じる私、しばらくすると「また来るから」と帰って行った
同じ病室の人達は宮町は旦那だと思っているみたいだった
毎日見舞いに来てくれる優しい旦那さん
そんな私に嬉しい事があった。申し込んでおいた公団に当選したのだった
2週間後には公団に引っ越しをする事になった
拓はどうしているのだろうか?旦那は同じ市内にアパートを借りたとお義姉さんに聞いた
ちゃんとご飯を食べて学校に行っているのだろうか
身体は順調に回復して口の管とお腹の管が取れた
公団は2階の2DKに決まった。妹には前から引っ越しが決まったら手伝って貰う事になっていた
病室の人達とも話しをするようになった。夕方には自販機の前に集まってカップコーヒーを飲んだりするようになった
一人の人が退院が決まった時はみんなで自販機の前でコーヒーを飲んでお祝いしたりした
静かな夜だった。
夜遅くに宮町が見舞いに来た。「要るものはないか?」見ればタオルケットとタオルを何枚か持ってきてくれていた
「ありがとう。ごめんなさい心配かけて、、」
「何も言わなくていいから。大丈夫か?」そのまま30分くらいいて帰って行った
そう言えば妹に電話をする前に宮町の家に電話をした事を思い出した
どうしても一言連絡したかった私は奥さんが出る覚悟で宮町の家に電話をした
電話をすると奥さんが出た「友達の麗香と言うものですが連絡したい事があるので旦那さんをお願いします」
宮町に代わってくれた「どうした?」「すみません電話をして今から○○病院で手術をする事になったから」
「わかった。」それだけで電話は切れた。
病院に着くとさっそく診察が始まった。医者はお腹の辺りを押さえながら「今からレントゲンを撮りますね」と言った
そのままレントゲン室に連れて行かれてレントゲンを撮られた
しばらく横になっていると看護師さんが呼びに来た
「十二指腸潰瘍で直ぐに手術をします。こんな時間ですが連絡をしたい所があれば連絡をして下さい。」
突然の事に頭が混乱してしまった。時間を見ると朝の6時半を過ぎていた。
実家に電話を掛けたが誰も出なかった。次に妹の家に電話を掛けると妹が出た。
混乱しながらも昨夜からの事情を話した。今から手術をする事を伝えるとさすがに驚いていた。
尚も息子の事を頼みたく話しをしていると看護師さんが「もう手術の時間です。」と呼びに来た。
すると妹は「後の事はやっておくから心配しないで大丈夫だから」と話してくれた。そのまま私は手術室に入って行った
そしてそんな日々が続いたある日の夜、私は胃にいつもと違う締め付けるような鈍い痛みを感じた
かかりつけの病院に電話をした(ルルル、ルルル、ルルル、、、)呼び出し音が空しく響くだけだった
昔、一度だけかかった事があるとなり街をの病院にすがる思いで電話を掛ける(ルルル、ルルル、、、)
「はい、こちら○○病院緊急外来ですが」
「あ、あの胃の辺りがとても痛くて段々いつもと違う痛みで見て頂きたいのですが、、」
「今から来られますか?何で来られますか?車で来られますか?気を付けて来て下さいね」
私は救われたような気がした。時計を見ると朝の5時だった
慌てて寝ている息子を起こして話をする「あのねお母さんはとてもお腹が痛くて我慢出来ないの。
だから今から病院に行くから。解る?机の上にパンと牛乳があるからちゃんと食べて学校に行くんだよ。解る?」
息子は小さく頷いた
私は慌てて取るものも取り敢えずとなり街の病院に向かった
旦那にお金がない事は解っていた。何と2社から380万円の借金がある事が解ったから。
それも取り立てに困り旦那の実家が100万円払ってくれたそうだ。
旦那には私には言わないで欲しいと言われていたと全て義姉が教えてくれたのだった。
そして私がおこずかいをあげていないと言って旦那の実家からお金を貰っていた事もわかった。
もう駄目だと思った。許せなかった。
旦那にはこれからは気をつけるから別れたくないと泣きつかれた。
もう駄目だ、もう同じ部屋で空気を吸う事が出来なくなってしまった、、
せめて旦那の口から全て聞きたかった
慰謝料はいらない。でも子供の養育費だけは払って欲しかった
あなたは父親なのよ。
そしてあなたの本屋のお義姉さんに相談した時に言われたの。
