まさか…私が

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2012/02/06 13:41(更新日時)

もう、どうにもならない事が

この世には たくさんある

受け入れられない現実と向き合うことは

自分が壊れてしまうほど辛く悲しいことだったりする


いちお
ノンフィクションです


No.1705791 (スレ作成日時)

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No.1

今から10年前…

もう始まっていたんだね



その時アタシは25歳
何も知らずに、当時4歳の娘と1歳の息子と
この世で1番愛するダンナさまと幸せな毎日を過ごしていた


ほんとに毎日が幸せそのものだった


No.2

ダンナさまは、せいちゃん

子供たちの面倒もよく見てくれる

とっても優しい人
アタシより1つ年下だけど、頼りがいがあって
面白い人。

当然、女の子にもよくモテる


でも
せいちゃんは、『女なんか面倒くせ~!俺、嘘つくの苦手だし すぐにバレて痛い目みるの分かってるしなぁー』
と言っていた…


ほんとに、嘘が下手くそな男だ…


No.3

アタシは、束縛が大嫌い

されるのも するのも
疲れるし…

だから、
せいちゃんには自由にさせてあげてたんだ

第一、信頼し合ってるから必要ないもん。


アタシは
浮気性の癖があったけど

付き合ってる時に
せいちゃんが泣いたんだ

『あいは、男友達…多過ぎる。俺は女友達もいらない。俺、嫉妬で辛い』

せいちゃんが、大粒の涙をポロポロとこぼして
アタシに訴えた


それから
アタシは、男友達と仲良くするのを止めた
(体の関係アリの友達もいました、男好きの女子でした(笑))


アタシも…
前の彼氏が浮気性で、しょっちゅう泣いてたから

せいちゃんに、そんな思いさせたくなかったから…

全部、連絡取らないようにして
疎遠にしていった


No.4

幼稚園からずっと一緒の親友…
悪友でもあるユマが言う


『あい~男、欲しくならねぇの?』


『もう懲り懲りだよ。誰かに裏切られて傷つくなんて、死んでもヤダ。
アタシは一生、恋しない』



そう。
アタシは、せいちゃんに裏切られていた…


No.5

衝撃的な事実を前に
アタシは震えた…


忘れもしない あの日。


息子が、
忘れて行った せいちゃんの携帯を触っていた時…


『コラー!
お父さんの大事なもの 触っちゃダメ~!』

息子から取り上げた携帯の画面…

ふと目をやると
やけにピンクだ…

読むつもりも無かったけど
ピンクのハート❤が存在をアピールするように
チカチカと光って見える



『今頃は、奥さんと居るの~😢悲しい
私のこと忘れないでね❤
愛してる❤』



アタシは…

固まった…



嘘だろ?


No.6

嘘だろ…

嘘だよね…


なんだこりゃ…


頭の中ぐちゃぐちゃになって

気がつけば、次々と携帯を握りしめ

愛の言葉を連発している
トチ狂った文章を読みあさっていた


1つでも冗談である証拠を探してたのかも知れない…

もう涙で
なんにも見えなかった


どこを探しても
愛の言葉、親密さを知らせるような
2人の世界のメールばかりだった…



悲しい…


ただ、ただ
悲しい…


怒りさえ湧いて来ない…


悲しい

悲しい

悲しい…



どうして?
どうして?


No.7

泣いている間にも 時間は過ぎる


全く覚えていないが、娘の幼稚園のお迎えに行った


その後、ママ友のサエちゃんに
『すごく泣き腫らした顔で、怖い顔してたよ。
声かけられ無かった…』
と言われた


彼女も同時期に、ダンナの裏切りにあっていたのだった…
この時、彼女も また なにも知らない幸せ者だった…



知らないと言うことは
幸せなのだろうか…



アタシはNo派だけどね



人を馬鹿にすんのも たいがいにしとけよ。

と、言うことです



No.8

アタシは、行動に出た。


とりあえず
せいちゃんの義母に相談&密告

義母は、まさかウチの息子が…!と驚き、戸惑い、信じられない!
と言った


すぐに義父から電話があり
義母に伝えた同じことを、ありのまま伝えた


せいちゃんはせいちゃんの親友、アタシとも仲良くしてる共通の友達
ヨシにもメールで『彼女出来たんだ😁内緒な』
と送信していた


だから、
義父、義母もヨシに彼女と言ってるなら…
間違いないのだな…と落ち込んでいた


そして、
アタシに今夜2人で話し合いをするように
と念を押して

泣きじゃくるアタシに、申し訳ない。ごめんね。
とだけ言って
電話を切った…



怖かった…


せいちゃんが帰って来るまで、色んなことを考えた。

でも
答えなんか見つからない



信じられない…

これは夢?だよね


だって…
朝も いつも通りだったじゃん


嘘であって欲しい…


神様…嘘だよね?


そんなことしか考えられ無かった


自分の実家には
とても話しなんか出来なかった


アタシの幸せを願う両親…


随分、若気の至りで好き放題して迷惑かけた

今、アタシが温かい家庭を持ち
子供たちに囲まれて幸せに生きてる姿を見せること…

そんなこと位しか、出来ない
親孝行…


両親を悲しませるわけには いかない!


No.9

今夜、全てを明らかにしてやる!


アタシが混乱状態の頭で出せた答えは
そんなことだけだった…


これから先のことなんか頭に浮かば無かった


いきなりの裏切りに、何もかもが
ついて行け無かった


幼かったから…なのかな


ほんとに地獄に落とされた



No.10

せいちゃんが定時で帰って来た。


アタシは、どんな顔をしてただろうか

無言で
せいちゃんの忘れて行った携帯を
テーブルにバンッ!と出した。


忘れて行った今日も、昼過ぎに女からメールがあった


【みなちん】
『今夜、忘年会だね~
2次会は抜けよ😉
んで、ウチ寄ってって❤
2人っきりで忘年会やろうよ⤴今夜は泊まって行くよね?』



アタシは『……会社…
同じ部署の女かよ!
【みなちん】笑わせんなや~!
なんとか言えや!』


せいちゃんを蹴り飛ばし、思いっ切りビンタをした


叩いた手のひらが痛かった…

でも
胸が張り裂けるかと思うくらい痛かった…



せいちゃんは
固まっていた。
青い顔をして、
『忘年会は…抜けられんから行って来る
話しは、また後で…』

着替えてウチを出て行った…


『絶対!絶対!帰って来て~!明日は…息子の誕生日だから…
女のとこには行かないでー!…あぁ~お願い…』

玄関に向かって泣きながら叫んだ



はぁ。ミジメだな…

と客観的に見ている自分がいた。



泣いて泣いて…
子供たちに抱き着いて
泣いて…

声を張り上げて泣いた

No.11

会社の忘年会…

帰って来るのは夜中かな

アタシを気づかって
早めに帰って来てくれるかな



今、思うと
どうしてあんなにポジティブ思考だったんだろう


どん底には変わりないけど、あの時は…まだアタシは動けた。

泣きながらでも、
ちゃんと切り替えて、子供たちにご飯を作り
食べさせて、お風呂に入れて寝させた


11時に
せいちゃんに、電話をした


せいちゃんは、相当酔ってるみたいで
『ごめんな~ 今日はちゃんと帰るから。
みなちんとは、話してないよ~…ちゃんと あいと話しするからね~』
と言って電話は切れた



何が、【みなちん】だよ!
馬鹿にしやがって!
クソったれ!
ベランダに出てタバコを吸いながら
壁を思い切りボコボコ蹴った

腹立たしかった。

酔ってるとは言え…

親しげに名前を呼ぶんじゃねぇ!


明日は息子の誕生日…



悲しみに包まれて
冬の夜空を見上げた

ねぇ。
神様、アタシ悪いことしましたか?



夜空は星がキラキラと輝いていた


人の気持ちもお構いなしだね(笑)



涙が止まら無かった


No.13

せいちゃんが帰って来るまでの間…

気が狂ってしまいそうで
高校からの友達
既婚者と不倫関係5年目…というMに電話をした


不倫女からみた不倫の気持ちや
奥さんに対する気持ちを聞きたくて


『はぁ~!?マジでか?そんなダンナ止めときな。反省しても、また繰り返すって!』
『女は別れたがらないだろうし、奥さんのせいで別れさせられた!私達は愛し合ってるのに…ってパターンだよ』
Mは、まくし立てた

あんただって、偉そうに言える立場じゃねぇだろ


『ほんと予期せぬ事態!って感じでさ…涙しか出て来ないんだ。
悲しい感情ばっかりで、まだ激しい怒りには…
信じられない。って気持ちで…
別れるとか考えられないよ~』アタシは また泣く

Mは静かに言った。

『ねぇ。相手の女はさ、もうとっくに あいと決着つける日のことを頭ん中でイメージトレーニングしてると思うよ。
アタシがそうだからさ…
どっちを取るの!ってイライラしてるよ!』


そうか…


Mは、奥さんなんか死ねばいいって思ってる

って付け加えた。


相手男は、奥さんの愚痴をこぼしながらも情があるし
子供が可愛いから
別れないだろうけどね…って


『M…Mこそ早く別れていい男に出会いなよ』

Mは、稀なる美人だ。
高嶺の花過ぎて、男は声がかけられないんだろうな。


Mと2人で泣いた…


No.14

夜中、1時を過ぎた頃に
せいちゃんは帰って来た


アタシは、
『あんなことがあったのに遅すぎる!女とイチャイチャしてたんじゃねぇの!』
ヒステリックに怒鳴り散らした。


せいちゃんは、
『今日は、なにも話してねぇよ。疲れたから、今夜は寝させて』

見たかったら
これ、見ろよ!


携帯をアタシに渡して寝室に入って行った


携帯のメール履歴をすぐに見た


【みなちん】
『今日、ウチ泊まるよね~❤楽しみだな⤴
せいちんの腕まくらだと、みなちんすぐに眠っちゃうんだ❤今夜もお願いしまーす』


【みなちん】
『なんかあった?せいちん…素っ気ないぞ?』

【みなちん】
『やっぱり、せいちん変だよ~!なんで?みなちん何かした?😢』


【みなちん】
『せいちーん!無視してるの?みなちん嫌いになった?😢』



せいちゃんは、どうする気なんだろう…


せいちん。腹立つ呼び名だ

だって…
せいちん。ってアタシ達が付き合ってた時の呼び名じゃん


そう呼ばせてるんだ…


No.15

頭が混乱状態から、Mと話して少しだけ冷静になれていた


アタシは、
もちろん眠れる心境じゃない。


せいちゃんに宛てて
黙々と手紙を書いた


今まで楽しかったことや、せいちゃんに出会えて幸せを感じたこと
2人の子供たちに恵まれて、ほんとうに幸せだったこと
喧嘩して飛び出したアタシを、いつも必死で探して見つけてくれたこと
…書いていけば行くほどに幸せだったことしか頭に浮かばないこと

せいちゃんを愛して止まないこと…



そして、
みなちんが好きなら
みなちんの所に行ってもいいよ。
ちゃんと別れてあげる。
さようならしようね。



そんなことを手紙に書いた。


明日から土日で休みだ

結末は怖いけど、もう戻れない。




あの頃の
若かったアタシは、ほんとうに強かった。


No.16

アタシとせいちゃんの出会い


アタシが高3の時、バイト先で知り合った1コ下のせいちゃん。

アタシは当時、1コ上の彼氏がいた

でも、やんちゃ盛りのアタシ達のデートはいつも夜遅く…単車で徘徊
ファミレスでマッタリ
そして、いつも彼氏の友達も一緒…しかも数人
そして浮気の常習犯。
もちろん2人きりもあったけどね。

楽しかったけど、不満もあった


そんな時、せいちゃんとバイト仲間と遊びに行った

お日様の下でせいちゃんの自転車に乗せてもらって海に行った

普通なんだけど 青春してるってアタシには、キラキラした時間だった…
海風を感じながら清々しい気分で せいちゃんを見つめてた


もう恋をしていた(笑)


すぐに彼氏と別れた
好きな人が出来た。って言った…

彼氏なりに、アタシを愛してくれてたのを知っていたから
別れを切り出すのに勇気がいった

傷つけることを承知で言葉にするのは
辛いことだった。
ごめんね。ごめんね。って
アタシも彼氏も泣いた。
いい思い出です。


そして、
堂々とせいちゃんに
『好きになりました。
アタシと付き合って!』って告白したら

せいちゃんも
『俺もずっと…』って照れながら満面の笑顔で答えてくれた

嬉しくて
『ヤッター!じゃあ、手つないで歩こ❤』ってせいちゃんの手を引き寄せた

そして、ほっぺにチュゥってキスした


アタシは
恋愛慣れしてる女の子だったね


せいちゃんは
『初恋は…あい。俺、女の子好きになったの初めて』って言ってたね…


とっても
とっても
純粋で純情でウブだった


あの頃の
せいちゃん…

No.17

一睡もすることなく朝が来た

子供たちが起きて来る


『おはよう~早起きだね~』
ウチの子は早起きだ

いつもアタシが『起きてー起きてー!』と起こされる

だから今朝は、ビックリしてる

息子に『おはよう❤お誕生日おめでとう』って抱っこをして
子供2人に、
『お父さんは、お昼前まで寝てるから起こさないでね』と言って
朝ご飯を食べさせた。


もちろん
今夜、とことん話しをするつもりだから…
眠たいと言われないように…言わさないように


アタシは、まだ自分の置かれてる立場に
理解できるけど…したくない…


まさか…アタシが…
こんな目に遭うなんて

なんでアタシが?


何が悪かったの?


疑問ばかりで、
悲しみばかりで、
いつ夜になったのか…その日の記憶は一切ない。


息子の2歳の誕生日なのに…

写真に写ってる
バースデーケーキと2本のローソク
無邪気な息子の笑顔。
ケーキを頬張る娘
アタシも笑って写ってるけど
これは、せいちゃんが撮ったんだよね…



記憶喪失?

覚えていない


記憶があるのは、子供たちが寝た後



手紙を渡した辺りからだ…


No.18

子供たちが寝たのを確認すると

アタシは、
せいちゃんの隣りに座った

しばらく沈黙が続いた

せいちゃんも無言のまま何も話さない


必死に弁解とかされると思っていたから
悲しかった…



アタシは、そっと手紙を出して
『読んでくれるかな?』
と素っ気なく言った


今にも 狂ったように泣き叫びそうだった

息がしにくい…
手が冷たくなって しびれて来る…




よく頑張れたな…と
今でも思う





アタシは一つだけ決めていたことがあった。



No.19

>> 12 続き、頑張って! ユリさん
読んでくださる方がいるなんて…
ありがとうございます☺
ボチボチですが、思い出し胸が痛むこともありますが頑張ります✏✨

No.20

アタシが決めていたこと…


もし、せいちゃんが本気で
『みなちん』を好きだと言葉にしたなら離婚しよう

手紙にも書いた通りだ

引き止めない。

ひとりで子供たちを連れて出て行こう。



もし、せいちゃんが嘘をついてでも
アタシ達と一緒に居たいと言ったら…


アタシは、
たった1度だけ騙されてあげよう…

許せる…なんて到底無理だけど




1度だけチャンスをあげる…


家族を手放すのも、家族を取り戻すのも

せいちゃん次第だよ…


せいちゃんは、アタシ以外の女の子と付き合ったこと…ないもんね



だから、チャンスをあげるよ
ほんとに1度だけ。





アタシは…
どっちの答えでも受け入れる!






なんであんなに、強かったのかなぁ…

ずっと、アタシは強くてひとりで生きて行ける女だったんだ



後に、更なる地獄に堕ちて
再起不能になったんだけどね


No.21

せいちゃんは、黙って手紙を読んでいる


アタシは、わずかな表情一つ見逃さないように
じっと せいちゃんを見つめ続ける


せいちゃんは、険しい顔をしていた

最後は目を赤くさせていた…


手紙を読み終えて
深くため息をつく…深呼吸…かな


だけと無言のままだった





長い長い沈黙…





その
沈黙を破ったのは、アタシ…



No.22

『ずっと…黙ってたら 何も分からないよ
喋ってくれなきゃ 分かんない!
それとも、迷ってるの?
それなら…迷ってると言って!』



まだ無言…



『てめぇ……なんとか言えや~!』

せいちゃんを蹴った。



せいちゃんは、ゴロンと体勢を崩した



アタシは泣き崩れた。



No.23

ゆっくりと せいちゃんが起き上がる


こっちを向いて
『もう、許してもらえない…と思った…【みなちん】は…』


また せいちゃんにビンタをした
『みなちんって呼ぶんじゃねぇ!』


『ごめん…みなは、なんでもないんだ。
大事な人だとは思ってない…遊び程度の気持ちだった』


『初めから話して』


『みなが、俺を好きだと言って来た。初めは断ったんだ!
だけど…キスされて…1度だけ抱いて。って言われたから
1度だけなら…と軽い気持ちでホテルに行った。
そしてアドレス交換してズルズルと今に至る…』

せいちゃんは下を向いていた


『でも、せいちゃんもメールで愛してる❤とか早く会いたい❤とか返してたじゃん…』


『信じてもらえなくていい…ただ相手に合わせ言ってただけだ。
俺は、あいが好きだ…
あいが居なくなったら、生きて行けない…』


せいちゃんは、泣いていた



アタシが居なくなったら生きて行けない…


何度も胸の奥でこだました…


No.24

馬鹿なアタシは せいちゃんに抱きついた


もう…嘘だろうと、なんだっていい!

愛おしい せいちゃん…

もう誰にも渡さない!

アタシ、せいちゃんを愛してる


騙されてたって構わない

真実なんか、どうだっていい…


せいちゃん。
せいちゃん。


『せいちゃん…
あなたと一緒に居たいよ
もう裏切ったりしないでね』


せいちゃんは泣いた
アタシも泣いた
2人で抱き合って泣いた…



『あい。あいに離婚を言われたら俺…事故に見せかけて死ぬつもりでいたんだ
あい。悲しませてごめんよ…』



『せいちゃん……』



『これからの俺を見ててな。あいを悲しませるマネは2度としない』


『うん
せいちゃん…次はないよ
アタシ…即、離婚するからね…』






アタシ達は、抱き合って眠りについた




この夜の出来事…

せいちゃんが死ぬと言ったことが アタシは嬉しかった



もう…いいよ。

胸の痛みは、いずれ癒えて行くよね…

せいちゃんさえ居れば大丈夫…





あの時の せいちゃんの言葉に嘘は無かったんだろう…



No.25

次の日、日曜日

家族4人で仲良くショッピングモールに行った


娘と約束していた
アニメのショーを見てた


アタシは
まだモヤモヤして、胸が痛かった。


せいちゃんは、娘を肩車してショーを見ていた

いつもと変わらぬ笑顔で…



息子の誕生日から5日後が、アタシの誕生日

26歳になるまでに決着をつける覚悟でいた…



みなちんと、せいちゃんを
キッチリと別れさすんだ!



Mとの話しで、
『不倫は別れて…寄りを戻して…馬鹿な2人は繰り返すから
あいが、間に入ってバッサリと切り離してやんな』

と言われていたからだ



絶対、26歳の誕生日を迎えるまでに…




アタシは、やってやる!


後…4日
のんびりしてる暇はない


No.26

夜…いつものように子供たちを寝させた


そっと、リビングに入る


無造作に置かれた せいちゃんの携帯を持ち
顔の前に つき出した。

『せいちゃん。今から女に電話して!アタシの前で別れると話して!』



一瞬…せいちゃんの顔が歪む



『できないの?まだ続ける気でいるわけ?
違うよね。遊びだったって言ってやれって言ってんだよ~!』


近くにあったティッシュの箱をブン投げて座り込んだ…





また…泣いてしまった…

No.27

しぶしぶ…と言う感じで
せいちゃんが携帯を持った


『早くしな!』


せいちゃんが【みなちん】に電話をする…

アタシは、耳を携帯に押し付ける格好で 話しを聞いていた



『せいち~ん😢どうしたの?忘年会の時…みなちん無視してたじゃん
みなちん あの夜、眠れなかったんだからね~』

電話が繋がると同時に聞こえて来た
よく喋る女だな…



無言のせいちゃん…


アタシは目で合図を出す



下を向きながら
『…ごめん。もう別れるから…』

せいちゃんは、それだけ言った


『ヤ…ヤダー!なんで急になの?別れるなんて嫌だから…
みなちん、せいちんが居ないと駄目なの~!
ヤダ~ァ!絶対別れない!』

携帯ごしに 女の悲痛な声が聞こえて来る


せいちゃんは『ごめんな…』と言ったきりで黙り込んでしまった


女の泣き声が携帯から漏れる


状況は…最悪だ


アタシは、せいちゃんが もっと冷たく淡々と別れ話しをするのを 想像してた…


悲しかったな…




我慢できなくなって アタシは携帯をせいちゃんから奪った



『もしもし。はじめまして
誰だか分かりますよね?』




あくまでも冷静に
ドラマで見たようなセリフを吐く自分が居た…




No.28

『……お…奥さんですか?』

小さな小さな声が聞こえた


『はい。そうです。主人がお世話になっております。今回、お2人のメールを見てしまったので 主人にどうするつもりなのかと聞いたところ
みなさんと別れる。と言ったので…
分かって頂けますよね?』

アタシは、淡々と話した



彼女は沈黙だ…

また 小さな声で
『せいさんは…私と別れるとおっしゃったのですか?…』

『はい。』


啜り泣く声…


アタシの方が泣きたいわー!
馬鹿にしやがって!



『あの…住まいはどちらですか?』
アタシは、あくまでも冷静に…だ。


『〇〇市です…』

『隣りの市ですね。今からお会いしたいのですが
〇〇〇まで来て頂けますか?お互い会ってお話ししましょう
主人も連れて行きますから』

アタシは、中間点にある居酒屋で話しをする提案を出した。



もちろん作戦だ。


このままの状態で 明日2人が会社で顔を合わせるなんて…


絶対、許せない



『そうですね…せいさんにも聞きたいこともあるので…
では、〇〇〇で待ってます』



せいさんに聞きたいこと?





腹ワタが煮えくり返る思いがした




せいちゃんは、ため息をついて
『ごめんな…任せるよ…あいとは別れたくない』と力なく言った…



情けない男だ…


No.30

怖かった…

ほんとは とても怖かった

だけど。
大切なモノを守るために必死だった…


自分を奮い立たせた


彼女に強く言えない せいちゃん…
優しいから…なのか
別れたくないから…なのか


もう一度せいちゃんに ゆっくりと話す


『せいちゃん…あの人の元に行きたいなら…
今のうちだよ?今なら…アタシは身を引くから…
正直な気持ちを話して』



せいちゃんは、首を振った。

『あいがいいんだ。
あいしか愛してない…あいを失ったら…俺…俺は生きられない』


わかった。




アタシは、相手の女の何も知らない
年齢さえ…

この勝負、1発で決めてやらなきゃならない。



『せいちゃん、女の年齢は?どんなタイプの女?』

クローゼットをバサバサと漁る


女の勝負は、見た目から…


『年は、あいの2コ上で…見た目は派手な女、でも内気で純粋…』


あぁ~!?内気で純粋?
んなこと聞いてねぇよ!
猫かぶってんだろうが。


『分かった。』



アタシは、戦闘服に身を包んだ

涙で崩れたメイクを直して、大きな輪っかのピアスを付けた


指輪、ブレスレット…

身を守るアイテムを次々と手に取る


全部、せいちゃんがプレゼントしてくれたモノ達…

金属アレルギーのアタシは
本物しか身に付けられない
もちろん。本物しか興味もないんだけどね(笑)


ネイルは趣味で、いつでもキラキラだ

剥がれてなくて良かったと 心から思った





アタシは、子供に留守番をさせない。
自分が 子供時代に淋しい思いをしてるから…

寝てる子供たちに
『今夜だけ、ごめんね』とキスをして






いざ 出陣!


No.31

車で居酒屋に向かう

チェーン店で騒がしい店だ

もし、どちらかが泣いたり大声を上げたりしても
酔っ払いだと思われるだけだろう


そう考えて、店を選んだ


車の中で 何度も吐き気がする…
体も冷たくなって倒れてしまいそうだ

体が震える…


せいちゃんが手を握ってくれた。

『あい…ごめん』
震えているアタシに気づいたんだろう



そう…強がってるけど
ほんとは、アタシは弱いんだ


怒りで震えられたらいいよなー

アタシは、現実を見るのが怖いんだ


みなが怖い…


せいちゃんに抱かれていた人…




店に着いて、駐車場を歩く
息がつまる…苦しい!


ドアを開ける…

今にも倒れそうだ…





頑張れ!アタシ!




No.32

せいちゃんが店をグルッと見たところ
彼女は、まだ来てないようだった


個室の座敷に通してもらい

…ひたすら待つ。



『こんばんは~。はじめまして!みなです』

やけにフレンドリーな声が聞こえて
彼女が現れた



想定外だった…
フレンドリー作戦とは…



アタシと向かう格好で女は座って笑顔を見せた。



……有り得ん。



みなは…お世辞にも綺麗とか、可愛いとか言える
そんなレベルじゃなかった


森三中の仲間に入れそうだ…


なんで…また…こんな女と…

頭が白くなって
頭の中でハトが軽く飛んだ(笑)


たしかに、真っ赤な口紅…
真っ黒なロングウェーブ(笑)
グルグルに巻かれた白いファーのマフラー

派手なことは違いない。



しかし、
笑いを誘っているのか?





今は、ギャルブームだぞ?


金髪ロングヘアーに
ヌーディーメイク、キラキラの粉を叩いて
アイラインは、しっかりひいて黒々しい瞳に仕上げ
グロスを軽くのせたアタシ…

戦闘服は背中が大きく開いた
黒いニットワンピ

ダイヤのクロスのネックレスが照明を浴びて光っているだろう


オシャレ、美容はアタシの趣味だ。


顔もスタイルも容姿には少し自信がある





目の前の女は…何者だ?


No.33

すっかり戦意喪失してしまった…


『どうもー。』と言ってタバコを吸う…



喋る気力も無くしてしまった…



みなが笑いながら口を開く


『せいさんの奥さん、綺麗な方ですね~
私なんか太っちゃって、オシャレもできない…
奥さんは、ママなのに全くママらしくないですね。
爪も綺麗だし…すごく女って感じですよね
生活感、全く感じませんよ~
ほんとに主婦なんですか?』


あちこちに刺がある。


『もちろん、ただの主婦ですよ~オシャレは唯一の趣味なんです』

タバコを揉み消し笑顔で答えた




茶番劇をやってる暇はねぇ!


きっちり落し前付けてもらおうじゃねぇか。



ウチでは、可愛い天使が2人帰りを寝て待ってんだよ!


No.34

みなの嫌味攻撃は続く


せいちゃんが切り出した
『みな、俺が好きなのはあいだ。子供たちだ。
もう付き合えない。
分かって欲しい…』
みなに向かって話してる



あー…リアル。
ほんとにこんな女と不倫なんかしてたんだ…


アタシは、ひどくミジメな気持ちだった


『嫌よ…せいちん。なんで?こんな女、せいちんに似合わないよ…
どこが好きなの?顔?体?』


みなの言葉にカチンと来た


『あんた…いい歳して 人のダンナにちょっかい出してんじゃねーよ。
既婚者だよ?
せいちゃんは、子供たちのお父さんなんだよ?
自分のやってること、分かってんのか?
なぁ不倫だぞ?
こっちは慰謝料請求出来るんだからな!
大人ならケジメ付けろや!』
テーブルをダンッ!!と叩いて

『お前もじゃ~!』

横に居た せいちゃんの頭をバシッとぶった




みなは、下を向いた



No.35

『慰謝料…?』

みなが小さな声でつぶやいた


『当たり前じゃん。不倫したんだからな。
一人暮らしで既婚の男をウチに呼ぶんだから
親にも報告させてもらうよ。
こんな被害は、アタシだけで十分だ。
実家でしっかり娘を見張ってろ!って言わせてもらうよ。』


みなの表情が変わった


『すみません…やめて下さい。』



『じゃあ、せいと別れて。今後一切、接触しないで!』


下を向いたまま…うなずく


アタシは自分の携帯を取出して
音声録音にした。


『これに、今日の日付と名前。〇〇〇せいと不倫関係にあったことを認めます。今後一切、〇〇〇せいとは接触しないと誓うと入れて』と携帯を渡した。


みなは、携帯を持ち
震えながら話した。

『次は、せいちゃんね。
同じように話して録音するから』


せいちゃんも話した





作戦…
第一段階終了…


No.36

追加…

『約束を守らなかった場合は、〇〇あいさんの望む慰謝料をお支払いします』


とそれぞれ録音させた。



これが公の場で使えるのか、分からないけど
脅すには十分の効果があった。



皆さん、紙やメモの無い場合にはオススメですよ(笑)
肉声ですからね



でも…
誰も、こんな思いを味わわなくて済む世の中を願います


No.37

そして、アタシは作戦その2を実行した


『みなさん、携帯出してくれるかな?』


『はい……』
不信ながらもカバンから携帯を出してくれた


『せいちゃんのアドレス。この場で削除してよ
アタシが見てる前で』


観念したのか画面を見せてくれながら
【削除】してもらった


もちろん。
メールボックスにある送受信のメールも【削除】してもらった


電話の履歴も全て


同じことを、せいちゃんにも 女の前で全て【削除】してもらった


3人が携帯を覗き込み 黙々と操作している

奇妙な光景だっただろう




そして、アタシのアドレスをみなに教えた


『せいちゃんに用がある時は、アタシを通してね』

『はい…』




2人は黙ったままだ。

お互い目も見ようとしない。




よし
作戦 第ニ段階終了…


No.38

アタシは、勝ち誇った顔をしていたかも知れない


目の前のダサく醜い女は、涙目で放心状態に見えた




悟られぬように、余裕ぶっこいてるふりをしていたが

アタシも また放心状態だった

まさか…アタシが…

こんな女に、せいちゃんが遊びとはいえ
不倫されてたなんて…



信じたくない…



でも。
もう終わったんだ



アタシの中でも、この女は
【削除】しよう…





せいちゃんは、チラチラとアタシを見ている


機嫌を伺ってるのだろう




こんな女…
全く納得いかない。
一体、どこが良かったんだ?


はぁ…

ため息が出る。





最後に
とどめを刺してやる。





作戦…その3だ…




しかし、
思わぬ展開になるのだった…



No.41

アタシは、せいちゃんと約束していた

ちゃんと【遊び】だったと女に伝えること…


ハッキリとした理由も言わず
妻にバレたから破局…

そんな風には終わらせたくなかった



『せいちゃん、みなさん。
言いたいことがあるなら、今 この場で話してね。
後でコソコソとされるのは嫌だから
アタシそれは 許さないよ』



さぁ…
【遊びだった】ってみなに伝えて!!
せいちゃん!!



せいちゃんは
女の方を向き じっと顔を見つめて…

『なんで、そんな格好してるんだ?
そんな変装して…
何考えてるのか分からないが、あいを騙してるのか?
君って…最低だな…』


アタシには、ちんぷんかんぷんだった…

変装って何のこと?


『服を脱げよ!!』
せいちゃんが大きな声を出した



一瞬…その場は固まった



何を 言い出すの?



服を脱げって…せいちゃん?



No.42

女は、涙声で
『せいちん…ほんとに別れる気でいるんだね…
アタシは、どうなろうと せいちんが好きなのに…
もう愛してないの?』


『とりあえず、服を脱げ』



それしか言わない せいちゃんにイライラした。



そして
女は、はちきれそうな白いコートの大きなボタンに手をかけた…


1つ…2つ…


外れて行くボタン…



赤い服が見え出した



アタシは、
タバコに火を付けて


ゆっくりと
ゆっくりと
動く…
みなの指先をぼんやり見ていた


No.43

3人とも無言だった…

時々、みなの鼻をすする音がする


壁にもたれながら、ぼんやりと見ていた みなの指先…
『…… !!… !!!!』

アタシは、ガバッと体を起こして
テーブルに肘をついた。

食い入るように見る


…… !! この指…!

……まさか…



嘘でしょう?

じっくりと、女の顔を見た…




激しく胸が鳴る



タバコの煙りがユラユラと歪んでのぼる…



No.44

女は、白いコートを脱いだ…


真っ赤な服…


白くグルグルと巻かれた 白いマフラーを首から外す…





とんでもない格好の女が目の前に居た。







………子供達の夢の配達人……








サンタクロース…



No.45

Mの言葉を思い出す


この女も、Mのように…来るべきバトルの日のために
イメージトレーニングをしていたのだろうか…


細い指先…



この女は、太ってなんかいない。



なにが…
私…太っちゃってオシャレもできない
……だよ?!





次の瞬間…

さらに驚くことが起きた





アタシは
アホ丸出しの顔をしていただろう…




女は、微かに口元を上げて笑った…?



No.46

サンタクロースは、頭に手をやり
なにやらモゾモゾとしていた



そして…



真っ黒なウェーブの長い髪の毛を
バサッと…取った…




アタシは…言葉も出ない



そこには
艶のある栗色の毛をした
ショートボブの女が居た。



No.47

女は、こちらをチラッと見て下を向いた…




アタシは、夢中でカバンをあさり メイクふき取りシートを2枚取り出した



『顔!!顔もふいて!!』



やたらと太い真っ黒な眉毛…

頬のそばかす…

紫色のアイシャドー…
真っ赤な口紅…


不自然だ…




それに一つ…
思い当たることがあった



夏の会社の納涼祭…
写真で見た、せいちゃんの隣りで
Vサインで笑顔で写ってた女性…

『この人可愛い~ね』って…せいちゃんに言ってた…
広末涼子に似た…




あの人に、間違いない。







あぁ…
めまいがする…


ロッキー…助けて…

(ロッキーは子供の頃から飼ってた愛犬、この事件の1年前にお星さまになった…)



ロッキー…お願い…
アタシを助けてよ…



No.48

みなは、サンタの衣装を脱ぎはじめた


『この格好ではトイレにも行けませんからね』
照れたように笑う…


サンタを脱ぎ捨て、頭をクシャクシャと軽く整えた


彼女は


…綺麗だった…



アタシと同じ…
ダイヤのクロスのネックレス…


照明を受けて キラキラと輝いていた…



白くポワポワした薄手のVネックのニット…

深いVネックから 女の色気が漂う…


プラダのポーチを手に『簡単にお化粧直して来ますね』

キュッと上がった お尻…



彼女はトイレに向かった





アタシは


涙をこらえるのに必死だった…








なんてミジメなんだろう


No.50

主です😃

読んでくださる方がいて
とても嬉しいです💕
ありがとうございます☺⤴

なにしろアホなもので…

表現力の乏しさに…😱⤵トホホ…💦

暇を見つけて✏ポチポチやります🎵


本文にも✏しましたが、自分が幼い頃、鍵っ子で淋しい思いをしているので
子供達を置いて出たのは、あの夜だけです。
不快にさせて申し訳ありません🙇


後、言葉使いの悪さも十分に分かっております。
リアルそのものを描きたい為です…

ご了承ください🙇


No.51

アタシは…弱い。

もう この場所に居るのが怖かった…


彼女が戻って来るのが怖かった…


見たくない…


アタシと同じに見えたネックレス…

せいちゃんがプレゼントしたの?



頭がおかしくなりそうだ


せいちゃんに問い詰めたい…!!




…だけど言葉にしたら、きっと涙が溢れる



『綺麗な人だったね』

一言ポツリとつぶやいた…



『あいほどじゃないよ…ごめんな』




『…うん。アタシ、あの人 知ってる…写真で見た人だよね…』


『…ああ』


やっぱり…そっかぁ




小さな声で、ポツリポツリと話す私達…



『大丈夫だから』
うつ向いて膝を抱え込んでるアタシの頭を、せいちゃんの手が そっと撫でる



アタシは力なく せいちゃんに寄り掛かかった…





『…怖い』



せいちゃんに…抱かれてた彼女…



何度…2人は抱き合ったのだろうか…




涙が…溢れてしまった


No.52

『ごめんなさい。お待たせしちゃって~』


明るい彼女の声がする





上を向けない…


アタシが、泣いていたのがバレるだろう



みなが、言う。
『あいさん…私ね、せいさんの事が大好きだったの。
あいさんから奪いたかったわ…
あいさんより愛されてるって思っていたの…
ごめんなさいね』

『せいさんからも、奥さんの話しは よく聞いてたわ。
今、思うと 私が聞き出してたんだけど…
あいさんが うらやましかった。
ほんとに純粋に愛していたの…
赤ちゃんとか欲しいな~って夢も見てた(笑)私、馬鹿だね』



みなは、よく喋る…





アタシは、膝を抱え込んだまま…うつ向いていた

何も言えなかった…



頭の中で、
【奪いたかった】
【愛されてた】
【愛してた】
【赤ちゃん】…単語がグルグル回っていた


涙が勝手に溢れる



泣き顔を見せたくない…


でも
『うっ…う…くっ…』




嗚咽は隠せなかった




No.53

せいちゃんが、泣いてるアタシを 包み込むように抱き寄せた


『みな。あのな…言っとくけど、俺は1度も本気で好きだと感じたことはない!』


『俺は馬鹿だ…
こんな女に何をしてたんだ…あい。ごめんな』


アタシは2人の顔を見た…



綺麗だった…
やっぱり広末涼子に似てる…


また 涙が出る



『せいさん?どういうことよ!!
私のこと愛してるって言ってたでしょ!!
奥さんの話しして うらやましいって言ったら…
今は、忘れよう。って いつも言ってたじゃない!!』


せいちゃんは、馬鹿にするように みなに言った


『前の彼氏も既婚者だろう?
不倫慣れしてる女だなーとしか見てないよ!!
本気になる訳ない(笑)
だいたい、既婚者に1回だけ抱いてって…
そんな軽い愛情、誰が本気にするかよ。

今回の変装といい…
全く、根性の悪い女だね。
君とは、遊び以外これっぽっちも気持ちはないよ
お互い忘れよう。
既婚者じゃないと燃えないんだろ?
君を見てたら分かったよ。』






女は泣き崩れた…








せいちゃん…!!!


No.61

主です😃

夜の間に、皆さんからスレを頂きありがとうございました✨


色々な意見があると思います。


感想スレ立てさせて頂いたので
そちらで、お願いします☺🎵


こちらは自レスのみにさせて頂きました🙇


No.62

『もう話すこともない』


『帰ろう…あい』


せいちゃんは、アタシを立たせた
足がしびれてるワケじゃないけど…うまく立てない



『待ちなさいよ!!』

泣き崩れていた みながキッとこちらをにらみ付ける

『あいさん…満足できた?私は、あんたを馬鹿にしてたわ
私があんたのダンナと寝てる間…あんたは子守歌でも歌ってると思うと 可笑しくてたまらなかった…アハハ(笑)

せいちんの携帯に貼ってるプリクラ、あんたの笑顔…何度も見たわ
爪で引っかいた跡、残ってるでしょ?(笑)
もしかして知らなかったとか?(笑)』

アタシは、またズルズルと座り込んだ…
力が出ない…


みなが大きな声で叫ぶ
『あんたになりたかったのよ!!』
『このネックレスも…ピンキーリングも…
シャネルの口紅も…
ほかにも沢山…みんな、あんたがしてるって聞いて真似たのよ!!』

『なんで、あんたが良くて…私が駄目なのよ…』


『もう死んで欲しいわ』



…それ以上の記憶はない

死んで欲しい!と言われて…アタシは意識がもうろうとした


せいちゃんに抱き抱えられて店を出た…




気がつけば家のベッドで朝だった…



子供達の起きて~!!攻撃…
いつもと変わらぬ朝だった…



No.63

…ズキン

頭が痛い…

とりあえず顔を洗おうと洗面台に立つ


『……!!何これ』

おでこが赤紫になって、たんこぶが出来ていた


夕べ…どこかにぶつけたのかな…?

昨夜の事を思い出すと、胸がズキズキと痛んで 息苦しくなる


はぁ…ため息が出る…



『ご飯は~?幼稚園遅刻するよー!!』


娘の声に、しっかりしなきゃ!

鏡に映る自分に喝を入れる


『納豆ご飯、食べてね~』
娘は自分でバリバリっと蓋を空け、器用にタレをかけてグルグル混ぜる

アタシは息子に食べさせる。



いつもと同じようで全く違う朝だった…


『せいちゃん!!起きて~朝だよ!!』


せいちゃんも、いつもと違う。

声と同時に飛び起きて アタシのおでこを見た


『あ~…こんなになっちゃって…あの女…!!
俺、今日は昼から出勤にするよ。
あい、少し寝てていいからね』



びっくりした…!!


『ふぅちゃん(娘)幼稚園、今日はお休みにしようね』

『お父さんなんで~ぇ?』

『今日は、お母さん頭ケガしてるから。お休みしてあげて』

『いいよ♪わかった』



アタシは、なんだか気持ちも何もかも
ついて行けず…ベッドに横になった


No.64

子供達は、テレビを見ている。

ご機嫌な歌声が聞こえて来る



せいちゃんが寝室に入って来た…


なんとなく気まずい空気



アタシのおでこに薬を塗って、絆創膏を貼ってくれた


夕べ…アイツに死ねって茶碗投げられて
見事に おでこに当たって アタシはフラフラになったらしい


死んでって言われたのは鮮明に覚えている。



茶碗…投げられたのか…



また胸がギュッと苦しくなった



No.65

疲れた…
ベッドにゴロンと仰向けに寝転び天井を見る


目から涙が流れる


発覚から4日目…まともに食事もとっていない

不思議とお腹も空かない

感覚も麻痺していたのだろう

タバコとコーヒーのみで生きていた。


胸を締め付けるような苦しみは、ずっと続いてる…

頭の中は未だ混乱状態…
考えても分からないことを延々と考えている


涙は次から次へと流れる




不信感は拭えない…


No.66

9時半過ぎに家の電話が鳴る


義母か義父だろう…

家には、シン(息子)とアタシしかいないと思ってかけて来たはずだ…


『せいちゃん、電話…出ないで!…多分、ママ友からだと思うから』

嘘をついた。


義父、義母にはアタシの口から話したい。

今、せいちゃんが出て ややこしくなるのは避けたい


あの頃のアタシは、また せいちゃんと仲良く4人で暮らして行くことを何より望んでいた…


No.67

昼前に、みなからメールがあった

せいちゃんに宛てたものか、アタシに宛てたものかは分からなかったが…


『卑怯者!!!』


たった一言…



メール画面を見ながら、ふとクローゼットに目がとまる。


何が卑怯者だよ…てめぇは着膨れたサンタの格好して来やがったくせに…

ふざけんなっ!!

頭にきた。



いちお、せいちゃんにも報告する


『卑怯者ってメール来たよ』


『相手にしない。シカト、シカト』
せいちゃんは 全く気にしてないようだ



まぁ…
もう、こんだけコジれたら不倫も終わりだな。



とりあえず…
第三段階終了…


これにて、一件落着…
ってなるか~ぁ!!!


アタシのズタズタに傷ついた心は置き去りかよ?


気持ち的には
アタシこそ全てを失った気分だった…


No.68

掃除機をかけてくれる せいちゃん…

『あい~ゆっくり寝てろって~』

『うん…』

普通のようで、普通じゃない。
胸がチクチク痛む…


せいちゃんの携帯を手に取った


『…………ひどいな』

家族4人で写ったプリクラは、アタシの顔だけが 小さな傷が たくさん入って削り取られたように無かった…

顔なし人間だった…


ご丁寧に
爪でガリガリとやってくれたんだね。


どんなに憎まれてたか、これ見ただけで十分過ぎるくらいに分かった。



はーぁ…

なんで…こんな目に遭わなきゃならんのだ…



前世で人でも殺したのかなぁ。

本気で考えたりした


No.69

お昼になり、せいちゃんが横になってたアタシに声をかける

『会社、行って来るよ。なるべく早めに帰るから』

『…行ってらっしゃい』



バタン。
ドアの閉まる音が聞こえた


…どうしても、せいちゃんに対してモヤモヤとした感情を持ってしまう


やり直す。って決めたのはアタシだ。


アタシ達、家族は…
強い絆で結びついてると信じたい




でも…
泣けて来るよ…



せいちゃん…なんで裏切ったの?


No.70

娘のふぅちゃんがお腹にやって来た時

アタシ達は、喜んだよね


早く結婚したかったアタシとせいちゃん…

年齢的に、まだ未熟だとお互いの両親に反対されてた。


ふぅちゃんが来てくれたおかげで、お互いの両親も祝福してくれた


でき婚…と言うより
作り婚かな。


でも、お腹が大きくなる前…6ヶ月でアタシは、手術をしなきゃ産めない体だってことを
妊娠してから知った


赤ちゃんも若いうちにしか産めない体だった…


だから、ふぅちゃんがハタチでお腹にやって来てくれたことは
ほんとに奇跡みたいなことだった…



手術をして産まれて来るまで半年間
寝たっきりで、腕には点滴…
トイレも管を差して…


あの時も、よく泣いたなぁ…


まさか…アタシが
なんで…アタシが

普通の妊娠さんがうらやましくて、妊婦雑誌たまごクラブを破いたりしたな…


普通に妊婦ライフを送りたかった


でも、現実は妊娠5ヶ月くらいから陣痛と戦う毎日

痛くて痛くて…

辛くて辛くて…

まだ産まれて来ちゃ駄目だよ…
あの時も怖かった

ふぅちゃんの命を守れるのか…不安だった

毎日泣いた。
ふぅちゃんにも泣き声が聞こえてたかも知れないね。ごめんね。


せいちゃんは、毎日毎日…病院に来てくれた

アタシを励まして、ふぅちゃんを励まして


せいちゃんが居たから頑張れた



桜も散る
春の大嵐の中、ふぅちゃんが産まれて来てくれた



せいちゃんと2人で、小さな小さな ふぅちゃんを抱いて泣いたね。


嬉しくて…感動した
アタシは、ふぅちゃんの命を守れて安堵感で いっぱいだった



No.71

半年間もの間、入院生活をしていたから
看護婦さんとも、ずいぶん親しくなって友達みたいに話しをしていた


主治医の先生とも親しくなっていた


婦長さんが、アタシの心境を配慮して
手術後は、妊娠さんとの接触が少ない 離れた個室を用意してくれた。

ありがたかったです…




せいちゃんしか頼れる人がいない
知らない土地に転勤したのは、アタシが妊娠発覚直後のことだった。

体のことも まだ知らないまま
新婚気分で地元を離れた


新しい地で、慣れる間もなく
体のことが分かった

新婚生活なんて1週間くらいしか経験してない…


両親は心配して、時々お見舞いに来てくれたけど


車で6時間の距離…

そんな頻繁には会えない



せいちゃんだけが支えだった


新婚生活のほとんどは、病院での思い出…


せいちゃんも また 新しい職場で大変だったと思う…



お互いが支えだったね…



愛だけでは生きて行けない。


だけど
愛がなくては頑張ることもできない。





アタシが、あの時に得た教訓


No.72

ふぅちゃんが産まれて、ベッドで余韻に浸っていた…

看護婦さんも、次々とお祝いを言いに病室に来てくれた


せいちゃんの両親に電話をした

『頑張ったわね!!おめでとう♪週末に行くからね』
『ありがとう。早くふぅちゃん見て欲しいです』


実家にも電話をした
『おばあちゃんになっちゃいましたよーお母さん(笑)!!』

『え~!!私、先月42歳になったばっかりよ!!
おばあちゃんって呼んでいいのは、ふぅちゃんだけ!(笑)
お父さんも46歳で、おじいちゃんね(笑)可笑しいわ~
おめでとう。週末に行くわね。』

当時、母は42歳 父は46歳だった

今、思うと若いなぁ~(笑)



幸せでいっぱいだった





せいちゃんが
『今夜は、病室に泊まってもいいよ。って婦長さんから言われた~』って喜んでた



2人で家族について色んな話しをしながら
眠りについた…






次の日の朝は、なんとなく病院での雰囲気が違って…



違和感を感じた




また、地獄に引きずり落とされて行くのだった…



No.73

看護婦さんが朝食を、持って来てくれた。

『あいちゃん、おはよう~今日からリハビリだからね。病院内をいっぱい歩くよ~!!』


『早くふぅちゃん見に行きたいよ~』


アタシは半年間寝たっきり生活で、動かしていいのは腕だけだった


だから、足腰の筋肉が弱ってフラフラ

一人で立つことも難しい


『ふぅちゃんのお世話ができるように、頑張ってリハビリしようね』

看護婦さんに元気に『は~い』と返事をした


せいちゃんもニコニコ笑って『俺もリハビリ見に行くよ!頑張って、お母さん』と茶化す。







でも、せいちゃんは少し無理してるように感じた



その理由は、アタシにも後に分かることになる…


No.74

朝食を食べて1時間もしないうちに
『リハビリ始めるよ~』
看護婦さんが迎えに来た


『じゃあ、せいちゃん行って来るね~』


スリッパを履こうとする…が
足が思うように動かせない

『頑張って!!』看護婦さんが手を叩く。


ただ、スリッパを履くだけのことに『頑張って』と言われてしまう


複雑だった…


ヨロヨロと支えられながら、リハビリ室に入る



ドラマのように、手すりを持って
引きずるように歩く…

ひたすら歩く…


思うように動かせない足


心は焦る…

悔しい。


ふぅちゃんが産まれて2日目のことだった


ふぅちゃんが産まれて、胸に抱いた…
あの感触を思い出して
ひたすら歩いた


早く退院して
家族3人で暮らしたい


早くふぅちゃんを抱っこしたい…


激しい運動でもしているように
汗でびっしょりだ


動け、動け、アタシの足…
足って重いんだな…



ひたすら歩いた


普通って…当たり前じゃないんだな。



No.75

半日もすると、手すりを持たずに
少しずつだけど、歩けるようになった。


『やっぱり若いわね!』
リハビリ室の看護婦さんに言われて
嬉しかった



トイレに行きたいな…


『トイレ、行って来ます』

『まだ、一人では難しいから…』

『大丈夫ですって♪』

アタシは、ヨロヨロと一人でトイレに行った




…難しい…

座れたものの、立つことができない

目の前に呼び出しブザーがあるけど…嫌だ。

一人で…頑張ってやる


立ち上がって、パジャマのズボンをあげようとした瞬間…

体勢を崩し…コケてしまった


トイレの個室…コケた格好で立ち上がることが出来ず

ブザーを押した…



泣いていた…

自分がミジメに思えた…


No.76

『随分、無茶したんだってねぇ』
笑いながら主治医の先生が言う


『だって…』
プイっと、そっぽを向く


『焦る気持ちは、分かるけど ふぅちゃんは逃げて行かないから
ゆっくりとリハビリすればいいよ』

先生は優しい。

アタシの涙を何度も見た人…


21歳の誕生日も、この病室で迎えた
せいちゃんが大きなバースデーケーキを買って来てくれて
先生や看護婦さんに囲まれてお祝いした。

先生は、ギターを片手に長渕剛の『乾杯』を歌ってくれた…



ほんとに優しい先生…


No.77

『ねぇ、先生!!アタシ…ふぅちゃん見に行きたい。赤ちゃん室にいるんでしょう?
他の赤ちゃん達と寝てるんだよね♪
アタシに似てるか、せいちゃんに似てるか
じっくり見たいよ~』


先生はニッコリ笑って


『じゃあ看護婦さん言っておくから
後で連れて行ってもらおうな』

『残念~。後でか~…分かったよ~』


せいちゃんも
『昼飯が先だ!!後で一緒にふぅちゃん見に行こう』

……ん~
なんで、みんな【後で】って言うんだろう。

赤ちゃん室は、お祝いに来た人や ママ達が自由に赤ちゃんを見に行く場所なのに…


アタシは、自由に見せてもらえないのかな?

考え過ぎ…?




アタシの、父方の ひぃおばあちゃんはアメリカ人。
会ったことも写真もないから どんな人かは知らないけど

ひぃおじいちゃんが、アメリカに渡って
そっちで結婚したらしい



だから、
おばあちゃんは、目が青い!しかも天然の金髪だったらしい
今は白髪だから、金髪の外国人も歳をとれば白髪になるんだと教えてもらった。
おばあちゃんは『外人~!!』ってイジメられて
戦争時代は悲惨で、辛い人生だったと言っていた


お父さんは掘りの深い インデアンみたいな顔だち
目は、ビー玉みたいで麦茶色


アタシも髪が茶色く、掘りが深い顔だち
目も麦茶色
たまに『ハーフ?』って聞かれるけど…

妹と弟は、更に外国人の顔だ(笑)

妹は、吉川ひなのを掘りの深い顔にしたような感じ。
アタシはかなり、劣等感を持ってしまう美人顔…


弟は、日本人には誰からも見られない
頭から、外国人として見られるそうだ(笑)
日本語が上手い!と褒められたりするらしい…(笑)


家族の間では、アタシがお母さんの次に日本人顔だ。




ふぅちゃんは…どんな顔かな~


No.78

お昼ご飯を、せいちゃんと一緒に食べた。

せいちゃんは、1週間も有給休暇を取ってくれていた


婦長さんが『あいちゃん。ふぅちゃん見に行こうか♪』と呼びに来てくれた


松葉杖1本を使いながら

せいちゃんと3人で、赤ちゃん室に向かう


何気なく婦長さんに
『赤ちゃん室って、自由に見に行っていいんだよね?』

『…基本的にはそうよ』

なんだか ひかかる婦長さんの言い方…



でも、
そんな不安は吹き飛んだ


赤ちゃん室で、ほかの赤ちゃんと並びながら
スヤスヤと寝てる ふぅちゃんをガラス越しに見た❤

『ふぅちゃん、寝てるよ~可愛いなぁ❤』

産まれてすぐに抱っこした、昨日のふぅちゃんより顔つきが もっと赤ちゃんっぽくしっかりしていた


『抱かせてあげるわね』

婦長さんに連れられて、せいちゃんと手の消毒、マスク、青いエプロンを身に付けて

椅子に腰かけて ふぅちゃんを抱いた。


体の奥からジワ~っと温かい気持ちが湧いて来る

せいちゃんも抱っこして『ふぅちゃんは俺に似たな❤』
『うん。せいちゃん似だね~』


幸せなひと時…


2500g少しの 小さな天使は
せいちゃんの腕の中で、パタパタと手足を動かせて私達を喜ばせた



No.79

午後からのスケジュールは、母乳マッサージ&母乳しぼり


これが痛いのなんの!!


容赦なく、看護婦さんがグリグリとマッサージをする(泣)

教えてもらいながら、アタシもマッサージをするのだが…

『甘い!(笑)もっと力入れて』と言われてしまう

『だって…痛いよ~』
泣き言を言いながらも、しっかり頑張る。


哺乳瓶をあてて、搾るとポタポタ…
と、母乳が出た!!

夢中でギュ~ギュ~と搾る。

哺乳瓶に貯まって行く母乳は、ふぅちゃんに飲ませるため

汗ばむほど頑張った。


『ふぅちゃんに飲ませてあげる?』

もちろんだ♪♪


また、消毒して…準備を整え
『ふぅちゃん、おっぱいだよ~』

うまく口に含ませられない…

と、思ったら ふぅちゃんがパクリ❤

クィクィクィっと見事に飲んでくれた

嬉しかったな~


そして、ふぅちゃんに直接乳首を含ませて
母乳をあげるトレーニングをした

なかなか難しいもんだ…




病室に帰ると、せいちゃんはいなかった。


気にもせず、おっぱいマッサージを頑張っていた




それにしても
せいちゃん遅いな…




夕方近くに 婦長さんと主治医の先生が呼びに来た



なんの疑いもなく

『なに~?』と後をついて行った



応接間のような綺麗な部屋に通された。

見知らぬ先生と
せいちゃんの姿…せいちゃんは泣き腫らした顔で椅子に座っていた…




アタシは…


頭の中が真っ白になった…




金づちで殴られたような…そんな感じ


No.80

『な…何?…』


恐怖でいっぱいになった

アタシは、松葉杖をカタンと落として

赤ちゃんのようにハイハイをして
その場から夢中で逃げようとした


『いや、いや、いや~ぁ!!』
泣きながらハイハイをした…

思うように動かない足…


『あいちゃん…!!!』
婦長さんが叫ぶ


『イヤ~~ァァ~!!』


『あい!!』
『あいちゃん!!』

せいちゃんと、主治医の先生の声…


必死でハイハイをするアタシ…
逃げ場なんてない…




主治医の先生に抱っこされて捕まった


先生は泣いていた…

ドクターは患者の前で泣いたら駄目じゃん…

優しい先生…



椅子に座らされ、見知らぬ先生が口を開く
『小児科の〇〇です』

机の上には
心臓のイラストが描かれた用紙があった…



目の前で先生は話す…

心臓のイラストにボールペンで何かを書きながら…





聞こえない






放心状態…
もう、何も聞こえない…




ほんとに何も聞こえ無かった…





ただ涙が出て
次々に涙が出て…



ずっと握ってくれていた
せいちゃんの手の感触だけ、覚えてる









アタシは、意識を失った…


No.81

目を覚ますとベッドの上で、点滴の針が腕に刺さっていた


心配そうな、せいちゃんの顔が見えた…


『大丈夫か?これ(点滴)精神安定剤と栄養剤だって。すぐに外してもらえるからな。』

せいちゃんが頭を撫でる


目を見つめ合ったら、涙がこぼれた
2人で泣いた…

『俺は、夕べ婦長さんから…ふぅちゃんの心音がおかしいから心臓の検査を受けたって聞いたんだ…』

『だから…1人で家に帰りたくなくて…泊まらせてもらったんだ』

『そうなんだ…せいちゃん…ごめんね。1人で辛かったよね』


せいちゃんは、泣きながら首をふった


『今日の話しは、先生からも婦長さんからも、あいは…まだ知らない方がいいって…言われたんだけど…

俺こそ、あいの気持ちに気づいてやれずに…

どんな事も2人で一緒に聞きたいってお願いしたんだ
俺が悪い…
あい…ごめんな』

せいちゃんは、最後は嗚咽で聞き取れない声で謝った


『せいちゃんは悪くないよ…誰も悪くない…』



まだ、受け入れられない現実に…

泣くしかできない2人だった…


『また明日、ゆっくりと話しするって…』



…幸せはつかの間だった

これから、どうなって行くんだろう…




何もできない。
ただ泣くしかできない…




声を張り上げて泣いた。




せいちゃんと手を握り合って
2人して声を張り上げて泣いた



No.82

泣きながらナースコールを押す


すぐに、婦長さんが飛んで来てくれた


お母さんみたいな温かい婦長さん…


アタシの顔を見るなり

『あいちゃん!!あいちゃん!!あいちゃん…』

何度もアタシの名前を呼んで ベッドの上に覆いかぶさるように
抱きしめてくれた…

アタシは声を上げて泣いていた

婦長さんも泣いていた…


患者の前で泣いちゃ駄目だよ…
婦長さんも…先生も…


優しい優しい人達に囲まれて…
あの時、アタシは救われた



点滴を外してもらい
『2人の実家には、私から電話をさせてもらったわ。
明日、2人のご両親が来てくれるわよ

あいちゃん…
辛い気持ちは、痛いほど分かってるから
涙をこらえちゃ駄目よ。
思いっきり泣きなさい…頑張って元気なふりしちゃ駄目よ…

明日、朝から ゆっくりと、あいちゃんに合わせてふぅちゃんの話をしてもらうように頼んでおいたから…
私も先生も、せいちゃんもついてるから
ふぅちゃんの事、目を反らさずに聞こうね』

優しく諭すように話してくれた




No.83

これからどうなってしまうのか…

マイナスな方向ばかりに頭が働く


結局、ふぅちゃんの体に何が起きているのか
意識を失ってしまって…何も知らない。

ただ、心臓という…命に直結する部分に問題がある…


もう、その時点でアタシには耐えられない…


【まさか…】
【なんで…】

頭の中で繰り返される



夕ご飯は、食べられるはずも無く


無言で、せいちゃんと手を握っていた。


『せいちゃん…ふぅちゃんの話し、先生からちゃんと聞けた?』


せいちゃんは、頭を掻きむしり

『頭の中が、真っ白になって…何も聞こえなくなった…ただ座ってるだけで精一杯で…
涙で何も見えなかった』

『あいが、部屋に入って来て
悲鳴を上げて逃げ回るのを見ても
声もかけられ無かったし
椅子に張り付いたまま…体も動か無かった…
情けないよな…ごめん

あの後もずっと、意識が朦朧としてて…
座ってるだけで精一杯だった…』



せいちゃんも同じ気持ちだったんだね



『現実を受け入れるのは、辛いね…』
アタシが言う

『信じられないよ…まさかこんな事が…自分に降りかかるなんて…』
せいちゃんが言う





ほんとに、
何が起こるか分からない。


No.84

『あいちゃ~ん…』看護婦さんが入って来る


何も言わずに抱きしめてくれる


また、涙が出てきた…
看護婦さんに抱き着いて泣く

『あいちゃん…あいちゃんは、ふぅちゃんのお母さんなんだよ。
ふぅちゃんは、ちゃんとミルクも飲んで頑張ってるよ』

『ふぅちゃんに少しでも母乳あげられるように、あいちゃんも お母さんの出来ること
ちゃんとしてあげようね

もちろん…あいちゃんの無理のない範囲でね』


看護婦さんの話しを聞いて、目が覚めた。
そう…
アタシは、ふぅちゃんのお母さんなんだ!


アタシは またおっぱいマッサージを始めた

『『痛い~(泣)おっぱいがカチカチになってる!!』


看護婦さんが『よく母乳が出そうな おっぱいよ~私が手を貸すね』

看護婦さんの手がグイグイやってくれる
『い…痛ぁいー!!拷問だぁ~(泣)』


そして、また哺乳瓶に母乳が貯まった。


アタシは、せいちゃんも誘って(もちろん許可は取りました)
赤ちゃん室で、ふぅちゃんを抱いて

母乳をあげる隣りの部屋に入った

親子3人だけの静かな部屋
母乳をあげて…足りない分はミルクを作り
せいちゃんが飲ませてあげて…

ゲップの仕方。
おむつの変え方…

せいちゃんと2人で、看護婦さんに習った通り
お世話をする



もちろん2人とも泣きながら…


こんな可愛い天使が…

ふぅちゃんの泣き声すら愛しい…



どうか、元気になりますように…


カーテンを開けて星に手を合わせて、せいちゃんと2人でお願いをした


静かな夜だった



『ふぅちゃん。明日、お父さんとお母さんは
ふぅちゃんの体の事をちゃんと聞いて来るからね。』

『もう逃げたりしないから、
お父さんとお母さんが、ふぅちゃんを守るからね』

ふぅちゃんは、スヤスヤと眠っていた





赤ちゃんは
何も分かるはずないのに
全てを悟り切ったような…顔をして見えるのは
アタシだけでしょうか?


No.85

今夜も、せいちゃんはお泊りした。

不安で胸がつぶされそうになりながら
2人寄り添って少し眠った


朝になるのが怖かった…


夜中に、また母乳をしぼり1人で赤ちゃん室へ向かう

せいちゃんは眠っていたので、起こさないようにした



ふぅちゃんと2人…

ふぅちゃんの温もり…



どうか、たいした事で有りませんように…



看護婦さんに、朝まで眠りなさい。ふぅちゃんのお世話は、任してね。


と、言われたので
お言葉に甘えて朝まで眠ることにした。


普通は、
ママが、看護婦さんから内線で電話をもらい
赤ちゃん室に集まって、ほかのママ達と 一緒にワイワイ楽しく赤ちゃんのお世話をする



アタシだけは、『誰もいないから、あいちゃんおいで~』と内線がかかる


気をつかってもらえて嬉しかった

…けど複雑でもあった



当たり前だが
アタシも、みんなとワイワイ楽しく出来たらいいのにな…




現実的には、こんな心境では無理だけど


No.86

よく眠れないまま3日目の朝が来た


松葉杖を持って、顔を洗い髪をとかす

普段のアタシとは別人のような、年老いた老婆のような自分が鏡の前に居た…


心も滅入ってしまう



看護婦さんが元気な声で入って来た

『おはよう~朝ご飯、今朝はサンドイッチだよ♪
せいちゃんの分も用意してもらえたから
しっかり食べてね!!』

『せいちゃんの分まで~?ありがとう❤』


思わず元気な声が出た。
久しぶりの気がした


昨日の朝も昼も元気だったはずだけど…

あの衝撃的なショックから…時間が経つのが遅くなってしまったみたいだ



『それと、ご飯食べ終わったら これ飲んでね。
精神安定剤、先生から指示があったから
ねっ!!大丈夫…みんなついてるよ』

『ありがとう…』


『ほら~泣いてないで食べなさい♪
せいちゃんもね』


2人で泣きながら黙々と食べた

『美味しいね…』
こっちを向いた せいちゃんの顔も疲れ切った顔だった


お互い
言葉にしなくても分かる



これから現実と向き合う恐怖…








2人は一心同体だ。


No.87

婦長さんが入って来た
ドキッとした…

『あいちゃん♪シャワーしましょう♪
半年間の間、1回もお湯使え無かったもんね…
頭も体もピカピカにして来なさい♪』

いつも、蒸しタオルで体を拭いてもらっていた

頭は週に1回洗ってもらっていた


『婦長さん、ありがとう❤』

素直に喜んで、シャワー室に行った。

1人では危なかっしいから…とせいちゃんがガラス越しに見守ってくれていた


気持ちいいー……


体はお尻より下は、洗えない…
まだフラフラだ…

『せいちゃん、足…洗って欲しい。』

せいちゃんが足を洗ってくれる

『長い間、あいだけで頑張ってくれたね。お疲れ様でした。
これからは、俺も頑張るからな』

『うん…2人一緒なら、なんだって乗り越えられるよ』



髪を乾かして、化粧水をつけた。
アタシは、別人のように綺麗になった(笑)


『やっぱり、あいって綺麗じゃ~ん(笑)』
せいちゃんが茶化しながらキスをして来た



ずいぶん久しぶりのキスだった。



誓いのキスのように清らかだった



No.88

病室へ帰る途中、看護婦さん達にすれ違う
『おはよう~♪』

看護婦さん達は『あいちゃん!!シャワーしたの?
スッゴく綺麗になって、見違えたよー♪タレントサンみたいよ(笑)』
3人の看護婦さん達に囲まれて
褒めてもらう。

照れ臭くって…嬉しい

『褒め過ぎー!!調子に乗っちゃうじゃん!!』


気分よく病室に帰った


鏡を見る




目だけは隠せない…

漫画でハチに刺されたキャラクターのように腫れ上がってた


こんな泣き腫らした目をしたタレントなんかいねーし…


でも、嬉しかった

力がみなぎるように、元気な気分になった




先生から声がかかるまでの間、おっぱいマッサージをして
ふぅちゃうのために母乳をポタポタ哺乳瓶に貯めていた






もしかしたら
話し次第では、アタシは今日はふぅちゃうのお世話をしに行けないかも知れない…




少しでも、多く母乳をあげたい。


痛いし、手も疲れて来るけど


必死に母乳をしぼり続けた


No.89

ついにやって来た…

病室に主治医の先生が『あいちゃん、せいちゃん』
と顔を出した。


『はい…』深い深呼吸をして、せいちゃんに支えられるように
廊下を歩く…



心臓がドクンドクンと早く鳴る


部屋に着くと、昨日の先生が居た。

お互い頭を下げる



心臓のイラストの用紙…



手足が冷たくなって行く…

No.90

お詫び(大雑把な説明になります。私自身も放心状態で大雑把にしか、理解出来ませんでした⤵)




『お子さんの状態ですが…
心臓に大きな穴が2つ空いています。

危険な状態です
…が、今の生まれて間もない体力では、おそらく手術は耐えられません。


夕方、心臓専門の先生が来てくださるので
詳しい話し、今後のことを説明してもらいますので、
質問は専門の先生にしてください。

お約束に立てる限り、立ちたいと思いますので
遠慮なくおっしゃってくださいね。』


こんな内容だった…



主治医の先生が、『辛い話しだったね…
僕らも辛い…よく頑張ったね。』
婦長さんも手を握り、泣いてくれていた


しばらくアタシ達、夫婦は言葉も出なく
椅子に座ったままだった…


声も無く


涙が頬をつたっていた






【なんで…】

【どうして…】

【どうなるの?…】



No.91

フラフラと2人で病室へ帰る

扉を開けると同時に、獣の遠吠えのような声を出して泣いた。


何も考えられなかった

せいちゃんが隣りで抱きしめてくれる


ただ、ただ…
泣いた。


せいちゃんも泣いていただろう…


声もかすれて行く
それでも、止まることのない遠吠えのような泣き声




無力なアタシは、泣くしか出来なかった



そんな中、2人の両親が婦長さんとともに
部屋へ入って来た…



生まれて始めて見る
娘の、のたうちまわり泣き叫ぶ姿に
アタシの両親は声をかけることもできなかったそうだ…


もっと、幸せいっぱいの笑顔で初孫を見せてあげたかったな…


ごめんね。

No.92

両家の両親は、主治医の先生から、今のふぅちゃんと私達の状態を聞いていた


婦長さんが声をかける

『あいちゃん、心が落ち着くように点滴させてね。大丈夫よ~、みんながついてるから』

アタシは横になり、点滴を打ってもらった


『あいちゃん、せいちゃん。みんなで落ち着いたらふぅちゃん抱っこしに来てね』



ずっと無言で天井を見ていた



せいちゃんと両親達が話してる声は、聞こえるが


何も話したく無かった



母親が隣りに来て
『あい…よく頑張ったわね。出産おめでとう
あいは、本当にお母さんになったのね。
だからこそ涙が出るのね…』
頬をつたう涙を拭いてくれた


義母も声をかけてくれた
『あいちゃん。頑張って赤ちゃん産んでくれて ありがとうね!!
あいちゃんは、立派なお母さんよ…
せいも、あいちゃんも本当に…』
義母さんは、顔をハンカチで覆った


みんなの方を向いて
『わざわざ仕事を休んで来てくれて、ありがとう
…心配してくれて、ありがとう』
それだけ言うのが精一杯だった



自分の悲しみばっかりで、みんなだって辛いに決まってるのに…

アタシがもっと気を使ってあげなきゃいけないのに…




分かってるけど…


自分の、狂ってわめき散らしたい気持ちを
どこにも、ぶつけようのない やり場のない気持ちを
自分の中で抑えることで精一杯だった…


点滴の薬よ…
もっと早く体中を巡って
アタシを正常な精神にして…!!


No.93

みんな、それぞれにソファーや椅子に座る

誰も話さない…


そんな中、母が話し始めた

『ねぇ、あい…
あいは、自分の体の障害をお父さんや、お母さんのせいにして責めたことがあったわね…

そして、後に…この体で良かった。ありがとう。って書いた手紙をくれたわね
あの時、お母さん…嬉しかったわ』



アタシは、生まれつき耳が悪い。
どんどん聴力は、落ち行った
小学生に上がる頃には、ほとんど聞こえなくなっていた
小1で手術をして、なんとか難聴という程度で済み
音を奪われることが防げたのだ。

以来、補聴器生活をしている
でも、辛いことが沢山あった



『なんで、こんな体に産んだんだよ!!
普通に、聞こえる耳が欲しい!!
アタシの聞いてる音は、機械を通して聞く音なんだ!!
生の音とは、違うんだよ!!悔しい!!
アタシだって、みんなみたいに音が聞きたい!!
なんで、こんな体に産んだんだーぁ!!!』

…そうだ。
中学に上がる頃…
アタシは、両親に責めまくった。


『お母さん…お父さん…
ごめんね。
アタシ、この体 超気に入ってるよ。
辛いこともあったけど、この体じゃないと こんな強い自分になれ無かったはずだから。
今は、補聴器をした音のある世界と
外した時の静かな音のない世界
2つの世界に住めるアタシは、幸せだと思うよ
この体を与えてくれて、ありがとう』


高校を卒業して、社会人になった 5月の母の日にそんな内容を書いた、手紙を送った。


母は、泣いてたなぁ…


No.94

母は続ける
『あいは、世の中は不公平だと 昔、何度も言ってたわね。
生まれた時から、不公平じゃないか!!って
…お母さんも、その通りだと言うしか無かった
でも、その中であいは自分なりに耳の障害と向き合い、幸せだと思えるまでに成長したのよ。
分かる?
ふぅちゃんの事も、あいだからこそ、与えられた試練かも知れない…』

『ちょっと宗教チックになっちゃったね(笑)』

母は、笑った。


アタシの心は、もう落ち着いていた。


『お母さん…ありがとう』
『せいちゃんも、ありがとう』
『お父さん、お母さん、お義父さん、お義母さん…来てくれて本当にありがとう。
みんなで、ふぅちゃん見てください!!
せいちゃんに、スッゴく似てるんですよ~(笑)』

場の空気が一気に和やかになった。


お父さんが
『せい君に似てるのか~♪ウチの家系はバァちゃんの血が強く出るからなぁ(笑)
正統派、日本人顔の孫娘登場って訳だなぁ!!』


その言葉に、みんなで笑った


No.95

みんなで ぞろぞろと赤ちゃん室に向かう

アタシの松葉杖を使う姿を見て、お父さんが言う

『さまになってるなぁ~(笑)😁』

キッと睨みつけ『うるさいなぁー!!今にスタスタ歩いてやるよ!!』

『おっ♪相変わらず、威勢がいいね~!!さすが、あい(笑)頑張って走り回って頂戴よ~』

『はいはい、走り回ってやりますよ。』


これが、お父さんの優しさなのだ



赤ちゃん室のドアを開け、中を覗く

看護婦さんが『あいちゃん!!待ってたよ~
さぁ、皆さんふぅちゃんもお待ちかねですよ』

みんなで消毒をして…ふぅちゃんを抱く準備をする


隣りの部屋に行くと、ふぅちゃんがスヤスヤと眠っていた


『ふぅちゃん…』
それぞれに、ふぅちゃんに声をかけて
次々に そっとふぅちゃんを抱く

『あ~本当に孫が抱けて嬉しい!!』
お義父さんは、涙目だ。
ふぅちゃんに頬を寄せてスリスリしようとしてる
お義母さんに『お父さん!!顔は消毒してないでしょ!!』と怒られている

みんなが笑う。

ふぅちゃんを真ん中に、みんなが笑う


アタシも優しい気持ちになる



…幸せ。


No.96

みんなに見守られて
ふぅちゃんのお世話をする

哺乳瓶のミルクをクィクィと飲ませ、トントンとゲップをさせて
オムツを代える。

『あい、なかなか母ちゃんらしいなぁ😁』
お父さんに言われる


アタシも、それなりに慣れて来た。


可愛いふぅちゃん…


リハビリも頑張るからね。
まだ ふらつくから立って抱っこはできないし
オムツを代えるのも、ちょっとキツイ
哺乳瓶の用意や消毒とか…

赤ちゃんのお世話をするには、普通の体力が必要だな…と痛感する


焦らずに、やって行こう!


