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正解なき罪にまみれて…

レス36 HIT数 2255 あ+ あ-

名無し( ♂ )
18/10/13 14:01(更新日時)

フィクションかノンフィクションかなどはどうでもよい。

これはある青年が歩んできた過ち多き人生、恋愛をありのまま書き記した、

云わば「記録」のようなものである。




以下、本編

============================



僕はなぜ今このように霧が晴れぬ森の中をさまよっている感覚で

人生を歩まなければいけないのだろうか。

底なし沼に足を踏み入れて抜け出せずにいるのか?


「こんなはずではなかった」


後悔なのか、それとも理想を描きすぎていただけで人生とは本来こんなものなのか。

自分の人生なのにこれほどまでに受け入れがたいものだとは。。。

幼き日、空に雲が一つもないような広いキャンバスにはもっと

キラキラと輝いたものを描けていたはずだった。

なのにいまの僕は決して人には言えないことを腐るほど抱えている。

まるで嵐で大荒れの大海原に一人今にも崩れてしまいそうなイカダで漂流しているようだ。

いつ荒波に飲み込まれてもおかしくない。。。



幼少期、人よりも少し人見知りで

少しマイペースで

少し頑固で。。。

末っ子で兄に強く言えない分何事も不平等だったり理不尽だと

すぐに怒り、殻に閉じこもり親や兄弟にも怒られた。

「お前は頑固だ」

「すぐに泣く」

よく言われすぎた。

兄の反抗期とともに兄がした悪事などはすべて自分のせいにされ、

うまく説明することもできず「自分はやっていない」とだけしか言えぬまま

親には自分のしていないことで怒られた。

「人にされて嫌なことはするな!」

何もしていないのにこのように怒られる僕は

「なぜ僕ばっかり・・・」と次第には

「自分さえ我慢すればみんな笑顔で過ごせる」

そう思うようになっていった。





つづく・・・


No.2623111 18/03/29 16:54(スレ作成日時)

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No.1 18/03/29 17:15
名無し0 ( ♂ )

何もしていないのにこのように怒られる僕は

「なぜ僕ばっかり・・・」と次第には

「自分さえ我慢すればみんな笑顔で過ごせる」

そう思うようになっていった。



以下、続き

============================



おそらくは自己の形成と周りからの抑圧のはざまで

歪んでいったのだろう。

周りの友達にも仲間外れにされたり標的にされることも増えた。

しかしながら僕の中で一番つらかったのは家庭内で自分の居場所がないことだった。

兄にこき使われ、反抗すれば罵声を浴びせられる。

「死ね」と言われすぎてその言葉の重みすらわからなくなった。

ある時は包丁を突き付けられ、

ある時は布団を顔にかぶせてその上から抑え込まれ

「あぁ、僕はこのまま死ぬんだな」と

幾度となく思うことがあったが大人になった今は皆そんなこと忘れている。


親に「人にされて嫌なことはするな」と言われ続けた結果

兄に反抗することはいけないことだと思いながら過ごした僕に

ある日変化が起きた。

それは兄がいつものように僕に罵声を浴びせているときのことだった。

何がきっかけだったか覚えてはいないが

急にマグマの噴火のように僕は我慢の限界に達した。

次に気づいた時には兄が面食らって床に崩れ、

母親が目の前で泣きながら「やめてー」と叫んでいた。

僕は兄の髪の毛をつかんで何度も何度も白い壁に兄の頭を全力で打ち付けていたらしい。

血の気が引いた。


驚くほど冷静になった僕は

「自分が手を出せば意外と簡単に人を殺せてしまいそうだ」

ということを悟った。


それ以来、僕は怒ることも手を出すことも

自分の感情を口にする術も全て捨ててしまった。




つづく・・・

No.2 18/03/29 18:25
名無し0 ( ♂ )

驚くほど冷静になった僕は

「自分が手を出せば意外と簡単に人を殺せてしまいそうだ」

ということを悟った。


それ以来、僕は怒ることも手を出すことも

自分の感情を口にする術も全て捨ててしまった。




以下、続き

=====================================


自分のもろさも相手のもろさも同時に悟ってしまった僕は

それから偽りの仮面をかぶりまるで人形のようになってしまったように思う。

もし人生が一つなぎでつながっているのであれば

僕はその時点から丁寧に丁寧に少しずつ少しずつ歪み始めたのだろう。


それから僕は周りの求める人間になろうと必死だった。

もちろん兄から受けた仕打ちに対して何度も何度も兄を殺す脳内シミュレーションをしたり

自分の心の泣き声に耳を傾けた。

しかしそれらの感情は僕を助けてはくれないことを悟っていく。

そして人の嫌がることはたとえそれが正しいことや自分の感情に素直になることであっても

避けるようになった。

大人の言うことは聞くようになった。

それと同時に人のことを信用しなくもなっていった。

学校の友達や兄との鬼ごっこでは決まって自分が鬼。

じゃんけんでは事前にみんなで仕組まれ、

給食の残飯はすべて僕の机に運ばれてきた。


もともとは外で遊ぶ活発な少年は次第に教室の隅で一人であやとりをするようになっていた。

クラスメイトに話しかけられたら仲がよさそうにふるまった。

いやなことをされても笑って過ごした。

教師や親、大人の言うことはよく聞く

「良い子」を演じた。

そうして周りから偽りの信頼を勝ち取ることでしか

自分が呼吸をできる場所は作れなかった。

息苦しくなったら楽になろうと何度も考えた。

自分で首を絞めてみたりカッターで手を傷つけてみたり。


不器用だったんだと思う。





つづく。。。

No.3 18/03/29 18:46
名無し0 ( ♂ )

そうして周りから偽りの信頼を勝ち取ることでしか

自分が呼吸をできる場所は作れなかった。

息苦しくなったら楽になろうと何度も考えた。

自分で首を絞めてみたりカッターで手を傷つけてみたり。


不器用だったんだと思う。



以下、続き

===================================


小学校4年、

趣味は人間観察。

意味不明な詩を自由帳に書きなぐる。

転機は思わぬところに転がり込んできた。。。


転校生、

いかにも幸の薄そうな無表情で青白い顔いろの髪の長い女の子だ。

当時僕は先生の頼みで代表委員というクラス代表を務めていたからか

その子は僕の隣の席に座ることになった。

口数も多くなく雰囲気も陰気でしばらく誰も話そうとはしなかった。

しかしそんな彼女に対してなぜか「親近感」のようなものを感じた僕は

使命感にも似たような感覚で彼女に積極的に声をかけるようになった。

彼女は初めはおびえた様子でかすかにふるえる唇とか細い声で僕にこたえるのが精いっぱいだった。

あまり笑わないのか笑えないのか、笑うと頬がひきつるのが印象的だった。


日々の積極的な声掛けのおかげか

彼女からも少しずつ話してくれるようになっていった。

周りからは異様な光景だったと思う。

僕とその子には別の世界観があった気がする。

周りには理解されない空気間。

彼女は僕以外と話すことはなく、話しかけられることも必要最低限だった。


彼女が話をしてくれるようになってしばらくがたったころ、

彼女が自分の過去について話してくれた。

彼女は他県の出身で学校でひどいいじめにあい

引っ越してきたのだった。

彼女の過去の痛ましい経験を聞くにつれ

次第に自分の奥底に秘めていた感情がこみあげてきて

「彼女をまもってあげたい」

と幼心に思ったのは今でも鮮明に記憶している。




つづく・・・

No.4 18/03/29 19:07
名無し0 ( ♂ )

彼女の過去の痛ましい経験を聞くにつれ

次第に自分の奥底に秘めていた感情がこみあげてきて

「彼女をまもってあげたい」

と幼心に思ったのは今でも鮮明に記憶している。



以下、続き
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宿泊学習の季節、

班行動と決まっていたがその転校生とは

誰もグループを組みたがらなかった。

僕は先生にも頼まれたがその前に彼女とグループを組もうと

決めていた。

周りからは怪訝な目で見られた。

今思えばかわいい話だがその年頃の男女は

異性と行動を共にするのはまるで「恥」かのような考えを持っていた。


宿泊学習で彼女と行動を共にするのはどこか自分が認められている気がして

すごくうれしくもあり、むずがゆかった。

彼女はほかの誰にも向けない笑顔を僕には向けてくれた。

宿泊場所であるロッジでは二段ベッドの上に彼女、

下に僕が寝ることになり

彼女はとても無邪気に上から何度も僕のベッドをのぞき込んでは

楽しそうに笑った。

僕はそんな彼女の笑顔をずっと見ていたいと思った。


あの時僕は初めて「恋」をしたんだと思う。


宿泊学習も終わり様々な行事が過ぎてゆき

4年最後の終業式を終え、

春から始まる新学期が来るのが待ち遠しかった。

彼女に早く会いたかった。

そのころの僕はまだ幼く「恋愛」というものがどういうことかも

わからぬままに突っ走っていた。


春休みのある夜とても嫌な夢を見た。

あんなに笑顔を振り向いてくれた彼女が夢の中では

一言の別れの言葉もないままに転校してしまう夢だった。

ある朝学校に行ったら彼女がいない。

それ以外は何事もなく進んでいく時間に恐怖をおぼえ

意を決して先生に聞いたら先生が一言

「あー、〇〇さんは昨日付で転校したんだよ。親御さんの都合だそうだ」

というだけだった。

その言葉を聞いた瞬間に彼女の後姿とはにかんだ笑顔が浮かび、

振り返った彼女が手を振った。

僕は必死にそのか細い手首をつかもうとしたのだが次の瞬間には

僕の手の中には何も握られていなかった。


朝、僕は止まらぬ涙と共に目を覚ました。



つづく・・・

No.5 18/03/29 19:23
名無し0 ( ♂ )