私は頼まれ仲人だからあなた達がどうなろうと私には関係無いから。
旦那は「あんな古い車はいらない」と車を置いて家を出て行った。
そして実家に帰ると俺の分の荷物は送ってくれ。と電話をしてきた
旦那の荷物を整理しているとエロ本が出てきた。プロレスの本と共にエロ本を衣装ケースの見える所にエロ本を5冊ほど乗せて蓋をした。
衣装だんすは旦那が欲しいと言ったのでそれも送る事にした
今の賃貸マンションは家賃が高いので公団に引っ越す事に決めた
そして旦那と別れる事を実家の母に話をすると「何も別れる事ないのに」と言われた
旦那と別れる事を決めたけど話し合いが上手く行かずに裁判所に調停に出す事になった
自分はお金がないから慰謝料は出せない。養育費も出さない。と言う事で揉めていた。
無言のまましばらく車を走らせていた宮町は「この前の店に行こうか?」と聞いて来た。
お酒はあまり強くないけどお店の雰囲気が好きになった私に異存はなかった。
如月の扉を開けるとママが「まあ!宮さんいらっしゃい」と声をかけた。
私達は隅の席に座るとママがさっそくボトルを持って来た。着物が良く似合う素敵なママは常連さんからは「みえこー」と呼ばれていた。
「ねえママは歌手の○○三枝子に似てるからみえこって呼ばれてるの?」と宮町に聞いた
「バカだなあ、名前が三枝子っていうからそう呼んでるんだよ」そんな他愛ない話が楽しかった。
しばらくすると宮町はカラオケをリクエストした。
流す涙はかわいても 寂しい心は隠せない♪
星も見えないこの街に あなたしかない私♪
ああ お酒下さい♪
ああ 寂しい胸に♪
ひとりがつらいこんな夜は あなたが憎めない♪
宮町の歌とお酒にすっかり酔ってしまった
しばらく歩いていると宮町が立ち止まった。私の髪を撫でながら「この髪飾り良く似合っているよ」と言った。
そんな何気ない言葉がたまらなく嬉しかった。
海を見ながら私の気持ちがゆらゆら揺れていた。日常から離れたこんな時間が持てるなんて幸せだと思った。
そして車に戻った時宮町は「楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうね。」と言った。何だか可笑しくて思わず笑ってしまった。
帰りの車の中で気になっている事を聞いた。「宮町さんは子供さんはもう大きいの?」
しばらくの沈黙の後宮町は「うちには子供はいないんだ。」と言った。
宮町が原因で出来なかったとの事だった。「だからおばさんとは家庭内別居みたいなものなんだ。家にお金を入れる代わりにご飯はちゃんと用意して貰う事。奥さんのパート代は自由に使ってもいい事。」と約束していると話てくれた。
それから1週間後宮町から電話があった。今度は海を見に行こうと言う事になり私のマンションの近くまで宮町が迎えに来た。
久しぶりのデートと言う事もあり、念入りにお化粧をして鏡の前に立つ私だった。毎日子供との生活に追われてお洒落をする事もなかった。
宮町が迎えに来た。私は懐かしい人に会ったような不思議な感情を感じた。
その時は子供はどうしていたのだろうか。確か小学校3年ぐらいだったと思う。その時は実家の母に預けていたのかもしれない。
1時間も走ると海が見えて来た。私は窓を開けて海の香りを吸い込んだ。
堤防に車を停めると海岸沿いを2人で歩き出した。宮町は自然と私の手を繋いできた。私を包み込むような大きく温かな手だった。
「来てくれてありがとう。時間があれば麗香さんと話しがしたいと思ったから」
宮町は照れくさそうにそう言うと「コーヒー飲みますか?」と言った。
「会社には宮町さんが電話したんですか?奥さんが出たけど大丈夫だったの?」
私は気になっていた事を聞いた。「いや、会社に電話をしてから店の女の人に頼んで友達だといって麗香さんを呼びだして貰ったんだよ」
「そうだったの。会社で呼び出すなんて大胆な事するなと思ったわ」
会社の人達の話しや仕事の話をして1時間近く過ぎてしまった
「これから行きつけのお店があるのでそこに行きましょう。車は近くのパチンコ屋さんに止めて置いて宮町の車で行きましょう。」
宮町が入って1週間を過ぎた頃社員の慰労を兼ねて仕事終わりに会社でビールとおつまみを買い込んで飲み会をやった
