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作家
16/02/28 23:08(更新日時)

「柳之助。俺だけど、明日の朝にそっちに行くから。」

「あー。新幹線の時間に間に合うように来いよ!キップはあるよな。」

「あー。持ってる。」

「俺の友人のアパートに、やっかいになる予定だ。そいつの承諾は得た。まぁ、あまり長くは居候出来ないがな。」

「ありがたい。柳之助、いろいろありがとう。いよいよだなという気がしてきた。夢が現実のものとなる怖さはあるけれど。」

「圭介。今後は、あまり余計なことは考えないようにしよう。今後のこととか、周りのこととか、それを考えて俺らは、はたして音楽を止められるのかって話しだ。それは、絶対に出来ないことだ。だから、早く向こう行って、俺らの音楽を作っていこう!じゃあ、おやすみ。」

俺は、上京をいよいよ、明日に控えた夜、
柳之助に電話をかけていた。
身の回りの最低限の荷物を持ち、あとは、新しい部屋が見つかってから、考えることにしていた。父親に無理言って高校生の時に買ってもらったエレキギターは、持っていくことにしていた。もう一本のアコースティックギターは、後から送ってもらうことにしている。

実家で食べる最後の夕食には、父親は法律事務所にいて不在で、兄と母と3人だった。その時に、母に言われた言葉がなんだか、さびしくもあり切なくもあった。

「平凡に、家族5人でやってきて、柚子が向こう行って、明日から圭介も向こう行って、こうして、お父さんは常に不在で、明日から、お兄ちゃんとお母さんと二人だけの夕食ね。あっ、違う。お兄ちゃんも居ない時が多いから、お母さん、ひとりぼっちね。」

なんだか、俺って、結局、音楽で生きていくと決めてから、ずっと、親不孝しているのかもな・・・・・・。
でも、もう、柳之助の言うように、前に進むしかない。もう、自分の前にしか道はない。

トントン、トントン。

俺が、荷造りを再開していると、自室のドアをノックする音が聞こえた。誰だろうとノックすると、兄の新だった。ビックリした。兄が、こうして話しかけてくるなんて何年ぶりだろうか。弟の俺なんて相手にしていない人だったから。

「兄さん。どうしたの?」

「明日だろう。柳之助くんと上京するのは。俺には、何もないのか?父さんや母さん、柚子にはもう、したんだろう。」

「うん。兄さんにはまだでした。すみません。明日、出発します。盆正月には帰省しますけど。」

「母さんに、あんな思いさせて行くんだ。そう簡単には帰って来るなよ。帰って来るときは、諦めるか軌道にのってからだろう。それと、落ち着いたら、母さんにはお前の居場所は教えてやれ、いいな。それと、これ、少ないが餞別だ。じゃあ、俺は明日の公判の準備をするから。体に気をつけろ。」

俺が、あぜんとしていると、俺のスーツケースの上に封筒を置いて去って行った。
俺は、今の今まで、兄さんのことを、冷酷非情な人間だと誤解していた。
どこかで、兄さんは、俺なんて迷惑以外のなにものでもないと思っていると、思いこんでいた。

俺は、バックの中に、母さんからもらった御守りを入れ、この夜は眠れそうにないまま、ベッドに入った。



No.2307416 16/02/28 23:08(スレ作成日時)

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