僕の手の中には何も握られていなかった。


朝、僕は止まらぬ涙と共に目を覚ました。



以下、続き

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春休みが終わり、

5年生の春を迎えた。

彼女とは違うクラスになった。

それだけではない。

ある朝廊下ですれ違った彼女に挨拶をしたが

目をそらされ彼女からの返事の声は聞こえなかった。

それ以来彼女とは話すことはなくなった。


強い喪失感と共に窓の外を眺めることが多くなった僕は

以前にもまして自分の感情を表に出さない

表情のすくない子になっていった。

クラスメイトにはそつなく、

教師や親には「良い子」を演じ続けた。

クラスでいじめられている子などを見かけると

自分の中の何かが狂ったようになり

人が悲しい表情を見せていると胸が締め付けられた。

「正義のヒーロー気取り」

っとでもとらえられたのか

次第に人をかばっては自分がいじめの標的へと変わっていった。


幼少期のつらい経験が功を奏したのかあまりダメージはなかった。

自分が代わりにいじめられることでほかの子が救われるなら気持ちが楽だった。

僕の感情はどんどん僕の中をえぐるように内向的に進んでいき

何かを悟ったような言動と落ち着きで周りからは

「仏」や「おじいちゃん」というあだ名をつけられた。

僕にとっては名前なんてどうだってよかった。


学校でのいじめのストレスと給食の残飯処理で

僕は瞬く間に太った。

当時の体重から2年でプラス25㎏

そんなことも僕にとってはどうでもよかった。

僕はストレスを外に発散することがうまくなかった。

だから当時は感傷に浸れるような音楽に自分の感情の一端を

のせて発散するようになっていた。

ピアノをたたくように弾いたりギターを力いっぱいかき鳴らすのが

好きでよく昼休憩の時間には音楽室にこもっている時期があった。


音楽は僕の心にすっと入ってくるような気がした。



つづく。。。

No.6 18/03/29 22:07
名無し0 ( ♂ )


ピアノをたたくように弾いたりギターを力いっぱいかき鳴らすのが

好きでよく昼休憩の時間には音楽室にこもっている時期があった。


音楽は僕の心にすっと入ってくるような気がした。


以下、続き

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小学校6年のある日

地域の中学の吹奏楽部が定期演奏会を開いた。

音楽が僕のストレスのはけ口になっていたので

演奏会はとても楽しく僕に新たな刺激を与えてくれた。


翌日、それまで話すこともなかった女子に声をかけられた。

クラスの違う男子にも声をかけられた。

「昨日聴きに来てたけど中学で吹奏楽部に入るの?」

今まで声もかけてこなかった人が音楽を通して声をかけてくる。

何かが始まる気がした。


それからというもの中学に入学するまえもしてからも

考えていたのは吹奏楽という新しい世界のことだけだった。

それさえできればほかの苦難はなんでも乗り切れる気がした。

中学でも僕の性格は変わることなく友達と心から呼べる人はいない。

ただ淡々とそつなく最低限の会話で周囲との関係を円滑にまわし、

先生や大人からは良い子、しっかりとした子と呼ばれ

偽りの僕は順調に成長していった。

何事も問題なく波風を立てずに進んでいくかと思った。

ある日を境に再び僕の嫌な記憶が蘇る。


クラスで避けられ、いじられる女子がいた。

中学生は厄介な時期だ。

男子も女子も寄ってたかって一人をいじめようとするのだ。

不公平、不平等、不条理、理不尽

これらが大嫌いな僕には許せなかった。

次の瞬間にはその女の子の前に立って

「やめろー」と叫んでいた。

ヒーロー気取りだ。

一番目立たずにそつなく過ごそうと思っていた自分とは

全く逆の行動だ。


その直後からその女の子は僕に声をかけてくれるようになり

僕らは友達のように話すようになった。

その翌日からクラスの大半が僕をいじめの標的にしはじめた。

天地はひょんなことから簡単にひっくり返ってしまうのだ。



つづく・・・

No.7 18/03/29 22:36
名無し0 ( ♂ )

その直後からその女の子は僕に声をかけてくれるようになり

僕らは友達のように話すようになった。

その翌日からクラスの大半が僕をいじめの標的にしはじめた。

天地はひょんなことから簡単にひっくり返ってしまうのだ。


以下、続き

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今思えばそのころのいじめはかなりひどかった。

靴が隠され、教科書を破かれ「死ね」の落書きがされ、

体操服をグランドになげられ、引き出しにエロ本を仕込まれる。。。

ある日は教室に机と椅子がなかった。

僕がいじめからかばった女の子がこっそり教えてくれたのだが

僕の机と椅子はトイレにあった。

もう笑えて来た。

教室とトイレは廊下の端と端だ。

いじめというのにはそこそこ重たいものを

それだけの距離運ぶだけのバイタリティを少年たちに与えるらしい。

そういった物理的ないじめもあれば

女子たちのいじめは陰湿で精神的に苦痛だった。

遠くから鼻をつままれたり、

こちらをちらちらと見ながらよからぬ笑みを浮かべてこそこそ話したり、

すれ違いざまに「きもっ!」と言われたり。

それでも僕は一人の女子がいじめられなくなった事実が

うれしかったし何よりも部活という逃げ道があった。

それに僕はあまり人を信用していなかった。

幼少期に学んだことは僕の思春期を生き抜くためにはもしかしたら

必要なことだったのかもしれない。


部活までの地獄を乗り切った僕はまるで水を得た魚のごとく活き活きとしていたに違いない。

部活では割と周りも避けずに声をかけてくれる。

ふざけあったり一緒に笑いあったりもしてくれる良い奴らが多かった。


吹奏楽部というのは女子の巣窟みたいなものだ。

しかもそのころの女子はそれぞれのグループをつくる。

女子特有のめんどくさいグループ間の抗争や陰口も見ることになった。

少数の男子の中でも性格的になのか女子同士がもめたときには

真っ先に喧嘩の仲裁役として呼ばれた。

こちらからかかわった覚えはないが小学生のころから

代表委員や学年代表などをやっていた(お願いされただけ)ことが功を奏してか

小学校から僕のことを知っている女子からはなぜか信頼されていたらしい。


このころくらいから女子とかかわることが増えた。


つづく・・・

No.8 18/03/30 09:40
名無し0 ( ♂ )

小学校から僕のことを知っている女子からはなぜか信頼されていたらしい。


このころくらいから女子とかかわることが増えた。


以下、続き

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いつものように地獄を乗り切り部活に向かうと

トランペットの女子が声をかけてきた。

「〇〇はいつも優しいよね」

Kさんだ。

僕は内心「僕の何を見てそんなことを言っているのだろうか?」

と思った。

そのころの僕は「人にされて嫌なことはするな」、

この言葉に従って自分を押し殺し

波風を立てぬよう振る舞いながら

淡々とくだらない地獄のような日々にただ耐え忍ぶことしか考えておらず

まさか僕が単純に不平等や理不尽に対して反応することが

人からは「優しい」と評価されることだとは思ってもみなかった。


Kさんに対して不信感も沸いたが

目はまっすぐに僕の目の奥を覗き込むようにぶれなかったので

僕は「ありがとう」と一言、それ以上何も言えなかった。

Kさんは会話を止めず

「もしよかったら今度の休みにみんなで遊ぼうよ!」と誘われた。

初めてだった。

あんなにも周りがかかわるのを避け、いじめに加担する中

Kさんの目は本気だった。

そのころの僕は人を信用する気はなかったが

同時にその誘いに対して悪い気もしなかった。

「計画決めたら送るからメアド教えてよ」と言われ

戸惑いながらも教えた。

その日の部活はなぜかドキドキが止まらなかった。


帰宅後メールに気づき確認してみた。

Kさんからだ。

少しの不安と少しの期待に僕の手はかすかにふるえていた。


「こんばんは。メアド教えてくれてありがとう。

急に言われてびっくりしたよね?

実は後輩のNちゃんが〇〇に相談したいことがあるって言われて

本人がメアド聞く勇気がないから聞いてほしいっていわれたんだ。

Nちゃんの連絡先教えるからNちゃんの相談に乗ってあげてほしいんだ。」


僕の予想はどうやら的外れだったらしいことに気が付いた。

僕は人と一線引いて接したりいつも窓の外を眺めていたり

遠くのほうを眺めながら部室でも一人で過ごすことが多いから

直接は聞きづらかったのだろう。


僕は後輩のNちゃんと連絡を取ることにした。


つづく・・・


No.9 18/03/30 12:07
名無し0 ( ♂ )

遠くのほうを眺めながら部室でも一人で過ごすことが多いから

直接は聞きづらかったのだろう。


僕は後輩のNちゃんと連絡を取ることにした。


以下、続き

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「Kちゃんから聞いたよ。聞きたいことがあったら気軽に聞いてね」


短い文章だったが僕の中では精一杯だった。

そのころの僕は小学生のころとは違い

ぶっきらぼうでもなんでも自分から積極的に

人に話しかけられるほど人と関わりを持とうとしていなかったし

人への興味も薄れていた。

それだけに昨日Kちゃんにメアドを聞かれたときのドキドキは

自分の中でもなんだったのか当時の僕には理解できなかった。


後輩のNちゃんからはすぐに返事が来た。

部活の後輩なのでかなり業務的な内容しか話したことがなく

Nちゃんからの文字は新鮮だった。

「突然聞いてしまってすいません。

実は相談があるのですが文章ではうまく説明できないので次の日曜にでも

K先輩も入れて3人で会って話聞いてもらうことできませんか?」

僕はその時何のことだかわかっていなかったため

3人で会って話を聞くというシチュエーションは考えてもいなかった。

後輩のお願いなので週末に3人で会うことに。

人に興味がないとか信用してないといってもやはりまだ中学生だ。

その日の夜は頭がいっぱいであまり眠れなかった気がする。



あまり深くは考えずに日曜日に会いに行くと

何やらニヤニヤするKちゃんの後ろに小さくなっている後輩Nちゃんがいた。

「よ!おはよー!」

Kちゃんは快活な声で僕に手を振った。

Nちゃんも後ろから「おはようございます、〇〇先輩」と小さな顔をのぞかせた。

Kちゃんのニヤニヤはとまらない。

するとNちゃんが「あの・・・これよかったら帰ってからあけてください。

クッキー焼いたので」

と囁くように言いながら小さなかわいらしいラッピングの施された袋を

手渡された。

「絶対帰ってからですよ!」

なぜか念を押された。


つづく・・・

No.10 18/03/30 16:33
名無し0 ( ♂ )