宮町が長崎出身だと知ると社長の奥さんは自分も九州の福岡出身だからと「やっぱり九州の食べ物は美味しい物が沢山あるわね~」
と他の人達をそっちのけで宮町に話し掛けていた
1時間も過ぎた頃話しが途切れたのを潮に宮町が「すみません、用事があるのでお先に失礼します」と社長に挨拶をして帰って行った
それからしばらくすると会社の電話が鳴った
奥さんが出てしばらく話をしていたが「麗香さんに山田さんと言う方から電話よ!」
「すみません、、」山田と言う名前の友人はいたが会社の電話番号は知らないはずだった
「もしもし、、」電話に出ると「もしもし、宮町です。突然驚かせてすまないけどこれから会えませんか?」
突然の事に私は何と返事をしたらいいのかわからなかった
そんな様子をまた別の意味で見ていた人がいる事をその時の私は気づかなかった
それから数日が過ぎたある日、階段の下で何やら騒がしい声がした
私が降りて行くと古田さんの作業靴が無くなっているという
ゴミ箱の近くを探すとスーパーのビニール袋の中に汚れた靴が何足か入っているのを見つけた
「古田さんの靴この中に入ってない?」
すると「俺のだよ!何でこんな所にあるんだ!」
たぶん社長の奥さんが辞めた社員の靴が何足かあったのでかたずけた時に古田さんの靴も一緒に入れてしまったらしい
「奥さんも一言聞いてくれたらいいのにね!」
私が言うとその様子を社長が階段の上から見ていたらしく「何だと!」と怒鳴りながながら階段を降りて来た
その剣幕に私達は黙ってその場を後にした
それから1ヶ月ぐらい過ぎたある日の事
仕事が終わったら会社から車で5分ぐらいの所にあるスナック「ぼんやり」に奥さんと古田さんと私の3人で飲みに行く事になった
社長は打ち合わせで遅くなると言う事で参加出来なかった
わずか3人での飲み会だった
スナックのママさんの話しが面白くて時間が立つのも忘れてしまった
10時過ぎに社長から奥さんに電話が入った
何時ぐらいに帰って来るのか?と言う事で後30分ぐらいで帰りますと奥さんが返事をしていた
すると社長が電話を私に代われと言ったらしく私に電話に出るように言った
遅くなると危ないから奥さんが帰る時に一緒に帰った方がいいとの事だった
何で?もう少し店にいたかったけど奥さんが私の手を取って店の外に引っ張って行った
実は何かあったのかしら?と古くからこの会社にいる近藤さんにお昼休みの出来事を話したのだった
近藤さんは「そりゃ、きっと山本だわな!」と言った
一人暮らしの人が体調を崩して仕事を休んでいた時に
奥さんはお粥を作ってあげたりして夜遅くまで帰って来なかったらしい
その人は社長も信頼していて社長が忙しい時は社長の代わりに打ち合わせに行ったりしていたらしい
その時は奥さんも会社には顔を出さなかったと言う事だった
近藤さんはお酒が好きなので社長に毎日のように飲みに誘われて
「あの時はいくら酒が好きでも参ったよ!」と当時を思い出したのか口をつぐんでしまった
その人は奥さんの事が好きだったのだろうか
だから「とし子さんいますか?」と会社に電話をしてきたのだろうか
奥さんもその人の事が好きだったのかしら
最後の恋だったのだろうか
それから1年ぐらい過ぎたお昼前に会社の電話が鳴った
「はい、マツコエンジニアリングです。」
「あの、、○○さんいますか?」
くぐもった男の低い声だった
「はい?こちらマツコエンジニアリングですが?」
「あの、とし子さんいますか?」
今度ははっきりした声だった。とし子は社長の奥さんの名前だった
「今ちょっと出ておりますが。戻ったら折り返しお電話差し上げましょうか?」
「い、いえ結構です」
慌てて電話を切るような気配だった
お昼に社長と奥さんが会社に戻ってきた
「先ほど奥さんにお電話がありましたけど、何かおかしな電話でとし子さんいますか?と言ってたんですが」
とたんに部屋の空気がピーンと張りつめて社長と奥さんは黙ってしまった
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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