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お兄ちゃんと結婚しました

レス112 HIT数 194699 あ+ あ-

匿名
15/11/12 18:56(更新日時)

大好きなお兄ちゃんと結婚しました

もちろんここまでの道のりは決して安易なものではなかった

って言うかものすごく大変でした!(^-^;

でも、今はとても幸せなんで
どれもいい思い出です

…でもないか…(´;ω;`)

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No.2226650 15/06/17 20:17(スレ作成日時)

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No.1 15/06/17 20:41
匿名0 

私が、小3の時両親が離婚

って言うか私を産んだ人が男作って出ていった
正直この人に『母』という文字すら使いたくない
ってほど嫌い

物心ついた時からいい思い出などなく、虐待や酷い言葉で罵られたり嫌なことばかりで、お友達がお母さんと仲良く帰ってるのを見ては独り泣いてました

だからお父さんから
『今日からお父さんと2人で暮らそう』
と言われた日はちょっと嬉しかった

でもお父さんの悲しい顔を見てたらそんなこと言えなかった

それからお祖母ちゃんがちょくちょく来ては家事をしてくれて…
私も幼心にお手伝いしなくちゃならないと思い、中学に上がるまでには一般的な家庭料理くらいはマスターしてた

No.3 15/06/17 21:12
匿名 

そんな生活を続けるには部活なんか出来ないし、色恋沙汰なんてとんでもない

お父さんは会社の重役で夜も帰りが遅く、生活費を貰っては学校と家事の毎日

なもんで友達も徐々に離れて行って…
寂しくないって言ったら嘘になるけど、会社が休みの時には必ずお父さんと2人で出かけたり一緒に遊んでくれたからそれだけでも頑張っていけた

でもいつもお父さんと過ごしてたから
『たまには友達と遊んできてもいいんだぞ』
『勉強のほうはちゃんとやってるのか?』
とか、学校での話をほとんどしない私に疑問をいだきだし、結果今の現状を問いただすと
かなりショックを受けたらしく、病床のお爺ちゃんの看病でてんてこ舞いのお婆ちゃんには頼めなかったから家政婦を雇うことにした


だけど…

初めて家政婦さんが、家に来たとき…
トラウマなのか大人の女性と家の中で2人きりっていうのが耐えきれず、軽いパニックを起こしてしまった

お父さんはそのことにもショックを受け、私が学校に行ってる時間帯だけということでとりあえずは解決
だけどこのこと以来お父さんは私に負い目が出来たようで、涙ぐんで謝ってきた

No.5 15/06/17 22:42
匿名 

ただ勉強だけはしっかりさせたかったらしく、家庭教師か塾に通わせたいと言ってきたので迷わず塾を選んだ

それからは友達も増えやっと中学生らしい(?)生活を送れるようになった

でもそんなある日お父さんから
『次の休みの日開けといてくれないか?
会わせたい人がいる』
と言ってきた

『うん…』
とは一応返事したものの正直嫌な予感しかしなかった

いくら鈍感な私でもさすがにこれは気づく
例のトラウマのこともあるし、不安で眠れない
でもそこら辺分かってくれてるのでいい人なんだろう
でも私が邪魔な存在になったら?
でもお父さんがこのままひとり身じゃ可哀想だし、幸せになってもらいたい
でもやっぱり怖い
でも…でも…でも…

私がはっきり『嫌‼』と言ったら優しいお父さんのこと
きっと独身のままだろう

でも私がいずれ嫁ぐ時お父さんは独りぼっちになってしまう

毎日がこういう自問自答の繰り返し
まるで出口のない迷宮に迷いこんだみたい



そして…

その日がやって来た…

No.6 15/06/17 22:43
匿名6 

>> 4 削除されたレス え?何が問題?

自伝小説は、ここじゃダメなの?

No.7 15/06/17 23:00
匿名 

その日の朝
いつもなら朝食を作る時間だけど私はまだベッドから起きれずにいた

しばらくするとお父さんがノックしてドア越しに

『おきてるか?』
『嫌なら無理しないでいいんだぞ』

昨夜までの私の態度や起きてこないことからやはり私の心境がつたわってるらしい

私は応えなかった

すると部屋を離れるお父さんの足音

その足音がすごく淋しそうで…
一瞬離婚した時の顔がフラバした

いてもたってもいられなくて、気がつくとベッドから飛び起き部屋を出ていた

『大丈夫!
ごめん!すぐ用意するから!』

『そうか…
待ち合わせは3時からだから』

『うん』

ここまでくると逃げられない
お父さんの為にも会うだけ会ってみようと思った

No.8 15/06/17 23:52
匿名 

3時

向かった先は意外に近く、お父さんともたまに通う料亭

そこの奥座敷に通された

『いらっしゃいませ』

『ああ…ごめんね
今日は食事じゃないんだ』

『ええ、伺っております』

と笑顔の女将さん

いつもなら私も挨拶するのだがそれどころじゃなかった

そんな空気を察してか、すぐに去っていった

そして数分後

『お連れ様がお見えになりました』

その言葉と同時に女の人が入ってきた

私はとっさに俯いていた

『ごめんなさい遅れて』

『いやいや大丈夫…だけど…
あれ?1人?』

『やっぱりダメだった』

私は『?』と思ったけど顔を上げれずにいた

『こんにちは娘(私)さん』

『こんにちは…』

蚊の鳴くような声で答える

(優しそうな声)

でもやっぱり顔は上げられなかった

そこで飲み物を頼み、届けられるまではほぼ無言

飲み物を一口二口飲んだところで
『ほら、いい加減顔を上げなさい
失礼だろ』
と言うお父さんに対して
『いいのよいいのよ、やっぱり警戒しちゃうわよね』

その言葉に初めて顔を見た

その人はすごく優しい笑顔でこっちを見てた
それよりも一瞬我を忘れるほどの美人

『そのままでいいからちょっと話聞いてちょうだいね』

話の内容は
・その人はお父さんと同じ会社で働いてる人
・ちょっと前から正式に付き合ってること
・いずれは結婚をして一緒に暮らしたいと思ってること
・でもお互いの子供達が納得しない内は結婚しないこと


覚悟してたとはいえ、やっぱりショックだった

(え?でもお互いの子供達?
ってことはこの人にも?)

No.9 15/06/18 13:40
匿名 

その人は続ける
『別に今日認めてくれって言ってるんじゃないのよ
今日来たのは娘(私)さんにお願いがあって来たの』

(お願い?)

私が顔を上げその人と目が合うと、軽く微笑み

『私があなたのことをもっと知りたいし、あなたに私のことをもっと知って欲しいから、これからそういった…時間を…
ちょっとずつでいいから…ちょうだい…?』

軽くその人を見た

ちょっと申し訳なさそうな顔をしていた
もちろん威圧感などない

その表情を見てたら思わずコクンとうなずいてた

『ありがとう』
その人のとても嬉しそうな顔に自分もつい顔が綻ぶ

その後お父さんの
『この先家に連れてくることもあるだろうけど、許してくれるか?』
との問いにも同じくうなずいていた



No.10 15/06/18 17:37
匿名 

その後はしばし談笑

家では見ることの出来ないお父さんの話をしてくれた

私の天然はお父さんゆずりなんだ
と思った

話が進むに連れ私も顔を上げその人(以後S子さん)の顔をまともに見ることが出来るようになってた
(やっぱり綺麗な人だなぁ)