「絶対帰ってからですよ!」

なぜか念を押された。


以下、続き

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「相談っていってたけど。。。」

話を切り出してみた。

するとKちゃんが「とりあえず今日はプランがあるから!」

そういって駅のほうに歩いて行った。

いわれるがままに電車に乗り、

揺られながら共通の話題である部活の話で

KちゃんとNちゃんは盛り上がっていた。


そういえばはじめてまともに女の子たちと遊ぶ。

学校では制服でしか会わないから私服の彼女たちを見るのはどこか

気恥ずかしくてずっと車窓から流れる景色を眺めていた。

そうこうしているうちに駅に着いた。

そこからもただただ目の前を楽しそうに行く二人を見ながら

とぼとぼとついて歩く。

ついたのは最近出来た大きなショッピングモールだ。

まだ中学生の僕たちには目新しく手軽に大人になったような気分を味わえる場所だった。

日頃人とはかかわりを避け、極力波風が立たないように過ごし、

いじめによる人に対する不信感と自分の置かれた環境への無関心さで

僕にとって女の子たちとショッピングモールに遊びにいくことは

すごく画期的なことだった。

一緒にご飯を食べたりゲームセンターで遊んだりプリクラを撮ったり、

まるで「これは本当に僕なのか?」と思ってしまうくらい

自分とはかけ離れたことのように思えた。


そうこうしているうちに夕暮れ時になり

僕たちはとうとう後輩Nちゃんの相談も聞かずに帰路につくことになった。

僕は気になったので「今日はNちゃんの相談があったんじゃなかった?」

と切り出してみた。

するとNちゃんとKちゃんは笑って

「それはもういいんです!」と言って駆けていった。


「今日は本当に楽しかったです!また遊びましょう!」

彼女たちの笑顔は日が落ちた夜空の下でもまぶしかった。

部活で女子に囲まれていても感じない胸の鼓動を感じながら

僕らは解散した。


帰宅後にNちゃんにもらったかわいらしいラッピングの小さな袋を開けた。

そこには不ぞろいのクッキーと小さな手紙が入っていた。

「今日はとっても楽しかったです。先輩と遊べてよかったです。

伝えたいことがあるので手紙を読んだらメールをください。」

と書かれていた。


つづく・・・

No.11 18/04/02 09:10
名無し0 ( ♂ )

「今日はとっても楽しかったです。先輩と遊べてよかったです。

伝えたいことがあるので手紙を読んだらメールをください。」

と書かれていた。


以下、続き

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当時初めてのことで戸惑っていた僕は

恐る恐るメールを送ってみた。

「今日はありがとう!俺も楽しかったよ。

メールくださいってことだったから送ってみたけどどうしたの?」


返事を待つ時間が長く感じられた。


そうこうしているうちに後輩Nちゃんからの返事が来た。

「メールありがとうございます。

ずっと悩んでって今日は伝えたいことがあったんですけど、

今日遊んでみてとっても楽しかったので嫌な雰囲気になるかもしれないから

伝えるのはやめました。

その代わりこれからもたまに今日みたいに一緒に遊んでくださいね!絶対ですよ!」

メールの最後にはかわいらしい絵文字がつけられていた。

僕はなぜか申し訳ない気持ちになった。



それからというもの相も変わらずいじめは続き

部活も変わらず続いていたころ、

部活内のある女子が別のグループの女子に対して

愚痴をこぼし始めた。

どうやら何かが気に食わないらしい。

愚痴をこぼしていたのはある程度の権力を持っている

次期部長候補だった。

女子というのは自分の置かれた環境で自分が生き延びるための最良の

選択をするらしい。

その場では次期部長候補の意見に賛同するように話を合わせていたのに

いざその場を離れると手のひらを返したように

それぞれ違う意見を口にしていた。

女子はドロドロしている。


次期部長候補の権力で周囲の女子は一気に大きなグループとして

自分たちの意見を正当化し、一人の女子に対する攻撃をはじめた。

それが浮き彫りになるまで時間はかからなかった。

僕は自分がいじめを受けていた分そのような動きには敏感だったのかもしれない。

そもそも次期部長候補の意見は正論ではない。

自分が部活中にふざけてちょっとだけ遊んでいたことを指摘されたのが気に食わなかったのが

ことの発端だった。


間違った意見でも多数派ならば正当化される。

僕はそういう感覚が一番大嫌いだった。



つづく・・・

No.12 18/04/02 12:08
名無し0 ( ♂ )


間違った意見でも多数派ならば正当化される。

僕はそういう感覚が一番大嫌いだった。



以下、続き

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思春期でただでさえ女子が理解できないと思っていた僕にとっては

多数派に一言モノを申すぐらいのことは怖くもなんともなくなっていた。

いじめというのは自分でうまくコミュニケーションが取れないために

周囲を巻き込んだ力を利用して自分を正当化し周囲に自分の存在を認めさせようとする

言わば自己顕示欲の間違った表現方法だと僕は思う。

おそらくいじめる側もいじめられる側もまったく違う次元で自分の存在を保持しようと

しているには違いないのだろうけど。

僕は自分を正当化するために人を傷つけることに対して異常に敏感だったのかもしれない。

小さなころに兄から受けていたいじめや学校でのいじめも根本的には同じだ。

人の弱さを力でたたくことで自分の存在を相手に認めさせようとするのは

まさに「人の嫌なことはするな」という教えに反するのだ。


僕は集団で一人を攻撃する女子のグループに共感を求められたが反論した。

そしていじめっ子と同じ目を向けられた。

僕はこの目が大嫌いだった。

それからというもの吹奏楽部の中でも次期部長候補になびいている女子からは

白い目で見られるようになった。

また、反論できないけど内心は賛成もしていなかった女子は気まずそうに

僕とかかわるのを避けた。

帰り際に校門で数人の女子に呼び止められた。

次期部長候補とその取り巻きの攻撃対象になってしまった女子と数人の友達だった。

「さっきは本当にありがとう」と頭を下げられた・。

正当性がないのに屈服するのは昔に戻るようで嫌だっただけで

誰かの味方とかそういうのではなく単に腹が立ったから反論した。

それなのにとても純粋に感謝されて困ってしまった。


「あーいうの本当に昔から大嫌いなだけだから気にしないで」

そう伝えたが彼女は深々と頭をさげてきた。

「本当に気にしないでいいから」

そう伝えるとようやく頭をあげた。

夕焼けであまり見えなかったが

彼女の頬はかすかに赤く

目は少し潤んでいたと思う。

彼女のまっすぐさがとても印象的だった。



つづく・・・

No.13 18/04/02 15:50
名無し0 ( ♂ )

彼女の頬はかすかに赤く

目は少し潤んでいたと思う。

彼女のまっすぐさがとても印象的だった。



以下、続き

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そのころの僕は以前よりも純粋に異性に興味を示すようになっていた。

いじめが原因で女の子が話してくれる機会が減っていたからか

声をかけられただけでドキドキしたし

かわいい笑顔を見るだけで恋してしまいそうだった。

それはおそらく勘違いなのだけれど。

自分は避けられたりいじめのターゲットになるくらいが

普通なのだから単純に「あの嫌な目」じゃない目をする女の子に

ある種の喜びや期待を抱いてしまうのかもしれない。

ともかく「普通の対応」が僕にとってはまぶしかった。


いじめは長く続いたのだけど

実はいじめの主犯格の取り巻き以外は単純に逆らえなかったり

自分がいじめのターゲットになるのが恐いだけで

特に僕に対する個人的な感情はなかった。

いじめに慣れていた僕も深く落ち込むときもあったので

教室のカーテンを首に巻いて自殺を図ったこともあった。

その時にたまたま教室を通りかかった僕の小学校からの同級生が

真剣にとめてくれたのだけどそれを境にやばいと思ったのか

昔からの同級生の一部からいじめに反対する動きが出てきた。

その動きによっていじめが強まった時期もあったが

徐々に僕の昔からの同級生からその友達、その友達からその友達へと

僕をいじめから守ってくれようとする動きが広がっていった。

しかしながらいじめっ子は反発を強め、

おとなしそうな友達を捕まえて攻撃し始めたことを知った僕は

我慢の限界を迎えた。

「人の嫌がることをするな」この言葉が僕を縛っていた。

自分は我慢できても自分の友達など周りの人間に嫌なことをされるのは

耐えられなかった。

幸いにも僕はいじめによって体重が増え、

体格もよかったし、人に手を出したことこそなかったものの

力は人一倍強かった。

本当は手を出したくはなかったけれどこの時は少し違った気がする。


つづく・・・


No.14 18/04/02 19:02
名無し0 ( ♂ )

力は人一倍強かった。

本当は手を出したくはなかったけれどこの時は少し違った気がする。


以下、続き

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いじめっ子はまたおとなしい子を捕まえて攻撃をしていた。

そこに普段とは違う顔つきで走りこむといじめっ子は驚いた顔をして逃げて行ったけれど

すぐに捕まえて思いっきり首に腕を回しめいっぱいの力でヘッドロックをした。

いじめっ子は面食らったのか必死に「ごめん!もうしないから!本当にしない!

