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小説家
16/02/17 22:33(更新日時)

驚きと呆れたのとで、俺は声も出なかった。
耳元の電話機からは、ツーツーツーという電話が切れた時の音が、しばらくこだましていた。

あの二人は、はたして正気なのか?

従兄弟の柳之助は、昔から猪突猛進型だから仕方がない。
だが、圭介は、俺と同じで、もっと冷静沈着型だと思っていた。しょせんは、圭介も音楽のこととなるとブレーキがかからなくなるみたいだ。

俺は、無意識のうちに、羨ましいという気持ちにふたをしていたのに、未だに俺だって、音楽に対して未練がないわけではないのかもしれない。

深夜1時、残業を終えて重い鞄と体を引きずるように部屋の前まで来て、柚子が部屋の鍵を開けると、中から電話の電子音が鳴り響いていた。

もう、こんな時間に誰なのよ!!
もう、空気を読めない佐方事務官じゃないでしょうね!!
明日も休日出勤だっていうのに!!

柚子は、ソファーに鞄と鍵を放り投げると、乱暴に電話の子機を掴んで、電話に出た。

「はい。長谷川です。」

「姉さん。俺だけれど。ゴメン。こんな時間に電話して。」

「あら、圭介じゃない。何?どうしたの?」

「俺、突然だけれど、柳之助と一緒に上京するから。姉さんのところに近くなるかな。俺、もうー。」

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!今、何て言ったの?上京する?」

「うん。俺、音楽で生きていくって、もう決めたんだ。俺には音楽しかないって。後から、父さんと母さんには話しをする。兄さんは出ていくときに言うから。」

柚子は、もう、なるようにしかならないと思った。
弟の圭介には、確固たる信念があって、もう、彼の中では決まっているみたいだからだ。

柚子は、最後に言った。

「ねぇ、圭介。私に、二つだけ約束して。
もしも、上京して三年たっても芽が出ない時は、帰って来なさい。そして、私が検事という仕事をやっているのだから、私に迷惑をかけないで。赤の他人だからね。あとは、勝手にしたら。じゃあ、おやすみなさい。」

「うん。ありがとう。姉さんの気持ちは分かったよ。じゃあ、体に気をつけてね。」

圭介からの電話を切ると、柚子は、部屋着に着替え、コンビニに寄って買ってきた、
お弁当と烏龍茶をテーブルに置いた。

そして、今夜も、オリオンズという四人組の洋楽をかけた。

この曲は、圭介も好きな曲だ。自分の影響で、オリオンズを知り聴くようになったらしい。

柚子は、小さい頃を思い出していた。
自分が吹奏楽部に入部してトランペットをやっていたが、圭介も中学時代に吹奏楽部に入部して、トロンボーンをやっていた。
確か、その頃、友人の柳之助くんは
コントラバスという弦楽器でベースを、
裕太くんも、打楽器でドラムを叩いていたっけ。

あの頃から、もしかすると、いずれ将来的にはと考えていたのかもしれない。

柚子は、独り深夜に、弟の圭介の将来を案じていた。


No.2303877 16/02/17 22:33(スレ作成日時)

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