名残惜しく、みんな なかなかふぅちゃんから離れようとしない


赤ちゃん室でガラス越しに見れる場所には、ふぅちゃんはいないから…



『ふぅちゃんも疲れるから、そろそろ行きましょうか』母の声に

『また見に来るからね』


また、ぞろぞろと病室に帰って
ふぅちゃんが せいちゃんにそっくりだ。と盛り上がった

せいちゃんは、お義父さん似で、
少しオダギリジョーに似ている。


せいちゃんのお姉さんは2人、どっちもお義母さんに そっくりだから

ふぅちゃんの成長した姿は、想像がつかないなぁ…

せいちゃんを…女性に…

いやいや。
やっぱり想像もできない(笑)


みんなで、あーだ こーだとふぅちゃんの話しをしていた。



心の中で、抱えてる不安は皆同じはずだ…

でも、幸せな時は 幸せを満喫しよう。






夕方まで、後もう少し…


No.97

夕方に近づく…
楽しい時間は早く過ぎるものだ


主治医の先生から声がかかる。

緊張の瞬間…

『ご両親も一緒に話しを聞いてください』

皆、無言で立ち上がり廊下へ出る

廊下には、小児科の先生がいた

軽くお辞儀をして
あの部屋へと歩いて行く…


心を落ち着かせるように『大丈夫…大丈夫…』呪文のように唱える


部屋へ着くと、人数分の椅子が用意されていた


心臓専門科の先生が自己紹介をして、座るように促してくれる

想像よりも若い先生だった(30代半ば?)



真ん中の席に、せいちゃんと座った。
隣りには、母が座った



あー…息がしにくい…



両親達も、無言だった。



お母さんは手に持ったハンカチをギュッと握りしめていた



No.98

お詫び(ふぅちゃんの病名、詳しい事は、伏せさせてください)


先生が話しを始める

『お子さんの心臓は、穴が2つ空いている状態です。
この状態では、血液を完全に綺麗にする働きができません。

………(伏せさせて頂きます)


と、言う状態なので体力が付き次第、手術が必要となります。

年齢が来たら、海外での移植という決断が必要と思われます。

ドナー等の問題も出て来ますが、今は目の前にある問題解決に専念しましょう。

こちらの方で、判断し 事前にきちんとした説明をして、慎重に進めて行きますので
ご心配はいりません。

お子さんのために頑張って行きましょう。』



皆が泣いていた…


【海外?】
【移植?】
【ドナー?】


テレビや新聞でよく聞く話し…



【まさか…我が子が…!!】




泣きながら、1番不安なことを質問した。



『ふぅちゃんは…どれくらい生きられるのですか…?』



先生は、険しい顔をした



そして、静かに…

『10歳まで生きられるように頑張りましょう…』



アタシは、泣き崩れた
嘘…でしょう…?




頑張らなくちゃ…10歳までも生きられないの?





やっぱり、この世は不公平じゃないか…




No.99

それからの細かいことは覚えていない。


病室で
泣いて、泣いて、泣いて暴れ回った。

赤ちゃん雑誌を破き、枕を壁にぶつけ…
声にならない叫びをあげてベッドに拳を叩きつけた

涙が次々にこぼれ落ちる


せいちゃんや両親達の事まで気にする余裕なんか無かった。

婦長さんの精神安定剤に…と言う点滴でさえ、拒否した
『いらねーぇよ!!…薬でごまかせるようなもんじゃねぇ!!』

『誰も近づくな!!…はぁはぁ…』




みんなの気持ちを本当に思いやれる事ができなかった…

ごめんね。みんな…

辛いのは、自分独りじゃないのに…

こんな時こそ、優しくなりたい。と今なら思う…それが強さだよね?
きっと…



あの時は…まだ駄目だった。


みんなを廊下に追い出そうとして暴言を吐いた。

『頼むから、独りにしてくれやぁ~!!』
誰にとはなく泣いて叫んだ





バチン!!!



頬に痛みが走った。

父だった

一瞬、呆然とした…



アタシが、見回すと病室のみんなが…それぞれに泣いていた

せいちゃん…
お父さん…
お母さん…
お義父さん…
お義母さん…


みんなが
それぞれに啜り泣いたり、俯いて泣いてたり、ハンカチで顔を覆って声を出して泣いていた



やっと…周りが見えた



No.100

お父さんがアタシを抱きしめてくれた



お父さんは泣き声で、優しく言った
『…あいを、抱っこするのは何年ぶりかなぁ』



アタシは、子供のように泣いた


さっきまでの、荒れ狂った涙じゃない


甘えっ子のように、お父さんに抱き着いて泣いた…


『悲しいよ…』もう声にならなかった


『悲しいね…あい…お前は一人じゃないぞ。』



『…うん』


優しさに触れて、救われた…





人の優しさは、
魔法のように不思議で 強い力を持っているんだと知った。



No.101

しんみりとした病室のドアをノックして
看護婦さんが入って来た。

『夕食ですが…良かったら宅配を頼みますか?
あいちゃんも、みんなと一緒にご飯食べる?』

『ありがとう…そうさせてもらう』


看護婦さんは、色んなお店のメニューを置いて行ってくれた


お義父さんが、メニューを見ながら
『お寿司でも頼みましょうか。初孫のお祝いに…』

少し、遠慮がちに聞いた


せいちゃんのお姉さん2人は、まだ独身だったから
ふぅちゃんは両家の初孫になる



お母さんが
『いいですね。初孫のお祝いしましょう!
私達が泣いてばかりいたら、ふぅちゃんが可哀相だわ。
せっかく生まれて来てくれたんだもの…
嬉しいことだわ。
お祝いしましょうよ!!』


…本音は複雑だったけど、気持ちが嬉しかった。


『じゃぁ、特上で!!(笑)』


早速、お寿司を頼んだ。


ふぅちゃんの病気の事には、今は誰一人触れなかった



お寿司が届くまで
アタシは、またベッドのカーテンを閉めて

ふぅちゃんに祈りを込めて
母乳を搾った


アタシのおっぱい!!
ふぅちゃんのお薬になってください…






どうか
ふぅちゃんに効く1番のお薬になってください…


No.102

テーブルに彩りの良い
ふぅちゃんのお祝いのお寿司が沢山並べられた


『ふぅちゃん、生まれて来てくれて ありがとう!!
ふぅちゃんに乾杯!!』
せいちゃんの乾杯の声に合わせ、皆で『乾杯!!』と麦茶をカチンと合わせた

口数は皆、少ないが楽しく食べていた




その時…
ほんとに、何てタイミングだろう…



テレビのニュースで、海外で心臓移植を待っていた女の子が
ドナーが現れず亡くなった…と報じられた




皆、お箸を止める…




父が『テレビを消せ!!!』と、びっくりするくらい大声で叫んだ




せいちゃんが、無言で立ち上がり
テレビを消した…







こんな偶然ってあるの?






今でも、
あのタイミングには参ったなぁ。
泣きっ面にハチだったと、実家で話しにのぼるくらいだ




この世に起こる事は、全て必然…
と言うならば、あのニュースが
あのタイミングで流され、私達が味わった気持ちにも意味があるのかな…



あの時の気持ちは忘れられない。

あのニュースの女の子の ご両親が、その後 時間をかけてでも立ち直り穏やかに生きていて欲しいと
今でも心から思う。


No.103

誰も何も話さ無かった、何を話していいのか分からなかったんだと思う


テレビを消して、静かになった病室で
黙々とお寿司を口に運ぶが…

皆、喉を通らないのか お箸が進まない



ガラガラ…『失礼します』主治医の先生が来てくれた。


『ふぅちゃんの出産祝いをしてるって聞いて、来ました』手にはギター…


ニュースの事など言えるはずもなく…
(アタシ一人なら、きっと言って泣いたに違いない)

『ありがとうございます。良かったら、先生も是非食べてください』
お義父さんが先生の椅子を用意しながら話す


先生も麦茶で乾杯した


『とりあえず一曲、歌わせてもらおうかな』


父と同い年の先生は、ギターをジャラン♪と鳴らし
坂本 九ちゃんの『見上げてごらん夜の星を』を歌ってくれた


先生の歌声が響く…


見上げてごらん夜の星を
小さな星の 小さな光が
ささやかな幸せを唄ってる

手を繋ごう僕と
追いかけよう夢を
二人なら苦しくなんかないさ


静かに…静かに胸に響く

パチパチ拍手をした。


そして2曲目に谷村新司『昴』を歌ってくれた

目を閉じて 何も見えず
哀しくて目を開ければ

荒野に向かう道より
他に見えるものは無し

ああ 砕け散る宿命の星達よ
せめて密やかに
この身を照らせよ

我も行く 心の命ずるままに
我も行く さらば昴よ



胸がいっぱいになっていた。

ほんとに先生に出会えて良かった



パチパチパチパチ拍手は鳴りやまない


両親達が、涙目で拍手をしている


せいちゃんと顔を見合わせて笑う



先生のおかげで
また、にぎやかにお寿司を食べた。


先生も終始、笑顔だった


父もギターを愛する一人
歌も抜群に上手い!!


先生にギターを借りて、ジャラン♪と目を閉じて歌う


サザンの『愛しのエリー』
これは、お嫁に行く時…アタシに送ってくれた歌だ


泣かした事もある冷たくしてもなお

寄り添う気持ちがあればいいのさ

俺にしてみりゃ これで最後のレディ

エリーMy love SO SWeet

笑ってもっとBaby無邪気にOn my mind

映ってもっとBaby素敵にIn your sight

誘い涙の日が落ちる

エリーMy love SO SWeetエリーMy love SO SWeet



感極まって熱い涙が落ちる

ありがとう…


No.104

温かい気持ちと不安と悲しみの中、長い1日が終わった


せいちゃんは、いったん帰ってお風呂に入り
荷物を持って来て、今夜も泊まってくれた。

アタシ一人じゃ、耐えられなかったと思う


アタシの両親はビジネスホテルへ
せいちゃんの両親は、掃除も兼ねて家に帰って行った


また悲しみに押し潰されそうになる

二人で肩を寄せ合い
『これからどうなるんだろうね…』

『ふぅちゃんは何も悪いことしてないのに…なんでなんだろうね…』

『アタシが悪いのかな…』





『そんなことない!!』
『あいが悪い訳ない!!』






『神様って意地悪だね…』二人で泣いた。

静かに…手を強く握り合って泣いた


二人は泣くしかできなかった…


悲しみで気が狂いそうな中…
『一番頑張ってるのは、ふぅちゃんなんだ!ってことだけは忘れずにいよう』と二人で励まし合った


だけど、
我が子のことを思えば思うほどに胸が痛くて
苦しかった…


暗闇の中に堕ちてしまいそうで、必死に気を強く持とうと
せいちゃんにしがみついた。


人の温もりに触れていないと…死にそうな気がした



No.105

深夜まで、お互いに寝ることも出来ず
ベッドで横になっていた


そのうち寝息が聞こえてきた

せいちゃんが眠った…


一人ぼっちになったようで、怖かった。


松葉杖を片手に、ふぅちゃんの元へ歩いて行った



赤ちゃん室のドアを開ける…


看護婦さんが気づいてくれた


『あいちゃん…眠れないのね…ふぅちゃんに、おっぱいあげる練習しようか?』

『うん…したい』


椅子に腰をかけて、看護婦さんがふぅちゃんを抱かせてくれる


そっと抱いて胸にふぅちゃんを近づけると
ふぅちゃんは、おっぱいを探すように顔を動かして上手に吸い付いた。


クックッ…ふぅちゃんが力強く吸い付く。



あぁ。ちゃんと生きてるじゃないか
ふぅちゃんには、生きる力がある…

と思う反面…


おっぱいを吸う我が子が愛しくて…切ない

夕方に聞いた心臓の話しが、頭に蘇る


今、この部屋にはふぅちゃんと二人きり

このまま…
ふぅちゃんと…
窓から飛び降りようか…


ここは8階…
二人で一緒に逝こうか…
ふぅちゃん…


涙がポタポタと落ちる



看護婦さんが部屋に入って来た『あいちゃん、上手じゃない!』


看護婦さんが隣りに座って話す

『あいちゃん…ふぅちゃんの事…きっと大丈夫よ!
…海外で移植の時には、そういうボランティア団体の方がいるから…
力になってもらえるし
お金の心配もあまりしないでね。』


お金の心配…



そんなこと頭にも浮かば無かった…


【お金】という言葉が、これは現実なんだ。
と嫌になるほど思い知らされた



暗闇に堕ちて行く感覚がした…



泣きながら
背中をさすりゲップをさせて
オムツを代えた…

ふぅちゃんの手を触るとギュッと握り返してくれた



『後は、お願いします』


逃げるように赤ちゃん室を後にした



震える体でベッドに潜り


せいちゃんを起こして、抱っこしてもらった


『死なないって言って!!大きな声で死なないって言ってよー!!』




『お願い……』



お願い…誰か助けて…



『イヤ~~アァ~!!』
頭を抱えて、髪をむしり取り乱した



No.106

興奮状態で叫び続けるアタシを
せいちゃんは、強く強く抱きしめて
何度も何度も『あい!!あい!!』と名前を呼び続けてくれた


ナースコールを押すせいちゃん…



ほんとごめんね…
あの時、せいちゃんはハタチ。
今のハタチの子達を見て思う…

幼いなぁ。と…

アタシとせいちゃんも、周りにはそんな風に映っていたのかな?



自分達の好きで選んだ道


子供を作って一緒になりたい。
早く、せいちゃんと温かい家庭を持ちたい。



アタシのエゴだったのかな?




普通に妊娠して 大きなお腹をさすりながら『あ。今、お腹蹴ったよ~♪』なんて
幸せな妊婦生活を楽しんで
そして、元気な赤ちゃんを産む。



そんなことを当たり前に想像していた



…けど。
それは、とても幸せなことで…決して当たり前の事なんかじゃ無かったんだね。




ハタチだった
せいちゃんは、もう立派な大人だったよ。



No.107

看護婦さんに点滴を打たれて、せいちゃんの腕の中で
アタシは眠った


よく朝、婦長さんが起こしに来た。


『あいちゃん…よく眠れた?』
『今日も、これからも、毎朝シャワー使っていいからね。
シャワー室ね 朝は誰も使わないから、あいちゃんの使い放題よ♪』

『わーぁ嬉しい。ありがとう婦長さん』



半年間蒸しタオルで体を拭いてもらうだけだった

顔もタオルで拭くだけ…


アタシの体は、垢で表面がガサガサになっていた。

昨日、しっかり洗ったつもりでも
半年間の垢を1日で綺麗に落とすのは無理だ

昨日の1回でも十分綺麗になったつもりでいたけど、まだまだ普通の肌とは…ほど遠い


これから徐々に綺麗に洗って、垢を落として行こう!


せいちゃんに今日も足洗って!!
とお願いしてシャワー室に向かった。



お湯が、こんなに気持ちいいなんて…



ゆっくりと念入りに、体を洗った。



No.108

シャワー室から病室に帰る途中に
赤ちゃん室、隣りにナースステーションがある


せいちゃんとリハビリを兼ねて、ヨロヨロとゆっくり歩いていると


お父さんとお母さんが、婦長さんと話しているのが見えた


母の浮かばない顔…?
声を出そうとした瞬間…

父の『あいは、どんな逆境にも負けませんよ!!
あの子は、私の娘ですから!!』
大きな声が聞こえて来た



何の話しをしてるんだろう…


そのまま近づく。

『何?何の話し?』

アタシの問い掛けに婦長さんが『…………』答えづらい顔をした。



『あいちゃんには…辛いことが続いてるから
私達…あいちゃんが産後欝にならないかと心配で…
ちょっと、お父さんとね そのお話しをしていたの…』


産後欝かぁ…

本にも書いてあったな…


『大丈夫です♪アタシ、辛い時は…恥ずかしいけど泣いたり、わめいたりして暴れますから(笑)
産後欝かな?って思ったら
その時、対処してください。
お願いしますね♪
心配してくれて、ありがとう』

ちょっと ふざけ気味に話した。



心配してくれる気持ちが嬉しくて、ふざけて話さないと
泣いてしまいそうだった



No.109

父が、
【どんな逆境にも負けない。私の娘だから。】
と言った言葉には、深い意味がある



話しが少し反れてしまうけど
アタシの幼少時代の事です。
(少し触れさせてください)


はじめに。
登場する、おじいちゃんとおばあちゃんの事は、ほんとに、とても大好きです。

話しの内容に、不快感を感じる方もいらっしゃると思いますが…アタシの原点でもある過去です。
ご理解ください。

おじいちゃん、おばあちゃんは最低かも知れませんが…アタシの愛する大切な人です。
中傷は出来る限り止めてください。



No.110

アタシとお父さんには、2人にしか解り合えない過去がある。



ウチの母は、昔からキャリアウーマンで
アタシを産んだ後も、2つ下の妹を産んだ後も、バリバリ仕事をしていた。


その間、私達姉妹は おばあちゃんの家(父方)に預けられている

おばあちゃんの家は、近所で 一回り上の12歳離れた父の兄(叔父さん)の家族と同居していた

家にはアタシと、6歳離れたKちゃんと3歳違いのHちゃんという姉弟のいとこがいた

いとこ達とは、とても仲良しだった。


そして、
大好きなおじいちゃんと、おばあちゃん


ただ…
おじいちゃんはDVだった

そして、また…
おばあちゃんもDVだった

DV同士の夫婦…


喧嘩は、凄まじいものだった。

近所の人が警察を呼ぶことも日常茶飯事…


まだ幼かったアタシは2歳下の妹を、この地獄のような毎日から
必死で守っていた…


叔父さんは無関係…
叔母さんはアタシ達、姉妹を疎ましく思っていた


居場所が無かった。


No.111

基本は優しい二人…

何が原因で突然、豹変するのか分からない…


いきなり殴りあいが始まるのだ


口から、血がボタボタと落ちて、死んじゃうんじゃないかと思うくらい
おばあちゃんを殴るおじいちゃん…


アタシが泣いて止めに入ると…


『大人の喧嘩に子供が出て来るな!!』
と、庇ったはずのおばあちゃんに蹴り飛ばされる…

そして、立ち上がり
おじいちゃんを馬乗りになって殴るおばあちゃん…


その火の粉は、幼いアタシに向かうことも良くあった…


体にアザが残ったら…
お母さんにバレる…
お母さんとお父さんが別れてしまうかも知れない…

幼いながらも、それだけが恐怖で
殴られる度に、毛布に体を包んで
『殴るなら、頭を殴ってー!!体だけは駄目ー!!』
と言って、体だけは綺麗だった。


でも、頭はボコボコとたんこぶだらけ…


何も知らない母が迎えに来て
夜にお風呂でシャンプーしてもらう…

もう…痛くて痛くて…

毎日、お風呂のシャンプーが怖かった


No.112

叔母さんも働いていた。

夜に、母がら残業で遅くなると連絡が入ると
叔母さんの機嫌は、一気に悪くなる



おじいちゃんも、おばあちゃんも叔母さんには
強く出られない。


アタシ達姉妹は、晩御飯を作ってもらえない…


ご飯にケチャップをかけて、混ぜて食べる…

テーブルにも座らせてもらえないから


いとこ家族の楽しそうに団欒するテーブルの下で
ケチャップご飯を黙ってかきこむ。

(アタシは、今でもオムライスが食べられない)


時々、妹がぐずる…


『黙らせろ!!飯がまずくなる』
叔父さんの怒鳴り声…

そんな時は
アタシは、妹を連れて夜の散歩をする。


夜空を眺めながら…星をずっと見てた


悲しいとかの感情は湧かなかった。


でも、悲しかった…
今なら分かる。
あの感情は悲しみだった


No.113

小学校に上がる前…

アタシは、何も聞こえなくなっていた


それも叔母さんをイラつかせたんだと思う。


昼間に、おじいちゃんやおばあちゃんに追い出されて
妹と外で遊ぶ…

夕方に帰って来た、叔母さんは家の鍵を全部閉めて
中に入れてもらえない…


そんなことも、しょっちゅうだった。



そんな時のために、少し離れた小屋に
お菓子をたくさん隠していた。


星空の下で、妹と2人でお菓子を食べたりした


『美味しいね~♪』って妹が悲しくならないように、明るく振る舞った


【妹だけは、アタシが守る。】

強く何度も星空に誓った



お菓子じゃイヤ!!って泣く日には
近所の口の固い信用できる、おじさんとおばさんの家に『ご飯食べさせてください』と頭を下げて食べさせてもらっていた。

その、おじさんの家は子宝に恵まれ無かったから
アタシ達を、ほんとに優しく いつでも迎えてくれた

あの、おじさんとおばさんがいなかったら…
どうなっていたんだろう


今でも感謝してもしきれない。


傷口を優しく消毒してくれたり、いつでもおいで
と言ってくれていた

そして、絶対にお母さんには言わないでね。
と言う約束を、ちゃんと守ってくれた。


心強かった。
本当にありがとうございました。


アタシは、どんなに辛いことも言わない事が
【家族を守ること】
【妹を守ること】
だと信じていた…


家族が離れ離れになるのが一番イヤだった


No.114

冬は、最悪だった…


いきなり殴りかかる、おじいちゃん…

裸足で飛び出す。


冷たい冷たい雪の中…
足の感覚もなくなる

寒くて寒くて…
空から舞い降りる雪の冷たさ…

冬は嫌いだった。


もう大丈夫かな…
家に戻ると、『どこ行ってた?寒いだろう…早く着替えてストーブで温まりなさい』

優しいおじいちゃんに変わってる

こんな日常だ。


『あいー!!』いきなり、おばあちゃんに叩かれて
ぶっ飛ばされる

鼻血が出る…
外へ飛び出して逃げる

追いかけて来る時もある

そして、家に引きずり込まれ
頭を拳でガンガンと殴られる…


フラフラになったアタシを泣きながら

『あい…大丈夫か?あいがいないと、おばあちゃんは死んでしまう。
おばあちゃんは、あいが大好きだー!!』
涙を流して強く抱きしめられる


フラフラだけど嬉しくて

『アタシも、おばあちゃんが大好きだよ…お母さんよりも一番好きだよ』
(本心です)
と言って抱きしめてもらう

狂ってるけど、嬉しかった…




妹には、一切手をあげない。

それがありがたかった


No.115

毎日がそんな日常だった


お母さんは仕事で頭がいっぱいだったんだろな…


叔母さんに、アタシ達が夜遅くまで出歩いて
ご飯も食べない!!と母に苦情を言う

(あんたが鍵かけて入れささないんじゃないか!
ご飯だって作ってもらったこともない!)



それも母は、鵜呑みにする


家に帰るなり、お説教が始まる。
『いい加減にしてちょうだい!!あいが、みんなにどれだけ迷惑かけてるのか分からないの?』

反論すると、平手打ちが飛ぶこともあった


どこに行っても辛かった

(おばあちゃんに抱きしめられて『あいが一番好き』と言ってもらえる
その時は、本当に幸せだった)



いつも、
妹だけは、助けてくれた

『お姉ちゃんは、悪くない!』


だけど…
母には、何も届かなかった…


でも、アタシは母も父も大好きだった。

ずっと家族でいたいから…

アタシが悪者でも構わなかった


体の痛みは、時間と共に治るものだと
すでに知っていたから、ぶたれても
【今だけ…今だけ…】と自分に言い聞かせていた



だけど。
夜、寝る時には涙が出た


心の傷は、自然と治るものじゃないんだね。
(今でも、当時を思い出して涙が出る夜がある)


No.116

おじいちゃんとおばあちゃんは、大好きだったけど

叔父さんと叔母さんは嫌いだった。


叔父さんは、怖かった。
いとこには、優しいお父さんだったんだろうか…

アタシの目には、実の子供にも無関心な
冷たい人にしか映らなかった。


暴力こそ振るわなかったけど、いとこが叔父さんと遊んでるのは見たことがない。

アタシのお父さんは、日曜日しか休みが無かったけど、たくさん遊んでくれた。
いっぱいの笑顔をアタシ達に向けてくれた。


お父さんは、おじいちゃんとおばあちゃんが大嫌いだ。

軽蔑する人間。
俺は、ああはなりたくない。

と、よく言っていた


酷い暮らしだったことも、よく話してくれた。

おじいちゃんとおばあちゃんの尋常でない喧嘩…

自分を含めた兄弟が、どれだけ悲惨な目に遭ってたか…



『ふーん』


と聞いていたが、思ってた…


【お父さん…アタシも同じなんだよ…変わってないよ、庇ってくれる兄弟もいない。アタシが妹の分まで頑張って耐えてるんだよ…
いとこは、逃げるから助けてくれない…アタシだけで闘ってるんだよ】






でも、言えない…



お父さんが大好きだから…


No.117

相変わらずな毎日だった

突然、豹変するおじいちゃん…
おばあちゃん…

さっきまで笑ってたのに、なんで?


意味も分からず 逃げる。体を防御する。


二人の喧嘩も相変わらずだった

おじいちゃんは、窓ガラスを割って暴れまくる

おばあちゃんは、包丁まで持ち出して走り回る…


でも、2時間もすると仲良く笑って話してる…


全く…分からない。


喧嘩が始まると
とにかく、妹を安全な場所に連れて逃げる。

そして、歌を歌ってあげる



でも、二人が笑顔だとすごく嬉しい


そんな時は、思いっきり甘える



晩御飯も相変わらず…


夕方になると
お母さんの残業がないことだけを祈る毎日…


夕方になると
空ばっかり見てた記憶がある


残業だったら
今夜は、妹のご飯…どうしよう…


そんな心配ばかりしてたな…



だから。
アニメの【蛍の墓】を観たら泣けて仕方ない

あの兄妹が…アタシ達とダブって見える

あの、お兄ちゃんの気持ちが痛いほど分かる


何度、観ても泣けてくる



No.118

そんな毎日に変化が起きた。

母が弟を産んだ!!

産休とかで、しばらく家に居られるようになった。


アタシは、おじいちゃん、おばあちゃんに会えないのは淋しいけど
嬉しくてたまら無かった。


しばらくは、殴られることもなく。

会う時の二人は、とても優しかった



弟もかわいくて仕方なかった


弟は、金髪に近いブラウンの髪だった。

少しグレーの青っぽい瞳
高い鼻。

お人形みたいだった


おじいちゃんもおばあちゃんも、かわいくて仕方ないみたいだった



母は、早く仕事に復帰したい。

そればかり言っていたような気がする…


昔は、女性の仕事に理解が無かったから
母は、誰かに席を取られてしまうのを恐れてたんだと思う。



そして、言葉通りに早く仕事に復帰した。



アタシには
更なる地獄の日々が始まった…


No.119

初めの頃は、穏やかだった

弟を中心に笑いが絶えない毎日…


おじいちゃんとおばあちゃんの喧嘩も、口で罵り合う程度だった


お母さんも残業せずに、定時に帰り

夕食を家で食べられた。



弟のおかげだと嬉しく思っていた



そして、弟が伝い歩きを初めた頃くらいから

また…変わって来た…



アタシが、小2だった頃だと思う


また、おじいちゃんとおばあちゃんが派手な喧嘩をした…


警察が来て
近所の人が見に来る…


ランドセルを背負って、帰って来たところだったから
妹と弟のことが心配で、走って家に入った…

(おじいちゃんとおばあちゃんは、同居でしたが部屋だけは、いとこの家と廊下で繋がる形で離れでした)

ぐちゃぐちゃの部屋の中…


妹が割れた鏡を見ていた

弟は、柱に犬のように繋がれる形でハイハイしていた…


アタシは…怖くなった。


二人を守るなんて…
できる自信がない…


警察は、いつものことだから すぐに帰ってしまう。

叔父さんには話しが行ってても
父は知らされて無かった…


これから…どうしよう…



そんな日に限って、母は残業だった…



いつものように
床に座り、黙ってケチャップご飯を食べる…

弟は、汚れた手で伝い歩きをする


叔父さんが汚い!!と弟を足で蹴った…


誰も何も言わない…
狂ってる。


妹と弟を抱いて、優しい近所のおじさんの家に走って行った…


『おっちゃーん…おばあちゃーん!!』

『あいちゃん!!どうした』
もう我慢できない。
二人の前で初めて、泣いてしまった



No.120

優しいおっちゃんとおばちゃんは山田さん。

山田さんは、見た目が怖い。

おっちゃんは、丸坊主で重そうなネックレスをいっぱい着けていた

おばちゃんは、金髪で紫色の服ばかり着ていた
頭も茶色で長い髪に、チリチリパーマをあてていた


でも、本当に優しかった


何の仕事をしてるかなんて、全く関係ない。

とにかく、優しかった。


でも、母にはあまり親しくしては駄目だときつく言われていた。


でも…あの山田さん夫婦がいなかったら
アタシ達は、とっくに死んでたかも知れない。


おばちゃんに全部話した

おっちゃんが抱きしめてくれた。

『あの、オッサンとオバサンは気性が荒いから…大変だったな。
嫁さんも冷たい女だしな』
『いつでもおいでって言っただろ?
子供が遠慮なんかすんなよ』



おっちゃんに、すがりついて泣いた


『いつでも来ていいの?』

『心の中では、俺の子供だよ』


赤の他人…
こんなに優しい…赤の他人…



ありがとう。

山田さん夫婦のことは、一生忘れません。

幼いアタシの支えでした


母の日と父の日に、誰にも内緒で
似顔絵を描いてプレゼントしました。

喜んでくれたなぁ~


それからは、毎晩のように 両親には内緒で晩御飯を食べさせてもらいました


お母さんは、今でも…この事実を知りません。

一生、言う気もありません。


山田さんとの秘密を守りたいから…


No.121

>> 120 お詫び🙇

誤りです💦

おばちゃんは【金髪】で…ではなく

おばちゃんは【金の指輪を沢山つけて】でした💦


No.122

そして、アタシが小3になって
妹も小1になった

ある日の事…


いつものように
おばあちゃんの家に帰ったら


喧嘩の真っ最中だった…


妹が弟を庇うように、部屋の隅で丸まっていた


体が固まった…


怒りでいっぱいになった


近くにあった椅子を、持ち上げて
暴れるおじいちゃんと暴れるおばあちゃんに
突進して行った。


『てめぇら、いい加減にしろよー!!』

椅子を振り回して、ガンガン暴れた

おばあちゃんの怒りが、アタシに向かう…


『止めんかい!!』髪を掴まれて、投げ飛ばされる

それでも立ち上がり、近くにあった
ハンガーを持っておばあちゃんを叩く
『うりゃ~!!てめぇら…いい加減にしろよ~』


全く効かない。

おじいちゃんまでが『いい加減にしろ!!』とアタシに殴りかかる


顔面に拳が入った…


血まみれになって、うずくまった…

負けた


後は、二人から殴り倒された。



妹と弟をチラっと見て


外に逃げろ!と指で合図を送った


二人は、一目散に逃げた


後は、どうなってもいいや…

好きなだけ殴ればいい…





【痛いのは…今だけ…今だけ…】


No.123

殴り終わって気が済むと

『あい…大丈夫か?』


大丈夫な訳ない。
もう動けない…


妹は、山田さんちに無事行けたかな?

そればかり考えていた。


もう、こんな生活イヤだ…
お父さんも、こんな生活してたんだなぁ。


ずっと起き上がれないアタシに、おばあちゃんが『あい…ごめんな…あい…死なんよな?』
涙を流して聞いてくる


狂ってる…


自分達がやっといて…なんで泣いて心配するの?


もう分からない…




弟を守るために体を張って庇ってた妹の姿…

ショックだった…


あの子にだけは…こんな思いさせたくない。







お父さんに話そう。



No.124

おばあちゃんは、タオルで顔を冷やしてくれた


おじいちゃんは
頭をずっと撫でてくれる


優しい…のにな

なんで?…分からない



山田さんのおっちゃんが、来てくれた

そんな事は、初めてだった



『あいちゃ~ん!!』
大声で叫び、ズカズカと部屋へ入って来た


びっくりしてる
おじいちゃんとおばあちゃん…

アタシも、びっくりしてた。


山田さんのおっちゃんは、アタシを見て叫んだ
『何やってんだ!!あんた達は!!』



おじいちゃんがキレた…


山田さんのおっちゃんに掴みかかって
『チンピラは黙っとけ!!』と殴りかかった…



『止めてー!!!!!』
アタシは、おじいちゃんの足にすがりついて泣いた



『連れて行け!!どこへでも連れて行け!!
サーカスにでも売り飛ばせ!!』
おじいちゃんは叫んだ…



山田さんは『夜まで、お預かりします』と言って


アタシをお姫様抱っこして、連れて帰った。


おばあちゃんは『人さらい!!』とわめき立てていた


山田さんのおっちゃんは、アタシに笑いかけてくれた『大丈夫だからな。子供が余計な心配すんな』


涙が出た…







あの時を思い出して…
今、携帯を打ちながらアタシは泣いてる。


アタシの、秘密のお父さん…
ありがとう…


No.125

山田さんちでは、妹が心配して外で待っていてくれた

アタシが見えると『お姉ちゃん!!』走って駆け寄って来る


『大丈夫だから…〇〇(妹の名前)は大丈夫?』

山田さんのおばちゃんも、出迎えてくれた


『あいちゃん…!!顔が…!!すぐに冷やそうね』


アタシは、顔が腫れ上がり瞼が切れて血が出ていた

まるで、ボクサーだ…


体中が痛い。
背中が特に痛かった


誰の血かも分からないけど…血が服や、手足にいっぱい付いていた


山田さんちで、そんな姿の自分を呆然と鏡で見ていた


『〇〇大丈夫?痛いとこない?何かされ無かった?』

『大丈夫…お姉ちゃんもいつも守ってくれてるでしょう?』

『お姉ちゃんは、いいの!!〇〇と、弟は絶対に痛い思いしたら駄目なの!!』


『ずっと隅っこで隠れてたよ、大丈夫』
妹は、笑った。


…良かった…無事だったんだ…



おばちゃんに手当てしてもらう
これで、何回目だろう…


おっちゃんは『血まみれで倒れてたから、本当にびっくりした!!良かった…
子供の癖に頑張ったな』
とアタシの頭を撫でてくれた


『おっちゃん…ごめん。ありがとう』と言うと
『子供が遠慮なんかすんなって!!無事で良かった…』



『アタシ、お父さんに言うよ。』


『うん。そうしろ。イカレた家に居てるくらいなら、俺んちに来い!』


『お父さんは優しいから大丈夫!!
叔父さんや、おばあちゃん達とは違うから。
でも、おっちゃんの子供でも良かったなぁ~』


山田さん夫婦は、ニッコリと笑った
『嬉しいねぇ~。あいちゃ~ん』と言って
おっちゃんが、ほお擦りしてくれた

『痛いよー(笑)』
『あっ!!ごめん。ごめん(笑)』



さて…
問題は、お母さん…


また怒られるんだろうな…


少し、気が重くなったけど
お父さんには、話そうと決めたから…しっかりしなきゃ。



アタシが守ってあげるからね!!




大好きな妹と弟を見て、強く思った。


お父さんなら分かってくれる。

でも、悲しむだろうな…


No.126

夜になって、山田さんちでいつものように
晩御飯を食べさせてもらっていた。


いつもは、食べ終わると急いでおばあちゃんの家に帰って母を待つ


でも、今夜は山田さんちに居た。



ピンポーン…

呼び鈴が鳴る。

母が迎えに来た
おばちゃんが出る

母の声が聞こえる…
『本当にご迷惑をおかけしました。
…えっ!!晩御飯までお世話になったのですか?
本当に申し訳ありません…
…………(聞き取れない)
ありがとうございました』


話しが終わって出て行った

『あいちゃん、またおいでね』
『ありがとう』
と玄関で挨拶をして帰った


帰り道…無言で歩いていると、母がアタシを強く引っ張った

母の方を向いた瞬間…

バチン…平手打ちをされた。


『あんた…何なの?そんなに怪我して…
女の子が、また喧嘩?
あいは、喧嘩ばっかり…おじいちゃんとおばあちゃんにそっくりで、ほんと野蛮な子!!』

お母さんは、アタシを置いてスタスタと弟を抱いて歩いて行った

妹が『違うのー!!お姉ちゃんは悪くないのー!!』と泣いて叫びながら母の後ろをついて行った



アタシは、ポツンと残されて…
下を向いてトボトボと歩いて帰った。


家は、鍵がかけられていて入れ無かった…


涙を必死になってこらえた。


分かってもらえる訳ない…
お母さんは、アタシを手の付けられない困った子供だと思っていたから…

ずっと言われ続けて来たし、アタシもあきらめてたから

【悪者でもいいや…】


絶対、謝らない。
アタシは悪いことしてないから。


でも、そんな態度が余計に母に【困った子供】と思われていたんだと思う…




お父さんの帰りを待とう。


今夜も、星が綺麗だな…

体が痛む。


泣きたい…でも泣かない!


お母さん…アタシの事、嫌いなんだろうな


一人ぼっち…だな。


そっと補聴器を外して無の世界に入る


No.127

長い間、静かな夜の中で空を見ていた

補聴器を外した静けさは、ほとんど無に近い


深い深い海の底にいるような気持ちになる。



『……!!』
トントンと肩を叩かれて振り向くと
妹が、シーィ…と指を口に当てている

急いで補聴器を付けて『大丈夫?』と聞いた

妹が手招きして、ついて行く

奥の座敷の窓が開いていた
『お姉ちゃん!!早く!!』
『ありがとう』


アタシ達、姉妹は時々 どちらかが外に放り出されると
こうやって助け合って来た。

放り出されるのは8割アタシなんだけど…



忍び足で、部屋へ入る…


でも、これもいつものパターン。
大概、ここで母にバレる



今夜もバレた…


『何で入って来たの?あんたは、外が好きなんでしょ?ずっと外にいてなさい!!』

『今日は、随分と顔が腫れて…一体どんな喧嘩して来たの!!
服にも血がついて…相手は?
相手は大丈夫なの?
お母さん、あんたの事が分からない!!』

体を捕まえられてお尻を出される…

バチンバチン…バチンバチン!!


『痛いーっ!!』

『あんたのお尻をぶつ、お母さんの手の方が痛いわよ!!』

バチン…バチン…!!


今日は、体中が痛いのに…背中がとっても痛いのに…



ほんとはお母さんに…話し聞いて欲しいけど…
お母さんは、おじいちゃんとおばあちゃんを許さないでしょ?

そしたら、別れてしまうんでしょ?


おばあちゃん達の事を、お母さんは離婚したいほど嫌いなのって

ずっとずっと前に、電話で誰かに話してたの…知ってる…



だから言えない…


『お母さん!!お姉ちゃんは…いつも……』

妹の泣き声に、『〇〇、お姉ちゃんとの約束!!…守って!!』


一瞬、母の手が止んだ。


しかし、また…
『何の約束よ!!誰をイジメたの!!泣かせたの!!
あいは…野蛮人!!』

バチンバチン…!!




あぁ…守りたい…


痛いくらいなんだ!!
グッと力を入れて耐える。



ああ、
涙が出そう…






痛いからじゃないよ…



No.128

『早く、お風呂に入って寝なさい!!』


やっと、解放された…


妹と一緒にお風呂に入る

体の、あちこちが内出血なのか赤くなっていた


お湯がしみて痛い…

『お姉ちゃん大丈夫?』心配そうな妹の顔


ここまで酷いのは初めてだった…

『大丈夫。大丈夫!!』と笑ってみたけど
内心は、アタシ…死ぬのかも…と思っていた



結局、お父さんには話しが出来ず
寝るはめになった。


背中が痛くて、うつぶせでベッドに横になった

でも、うつぶせだと今度は顔が痛む…


体勢をゴロゴロ変えながら、明日が来る…って怖いな…
ノストラダムスの大予言が今、来て欲しいと願っていた


そして寝てしまった…



願いは叶わず
朝が来た。


No.129

目が覚めて、体を起こすと…
ハンパない痛み

どうにか着替えて、顔を洗う

鏡には、誰か分からないほど
昨日より顔が腫れ上がったアタシが居た…


『早くしなさい!!』
アタシと妹を急かす母の声…


…どうしよう…


これは見せられない!!


トイレに入って、指を喉の奥に突っ込んで
『オエ~ッ…オエ~…』と大きな声を出した


そして二階の部屋へ戻って、布団を被る。



母が気づいて部屋に入って来た。

『あい…具合悪いの?』

『うん…さっき吐いたし…お腹も痛いから…今日は休む。』

『お母さん…仕事休めないから…一人で大丈夫?
何かあったら、おばあちゃんに電話するのよ』

『…うん』


布団で顔を隠して返事をした



良かった~。
バレずに済んだ




慌ただしく妹は学校へ、母と弟も出掛けて行った




はぁ…
これから、どうしよう…


No.130

体中をよく見てみる

昨日は、赤かった所が赤紫色になっていた…

体中、痣だらけだった

腫れ上がった顔にも痣があった



山田さんちに行こうかな…


お父さんの会社に電話しようかな…



電話の前に座り込んで、考えていた


考えても分からない…


とにかく。
アタシも限界だった


家の電話帳の1行目が、父の会社の電話番号


受話器を手にしてジ~コ…ジ~コ…ダイヤルを回す。


女性が出た
『〇〇〇〇の娘です!!お父さんに代わってください!』

女性は、びっくりしていたみたいだった

『お父さんの部署は分かる?』

『…分かりません。〇〇〇〇です!!お願いします!!』

『…ちょ…ちょっと待っててね』オルゴールが鳴り出した

緊張してドキドキしてた


遅いなぁ…
すごく待った…
もう駄目なのかな…


あきらめかけた頃に

『もしもし』お父さんの声がした。


アタシはワンワン泣いて『早く帰って来てー!!お願い、お父さん帰って来てよー!!』

『何があった?どうしたんだ?落ち着いて』

『もう、お父さんじゃないと駄目なの~帰って来て…アタシ…死んじゃうよ…』

『あい。落ち着いて!!今すぐ、おばあちゃんに行ってもらうから!!』


『違うのー!!』叫んでいた


『おばあちゃんが来たら、アタシほんとに死んじゃうよ…お母さんにも言っちゃ駄目~…』


…………




『分かった。お父さん、今すぐに帰るから待ってろ』

受話器を置いた






安堵感に包まれた…

でも、これで良かったのかな…?



アタシを見たら
どうなるんだろうな…



もう疲れた…


泣いたから切れてた瞼が痛い…


No.131

お父さんを待ってる間…急に不安になって来た


お母さんと別れてしまわないだろうか…


今まで、ずっと耐えて来たのがパァーになる

何のためにアタシは頑張って来たんだ?



…まずかったかな…


でも、妹が弟を庇う姿が頭に焼き付いて
離れない…


このままだと、きっとあの子まで…
痛い思いをする


それだけは絶対イヤだ。



なんで、普通じゃないんだろう…

ずっとずっと思って来たけど、
封印してきたけど、
理不尽なことだらけの状況に…悔しくて悔しくて…

『なんで、普通じゃねぇーんだよ!!』


一人でわめいて、カレンダーをビリビリと破って泣いた…

その時に、カレンダーで指を切って血が出た。

指先の血を黙って見ていた




暴力と暴言が飛び交う家の中…

おじいちゃんやおばあちゃん、アタシが血まみれでも
誰も、どうした?とは言わない

心配してくれるのは、妹だけ…

おじいちゃん、おばあちゃんの怪我を心配するのも
アタシ達姉妹だけ…


何があっても
普通にご飯を食べる家…




あの家は、一体…何なんだ?



普通じゃない。



ずっと思って来たけど、普通じゃない!


はっきりと分かった瞬間だった…


No.132

ガチャガチャ…

玄関のドアを開ける音がした。


アタシは、顔が腫れ上がってるのを父に見せたくなかった

びっくりされて心配かけると思って
弟のドラえもんのお面を被って待っていた…

(今、思うとなんかマヌケですね)



帰って来た、父はドラえもんのお面のアタシにびっくりした(笑)



『…何やってんだ?
どうしたんだ?…とりあえず、ドラえもん外して…』父がお面を取る…


アタシは、声を殺して泣いていた



外されたお面の下のアタシの顔…

父は、顔色がみるみる青く変わって行った


『あ……い…!!』


俯いて泣くアタシ…


『…あい…いつから…オジイとオバアだな…』




父の目には涙がたまっていた。


ギュッと抱きしめられる



思わず『…い…痛い!!』


ハッとする父の顔。



そっと服をめくり上げられた…



No.133

父が、服をめくり上げる…

チラリと見えた赤紫色の痣に、父は言葉を失った


『……アイツら…』


父が全部脱げと言うから
アタシはパンツ一丁の姿になった


痣は、肩から太ももまで…
水玉模様のように、無数にあった

背中は地図のようになっていたらしい


父が声を出して泣く


泣く父にびっくりした…

アタシも、なんて言えばいいのか分からず

『妹と弟は…大丈夫だよ。
アタシが、ちゃんと守って来たから…安心してお父さん

でも、昨日は帰って来たら…妹が弟を庇って丸まってたの…

アタシ…弟まで守れる自信がない…
妹まで、こんな思いさせたくないの
お父さん…どうしよう!』


父は、アタシの頭を優しく撫でてくれた


そして『頭もコブだらけじゃないか…!!』



また、父は泣いた


No.134

父が、とりあえず病院に行こう!
と連れて行ってくれた


父の同級生がやってる個人病院


その前に、弟をおばあちゃんの家に迎えに行った



突然の父の訪問に、おばあちゃんは
『どうしたんだ?何かあったのか?』と言った

おじいちゃんは留守だった


父は『…何かあったじゃねぇだろ!!くそババア!!』と怒鳴り散らした


おばあちゃんは、意味が分からない様子で
ただ、びっくりしていた



柱に、犬のように紐でくくられている弟…


アタシが前にかわいそうだと言ったら
これは、チョロチョロと歩き回らさないためだよ
と、おばあちゃんから説明されていた


でも
やっぱり父は、そんな弟の姿を見て激怒した


おばあちゃんが、父に『人のやり方に口出しすんな!!』と殴りかかった…


父は、おばあちゃんを無視して弟の紐をほどいて抱っこした


父の背中を、ガンガン拳で殴るおばあちゃん


『なんでも暴力なんだな。変わってない…
ババアもジジイも最低…
こんな親で情けない…』



『あい。行くぞ…』



おばあちゃんは、叫びながら走ってついて来た


父は無言のまま、車に乗った
アタシも父について行った…



でも、おばあちゃんの必死な顔を見て
切なかった…


No.135

父は車の中で
『いつも、弟はあんな風に繋がれてるのか?』

『…うん。前にかわいそうって言ったら
チョロチョロするから…って…』

『………あいは、何度も殴られてたのか?』

『……うん…』

『お母さんには、言ってないんだな…
夕べもお母さんは、あいが また誰かと酷い喧嘩して来たみたいだと言ってたからな…
いつも喋ってないのか?』

『…うん…それは、後で話し聞いてくれる?』

『分かった』


お父さんは、優しくこっちを向いて笑ってくれた



お父さんのビー玉みたいな瞳
涙でキラキラして綺麗だった

純粋な日本人には、こんな瞳の人はいない。



どうか、お母さんと別れたりしませんように…


No.136

父の同級生の病院に着いて、診察してもらう

『酷いな~ぁ…』

『…情けない…俺の親が殴りやがった』

『△△(父)の親か…相変わらずだな…
△△も苦労するなぁ』


『あいちゃん、痛くない?』
声をかけてもらいながら、体中をギュッギュッと押される

背中を押された時、激痛が走った

『いっ…痛ーい!!』



レントゲンを撮られた。


骨にヒビが入っていたらしい


やっぱりな~、だって背中すごく痛かったから


痛み止めと塗り薬をもらって、しばらくは家で安静に…

と言われ帰った。


お父さんの同級生の先生も、おばあちゃん達のこと知ってるんだ…


そんなに昔から有名なのか…


はぁ…
ため息が出た。


No.137

アタシ、死なないんだ
ほんとに内心、死ぬかも…って思ってたから安心した


父の車に乗る。

帰り道…車がおばあちゃんの家の筋を曲がった

『え……?』家は真っすぐなのに…?


おばあちゃんの家の前で、お父さんは車を止めた


嫌な予感がした…


『お父さん…どうしたの?家に帰ろうよ…』


『待ってろ』ニッコリ笑って頭に手をやる


とっさに
『駄目!!お父さん…!!喧嘩したら駄目!!
……お願い。ちゃんとアタシの話しを聞いてよ!!
人を殴ったら、どっちも痛いんだよ!!』




『………………』

父は、頭を抱えて車をガンッ!と蹴った
(お父さん…車、すっごく大事にしてたのに)


『クソッ!あ~あ!!悔しいわ!!
あいは…お姉ちゃんだな』



車は、家に向かって帰った


父は、あの時おじいちゃんとおばあちゃんを
めちゃくちゃにしてやるつもりだった…と後になって聞いた


No.138

家に帰って、お父さんと一緒にラーメンを食べた

二人でご飯食べるなんて初めてだったから
嬉しかった。

弟も居たけど…(笑)
気持ち的には二人。



ご飯が終わって、弟が昼寝をして静かになった


何を話して、何を隠しておこうか…
病院帰りにおばあちゃんの家に寄った時から、ずっと考えていた


あれは…まずい。
これも…まずい。

まずいことだらけで、焦っていた

問い詰められるのは、分かっていたし…

だって、アタシが父に助けて!!と電話したんだから…


もう、この際だから全て話そう。


……ほんとに?
大丈夫かな…

自問自答を繰り返す


でも、妹を思うと話すしかない


どうか、お母さんと別れませんように…


ずっと一人で耐えてきたことを打ち明けられる
安堵感…

もっと自分が大人で強かったらと思う、悔しさ…


おじいちゃんも
おばあちゃんも
お父さんも
お母さんも
妹も
弟も
そしてアタシ自信も


全てを守りたい。

……そう願った。




欲張りだったかな…?


No.139

お父さんがアタシを呼ぶ

薬を飲ませて、塗り薬を顔や体に塗ってくれた


『あい。話ししようか…
お父さん毎晩遅くて、お母さんからしか話し聞いてないから…
ごめんな。こんな辛い目に遭わせて…

全部、話してくれ』


『お父さんは、悪くないよ…
あのね…
……………………』


おじいちゃんとおばあちゃんが、いつも喧嘩してること

二人がいきなり、アタシを殴ったり叩いたり、蹴ったりすること

でも、妹には手を出さないで!と言う約束はちゃんと守ってくれてること

叔母さんに嫌われてること

ご飯を食べさせてもらってないこと

叔父さんが、弟を預かるようになってから
弟とアタシを蹴ったり、怒鳴りつけるようになったこと

いつも、殴られる時は体に傷や痣が残らないように頭をぶって!と約束してること


そして、お母さんはアタシがいつも喧嘩して
野蛮人だと思ってること

その言い訳をしないこと


妹に、アタシのことを絶対喋らないように約束させてること


ほかにも沢山あるけど、話したくないこと…



そして一番の気掛かりは、妹のことと…
お父さんとお母さんが、アタシのことを聞いて おばあちゃん達と喧嘩になって
別れてしまうんじゃないかと思ってること…



そんな事を話した。


お父さんは、手で顔を覆って聞いていた


涙が落ちてたから、泣いてるんだとすぐに分かった…


アタシを膝の上に座らせて、ごめんな…ごめんな…と何度も言っていた


アタシも泣いた。



でも、感情的になって辛いよー!と叫びたかったのは
我慢してこらえた




だって、お父さんが大好きだから

苦しんでほしくない…


No.140

そして、お父さんに『この顔…どうやってお母さんに説明しよう?
体中の痣も…』

『アタシ、おばあちゃん達のせいにしたくないの…』

『上級生に補聴器をからかわれたから、歯向かって行ったら
やられた…って言うつもりなんだけど、いいかな…?』
(実際、補聴器をからかわれて喧嘩したり、泣かされたことは山ほどあった)


お父さんは、ため息をついて『あい…そこまでして、お母さんには言いたくないのか?』

『…うん』


だって…お父さんには言わなかったけど、お母さんは離婚したいくらい
おばあちゃん達が嫌いなんだもん…


言うのは怖い。


『だって守りたいんだもん…この家族を…』


『…それは、お父さんだって同じだよ?
それに、お父さんは…あいのことも守りたい!』



嬉しかった。


めいいっぱい明るく元気に言った

『お父さん、ありがとう!…やっぱり、お母さんには喧嘩にしといて!
お願い!!
お父さんが、分かってくれたら それだけで十分だよ!
妹と弟のことは、アタシも頑張るから
どうしたらいいか、考えといてね』


『…はぁ。あいは…優しいな。お父さんよりずっと強い
それでいいのか?

じゃあ、お父さんは
お母さんに、仕事止めてもらうように説得するか!』

『うん!!それが一番嬉しい!!』



アタシは、とっても嬉しかった



これから、家に帰ることができる!

お母さんが待っててくれる!



飛び上がりそうなくらい嬉しかった


体が治るまで、1週間くらい学校も休めるし、ヤッタ~!



無邪気に喜んでいた




そんな簡単なことじゃない…と思い知るのは
無情にも以外と早く来た


No.141

妹が帰って来るまで、父から質問責めにあった

『ご飯、食べさせてもらってないって…今まで、どうしてたんだ?』

『ん~…用意してもらえるのは、いつも白いご飯とケチャップだけで…
前は、みんなのテーブルの下で床に座って食べてたの…
でも、弟が汚すから…叔父さんが蹴ったりするようになって…

今は、ほとんど山田さんちで食べさせてもらってる…』

山田さんの事は内緒にしておきたかったけど
父には話す事にした


『山田って…あの山田さん?』
父もびっくりしてた
(予想通りの反応だ…ヤバかったかな…)

アタシは、山田さんがどんなに優しいか
今まで、どんなに助けてくれたか
どんなに大事にしてもらってるか
昨日も、殴り倒されて動けなかったアタシを心配して
家に駆け付けて来てくれて、抱いて連れて帰ってくれたと
必死に喋った


『そうか…山田さんのオッサンとオバサンに世話になってたのか…

お母さん、知ったら倒れるかもな(笑)』


『うん。倒れそうだね…
だから、内緒ね♪』


父は、挨拶に行くと言って
一緒に山田さんちに行った


No.142

父と弟と三人で山田さんちに行った


ピンポーン♪

『おっちゃーん、おばちゃーん!!』


『あら~。あいちゃんと弟ちゃん♪
それに、お父さん…はじめまして、どうぞ上がってください』


『うちの子供達が、お世話になってるそうで…
ありがとうございます』

父は土下座のように頭を下げた

おっちゃんが
『止めてください。うちには、子供がいませんから…
あいちゃん達が可愛くて…
こちらの方が毎日でも来てほしいと思ってるんですよ』
ツルツルの頭に照れ臭そうに、手をやるおっちゃん

おばちゃんも、子供用のお茶碗やコップを
父に見せながら
『ほんとに、迷惑だなんてとんでもないですよ
私達も嬉しくて、玩具やオムツ、食器まで買い揃えて…(笑)
家の中が、とっても明るくなって…可愛くて仕方ないんですよ』
と言ってくれた


『あんなオジイとオバア…兄貴なもんで…
あい達が、どんなに助けられているか…

感謝してもしきれません
ありがとうございます!

これからは、妻に仕事を辞めてもらい
この子達を見てくれるようにして行きたいと思ってるのですが…』


『寂しくなるけど、あいちゃん達には
それが一番だね
それまでは、私達に遠慮はなさらず
どうか、あいちゃん達を今まで通りお世話させてください』

おっちゃんは、アタシを見てそう言ってくれた


『お願いします』
おばちゃんも父に頭を下げた


父は『恩に着ります!』と頭を床にこすりつけた



No.143

父も打ち解けて来たようだった

『しかし…うちのオジイとオバアは…
昔から、ああいう性格で
ほんとに情けなくて、お恥ずかしい

兄貴も、十分辛い思いをしてきた人間のはずなんですが…
困ったもんです…
近所の方も呆れているでしょう…』


おっちゃんが
『そうですか…
苦労されて来たんですね
同じ過ちを繰り返さない、あなたは立派ですよ

私達も偉そうな生き方はしていません…

私には消そうにも、消えない過去が背中に彫ってある…

今頃になって、改心しているところです…

せめて、誰かのお役に立ちたい…』


おっちゃんは、悲しい顔をしていた



みんな、大人でも苦しいんだな…






そう感じた
小3の春でした



No.144

家に帰って、弟と遊んでいた

体中痛いのに
弟は、お構い無しにアタシに体当たりしてくる

ビデオを見せたりしながら、ごまかして父と妹を待っていた


父は、山田さんちを出たら
『オバアのとこに行って来る、〇〇も帰って来るだろうから、一緒に帰るよ』

アタシは弟と二人で家に帰るように言われた


弟の相手をしながら、何度も何度も鏡を覗いた


相変わらずボクサーな顔…
いつになったら治るのかな?

不安だった…
ここまで腫れ上がった顔は、おじいちゃんもおばあちゃんもした事がない



『ただいま~♪お姉ちゃん大丈夫~?』
妹と父が帰って来た


いっきに家がにぎやかになった

父がおばあちゃん達に何を話したのか
すごく気になったけど、聞いても教えてもらえないだろうと諦めた



『少し寝てなさい』
父に言われて、アタシは昼寝をした


安心して爆睡した。

昼寝なんて…風邪引いた時くらいしか
ほとんどした事なかったから、ぐうたらな気分でちょっと嬉しかった



夜は、お父さんがチャーハンを作ってくれた


4人で笑って楽しく食べた。


No.145

そこへ母が帰って来た

『お帰りなさ~い♪』

『ただいま!!お父さん何かあったの?
子供達を迎えに寄ったら、お義母さんがあなたが迎えに来たって…』

『あぁ。ちょっと頭痛が酷くて早退したんだ
帰って薬飲んだら良くなったから迎えに行ったよ』

『そう。大丈夫?ご飯も作ってくれたのね
ありがとう』


そしてアタシを見て…
『あい~!!昨日よりずいぶん腫れてるじゃない!
もう…あんたは…』

『俺も帰って来て、びっくりして病院に連れて行ったよ。ちょっと骨にヒビも入ってるらしい
薬もらって来たから、しばらくは学校は休ませてやってくれ。

お前も休んで看病してやれないか?』

『1・2日ならいいけど…それ以上は無理だわ

ねぇ、あい!誰と喧嘩したの?
ちゃんと答えなさい!!』

『…6年の男子に補聴器をバカにされたから…』

『カッと来て、喧嘩した訳ね…!
ほんとに身の程知らず!
何人を相手にしたの?』

『…3人…』

『相手に怪我は?』

『させてない…』

『そう…良かった。でも、酷いわね~。
明日、休みの件と一緒に先生に言っとくわ』

『言わないでいいよ!!
チクったって、またやられたら嫌だしさ…
もう、喧嘩しないから』

『じゃあ、言わないけど…もう喧嘩しないでよ!!
今日も先生に休みの電話したら、あんたの髪がフケだらけだから綺麗にするようにってお母さん怒られたのよ!!
ちゃんと毎晩シャンプーしてるの?!』

『…してる、これからはもっと気をつけて洗うよ…』

頭は、いつも たんこぶだらけで、シャンプーでゴシゴシすると痛いからそっと撫でるようにしか洗ってなかった…



この3年の担任は最悪だった…

アタシを目の敵のように…1年間、泣きたくなるような目に遭わせ続けた



とりあえず、母には嘘が通じてホッとした


No.146

その日の夜は、眠れなかった

お母さんが会社辞めて…家に居てくれるようになるのを想像して

妹にも教えたい気持ちでいっぱいだった




トイレに起きて、階段を降りると
『……!!』何か話してる雰囲気…


期待しながら、補聴器を部屋に取りに行った



そっと聞く
『…だから、なんで私が会社を辞めなきゃいけないの?』
『私がどれほど仕事が好きか、あなた知ってるじゃない!!』

『でも…弟も小さいし、子供達が3人もいる。
あの親や兄貴夫婦に3人も、いつまでも任せておけないだろ?!』


『でも、ちゃんと養育費は払ってるわよ!
3人分で7万円!!
そんなに渡してるのよ?
お義姉さんも助かるわって言ってくれてるわよ?

誰も迷惑だなんて言って来ないわ』

『でも、子供達のことも考えてやれ!!』


『みんな、いい子じゃないの!
子供達が私の仕事を良く思ってないって言うの?

あいは、ちょっと気性が荒くて預ける方は、大変かも知れないけど…』


『私自身、あいが何考えてるのか分からない…
困らせることばっかりで…』

『あいは、いい子だよ!!
なんでお前は分からないんだ!!』
お父さんの怒鳴り声がした





そっかぁ…

アタシ、普通じゃないのかな?


お母さん…やっぱり嫌いなんだ


どんよりした気分でトイレに行って

布団をかぶって目をつむった

【悪者でもいいや】


ほんとに、悪い子なのかも知れない…



涙が出た…


No.147

それから2日間は、母が仕事を休んでくれた

アタシの顔の腫れも引いて、痣だけが残った

体中にある痣のことは、最後まで母には言わなかった


母は休んでいる間にも、電卓を叩き書類をバサバサとテーブルに積んで、忙しそうにしていた


あまり話しはしなかった

話しかけられる雰囲気じゃなかったから…


やっぱり、母は仕事が好きなんだと改めて思った


仕事を辞めて、家に居てくれるなんて…
そんな期待は、この2日間でアタシの中で薄くなった



また、あの日常が始まる…

空を見上げて『バ~カ!』と神さまに言ってみたりした


普通になりたい。


耳だって聞こえるようになりたい


何回も神さまにお願いしたけど
何も叶わない。


きっと
全部、叶わないんだろうな…



明日からは、母は仕事に行く

【好きなことが出来ていいね】

母に対して初めて持った、嫌味な感情…



でも、結局は好きなんだけどさ


No.148

朝が来た

バタバタと朝の忙しい時間、父はみんなより1時間早く家を出るから
アタシの起きる時間には、もういない


妹が学校へ行き、
母と弟も家を出た


アタシは、のんびりしながら朝食を取って
昼前におばあちゃんの家に行くことになっていた


もう、背中も普通で、息をしても痛みは無く

ドン!と強く押され無かったら大丈夫だ


学校だって行ける感じだったけど、
休むように言われたので休んだ




昼前まで待てなかったから、ご飯を食べ終わったら
すぐに、おばあちゃんの家に行った


走ってみたら
やっぱり背中が痛かった



ガラガラとドアを開けて
『おばあちゃーん、おじいちゃーん!
あいだよ。おはよう』


No.149

おじいちゃんが、顔を出してニカッと笑って
『あい!!もう痛くないか?大丈夫か?
早く上がりなさい』

すごく優しく出迎えてくれた

おばあちゃんも
『あい~!どんなに心配してたか…
もう大丈夫なのか?
美味しいもん食べて、元気になろうな』

『じぃさん、あいの好きな編みメロン買いに走ってちょうだい!!』
大声で言う

『おばあちゃん、まだお店開いてないよ~(笑)』


おじいちゃんと、おばあちゃんは、アタシが風邪を引いたりすると
必ず、【編みメロン】を買って食べさせてくれた
(二人は、編み目のあるメロンを編みメロンと呼ぶ、もちろんアタシも(笑))


アタシは、それがすごく嬉しかった

メロンが好きと言うより、特別扱いが嬉しいかった


弟も、紐で繋がれず自由にチョロチョロ歩いていた



今日は、きっと大丈夫だなぁ♪

No.150

お昼が過ぎて、1年生の妹が帰って来た


アタシ達3人と、おじいちゃん おばあちゃんでメロンを食べた


弟が汁をボトボト落として、スイカのように食べている姿に
みんなで笑った


穏やかな時間だった


夕方に、叔母さんが帰って来て
雲行きが怪しくなった…


『あら?あいちゃん。
もういいの?
はーぁ…また、面倒臭いわね…ヤダ、ヤダ
あんた達が居てるだけでイライラしちゃうわ!』


『お姉ちゃんが元気になったら駄目なの?』
妹が聞く

『うるさいのよ!
お姉ちゃんも、〇〇ちゃんも、弟も目障りなの!
叔母さんは、あんた達が嫌いなのよ!
話しかけないで!!』


こんなにストレートに嫌いだと言われたら…

傷つく。


妹が泣いた…

ずっと泣いてた…


おじいちゃんが
『部屋へ行きなさい』と静かに言った



泣く妹を連れて、もちろんアタシもショックを受けて
無邪気な弟の手を引いて山田さんちに行った


『おっちゃーん、おばちゃーん…』


山田さん夫婦の顔を見ると、アタシも泣けて来た…



元気になったよ♪って笑顔で会いたかったのにな…


No.151

山田さんちで二人に、抱きしめてもらって
『おっちゃんとおばちゃんは、あいちゃんも〇〇ちゃんも弟も大好きよ!!
大事な大事な子供達』

愛の言葉を言ってもらって

美味しいご飯を笑って食べて
アタシ達は、また元気になった



おばあちゃんの家に戻り

母の迎えを待って
家へ帰った



この日を境に、また祖父母は優しくなった



叔母さんと叔父さんを除いては…



でも
家では、夜遅くに毎晩のように夫婦喧嘩が始まった…





もちろん…母の退職を巡っての口喧嘩…

No.152

しばらくは おばあちゃんの家では、夕方の叔母さんの帰宅までは穏やかで…
祖父母の喧嘩も口喧嘩くらい

家では、夫婦喧嘩…


そんな毎日が続いていた



アタシは、その頃学校で担任の女性の先生に
【忘れん坊女王】と呼ばれて、〇〇あいという名前を呼ばれないようになっていた

机は、廊下に出されて教室の窓を覗いて授業を受けていた…

給食の時間も廊下で一人で食べてたのを覚えている

寂しかった。
泣きたかった。
悔しかった。


でも、この頃に
【何があっても絶対人前では泣かない!】
と強く決めた


まだ新学期は始まったばっかりだったのに…

(先生は、アタシの何が気にくわなかったのかな?
4月早々に宿題が出来ない日があったのは、確かだけど…
宿題どころじゃなかった!…なんて言い訳は通じないのかな?
ほんとの理由を
できることなら、今でも聞きたい
ただ、嫌いなタイプとか、そんな程度のことだったのか…?)


でも
友達は男女問わず沢山いたから救われていた


休み時間だけが楽しみだった


妹は、楽しく学校に通っていた


No.153

数日が経ってまた、おじいちゃんとおばあちゃんが派手に喧嘩をした

おばあちゃんが鼻血を出してうずくまった

『止めてよ!!こんなことして、楽しいの?!』

おばあちゃんに被さるようにして叫んだ

おばあちゃんが起き上がって、アタシの頭を殴りつけた

『子供が生意気言うな!』


もう知らない…!!


妹と弟を連れて外で遊んで、夕方に山田さんちに行った


その日は、おばちゃんが風邪を引いて熱を出して寝ていた

『今日は、おっちゃんが飯作るからな~!上がれよ』と笑ってくれたけど

『今日はいいよ。ありがとう、おっちゃん
おばちゃん、早く治ってね!』
と言っておばあちゃんの家に帰った



夕飯の時間…
嫌だな…と思いながらキッチンに行った


叔母さんが『今夜はチンピラさんの家に行かないの?
エサもらえ無かった~(笑)?』
アハハと笑い

床に座るアタシ達の前に『はいエサ。どうぞ』
とご飯とケチャップを出した


無言で食べた…
妹も喋らなかった

弟が、テーブルのから揚げを欲しがって泣いた

叔父さんが『泣き止ませろ!!うるさい!!』とテーブルを叩いた



アタシは、キレた



『てめぇら…うちの親から金もらってんだろ!!
それで飯食ってんだろ!!』
叔父さんと叔母さんのご飯の上に、ケチャップをグチャグチャにかけてやった


叔父さんが『何やってんだ!てめぇー!!』

アタシを突き飛ばして蹴った


泣かなかった。

怒りでいっぱいだった


こっちを見ていた叔母さんに『お前もエサ食えよ!!』

いとこも祖父母も、何も言わなかった


アタシ達は、おばあちゃんの部屋に戻った




体が怒りで震えていた



No.154

母が迎えに来た

予想通り、叔母さんは『あいちゃんが、私の作ったご飯を
【エサ】と呼んで…うちの人に暴言吐いたのよ…注意しておいてくださいね』

こんな内容の話しをしていた

別に、今に始まったことじゃないから
…今夜もお説教だな…とへこんでいた

妹に『今夜お姉ちゃん、多分お母さんに叱られるけど本当のことは内緒ね!!』

『お姉ちゃんばっかり叱られるのは嫌!!
〇〇も一緒に叱られるよ!』

優しい妹…
あんたに痛く辛い思いは、絶対させたくない

『お姉ちゃんは〇〇が大好きなの。
これが、お姉ちゃんの守り方だから…
ねっ♪』

『じゃあ、〇〇もお姉ちゃんを守るね!』


アタシ達は、お母さんに呼ばれ家まで帰った


家の玄関で『あいは、入って来なくていいから
今日、叔母さんに言った言葉を思い出して
反省してなさい!!』


妹が不安げにアタシを見る

そっと手を振って
アタシは、玄関の前に座った


鍵が閉まる音がした。


補聴器を外して、夜空を見る


アタシ、今日は泣いてない!

やればできるじゃん!

【頑張れあい!!】
自分で自分を褒めて、エールを送った



無音の中で星を見てると、吸い込まれそうな気がした


No.155

しばらく星を眺めていた

春の夜…まだ寒い…


補聴器をつけて、家の様子を伺おうしたら

『痛いー!!止めてー!!ごめんなさい!!』

妹の声が飛び込んで来た


お尻を叩かれてるんだと、すぐに分かった


ピンポン!!ピンポン!!…何度も連打する

ドアや窓をドンドン叩いて『お母さん!!止めて~!!』
近所に聞こえるように大声で叫んだ


すぐに、ドアが開いた

鬼のような顔をした母が『そんな大声出して!迷惑でしょう!』


…わざとだよ。
そうしないと開けてもらえない


妹のところに走って行った


『なんで!!〇〇まで叱るの?』

妹が『〇〇も、叔母さんのご飯…エサって言った!!お姉ちゃんだけが悪くない!!
お姉ちゃんは、何も悪くない!!』


母は、ため息をついて
『〇〇〇は、あいの真似をするんだから
あんたが、しっかりお姉ちゃんらしくしなさい!!』

標的がアタシに変わった



良かった…


No.156

『〇〇は、エサなんて言ってないよ!』

お母さんを睨む

『分かってるわよ。あの子は、あんたを庇って言っただけ…』

『じゃあ、なんで〇〇のお尻をぶつんだ!!』


『あいを庇って嘘つくからよ!!』



アタシは、お尻を出して
『アタシのお尻をぶったらいいよ…
それから、夜にお父さんと喧嘩するの止めてよ!!』


母は、何も言わずアタシを捕まえると
バチンバチン…バチンバチン

『お尻をぶつ、お母さんの手の痛さが分かる?』
バチン…バチン…

『じゃあ、止めればいいじゃん…
お母さんは、ぶたれる痛さ…知ってるの?』

バチンバチン…
痛い…痛いよ…





心が痛い。
張り裂けそうだよ…


妹がアタシを嘘までついて庇ってくれた…


【嬉しい】というより…

かわいそうで
胸が締め付けられるような気持ちだった


No.157

相変わらずな毎日…


学校では、廊下が居場所になっていた
(こういうのは、他のクラスの先生が助けてくれたりしないものなの?
昔は、有りだったの?
今でも分からない)


その日は、筆箱を忘れてしまった

1時間目に気づき…窓越しに『鉛筆かして』と窓際の子に頼んだ

その子が鉛筆を貸そうと手を伸ばした時に
先生に見つかった

『何しているの!』

『…筆箱忘れました』

『〇〇さん、忘れもの女王には貸さなくていいわよ
先生のを使いなさい』

鉛筆を持って先生が廊下を出て来て
アタシのノートに大きな文字で【バカ】と書いて
鉛筆を置き、教壇へ帰って行った…


ノートに書かれた文字は
消しゴムもないし
消すことができなかった


休み時間に、友達に見せた。


1人…2人…と集まって『先生、ひで~!!』
『信じられない!!』
最後は、クラスほぼ全員が『あいちゃん、かわいそう!!みんなで助けようぜ』
男子も女子も、みんなが消しゴムで消してくれた

『ありがとう~♪』みんなにお礼を言った

すごく優しかった。

クラスみんなが、アタシを庇ってくれた
胸がジ~ンとした。

嬉しくて涙が出そうだった


帰りの会の時に、先生に『ありがとうございました』と鉛筆を返した

先生の目を見てニッコリ笑った


アタシの精一杯の強がりだった



学校が終わると、一目散におばあちゃんの家に帰る


友達と遊ぶことも無かった。いつも断っていた

『妹と弟の面倒見なきゃいけないから、ごめんね』


『分かった。じゃあ明日ね♪バイバーイ』


こんなアタシだけど、友達には本当に恵まれていた


クラスの人気者、ボス的存在の男子(谷川君)に『俺、あいが好き』と、みんなの前で宣言されたのも
みんなが優しい理由だと思ってた

谷川君には、これからも助けられっぱなしだった




この場を借りて…
谷川君、本当にありがとう!!

あなたのおかげで、補聴器のことも
からかわれると、庇ってくれたり…
安心して学校に行けたんだよ!!

ありがとう!!


No.158

5月の母の日が近づいた、母が休みだったある日…

事件が起きた。


妹が学校の図工の時間に描いた1枚の絵…

クルクルと巻かれて赤いリボンで結ばれていた

嬉しそうに笑顔で『はい。お姉ちゃん♪
いつも、ありがとう❤』


アタシは、びっくりした

隣りに居た母も…何故?という顔をして見ていた


リボンをほどいて絵を見ると
【お母さんのようなお姉ちゃん。いつもありがとう】
と書かれていて

アタシ達二人が手を繋いで、アタシが弟を抱く絵が描かれていた


…もちろん嬉しい。

アタシだって、抱きしめてありがとう!!って叫びたいくらい嬉しかった


母が
『なんなの!!これは!!これじゃあ、まるでお母さんが何もしてないみたいじゃない!』

妹に平手打ちが飛んだ…


そして、お尻をぶたれる妹…


『なんで?…痛ーい!!だって、先生がお母さんのいない人はいつもお世話になってる家族でもいいって言ったもん!!』

『あんたには、お母さんがいないの?
じゃあ、私は何よ!!
私はなんなのよー!!』

バチンバチン…

母は、泣いていた


アタシは、動けなかった…

『止めて…止めて…〇〇は悪くない…お母さん止めてあげて…』
小さな声で棒立ちのまま言うのが精一杯だった


バチンバチン…!!


『ああーっ…!!』
母は妹を放して、頭を床につけて泣いていた

母を
慰めることはできない。


妹を部屋に連れて行って、泣いてる妹に
『ありがとう…ごめんね。お姉ちゃん助けられなかったね…ごめんね
あの絵、ありがとう…ずっとお姉ちゃんが〇〇の心のお母さんだからね…

でも、本当のお母さんにはなれないから
母の日には、本当のお母さんの絵も描いてあげてね』


泣く妹が愛おしくて…
姉という立場が悔しくて

嬉しさと、切なさと、複雑な気持ちで妹を撫でていた






その日の夜から…
妹がおねしょをするようになった…


No.159

妹がおねしょをするようになって、3日目…


とうとう母が爆発した


『何度言ったら分かるの!!〇〇は、1年生でしょう!』

『言っても分からないなら、体で覚えなさい!』

バチンバチン…

『ごめんなさーい!!もうしません!!
約束します!!痛いよー!』

母は、すぐにお尻をぶつ

アタシ達は…お尻は叩かれてもいいように、神さまがお肉を沢山つけてくれたのよ

…と母に言われて来た


そんな訳ない。
今、思うとバカらしくて腹が立つ



『もう、止めてあげて!
お尻が真っ赤になってるよー!』
アタシは母の腕にしがみついて
叩かれるのを阻止する


それでも、興奮状態の母は叩こうとした

ガブリと腕に噛み付いて放させた


もちろん、アタシにビンタ…


泣く妹を、素早く抱き抱えて部屋に逃げた


母が下からわめき立てていたが、もうアタシは言いなりじゃない。


守るべき者を守りたい。

体の痛みは、敵じゃない

アタシは絶対に痛みに屈しない!