お願いだからやめてくれ!」と叫んでいた。

僕はさらに力を加えた。

彼の顔は真っ赤になってきた。

ふと昔の記憶がよみがえった。

「意外と簡単に人を殺すことができそうだ」

僕は「ほんの少しは人の痛みを知れ」との思いでさらに負荷をかけた。

彼は野球部でそこそこガタイがいいのだが悶え始めた。

そこではじめて力を緩めた。

彼はその場に崩れ息絶え絶えに「もうしないから許して!お願い。ごめんなさい」

と今にも消え入りそうな声で言った。

その日を境にいじめは少しずつなくなっていき

今までかかわってこなかった人間が急に「あいつも懲りたんじゃない?」

とか「自業自得だわあいつ」などと言っていたのが印象的だった。

人は何かしらの罪を知らないうちに平気な顔をして犯す生き物だ。

いじめ主犯格はまだ自覚があるが自分に軸がなく自覚もない適当なその他大勢で

犯す罪は厄介だ。


部活で相変わらずどうしようもないくだらないいざこざが女子の間で横行していた。

先日僕が正論を盾に一人の女子をかばったが故にその子含め数人が何十人いる部活の

輪から孤立した。

毅然とした態度で正論を言って孤立する羽目になってしまった張本人であるUさんは

申し訳なさそうにふるまっていた。

孤立した数名の中には初めて後輩も入れて遊んだメンバーの一人であるKちゃんもいた。

Kちゃんは正義感が強くUさんの味方だった。

いじめられた経験がある僕は孤立した中の唯一の男子だった。

不当な非難を浴びることがどういうことか知っていた僕は

「みんなを守らないと!」っと熱くるしい正義感を抱いていた。


つづく・・・

No.15 18/04/04 13:49
名無し0 ( ♂ )

不当な非難を浴びることがどういうことか知っていた僕は

「みんなを守らないと!」っと熱くるしい正義感を抱いていた。


以下、続き

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部活の孤立問題もひとたび学年を跨げば話は変わった。

僕は当時ひそかに音大に行って将来は音楽をやっていこうという夢があったため

人一倍隠れて練習をしたりプロの演奏会を聴き、音楽に没頭していたこともあり

技術や知識の面で後輩や一部の同学年の部員からは一目を置かれていた。

先輩からは少し目をつけられていたが僕はあまり気にしていなかった。

次期部長候補は先輩には気に入られていたため同学年や後輩には常に偉そうだった。

後輩たちはこっそりと僕たちの味方になってくれていた。


先輩が卒業し、次期部長が部長になった。

同時に力関係も変わり同学年はみなパートリーダーなどそれぞれの

役割が決まり、後輩たちは部長よりも孤立組を支えてくれるようになった。

部長派閥対孤立組の関係も時がたつと収束し僕らは穏やかに部活最後の夏の大会に向けて

練習をはじめた。

夏休みに差し掛かり僕たちは朝から夕方まで一生懸命練習した。

その中でも依然孤立していた僕たちと僕たちを慕ってくれていた後輩たちとは

必然的に多くの時間を一緒に過ごすことになり自然と仲良くなっていった。

Uさん、Kさん、後輩3人、僕のメンバーで部活終わりに校門で暗くなるまで話したり

休日には楽器屋さんに部活で使う備品を購入しに出かけたり、

僕たちは男女間や年齢など気にしなくなっていた。


こうして迎えた夏の大会、結果は残念だけど上位入賞は逃した。

月日も過ぎ11月に行われた最後の演奏会は涙と笑顔にあふれていた。

中学という大切な3年間に様々な感情を経験し受け入れ気づかないうちに

僕たちは成長していた。

高校受験を迎えそれぞれが自分たちが選んだ進路へ進んでいく。

中学ではつらいこともたくさんあったけれど

そのおかげで仲良くなれた人もたくさんいた。

それだけにみんなとの別れは少し寂しかった。


僕は音大に向けてまずは高校でアルバイトをしながら

楽器のレッスンに通うことをすでに決めていた。

多くの同級生が地域の高校を受験するなか僕は遠くの高校を受験した。


つづく・・・

No.16 18/04/04 14:31
名無し0 ( ♂ )

僕は音大に向けてまずは高校でアルバイトをしながら

楽器のレッスンに通うことをすでに決めていた。

多くの同級生が地域の高校を受験するなか僕は遠くの高校を受験した。


以下、続き

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無事受験も終わり、結果を待つのみとなった段階で

吹奏楽部からお別れ会兼打ち上げのお誘いがあった。

僕は数少ない男子部員に声をかけ一緒に予定のお店へ向かった。

正直、部活メンバーと私服で会うのは気恥ずかしかった。

Uさん、Kさん、後輩3人とほんの数回楽器屋さんに行った程度である。

みんなどんな格好をしてくるのか、僕はどんな格好をしていけばかっこ悪くないか。

こういう時になって急に男女を意識してしまう自分が恥ずかしいけど

15歳とはそういうものだ。


お店には60人程度の女子とほんの数名の男子が集まった。

顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。

みんな普通のことなのだろうけど

この時の女子はみんな少し違って見えた。

人数的にもお店は大混雑という雰囲気だったことと恥ずかしさで

僕はその場で立ち尽くしてしまった。

そこに後ろから「何突っ立ってるの?こっちこっち!!」と

明るく無邪気な声が聞こえた。

振り返ってみるとそこにはUさんとKちゃんがいた。

二人ともいつになく満面の笑みを浮かべはしゃいでいた。

「か、かわいい。。。」

心の中でそう思った。

僕は私服姿の二人を前に動けなかった。

次の瞬間手首をつかまれ引っ張られた。

「早く!こっちだってば!」

と無邪気に笑うUさん。

僕の心臓ははちきれそうだった。

連れていかれた先にはいつものメンバーと

Kちゃんと同じくトランペットパートの男子が一人いた。

その時は何も思わなかったが配席は決まっていなかったためKちゃんか誰かが気を利かせて

いつものメンバーと男子一人を呼んで席を取っておいてくれたのではないか

といまになっては思っている。

Kちゃんは普段から活発で周りを明るくさせる元気な女の子だが

Uさんはどちらかというと口数が少なく、時折その口から放たれる鋭いツッコミは

周りから「鬼だぁ(笑)」とからかわれるくらいだった。

しかし、そんなUさんを僕は「お茶目だな」と思っていた。


つづく・・・

No.17 18/04/04 16:36
名無し0 ( ♂ )

Kちゃんは普段から活発で周りを明るくさせる元気な女の子だが

Uさんはどちらかというと口数が少なく、時折その口から放たれる鋭いツッコミは

周りから「鬼だぁ(笑)」とからかわれるくらいだった。

しかし、そんなUさんを僕は「お茶目だな」と思っていた。


以下、続き

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Uさんのそんな明るく陽気な姿を初めて目にした僕は

Uさんから目が離せなくなっていた。

僕は恥ずかしさで女子とうまく話せなくなっていたが

トランペットパートの男子O君はコミュニケーションがすごく上手だった。

お姉さんがいることもあり大勢の女子に囲まれていても普通に話していた。

「僕には無理だなぁ」と眺めながら飲みものを飲んでいた。

お別れ会もそろそろ終わりに近づいてきていた。

そこにUさんから「〇〇!記念に写真撮ろう!高校も違うかもだし!」と

声をかけられた。僕は驚きとうれしさと恥ずかしさで固まってしまった。

後で写真を確認したのだが、硬直した僕の横でUさんは満面の笑みだった。


受験の結果発表の日、

張り出された紙に学校別に合格者の番号が並んでいる。

僕は第一希望の学校の合格者一覧を確認した。

そこには僕の番号はなかった。

そもそもだが僕は学校のレベルやカリキュラムではなく

自分がバイトができてレッスンができる環境を整えられるかどうかをベースに

志望校を選んでいた。

第二希望の学校、第三希望の学校もチェックしたがそのどれにも

僕の番号は乗っていなかった。

2、3回見てみたけれどそこには僕の番号はなかった。

唖然としていると先生が大きな声で

「番号が見つからない奴は地元の高校の一覧にも目を通しておけよ!」

というのが聞こえた。

地元の高校の合格者一覧を見てみた。

そこには僕の番号があった。

提出した志望校では志望者数が多ければ受験基準合格ラインを超えている者の中で

通学距離が遠いものから順にその周辺地域の高校で定員割れしている学校に

割り振るシステムをとっていたことをあとから知った。

こうして僕は志望していた高校と比較すると自由度の低い、

地域の公立高校に志望してないが受かってしまったのだ。

しばらく混乱していたがひとまず「合格」の味を味わった。


つづく・・・

No.18 18/04/05 10:18
名無し0 ( ♂ )

地域の公立高校に志望してないが受かってしまったのだ。

しばらく混乱していたがひとまず「合格」の味を味わった。


以下、続き

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こうして晴れて高校生となった僕は

制服の採寸の日、思いもよらぬ光景を目の当たりにする。


地域の高校は山のふもとにあり生徒数およそ1500人という

大きな高校だった。

オリエンテーションや教科書の購入、

身体測定に制服の採寸。

地域の高校だから同じ中学だった友達もたくさんいた。

おそらく100人ぐらいは同じ中学出身者だ。

ちらほらとなじみのある顔を見かけながら

制服の採寸まで終えて校舎から出てきた僕は

聞き覚えのある声を耳にした。

女の子の声だ。

僕はこの声をはっきりと覚えていた。

「〇〇!記念に写真撮ろう!高校も違うかもだし!」

この言葉、響きは頭から離れなかった。

Uさんの声。

思わず当たりを見渡した僕はそこに確かに満面の笑みを浮かべながら

友達と話すUさんを見つけた。

思わず声をかけたくなったが軽く声をかけるのは恥ずかしく、

そもそもUさんは友達と楽しそうに話している途中だった。

校舎と校舎をつなぐ渡りろうかにいた僕からは少し離れた位置にいたので

声をかけるのはグッとこらえ通り過ぎようと思った。

「Yじゃん!同じ学校だったんだ!!!」

はっきりとした声でUさんは僕に声をかけてきた。

「Uさんもここだったんだ!」

一言返すのが精いっぱいだった。

「いまね、友達にあったから話してたところだったんだ!」

Uさんはそういうと屈託のない笑顔で僕のことを見てきた。

僕はそのUさんの笑顔とまっすぐな目つきに吸い込まれそうになった。

「っじゃまぁ話の邪魔になっちゃいけないからいくよ!またね!」

そういって僕は小走りでその場を去った。

去り際に「うん、また学校で!」

そうUさんははっきりとした声で言った。

この声にまたドキッとした僕は振り返ることができなかった。



つづく・・・

No.19 18/04/05 11:48
名無し0 ( ♂ )