私の理想の母親の姿がそこにはあった

でもそう思うと自分の中にある黒いモノが激しく蠢くような不快感に襲われる

なのでこの時の私の笑顔はかなり微妙なものになってたはずだ

ともかく話も尽きようかとした所でS子さんが大きく深呼吸して私に笑顔を送り
『今日はほんとにありがとうね
すごく楽しい時間が過ごせました

何か私に聞きたいことある?』
と言われたので、私は恐る恐るきいてみた
『あの…
お子さんが…いるって…』

すると手を叩き
『そうそう!
(兄)っていってね(私)さんの2つ上の男の子がいるの

本当は今日連れてくるつもりだったんだけど…』

ちょっと困った顔をして
『その…何て言うか…
ちょっと…じゃないわね
結構…

クスッ
かなりの問題児なのよねぇ~』

意外だった

どう見てもお父さんよりかなり若く見える
(実際は3つ下)
のに私よりも2つも年上の子

しかも何故か女の子と決めていたのに男の子だったなんて…

No.11 15/06/18 21:08
匿名 

正直少し心が踊った

寂しい幼少期を過ごした私にとっては、常々兄弟が欲しいと思っていたからだ

中でも兄という存在に凄く憧れていた


その場はお開きということになり、店を出る時、女将さんから声をかけられた
『いい話だったみたいね
来たときとはまるで別人みたい』

S子さんも聞いてたので恥ずかしかったけど、理想のお母さんと、欲しかった兄との生活に期待してたのは確かだった

しかし、そう思えば思うほど心の闇が大きくなり呼吸が苦しくなる





家に帰り、その日はお父さんと一緒に夕飯の準備をした

会話はもちろんS子さんのこと

でもやっぱり会話が盛り上がれば盛り上がるほど胸が締めつけられる

その都度険しい顔になる為、お父さんにしたら気にいってくれたのか、そうでないのか分からなかったらしい

私の中に2人いるみたい

自分でも何故こうも苦しくなるのか分からなかった
次第に夜がふけるにつれ闇の部分が大きくなる気がして怖くてたまらない

恥ずかしいけどその夜はお父さんと一緒に寝てもらった



その日以降、S子さんとの交流が増えていった
ウチに来ることもあったし、外で会うこともあった
けど相変わらず(兄)さんが来ることは無かった

相変わらずといえば、私の中の闇もS子さんとの楽しい時間を過ごす度に暴れだす

特に触れた時なんか呼吸が苦しくて立っていられないくらいにひどくなる

そんな私を見るS子さんの悲しい顔を見る度に申し訳ない気持ちになった

ほんとに悔しい
何故こんなにも私の中の闇はS子さんを拒絶するのか?
自分で自分が嫌になる

そうやって自分の中の闇を恨みながら過ごしていってたら…


ついに

その闇が私に牙をむいた

No.12 15/06/18 22:04
匿名 

その日はS子さんが遊びに来る前の日の夜

夢の中にそいつは現れた

雨に打たれながら遠くを見つめる幼い私
その目線の先にはお母さんと手を繋いで帰るお友達

とても寂しい記憶の中の幼い自分を今の自分が見てる感じだ

幼い私は歩きだす

そうだ
私は雨で涙をごまかして泣きながら帰っていってた





家の前に立つ
玄関を開ける幼い私を今の私が止めようとする
『開けちゃダメ‼
あの女が‼』

そう

そこには私を産んだあの女がいた



そしてゆっくりと振り向く



ただ今の私にその女の顔の記憶が曖昧なのかS子さんとダブって見えた



そのままあの時と同じように私を地獄に落としたあの言葉を放った












オ・マ・エ・サ・エ・ウ・マ・レ・テ・コ・ナ・ケ・レ・バ

No.14 15/06/19 14:41
匿名 

『いやあぁぁー!』

自分の叫び声で目が覚める

まだ夢と現実の区別がつかずのたうちまわってた
『いやあぁぁー!』
『やめてぇ!』
『来ないでぇー!』

実際この時の記憶はない



(後日お父さんから聞いた話だと)

いきなりの凄い物音で目が覚める

(私)の叫び声や物が割れる音
強盗が入ったに違いない!
そう思ったお父さんは近くにあった掃除機の吸い込み口の部分を取り外し私の部屋へとかけ上る

『(私)!大丈夫か!』
ドアを開き電気を付けとっさに身構える!

だがそこにはベッドから転げ落ち、身を縮めた私…
しか居ない

多少部屋は荒れていたが、窓はすべて施錠されており人が出入った形跡などない

すぐさま私に駆け寄り肩を揺らし声をかける
『(私)…』
ビクッ
『やめてぇ!』
そう言いながら震える私の姿ですべて悟った

(俺のせいだ!
俺が再婚を認めさせようとしたから…)

お父さんが私を優しく抱きしめる
ビクッとしながら小さな声で
『やめて…』
『ごめんなさい…』
を繰り返す私に

『ごめんね…
もうどこにも行かないから…
またお父さんと2人で暮らそう』

そう言ってしばらく抱きしめてると
私はいつの間にか眠りについていた

No.15 15/06/19 21:16
匿名 

目が覚めるといつもの天井

だけど無性に悲しい気持ちだ

起きたばかりというのに涙が溢れだして止まらない

再び目を閉じる



『お父…さん…』

微かな記憶を頼りに昨夜のことを思いだす




夢のこと…
(あの人の夢をみたんだ…)

(それでパニックになって…
お父さんが来てくれて…)



『2人で暮らそう…』

(え?
2人で暮らすってどういうこと?)

目を見開く

(S子さんは?)

分からないが、これ以上考える気力もない

(とにかくお父さんと話さなくちゃ)