だけど、妹や弟の痛がる姿や辛さには耐えられない


『〇〇大丈夫だからね。
今夜からお姉ちゃんと一緒に寝よう!
きっと1人だから寂しくておねしょしちゃうんだよ!』

『うん!お姉ちゃんと一緒なら大丈夫!!』


我が家のベッドは、母の友人がホテルをしていて
ホテルのベッドを新調する際にもらったセミダブルサイズだった



この夜から、大人になってアタシがお嫁に行くまで
アタシ達は、ずっと二人一緒に寝ていた



No.160

その日の夕方、アタシはそっと
アルものを拝借しておいた

宿題を済まし
夕飯を食べて、お風呂に入って
少しテレビを見て

『もう、寝なさい』


母に言われて部屋へ行く


妹は、トイレに何回も行っていた


寝る前に妹が部屋へ入って来た


『おねしょ…しないかな…』
すごく不安気に言った



『ジャ~ン♪♪』
夕方に手に入れておいた弟のオムツ!


妹はパァーっと明るい顔になった


『お母さんには内緒ね♪』

『お姉ちゃんありがとう❤』


二人で布団に入った


妹は、すぐにスースーと寝息を立てて眠った




アタシは、補聴器をつけて
そっと…父と母の喧嘩を聞いていた

あの夜から、毎晩繰り返されるようになった
夫婦喧嘩をこうして こっそり聞くのが習慣になっていた


この頃には、喧嘩が激しい言い合いになっていた…



もう何の期待もしていなかった…

ただ、父と母が仲良くしていて欲しかった


喧嘩する両親が悲しかった


別れないで欲しい!
その思いから、ずっと耐えて来たおばあちゃんの家でのこと…


父に話すことで、父が分かってくれたことで
心の負担は、減ったように思われたが…

こんな風に、両親が喧嘩するくらいなら
言わなければ良かったのかな?


アタシの我慢が足りなかったせいで…


アタシは、自分を責めていた。


だから
夫婦喧嘩を自分のせいだと感じて
ゆっくりと寝るなんてできなかった…



アタシのせいで別れたらどうしよう…


No.161

それからも変わらぬ日常を送っていた

妹は夏休みに入る頃に、やっとおねしょが治った

それまでは、ずっとアタシがこっそりオムツを拝借して
朝に、こっそりオムツを処理する…

妹のおねしょが治った日には二人で喜んだ

『お姉ちゃん…今までごめんね』

『嫌だなんて、思ったこともないよ♪良かったね』


毎年のように
夏休みは、朝からずっと3人でおばあちゃんの家で過ごした



でも…
毎年と違うのは、アタシの体に異変が起きていた


誰にも言わなかったけど、朝起きたら吐き気がして
トイレで毎朝吐いていた…

でも、それだけだった
痛みも何も症状は無かったから

あまり気にしていなかった


後…おじいちゃんとおばあちゃんの喧嘩を見ると頭痛がして吐き気がしていた

何度かほんとに吐いた。



この症状が夏休み前半くらい続いていた…


No.162

そして…
お盆が近づいたある日

おじいちゃんとおばあちゃんの派手な喧嘩が始まって

妹と弟と一緒に外に逃げた


妹に『また始まったね~』
といつものように言おうとしたら…




『………っ…あ…』




アタシは、急に喋れなくなってしまった…

言葉が出ない…


喋りたいのに『…っあ…っあ…』


突然のことだった


妹も弟も気づかない…


気持ち悪くなってトイレに走った


吐いた…


『………っく…っっ…』



アタシは声を失ってしまった…



No.163

声が出なくなってしまった…

次の日も、その次の日も…


両親は、あちこちの病院にアタシを診てもらいに連れて行った

【声帯に異常は無し】
【心因的なもの】
【ストレスが原因】
【精神的なもの】

何処に行っても同じような結果だった


夜には両親の夫婦喧嘩が、ますます激しいものになって行った…


アタシは、ドン底に居た


どんな気持ち、感情を持っていたのかすら
思い出せない…


ただ、絶望の中にいた


笑うことも少なくなった





※読んでくださってる皆様☺
いつも、ありがとうございます🍀

この小説について、少しご理解頂けたら…と思い
感想スレの86にレスさせて頂きました🙇

お暇があれば、目を通して頂けたらと思います
よろしくお願いします☺🍀


No.164

日曜日に『あい。ちょっとお父さんとドライブ行こうか!』

父がアタシを誘った

二人きりでドライブ…海に行った


『なぁ、あい…お母さんに、オジイとオバアのこと話してもいいか?』

『……!!っ…!』
アタシは必死に首を横に振った


『オジイとオバアは、昔から…あんなんで…お父さんは二人を憎んでるんだ…
あいを、こんなに追い詰めたのも…あの家だろう?

叔父さんも叔母さんも庇うどころか、あいを邪険に扱う…
あい…お母さんに全てを話して、家に居てもらおう!
お父さんの頼みだけでは、お母さんは動いてくれない…』


アタシは、泣いて首を横に振った

何度も何度も首をブンブンと振った
『……!!…………!!』
(嫌だ。お母さんには言わないで!
お母さんは、家に居てくれるどころか…離婚しちゃうよう!)



『…そうか…あい。
分かった…じゃあ、言わない。
あいなりの気持ちがあるんだな?』


アタシは泣きながら
首を立てに頷いた。


そして、お父さんの手を握りしめて
目を見て、ゆっくりと唇を動かした

『あ・り・が・と・う
だ・い・す・き』


父がギューッと抱きしめてくれた


胸の塊がほぐれて行くようだった…




父の温もり…
愛の温もり…


No.165

声が出なくなってから、伝えたいことが伝えられない辛さを知った…

おはよう。とか
ちょっとした話しも、ただ息がもれるだけで会話も出来ない…
人とコミュニケーションを取れない悲しみ


文字を書いたりしてたけど、そんなに話すほどの長文は書けないから
必要最低限の事しか伝えられない…

笑っても息がもれるだけ…


こんな自分に耐えられなかった。

ほんとに狂いそうだった


家族や祖父母も心配して苦しそうだった



補聴器を外せば、アタシは音も聞こえない


なんの為に生まれて来たの?

おばあちゃんの家にも行かず、ご飯もたべず
補聴器もつけずに一人で無の中で
泣きながら1日を過ごした日もあった

いくら泣いても声が出ないのか…声が聞こえないのか…
涙だけが頬を濡らし、手を濡らし、服を濡らした



この現実を
受け入れられなかった…



夏休みは終わろうとしていた

学校なんて行けるはずもなかった



自分独りが、皆とは違う世界で生きているような気持ちになっていた…

子供であることが悔しかった…皆に迷惑や心配をかけるから

大人だったら、誰も知らない所に行けるのに…


誰にも分からない…
分かってもらえない…
訴える気力もない…


【音】のない世界…
【声】を出せないアタシ…


No.166

新学期の迫るある日、母がお昼に会社を早退して
おばあちゃんの家に迎えに来た


アタシは、声が出ない理由を両親から
【心が疲れて声が出なくなったのよ。
また、心が元気になったら喋れるからね】
と聞かされていた


母に連れられて向かった先は、児童相談所(だったと思う)

母とアタシと別々の部屋に案内された

母は、相談室へ
アタシは、子供専用のピンクの絨毯の部屋へ通された


そこには、ブロックや人形、玩具があふれていた


優しそうなお姉さん?
…おばさんかも(笑)
年齢不詳の女性が担当としてついてくれた



ここは、なんだ?
心の病院…?


アタシは、かなり戸惑った…


No.167

おば姉さん(おばさん&お姉さんの略です)は、アタシににっこり微笑みかけながら
画用紙とクレヨンを出して
『木の絵を描いてみてちょうだい♪ゆっくりでいいからね』
と机に向かい合わせで座り、覗き込む…


あぁ…瞬時に理解できた

アタシが悪い心を持っているのか、試そうとしてるんだ…


その手には乗らない。


青空の下、
緑豊かな木に果物を沢山描いて、木の下で友達と輪になり仲良くお弁当を食べる

空には、小鳥が飛んでお日様がキラキラと輝いている


そんな絵を描いた


どうだ!
ごくごく普通の幸せな子供の絵でしょう?


暗い色を一切使わずに描いた



…アタシは、もの心ついた時から
ずっと大人を観察してた


誰が本当に優しくて、
誰が裏表があって、
誰が好奇な目で人を見るのか…等


そして、信用できる優しい大人…
見かけは怖い。
近所からも一歩引かれていたけど、山田さん夫婦こそが信頼できる。
と感じて、どうしようもない時は
山田さんちへ向かったのだ


初めて、家を訪れたのは幼稚園に入るか入らないくらいの幼い頃だった

妹は、まだオムツが取れていなかった頃だから



おば姉さん…
アタシの心は、見せないよ


ごめんね。


No.168

おば姉さんは、『上手ね~♪じゃあ次は、ブロックでお家作ろうか?』


はいはい…


ブロックには色んな小物があった
お化けや、ナイフ、お姫様、お年寄りから子供まで…人の顔も色んな表情があった

ブロックで家を作って、庭の周りに小物を置けと言うことらしかった



おば姉さん…
簡単です。



アタシは、明るい色んなブロックを使って、お菓子の家を作り

周りには、笑顔の女の子を数人とお姫様、王子様、犬、その他動物を沢山並べて
お菓子を散りばめさせ、お菓子パーティーなるものをテーマに作った





【ほんとに作りたいもの?】

それは、犬小屋ほどの小さな家と
泣いてる女の子…その周りに沢山の星を散りばめる


それが本心。


でも、ここでは演じないといけない!

心の闇をさらしたく無かった



今、思えばそんなにして何を隠したかったのか…









小さな、小さなプライド

幸せな子供なんです。と見せたかった…


No.169

おば姉さんに、しばらく待つように言われて待っていると
母が迎えに来た。

母の目は赤く充血していて…泣いていたんだと分かった


それからは、週に1度ここに通うようになった



母は無言で車を走らせる

途中で『どうだった?』と聞かれたが、喋れない…

『………っぉ』
(普通だったよ)


母のため息…

『喋れないんだったわね…』


無言のまま
車は、おばあちゃんの家に着いた

母が妹と弟を迎えに行って、自宅に戻った



妹は、こんなアタシでも変わらず いつもピッタリ一緒に居て、こっちを向いて話してくれる

声が出なくても…
言葉なんて無くても、妹とは笑って遊んだ





そして、夏休みが終わった


No.170

新学期…9月1日は、母は仕事を休んでくれた

3日くらいは、休むと言ってくれた


学校に事情を話し、しばらく欠席することになった


母は、あまり話しをしてくれない

アタシが喋れないからだろうけど…


小さい時から、
考えてみれば、母と普通に親子らしい会話をしたことなんて少ししか無かった…


朝は『早くしなさい』と急かして
アタシは、すぐに学校へ行く


帰りは、夕飯が終わった後で迎えに来て
自宅へ着くと、すぐに宿題をさせられて

その間、母は異常なほど綺麗好きで家の隅々まで、掃除をする
毎日、天井にまで掃除機をかけるほどだった


そして、夕飯の支度…

その間、アタシ達はテレビを見ている

夕飯の支度が終わる頃に、お風呂に入りなさいと声がかかり

お風呂から上がって、少し話す

内容は『宿題できた?』『明日の用意はできた?』…ばかり
嬉しかったことや、楽しかったことは『良かったわね』と一言で終わってしまう

だけど、怒られたことなど悪い話しの時は
しっかりと聞いて問いただされ、お説教される…


こんな風に二人きりで居ても話すことが分からない…


おばあちゃんやおじいちゃん、山田さん夫妻なら話題が尽きないほどなのに…




時間が経つのが遅く感じた



No.171

9月4日…母は、明日から仕事に行く


アタシは、おばあちゃんの家には行かずに一人で留守番をすることに決まった

弟は、祖父母の家へ預けられる
妹は、どちらの家に帰ってもいいことになった



妹が学校へ行った後
『ねぇ、あい…ほんとに声が出ないの?』
『頑張って声を出してみなさい!!』


『………っぁ…っっ…く…』

アタシも必死で声を出そうとしたが、わずかに声とも言えぬ声が漏れるだけだった


『わざとじゃないの?!…ねぇ、あい!わざと…喋れないふりしてるんでしょ?!』

母に肩を持たれてグラグラと体を揺すられる


必死に首を振る!
『……っぁぅ…!!』
(お母さん、嘘じゃない!!)


母が、大声で泣きながらアタシに馬乗りになって首に手をかけた
『なんでよー!…喋りなさいよ~!!…ううっ…』


『………っく…!!』母の手を強く握り、アタシも泣きながら
(ごめんなさい!!)と叫んだ


パチン…パチン…頬に痛みが走る
母の涙が上から振って来る…




お母さん…悲しいよね


アタシも…悲しいんだよ?


No.172

アタシだって…

どうしてもいいのか分からないんだよ?


母は、アタシの首から手を離した…


『あい…海…見に行こうか…』
母が静かに言った




弟を連れて、近くの海まで車で行った


砂浜に腰を下ろして、静かに母と海を見る


弟は走り回っていた


母は、ずっと泣いていた

いつも綺麗に化粧をし着飾っている母の頬に、涙の線が出来ていた


アタシは棒で砂浜に
『お母さん、ごめんね
だいすきだよ』
と書いて、海ばかり見ていた母にツンツンとして
文字を見せた


母は、顔を覆って泣いた


そして、アタシの目をじっと見つめて

『あい…海で一緒に死のうか…』と言った





アタシは、返事をしなかった



ただ、補聴器を外した



無の世界…
海の音も消えない…


お母さんから生まれたアタシ…








次は、耳が聞こえる体が欲しいよ







そして…声を失いたくない…













悲しみのない子供に生んでね…







お母さん…



No.173

お母さんの顔を目に焼きつけるように見つめた


アタシは小学校に上がってから水泳の授業は、受けたことがない


補聴器は水に濡れると故障してしまう

聞こえない体でプールに入るのは危険と言うことで、一度も泳いだことがない



だから、きっとカナヅチだ。



走りには自信がある。




砂浜を海に向かって一心不乱に走った


ザバザバと海の中を走って行く






お母さんは死んじゃ駄目だ。



砂浜には弟がいる


お母さんが海に入ると弟もついて来るだろう




…そしたら…

お母さんは、アタシを助けられない…







母のどんな叫びも、
アタシの耳には聞こえない





ザブン…ザブン…


ぐんぐん歩いて沖へと向かう…





波が邪魔で歩きにくい…










もう何も怖くない…




水面が太陽でキラキラ眩しい





光を体中に浴びながら、早く早く…








波よ…アタシを飲み込んで…







アタシ…




もう誰も悲しませたくないから…





お母さん…死んじゃ駄目だよ







アタシが消えてあげるから…







お願い…




波よ…体を飲み込んで!!







みんな…大好きだよ…






ひたすら歩いた





No.174

足が疲れて来た…


水は肩まで来ていた…





このまま…もう少し歩けば…









急に体が軽くなった



黒い人に抱き上げられた


何か言ってるけど聞こえない…



喋れない…




体を任せるままにユラユラと揺られて



砂浜に戻されてしまった




リーゼント頭の学ラン姿のお兄さん…

助けられてしまった…




母は波打際で頭を垂れて、顔も砂まみれになった姿で動かない…



母の側で弟が泣いていた




リーゼント頭のお兄さんが、何かを話してくれるけど

聞こえない…



アタシは
ただ、突っ立ていた。






母が這うように、こっちへ来た



誰かと思うような…見たこともない顔だった

化粧は崩れ、髪は乱れ砂まみれの母が
アタシの足にすがりつくように抱き着いて来た…



リーゼントのお兄さんに何か言われたのか
母は泣いて立ち上がることもせず
ひれ伏したままだった…




アタシには聞こえない…

アタシは話せない…





リーゼントのお兄さんが笑顔で、ポケットのくしを出して
アタシの髪をといてくれた



綺麗にといてくれたら
バイバイと手を振り、帰って行った



不謹慎にも
こんな状況なのに格好いい。
と思った




母は、動く気配も無かった




体中が震えていたから、泣いていたんだと思う







アタシは涙も出なかった



No.175

小さく足もとで震えて泣いている母を抱き寄せて
『…っぁ…っぐぅ…』
(お母さん、大丈夫?)

声とは呼べない声だけど何か言わずにはいられなかった


母は、砂まみれの顔を上げてアタシを抱きしめた

聞こえないけど、体中に母の声が響いた


アタシは、さっきいた砂浜の場所に走り
辺りを必死に探した


…あった…
補聴器…。

コイツがない世界は、人と交流が持てない

アタシにとっては体の一部だ


耳につけて
また母の元に走って戻った



母は、うずくまったままの姿勢で何度も何度も
『ごめんなさい…ごめんなさい…』と繰り返していた


謝っているのは、アタシだけにではないように感じた



隣りに座って、海を見た


さっきアタシが死んでたら…

どうなってたのかな…



助かって良かったとも
死んでしまいたかったとも思わなかった


ただ、海を見ていた



全身濡れたから
濡れた服が気持ち悪かった



No.176

しばらく海を見ていたけど、弟が帰りたがった


砂浜に『かえろう』と書いて、母に見せた


母は、頷いて
来た道を帰った。


車の中で、ずっと空を見ていた

あのお兄さん…こんなに暑いのに、なんであんな学ラン姿だったのかな?

ずぶ濡れだったな…
大丈夫かな?


リーゼントのお兄さんの事を考えていた




あの
海の匂いが消えない…




今でも
あの日のことを忘れらない…



No.177

家に帰ってアタシは、母より先にシャワーを浴びた


次に、母がシャワーを浴びた



『ただいま~♪』
妹が帰って来た。

お昼はとっくに過ぎていた


レトルトのカレーを食べて、アタシは自分の部屋へ入って昼寝した


疲れた…


ほんとに疲れた…



体じゃなくて
心が疲れた…



母は、帰ってからもずっと放心状態のようで
何も話さなかった


妹に『お帰り…』と言っただけだった



下から、妹と弟の遊ぶ声が聞こえて来る


補聴器を外して
アタシはぐっすり眠った



何を心配しても意味がない…

そう思ったら、よく眠れた


No.178

その晩は、珍しく父が早く帰って来た


『お帰り~♪』
アタシも、父を見て微笑む


『お母さんは?』

アタシは、指をさした。

母はお昼の後も、ずっとテーブルに座っていたようだ

一点を見つめ、テーブルに座る母の姿…


父が母の顔を覗き込んで『ただいま』と言った


ハッとした母の顔…

そして泣き出した…


妹はビックリして『お母さん!!大丈夫?どっか痛いの?』
と母の背中を撫でていた


父がアタシを見る


アタシは下を向いた…
(ごめんなさい…アタシがお母さんを泣かせたの…
でも、お母さんが一緒に死のうって言うから…
アタシだけが消えちゃえばいいと思った…)


…と話せたら…どんなにいいだろう…



後で、手紙に書いて渡そうかな…



みんなを苦しませてるね



ごめんね




ほんとに辛かった…


No.179

その晩は、カップ麺を食べた

母は、食べなかった


アタシは、食べ終わるとすぐに部屋へ行き

今日のことを伝える手紙を書いていた

書いてる途中…

ほんとに、こんなものを父に読ませていいのかな…
と不安になって来た

そのままの出来事を綴った手紙はグチャグチャに丸めて捨てた



母の元気がない理由を伝えたいけど
うまく伝えられない…



知らん顔するのがいいのかな…

忘れよう…



明日から、母は仕事で忙しいから
また元気になってくれる


とにかく、アタシが声を出さないと何も始まらない…


『………ぐぁ…ぅ……』
一生懸命、声を出そうと頑張った



自分の体なのに…

思うようには行かない…



耳だけじゃなくて
このまま声も失ってしまうのかな…


人魚姫だって、耳は聞こえていたのに


なんで?


悔しい…


話したいよぉ…
話したいよぉ…
話しがしたいんだよぉ…



涙が出た



No.180

『お姉ちゃん、お風呂行こう!』妹が誘いに来た

うん。と頷いて一緒にお風呂に入った


お風呂での妹との会話の方法は、アタシの耳に唇が触れるくらいに近づいて、大声で話す

耳の遠いお年寄りとのやり取りと同じ方法


それでも、聞き間違えたりするんだけど(笑)



お風呂から上がって、リビングに行くと
母が笑いかけてくれた

そして、膝をポンポンと叩き『あい、こっちおいで』と言われた


覚えてる限りでは、初めてかも知れない…

母の膝の上に座った

母が後ろから優しく抱きしめてくれた
『…ごめんね…
お母さん、どうかしてたね…
今日…ほんとに、あいがあのまま死んでしまったら…と思うと恐ろしくて…

良かった…
ゆっくり話せるようになろうね
生きててくれて良かった…
お母さん、あいを助けてくれたお兄さんに感謝しなくちゃ…』


うん。
うん。

とアタシは何度も頷いた



…良かった…


お父さんをチラっと見たけど、ニヤニヤしてこっちを見てるだけだった


お父さんに話したのかな?



どっちでもいいや。



みんなが笑えるなら

嬉しい。



No.181

次の日、バタバタと忙しいいつもの朝

『行ってきまーす!!』妹は学校へ

『じゃあ、行って来るわね』母も弟を連れて家を出た


アタシは一人…


『…ぁ…っ…うっ…』歌を歌ってみたりした

ずっと喋らずにいると、本当に声が出せなくなってしまいそうで怖かった


歌を歌って過ごした


弟が心配だけど、きっと大丈夫だろう!


今は、自分が声を取り戻す方法を考えなくちゃ!


とりあえず歌ばかり歌っていた


昼ご飯は、お母さんがお弁当を作っておいてくれた


一人…って何したらいいんだ?

楽しくない。


今頃は、みんなは給食かな~?

学校のことが気になる


いつになったら行けるんだろう?

不安も押し寄せる…


早く妹、帰って来ないかなぁ



退屈で退屈で仕方なかった


No.182

こんな時、ワンちゃんがいてくれたらなぁ~

アタシと妹は大の犬好き


………♪
犬が飼える方法を思いついた


よし!
アタシ、ワンちゃんを手に入れよう!!


普段から犬が欲しい!と散々お願いして来た

『お母さん、仕事してるのよ?無理だわ
諦めてちょうだい』

何度となく言われ続けて来た


アタシ達も諦めていた


でも…今なら…行ける!
確信していた。



早く明日にならないかなぁ~♪


明日は、児童相談所に行く日だ


No.183

次の日…
待ちに待った児童相談所♪


母がお昼で会社を早退して来た


ご飯を食べて、車で出かけた




『あいちゃん♪こんにちは』おば姉さんが、やって来た


『よろしくお願いします』


母は相談室へ…
アタシは子供の部屋へ…


さて、演技の始まり

固い表情のままでいる。

おば姉さんが、画用紙とクレヨンを持って来た


(ナイス!!思った通りだ、絵を描くんだな♪)

相変わらず、固い表情を保つアタシ…


おば姉さんが、にっこりと笑いかけながら
『今日は、窓の外を覗いたら…どんな景色が見えるかな?思うように描いてね』


すぐにはクレヨンを持たない。下を向いて、じっとしてる…
(もちろん演技)


『描きたくないかなぁ?』おば姉さんが覗き込む


しぶしぶクレヨンに手を伸ばし、画用紙をじっと見つめる

そんなアタシを、おば姉さんは観察している


(よし!!行けるぞ)

画用紙に
夜空の下で、犬に抱きしめられて眠る女の子の絵を描いた


漫画のように吹き出しで、女の子に『話せないの悲しいよ』と書いた


そして、女の子を抱きしめるように描いた犬に
『僕なら、お話しできるよ。一人ぼっちじゃないよ』と書いた



どうだ!!完ぺきだ♪♪


おば姉さんは『お話できないから、ワンちゃんとお話ししてるのね?』と優しく聞いてくれた


アタシは下を向いて、コクリと頷いた



No.184

『じゃあ、次は
この中からあいちゃんが一番好きなカードを選んでね』


トランプのようなカードに
寝てる子、笑ってる子、走ってる子、泣いてる子、食べてる子、怒ってる子…等
色んな表情の子供の顔があった


…難しい…

一番好き?

どうしようかな…これは難しい…


じぃーっとカードを見つめる


木陰で寝転ぶ子のカードを選んだ

(安らぎが欲しい…と言う意味に取れそうだったから)


本当はケーキを食べてるカードが取りたかった(笑)



『早く、お話ししたい?』おば姉さんが聞いた

下を向いて、小さく頷いた



『じゃあ、今日はおしまい♪ちょっと待っててね』


アタシは、手ごたえを感じた


だって先週は、全く不安な様子も見せずに
幸せそうに演じたんだもん。


そして一週間後は、下を向いて
悲しんでるアタシを見せた


おば姉さんには、きっとこの変化が伝わるはずだ


どっちにしても心は見せてない…
ごめんね。

おば姉さん…


No.185

今日は前回より母が迎えに来るのが、遅かった


『あいちゃん、お母さんよ』


母の目は、また充血して泣いた目だった



帰り道に
『あい…犬…飼いたい?』母が聞いて来た


(来ました~♪♪)手をパチパチっと叩きたかったくらい…ニヤつく顔を必死で抑えた


母の方を見ずに、小さく頷くだけにした


どうせ無理なんでしょ?と言う態度と見えるように…



『犬がいたら…あいの心も癒えるかしら…?』


母がこんなことを言うなんて!!



おば姉さん、ありがとう!!


きっと、我が家にはワンちゃんが来てくれる♪



アタシ、すごいじゃん



そして…日曜日に
『あい、ペットショップ見に行こうか!』
お父さんが言ってくれた


妹が目をキラキラさせながら『〇〇、ワンちゃんが欲しい!!』と叫んだ


家族でペットショップに行った♪


実はもう、欲しいワンちゃんは決めていたんだ♪


海に行ったあの後、
補聴器のいつもメンテナンスに行くお店に行った

その隣りのペットショップに
コリー犬がいた。

目が合って、運命を感じてた♪


もちろん、そこのペットショップでよく犬を見てたから
そのお店に行った


アタシは一目散にコリー犬のところに走って行った
『………ぉっ…うぃ!!』
(このワンちゃんがいい!)

お父さんもお母さんも『あい~もっと色んなワンちゃん見て決めなさい(笑)』と呆れて笑っていた


コリー犬は、アタシを見ると尻尾をフリフリして
愛くるしい表情をした


妹も他のワンちゃんを触っていたけど
アタシの手を舐めて、尻尾を振るコリー犬に『かわいい~〇〇も、このワンちゃんがいい!!』
と大興奮していた






そしてコリー犬は、我が家の家族になった



名前は、アタシが紙に
【ロッキー】と書いて、決定した





すごくすごく嬉しかった



No.186

ロッキーが来てから、我が家は一転して明るい家庭になった

アタシも妹も弟もロッキーに夢中だった

お母さんも、話すことが多くなって

我が家はロッキーを中心にどんどん笑いが増えて行った


そして何より、話せなくてもロッキーはアタシに寄り添い
いつでも側にいてくれた



そして、その頃
アタシは谷川君にも助けられていた


谷川君は、毎日手紙を持ってアタシに会いに来てくれてた

手紙には、アタシがいつでも学校に来れるように
明日の連絡と、今日あったこと
そして、あいが来たら今習ってるところを休み時間に教えてあげるからな

とか…毎日メッセージと共に持って来てくれた


そして話せないアタシに、ニコニコ笑って
喋れなくてもいいから…と色んな話しをしてくれた


アタシも、毎日ロッキーのこととか
いつもありがとう。とか色んな気持ちを書いて手紙の交換をしていた


谷川君は、アタシからの手紙を毎日楽しみにしてる。って言ってくれてた




先生は一度も会いに来てくれなかったけど


No.187

10月に入って、秋らしくなったある日

いつものように、夕方に谷川君が来てくれた


その頃にはアタシは、待ち遠しい気持ちになっていた


いつものように手紙を交換して、庭先で話しをしてくれる


その日『あい、ちょっとこっち来て』と庭の隅に連れて行かれた

『目、閉じて』
言われるままに、目を閉じた

唇に、そっと唇が触れた


ビックリして目を開けると照れたように
『王子様のキスで目を開けるとかあるじゃん…
白雪姫とか、眠り姫とか…
だから俺、王子様みたいに、あいの声が出るようになったらな…ってずっと考えてたんだ』


うん。ってアタシはにっこり笑った


すごく気持ちが嬉しかった


No.188

谷川君とは、ずっと仲良しの関係が続いた

中学2年でアタシ達は付き合った

谷川君も6年で、親が離婚して、中学入ってグレたから
アタシと同じグループ
ほんとにずっと一緒にいた


手を繋いだり、キスしたり…デートしたり
小学生の時のように遊んだり
キス以上は無かったけど
初めて恋をした人。


高校生になる春に、少し離れた町に引っ越してしまってから
恋は自然消滅した。

でも、年賀状だけは大人になっても交換していた


No.189

>> 188 🙇💦前レス…
引っ越したのは、谷川君です

お母さんが再婚されました


(谷川君は、後々アタシの人生に関わって来ます)



後、誤字・脱字が多く申し訳ありません🙇💦


No.190

12月…

日曜日だった。

いつものように、妹とロッキーと遊んでいた


ロッキーは、随分大きくなっていた


ロッキーに、ニットのポンポン帽子をかぶせて
マフラーを巻いた


その姿が、あまりにも可笑しいくて
アタシは笑った
『あはは…あはは…』




……………!!!




え……?






『ロッキー…』

………嘘…!?

ロッキーがアタシに、抱き着いて舐める



妹が
『お姉ちゃんが~お姉ちゃんが~!!
お姉ちゃんが喋った~!!』大声で叫ぶ


『あいうえお…』
声が…声が出るよ!!



お父さんとお母さんが、妹の声に走って駆け寄って来た


『あい…!』


『お父さん…お母さん…アタシ…』
ロッキーが、そのままの姿で顔を舐める


アタシとロッキーを囲むように、お父さんとお母さんが抱きしめて泣いた



アタシも妹も泣いた


声を出して泣いた…
嬉しくて、
大きな大きな声を出して泣いた


みんなでロッキーのおかげだと、ロッキーは褒められて
尻尾を振って喜んでいた




声が戻って来た…





なんて嬉しいんだろう




アタシは、ずっと『あいうえお、あいうえお』と繰り返した




夢じゃない…


No.191

すぐに知らせたかった


『おばあちゃんの家に行って来る!!』

ロッキーを連れて、妹とおばあちゃんの家へと走った


いつものように裏の玄関(ちゃんとした表の玄関と、おばあちゃん達の部屋に近い裏手の玄関がありました)

ガラガラ『おばあちゃん!!おじいちゃん!!
あいだよー!』

顔が見える前に『あい?!』とビックリした大きな声が聞こえて来た

おじいちゃんとおばあちゃんが『声…やっと出たのか?』と顔を見せる

『うん!!あいうえお~♪』

『良かったなぁ…良かった!!』
二人に頭を撫でてもらう

おばあちゃんは泣いていた『心配で心配で…ほんとに良かった』

喜んでもらえて嬉しかった

部屋に上がって、ロッキーが笑わせてくれた話しをした


いとこにも知らせたくて
叔母さん達のリビングにいった

リビングには叔母さんとHちゃんがいた
『Hちゃん!!アタシ喋れるようになったよ!』

Hちゃんは『あい~!!良かったね~頑張ったね』と喜んでくれた

叔母さんはチラっと見て『私には関係ないから。迷惑だけはかけないで!
また、この家に帰って来るつもり?』

『…お母さん!!最低!!』Hちゃんが叔母さんに怒った

……初めて見た。
いとこが叔母さんに口ごたえする姿…

『アタシは、自分の家に帰るから!ロッキーもいるし、叔母さんも叔父さんも大嫌いだし!!
Hちゃん、ごめんね』

プイっとおばあちゃん達の部屋へ戻って

『またね』と帰った


次は山田さんちに走った

『おっちゃーん、おばちゃーん♪あいだよ~』

『あいちゃん!!』
二人が飛んで出て来てくれた

『喋れるようになったのか?』
『うん!』
二人は、交互にギュウッと抱きしめて
『良かったー!!この日をずっと待ってた』と言って、おっちゃんが泣いてほお擦りしてくれた

アタシのほっぺが、おっちゃんの涙で濡れた

お菓子をいっぱいもらって、ルンルンで家に帰った



夜は、父に歌えと言われて(父はももえちゃんの大ファン)
山口ももえちゃんの歌を歌った
(ちなみに、ももえちゃん全曲マスターしてます(笑))

妹と二人で
『これっきりこれっきり、これっきり~ですか~♪』歌いきった♪♪



にぎやかに、楽しい夜を過ごした



そして学校にも復帰した


No.192

アタシは鍵っ子になった

学校から帰ると、おばあちゃんの家にロッキーを連れて
妹と弟を迎えに行って自宅に戻る
妹は、この頃から友達と遊ぶ約束をするようになった
アタシは、弟のお世話をするから仕方ない


夕飯の時間になると山田さんちへ行って
ご飯を食べさせてもらい、また家へ帰る


そんな暮らしをしていた


おばあちゃん達は、相変わらず喧嘩をしてたけど

弟に被害は無かった



でも、小4になった
ある日…

いつものように迎えに行くと
部屋がめちゃくちゃになっていた…


弟が、カーテンに丸まるように隠れていた…


No.193

アタシは、キレた…


基本、二人の喧嘩中は間に入らない限り
被害には合わない


でも、見てるだけでも心に悪い。

弟が一人で隠れている姿を見て、許せなかった

それに、前の日は叔母さんが休みの日で
弟は昼ご飯に、ケチャップご飯を用意されて
妹が帰って来るまでケチャップご飯を前に、泣いていたと妹から聞いていた

今日は叔母さんに言ってやろうと思っていたところだった


弟を外に呼んで、ロッキーと遊ぶように言った


アタシは、キッチンへ走って冷蔵庫を開けた

牛乳をリビングにブチ撒き、ケチャップ、マヨネーズをテレビやら机にブチ撒いた

冷蔵庫の肉もパックから取り出し、玄関へ投げ捨てた

卵を全て、掃除のしにくい天井に投げつけてドロドロにしてやった

油も床に撒き散らして、玄関へ容器を放った



おばあちゃん達の部屋へ戻り
『てめぇら、いい加減にしろや~!!お前らの喧嘩を見てると胸糞悪いんじゃ~!!
キッチン、めちゃくちゃにしてやったからな!!
あのババ~にも言っとけ
これからは本気でやるから、覚悟しろって!!
子供だとナメてんじゃねぇーぞ!!』
大声で怒鳴って、近くにあったリモコンで
おばあちゃんの頭をぶん殴った

リモコンが割れた…
ついでに割れたリモコンを電球に投げつけて、電球も割ってやった


…アタシにも凶暴な血が流れてるのかも…
自分が怖くなった。


『…行こう』

弟を連れて自宅へと帰った


あいが反抗する。と言われたが
それからは、子供の前では随分マシになった


アタシも、反省した。
同じ暴力、暴言の中で大人になった父を見て
その寛大な優しさ、冷静さを尊敬した
父のようになりたい。と思うようになった


父と二人で約束をした。

暴力の連鎖を断ち切ることを。


No.194

そして、アタシが中学校に上がると同時に母は会社を辞めた


弟の幼稚園入園に合わせて…

母には、沢山のママ友ができて楽しそうだった


弟は当時の記憶は全くなく、山田さんのことも知り合い程度しか覚えていない


妹は、幼い頃の記憶はぼんやりとしか覚えていないらしい

でも『私の母親は、お姉ちゃん』だと今も言う

山田さんのことは覚えているが、挨拶程度のようだ


アタシは、あれからも今も良く顔を出して
当時のようにご飯を食べさせてもらいに行く

秘密の両親…



父は、約束通り山田さんのことは母には話していない

おばあちゃん達のことも、あいは酷い暴力・暴言を見て育ったと話したくらいで
叔母さんや叔父さん…
全てを胸の内に秘めて
アタシと二人だけの秘密にしてくれている



父は、誰よりもアタシを理解してくれる


父とアタシには、同じ痛みを分かり合える絆ができた




No.195

ふぅちゃんを思えば、胸が張り裂けそうな…

受け入れられない現実を突き付けられた…


ふぅちゃん誕生から4日目…



産後鬱を心配されながら、アタシにできることを必死にした…


母乳を少しでも多くあげること、
ふぅちゃんのお世話ができるように頑張ってリハビリをすること


病室で屈伸運動をしたり、足を上げたりと頑張った



【10歳まで…】ふぅちゃんの命の宣告を受け入れることはできなかった…

頭によぎっては、泣き叫び…せいちゃんや父、母、義父、義母に背中をさすってもらい

抱き合いながら共に泣いて、慰め合った


とてつもなく恐ろしかった…


自分が壊れてしまっては、ふぅちゃんはどうなるんだ!!

自分に言い聞かせ1日1日を過ごした…


普通は一週間で退院のはずだけど、アタシ達には退院…
と言う状況にはほど遠かった


  • << 198 🙇お詫び ここから、またふぅちゃんの話しに戻ります。 と✏したつもりが抜けていました🙇💦 読みにくくなってしまい 申し訳ありません😱⤵

No.196

何度も何度も泣いた

せいちゃんと二人で、もう涙も枯れ果てるほどに泣いた


…人って不思議…
どんなにどんなに泣いても、
涙は枯れることは無く
命の泉のように溢れ出す


数日が経ち、両親達は帰って行った…


せいちゃんも仕事がある


一人でいると…
頑張れたり、狂ってしまうほど叫び泣いたり

看護婦さんにしがみついて、一人にしないで!!と取り乱したり…


毎日、ふぅちゃんには会いに行った

『お母さんだよ。守るからね。強くなるからね』
自分に言い聞かせるように、言っていた


リハビリも頑張って、階段も手摺りを持てばスタスタ登れるようになっていった


体は鍛えたら、その成果はすぐに見える形で現れる


心だけは…
体に追い付けないでいた



体が軽くなるのに
心は、ずっと重みが変わらない…


まだまだ
受け入れられ無かった…


辛かった…


せいちゃんだけがアタシだけが、お互いに心のよりどころだった


No.197

この時期によく口ずさんだのは

主治医の先生が歌ってくれた

【昴】の始まりの部分…


・・・・・・・・・・・

目を閉じて 何も見えず
哀しくて目を開ければ


荒野に向かう道より
他に見えるものは無し


・・・・・・・・・・・


このフレーズが、常に頭でリフレインしていた。



アタシ達夫婦が、ふぅちゃんと歩む道…


荒野に向かう道より…
他に見えるものは無し…



目を反らさずに、しっかりと前を向こう


ふぅちゃん…
アタシ達ができる精一杯のこと…


沢山の微笑みを与えよう

沢山の愛を与えよう

沢山の幸せを与えよう



命が尽きる日が来ても、後悔しないように…




泣くのは止めよう。


今、ふぅちゃんは生きている


だから、今この瞬間を大切にしよう


この幸せに浸ろう…
この子を抱ける幸せ…


愛おしいふぅちゃん




泣くのは…
命尽きた時でいいんだ


悲しむのは、その時だ…




今を、喜ぼう…




アタシの心は、先生の昴の歌声によって



次第に落ち着いて来た…



No.198

>> 195 ふぅちゃんを思えば、胸が張り裂けそうな… 受け入れられない現実を突き付けられた… ふぅちゃん誕生から4日目… 産後鬱を心配されな… 🙇お詫び

ここから、またふぅちゃんの話しに戻ります。

と✏したつもりが抜けていました🙇💦


読みにくくなってしまい
申し訳ありません😱⤵


No.199

前を向き始めることが出来た

もちろん
ゆっくりと…
ゆっくりと…


ふぅちゃん誕生から、半月が経とうとしていた頃だった


リハビリは、もう必要ないくらいに
アタシは動けるようになっていた


せっせと赤ちゃん室に通い、ふぅちゃんのお世話の練習をしていた


お風呂に入れたり、着替えをさせたり…


婦長さんも、そんなアタシの姿を見守ってくれていた


1日に1時間は、婦長さんや看護婦さんとお喋りをしに自分から足を運んだ


『あいちゃん♪随分変わったわね。
産後鬱を随分心配してたけど、大丈夫そうね』

婦長さんに言われた


にっこり笑って、
『ありがとう♪アタシ、ふぅちゃんのお母さんだからね!!
もう泣いたりするの止めたんだ。
だって、今、ふぅちゃんは生きてるし…
悲しむのは、悲しいことが起こってからって決めたの…』


『あいちゃん…
よく立ち直ってくれたわね…
えらいわ…
沢山泣いて成長したのね』


婦長さんが抱きしめてくれる


優しくされると…弱虫になる…


『うっ…ぅっ…』
婦長さんの胸の中で泣いた



アタシだって…
ほんとは…

普通の幸せを願ってるんだ…



優しさに触れて
涙は流れる…



No.200

ふぅちゃんは順調に体重も増えていっていた


アタシも健康体になった


そろそろ…退院の話しが出て来ていた


アタシは、どうしてもふぅちゃんを連れて帰りたかった


ふぅちゃんのお家は、病院じゃない



せいちゃんと、ふぅちゃんと3人で暮らしたい



もしも…



それが、
ふぅちゃんの命を縮めてしまうことになったとしても…



普通の暮らしを我が子と、我が家でしたい



父親せいちゃん、母親アタシ
そして、ふぅちゃんの暮らしがしたい

家族で暮らしたい。



そう願っていた。



せいちゃんも、同じことを望んでくれていた




先生は悩んでいた…


No.201

主治医の先生と小児科の先生、心臓専門の先生、婦長さん、せいちゃん、アタシ…
6人で話し合いの場がもたれた


小児科の先生と小児科(心臓専門)の先生が
今のふぅちゃんの状態を説明してくれる

何度も2人は、アタシの部屋へ訪ねてくれていたので、喋りやすい関係になっていた

『あいちゃん、ふぅちゃんは元気ですよ。
心配していたような悪い症状もなく、安定しています。

あいちゃんとご主人は、ふぅちゃんを自宅に連れて帰りたいんですね?』


『…先生!!お願いします…アタシ、ふぅちゃんに自分の家で育って欲しいの…

もし…
それが、ふぅちゃんの命を縮めてしまう結果になったとしても…

両親の元で…少しの時間でも普通の生活を…』
後は、うまく言えずに泣いてしまった


せいちゃんも
『親のエゴかも知れません…
病院の中で診てもらいながらの方が、子供にはいい環境だとは分かっています…

でも…私達は…
家族で暮らしたいんです』


婦長さんが
『よく話し合ったのよね…
そして、二人が出した答えなのよね…』
静かに付け加えてくれた


心臓専門の先生が、じっとアタシ達を見つめる


『分かりました』


小児科の先生も微笑んでくれた
『でもね、条件が沢山あるよ。
病院のように看護婦さん達もいない…
不安になることもあると思う。
頑張れるかな?
覚悟はあるかな?』



アタシは、大きな声で言った
『覚悟は出来ています!
どんなことでも冷静に、ふぅちゃんを一番に考えて生きて行くつもりです!』
涙は次々と溢れ出すけれど…
強い意思を伝えたかった




『では…1ヶ月検診が終われば退院しましょう

週一で、通院してくださいね

今のところ、手術の予定は6ヶ月と考えています

それまで、自宅でふぅちゃんと仲良く暮らしてください!

困ったら、すぐに来るんだよ?』


せいちゃんと二人で頭を下げた


『ありがとうございます!
これからも、よろしくお願いします!!』

せいちゃんと顔を見合わせ、笑顔で手を握り合った


No.202

アタシは、自分で自分の事を『あい』と名前呼びすることはない

小さい頃から『アタシ』と言っていた

でも、みんなアタシを『あいちゃん』と呼んでくれる

小児科の先生達も苗字ではなく『あいちゃん』と呼ぶ

それがすごく嬉しかった

アタシが人見知りを、全くしない性格だからだと思うけど


親しみのある呼び名で呼ばれることは
長い入院生活や、辛いふぅちゃんのこと…折れそうな心を支えてくれた

こんな小さな事でも、大きな支えになるのだ





退院まで後少し…

ふぅちゃんの1ヶ月検診が近づいて、退院の準備をするために
母が来てくれることになった

退院後も1ヶ月は、一緒に住みお世話をしてくれると言ってくれた


心強かった。



アタシは、少しの不安と大きな喜び


心臓疾患のふぅちゃんへの、リアルなお世話の仕方…
細やかな先生からの指示





夢心地で赤ちゃんと退院するのではない

何より強い心がないと、やって行けない



アタシは、やれる
アタシ達は、やるんだ



ただ
家族で暮らして行きたい


普通の暮らしではないかも知れないけれど


進む道は、険しくとも…
愛があるなら怖くない


No.203

1ヶ月検診は無事に終わった

アタシも異常なし。



退院の準備をして、ナースステーションへ行く

『長い間…お世話になりました…
ほんとにみなさん、ありがとう』

『あいちゃん!!おめでとう!!
ふぅちゃんの通院がてら、いつでも寄ってね♪』

看護婦さん達から拍手をしてもらう


白いドレスに着替えたふぅちゃんを抱きながら
みんなと握手して、感謝を伝えた


婦長さんは、涙目で『あいちゃん…もう他人じゃないくらい大切に思ってるわ
辛かったことも沢山あったわね…
これからも、いつでも頼って来てね…』

ナースステーションの電話番号の紙と、婦長さんの自宅の電話番号が書かれたメモを渡してくれた


感激のあまり婦長さんに抱きついた
『ありがとう!!大好き!!………ほんとに…』これ以上は言葉にならず、婦長さんに抱きついたまま泣いた

婦長さんも泣いた

看護婦さん達からは拍手の祝福を受けた

『これからは、夫婦でふぅちゃんを大切に育ててね…
あいちゃんをしっかり支えてあげてね!!
あなたは、若いけれど立派なご主人よ、頑張ってね、お父さん!!』

婦長さんの言葉に、せいちゃんも泣いていた



アタシ達は、白いドレスのふぅちゃんを中心に皆さんと記念写真を撮り


母の待つ
我が家へと帰った



久しぶりの町の景色…
知らない土地…

アタシもふぅちゃんと同じだ…
知らない土地、友達も知り合いもいない。


ふぅちゃんを見つめる。


これから、一緒にこの町で育って行こうね



婦長さんや、看護婦さん達と知り合えたから
大丈夫…!!

心強かった。




No.204

退院の前夜、主治医の先生が病室に来てくれていた


アタシが【昴】を聞かせてよ~!!ってお願いしたからだ


ギターを弾きながら【昴】を歌う、先生の歌声を心に深く刻みこんだ


先生との抱擁…

温かいこの病院…医療だけではない
心までも通わせ合った…



自宅までの帰り道…

これからの生活の中…


そして14年経った今でも、あの歌声は心の中で響き…アタシを支え続けてくれている





久しぶりの我が家に帰った


こんな家だったなぁ


記憶も薄れるほどしか、住んでいない


楽しく幸せな新婚生活を、妊婦生活を送るはずだった家…



母が綺麗に掃除をして

ご馳走を用意して待っていてくれた


奥の部屋には、ふぅちゃんのタンスとベビーベッドが用意されていた



『お母さん、ただいま~♪
あいと、ふぅちゃん帰って参りましたぁ♪♪』

上機嫌で家に上がる



母は『お帰りー♪ふぅちゃん抱かせて~!!』

きゃっきゃっ♪♪と喜びながら、ふぅちゃんを抱いて
『あぁ~幸せ、孫ってかわいいわー』としばらくは、ふぅちゃんを独り占めしていた



アタシも温かい気持ちになった


せいちゃんと笑って母を見ていた



No.205

ふぅちゃんをお世話すると、同時に気をつけなければいけない条件

・お風呂は、なるべく手早く、お湯の温度は少しぬるい温度で

・あまり泣かせないようにする

(心拍数が上がると駄目なため)

・人混みの多い場所への外出は控える

・風邪は引かせてはいけない

(心臓へのウィルス感染の危険があるため)



そんな条件の中、ふぅちゃんとの生活が始まった


幸い、母乳がよく出る体質で母乳を与えることが出来た


ふぅちゃんが泣く。

母乳を与える…クックッと飲む姿に、吸い付く力強さにアタシは何度も幸せと安心を覚えた


母が、そんなアタシを見て『お母さんは、母乳育児は仕事の邪魔になるからと、一切あんた達に乳首を吸わせたことも無かったわ…

赤ちゃんが母親のおっぱいをもらう姿って美しいのね…

今まで知らなかった…

あい…ごめんね』

と言って、ずっとアタシとふぅちゃんを見つめていた




しかし、ふぅちゃんはよく泣いた…


顔を真っ赤にして、舌を震わせ泣く


これには、参った…

こんなに泣かれると、死んじゃうんじゃないかとハラハラして
『ふぅちゃん…お願いだから、泣かないでー!!』

我を忘れて叫び、死んじゃう…死んじゃう…


『イヤーッ!!ふぅちゃん!!泣いたら駄目だから分かってよー!』


何度、取り乱しただろう…


朝から晩、夜中…もう抱っこしっぱなしだった


ふぅちゃんを抱きながら、壁にもたれて寝る日もあった


No.206

それでも、まだ母が居てくれる間はマシだった



1ヶ月が経ち
母が帰って行った…


せいちゃんは、3交代勤務…

朝も昼も夜も、お構いなしに泣き続けるふぅちゃん


こんなに力があるんだと言い聞かせながら
ふぅちゃんのお世話をする

買い物には、ふぅちゃんにマスクをさせて連れて行った


いつ自分が寝てるのかも分からない…


ひたすら抱っこしっぱなしだった


ご飯を作る時は、おんぶ…

片時も離れることは無かった


相変わらず、火がついたように泣き叫ぶ我が子…

時には、一緒になって泣いた

『泣いたら駄目なんだよ~!!ふぅちゃんは、泣いたら駄目な赤ちゃんなんだよ~!!
ごめんね。思い切り泣いていい体に産んであげられなくて…』

抱きしめながらワンワン泣いた


せいちゃんも一生懸命だった

仕事で怪我したら大変だから…寝てていいよ
と言ってても、ふぅちゃんの抱っこを変わってくれたり

せいちゃんも、ふぅちゃんを抱っこしながら立って寝てたり…



赤ちゃんを泣かさないように、なんて…
とても無理だ。




それでも、必死だったアタシ達…





よく頑張ったなぁ…
と思う。



No.207

週一で、病院に通いふぅちゃんを診てもらう

『順調だね♪
あいちゃん、頑張ってるなぁ!!』

『ありがとうございます♪良かった~』

小児科(心臓専門)の先生とちょっと雑談して
アタシは、お世話になりっぱなしのナースステーションへ向かう


『こんにちは♪今日もふぅちゃん順調だって♪』

『あいちゃん、いらっしゃ~い♪良かったわね
ふぅちゃん、おいで~』

こうして、ふぅちゃんが全く寝てくれないことや
泣いてばっかりで参っちゃうよ…

と愚痴をこぼして聞いてもらう


あまりに、酷い時には『ベッド空いてるから、少し寝て行きなさい』とふぅちゃんを預かってもらえた


とっても心強かった

アタシが知らない土地で、ふぅちゃんを育てられたのは、こうした皆さんのおかげです




ふぅちゃんは、スクスクと大きくなって行った


6ヶ月と言われていた手術も1歳までに延びた


せいちゃんと肩を抱き合って喜んだ





こうした、障害を持つ両親をテレビのドキュメンタリー等で観るが
子供を中心に、両親が力を合わせて病と闘う…


確かにそうだ。
その通りだ。


だけど、障害があるからこその衝突もあるのだ


泣くふぅちゃんを前に、何度
『泣かせるなよ!!』
『分かってるけど、泣くんだよ!!アタシにどうしろって言うんだよ!!』

我が子を思うがこそ…

頭では、分かってるけどせいちゃんに責められると腹が立つ


しなくて済む喧嘩も沢山した



喜びも、悲しみも、苛立ちも、全てを共に分かち合える戦友のように感じていた



No.208

そして、アタシ達の住むハイツの上に
25歳のママとふぅちゃんと1ヶ月違いの赤ちゃんK君がいた


何度か喋ってるうちに、すっかり仲良くなった


でも、ふぅちゃんの病気の事は言い出せなかった…


6ヶ月を越えた頃から、お昼過ぎになると
『一緒に遊ばせようよ』
『一緒に公園行かない?』
『一緒にお散歩させようよ』


毎日のように誘ってくれる…


気持ちは、とっても嬉しいんだけど…


鼻水を垂らすK君とは…遊ばせられない…

公園も…砂等、触れさせる訳にはいかない…

お散歩は1回行ったが、ベビーカーのK君はほとんど寝ていて

排気ガスの充満する道で、ママのお喋りばかりに付き合った…


排気ガスの恐怖にママとのお喋りも上の空…


結局、お散歩も断った



当たり前だが、無視されるようになった…


ふぅちゃんの病気を話せば良かっただけのこと…

だけど、普通の元気なK君がうらやましくて…



常によぎる【10歳まで…】命の宣告

ふぅちゃんの事を話したく無かった



とても辛かった…


No.209

そのうちK君の家には、公園で知り合ったママや赤ちゃん達が頻繁に出入りするようになった


買い物帰りに、友達とガヤガヤと楽しそうなK君ママに出会った



マスクをしてるふぅちゃんを抱いて…
会釈をすると『あの人、すごく潔癖症で赤ちゃんを家から出さないし、お友達とも遊ばせないのよー
変わり者なの。
子供がかわいそうだわ~

もっと社会に赤ちゃんを出させてあげないとダメな子供に育つわよ!!』

と、はっきりと言われた


逃げるように家に入って、ふぅちゃんを抱いて泣いた



アタシだって…
アタシだって…



涙がポタポタとこぼれた


沢山の友達…


作りたいよ!!


あんな風に、みんなに言わなくてもいいじゃん




アタシだって
ふぅちゃんだって


みんなと遊びたいよ!



ふぅちゃんは、幸せなのかな…

マスクを外しながら思った


ごめんね…


切なかった

No.210

ふぅちゃんを中心に、アタシ達夫婦は懸命にお世話をした


そして、ふぅちゃんがトコトコと歩くことが出来るようになった
1歳2ヶ月…


ふぅちゃんの心臓の手術が行われた



ベッドに寝かされたふぅちゃんが白い扉の向こうへと運ばれて行った…


『ふぅちゃん、頑張って!!』
見送った後は、やっぱり泣いた

張り裂けるような不安と緊張…

どうか無事成功しますように…と祈り続けた


体が震える

ふぅちゃんが頑張ってるのに、アタシが何を怯えてるんだ!


しっかりしろ!アタシ!


せいちゃんと無言で手を握り合った


両親達も来てくれていた


みんなの気持ちが一つになっていた


誰一人、口を開かなかった…






そして、
長い長い時間が過ぎて、ふぅちゃんが部屋へと戻って来た


麻酔でぐっすりと眠っていた



手術は、無事成功。


安心したら、腰が抜けたように座りこんでしまった



良かった…

『ふぅちゃん!!頑張ったねー!!
ふぅちゃん…強かったね!!』
みんなが口々にふぅちゃんに
声をかけた


看護婦さんがやって来て、点滴を追加して
ふぅちゃんの胸のガーゼを剥がして何かをしていた



ふぅちゃんの胸は痛々し過ぎて、
看護婦さんの処置を見ることもできなかった…



せいちゃんは、目を反らさずに
じっと見ていた


真っ赤な目…せいちゃんの思いは、口にしなくても分かった


両親達も無言だった



我が子の
痛々しい姿…もう二度と見たくない


アタシの胸の痛みは強烈だった。



頑張ったふぅちゃんに、負けないように
涙を必死にこらえた



No.211

それから入院生活を送った。


アタシは、泊まり込みでふぅちゃんを看病した



長かった…
辛かった…


点滴を嫌がるふぅちゃん

かんしゃくを起こすふぅちゃん


アタシは
あまり笑えなくなった


疲れた…



ふぅちゃんを前に、疲れた…なんて…
自分を責めた。



でも、ほんとに疲れていた



心身共に悲鳴をあげていた



ここの病院は、アタシ達の住むところから
随分、離れた病院だった



馴染めない…


義務的に回る看護婦さん


笑顔も、全てプロの笑顔…

それくらい分かるよ。




発狂しそうな頃…



やっと退院できた。



No.212

やっと久しぶりの我が家へ帰った


両親達も、お祝いに来てくれた

遠いからいらないって言ったけど、孫のために来てくれた
『ふぅちゃんよく頑張ったな』

みんなでふぅちゃんを囲む。

【退院おめでとう】と書かれたケーキのロウソクを、ふーっと消して
パチパチと拍手をされる


ふぅちゃんは、ご機嫌だった


そんな様子をほのぼのと見ていた



…あぁ、幸せ。



そして、家は狭いから両親達にはビジネスホテルへ泊まってもらった



一人で片付けをしていた



ふと、
棚の上に無造作に置かれた
透明の袋に入った写真が視野に入った



何気なく見る



…スノーボードを楽しむ、せいちゃんが映っていた




アタシが…
毎日毎日、明けても暮れても菓子パンを食べ、
ぐずるふぅちゃんをなだめて、
時には泣きながら…
固いソファーで丸まるように寝ていた間に…?




こんなに笑って友達とスノーボードですか…



全てをアタシに押し付けて、心配してる台詞を吐いて…

馬鹿らしくなった。



こんな暇があるなら、1日だって構わない



アタシに、ご飯でも食べさせて欲しかった…




アタシは、写真を手にペタンと座り込んだ


疲れた…


自然と涙が流れた




No.213

ふぅちゃんの退院祝いをして喜び合った
その夜、アタシ達は初めて喧嘩をした

一方的なアタシの喧嘩だが…


もう、止められなかった…

ストレスも疲労も限界だった



写真を手に、座り込み涙を流すアタシに、せいちゃんは気づき…

バツ悪そうに『気分展開にって会社の人に誘われて…ごめんな…
あいも、ふぅちゃんも頑張ってたのにな…』

アタシの頭を撫でる


『ふざけんな…こんな写真まで撮ってもらって…
てめぇ…
アタシが、どんなに辛かったか分かるかよ?

せめて、飯が食いたい。
おにぎり1個だっていい

そんな事を願ってたって知ってたか?

てめぇは気分転換にスノボ?

アタシは、おにぎり1個が食べたかったんだよ!!』


せいちゃんの髪を掴み、床に頭を押し付けた


『ふざけんなよ…』


拳を振り上げて、………と思った瞬間





フラッシュバック。


祖父母の喧嘩、血まみれの姿…ぐちゃぐちゃに破壊された部屋の中が蘇る


『クソッ………!!』


アタシは、振り上げた拳を床に叩き付けた


拳から、血が少し出た…



やり場のない怒りは、どこにも行き場所をなくし

アタシの胸に重くズッシリと帰ってきた



せいちゃんが、アタシに驚いていた


初めて見せた別の顔…



『あんたと違って、生温い環境で育ってねぇーんだよ、悪かったな』



せいちゃんは写真をごみ箱に捨てた



『ごめんな…』



手に絆創膏を貼ってくれた



アタシは、もう責められなくなった



もう、いいよ



許せない気持ちを持ち続けるほどには、
強くなかった…



No.214

自分の事で、せいちゃんと喧嘩するのは初めてだった…

感情のままに気持ちをぶつける事も、初めてだった…



アタシは、怒りの感情が湧くと周りが見えなくなる


でも、怒りの感情を長く維持できない


これも、祖父母の血なのだろうか…


散々、お互いに暴れまくり怒鳴り散らし、暴力を振るいまくっても

二人はすぐに、何も無かったかのように笑い合っていた…


狂ってる…
意味がわからない…


ずっと思っていたけれど、アタシも二人と同じだ。

荒れ狂った気持ちは、スーッと消え失せる…



父と交わした暴力の連鎖を絶ち切る約束…


もう、絶対に…
人を傷つけたりしたくない

あんな風になりたくない。
怖かった…



せいちゃんに、ごめんなさいと泣いて抱き着いた



せいちゃんには、幼少期の過去を話した事は無かった…


見栄っ張りなアタシ…

自分の悲しかった、傷ついた気持ちを知られたく無かった



ちゃんと話していれば…
もっと大切にしてもらえたのかな…?


後になって後悔する


No.215

それからは、喧嘩をするとアタシは家を飛び出すことにした

これなら、暴力に支配されずに済む

…何より、せいちゃんが必死になって探し出してくれるのが嬉しかったから…


一石二鳥だと思ってた。




ふぅちゃんは、退院後…ますます手の付けられない
かんしゃく持ちになってしまった


気に入らないと、キィーっと高い声を出して
寝転んで手足をバタつかせ、いつまでも泣きわめく…


夜も、夜泣きをする…
いつまでも続けるつもり?

アタシを衰弱させるつもり?
と思うくらい…


『大丈夫…怖くないよ~…ふぅちゃん大好きだよ
お母さんがいるからね』

毎晩、毎晩、呪文のように唱えて抱っこしていた



『泣き叫ぶ声が、うるさいわよ!!
まだ、夜泣きするの?
どっかおかしいんじゃないの?』
と上の階のK君ママから嫌味を言われたことも、数回…



ごめんなさい。と謝りながら胸の内では、毒づいていた。



『てめぇこそ、黙れよ』



No.216

無事、手術が終わり

またお世話になってる病院へ通う


小児科(心臓専門)の先生が『ふぅちゃん、頑張ったね~♪あいちゃんも、お疲れ様!
この調子だと、もう手術しなくて済むかも…』

ふぅちゃんの胸にエコーを当てながら、言ってくれた


手術をした病院でも
『はっきりとは、断言できませんが…
この手術によって…
(説明を伏せさせて頂きます)
おそらく、
お子さんは、健常者と同じになると思います』

と言われていた



やっと…
やっと…


光が見えた。


『先生、10歳まで…と言う心配は?』

ニッコリと笑って
『うん。もう、そんな危険性はないよ。
よく頑張ってお世話が出来たね。
熱が出ても、次の日の朝に来たらいいからね』


『ありがとうございます…』
目がウルウルなってしまった



せいちゃんが夜勤の夜に限って…
ふぅちゃんの発熱…

タクシーに乗って、何度ここを訪れただろう…


あんな不安な思いをしなくて済むんだ…


健常者と同じ…


頑張れ!
ふぅちゃんの体!



久しぶりに
アタシは、ナースステーションへと足を運んだ



早く、みんなに会いたかった


No.217

ナースステーションには、婦長さんの姿だけで
みんなバタバタと慌ただしい…

婦長さんがアタシを見て
『あいちゃーん!!ふぅちゃーん!!
無事手術終わったって聞いたわよ♪
おめでとう♪
二人とも、よく頑張ったわね!!』

『ありがとう!!みんなは?』


『今日は、今朝から3人も赤ちゃんが生まれて…
今、1人が分娩台よ!!』

『大変だね~!!
きっと今夜は満月だね(笑)
これからもっと妊婦さんが来るね♪
みんなによろしく言っておいてね♪
また来ます!!』



長い入院生活で、【満月】の日は
生命がバンバン生まれて来るんだと知った。

【満月】に出産するのは、珊瑚や海ガメだけではない


次から次へと、産気付いた妊婦さんが病院へとやって来る…


アタシの入院中で一番多かったのは、8人という人数が
満月の中、出産をした


そして、ふぅちゃんも満月の次の朝に誕生したのだ



おそるべし!!満月の力!!



余談ですが、
満月の夜は、救急車で運ばれて来る人もハンパない

事故だったり…原因は知る由もないが、満月の夜は救急車が走り回る日でもある
(アタシの病室が救急車の出入口だった為)



おそらく満月の日には、新たな命が誕生する数も多い…
反面、
死者の数も多いんじゃないかな…
と、個人的に思っている



No.218

手術が終わってからは、親子3人で色んなところへ行った

水族館や、動物園…芝生の上でピクニック


ふぅちゃんは、やっと外の世界にデビューした


『お母さん、お父さん…』言葉の数も増えて
会話もできる。

ふぅちゃんの気持ちが、分かるようになって来た


幸せだった。



せいちゃんとも相変わらずラブラブで
幸せを噛み締めていた。


この頃、
ふぅちゃんに、兄弟がいたらなぁ…

と思うようになっていた



でも、まだ油断は禁物。


ふぅちゃんだけを見ていよう




この子が幸せでありますように…


早く、心臓…治ってください!!


祈りを込めて、風呂上がりのふぅちゃんの胸にキスをする



…ずっと習慣になっていた



No.219

その頃、アタシは近所で仲良くなったママがいた


ふぅちゃんの半年下の女の子


『一緒にお茶でもして育児の愚痴でも、こぼそうよ!!』と言われて

我が家に遊びに来てくれた


もう、ふぅちゃんは大丈夫!!
風邪を引いても、命にかかわることもない


この地に来て初めての、お友達…♪♪


嬉しいかった。



楽しくお喋りをしていた

そして、何気なく
『ふぅちゃんはさー…』
心臓の事を話した。



彼女の表情が変わっていった…



『ねぇ…
それって、移らない?

……………
ごめん…帰るね。』



彼女は、子供を抱き上げると
逃げるように帰って行った…


ふぅちゃんが『〇〇ちゃんは?』
と聞いて来る…



移らない?………



ショックだった…



夕飯の支度も出来ず



アタシは、上の空でふぅちゃんの相手をしていた…




せいちゃんが帰って来て


抱き着いて泣いた。



『そういう人もいるさ。
飯、外食にしよう!


なっ!!
あい。気にするなよ…』



ふぅちゃんは、無邪気にファミレスでお子様ランチを、ほお張っていた



アタシは【移らない?】…

耳から離れず、食欲もなかった



傷ついた。


No.220

もう友達作りも諦めた。


ふぅちゃんとせいちゃんさえいればいい


その分、ふぅちゃんとは沢山遊んだ




そして、ふぅちゃんが2歳の誕生日を迎えた頃…


『完全に完治しましたね!!よく頑張ったね!!
…あれだけ酷い状態から、1度の手術だけで…
このようなケースは、珍しいですよ!!

奇跡に近い。
おめでとう!!』


せいちゃんと涙を流して喜び合った

良かった…
良かった…

ほんとに良かった…


ふぅちゃんは、もう通院の必要も無くなった



そして、
この月に同時に、せいちゃんの地元への返還が決まった


慌ただしく、荷物を整理して
お世話になった主治医の先生や婦長さん、看護婦さん達
小児科の先生、小児科(心臓専門)の先生に
涙、涙の別れの挨拶をして、アタシ達3人は
地元の南の地へと引っ越した

(実家は車で1時間ほど離れた北です)



新しい街…見慣れた海…


アタシ達は、分譲マンションを購入して
新しいスタートを切った


せいちゃんは、出張の多い部署に配属された



そして、アタシは自分が子供を産めなくなる前に…
と、ふぅちゃんの兄弟を望んだ



ほどなくして、アタシは妊娠した



喜びに包まれた幸せな頃だった…



せいちゃんは、残業や出張だらけで家で過ごす事が少なくなった…



不安もあったけれど、仕事を頑張ってくれる
せいちゃんを理解し、支えた


幸せだった。



No.221

ゲェーゲェー…
つわり…気持ち悪い…


妊娠3ヶ月。
吐き気と共に目覚める
つわりが始まり、いつもと変わらない朝…


トイレから出て、洗面台に立つ


『い…痛っ…!!』
お腹に鈍痛が走った…


嘘…
めちゃくちゃ痛い!
どうしよう!


せいちゃんは、1ヶ月の出張中…


頼れるのは、母しかいない

這うようにして実家に電話をした

受話器が上がり母の声が聞こえるが
痛みで、声が出しにくい

『…お母さん…お…お腹が痛い…』

『あい?!ちょっと…大丈夫なの!
お母さん、すぐに行くから……
早く、早く、早く、救急車を呼びなさい!』


ああ…そうか…
救急車だ。
思いつかなかった…


『うん』


電話を切ると、すぐに119番をプッシュした



とりあえず…家の鍵を空けなくちゃ
必死で玄関まで行き空けた


マンションのオートロックは…誰が解除してくれるんだろう…


ふぅちゃんが、纏わり付く中…


痛みは増すばかりで、もう動くこともできなくなった


廊下で横たわり丸まっていた



痛みと不安…
どうなってしまうんだろうか…
お腹の赤ちゃん…頑張って…



意識が朦朧としていた


No.222

『……!!……〇〇あいさん!!』

耳元で名前を呼ばれ、気がついた

あ…来てくれた…良かった…


『話せますか?』

『…はい…!!〇〇病院に行ってください!!
子供も一緒に連れて行ってください!!
一人には…させないでください……お願いし……』
ふぅちゃんが心配で、必死に喋った


必死で話している途中…
アタシは意識を失った


アタシは、手術が必要だと分かっている体なので
病院は、大きなところに通院していた


アタシの担当の先生に、事情を話して検査等も既にしてあった

手術は安定期に…と話しも既に決まっていた






朝に運ばれたはずなのに、
目を覚ますと、夕方だった


ベッドに寝かされ、点滴をされていた


祈る気持ちでお腹に手をやる…

赤ちゃん…いるよね?


ドアが空いて母とふぅちゃんが入って来た


『お母さん…!!…』

母が話してくれるが、聞こえない…


『ごめん。補聴器…取って』

耳に付ける


『赤ちゃんは?!』一番に聞きたかった


『大丈夫だったわ…とりあえず安心して…


でも…手術したのよ。
あい、もう1cmも開いてたんだって…』


『え…まだ3ヶ月じゃん…』


『ギリギリだったみたい…
とりあえず、先生にお話してもらいましょう!』


母がナースコールを押した
看護婦さんの声…

『目、覚まされましたか?』

『はい。お願いします』

『今、行きます』



『せいちゃんは?』

『いちお、携帯の留守電に入れといたわ』


そっかぁ…

こんな時に、一人か…





看護婦さんと先生が病室に入って来た


No.223

先生が病室でホワイトボードを持って説明してくれる

アタシはベッドで横になりながら聞く


『安定期までは、とても無理な状態でした

まだ3ヶ月という不安定な時期ですが、子宮口が1cm少し開いていたので
…手術に踏み切りました

まだ、この先のことは分かりません…

安定してくれるといいのですが…

陣痛が酷くなる場合には覚悟が必要です…』


…………えっ…

駄目になるかもってこと?

『……先生…!!
赤ちゃん…流産するかも知れないんですか…?』


『…陣痛を抑える点滴もしています
ずっと、走り続けてるような状態だから
心臓に動機がして辛いと思うけど
頑張ってね。
赤ちゃんも、必死でしがみついてるはずだから』


『はい…分かりました…
先生…アタシは、赤ちゃんを望んだら駄目だったのかなぁ…』

言葉にしたとたんに涙が出た


『そんなことは、ないよ
精一杯、手助けするからね』
優しく頭に手をやってくれた…


『それと、手術の際に膀胱を少し切らせて頂きました…』


ホワイトボードに子宮と、膀胱の絵を描いて
詳しく説明を受けた。


正直、すごくショックだった…


普通に妊婦生活が送れない自分…

ただでさえ、トイレが近いのに
膀胱を4分の1…失った


『ありがとうございました…
ちょっと、頭が混乱してて…
情けないです
すみません…』


『何かあれば、すぐに呼んでくださいね』


先生と看護婦さんは、病室を出て行った



母は、何も言わず
寝てしまったふぅちゃんを抱えてソファーに座っていた


アタシは…
布団を顔まで被って泣いた


お腹に力が入らないように気遣いながら…



No.224

ずっと布団を被っていた

何も話したく無かったし、慰めてもらいたくも無かった


自分が悔しくて悔しくて…
情けなくて情けなくて…



お腹が痛む…


何故、アタシの体は赤ちゃんを拒むのか?!

こんなに望んでいるのに、守りたいのに、愛おしいのに…


何故、アタシの体は…


悔しいよ…!!!


涙が流れて、既に枕はドボドボに濡れていた



母は、ずっと黙ってソファーに座っていた


慰めが、アタシをミジメにさせると分かってくれていたのかな…?




夕飯が運ばれて来た…


あぁ…また、あの時と同じ思いをするんだな…



ふぅちゃんを妊娠中、ずっと看護婦さんやせいちゃんに食べさせてもらっていた


ツバメのヒナのように口を開けて…


誰もいない時に一人で頑張ってみようと
寝ながらお箸をのばして、手探りでお箸を動かしたら…

ジャバン……

みそ汁をひっくり返して、顔面に被った
辺りはみそ汁まみれでナースコールを押した


みそ汁で髪や顔が濡れ…
泣きたくなった

あの恥ずかしくて、ミジメな気持ち…



また。
アタシはツバメのヒナになるのか…



No.225

『あい…ご飯食べよう』
母に食べさせてもらった

照れ臭かった。

『前も、こんな風に食べさせてもらってたのね…』

『…うん』


『これから…どうしようか…
決めなきゃならないことがいっぱいね…』


とりあえず、母は父にしばらくの着替え等を持って来るように頼んで

父が荷物を抱えてやって来た


『大丈夫なのか?』


『うん…まぁ…多分…』


せいちゃんの両親は、明日に見舞いに行くと連絡があったようだ


せいちゃんからは、何も無かった…


その晩は、ふぅちゃん付きで母が泊まってくれることになった



夜中に、もがき苦しむほどの痛みに襲われた


慌ただしく看護婦さんが、アタシに座薬を入れ
赤ちゃんの心音を聞いたり、お腹の張りを調べたりしてくれた



ごめんなさい…
赤ちゃんを欲しがったりして…ごめんなさい

アタシは、もう二度と赤ちゃんを欲しがりません


だけど、お腹に宿ったこの子の命だけは
奪わないでください!

お願いします…お願いします…



必死に祈った。


宗教も興味なく、むしろ神サマがいるなら一言言わせてほしい!
なんで、アタシは普通じゃねーんだよ?



だけど
やっぱり、無力なアタシは祈るしかない



お願いします…
助けてください…





せいちゃん…
側にいて欲しいよ…


No.226

『お母さん…痛いのやめてあげて!!
お母さん、痛いのやめてあげて!!うわぁ~ん
うわぁ~ん…やめてあげて!!』

ふぅちゃんが起きて叫ぶ


きっと、看護婦さん達がアタシを苦しめているように見えたんだろう


母は、ふぅちゃんを抱きながらオロオロしている


痛みに耐えながら
『お母さん…廊下行ってて…ふぅちゃんに…見せないで』



子供は、理由がどうであろうと愛する人の苦しむ姿は見たくないはずだ…



フラッシュバック…


助けたくて助けたくて、おばあちゃんに覆い被さって守ろうとした幼い日の自分…


ふぅちゃんも辛いだろう…


お願い。
こんな姿を見ないで…
お母さんは大丈夫だから…



先生も加わって、状態を見てくれる


痛みは、少しずつマシになって来た



『落ち着いて来たからね。赤ちゃん、頑張ったからね!!』
看護婦さんの声に、
うん。
うん。
と頷く…良かった…


怖かった…



赤ちゃん。君は強い子だね、頑張ってくれたね

きっと、男の子の気がする…



病室に、泣いてるふぅちゃんが入って来た

『ふぅちゃん…大丈夫だからね。
みんなが、お母さんと赤ちゃんを助けてくれたんだよ!!』


『お母さんとネンネしたい…』


『うん。今日は駄目だけど、また一緒にネンネしようね
ふぅちゃんは、おばあちゃんとネンネしてくれる?』



『また、何かあればすぐに呼んでください!』


『助けて頂き、ありがとうございました』


先生と看護婦さん達が出て行った



色んなことを考えてしまって
朝まで寝られなかった…


No.227

翌日、朝一でせいちゃんの両親が来てくれた

せいちゃんの実家は、小さな町工場をしていた

昨日は、どうしても来れなかったと謝ってくれた


せいちゃんからも明け方にメールが来ていた

『朝一の飛行機で帰ります、昼前には行きます』


もう、お腹の痛みもあまり無かった


母とふぅちゃんは、いったん我が家へ帰って行った



昼前にせいちゃんが来て『しばらくは出張を減らしてもらえるから、あい安心してな
ごめんな…
不安だったろう…』

優しく頭を撫でてもらう


どんなに怖かったか…
どんなに痛かったか…
どんなに不安だったか…


せいちゃんが来たら聞いて欲しい!