去り際に「うん、また学校で!」

そうUさんははっきりとした声で言った。

この声にまたドキッとした僕は振り返ることができなかった。



以下、続き

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あれから春になり入学式も終わり

無事に授業も始まった。

中学のころはいじめも経験したけれど

結果的に中学3年のころにはかかわってくれる同級生も増え

先生の推薦で生徒会長にもなった。

高校ではその影響で同じ中学出身の子にはすごく友達のように声をかけられた。

僕は友達という言葉があまり得意ではないので

あえてそう呼ばないようにしている。

ただ周囲のくだらないやりとりやうわべだけのやりとりには

うんざりしていた僕は授業中以外はずっと音楽を聴いて過ごすようになった。

僕はできるだけ一人になりたかった。

その方が気が楽だった。

普段使われない校舎の渡り廊下が昼休みのお気に入りの場所だった。

そこに座って音楽を聴きながらお弁当を食べてゆっくりするのが僕は好きだった。

音楽は僕の友達だった気がする。


高校では以前の計画通りバイトと楽器のレッスンを受けるために部活には入らなかった。

それもあってか部活の仲間同士で集まったりしている同級生を横目に

一人孤立することが増えた。

それが楽だったが同時にさみしくも感じていた。

そのたびに音楽を聴いた。

当時はセンチメンタルに浸っていたのか恋愛に関する曲を聴いては

一人でいろいろと物思いにふけっていた。

昔の初恋の時に感じた胸を締め付けられるような思いや

その感情に似たドキドキやときめいた瞬間の思い出があふれ

またそれによって胸が締め付けられた。

高校生にもなると男女で親しげに話している二人組や

意外とカップルも目に入るようになった。

「あぁ、なんかいいなぁ~」

漠然と感じるこの感情は高校生の僕にはとてもくすぐったく

また僕の中で少しずつ膨らんでいった。

10代の男女の感情の変化と成長はとてもやっかいだ。

僕の頭にも浮かんでくる声があった。

その声が浮かぶたびに無邪気な笑顔やまっすぐな瞳が

僕の中に焼き付いて離れない。

「...Uさん部活入ったのかなぁ。また吹奏楽部かなぁ。」

そんなことをふと考えていた。


つづく・・・

No.20 18/04/05 14:54
名無し0 ( ♂ )

その声が浮かぶたびに無邪気な笑顔やまっすぐな瞳が

僕の中に焼き付いて離れない。

「...Uさん部活入ったのかなぁ。また吹奏楽部かなぁ。」

そんなことをふと考えていた。


以下、続き

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高校生活は思ったよりも平凡で

授業以外で誰かとかかわることもなく

時が過ぎるのをただ真面目においかけるだけだった。

次第に生活の中で音楽が大きくなっていきうるさいくらいに

僕の耳にはUさんの声が響いていた。

無心に勉強し無心にバイトをし無心に音楽と向き合っていたはずなのに

僕の頭にはUさんの無邪気な笑顔が浮かんでいた。

「Uさん、同じ学校だったけど何組だっけなぁ…」

いろいろ考えていると授業中はぼ-っとしてしまっていた。

授業が終わると廊下に出ては一人窓から外を眺めていた。

校舎を歩くときは周辺を見渡し、

ほかのクラスの教室の前を通るときは窓ガラスごしに

Uさんがいない覗くようになっていた。

そんな日が何日も続くようになったある日

お昼ご飯を食べにいつもの渡り廊下に向かっていたら

教室からちょうど出てくるUさんを見つけた。

8組だった。

僕はうれしくなりとっさにUさんに声をかけた。

「Uさん!Uさんって8組だったんだね!」

するとUさんは驚いた顔で

「Y!そうだよ。8組!Yは?」と聞かれ

「4組だよ!」と答えると

「そっか!またね!」と快活に答えると

小走りで売店のほうに走っていった。

僕はしばらくその場で立ち尽くしていた。

大げさに聞こえるかもしれないけれど

その時は確かにすごくうれしくて恥ずかしくて

心臓の音が自分でうるさいくらいに聞こえた。


僕はあまり使われていない校舎の渡り廊下で一人ご飯を食べながら

音楽を聴いていた。

その日はそよ風が気持ちよかった。

僕はただUさんに再びあえて舞い上がっていた。

「あの声!」

僕はUさんに名前を呼ばれるのがむずがゆかった。

Uさんは部活のころからそうだったがド直球だ。

ほかの女子は態度を変えうわべだけのやり取りも多かったけど

Uさんだけは視線を逸らせないぐらいにまっすぐなのだ。

気づけばUさんのことばかり考えていた。


つづく・・・

No.21 18/04/10 18:06
名無し0 ( ♂ )

Uさんだけは視線を逸らせないぐらいにまっすぐなのだ。

気づけばUさんのことばかり考えていた。


以下、続き

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教室ではいつも楽しそうに男女が話している。

女子のグループ、男子のグループ

男子と話しをする女子。。。

そこには様々な男女の楽しそうな時間が流れていた。

僕はまるで自分がその世界に属さない人間であるかのごとく

ぼーっと宙を見つめながら音楽を聴いて

ただ過行く時間を消化した。

「Uさんは何してるかなぁ」

ふと頭に浮かぶのはいつもこんなことだった。


いつものようにイヤホンを耳にさす。

耳に流れる恋愛曲の歌詞の意味が少しずつ少しずつ

日を追うごとにその色を増していった。

学校の帰り道、

バイトの休憩、

夜、布団に入ってから、

毎日毎日時間さえあれば歌を聴くようになった。

それらの恋愛曲は僕の日常を埋めていった。

僕がうまく言葉にできない心の奥底に眠る感情を

まるで心の中を覗き見たかのように代弁してくれる、

そんな恋愛曲が僕の胸の高鳴りをより増幅していた。

「Uさんはどんな音楽を聴いているだろう」

「どんなことにハマってるんだろう」

「好きな人はいるのかなぁ」

「…いたらやだなぁ…」

「俺のことどう思ってるかなぁ」

自分では抑えきれないほどの思いが

胸を突き破りそうで必死に耐えた。

「この気持ちをUさんにさらけ出せたらどんなに楽だろう」

日に日に募る思いを何とかしたかった僕は一大決心をした。

「次、学校で見かけたら声をかけてちゃんと伝えよう!」

僕はもう我慢できなかった。

初恋のころのように気持ちを伝えられないままお互い話さなくなるのは

もう嫌だった。


頭の中で何度も何度も何度も何度もシミュレーションをした。

頭から煙がでそうなくらいシチュエーションを創造した。

「もしフラれたらどうしよう…」

「もし今までのように話してくれなくなったらどうしよう」

「もしUさんに好きな人がいたらどうしよう」

考えれば考えるほどに僕の胸は締め付けられていった。


「いまのように僕に向けてくれるまっすぐな視線を向けてくれなくなったらどうしよう」

そんなことを思いながらも僕は布団にもぐりこんだ。


つづく・・・

No.22 18/04/14 14:13
名無し0 ( ♂ )

「いまのように僕に向けてくれるまっすぐな視線を向けてくれなくなったらどうしよう」

そんなことを思いながらも僕は布団にもぐりこんだ。


以下、続き
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今日は普段と違っていた。

僕の気持ちは高揚していた。

Uさんにあってしまったら気持ちを伝えなくてはいけない。

伝えてしまいたい気持ちと伝えたらこれからどうなるのかという不安が

入り交じり、まるでジェットコースターの落下寸前のような感覚が僕を悩ませた。

廊下を歩くときは普段よりもあたりを入念に見渡してしまっていた。

その時は意外と早く訪れた。

3時間目が始まる前、

僕はトイレに向かって歩いていた。

すると教室からつややかな黒髪ロングヘアの女の子が出てきた。

その女の子はこちらを向くなり輝く笑顔を僕に向けた。

「Y!どこいくの?」

Uさんだった。

僕の心臓は急激に鼓動を速めた。

心臓をまるで誰かに握られているような感覚になった。

「えっと、あ!そう!トイレに!」

思わず普通に言ってしまった。

「そっか!ごめんごめん!行ってらっしゃい!」

そういってUさんは軽く手を振った。

僕たちはそのまますれ違った。

「だめだ!ちゃんと言わないと!この機会を逃したら絶対に言えない気がする!」

そう思った僕はもう一度振り返りUさんを呼び止めた。

「あっ!Uさん!」

声をかけた僕を振り返って見たUさんはまた笑顔で

「ん?どうしたの?」

と答えた。

「今日の昼休み南校舎の渡り廊下にいるから来て!」

僕はふり絞るようにそう伝えると固まってしまった。

Uさんは目を丸くして一瞬止まった後

「わかった!それよりトイレ大丈夫?」

Uさんに指摘されるまでこの一瞬の間トイレのことなど完全に

頭から消え去っていた。

Uさんは僕の記憶を飛ばすぐらいパワフルなのだ。


あとでトイレに行って鏡を見たら僕の顔は緊張しすぎで青白かった。

Uさんがトイレを心配してくれたのもうなずける。

僕はしばらく恥ずかしさで顔を上げられなかった。


つづく・・・

No.23 18/07/13 18:33
名無し0 ( ♂ )

>> 22 あとでトイレに行って鏡を見たら僕の顔は緊張しすぎで青白かった。

Uさんがトイレを心配してくれたのもうなずける。

僕はしばらく恥ずかしさで顔を上げられなかった。



以下、続き

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昼休みまでの授業の内容はまったく頭に入ってこなかった。

僕の頭の中で「とうとう言ってしまった!!昼休みどうしよう(汗)」

という焦りが延々とループする。


昼休みいつも通りイヤホンを指して一番よく聴いている恋愛曲を流しながら

いつもの人気のない渡り廊下をめざす僕。

心臓の鼓動がうるさすぎて必死に歌詞に耳を凝らして自分を鼓舞した。

渡り廊下には先についた。

一曲聴き終えてしまった僕はイヤホンをポケットにしまい込み

足の震えを抑えながら両手に力を込めた。

そうこうしているうちにUさんが小走りでやってきた。

「どうしたの?」

Uさんは相変わらずまっすぐで屈託のない笑みを浮かべていた。

「あのさ、ちょっと聞いてほしいことがあって・・・」

やっとの思いで絞り出した声はかすかに上ずっていた。

「ん?」

表情を変えずにただ眼を丸くして僕の次の言葉を待つUさん。

「その、前からずっと思ってたんだけど・・・」

一瞬にして空気が変わり静寂が二人を包んだ気がした。

「ずっと前から好きでした!」


・・・とうとう言ってしまった。

するとUさんが一段と大きな丸い目を向けながら少しほほを赤らめて

「・・・で?」

と聞き返した。

僕はその勢いのまま想いをぶつけた。

「もしよかったら僕とお付き合いしてください」

僕は言い切ったと同時に足の震えで立っているのが精いっぱいだった。



「はい」


少し顔を赤らめたUさんはいつもの満面の笑みと少しうるんだ眼で

僕の前に立っていた。

僕は彼女の優しい「はい」の言葉を聞いた瞬間

視界が真っ白になり震えた足で転びそうになった。

いま思い出しても恥ずかしいがあの時のあの一瞬は一生忘れない。


僕らは付き合うことになった。


つづく・・・

No.24 18/07/14 14:12
名無し0 ( ♂ )