起き上がろうとすると体が重ダルく節々が痛む

途中途中壁に寄りかかるように階段を下りリビングへと向かった

お父さんがソファーに腰掛け頭を抱え込むように座ってる

『お父さん』

『おお…
起きたか』

その顔はとても寂しそう
目に力もない


『今日S子さん来るんでしょ?』

『いや…』

力なく笑う

『もういいんだ』

『どういうこと?』

『彼女とはもう会わないよ
と言っても会社では会っちゃうけど、それ以上の付き合いはしない』

『え?』

『ごめんな無理させて』

『違うの…お父さん』

『ほんとにもういいんだ…』

その場にヘタレコム私

『違うの…S子さんは悪くないの…』

立ち上り私を抱き寄せる

『もう、お前のあんな姿は見たくない』

お父さんの優しさに泣き崩れそうになる

でもここで泣いたら終わっちゃう

『お願い…もう一度だけS子さんに会いたい』

会ってどうなるかは分からない

ただこのまま会えなくなるのは嫌だった

会って全てを話そう

たとへその先に『サヨナラ』が待っていたとしても…


No.16 15/06/19 22:25
匿名 

コンコン
『(私)、S子さん来てくれたぞ』
ドア越しにお父さんが呼んだ

『分かった、今行く』

あれから2時間くらいたっただろうか、S子さんが来てくれた

その間、服を着替えS子さんにどう話そうか考えてた

全てを話そうと言ってもどうやったら上手く伝えれるのか分からない

考えてた間あの人のことやS子さんとサヨナラすることを思うとまた涙が溢れだす

とにかくS子さんの待つリビングへと足を運んだ



『こんにちは』

『こんにち…』
泣きはらした私の顔を見てS子さんは言葉を失う

私の元へと近づき手を伸ばす

ビクッ
条件反射で私はそれを拒否してしまった

『ごめんなさい』
悲しい顔で出した手を引っ込めた

『とりあえず座りましょ』
そう言ってソファーに座るS子さん

その仕草1つ1つに凜とした大人の女性を漂わせる

そして理想の母親のようないつもの笑顔で迎えてくれる

この人に何の躊躇もなく甘えられたらどんなに幸せだろう

だがそう思うとあの苦しみが容赦なく胸を締めつけてくる

私はS子さんの隣にちょこんと座った

『ごめんね…私のせいだよね』

『違うんです…私…』

『お父さんまで取られちゃうと思ったの?』

一瞬キョトンとした

確かにS子さんと会う前はそんなことも考えて不安になったこともあった
今でもそのことが心のどこかで引っ掛かってるのかもしれない

後から聞いたとき2人ともそれが発作(?)の原因と思ってたようだ

『それもあるかもしれないけど、多分違うんです』


私はゆっくりと昨夜見た夢のことを話しだした


No.17 15/06/19 23:32
匿名 

たどたどしくゆっくりとだけど自分の言葉で夢の話を話し終えた
そして最後に

『私、S子さんのことが好きです
S子さんと家族になったらどんなに幸せか

だけどそう思う度に…胸が…』

自分の胸を強く握り俯いてしまった

その前にスッとS子さんが手を差しのべる

『私はあなたを傷つけたり捨てたりしない』

嬉しい言葉だけどその手を握りしめることが出来ない

『そっか…
前のお母さんと重なっちゃったか…』
手を伸ばしたままS子さんは語り出した

『私もね、前の旦那から暴力を受けてたの…』

『え…?』
思わず顔を上げる

『怖いんだよね…絶対的な力って…
女は特にそう

(私)さんなんかまだ幼かったから逃げることもできなかったでしょう?』

S子さんも同じようにあの地獄を味わってたなんて

『その相手が自分の好きな人ならほんとに悲しい…』





心を射ぬかれた


好きな人?

違う!私はあの人なんか大嫌い!
あの人なんか…

不意に小さな頃の私が現れた

初めは悲しい顔だったのが笑顔に変わっていく
そしてあの人に抱き付き幸せそうに顔を埋める

違う!私はあの人なんか大嫌い!

『(私)…』
振り向くとあの人が私を呼んでいる
記憶に微かに残ってた
いや、自分の中に封じ込めてたあの人の笑顔

そうだ…






私はお母さんが大好きだった

No.18 15/06/19 23:51
匿名 

ふと我にかえり、差し出されていた手を掴む


その瞬間私の中で何かが壊れた



うわあああああぁぁん‼

お母さああぁぁん‼


S子さんの手から体へと抱き付き泣きわめいていた

お母さあああぁぁん‼

お母さああぁぁん‼


私の中で壊れたものからありったけの感情が流れだす

自分でも制御できないくらいの感情


その全てをS子さんにぶつけていた


うわあああああぁぁん‼


お母さああぁぁん‼





どのくらい泣き叫んだだろうか

私は意識を失っていた




『大好きな母親からの暴力で逃げ場を失った(私)さんは、母親を憎むことでその現実から逃避しようとしてた
そしてそれは(私)さんにとって最善で唯一の防衛本能だったのかもしれない』


その後通うことになったカウンセラーの先生の言葉だ

あまりの出来事に戸惑っていたS子さんだったが、最後まで私を優しく抱きしめてくれた









私はあなたを傷つけたり捨てたりしない







No.19 15/06/20 20:13
匿名 

その後私はS子さんにしがみついたまま離れなかったらしい

剥がそうとするとパッと目を覚まし
『行かないで!』
と、泣きわめく
まるで乳飲み子みたいだったよ
後にお父さんが笑いながら話してくれた


S子さんはいつもなら夕飯前には必ず帰るようにしていた

当然ながらS子さんにも子供がいるため、またこの外出は自分の結婚のためのものだから息子に迷惑だけはかけまいとするS子さんなりの気配りだった

それを私が我が儘言うもんだから結局時間は夜8時をこえてしまっていた

もちろん途中で家には連絡済み

でもいい加減帰らなくてはならないので、その旨を切り出す

『(私)さん、もう帰らなくちゃ』

『嫌!今日はここにいて!』

『(私)!いい加減にしなさい!』

お父さんの怒号が響きわたる

するとS子さんは私を包み込むように抱きしめ
『今日はありがとう、お母さんって呼んでくれて
私も(私)さんのことが大好きよ
自分の娘だと思ってる
でもね家には同じくらい大事な息子もいるの
だから分かって、お願い…』

この時S子さんの子供に嫉妬した

でもこのまま我が儘言って嫌われるのが怖かったのでうなずいてその手を離した

帰り際S子さんは
『今度は必ず息子も一緒に連れてくるから』
と言い軽くお父さんにうなずいて帰っていった

私も落ち着きを取り戻し次に会える日を楽しみしよう、息子さんとも仲良くなれるようにしようと心に決めて見送った



だけど、この私の我が儘が(兄)さんとの壁を厚くしてしまっていようとはこの時はまだ気付いていなかった

No.20 15/06/21 16:44
ぱんだ☆ ( 30代 ♀ tneL )

主さん、こんにちは!
楽しみに、読ませて戴いております。

私もS子さん同様、元・旦那にDVを受け廃人になりかけました…

こんな私ですが、楽しみに…と言ったら不謹慎ですが、小説を楽しみに待ってます(^-^)

主さんのペースで構いませんので、これからも読ませていただけたら…と思っています(^_^)v

No.21 15/06/21 22:54
匿名 

>> 20 ありがとうございます

何か否定的なご意見ばかりだったので、書くのを辞めようかと思ってました
(打たれ弱いので(´・ω・`))

1人でも楽しみにしてくれてる方がおられるならば頑張ってみようと思います

更新ゆっくりですが、よろしくお願いします

  • << 23 私も楽しみにしてますよ マイペースで良いので、お願いします

No.22 15/06/21 23:55
匿名 

その日以降S子さんと会えない日が続いた

お父さんにきいても
『今会社が忙しい時期だから』
『体調が悪いらしい』
『今週は用事があるみたいだから』
と何かしら理由をつけて私を納得させようとしていた

でもねお父さん
最初に『え~っと…』とかつけると一発で嘘とわかるんだよ


夜遅くに電話で深刻そうな顔で話してたり、妙にソワソワして家の中を熊みたいにウロウロしてたり、1人真っ暗な中でお酒飲んでるのを見たりする度、事の深刻さが感じとれるようになっていた


会えない日が続いたため一度電話で話した

電話口のS子さんはいつもと変わらず優しく私の話を聞いてくれた

でも
『今度いつ会えます?』
の問いには言葉を濁すだけ
それが私の不安を余計に増幅させていった

前回のことで無くなったと思ってた心の闇が、不安になるとまた私を攻め立て、カウンセリングに通うことになった


会えないまま1ヶ月が過ぎようとするころS子さんとまた電話で話す機会があり今度の日曜は必ず会いにくると約束してくれた


私は嬉しさで跳びはねお父さんに抱きついて喜んだ

でもお父さんは相変わらず深刻な表情

私は浮かれてたのかその深刻な表情のワケも考えず次会える日を思い床についた

No.23 15/06/22 00:26
小説大好き23 

>> 21 ありがとうございます 何か否定的なご意見ばかりだったので、書くのを辞めようかと思ってました (打たれ弱いので(´・ω・`)) … 私も楽しみにしてますよ

マイペースで良いので、お願いします

No.24 15/06/22 00:53
旅人24 ( ♀ )

初めて携帯小説にハマってしまいました 次回どうなるのでしょうか? 情景がすごく伝わってきます

No.25 15/06/22 11:41
携帯小説ファン25 ( ♂ )

感想スレを立てると、応援者がたくさんいることが分かりますよ😃

No.26 15/06/22 13:17
名無し26 ( ♀ )

>> 25 確かに…

じゃないと横レスで途切れ途切れななっちゃう💦💦

No.27 15/06/22 17:45
匿名 

ご要望がありましたので、感想スレ立てました

以降こちらはレス制限いたします

ご意見、感想は、お手数ですが感想スレの方にお願いしますm(__)m

これからも『お兄ちゃんと結婚しました』をよろしくお願いします(〃ω〃)

No.28 15/06/22 18:26
匿名 

今日はS子さんがやってくる日

鏡の前にちょっとおめかしして立っていた

S子さんはもちろんだけど(兄)さんに会うことが緊張であり、楽しみでもあった

ピンポーン

(来た!)