…と思ってたけど


心配してくれる顔を見たら、もういいや…

って思えた。




しばらくは、実家でふぅちゃんを預かってもらい

週1で顔を見に来てくれる

そして、
会社帰りに、せいちゃんが毎日寄ってくれることになった



また、長い入院生活の始まり…



先生や、
看護婦さん達とも仲良くなった


また、あいちゃん。
と呼ばれるようになって嬉しかった



せいちゃんは、時々は1週間ほどの短いの出張に行ったりした




普通の妊婦になれない自分が悔しくて…


気持ちが塞いでしまって
沢山、泣いたりもした



No.228

入院中、
妹とは、ずっとメールをしていた


『お見舞いには、来ないでね~赤ちゃん産まれたら飛んで来て❤』って言っていた


点滴に繋がれた
こんな姿を見ることで、妹が妊娠に不安を持ってしまうかも…
と案じていたから

妹は、不服そうだったけど
ごめんね。





そして、冬が来て…



売店に行こうと歩いていたら
お腹が痛くなった…
(ここの病院では、安定期に入ったらトイレ等少しは歩いてもいいと許可が出ていた)


廊下でしゃがみ込んでしまった…


とても、歩けるような状態でなくなり…

廊下を通りかかった人に、産科の先生呼んでください!と叫び

うずくまって痛みと闘っていた…


先生が走って来てくれて、抱き上げると
分娩台が空いてるから…と分娩台に寝かされた

『もう少し頑張ってほしいなぁ…』
先生が言いながら、お腹の張り等をチェックする


…パァン…
お腹の中で何かが弾けた気がした

『あぁー…破水だ…
あいちゃん。お産始まったよ!!』

縫っていた部分を抜糸してもらう…

と同時に、看護婦さんの『うわぁ!!もう頭が…!!』


一度のいきみも無く


そのまま、ズルりと…


ふぅちゃんの弟、しんちゃんが、普通分娩より1週間早い早産として誕生した


母子手帳にはお産の時間が、20分と記された(笑)


しんちゃんを胸に抱き
Vサインで写真を撮ってもらった


『…先生…
しんちゃんの心臓…雑音がないか
今すぐ、ちゃんと聞いてください!!』


真面目な顔で先生が、調べる
『大丈夫!!母子共に健康です!!』


あぁ良かった…
2500g少しの小さなしんちゃんは、看護婦さんに綺麗に洗ってもらって
また、アタシの胸の上に乗せられた


オギャーと、めいいっぱい泣く…

かわいい…
しんちゃんは、めいいっぱい泣いていいんだよ

良かったね



『みなさん、ありがとうございます!』

涙が溢れてたまらない…



処置をしてもらい、アタシは病室で寝かされた


看護婦さんが
『連絡は、こっちでしておくから安心して寝ててね!!
あいちゃんお疲れ様♪』と言ってくれた



一気に疲れが出て来て


寝てしまった…



No.229

せいちゃんが、すぐに会社を早退してやって来た

先に、赤ちゃんがお披露目されてる赤ちゃん室
(ここでも赤ちゃん室と表現させて頂きます)に寄って
ガラス越しにしんちゃんを見て来たようだった



『あい~♪お疲れ様でした!!
一人で産んでしまったのかぁ…
俺も付き添いたかったなぁ…』

『ほんとに急に出て来ちゃったんだもん!!
アタシも産んだ感触なし(笑)
しんちゃんが自分で出て来たんだよー』

『あっ♪しんちゃん見たぁ~?』


『見た見た!!外国の赤ちゃんが1人いるから、すぐにわかった!!(笑)』



なんだか…とっても幸せだった



間もなくして、母とふぅちゃんが来た


『あい♪おめでとう!!
しんちゃん見て来たわよ~
ねっ、ふぅちゃん』


ふぅちゃんは、しんちゃんを見て
『お母さんのお顔だ♪』って言ったらしい


しんちゃんは、アタシに似て掘りの深い顔立ちで、髪はカフェオーレ色
肌は、せいちゃんに似て色白さん
瞳もアタシと同じ麦茶色


アタシより、ハーフっぽい


ひぃおばあちゃんの血筋の強さにビックリだよ(笑)



その週の土日に、両家の実家の家族達や友達が来てくれた


もちろん。
みんな、しんちゃんの外国人ぶりにビックリしてた

ちなみに、めっちゃ男前!!
看護婦さん達もカッコイイわ~♪友達に見せたい
と言って写メを撮ったりしていた
(ごめんなさい親バカです(笑))


弟だけは『かわいそうに…瞳は麦茶色か(笑)
俺サマには、敵わね~なぁ~(笑)俺の勝ち♪』
とライバル心メラメラだった


弟は、ナルシストだ…
マザコンだし…
おまけに打たれ弱い…


妹と『ヤバいね。アイツ…悪い女に騙されそう
社会に出たら叩かれるよ…』とアタシ達、姉は、真面目に奴を心配している(笑)


No.230

一週間が経ち、退院の日がやって来た

しんちゃんを抱き、お世話になった
先生、看護婦さん達にお礼の挨拶をした

長く辛い日々を支えてくれた人達との別れは
涙なしにはいられない…

泣きながら先生…看護婦さん…一人一人に抱きついてお礼を言った



そして、懐かしい我が家へ帰った



その前に…
産後のお世話について、揉め事があった

アタシの実家は、弟が大学受験の大変な時だから
無理だと母に言われた

ずっと、ふぅちゃんを見て来たから
勘弁してちょうだいと…


せいちゃんの実家は、町工場で不況の煽りを受けて大変らしかった
両親は工場で寝泊まりして、頑張ってる時だったので頼めるはずもなく…



アタシ一人で、ふぅちゃんとしんちゃんのお世話をすると決めた




そして、いざ生活が始まると…
大変だった…
寝る暇もなく、ふぅちゃんと新生児のしんちゃんのお世話…

せいちゃんは、断れないと出張に行ってしまう…

10日ほどで
疲れきってしまった。


母に電話をしても、1日来てくれるだけで夕方には帰ってしまう

それでも、ありがたかったけど…



ついに、
妹が家出のように、我が家にやって来た

『お姉ちゃんを放っておけない!!』

妹の職場は、実家と我が家の真ん中にあった


妹に甘えて、買い物やふぅちゃんの相手を頼んだ


せいちゃんは、出張ばかり…

仕方ないけど、しんちゃんの成長を彼は見ていない



妹のおかげで、無事1ヶ月検診も済んだ


しんちゃんは、手のかからない子だった


ずっと寝てくれていた。



妹は、1ヶ月少し居てくれて
また、実家へと戻って行った




急に…
すごく寂しくなった…



せいちゃんは、海外出張もあって
あの頃は、海外へは携帯も繋がら無かったし…


孤独感いっぱいで、潰れてしまいそうな時は

ふぅちゃんを抱きしめて
『お母さんには、ふぅちゃんとしんちゃんがいるもんね!!』

『うん。ふぅちゃんは、お母さんがいたら寂しくないよ!!
お母さん…寂しくないからね』
と頭を撫でてもらっていた


このやり取りを一体、何回しただろう…



No.231

半年が経ち、アタシも二人の子供の育児にも慣れてきた


せいちゃんのいない生活にも慣れてしまった




ある日、
しんちゃんが熱を出して病院へ連れて行った


診察をしてもらっていた
先生が、『…ん?……あれ?…』

しんちゃんを背中向けたり、足を上げさせたり


アタシも初めは、気にもせず見ていたが
だんだん不安になって来た…


…嫌な予感……

診察が終わり
『熱は、お薬を出しておきます
風邪引いたかな?

…後、〇〇〇〇病院への紹介状を書いておきますので、一度診てもらってください』


………………え?


〇〇〇〇病院は、県外からも手術や通院に通うほどの
難病の子供専用の病院だ…


我が家からは比較的近いけど…


『どこか悪いんでしょうか?』

『いや。断言できませんが〇〇〇〇(病名忘れました)の可能性があります』

『〇〇〇〇って?』


『下半身が成長しない病気です…』


金づちで殴られた…

アタシは、何度こんな思いをするんだろう…




どうして帰って来たかも覚えていない



せいちゃんは、出張だ。


とりあえず、せいちゃんに電話をする


『今、仕事中だから後でゆっくり聞くわ。
ごめんな』

電話は切れた。



もう…いい。

アタシは、誰にも頼らない!!!



窓を開けて
空を思いっきり睨んだ。


『誰だよ!
出て来いよ!!!
空の上からアタシが泣くのを見て笑ってるんだろう?
苦しむ姿が楽しいか?!

隠れて見てねぇで出て来いやぁー!!』
人目も構わず叫んだ



……子供を巻き込むなよ

アタシが憎いなら、アタシにかかって来いやぁ!!


大切な人を苦しめないで…


アタシは泣き崩れた…



ベッドの枕に
思いっきり拳を何回も何回も叩き付けた

涙がポタポタと落ちる


『神サマよぉ…
憎いならアタシをヤレよ…

アタシが受けて立ってやるから…




しんちゃんまで…
苦しめないでください…

お願いします…』



No.232

しんちゃんは熱のせいでグズグズと泣きっぱなしだ

ずっと抱っこして、トントンと背中を撫でる


ふぅちゃんは、お構いなしに駄々をこねて泣く

病院帰りにアイスを買うって約束を守れなかったから、泣きわめいていた


『ごめんね。アイスは、またにして…ふぅちゃん冷蔵庫にプリンあるよ』

こうなってしまったら、何を言っても無駄だ

ふぅちゃんは泣き続ける。


しんちゃんを抱っこしながら
この子は…大丈夫だよね?

でも…もし…
頭の中が狂ってしまいそうだった

ふぅちゃんの泣き声と、しんちゃんの泣き声…

アタシも泣いた。


親子3人で、それぞれ思いは別々に泣きまくった




夜にせいちゃんから電話があった


今日の出来事、言われたことを話す

『……まぁ。
疑いがあるだけだろ?
大丈夫だって!
あんまり心配し過ぎるなよ!

うまいことやっといて

まだ、2週間くらいは帰れないから

あいは強い。
一人で大丈夫だって
なっ?』



『…………わかったよ
こっちでなんとかするから

仕事、無理しないでね。

キャバとかで、お金使い過ぎないように…』

精一杯の嫌味。


『わかってるって。
キャバの女なんて、実際そんなにかわいい子いねーから
安心してよ、ただのストレス発散だから
じゃ、また…』


せいちゃんには通じない。



ストレスなら…
アタシだって…


アタシには、発散する時間も余裕もない…


二人をどうやって、お風呂に入れてるか
せいちゃん知ってる?


【うまいことやっといて】

【あいは強いから】


せいちゃんは、いつの間にか口癖のように言うようになっていた



出張生活は、ストレス溜まると好き放題して…
キャバに風俗…


『みんなで行くのに、俺だけ格好つけて
女遊びはしない。なんて言えないだろ?

付き合いだから、割り切ってよ』


そう言われた。



なんでも理解してあげて来た…

もちろん。
自分を殺して…


でも、それでも良かったんだ…




しんちゃんの病院は、アタシ一人で連れて行くことにした


No.233

病院は完全予約制だ


予約を入れた。

10日後に決まった

せいちゃんは、帰って来れない…






10日後…

アタシは、しんちゃんを抱き、ふぅちゃんを連れて病院の待合室で待っていた


心臓がドキドキと高鳴る…
不安でいっぱいだった


名前を呼ばれ、診察室に入った


しんちゃんは、あちこち体を動かされていた

検査に回るように説明されて、病院内を歩く…


見るからに、重度の障がいがある子供達が沢山いた

寄り添うお母さん達…


目を背けたりしない。

ここに居る、全ての人々は計り知れない悲しみを背負い
負けることなく、生きている

そこには、誰もが泣いて…もがいて…受け入れ難い現実と向き合った者達だけの世界があった…


ふぅちゃんの手をギュッと握る


ふぅちゃんの胸には、勲章とも言える傷がある


あの頃を思い出し、歩いていた…



しんちゃんは、レントゲンや脊髄の細胞摂取など…
色んな検査を受けた。


痛くて泣く我が子の悲鳴に近い声に
胸が痛くて涙がにじむ



一通りの検査を受けて、診察室に戻って話しを聞く


検査の結果は、2週間後…必ず夫婦で来るように言われた


病気についての説明…

ある程度(個人差有り)まで成長はするが、下半身の成長が止まり
上半身だけは、成長を続ける…

場合によっては、下半身不随になる場合も…


成長がストップしたら、骨を切断し骨を延ばす手術方法…等を行う…


検査の結果次第なので、詳しくはその時に改めて、お話しします


『ありがとうございました』



フラフラと診察室を後にした…



会計の席に座る…


名前を呼ばれても気がつかなかった


ふぅちゃんが『呼んでるよ!!』とアタシを揺すり

ハッと気がつく…



重い重い足取りで帰宅した。



こんな時…補聴器を外し、布団を被って丸まりたい…


ご飯を作る気力もない…




だけど、
アタシがやらなきゃ誰が子供達を見てくれるの?



どんなに辛かろうが、放棄するわけにはいかない



アタシは強い!

頑張れアタシ!

……………辛い…


No.234

たまらず母に電話をした

ずっと言わないでいてた、検査の検査次第にしておくつもりだった
余計な心配をかけたくなかった


でも…話しを聞いてもらいたかった

『もしもし…あい…』

『どうしたの?
なんかあった?…』


『あのね、実は…』

しんちゃんのことを全て話した

『なんで?…ねぇ、お母さん…
なんでなの?
いつも、いつも…目の前に壁が現れるよぉ…

一つ乗り越えたら、またすぐに…
次々と壁が現れて…

アタシ…もう頑張れない

なんで?
なんで、いっつもアタシは悩み苦しみ、悲しむばっかりなんだよ…
痛くて痛くて…胸の傷が癒えるヒマすら
与えてもらえない…なんで?
教えてよ…』

泣きながら話した


『……………あい…』

母は、しばらく何も言わなかった


『もう一度、乗り越えてみなさいよ…

何度打ちのめされても…立ち上がるんだ
って…あいは言ってたじゃない

お母さんは、小さい頃からあいのそんな強さが…
反省を見せない悪い子供に見えたり
どんなに、お尻をぶっても…弱らないあいに…
正直、怖い…と感じたりしたわ

それが、あいの強さ…なんじゃないの?

もう一度…乗り越えて見せてよ』


うん。とは言えなかった…

アタシだって…


『アタシだって…泣きたいよ
強くなんかないよ…

普通に暮らしたいんだよぉ~…
特別なことなんか望んでない

弱虫でいいから、普通に生きたい

ただ…普通に…

何度打ちのめされても…立ち上がる…

そんな力…使い果たしたよ~ぉ……』


もう声にならなかった。


受話器を持って
泣き叫んだ…



『ありがとう。
頑張ってみるよ』

小さな声で言って電話を切った…






今夜はピザを取ろう…


ご飯なんて…作れない



No.235

その夜は、せいちゃんにはアタシからは電話をかけなかった


せいちゃんから、かかって来るのを待っていた…



だけど、
電話は無かった…




次の日、アタシは子供達を連れて車を飛ばしていた


実家へと向かって…


会いたい。
早く会いたい…


実家は留守だったけど、会いたいのは母じゃない


ガチャガチャと鍵を開ける


ロッキーが尻尾を振ってアタシを迎えてくれる


『ロッキー!!ロッキー…!!
会いたかった…』

ギュッと抱きしめる

温かい大きな体…嬉しさを体の全てを使い
現してくれる…かわいいロッキー



この子に何度も何度も助けられて来た


『ロッキー…お姉ちゃん、もう駄目になりそうなんだ…
助けてよ…』

ロッキーを抱きしめながら子供のように泣いた


ロッキーは静かに隣りに座り、寄り添ってくれる


ふぅちゃんがロッキーの尻尾を、ブンブンと振り回したりするが
ロッキーは知らん顔してアタシの胸にを埋める


しばらく泣きながらロッキーに癒される…



ほんとに不思議…


アタシの全てを受け入れて、癒し慰めてくれる

涙を舐めて心配そうに覗き込む顔…


ありがとう。
ほんとにありがとう。


アタシは、また少し元気が出て来た


お昼前に、山田さんちへ行ってみた


『あいちゃん!!お帰り~
!!
ふぅちゃんとしんちゃんも久しぶりね
さぁ、早く上がって!!』

山田さんは、いつの間にか【お帰り】と行ってくれるようになっていた

いつ頃からだろう…忘れちゃった


『大きくなったわね~♪
ふぅちゃんおいで』
ふぅちゃんは、おばちゃんについて台所に入って行く


おっちゃんは、すでに『しんちゃん!!男前になったなぁー
もう、おっちゃん負けそう(笑)』
と抱っこしながら笑う


二人はたまに自分達を、おじいちゃん。
おばあちゃん。
と呼んだりしている


『しんちゃん、おばあちゃんに飯にしてもらおうなぁ
おばあちゃーん!!飯だ。飯だ!!』

『はいはい。
おじいちゃんはうるさいねぇ(笑)』


こんな調子だ。


それが…すごく嬉しくて


ロッキーと山田さん夫妻…

この温もりを求めて来たんだ…



No.236

山田さんちを出て、また実家へ戻った


ロッキーをもう一度、抱きしめて
ロッキーに抱きしめられて
いっぱい頭を撫でて実家を出た



次は、近くの海…

あの日を思い出しながら、砂浜に座る


あの日の自分が脳裏に鮮やかに蘇る…


眠ってしまったしんちゃんを抱っこしながら
海を見る


砂浜を駆け回るふぅちゃん…


空を見上げて、海を見つめて…


なんとも言えない気持ちに涙が流れる


幸せってなんだろう…


普通ってなんだろう…



アタシの幸せのハードルは、きっとかなり低い
…はずだと思うのに

それさえ叶わない。



せいちゃん…
なんの連絡もない。
短いメールの一つもない…


アタシは、一人ぼっちの気持ちになってしまう


海の波を見ていると、生きている不思議を感じたりする


揺られるままに漂えば…
そんな風に生きていれば、苦しみはないのかな?


逆らうように、もがくから…苦しみが生まれるのかな?


だけど、人は幸せを求める。


不公平なこの世に生きる限り…

人と比べてしまう。



海を見て、あの日を思い出し
自分は、死んでもいいと思ったことを思い出す



受け入れる気持ちが自然と湧いて来た…




車を飛ばして自宅へと帰った


脳裏に、あの日の海とアタシを刻み込んだ


負けるもんか。




アタシの心はダイヤモンドだ…


No.237

夜にせいちゃんにメールを打った

『しんちゃん検査受けたよ

なんの連絡もないけど、気にならないのですか?

そんなに仕事が忙しいのですか?

アタシは、一人で泣いてます』


12時を過ぎた頃に、電話があった

『…ごめん…
忘れてた訳じゃないけど…

あいがついてるから、大丈夫だと思って…

検査、どうだった?』


『…あいがついてるから大丈夫?

よくそんなこと言えるね!!
アタシには、誰がついてるの?
せいちゃんしかいないじゃない!!

それとも、アタシは一人ぼっちなの?

いい加減にしてよ!!

アタシ一人で…どうしろって言うんだよ…』
携帯を握りしめて泣いた


『ごめん。
ごめんな、あい…
もう仕事終わるから、3日後には帰れるから…

心配になるから泣かないで…』


泣きながら、しんちゃんの話しをした

せいちゃんは、大丈夫だって!!
の繰り返し…
もう、自分の都合のいいように言ってるとしか聞こえない
無言で電話を切った


かけ直しては来なかった



せいちゃんは、出張が多くなってから
随分、変わってしまった

寄り添う気持ちさえ忘れてしまったみたいだった


出張に出れば、家庭や家族を忘れて羽を伸ばし
独身気分でいてるように見えた



早くに結婚したアタシ達…


友達は、ほとんどまだ独身でうらやましくも見えた

その気持ちは十分わかってた


遊びたい気持ち…



アタシだってそうだ。


だから…
そんなせいちゃんを全て許して、自由にさせてあげていた


だけど、家族のことをないがしろにするのは
ルール違反だ。


腹立たしさと悲しみ…

寝ているしんちゃんと、ふぅちゃんの間にそっと入って
3人で川の字になって眠る



なかなか寝付けない日が続いていた



せいちゃん…
早く帰って来てよ…


No.238

3日後…
せいちゃんが帰って来た


しんちゃんは人見知りをして、泣いてせいちゃんから逃げるようにアタシの胸に飛び込んで来る


ふぅちゃんは、お土産のお菓子に大喜び


『お父さんいなくて寂しかったかー?』


『ふぅちゃんは、お母さんだけいたら大丈夫なの。
お母さんがいるから寂しくないよ』

『そうか…
お父さんは寂しかったなー』

『お父さんは嘘つきだよ。
ふぅちゃん、電話してね。ってお約束したのに、一度もお話ししてないもん』

無言のせいちゃん…


『ふぅちゃん!
きっと、お父さんは電話もできないくらいお仕事忙しかったんだよ
許してあげようね♪』

『お母さん、泣いてたのに…』


ふぅちゃんが、お土産のお菓子を食べながら言う



泣きそうだった。


ふぅちゃんを抱きしめて
『ふぅちゃん、ありがとう。
お母さん…泣いてたね
不安にさせてごめんね』

頭を撫でながら、せいちゃんを見る


せいちゃんは、何も言わずソファーに座りくつろいでいた


『ちょっと!!
アタシはいいから、ふぅちゃんに謝ってよ!!

約束…一度も守ってないじゃん!!

謝ってあげて!!』



『ふぅちゃん、ごめんな。
お父さん、ちょっと忙しかったんだ

しばらくはお家に居るから、いっぱい遊ぼうな!』


『うん。絶対だよ!』


とりあえず…こんな感じか…


せいちゃん…

なんだか、遠い人に感じるよ



だけど、しばらく家に居ると
アタシ達は仲良し家族

買い物でも手を繋ぐラブラブな夫婦


なんの問題もない。



しんちゃんの検査結果を、聞きに行く日が近づいて来た


せいちゃんは、アタシに大丈夫…大丈夫…と
何度も言ってくれた


二人の絆は、とても強くてせいちゃんが居てくれたら
アタシはどんなことでも頑張れた。


No.239

しんちゃんの検査結果を聞くために、家族4人で病院へ行った


重度の障がいを持つ子供達が沢山いる中…


せいちゃんは、この時やっとしんちゃんの病気に対して不安を覚えたようだった


『…あい…
大丈夫だよな…
しんちゃん…大丈夫だよな…?

ごめんな…俺…ほんとに
全てをあいに任せきりにして…

どうしよう…今さらだけど、胸が締め付けられて苦しい…』


『…うん…
ほんと、今さらだよ…
何、言ってんの?

しっかりしてよ!!
アタシは、全てを受け入れる心の準備は出来てるよ

しんちゃんの全てを受け入れる!!

しっかりしてよ…せいちゃん…
アタシの不安な気持ち、わかってくれたなら…
アタシがせいちゃんも支えてあげるからさ

不安なのは、みんな同じだよ
自分のことだけ考えてたら駄目だよ、お父さんなんだから』


待合室で静かに話す。


正直、せいちゃんに呆れていた


自分の事ばっかり…今、やっと目が覚めたのか?


アタシは、十分に悩み苦しんだ


アタシの心は、ダイヤモンドだ


どんなに破壊しようとされても、傷つかない


守りたい者を守るためには、ダイヤモンドの心を持たなければ…


強く、美しく、輝きを失うことのない


ダイヤモンドの心…


No.240

名前を呼ばれた。


指先が冷たくなって行く…

先生に挨拶をして椅子に座る

しんちゃんとふぅちゃんは、看護婦さんが診察室の奥の玩具が沢山ある部屋へ連れて行ってくれた


先生がパソコン操作をしながら、画面をこちらへ向ける


『〇〇〇〇では、ありませんね』


はぁー…………
体中の力が抜けて行く…
良かった…


『ただ、ホルモンの数値が…正常よりもかなり低いです。
お母さんの母乳の検査をしましょう』


言われるままに母乳を試験管に搾った



1時間程待って、検査結果…


アタシの母乳は、脂肪を分解する成分が異常に多く…子供の成長を妨げると言われた

しんちゃんは、代謝分泌の通院が決まった…


すぐに粉ミルクに切替るように指導された



ショックを受けた…

まさか…
なんで…
アタシの母乳が…しんちゃんを…

母乳って、赤ちゃんにいいものじゃないの?

普通は…いいものだよね?



アタシは…こんなところでも普通じゃないのか…


涙を隠せ無かった。



何度こんな思いをするんだろう…

普通になりたい。
アタシには、高望み…叶わない。




しんちゃんは、母乳以外受け付けない。

哺乳瓶を口にやっても、オエっとなって…ストロー等、やれることは全てしてみたが
泣くばかりで無理だった


離乳食すら、まともに食べない…



しんちゃんは、痩せていった…



集団検診の時に、保育士さんに相談してみた


それが、思わぬ方向へと向かった…



No.241

集団検診から数日後、ピンポーン…
家庭相談所の女性が2人、我が家に訪れた


よく分からないまま、上がってもらう


家庭内での悩みや、子供達の悩みを聞かれた


そして、家の中を歩き回る…

冷蔵庫の中も見られた…


やっと、理解できた。

アタシが虐待していると疑われているんだと…


『虐待を疑ってるんですか?
子供に直接聞いてくださって結構ですよ』


『…………
ふぅちゃん、お母さん好き?
ご飯は何が好き?
しんちゃんは、よく泣くの?
しんちゃんはご飯食べてる?
お母さん優しい?
お父さんは?
………………………
………………等など』


ふぅちゃんは、もちろん正直に話す



スッゴく、悲しかった…


アタシが、そんな風に見られることが…と
言うより…


愛情を受けてない子供だと、
ふぅちゃんとしんちゃんが見られていることが…


保育士さん達が帰って、すぐに
通院している病院に電話した


アタシが虐待していると疑われているんです…と…


看護婦さんは、ビックリして
すぐに、こちらから通院していることや
誤解があることを解いてあげるから

お母さん…安心してくださいね
と言ってもらえた。




その後も家庭相談所からは、虐待を疑ったことについては、一切謝罪も何も無かった


そんなもんだろうけど…





アタシの受けたショックは大きかった


アタシ自身の過去に、
自分は…虐待を受けた…のだろうか…?




違う。認めたくない。




けど…あれは虐待…




もう、どうにもならない
戻せない過去に
すごく、苦しんだ…




おじいちゃんとおばあちゃんから…
虐待を受けていたのか…?



嫌だ。愛されていた…
虐待なんて…
受け入れられ無かった。



アタシは、
愛されていたはず…


こんなにも
おじいちゃんもおばあちゃんも大好きだ




だけど、
それは今でも…モヤモヤとした気持ちになって
アタシを苦しめる




No.242

せいちゃんは、しんちゃんのことがあってから
すごく変わってくれた


出張があっても、電話をくれて子供達の様子を聞いたり
ふぅちゃんと喋ったり…


家に居る時も、前よりうんと家族を大切にしてくれてると感じられた


アタシは、幸せな気持ちでいっぱいだった




そして、しんちゃんが一歳の誕生日を迎えた


賑やかに家族でしんちゃんを囲み、お祝いをした




春が来て
ふぅちゃんの幼稚園入園

夫婦でスーツを着て
せいちゃんは、入園式のビデオを撮った


しんちゃんは相変わらず、母乳を欲しがって夜泣きをしていたが


離乳食を早めに切り上げ、家族と同じものを食べ
しんちゃんなりに大きく成長していた




ふぅちゃんも幼稚園に慣れて、友達が沢山できた


アタシにも、沢山のママ友ができて毎日が楽しかった





全てが順調だった。



No.243

幼稚園にも慣れた、初夏の頃…




一本の電話により…
アタシは、凍り付いた。



ふぅちゃんを幼稚園に送って帰って来たら
電話が鳴った…

『もしもし』いつものように受話器を取った


『あ、もしもし…ご主人はおられますか?』男性の声がした


『主人は、仕事で留守ですが…どちら様ですか?』


『ご主人、仕事ですか…
私、ご主人と同じ会社の鈴木と申します。
ちょっと、ご主人の事でお話しがあるのですが…』


せいちゃんは、今朝から一週間の出張に行っていた

なんだろう…不安になりながら鈴木さんの話しを聞いた


『ご主人の帰りは何時頃ですか?』

『え?…主人は今朝から出張ですが…』

『あぁ、そうでしたか。
部署が違うもので…


あの…ですね…
………………なんです』


『は?………?!』


『だから、僕…奥さんが好きなんですよ

いつも見てますよ。
長い髪が素敵ですね…
抱きしめてみたいなぁ

夜は…どんな声を出して乱れるのかなぁ…』


『ちょっと…困ります!
鈴木さんでしたっけ?
何、言ってんですか!
会社に連絡させていただきますよ!』


『くく…っ…
会社が同じなんて嘘だよ。
そういう素直なところもいいなぁ…

昨日は、ピンクの服がかわいかったなぁ…
今日は…短パンで脚を見てムラムラしたよ…』


『てめぇ、誰だよ!
ぶっ殺すぞ。』


電話の向こうから…気持ち悪い息づかい…が聞こえて来る…


『……もっと…声…聞か…せて…』



ガチャン!!!!


受話器を置いた。

怖い。
怖い。
怖すぎる…



カーテンを閉めて、家事もせず
しんちゃんを抱きしめて震えた



せいちゃんにメールだけ打った


『変な電話がかかって来た…
怖いよー
アタシを好きだって
いつも見てるって…
怖いよー』


移動中なのか、返信はすぐには来なかった




ヤバいよ…
幼稚園…お迎え…怖いよ



アタシ、こういう性的なのは…ほんと怖いんだ…



No.244

お迎えの時間…

いつもよりも早めに出た

ポケットには、安全ピンとライターを入れて…


お母さん達が集まって…園庭に人が増えて行く


少し安心する…

いつものように立ち話しをして笑い合う


電話の話しは、できない。


女同士…
こういうのは陰口の元になったりする…



近所のママ友と一緒に帰った


家に帰ると…
また電話が鳴った。


恐る恐る出た…


『もしもし…』
…アイツだ
切ろうとした瞬間…


『切るなよ…
幼稚園のお迎え、お疲れ様…

ふぅちゃん、かわいいね
〇〇〇幼稚園の〇〇組…

俺、奥さんを手に入れるためなら…
なんだってするよ?

今から家に行こうかな?
くくく…っ

ねぇ、どんな体位が好きなの…?』


手は汗がびっしょり…
めまいがする…
吐き気がする…


弱い女だと思われる訳にはいかない…


平然と、ハッキリした声を出す
『あのさー
あんた何がしたいわけ?
アタシが、そんな脅しに乗るかよ!馬鹿野郎!
家に来るだと?
上等じゃねぇか!
来てみやがれ!

てめぇ…マジで…
ぶっ殺してやるからな』

最後は静かに、ささやくように言って受話器を置いた



ぎゃぁー

マジで怖いよ~


ほんとに来る…?





心臓が縮み上がった…


No.245

携帯が鳴った
せいちゃんからだった
すぐに出た。

『今〇〇空港着いたよ
何があったの?』

『あのね!………』
今朝からの電話のことと、今かかって来た電話の内容を話した


『…それ、ヤバい気がするなぁ…
今すぐに、警察に通報して!
俺もちょっと、上司に言ってみるわ
帰れるか分からないけど、今回は人数多いから帰れるかも』

『分かった!!ありがとう』

『誰か来ても、絶対出るなよ!』

『了解!!』



アタシは、すぐに警察に通報した

警察官が今から来ると言う…

良かった…安心して電話を切った


カーテンを閉めて、ビデオを付けた、しんちゃんとふぅちゃんはビデオに夢中…



しばらくして
ピンポーン……緊張の瞬間…

まず、管理人室に内線で警察官か聞いた

『あんたのところ?警察の人だよ!どうした?』

『ありがとうございます。理由は、後で話します』

オートロックを解除した


ピンポンピンポン…
マンション内からの直接の呼び鈴が鳴る


そっとドアを開けた

警察官か立っていた…

『あの…警察証見せてください!』

警察官は手帳を目の前に突き出した


はぁ~良かった。本物だ。


今朝からの電話の内容や、お迎え後の電話の内容を話した


『事情は分かりました。
まだ、何もされてないから動けないんですよ…

とりあえず、戸締まりをして、幼稚園の事も詳しく知られてるから
幼稚園にも報告しておいた方がいいですね
後、電話機をナンバーディスプレイ対応に変えてください。
電話番号も変えた方がいいですね…

いちお、脅迫罪にはなるので
こちらもパトロールを増やします
十分に気をつけてください』


『分かりました…
あの…逆探知機とかで相手を探して、捕まえてもらえないんですか?』


『今は、何もされてませんからね…動けないんです…ごめんね』


ごめんねって…(怒)


『何かあったら遅いじゃないですか!
見殺しにするんですか?
死んでから捜査?
…頼りにならないじゃないですか…
市民を守ってくれるんじゃないんですか?
脅迫罪って言ったのに…その脅迫罪の犯人は野放しですか!』


『…何かあったら、すぐに連絡下さい!』



…マジで?

こんなもんなんだ…


ちょっとのスピード違反や、シートベルト違反には
やたら、厳しく取り締まるくせに…!!


怒りが湧いてきた。


No.246

ふぅちゃんに、電話が鳴っても絶対に出たら駄目だよ!
と念を押して、家の鍵をかけて
管理人室へ走った


エントランスの管理人室に顔を出して、事情を話した

管理人のおじさんは、ビックリしていた

『ストーカーじゃないのか!
分かりました!
防犯カメラをしっかり見ておくからね
何かあったら、部屋の非常ボタンを押すんだよ』

『ありがとうございます』


うちのマンションは、部屋に非常ボタンがあって
24時間対応で管理会社が、非常事態に対応してくれる


家の中を、やたらウロウロしてしまう…


落ち着けない…

ストーカー?まさか…アタシが?


せいちゃんからの連絡を、待っていた


犯人は…
ふぅちゃんの幼稚園のクラスまで知っている


ゾクッと鳥肌が立った…


No.247

電話を留守電にした状態で、過ごした


とりあえず、明日…幼稚園にも報告しておこう


ふぅちゃんの身に何かあっても大変だし…

他の子供達にも被害があっても大変だ…


実家に電話したが留守だった


すごく怖かった…

最悪の事態の妄想が…頭の中を駆け巡る


夕飯を作っていたら、電話が鳴った


飛び上がるくらいビビるアタシ…


留守電に切り替わる
『あいさーん…電話出てよ…』

家の中に声が響く。


ふぅちゃんが『誰なの~?』と電話に近づく


子供に聞かすわけにはいかない!


渋々…受話器を取った


『あいさん。
声聞きたくて電話してるんだから…
出てくれなきゃ…ね…』


『警察に通報しましたよ。
あんた、脅迫罪だって。
これ以上、こんな事するの止めてくれる?』
あくまでも、平然と話す


『警察に言ったの…?
なんで?
好意を持つ相手にアプローチして何が悪い!!

お前が好きなんだよ!!
俺と仲良くしてよ…なぁ?』


『アタシ、あんたみたいな人、大嫌いだし。

こっちから
マジで捕まえてやるからな!!
警察に突き出してやる!!
女だからってナメんじゃねーぞ!!』
ガチャン!!!!


うわーぁぁ!!

アタシ、言っちゃったよ~!!


こうなったら、闘ってやる。


……ストーカーって…
どんな事して来るんだ?


まさか、殺されたりする場合もあるのかな…


この時は、
ほんとに無知過ぎた…



No.248

せいちゃんからは、連絡が無かった

夜9時を回っても連絡は無かった


携帯にかけても留守電に切り替わる


家の電話は、鳴りっぱなしだったから電話線を抜いていた



子供達を眠らせた後、もう一度
せいちゃんに電話してみる


『もしもし』

『もー!!なんで何の連絡もくれないの?
あれから電話鳴りっぱなしなんだよ!!

マジで怖い…
ねぇ、帰って来て…』
泣きそうだった


『うん…帰りたいんだけどさ…
どうしても無理っぽいんだ…

うまいことやってよ。ごめん!!』


ため息が出る…
『そうなんだ…
分かったよ。
じゃあ、約束して!!
アタシがこんな目に遭ってる時くらいは
キャバも…ましてや風俗なんて絶対、行かないで!!
行ったら許さないから!!』

『……分かりましたよ』


なんて言い方?
頭に来て電話を切った。


だいたい…
キャバや風俗なんて…ほんとに行ってほしくない!

特に風俗なんて…
悲しくて、悲しくて…

隠れて泣いてたりするのに…

なんで分かってくれないんだろう…


No.249

その日の夜は、枕の下に包丁を隠して寝た


朝は、誰よりも早く幼稚園へ行った

そして、園長先生に昨日のことを話した

園長先生は、担任の先生を呼び、アタシが思っていた以上に『大変よー!!ほんとに怖い世の中だわ

お母さん、私たちも協力します!
何がなんでも、ふぅちゃんや子供達を守りますから!!
お迎えの後、一緒にお話ししましょう!』

担任の先生も、園長先生と同じくらいの年輩先生で『お母さん!!気をつけてくださいね!』と励ましてくれた


なんだか…おおごとになってしまった…

申し訳ない気持ちで帰宅した



そして、家の電話番号を変えた


ホッとして電話を繋ぐ。


実家に電話をかけて母に、番号が変わった行きさつを話す

『大丈夫なの?』心配そうな母に大丈夫、大丈夫♪♪と笑っていた


電話番号を変えただけで、アタシはかなり安心していた…


ピンポーン
エントランスからの呼び鈴が鳴る

『はい』

『手紙、入れておきました』



…………え…何…!!


怖くなって、下へ降りて管理人室を覗く…
管理人さんは、掃除のために留守だった…

エントランスのポストを開けると

『……!!!!!何これ…!!』封筒の中に使用済みの…
コン〇ーム…と、アタシの写真が入っていた



『ぎゃぁぁー!!!!』思わず、大声で悲鳴を上げた


No.250

管理人さんが、すぐに通報してくれた

マンションの管理人からの通報は、威力があった


アタシとの対応とは、えらい違いようだ(怒)


警察官と一緒に防犯カメラを見る

黒いキャップ帽に白っぽいTシャツの男…

年齢や顔は分からない。


ブツは、証拠品として警察が持ち帰ってくれた



幼稚園でも、不審者の対応を先生と一緒に聞いた


みんなが守ってくれた。


近所のママ友サエちゃんにだけ話した


送迎の時間を合わせたり、色々と助けてもらえた


弟が、家から大学に通ってくれることになって
買い物や、時には送迎にもついて来てくれた


せいちゃんだけが…
連絡もあまり無く、いったん家に帰って来てくれても
すぐにアメリカ出張に行ってしまった…

もちろん、メールも連絡も一切なし…



相変わらず、手紙や非通知電話が続いていた

弟が、手紙を入れるところを捕まえてやる!!
と、ずっと見張ってくれたりしていた



そして
1ヶ月が経とうとしていた…

もう…夏休み前…


No.251

その頃、幼稚園内ではアタシの他に
先生達が気にしている、お母さんがいた

ふぅちゃんと同じクラスのA君ママ…


常に、顔や腕に痣がある…

誰とも話さず、さっと来て、さっと帰って行く…


誰の目から見ても旦那さんの暴力…
DV被害者なんだと分かった


A君の父親は、背が低くもやしのように、白く細い人だった


たまに、送迎をしていた。


『あんな旦那なら、やっつけられそう』そう言うママも居た




そんな、ある日
A君のパパがお迎えに来ていた


当然、みんなチラチラと見てしまう


A君のパパが、アタシの方へ歩いて来た

『Aが、ふぅちゃんと遊びたがって…
良かったら遊んでやってくれませんか?』

A君は下を向いたままで、ふぅちゃんが手を繋いでも振り払った…


とても、遊びたいようには見えませんが…

『遊んで来い!』
A君にパパが言う…
怒ってるみたいな言い方


A君は仕方ないような感じで、フラフラとふぅちゃんと泥だんごを作って遊びはじめた


No.252

A君パパが、園庭を見渡せる廊下に座る

なんとなく…アタシも座った


気まずい………


『ふぅちゃんママは…旦那さんのほかに、彼氏とかいないんですか?』


『………えぇー…!!
そ、そんな人居るはずないですよ!!』


あ…もしかして…この人、A君ママに彼氏が居るとか…勝手に想像して
暴力振るうんだろうか…


『そんなママさんは、滅多にいないと思いますよ!!』

『……そうかなぁ…』


やっぱり、ヤキモチから来る暴力に違いない


アタシは、子育て中のママさん達は男よりも子供や旦那さんが大切だから
そんな人は絶対少ない!とベラベラと喋っていた


少しでも、安心してほしくて…


A君パパは、こっちを見ながら
うん、うんと相槌を打ってくれていた


園庭も、ボチボチみんなが帰りかけていて人が少なくなって来ていた


家では、弟がしんちゃんを見ててくれている


『アタシも、そろそろ帰りますね!』

立ち上がり、キョロキョロとふぅちゃんを探していた


……ドン!!

A君パパに後ろから押されて…こけた

四つん這いになったアタシ…

今日はデニムのミニスカート…最悪…


A君パパが…
アタシのお尻に顔を埋めるようにして
内太モモを……舐めて来た


『イヤーァ!!ぎゃぁ~!!
止めて~!!』
すごい声を出しながら、振り払おうとするが、お尻をガッチリと持たれて動けない…


キャァー……!!!!
キャァー…!!!


あちこちで声がする


先生達が走って来てくれた


A君パパは、先生やママ達、みんなに囲まれて引っぱられるが
引き離されまいと
ますますアタシにしがみついて

みんなの前で舌を出して舐める…



狂った野獣だ……


No.253

先生が通報する


なんとかアタシは野獣から引き剥がされた


恐怖で立てない…

園長先生達に支えられて、安全な教室に連れられた

途中、振り向き『あんただったんだね!!』と言って睨みつけた


『こんな事があるなんて…』園長先生はガックリとしていた


警察が来て、事情を説明する
周りにいた助けてくれたママさん達も、最後まで残り
目にした事を話してくれた


弟がしんちゃんを担いで、飛んで来た


野獣の胸元を掴み、怒鳴り散らす


A君ママもやって来て、廊下で平伏すように皆さんや、アタシに謝罪する


野獣は、最後まで警察官にもふてぶてしい態度でいた


A君ママには、なんて言っていいのか分からなかった…


アタシに電話していた事も、写真の事も
旦那の行動を、A君ママは全て知っていた


なんで…言ってくれなかったの?
アタシ…とっても怖かったんだよ…

だけど、
責められなかった…



野獣はパトカーに乗せられて連れて行かれた



頭の中がグチャグチャでよく理解できないまま
皆さんに『助けて頂き、ありがとうございました』と頭を下げて



弟に、もたれるように家に帰った


No.254

それから一週間…アタシは家に引きこもっていた

誰にも会いたくなかった


ショックで、食事も取れないくらいだった

幼稚園は、行くことも無く…夏休みに入った


その間、全て弟が面倒を見てくれた


幼稚園の送迎や、夏休みのふぅちゃんの宿題を聞いてくれたり

事件に立ち会ったママさん達に、お礼を言ったり


ママ友達に、アタシの状態を説明して
これからも仲良くしてやってください。
と言っておいてくれたり…


家事も手伝ってくれたり

ほんとに助けてくれた。


せいちゃんからは、一度も連絡無し…

海外だから仕方ないよ!
と弟は、慰めてくれた



後で分かったのだけど…
弟は、アタシに付きっきりだった事で
彼女に振られていた…


『人の困ってる時にまで、自分を優先しろって女なんかいらない。
気にするな♪姉ちゃんは悪くねぇし』
と言ってくれた


ありがとう❤優しい弟よ!!


夏休みに入って、アタシ達は実家で過ごすことにした


No.255

実家で穏やかに過ごしていた

恐怖心も少しずつ薄れていった


ママ友のサエちゃんからメールがあった
『元気になったかなぁ?
あれからA君のところは、離婚してママは〇〇市に引っ越したって。
あの旦那も、実家に連れ戻されて〇〇県に引っ越したよ♪
だから安心して戻って来てね。』


そうなんだ…良かった。

もう二度と顔なんか見たく無かったからホッとした


8月に入ったら、せいちゃんからも電話があった

『あい~!!実家帰ってるのか?
今、日本に帰って来たよ

お土産もいっぱいあるからな!!』


『お帰りー!!
もう…色々あって大変だったんだよ!!
…………………』
簡単に話した。

『だから、弟に会ったらせいちゃんからもお礼言ってね!!』

『ごめんな……
また、ゆっくり聞くよ。
弟には助けられたな…
お礼言わなきゃな!!
あいからも、よろしく伝えといて!!』


とりあえず、お盆までは実家で甘えさせてもらって
お盆にせいちゃんと自宅に帰った




それからは、
何ごとも無く…いつもの日常に戻っていった



いつもの日常がとても有り難く、アタシは幸せでいっぱいだった


せいちゃんの出張も短いのが入る程度で

家族で仲良く暮らしていた





冬が来て…



アタシは、地獄に落とされた…


不倫の発覚…



No.256

不倫…

紛れもない…このリアルに生きてる世界で…
アタシは裏切られていた


…夢なんかじゃない。



せいちゃんは…
なんで、あんなにサッパリした態度なんだろう…


ベッドで横になりながら…


次々と疑問が浮かんで来る


【いつから続いてたの?】

知る方法は、あるけど…



やり直す。
と決めた以上…


知らない方がいいと思った


やり直す…
やり直す…
やり直す…


全てを初めから…
やり直す…




もちろん。
それなりの覚悟が必要…



アタシの我慢強さ。

せいちゃんの改心。




……泣くのは、今日で止めよう



今日だけは…

この悔しさを、
この悲しみを、
この苦しみを、
この絶望感を、
このミジメさを、
この胸の痛みを、



涙で洗い流すように…

好きに泣かせて…



アタシは、狂ったように泣き叫んだ


うぉぉ…腹の底から唸るような、悲しみの思いが声となり
涙となり

溢れ出して、止まることは無かった…



No.257

ふぅちゃんや、しんちゃんのお世話をアタシは
あの日…していたのだろうか


記憶にない。


覚えていることは…


ひたすら泣いたこと…
泣いて泣いて
泣き叫び過ぎて、喉が切れて血を吐いた…

血を吐きながらも、ひたすらに
むせび泣いたこと


枕やシーツが涙と鼻水まみれになって…
血を吐いて泣いて…

鮮やかな血に染まるくらいに…叫んで泣いた



助けてロッキー…
助けてロッキー…

側に来てよロッキー…


死んだ愛犬に
助けを求めて泣いた



アタシは…
弱り果てて…だけど…

せいちゃんが好き過ぎて…


強くなりたい。と心から願った


アタシの心は、
ダイヤモンドの心…

涙で濡れても、血を流しても…
輝きは消えないで!!



アタシは、また
立ち上がってみせるから…


No.258

せいちゃんが帰って来た

お弁当を買って来てくれたみたい…


ふぅちゃんとしんちゃんは、コンビニのおにぎりや、お弁当
インスタントラーメンや、スーパーのお惣菜が大好き



アタシが毎日、ご飯を作るから
違うものが嬉しいらしい



そんな子供達の姿も、あの時は辛くて…


アタシが頑張って来たこと…
アタシの愛情…
全てを、せいちゃんと共に否定されてるように感じた


アタシの愛情は…
押し付けだったの?

だから…せいちゃんも…
アタシの愛情に甘えきって…
みなと不倫したの?



寝室で枕を殴り倒して泣いた



悔しい!!!!
悔しい!!!!


こんな、恵まれた環境で…
温かい家庭で…ご飯を食べる

アタシの願いに願っても叶わ無かった夢を
あの子達やせいちゃんは…当たり前に…

そろどころか
せいちゃんなんて、まだ足りずに…



悔しい…


なんでだよ…
なんでだよ…



アタシは、一体…何なの?

この屈辱…






ほんとに、
生まれて来なければ良かった…


No.259

たまらずに家を飛び出した


もう…
嫌だ…



寒い空の下を歩く…

ノーメイクのアタシ…

泣き腫らしたアタシ…

誰にも会いませんように…


宛てもなく歩いた


夜空を見上げながら…
涙が流れる…



幼い頃の気持ちに帰る…

妹もいない。
一人ぼっち。


妹は、先月結婚したばかり
新婚ホヤホヤだった



あの子は…
今、幸せかなぁ


あの子が幸せならいいや

実家の両親も仲良く暮らしてる


アタシは…

それだけが願いだったなぁ…


アタシだけが
耳も聞こえない…普通に暮らせない…


自分の幸せを願っても、叶わないのかもね…



いらない人間なんだ。




空の上で笑ってるのは誰?


望み通り…

また、こんなに泣いてますよ



ロッキー…
ロッキーだけは、見捨てないでね


愛してるよ
会いたいよ…



No.260

あんなに強気で挑んだのに…


そして、結果。

せいちゃんは、アタシを選び…
あの女にアタシの前で、酷い言葉で罵った…



だけど…

だからと言って、
アタシは嬉しくもないし
愛情を確認できたはずもない


悲しみは、変わらない…


時間が経つごとに…


ますます深い闇へと沈んで行く心…


心は目に見えないけれど、アタシはきっと傷だらけに違いない…



家になんて…帰りたくない


もう、消えてしまいたい


こんな時、
他の人はどうするんだろう…?


コンビニで缶ビールを買う

血の付いた服が、店内の明かりに照らされ
ノーメイクで眉のないアタシは
まるで危ない人のようだ



アタシは…どんどん弱っていくばかりだ


自暴自棄になって行く…


缶ビールを飲みながら、空を見上げて夜道を歩く



タバコに火を付ける


片手に缶ビール、もう片手にはタバコ…


フラフラと歩くアタシは、ミジメで笑えて来た


『アハハ…アハハ!……』
少しの酔いもあって笑いが止まらない…


涙も止まらない…




なんでもいいや!!

とにかく、乾杯だー!!


あークソ泣けて来る…


No.261

フラフラと家の前に立つ


結局…戻って来てしまった

アタシに行く宛てなんてない

帰る場所もない。



ここしかないんだ…





ガチャリ、ドアを開けた


『お帰りー♪♪』
ふぅちゃんが飛び出て来て迎え入れてくれた


涙が溢れる…


ふぅちゃんを夢中で抱き締める…


『お母さんを…好きだと言って…
お母さんがいないと…嫌だって…言ってよ…
ふぅちゃん……』


『どうしたの?
ふぅちゃんは、お母さんが大好きだよ?
お母さんがいないと嫌だよ?』
キョトンとアタシを見つめるふぅちゃん…


『ありがとう……』
(お母さん…死んじゃいたくなっちゃったんだ…ごめんね…)


リビングには入らず
寝室に入ってベッドに潜りこんだ



しばらくして
せいちゃんが入っ来た…



電気を付けて…

血まみれのシーツに驚いていた



『……あい!!
どうしたんだよ!!これ…なんだよ…』

布団をめくりアタシを見る


血で汚れた服…


『何が…何が…あったんだよ…

探しても探しても、見つから無かった…
あい、酔ってるのか?』


言葉が思いつかない


ただ悲しくて…

せいちゃんを見ると、また途方もない悲しみが襲って来て



『うぉぉ…ああ~…うゎわぁぁ…………!!!!!』

獣の雄叫びのように、腹の底から泣き叫んだ


涙、鼻水…血のよだれ…グチャグチャになって
顔から流れ出た


『あい!!血が……!!』


『うぉぉー…ん…うあぁぁー…!!!!!』

頭を伏せてむせび泣く


『ごめん…ごめん…ごめんな…
あい…ごめんな、泣くなよ…苦しませてごめんな

また、やり直そう?
なっ?
俺、もう二度と泣かせたりしないから…
俺は、こんなに…こんなに悲しむ人を初めて見た
ごめんな…』


せいちゃんは、アタシに覆いかぶさるようにして
二人で泣いた



責めたい気持ちが押し寄せて来る…

言葉ではなく…


怒りのままに…この身を任せ暴れ狂いたい衝動に刈られる

血が騒ぐ…

メラメラとアタシの中の血が騒ぐ…


悲しみ泣き伏せるアタシ…

怒りの衝動に付き動かされて…
傷め付けて、全てを破壊してしまいたいアタシ…



守りたい…


全てのものを…



暴力からは、何も生まれない



守りたい…
この家庭を…


好きだよ…せいちゃん



ごめんね



アタシは、耐えてみせるから…


No.262

次の日

一睡もすることなく、ベッドから出た

いつも通り…
顔を洗う。

みなに投げつけられた茶碗の痣が青くなっていた



胸が痛む…


だけど、気を取り直して化粧をする

コンシーラーで丁寧に痣を隠すが…
隠し切れない…


髪をアップに結ぶ。





今日から、ほんとに初めからやり直すんだ!


アタシは気合いを入れて、朝ご飯を作った


ふぅちゃんとしんちゃんが起きて来る


『お母さん早いじゃん』

『おはよう♪♪』


『さぁ、ふぅちゃん顔洗って来て♪』


せいちゃんを起こしに行く


寝ている姿を見ると…モヤモヤする…

『せいちゃん!!おはよう!!一緒にご飯食べて行ってよ』


『ん…あい、おはよう』

目が合う


アタシは、ニッコリと微笑んだ


No.263

『行ってらっしゃい!』
せいちゃんがキスをしようとする…

いつも、こうして出掛けて行く

拒みたい気持ち…

チュッ♪♪
『行ってらっしゃい!』



…………はぁ。

人間、そんな簡単に切り代われるはずがない…



でも。
こうして毎日を続けて行けば…
アタシもきっと、また心から楽しく暮らせるはずだ


辛い気持ちも忘れられるはず…


傷は、きっと癒える


信じてやって行こう!





『さぁ、ふぅちゃん♪準備出来たかなぁ?
幼稚園行くよ~!!』


No.264

こうして3ヶ月が過ぎた


ある夜、
みなからメールが来た。

『報告しておきます。
私、彼氏が出来ました⤴
またまた既婚者です😜
今度は、奥さんから奪うつもりでいます

もう、せいさんには何の感情もありません(笑)

ちなみに、奥さん。
不倫後の生活は幸せですか(笑)?
ご愁傷様です。
また不倫されないように気をつけてくださいませ

せいさんは、人気ありますから大変ですね😱(笑)
では、お幸せに~』



忘れようと…
毎日毎日…頭の中に居座る
みなの残像と戦って来た…



悔しかった…



こんな馬鹿にしたメール送って来やがって!!


また既婚者に手を出してるんだ…


奥さんから奪うつもり?
だと…?



こいつ
マジ許せねぇ…!!




痛い目に合わせやろうか?


こっちは、まだ不倫の慰謝料請求出来る立場だ…



とりあえず、
みなからのメールを、せいちゃんに転送した



No.265

せいちゃんからの、返信は素っ気ないものだった


『バカ女は、放っておけばいいよ!!
どうせ、遊ばれて捨てられて終わりだから

あの女は既婚者が好きなだけ。
奥さんから奪うのを楽しんでるだけの、くだらない女だから

あいが相手してやることないよ』




………でもさ…


アイツがどうなろうと、知ったこっちゃねぇけど…


その奥さんは?



その奥さんは…きっと…



アタシみたいに傷つけられて泣くんだよ?



放っておける訳ない!!



こんな気持ち…
誰にもしてほしくないんだよ…



No.266

アタシは、受話器を握りしめていた…


うまく行くか…分からないけど…



せいちゃんの会社に電話をかけた





『もしもし…名乗ることは出来ませんが、探偵事務所の者です
〇〇〇部署にいらっしゃる
〇〇みなとおっしゃる女性社員ですが
社内不倫してますよ。


こちらには証拠があります。

お相手の名前は言えませんが、なんせ社内では有名と情報があります。

一度、社内調査してみてはいかがですか?

出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした』
ガチャリ。

一方的に電話を切った。




かなり興奮していた。



うまく暴かれてクビになってしまえばいい!!
と願った



No.267

これで…せいちゃんの悪事も一緒にバレるかもね


だけど
そのくらいは覚悟が必要だ


みなの相手は社内に決まっている



せいちゃんだって、みんなから軽蔑されればいいんだよ!


アタシは、あれ以来
何一つ話題にも出していない


義父母にも、女が一方的に好意を持っていただけで
せいちゃんも、いい気になって何度かご飯に行っただけの関係だったそうです


ヨシに送ったメールは、アタシの勘違いで…
ヨシに彼女が出来た。ってことでした…

と、大嘘をついて庇ってやった


義父母は、
『そうだと思った。
まさか、せいが不倫なんて…
絶対ないから!!』


知ってる?
アタシが謝ったんだよ?



少しくらい、せいちゃんも痛い目みろ


これで昇級は無理かもね~…


アタシ達、家族にも痛いけど
旦那のしたことだ…



ほんと情けない…

No.268

何も知らないせいちゃんが帰って来る

『お帰りー遅くまで、お疲れ様でした!』

『あ~疲れた。
ただいま~今夜のご飯は何?』

『かやくご飯と魚焼いて…後は色々♪』


着替えて、ご飯を食べる

『あい、ほんと飯旨いよなぁー
食堂とか店出来るよ!』


…なんで、食堂?

どうせなら、もう少しオシャレな食いもん屋にしろよ…


【女と見られてない】
と言うことが、こんな一言で分かってしまったりするんだよ…?


だけど、アタシは何も反論したりしない


小さな言い争いすら、したくない…


アタシの胸に秘めた
狂暴な破壊願望が…爆発してしまいそうになるから


今は、
穏やかな心になりたい


また、心を通わせ合いたい…


No.269

それから月日は経ち…


アタシの笑顔も増えた

真夏の夜
せいちゃんが『みなが、今日、会社辞めたよ』

『…え?そうなんだ』

『なんか、色々と噂が立ってたらしいわ。新人の女の子をいびったり…
不倫を繰り返したり…
まぁ、俺の言える立場じゃないけどさ…
誘惑されてた男性社員も多かったらしい

まぁ、居づらくなったんだろうな

退職願い出したって話し聞いたわ』


『ふーん。ま、これくらいの罰は当然じゃない?アタシもずいぶん傷ついたし~』

『……だな。』



アタシの電話…
少しは影響があったんだろうか?




ざまあみろ!




深夜、みなにメールを送った


『会社、辞めたんだってね?
ざまあみろ!


でもさ、これからは少しでも人の痛みが分かる女性になって欲しいと思う

自分が努力しないと、変われないよ


あんたには文句言ってやりたくて、たまらないけど…


自分に負けないでください』



送信………ポチ。



No.270

みなにメールを送ったことで、アタシの心も少しずつ整理がついて来た


この頃
ママ友の間で流行り出してた、風水に
アタシもハマった


少しでも、幸せになりたくて…

ぶ厚い風水の本を購入し、家の模様替えをしたり

東西南北に合わせて、カラーを統一したインテリアにしたり


家の掃除も時間をかけて、玄関の水拭き、窓ガラス…
天井に至るまで…隅々まで毎日毎日頑張った



特に、お風呂場は汚れると主人が浮気しやすくなる。と読んで…

ピッカピカにした。



幸せに暮らしたい

家族で仲良く暮らしたい



何よりも
せいちゃんに愛されたい…


No.271

ひたすらに
前を向いて歩いていた


精神論?スピチュアル本?もたくさん読んだ

読み漁った…


感謝の気持ちが幸せを呼ぶ…

ありがとう…と言う言葉が幸せを呼ぶ…

色んな本を読んだ。


どの本にも、感謝の心の大切さが書かれていた


もちろん、全て実行した


初めは、なんで不倫されたアタシが…
どうして感謝なんか出来るんだよ…

と否定的だったが…



目を閉じて…
せいちゃんを思い浮かべた…



せいちゃんのおかげで、こんなにも人を愛することを知った





毎日頑張って働いてくれてるせいちゃん…



こんなかわいい子供達をアタシに授けてくれた…





色々と頭に浮かぶ…




心が満たされて行く…





涙が溢れた…




『せいちゃん…ありがとうございます…』
自然と口からこぼれた…




言葉にすると、熱い思いが胸に溢れ…


泣けて泣けて仕方なかった…


『ありがとうございます…
ありがとうございます…』




ああ…満たされて行く…

初めての感触…
これが幸せなんだ…



目を開けると、空の青さも清々しくて
『ありがとう…』
空に向かって手を合わせずにいられ無かった…






やっと、
トンネルを抜けた…




光眩しい毎日が始まった



No.272

もちろん
アタシだって、そんな出来た人間じゃない


せいちゃんの出張中には、心が沈み…
またキャバかな…
もしかして風俗……
頭の中で、せいちゃんと女が絡み合う姿が浮かんでしまう

不安で…
不安で…


ふぅちゃんとしんちゃんを寝かし付けた後、
記憶がなくなるまで缶ビールを飲み続けたりして
不安な夜を過ごした


嫌でも…みなの顔が浮かんで
みなとせいちゃんの絡み合うシーンが映画のように鮮明に見える

泣きまくる日々もあった


せいちゃんの出張は、アタシの恐怖だった



そうかと思えば、遠い地で働いてくれる
せいちゃんに『ありがとう』と手を合わせたりもした






その頃に書いていた
【ありがとう日記】には
ほんとに、小さなことに感謝して
会った人を褒めまくっている

少し行き過ぎ!と感じるくらいの『ありがとう』が綴られている



今、見ると…
とても複雑…


あの頃のアタシは、決して間違いではない


だけど…
一生懸命過ぎて…自分のことだけど
かわいそうに思う。


あの頃は、確かに幸せを感じていて
感謝の日々を送っていたんだから…

否定することはしないけどね




もし過去に戻れるなら…



この時に戻りたい。


No.273

幸せに浸りながら、全てのことに感謝して
愛で心を満たし、毎日を送っていた


不倫から1.2年後…

まだ、胸は痛む日もあった

隠れて泣く日だってあった

でも、まっすぐに光に向かって歩いていた



その日は、
少し元気が無くて街で、買い物でもしよう!

と、しんちゃんと一緒にショッピングモールに来ていた


服を買って、気持ちも晴れた

ブラブラと歩いていたら…

『あっ…!!!!』

向こうも気づく『おっ…!!』

沢山の人が行き交う中…

しっかりと目が合った


お互いに駆け寄る
『タニ!』(谷川君です)
『あい~!』

『超久しぶりじゃん!どうしてた?
今、デート?』ニヤニヤ笑うアタシ


『わぉ!!チビちゃん、あいにそっくりだな~
結婚したって聞いてたけど、幸せか~!!
俺は彼女いねーのっ…(笑)』

『俺、美容師になったんだよ。
だから、今日は服買いに来てたんだ!』

『すごいじゃん!美容師さん?
あ…月曜だからお休みだね!』

懐かしくて話が弾む

『飯、食うか!!』
『うん♪♪♪』アタシよりも、先にしんちゃんが返事をした(笑)


一緒にお昼を食べた
『みんな元気かなぁ?』
どっち共なく、地元の友達の話しになる

『タニは?地元に居てるんだよね?』

『ん~今は、〇〇市で一人暮らし、
やっぱ…親父に気使ってさ…実家には居ずらいわ』

『あー…お母さん、再婚したんだもんねぇ…
〇〇市なら近いじゃん!
アタシ〇〇市だよ』

『同じ南に居るんだ!?』
アドレスを交換し合った


正月に、地元でお互いの友達呼んで同窓会しよう!

と言う約束をして、アタシはふぅちゃんのお迎えがあるからと別れた



久しぶりの再会に心が、ルンルン気分だった♪

No.274

>> 273 お詫び、訂正🙇

『タニは地元に居てる…

では無く

『タニは実家に居てる…

の間違いです💦



誤字・脱字がほんとに多く、申し訳ありません🙇💦


No.275

その日は1日テンション高く楽しく過ごした

朝の塞いだ気分なんて吹っ飛んでいた


せいちゃんとの関係も良好だった♪

不倫を乗り越えた夫婦が新婚当時のように、ラブラブになる…

まさに、それだった。


せいちゃんが帰って来ると、玄関へダッシュ
飛び付いて抱っこしてもらって
『お帰り~♪♪』
『ただいま~♪♪』
チュッ。チュッ。チュッ。


ふぅちゃんとしんちゃんが、キャァーキャァー喜ぶ

『お母さんとお父さんはラーブラブ♪♪』

子供達は、両親のラブラブが嬉しくてたまらない



せいちゃんのご飯の用意をして、
アタシはコーヒーを入れてお互いに今日あった事を話す


『今日ね、買い物行ったら、小中学生時代に超仲良くしてた子に会ったんだよー♪

お正月にプチ同窓会するんだ♪♪』


『へぇー、ヤンキー軍団で集会か(笑)
いいじゃん♪
楽しんで来てよ』


『ありがとう♪
ちゅーか、集会とか…感じ悪りぃー表現だなぁ…』

『プッ……(笑)
元、レディースが何言ってんですか?
集会がお似合いですよ』


『あっそう!!
じゃあ、集会でいいわ。
なんとでも呼んでちょうだいなっ!!』


ご飯の片付けをして、せいちゃんと一緒にソファーに座る


猫のように甘える


幸せな時間…



No.276

お正月がやって来た

アタシ側はユマとA子の3人

ユマもA子も、むちゃくちゃ楽しみにしていた

ユマは、出産前の大きなお腹を抱えてやって来た

『久しぶりに会うのに…こんな太って恥ずかしいよー(泣)』なんて言いながらも、ちゃっかりオシャレして来てる


だって、タニの呼んだメンバーの中に…
ユマの初恋の田中君がいてたから(笑)

A子は、彼氏と別れたばかりで馬鹿騒ぎをしたいと言っていた

A子の元彼は、A子に借金するような、ほんとクズ野郎だったから
別れて正確!



さて女性メンバーは、集まった


タニに電話をする

少し緊張…
だって、アドレス交換し合ったけど
やり取りは年末にメンバーとお店の予約のメールを交わしただけだったから

初携帯での会話…


『オッスー♪
こっちは、もう店内だよ
早くおいでー』

『えっ!!もう酒入ってるんかよ?(笑)
分かったー♪行きま~す』


『もう飲んでるって!!』


『まぁ、男同士、話したいこともあるでしょう♪
行こ行こ~』


アタシ達も店内へ入った


No.277

懐かしいメンバーが顔を揃える
男性も3人。
タニ、田中、小田君…


楽しくて、楽しくて…
このまま時が止まればいいのに…


タニが
『俺、彼女出来ました⤴
付き合って1ヶ月♪ほやほやでーす(笑)』
手を挙げて陽気に言う

ふふ…♪♪
嬉しそうなタニを見て、こっちまで嬉しくなる

『良かったね~タニ♪
どんな子?かわいい?
大事にしてあげてねー!!浮気なんかしたら、アタシが許さないから(笑)』

A子は、なにやら小田君といい感じ♪

田中が冷やす。

笑いが絶えない


小田君は、ヤンキーではない。
と言うか、彼は生徒会長(笑)!!!
だけど、アタシ達はむちゃくちゃ気が合った


小田君とA子がくっつけばいいのにな~

『お二人さん♪アドレス交換しちゃったら?』
余計なお世話を焼く(笑)

小田君が携帯を出した

おぉ!!!

A子は『マジで?アタシ、メール魔だよ?後でアドレス変更とか止めてよね~
マジ、凹むからさー』

『お互いフリーなんだし、友達として愚痴り合おう!!』
小田君の台詞にみんなが笑った

『愚痴り合いのメールかよ!!』


ユマは、お人形のようにふふふ…♪♪と笑う

気味が悪い(笑)

田中がユマの目の前だから、緊張しまくってるのが良く分かる


ユマは、チラ。チラ。
と田中を見る…

ユマは、ほんとかわいらしい
田中の前では(笑)!!



No.278

みんなそれぞれの道を歩んでいる

それでも、こうして集まれば…あの頃と変わらないアタシ達



話しは尽きない。

小田君が『なんで、2人は別れたんだー?』

こっちを見て言う

『タニが、引っ越しちゃったからね~
何となく…自然消滅だよね~』

ユマとA子は、もちろん知っている

アタシの言葉に一番驚いたのは…
タニ。

『え?え?えぇ~っ!!!!
そうだったの?
俺達…それで自然消滅だったの?
あいの中では、そうだったんだ!』

アタシもタニの驚きようにビックリする


『俺は…引っ越して、新しい親父とか出来て…
親戚の挨拶とかに付き合わされて
電話も親父に気使って出来ないし、
ゴールデンウイークの後に、あいの高校まで行って…

門の前で待ってたら、あいが男と手繋いで出て来たから…

振られたんだと思って、隠れてその場から逃げた。
その日から、しばらくは、むちゃくちゃ泣いたしよ~(笑)』


そんな…!!!
そんな事、知らなかった!!!

『…嘘…
そうだったの?
なんで隠れたんだよ~!!
何、男と手繋いでんだよって…現れて欲しかったよ~…

そしたら、タニに抱きついてたよ。
会いたくて、会いたくて…仕方なかったんだよアタシ…』


『ま、今になって知るって事は、良くあるからなっ!
真実が分かって良かった、良かった♪♪』
田中が言う。

『そうだな♪
俺、嫌われて無かったんだ!良かった~
乾杯だ♪乾杯だ♪』


ユマとA子は…
アタシの顔をチラチラ見ていた…
心配してくれてた…

アタシが、タニをすごく好きだったこと…知ってくれてたから

『あい~タニ、あいのところに来てくれてたんだね~♪
終わった事でも嬉しいじゃん!』

ユマがグラスを渡してくれた


『うん。タニありがとう、ごめんね。
傷つけて…でも、アタシはタニが好きでしたぁーぁぁ!!!!
男と手繋いでてごめんなさーい(笑)

みんな、真実に乾杯~♪♪♪』


チン♪カチン♪…






そうだったんだ…
そうだったんだ…



グラスに口を付けた。


No.279

『ユマ、赤ちゃんいつ生まれんのー?』

田中に聞かれて、ぶりっ子声で答えるユマ(笑)
『2月14日、バレンタインが予定日なんだ♪』

『じゃあ、風邪とか引くなよー!
暖かくしなきゃな!!スカートなんか履くなよ!
スースーしてて腹冷えそうだしな』

『いや、田中…タイツとかあるし大丈夫だよ
そんなスースーしねぇから(笑)』


『いや、あい。俺は、姉ちゃんのスカート履いたらスースーしたぞ?経験済みだし』

みんな爆笑。

『そんなイカつい顔して、いつスカート履いたんだよ(笑)』
A子の突っ込みに、また笑う


アルコールが程よく回って、楽しさ倍増♪



気づけば、もう朝方だった


店を出て…

小田君が『よく、店も文句言わなかったなー
閉店時間2:00って書いてあったわー』



『あ。この店、俺の知り合いの姉妹店♪
店長に頼んでおいたんだ』

『さすが、タニ~♪♪
相変わらず気が利くじゃん!すげーぇ』
アタシはタニの背中をポンと叩く


ユマが振り向き
『またさ、お盆に集まりたいなー♪』


『いいねぇー!!』
『じゃあ、盆、正月は騒ぎますかー♪』


みんなで、パチン♪と手を合わせて
楽しい宴はお開きになった



皆、それぞれに帰って行った



アタシも実家から15分の道のりを帰って行った…




また、お盆まで頑張るぞ


No.280

実家に帰って、アタシは爆睡した


昼前に起きると
両親から文句を言われまくった

『何時まで、出掛けてたんだ!』

『あい、あなたは母親なのよ!!
正月だからって、同窓会だからって…
子供達の寝る前には帰って来なさい!
母親は、365日、24時間母親でいることを忘れちゃ駄目よ!』



実家に帰ってた妹が庇ってくれた

『あのさーお姉ちゃんは、毎日一人で頑張ってるんだから、たまには同級生と夜遊びしたっていいじゃん

お母さんだって、働いてた時には忘年会だの
新年会だの、送別会だのと夜遅くまで出掛けてたくせにさ

忘れちゃったの?
お姉ちゃんが、アタシや弟の面倒ずっと見てくれてたこと…

365日、24時間母親で居てたとは思えないけど…


お父さんだって、知ってるよね?

お姉ちゃんは、悪くないよ!
何、言ってんだよ
お姉ちゃんに謝れ!』



『…そうね…あい、ごめんね
たまには、息抜き必要よね…』

『…あいは、よく頑張ってる…
ごめんな、あい…
父さんが悪かった…』



妹に感謝!!!!

ありがとう!!!

ずっと、ちゃんと見てくれてたんだ…






優しさには弱い。




涙が出そうだった。




No.281

携帯を見たら、昨日のみんなからメールが来ていた

『楽しかったねー♪
また、お盆に騒ごうね♪』

『いやーぁ。みんな変わって無くて良かったわ!!
次回まで元気でな~』


ニヤニヤしてしまう。
心おきなく話しが出来る大好きな、みんな…


タニからのメールは、みんなに送信…
では無く、アタシ向けのメールだった

『ビックリな真実だったんで、
俺は、ほんと悔やまれる(笑)

でも、心の充電出来ました⤴
ありがとう!!!
あい、ちょっと痩せ過ぎだから、しっかり食えよ

またお盆まで😉

困ったことがあったら、いつでも頼りなさい!』


胸が…ツンとした


アタシもみんなにメールを送る

『楽しかったよー♪♪
次もみんなで絶対会おうね!!
あ、彼女や彼氏がヤキモキ焼く方は
特別に免除してあげまーす

みんなが幸せですように♪
次も笑って会おうね!』


タニにも同じ内容プラス
『痩せ過ぎか?(笑)心配してくれて、ありがとう

いっぱい食いまーす♪

困ったら、ソッコー助けを求めるから飛んで来てね😜なんてね~(笑)

タニは、彼女を一番に考えてあげてね!』

と付け加えた




ほんとに、助けて欲しいことが起こるなんて…


思ってもみなかった



No.282

春が来て…
ふぅちゃんはピカピカの1年生になった


しんちゃんも、幼稚園が3年保育になったので
ピカピカの年少さんになった
(ふぅちゃんは2年保育でした)



ふぅちゃんも小学校に馴染み、しんちゃんも幼稚園にすっかり馴染んで

忙しくとも、楽しく充実した毎日を送っていた


もちろん
せいちゃんとの仲も良好そのもの♪


せいちゃんが代休等で、平日が休みの時は
二人のデートの日と決めて、映画に行ったり
ランチに行ったり…


誰から見ても、自他ともに認める仲良し夫婦だった


ご近所やママ友達にも、仲良しね~♪と言われていた



夏休み前に
せいちゃんの会社の社員旅行があった(家族も参加出来る)
せいちゃんと、しんちゃんが参加した


アタシは、ふぅちゃんがバス酔いが酷いので諦めて、
ふぅちゃんと留守番することを選んだ



行き先は、関西のテーマパークUSJ!!