>> 23 僕は彼女の優しい「はい」の言葉を聞いた瞬間

視界が真っ白になり震えた足で転びそうになった。

いま思い出しても恥ずかしいがあの時のあの一瞬は一生忘れない。


僕らは付き合うことになった。



以下、続き

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やっとの思いで告白したのだが

浮かれ気分の中少しずつ現実を理解し始めた僕は

「・・・付き合うって具体的にどうするんだ?」

という疑問にぶつかった。

今までUさんとは小学校からずっと一緒だし吹奏楽部でも友達として

しか接したことはなかった。

それが付き合うということによって関係性がどのように変化するのか。

初めてすぎて僕には想像がつかなかった。

とりあえず今までと明らかに違うのは

僕がUさんのことが好きでUさんもその事実を受け止めてくれたということ。


それからというもの僕らは学校で会えばお互い目で合図を送ったり

メールで話をした。

僕は恥ずかしかったがそこは堂々とUさんを彼女だと言いたかったのだが

Uさんは学校ではみんなに隠したいと言い出した。

Uさんの希望ならと付き合っていることはだれにも明かさずひそかに

二人だけの秘密を共有することを楽しんだ。


Uさんは高校でも吹奏楽部に入ったため毎日部活があり

僕らは校内で目を合わせることと携帯でやりとりをする以外

二人で過ごす時間が作れなかった。

僕はバイトや楽器のレッスンがないときは彼女の部活が終わるまで待った。

あたりはすっかり暗くなり自転車で二人帰りながら少しの時間を共有した。

彼女の家は学校からさほど遠くなくすぐについてしまうため僕らは家の近くの

駐車場で立ち話をしてできるだけ足りない時間を埋めようとした。

ほかのカップル達が学校で一緒に話したりしていることを

僕らは二人だけの場所で楽しんだ。

夕方の楽しいひと時はすぐに過ぎてしまう。

学校が終わる時間を過ぎて帰宅が遅いと親も心配するということもあり

僕らはゆっくり話すことはできなかった。

それでも月に2、3か月に1度くらいは休日に会える日もあった。

僕らはうぶだった。



つづく・・・

No.25 18/07/16 16:43
名無し0 ( ♂ )

>> 24 僕らはゆっくり話すことはできなかった。

それでも2、3か月に1度くらいは休日に会える日もあった。

僕らはうぶだった。



以下、続き

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こうして僕らにとってはこっそりと二人の関係を確かめあいながら

お互いの好意を確認していく日々が楽しくて仕方がなかった。

僕はただUさんの屈託のない笑顔とまっすぐなまなざしを僕にだけ向けてくれることが

とてもうれしかったしそれだけでいいと思えた。

それらを大切に大切にまるでとても繊細な美術品を壊さないように持ち運ぶかのように

デリケートに扱った。

二人の関係に進展はなくただ一回一回の彼女との時間を精一杯楽しむことで

今ある幸せをかみしめていた僕は少しずつ彼女に対して「彼女が喜ぶこととは何か?」を

意識していた。

付き合うという経験をしたことがなかった僕は僕なりに精一杯彼女を大切にしたい一心で

インターネットや雑誌などから情報をかき集めた。

彼女に僕のことを好きになってほしいというよりも今思えばただ嫌われたり彼氏として失敗するのが

怖かっただけなんだろうなと思う。


月日は流れ進路の季節。

高校3年にもなると進路のことや部活の最後の大会などみんなあわただしかった。

彼女もまた部活の大会などで忙しく夏の大会が終わるまではしばらくゆっくり会うことはなかった。

大会にはこっそり見にいったし大会が終わった後は二人で夏祭りにも出かけた。

僕は勝手に距離が縮まっていると思っていた。

夏祭りの次の週のある夜、僕たちこっそり僕のバイト終わりに

彼女の家の近くの神社で待ち合わせをした。

夏祭りの時の話などで盛り上がった。

彼女の家の近くを流れる川沿いに電車の線路があり、

その脇を二人で話しながら歩いた。

時間は23時前だったと思う。

月明りと電灯だけが僕たちを照らした。

「っじゃもうそろそろ親も心配するかもだから帰ろっか」

僕はそう言って彼女もうなずいた。

「また学校で!」

彼女がそういったのですかさず

「夜道くらいから気を付けて帰ってね!」

僕はそういって彼女とわかれた。

この夜が終わってほしくないと思いなが僕は帰宅した。


次の日から僕らは話さなくなった。。。




つづく・・・

No.26 18/07/17 12:51
名無し0 ( ♂ )

>> 25 「夜道くらいから気を付けて帰ってね!」

僕はそういって彼女とわかれた。

この夜が終わってほしくないと思いながら僕は帰宅した。


次の日から僕らは話さなくなった。。。



以下、続き

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昨日の僕たちはうまくやっていたと思う。

楽しく話をして二人だけでこっそりと夜に待ち合わせをして

月の光に照らされながら散歩をした。

彼女は笑顔だった。

なのになぜ今日は打って変わって一切メールの返事がないのか。

いつもなら廊下を歩くとき教室のほうを眺めては8組を通る時には

Uさんも決まってこちらを眺めていたし目が合っていた。

今日はまるで彼女には僕の姿が見えていないような

そんな気すらした。


僕は気になって仕方がなかった。

彼女にも何度か声をかけようと探したりメールをしては見たものの

すれ違いばかりでなかなか会えず、

どうして様子ががらりと変わったのかたずねようにもできなかった。

僕らはどうなってしまったんだろう。

僕が何かしてしまったのか、彼女を怒らせてしまったのか、

はたまた彼女が別に好きな人でもできてしまったのか。。。

僕にはわからなかったがそんなことばかり考えてしまって

勉強にもバイトにも楽器のレッスンにも全く身が入らない。

夜もあまり寝られない日々が続いた。

全く会えない日、まったく話せない日は今までもたまにあった。

僕たちは周りに付き合ってることをばれないように隠していたからだ。

でもメールは授業の間や学校が終わった後など暇さえあれば連絡を取っていた。

しかし今回は様子が違った。

一か月ほどそんな日々が続いた。

ある日、彼女から突然電話がかかってきた。

「なんでこんな風になってるかわかる?」

彼女はそうきりだした。

「正直わからない。」

僕には見当もつかなかった。

すると彼女はつづけた。

「そうだよね、、、あのさ、今度の日曜日話したい事があるからあけといてほしいんだけど・・・」


彼女と日曜日に会って話す約束をした。

彼女の悲しくどこか寂しげな声が僕の耳から離れなかった。



つづく・・・

No.27 18/07/17 18:35
名無し0 ( ♂ )

>> 26 「そうだよね、、、あのさ、今度の日曜日話したい事があるからあけといてほしいんだけど・・・」


日曜日に会って話す約束をした。

彼女の悲しくどこか寂しげな声が僕の耳から離れなかった。



以下、続く

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約束の日がくるまで僕はいてもたってもいられなかた。

何をどう考えてもその当時の僕にはなぜそんな風になったのか

皆目見当もつかなかった。

日曜日がくるまで生きた心地がしなかった。


日曜日の昼に僕らが通っていた中学校の近くにあったファミレスで

会うことになった。

僕らはそれまで一度も二人でファミレスにい行ったことがなかった。

なんだか不思議な感覚だった。

高校に入る前から気になっていてやっとの思いで告白をしてから

付き合ったのは約2年。

その間一度も二人でファミレスにすら行ってないんだから。


僕は緊張していた。

これから何を言われるのか、あの時から彼女の態度が変わってしまった原因がわかるのか、

不安は募った。

二人で席に着くなり彼女の笑顔は引きつていた。

「いきなりだけどどうして私が話さなくなったかわかる?」

彼女はこう言って僕の目の奥を覗き込むようにしてみた。

僕は一気に心臓をキューっとつかまれたような気がした。

「わからないけど、あれから何か怒らせるようなことをしてしまったのか

気に障るようなことを言ってしまったのか、

とにかく何かをしたんだと思う」

僕はそう言って恐る恐る彼女の顔を見た。

彼女はやっぱり悲しげな顔をしていた。


「このまえ夜に会った日、バイバイするときに言ったよね?