初めはどんな顔で会えばいいのか分からず、お父さんの後ろに隠れる

『こんにちはー
(私)さん久しぶりね、元気にしてた?』

『はい…』

(あれ?1人?)

S子さんは私に両手を広げハグしようとする
一瞬躊躇したが、それを受け入れ抱きしめた

(大丈夫だ!)
闇どころか安らぎを感じる

『(兄)さんは?』
『え?』

お父さんに顔を向け小声で
『言ってなかったの?』と呟く

何も言わず2、3度小さく頷くお父さん

『ごめんね~
(兄)、怪我して今入院してるのよ』

『え?そうなんですか?』
私は目を丸くした

先ほどのS子さんとのやり取りで、お父さんか知っていたことは分かった

だったら言ってくれればいいのに!
気合い入れておめかしした私が馬鹿みたいじゃん

お父さんにちょっとイラついた

リビングへ移り用事した飲み物に口をつけるS子さん

『ひどいんですか?』

『うん…ちょっとね
だけど今は回復に向かってるから治ったら連れてくるから』

『そうなんですか…』

S子さんとはあの日以来

やはり普通の状態ではお母さんと言えない自分がいた

No.29 15/06/22 20:34
匿名 

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう

両手でポンッと両膝をたたき
『じゃあそろそろおいとましよっかな』

とたんに私の顔が曇る

そんな私の頭を撫でさらに抱きしめてくれた


『次いつ来るの?』

抱きしめながら小声で
『今はできるだけ(兄)についていてあげたいから、いつとは言えないけど…
また時間できたら電話するから』

S子さんの胸の中で頷いた

立ち上り帰り支度をするS子さんに
『じゃあさ、次来る時(兄)さんの写真持ってきて欲しい』
と言うと

『写真かぁ~
確か入学式のがあったと思うから』

『約束ね!』
指切りした

『(私)、今日はお父さん車で送っていくから』

『私も行く!』

『ちょっとは気ぃきかせてくれよ』
いたずらっぽく笑うお父さん

まぁ大人同士の話もあるだろうしなぁ




靴を履く2人を玄関先で見送る
やっぱりちょっと寂しい…

『早く結婚すればいいのに…』
ホント無意識にボソッと呟いた

2人とも同時に顔を上げた
ビックリしてるようだった

『結婚…していいの?』
S子さんが驚きながらきく
結婚に賛成する言葉を口にするのは初めてだとその時気づいた

『当たり前じゃん!その為に来てるんでしょ!』
照れ臭くなった私は自分の部屋へと駆け込もうとした

それを止めるかのように
『(私)さん!
私達、幸せになろうね!』
涙をうかべながらも笑顔で言うS子さん

『うん!じゃあね!』
そそくさと階段をかけ上る

いつの間にかS子さんに対して敬語で無くなってたことに気づき、本当の親子のような会話ができてたことを素直に喜んだ

No.30 15/06/22 23:12
匿名 

あれから3ヶ月が過ぎた

電話や手紙のやり取りはあったが、会えずに過ごすのはやっぱり辛い

今日は大晦日
1人夜のベランダでいつもと変わらぬ風景をただぼんやりと眺めていた

『今年は色々あったなぁ…』

突然の再婚宣言、S子さんとの出会い、トラウマの克服

様々な環境の変化に追いつくので精一杯だった一年
来年の今頃は誰とどうしてるだろう

何気なくそんなことを考えてた


すると見慣れた車がこちらに向かってくる
お父さんだ

この時期お父さんの仕事は忙しいのは知っていた
なのでS子さんと中々会えないこともしょうがないことだと思っていた

バタン
車を駐車場に停め降りてくる

『お帰り!』

いきなりの声に辺りをキョロキョロ見渡すが、私を見つけられないでいる
その姿があまりに滑稽で、相変わらず天然だなぁと可笑しくなってきた
『こっち!』

ようやく見つけたお父さんは顔を上げ
『おお、寒くないか?』

『大丈夫!お腹は?』

『ペコペコ!』

そういうので、すぐに台所へと下りていく



『今日は年越しそば』

遅い夕食の用意が整った時には、すでに着替えたお父さんがいた

よほどお腹が空いてたのか、アツアツ言いながらそばをすする

その姿を笑顔で見つめる私に気づき
『何?』
と、照れ臭くきく

『いや、可愛いなぁって』

ブッと吹き出すとあわてて側にあるティッシュに手を伸ばす

『S子さんって、こういうとこに惚れたのかなぁ』

『なんだよ急に…』

こういう風景を不思議に思う人もいるだろうが、私はこの年頃によく見られる『父親への嫌悪感』的なものが無かった

No.31 15/06/22 23:44
匿名 

『そう言えば今日、正月あけたら会いたいって言ってたぞ』

『ホント!?』

『ああ、初詣行こうって』

『(兄)さんは?』

『う~ん…』
困った顔のお父さんを見てそれ以上きくのを止めた

『じゃあ写真持ってきてって頼んどいて』

『分かった言っとくよ』




片付けが終わり脱衣場に行く

お風呂のドアごしに入浴中のお父さんに話しかけた

『お父さん…』

『ん~?』

『あのさ…(兄)さんって、やっぱり…
結婚のこと反対してるの…?』
今まで聞きたかったけど何か怖くて聞けなかったことだ

『ん…』

黙ってしまった
気まずい空気が流れる

『まぁ…男の子だからなぁ、男女の違いもそうだが、母親が出来るのと父親が出来るのは違うのかもしれんなぁ…』

『じゃあさ…
(兄)さんが反対したら…結婚しないの…?』




『しないって言うより、出来ないよ
それがお互いが決めた条件だからな…
逆でもそうだった筈だよ…』

『そっか…』

『それに子供達の説得はお互いの親がするようにしてるから、お父さんは何も出来ない
ただ、お前がS子さんと仲良くすることは、説得する彼女の力になれるはずだよ』



『うん…』




それしか言えなかった…





そうして年が明けた

No.32 15/06/23 20:48
匿名 

『あっいた!』

初詣客でごった返す中、S子さんを見つけた

向こうも私に気づいたのか笑顔で手を振る

車で行くと渋滞に巻き込まれるから嫌だと電車で向かったお父さんだが、あまりの人の多さにすでにヘトヘトになっていた

『凄い人ね!』

『いやぁ参ったよ
昔の通勤地獄を思い出した』

私はお父さんとS子さんの間に入り、2人の腕を組んで歩いた
参道を抜け境内に着く
そこで3人揃ってお参り

横目でチラッと2人を見る

(きっと同じことをお願いしてるんだろうなぁ)



お参りを済ませ参道をまた歩いてると
『部長、少し休みません?』
と言ってきた

『ここで部長はないだろう』

『そうでしたね、すみません』

そんなやり取りを見てると何か新鮮な気持ちだった

『へぇ~、お父さんのこと部長って呼んでるんだ』

『会社ではね』

『じゃあ部長、あそこで一休みしますか』

2人の腕を引き参道にあるお茶屋さんにはった




『それで、S子さんは部長のどこが好きになったの?』

2人とも甘味を食べる手が止まる

『何?馴れ初めききたいの?』

『やめろよこんなとこで…』

対称的な2人の顔
お父さんは嫌がったが、お願いするとS子さんが話してくれた

『お父さんって時々抜けてるでしょ
普段からぼ~っとしてて…
会社でもほとんどそんな感じなんだけど、ちゃんと見てるのよ』

『何を?』

『みんなを…』

『みんな?』

『そう、特に元気が無い社員とか、悩んでる社員とか、見つけては声をかけたりアドバイスくれたりして
で、ただぼ~っとしてるだけの人かと思ったら、部下の失敗を素早くフォローしてなんとかしてくれるの