いいな~ぁ。
アタシも行きたかったけど…


仕方ない…


『行ってらっしゃ~い♪』
『行って来まーす!!』

二人を見送った



No.283

『ただいま~♪♪』
『お帰りー!!』

しんちゃんは、遊び疲れて帰りのバスの中で寝てしまったみたい


お土産をもらって、しんちゃんの楽しんでた様子等を聞いた


アタシは、何回かメールを送っていた


『楽しんでますか~?
しんちゃんの写メ撮って送ってよ~』

5回以上もメールしたけど、何も返信は無かった


そのことを聞くと
『ごめん!!気づいて無かったわ~
写真は何枚か撮ってもらったから、またもらえるし
それ見て勘弁して!!』


『…んもう。
分かったよ!!待ち時間に、メールのチェックくらいしてくれてもいいのに~ぃ…』


ま。
二人が楽しかったなら、いいや♪




そして、
せいちゃんは次の日は日曜日だったけど
休日出勤だと言って出掛けた


『お疲れさまだねー
昨日の疲れ大丈夫?
無理しないようにね、行ってらっしゃーい』

『行って来ます!!』
チュッ♪♪♪



しんちゃんは、まだ起きて来ない


よっぽど歩き回って、疲れたんだな~



ふぅちゃんと朝ご飯を食べた



『おはよーう♪♪』
目をこすりながら、しんちゃんが起きてきた


『おはよう♪昨日、楽しかった?』



『うん!お父さんと、お父さんのお友達のお姉ちゃんの、まきちゃんとずっと一緒に遊んだよ♪』



…………………は?



まきちゃん?


誰…それ。



せいちゃんから一言も聞いてないよ?



胸がドクンドクンと鳴り出した…


嫌な汗が…じっとりと出て来る…



うまく息ができない…




『明日は、まきちゃんが用事があるからお父さん貸してね
って言ってたよー
お父さん、もう行った?』




ああ…


まさか…
まさか…



信じられない…



No.284

息ができない…

汗がポタポタと垂れる

胸が…
いや、心臓が破裂しそうな感じがする

目が回る…


せいちゃん助けて!!!


ソファーに横たわり、縮み込みながら
体の異変に耐える…


アタシ…死んじゃう!!!

もう、もう…駄目だ…


せいちゃん…





しばらく縮み込んでいたら、スーッと治った

【今の何だったの?】
すごい恐怖を感じた…
心臓が破裂しそうな勢いで、ドクンドクンと鳴った…
死んじゃうと思った。



今の…何だったの?



せいちゃんに電話をかける


…留守番に切り変わった


まきちゃんと…居るの?


どういう関係?


まさか…また…
不倫。してるの?


違うよね?


せいちゃん…電話…出て!!!!


何回も何回もかけ直した


着歴見たら
ビックリしてかけ直して来るよね?



ただの…仕事だよね?



No.285

夕方になってやっと、せいちゃんから電話があった


『せいちゃん…!!
今日は、仕事だよね?!
休日出勤だから、定時で帰って来るよね?』


『あぁ…そうしたいんだけど…
ちょっと、後輩の相談聞かなきゃいけないから
今夜は飯、いいよ。』


『後輩って誰…?』


『山川。なんか仕事先とトラブってるらしくて…
ちょっと話し聞いてやりたいし
ごめんな。
早く帰るようにはするから!!』

『分かった…
ねぇ!!せいちゃん…!!
……………………
山川君と二人なの?』


『そうだけど?』


『………………
早く帰って来てね』


電話を切る直前に女性の声
『せいさん♪待っ…』


………
電話を切った…



山川君は、せいちゃんの後輩…

でも…男だよ?


さっき聞こえた声は…?
確かに女性だった


『せいさん…待っ…』の続きは何?


待った?…だよね。きっと。


女性が、トイレでも行ってる間にかけて来たのだろうか…




どうすんの?
アタシ…


No.286

夕飯は、インスタントラーメンにした

ふぅちゃんとしんちゃんは、無邪気に大喜び…


アタシはソファーで、ずっと固まっていた。



もし、やましい関係ならば…しんちゃんにわざわざ『明日、お父さん貸して』なんて言うだろうか?

社員旅行だよ?
会社で噂になるような…
関係ならば3人で、ずっと一緒に居るだろうか?



まきちゃん。は…
せいちゃんとは、やましい関係じゃない。

…だから社員旅行でも
せいちゃんとしんちゃんと共に行動していた


誰もそれを不信がったりする関係じゃないから…



信じてみよう。


『ねぇしんちゃん、昨日一緒に遊んだ
まきちゃんは、お父さんと手繋いだりしてラブラブだった~?』


『ん?ラブラブじゃないけど?
僕とまきちゃんは、手繋いだよ!!』


よし!!!!
絶対、大丈夫だ!!!


お願いします…


大丈夫だよね?




せいちゃんは、12時を過ぎた頃に帰宅した



『朝にシャワーするわ
あ~ぁ疲れた。

もう、また明日から仕事始まるのに…
なかなか帰してもらえなかった

ごめん。あい、寝るわな』


せいちゃんは、寝た。


また明日から仕事始まるのに?

…今日も仕事だったんだよね?



携帯…見たくなる。



アタシは、みな以来…携帯は見ていない



だけど…
真実は、ここに記録されているはず…



せいちゃんの携帯を持って、そっとトイレに入った


ガチャリ。
鍵を閉めた…





深呼吸をして…
祈るような気持ちでボタンを押した



No.287

あぁ…
見るんじゃ無かった…

いや。見て良かった。

……どっちだ?
どっちも本音。





せいちゃんの受信履歴には…まきでいっぱいだった


最後からさかのぼって読み漁る…


【まき】
『今日は、遅くまで付き合ってくれてありがとうね😃💕
おかげで、いい車が買えました⤴

またドライブ付き合ってね✨


…今日、話した愛人の話し、本気で言ったんだよ

考えてお返事ください。
まきは、絶対にせいさんの家族にご迷惑をかけません。

ただ、一緒に居たい
同じ時間を少しでも過ごしたい

もちろん、せいさんの時間のある時に…
せいさんに全て合わせます💦

では、明日またね❤』



今日…車買いに付いて行ってたんだ…

愛人って何?



メールをさかのぼる…
【まき】
『今、着きました☺
〇〇駅の東側にいます』


【まき】
『明日、社員旅行⤴奥さん来られないんですか?

じゃあ、ご一緒されてください😃

迷惑ですか?』



【まき】
『ついに、免許取りましたー🎵
早く車が欲しい😱💦

今度、車買いに行くの着いて来てください😃💕』


【まき】
『今日…Hしちゃいましたね😍💕
すごく、恥ずかしかったです💕
でも、嬉しくてハイになってしまいます😍⤴

せいさんの温もりが、まだ体中に残ってます😍

早く次も会いたい…❤
期待しちゃ駄目ですか?

まきは、遊ばれてもいいんです☺』





これ以上…読めない


十分に分かってしまった



裏切り者…


No.288

しばらく、トイレに座り込んでいた

涙が頬を伝う…



アタシは、せいちゃんの携帯からまきに電話をした


【北風と太陽】
…アタシは、太陽になろう。


呼び出し音が鳴る…
深夜2時をまわっていた


『もしもし』まきが出た


『もしもし、〇〇せいの妻です
先日は、息子がお世話になりました』

穏やかに話す

『えっ…あ……はい…』


『息子から、まきさんの話しを聞いて…
少し気になったので…
せいのメールを読みました…

まきさんは、せいと関係を持ってますね…』


『……………………』


『せいの事が好きですか?
まきさんは、遊びでも構わない。愛人になりたい…
と書かれていましたよね?
本気で…そう思ってらっしゃるのかな?』


『………………………』

まきは無言。

アタシは、穏やかにゆっくりと話す


『ねぇ、まきさん。
自分を大切にしてください…

遊ばれてもいいなんて…
愛人になりたいなんて…

そんな事言わないで。

自分を大切に出来ないと、誰からも大切にされないよ?

悲しいじゃない…
そんなの悲しいじゃない…

まきさん、しんちゃんがまきさんと遊んでもらった事…

とても嬉しそうに喜んで話すのよ…?』


『グスッ…グスン……』まきは泣いている


後、少し…
アタシは太陽の心になる

『まきさん…
まきさんはお幾つ?』


『………に…22です…グスッ…』

『そう…まだまだ若いじゃない?

愛人なんて、駄目だよ…
もっと自分らしく居られる人を好きにならなきゃ…

たくさんの愛情を注いでもらわなきゃ…
自分を大切にしてくれる人が一番よ?

分かるよね?


でも…どうしようもないんだよね?きっと…

せいには、家庭がある。

好きになればなるほど、まきさんは苦しむよ?



アタシも苦しい…』


『……ご…めん…ごめんなさ…い…
私…ほんとに……』

まきが謝った。

穏やかに優しく語りかける

『せいが好き?

しんちゃんから、せいを奪える?

まきさんは、そんな事できる人じゃないよね?


今…まきさんは、なんで泣いているの?

せいを奪うような女性なら…泣いたりせずに妻である
アタシに酷い事言うでしょう?





あなたはきっと優しい人…よね?』




『………しんちゃんに悪い事…しました…
私は……奥さん…私……』


まきが心を開きかけてる


もう一押し。



No.289

北風と太陽…北風のごとく力任せにマントを奪いたい

だけど、取り上げられたマントには
きっと未練が残るだろう…


まき自身が、せいちゃんというマントを自分の手で
手放してくれなくては…
意味がない。

アタシが安心して暮らせない…



『私………せいさんが…好きです…』
まきがしぼり出すように言う


分かってるよ。
そんな簡単にマントは放せないよね…

遊ばれてもいいとまで思う人の心…

お互い無言が続く


太陽ならなんて言うのかな?

アタシは…北風になって、この女を罵りたい…

衝動的に激情のままに怒りを言葉にするのは簡単…


『まきさん
アタシもせいちゃんが大好きなの
世界一好きなの。


……アタシの好きなせいちゃんを好きになってくれて
ありがとう。


ねぇ、せいちゃんのどんなところが好きなの?』


話題を少し変えた

このまま過去を話させて行って
まきを探ってみよう


まきの弱点…手がかりがあるはずだ



あの時は、妙に冷静で…
頭の中に太陽の元で、
無邪気にロッキーと妹と遊んだ記憶を思い出していた


演じるには、気持ちまでも本気で太陽にならなきゃ
伝わらない…


電話の向こうのまきを
今、このひと時だけ…愛を持って接しよう


見せかけの優しさなんて、見抜かれてしまう


まきを愛人だとか…
遊ばれていいとか…
そんな軽くて痛い女から救助しよう




まるで、
大切な友達のように…


No.290

まきはポツリポツリと話し始めた


大好きだった彼氏が居たこと


その彼氏が、親友と浮気をして自分は捨てられてしまったこと



そんな時、せいちゃんが早く新しい彼氏をつくれ!

浮気するような男とは別れて良かったんだ。

親友の彼氏と寝る奴は、友達じゃない。

と話しを聞いて励ましてくれたこと


それがすごく嬉しかったこと


どんどんせいちゃんに惹かれて行ったこと


そして、どんどん欲張りになって行ったこと





せいちゃんとの馴れ初めのような話しを聞かされた



アタシは
うん、うん…と相槌を打ち話しを聞くことに徹した



まきは、話し終わると

『……アタシも浮気される苦しみを知ってるのに…
何してるんでしょうね…』




と小さな声で初めて気づいた事のように言った



No.291

『奥さんは、私を怒らないんですか?
私、最低なことしたのに…

私は、彼氏と親友の関係を知った時は
二人を罵倒し、心の底から恨みました…


奥さんは…何故…優しくこんな話しを聞くことが出来るんですか?』



『そりゃ…アタシだって同じ人間だから…
同じ感情を持ってるよ?
でも…
話しがしたかったの

まきさんの事が知りたかっただけだよ?


せいちゃんには…
もう、前にも裏切られとくんだ…アタシ…



別に優しいわけじゃないよ…』



まきが嗚咽して泣き出した


『うぅ……ごめんなさい…
ごめ…んなさい…ひっ…
…ごめん…な…さい………』


何度も何度も
【ごめんなさい】を繰り返した



『私…せいさんを忘れます
奥さんに…誓います…

本当に申し訳ありませんでした…



私…奥さんのような人になりたい…』




どういう意味だろう?




まきは、マントを手放した…





何故か、まきから尊敬されてしまった


それから、
まきはアタシを『あいさん』と呼び、この先3年ほど
(まきが結婚するまで)
電話をして来るようになった

アタシも『まきちゃん』といつの間にか呼んでいた



内容は、恋愛の相談等…
まきの電話相談に付き合った


知り合い以上、友達未満の不思議な関係


嫌な気はしなかった。

でも…
体の関係があった事実を、忘れることは出来なかった

(まきには、そのことを一度も責めていないけど)





No.292

アタシは、太陽になろうなんて思って挑んだが…

なんだかアッサリとまきが折れてくれた


まきとしばらく話して
『もうせいさんには近づきません!』

と言われアタシも納得して電話を切った


5時になっていた
もう朝だ…


せいちゃんの送信履歴を見る


【山川】
『ちょっと、ヤバい事に巻き込まれてる😱
日曜なのに悪いけど、相談に乗ってくださいまし~😱💦
6時前に📱します💨』


…なんだ、ほんとに山川君と居たんだ
相談は、…まきの事かな?


【まき】
『じゃあ、今から行きます』


【まき】
『子連れだから、息子と二人でまわるよ。
ごめんな。』


【まき】
『おめでとう。
安全運転してください』


【まき】
『ごめん⤵
俺、全く気持ちないのに…
アルコール入ってたから…
って言い訳になりませんよね😥
過ちでした。忘れてください
すいませんでした(T_T)』

【まき】
『話しだけなら聞くよ😃💦
でも、誤解しないでね。
俺には家庭があるから、それ以上を求めるなら
他を当たってください✋』



ここまで読んで、なんとなく理解が出来た


押しに弱いんだ…あの馬鹿!



寝室へ戻り、携帯を直してベッドに入って
涙が溢れた…


アルコールが入ったくらいなんだよ!

それくらいで理性が飛ぶのか?


あー悔しい。
情けない…

寝付けない…


また…裏切られちゃったよ



でも、今回は知らん顔してよかな…


No.293

少しも寝ることなく朝が来た


いつもと同じ朝、
せいちゃんにまきの事を、言うのは止めることにした


でも、夜に少しだけ触れてみよう…



『行って来ます♪』
『行ってらっしゃい』
チュッ…
せいちゃんを見送る


『行って来まーす!!』
『気をつけてね~行ってらっしゃい!』
ふぅちゃんも学校へ行った



気持ちを切り替え、しんちゃんを幼稚園へ連れて行く



帰って一人になったら
張り詰めていた糸が切れたように
涙が出て来た…


なんでなの?せいちゃん…


【ありがとう日記】を取り出し

家事もそっちのけで、ひたすらペンを走らせる

『今日も、みんなが元気です。ありがとうございます

まきさんが、謝ってくれた。これからは自分を大切に幸せになってください
まきさん、ありがとうございます

アタシはみんなが大切です
アタシはみんなを愛しています
せいちゃんが他の女性と関係を持ったことにショックを受けました…
ショックを受けるくらい、アタシはせいちゃんを愛しているんです

こんな気持ちをありがとうございます

地球に住む、全ての人々が幸せな気持ちを持てますように…』


書き終わり、ソファーに横たわる



胸?違う…心臓だ
また…
心臓が破裂するようにドクンドクンと音を鳴らす

耳にまで聞こえて来るようだ

息がしにくい…
助けて…せいちゃん…


あぁ…死んじゃうよ…

心臓が痛い!
汗がびっしょり出てポタポタと落ちる


病気かな…
死んじゃうのかな…


意識が朦朧とする



しばらくするとスーッと治った


これ、2回目だ…
昨日の朝もなった…


アタシ…きっと心臓悪いのかも…


不安でたまらなくなった


病院…行った方がいいのかな?


せいちゃんは、浮気するし
心臓はおかしいし…



なんでアタシは、こんなことばっかりなんだよ!!


テーブルを思いっきり蹴った



ありがとう日記なんてやってるけど…


『クソったれ!!』
やり場のない苛立ちをテーブルにぶつけまくった


ガンガン!!
思いっきり蹴り倒す。
椅子が倒れる…


やってらんねーぇ…



なんでだよ!!!!!


No.294

毎日欠かすことなく、やって来た幸せを呼ぶ掃除…

ありがとうございます!
と唱えながら、家中をピカピカにする


だけど、
この日は…夜に寝られなかったことと
ショックもあって、何も家事をしなかった


ベッドに潜り込み
少し寝ては…目が覚めて…少し寝ては…
を繰り返した



しんちゃんのお迎えも、心臓の爆発しそうな…あの恐怖感が拭えず

近くだけど車でお迎えに行った


誰と会話をしてても、上の空…



頭の中は、心臓の恐怖と
…せいちゃんの裏切りで頭がいっぱいだった



家に帰り
せいちゃんにメールを送る
『体調が悪いです😢
晩ご飯…定時に帰れるなら何か買って来て‼
無理なら、インスタントに頼ります

必ず返事してね‼』


すぐに返信が来た
『朝は、元気だったのにどうした?
具合悪いなら、定時で帰るから😃
安心して寝てなさい』



せいちゃんからのメールを何回も読み直した



裏切り行為…
忘れられないけど…

アタシの胸に秘めておこうかな…


せいちゃんは、過ちでした。
ってまきにメールしてたもんね…


もう、過ちは…起こらないよね?



アタシは…
何も言わないでいようかな…



体の異変の方が恐怖だ。


死にたくない!


せいちゃんに相談してみよう。


No.295

夜にせいちゃんが買って来てくれたお弁当を、家族で食べた


子供達が寝静まり、アタシはせいちゃんに心臓が爆発しそうな…
息のできなくなる体の異変を相談した


『大丈夫だよ!
少し疲れてるんじゃないか?
しばらく様子見てみよう?
そんな、心臓が爆発しそうって…あいは大袈裟だなぁ
心配し過ぎだよ。』


『……うん…
そうかな?そうだよね?
ふぅちゃんだって、あんなに元気だし
アタシの心臓が悪いわけないよねー?!』

うん。
なんか大丈夫な気になった!

せいちゃん、ありがとう!


『あ、あい…
またさー、長期出張入っちゃったんだよね…

こんな時にごめん。
2~3ヶ月だけど、留守にするよ。
途中で1.2日は帰って来れるから…』


………またか…
とても嫌な、出張…

思わず聞いた
『ねぇ、せいちゃん。
浮気とかしたりしてる?』


『えっ!無いよ。
ないない!!俺を信じろ!』

……まきは?

やっぱり嘘つくんだね。

ほんとの事なんか言うわけないけど…


『もし、浮気や不倫したら…許さないから
キャバも風俗も、ほんとに嫌なんだから!

せいちゃんは…なんにも分かってない!!
アタシの気持ちなんか、なんにも分かってない!!』


気持ちがドンドン…ヒートアップする…

怒りが湧いて来る…

コイツは、何も分かってねぇ…


『てめぇはなー、人の気持ちをどんだけ踏みにじれば気が済むんだよ?
あぁ?!

お前、不倫しただろ?

あれから、アタシがどんな気持ちで暮らしてんのか分かってんのか?

キャバに風俗…
ふざけた真似しやがって~!!
てめぇと同じように、アタシだってなぁー…
ストレスも溜まるし、てめぇの不倫のおかげで…
不安で不安で、仕方ねぇ毎日を送ってんだよ!!』


泣けて来た。


殴り倒してやりたい!

悔しい…

まきと寝たんだろ?と叫んでやりたい…


せいちゃんは、何も言わず
背中を撫でてくれていた



その時…
また…心臓が破裂しそうで息ができない
苦しみが襲って来た…


胸を押さえて…はぁはぁと息をする


ああ~死んじゃうよ!!
もう駄目だ…




せいちゃん助けて…


No.296

せいちゃんは黙って背中をさすり続けてくれた


もがくように苦しむアタシ…


大量の汗が出る…
死んじゃう…
怖い…怖い…



だけど、少しするとまたケロリと治る


【なんだ…これ…またなった3度目だ…】

とてつもない恐怖感が襲って来る




みなの事は、一度も口にせず今までやって来た…


ついに、不安な気持ちをぶちまけた


だけど、
せいちゃんは何も言わない


何も言える立場じゃないからだと思うけど
謝ってほしかった…ごめんな。と…
一言でいいから…済んだ事でも謝罪がほしかった



せいちゃんの中では、過去になってるんだな
と感じた



アタシだけが
置き去りにされて行く…




3日後、
せいちゃんは長期出張へ行ってしまった


No.297

せいちゃんが出張に出て1週間…

アタシは、しんちゃんの送迎に車で外へ出る以外は
外出できなくなってしまった…


マンション前へのゴミ捨てですら、怖い…

不安と恐怖で狂ってしまいそうになっていた


買い物にも行けず、家にあるものも、全て食べ尽くしてしまった



【もう限界…子供達すら守れない】


泣きながら、ママ友のサエちゃんに電話した


『あいだけど…あのね、あのね…
アタシ、心臓が爆発しそうに感じるんだ…
もう…怖くて…外に出られないの
買い物にも行けないの…』

話しをしたら泣けて泣けて仕方なかった

自分がどうしてしまったのか…

普通を求めれば求めるほどに遠退く
【普通】……

『アタシ…情けなくて…
でも、どうしても外に出られないの…
せいちゃんも出張で…

うわぁーん…うわぁーん…』
子供のように受話器を握りながら泣いた



『待ってて!!!
すぐに行くから!!待っててよ?』



ピンポーン…

サエちゃんが来てくれた

サエちゃんにしがみついて泣いた。


『あいちゃん、大丈夫だよ…ねっ!!
なんでも抱え込み過ぎだよ!
これから一緒に病院行こう!絶対、離れないから!』



サエちゃんに連れられて、病院へ行った


『ずっと会って無かったから…おかしいな
って思ってたんだよ?
もっと早く頼ってくれたらいいのに…

あいちゃん、帰りに食品の買い出し行こうね!』


『ありがとう…』


アタシは外の恐怖で、体が震える…

サエちゃんにピッタリとくっついて
今にも恐怖で倒れそうな自分を情けなく思った…



こんなにもアタシは弱かったの…?


No.298

検査の結果は、脳も心臓も異常なし。

『パニック障害…じゃないかなぁ…

心療内科に紹介状書いておきます。
診てもらってください』


診察室を出て来た…


サエちゃんが支えてくれる
『体に異常は無かった…
パニック障害かもって言われて、紹介状書いてもらったよ…

アタシ、心が悪いの?』


サエちゃんが笑ってくれる
『じゃあ、明日、心療内科行ってみよう!!

私のお母さんも、鬱病になったことあるんだ~

私が高校の時だったかな~?
今は、ピンピンしてるよ!!
大丈夫!!
心だって病気になるんだよ
私がフォローしてあげるからねっ!』

『ありがとう…』


サエちゃんに連れられて、買い出しに行った
大量に買い物をした。


怖くてレジに並べない…


サエちゃんに、お財布を預けて
広いフロアーで待っていた



なんて…
なんて…
なんて優しい人なんだろう…


サエちゃんが光り輝く天使に見えた


こんな素敵な人に出会えて良かった…


感動のあまりに涙目になってしまった


ほんとに…ありがとう




次の日、
サエちゃんが、自分の子と一緒にしんちゃんを幼稚園まで連れて行ってくれた


『9時過ぎに迎えに来るからね
一緒に病院行こうね!』


『サエちゃん…
ありがとう…ごめんね』



夕べは、
せいちゃんに、病院のこと等をメールしたけど…
なんの連絡も無かった



せいちゃんは、出張に出るといつもメールは3日に1回…
電話は週に1回…


こちらから電話をかけたり、メールをしない限り連絡は来ない


独身気分…なんだろうな…


この時は、
せいちゃんに、心底がっかりした


No.299

時間通りに、サエちゃんが迎えに来てくれた

携帯が鳴り『下に居るよー降りて来て~』


『ありがとう!!
ごめんね…昨日も今日も付き合ってもらって…』


『いいんだよ!
甘えなさい。あいちゃんは、自分からは、人に甘えられないタイプだもんね
お節介くらいがちょうどいいでしょ♪』

……ズバリ。
当たってる


サエちゃんと心療内科へ行った

チェック項目に、自分の状態を丸をしていく用紙を渡されて、提出した


診察室へ呼ばれる

沢山の話しをして、やはりパニック障害だと診断された

少し軽い鬱状態でもあると説明された


【パニック障害】とは…
詳しいことは、まだ判っていない病気であること

発作には色々な個人差はあるが、脳が命が危険な状況にあると判断(勘違い)してパニック発作が起こる
患者は、死ぬんじゃないか…と思うのだが
パニック発作で死亡することはなく、ただ死ぬ恐怖感を味わう


逃げられないような、状況に身を置くことに不安と恐怖を感じる




こんな説明を受けた


なんとも言えない気持ちだった

ショックも大きかった…

それ以上に日常生活が、まともに送れない不安にため息が出た


軽い鬱状態…

はぁー…もう、ほんとにヤダ…


いつ治るかは、分からないから…上手に病気と付き合って行くしかないらしい


先生に、
『強いストレスや悲しみ…幼少期の虐待等が原因の場合が多いです

心当たりは、ありますか?』
と聞かれた……


絶句。


心当たり…だらけです…!!!!


先生に話すか迷った…

だけど、
『いえ…特に…』と答えてしまった


見栄っ張りなアタシ…?



ううん、違う。




言葉にするのも避けたかったんだ…


(後に、打ち解けてから先生には全て話しました)



薬をもらって帰った。



ため息ばかりついてしまう…



まさか…アタシが…


こんなことになるなんて…!!!



No.300

帰り道に診断された病気のことを
サエちゃんに話した


『今は辛いね。でも、きっと抜け出せるから!
なんでも聞くから…話してね!
……マジで言ってんだよ?』


『うん。ほんと、ありがとう!!!
助かったよ~ぉ!!
また、助けてね』


『じゃあ、しんちゃんのお迎えしてあげるから
ゆっくり寝てな!!』

『……なんで?
なんで、アタシが寝てないって分かるの?』

すごくビックリした。

『心の病の人は、大抵眠れないからね…
親がそうだった(笑)
ゆっくり寝なよ~♪』

『ありがとう!!!!』


アタシは、帰って泣いた


サエちゃんの優しさ…が身に染みる

同時に、自分への情けなさや、悔しさ…

これからの不安…


なんでアタシばっかり…こんな目に遭うの?
自分の運のなさに歎く


アタシは、また空に向かって吠える
『どうだよ!?満足かよ?!
めっちゃ苦しんでるよ!!笑ってんのか?
アタシが泣くのが、そんなに面白いかよ!!

アタシにかかって来い!って言ったからかよ!
(しんちゃんの病気の話しの時に、アタシにかかって来いと叫んだ)

受けて立ってやる!!!
何度だって、立ち上がってやるからな!!!
アタシは、負けねぇーんだよっ!』


毎日、地球上の全ての人の幸せを願って拝んでいる空に……


今日は、吠えて噛み付く



矛盾だらけなアタシ…

だけど、矛盾するのが人間だもんね



完ぺきな人等、きっと、いない。


No.301

夕方近くに、サエちゃんがしんちゃんを送って来てくれた


夏休みまで、後2日…
残りの2日は、アタシもサエちゃんと一緒に送迎することにした

(サエちゃんの子は、ふぅちゃんと同い年の女の子と、2つ下のしんちゃんより1つ上の女の子
サエちゃんは、アタシより4つ上のお姉さん)



子供達には楽しみな夏休み…

去年は、弟にお世話になって
夏休みは実家で過ごした


だけど、今年は妹が里帰り出産のために帰っている

アタシ達、親子までお世話にはなれない…


悩んでいた


サエちゃんは、夏休みに入ると同時に実家へ帰る予定だと言ってたし…



出来る限り、頑張るしかない!!





2日経ち…

不安でいっぱいの中…
夏休みに入った


No.302

夏休みに入り、1日目にやっと、せいちゃんから電話があった

出張に出てから初めての電話…


アタシが何度かけても留守電になっていた

メールだって何十回も送ったのに、音沙汰無し


やっと…電話があった

『あい、体の具合悪いのか?
パニック障害って、なんだか厄介だなぁ~
俺には、どうもしてあげられねーし

なんとか、うまくやって行けよ~!!』


はぁ?
頭に来た!

全然心配してねぇじゃん!!

アタシが今、どんな状況か分かろうともしてくれない…

『はぁ?……………
もういい。

こっちは、なんとかするし…


せいちゃんなんか…
せいちゃんなんか…
……………』
悔しくて泣けて来た

『…てめぇなんかに頼ったりしねぇーからよぉ!!

もう、面倒ならわざわざ電話かけてくんな!!』
プッ!!!!


電話を切った…


最低…

アタシもせいちゃんも…


こんなもんなのか?
夫婦って…


違うだろ?


アタシは求め過ぎなのか?



わかんねぇー……



ねぇ、アタシ…
どうすりゃいいの?


もう…
疲れた…


せいちゃん…優しかったせいちゃんは、どこに行ったの?


アタシは…せいちゃんにとって、どんな存在?




寂しいよ…
大切にされたいよ…

昔みたいに、ゆっくりと長電話がしたいよ…



アタシという存在を求めてよ!!


No.303

買い物は、生協の個人配達を頼んだ

これで、買い物には困らない…


8月には、車の車検があった

ディーラーサンとは、仲良くしていたから、
家まで車を取りに来てもらって、車検を済ませた



実家に電話をする…
パニック障害の事は、話していなかった

『あい…ごめんね
今回のお盆は、妹の出産と重なりそうだから…』

『分かってるよ。
帰るつもりは無いから…

あのね…
やっぱりいいや!!
じゃあね♪♪妹に元気な赤ちゃん産んでもらってね~』

やっぱり…このタイミングでは言えないな…


せいちゃんの実家に電話をする
『お義母さん、久しぶりです!
はい。みんな元気です…

せいちゃんからは、なんの連絡もないので、お盆休みの話しも聞けてないんです…

はい。また、聞いて連絡します


いや…あの…アタシ一人では帰れません…

実は…パニック障害って言う心の病気になっちゃって…
外に出られないんです…』

『パニック?
あいちゃん、何をパニックになってるの?
そういう時は、落ち着いて…冷静に………』


ああ、話しても無駄だ。
伝わらない…


『はい。はい…
すみません…
では、また…連絡します』



アタシは、ずっと引きこもっていた


ただ、ただ、
全てが不安で恐怖で…


子供達が寝た後…
毎晩、泣き暮らしていた



せいちゃんからの連絡はメール一つ無かった


アタシだけが、『おはよう、今日も頑張ってね』
『お疲れ様~どうしてる?』
『また、時間あったらメールでもしてね』
毎日、毎日一人で送り続けていた


自分の文句や泣き言は、一つも吐かなかった



ひたすら、せいちゃんの元気が出るようなメールを意識して、送信していた



不安で押し潰されそうになりながら…


No.304

ずっと引きこもり生活を続けていた

子供達にも、どこへも連れて行ってあげられない…


それどころか…
もう笑う事すらできなくなっていた


家事だけは、ロボットのように動いていた


お盆が近づき、地元仲間からメールが届く…

タニからも…


アタシはユマに電話した…
『あい~♪
久しぶり!!元気だった~?』
『ユマ…アタシさぁ……あのね…
もう駄目…みたい…なんだ…』
もう次の言葉も出て来ない…

泣いて
泣いて
泣いて…ひたすら泣いた…

『……よ?
どうしちゃったんだよ?
あい~!!!』

『アタシ…外に出られないの…
もう駄目なんだ……
どうしても怖いんだよ…


助けてユマ…
助けて…

もう死にたい…………』

また泣いた…


ほんとの気持ちを口に出すと…
ガタガタと崩れてしまって、もう戻れない気がして…

ずっとずっと耐えてた思い…


【助けて…もう死にたい】



『あい!!!落ち着いて!!
あんたは、なんでいつも限界超えるまで…何も言わないんだよ!

アタシ達は何?!
アタシ、マジで腹立つわー!!


何、一人で苦しんでるの?
言えよ!!あい!!!!』


ユマは、優しい…
こんなにも思ってくれる


助けてと言えたなら…
もっと早く言えたなら…


だけど、
アタシは…言えない性分…



この時、完全に鬱病になってしまっていた…


そして、後に、
アタシはアダルトチルドレンだと診断された



No.305

『あのね……
アタシさ…パニック障害って病気になっちゃって…

軽い鬱状態らしいんだ…


もう、全てが怖くて…外に出られないんだ…


ゴミ捨てに行くのが、精一杯なんだけど…

それすら……もう出来なくて…

ベランダに2週間分置いたまま……


死にたい。
死にたいって常に思っちゃうんだよ…

死んだりしねぇけど…


せいちゃんからの連絡も…
もう1ヶ月近くないんだよね…

アタシが死んで、子供達が死んじゃっても
せいちゃんは、何も知らずにいてるんだろなー

とか…考えるんだ…』
泣きながら、ゆっくりゆっくり
ユマに話した


ユマは、黙って聞いてくれた


『あい~、アタシねパニック障害のこと…
よく分からないから…
ネットで調べてみるね!!

お医者さんちゃんと行ってる?』

『…行けないんだよ…』

『そっかぁ、お母さんに付いて行ってもらいなよ!!』

『……病気のこと…話してないんだ…
妹の出産もあるし…
面倒かけたくないから…』

『何でだよ?
あいだって苦しんでるじゃんか?
妹の出産も大切だろうけど、まだ生まれてないんだろう?
話しなよ……

あんまり気ばっかり使うなよ…
あいの親じゃん…』




『うん…………』


No.306

『ほんとは、アタシが飛んで行って…
泊まり込みで面倒見てやりたいんだけど…

…ごめんな…』

『いいよ、いいよ…
ユマは、赤ちゃん生まれて大変だしさ

嫁ぎ先の店番しなきゃいけないんだから!!

ごめんね……
心配させて…
でも、心配してくれる人がいるって…


嬉しいね……
ありがとう……』
アタシが泣いてる声に合わせるように、ユマの泣き声が聞こえて来た…


ありがとう……


こんなに大人と話したの久しぶりだ…


ユマにお盆は無理…みんなによろしく!
と伝えて電話を切った




心配されるって…こんなにも…
ありがたい事なんだ…


ユマを思って感謝でいっぱいになり
わんわん泣いた



親に言うしか…ないよね?


アタシの親だもんね…


助けてくれるかなぁ…?

自信ない…
お母さんに冷たく突き放されそうで…怖い


突き放されたら…
アタシ…ほんとに死んじゃいそうだ…


ほんとに、もうヤバいんだ…



いつから…ご飯食べてないのかも分からない


コーヒーとビールとタバコだけで…もう何日間も経つなぁ…




ほんとに死んじゃう前に実家…
電話してみよう…





アタシの中では、
母親は…昔の幼い頃の母親のイメージが強過ぎて



今を生きる性格も丸くなった母親を、ちゃんと見る事が出来ていなかった

No.307

実家に助けを求めるのは…
やっぱりアタシにとって
すごい勇気のいる事だった…



声が出なくなったアタシに…
馬乗りになり
首を絞めたお母さん…


お母さんに、今のこんな状態のアタシを…受け入れてもらえるだろうか…


また…………
お互いに、
辛い思いをしそうで怖い




アタシは、
せいちゃんに電話をした

今日は日曜日…
お願い…繋がって!!!


ツツツ…
嫌な予感。
普通なら呼び出し音はプルプルだ
『…こちらは、留守番サービス…

(やっぱり繋がらない、どうして?)

ピー……
せ…いちゃ…ん…アタシ…アタシ…
うっ…うっ…うわぁーん
うわぁーん…うわぁーん…』
留守電のタイムリミット。

結局、泣き声しか入れられ無かった…


ずっと、ずっと泣き続けていた


ふぅちゃんとしんちゃんが『お母さん大丈夫?どうしたの?』
顔を覗き込む……

2人を抱きしめながら
『感動したり、嬉しくても涙が出るんだよ…』
そう言うしか無かった




もう駄目だ…


もう…ほんとに…自分を保てない




実家に電話をかけた


No.308

実家へ電話をする…こんなに緊張するものか?

体が震える…
拒否される恐怖…


『もしもし』
……電話を取ったのは父だった

『お父さん…?
お父さん…お…父さん…アタシ…

アタシね……うっ…うっ…』

『あい!どうしたんだ?
あい!!!何があった?』

『…もう…もう…
駄目なんだよーーー!!!!!!!


アタシ…もう…何も出来なくて…

助けて
助けてよ…
お父さん…!!!!!!


もう、死んじゃいたい…』


『……何言ってるんだ!
何があったんだ?


…………さっぱり分からん

ゆっくり話してみろ…』


アタシは自分の状態を、泣きながら話した


『なんで…なんでもっと早く言わないんだ!



今から、行くから
荷物、まとめとけ!!!!』

『待って!!!……でも
……お…お母さんが…』

『あい、てめぇは馬鹿か!!!

こんな時に、お母さんが何言うって?

放っておけって言うわけねぇだろう!!!

親をなんだと思ってんだ!!!

荷物まとめとけぃ!!!!!!』
ガチャン!!!!


お父さんが………来てくれる


涙が止まらない…

アタシの救世主…
母の反応が怖いけど…父を信じよう



アタシは、
荷物をまとめて父を待った


子供達ははしゃぎまくって喜んでいた



せいちゃんに
『病状が悪いので、実家へ帰ります。
メールくらい下さい!

もう1ヶ月も連絡無しですが…もしかして死んでるの?』

嫌みを込めてメールを……送信



毎日、毎日…
アタシばっかりメールを送り続けて…
馬鹿みたい。



また、泣けて来た……





早く来て…!!!
お父さん………!!!!!


No.309

父を待ってる間に、せいちゃんからメールが届いた

『ごめん。
パチンコ中でした😥💦

そんなに具合悪いのか?

これからは、毎日メール送ります🙇💦

許してねー❤❤❤❤』



画面を見て………コイツ…

一瞬、頭に血がのぼる
腹立たしいメール…

ふざけてるとしか思えない…


はぁーー。
もう怒る元気もないけどさ…



あぁー死んじゃいたい。



タバコ吸って待ってよう…

ベランダでため息と煙りを吐き出す


空の青さが…
眩しくて…涙が出る…


『てめぇに…負けそうだよ…
面白いかよ?』
空に向かって話す…



アタシにとって空は
神様だったり、
悪魔だったり、
ロッキーだったり、
地球上のみんなだったり



その時々で、コロコロ変わる


とりあえず
愚痴も感謝もなんでも、空と話す



No.310

ピンポーン


父が来た…玄関を開けると同時に抱き着いた

『お父さーん…!!!!!』
大きな声で叫び、ひたすら抱き着いて泣いた


『……………!!!!!!』
父が何か言ってたが、聞こえなかった



『こんなに痩せて………』
父が強く抱きしめ返してくれた




父も泣いていた。


ベランダのゴミを、ゴミ捨て場まで運んでくれた


荷物を持って、父にしがみつくように外へ出た…


子供達のはしゃぐ声…


車に乗って、実家まで海岸沿いを走って帰った


海をずっと見ていた…


【あの日】が蘇る…
あの青い空…波の力強さ…
ユラユラとした感触…
海の匂い…

リーゼントのお兄さん…

砂まみれで
貞子のように這う母の姿…


あの日…死んでいたら…


子供達には会えなかった…


でも
その先の苦しみもなかったんだろうな…


無言のアタシに父が話しかけるが…
答える気力もなく…

黙っていた



家が近づく………


母が怖い………


No.311

家に着く前に、酒屋さんに寄ってもらって
ビールとタバコを大量に買い込んだ

これがないと不安で仕方ない…

アタシには、薬みたいなものだった

父は、笑いながら呆れていた…
(本心はどう思ってたのかな?)



家に着く

家まで子供達が走って行く

玄関を開けて『おばあちーゃん♪♪』


ああ…憂鬱…
あんなに大声で入って行ったら…母にウザいと思われてしまうよ…


アタシは、父にへばり付くように家の中に入った


走り回るアタシの子供達…


きっと、
招かざる客に違いない…


『ただいまー』父の声に
母が玄関に顔を出す


アタシは、靴を脱ぐ前に玄関口で土下座した

『……お母さん…ごめんなさい

…アタシ…帰らないと言っていたのに…

迷惑ばかりで…
ごめんなさい……ごめ…んな…さい…』
涙と鼻水が垂れる


『あい!
顔を上げて……

……仕方ないでしょう?


……そんなに痩せて…
食べてないんでしょう?』

母の表情が
怖くて顔が上げられない



きっと…
困った顔をしてるんだろうな…



No.312

ゆっくりと顔をあげた…




母は、泣いていた……
『あい………
あんたは…!!!

こんなに…こんなに痩せて…
皮だけじゃないの………



どうして言わないのよ………』
母がアタシを包み込むように抱きしめた



『だって……海へ……
声が…出なくなった時……
お母さん……アタシを……

死んで欲しいって……願ったんでしょう……



アタシ………
………


アタシ…………生きてしまった


怖かったの……


………お母さんは……


元気な人しか…
もの分かりのいい人しか…


受け入れてくれない…つて………





言えるわけねぇーじゃん!!!!!
いつも、いつも、いつも
いつも…
アタシを邪険にして…

アタシは妊娠中だって、まともに生活できない!

入院で散々迷惑かけて、産めば産んだで……

心配かけてさー……

おかしな奴には付きまとわれて…


今度は、アタシが…おかしくなっちゃいました?

言えるわけねぇーじゃんか!!!!

アタシなんか…
死んだらいいんだ!!!!!!


お母さんは、アタシなんか死んだら良かったって思ってんだろう!

殺そうとしたじゃねぇーかよっ!!!!!


殺せば良かったんだよ!!!!』


ああ~っ……うっうっ…ああーあぁー!!!!!


頭を掻きむしり、泣き崩れた…



No.313

『あい………!!!』
うっ……ううっ…ううっ……

今度は、母が顔を床に付けて泣き崩れた

『覚えていたのね……
あんな小さな……子供だった…のに…

あいは…覚えて…いたのね…

ごめんなさい…私……

一度も口にしなかったから……
覚えてないんだと…都合よく…とらえてました


あい……ごめん…なさい……
酷い母でした……
ごめんなさい……

覚えてたのに…一度も…
何故なの……
何故……一度も責め無かったの?

お母さんを……責め無かったの?』



母が涙でグチャグチャの顔をしてアタシを見た






『……好きだから…だよ…』



母は、手が付けられないくらい
声を張り上げて泣いた…



No.314

母の泣き声を聞いて、胸が締め付けられた…


『お母さん!!ごめんね…
もう謝らないで…!!
…もういいんだよ

帰りに…海を見て来たから…
感情的になっちゃった…

ごめんなさい…………アタシ
アタシが…悪かったね…

もう言わない…
憎んでないから…

お母さんに拒まれるのが怖かったんだ…

泣かないで……お母さん……』

お父さんは、なんの事だか分からず

『お母さんが、あいを殺すって……
何、言ってるんだ!
しっかりしろ!母さん!!』



母は顔を上げて父を見た

『…私は…あいを殺そうとしたのよ!!

何も考えられなかった…
自分の事以外…
私は、私の事しか…考えられなかったのよ…


あいを…ほんとに
殺そうとしたのよ!!!!

あんな小さな…あいを…


どうしたらいいの……………』

父は、言葉を失い立ち尽くしていた



アタシは母を抱きしめた

『大好きだから…どんなお母さんでも
アタシは…大好きだから…

お母さんは悪くないよ…
ほんとだよ

言うつもりも無かった…
ごめんね…

…泣かないで…好きだから…
もう泣かないで…自分を責めないで…
どうもしなくていいよ…
アタシを受け入れてください…』



母はアタシに、すがり付き泣いた…



母の温もり…
母の愛…





初めて通じ合った気がした



No.315

この日、妹は友達の家に遊びに行っていて
夜遅くに帰って来て

アタシが居ることにビックリしていた


父も、過去の真実を知り戸惑いながらも
アタシや母に普通に接してくれた


母は、しばらく塞いでいたが…仕方ない事だ…
それ以上は、母の問題だから…



アタシも、実家に帰ったからと急に元気になるはずも無く

夕方からビールを飲んで過ごした


夜に、父、母、アタシ、子供達でご飯を食べたが
アタシは三口ほどしか喉を通らない


父が『明日、お父さん会社休むから、一緒に病院行こうな』と言ってくれた

『ありがとう…』

本来、お喋りなアタシが何も喋らずビールばかり飲んでいる…

酔っていないと夜は怖くて過ごせなかった


子供達だけが、賑やかに騒いでいた

笑い声に救われる…



せいちゃんからはメールで
『留守電聞いたよ😱💦
何なんだー💦💦
あの泣き声だけのメッセージ…

とってもホラーでした😱(笑)』

……………ため息しか出ない



せいちゃんは…心配じゃないの?


せいちゃんにとって…アタシは何?



夜になると
せいちゃんの事で頭がいっぱいになる



胸が苦しい……




せいちゃん…………


No.316

次の日、父に連れられ実家近くの病院へ行った

ガッチリと父の腕にしがみつき…
発狂しそうな恐怖と闘いながら待合室で待った
(人が集まる密室は、とっても怖く感じるのです)


診察室に呼ばれた
父が一緒に中まで入ると言って、一緒に入った

先生に、今までのことを話す

『パニックも、もちろんですが…ちょっと鬱の症状が酷くなっていると思います

ご実家に帰られて良かったですね

ご主人はどんな様子ですか?協力してもらってますか?』

『いえ……
主人は、出張中で話しもまともに出来ていません…

10月までは帰って来ないと思います…』

父がこちらを見た


『そうですか…
お子さんの新学期を考えると…
一人で自宅へ帰る予定ですよね…

う~ん……
一人では…厳しいなぁ…
ご家族で考えてみてください

今の状態で、あなた一人でお子さん2人との生活は困難だと思います


薬を出しますので、忘れずに飲んでください

頓服薬も、気分の優れない時は早めに飲んくださいね』

『ありがとうございました』


病院を後にして
父が海へ行こうか?と話しかけてくれたが…

海の広さも…また怖い
『無理…ごめん…』
車は実家へ向かって帰った…




車を降りる前に父が話しをした


No.317

父がアタシを見て話す

『夕べ、お母さんから…全部聞いたよ


あいは、オバアとオジイ…兄貴や叔母さんのことで辛い思いをしながら
精一杯生きて来たのにな……』

『お母さんに話したの?!!!!』

『いや…話してないよ…
(良かった~…)

それで…お母さんにあんなことをされて…
ごめんな………
お父さん…ほんと何にも知らずに…
なんで言わなかったんだ?


………好きだから…か?』

うん…と頷く


『あいは…強い愛情を持っているんだな…

人が人に話したくない事は…大抵…自分を守りたい
己が可愛いからだったりするんだけどな

あいは…違うんだな
周りを守りたいから口を閉ざすんだな…』

父の言葉にビックリした…
アタシも、もう十分大人だったけどビックリした…


『みんな…みんなそうなんじゃないの?!

誰かを守りたいから…嘘つくんじゃないの?

違うの……?』



『……きっと違う…
自分のために嘘をつくんだよ…』


ショックだった……



頭の中に
せいちゃんが浮かんだ…



アタシとの生活を守りたいから…
裏切ってながらも…
嘘をつくんだと思っていた…



『あいは、優しいな…

自分の事も大切にしなさい

あいの愛情に、みんなが救われているんだよ?

だけど…
自分の事も守りなさい』


お父さんは、そう言うと車を降りた


アタシも家に入った





頭の中は
せいちゃんだらけだった…


No.318

換気扇の下で、ぼんやりタバコを吸う


せいちゃんに📱するが繋がらない…


ため息と一緒に吐き出す煙りを見ていたら
泣けてきた……

せいちゃんの中で、アタシの存在は…
きっとこんな風に…換気扇に吸い込まれて消えちゃうんだろうな…

頭にもないんだろうな…



お父さんがアタシを呼ぶ
お母さんも一緒だ…

涙を拭いて、テーブルに座った

『何?……』


『せい君、あいの状態を知らないのか?』

『……あぁ…うん。
電話繋がらなくて…
詳しく話せてないんだ……
いちおメールはしてるから
実家に居るのは知ってるよ…』


『なんで電話がないの?
夜にゆっくり話し出来るでしょう?』
母が言う…


『分からないよ……
アタシだって、何度も連絡してるけど…』


『喧嘩したの?』

ううん……首を振る…

どう言われても…返す言葉がない…
つい下を向いてしまう…



父が『会社の電話番号は!』大声で言った



父がキレた…………


会社の内線へ直接電話をかける
『〇〇〇部署の〇〇せいに伝言お願いします』

『私、〇〇せいの妻の父親です、至急連絡頂きたい!!!

おたく様は、どちら様ですか?
〇〇せいの上司に代わって頂けますか?



はじめまして、〇〇せいの妻の父親、〇〇〇〇と申します
いつもお世話になっております……

実は、娘の病状が悪く、せい君を出張先から戻して欲しいのです

無理を承知でお願いします…


はい。はい。
では、
よろしくお願いします』
(こんな感じだったと思います)


父は、銀行のちょっと偉いさん


うまく話しが出来たようで、感謝した




すぐに、せいちゃんから実家の電話が鳴った



父が受話器を取る……


父は怒っていた…


アタシは固唾を呑んで見守っていた…


『もしもし、……せい君かい?』




あぁ…怖い………


No.319

父は想像していた以上に冷静に、話しをしていた


お盆休みに、せいちゃんが帰って来ることになった


父のおかげで、お盆以降の出張は違う人と交代してもらえた

しばらくは、出張も無しと上司が配慮してくれたようだった


(後で、まき自身から聞いたのだが、この電話を取ったのはまきだった
まきは、せいちゃんの妻の父親と聞き
自分への電話だと思い、大変焦ったと言っていた)


夜は、子供達はおじいちゃん、おばあちゃんと寝ると言って

アタシは久しぶりに、元自分の部屋のベッドで妹と一緒に寝た


久しぶりで嬉しくて、二人でいつまでも話していた


『ごめんな…こんなタイミングで悪くなっちゃって……』
泣くアタシを妹は、笑いながら

『お姉ちゃんは、悪くないよ!!』

何度も何度も聞いた台詞……

『ありがとうね…
アタシ、どうしちゃったんだろうなぁ…』

『お姉ちゃんは悪くない!!
今は、心が疲れて病気になってるだけ…
お姉ちゃんは、お姉ちゃんのままだよ!
何も変わらないよ?
変わった部分は、病気の症状なだけだよ』

『ありがとう……早く元気にならないとね!!』

『うん。人より何倍も頑張り過ぎなんだって!
ゆっくり休んでもいいじゃん
人生長いんだから…ねっ♪』


すごく救われた……


人生長いんだもんね…



少し休憩かな?


大きなお腹の妹に寄り添うようにして
安心して寝ることが出来た



この子が幸せでありますように……
昔からの癖…



久しぶりの願いだった


No.320

それからは、せいちゃんはマメにメールで体調を気遣かってくれた

夜には10分ほどだけど、毎晩電話をくれた


『今年のお盆は、俺の実家には帰らなくていいからな
ちゃんと親には言っておくから安心してな』

『ありがとう…よろしく伝えといてね』



ユマにもメールした
『ユマのおかげで、今、実家にいます
ありがとう!ユマが言ってくれなきゃ…
きっと、まだ自宅で独りで泣いてたよ
ほんとにありがとう!
みんなによろしくね♪』


タニにもメールした
『ユマに聞いたかな?
アタシ、今回は残念だけどパスするね

みんなによろしく~♪』



薬のおかげか、鬱の状態は大分良くなっていた


パニックの恐怖と不安は相変わらずだったけど…

発作も少なくなっていた



お盆まで、もう1週間も無かった


ご飯は、すごく少なかったが無理矢理食べた


夜には、ビールをたらふく飲んで酔っ払って不安を解消していた

そうしないと、泣けて来て…
死にたいと思ってしまうのだ……




とにかくアタシは、
早くせいちゃんに会いたかった…



No.321

お盆が来た

待ちに待った、せいちゃんが帰って来た!!!


家族の目も気にせずに、せいちゃんに抱き着いた
『せいちゃん…会いたかったよ~
寂しかったよ……

お願いどこにも行かないで!!!』
抱き着いてわんわん泣いた

『ごめんな……
あい…超痩せたな……
辛かったんだな…ごめんな…


お父さん、お母さん…申し訳ありませんでした』
せいちゃんが頭を下げる


家の中でも、アタシはずっとせいちゃんにくっついていた
安心できる場所…せいちゃんの顔ばかり見ていた


妹に、新婚ほやほやみたい(笑)

と、冷やかされた

ふぅちゃんもしんちゃんも、お父さんにベッタリ…

やっぱり4人は家族なんだ…

せいちゃん…ずっとアタシだけを見ててね


せいちゃんの手をギュッと握る


お母さんはバタバタと食事の用意をしていた


『妹のダンナがやって来る前に話しがある』
と父が真剣な顔をして、せいちゃんを見た

子供達を妹に見てもらうように、頼んでアタシとせいちゃん…お父さんで向き合った


『せい君、仕事場まで電話して済まなかったな…

あいが放って置けなかった…』

『はい…申し訳ありません』

『仕事も大切だと言う事は、私も男だ。
よく分かるよ。だけどね…病気だと知りながら連絡もない…
妻である、あいの病状にも無関心だと…私には思えた

それで夫婦と呼べるのか?

私には…何があっても守ってやりたい、可愛い娘なんだ

どうか、大切にしてやって欲しい…

この通りだ…あいを幸せにしてやってください』
父が頭を下げた


涙で父が霞む……

お父さん…アタシ…せいちゃんに裏切られとくんだよ!!!

せいちゃんは…不倫してたんだよ!!!


お父さん………あなたの娘に戻りたい



だけど…
好きなんだ…
こんな…せいちゃんだけど…


せいちゃんは
『お父さん…頭を上げてください!!!
僕が悪いんです……

あいに甘えてました…
お父さんとお母さんに、あいを幸せにする事を誓い…
あいを頂いたのに…
申し訳ありませんでした

今以上に大切に愛する事を僕は、誓います
どうか、許してください…』
せいちゃんも頭を下げた


複雑な気持ちだった…


忘れられるわけがない。



だけど…
信じてみよう。せいちゃんを…


『あいを頼みましたよ』

『はい。ありがとうございます』


信じて…
素直に喜んでいよう…

No.322

それから、すぐに妹のダンナも来て
一気に賑やかになった


子供達は、興奮状態で大声を出して走り回る


アタシもビールをガバガバと飲んで、気分は良かった

久しぶりに笑った気がした



アタシの身長は、160cmちょっと、この時の体重は33kg…

骨と皮だった

鏡を見るのも嫌だった

あんなに大好きで趣味、生きがいとも言えるメイクもできない
すっぴん生活…
服も、どうでも良かった

ドンキで買った、ハイビスカスの上下。タンクトップにハーフパンツ

髪も伸び放題で、適当にオダンゴヘアー


アタシの耳には左右に、それぞれ8個ピアスがある
合わせて16個!!!
(ちなみに、へそpも上下に2個)

見る人は驚くが…耳の障害のコンプレックスを隠すためなのです
補聴器は、キラキラのストーンでデコり
耳周りはごちゃごちゃしてる

会う人、話す人は、大概『耳、すごい!』と言う

『うん♪アタシ、耳に障害あって補聴器だから、聞こえなくても許してね♪』と軽く言える

相手も『そうなんだー』と重苦しい雰囲気にならない


こんなアタシのすっぴんは…危ない人な感じで、ちょっと怖い(笑)

おまけに顔は濃いし…(泣)


もう、外見なんてどうでも良かった


ただ、ビールがうまく
タバコもうまい(妹のために換気扇の下ですが)


こんなアタシに、妹のダンナは怯えながら
『姉さん、食べてくださいよ~
ヤバいですよ~ビールばっかし飲んで…
危ない人に見えますよー!!』
と、何回も言っていた

『ほんとに、食べなさい!ほら、あい!!
あ~んして♪』
せいちゃんが肉を口に入れてくれる

楽しかった、嬉しかった


入院中は、ミジメで泣いた
ツバメの子の食事…

この時は、ほんとに嬉しいツバメの子の食事だった



みんなに、沢山ありがとうって笑った


No.323

せいちゃんは、アタシの実家に一泊して
次の日は、子供達を連れて自分の実家へ行った


その日は、ほんとだったら夜から、地元の仲間とプチ同窓会の日…


楽しみにしてたんだけどなー…
気分は凹んでいた


昼過ぎにタニから携帯に電話があった

ビックリして電話を取った
『もしもし?』

『あい?……大丈夫か?
ユマに聞いたよ、出て来れる状態じゃないって…
今、実家なんだろ?』

『……うん。実家だよ
アタシも楽しみにしてたんだけどさ…
ごめんね。
アタシも少しはマシになったし、安心してね』

『髪でも触ってやるよ、手入れ出来てねぇんだろ?
今、行っても大丈夫か?』

『ええーっ?
マジで?………今は大丈夫だけど…
タニはプロなんだし…そんなのいいよ…

気持ちだけもらっとく。
ありがとう』

『いや…マジで、何かしてやりたいんだよ!

追い詰められてる時は、懐かしい顔見たくなるだろ?』

『追い詰められてるって(笑)
うん…そうだね
じゃあ、お願いします』

『はーい。素直でよろしい♪
待ってろよ。
あ、ダンナに誤解されねぇように、説明しとけよ!』

『大丈夫だよ(笑)ありがとう』




30分ほど待ってると、タニがやって来た


No.324

ピンポーン
『こんにちはー♪』

母も顔を出す
『久しぶりねぇ、ありがとうね。
あいを心配してくれて…

良かったわね、あい!!』


タニは、沢山の道具?を持って来てくれた


実家の洗面所に椅子を出して、長い髪を形よくカットしてくれる

『長さは変えないでねー♪』
『はいよ♪♪』

カラーもしてもらった。

ペタペタと器用にハケで頭に液体を塗ってくれる


『タニ~、こんな所に来て大丈夫なの?
彼女が怒るよー?』

『あー……
その話し、禁句!!!』

『なんで?内緒にして来てるんだったら…
悪いじゃん…駄目だよ…』

せいちゃんを思い出して、彼女の気持ちを考える…

『浮気……されてたんだよ…二股…』
タニは、低い声で言った


『…え?嘘……タニ…ほんとなの?
なんで?………』

『知らねぇ。
職場の上司と出来てたんだと。
信号待ちしてたら、横の車に二人仲良く乗っててさー

俺の車だって分かったから手で顔、覆って隠しやがった…』

『じゃあ……顔分からないじゃん…』

『俺が買ってやった服着てた…』

『マジ?………最低…』


タニも…あの衝撃的な…胸のえぐられる痛みを知ってるんだ…


涙が出て来た……


『あい?
………ああ…ごめんな!!

楽しい話ししよう!!
あい!!
気にすんなよ…!!泣くなって(笑)』



時間が来て、涙と一緒にシャワーで頭を洗った





なんで、裏切ったりできるの?


No.325

アタシがドライヤーで髪を乾かしてると、妹が顔を出した

『タニちゃん♪おひさ~♪♪アタシもカットして!!』

『〇〇ちゃん、もうすぐお母さんだねー♪
おめでとう!!!』

タニは、妹の髪もカットしてくれた


調子に乗って、母も…(笑)


そして、なんと父までも…(笑)
『タニ君、いいかな~?』

『もちろんですよー♪』


我が家のみんなをカットしてくれた
(弟は、この時大学のサークル仲間とバイクでツーリングの旅に出ておりました)


家族みんな、タニは男だけど特別な存在だった


(声の出ない時、毎日来て支えてくれたのを知っているので、家族のような扱いでした
幼い頃は、父に連れられて一緒にスケートや、ボーリング等にも行ってた仲です)


母がお茶を出して、タニも混じり
懐かしい話しをする


タニは、お母さんが再婚したから谷川では無くなっていたけど

タニ君、タニちゃんと呼んで
楽しい時間を過ごした

(妹のダンナは…どこに居たのかな?覚えてません)


夕方前にタニは帰って行った


『あい!!
……困ったら、ちゃんと連絡して来いよ?

後、きちんと化粧しなさい(笑)!』

『アハハ♪やっぱりヤバい?分かったよ!!

じゃあ………
今日は、来てくれてありがとう…

ほんとに嬉しかったよ…』


『追い詰められると、懐かしい顔が見たくなるだろ?(笑)


…って、それ俺のこと(笑)

あいの顔が見たくなったんだ♪
元気になったよ。ありがとうな

じゃあ、みんなにあいの事、話しとくから
…すっぴんで怖かったって(笑)』

『なんだよそれ~!!』


頭をポンポンと軽く手をやってくれて

タニは帰った



心が温かくなって…嬉しかった


ありがとう…


No.326

夜に、せいちゃんから電話があった
『今夜は、こっちに泊まるからなー!
後、母ちゃんが話したがってるし代わるわ』

『もしもし、あいちゃん?
どういう事なの?!!
具合が悪いって聞いてないわよ?
実家に帰ってるなんて知らなかったわ?!』

後ろでせいちゃんが、止めろよ!と言っている…

『すみません…お義母さんにも病気の事は、話しましたよね…?』

『パニックになる事でしょう?
そんなのが病気だなんて!!落ち着いて行動すればいいだけでしょう!!

何を甘えた事、言ってるのよ?

実家のご両親は、納得しているの?
パニックになるから家事もできない、育児もできない…

どれだけ甘やかされて生きて来たの?
呆れるわ。』

お義母さんは酔っ払っているようだった


アタシは、言葉を飲み込むのに必死だった


【アタシが甘やかされて生きて来ただと…?

てめぇの息子はどうだよ?
あぁ?!
ナメた真似しやがって…裏切っといてのうのうと生きてやがる
甘えた野郎は、てめぇの息子だろうが!!!!】


怒鳴り散らしてやりたかった

悔しくて…悔しくて…



『気分が悪いので失礼します』プッ!!

電話を切って、せいちゃんにメールを送った


『どういう事?
意味が分からねぇ!

お義母さんや、そっちの家族に
ちゃんと説明してくれるかな?

理解してもらいたいんだけど、無理なの?

すごくショックだったよ!』



あんなヒステリックなお義母さん…初めて見た…





もう、嫌だ。


No.327

結局、せいちゃんのお義母さんには理解してもらえ無かった

せいちゃんのお姉さん二人が、理解してくれて
『あいちゃん、ごめんね
母には分からないみたい…
でも、私達は分かるから、安心してね
母には時間をかけて、必ず分かってもらうから

無理せずに、いつでも困ったら連絡くださいね』
とメールをもらった

せいちゃんのお姉さん二人は、まだ独身で家にいた


とりあえず、良かった

ありがとうのメールを、すぐに返信した



アタシの体調も、随分良くなっていた

不安感や恐怖感は、なかなかすぐに拭えるものではないけど
新学期が始まる前に、自宅に戻る予定が決まった



そして、
8月最後の日曜日…

一緒に寝てた妹が夜中に、『お姉ちゃん…お腹痛い…』
とアタシを起こし、バタバタと慌ただしく両親を起こして
朝から母に連れられて、妹は病院へ行った

アタシは、妹のダンナに電話で『お産、始まったよ!行ってあげて!頑張って支えてあげてね!』
と伝えた



この日の夕方に、男の子が生まれた

妹はお母さんになった


夜に、父に連れてもらい
子供達と一緒に赤ちゃんを見に行った


とっても、とっても可愛い小さな赤ちゃんがスヤスヤと眠っていた

スヤスヤと眠る赤ちゃん室の新生児ちゃんの中で
妹の子だけ、髪が金髪だった
顔立ちはダンナにそっくり(笑)


見てるだけで、胸が熱くなる…

赤ちゃんって不思議…
命って不思議だな…


こんにちは、おばちゃんだよー♪♪


心の中で、話しかけた

No.328

妹の出産で、少し慌ただしくなったので
すぐにアタシ達は、せいちゃんに迎えに来てもらい

自宅へと帰った


心を改めて再出発をした


新学期も始まり、サエちゃんに助けてもらったりしながら
なんとか、生活をしていた


病院にも一人で行けるようになり

アタシは、少しずつだけど元気になって行った


毎晩、せいちゃんが帰って来てくれる…


せいちゃんは、心の大きな大きな支えになっていた



お盆と正月には、プチ同窓会も参加して
時には、メンバーも増えたり欠席したりしながらも
アタシ達は、ずっと仲良くやっていた



日々の生活にも
幸せを感じられるようになって行った



No.329

毎日が感謝の生活で、全てが有り難く感じられ

パニック障害とも、うまく付き合えるようになり


ありがとう日記にも、本心から
感謝できる、幸せな事を書き綴っていた


せいちゃんの優しさに、信頼を寄せて…
もう不倫の事も許せる気持ちになって行った

忘れる事は、どうしても無理だけど…


優しく接してくれる、せいちゃんを深く深く愛していた

もう後戻りなど出来ないくらいに愛していた

『せいちゃん、毎日ありがとう
せいちゃんのおかげで、アタシとっても幸せだよ』

『せいちゃん、大好き!
こんな幸せな気持ちをありがとうね
アタシ、この家族が大好きだよ!
ほんとに、幸せ…』

せいちゃんに伝えたくて
せいちゃんの存在が、とっても大切だと伝えたくて
毎日、毎日、夜寝る前に感謝の言葉を伝えて
せいちゃんに寄り添って眠った



ふぅちゃんが小3になった、夏休み…


ユマから電話があった

『もしもし、どうした~?』

『ユマだけど…ちょっと話し聞いてくれる?


アタシさ…好きな人…出来ちゃって…
どうしよう…止められないんだよ…』


『はぁ?……ユマ…
好きな人って…不倫してるの…?

違うよね?………』




ユマは、無言だった…


  • << 350 訂正🙇 レス329に、夏休み…と✏していることに気づきました😱‼‼ 夏休み前です🙇💦💦 『前』が抜けていました😫 本編では まだ、夏休みには入っていません😱💦 誤字・脱字の多い読みにくい文章で 申し訳ありません🙇‼ これからも、よろしくお願いします☺✨ 感想レスも、とても励まされ感謝しております☺✏✨ 呼んでくださる 皆サマ、ほんとにありがとうございます☺‼

No.330

『なんで?
〇〇君(ユマのダンナ)に不満でもあるの?』

『……ない。

週に一度、店に来る業者さんなんだけどね…

仲良く話してる内に…ご飯に誘われて…』


ユマは、ダンナの実家の敷地内に家を建ててもらって、義両親の隣りで暮らしている

ダンナは、サラリーマンだが、ユマは義両親のやっている店の手伝いを、アルバイト代わりにしていた


『お義母さんが金曜から週末は、子供達を自分達の家に連れて行っちゃうんだよね…
ま、助かるような不満もあるような…』
と、よく愚痴っていた






『…それで…ご飯食べたり、ドライブ行ったりしてる内に…

関係持っちゃって……
初めは、ちょっとした気分転換だったのに…

もう…………』
ユマは泣き出した…



こんな風に不倫にハマって行くのか…


アタシは、ユマの泣く声を冷めた気持ちで聞いていた


  • << 332 訂正🙇💦 ユマの子供は1人です💦 『子供達』と✏しましたが間違いです🙇 申し訳ありません😱‼

No.331

『ねぇ、ユマ…聞くけどさ、〇〇君と離婚になってもいいの?

子供と離されてもいいの?

その人…既婚者?』


『離婚なんて…嫌だ…

考えたこともない!!
〇〇も好きだし…子供と離れるなんて…

彼は…婚約者が居る人だから
まだ独身………』

『あのね、それはユマも承知だと思うけど
バレたら…離婚だって十分有りえるよ!!!

アタシに電話して来たのは、止めてほしくてだよね?

止めてよ…お願いだから…
そんな事、止めてよ!!!』

『分かってるよ!!!
だから、バレない努力をしてる!!

好きになっちゃったら…どっちも離せない…

あいには、分からないんだよ!
こんな気持ち………』


『分からないね!!!
ユマだって、不倫されたらどんなに悲しいか…
分かってないじゃん!!


アタシは…
アタシは…
……せいちゃんに不倫された事…あるんだよ!!

こんな気持ちユマには、分からないじゃん!

自分だけよければいいの?
そんなのが家族なの?

なんで〇〇君を大切に出来ないんだよ!


一生を誓ったのに、すぐに裏切るような軽い気持ちなら…
結婚なんてしてんじゃねぇよ!!!!』


『…………あい……
せいちゃんに………?』

『そうだよ。
笑えよ!!!!笑えばいいじゃん!

バレない努力なんて、偉そうに言うなよ!!

バカじゃねぇの?
目……覚ましなよ…?


無理なら、離婚してやれよ!!
騙すなよ!卑怯者!!!!』


アタシは、本心からユマに気持ちをぶつけた



ユマは泣いていた…



『泣くのは、あんたじゃないよ…
分かるよね?』






『…………うん…』



No.332

>> 330 『なんで? 〇〇君(ユマのダンナ)に不満でもあるの?』 『……ない。 週に一度、店に来る業者さんなんだけどね… 仲良く話してる内に…ご… 訂正🙇💦

ユマの子供は1人です💦

『子供達』と✏しましたが間違いです🙇


申し訳ありません😱‼


No.333

ユマとしばらく話して、不倫された側の辛さを訴えた


『気持ちを整理して、またかけるね…

ごめんね……
ほんと自分勝手だよね…

別れる事を、ちゃんと考えるよ…』


『何が正しいかなんて分からないけどさ…

ユマは、正義感が強いから…
余計に苦しんだと思う

だけど、
引き返す勇気を持って、関係を断ち切って欲しい…

ユマを愛してる家族の元に、ちゃんと帰ってね』


電話を切った…


ユマが…
あのユマが…


すごくショックを受けた


誰にでも有り得る過ち…
なんだろうか…


アタシには理解出来ない


でも……
きっと……
せいちゃんには…理解出来るのかも知れないな…



そう思ったら、胸が苦しかった


不安な気持ち……

猜疑心……



せいちゃんは…
大丈夫なのかな………?




モヤモヤとした雨雲が…心の中にやって来た



No.334

『ただいま~♪♪』

『お帰り~♪♪』子供達と玄関へダッシュする

せいちゃんに抱っこしてもらって、『お疲れ様でした』チュッとする



いつもと変わらぬ光景…


アタシの心は、ユマの話しで…
少しの猜疑心……


何度も何度も
掻き消した悲しい想像…


大丈夫だと言い聞かせても…


モヤモヤとする



ならば、
今夜、せいちゃんの携帯を覗いて見よう…



安心するため。


大丈夫に決まってる…よね?


早く、安心しなくっちゃ!!!



せいちゃんと一緒にお風呂に入る


パニックになってから、出張で留守な時は仕方ないけど
一緒の時は、お互い誘い合ってお風呂に入っていた



こんなに仲良しなんだから…
大丈夫だよ。





きっと。



No.335

『せいちゃん、今日もお疲れ様♪
アタシ、せいちゃんが大好きだよ?
せいちゃんは幸せ?』


『俺もあいが大好き♪♪
毎日、美味しいご飯ありがとうな!!

めっちゃ幸せだよ…』


せいちゃんがキスをしてくれる

そして、せいちゃんに抱かれた

幸せな気持ちが心に満ちる……

愛してる…
愛してる…

お互いに何度も囁き合った


せいちゃんに抱かれると、心が幸せに満たされて…自然と涙が出る



ドリカムの
『ねぇ、どうして
すごく
すごく
好きなこと
ただ伝えたいだけなのに
涙が出ちゃうんだろ』

って、フレーズを頭の中で歌ってしまう



せいちゃん…愛してるよ…



そして体を寄せ合い眠る





………が、
今夜は、どうしても確認したかった


そっと携帯を持ち

トイレに入り鍵をかけた



大丈夫………


No.336

少し緊張しながら、メールBoxを開く
受信をチェック……

女性の名前は、ちょこちょこあったが、全てキャバ嬢からの営業メール

はぁー…安堵のため息が出る


せいちゃんの親友&アタシも友達のヨシの名前を見つけた


せいちゃんの同級生…
先週の土曜日に、地元で結婚式があって
せいちゃんは、ヨシと一緒に出席した

懐かしいメンバーで盛り上がり、ヨシの家に泊めてもらい
日曜の昼過ぎに帰宅していた


何気なくメールを開く

【ヨシ】
『あれからどうした😁?』

【ヨシ】
『マジでかー?!
うらやましー😭😭😭
俺、帰ってソッコー寝たわ⤵
俺も女の子とエロい事したい😭

で、あいちゃんは大丈夫?
サチコちゃんと連絡取ってるの😁?』

【ヨシ】
『了解~👍💨』



なんだ………これ……


まさか…
まさか…
まさか…だよね…?


吐き気がする

ヨシの家に泊まったんじゃねぇの?

エロいこと…?

サチコって誰…?
サチコって誰…?
サチコって……………



動悸がする…ヤバい…

でも…



確かめないと………


No.337

送信メールを見る

【ヨシ】……手が震える…
ボタンを押した

『新婦の短大の友達サチコちゃんとホテル行って来ました~😁⤴

すんげー子でタクシーの中でもDキスするわ
俺のち〇ぽ触って来るわ😱💕

超淫乱娘で、エロの限りを尽くして来ました😁❤

サチコの体を堪能したわ⤴

サチコとは一晩限りで、連絡先も聞いてません💨

新婦の友人はヤバいっしょ😫

あいには、絶対バレないようにしてるから👍

また飲もうなー⤴』








ああ……
信じてたのに…
信じてたのに…


涙がボロボロ出た

苦いものが込み上げて来て…
ゲェーゲェー吐いた…



もう何も考えられない…


這うように寝室へ戻り

スヤスヤと寝ている、せいちゃんを揺すり起こした


『ぅあああぁ~あああ…うあああぁぁ~……!!!!』狂ったように奇声を発して
せいちゃんに覆い被さる





ビックリして、せいちゃんが起きた



No.338

何度こんな思いをすればいいんだろう…

【慣れる】なんて事は、絶対にない



『あい、どうした?!』
せいちゃんが、アタシを抱き起こす


アタシの手には携帯が握りしめられていた


…あのメールの画面のままで…


せいちゃんは、
ハッとした様子で携帯を奪い、画面を見た……


『あい…

せいちゃんの声と同時に、
『いやあああぁ~ああ~あああぁ~いやああ~』
奇声を発して泣き叫んだ


胸が…
心臓がドクンドクン…破裂する
気が狂う……
パニック発作が出た


このまま…
もう…このまま死んでしまいたい

破裂しそうな胸の鼓動
破裂しそうな頭の中…

息が出来ない…
うまく息が出来ない…

意識が遠のく……

ショックだからなのか、発作からなのか…


アタシは倒れた…




10分くらい倒れていたらしく…

せいちゃんは
救急車を呼んでいた


救急隊員の来る前に意識は、戻った

『良かった………』
抱き着くせいちゃん……


アタシは、オシッコを漏らしていた…


恥ずかしさと、情けなさ…怒りと悲しみ…

濡れた下半身に…自分の弱さを思い知らされて


せいちゃんの裏切りに、心を打ち砕かれて


呆然と座り込み、泣いた

泣いて……
泣いて……
泣いて……
泣いて……

声は出なかった…次々と滝のように涙が溢れた



救急隊員の到着に、せいちゃんが
『すみません、意識が戻りました…』と玄関口で話している




隊員の人が、家に上がって来た


No.339

救急隊員の人が2人…

慣れているのか、おもらしをして座り込むアタシに驚くこともなく

何か話してくれるけど…


補聴器してないから…
聞こえない…

耳元に口をつけて話してくれなきゃ聞こえない…


代わりに、せいちゃんが何かを話していた


『大丈夫です…大丈夫です…
耳が悪くて聞こえません

アタシは、大丈夫です…』

座り込んだ体勢で
ひたすら繰り返した


隊員の人が顔を覗き込んでくる

うん、うん、大丈夫、と頷く


隊員の人は、帰って行った



しんちゃんが、この騒ぎで目を覚まして泣いた

しんちゃんの泣き声が、聞こえた


せいちゃんが、しんちゃんの頭を撫でている

『お母さん、大丈夫だよー!!だから寝なさい』

しんちゃんに声をかけた



アタシは、腰が抜けたように動けなかった



もう……嫌だよ……


なんで?