「夜道くらいから気を付けて帰ってね!」って。

女の子がいくら慣れてる道だからって夜は怖いし言われなくても

気を付けてるのにそんなこと言われたら帰るとき誰か襲ってこないかとか

すごい怖かったんだから!」


僕は心臓をナイフで一突きされたような鋭い痛みを心に感じた。


「そうだったんだ。そんなこともわかってあげられなくてごめん。

気遣ったつもりが全く正反対だったね。」


僕はそれから黙り込んでしまった。

自分なりにいろいろ考えたことが正解にならないこともある。

彼女がそう思ったならそうなのだ。

僕は彼氏失格だ。


つづく・・・

No.28 18/07/18 14:43
名無し0 ( ♂ )

>> 27 自分なりにいろいろ考えたことが正解にならないこともある。

彼女がそう思ったならそうなのだ。

僕は彼氏失格だ。


以下、続く

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気遣ったつもりだった。

この2年弱浮かれていた。

彼女と付き合えたことがただうれしくて自分が認められたような気になっていた。

彼女が喜ぶことを不器用なりに考えて行動していたつもりだった。

結局は自分が傷つきたくない、失敗したくない、いい彼氏でいたい、

そういったエゴだったのかもしれない。

彼女を気遣ったはずの言葉は彼女を怖がらせていた。


「あの夜帰ってからその言葉が引っかかってた。

もう私たちも進路のことも考えないといけないけどこれから

どうしようと思ってる?」

彼女はつづけた。

「私は他県の専門学校で楽器を作る職人になるための勉強をしようと思ってる。

Yは?音楽勉強するって言ってたけど・・・」

僕も他県の音大に行くつもりをしていたのだけれど

進路の相談をした結果楽器の先生から海外で楽器を学ぶことを打診されていた。

「俺は海外の音楽学校に行くかもしれない。」


彼女は「海外かぁ・・・遠いね。」

そういうと黙り込んでしまった。


彼女が他県の専門学校に行くことをその時はじめて知ったけど

僕はUさんとなら遠距離もこの先なんとかやっていけると思っていた。

それぐらいUさんのことを好きだった。


「日本にいようが海外にいようが遠距離なんだよね。

これから私やっていける自信ない・・・だって会いたくなっちゃっても会えないじゃん」


彼女の目はうっすらとうるんでいた。

彼女の絞り出す声に心をえぐられているような気分だった。


「これからどうしようか・・・俺らもう無理なのかなぁ・・・」

僕は涙を必死にこらえた。

「仕方ないね。Uさんが会いたいってなったときにそばにいてあげられないし」

僕はなんだかパンクしたタイヤのようにぺしゃんこになっていた。

「お互い進路に専念するのが正解かも」

Uさんはそういうと気丈に笑って見せた。

「もし別れても縁があればいつかまた会えるかな?」

僕はそういうと

「うん」

と彼女も優しく微笑んだ。


その後二人で食べたポテトはやけにしょっぱかった。



つづく・・・

No.29 18/07/18 15:34
名無し0 ( ♂ )

>> 28 「もし別れても縁があればいつかまた会えるかな?」

僕はそういうと

「うん」

と彼女も優しく微笑んだ。


その後二人で食べたポテトはやけにしょっぱかった。



以下、続き

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思えば僕の高校生活の糧はUさんだった。

Uさんと別れてからは何もかもがどうでもよく感じられた。

それでも進路という未来はやってくる。

僕はそれまで以上に進路に向けて自分を追い込んだ。

海外で音楽を学ぶために睡眠時間、起床時間も管理して

音楽と英語の勉強に注力した。

音楽、英語、バイト、それらを取りのぞいたら僕にはもう

何も残らないぐらいそれ以外の要素がUさんで埋め尽くされていた。

頑張ってUさんとは友達として接したけれど

なんともしっくりこないのだ。

Uさんと友達に戻るのはいつまでもなれなかった。


受験も終わり僕は海外の大学に出願し、

卒業式も終わった。

Uさんとはあれ以来挨拶程度しか話をしていない。

あんなに好きだったUさんとのことは忘れられない。

僕の中でUさんは大切な人だった。


アメリカの大学は入学が6月だった。

そのため卒業後も渡航まではずっとバイトや楽器の練習の日々だった。

留学はお金がかかるものだと思いがちだがそうでもない。

計算したら県外で一人暮らしをしながら大学に通うのとそう変わらない額なのだ。

僕の家庭は決して裕福ではなく

なんなら父親は僕が高校1年の時に定年退職していたため

バイト代で携帯代もレッスン代も楽器の備品費用も留学のためのスーツケースや

ノートパソコンも全部まかなっていた。

そのころにはある程度自立していた僕にとって海外に出ることは

決して寂しいことだとは思っていなかった。

僕は一人で準備を進め最終日前日も特に変わらぬ一日を過ごした。

家族で何かをするわけでもなくただ淡々とスーツケースに荷物を準備する。

家の老朽化も進んでいたため建直しを検討していた親に「もう自分の荷物も

全部まとめているものだけ残して後は捨てて片付けて行ってね」と言われた。


出発日前夜、

趣味で買ったギターなどはすべて兄に譲り

バイトの初給料で買った折り畳み自転車と段ボール一個を残し僕は僕の痕跡をすべて捨てた。


つづく・・・

No.30 18/07/30 16:29
名無し0 ( ♂ )

>> 29 出発日前夜、

趣味で買ったギターなどはすべて兄に譲り

バイトの初給料で買った折り畳み自転車と段ボール一個を残し僕は僕の痕跡をすべて捨てた。


以下、続き

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手元にはスーツケース一つと手荷物のリュック。

家にはとてもこれから大学に通う頃の年代の青年の持ち物とは思えないほど

少ない自分の持ち物だけを残した。

僕には何も残っていなかった。


当日の朝いつも通り一人で起きて一人で朝食を食べ、

一人で荷物を持ちまるで自分の家を捨てるかのような覚悟で

家を出ようとしていた。

僕が出発の寸前まで家族は寝ていた。

ギリギリになって母親だけが起きてきて一言「気を付けていっておいでね」と

いわれた。

それまではまるで自分はこの世界に一人きりなんだと思ってしまっていたほど

孤独感に日々さいなまれていたのだけれど、

たった一言母親の送り出す言葉に初めて少し「家にいたい」と思えるほどの

ぬくもりを感じた。

生まれてから今までろくに親のありがたみを感じたことはなかったし

兄弟もどちらかというと邪魔な存在でいつも「弟」という呪縛に縛られていた

そんな気でいた。

兄が親の言うことを聞かなくても放っておかれていたが

なんで自分だけ怒られたりなんで自分だけ兄の嘘で自分のせいでもないことに

罪悪感を感じ、なんで自分だけ兄や周りの人間にいじめられるのか、

親を含む大人をはじめ、自分以外の人間を拒絶してできるだけ穏便に日々を過ごしていた僕にとって

彼女という存在は大きかったがその彼女さえも失った今、

自分はまるで不幸中の不幸を生きている寂しい誰にも必要とされていない人間で

友人と呼ぶような人間や周りの大人が自分に親しくしてくれたり優しくしてくるのは

その人たちにとって都合がよく、僕は使われている、都合のいい駒であればいいと

そんな卑屈なねじ曲がった考えをしていた。

世間に対する恨みや憎しみのような感情も自然と持っていて

そのようなことから音楽だけがある種の救いを与えてくれる存在だった。


一人になった僕は隣県の空港まで

2時間の道のりを一人電車に揺られた。

今までも寂しかったはずの僕はなぜだか今まで以上に寂しさをかみしめていた。


つづく・・・

No.31 18/07/31 17:51
名無し0 ( ♂ )

>> 30 一人になった僕は隣県の空港まで

2時間の道のりを一人電車に揺られた。

今までも寂しかったはずの僕はなぜだか今まで以上に寂しさをかみしめていた。


以下、続き

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空港についた。

留学を斡旋している会社を経由している分安心感はあったが

それでも孤独だった。

空港には一緒に海外に向けて出発する人が10人ほど集まっていた。

彼らもそれぞれの目的のために留学をする。

事前に知り合いや顔見知り同士で楽しく話をしている人や

家族や友人に別れを惜しまれながら最後のひと時を過ごす人がいる中

僕は一人荷物を預けベンチで今までとこれからについてぼんやりと考えていた。


僕のサックスの先生は元々フランスの有名な音楽院を首席で卒業していて

世界サクソフォン協会のトップと一緒に学んだとてつもない先生だったこともあって

その先生が通っていた音楽院に行くことを検討していたのだけれど

決して裕福ではない僕の家計ではフランスでの生活を賄える金額は捻出できなかった。

そこで第二候補として先生が仕事で何度も訪れていたアメリカのシカゴで

学ぶことを勧められた。

シカゴには先生が第二の師匠として敬愛するすごい先生がいるということと

学費や生活費を計算しても何とか学べるということが決め手だった。

そのころの僕にはあまり気力はなく

先生や周りの人に迷惑をかけたくない一心で留学を決めたが

正直僕は昔から人に迷惑をかけない死に方があるなら死にたかったし

そんな方法を思いつかなかったから常に消えたいと思っていたくらいで

彼女と別れた時点で僕はただ惰性で生きていただけ。

人に必要とされたい、人に認められたい

そんな気持ちが僕の孤独と常に寄り添っていて

それらを満たしたかった。

彼女と別れた今、

僕が認められる唯一の方法は先生に勧められた場所で学ぶこと。

親に迷惑を極力かけずに社会人になること。

そんな気持ちだった僕にとって留学は都合がよかった。

家族や知り合いに迷惑をかけることは少ない。

孤独は慣れっこだし少し我慢すればいい。

消えることはできなくても一人になることはできた。

あとは認められるようになれるまでひたすら学べばいい。

そう思っていた。


つづく・・・

No.32 18/08/04 14:30
名無し0 ( ♂ )