だから…
そのギャップに…
やられちゃったのかなぁ…』


終始赤い顔をしてうつむいてるお父さんに
『で、部長はS子さんのどういったところを好きになっ…』『言えるか!』
かなり食いぎみで打ち消された

そんな2人を見て、私もいつかこんな素敵な恋をするのかなぁ…
と、期待に胸を膨らませていた

No.33 15/06/23 21:18
匿名 

そこでふと思い出した

『S子さん、写真持ってきてくれた?』

『えっ?
ああ、持ってきたわよ』

鞄の中をガサゴソして1枚の写真を取り出す

『あまり写真撮りたがらない人だから、最近のやつはこれしかないんだけど…』

そしてそれを受け取る

正装したS子さんの隣に少しふてくされ顔の制服をきた男性
写真だけど初めて見る『お兄ちゃん』がそこにいた





見た感想は…


とにかく、ビックリしたって言うのが本音
カッコいいと言うのではなく綺麗だった

やっぱり親子、初めてS子さんを見た時と同じ思いだった


『凄い綺麗な顔…
モテるでしょ?』

『う~ん、どうかしら…
最近はめったに話さないから…』

『あっ怪我で入院して…』

『ううん、もうだいぶいいの
今は普通の生活してるわ
やっぱり思春期の男の子は難しいわね
前はそれでもよく会話してたんだけど…
やっぱりあの日以来…』

ハッとして口を紡ぐS子さん
きっとあの日ってのは再婚のことを話した時だろう


『再婚に反対してるんですか…?』

軽くうなずき
『あの子もね、(私)さんと同じように心に傷を持ってるの
だから時間かかるかもしれない
だけど私諦めないから』

しばし沈黙が続く


『この写真もらっていいですか?』


『えっ?
別に構わないけど…』






後にこの写真は紛失することになるんだけれど、私が落ち込んだ時、泣きそうになった時、何度も助けてくれた

No.34 15/06/24 18:50
匿名 

それからさらに月日は流れ、私は中学2年生になった

放課後、定期的に通っていたカウンセリングも精神状態が安定してきたこともあり、様子見(通院無し)になった


再婚への進展としてはあまり進んでない様子

S子さんにはちょくちょく会っていて、こないだは一緒に料理をして楽しんだ

小学校から家事(ほとんど食事の用意)をしていたから、私の手際の良さにはS子さんもビックリしてた様子

しかも習ったのがお婆ちゃんだった為、和食がメイン
出汁の取り方から味付けまで逆に教える立場
S子さんからは主に洋食を教わった

だけど…


相変わらず(兄)さんとは会えないでいた…



そんな時、転機が訪れる

今まで会おうともしなかった(兄)さんから、お父さんと話しがしたいと言ってきた


その日は私も行きたかったけど、難しい話になりそうだから長引くかもしれないとお父さん1人で出掛けた

『戻りは何時になるか分からないから、先に寝てなさい』

もちろん私は起きて待つつもりだ

お父さんもここが勝負所と思ったのか、かなり気合いが入っていた


夜8時からだから帰りは日付が変わる頃かなぁ

『気合いだけ先行してへましなきゃいいけど…』

すると

ブロロロ…

お父さんの車の音

『え?まだ10時すぎ…早すぎない?』



ガチャ

『どうだった!?』
玄関前で待っていた私にビックリするお父さん

『おお…まだ起きてたのか…』
『そんなことよりどうだったの!?』



『うん…』

No.35 15/06/24 21:03
匿名 

すみません主です…(*´・ω・`)b、

善スレでミスが有りました(;>_<;)

中学2年生という表記
正解は中学3年生です

以降(私)は、中学3年生の受験生として読んで下さい(´・ω・`)

今後とも『お兄ちゃんと結婚しました』を
よろしくお願い致しますm(._.)m

No.36 15/06/24 21:48
匿名 

『再婚…してもいいって…』

『やったじゃーん!おめでとー‼』

私は飛びはねて喜んだ
だけどお父さんは浮かない顔…
トボトボと部屋へと戻って行く

心配になりつけていくとお父さんは背広をぬぎネクタイを弛めていた

『何か…あったの?』

『うん…
再婚するに至って色々条件出された』

『条件?』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以降はお父さんやお兄ちゃんから後日きいて
私が想像で書きます


時間は3時間前にさかのぼる


ピンポーン

ガチャガチャ

S子さんが出迎えてくれた
『いらっしゃい』
2人とも緊張気味

『(兄)君は?』

『居間で待ってる』

『そうか…』

居間に行くと(兄)さんが座って待っていた

お父さんの姿を見るやいなや立ちあがり深々と頭を下げる

『どうぞ』

そして座るように促す

(兄)さんの対面にお父さん
側面にS子さんが座る形となった

『ダラダラしゃべる気は無いので要点だけ』

『はい…』

『以前伺った再婚の件ですが反対致しません
ただ少し聞きたい事と条件が…』

『はい…』

『再婚後住まいの方はどうされるつもりですか?』

『できれば私共の家に来て頂きたいと思ってます
部屋は余分にあるので』

『分かりました
ただそちらの住所からですと、自分の高校へは交通機関を使っての登校となります
その費用は負担して頂けるのでしょうか?』

『(兄)、失礼よ』
身をのり出すS子さん
だが、(兄)さんはそれを無視し続ける

『もちろん、親である僕の役目だと思ってます』



『次に、自分は名字を変えたくありません
夫婦別姓でお願いできますでしょうか?』

『別に僕もそこには拘ってません』

『分かりました
そしてこれが一番重要なことなのですが、
自分に干渉しないで頂けますか?』

『(兄)!何言ってるの!』

S子さんの表情が険しくなっていく

No.37 15/06/24 23:21
匿名 

『僕は…、(兄)さんと家族になりたいと思ってます』


『言ってる意味が分かりませんが…?
あなたと母が再婚すれば、自動的にそうなります』

『………』

『あなたの言う家族って何ですか?』



『朝はおはようから始まり、夜はおやすみで終わる
そして色々なことを皆で喜び、助け合い、分かち合うのが家族かと…』

『それは無理ですね
何故なら自分はあなた方にまるで興味が無い』
『(兄)‼』
『心配しないで下さい
自分は高校卒業と共に家を出ます
その後理想の家庭を築いて下さい』



『どうすれば…
父親と認めてもらえるのかな…』

『勿論、2年間はあなたのお世話になります
ただ、自分に父親は必要でないので』
『いい加減にして‼』
『自分勝手なこと言ってるのは重々承知してます
しかし人の生活を変えようとするのであるなら、それなりにリスクを背負うべきでは?』