濡れた下半身が、ショックをさらに大きくした




アタシは、
なんてミジメなんだろう……


No.340

あいです🙇

このお話は、99%の実話です


ただ、耳が聞こえない為、せいちゃんの救急隊員との会話等は
後から、何話してたの?

という会話の説明を受けたり


タニに髪をカラーしてもらう時も
耳元で会話してもらったりと

会話の姿勢をはぶかせて頂いてます🙇💦


後、名前もよく似た名前に変更してます💦
(当たり前ですね💦)


ん?おかしいぞ?
と、思われた方がいらっしゃるのでは…
と思い✏させて頂きました🙇


この先も、お付き合いよろしくお願いします☺❤✨


No.341

せいちゃんに抱き起こされて、なんとか立ち上がった

無言でお風呂場に行き

シャワーで洗う…


汚れたパジャマを脱いで着替えた


無言で、床を掃除した


ザブザブとパジャマを軽く洗う


何も話さずに布団を頭まで被り、横になった



せいちゃんは、ウロウロと歩き回ってアタシの様子を伺っていたようだ


耳が聞こえないことに、感謝した


せいちゃんが呼んでいるかも知れないけど
アタシには無の世界……


言ってやりたいこと等、この時は、何も無かった



ただ…
ただ…


ショック以外何も無かった



目を開けて天井を見つめ続けていた






もう…
別れようかな。




疲れたよ…せいちゃん…



No.342

眠ることなど出来るはずもなく…
朝は、いつもやって来る


明けない夜はない…


そんな事は、分かり切っている



何度も何度も
朝が来ないことを祈り続けた、幼い日々…

無情にも必ず朝は、やって来る


普通の体になりたいと願い続けた、日々…


願いは叶うことはない



いつものように、朝は来て…
顔を洗って補聴器を付ける…




アタシにとって、結婚とは…自分で選ぶことの出来る
【第ニの人生】だったはず…


悲しみに暮れる人生を選んだつもりは…ない。



せいちゃんも、一晩中ソファーに座っていた


おそらく寝てないんだろう…



せいちゃんを無視するように、子供達にご飯を食べさせる


『行って来ます…』
『行ってらっしゃ~い♪』
ふぅちゃんと、しんちゃんだけが見送る


アタシは、忙しそうに食器を片付けて無視する



なんの感情も湧いて来ない…

ロボットのように動く



ふぅちゃんは、学校へ
しんちゃんを、幼稚園送って一人になった



なんにも考えられない。

別れるという具体的なことも、せいちゃんと向き合うということも…



なんにも考えられない。



心の中は、【無】だった


空を見ても何も感じない…



こんな気持ちは、初めてだった



ただ………疲れた



No.343

悲しみも過ぎるとこうなるのかな…

いつものように家事を済ませる


いつも以上に、頑張って掃除をした


アタシは、自宅に名前を付けている(笑)
より愛着が湧くように…

雨風から家族を守ってくれる、頼りになる家は、立派な我が家の家族の一員…


そのまんまだけど、『ハウスちゃん』

ハウスちゃんと、お喋りをする…

『ねぇ、ハウスちゃん…せいちゃんさー
どう思う?


アタシ、泣いてばかりだよね…
ハウスちゃんも、アタシが泣く姿なんて見たくないよね…』

フローリングに寝転び、ハウスちゃんに抱きしめてもらう


『ハウスちゃんは…せいちゃんが好き?』



言葉にすると涙が出た





『好きだよね……
せいちゃんは、ハウスちゃんの家族だもんね…』



『どうしたらいいのか教えて…』


フローリングを撫でる



その日は、ゴロゴロとフローリングに頬を寄せて
ハウスちゃんに慰めてもらった


(…気持ち的にね(笑))

(アタシ…少し変人ですね💦)


No.344

しんちゃんのお迎えに行き、ママ友達と笑って話す


自宅に戻ると、疲れがドッと襲って来た


悲しい…とは少し違う感情…
怒りでも、諦めでもないモヤモヤとする不快感…


これがなんの感情なのか自分でも分からない



早めに夕食の準備をして

しんちゃんは、ゲームに夢中だから
ソファーに横になりウトウトとする…


夢を見た
『お母さん!!!お母さん…お母さん…!!』
必死に叫ぶアタシ…

抱きしめてもらい、温かい胸に顔を埋める

お母さん…もっとアタシを抱きしめて…

お願い…アタシをちゃんと見てよ…
お母さん…



夢の中で、アタシがお母さんと叫び
愛情を求めている相手は、せいちゃんだった…


せいちゃんが、お母さん…


夢から覚めて、ぼんやりとする…


確かに。

確かに…アタシは…せいちゃんを、
自分の【理想のお母さん】のように安心して心を許し…
ひたすらに愛し、愛を求めていた


とても、しっくりと来た…


せいちゃんは、アタシの心のお母さんなんだ…



いつの間にか…
そんな存在になっていた



パニック障害になってから…
アタシは随分変わってしまった



せいちゃん……


もう、あなたしか要らない!





心の底から、沸き上がる愛情…


現実が、
どうだろうと、あなたが好き…



せいちゃん…


せいちゃん…


早く会いたい…




涙がポロポロと出て来た


会いたいよ…
抱きしめてよ…
一人にしないで…




アタシは小さな子供になった

駄々っ子の感情…

駄々っ子だったこと等、一度もないが…


せいちゃんの前だと、アタシは子供になれるんだ…


うらやましかった普通の子供に…


No.345

裏切られても、裏切られても消えることのない愛情…

執着、依存と人は呼ぶのだろうか…


この心の底から沸き上がる愛する気持ちは、なんだ?


冷静な自分が、心の中でアタシはバカだと思う

また、裏切られるに決まってる

また、傷つけられるに決まってる

もう十分に傷ついた、新しい道を探したい

もう、疲れたじゃないか
止めよう…。
別れよう…。

せいちゃんは、酷い男
せいちゃんの優しさは、愛情は薄っぺらい…

冷静なもう一人の自分
客観的に見るもう一人の自分



だけど、駄々っ子の小さなアタシは嫌だと反発する

何度裏切られても構わない

アタシだけを愛してほしい

何度だって立ち上がる…
何度だって愛を求める




アタシの本心はどっち?


素直になれば、正直であればある程
矛盾する…



任せよう……

波に漂うように、この心を任せよう…



嫌だと思えば、出て行こう


好きだと思えば、一緒に居よう



きっと、単純な素朴な思いが本物だ…





アタシ、バカだから…
難しいことは、分からない


悲しくなったら泣こう

好きだったら抱き着こう

腹が立つなら殴ってやろう



せいちゃんの帰りを待った…


No.346

せいちゃんが『ただいま』とも言わず帰って来た

まだ定時にもなっていない…
早退したのかな…



ソファーで横になったままのアタシ


せいちゃんは、青白い顔をしていた


『おっ帰りーぃ♪♪♪♪』
ふぅちゃんとしんちゃんが抱き着く

せいちゃんは、2人を一人ずつ長い時間をかけて抱きしめていた


初めて見る、顔つきで眉間にシワを寄せ
泣き出しそうな表情…

長い長い時間、代わりばんこに
子供達を抱きしめる



その姿は…
きっと、離婚を覚悟したのかも知れない…


そう思ったら…
なんて、
なんて…情けない…

あんたには、粘り強さはないの?
根性なし!!!!

潔さは、大切だけど、今この時は…
違うでしょう?



コイツが縋り付いて来るなら、受け入れてやる

辛い現実と向き合ってあげる


あんたが、諦めてしまうなら…


そんな程度なら…………




アタシは要らない!




黙って、夕食をテーブルに並べた


No.347

『えぇー!!お母さん、もうご飯食べるの?

早いよ~!!!』
ふぅちゃんから、ブーイング


時計は、まだ4時をまわったばかりだった

『あっ…ほんとだ
ごめんねー!!』


自分が全くお腹が空かないし、食欲もないから
ぼんやりして間違えてしまった


『じゃあ、お母さん今日は、特別にご飯前にビール飲んじゃお♪』


この1年程は、週末とせいちゃんの出張中以外は
ビールを飲まずに暮らしていた

病院の先生から、そう指示されたので素直に従っていた


でも、
今日は駄目………


せいちゃんと話すなら、子供達が寝てからだし


何より
今が辛い……


せいちゃんを、昼間の光の中でハッキリと顔を見ると…

『エロの限りを尽くした…』

『超淫乱娘…』

『サチコの体を堪能した』


グルグルと、したくもない想像で頭がいっぱいになる


ああ!!!!!!!!!!
飲まずにやってらんねー…



くそ野郎!!!!!!



ベランダに出て、ビールを飲んで
タバコを吸った



夏の陽射しが眩しい…



はぁー………

ため息を出す。


怒りで拳に力が入る…


はぁー…………
ため息と煙りで全てを吐き出す




みなの時は、せいちゃんを殴ったよなーぁ…
蹴ったりもしたなぁ



アタシは、空に向かって
『暴力反対!!……』
と小さくつぶやいた



No.348

ほろ酔い気分になった
2缶あけた


眠気が襲って来る…

夕べ寝てないもんな
『ふぅちゃん、しんちゃん♪
もう5時過ぎたし、ご飯にしようよ~』

『まだ早いー!!!』

『5時にご飯食べるお家だって、いっぱいあるよ?
今、食べないんだったら
もうお母さんは、寝ちゃいまーす』

『もう寝ちゃうの?
んーっもうっ!!!!
ご飯食べるよ…しんちゃん食べよう
お父さんも、座って!!』
ふぅちゃんの声で、みんなが食卓に座る


せいちゃんが
『ふぅちゃん、もう10歳だったなぁ…』

意味ありげにつぶやく。


そう……
アタシ達、夫婦にとってふぅちゃんが10歳になることは
とてもとても大きな意味を持っている

元気いっぱいのふぅちゃん…

ほんとにふぅちゃんが生きてて成長が見られることは、幸せなこと…


せいちゃんが
『あい、ご飯…俺の分まで作ってくれて
ありがとう…』
『昼メシも喉を通ら無かったから…
すっげー旨いよ…』


『うん………沢山、食べてね』



せいちゃんは、お代わりをしていっぱい食べた


No.349

せいちゃんにも、幼い頃の話しはしていなかった…


アタシにとって
【お腹がすく】
【美味しい食事を取る】
ということは、
とっても重要なことだった

どんな人だろうと、どんな状況だろうと
自分の空腹は耐えられても
他人の空腹を考えると、耐えられない気持ちになる


お腹が空いて、食べ物にありつくと言うことは
決して当たり前なんかじゃない
と、脳がインプットされているみたいだ



世界中ではお腹を空かしている人、子供達が沢山いる…

特に子供達の空腹は、自分や妹と重なる


『食べ物の恨みは怖い』
言葉通り、食べ物の記憶は消えない…


アタシは、成人になってすぐにユニセフに入ったくらい
空腹を世界中から、撲滅したい



だから、
どんな状況だろうが、せいちゃんの食事を作らない等…
有り得ない



そして、そのポイントをせいちゃんに押された

アタシの食事に感謝してくれた…



胸がいっぱいになった



No.350

>> 329 毎日が感謝の生活で、全てが有り難く感じられ パニック障害とも、うまく付き合えるようになり ありがとう日記にも、本心から 感謝できる、幸… 訂正🙇

レス329に、夏休み…と✏していることに気づきました😱‼‼


夏休み前です🙇💦💦

『前』が抜けていました😫


本編では
まだ、夏休みには入っていません😱💦



誤字・脱字の多い読みにくい文章で
申し訳ありません🙇‼


これからも、よろしくお願いします☺✨


感想レスも、とても励まされ感謝しております☺✏✨

呼んでくださる
皆サマ、ほんとにありがとうございます☺‼


No.351

子供達も寝静まり、せいちゃんと二人になる


気まずい空気に耐え切れず、ベランダでタバコを吸っていた


せいちゃんは、タバコを吸わない…

ガラッと窓が開き
せいちゃんもベランダに出て来た



満天の星空だった


『綺麗だな…』
夜空を見上げて、せいちゃんが言う


『……うん…星をね…補聴器を外した無の世界で見てると
吸い込まれそうな感覚になるんだよ』

『音のある世界では味わえない、アタシだけが触れられる世界なんだ…』



『せいちゃん見て♪天使♪♪(笑)』

タバコの煙りをホワンと吐き出して、輪っかを作って自分の頭に合わせる



せいちゃんが
『ほんと、天使みたいだ』と、顔をくしゃくしゃにして
こっちを見た後、泣いた



『あい、怒れよ………』

『俺を責めろよ………』



せいちゃんをじっと見つめる


『じゃあ、泣いてないで先に謝れよ…』

『………ごめんなさい…』


タバコを揉み消す。


『アタシ、前に離婚だって、言ったじゃん?!』


せいちゃんを一人残して部屋へ入った



『…あい…………頼む、許してください』


『やだ。』

『…………………離婚なんて……………
嫌だ……』
せいちゃんが大粒の涙をこぼす



『……あのさ~
泣くぐらいなら、すんなよ!!!
裏切ったりすんなよ!!!
汚ねーんだよ………
バレないなら…なんでも有りなのかよ?



アタシを幸せにするんじゃねぇの?

アタシさ…泣いてばかりなんだけど

アタシに嫌われること…怖くないの?』



『怖い!!!!怖い!!!!
あいが居ないなんて考えられない!!!』


『ならすんなよ……』


『ごめん……もうしない。誓う!
チャンスをください!』



せいちゃんは土下座した


No.352

もちろん、ショックな気持ちは消えない

忘れることなんて出来ない


でも、心の中では…せいちゃんを求めていた




土下座するせいちゃんの前にしゃがみ込む

顔を覗き込んで、意識して
とびきりの笑顔を作る

『じゃあさ、夏休みにディズニーランド連れてってよ♪♪』



『あい……!!!!』
涙と鼻水を垂れ流す、愛おしいせいちゃん


ほんとは悲しい。
当たり前だ…

ぶっ壊れてしまいそうだ


だけど笑える

せいちゃん…あなたのためなら笑える


もっとアタシを好きになって…

もっとアタシを大切にして…


あなたを許す、このアタシを…


この世で一番愛してください…



唯一無二の存在にしてください



こんなアタシは、
きっと世界中で一番…格好悪い


格好悪くてけっこうだ!


バカな女で何が悪い!


No.353

頭の中で、せいちゃんと女が絡み合うシーンが何度も何度も映像化される


狂いそうになる。


頓服の精神安定剤を飲む…


せいちゃんは、すっかり顔色も良い処か
かなり興奮状態で、パソコンとにらめっこ


もちろん、ディズニーランドのホテルの予約の為だ


『あい♪あいは、バスが乗れないからパーク内のホテルがいいよな♪♪』

『ん~…夏休み直前だから、全く空いてねぇな…この部屋は、高すぎて無理だなぁ』


一人で意気揚々と検索している


そんな姿を見るのは、嬉しくて微笑ましかった



だけど…
アタシの脳には…
『サチコの体を堪能した』
『淫乱娘』
『エロの限りを尽くした』

頭でAV画像が流れる…

何して来たの?
どんなことして来たの?
相手の顔が見たい…


もし、赤裸々に説明させてサチコを目の前に出されれば
ぶっ壊れて、倒れてしまうに違いない…

だけど、知りたくなる

でも、知りたくない!!


頭の中で、延々と流れる
主演男優せいちゃん…
主演女優サチコ…顔未定

繰り広げられるAV映像…



『オフィシャルホテルにするか♪なぁ、あい♪』

『……あ、うん!』
明るい声を出すが…





頭の中では延々と……


何して来たの?
どんなことして来たの?




絡み合うせいちゃんと淫乱女…

No.354

結局、ホテルは検索よりも週末に旅行会社に行って、探してもらうことにした


いつも通り
二人で、お風呂に入る


せいちゃんの裸を直視できない…


そんなアタシの気持ちなんて、せいちゃんには分からない…


許してもらえた喜び?
湯舟の中で抱きしめられる


でも……
こんな風に、一緒にお風呂に入って…
こんなことして来たのかな…

どうしても、そっちに頭が行ってしまう



さりげなく湯舟から上がり、頭を洗ったりした

目を閉じて、無心で髪のパックをして、洗顔をして…

せいちゃんも後ろで髪を洗っている


せいちゃんの使うシャワーが、泡と共にアタシにかかる…
気を使わずシャワーを使う辺りが、
なんとも夫婦っぽい

恋人たちの入浴ではない


複雑な気持ち…


でも、
夫婦ってこんなもんだ。


色気もないが、生活じみたこんな一時が幸せでもあった



お風呂から上がると、アタシは、体を拭いて裸のままリビングで全身に、ボディクリームを塗る


夏だから、そのまま裸で
化粧水やら色んなものを、顔に塗りたくる

『科学反応で爆発しそう(笑)』

せいちゃんに笑われる


幸せな時は、こんな瞬間…

『うるさい~(笑)』


下着フェチなアタシは、
色んな色の下着を持っている

誰にも文句を言われない下着は、年齢等気にせず着けられるから
乙女心を満喫できるラブリーなものや、雌ヒョウのようなものまで
いっぱい揃えている


下着の引き出しを開けて
今日の気分にあった色を選ぶ


元気の無い時は、赤に限る!


パニックの薬を飲んで、睡眠薬を飲んで…

二人でベッドに入った。


しんちゃんは、爆睡中



せいちゃんが求めて来る


滅多に、拒否なんてしないけど…

今夜は、無理。
絶対、無理!!!!!!!!!


『せいちゃん…浮気は許したけど、アタシ…
メールの内容で頭が狂いそうなの…分かるでしょう?
触らないで!!!!!』


『………そうだよな…
当たり前だよな……ごめん
おやすみ…』

『…おやすみ』

チュッ。背中を向けて寝るアタシの後頭部にキスをされた



一瞬、嬉しくなった…

でも…やっぱり悲しい


No.355

次の日
家族を送り出して一人になると
アタシは車で出掛けた


行き先は、心療内科。


この頃には、幼少期の事もせいちゃんの事も
全て先生に話していた


誰にも相談できない辛さ…気が狂いそうな胸の内を聞いてもらいたくて

窓口へ向かった


予約無しだったので、結構待った


名前を呼ばれて、診察室へ入ると同時に

『先生~!!!!
アタシ、アタシ…また裏切られちゃいました~』

縋り付いて泣いた

メールの内容や、自分の気持ち、行動を全て話した

『先生…好きって気持ちはどこから来るの?
脳から?心?魂?』

『あいさん(年齢的にあいさん呼び、でも名前で呼ばれる(笑))
辛かったね、よく頑張ったよ。
すごいね!!
男はバカだからねぇ…でも、繰り返しちゃいけない!
色んな人間がいるから…
誘惑する事で、自分の存在価値を確認する女性は正直、多いよ

だけど、あいさんはこうして話しに来てくれた!!

その行動だけでも十分私は褒めたいよ?

好きな気持ちがどこから来るかは…分からない

自分に正直なあいさんは、格好悪くない

格好付けて離れる人だって沢山いる。

みんな、それぞれに悩み、迷いながら選択して生きて行くんだよ?

辛くなったら、こうして話して泣けばいい

生きることに辛さを感じる人を救う為に
私は、医師になった。

みんな、色々あるんだよ


ディズニーランド、行こうって気持ちになれるなんて、すごい進歩じゃないですか!

パニック障害になった初めの頃と比べたら…

ねっ!すごいよ!!!』


アタシは笑った

『ありがとうございます

何か…変えたくて…!!
楽しいところで、楽しいと感じたくて…

ディズニーランド行って来ます(笑)

ダンナが、また浮気や不倫をしたら…
次は、捨ててやります!!』

『そう、そう(笑)
捨てちゃいなさい!
いくらでも道はあるから、思い詰めては駄目だよ』

『はぁ~(笑)
聞いてもらえて良かった!
先生、ありがとう~♪
みんな…人それぞれに悩んで苦しんで…
ここに来てるんだね…

みんな勇者だね!!!』

『そうだよ~!!!
みんな、見えないものと闘ってるんだよ』


『ありがとうございました♪先生、またね』


薬をもらい、待合室で待ってる勇者達に
心の中でエールを送り

アタシは帰宅した



心が、少し楽になっていた


人はみんな、勇者達だ…!

No.356

辛くなったら薬を飲んで、気を紛らわせながら…
1日に数回は泣き、夜はビールをたらふく飲んで
やっと週末が来た。

辛いことがあると、1日1日がとても長く感じられる…



はしゃぐ子供達を連れて、旅行会社を訪れた


希望のホテルは、ラッキーな事にキャンセルで空きが出たところだった


7月の終わりに旅行へ行く事になった


アタシ達は、大のディズニーランド好き

毎年のように行っていたが、パニックになってからは、諦めていた

長蛇の列に並び、人が溢れるパーク内、乗り物も閉鎖的なものが多い

パニック障害の敵だらけ(笑)
(ごめんなさい)


でも、変わりたい!!!

前より随分回復したし、1人でなければ大丈夫!!


アタシは、特にトイレがない状況に置かれる事が一番の不安だったから
パーク内なら大丈夫!

少しくらいなら1人でなければ電車も乗れる

でもバスは……
降りた所でトイレ等ないので無理
(未だにバスは無理です)




子供達も大喜びで、その姿を見てるだけでも
嬉しかった。


ショッピングモールへ、ディズニーランドへ着て行くお出かけの服を買ったり

外食を楽しんだりして

久しぶりに楽しい週末を過ごした


アタシの気持ちも、ディズニーランドの楽しみで、随分紛れていた





その…同じ週末にユマは、修羅場にあっていた


No.357

月曜日
いつものように慌ただしい朝…
精神安定剤を服用する


家族を送り出し一人になる


嫌な妄想を振り払うように…
『ハウスちゃん、いつもありがとうね~♪
皆さん、ありがとうございます!』
何度も唱えながら、家中を掃除する


家事も終わり、ひと息入れた所で電話が鳴った

ユマからだ。
『もしもーし♪』

『あい~…アタシ、終わったよ…
ほんとに終わっちゃったよ…』ユマは泣いていた

自分のこと等話せるはずもなく、ユマの話しを聞く

『昨日…もう、終わりにしようと思って電話したんだ…
最後はね、どうしても顔を見て…別れたかったの

だから、いつものコーヒーショップで待ってるって電話したんだよね…』

『うん…』

『そしたらさー…後ろに彼女が居てたみたいで
電話代わられちゃって…すごいビックリして…

彼女が今から、一緒に行くから待っててください。
逃げないでね!って言われちゃって…』

『あぁ……彼女にバレてたんだ…
なんで、電話取ったんだろうね…
まぁ、彼女が出ろよ!って言ったんだろうなー
アタシなら言うもんな…』

『うん…その通り…
もう逃げ出したかったし、それなら電話でサイナラ~って言いたかったけど…
行ったんだよ、覚悟決めて…』

『うん…そうだね』

『でさ~…二人で入って来て、彼女に挨拶するのに席を立った瞬間
バッシーンって叩かれちゃった…ほっぺた

アタシ、不意打ちで思わずヨロケて…
水こぼしちゃって、スカートは濡れるわ
彼女は大泣きするわ、みんなに見られるわ…
ほんと最低で…彼は何も言わないし…』


ユマは、初めこそ泣いていたが興奮気味に話し続けた


No.358

ユマには悪いが、アタシは彼女の気持ちが痛いほど分かる

ユマの話しは続く…
『彼は何も言わないで、彼女にくっついて目も合わせないの!!

彼女が泣きながら『この人が婚約してるって知ってたんでしょう?
知ってたなら…何故?
私をバカにしてたのね!!』って大声で叫ぶし…

周りの視線に耐え切れず、飛び出して帰りたかったけど
『ごめんなさい、もう別れるつもりでいました』ってハッキリ言ったんだ…

そしたら、彼が『良かった…』って………
良かったって言ったんだよ?!
信じられない…あんなに…
ユマともっと早く出会いたかった。って言ってたのに……』

ユマが泣いた。

かける言葉が分からない…

彼女の気持ちなら分かるけど…


『そりゃあ、ユマにしたらショックだったと思うけど…
綺麗に別れると美化し過ぎて未練が残ったりするじゃん…

良かったんだよ。
幻滅して、終われてさ…』


『あんな風に言われたくなかった…
アタシだって、自分や周りみんなのことを考えて別れを決めたのに…』

啜り泣くユマ

『自分や周り、みんなの事を考えるなら不倫なんて初めからしなきゃいいじゃん!!!
言ってる事、おかしいよ?
ほんとに反省してるの?
まだ、自分勝手な思考に聞こえるよ!』


『あいには、分からないよ!…あっ………ごめん…』


『アタシには、分からないよ。
不倫の終わりなんて、そんなもんだよ
だって、二人で未来を見て付き合ったりできないじゃん!

今の家族を大切にしてあげて!
ユマを一番愛してるのは誰?
分かるでしょう?』


『ユマは、少し迷ったけどちゃんと家族の元に帰れるよ…

大丈夫。』


ユマは、小さく返事をした


お盆休みに、また会おうね♪と約束して電話を切った



アタシには分からない…ってか…

そんな気持ち分かるかよ

裏切られる気持ちに比べたら、屁でもないさ!




少し腹立たしさが残った


No.359

夏休みに入り、アタシ達はディズニーランドで遊んだ

テンションも高く、ほんとに楽しめた

閉鎖的な場所では、せいちゃんに肩を抱かれて、安心させてもらった


子供たちの満面の笑顔
まさに、魔法の国…
アタシも魔法にかかったように
ミッキーを見ては歓声を上げ手を振った


とても楽しい旅行になった


自宅に帰っても魔法は解けず
テンション高く、夏休み前半を送ることが出来た



夜はビールで酔っ払って、薬を飲んで寝た

ほんとは、アルコールと睡眠薬なんて組み合わせが、駄目だってことくらい知っていたが

そうしなければ、
AV映像にヤラれてしまう……


自分を保つ為には、それしか仕方なかった



いつまで経っても、忘れること等、出来ない記憶…

みなや、まきの事まで蘇ってしまう…


まきは、まだこの頃には電話があった

社員旅行の写真で見たことしかない、まきは…清純そうな普通の女の子だった

しんちゃんと手を繋いで、しんちゃんに頬を寄せて撮られていた
アップの写真………


こんな子が愛人発言をするなんて…
信じられない!!!!とアタシは、写真を見てたまげた!


そして、この子とヤッたんだ………
と、落ち込んだ。


消えることのない記憶。



きっと生涯忘れるなんて無理だろうな…


No.360

お盆休みになり、せいちゃんの実家へ行った

お義母さんは、パニック障害を理解できないままだったが、
何の問題もなく、いい関係は続いていた


せいちゃんの二番目のお姉さんが、新婚ホヤホヤでお義兄さんを迎えて食事をして賑やかなお盆だった


次の日は、アタシの実家へ行き
こちらも、ふぅちゃんと、しんちゃんが甥っ子と遊んであげたりと、楽しく過ごした



そして、次の日は
アタシ達の待ち遠しいプチ同窓会もあり

昼過ぎから女子メンバー
アタシ、ユマ、A子のお馴染みトリオで一足早く集まり
マックで楽しく話し込んだ

A子は、独身生活を歎き

『アタシだけ誕生日早いから31歳だよ~(泣)』

『ウチらは、誕生日まだまだだから30だもんね~A子お姉サマ!』
と笑いは絶えなかった

もちろん、A子の一番の気になること…
今夜の男子メンバー(笑)

この時は、ユマには残念だったけど
タニ、ミノル、G君だった

田中が欠席なんて、初めだった
『えーっ!!田中来ないんだ?ユマ残念だねぇ(笑)』A子は笑う

『G君、結構格好良かったよね♪♪
どんな風になったんだろう♪♪』
アタシ達は、初めて参加の懐かしいG君にワクワクしていた

ミノルは、酒屋さんでしょっちゅう見てるし、おデブさんなひょうきん者

『ミノルは週一で配達してるの見てるし
新鮮味なしー!!』
と毒舌A子ぶりを発揮していた


『でさー…あいは、タニといっつも連絡取ってんの?』…A子
『あーっ!!!アタシもそこらへん聞きたい!』…ユマ


『いや~取ってないよ!!
お盆、正月前にタニがメールくれるだけだよ
それで、メールでやり取りするだけ~』

『電話は?』
『ないよー。メールだけのやり取りで、こうして待ってる本番前にかかって来て、初会話!!』


そう、
タニは、アタシが既婚者であることに十分過ぎるくらい
気を使ってくれる


ほんとに優しい奴



5時前…
携帯が鳴った
『もっし~♪♪俺、みんな集まった?
〇〇駅前集合♪よろしく~』

『あいよー♪』



行こう行こうと、お酒の飲めなくなったA子の車に乗り込みGo!


(A子は、バカほどお酒に呑まれて道端で寝て
補導?保護?されて以来、アルコール恐怖症になったらしい(笑)バカだ)

No.361

駅前のパーキングに車を停めて、合流する

歩いてすぐの居酒屋さん

けっこう、雰囲気のいいお店♪
開店したとこで、店内はまだアタシ達だけ…


またまた、雰囲気のいい個室に通してもらう


ここもタニのお勧め店らしい

アタシ達女子ははしゃぐ♪♪

G君は、それはそれは…ホストな出で立ちで(笑)
格好良過ぎで突っ込んでしまう

『ちょっとー!!!G君、あんた、女の子泣かしまくりなオーラが出てるよ!?』
『あのなぁ…あい、それは誤解!
泣かされてばっかりは俺なのよ~(泣)』

『G君が泣かされるの?どんな風に?』ユマが食いつく


田中が居ないと、ユマはユマらしい(笑)

『高い物ねだられて、買ってやるじゃん。
高い食事連れて行くだろう?
高いホテルねだられて、泊まるじゃん。

散々、金使わせて『私、G君とは合わないみたい』とか言われる訳よ~』


『ああ…そりゃあかわいそうだわ
そんな高い物ねだる女は止めときな?』
『いや、ユマ…
ちょっと可愛い女なんて、ほとんど金使わなきゃ
落ちてくれないんだよ~』

…じゃあブスにしろよ

デブさんなんてどうよ?

みんなで笑ってお酒を飲む

あー楽しい♪♪

『あいは、飲むなぁー』
タニが横に座っている

……ん?いつの間にかユマとA子がG君を真ん中に挟みこんで盛り上がってるぞ?

『ウチの家系は、みーんな酒豪なんだよー♪』



『タニな、今年中に結婚するらしいぜ!!』
ミノルが言った!!!


全員…『マジかーーー!!!!!!!!おめでとう♪♪♪』
拍手喝采で祝った

『なんで、自分から言わね~の?照れ屋さんだね~タニ君は』アタシが冷やかす

タニはもじもじしながら
『ありがとうございます!私、12月に結婚致します♪♪
お相手は1つ年上の姉さんです!!
知り合って半年でーす♪』

じゃあ、あの正月の後に?
うわー年上か♪
もう、そんな年だもんね~

皆、口々に話す


あの時の
タニの嬉しそうな顔、忘れられない


『お子さんは、何人欲しいですか?』ユマの質問に
ハッキリと
『子供は大好きなので…サッカーチームが作れるくらい!!』って言った


『ベタだよね~』とA子ちゃん


ミノルは、『俺は、見たんだ!!偶然…すんげー綺麗な大人の女だった』


『へぇ~!!!!』みんな、そう言いながら…
アタシをチラリと見た。


なんでだ?!?!?!



No.362

アタシ、変な顔してた?


普通に喜んでるよー!!!



こんな時、
ちょっと嫌な気になっちゃう…


だって、まだタニと何かあるみたいに、思われてるみたいで…

『ハワイで式挙げて、帰国したらお披露目パーティーしたいから
みんな来てくれよな~』

OK~!行く行く!



『じゃあ、僕らは…この辺で帰りますか?
ねっ……』

アタシとタニを残して、席を立とうとするみんな…

『ちょ…ちょっと待ってよ!なんで?』

ユマが笑って
『タニが結婚したら、もう集まりには来れないかも知れないじゃん…
あいは、パニックで、沢山お世話になったでしょう?
少し二人で話したら?』

『待って!待ってよー!タニ、結婚するんだよ?
もし、彼女が知ったら…こんなの悲しむよ!
アタシ、嫌だ!!!

話したいことは、正直いっぱいある…

でも二人きりは駄目!!!!
だから、カラオケ行こうよ!
カラオケまで歩く道で、タニと話したい!』


すごく必死だったと思う…


タニが誤解されても嫌だし…

何より…彼女の気持ちを考えたら、できなかった



ユマは、分かってくれた

みんなは『そんな大袈裟な~(笑)』って笑ってたけど…


アタシ達は、店を出て歩いた


No.363

カラオケまでの道をタニと二人で、みんなとは少し離れて歩く

『あいは、気が利くなぁ。
彼女の気持ちまで考えてくれて、ありがとう』

『そんな…やっぱり誤解であっても二人きりで居てたなんて
アタシなら嫌だからだよ…

タニ、結婚おめでとう♪

タニは…ほんとに優しくて、格好良くて…自分の元彼だなんて誇りにすら思うよ
今まで、ありがとうね』

『俺も、あいが元カノだってのは、すんげー誇りだよ?
マジで付き合ってたんだなぁ…夢じゃないよな?
なんて思うくらい…
もうダンナと子供らの、あいだから…
俺は、ただあいに幸せになって欲しいって願う』

泣きそうになった…

『タニ、アタシがパニックで酷かった時…
髪、綺麗にしてくれたじゃん…
アタシ、すごく嬉しかった
ほんとに弱ってたから…
ありがとうしか言えないや

結婚したら、奥さんを絶対に大切にしてあげてね!!
泣かせたりしたら…本気で怒るよ!
奥さんの心を、大切に大切に、ガラスみたいに扱ってあげてね…
アタシからのお願いです』

『うん。約束するよ
女の子は、繊細だからなぁ…
もちろん、あいだって意外と繊細だもんな(笑)』
『意外って何よ!!!』

タニの背中を叩く

『アハハ、意外じゃね~か、ごめん(笑)』



カラオケ店に着き

アタシ達は、おめでたい曲を歌いまくった



そして
楽しい宴も終わりを迎え


実家に帰ってから
また、ビールで睡眠薬を飲み…
アタシは爆睡した


No.364

夏休みも終わり、また新学期がやって来た

慌ただしく毎日が過ぎていく

アタシだけが…
アタシの心だけが置いてきぼりのまま…


頭の中の半分以上は、裏切りのショックが占領していた


もちろん、表には微塵も出さない


せいちゃんを責めることも無かった


穏やかな気持ちとは、程遠いけど
家族が仲良く暮らせることは、素直に喜ぶことが出来た



空に向かって歎き、悲しみ、怒り…
この理不尽なる苦しみの全てをぶつけた


そして、
同時に幸せを求め、心の安らぎを求め
感謝の心も捧げた




今、思うと自己流宗教みたいなことをしていた



やり場のない気持ちは、ビールと共に流し込み

タバコの煙りと共に吐き出した



パニック障害の薬の他に、精神安定剤、睡眠薬も手放せない



こんな自分の弱さに、何度も涙した



表には出さないけど…
ほんとに苦しんでいた


No.365

頭の中で、AV映像が流れる…

それは、いつも突然だったりする
予期できないものだ


突然のAV映像に襲われると、動けなくなる…


お茶碗を洗っている最中に、コップを落とし割ってしまったこともある


洗濯物を干していて、しゃがみ込み…
胸を頭を押さえ込む…


ドラマの演技でしかないと思っていた苦しみ方と
同じように現実の世界で、苦しんでいた

あれは、ほんとに…
ああなってしまうからこそ、
ドラマでも、あの演技なんだと気づいた



いつになったら解放されるのか…

全く見通しがつかない



暗闇の中を、さ迷い歩く感じだった


No.366

秋が来て…
冬が来て…

寒くなった12月の中頃に、タニの結婚パーティーのハガキが届いた


1月の終わりの日程だった

12月に、ハワイで挙式か~♪
いいなぁ~!!
タニの奥さんは、間違いなく幸せにしてもらえるんだろうな

奥さん、早く見てみたい


アタシは、楽しみにしていた


出席に丸をして、メッセージの欄に

キラキラのペンを使って
【幸せな結婚生活を送ってね❤おめでとう】
と、ありきたりな文章を書いてイラストを描いた


ちょっとキュートな感じで
新郎新婦のキスしてる姿
(ほんのちょっぴり絵は得意なんです)


タニの幸せを祈りながら、ポストに投函した







その数日後……
タニからのメールで、アタシはビックリする
事情を知った…




なんと、挙式も1週間後に迫っているタニの元から
花嫁になるはずの彼女が、彼女の会社の上司と駆け落ちして逃げ出したのだ……


『好きな人ができました、あなたとは結婚できません
ごめんなさい…』とメール一つ送信して…


彼女は、携帯の電源を切り失踪した


彼女の両親も、行方は分からず…


タニは挙式をキャンセルした…



メールには、
皆さんには、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません


と綴られていた………



タニの心情を思うと、胸がとても痛かった…



思わず、電話をかけた

放っておけ無かった…


No.367

プルル…呼び出し音が鳴る

なかなかタニは出ない


あ…仕事中だよね。
平日の真昼間、美容師のタニが出るはずもない


電話を切ろうとした時、タニが出た
『あい~?』

『あ…タニ…ごめん
仕事中だったよね!…また夜に…』

『あぁ(笑)仕事…ちょっと参ってるから店長が休めって…
しばらく休み…
接客業だからな~ぁ…こんなんじゃ駄目なんだよなー』

タニは、酔っ払っている様子だった

『次々と電話かかって来るし、もう面倒くせーよ…
だから無視してた。
名前見たら、あいだったし出たわー』

『…ありがとう…
ごめんね…余計なお世話だったね…
タニが心配で…』

『いいよ!
あんな女………!!!!
ってゆうか、なんで?
なんで?こんなことに?
俺、さっぱり分かんねーし
女って何だ?
なんで…嫌ならもっと早く言えよ!!!
親に親戚、仕事場、友達…みんなに迷惑かけて…
嫌だったなら、断れっての!!!!
嫌になったんなら、すぐに言えっての!!!!

…ちくしょう……クッ……ウッ…』

タニが泣いてる…

アタシは、涙が出た

『あのなー!!!タニ!!
言ってやるよ!女が悪いんじゃねぇ!
タニの女が悪い奴だったんだよ…
もう、捨てちゃえよ!
心の中から追い出してしまえ!!!!
タニの気持ちを大切に出来ない、そんな女…
こっちから願い下げだね!!!
タニに幸せにしてもらう資格もねぇよ!!!
結婚前だし、良かったんだよ……
悔しいね…悔しいね…タニ…
愛してたのに…裏切りは、悔しいね…』

タニの声を殺して泣く姿が電話を通して聞こえる…
見えるようだ……



ほんとに、なんで…
こんなことが出来てしまうの?


酷いよ………


タニは、話せないようだったから

『ゆっくり休みなよ?
話しなら聞くからさ…
いつでも電話して来てね?
タニ?
タニ切るよ?
……無理に笑わなくていいから…
自然に笑えるようになるまで…無理しないでね


じゃあ、切るよ?
タニ…またね』



はぁー…………


なんてことだ…
タニ…が泣いてたよ…



タニのために、タニの笑顔を想像して
早く傷が癒えるようにと、空に拝んだ


No.368

タニから電話がかかって来ることは無かった

冬休み…
お正月のプチ同窓会、今回は止めようと
みんなにメールをした

みんな同じ意見だった。


お正月休みは、ユマと二人で会った


タニに電話してみたこと、その後連絡もないことを話した

二人で色々話して、タニに電話してみることにした



タニは、会いたいからそっち行くわと言って
アタシ達の居てるファミレスにやって来た


『あれからどうしてる?』
恐る恐る聞いてみる

『ああ、あれから彼女がやり直したいって言って来た…
考えてみて大事な存在だって気づいたってさ
今さらだよ……
俺は、もう要らねぇ!
完全に冷めた。って伝えて終わったわ』

『え?彼女…やり直したいって言って来たの?』
ビックリして身を乗り出した

『親と一緒に頭下げて来たよ…
でも無理だわ。
あんな裏切り受けて、信頼なんて出来ねぇし』

『…だよねぇー』アタシは、相槌を打った


ユマの反応は違った。

『でもさ、彼女…他に逃げ出したけど
考えて、やっぱりタニとやり直したいって頭下げて来たんだよね?

許してあげられないの?
夫婦ってさ、色んなことあるけど…許すことも必要だよ?』


『いや、俺には無理。
マジで冷めたし……
他の男に逃げたような女と、信頼関係なんて築けねぇし
ほんと、自分勝手で軽蔑した』

『…でも、彼女の気持ち考えたことあるの?』

『どんな気持ち?
裏切って逃げる女の気持ちって何?!』



アタシは、黙ってタニとユマの口論を聞いていた


No.369

ユマは無言になった…


とても…複雑な気持ちで聞いていた


ユマは、アタシのことを言っているようで…

タニは、アタシのバカさを言っているようで…



『まぁ、人それぞれに考え方も、思いも違うんだから
正しい答えなんてないよ!』
『タニの人生は、タニが決める
それしかないじゃん』

そう言うしか無かった…



タニのように、冷められたなら…
どんなに楽だろう…

でも、タニだって無傷じゃない。


結婚間近で全部捨てて、男と逃げ出した女に…
このタニの苦悩が分かるはずがない


バカばっかだな…



アタシ達は、違う話しで盛り上がり

アタシは
夕方に、せいちゃんの実家へ戻るため
解散した


せいちゃんの実家では、まだ一番上のお姉さんは独身のままで

二番目のお姉さんは、妊婦さんになっていて


出産のことを、あれこれと聞かれた


アタシの場合…特殊だから何の参考にもならないけどね


お義母さんが『あいちゃんは、すぐに産んでしまっちゃうのよね~
犬のお産みたいに楽で、いいわ~♪
普通は、長い長い陣痛に耐えるんだから
あんた、頑張りなさいよ』
と言っていた………


悪気はないんだろうけど


…犬のお産って…



アタシは
妊娠3ヶ月から子宮口が開き、ずっと陣痛に何ヶ月も耐えて来たんですけど?


しんちゃんの時は、救急車で運ばれて大変でしたよ?


しんちゃんが、しがみついてくれたから助かったけど
危なかったんですよ?


アタシは…
もう産むことができない体なんですけど…
無神経ですね…




ま、そんなこと
言わねぇけど。


No.370

それから、
2年の月日が経った…


ふぅちゃん小5、
しんちゃん小2


アタシ達、家族はこの2年間…
とても、幸せに暮らしていた

毎日、同じような日常だけど
家族で笑って過ごしていた


せいちゃんとも、毎晩一緒にお風呂に入り

しんちゃんは、小学校に入ると同時に子供部屋を用意し、
ふぅちゃん同様、一人でベッドで寝る


寝室には、アタシ達夫婦だけのダブルベッドとタンス…
夜は二人きりで寄り添って眠った


せいちゃんが求めて来る時は、もちろん応じた

嫌な記憶が蘇り、泣き出したくなる夜もあったが
しがみついたり、横を向いたりしながら
隠れて涙した…


毎日の日々の中でも、フラッシュバックに苦しんだ…

薬を飲み、なんとかごまかしながら
うまくやっていた。


毎年、ディズニーランドへも旅行へ行った



こんな風に…
時には苦しみながら…
それでも、幸せを感じて生きていた


子供の頃のトラウマで、アタシはずっと専業主婦では、あったけど…
それを、せいちゃんに責められることは無かった


ただ…
せいちゃんは、キャバと風俗は…
出張中に利用していた


せいちゃんの出張中は、不安で不安でたまらない…
それだけは、変わらなかった…

それもまた、仕方ないと諦めていたアタシもいた…





それでも、
アタシは、幸せだった。



No.371

アタシの感謝生活も、生活の一部となっていた


毎日欠かさずハウスちゃんと会話して
『ハウスちゃんありがとうね~♪
皆さんありがとうございます!
幸せいっぱいありがとうございまーす♪』
そんなことを唱えながら、掃除をする


あの頃は、ほんとに家はピカピカだった


白いところは真っ白で、お風呂場なんて毎日使ってるとは思えないくらい(笑)

テーブルに花を飾り
窓ガラスも、毎日拭いた

ベッド周りも完ぺきで、子供たちもいつの間にか綺麗で当たり前
という感覚になっていた


…もちろん、せいちゃんも…

お客さんなんて、いつでもWelcome♪♪
な状態だった…



暇があれば瞑想をして、無心になる


空に向かって、世界中の人々の幸せを祈る…



穏やかな心を取り戻すために…
日々、努力していた



母の日には、せいちゃんのお義母さんに電話をした
『お義母さん、せいちゃんを産んでくれて
ほんとにありがとうございます!
アタシ、せいちゃんと結婚できて、ほんとに幸せです
お義母さんとお義父さんが結婚して…せいちゃんが産まれた
ご先祖さまにも、ほんとに感謝しています

お義母さんありがとう!』

アタシからの突然の感謝の電話に、せいちゃんのお義母さんは
電話口で『あいちゃん…』と言ったきり泣いてしまった


ほんとに幸せだった

幸せを求めていた…


No.372

そんな生活の中で、サエちゃんが泣いて我が家へやって来た

暑い残暑の厳しい9月のことだった…


サエちゃんに、アイスコーヒーを出す
『どうしたの?何があったの?
アタシ…口はかたいよ…
約束は必ず守る…
泣いてないで話して?
サエちゃんには、いっぱいお世話になってるもん

…力になりたいよ…』



『あいちゃん………』

サエちゃんの瞳からは、大粒の涙が次々と溢れ出た


『…………してたの…』

『え?ごめん…何んて?聞こえなかった』


『不倫してたの……ダンナ…』
またサエちゃんは、ハンカチで顔を覆って泣いた



ビックリした…………


サエちゃんのダンナさんは、職種は違うけど、せいちゃんと同じように出張が多い


『もう…7年の付き合いみたいなの…
私…全く知らなかった…ほんと…
私、バカだよね…』


『サエちゃんは、バカなんかじゃない!!!
そんなこと…
そんなことしてる二人がバカなんだよ!!

サエちゃん…辛かったね…』

アタシまで涙が出る

なんて酷いんだ…
ありえねー……!!!!

7年もの間…よくもそんな卑怯なことを!!!


アタシは、怒りで体が熱くなって行くのが分かった


No.373

『サエちゃん…どうして分かったの?』


『携帯…携帯を2つ持っていたの…
ずっと、仕事用だって聞いてたから興味も無かった…

でも、忘れて行ったんだよ…』


ああ…みなの顔が蘇る…
せいちゃんが携帯を忘れた、あの日…
ハートマークいっぱいのメール…
忘れることなんてできない!
メールの内容だって全部言える…脳裏に焼き付いてしまった記憶


『電話が何度も何度も鳴ったから…
今日は自宅に忘れていますって伝えようと
電話をとったの…

通話ボタンを押したら、すぐにね…
……女性の声がして…』

サエちゃんが、テーブルに突っ伏した


『『〇〇〇、遅いよー!!
今、どこなの?』って聞こえて来てさ…
それでも、仕事関係だと思ったの…

で、主人は今日は携帯を家に忘れて行ってます
申し訳ありません。って言ったら


女性がビックリした声で
『主人?!……主人って誰のこと?』って…
だから…〇〇〇ですが?って言ったら

あんた…誰?って言われて…』


サエちゃんの話しの意味が…
少し分かって来た…

なんて酷い男なんだろう。


『〇〇〇の妻です。って言ったら……

悲鳴に近い声が聞こえて…
結婚してたこと、隠してたみたい…』




ああ………
ビンゴだ………


最悪だ………!!!!!!!



No.374

机に突っ伏したままのサエちゃん…

アタシは、かける言葉が見付からない

ただ…質問をする

『7年も前って…どうして分かったの?』


『メール見たんだ。
もうすぐ7年になるねって…
そろそろ結婚とか考えて欲しいな…って書いてあった』


『…………………!!!!!………
他には?』

『見てない。
それしか見てない………
見れなかった…

ダンナにも話せてないの…


どうしよう……
分からないんだよ………』


『……うん、うん……
そうだよね

分かるよ……

全て知るのは……怖いよね……』


泣いてるサエちゃんに分からないように

キッチンへ行き、そっと精神安定剤を飲んだ



『7年前って言ったら……
ふぅちゃん達が幼稚園の〇〇組の時だよね…


アタシもさ、今だから言うけどね……

あの頃、不倫されてたんだ……』




驚いたようにサエちゃんは、顔を上げて
アタシを見た…


『嘘……でしょう?』

サエちゃんの涙が、痛々しい


アタシも泣いた

『ほんとだよ?
ちゃんと、終わらせたけどね…

その他にも浮気もされてるんだ…


だから………

7年もの間…ダンナさんを信じてた

サエちゃんのショックが、アタシ以上のものだってのが分かるよ……』





ほんとに…

なんて長い年月を……
サエちゃんのダンナは、騙し続けて来たんだろうか…


彼を信じる
二人の女性を………



No.375

サエちゃんの、どうしたらいいのか分からない気持ち…
すごく良く分かった…


『ねぇサエちゃん、サエちゃんが電話に出たことで
女がダンナさんを問い詰め事態は変化するはずだよ?』


『…そうだよね…
彼女がダンナに聞くよね?じゃあ、私は黙って様子を見る!!』

『様子を見るの?
この際なんだから、サエちゃんもアクション起こした方が良くない?』

『………無理……
怖いよ…私は、あいちゃんみたいに張り合えない…』

『サエちゃん!!!今、不安なのは相手女も同じだよ?
別れてもらわなくちゃ!!
主人が申し訳ありませんって妻の余裕でも見せて
相手女にミジメな思いをさせてやろうよ!!
7年だよ?

サエちゃんと同じくらい相手女もショック受けてるはずだから…』


サエちゃんは、首を縦に振ることは無かった…



今は、
相手とダンナの様子を見ると言った



嫌な予感がした…



アタシだったら…

でも、解決策を決めるのはアタシじゃなくサエちゃんだ…



仕方ない…か……



いつでも頼って来てね!!

しっかり食べて、眠ってね!!


と励まし、
サエちゃんの体調を心配しながら…

食べることも、眠れるはずがないことも十分分かってるけど
それしか言えない…


力になりたいのに………



サエちゃんは、『ありがとう、なんか話したら少しスッキリした
突然ごめんね』と言って帰っていった




ああ、なんて酷い話しなんだ!!!


アタシは、ぶん殴ってやりたくて
ソファーのクッションを、思いっきり殴りつけた


No.376

次の日、アタシはサエちゃんに電話をかけた

『サエちゃん!!
ダンナさん何か言って来た?
変化はあった?』


『ううん……
いつも通り…彼女と会ってるのは確かなんだけど

アタシが電話に出たことを、なんて言い訳してるのか…

7年も嘘ついてた人だから……
何も分からない…』
サエちゃんは、また泣いた


『どうしたらいいの……
どうしたらいいの……
どうしたら………』
何度も繰り返す



胸が痛む



『ねぇサエちゃん、やっぱり逃げても始まらないよ!!!
ダンナさんは、二人にうまく嘘ついてるんだから……』


『うん……
でも…怖いよ………』


サエちゃんは、なんて素直なんだろう

そうだよね。
怖いよね………

真実を知ることも、これから起こる出来事も

変化は怖いよね…

良くないことが分かっていながら、前に進むのは怖い…


目を逸らして、またこの生活が出来るなら…

と縋り付きたくなるよね



『あいちゃん、ついて来て欲しいところがあるの……』

『いいよ!!どこ?』

『〇〇〇の占い師さんのところ…』


『占い師?!』


アタシは、ビックリした


アタシは、占いなんて信じない

占いよりも剣を選ぶタイプだ


だけど、人はそれぞれ…


『いいよ♪
当たるの?そこ……?』


『前に友達が相談してて…悩みの原因を教えてくれるんだって』

『もう…そんなことばかり考えて…
自分じゃなんにも出来ないから…』
泣き声で訴えるサエちゃん…




悩みの原因って……?


ダンナが二人の女を騙し続けていた
原因を教えてもらうの…?


良く理解できなかったけど、ついて行くことにした



場所は、電車で20分先の市にあるらしい


有名なんだとサエちゃんは言っていた



アタシも自己流宗教みたいなこと、やってるもんね…

人が信じて、助けを求める方法は意外と沢山あるんだな…



妙に感心してしまった



アタシには占いなんて、微塵も浮かばなかったから…



アタシも、みて貰おう…と気軽に考えていた



じゃあ、二人分の
予約を入れて、また連絡するね!



とサエちゃんが言って、電話を切った…



No.377

それから数日後、
サエちゃんが予約を入れてくれた日が来た


サエちゃんにしがみついて一緒に電車に乗る

正直…まだ電車は怖い…



駅から歩いて数分で、占いをやっているというビルに着いた



サエちゃんは、
ダンナさんには、何も無かったように振る舞い


ダンナさんも普段通り…

二つの携帯も堂々とリビングに置いていると言う…



土日は、仕事用と呼ばれる携帯からは
なんの音沙汰もないらしいが…



平日には
たまに、夜には電話がかかって来て
ダンナさんはベランダへ出て話すそうだ


メールを、返す姿も何度か見てるらしい



今までは、仕事だと思って来たから、なんの不思議も無かったが

あの件以来…

そういった姿を見ると辛いと言う…


当たり前だよね…


彼女は、妻と名乗る女が電話に出たことを
話していないのかも知れない…


知らぬ顔で、いつも通りに着信があれば
ベランダへ出るダンナを見てると…そう思う…


とサエちゃんは言っていた


彼女もまた、真実を知るのが怖く

今まで通り振る舞っているのか…





アタシには、そんな風に感じた


No.378

『ここだよ!!
前世を見てくれるんだって!!
そこから、今の原因や今後のアドバイスとかをしてくれるらしいよ!!

今の悩みも言わなくても分かっちゃうらしい…って聞いたから

きっと、本物だよ♪

あーあ!!!!良いアドバイスをくださーい!!』

サエちゃんが、少し興奮気味に話す



アタシは…
前世?……胡散臭いなぁ…

適当に言ったって分かるわけのないことだもん

ん~~~~~~~………


サエちゃんの手前、怪しいと口には出さず


『とりあえず、予約の時間までお茶でもしようよ♪』

と、ビルの一階に入っている
軽食屋さんに入った



サエちゃんは、占いのことを喋りまくっている



内心、
そんな熱意があるなら、彼女と話し合いをして

ダンナがなんて言ってるのか、既婚者であることを伝えて
諦めてもらえるように言ったらどうか?


彼女と話し合い
ダンナを呼んで二人で、どういうつもりかと問いただすのもいいだろう…



そういったことは出来ないのかな…


と思っていた。




でも、人は
みんなが同じではない。


苦しみ方も、解決方法も違う…


サエちゃんは、サエちゃんなりに苦しみ抜いて
占いに助けを求め、その結果次第で
自分の行動を決めようとしているんだ…


サエちゃんも見えない苦悩と闘う勇者だ



頑張れサエちゃん!!!





アタシは、この後自分の占い結果に苦しめられるとも知らず

アイスコーヒーの氷をカランカランと
ストローで回し、サエちゃんの話しを聞いていた



No.379

『行こうか』


サエちゃんは『緊張して来た』と胸に手をやる



占いの館は、拍子抜けするくらい
サッパリとしていて、弁護士の事務所みたいだった
(テレビで見る勝手な弁護士の事務所のイメージです)


まずは、サエちゃん…

奥の部屋へと消えて行った


アタシは
周りをキョロキョロとしていた


受付の女性が一人…

怪しい商品もなさそうだ

少し安心した(笑)


祈願代やら、開運グッズやらと買わされるなら
怪し過ぎる…と思っていたから安心した


角に灰皿がある

今のうちに吸っておこう
タバコに火をつけて
サエちゃんを思う……


大丈夫かなぁ………

全てを鵜呑みにしてしまわないかな…


占いなんて
当たるもハッケ
当たらぬもハッケ

ハッケって意味も知らないけど、それくらい軽く受け止めろってこと…
だよね?


タバコの煙りを見ながら、時計を見ながら
暇をつぶした……



一人、30分。


結構長いもんだな~ぁ



サエちゃんが、帰って来た


『あいちゃん、次、行って行って!!』

サエちゃんは、明るかった

良かった……

人の弱みに付け込む占い師じゃないみたい



名前を呼ばれて、奥の部屋へと歩いた


No.380

奥の部屋に案内されて入ると、そこには小柄な女性…かなり年配の方が座っていた


向かい合わせに座る


アタシを、わずかな微笑みで見つめる


『駄目よ~疑わしいとあなたの全身が拒んでるわ』
パンパンと両手を叩き、女性は笑った



あーバレバレか(笑)


『騙されてもいいやって、吹っ切ってごらんなさい』

『はい……』
マジかよー!!どうにでも言ってくれ!!

女性を見つめる

ピロロ…ピロロ…♪
ヤバい!!補聴器の電池切れだ

『あの…少し失礼します』

補聴器を外して、持ち歩いている予備の電池を入れ替える



『生まれつき…耳が悪いのね…』

片方の耳で聞き取った
『…はい』


『あなたは、高貴な魂の持ち主ね…
扱いにくい体を持って、生まれた…
暴れ馬を乗りこなすのは、相当なテクニックを持つ者よ

あなたは、どうやらそれね…
オーラも違う…
日々、誰かの幸せを祈っている…

幼い頃は、苦労もしたのね…どんな苦労かは分からないけど
必死で、命を張って守ったものがあるみたい…』


少し…
アタシは、震えた…
『見えるんですか…?』


女性は、目をつむり『あなたに触れているのよ…

あなたの深い部分に…』と言った



少し怖かった。

当たってる~♪♪♪なんて喜べる心境じゃない



アタシは、
女性を見つめ続けた…



次の言葉を待った


No.381

女性は言った

『霊感が強いのね…』

『いえ…強くはないですが…』
少し戸惑う…


『あなたは、霊が見える、感じる』

『……………はい』

誰にも言ったことは、無かった

アタシは…死んだ人の白い影が魂で
ハッキリと映る人は、霊だと分かる


随分、幼い頃からだ…


ふぅちゃんを産んでからは、あまり分からなくなったけど


ふぅちゃんが、お腹に宿り入院してる時に
オレンジ色の光が、お腹に差し込んで来たこともある

頭の中で【大丈夫…】とメッセージめいたものが流れる
そんな体験もした



そして、近づけない怖い場所もある…


あの独特な…嫌な念に満ちた場所には行けない


アタシの地元には、そんなアタシの通れない道がある



やっぱり……
普通じゃないんだろうか…


普通になりたいと願うアタシにとって、この霊感と呼ばれるものは
口にもしたくないものだった



だけど……
だから…?
アタシはハウスちゃんの気持ちが分かる
(変人ですよね)

ハウスちゃんの慰め…

掃除をしてあげるとハウスちゃんが喜ぶ…



幼い頃は、妖精?みたいなものも見たことがある

光の固まりで、俗に言う妖精とは掛け離れているけど…


チラチラと浮遊しては、慰めてくれる

愛のある存在……



お詫び🙇
(こんなこと✏してすみません💦
引きますよね………
消そうか迷いましたが、アタシが【普通】にどれだけ憧れて
どれだけ願ってるのかを知ってもらいたくて✏しました


不快に思われた方、申し訳ありません🙇💦


誰にも話したことは、ありません🙇💦

普通だと思われたいから…😭)


No.382

話題を変えたくて『で…あの…前世を知りたいのですが…』
と切り出した。


女性は目を閉じて…
そしてアタシを見つめて…
また、目を閉じた


『……あなたの潜在意識が奥に入ることを拒むわ……』

『見えませんか?…』

再び目を閉じる女性…『楽にしてね…』


『駄目ね…小さな女の子が通せんぼうするようで、入って行けない…』



『この小さな女の子は、あなただと思うわ…
深く入って行けない…』



アタシ?
小さな女の子のアタシが、通せんぼうをするの?


『これ以上無理は止めましょう
探り当てられては駄目なのかしら…

たまにね、いらっしゃるのよ、ごめんなさい』

『いえ、アタシが拒否する理由が気になります(笑)』


『分からないわね…座禅なんかされるの?』

『瞑想はします。無心になれるように……、関係ありますか?』

『ああ…深いところまで行けてらっしゃるのね、
きっと知らず知らず、ご自分でコントロールされているんだわ

あの女の子は、あなたの核みたいなものね』


……よく分からないが
『はぁ…』と曖昧な返事を返した



『あなたも、人に触れて神経を集中すれば見える方だと思うわよ


今は、問題がないけれど…とても近い未来に
ご主人に、男女関係で悩まされることになるわ』


『え……!!!!!!!!』

『あなたには、分かるはずよアドバイスは出来ないけれど…
前世が見えないから、どうして悩みが降り懸かるのか
そこは…分からないけど…

試練の一種であることは間違いないから

大丈夫よ。乗り越えられるわ』


また、せいちゃんが浮気?
……するの?


『前にもあったのね』

『…はい。そうです…
次は、もう、心が折れそう…』


『あなたは、折れない
負けない…とても強いわ


だって、見せてくれないくらい強いんだから(笑)』
女性は笑った


アタシも少し笑った


でも……当たりたくない…



『ありがとうございました』


30分より早かったが、席を立った


『ご主人に触れて、意識を集中させるのよ!!
心が見えるわ!!
未然に防ぐことが出来るはずよ
特訓してみなさい!!』


最後に、そう言われた


No.383

部屋を出ると、なんだかとっても疲れた


深い部分に入られたからかな…


……こんなの信じたりしないのに!

自分でも、ビックリした



そして、思考はアタシに戻る


…いやぁ~話術の上手い占い師だったなー

占い師は、話術の天才!!

感心、感心…


でも、
せいちゃんの事が…頭から離れない…


まさか…だよね?



サエちゃんが笑顔で待っていた


サエちゃんは、顔色も良く

悩み解決!!!って顔をしていた



お代を支払い、外に出る


『あ~、スッゴい良かったわ~♪』
サエちゃんが手を伸ばして、伸びをする


『あいちゃんは~?良かった?』
振り向き、笑顔のサエちゃん

『うん。面白かったよ!!』



駅前で、ランチをしながら話そうと

美味しそうなお店を物色する


どこも昼時で沢山の人…


結局、空いてるならどこでもいいや♪と、タバコの吸える喫茶店に入った



とりあえず、アタシはタバコ!!!


スパーッ♪♪うまい!!



サエちゃんは、メニューとにらめっこ


そんなに食べ物は、置いてなくて
二人ともサンドイッチと、アイスコーヒーを頼んだ



サエちゃんが身を乗り出して

『アタシの前世は……』と語り出した


No.384

『アタシの前世は…
どこかのお金持ちの娘として生まれて
何不自由なく暮らして、お金持ちの家の人と結婚して
恵まれた生涯だったんだってー』


『だから…今世では、泣くことが修業みたいに言われたよ~

でも、アドバイスでね!!
泣けばいいんだって!!
ダンナにも、悲しい顔を見せて泣けばいいって!!

相手女性にも泣けば、いい方向に進むって言われたの…


なんだか、心の中に光が差し込んで来た感じ


これからは、無理に普通に振る舞わず
泣くことにするわ~!!』


サエちゃんは、明るかった


すごいなぁ~…占い師さんに感心した

人を、こんなに前向きにさせるなんて…


アタシが何言っても、でも……って
言ってたサエちゃんが、なんだか変わった!!!



『あいちゃんは?どうだったの?』


『うん…すごいビックリしたよ!!
言われたことが、当たっててさー…』



霊感のことを思い出す…


No.385

幼い頃、
おばあちゃんの家には、掛け時計があった
ボーンボーンって鳴るアレ…



あの時計が、午後2時を指すと…
ボーンボーンの音に合わせるように


お侍さんが出て来る……


座敷の床の間に、古い刀が飾ってあって
刀の前に、じっとして動かない…

(それを返せと言うように、アタシには見えた)

その刀の刃は、もちろん偽物だけど、持つところには白いヒモが巻かれていて
濃い茶色になってる部分や白いままの部分があった

きっと、茶色の部分は間違いなく血だと思う


サヤ?の部分は真っ黒で重たくて、
何かの鳥?(だと思う…)の模様が細工してあった部分はサビていた


お侍さんは
ずっと動かないけど、ある日、アタシが刀を持って
お侍さんに手渡すと、目を見開いて
カッと表情を変え怖い顔をして追いかけられた

とっても怖かった


その姿を、おじいちゃんに見つかり
刀を奪われて、何度も蹴り倒された………

だけど、
蹴られながら助かった…と思った




あれから、午後2時のボーンボーンが鳴ると
怖くなって、座敷には近づけなくなった


でも、お侍さんがアタシをウロウロと探す時があって…


泣いておじいちゃんに、助けを求めた
機嫌のいい時は、優しいおじいちゃんだから

『侍が来る?ワシが斬ったるわ!!オリャー!!』と座敷の刀を持って来て


サヤから抜いた刀を、振り回し斬る真似をしてくれた


その時は、お侍さんは無表情でおじいちゃんではなく
アタシをじっと見つめ続ける


ほんとに怖かった



毎日、現れるから…
思えば毎日見ていたことになる



でも、サエちゃんにはそんな話しは出来ない




『アタシはねー…』


No.386

『アタシはねー、座禅とかしてる?って聞かれたよ~!!』

『うわぁ~♪♪
あいちゃん、瞑想凝ってるって言ってたもんね~!!
すごい!すごい!』


『でも、それで自分をコントロール出来てしまってるみたいで
前世は、見えないって言われちゃった(笑)


たまに、あるんだって!』

『へぇ~!!でも、見て欲しかったよねぇ』


『うん…まぁね。興味はあるよー!!
この運の無さの原因を教えてもらいたかったよ~


でね……
せいちゃんの浮気!!!
前にもあったのね。って当てられちゃった!!』


『ウソー!!!』

『ほんと!!
………それでさ…
また、せいちゃんの女性問題出て来そうな予感…


占い師さんに、近い未来にダンナの男女関係に悩まされる。
って言われたんだよ~』


『え~~~っ!!??
……ちょっと、それはハズレて欲しいよね…』


『まぁね……
でも、未然に防げるかも知れないって言われたし、ちょっと頑張ってみるわ!!』


『どうやって?』

『ん~内緒♪』

『んもう~(笑)』



アタシとサエちゃんは、また電車に乗り



それぞれ自宅へ帰った


No.387

夜になり、せいちゃんが帰って来た

『ただいま~♪』
子供たちと一緒に玄関へダッシュ!!

小5になった、ふぅちゃんはもう玄関までは走らない

リビングから顔を出したり、テレビを見てたり…


アタシと、しんちゃんだけが走って、アタシは抱っこしてもらう

『お帰りなさい♪』チュッ♪
しんちゃんが、足に纏わり付くように、せいちゃんの後について来る


アタシは、せいちゃんのご飯を温め直す


占い師さんの言葉がよぎる……


振り払うように、ご飯をテーブルに並べて
自分の分は、コーヒーを入れて
せいちゃんのご飯に付き合う……けど、せいちゃんはテレビばかり見ている


アタシの話しも生返事…


まぁ、そんなもんだよね



いつもと変わらない幸せな日常…


しんちゃんとせいちゃんが一緒にゲームをする

しんちゃんの笑い声…


ふぅちゃんが『お父さん、足臭い~!!』と怒る

『お父さんの足は、臭くなーい!!』軽くふぅちゃんを蹴る真似をする


笑うふぅちゃん、
笑うせいちゃん
そんな姿を見て笑う、しんちゃん、
笑うアタシ


こんな幸せが…壊れるなんて…

きっとない。


だって、せいちゃんは家族の大切さに気づいたって言ってたもんね



大丈夫………



自分に言い聞かす


No.388

子供たちが寝静まり、せいちゃんと二人になる


横になりテレビを見てる、せいちゃんの腕に手を置いてみる


目を閉じて…集中……


『アハハ…!!!』バラエティーを見てるせいちゃんが笑う


集中なんて出来ない…


近い未来…
なんだか、とても不安になって来た…


せいちゃんにしがみついて、メソメソと泣く

『ん?あい…どうした?』

『ちょっと嫌なこと思い出した…』

直接的な言葉にはしない


でも、せいちゃんは【嫌なこと】が何を指すのか分かってくれる


頭を撫でて、頬にキスされる

『泣くなよ?もう、あいしか見てないから
よそ見は、しない!……なっ?』


また、頬にキス…


うん。と頷く


せいちゃんは優しい…

せいちゃんの、心配そうに覗き込む瞳が好き


30歳前のせいちゃんは、妻のアタシが言うのも変だけど…


大人の男性の色気が匂い立つようだった


『せいちゃん、格好いいね♪』

『ん?俺か?(笑)ハハ…よく言われ慣れてます
そんな言葉で、俺は落とされませんよ?』

ちょっと髪をかきあげて格好付けて
アタシを見る


アタシは蹴りを入れる真似をする


『落とされたら、ぶっ殺す(笑)』

『俺の奥さんは怖いね~(笑)』


二人でじゃれながら笑う


幸せなひと時……



No.389

>> 388 🙇お詫び

せいちゃんの歳、間違えてます💦

31歳です🙇💦💦

失礼しました🙇‼


No.390

それから週末を挟んで2日ほど経って
サエちゃんが気になり電話をした

『あれからどうしてる?』

『毎晩、泣いてるよ~!!
もう無理に笑うの止めたから…
ダンナも変化には気づいてるよ♪

どうしたんだ?何、泣いてんだ?って…
気になって仕方ないみたい

もう少ししたら、携帯のこと話してみるつもりでいるの!!』


『サエちゃん…すごい、ずいぶん変わったね!!

向き合うのが怖いって言ってたのに…』

『そりゃあ…怖いよ…
でも、泣けば道が開けると思ったら
なんか、吹っ切れた!

アタシ、ダンナを許せるか分かんないけど…
家庭には戻してみせるよ!!』

『うん!アタシに出来ることあったら言ってね

辛いと思うけど、ちゃんとご飯食べて、寝るんだよ?』

『…うん………
ありがとう……また電話するね…うっ…』


最後はやっぱり元気じゃなかったな…

泣いてたな…………


7年の裏切りか…アタシに耐えられるだろうか?


壊れちゃうな、絶対…

サエちゃん…頑張ってね




『ハウスちゃん、せいちゃんが…また浮気したらどうしよう…
助けてね…嫌だよう…』

フローリングに頬を寄せて泣いてしまう


想像するだけで胸が痛くなる


占い師さんの言う特訓を、毎日やってみるけど
サッパリだ……


ハズレて欲しい!



時間が経てば、経つほどに想像してしまい心が乱れ
苦しんだ…



No.391

せいちゃんの携帯も何度も覗いた

もしかしたら削除してるかも?
と思いヘッダーも覗いたが、ヘッダーの利用はされていなかった


せいちゃんは、細かいことは苦手で大雑把な性格…

今のところ、何もないみたいだ


携帯を覗いては安心して…

占い師さんの言う、見えるはずと言うことに振り回されるのも
バカバカしいと感じ初めていた


それでも、不安解消のために、こっそり携帯チェックはさせてもらっていた



秋らしくなって来た10月の初め…


サエちゃんから電話があった

『あいちゃん!!お願い!!
…彼女と会うの…ついて来て!!
お願い!!……………』

『いいよ!どうしたの?』

『ダンナに携帯見せて、『これ、仕事用って嘘でしょう!
アタシ、彼女と話したのよ!!
あなた、結婚するつもりなの?独身だって騙してるの!!??』
って泣いて話したんだ…
そしたら、既婚だってことは伝えてるけど…
信じてもらえず、別れるなら奥さんと言う人を連れて来て!!!
って言われてたらしくて…

会うことになっちゃった…でも、ダンナと三人じゃ嘘つかれそうで嫌だって言ってるらしくて…

アタシが彼女に電話して
『ダンナ抜きでお互い友達連れて四人で会いませんか?』って提案したら、OKもらえた……

はぁ…明日の夜なんだけどね、10時とか出られる?』


『なんだか、すごい展開になってるね…
10時なら、せいちゃん居てるから大丈夫だよ!!

サエちゃん…大丈夫?』



サエちゃんは、小さな声で
『参ってる………』とため息をついた


No.392

次の日、夜9時…
サエちゃんの迎えが来て、せいちゃんに子供達を見てもらい


アタシ達は、早めに店に着いてサエちゃんの話しを聞く

『ダンナの話しでは、もう5年くらい前から、既婚者であることを話し
別れ話しをしてるらしいの…

でも、信じられないって言われるんだって…

初めの2年間は、旅行行ったりしてたらしいのよ…

ダンナは狡い……!!!!
アタシが問い詰めたら、これ幸いと…
今までの話しを全部話して謝罪して、スッキリとした顔してるんだよ?
全てを話したかった、罪悪感で苦しんでた…
って涙まで流してさ…そんなことを一気に聞いてアタシは…どうすりゃいいの?

結局、こうしてダンナの尻拭いしてるバカ女…』


『サエちゃんはバカじゃないよ………
ダンナさん、ほんと狡いね…
話して楽になったのは、ダンナさんだけだよね…
相手女は?
幾つなの?結婚したがってたんでしょう?』

『あいちゃんと同い年…32歳だって
おとなしい子らしいよ?』



向こうから、その、おとなしそうな女性二人組がやって来た

店内に入るなり、携帯を取り出す姿…

『ねぇ、サエちゃん!!』アタシは顎であっちと合図した


♪♪♪♪♪~~~
♪♪♪♪♪~~~

サエちゃんの携帯が鳴る
ビンゴだ……!!!!