>> 31 消えることはできなくても一人になることはできた。

あとは認められるようになれるまでひたすら学べばいい。

そう思っていた。


以下、続き

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人生初の国際線。

国内線でも飛行機は1回しか乗ったことがない。

これから新しい世界に旅に出るようなそんな高揚感はなかった。

どちらかというと闇に吸い込まれるような孤独感と

とてつもない淋しさに飲み込まれないように必死だった。

一人は慣れていたはずだったのに。

空港や飛行機でこれから待ち受ける別世界に胸を高鳴らせたり

はしゃいだりする人々と同じ空間を共有するのはとてもつらかった。

約15時間のフライトで僕は一睡もしなかった。


シカゴの空港に到着するなりそこに広がっていたのは映画の中のような世界だった。

目に入る表記はすべて英語。

留学を目的として留学をしているわけではなく単に音楽を理想の形で続けていくための

選択だったアメリカ留学は僕にとっては想像以上のハードルだった。

中学高校も英語は決して得意ではなく成績は5段階中の2。

覚えるのが不得意で勉強も要領が悪くお世辞にも賢い部類ではなかった。

音楽の成績は5から落としたことはないがそのほかはよくて3だった。

そんな僕は空港について目に入る英語にあっけにとられつつも

自分のスーツケースを取り上げて集合場所に向かった。

そこにはアジア圏から14、5人ほどが集まっており

留学予定の大学の担当者が一人。

みんなで学校のバスで空港から大学に向かうことに。

日本人は僕を含めて8人。

あとは韓国人や香港人だった気がする。


大学についた僕たちはそこで外国人向けの学校説明会を兼ねた軽いオリエンテーションを

受けることになっていた。

大学での過ごし方やカリキュラムの履修の仕方などの説明を

各地から集まったその年の外国人おおよそ100名程度で受けた。

見た感じアジア人は4分の1程度。

世界各国から様々な年齢層の人が説明を受けていた。

渡米間際に感じていたどうしようもない孤独感やさみしさは

いつしか「英語の苦手な自分が明らかに英語が喋れたり理解できる人たちの中で

どうやって生き残っていけばいいのか」という不安と絶望にかわっていた。


つづく・・・

No.33 18/08/20 16:47
名無し0 ( ♂ )

>> 32 渡米間際に感じていたどうしようもない孤独感やさみしさは

いつしか「英語の苦手な自分が明らかに英語が喋れたり理解できる人たちの中で

どうやって生き残っていけばいいのか」という不安と絶望にかわっていた。


つづく・・・



======================================


オリエンテーションも終わり各自ホストファミリーにより

これからの生活拠点へと迎え入れられていく。

順番に名前を呼ばれると大学の資料を渡されホストファミリーの元へと

引き渡される。

次々とホストファミリーのところへいく留学生たち。

その楽しそうな初対面を迎える留学生をよそに

僕はどこかひょうひょうとしていた。

僕が呼ばれ資料を受け取りホストを確認しようとしたが

なぜか僕のホストはそこにはいなかった。

指定された大学の駐車場に向かうことに。

大学といっても広大なキャンパスに駐車場は四方全部の方角にそれぞれ1000台ずつくらい

収容可能な敷地が用意されていたため指定の場所まで徒歩で5~10分くらいはかかった。


指定の駐車場に着くと金色のスポーツタイプセダンに身を寄せてこちらに向けて

手を振るサングラスのおばあちゃんが立っていた。

「Hey!!」とファンキーなノリで名前を確認されるまで

到底眼前の光景を信じられなかった。

年齢は68、小太りのおばあさん1人だ。

華やかな家族構成でまるでドラマの中のようなホストファミリーに迎え入れられる

留学生たちを見たあとのことだったので衝撃的だった。

おうちまでホストの車で帰ることになったのだが一つ目の問題が発覚した。

タバコだ。

僕はホストファミリープログラムに申し込む際に事細かな調査用紙があり、

そこにはアレルギーやホストファミリーに対して求める環境を事前に伝えておく

要望書に「犬猫アレルギー」と「タバコNG」の欄にチェックを入れておいたのだ。

それにも関わらず車内でおもむろにタバコに火をつけ始めたホストマザー。

そしてそれに対してタバコを差し控えてほしいと伝えられるほどの英語力を持ち合わせていない

自分の英語力に絶望した。

必死に呼吸を最小限に抑えていざお家に到着。


僕はこの先やっていけるか不安になった。


つづく・・・

No.34 18/09/13 16:50
名無し0 ( ♂ )

>> 33 必死に呼吸を最小限に抑えていざお家に到着。


僕はこの先やっていけるか不安になった。


以下、続き


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バスや電車の駅があるメインストリートから閑静な住宅街を

数分走りホストマザーの家に着いた。

着くなり新鮮な空気を吸うため急いで車を降りた。

当たり前だがアメリカのお家はなぜだかうっとりして見つめてしまう。

そうこうしていると家の中からメガネでTシャツ短パンのひょうひょうとした青年が出てきた。

年恰好は僕と同じくらいか。

彼は出てくるなりマザーに何か英語で言われるとさっと返事をして僕の荷物を下ろすのを手伝ってくれた。

優しい彼だが内心「同じアジア人なのにどうしてこんなに英語を流暢に話せるんだ」

と危機感と嫉妬心が沸いてしまった。


部屋の紹介など一通り終わり荷ほどきもしたところで異変に気が付いた。

この家には犬も猫もいるのだ。

しかも猫は僕がこれから使用する部屋がテリトリーらしく

頻繁に入ってくるのだ。

留学生向けの事前調査資料の意見が一切反映されていないことには驚いた。

そこから半年ほどはくしゃみと鼻水、目のかゆみなどに襲われたことは言うまでもない。


アメリカに来たのは夏学期開始の6月。

留学生向けの英語のクラスがメインでサマークラスは大学に設けられている英語の基準点よりも上か

英語クラスを修了していないと履修できない決まりがあった。

幸い数名の明らかに英語が話せる留学生を除いてはみな英語クラスの履修が必須だった。

そもそ英語を目的とした外国語大学出身者や国際系の学部の学生、高校生の中に

一人普通科からしかも音楽を学びに来た学生なんて僕だけだ。

完全にレベルが違う。

英語クラスはその名の通り英語を学ぶためのクラスなのだがSれでも何を言っているのかさっぱり

わからなかった。

英語クラスももちろん進行のすべてが英語なのだ。


僕は様々な問題に直面していたにも拘わらず

Uさんと別れてからというもの頭も心もここにあらずといった感じで

ポカーンと穴が開いたような感じだった。

大好きな人との別れは僕をだめにしていた。


つづく・・・

No.35 18/09/18 17:55
名無し0 ( ♂ )

>> 34 大好きな人との別れは僕をだめにしていた。


以下、続き

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環境の違いや文化の違いは想定していた。

だけど時折襲ってくるUさんを失ったダメージは僕の情緒に影響した。

英語の学習のために自分を追い込み周囲の日本人から自分を孤立させることで

英語に目を向ける環境を強制的に整えた僕は少しだけ安心もしたのだけど

やっぱりわからない英語に延々と囲まれて暮らす中で内向的に自分の心を

掘り下げていく自分がいた。

授業以外の時間は基本的には洋楽を聞くようにしていたが

選曲はほぼすべてにおいて恋愛や失恋に関係していた。

今思えばそれも英語力が伸びた要因のひとつなのだけど

自分のパーソナルな感情と恋愛系の洋楽が結びついて

僕はどんどん失った悲しさや寂しさに打ちひしがれたりそれらの感情にのめりこんだ。

休日は朝から晩まで真っ暗な部屋にこもり泣ける系の洋画を見たり恋愛曲で

とことん感傷に浸った。

僕は寂しかったんだと思う。

周りにも英語しかないため誰かに共感を求めることもできずにいた。


夏学期は現地アメリカ人は基本的に夏休みを満喫しているので

夏学期に学校にくる学生はほとんどが留学生。

施設利用時間なども大学職員の負担を考え昼までしかやっていなかった。

留学生もまだ生活にもなれていないし英語にも慣れていないため

とても暇なので昼になると家で何もすることがない僕はやはり映画や音楽に時間を費やすのだけど

それは僕にとっては英語の勉強の側面もあった。

内容はわからないけど体を英語にできるだけ早く馴染ませるためにも聴き取れもしない、聞けても

理解できない英語を常に聞くようにしていたのだ。

しかし、夏学期の授業を受けていく中で「読む力」も重要なことに気づき

インターネットでいろいろな記事を検索しては英語だけでただただ「読む」ということを

続けていた。

その一環として日本ではまだほぼ無名だったFace〇ookにアカウントを作ってみることにした。

「Face〇ookなら大学のクラスメートや先生などともつながれるから英語をもっと使える!」

そう思ってはじめてみたのがまさかこの後の僕に大きな影響を持つこととは

まだこの時点では知る由もなかった。


つづく・・・

No.36 18/10/13 14:01
名無し0 ( ♂ )

>> 35 「Face〇ookなら大学のクラスメートや先生などともつながれるから英語をもっと使える!」

そう思ってはじめてみたのがまさかこの後の僕に大きな影響を持つこととは

まだこの時点では知る由もなかった。


以下、続き

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学校の行き帰りはいつもバラードや失恋曲が耳に心地よかった。

僕は精神を病んでいた。

環境の変化や目の前の問題も山積みなのに気持ちは前の恋愛を引きづったままだ。

学校の夏学期は午前中で終わるので英語を話せない僕はまっすぐ家に帰り

自室にこもった。

自室は地下で窓はあるものの2,30センチの高さしかない窓が天井近くの壁際にあるだけで

そこから見えるのは雑草か人の足ぐらいだ。

電気を消せば部屋は真っ暗。

そんな環境もまるで当時の僕の精神状態を表していたかのようだ。


部屋にこもっては闇雲に英語だけで海外ドラマを見続けた。

疲れたりするとベッドに転がって恋愛曲を聴いては感傷に浸っていた。

ふと思い立った僕は先日作ったばかりのFaceOookをひらいた。

すると友達かもしれない候補が出てきた。

その中には同じ留学生やもとから知ってる人もいた。

何人かにメッセージを送ってやり取りをしていたところ

僕に対しても何人かから友達申請やメッセージが集まり始めた。

僕は片っ端から順番にメッセージを返した。

結構暇と寂しさからそういったメッセージのやり取りはうれしかった。

しばらくして2、3人と連絡が続いた。

その2、3人も同じく留学生ではあったあもののそれぞれ違う場所に留学をしていて

シカゴにいた僕はネットを介してカリフォルニアやニューヨークにいる友達と連絡が

とれたことにより少しだけ留学の楽しさを感じた。

目標や夢をもって同じように行動を起こした人々と距離が離れていても繋がれる時代。

僕はそれから毎日FaceOookにはまっていく。

そして一人の女の子との話が止まらなくなっていく。

幸い時間は有り余っていた。

彼女はとてもストレートな話し方で気を使わなくて楽だった。

彼女も学校は違えど同じように留学生特有の悩みと膨大に立ちはだかる課題と時間に

立ち向かっていた。



つづく・・・

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