(兄)さんが一方的にしゃべるとその後、長い沈黙がおそう

それを、打破するようにS子さんが静かに話し出す

『私は…この再婚をあなたに祝福して欲しい…』

(兄)さんは大きく深呼吸し見下すような目でS子さんを見る
『俺は再婚には俺の同意が必要としかきいてない
祝福?今さら条件かえんなよ
相手にも失礼だろ』

そこまで言うと(兄)さんは立ちあがり、玄関の方へ歩き出す

『とにかく条件さえ守って頂けるなら、明日にでもそちらのご家族に挨拶に伺います』

『どこ行くの!?』

『心配すんなよ!ちょっと走ってくるだけ!
1時間で戻る』

そう言い放つと(兄)さんは外へと走り出した

~~~~~~~~~~~~~~~~

No.38 15/06/25 21:06
匿名 

『…………‼』

私は言葉を失った

(兄)さんは、私の2つ上

それなのに大人の人に対して論破する

(兄)さんがとても大人に…そして恐く思えた


『S子さんは…?』

『うん…
S子も今回のことはかなりショックだったと思う
もう少し(兄)君と話し合ってみるとは言ってたが…、難しいだろうな

それ位(兄)君の言葉には強い意思を感じた』


『そう…』

『だからもう少し時間が必要かもしれん
焦るなよ』

『分かった…』


部屋に戻って床に入る

聞いた感じでは家を出た後も親に頼ることはなさそうだ

ということはたった1人で生きていくこととなる
私がまだ幼いからだろうか、女だからなのか

そんな生活はとても想像できない

憧れていた兄がすでに怖い存在になっている


私はその日不安なまま眠りについた







それから2週間後S子さんから電話がはいった

『あっS子さん‼
お父さんまだ帰ってきてないんですよ』

『うん、知ってる
さっきまでお父さんと話してたから』

『?』

『お父さんから(兄)のこと聞いた?』

『はい…』

『そこで(私)さんにお願いがあって電話したの』

『お願い?』


いつものS子さんからは想像もつかないほどやつれた声
多分(兄)さんのことであろうことは容易に想像できた


No.39 15/06/26 20:35
匿名 

『私達…そっちで一緒に暮らしてもいいかな?』

『え?』

予想外だった
先日のお父さんの話しだとまだ時間がかかると言ってたから、軽く1年は覚悟していた

下手すれば(兄)さんが自立する2年後かな?
とも…

『このままじゃあの子も変わらないと思うから、直にあなた達親子と接してもらって…少しでもいい方向にいけたらなぁって』

『私は構わないけど…
お父さんは?』

『うん…実はこの案、お父さんからなの…』

『それなら私は大丈夫です
(兄)さんとも仲良くしたいから』

『ありがとう
ごめんね、こんな母親で…』

『そんなこと言わないで…』







そして1ヶ月後、S子さん親子との生活が始まった


初めは再婚せず同居という形にしようとのことだったけど、(兄)さんが、そんな回りくどいことするなと一括

同居する今日、婚姻届けを提出した

予め大きな荷物は少しずつ持って来ていて、いつでも住める環境にはしていた

その際はお父さん達の会社の人達も手伝ってくれた

『いよいよですね部長!』

皆でする引っ越しは楽しかった
何度かウチに遊びにきて見覚えのある人もチラホラ…

そんな中なのか、いつものお父さんとはちょっと違った顔をしていたのが何だか可笑しかった

でも、その中に(兄)さんの姿はない


だから今日が初顔合わせ

ドキドキが止まらない

このドキドキは期待なのか、不安なのか…

多分両方だろう


そうこうしているとチャイムがなった

ピンポーン


『来た』

私はお父さんの後ろに隠れるように2人を出迎えた

No.40 15/06/26 22:46
匿名 

『お待たせ~』

S子さんが笑顔でやってくる

『(私)さん、今日からよろしくね』

いつものS子さんだ

とたんに私も笑顔になる

その後に大きな荷物を抱えた(兄)さんがやって来た


『(私)さん、はじめまして
今日から一緒に生活させてもらう(兄)です
よろしくお願いします』
と言って深々と頭を下げる

『早速ですが部屋の方に案内してくれますか?』

『(私)、案内してあげて』

お父さんが私を肘で小付く

正直嫌だったが
『あっこっちです…』
と、案内した

『失礼します』
それに(兄)さんが続く

2階へ上がり部屋(兄)さんの部屋の前まで来た
『ここです…』

この部屋は以前はお父さんの書斎兼物置き
(兄)さんのために要らないものを処分し、必要なものは1階の部屋へと運んだ

『どうも』

私に一礼して中に入る


ロボットだ…

これが私の『お兄ちゃん』の第一印象

玄関先から今まで全て無表情
必要最低限の会話

笑顔で迎えようとした私の計画は脆くも崩れ去った


下へ降りると2人がリビングで何か話していた

私もその輪に入ろうと隣に腰かける

『ありがとうね案内してくれて』

『いえ…』

『無愛想な子でしょ』

私はコクりとうなずき
『何だかロボットみたい』
と、言うとS子さんは笑ってた

『だって無表情なんだもん…』



『ごめんね…』
というS子さんに対し
『相変わらずだな(兄)君は…
いつまでアレが続くかな』

お父さんの突拍子のない言葉に2人共驚いた

そんな私に量眉をつり上げおどけた表情を見せる

『お父さん何か秘策でもあるの?』

『秘策?そんなもんあったらとうに使ってるよ
ただ、なんとかなるかなぁと、思って』

私はポカーンだった

『ほんっっっと能天気よね!
この人会社でもそうなんだから!』

私はお父さんを睨み付ける

『でも、やるときにはやる人なのよねぇ』



No.41 15/06/27 20:38
匿名 

その後の生活はそれなりに楽しかった

やっぱりS子さんといつも一緒に居られることが大きな要因

一緒に買い物して、料理作って、学校であったことを話して

今まで出来なかった母親との生活を思う存分楽しんだ

まだ、素の状態では『お母さん』と言うには照れ臭く、タイミングをはかる毎日

きっとS子さんも待ってるには違いないから、早く応えなきゃならないと思いつつ数日が経っていた

(兄)さんはロボットのまま
挨拶意外の言葉を耳にすることはなく、家に居るときは部屋に閉じ籠りっぱなし
たまに『今日ご飯要らない』と言った時なんかは翌日まで帰らないこともしばしば

一度S子さんに聞いたことがある
『(兄)さんって前からこんな感じだったんですか?』

普段はあまり(兄)さんのことを話したがらなかったS子さんだが、その日は色々教えてくれた

『小学校に入ってからは喧嘩ばっかりして帰ってきてた
同級生だけじゃなく上級生ともね

毎日のように学校や相手の家に謝りにいってたわ

中3になってからだいぶ落ち着いてきて、家に居ることも多くなり、よく話すようになったの

でも…やっぱり再婚の話しをしたときからおかしくなっちゃった

会話が減ったことよりも、あの子から笑顔が消えたことが…すごく悲しい…』

そう言って悲しく頬笑む





相変わらず(兄)さんとの溝が埋まることもなく、数ヶ月が経ち夏休みに入った

このままではさすがにマズイと思ったお父さんが、環境を変えてみようと言い出し、休みを利用して家族旅行を提案してきた

初め難色を示してたS子さんだが、他に案も無いため承諾した

後は(兄)さん次第だが…







その不安が現実のものとなり

我が家で最初の修羅場となった…

No.42 15/06/29 20:47
匿名 

その日の夕食、S子さんが切り出した

『ねぇ(兄)、今度お母さん達休みとれるから、皆で一緒に旅行行かない?』

S子さんをチラッと見た後、無視して食事を続ける(兄)さん

それでも執拗に誘い続ける

『行くと思うか?』

家の空気が凍りつく

居たたまれない雰囲気にドキドキが止まらずもはや食事どころではない

『行きたきゃ勝手に行けばいい
大体俺が行ったところで旅行が台無しになるのは目にみえてるだろ?
なのに何で誘うんだよ』

『家族旅行だもの、(兄)を誘うのは当たり前でしょう?』

『家族って思ってるのはあんたらだけだし…

いい加減分かってんだろ?
この家で俺は不必要だろうし、3人でいたほうが幸せだって

ただ卒業までの2年は我慢しろよ』

『不必要なんて…』

S子さんは額に手を当て俯いてしまった

私はこの空気に耐えきれず席をはなれドアの前に立ちつくす

(兄)さんは言葉こそあらげてはいないが、私はその迫力で押し潰されそうになっていた

『そんなになるなら何で産んだんだよ!
好きでもねぇ男の子なんざ』

『(兄)君!言い過ぎだろ!』
黙って聞いていたお父さんが、ついに口を開く

その瞬間(兄)さんの顔が変わり、そのままお父さんに詰め寄る

『俺は男には容赦せんぞ…
言ったよなぁ!俺に干渉するなって!
約束守れよ』




うーーーーーーーー!
うーーーーーーーー!

怖かった

物凄く怖かった

私は無意識のうちに声を出して泣いていた


うーーーーーー!
うーーーーーー!

すぐさまS子さんが駆け寄り私を抱きしめる

(兄)さんはお父さんから離れこちらに歩いてきた
そして私の横を通りすぎる時に話しかける

『おま…』
ビクッ

もう(兄)さんそのものが恐怖になってたため、近くで声を聞くだけでビクついてしまう

『お前もこんな兄貴いやだろう…』

そう言うと(兄)さんは部屋を出て行った

No.43 15/06/29 21:43
匿名 

残された部屋では、へたりこんだ私の泣き声と、そんな私を抱きしめ『ごめんなさい』と囁くS子さん


そんな中、私は…
いや、多分3人ともこう思ってたに違いない




もう無理だ…




その後の沈黙からS子さんが話し出した

『ごめんね(私)さん…
あなたもごめんなさい…』

小さく頷くお父さん

『私、もう一度あの子と話してみる』

『大丈夫なのか?』

『うん…
こんな状況になってまだこんなこと言うのはなんだけど…、
あの子は絶対に私には暴力振るわないから』

訝しげな表情をするお父さんだったけど
『あの子を信じてあげて』
と言われたら頷くしかなかった

『(私)さんも部屋に戻りなさい
後片付けは私がやっとくから』

そう言われても私は立ち上がることが出来なかったため、結局S子さんに付き添われながら部屋に戻った

私の部屋から出ていくと直ぐに(兄)さんの部屋へと入っていった





それからどのくらい経っただろうか…

(兄)さんの部屋は隣だったため時より話し声やS子さんの泣き声が微かに聞こえた

だけど会話の内容までは聞き取れない

じっとしてられなくなった私は後片付けをするため1階へと降りた


そこにはお父さんがいた

『お父さん…』

私は寄り添うようにお父さんの隣に座る
お父さんは私の頭を撫でながら言う

『S子がああ言う以上お父さん達は信じて待つしかないよ