彼女達は強張った顔をして、テーブルに座った


『はじめまして……サエさん?』

アタシを睨む。

『アタシは友達のあいです……』

『〇〇〇の妻のサエです』
サエちゃんが頭を下げる



アタシには分かった。



彼女は、わざとアタシを妻のように挨拶したのだ…



サエちゃんへの侮辱。



No.393

なんだか苦手なタイプ。

おとなしくて賢い…学校の先生受けはいいだろう

陰では悪口言う奴ら



手ごわい感じ……
同い年か……見た目、冴えないなぁ…


サエちゃんのダンナは、サエちゃんより4つ上


だから、アタシより8つ上の40か41歳…


歳が離れると、女の査定も下がるんだな…


同い年同士ではNGだろうな…


『〇〇〇の奥さんである証拠はあるんですか?
彼は、ただ別れたくてあなたに頼んだんじゃないですか?
友達でしょう?』


サエちゃんは、黙って健康保険証を出した


家族の名前が全て載っている


彼女達はジッと健康保険証を見つめている


彼女の友達は何者だろうな……


なんで既婚者の疑いがあるなら止めさせないんだろう…

この友達にも疑問符だらけだ…


『これ、本物?』
彼女の友達が言う……

No.394

『もちろん本物です!!
ねぇ、何故ダンナと別れないんですか?
既婚者だと、もうダンナの口から聞いてますよね?』


『信じたくない…彼は、私にとって大切な…
もう私自身の一部なんです…』
彼女が少し声を荒げて話す

『落ち着いてください!
あのね、気持ちは分かりますけど…
ちゃんと現実を見ないと、あなたは、いつまでもそのままですよ?』
アタシがなだめるように話す


彼女の友達が……
『部外者は黙っててください!
奥さん…のつもりで居てるあなた…かわいそうだわ
私の彼も、既婚者でした。
以前はね…今は、私と結婚してうまくやってますよ♪
ほんとに妻だったら、よくこんな長い期間知らずに居られたね!!
ダンナを見ていないからでしょう?
別れなさいよ!!!ダンナに騙されるような妻なんて………』
バチン!!!!!!
サエちゃんが涙を流して女の友達を平手打ちした

危うく、
アタシが叩いてしまうところだった…


サエちゃんは
『何分かったような口たたくのよ!!!
あなた……あなたに、そんなこと言われたくない!
あなたこそ部外者でしょう!』


『奥さん…奥さんは〇〇〇を愛してらっしゃるんですか?』
女が友達を気にしながら聞く

『愛してなかったら、こんなところに来ないわ!!
もう……
もう、お願いだから別れてください……

子供達二人は父親が大好きなんです…

何も知らなかった…
信じていたから…疑ったことすら無かった…

いきなり7年も付き合ってる女性がいると知って………

怖かった……』
サエちゃんは、ボロボロ泣いた

彼女も『私も既婚者だと聞いて…怖かった…』
同じくボロボロ泣いた


女の友達がアタシを睨む。


アタシはタバコを吸って、女の友達に『吸いますか?』と箱を差し出す


『けっこうです…ヤンキー女さん!!』

『ハハ…ヤンキー女でいいですよ~
略奪結婚、幸せですか?』嫌みを込めて半笑いで聞く


この女友達はアタシが怖いんだ

怯えた目。

ふん。見た目でしか物が見れないバカ

二人が泣く声を聞きながら、タバコを吸う…


サエちゃん。
よくやった!!!!!


彼女は折れるよ……


No.395

『少し…奥さんと二人にして…』
彼女が言った


サエちゃんを見ると『大丈夫!!ごめん…』と手を合わせた


アタシと女友達は、違うテーブルに移った


お互い、無言…………

サエちゃんと彼女は、泣きながら二人で何かを話し合ってる様子、
特に危険な感じでは無かった



女友達が話しかけて来た
『ねぇ、幾つなの?』
『あんたの友達と、同い年って聞いてるよ?』

『えー……じゃあ、私も一緒じゃない♪』
『アドレス教えてよ♪今度、飲もうよ!!』


アタシは、引いた……

なんなんだコイツ……

『アタシは、あんまり夜出ないし悪いけど…』

『そうなんだー、けっこう面白い友達居てそう♪
ねぇ、男の子の友達居てる?』

『……まぁね…』
『私、男友達居てないんだ~!!なんか、男の子の前だと話せなくなるタイプでね…

ねぇ、紹介してよ~』


ありえねー………
コイツ嫌い。

『無理だよ。結婚してんだろ?あんた…』

『……………だけど、帰って来なかったりして…
うまく行ってないんだ…』


あれ?
話し違うくね?

略奪結婚して幸せなんじゃねぇの?


『あの子は知ってんの?』
彼女を見る


『………言ってない。やっぱり略奪って駄目なのかな~
あの子だけは、うまくやって欲しかったんだよね~

私が頑張りなよ!!ってずっと背中押し続けてたんだけどね

もう無理かな…』


あーあー!!!!!!!!!
コイツ殴りたい!!!!!

『じゃあ、こんなに長い付き合いになったのって…

あんたのせいじゃん!』


『止めてよ~(笑)
あの子には、私しか友達いないんだから…

あの子自身も、私と同じようになりたいって願ってたんですよ~』


『あっそ。………最低』


『悪いのは、お互いさま』

『はぁ?サエちゃんは悪くねぇじゃん!』

『そうかも。かわいそうよね…バカなダンナで…』


マジでコイツら殴っていいですか?


腹立つわー!!!!!!


No.396

帰り道、サエちゃんの車の中で…

サエちゃんは、痛々しいほど晴れ上がって、充血した目


でも、清々しい顔をしていた

『言いたいこと、聞きたいこと全部言えたし、聞いたし悔い無し♪』

『良かったね~!!彼女、分かってくれて!!』

『ありがとう、あいちゃんと占い師さんのおかげだよ♪』



彼女は別れを決断してダンナには
サエちゃんから別れる伝言を頼み

アドレスからダンナを削除した


サエちゃんは、ダンナと家庭を一からやり直したいと語っていた









そして、アタシはこの夜に…
ついに見えた…


サエちゃんに送ってもらって帰ると
深夜1時、家族は寝静まっていた


お風呂に入って、ベッドに入った


背中を向けて寝てるせいちゃんに
頬を寄せて、両手を当てて…せいちゃん…
占いハズレるよね?


じっと精神を集中させてみた

暗闇の中…いつもと違う…
そのまま目を閉じて集中する…


ぼんやりと裸の女が脳裏に映った…!!!

これ…まさか…

グッと集中する…裸の女が股を開き浴槽のふちに座っている
浴槽のお湯はピンク…

女が手を伸ばす…

ここは…ソープ?

これは、せいちゃんの目線……!!!



それ以上は見れなかった
見たくなかった…


自分が見えたこと…
せいちゃんのしてたこと…


クラクラとする
動機が激しい…

ああ…せいちゃん…酷いよ…


こんなもの…見たくなかった


No.397

見たくない…
見たくない…

でも、ちかい未来に裏切られるなら…

未然に防ぐしかない!


アタシは、毎晩夜中に携帯のチェックをして

眠るせいちゃんの背中に手を当てて集中して
見ていた…


色んなことが見える…
アタシの望む女性関係が見える

全て、せいちゃんの目線


特訓をした


ほとんどが風俗関係ばかり…


こんなことしてたんだ…


泣きながら眠る日が続く



そして、コツを掴みかけて来た


しっかりと日時を決めて、背中に手をやると
その女性の顔立ちまでは分からないが
おぼろげな輪郭や、髪型…


アタシは、結婚式の女を見た


アップにした髪、黒い下着姿…
若い女の子…サチコだ


集中する…


せいちゃんの手だ…

サチコが笑って抱き着く

胸があらわに見える
せいちゃんの手が胸を触る…


サチコの背中が揺れる
半分の視野でお尻が揺れる…せいちゃんの手が…
見える



もう駄目………

耐えられない…


過去は、もういらない!


未来は………



見えない。


No.398

とてつもなく辛いことだった

やめておけば良かったと、今でも後悔している


でも、過去には戻れない


バカなアタシは、止められもしない未来を
必死に防ぐために、心から血の涙を流しながら

日常生活では、笑いながら

深夜になると、【見て】いた…



寒い北風が吹く頃…

せいちゃんの、携帯メールに異変が起こる



【ななこ】
同じチームになりましたね☺
これから、よろしくお願いします‼

女扱いは、無用です(笑)
出張も男性陣に負けず、長期だろうと頑張りますよ✌⤴

――――――――――――――

【ななこ】
こちらこそよろしくお願いします‼
女性差別はしませんよ😃💦

でも、無理はしないでくださいね🍀

――――――――――――――


ななこ………
新しいチーム……
長期出張…一緒に行くんだ


この頃から、せいちゃんの会社では
女性も出張に行くようになったと聞いていた


せいちゃんと同じチームか…


やけに、ひかかる。

ただのメールの文章だが…







女の直感。



No.399

『ただいま~♪』

『おっ帰り~♪』ダッシュで抱き着き、抱っこして…
チュッ♪♪♪


いつもと変わらぬ日常…

水面下では、せいちゃんとななこは、親しげにメールのやり取りを続けていた


内容は、ごくごく普通…なのか?



【ななこ】
おはよう😃
今日も頑張りましょうね🎵
アタシ、ちょっと寝不足でキツイです~ぅ😫💦

――――――――――――――

【ななこ】
今日の昼飯は、カレーでした😃
今日は、せいさんは何食べました?

――――――――――――――

【ななこ】
今から、帰ります‼
残業、お疲れ様です😃🎵
また、明日ね~


――――――――――――――




1日に、こんな感じ。

毎日、こんな感じ。




いったい、いつから『せいさん』に変わったんだろう…


せいちゃんも、『ななこちゃん』に変わっていた





未然に防ぐ時は、この時だったんだ……


全て、後になって後悔する


アタシは、不信感を抱きながらも
同じチームなら…
こんな程度は仕方ないのかな…


と甘く考えていた。



男女の関係は、劇的に、急速に、親密になることくらい
知っていたはずなのに……


No.400

夜中にせいちゃんの背中に手を当てる…

ななこを探し出す

今日、接触した女性…

沢山いて分からない…
アタシは、ななこを見つけられないままでいた



そんなある日のメール

【ななこ】受信
せいちゃん、おはよう😃
今日、一緒にランチしようよ~🎵
社内ばっかりじゃ飽きるよねー💦
昼休み、抜けてパスタ行こうよ😃⤴

――――――――――――――

【ななこ】送信
おはよう😃
パスタか~⤴たまには、いいね😁
了解👍
ところで…二人?

――――――――――――――

【ななこ】受信
二人はマズイっすよ😁💦
Aちゃんと一緒です⤴
せいちゃんも誰か連れて来てね~✌

――――――――――――――

【ななこ】送信
了解👍

――――――――――――――

【ななこ】受信
そっかぁ、せいちゃんは19歳で結婚したんだ💦
ビックリだよ~😫
じゃあ、奥さんとはマンネリかな😁💦

――――――――――――――

【ななこ】送信
マンネリでもないけど😜
ななこは、早く彼氏見つけろよー‼
あっという間に三十路だぞ(笑)

――――――――――――――

【ななこ】
また、明日~😃
今日は、仕事楽しかったね🎵
お疲れ~🍀

――――――――――――――


会社抜け出してパスタ…行ったんだ…

三十路前の女?20代後半…

せいちゃん。ななこ。
いつの間に?
なんで…?


なんだか悲しい…


せいちゃんの背中…手を当てる

パスタ屋…集中する

ぼんやりと、茶髪のボブの女の子がせいちゃんと向き合い
笑ってフォークを動かしている
(会話は聞こえません)


この子が、ななこだ!
間違いない!!!!


どうして防ぐの?
何も起こってないのに…

でも、起こってからじゃ遅い!

明日…せいちゃんにそれとなく話してみよう…



眠れない夜を過ごした


No.401

せいちゃんを送り出す
『行って来まーす♪』
『行ってらっしゃい♪』………チュッ♪♪


子供たちも送り出し、いつものように、家事を済ませる


この頃、昼間はこたつに潜り、寝込んでいた

頭がおかしくなりそうだった

見てしまったから…
色んなものを…



昼間に、せいちゃんから電話があった

『あい、明後日から長期出張入った!
ごめんな…で、今夜はミーティングがてら、チームの連中と志気を高める飲み会だから
ご飯、いらないし。
夕方、着替えに帰るからなぁ』

『え~っ……また長期出張?もうすぐしんちゃんとアタシの誕生日だよ?
それにクリスマス…』

『ごめん!正月休みは普通に取れるから!
2月には、終わるしな!』


憂鬱だった………
ななこが…一緒なんでしょう?


夕方、せいちゃんは着替えに戻り
シャワーを浴びて、家の近所の駅前の店だから
歩いて行くと言って出掛けて行った…


子供たちと夕食を食べる

なんだか、喉が通らない…
精神安定剤を飲んで、子供たちとテレビを見て笑った

かなり、無理してる…


しんちゃんと一緒にお風呂に入った

『お父さんと入ってあげなよー!!僕だって子供じゃないし!!
お母さんとお風呂なんて恥ずかしい!』

『まだ小2のくせに~生意気!!
お母さんだって、たまにはしんちゃんと入りたいのー!!(笑)』

息子とゆっくり湯舟に浸かる

ああ…幸せ…



子供たちは、寝静まり一人でせいちゃんを待った

『なるべく早く帰って来てねー♪明日も仕事だから、辛いよ~!!』…送信


アタシは、どんなに遅くなっても泊まると連絡がない限り
いつも起きて帰りを待っていた


家で、待っててくれるのは嬉しいかなって思ってたから…



深夜1時過ぎ、
ガチャリ、せいちゃんが帰って来た


『お帰りなさーい♪』
『寝ててもいいのに…はい、ただいま!!
あ~飲んだわ……もう寝るな』

せいちゃんは、寝室へ入って行った


No.402

微かな香水のニオイ……

アタシは、結婚してからずっと同じ香水を付けてる

違うニオイには敏感。

嫌な予感………

寝室に入ると、せいちゃんがパジャマに着替えていた

『明日、朝風呂するし早めに起こしてくれな!!』

『分かった…あっ、服…洗濯物ちょうだい。
持って行くから…』

『お願いしまーす♪♪』


せいちゃんから受け取った洗濯物…
洗面所で匂いを嗅ぐ…


ニットから…ほのかに香る…女の香り

ニットに手を当てる…
見えない…

やっぱり、寝てる状態で背中しか無理みたい


ベランダで、タバコを吸う…

はぁ、出張かー…ななことお近づきになるんだろうな…

明日、釘をさしておこう
『今度、裏切ったらほんとに許さない!離婚だから!!』って…


寝室では、せいちゃんが、ぐっすりと眠っていた

せいちゃんを押すと『う~ん……』と向こうをむいて背中を見せた


手を当てる…集中…集中…
あの香りは………誰?


見えて来る…もう少し奥へ入り込む

飲んで食べて、笑い合ってる人々…カラオケをしてる場面…

手を振る人々…
茶髪のボブヘアーのななこ…がせいちゃんに向かって歩いて
抱き着く…いきなり顔が近づいた…
ななこは、目を閉じている、ななこの顔がアップにぼやけて…
せいちゃんの視界も暗くなった…

また、ななこが見えた
微笑んで何か言っている

すぐに、
タクシーが来て、ななこは乗って帰った…



これって、ななこの香り?
今のって、ななことキス?


どうして?
どうししたらいいの?!


睡眠薬を1錠多く、2錠飲んだ
精神安定剤も飲んだ…
パニックの薬は、もう飲んでいる


寝てしまいたい!!!!


早く寝てしまいたい!!!!


ロッキー!!!
どうしたらいいの?
ロッキーお姉ちゃん…どうしたらいいの?


悲しい。
悲しい。


この先…どうなってしまうの?


ななこに電話?……駄目だ…

証拠がない。

見えた…なんてバカバカし過ぎる



あぁ~……
パニック発作………!!!


くっ…苦しい…
息ができない…心臓が痛む

せいちゃん…
せいちゃん…

助けてよ………

ハァハァハァ…せいちゃんを揺する…

『んだよ……うっせーな……』
跳ね退けられ寝られてしまった


せいちゃん…………
苦しい…よ……


No.403

翌朝…いつも通りの朝

家族を見送って一人になると
睡眠薬と精神安定剤を飲んで、ベッドに潜り込んだ


全く寝付けない……
頭の中には、せいちゃんから通して見た

ななこの顔が…目を閉じるななこの顔が…

キスしたんだ…
ななこは、せいちゃんが好きなんだ…

せいちゃんは、拒ま無かった…
だって、目を………閉じたから



せいちゃんにとって、今回の出張は大事なものだった

初めて、チームのリーダーを任された大切な仕事

上司として挑む、初めての仕事


ななこと仲良くやってる暇なんかないハズだ…

せいちゃんは野心家だから、認められるチャンスを逃したりはしないハズ…

だから部下の、ななことのスキャンダルなんて有り得ないハズ…


頭の中で、自分に必死で言い聞かす

大丈夫………!!!!!



この頃、サエちゃんのことまで思う余裕が無かった

サエちゃんは、苦しんでいた…

家庭に戻ったからと言って、すぐに円満になれる訳がない
あの苦悩を知っていながら…アタシは自分のことで精一杯だった


ごめんね。サエちゃん…




定時に、せいちゃんが帰って来て
家族揃って夕食を食べた

アタシは、あまり食べられない…

『あい~、しっかり食えよ?安心して出張行けないじゃんよ?』
『うん……夜に少し話したいことがあるから…聞いてくれる?』

『はいはい。
だから、食べなさい!!あーんして?』

あーん。もぐもぐ…美味しい

ツバメのヒナの食事は、嬉しい

あーん。もぐもぐ…♪♪


せいちゃん、アタシだけ愛してね?
よそ見は嫌だよ?


お願いだから…もう、あんな悲しい思いはさせないでね?


あーん。もぐもぐ……



No.404

『お父さん!!絶対、電話ちょうだいね!!

約束だからね!!』

『分かってるよ(笑)
お父さんも、しんちゃんの声聞きたいから、絶対電話するよ!!』

『お父さん、
アタシには、メールちょうだい♪』

『分かった、ふぅちゃんにはメールするからな♪
ちゃんと返信しろよ?(笑)』


『おやすみなさーい♪』


お父さんと約束をして、子供たちは自分の部屋へ寝に行った


やっと二人…

『あいの話しって何?』
せいちゃんは、テレビを見ながら、アタシを膝に乗せて聞く


『んー…今、話すの?』

『だって今、聞きたい(笑)』

耳のピアスにキスされる


『あいの耳、スゲーな(笑)
人からみたらスゲー怖い印象だよな(笑)

俺は、好きだけど♪

あいの弱いところを守ってくれてるお守りだもんな♪』


『うん!全部、せいちゃんが買ってくれたんだよ?
…金属アレルギーでごめんね』


また、ピアスにキス…
『いいよ。あいは俺が守ってやるんだから』



せいちゃん…

そんなに優しくされたら、言いたいこと…言えないよ


…でも、言わなきゃ



『せいちゃん、携帯…見せて!!』

No.405

『ん?携帯?テーブルにあるだろ?
どうぞ(笑)』


アッサリと見せてくれた


メールの画面を見て行く


【ななこ】受信
昨日は、酔っ払っちゃった~😱
お肌ボロボロ⤵
出張頑張りましょう🍀

あれは、酔っ払ってじゃないからね😜

――――――――――――――
【ななこ】送信
俺も帰って、すぐ寝た~💤
酔っ払ってじゃなかったんだ💦
まぁ、出張頑張りましょう⤴

――――――――――――――

【ななこ】受信
明日ですね😃
2月まで、長い期間だね~😱💦

せいちゃん、頼りにしてます✌

――――――――――――――
【ななこ】送信
今夜は、早く寝てください😃‼
ななこは、女だから2月までは無理しなくていいから✋🎵

――――――――――――――


今日のメール…酔っ払ってじゃない。って…
アプローチじゃん…


『せいちゃん。ななこって誰?』

『新しくチームに入って来た子、部下だよ!!』

『親しげだね……』

『まぁ、こんなタイプだよ、誰とでもすぐに打ち解ける
あいちゃんタイプ(笑)』

『この、酔っ払ってじゃないって何?キス?』

『昨日……ななことキスした?』

いきなり本題!!!ぶち込んだ!!


『……え?はぁ?なんで~?』

『だって、夕べ、せいちゃん口にグロスがキラキラしてたもん!!』

嘘…そんなの見てない
カマをかけた。

『あ~、キャバ行ってブッサイクにやられたわ
ブチュ~って(笑)』


『ななこのは……おごりますって話し!!』


せいちゃんの体が熱くなる…
膝から体から体温上昇が伝わる


嘘つき!

……やっぱり【見た】のは嘘じゃないんだ…


『ねぇせいちゃん、アタシ…また、あんな思いしたくないよ?

もう泣きたくないよ?
次は壊れちゃうからね!!!
ほんとに離婚するから…』


せいちゃんは、大丈夫だと笑って
風呂行こう!と言って話しは終わった


伝わったかな………

携帯、すぐに見せてくれたし、せいちゃんは、ななこに興味なし

……なのかな?



お風呂から上がり、ベッドに入る


『あい……』求められるままに

せいちゃんに抱かれた


幸せな気持ちになった…


信じたい…この人を…


何度も何度もキスをした




せいちゃんは、明日のお昼前に出発………


お正月まで会えない…




12月初めのことでした


No.406

朝から、子供たちはせいちゃんとハグをして学校へ行った


せいちゃんは、荷物作り
アタシも手伝った

乾燥対策にと、内緒で買っておいた男性用化粧品をプレゼント♪

『おぉ~♪♪スゲェー嬉しい♪』
プレゼント大成功!!!


しばらく会えないから、デジカメで沢山せいちゃんを撮った


『行ってらっしゃーい、毎晩電話してね!!メールもしてね!
もう放ったらかしはヤダよ!!!』


『分かってるよ』抱き合って長いチュッ♪♪


せいちゃんは、お正月休みまで帰って来ない…




アタシは、3日目で寂しい病にかかった

だって、せいちゃんの電話が3日目から繋がらない…

すぐに留守電に切り替わる…

メールも5回に1回、短い文章しか返って来ない


何かあったのか…
それとも、ななこと楽しくやってるのか…


頭の中が狂ってしまいそうだった


一週間後……
デジカメのせいちゃんの写真を、プリントアウトして話しかける

せいちゃんは、
まるで死んだ人みたいだ


だけど、寂しくて…
アタシ達、家族だよね?

いつのまにか子供たちも、プリントアウトされたせいちゃんに
『行って来ます』と言うようになっていた


アタシは毎晩泣き暮らし、ご飯も食べられず
髪は抜け毛が酷くなり…
まだらハゲになった。


色んな【見て】しまったものが幻覚のように見えた

頭の中の妄想なのか…
幻覚なのかもわからない…

薬ばかり飲んで過ごした




🙇あいです

いつも読んでくださり、ありがとうございます☺

霊的なことで
少し、悩みがありまして…
感想スレのNO.340…もしよかったら覗いてください🙇💦

アドバイスや知識を頂けるとありがたいです💦


No.407

🙇レス頂いた皆様
ありがとうございます

行かないことにします


気分が悪くなり…
ヤバい感じです😱💦


写真の隅に、九尾キツネが写っていたのです💦


怖くて✏できませんでした🙇


遊ばれたのだと解釈し、スルーします😱‼


マジ、怖いです………😭😭😭

No.408

しんちゃんの誕生日に、せいちゃんから電話があった

『あいか?しんちゃんに代わって~!!』

しんちゃんは、楽しそうに話していた

アタシも……と順番待ちしていたが、やっと代わってもらうと
『じゃ、頑張ってな!!』

『待って!!!少しくらい話したいよ~!!』

『忙しいんだって…あいは、またな。今は無理!!』プッ………切れた。




そして…
アタシの誕生日…せいちゃんからのメールを待っていた


アタシからは、メールしない!と決めた


1日中待ったが、結局メール一つ無かった…
もちろん電話もない…

子供たちからは、ハゲを笑われて…

33歳の誕生日にハゲたアタシを面白がって
誕生日記念にとデジカメで撮られた…


ふぅちゃんも面白がって写メを撮り

せいちゃんに送信した…


アタシは、『もうヤダー!!!あんた達は~(笑)』と笑って怒って

泣き腫らした目でハゲ頭…悲しい姿で笑顔で✌サインをした

子供たちの前では陽気に振る舞った




なんて悲しい誕生日……
夜遅くにひっそり一人で泣いた



せいちゃんからの電話とメールは、ついに途絶えた

メールも返って来ない
電話もかけ直してくれない



アタシは、また
ガリガリに痩せてしまった


おまけにハゲは、進み…
ニット帽を家の中でもかぶっていた


子供たちに見せたく無かった…


もう、笑える程度のハゲじゃ無かった…


パニック発作も頻繁に起こり、アタシは力も気力も無くして行った


No.409

思考も悪くなり、薬とタバコ、ビールで生きていた

家事だけは、こなせる…不思議なことだ

子供たちの為なら動けた


でも、アタシは
ハゲた頭に泣き暮らし、毎日、プリントアウトされた、せいちゃんに
『疲れた…』と独り言をつぶやき
昼間からビールを開けることもあった


頭の中では、せいちゃんでいっぱいだった…


せいちゃんの写真に向かって、話しかけてばかりいた


プチ同窓会のメールも返信せずにいた

忘れていたのだ…完全に…



お正月休みに入り、年末に、せいちゃんが帰って来た


アタシは、この頃、多量の精神安定剤を飲んでいた
そしてビールを常に飲んでいた


それでも、子供たちには気づかれないくらい酔わない…
飲んでも飲んでも…酔えない


普通に家事をこなしていた



せいちゃんの声が玄関でした……


泣きながら、はいつくばって廊下に出た


『あい~ただい…ま………』


アタシを見て、せいちゃんは荷物を落とした


そりゃそうだ
何日間もお風呂に入った記憶がない

頭を洗うのが、怖くなって…
シャンプーを止めて…


お風呂の時間が近づくと、多量の薬とビールを飲んでやり過ごしていた


食べ物なんて…
ビールしか飲んでない。
チオビタは、毎日飲んでいたけど


人は、以外としぶとくて元気だった…



せいちゃんの目には、どう映ったんだろう?


アタシの目には、せいちゃんは別人に映った…


見たこともない、新しい服に身を包み

髪形もキマっていた。


メンズの香水の匂いもした…


せいちゃんが、垢抜けていた


どころから見ても、独身だ。



アタシは…………?



No.410

せいちゃんが帰って来て、喋りたいことも、いっぱいあったのに…


アタシは、せいちゃんに担がれて救急病院に連れて行かれた


『衰弱してますね。
入院してください。』と言われ、そのまま入院…

2泊3日…
点滴を打たれ続けた。


せいちゃんは、来てくれるけど、荷物を置いてすぐに帰ってしまった


泣いてばかりいた


子供たちもいない。
大部屋だったが、誰の目も気にせずに泣いた


夜中も泣き続けた…
看護婦さんから、注意を受ける


あんたなんかに…
あんたなんかに…アタシの気持ちが分かるかよ!!

こんなにハゲて、ガリガリで…醜い姿になって
せいちゃんにも、愛想尽かされた態度取られて…


アタシばっかりなんでだよ…!!

なんで、アタシはこんなに弱いんだろう…

なんてアタシは、もろいんだろう…


食べ物なんて見たくもない!!
テレビの音も聞きたくない!!

補聴器を外して、無の世界に入る

涙が次々と溢れ出す

ななこと、せいちゃんは
もう、きっと男女の仲なんだろうな

泣くしか出来ない…
諦めにも、絶望にも似た気持ち…


あんなに、せいちゃんが変わってた…

香水なんて付けて…新しい服を、ななこと一緒に、
ショッピングでもして、見てもらって買ったんだろう

髪形まで変えて…

ななこの趣味に合わせてるんだろうな


アタシは、なんだよ?
このザマだよ!!!!!!!!

叫びたかった。




泣き続けた入院も、大みそかに退院して来た


せいちゃんは、何も話さない

アタシも何も話さない。

子供たちは、DVD三昧で楽しそうだった

ハウスちゃんが泣いているみたいだ…
ごめんね…お母さん、元気出ないんだ


せいちゃんが、やっと喋った
『そんな、あいをお互いの実家には見せられねぇし…あいがインフルエンザだってことにしよう!』

『…別に、アタシはいいよ。なんて思われようが関係ねぇし』

『俺が出張行ってる間に、こんなんになったんだろ?
俺が悪く思われるだろ?ハゲが!』

『あぁ?てめぇが連絡一つしねーからだろうが!!』
『女と遊んでたんだろ?今さら隠すなよ?』

『あんな~、お前が働きゃいいんだよ!!
働いてる女は、みんな綺麗にしてるぞ?
お前はなんだよ?ハゲて酒飲んで…極楽だな!!』



『てめぇ…こっち来いや~』せいちゃんをリビングから離れた、ふぅちゃんの部屋へ引きずり連れて行く

No.411

アタシにとって働いてないことを指摘されるのは、とても辛いことだった

寂しく、悲しく、痛い思い出…

お母さんと一緒に居たかった。
ただいま~と元気に帰ってみたかった。

憧れてたアタシの夢を、子供たちに叶えてあげることは…
アタシのエゴなの?


働くことに抵抗があった…

今の時代にと笑われるだろうが、アタシにはトラウマだ…

『子供たちの前で喧嘩したくない!』
『アタシは…アタシだって働きたいんだよ
でも…無理なんだよ…お願い…
働いてる女性と比べないで』

『お前の口の悪さも嫌い』

『……ごめん
でも、…………アタシ』

『でもじゃねぇよ!!お前は女じゃねぇ!
最低な人間だな。悔しかったら、お前も男作れよ(笑)
そんなハゲじゃ無理だろうな!!(笑)』
せいちゃんは、笑いながらアタシの横腹を蹴った…
すかさず防御する。
体が、覚えててる…守り方を…


アタシは…自分の口の悪さは…実は…
と過去を打ち明けようとしたのに…

男作れよ?…しかも蹴りやがった!!




ふざけんな…!!!!!!!!

せいちゃんのアゴ下を拳で、力いっぱい殴る…


呆気なく、せいちゃんは膝をついた

髪をわしづかみにして持ち上げる
『てめぇのような…甘ぇ環境で育ってねぇんだよ?』
そのまま頭突きをする。

せいちゃんは、呻いて頭も床に付けた


弱い………………

アタシが強いのか?




ねぇ、せいちゃん。
あの時、あなたがアタシの話しを聞いてくれてたなら…


どうなってたかな?


きっと、違う未来を二人で歩んでいられたと思う


もっと早く打ち明けてれば…
お互いに良かったかも知れないね


今さらだけど………

No.412

大みそかの夜…アタシとせいちゃんは、話しもせずに
お互い、子供たちだけに話し…なんとなく冷めた気持ちで
テレビのカウントダウンを見ていた


カウントダウンをして
『明けましておめでとうございま~す♪♪』
ふぅちゃんと、しんちゃんが大きな声で叫ぶ

『明けましておめでとう~今年もよろしくね♪』
アタシとせいちゃんも言う


しんちゃんが突然、
『お父さん…お母さんね、毎日、毎日…これ(せいちゃんの写真を指指す)見て…お父さんに、好きだよって話してたんだよ?
でも、お父さん電話してくれないから…
お母さんの髪の毛いっぱい抜けてハゲになったんだよ!!!
お母さんがハゲたのは、お父さんのせいだー!
お母さん、お酒飲んで…寂しいから抱っこさせてって、
僕とお姉ちゃんをいっぱい抱きしめてくれたんだよ…
お父さん!!お母さんをイジメるな!!』
しんちゃんが泣いた…

ふぅちゃんも泣きながら…
『お母さんに謝ってよ!!謝ってあげてよ!!
お母さん、いっぱい抱きしめてくれたんだよ?
あんた達は、寂しくない?寂しくなったらお母さんが抱っこしてあげるね
っていつもいつも言ってくれてた…
お父さんが、お母さんをハゲさせて入院させたんだ…謝ってあげてよ…』


アタシの為に泣く我が子を、抱きしめて
アタシは、声をあげて泣いた
『ありがとう…ありがとう…
お母さん弱くてごめんね…』
泣いて泣いて…3人で抱きしめ合った


せいちゃんは無言。

そして小さな声で…耳を疑うことを言った


『お母さんの気持ちなんて、俺知らねぇーし』


ふぅちゃんが、クッションを投げつけて
『最低!!!!お母さんが…かわいそう…』
と、また泣いた


『もう大丈夫だから、寝なさい…』
ふぅちゃんを抱きしめて、しんちゃんを抱きしめて…

『お母さんを…心配してくれてたんだね、
優しいね…二人とも…大好きよ』
ニッコリと微笑んで、安心させて
子供たちは、自分の部屋へ行った



『はぁー………』せいちゃんが大きなため息をつく

『ななこんとこ行きてぇわ』

………………!!!!!!!
信じられない!!!!



『ななこと仲いいんだね…』

『付き合ってるからね。仲良くて当たり前だし』


胸をえぐられるような気持ちとは…
このことだ…!!!


隠すこともせずに…開き直り…


ありえない。


せいちゃんが、携帯を渡した

『見てみろよ(笑)』

No.413

携帯を手渡され…
ボーっとしてしまった。

『俺、風呂入って来るわ~♪ごゆっくり(笑)』

我が家の浴室にはテレビがついている
せいちゃん一人だと、1時間はダラダラと入っている


アタシは携帯を見た

メールBoxは、ななこだらけ……

適当に、しんちゃんの誕生日から交互に見て行く


【ななこ】送信
ごめんなー💦
息子の誕生日だから📱してた💦
今から、部屋行きます❤

――――――――――――――
【ななこ】受信
明日の、休みショッピング行こうよ❤

たまには外でデートしよう😁🎵
今夜は、アタシがそっち行きます❤
夜に決めよう⤴

――――――――――――――
【ななこ】受信
昨日、言ってたこと本気?
アタシは、せいちゃんと一緒に居たいけど…

あいが許さないでしょう😢?

――――――――――――――
【ななこ】送信
あいのことなら、気にするな✋
あいは、強い女だから愛人いても平気🎵

ずっとななこと居たい❤
今夜❤そっち行く😍
――――――――――――――
【ななこ】受信
今夜は、来て🎵
だって、せいちゃんの部屋汚いもん😫

ななこちゃんが待ってます❤
――――――――――――――
【ななこ】送信
了解👍💕
なぁ、今夜は上に乗ってよ😁
俺、腰痛い💦
誰のせいかな~❤
エロななこ❤好きだよ❤
――――――――――――――
【ななこ】受信
今日は、〇〇君と飲んで来ます‼
ごめん😢
帰ったら📱するから来てね❤
――――――――――――――
【ななこ】送信
なぁ、毎晩毎晩…ちょっとキツイよ💦💕

今日は、寄り添って寝ようぜ?
ごめん😫したいけど、腰痛いのよ…
――――――――――――――
【ななこ】受信
おやじ~😜

頑張ってヤレ❤❤‼‼
気持ち良くさせて😍⤴
愛してるからね❤
――――――――――――――
【ななこ】送信
帰ったら、あいに言うわ‼
コソコソと付き合いたくないし😃
俺を選んで、好きになってくれてありがとう❤
――――――――――――――
【ななこ】受信
あい、死んだらどうすんの😱
ま、死んでもアタシはいいけどね❤(笑)
――――――――――――――
【ななこ】受信
あいに、アタシが言ってあげるよ👍
せいちゃんからだと、せいちゃん優しいから…
心配😔
――――――――――――――
【ななこ】送信
まぁ、なんとでもなる‼

ずっと一緒に居ような❤
愛してる❤


ああ…
もう…見れない…悪魔…


No.414

何故、せいちゃんが携帯を見せたか分かった

口で言う前に、
これを見て悟れ……と言うことなんだろう…


トイレに走った
何度もオエっとなる…
鼻水…涙…胃液…

ぐちゃぐちゃになって、便器にもたれ掛かった


あいは強い?…どころが?

死にたい…

死んじゃうよ…


死ねばいい!!みなからも、ななこからも言われた


鋭く痛い言葉のナイフ…


せいちゃんも…望んでるのかな…


さっき見たばかりのメールの文字が蘇る

せいちゃんの言葉…

『ハゲ』『悔しかったら、男作れ…』『女じゃねぇ』

頭が…心が…痛い。痛い。


痛いよ………

誰か助けて、誰か…

助けてください



アタシは、便器にもたれるように
意識を失った…



今朝、退院して来たばかりなのに…


損ばかり。



No.415

体を揺すぶられた
『オラ~!!あい、起きろ!』
ゆっくりと目を覚まし、体を起こした

『こんな所で寝てんな!ハゲ!!!』


……夢じゃないんだ…

酷いよ、せいちゃん…
涙が出る

『ウザい。ウザい。泣くな』

アタシはリビングに連れて行かれた

『読んだ?(笑)』

………言葉もでない。


『まあー、ななこは愛人ってか彼女だから理解しろよ?』


せいちゃんが、電話をかける

『あけおめ~♪ななこ、今年も仲良くしてな♪


…ああ、大丈夫だから、うん大丈夫!!
(何が大丈夫なの?)

代わる?いいよ~』

携帯を突き出された

『出ろよ!ななこから』



『………ヤダ』

ガタン!!!!蹴られた…

『マジ、出ろって!』

くそ…コイツら…

『はい。』
アタシは電話に出た

『あ~♪あいさん?ななこです
せいちゃんから聞いてくれたと思うけど、アタシら付き合ってるから♪
よろしくね~♪♪』

『ふざけんな!てめぇ、誰がいいって言った?
顔出せよ!!殴り殺して……



いきなり痛みが走った
バシッ…!!ガチャン…!!

せいちゃんに殴られ、蹴られる…

『効かねーぇんだよ!てめぇのヘナチョコパンチなんてよぉー!!!!』

アタシも立ち上がり、横っ面に拳をぶち込んだ

またまた、呆気なく、せいちゃんはフラつく
みぞおちに拳をもう一発!!!

せいちゃんは、膝をついた


怒りが収まらないアタシは、さらに背中を蹴り飛ばした

ドタン!!!
せいちゃんは、うずくまった


『弱ぇくせに!!(笑)イキがんな!!』

頭を持ち上げ、顔をビンタした



携帯を拾う


『もしもし?聞こえる?』

『…………何だったの?』

『あんたのせいちゃん、殴ってやったの。

………あんたも顔出せよ!!
殴り殺してやる!!』


『ぷっ(笑)ハハハ…
おかし~ぃ(笑)
噂通り、怖い人だね~(笑)
アタシ、別に怖くないから♪
アハハハ~超ウケるね!!!
じゃあ、よろしくね~!!バイバーイ♪』




…………すっげぇ女。





せいちゃん…こんな女が好きなの?


バカじゃん。






アタシは、切られた携帯を握りしめ

うずくまるせいちゃんを見つめて泣いた…



バカ男。バカ女。


涙が止まらない……



せいちゃんが暴力振るった



ただ、ただ、悲しい。


No.416

せいちゃんに声をかけることもなく
お風呂に入った


ほんとに久しぶりのお風呂だった

涙が流れる

湯舟に顔を付けて泣く
(そしたら、あんまり目が腫れない)

胸下くらいのストレートの髪は、もう頭、全体的にバーコードだった

シャンプーをするが、頭皮に指が当たる感触に
ため息が出る……


体を念入りに洗い、Bodyスクラブを何回も使い、垢を落とす


ガリガリに痩せた体は、あばらが見えて
パニックの最初と同じような、骨と皮…

胸と呼べるものも、わずかな膨らみしかない



洗顔をして、顔用のスクラブで顔も綺麗にした



サッパリした。


せいちゃんのことも、サッパリしたい…


子供たちの泣いた姿…







もう別れよう。





あんな人…
もう、いらない。

No.417

いつも平気だったけど、裸を見られたくない

バスタオルを体に巻き付け、リビングにBodyクリームを、
寝室に下着、パジャマを取りに走った

下着は、絶対『赤』だ!
気持ちに喝を入れる

クリームを、念入りに体に塗り込む


もう、これ以上、自分を痛めるのは嫌だ

早く綺麗な体になりたい



着替えをして、リビングに戻り、顔のケアを念入りにした


せいちゃんは、黙ったままでソファーに座っていた


『あい…別れるとか、無しだからな?!』


………はぁ?意味分かんねぇ

無視。


『俺、あいがいないと駄目なんだ…
急に怖くなって来た…別れないからな!!
めちゃくちゃ惚れてるんだよ…あい!!!』


……なんだコイツ


無視。


『なぁ…あい…あい…
あいって、スゲー強いのな(笑)
こんなに痩せて弱ってる女に、俺ボコボコ(笑)
あい、喧嘩慣れしてんだな(笑)
さすがカッコイイ~♪♪』


コイツ…アタシが暴力をどんだけ嫌ってるか…

アタシは、素人の喧嘩を生で毎日見て来たんだよ!!


大好きな二人の異常過ぎる喧嘩を…


年の開いた末っ子で、家族からせいちゃん。
せいちゃん。
なんて…甘やかされて育ってねぇんだよ!


心の中は、怒りで爆発しそうだった


でも、
無視。
無関心。


あなたは、アタシの心から消えてください


サヨナラ。


No.418

携帯を見ると、みんなから『あけおめ』メールが沢山届いていた


はぁ。
とんでもない年明けだ…


アタシも、『あけおめ』メールを返す

深夜3時過ぎ…
テレビは賑やかだ…


『なぁ、あい!!
好きだよ~なんとか話してくれよ!!』


アタシは、せいちゃんをチラリと見て、補聴器を外した。


聞きたくありません。
…意思表示。


同窓会メンバーには、
『明けましておめでとう☺✌
ごめん😫💦ちょっと入院してた💦
今日、退院したばっかりだから…⤵4日の同窓会、今回はパスします😭‼
楽しんで来てね~😉』
と送った


タニは、入院なんて聞いたら、きっと実家に顔を出すだろうな…

ヤバいな。

タニだけに、別メール
『さっきのは、みんな宛て💦
入院は事実なんだけど…
色々あって、ちょっと参ってるんだ😫⤵

実家には内緒ね‼
なんとか頑張るから、タニも、みんなに話し合わせといて‼
ごめんねー💦
楽しんで来てね~😁⤴』
…送信


すぐにタニからメールが届いた

『どうした?!
参ってるって…どんな状況なんだ?
あいが参るって…ハンパない状況なんじゃねーの😫‼

一人で抱え込むなよ⤵
俺には、言えよ😁✌
気が向くまで待ってるから、ヘルプして来いよ⤴』


涙が出る……

優しさに触れると…涙が出て弱ってしまう


弱虫なアタシが助けを求める…


タニ…助けて…


せいちゃんは、ずっとこっちを見つめていた

ゾクッ……怖くなった


No.419

タバコを吸いにベランダへ出る

ぼんやりと、これからのことを考えていた


手に持っていた携帯が光る

画面を見た…怒りに震えた

【せいちゃん】受信
人を愛することは、悪いことですか?

俺は、あいも、ななこも愛しています

二人を幸せにしたい

――――――――――――――

何これ…
何言ってんだ?コイツ…


アタシは、不倫女じゃねぇから、両方愛してるとか理解できねぇ!


タバコの煙りで怒りを吐き出す

収まらない…


怒り。
悲しみ。
悔しさ。


ごちゃ混ぜになった、この気持ち…

やり場のない…この気持ち…

せいちゃんにメールを送る


【せいちゃん】送信
バカにすんな!!!

アタシ、明日、ちょっと人に会って来るから

子供たち見てください。

――――――――――――――


タニに…相談しよう


この頭も…なんとかしてもらいたい


もう嫌だ………

ななこの声が、頭に響き渡る


ななこ…あんたは、二人を好きだって知ってるの?

自分だけが愛されてるって思ってるんじゃない?


このバカは…
こんなメールよこして来るんだよ?


欲しいなら、100%心まで奪ってしまえよ


もう…
疲れたよ…泣いて泣いて


何故、涙が出るのか分からなかった


好きだから?

裏切られて?


とにかく、耐えられない…


リビングに入ると、せいちゃんに抱き着かれた

耳元で『あいも好きなんだ…絶対、離さない』と言われた


力いっぱい突き放す…

簡単に離れてくれない


力が入り過ぎて、息苦しい……

助けて…


苦しい…

全てが苦しい………


『ななこに、あいのアドレス送っといたから
仲良くしてやってな…


三人で仲良く………



ドカッ!!!!
思わず蹴ってしまった


『何が、三人で仲良くだよ?ふざけんな!!!!

勝手なことすんなよー』

涙が出て、声が震える…


悲しみから…怒りから…
震える声で叫んで、寝室に走った


ベッドに潜り込んで、タニにメールを打つ


『明日、会って!!!
タニ、助けて!!!』


すぐに返信が来た

『絶対、行く。
守ってやるから、安心して寝なさい😊
明日、📱してね

おやすみ🍀🍀🍀』


………タニ…!!!!


携帯を抱きしめて泣いた


No.420

泣いていると、せいちゃんが入って来た

ベッドに入って来るなり、覆いかぶさる

『やめて~!!』
必死に抵抗するけど、毛布が邪魔で…

布団が邪魔で…

顔を背けて、力いっぱい体をよじる


両手を掴まれて、無理矢理なキスをされた…

『大声出したら、子供が起きるよ…』耳元で脅された

これは、脅しだ……


パジャマをめくりあげられる

『嫌だ…嫌だ…嫌だ…』泣くしかできなかった


だって……
拒むなら生でするぞ。と言われたから…


アタシは…子供がもう授かっても無事に産んであげられない…

避妊は絶対に必要だから…


泣きながら受け入れた

なんて辛い行為なんだろう…

耳元で
『あい…愛してる…好きだよ…』
囁かれるが…
これはレイプだ!!!!

早く終われ!!!
早く早く終われ!!!!


泣きながら願い続けた

『ななこは、中をギュッと締めてくれるよ
あいも、やってみて…』

悲しくておかしくなりそう……


こんな時まで、ななこの事を言うの?


どうしてしまったの…せいちゃん…

あなたは、そんなに酷い人じゃ無かったはずだよ


ななこと出会って、狂ってしまったんだね


すごくすごく…好きだったのに
あの、優しいせいちゃんは何処に行ったの?


『ななこから3Pしてもいいよって誘われた…

あいは…?いい…?』



泣いて…体をされるがままにされてたアタシ


金づちで、頭を殴られたような衝撃…

3P…?


手首を持つ、せいちゃんの手を思いっきり噛んだ

『痛てっ……』離されて自由になった手で、顔面にパンチを決めた。


鼻血が垂れて、顔面を抑えるせいちゃん…


『てめぇら最低!!!!!!』
叫んで、パジャマと下着を握りしめトイレに篭った


泣けて、泣けて、仕方なかった…


ダンナである、せいちゃんの口から3P…なんて…

信じたくない!!!

ななこが誘った?

ななこは、どういう神経してるんだよ?


どうしちゃったんだよ!!

もう、嫌だよ……

泣いてる自分も嫌だ。



今夜は…寝たくない…


また、冷蔵庫を開けて、精神安定剤を沢山とビールを飲んだ




こたつに潜り込み
早く、朝になってよ!!!と願った…


No.421

アタシは、こたつで寝てしまったようで…

『おはよう~!!明けましておめでとう!!』と笑う、しんちゃんの声で目覚めた


時計は6時半…
『おめでとう~しんちゃん!!今朝も早いね~』


しんちゃんは、サンタさんから貰ったゲームをしたくて
冬休みは、朝早く起きてゲーム三昧だ


『お母さん、もう起きてたの?僕より早いじゃん♪』

『うん…寒くて、こたつで温まってたよ
お正月なのに…今年は、お節料理作れなかった
ごめんね』

『僕、お節料理嫌い~!!おもち食べたい!!』

アタシはホッとして笑った
『じゃあ、お雑煮だけ作るからね♪』

重い体を起こして、着替えを済ませた

ベッドで寝ているせいちゃんを見ると
怒りよりも、悲しみで胸が張り裂けそうだった


昨日の事が、蘇る……

壮絶な大みそかだった…
壮絶な年明けだった…


まさか…あんな事になるなんて

占い師さんは、確かに当たったけど…
何のアドバイスも意味も無かった、ただ【見えた】事により
悲しみが増えただけだった…

未然に防げると言われただけに、手の届かない出張先で愛を育まれ…

どうしたら良かったんだろう…と自分を責めてしまうだけの結果になった


顔を洗いながら、泣けて来る…


ただ、ただ悲しくて…
ななこの事も、暴力の事も、レイプまがいな事も
全てが悲しくて泣いた

ジャブジャブと顔を何回も洗い、落ちる涙を必死で洗った


顔を上げると
鏡には、全体的にバーコード頭の醜く惨めな
アタシの姿があった…


誰だよ…あんた…大丈夫かよ?

痛々しい女…


ああ、タニは…こんなアタシをどう思うだろうか?

お願いだから引かないでね…

必要以上に、聞かないでね…


タニの優しさに少しだけ触れさせてください

ずるいアタシを許してください…



ふと、
タニ…彼女…居るのかな?


彼女が居るなら…
会うのはやめよう…


鏡のアタシに、小声で話しかける
『あんた、負けたら駄目だよ!!しっかりしなさい!情けないよ!』


さてと、お雑煮作ろう!


No.422

8時過ぎ、久しぶりに丁寧にメイクをした

ラメを軽くハケで顔やデコルテに乗せて
ガリガリだけど、なんとか見れる自分になれた


全身を鏡に映す。
脚が細くなり過ぎて、気持ち悪い…

ジーンズに履き変えるために寝室へ行った

着替え直して、せいちゃんを起こす…
チカチカと光るせいちゃんの携帯…

メールを見た。
【ななこ】受信
おはよう😃
あけおめだね☺❤
お正月は、暇だよ~⤵
初詣で一緒に行きたいな🍀⤴
子供達にも合わせ欲しいし、せいちゃんの家族の一員として紹介してよ😉

これからは、あいとも仲良くやってかなきゃだし😃💦

良かったら、自宅にお招きよろしく~❤

無理なら、徐々にでいいよ‼

せいちゃんも、家族もいきなりはテンパるもんね✌✨
理解してもらえるように、少しづつ…
茨の道、歩もうね☺❤

――――――――――――――

ハラワタが煮え繰り返った!!!

ななこは、家族の一員として…この家庭に入り込むつもりなのか!!!

いつの時代の人間だよ!!

『華麗なる一族』の愛人かよ?

ここは、日本だ…ありえない。


アタシは、思わず返信した

【ななこ】
無理。

――――――――――――――

たった一言…
そして、せいちゃんを起こした

『ん~…正月か…おはよう…』せいちゃんが起きる

『あっ!!!!忘れるとこだった!!!』
リビングに走って行った


『お父さん、おはよう~おめでとうー♪』
夕べの事など無かったように、ふぅちゃんが笑いかける

『おう!ふぅちゃん、あけおめ♪』

そして、せいちゃんは……
電話を持った

『明けましておめでとうございます!
お義母さん、今年はですね…あいがインフルエンザにかかりまして…

はい。あ、大丈夫です!!
今は、寝てますが…病院にも連れて行きました

はい…いえ、みんな元気ですよ。ありがとうございます

ご心配なさらずに…
あ、僕は大丈夫ですから、
はい。伝えておきます、
いえいえ…

こちらこそ今年もよろしくお願いします
お義父さんにも、よろしくお伝えください
では、失礼します…』


アタシは、せいちゃんを睨みつける

『あ、母ちゃん?
おめでとう~。うん、うん
それが、今年はあいがインフルエンザでさー
悪い!!
うん、大丈夫だよ。
アハハ…はいはい。分かりましたよ
今年もよろしく!!じゃあ、また顔出すから…はいよ~』


スゲーな、コイツの神経。

No.423

家族揃って、お正月の挨拶をして
子供達にお年玉をあげる

みんなでお雑煮を食べた

しんちゃんが『お父さん、ちゃんとお母さんに謝った?』

『あぁ、ごめんな、心配させて…お母さんとは仲直りしたから安心してな

ふぅちゃんも、ごめんな…』

『良かった~♪♪』二人が手を取り合って喜ぶ…

『もう、絶対にお母さんを泣かせないでね!!』
ふぅちゃんが念を押す

笑ってるせいちゃん…ごまかしてるようにしか見えない


10時過ぎに、タニからメールが入る

『俺は、いつでも迎えに行けるよ✌
ちゃんとダンナには言ってから来いよ🎵
📱待ってまーす🍀』


『あのね、お母さん今日、友達と遊ぶ約束してるんだけど行って来てもいい?』

ふぅちゃんが『行って来なさ~い♪良かった~♪お母さん、ずっと引きこもりだったから心配だったよ!!
遊んで来なさい!』と言ってくれた

しんちゃんも『良かったねー♪』と笑った


『せいちゃん、タニと会って来るね』

『あい、楽しんで来いよ♪二人か?』

『うん、二人』『OK♪』

あっさりとOKだ。
ほんとに、男作れって思ってるのかな?


『あけおめ~♪タニ、アタシも準備できてるよ♪』

『おう!じゃあ、着いたら携帯鳴らすわ!』

『ありがとう…ねぇタニ!!……今、彼女いないの?
もし、居てるなら会わないし…』

『そんな心配(笑)残念ながらフリーですから、安心してください(笑)』

30分後、携帯が鳴る
タニが迎えに来てくれた


アタシは、ニット帽を被り、待ち合わせ場所まで走って行った


『明けましておめでとう~♪』
助手席に乗る…タニが微笑む

早速、泣きたくなる…

『何処行きますか?あいちゃん?』

アタシは、涙目でニット帽を取った……



ハッと目を見開くタニの顔…
青く顔色が変わっていく…
『あい…ちょっと…マジかよ…あい…なんでこんな…』
タニに抱きしめられた


タニの温もりが伝わる…優しさが伝わる…

涙が勝手に出てしまう
必死でこらえた嗚咽が漏れる…

『あい。俺の店行こう!』
タニは、結婚破談後に独立してお店を持っていた


『少しは、マシになる?』
『絶対、なんとかしてやる………
何に追い詰められた?』


タニの真剣な顔つき…

アタシは答えることができなかった


『今は…話したくない…』

ポンポンと頭に手をやってくれる


この優しさに埋もれてしまいたい……

No.424

タニの経営する美容室は、とてもオシャレだった
白を基調とする壁、大理石みたいな床に、真っ赤な椅子が列び
観葉植物が、癒しの空間も醸し出している


螺旋階段になっていて、2階は、貸衣裳とネイルサロンが、テナントとして入っているらしい

空間に区切りがなく、オシャレをするための場所と言う感じ


『わぉ!!タニってスゲーぇー♪♪』
改めて、タニを尊敬した

タニは2号店も持っていることを、お店の名刺を見て初めて知った


自慢することもなく、すっとぼけるタニ…

なんだか、想像以上のお店だった


椅子に座り、頭を見てもらう

食べて無かったこと、ちょっと悩みがあったことを伝えた


『あい、髪とかすよ?』

『……うん』
見えないように、さりげなく気をつけてくれたタニ…

アタシは、しっかり見てしまった

クシに髪の毛がゴッソリと絡みついて抜けたとこ…

悲しくて泣きたくなる

頭皮マッサージ付きのシャンプー台に乗って
泡でモコモコと自動で洗ってもらう

タニと話したいけど、補聴器がなくて無理だ…

耳元で『あい、元気ないな…助けてって、髪のことじゃないだろ?
髪が抜けた原因から、助けて欲しいんだろ?』

優しい声……

せいちゃんの事…
せいちゃんの豹変ぶり、ななこから受けた屈辱…が頭に浮かび上がり
泣きそうになる


『ごめん。今は…後で話すから…
ねぇ、タニ側に居て…』

タニは手を握ってくれた


それにしても、マッサージ付きの自動シャンプー台は長いな…
でも、モコモコで気持ちいい…


タニの手の温もりと、泡に包まれた頭の心地良さに、うかつにも寝てしまった(笑)

後で散々笑われたが、タニはずっと手を繋いでくれた

泡は終わり、頭皮マッサージをしてくれた
シューっと炭酸みたいなやつを頭に塗ってくれた


補聴器が欲しい。

タニの声が聞きたい。


鏡に映る自分の醜くさ…
半泣きな顔…

そして、
真剣なタニの顔を見ていた。


アタシは、ショートボブにしてもらった


ボブのウイッグもプレゼントしてもらった


被って見たら、いい感じ♪♪

喜んでウイッグを被っていた


『腹減ったなー』時計を見ると2時前だった

『えーっ!!!!2時間以上も経ってたんだ!!!』


アタシ達は、タニの店の向かいにあるスーパーで
お惣菜を買って
タニのスタッフさん達の休憩室で、二人でご飯を食べた


No.425

タニと居ると心地いい
嫌な現実から、逃げてるだけだと頭では理解してる…

だけど、何も話さなくてもタニの空気がアタシを癒してくれる


男として、見てない訳じゃない

だけど、
安心できるのは何故だろう…

気取ったりしなくていい

素の自分が出せる。
昔からの付き合いだからか、付き合っていた元彼だからか…


『あい、無理にはきかない。話したいことだけ話してよ?』

『……アタシ、アタシね…せいちゃんに…うっうう……』
話そうとすると泣いてしまう

『うん…ゆっくりでいいよ?』

深呼吸をして、タバコを吸わせてもらう

『せいちゃんに…何回も裏切られてたの…
そしてね…
今、また新しい女ができて…………』

『……ゆっくり…ね?』
うん。と頷く

『新しい女ができて、公認の愛人みたいなことに……うっ…えっ…
なっちゃってるの…でも嫌なの

アタシは、認めてないし、嫌なの!!!』
簡潔に話し終わり、泣いた

タバコをタニが取り上げて消してくれた

タニに頭を撫でてもらう

ウイッグが邪魔で温もりが感じられない…

ウイッグを取りたくなった…
けど、醜いアタシを見せるのは…もっと嫌だった


タニの優しさに…逃げてるアタシ…

こんなアタシを自分が責める…

弱虫!!!男に頼って優しくされて!!
癒されてるなんて…思うアタシは最低…

不倫でも望んでる女の行動みたい!!
アタシって最低ー!!!


自分の内からの責めに、ますます泣く
声を上げて泣く…『辛いよー!!苦しんだよ~!!』


どうして、自分が自分の味方になってくれないの?

……これが理性なの?


『タニ……助けてよ…』

タニの手を掴んで、手を頬に寄せた


タニは、涙を手のひらで拭ってくれた…


『鼻水は、ティッシュ使ってくれよ?(笑)』

『プッ…ハハ(笑)』思わず笑った


No.426

『あい…俺にどうして欲しい?』
タニが聞く

アタシは、隠すこともなく
ブブ~ゥと鼻を噛みながらタニを見つめた

なんて色気のないアタシ(笑)

『どうしてくれるの?』

『……守ってやりたい。でも、守り方が分からない…』タニのため息

『じゃあ、また辛くなったら助けて欲しい!!』
『当たり前だろうが…分かったよ♪』
『…でも彼女が出来たら、きちんと言って!!…そして離れてね』
『ん~…多分ないな。俺もう女は、信じられないし…仕事に集中したいから、女はいらね~!!』

『…ほんと?でも、タニだって風俗とか行ったりするでしょ?』

タニは爆笑した

『ないない(笑)あんなとこ行かねーよ(笑)』

『えっ?そうなんだ!』
『なんで?ダンナ行くのか?』
『……うん、行く』
『クソだな。…あいがいるのに…なんか普通にしてたけど、女まで作って…
何考えてんだ?
あいのダンナ…ぶん殴りてーぇ!!!』

タニは、アタシを思いきり抱きしめて
『泣かされてんなよ…』と言った


頷くのが精一杯だった


これ以上…優しくされたら弱虫が出て来ちゃう


タニ……助けて…全てのことからアタシを守ってよ~!!!


胸で叫ぶ。


子供達のことを考えると、口にすべきことではないと…
分かってる…


No.427

しばらくタニにしがみついて泣いた

ブブゥ~と何回も鼻をかんだ。


泣いても泣いても、現実は変わらない…!!!!

……………!!!!!!!
頭のスイッチが切り替わった

どうせ変わらないなら、楽しく過ごしたい

『ねぇ、タニは何時まで付き合ってくれるの?』

『ん?まぁ…人妻で野郎と二人だしなぁ…
10時には帰さなきゃな~』
『ヤダー!……もっと居るもん♪♪』
『バカ。狼になるぞ(笑)』
『変身するの?タニが?アハハ…♪じゃあ、シンデレラタイムで帰ります!!』
『まぁ、ギリギリ人間で付き合いますか(笑)』

休憩室は、フローリングで、こたつがあってテレビもあって
小さなキッチンもあった

タニが、忙しい時はここで寝られるように、布団もあった


『アタシ、家出したらここ借りて隠れようかな~♪
快適じゃん!前は深夜までのスーパーだし♪』

『まあー家出なんかしなくてもいい方法、考えようぜ』

タニが、せいちゃんの話しを詳しく聞き出したいオーラが伝わって来る…


『アタシさー、話したくないんだ…
助けてなんて言っておきながら…だけど…
まだ、整理つかなくて…頭の中も心の中も、グチャグチャで…ごめん…』


タニは、静かに自分が彼女に浮気された話しや


結婚を目前に、男と逃げられた時のショック、
女を信じられなくなった、結婚破談後の話しをしてくれた


タニは、いつだって優しくて思いやりがある
頼りになるし、格好いいしオシャレだし
何よりもハートがピュアだ…


こんな人を裏切るなんて考えられない!

きっと、相手がどんな男でも裏切る女なんだろうな…


タニがボソッと
『俺の何が悪いんだろうな…自分で分からないってイタいよな……』
とつぶやいた。


『おんなじ気持ちだ……
アタシも自分の何が悪いのか、分からない…』
タニと同じように、つぶやいた


『分からない…イタい女だねアタシ…
せいちゃんには、女じゃないって言われたし、口が悪いって言われたし…

きっと理由なんて沢山あるんだろうな…
でも、肝心なとこが分からない…
アタシも相当イタい女だ…』

思い出せば自然と涙が溢れた

悲しい……

タニが『あいのいいところ、悪いところ…
天秤にかけても、いいところの方が断然多いよ!!

あいのハートが綺麗なところ。
一番は、やっぱりそこだろ?人は…
だから、あいはそのままでいいよ』

胸が熱い…泣いた……


No.428

アタシはメイクを直し、タニと近くのカラオケに行き、懐メロ合戦をした

また、休憩室に戻り色んな話しをして
シンデレラタイムで送ってもらい自宅へ帰った


せいちゃんは、起きていて携帯で話し笑っていた

相手はななこだろう…

無視して、一人でお風呂に入った

途中で、せいちゃんが入って来る
『なんで一人で入るんだ?楽しんできたか?
ヤッてきたか?(笑)』

………!!!

頭に来て、思わず平手打ちをした

『痛って~!!あいだって男作ればいいって言っただろ?
遠慮なんかすんなよ?
お互い、好きにしたらいいじゃん…
人を愛せる女になれよ?』

狂ってる……

無視して体を綺麗に洗い
上がった。


薬を飲み、タバコを吸いながらタニに、ありがとうメールを送った


せいちゃんは、鏡の前で自慢のヒゲの手入れをしている…

無言のままベッドに入り、眠れない夜を過ごした


次の日は、せいちゃんの出張中の洗濯をした

ほのかに残る、女性用の香水の香り…

吐き気と苛立ち、悲しみと闘いながら洗濯機に入れた


昼過ぎ…アタシの携帯にななこから、メールが入る

『これからは、あいさんと仲良くして行きたいので😃🎵
よろしくね✌⤴
夫婦の愚痴等、聞きますよ🍀
アタシから、せいちゃんに叱ってあげるから、なんでも話してね🎵』

……本気?マジでバカ?

イライラとする。

子供達とせいちゃんは、お正月映画を見に行っていた


ななこから、携帯が鳴る

『もしもし♪ななこです
今日は、せいちゃん達映画で、今留守だよね~』

『なんのつもり?話すことなんてないんだけど!』

『ねぇ仲良くしようよ♪
アタシの顔知らないでしょ?また、写メ送るからね!!』

『あんたに興味ないし、切るわ!!
あ!あんたさーどうせなら中途半端な立場はやめて、せいちゃんの心も全て奪ったら?
アタシ、離婚考えてるし』

『待って、待って!!(笑)アタシは、今がいいの♪
仲良くみんなで暮らしたいんだよ~!!
離婚なんてやめて!!
また、近所に引っ越しとかすると思うし
よろしくね♪♪』

『意味分かんねー…略奪したらいいじゃん
近所に引っ越し?
アタシ、近所に友達とか、良くしてくれるおばさんとかいっぱい居るよ?
あんたが引っ越して来ても、この地域には住めないよ?
現実見たら?』

『女友達は、ダンナや彼氏、寝取っちゃったから…
友達いないんだ~』

『知るかよ!!』

No.429

『知るかよ!!』プッ。

頭に来て携帯を切った


まただ…涙が止まらない…
もう気持ちもグチャグチャで、何をどうしたらいいのかも分からない…


苦しみから逃げるように、薬を多めに流し込む


ハァハァ……ハァ息ができない…
苦しい……助けて…
心臓が破裂しちゃう…

死ぬのなら、もうこのまま…死んでもいい…

苦しい…なにもかもが苦しい…

アタシはなんの為に生きてるの?

なんの為に生まれて来たの?

そんなに多くを望んでる訳じゃない

ただ穏やかに普通に生きたい…

なにも贅沢を望んでないハズなのに…それなのに…

何故こんな仕打ちを受けるのだろうか


空に向かって土下座する

『お願いします…お願いですから…
もうやめてください!
こんなに辛い…アタシは壊れてしまいます
これ以上は、無理なのです…
神さま、もう平穏をアタシに与えてくれませんか?
アタシは、何か悪いことをしたのですか?
お願いします…答えてください

アタシは、誰かを苦しめたのでしょうか?

だったら謝罪します…

申し訳ありませんでした…
どうか、お許しください…
苦しみました、まだ足りませんか?
お許しください…』

泣きながら、空に向かって深々と頭を下げながら話した


顔を上げてみても、ただ空は青く…
なんの変化もなかった


言葉もなく、空を見つめ続けた


何か、何か…答えてくれるのではないか…

バカみたいな期待をしながら、空と向き合っていた


夕方まで、ずっとずっと見つめ続けていた


ほんとに、
悲しい…悲しい…時間でした



何度、こんな風に空と向き合って来ただろう



ロッキー…助けて…

また、ロッキーを呼ぶ


心の中で、アタシを支えてロッキー…

お姉ちゃんを支えてね、大好きなロッキー…


ガチガチの心が少し、緩んだ気がした

ありがとうロッキー…


手を合わせロッキーに感謝を伝える


現実を受け入れられる力をください…





地獄の始まりだった


No.430

真っ暗な部屋に、ガチャガチャせいちゃんと子供達が帰って来た

『あ~あ~陰気臭せ~、電気くらい付けろ!』

アタシは、膝を抱えてソファーにもたれていた

『飯は?』
『…あぁ、忘れてた…』なんとか立ち上がり、夕飯の支度をする

あーだこーだと賑やかな子供達と、せいちゃんの笑い声…

無心を意識して、テキパキと動く

家族で夕飯を食べた
ふぅちゃんが『ねぇ!!お母さん、明日バーゲン行こう♪買い物しよう!お父さんが行こうって!!』

『あ~お母さんも服欲しい~!!』

『お母さんは、いっぱい服持ってるのに、いつも服がない!!って言ってるよな(笑)』
せいちゃんが笑って言う

『だってー、女の子は服にカバン、靴に…オシャレが大好きなの~!』
つい、いつものように話してしまった

アハハ……♪♪賑やかな団欒…


【失いたくない】そう思ってしまった…

次の日
1月3日、アタシ達は人で溢れるファッションフロアで服を物色♪

人が多いからパニックの不安が少し出る…

『あい大丈夫か?』
さりげなく手を繋いでくれる、せいちゃん…

手を振りほどけなかった

いや、
むしろ安心してしまったアタシがいた…

強くせいちゃんの手を握り返す


アタシとふぅちゃんは、お互い、お気に入りのお店で服を何枚か購入して
ルンルンだった♪

ななこの事が頭には、常にあったが…
考えないように楽しく過ごして
晩御飯は外食をして、久しぶりに家族での楽しいお出かけだった


ななこに怯えるのはバカらしい

きっと
せいちゃんは戻って来る…

何故か、そう思った。

アタシが、ただ一途にせいちゃんを愛せば…
愛は届く…


また、振り出しに戻ってしまった…


愛してる…せいちゃん。

アタシは、家族が何よりも大切だった

子供達の笑顔も、せいちゃんの笑顔も全て愛おしい…


ななこは、きっと中身のないバカ女…
一時の気の迷い…

我慢なんて、今まで何度だってして来た

今さら、もう一つくらいの我慢ができないほど、アタシはヤワじゃない!!

最後に笑うのはアタシ。

気持ちを固めた夜でした…


その夜は、拒むことなく
せいちゃんに抱かれた…
それでも涙が溢れる理由は…
悲しみ、悔しさ、愛おしいさ、切なさ…
せいちゃんは、アタシの涙に愛おしいとキスをした

ななこの話しは、出なかった…
普通に考えれば当たり前のこと

だけど嬉しいと…思った


No.431

せいちゃんに腕枕をしてもらいながら
そっと質問をしてみた

『せいちゃん…聞きたい事、たくさんあるんだけど…』
『ん?いいよ。答えるよ?』

せいちゃんの頭の中は、今…バカななこの花が狂い咲いている

せいちゃんから見た、
ななこを知らなければ…

アタシは、昔のおば姉さんの質問の仕方を真似るように、調査を始めた


『ななこは、幾つ?』『ん~俺の2コ下』

『じゃあ、29歳ね』
『ななこを好きになったのは、どうして?』

『俺を愛してくれるから…かな』
『どんな風に愛してくれるの?』
『褒めちぎり(笑)そして、せいちゃんはアタシが好きなんだよ~!!♪って毎日言うんだ(笑)
負けた、落ちたよ(笑)』

……マインドコントロール…?
頭にふとよぎった。一方的で強引な、ななこの会話…

『アタシのお父さんに言える?』
『………』『無理に答えなくていいよ。罪悪感あるもんね…』
(これが、おば姉さんのやり方!!次は答えやすい質問…)

『子供達は好き?』『当たり前だろ?』
『だよね~、子供達もせいちゃんが大好きだもんね♪』

『ななこが、この家族に入りたがってるって知ってる?』
『ああ…困ってるよ』

『ななこは、せいちゃんにとって…アタシより大切なのかなぁ?』

『…………』『ごめん。質問はやめるね』

よし。
とりあえず、ここまで!!

『ななこがさー、あいに男ができたらアタシ達も、楽に付き合えるって言って来たんだ…』

『そっかぁ。せいちゃんは賛成なの?』

『………分かんねぇ…けど、納得はしてる』

せいちゃん…ななこに言われてたんだ…

『3Pは…せいちゃんしたいの?』

『いや、興味はないけど…ななこが、好きな女と同時ヤレるんだよ。って言うから…』
『そっかぁ…』


せいちゃんは、ななこの操り人形だね…

ななこは…怖いな…


5日から、また、ななこと出張…2月までは帰って来ない…


ますます、ななこに影響されてしまいそうだな…

厄介だな……

この、せいちゃんの腕枕が、ななこの場所になる


叫びたい衝動にかられる

でも、叫ばない…

今のせいちゃんは、本物じゃないから、悲しみも分からないだろう…



頭で、ななこの声が響く

あなたの思考が、分からない…

ななこは病気じゃねーのか?

そう思うしか無かった。


そのまま、解決策が見つかるわけもなく
アタシ達は、眠った

No.432

4日、朝起きたら携帯にメールが届いていた

ななこからだった

【ななこ】受信
写メがうまく撮れないので、プリクラ撮りました🎵
また、実際会ってお話ししたいな😃‼
友達以上の関係を希望してます❤
よろしくね~✌⤴
――――――――――――――
はぁ?友達以上って…夕べ聞いた3Pの話しが、脳裏によぎった

ありえねー……バカ女!

写メのプリクラは、顔立ちが全く分からないものだった

無視。と思ったが、少しからかいたくなった


【ななこ】送信
聞いたよー😱‼あんた、3Pしたいんだって?
頭、おかしくね?
アタシ、嫌だし‼

最近のプリクラって(笑)かわいく写るよね~✌⤴
ガチ写メ、送る勇気はないのかな😁⁉
――――――――――――――

ふん。こんなもんだろう

この日は、食品の買い出しに家族で出かけた

アタシは、ウイッグを付けて…ふぅちゃんと、しんちゃんは絶賛してくれた

せいちゃんもいい女っぽい!と言ってくれた…

買い出しで、柔道や相撲専用の体を作るプロテインの大袋を購入した

ガリガリ脱出作戦だ~!!


夕飯は、お鍋にして家族で楽しく食べた

ビールも美味しく飲んだ

ななこさえ…いなければ…

頭の中には、常にななこが住みついてしまった



5日、朝からせいちゃんは、出張へ行ってしまった

ななことの関係は【公認】ということになってしまったのだろうか…

ななこからメールが入る
【ななこ】受信
またしばらく、せいちゃんをお借りします❤

理解ある奥さんで良かった😊
仲良くできそうですね⤴
Hは、するけど許してね✌‼
避妊はしますから😃
――――――――――――――

その場にしゃがみ込んだ

悔しい……

その場まで飛んで行き、ぶん殴ってやりたい!!!

でも、何もできないアタシ…

情けなくて惨めな自分…

空腹に、プロテインを飲み干して
新しい服を着た、メイクをしてニット帽を被る

ボブにしてもらったから、帽子から出る髪も自然に見える


負けない!!!
くじけない!!!!

余裕を見せて、時間を見計らい、ななこに返信

【ななこ】送信
アタシは認めてませんよ
勝手なこと言われても困ります

せいは、人形じゃないですよ、借りるなんておかしくね?

ご自分を見直しては、どうですか?
それでは、友達いないのも分かりますよ
――――――――――――――

あえて、友達がいないことに触れてやった!

No.433

その日、夜遅くに、ななこからメールが来た

【ななこ】受信
今、せいちゃんとHしてました😁❤
久しぶりなんで燃え上がりましたよ⤴

こんなの…あいとはできない😜💕ってことを、せいちゃんが言ってました🎵

さて、問題です💡
あいとはできないHな事とは…なんでしょうか😁⁉

――――――――――――――

頭が、おかしくなる…

薬を多めに飲んで、体を丸めて横たわる
涙が流れる…

何なの……開き直るにしてもひど過ぎない?