だけど、どんな結果になろうともあの2人を恨んじゃいけないよ』

私は頷くと暫くお父さんの側にいた

その後、後片付けを終え部屋に戻る

(兄)さんの部屋ではまだ話し声が聞こえていた







そして長い長い夜が明けた…




No.44 15/07/01 22:42
匿名 

目が覚める
いつの間にか眠っていたようだ

時計を見ると昼の12時を過ぎていた

家の中はシンと静まりかえっている
昨夜の出来事を思うとそれが不気味に感じた

隣の(兄)さんの部屋からも何も聞こえない

私は喉の渇きをおぼえ下へ降りることにした


冷蔵庫から麦茶を取り出しコップ一杯飲みほした
パタパタ
『あっ起きた?』

『S子さん…』

昨夜の時とはうって変わって満面の笑みを浮かべる
そして、私を優しく抱きしめてくれた

『ごめんなさいね
心配かけて…』

『お父さんは?』

『会社にいったわよ
私は休みとっちゃった』

『(兄)さんは?』

『まだ寝てるんじゃないかしら』

あの後の事をききたかったけど、聞くのが怖かった

そんな私を察してか、S子さんはゆっくり話してくれた

『私ね…
前の夫と別れてから、あの子を守らなきゃってずっと思ってた
だけど、違ってた
あの子の後ろには、私がいたの』

『…?』

『雨降ってナンとやらね
あの子とゆっくり話せてよかった
いきなり家族団らんってわけにはいかないと思うけど、昨夜のようなことにはならないから…』

そこまで言うとS子さんは俯き私に申し訳なさそうにこう言った

『だから…あの子のこと…
嫌わないであげて…』

嫌いに?

確かに昨夜の(兄)さんは恐怖でしかなかった
こんな人とは一緒に暮らしていけないと思ってのも確かだ

でも嫌いにはなれなかった

たまに見る…
ロボットらしからぬ悲しい顔

その顔が私の幼い頃とかぶって見えた

『嫌いになんてならないです…』

そう言うと再び抱きしめ
『ありがとう』
と、そっと呟いてくれた

No.45 15/07/01 23:15
匿名 

その日の夕食

お父さんも帰ってきたので、テーブルにつく

お父さんとは昨夜のこと、昼のS子さんから聞いたことを話した
S子さん同様詳しいことは話さなかったが、これからはいい方向に向くといってくれた

夕食の用意が出来たのでS子さんが(兄)さんを呼ぶ

2階から降りてくる(兄)さんの足音
正直私はまだ怖かったのを覚えている

直ぐに椅子に座ると思っていたら何故かお父さんの前に立った

私はドキドキした
だが、そこからでた(兄)さんの言葉は予想に反するものだった
『昨日はすみませんでした…』

お父さんは何も言わずに笑って頷くだけ

そして私にも
『怖がらせてごめんな』
と、頭を下げたのだ

私は『いえ…』としか言えなかった


『さあ、食べましょ!』





食事中何度も(兄)さんをチラ見してた

あんなに頑なに反発してたのに…
それがたった一晩でこうも変わるのが不思議でならない

いいことなんだけど、昨夜の詳しい内容を知らないのは、この家で多分私だけ

そう思うと少し寂しい気持ちになった


『じゃあ仲直りのしるしに家族旅行行くか!


『あっいや…
そこまでは、まだちょっと…
照れ臭いっス』

『何で?そんな気にすることないじゃない』
そう言うS子さんを制するように
『そっか…じゃあしょうがない
って言うか、実は私もちょっと照れ臭い』

皆笑ってた
その中でも初めて見る(兄)さんの笑顔に無性に喜びを感じていた


No.46 15/07/02 22:32
匿名 

それからというもの(兄)さんは、少しずつではあるが皆の中に溶け込んでいった

お父さんともたまに話したりしているようだった

だけど私には…
冷たくはないのだがよそよそしく、あまり話してもらえない

(兄)さんに対する恐怖は日に日になくなってきてるのでそれに比例する形で寂しさがつのる

『照れてるのよ、あの子あまり女性に免疫ないから』
S子さんはそう言ってくれるが、私としては憧れだった兄という存在が現実となったわけだから、色々話してみたいとは思っている

だけど、私も男の人と気軽に話せるような性格ではない


ある日、家族旅行はまた次の機会にしようと言ったお父さんに対して、せっかく休み取ったなら3人で行ってくればいいと、(兄)さんが切り出した
(自分はあくまでバイトの為パス)


そこまで言うなら甘えちゃおうとS子さんが、旅行計画にのり出す


そこで私が新婚旅行も兼ねて2人で行ってくるように提案した



『何で?(私)さんと行くの楽しみにしてたのに!』

『受験生に夏休みなんてないよ!夏期講習だってあるんだから
その代わりお土産お願いね!』


何度も誘われたが、確かに受験生だから大切な時期、それに2人なら大丈夫だろうと言うことで盆休みを利用し三泊の旅行に出かけた

こうして、(兄)さんとの2人暮らしが始まった

前の日(兄)さんのスケジュールを聞いておいた(ご飯の用意とかの為)

初めは『お前行かないの?』と、ビックリしてたようだが、受験生だからと言うと納得したようだ

で、(兄)さんは4日ともバイト
朝昼はご飯要らない
夜は6時には帰宅と言うので夕食だけ作ることにした

別にいいよと断ったが、1人分作るのも2人分作るのも一緒だからと言うと、これにも納得したようだ

No.47 15/07/02 23:24
匿名 

別に恋愛感情がどうのこうのではない
ただ、(兄)さんと仲良くなりたかった


2人とも共通の話題がない
というか会話力の問題かもしれないが、会話が続かない


私は料理だけは得意だったので、そこからきっかけが作れたらなぁと思っていた

だけど私のこの計画はボロボロに崩れさる



1日目
(兄)さんはギリギリまで寝てたいらしく朝食は1人
塾に持っていく弁当をつくるが、(兄)さんのバイト先では賄いが出るらしい

ならば夕食時と思ってたけど緊張のあまり会話すら出来ない

食べたあと後片付けをしようとする(兄)さんに
『そのままでいいですよ』
と言うと、部屋に戻っていく

2日目
そうだ、笑顔だ!
あと、敬語も良くない
そう思って(兄)さんが帰ってくると
『おかえり』
と笑顔で出迎えた

面食らったような(兄)さん
でも『ただいま』で会話終了

夕食時も頑張った

『おいしい?』

『うん…』

『バイトって何してるの?』

『飲食店』

『大変?なんか(兄)さんが料理作るの想像出来ない』

『俺、フロアだから…』で終了


3日目

同じく何聞いても生返事
ヘタレな私は心が折れる…

4日目

相変わらず無愛想な(兄)さんに悲しさが頂点に…

ここで泣いたらダメだ
同情ひくのは嫌だ
そう思ったがあふれだす涙を止められなかった

そんな私の姿を見てビックリしたのか
『え!?どうした?』
と、声をかける

寂しさと泣いてしまった悔しさで益々涙があふれだす

『わた…しの…こと…
嫌い…です…か…?』

最後は言葉につまり言葉にならなかった

『いや…そんなことないけど…
どうした?』

そうきかれても泣き続ける私にどうしていいのか分からず、そそくさと夕食を平らげ部屋に戻ってしまった




さんざん泣いた後私も部屋に戻る
そして泣き疲れたたのか泥のように眠ってしまってた


その後2人が帰ってくると思い出したのは翌日になってからだった


No.48 15/07/03 20:03
匿名 

翌朝目が覚めると、そのまま眠ってしまったせいか寝汗で気持ち悪さを感じた

閉めていたはずの窓が開いてたことで、昨夜はお父さん達が帰ってくる日だったと思い出す

慌てて下へ降りるとS子さんがいた

『ただいま』

『お帰りなさい』

私は笑顔でこたえる
昨夜のことを知られるわけにはいかない

『ごめん、疲れて眠っちゃった
後片付けしてなかったでしょ?』

『いいのよ、(私)さんも(兄)の面倒みてくれてありがとね』

昨夜のことが一瞬フラバした

『私、シャワー浴びてくる
そのまま眠っちゃったからベトベト』

その場から逃げるように着替えを取り出しお風呂場へ逃げ込む







体はサッパリしたが、気分は沈んだままだった

旅行の話でも聞いて気分をまぎらわせようとリビングへ行く

『‼』

そこには(兄)さんがいた

『おはよ…』

(兄)さんはちょっと気まずそうに言う

『おはようございま…』

最後のほうは聞き取れないほど小さくなる

それから沈黙が流れたが、(兄)さんは何か言いたげだった

耐えきれず部屋を出ようとすると
『あのさ!』
呼び止められ振り向く

『あの…時間あるなら…ちょっと付き合ってくれん?』

黙ったまま頷いた

『俺、まだこの辺詳しくないから散歩でもしない?』



また何言われるのか怖かったが、断る理由も見つからなかったので付き合うことにした

『髪乾かすから…ちょっと待って…』




身支度を終え外で待つ(兄)さんの元へ向かった











No.49 15/07/03 20:55
匿名 

『この辺りにさ、落ち着いて話せる公園とかある?』


私の家は山を切り開いて建てられた住宅地だったので、近くにかなり広め(逃走中出来るくらい)の自然公園がある

『それなら5分くらい歩いた所に…』

『じゃあ案内してよ』

昨日までの(兄)さんとは違う
時折笑顔も見せる
何言われるんだろうと警戒していた心が徐々に薄れていくのを感じた

公園に着くまで終始無言だったけど、(兄)さんは何か色々思い巡らせいたようで、百面相している姿はいつものクールな(兄)さんとは別人みたいで…

こんな人間っぽい(?)仕草は見ていて面白かった


公園に着き林の遊歩道を進む

『へぇ…良いとこだな』

私もこの公園はお気に入りでたまに来る
広場もあるし遊具も充実している

いつかS子さんと一緒に来たかったが、まさか(兄)さんと先に来るとは予想だにしてなかった


暫く歩くとベンチを見つけた

『そこでちょっと休もうか』


2人でベンチに腰かける

暫しの沈黙のあと
『あのさ…昨日はごめんな』
と切り出してきた

『別に、嫌いとかじゃなくて…
って言うか、逆に嫌われてると思ったから…

ほら、この前怖いとこ見せちゃったし…

そしたらいきなり泣き出すから…
俺、混乱してさ…
何言ったら良いのか分からなくて…

それで、2人が帰ってきて
家の中の状態見て問い詰められて…

母さんにメチャクチャ怒られた』


『S子さんに?』

『うん…
お前を悲しませるようなことはするなって…

まぁそんなつもりはハナからなかったんだけど…』

ビックリした
昨夜そんなことになってたなんて…

それなのに今朝会った時は普通に接してくれたS子さんの優しさと、自分の昨夜のことはばれまいとする演技が見透かされてたはずかしさになんとも言えない気持ちになった

『S子さん他に何か言ってた?』


『うん…
お前のこと色々聞いた…』





No.50 15/07/03 22:24
匿名 

時は昨夜に遡る

~~~~~~~~~~~~~~

『ただいま~遅くなってごめんね~』

返事はない
しかもリビングの電気は付けっぱなし
台所も洗い物がそのまま
食べかけの夕食

普段私はきちんとしてたから、かなりおかしいと思ったらしい

そこに(兄)さん登場
何があったのか問い詰められる

『いや…俺も何がなんだか分からないんだけど…』

(兄)さんが状況を説明する
それを聞いたS子さんの顔が怒りに変わる

『あの子が何で残ったのか分かる?』

『受験生だからだろ?』

『それは多分口実、あなたと仲良くなりたかったのよ』

『そんなんわかんねぇよ!俺完全に嫌われてると思ったし!』


『…ご飯どうだった?』

『えっ?』

『あなたの大好物ばかりだったでしょ?凄く美味しかったでしょ?』

『……』

『女の子と言えど中3の子が、何もせずにあんなに上手に作れると思うの?』

『……』

『美味しいって言った?ありがとうって言った?

あの子が残るって決まった後、私にあなたの大好物や作り方を色々聞いてきたのよ
凄く嬉しそうに!

嫌いな相手にそこまでする!?』

『……』

『それに、あの子はあなたと同じ傷を持ってるの…

だから、あの子を悲しませることだけはしないで…』

そこまで言うとS子さんは部屋を出て行った

後に残されたお父さんが話しかける

『まぁ、知らなかったならしょうがないよな?』

『すみません…』

『いやぁ…ただ、あの子はそう簡単に人を嫌いにはならないよ
(私)は幼い頃母親から虐待されててねぇ…』

『えっ?』

『そういう過去があったからかも知れないが、(私)は人の痛みが分かる優しい子になってくれた
凄く気を使う子でね、人の顔色ばっかり気にしてる
親である私にさえね』

『そうだったんですか…』

『さっきお母さんが言った同じ傷ってのはそこのことなんだろう…

君は男だから立ち向かえただろうけど、女である(私)は辛かったろう

優しい反面、少し心が弱いところがある…
面倒臭いだろうがよろしく頼むよ…』

そこへS子さんが戻ってきた

『大丈夫、眠ってるだけみたいだった』

『そうか…』




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