コイツ…殺したい。
アタシの中で殺意が芽生えた


コピー紙を取り出し
【ななこ死ね】と紙いっぱいに、びっしりと書きなぐった


眠れない………


異常な、ななこと洗脳されたようなせいちゃん…

二人が絡み合う姿が浮かぶ…

でも、きっとアタシの想像以上の事をしてるんだ…

そう思うと、狂いそうだった


冷蔵庫にビールを取りに走る、寒いベランダでタバコをふかしながら
涙を流して星を眺めた


この空の下で…あの二人は…

なんでだよ?せいちゃん…

アタシは天に向かって、遠吠えのような声を出して泣いた



この日を境に、
ななこからの嫌がらせが始まった…


アタシは地獄の更なる地下室に…落とされた



アタシにできること…

プロテインを飲んで、ご飯を無理やりにでも食べて、体力作り、ガリガリ脱出…


少しでも、対抗できる自分を作ることに専念した


いつか来る…
ななことの対決のために…


No.434

新学期に入り、ふぅちゃんとしんちゃんが学校へ行く

家で一人の時間が増える


一人じゃ耐えられない!という思いと

やっと一人になれた…という思いが入り混じった気持ち


『ハウスちゃん…ハウスちゃん…どうしたらいいの?』
泣きながら掃除をする


せいちゃんは電話に出てくれない…

メールも一方通行…


もしかしたら、ななこがメールを見てるかも知れない…


だけど、連絡が欲しいとメールを打つことがやめられなかった


日にちが経つごとに弱って行くアタシの精神…

体だけは、
食べられないご飯は全てミキサーに入れて
野菜スープを足して、ドロドロにして飲んでいた

プロテインもガバガバと飲んで、体力作りもしていた

そのおかげでガリガリからは、脱出できていた

ボディケアも必死にやった。


でも、飲むことは出来ても、食事を取ることは無理だった


成人式が過ぎた頃…
サエちゃんから、ランチのお誘い

引きこもり状態だったアタシは、久しぶりにサエちゃんと会った

サエちゃんも、また、痩せていた。


個室のある洋食屋さんで、お互いに話しをした

オーダーは、二人とも食べやすい
サラダとケーキセット


サエちゃんは、アレ以来引きこもって泣き暮らしているのだと
告白してくれた…

心療内科に通って精神安定剤をもらっていること…
焼酎を飲まないと眠れないことを話してくれた


アタシも、せいちゃんとななこの事を初めて話し、引きこもっていると伝えた
薬を沢山飲んでること、ビールも飲んでいること…
全て話した



お互いに涙した……


お互いの辛い状況が分かるから…
それでも、ダンナを愛し子供達を愛し…

自分の弱さを二人で泣いた

『こんな状況なら、離婚する人…多いだろな…』サエちゃんの言葉

『そうだよね。バカみたいに苦しんで…
まだ、しがみついてる…』アタシがため息をついて言う



『こんな時に、不謹慎だけどあいちゃんが、同じように苦しんでて…
救われた(笑)』

『ハハ…同じく(笑)』


お互いにダンナの愚痴をこぼして、慰め合う…


こんな、アタシ達を惨めだと、キズの舐め合いだと笑うヤツは殴ってやる!!!


じゃあ、お前がなってみろ!!!



気持ちが少し楽になった


No.435

相変わらずせいちゃんは、電話に出ない
メールは、ななこからのものばかり…

1月も終わりに近づいた、寒い夜…
ななこから電話が鳴った

まだ子供達は起きていたから10時くらいだったと思う

気乗りしないままに、電話に出た

『あいさ~ん♪久しぶり!!元気でした?
メール返してくださいよ~(笑)』
『話したくない。切るわ!』
『待って!!ちょっと聞いてくれる?』
『ヤダよ!!……』

突然、何やらテレビの音がした
そのまま携帯に耳を澄ます…
『ねぇ、せいちゃーん…これして~ぇ

……ん…

テレビ消してよ~!!
(何?何なの?……)

イヤ~(笑)…っん ……はぁ』
(何……?何だよこれ)
…アタシは汗が出てきた
微かにチュパ…とか聞こえる…

『あぁん… ……ん…』
倒れそうになりながら、トイレに走り、自分の携帯機能の録音をスタンバイした


10分くらい泣き声のような…甘いななこの声を聞いた

『せい…ちゃん…もうダメ来て……』
録音ボタンを押した

『あっ…!!…………!!!!!!!!……ん…!!!………*****あ*!!!!…せいちゃん!$$$$$!!ななこ…!!!***―――――――――――』延々と続く…
ピー♪録音のタイムリミット。






アタシは、壊れた。

トイレから出ると、子供達に『お母さん!!顔青いよ、くちびる真っ白だよ…』と言われた


『早く……寝なさい…』


子供達が寝静まった


包丁を持つ。

力任せに腕を切った…

手首じゃなかったのは、死のうとか…
考えての行動じゃなかったから…



ボタボタボタ…ボタボタボタ…

腕から血が流れる





ヘナヘナと、その場に座り込んだ…


No.436

新しく買ったばかりの白いニットが、血で真っ赤に染まり
剥き出しになった腕から血が垂れる


痛みも感じなかった…


とりあえず、気を強く持ち直し、ガーゼをあててガムテープでグルグルと巻いた


頭がおかしくなってしまった


もう携帯は、切ったはすなのに…
ななこの声が響き渡る

泣きながら、床の血を拭いた。


そのまま、着替えもせずに、薬を多く飲んで倒れるようにアタシは寝た




朝、目が覚める。

昨日と同じ姿のアタシ…
ニットは袖や、胸の辺りが真っ赤になり
ジーンズにも血がベッタリとついていた


腕が焼けるように痛い。


上からロングカーディガンに無理矢理、袖を通して子供たちには
隠し通すことが出来た


『行って来まーす♪♪』
『行ってらっしゃい!!』

にこやかに送り出す…


どうしよう……

ななこの声が、まだ響き渡る頭の中…



携帯を持ち、せいちゃんの一番上のお姉ちゃんに電話した。

お姉ちゃんは、結婚が決まったばかりで
寿退社をして、挙式までの3ヶ月間家に居てる…


『もしもし、あいちゃん?』
アタシから電話するのは、初めてのこと…

『Jちゃん!!(お姉ちゃん)…お願い…家に来て…

もう、耐えられない…
ご両親には言わないで…家に来て…!!!』


『何があったの?
分かった…二人はもう仕事場に行ったから
すぐに支度して行くから、待っててね!!!』


安堵感……不安…
ななこの声…せいちゃんへの悲しみ

ぐちゃぐちゃな気持ちのまま、こたつに潜り腕をさすった



2時間後、Jちゃんが来てくれた


No.437

Jちゃんの顔を見るなり、泣きついた

『せいちゃんが……せいちゃんが…!!!』

『落ち着いて!!あいちゃん!!』


アタシはカーディガンを脱いだ……

Jちゃんが、叫ぶ
『何したの!!!!血が…こんなに…
そのガムテープ…何?
まさか…切ったの?あー!!
私、血……見るだけで駄目なのよ
何したのよ!!あいちゃん!!』

『せいちゃん…不倫してるんだよ~…』
うぇーん、うわーぁん……子供みたいに泣いた


Jちゃんは、立ち尽くしていた。
声も出さず、立ち尽くしていた…


『あいちゃん、病院行くわよ!!
コート着なさい!!』

すっぴん…が少し気になった
せめて眉毛だけでも描かせて欲しい…
なんて言える雰囲気ではなく、コートを羽織り
近くの病院まで連れて行ってもらった

窓口で『救急です!!早く診てください!!
切ったのよ!!腕を切って血まみれなの!!』

待合室のみんながアタシを見る…

気にせずに叫ぶお姉ちゃん…


ああ、大丈夫なのに…待つくらい出来るのに…


ありがたかった。心強かった


お姉ちゃんのおかげで、すぐに診てもらえた


12針縫った

先生に
『どんな力で切ったら、こんな酷いことになるんですか?

まさか、自殺じゃないですよね?』


『…そんな気はありません』

『駄目だよ~…鬱病?パニック?
まぁ、気持ちをしっかり持ってね。
病は気から…分かった?』と言われた

病のせいじゃないよ…
ななこのせいだよ…


お姉ちゃんに連れられて、自宅に戻り、質問責めにあった


『せいが不倫?…嘘よ(笑)嘘でしょう?

……なんで分かったの?
あいちゃん…いい奥さんだと思ってたのに

不倫なんかされちゃって…
詳しく聞かせて!!私には、聞かせてよ!!』


なんか、トゲがあるように聞こえたJちゃんの言葉…

アタシが弱ってるからかな…


この際だから…と
せいちゃんの、今までの悪事の全てを、泣きながら暴露した


『……………………!!!』
お姉ちゃんは言葉を失い

硬直してしまった。


アタシは、こたつテーブルに突っ伏して泣いた


『なんでか分からない…せいちゃんのことが分からないの…

苦しくて…もうほんとに、おかしくなりそうだよー!!』


『あいちゃん…………』


お姉ちゃんは、隣りに来て背中をさすってくれた


『頑張って耐えてくれてたのね……』


ううっ嗚咽して泣いた


No.438

化膿留めの点滴を打ってもらったが、帰ったら薬も飲むように指示させていたので

お姉ちゃんがカップ麺を作ってくれた


ハッキリ言って…食べられない

『食べなきゃ薬飲めないから、食べなさい!!』
きつい口調で言われ食べ始めた

遅い昼食…

『あいちゃん、ガリガリになって…
病気だから?
それとも、せいのせい?』

『頭も…実は…』

ウイッグを外し、バーコードに状態の頭を見せた

『そんなに…なるまで…我慢してたの?!』

お姉ちゃんは、ビックリしていた

その場で、せいちゃんに電話をするお姉ちゃん…

アタシは、黙っていた

せいちゃん…Jちゃんからの電話には出るのかな?


『あっ!せい?
今、あいちゃんとこにいるんだけど…』

………出るんだ。
落ち込んだ


『何?ってあんた…
………なんでもないわ。せいも、いい大人だから何も言わないけど…

いつ帰って来るの?…そう…仕事頑張ってね』




ショックだった。

とってもショックだった。


Jちゃんは…せいちゃんを問い詰めなかった
アタシの状態を話してくれなかった

せいちゃんに…怒ってくれなかった

それどころか、仕事頑張ってねって言った

悲しかった………


信じられない…
アタシなら、アタシの弟がこんなバカやってたら

殴り倒して、目を覚まさせる
とにかく怒り狂うだろう


お姉ちゃんは、違った



アタシは、友達ではなく、Jちゃんに助けを求めたのは、せいちゃんを最低なダンナだと烙印を押され

別れろと言われたくなかったから
せいちゃんの味方になりながらも、アタシのことを考えてくれるであろう
Jちゃんに助けを求めたのに…


Jちゃんは……
『あいちゃん、やっぱりね夫婦の仲に不満があって
不倫されると思うのよ…
せいだけを、責めるのは筋違いだわ

分かるわよね?
あなたのショック…私には分かってあげられない

あいちゃん自身が何故せいが
他の女に目が向くのか分からないんじゃ…
改善のしようがないわ』

『アタシが…悪いの?』

『お互いさまだと思うわよ。夫婦だもの』


悔しかった…


まだ、結婚生活も経験してないくせに…
アタシより9コも年上なのに…

人の痛みが分からないなんて…

もう頼らない。


Jちゃんは、『夫婦って言うのはね…』と、理想的な夫婦像を語っていた


そりゃ、誰でも結婚前には、そんな夫婦でありたいと思うよ


No.439

Jちゃんのお話しの最中、アタシの携帯にメールが届く

見ると、ななこだった。


【ななこ】受信
昨日は、寝られましたか?😁
ちょっと、意地悪したくなって、あんなの聞かせちゃいました😜‼

具合悪くならないでくださいね~🎵

アタシがせいちゃんに怒られちゃうから😱

せいちゃんには、内緒ね‼
まぁ、言っても信じてもらえないと思うけど~🎵

じゃあ、またね😃
お大事に?かな?(笑)
――――――――――――――

悔しくて、悔しくて、涙が出た

Jちゃんへの悔しさに、ななこが追い撃ち…悔しい…


泣くアタシに、Jちゃんが携帯を取り上げて見る

『なんなの?この子は…、せいももう少しまともな子を選ぶべきよ!』

そう呟くと、
ハッとしてアタシを見たJちゃん…


まともな子であろうが…不倫は嫌だ。
誰であってもされたら嫌だ!!


Jちゃん、酷いよ…


お姉ちゃんは、なんでも口にする

いい事も、悪い事も口に出てしまう


知ってたけど…
このタイミングでは…ないよ…
ありえない。


ななこ…悔しい…
せいちゃんに言わないで?
言っても信じない?



残念ながら、アタシは録音してるんだよ!


せいちゃんに、聞かせてやる!!

どんなに傷ついたか…せいちゃんなら分かってくれる…


ななこは、捨てられる!



Jちゃんは、心配だから週末までいるわ~と2泊してくれた


家事を手伝うわけでもなく…
ご飯を作ってくれるわけでもなく…
ただ、子供達と遊んだり、昼間はアタシに夫婦論を語ったり…


疑問だらけだったけど、気は紛れて良かった(笑)


週末、婚約者とお出かけだから♪
と、アタシの服をはしゃいで着て、嵐のように去って行った…


この週末に、2月に入って…いよいよ、せいちゃんのお帰りだ!




複雑ながらも、少し楽しみにしていた



No.440

前の日の晩(金曜日)に、せいちゃんからメールで
『明日、帰るからなー
お土産、明太子買ったよ✌』とあったのに
夜、10時を過ぎても帰って来ない…


事故?ななこ?

心配になり、携帯に電話した

出たのは、ななこ……
『せいちゃん、うちに泊まってもらうから♪
あいさん…悪い……


何、やってんだよ!!
(せいちゃんの声…)
ガタッガタ!!!…勝手な真似すんな!

もしもし、あい?
ごめんな…今から帰るからな!!


嫌、嫌よー!!!せいちゃん!!
ガタッ!!痛っぁー…せい…
(ななこの声)
邪魔だって!!!オラ~

あい。帰るからな!!』

何がなんだか…分からないまま携帯は、切られた


ななこが【痛い】って言ってた…
暴力振るったのかな…?


薬を飲んだ。

タバコを吸いにベランダに出た

綺麗な満月…今夜もたくさんの命が生まれて来るんだなぁ


そっと手を合わせた。
生まれて来る赤ちゃんたちが幸せな人生を、歩めますように…




さぶっ。部屋へ戻って、傷口の手当をしていた

腕の傷跡は、まだまだ痛々しものだった
黒い糸て縫われていて、周りが赤くなっていた

晴れもまだ、引いていない

先生が、どんな力で…って言ってたな…

覚えてないや

この傷は、見えない心の傷と同じかな…

パジャマを、そーっとめくって傷口の消毒をしていた


ガチャガチャ…
時計を見ると、電話から30分…

せいちゃんだ!

走って行きたい気持ちを我慢して、素っ気ないそぶりを見せる


こんな時に『お帰り♪』なんて笑ったら、
二人は、ほんとに公認の仲になってしまう


『あい♪……明太子だよ♪♪大好物だろ?
本場だから旨いぞ?…あいちゃーん♪』


無視。

テキパキと消毒セットを片付ける


せいちゃんに、抱き寄せられた


『ちょっと…怪我してるから…やめてよ!!』

『え?怪我……?見せて?』


アタシは、そっとパジャマの袖をめくり


20cm以上に渡る傷口を見せた


『……なんだよ、これ…』
せいちゃんが、腕をそっと持ち傷口を、見つめ続けていた


No.441

『俺のせいか……?』

大好きなせいちゃん。
憎いななこ。

この時の気持ちは、憎しみの全ては、ななこに向かっていた…


アタシの中で、せいちゃんは昔のままだった

だから、せいちゃんのせいじゃない。
ななこの意地悪に、アタシが負けたんだ

『違う……あのね、とっさに…切っちゃった…
聞いて欲しいものがあるの…』

アタシは、携帯を握りしめるて、震えながらスピーカーにして

あの、おぞましい夜の声を一緒に聞いた


再生したのは、これが初めて…


なんて、ななこの声が…しっかりと聞こえて来るんだろう…

携帯を持っているみたいだ。



『…………何…これ…何やってんだ?
あの女……あい…あい…
これ聞かされたのか?』

あぁあ~うあ~うあああぁ!!!!
………ッハァ……ウッ…


アタシは、叫んで呼吸困難になった

息が詰まる


脳みそがグラグラと焼けるように、熱い…腹の底から湧き上がる憎しみ


胸も体も、粉々になってしまいそうだ
全てが、悲しいほど痛い……


目の前のせいちゃんが…こんな声をななこに、出させた


狂ってしまう…

ああ、やめて…二人を止めて…



神様、お願い
二人を止めて…………


涙が落ちる

せいちゃんの顔も見られない


悲しい…

痛い…


やめてよ。お願いだから…

ピー♪♪
声が止んだ


ガクガクと震えるアタシ…


情けない…
ななこが、怖い…


No.442

『いつこんなもの………』そう言って、せいちゃんは絶句していた

アタシは、立ち上がり傷口の手当の続きをする

処方された軟膏を塗り、ガーゼをあてて包帯をグルグルと巻き付ける


泣いてしまった……

また泣いてしまった…

ななこの企みに、まんまと乗せられ、悲しみのあまり泣いてしまった…

腕にも傷を負ってしまった…

悔しい。

『お大事に?かな?(笑)』
ななこのメールが蘇る


黙って、せいちゃんが包帯を巻くのを手伝ってくれた


『…あい、酷かったな…あい…ごめん…
もう、ななことは別れるから…ここんとこ、ななこおかしいんだ。

俺も疲れたし……』


勝手な男……!!!!!本気でそう感じた


『この頃は、やっぱり結婚がしたい!って騒ぎ出してさ…
参ってる。そんなの出来ねぇし』


『あいも、別れて欲しいだろ?』顔を覗き込まれる

『そうだね。だからって…許さないけど!
分かる?この苦しい気持ち…ねぇ?』

せいちゃんのため息…

『だから、そこは、あいも男作っていいから…
そこで慰めてもらえよ?
俺は、許すし何も言わないから…』


思わず、ティッシュの箱を投げる

『自分のダンナに、男作れって言われるなんて…
どんな気持ちか、せいちゃんには分からないの?

てめぇの脳みそは、腐ってんのかよ!!!
アタシに構うな!
ななこと別れろよ!!でも、アタシのせいにすんなよな!!!!』


気まずい雰囲気の中、またタバコを吸いたくてベランダに出た


満月をじっと見ていたら、ここは暗闇に落とさせた世界で…

月の光が、丸い出口のように感じられた

あの明るい場所に行きたい


ここは、地獄だよ……


耳から離れない、ななこの声

もう、嫌だ………


せいちゃんは、ななこと別れるなんて出来ないだろうな




ななこが離さない。

せいちゃんを、絶対に離さない



そんな気がする……


No.443

その夜は、お互いに口数少なくアタシは、睡眠薬を多めに飲み、ベッドに倒れるようにすぐに寝た


翌日、朝から子供達がお父さんの帰りを喜び

しんちゃんは、声を上げて笑い、せいちゃんと仲良くゲームをしていた


そして昼過ぎ、せいちゃんは別れ話しをしに行くと、ななこの自宅へ出かけた

また、元の家族に戻れると少しの期待…

どうせ無理だろうなと、諦めの気持ち


賑やかな家の中で、薬を飲んでテンションを上げて、子供達と3人で笑って過ごしながら
せいちゃんの帰りを待った


午後9時前…
せいちゃんが帰宅した


浮かない顔をしていたから、すぐに分かった

別れられなかったんだ…


『ご飯、食べて来た?』普通を装い聞く

『…ああ。…ごめんな…』

………ビンゴだ。


『あい、ちょっと…来て、ふぅちゃん部屋貸してくれな?』

ふぅちゃんの部屋…リビングから1番遠い場所


ため息をついて、ついて行く


『あい、落ち着いて聞いてくれるか?』

イライラ…する

『何?別れられなかったんだろ?分かったよ!!』

『…それだけじゃない…』
『………何?』

『本気で好きなんだ。ななこが…』

金づちでまた、殴られた衝撃…

『ななこ、ピル飲んでるって言ってたから…
…その…まあ言葉通り…いつも生で…

あい。ごめん!!!…ななこ、ピル嘘ついてたって…
生理…来ないって…
あい…どうしよう…俺、あいとななこと…
二つの家庭持ったら……駄目かな?……』


……………!!!!!!!!嘘でしょう?
何言ってるの…


無言で、コートとカバン、財布を持って家を飛び出した


ショック過ぎて、子供達のことも頭になかった…
アタシは、最低な母親…


家を飛び出して走った、行く宛ても無く、人のいる所から離れたくて…神社の境内に座り込んだ


子供達の事を、やっと思い出して心配になった


ふぅちゃんの携帯に電話する


『お母さん?何、どうしたの?喧嘩した?』
ふぅちゃんの声……

気丈に話した。
『ごめんねー、お母さん友達が困ってるから…あんた達に話しもせずに飛び出して来ちゃった~

ちょっと、今日はついていてあげたいから…』

『分かった!!明日には帰って来る?』

『もちろん!!!』『じゃあ、こっちは学校もちゃんと行くから心配しないで、友達についててあげて!!友達、病気なの?』

『うん……ごめんね、ふぅちゃん…』

No.444

すぐに、ななこに電話した
『もしも~し~』
『あいです。せいから聞きました。あんた、妊娠したの?』

『え~っ(笑)ウケるんですけど、何、必死に喋ってんですか~?
遅れてるだけですよー♪』
『せいから…ピルの話し聞いたよ…あんた、嘘ついてたんだって?』

『そりゃ、生の方がお互い気持ちいいじゃん♪でしょ?
ただ、それだけの理由!!
それに三十路前にして、結婚願望も出て来たし
せいちゃんにもらってもらおうかなーって(笑)

だから、あんたが邪魔なわけ!?』

『…………だったら全部奪いなよ!
アタシから全部奪いなよ!
せいの全てを奪いな!
せいは、まだ…アタシを切る気がないみたいだから…

アタシは、自分からは、離れられない…
だから、全部奪ってよ?!』

『奪えるもんなら、奪ってるよ!』
ヒステリックに叫びななこは、電話を切った


クソ……!!
せいちゃんのバカ。
殺してやりたい…せいちゃんに対して怒りがメラメラと湧いて来た


今夜は、帰らない!


タニに電話をする……

『は~い♪あい、どうしたの?』
『タニ…ヘルプ!!助けて!!』

『…どこ?すぐに行く!!前のコンビニで待ってろ』


何故か、ホッとした…

タニは、スーパーマンだ…
早く来て…!!!

涙をふいて、コンビニまで歩く

コンビニの人目が気になり、トイレで化粧直しをした


30分後、タニから♪♪♪~
『駐車場だよ。出ておいで~』

アタシは小走りで出て行った

車から降りてるタニを見つけた、思わず抱き着いた

『タニー!!!!』『わぉ!!大胆だな~(笑)』

背中をペシッと叩く

顔を見て笑うタニ…アタシも顔を見て笑ってみた


『乗って♪♪』助手席のドアを開けてくれる

優しさに触れて、また泣き虫が騒ぎ出す…


『どこ行きたい?あいちゃん?』

『今…胸糞悪りぃの…カラオケで歌いまくりたい!』
『ハハ♪了解~!!ウィッグ似合ってるじゃん!』
『ちょっと髪のびたなぁ…後で切ってやるわ』


タニは優しい。

ほんとに優しい。


せいちゃんと別れて…タニと結婚したいよ…

ふと思い…





そんな、自分の気持ちにビックリした


No.445

信号待ちの時にタニが『今夜は?カラオケ行ってたら、シンデレラタイム過ぎるぞ?』

時計を見ると11時前だった

でも、関係ない。

『アタシ、今夜は帰らない!子供にも伝えてるし、せいちゃんなんか…どうしようと何も言わないから』
『…?ダンナは心配するだろう…?
まだ、あのまま?まぁ、ゆっくり話し聞くけど…』

『せいちゃんは、二重婚を望んでて、アタシに男作れって言ってんだ…』
『はぁ?マジでか?…』
『うん。かなり前から…男作れって…』



『じゃあ、行き先変更~!!』
『え?お店…?』

『店は、スタッフで今度コンテスト受けるヤツが、泊まり込みで頑張ってるから、ブブーッ!!』

『ちゃんとカラオケもあるし、寝られるから♪』

『ホテル!』『ピンポーン♪♪』

『マジ?』『マジー!でも、こんな弱った女襲ったりないし(笑)
ただ、ゆっくりしよ(笑)ダンナに男とホテル行ったって言ったら泡吹くよ(笑)』

なんだか、ノリ気になって来た!!!

今、せいちゃんがいたら刺してやりたい心境

お前の望み通り、男とホテル行ってやるよ!!!

まぁ、なんもしねーけど…

少しは、復讐心も満たされるかもなー

コンビニに寄り、飲み物等を買い込んだ


アタシとタニは、ホテル街を見てまわり
1番オシャレそうなホテルに入った


手を繋いで、ほんとの恋人みたいな気分だった



入ってビックリした!!

オシャレ過ぎる~!!
独身以来のホテルは…微塵もエロスを感じさせない

リゾートホテルだった

女の子4人が、キャッキャッ♪♪♪とボタンを押していた


今は、女の子同士のお泊り会にも使われているんだ……


気持ちが一段と楽になった


タニが大きめの部屋にしよ♪と勝手に部屋を決めてボタンを押した


きっと、アタシなら遠慮して安い部屋を選ぶ…


さりげない優しさに、キュンとした



なんか…アタシ、タニを意識し過ぎてないか?


何もヤバいことは、しません!



自分の中で、もう一人の自分に言い聞かせていた


No.446

ちょっとドキドキしながら、エレベーターに乗った


なんで、こういうとこのエレベーターって狭いんだろ?

アタシ、意識し過ぎ?



部屋のドアをタニが開けてくれる


『わぁ~♪』いきなり南国リゾートの、開放的な部屋が広がっていた

『広いね~♪お風呂もすごい綺麗だよ!!すご~い♪♪』
アタシは、はしゃぎまくり部屋の中を歩き回る


タニは、ソファーに座りホテルの案内メニュー?を見ていた

『あ~腹ぺこ!!仕事帰りだったから、飯食うわ♪』

どれどれ?アタシも覗き込む

またまた感激!!!美味しそうなファミレス並の品揃え!

『アタシ、チョコパフェがいい!』

『くくくっ……(笑)アッハッハ(笑)あい、可愛いーなぁ!!
じゃあ、一緒に食べるか♪』
『うん!あ、待って!!何これ~可愛ぃー』
そこには、ルームウェアが載っていて
モコモコのパジャマや制服(笑)、エロスなキャミソールや、着ぐるみ等が載っていた
しかも、無料サービス!!

アタシは、モコモコのうさぎちゃんの着ぐるみが着たくなった(笑)

『アタシ、これも(笑)』うさぎちゃんを指指す

『じゃあ、俺もこれ!!(笑)』タニは、狼の着ぐるみを指指した
(ほんとにうさぎ&狼の着ぐるみがあったんですよ!!(笑))


タニがフロントに、注文してくれた。
恥ずかしかっけど、着替え用に下着(ショーツ)もお願いした(笑)
もちろん、マイナスを打ち消すために赤!!
…だけどレースで超セクシー


『あいの、今夜履くパンツまで注文するとは…(笑)』タニは爆笑!!

だけど、タニだって下着を注文したのだ


アタシ達は、とにかく笑って笑って…

さっきまで、せいちゃんとななこの事で泣いてたなんて…
信じられないくらい…

バカらしい。


食事と共に、ルームウェアや下着が届いた


食事もファミレス並で、ビックリした!!

うまそうにトンカツ定食をかぶりつくタニ

アタシは、甘いパフェにうっとり♪
『まいう~♪最高ー!!タニ、楽しいねぇ♪』

笑ってばっかりのタニ


アタシ達は、ほんとに仲良しだ


心が癒され、元気が満ちて行く…


『タニ、楽しい?』ご機嫌で聞くアタシ

『おぅ!近年で一番楽しいかも(笑)』『マジで~?嬉しいー!!タニ、乾杯だ!!』

パフェにスプーンでチン♪♪とした






アタシ達の楽しい夜は、始まったばかり…♪


No.447

ご飯を食べ終えて、アタシは…
うさぎちゃんが着たくて仕方ない!

お風呂にも入りたい


でも、腕の傷が気になり……
迷っていた

タニに見せるのも気が引けた


とりあえず、アタシはカラオケを楽しんだ♪

タニはベッドで寝転びながら、ニヤニヤこっちを見てる


自分に酔いしれて歌うアタシ(笑)

目だって閉じて歌っちゃう♪

タニの前で、恥ずかしいことなんてない

歌いながら、おならだってしちゃう(笑)

『臭っせ~!!ありえねーこの女!!(笑)』

タニは、鼻をつまむ

『そんなに臭くねーやい!!♪』気分は絶好調♪



ひとしきり歌い満足した


タニが、『風呂入れて来るから待っててね』と言ってくれる


優しい!!!!感激!!!!

お風呂が貯まるまで、ガバガバお茶を飲んで、タバコを吸って話した


『アタシ、腕…怪我してんだよね…
お風呂どうしようかな~?』

『じゃあ、ばい菌入ったらヤバいし止めなさい!』
『ん~…そうだね…でも、ウィッグ付けてるから頭洗いたいな~』

『明日、店休みだし洗ってやるよ!!』
『あのマシンでね~♪気持ちいいよね、あれ♪じゃあ、お世話になります』
『あいよ!!!』


タニが、お風呂に行ってる間に、アタシもウィッグを外しうさぎちゃんに着替えた


鏡の前に立ってみる

バーコード頭のうさぎ
痛い……可愛さのかけらもない

うさぎはミスった(泣)

フードを被ってみたら、マシになった!!

良かった~
ザ・うさぎちゃんっぽい

頭…恥ずかしいから、ずっとフード被ってよ



タニが上がって来た…




うわーぁ、男性だ。
間違いない。男の香りがムンムンとする


ボクサーパンツ一丁のタニは、格好良すぎた。


No.448

タニは、竹野内豊にそっくり(笑)

(感想スレで、よっちサンレスに、せいちゃん役…竹野内豊と書いてあったのを見て、タニだよ~って笑ってしまいました。

反れてしまいすみません!ちなみに、せいちゃんは、オダギリジョー&中田英寿に似てます)




『タニ~パンツ一丁で…お色気ムンムンなんですけど(笑)』


アタシは、照れながら(本心大喜び?)

『早く裸を隠しなさーい!!』と狼を渡した


フフン♪と悪い笑いをしながら、タニは近づく


『何?あいちゃん、俺に惚れそうなの?』ニヤニヤ…♪

『あんた、悪い顔するね~(笑)結婚詐欺師にでもなれば?』

『いや~。女は怖いよ(泣)イジメられるから、俺…女嫌い!!』

プイっと拗ねる。



そうだよね………タニ、心が痛かったよね


よしよし、と頭を撫でる


『怖い人ばかりじゃないよ…きっと、ねっ。
また、誰かを好きになれるよ、タニには幸せになって欲しいよ』



頭をタオルでゴシゴシしながら、
『あいちゃんは、いい子だね♪
…あい、今夜のヘルプ教えてよ
帰りたくないくらい、傷ついて俺を呼んだんだろ?』


思わず下を向く


『あのね、実はね………』

ななこからの電話や、腕を切ったこと、Jちゃんの言葉
ななこと別れると言ったせいちゃんが、本気でななこを好きで、
二つの家庭を持ちたいと言ったこと…
ななこも、結婚したいことを、話した


話せば、話すほどに心は乱れ内容はグチャグチャで、飛び飛びでうまく話せない


でも、タニはアタシの話しを頷きながら
聞いてくれた。



『そっかぁ。辛いな…
なんで分かんねーんだろうな?
あいの必死な気持ちが…
ダンナが好きだから、あいは傷つくのにな

そんな男、捨てろよ。って思うのは、俺の個人的な意見…

だけど、あいが好きなら…あいは、とことん進む…
あいは、折れないからなー…
でも、折れちゃった時が…心配でたまらない』


『自分で限界を超えてるのが、分かんないバカだからね…』



タニが、『俺が助けてやる!!』って笑ってくれた


嬉しかった。


『ユマも、相当あいのこと好きだから、
ユマにも話ししてあげな?頼ってやんな?
一人で抱え込める問題じゃねーだろ?』



うん…素直に頷いた


ユマに言ってみよう。
助けてって泣いてみよう…


アタシは…一人じゃないんだから


タニの言葉が胸に響いた


No.449

タニもノリノリで、狼の着ぐるみに着替えた

『アハハ、アハハ…♪♪』アタシは笑いが止まらない

『似合ってるよ~(笑)キャッハハー』本当は、ギャップがありすぎて笑えるだけ


『狼さんの好物はな~に?(笑)』
『美味しいうさぎちゃん(笑)』

アハハ~アハハ~♪
アタシ達は、バカな劇をして遊んだ


せいちゃんの事なんて忘れられた

どうでも良くなった。

ななこが好きなら、ななこと結婚しろよー!!
って思える気分だった


タニが、ベッドに入って横に来いとパンパンと、布団を叩く


一瞬、緊張してしまった…

『え………?』

タニが笑う。『うさぎちゃん、食べないからおいで♪』

『何すんの…?』『ぷっ(笑)食わねーから、そんな怖い顔すんな!!』


恐る恐る、身構えながらタニのベッドの隣りに座った

一つのベッドで二人で座る…


遠い昔を思い出す


タニの部屋で、たくさんキスしたこと…


タニが悪い笑顔で『ドキドキすることしよーか?』
『え!!タニ…アタシ…そんな…タニ…ちょっと、待って…

正気になって…ねぇ…!!』

タニは、無言。










手を伸ばして…きゃぁー…って思ったら

メニューを取って、テレビを付けた

『???あれれ???』


タニは、ピピっとボタンを押してテレビを見る


『あい、始まるよ~♪心の準備はいいですか~?』


10分後…手に汗を握り、二人で寄り添う


『キャァ~!!!!ギャァ~!!!』『うおー!!!!!』

アタシ達は身を寄せ合う

『タニ……来るよ…』
『あい…ヤバいよ……』











超怖い、ホラー映画(笑)


震える二人…お互い、超怖がり(笑)

お化け屋敷も絶叫マシーンの一つだと、言い張るアタシ達(笑)


楽しかった。


No.450

ホラー映画は、1時間の短い作品だった


なんで、ホラー映画の主人公は自分から、進んで恐怖の渦に足を踏み入れるのか?


さっさと逃げ出しちゃえばいいのに、とことん恐怖体験をして
やっと逃げ出す……


なんだか、アタシみたいだ


もう4時をまわり、タニは眠そうにしていた


電気を消して、寝ることにした
狼さんは『おやすみ~』と言うとすぐに眠た

タニの隣りで横になり
頭の中で、これからの事を考えていたが
アタシも眠りについた…



翌朝、9時に目覚めた
隣りでは爆睡中の狼さんの寝顔…じっくりとタニを見ていた


タニ、ありがとう…
タニが居てくれ無かったら、アタシどうしてたんだろ?


いっぱい元気をもらった

アタシは、子供を守りたい
子供たちにとって、幸せな環境を作ってあげたい

今のせいちゃんは、バカ過ぎるから…

ななこと向き合い、せいちゃんを父親として取り戻してみせる!


アタシの気持ちは…今は分からない
だけど、家庭というものがどれだけ大切かは分かってる

子供たちがいる以上、簡単には捨てられない…


だって、たった一人のお父さんだから…


せいちゃんに届いて欲しい…


でも、もっと傷つくんだろうな…

本気で好きだ。って宣言されちゃったんだもん



悲しくなって来た

自信もない。


狼のタニに、ちょっと近づいて温かい体温を分けてもらう


天井を見ながら涙が出た

本当は、逃げ出したい…


ななこが怖い。
傷つくのは、怖い…


心に力を付けておかなくちゃ、ななこからせいちゃんを取り戻せない



信じたくないけど、
せいちゃんは、二つの家庭を持ちたいほどに
ななこを愛してる…


辛い辛い現実………

でも、背けちゃ駄目だ。



アタシは、とことんまでやってやる!!!!



…起き上がり、カバンに入ってる少しの化粧品で、簡単にメイクをした


タニが寝てる間に、ササっと着替え
ソファーでタバコを吸って、ぼんやりしていた


楽しい夜だったなー


タニに、そっと
ありがとう!!と感謝を込めて手を合わせた


子供たち、ちゃんと学校行けたかな~


ごめんね。
弱いお母さんで……


No.451

ウィッグを付けて、もう1本タバコを吸う

『タニくーん♪朝だよ~!!狼さーん!!!朝ですよー♪』

『ん~……あ、あい♪おはよーもう着替え済んだんだ!』

『10時回っちゃったよ?』
『いいじゃん。時間なんて~、俺、朝飯食いたい~!!』

なんだかタニといると、安らぐなぁ…

『じゃあ、何食べる?』

アタシ達は、メニューを見た
『アタシはホットケーキと紅茶♪』
『俺、カレー!!!!!』

『朝、起きていきなりカレー?すげぇ食欲(笑)!!!ビックリだよ!!』

『うーん…腹へったぁぁ…』

アハハ♪

アタシがフロントに、電話でオーダーしてる間に、のそのそと起き上がり

『シャワーして来ま~す』とタニ


こんな寒い冬に、よく朝からシャワーなんて…
と思いながら、カラオケを歌うアタシ

タニが上がって来る、バスタオルを肩にひかけて半裸…


やっぱりプールや、海でもない場所で半裸を見るのは
ドキドキとする…


と同時に朝食が届いた


カーテンを開けた、自然の光が部屋に差し込む


タニと並んでホットケーキを食べる

がつがつとカレーを食べるタニ


とっても…自然で癒される


現実から逃げ出したい。

こんな穏やかな気持ちは…久しぶり…


何も話さず、お互い顔を見てモグモグと食べる

自然と笑顔になる…


『ねぇ、タニ…楽しかったよ♪付き合ってくれてありがとう
タニがいなかったら……』

『いるよ♪だから、いつでも助けてやる
あいが…悲しむのは嫌なんだよ…』


沈黙が続く……


『また、助けてって言うかも…』

『おぅ!!!何度でも呼べ♪』

顔を見合わせて、二人でニコッと笑い合った



アタシ…頑張れる!!!


No.452

『さぶ~…』
カレーを食べ終えたタニが震える


『当たり前じゃん(笑)そんな薄っぺらいガウン1枚じゃ寒いっしょ~!!』


『着替えるわ、こっち見ないでね❤』女の子な喋りでクネクネとする、タニ


『可愛いー♪(笑)お姉さんチラ見したくなっちゃうよ~』


『こっち見ちゃイヤ~ン❤❤』


タニはジーンズをクネクネと履く

タバコを吸いながら、じっくり観察してやった(笑)





顔を洗い、歯を磨くタニの横で一緒に鏡を見て歯を磨く

シャカシャカ♪♪
お互い、自分を見ていない
鏡越しにタニを見る
タニも鏡越しにアタシを見る

不思議な感覚。
超楽しい♪

タニが、美容師らしく髪をセットする

クシャっとさせて、髪をつまみながら、バランス良く束を作る


座り込んで、感心しながら『よっ♪男前!!』とか言って茶化す

『いや~、そんなことないッスよー(笑)』



なんとなく、
この一晩で、タニとの距離がグッと近づいた気がした



革ジャンを羽織り、ブーツを履くタニ


アタシも10cmヒールのニーハイブーツに足を通す



名残惜しかった…寂しく感じながらホテルを出た


冷たい空気が、アタシを現実に戻す



ななこに赤ちゃん出来てたら…


どうしよう…



ぼんやり考えながらタニのお店に着いた


No.453

『オーッス!!頑張ってるなぁ!!お疲れ~』

『あ、店長♪はい。お店借りて好きにさせてもらってます!
あれ?彼女さんですか?』


スタッフの若いお兄ちゃんが会釈してくれる


『はじめまして!あいです!!お邪魔します~』
とりあえず、にこやかに挨拶する


彼女………?

タニは、否定することもなく

アタシを椅子に座らせた


『彼女だと思われちゃってるよー…ヤバくないの?』小声で聞く

『いいの、いいの♪特別扱いなんだから黙ってなさい(笑)』

『悪いヤツ(笑)ありがとうね』


ほんと優しいな…


ウィッグを外し、シャンプーマシンに洗ってもらう

モコモコが気持ちいい…



ななこの事が、気になる

どうしても考えてしまう

もしも妊娠してたら…どうするべきか…

二つの家庭なんて考えられない

だけど…
もしも赤ちゃんが出来てたら?

堕ろせなんて…言えるわけない…

せいちゃんのバカ!!!!


アタシは、身を引くしか道はない…のかな…


ななこの子を…引き取る


………駄目だ、そんなに人間出来てない


アタシは、答えの出ない堂々巡りの中…



離婚という選択は、一番最後だと考えていた


No.454

シャンプーが終わり

その間、タニはウィッグを綺麗に洗って手入れしてくれていた


椅子に座り、少し髪を切ってもらい
炭酸みたいなシュワ~とするのを頭皮に塗ってもらい
スッキリ、サッパリとなった♪


『綺麗になった~♪ありがとう!!』

『よし、んじゃお茶でもして送るか♪』


スタッフのお兄ちゃんに、挨拶をして
近くのコーヒーショップでお茶をした


家に帰りたくない…


そんな気持ちでいっぱいだった

そんなアタシを見透かすように

『なんでも頼ればいい、苦しいなら逃げ出してもいいんだ。

あいにとって、一番大切な譲れないことを中心に物事を判断するんだ

頑なになってしまうと、周りが見えなくなって自分を追い込んでしまうぞ?』

『なんとでも道は開けるから…あんまり思い詰めるなよ?』


『タニ…ありがとう…』


とても胸に響いた…






だけど、アタシは忠告を聞けず…


自分を追い込んでしまうことになるのだった


この言葉を、忘れずに冷静にいられたなら
アタシは、あんなバカなことはしなかったハズ…



アタシは、戻れない過去に、暗い記憶を残すことになった…







タニに送ってもらい自宅に帰った

まだ、しんちゃんは帰って来ていなかった


掃除機をかけて、洗濯物を洗濯機に放り込む



『ただいま~♪♪あ、お母さん!!お帰りー!!』

『しんちゃん、お帰りなさい♪今夜はカレーだよ!!』

『イエ~イ!!じゃあ、〇〇君ち行って来る♪
行って来まーす!!!』

しんちゃんは、帰って来て、すぐに遊びに行った


また、静かになった家の中…


今夜は、今朝タニが食べてた時からカレーに決めていた


洗濯物を干して、カレーの準備に取り掛かった

後は、煮るだけ…


頭の中は、ななこが5割…せいちゃんとタニが半分ずつ占領していた



とりあえず薬を飲み

はぁーとため息をついて、ベランダでタバコを吸う


オレンジの夕日がとても綺麗だった


でも切なかった


No.455

ふぅちゃんも帰って来た
『お母さーん♪ただいま~!!あっ!カレーの匂い♪』


夕飯は3人でカレーを食べた

『お母さんいない間、お父さんどうだった~?』

『ずっと、電話してたよ!!もう、ずーっと!!遊んでもくれなかった!!』

カレーを食べながら、しんちゃんがふて腐れて言う


『アタシ、喋ったよ♪』

『えっ!!!!!………なんて?誰だったの?』


ふぅちゃんの言葉にビックリした

『なんか、お姉さんだった。ななこだよ♪ふぅちゃんよろしくね。
って言われたよ~だからアタシも、ふぅですはじめましてって挨拶した。

なんか、お姉さんがアタシと喋りたいからって…

よく分かんないけど』



ななこ…ふぅちゃんに何言うつもり!?
子供達に……なんのつもり…!!!!


ふぅちゃんに、話しをさせた
せいちゃんにも怒りが収まらない!!!


一気に食欲が無くなった…


ふぅちゃんが気にしてない様子だったのが、せめてもの救いだった



夜遅くに、せいちゃん帰宅…
当然、素っ気なくなる

『おっ♪カレーじゃん♪』

せいちゃんの前に座って、睨みつける


もう、子供達は寝た後…

『留守にしてごめんね…』
とりあえず謝る。


『いいよ、いいよ♪お互いさまだし♪気にしない、気にしない♪』

『…………………』腹立つ。


『ねぇ、ななこなんだけどさー…
ふぅちゃんから聞いたけど、話しさせたの?』


『ああ、ななこが話してみたいって言うからね』

『あんた、バカ?』


『ふぅちゃんの携帯の番号も、ななこに教えたよ?
アドレスは言ってないけど…』




バチン!!!!!!!!


『痛って~ぇ!!!』

我慢ならず身を乗り出して、平手打ちをした



『バカ!バカ!バカ!…子供達まで巻き込まないでよ~
なんて酷い父親なの?
てめぇは最悪、最低だよ!!!!』



テーブルに涙がポタポタ落ちた


せいちゃんは、不機嫌になり
ガチャガチャとわざとスプーンで音を立てて
カレーを黙々と食べ続けていた



No.456

アタシは、せいちゃんを無視してななこにメールを送った


【ななこ】送信
せいから聞いたけど、うちの娘と話したらしいね。
どういう神経してるの?
子供達まで巻き込むのは、やめて!!!

娘に、電話なんかしたら絶対許さないから!

あんた狂ってるよ!

――――――――――――――

すぐに返信が来た


【ななこ】受信
べつに深い意味なんてないし😜

あんたの娘なんて興味もないよ⤵

早くせいちゃん返してくれないかな~

マジ、あんたウザい。

早く消えろ😠!!!!!!
――――――――――――――


怒りが……………
怒りが…収まらない…!!
コイツ!!、マジ殴ってやんなきゃ気が済まない!


バカにしやがって!!!!


アタシの苛立ちは、頂点に達していた



『あい、明日からしばらく
ななこんとこ行くわ~
向こうに帰るから』

せいちゃんが、サラリと言い放ちやがった



もう…我慢ならねぇー

『ふざけたこと言ってんなよ!!
てめぇは、何様だ?
向こうに帰るだと?…てめぇにとって家族ってなんだよ!!!

前に失いたくないって泣いたのは、どいつだよ!!』


バチン…!!!!せいちゃんから平手打ちをくらった


『なんだよ…力で捩じ伏せるのかよ?
卑怯者!!!』


ガン!!!!!!……拳で横っ面を殴られた

体がよろけ、口の中が切れる…



クソ………!!!!
腕が痛む。殴られっぱなしのアタシ


腕と腹を守り丸くなり、横たわる


容赦なく蹴り倒してくる、せいちゃん…


『顔は殴るな!!周りにバレるぞ!!!……』

一瞬止んで…
背中や腰を集中的に蹴られた



覚えてろよ………クソ…


怒り。



でも、それ以上に…大好きな…愛する夫に
こんなに理不尽な、暴力を振るわれてることが…


とても、ショックだった


なんで?
どうして?


狂ったせいちゃん…なんでだよ
悲しいよ…


体が痛い。

心が痛い。



幼い頃のフラッシュバック…



全てが痛い。


痛いよ、せいちゃん…


No.457

涙がこぼれる

悲しい…

せいちゃんが…酷い暴力を振るった

いつものアタシなら、やり返してやるのに
腕の傷が痛くて、体を守るのに精一杯だった


一通り、気が済むと『あいは、俺の言う通りにしてりゃいいんだよ!』
と言われた


怒りよりも悲しみ…


うずくまりながら、せいちゃんの顔を見て聞く
『ねぇ、
アタシの何が悪いの?お願い、話して…』


『悪いところ?(笑)
お帰り~♪っていつも笑顔で迎えてくれるところ。
マジ、ウザい!
パニックで病気なところもウザい!
元気な、ななこの方が好き…
抱き飽きた。一生、あいしか抱けないなんて地獄だ!
頑張って飯作ってくれるのもウザい!
掃除して綺麗な家の中もイライラする

女は、ただ綺麗に着飾ってりゃいいんだよ!

ななこは、なんにもやらねーよ(笑)
部屋も汚ねーし、飯もスーパーの惣菜!!

自分のことしか考えてないバカ女

…だけど元気なバカで可愛いんだよ!!!

お前の病気が一番ウザい!』


ショックだった…



もう意識が飛ぶほどに、ショックだった


『アタシ…の全てが…ウザいの?』

『だから、足りないところは補い合えばいいだろ?
あいは好きだよ。
だけど、あいにない所が、ななこにはある
ななこには、ない所が……あいにはある
だから、二人で調度いいんだよ!』



クソ野郎………



悲しみも頂点に立つと、涙も出ない


放心状態で、フラフラと立ち上がり

『バカ』と呟いて、冷蔵庫からビールを3本出して飲んだ


ショック…………


せいちゃんは、狂ってる


アタシは…
どうしたらいいんだろ?


どうしたいんだろ?



ベランダに出て、ビールを飲んでタバコを吸う


さぶ。体、痛てーな…
顔も痛い。


口が切れて、血の味がした


No.458

薬を飲み、酔っていたのと、体の痛みと、疲れたのもあって
すぐに寝付けた


感覚が麻痺していると言うことは、十分に分かっていた


暴力を振るうことは、他人から見れば最低で…

だけど、
アタシには通じない…悲しいけれど…

暴力に屈するなんて、絶対に…
自分が許せない。

こんな修羅場など、何度だって越えて来た


今の自分よりも、はるかに幼い私が耐えられたこと…

ただ、家族で仲良く…と願う気持ちは
こんなにも苦しい思いをしても叶わないのだろうか…


アタシの願うことは、いつも叶わない。





次の日、腕の治療に病院へ行った


見えない部分には、無数の痣ができていた


顔には…
おでこに二つ、目の下に一つ…


マスクをしても見えてしまう



開き直って、そのまま出掛けた



病院の待合室……

他人の視線が痛い…



ストーカー男、A君のママを思い出していた


離婚して元気にやってるのかな?

元気でいて欲しいな。



名前を呼ばれ、

診察してもらう……

明らかに不審そうな看護婦さんの顔…


腕の傷は、順調で来週にも抜糸が決まった


『ご主人に…ヤラれたの?』
先生が聞く、おでこの腫れた痣を見てくれる

『…はい、喧嘩しちゃって…』

『女性に手を上げるなんて…いつもなのかな?
まさか、この腕も?…』


『いえ、腕は違います!
こんなに殴られたのは、初めてです…』


『癖にならないといいけどね…』



『お大事に…』

診察室を出た。

またまた、視線を浴びる…


腫れた部分に塗る軟膏も処方してもらった



思い足どりで自宅に帰ろうとしたが、

どうしても海が見たくなって、海まで車を走らせた



目の前に広がる冬の海…



この日は、曇り空でどんよりとしていた


ななこ…
赤ちゃん…どうか…授かってませんように…



海に願いを呟いた



No.459

その日から、せいちゃんは宣言通り帰って来なかった

『お父さん、また急に出張なんだってー』

え~~~!!!!と子供たちのブーイング


『いつまで~?』

『まだ、分からないみたいよ…
ま、いいじゃん!晩御飯、マックにしよう♪
お父さん居てたら、マックで晩御飯なんて無理だもんね~♪』

大喜びの子供たち


(ほんとは、アタシが一生懸命作ってた料理も嫌だった。って言ったせいちゃん…
子供たちも…そうなのかな?
アタシが異常なほどに、こだわってるだけで…
あんな思いをした事ない人には、窮屈だったのかも…
アタシが悪いのかな?…)

どうしても自分を責めてしまう




次の日…
せいちゃんのお義母さんから電話があった


お義母さんは、かなり沈んだ声だった…


『あいちゃん…
あのね、夕べ、せいから電話があったのよ…

あいちゃん…ごめんなさいね…
うっ…うう…』


『お義母さん、落ち着いてください。
どうされたんですか?
(何となく分かったが…)』


『せいがね…知ってるでしょう?
せいが二つの家庭を持ちたいと言って来たのよ…

あいちゃん…
あなた…ずいぶん前から苦しんで来たのね…

狂ってるわ、あの女!!!
私と話したいと言って、電話に出て図々しく挨拶するのよ!!

認めないわ!!って言ってやったら笑ったのよ?

茨の道は覚悟してます!ですって…』

お義母さんは、啜り泣いた

『Jちゃんからも全部聞いたわよ…
今までも、何人もあったのね

よく…よく我慢してくれてるわね…
頭が上がらないわ…

あいちゃん、あの女が妊娠してたら…どうするの?!』


『分かんない…お義母さん…』
アタシも受話器を握りしめて

『お義母さーん…悲しいよ~!!
アタシ、どうしたらいいのか分からない…

我慢ばかりで…もうヤダー…』
泣いた。叫ぶように泣いた



ななこは、せいちゃんの実家にまで…


『あいちゃん、慰謝料よ!!!慰謝料取るのよ!
あの女から!
弁護士は、こちらから紹介させてもらうわ!

そうしましょう!』



『お任せします……』



アタシは、お義母さんに任せる事にした


No.460

それから数日の間、アタシはユマに電話した

『ユマ、もう助けて…おかしくなりそう』

ユマに、ななことせいちゃんの話しをして泣いた

『ひどい!!!あい、別れなよー!!
暴力振るうって普通じゃないし、男作れって…


自分の妻に言う言葉じゃないじゃん!

だいたい、何人そんな女性問題起こして…
また繰り返して…『今度は本気』とか言えるわけ?

あいに対する不満だって…
意味分かんないよ…!』


『アタシも意味分かんない…
やっぱり離婚かなぁ…』


『あいは、離婚したくない理由があるの?

そりゃあ長い付き合いだから情があるのは…
分かるけど…

ここまでされて、我慢する意味あんの?

妊娠してるかも知れないんだろ?

……捨てなよ……』


『アタシね、大好きな人と家族作って幸せに暮らしたかった

ただ…それだけなの…

だからね、何度裏切られても…
また、
家族としてやり直せるなら、壊したくない…って
思っちゃうんだ…


でも、もう無理かな?
アタシの努力の全てがウザいって言われてさ…

アタシがね、
全く家事しないとか、確かに悪いって思うようなことに
不満をもたれるなら、分かるんだよ……

でも、違う。
アタシが病気なのが一番ウザいって!

ひどいよ……
パニックになったのはさ、せいちゃんのせいでもあるんだから…

家事を一生懸命やってたのがウザい?
人格もアタシの努力も、アタシの全てを否定された……』


アタシは、わんわん泣いた

ユマは、何も言わなかった


受話器を持って、泣き続けた


『あい……
いつでも、頼ってね…
泣くのもさ、一人で泣いてないで
電話…かけておいでよ?
ねっ?

アタシ、なんにも言わなくても

ちゃんと、あいの泣く声聞いてあげるからさ

泣きに電話しておいでよ?』



『ユマ~ありがとう…』

また、泣いた。


半日、ずっと泣いていた



ユマは、ずっと付き合ってくれた



No.461

そして、夜にせいちゃんから電話があった

『あい?
あのさ、妊娠なんだけど…
生理来たよ。』

『そうなんだ…
子供達が寂しいって言ってるよ?
帰って来ないの?


アタシさ…もう離婚しようかな
って思ってるんだ』

『…はぁ?なんで?
ちょ…ちょっとマジ意味分かんねーんだけど?

別れる理由って何だよ?
なんでだよ?』


呆れた……………

コイツは、ほんとにバカになったみたいだ


『なんでって…はぁ?
あんた…女いるじゃん。
今だって、女の家でママゴトしてんだろ?

もう、いいよ。
赤ちゃん欲しいんだろ?家庭を持ちたいなら

アタシなんて、いらなくね?』


『待て、待て…落ち着いて考えろ!
(はぁ?どっちがだよ?)

暴力だな?確かに悪い。あれは、悪かった…

俺も親にも叩かれたことねーのに…
あんなことしちゃって…
悪かった。ごめん…

でも、ななこの事は関係ないだろ?

あいは、平気じゃん。
強いし、そこらへんで恋愛のもつれで
メソメソ泣くような女じゃねーじゃん!

あいも男作れって!なっ?

お互い、うまくやれるって…
ちゅーか、マジ、あいがいないなんて考えられねー………』


『今、散々アタシの不満言って女の家に居るじゃん。
アタシ居なくても楽しくやってるじゃん』


『違うって~!
あ。ななこ、……………
あい、ななこが話したいって』


電話は、ななこに代わられた

『あいさん、生理…来ちゃいました…』

『そりゃあご愁傷様!』

『何?離婚の話し?(笑)

アタシが相談に乗りますよ♪♪

赤ちゃん。チャレンジしてみるから♪
妊娠したら、せいちゃんだって
あいさんを捨てるよ(笑)』


『アタシが、アイツを捨てんだよ!!!
せい出してくれる?』


『もしもし?あい?
とりあえず、明日に帰るわ
話ししよう!前向きにな!』


意味分かんねー……


もう、いいよ。


電話を切った。

ビールを開けて飲む…うまい♪



タニは、前に会った日から、夜寝る前に必ずメールをくれていた


No.462

あの数日間…
サエちゃんにも電話して泣いた


『あいちゃん、もう…無理だよね…

離婚はして欲しくないのが本音…なんだけど…


そこまでされたら、修復なんてできないよね…

それに、修復って言う以前にダンナさん…
戻って来てないもんね。』


『うん……子供達を思うとさ…
何だろなー、泣けて来るんだよ

離婚しても、このままで居ても悲しいだろうなって

そんな事すら、分からないせいちゃんに、ついて行く自信ない

信頼なんて、とっくにしてない…

でも、離婚だー!!!!って心が決まっちゃったり

いいのかな……って不安になって、気持ちがグラグラ揺れるんだよ


どうしたらいいのか分からない…』

アタシは、受話器を握りしめて泣きまくる


『あいちゃん………』

泣いて泣いて泣きまくる。


ユマにも毎日のように泣いて電話をしていた


サエちゃんにも、電話で泣いていた…


『あいちゃん、親に頼りなよ!もう、駄目だよ…
こんなに泣いて暮らしてるって
悲し過ぎるよ…親に頼りなよ…

アタシも、ダンナの事、お母さんに愚痴聞いてもらってるよ?』


アタシの一番…痛いところ。
ユマも親に言えって言う…



アタシには…言えないんだよ…




電話を切って泣いた。



自分が、こんなに苦しい事…


親に言えない自分が悲しくて、辛くて…
でも、誰にも理解してもらえなくて


悔しくて、悲しくて…八方塞がりで泣くしかできなかった



そんな親子関係、築けてないんだよ…

親は、アタシを心配するだろう
助けてくれる、支えてくれると思う


だけど、無理なんだ。

理屈じゃなく、無理なんだ。


言わない方が、親不孝?

それなら、それでも構わない。
墓まで持って行ってやる


泣き言を言いたくない。


アタシは笑ってなきゃ駄目なんだよ



みんなには、絶対、分からない…

こんな気持ち…



両親を思い、声をあげて泣いた



届かない…
届かなくてもいい…


アタシは、あなた達、両親が幸せなら…いいんだよ


みんなには、分からない…


No.463

そして、家を出て10日くらい(電話の翌日)せいちゃんが帰って来た


『ただいま~♪』

バタバタとしんちゃんが玄関へ走って行く
『お帰り~!!!僕ね、〇〇〇のゲーム、全クリアしたよ~♪』

『スゲーな!しんちゃん♪』


廊下を歩いてせいちゃんが、リビングに顔を出した


ふぅちゃんは、今朝から具合が悪く学校を休ませていた



『ただいま!ふぅちゃん♪』




ふぅちゃんが、チラリとせいちゃんを見る



『………なんで帰って来たの?』



冷たく言い放つふぅちゃん…



アタシもビックリした



『あんたは、お父さんじゃないから!!!出てけ!』


バン!……


ふぅちゃんは、クッションを投げつけて…


部屋へ閉じこもってしまった





え?……
アタシ、子供達には絶対分からないようにしてたつもりだよ?


どうしたの…ふぅちゃん…


尋常でない、ヒステリックなふぅちゃんを初めて見た…



コンコン。
ふぅちゃんの部屋をノックする


ドアを開けて…


ふぅちゃんは、泣いていた
『ふぅちゃん…どうしたの?』




泣きながら…

『……お母さん…!!!!アタシ、昨日の夜中にお父さんの携帯から電話があって…

出たら…ななこが…ななこって人が…

うぇ~ん…ななこって人がぁ~!!!!!
うぇ~ん、うぇ~ん……』


カァーーー!!!!!!!!!!!と頭に血がのぼる

怒りで体が震える…
叫びたい衝動に刈られる



ななこが!!!!!
ななこが………!!!!!

ななこが、ふぅちゃんに何か言ったんだ!





後ろに、せいちゃんが突っ立っていた



No.464

『お父さん…!!!お父さんは、あの人と結婚するつもりなの?!』

ふぅちゃんが叫ぶ



ああ……なんてこと…


『言ってたよ!
お母さんやアタシ達が、邪魔だって……!!!!


お父さんは、アタシと結婚するつもりなんだから
早く…
早くお父さんと、お母さんに別れるように言ってって…

アタシに言って来たよ…


もう…いらない。
お父さんなんて大嫌い!!』

ふぅちゃんは泣き叫んだ


力いっぱい、ふぅちゃんを抱きしめた

頭にいっぱいキスをする


『ふぅちゃん…ごめんね…
ごめんね…ふぅちゃん…
お母さんが守るからね

傷ついたね…
もう大丈夫だよ…ごめんね…』


『お母さんは悪くないよ!!
お父さんの裏切り者!!アタシの部屋に入るな!!

大嫌いだ~!!!!!!』

アタシに抱き着き、泣くふぅちゃん…



『お父さんとお母さん、別れるの?なんで……?』


真っ赤な目をした、しんちゃんが顔を出した



ふぅちゃんが、大声で言う


『この人は、お母さんよりも好きな女の人が出来て
結婚するつもりなんだって!!!

もう、お父さんじゃないんだよ!

しんちゃんも、お父さんって呼ぶな!

お母さんを泣かしてばっかりで…許さない!!』



しんちゃんが泣きわめく…

『嘘だーぁぁぁ!!!!
お父さんが…お母さんよりも好きな人なんて…

嘘だぁー!!!

うわーん!!うわーん!!!うわーん!!!

お父さんの嘘つきー!!!』


もう駄目だよ…



せいちゃん…あなたの居場所は、ここにはない




No.465

ななことせいちゃんが、出会ったのは、11月の中旬頃…

それから、たった3ヶ月…


たった3ヶ月で、こんなことに…

泣くふぅちゃんと、しんちゃんを抱きしめながら

せいちゃんを睨む


3ヶ月前までとは、まるで別人の男になってしまった
せいちゃん………


よく歴史上でも女により男が変わり、波乱を巻き起こして行く


まさにそれだと思った


こんな短期間で…

まさか…こんなことになるなんて…


狂った男女の汚く狡い…不倫の渦に…アタシ達は、呑まれてしまった…



ふぅちゃんの携帯には、ななこに番号を教えたと聞いた日から



【Ⅹ】と登録して着信拒否していたのに……


まさか、せいちゃんの携帯を使ってまで
子供を巻き込むなんて想像もしていなかった…


みんな…アタシが悪かったの?


『ごめんね…ごめんね……』
何度も謝った…


『お母さんは悪くないよ……
お母さんかわいそうだ…
お母さんは悪くないから、謝らないでよ…』

ふぅちゃんに抱きしめられる


『お母さん…悲しかったの?
僕らが、お母さんを守るからね…』

しんちゃんが、頬に流れる涙を拭いてくれる


しんちゃんだって、涙でいっぱいなのに…


せいちゃんは…
『ななこが…ごめん。お父さん知らなかった…』
とつぶやきながら近づく』


『入ってくんな!!!』ふぅちゃんが怒鳴る



『もう、終わりにしよう!』
せいちゃんを見て、ハッキリと言った



『あい………………』
せいちゃんは、黙り込んで
その場に、力なく座り込んだ



No.466

ずっと無言のまま…
何の言葉もなく…座り続けていたせいちゃんは

ふぅちゃんに『出て行けよー!!!!』
と玄関に押されて、ヨロヨロと…
家を出て行った。


せいちゃんが、居なくなった家の中で
3人で抱き合って、3人で泣いた…

泣いて泣いて泣いて…




『お父さんとお母さん、もう別れるね。

お母さんも疲れちゃった…』


『お母さんは、お父さんが好きだったの?』


しんちゃんが聞く……



ほんとの気持ちは…分からない


好き、嫌い、どっちも本音。

本音は…
正直であることは…
矛盾する答えだったりするものだ



『好きだったよ……』


しんちゃんが頭を撫でてくれる


『かわいそう、お母さん。………かわいそう』


しんちゃんの手が温かくて…
ふぅちゃんが抱きしめてくれる



『お母さんを守ってあげるからね…』




ああ…涙が止まらない




この子達を産んで良かった…



『生まれて来てくれて…ありがとう…』



3人で、お風呂に入って

これからの事を考えていた



No.467

離婚を決断したこと…

この辛い胸の内を…伝えなければならない【両親】に…


お願い助けて…

もう、心がもたない…助けて…
『お母さん』助けて…



緊張した。必死だった。


素直に話してみよう……


受話器を持って実家にかける

プルル…プルル…プルル…
『只今、留守にしております。』

はぁー!!!
ため息が出た。【今】を逃したら言えない気がした…


母親の携帯にかける
プルル…『もしもーし♪あい、どうしたの?』

深呼吸をして…
『あのさ、ちょっといい?』

『いいわよー♪今ね、何処だと思う?
お父さんね、有休取ってくれて、二人で北海道に旅行してるのよー♪
来月が、私の誕生日だからって♪
最高よ~うふふっ…♪♪♪♪』


駄目だ……言えない。








『良かったじゃん!じゃあ、またでいいよ♪
楽しんで来てね~♪』





やっぱり神サマは、意地悪だ……

アタシは、両親に助けてもらえないんだ…


もう求めないよ…


涙が止まらなかった

この瞬間しか、言えない気がしたから…
勇気を振り絞ったのに…


ああーっ!!!!
うっうっ!!ああぁぁ~!!助けてよ~!!
助けてよ~!!



こたつに潜り込んで、思いっきり泣き叫んだ…


考えなんか浮かばない…

ずいぶん、弱くなった自分に気がついた


みなの時なら…あの頃のアタシなら、一人でも動けたはず…


パニックになってから、せいちゃんに頼って生きていた
依存していたんだと気づいた



そして、

ずっと、気になっていたこと…
離婚を決めた今…確かめておきたいことがあった



せいちゃんの親友、アタシも友達のヨシに電話した


『もしもしー』
『あ、ヨシ?あいだけど…』
『おう!あいちゃん、どうしたの?』

『実は、離婚することになったんだ…』


ビックリするヨシ。



アタシは、事情を説明して、ずっと聞きたかったことを聞き出した


No.468

アタシの聞きたかったこと…

みなとは、どんな付き合いで、
どれだけの期間付き合っていたのか


ヨシは、自分にも責任があると言って、記憶をたどり教えてくれた…


それなりに、予想通りでもあったが…
想像以上のショックも受けた…


せいちゃんと、なみは約1年の付き合いで

出張だと言って、2週間や、長い時は1ヶ月…

みなの家で、半同棲生活をしていた…



と言った内容だった。



バカらしくなった…

こんな男だったのだ


自分は、何度も許し修復をして来た…
努力もしたつもりだ…


だけど…
だけど…



みなの事を、あの時に聞いていれば
こんな事実があったのなら…


アタシは、離婚を選んでいたと思う



許せない………!!!!!



アタシは、なんだったの?



眠れない夜を過ごした



完全に、自分を見失ってしまった…



今でも後悔している


この時に
タニの言ってくれた、言葉を思い出していたら…



【あいにとって、一番大切な、譲れないことを中心に
物事を、判断するんだ

頑なになってしまうと、周りが見えなくなって
自分を追い込んでしまうぞ?】



ごめんなさい……


No.469

>> 468 訂正🙇

【なみ】と名前を間違えています💦

【みな】です


申し訳ありません🙇💦

No.470

目を覚ますと、せいちゃんがいた

手には点滴…


ふぅちゃんと、しんちゃんの姿も見える



ああ。


夢だと思っていた……


吐き気がする…


せいちゃんが補聴器を渡してくれる


『あい………ごめんな……』


アタシは無視した


『お母さん!!お母さん!!!お母さん!!!!!』


体を起こして、泣きつく我が子たちを抱きしめた


『ごめんね……お母さん…

なんてことを…ごめんなさい…』

子供達を抱きしめて、大きな声で泣いた

許されないことを…してしまった



【どうかしていた…】


なんて言葉じゃ済まされない…


ほんとに…なんてことを…

目覚めて…こんな最低な自分は…
なんて酷く、自分勝手で、自己中で、弱くて、情けない、世界一バカな母親なんだと

不倫する父親よりも、最低な弱い母親なのかも知れない…


消えてしまいたくなった…




『夜中に帰って来たら、薬が……

睡眠薬、精神安定剤、胃薬、風邪薬、鎮痛剤…


テーブルの上が…薬の山で…

あいが泡を吐いて…倒れてたんだ


俺が……


俺が……あいを……


追い詰めたんだな……』



せいちゃんは、頭をもたげて、手で顔を覆っていた



『もう、お母さん目が覚めたから
帰ってよー!!!!!!

お前が、お前がお母さんを殺すところだったんだ!!!

早く帰れー!!!!!!』


泣きながら訴える、ふぅちゃん…


ずっと手を強く握りしめて離さない、しんちゃん…



こんな我が子を置いて…
アタシは…


涙が次から次へと

途切れることなく流れ続けた



『ごめんなさい…
ふぅちゃん。しんちゃん。
お母さん、もう…なんだろ…

死にたくなったんだよね…




でも、
あなた達に、会えなくなるなんて……


嫌だ…!!!!!!!!!』



『もう、いいんだよ!!!!お母さん!!!
生きててくれて、ありがとう!!!』

抱きしめられた、細いふぅちゃんの腕に…




うっ…ひっ…う…
嗚咽は止まら無かった




生きててくれて、ありがとう………



娘の言葉が、胸に響いた



No.471

アタシが覚えている、自分の行動は…


もう、みなの話しを聞いて…
いっぱいいっぱいになってしまった


そんな前から
【遊び】だと言い切っていた、みなと……
【半同棲生活】を送っていた、せいちゃん…


出張だからと、信じていたのに


色んな気持ちが渦巻いて、気づけば実家に電話をしていた


『ただいま、留守にしております。ご用の方は、発信音の後にメッセージをお願いします』

母は、留守電のアナウンスが失礼だと言って、自分の声を流すように設定している


最後に母の声を聞きたかった…

かけ直して2度聞いた。


そして…
薬を飲んで…飲んで…飲んで…


気分が悪くなって、縮こまり…
記憶が無くなった







自殺未遂……………






やってしまった………




何を考えて…?


何も考えたくなくて。




ふぅちゃんの言葉が、胸に響いた


同時に、自分の愚かさに…また、死にたくなった……



もう二度と、こんな真似はしないけれど…


突発的で、衝動的…

考えが、悲観的で頑なになり…理性が吹っ飛ぶ



自殺してしまう人の気持ちが分かった気がした…



No.472

アタシは、せいちゃんに助けられて生きている


意識もはっきりしている

吐き気と頭痛はするけど…


せいちゃんがナースコールを押す


『目、覚めましたか?』
若い看護婦さんが、アタシの個室の病室に入って来た


『ご迷惑をおかけしました…』

看護婦さんはニコリと笑い『良かったね!お母さん、元気そうよ♪』
と子供達に言った


『お母さん、お子さん達…すごく心配してんですよ?
気分はどうですか?
もう、あんなことは…してはいけませんよ?』


『申し訳ありません…』涙が出る


『ご主人に、聞かれました?』

『………?何も…』せいちゃんは、黙り込んでいる

『先生、呼んで来ますね。後…警察の方と…』


警察?


お医者さんが来た
『良かった。目が覚めましたか?
あんなに飲んだら死んじゃうよ?

胃の洗浄の処置をしておきました。
もう大丈夫だと思いますよ

…命は大切にしようね…

辛いことは、人生で何度もある

もう、限界だと思っても死んじゃ何も解決しないよ?

解決するために、生きなくちゃ駄目だよ?

ちょっと、疲れ過ぎたのかな?』


『ありがとうございます…
はい…疲れ過ぎみたいです…』


『じゃあ、一泊して行きますか?』

『いえ!!!!お願いします!帰れるのなら…
帰らせてください!』


『もうすぐ…夜だしね…このまま泊まっても…
と、思いますが帰られるならいいですよ


明日、もう一度来てくださいね』


『ありがとうございました』

せいちゃんも深々と頭を下げていた




『よろしいですか?』
入口の声のする方を見ると、『警察の者です』と会釈された


詳しく、自殺の動機を聞かれた…


No.473

せいちゃんが、110番して『妻が死にました!!!助けてください!』と叫んだようだ…


アタシは、ありのまま『動機は…度重なる夫の不倫です』
と答えた


ちらっと、せいちゃんを見る刑事さん?警察の方…

『はぁ~、多いんですよ、不倫による自殺。

ご主人、あなたに分かりますか?
奥さんの追い詰められた気持ちが…

不倫する側は、自殺なんてしないんだよな~

理不尽ですね……

ご夫婦の問題ですので、これ以上、口は挟みませんが…
奥さん、実家にでも連絡しなさい!

私にも娘と孫がいるから…腹立たしいですよ!

では、失礼します。
奥さん、もうこんなことしちゃ駄目だよ?

お大事にね…』


『はい……ありがとうございます』



警察の人は出て行った



『帰ろうか…?』

せいちゃんが聞く

せいちゃんは、多分何も食べてないんだろう

ずいぶんと憔悴した印象だった


ハゲてるアタシよりは、マシだけど!


『………うん。連れて帰ってくれる?』


『ああ、しばらく有休取ったから…話しもしよう…』


『そうだね……』



ふぅちゃんは、せいちゃんが家に入るのを拒んだが、
話しをしないと駄目だから…少しの間だけ…

と言うアタシに、渋々『すぐに出て行ってよね!!』とせいちゃんに冷たく言い放ち


黙々と家族で、コンビニ弁当を食べた

アタシは、水分だけと言われていたので
ビール♪♪と思ったが、さすがにやめておいた


ずっと、
せいちゃんは黙り込んでいた


ふぅちゃんと、しんちゃんは、せいちゃんなど透明人間のように
無視して二人とアタシで、話したりしてた


No.474

携帯を見たら、タニから20通ものメールがあって、ビックリした!!!

いつも、夜に『今夜は、親子丼✌作ったぞ!
あいは、何食った~?』

『今日は、お姉系のお兄さんが来て‼エクステつけてロングにして行ったよ~😁』

『あいは元気か~?寒いなぁ😫雪降りそう💦』


こんな感じでメールが来る、アタシも返す
2回ほどのやり取りをして
『お休み~🍀いい夢見ろよ💤』でお休みの合図


それが無かったからか
『あい~?😫‼どうかしたか?』

『返事しろー‼あい~😭』

『なんか胸騒ぎが…するんだけど、元気?😱💦』

『空メールでも送れよ~😭‼』

『ああ、心配……家まで🚗行きたい⤵』

こんなのが20通以上入っていた


さすがに、心配し過ぎ…と思いながら
なんだか…嬉しかった。

心配してくれてるんだ…

心がポッと温かくなる


『ちょっと、お母さん、電話するね~♪』

『はいはーい。アタシの部屋使ってください♪』

電話の時は、いつもふぅちゃんの部屋を使う


プルル…プルル…
『あい!あい~!どうかしたのか?
心配して…心配して…俺………』

『タニ~!!いっぱいメールありがとう♪
ちょっと…正直に話すね…今、大丈夫?』

『大丈夫だよ。車寄せるわ…はい。OK!!
どうした?』


タニに全てを話した。


せいちゃんの暴力、暴言
ななこが、ふぅちゃんに電話してたこと

もう離婚を決めたことも

そして、昔のみなのことも…

自殺未遂で連絡できなかったことも
辛い胸の内を全て話した


涙でグチャグチャになりながら……必死に話した

うん。うん。…そっかぁ。うん
真剣に話しを聞いてくれるタニ…


『あいが生きてて…良かった……』

タニが話した…泣いてる?


『タニ、泣いてるの?』


『当たり前だろう!!俺が……助けてやりたいよ…』


『タニ……ありがとう、また、メールするよ!』


『駄目だ。電話もして来い(笑)…マジで』


『…分かった。ありがとう…』

電話を切った


タニが泣いてた……

アタシのために泣いてたよ…


胸がキュンとなる。



いやいや、まだまだ問題は山積みだ…


トキメいて…どうすんだよ!


自分にツッコミ、リビングに戻った


No.475

リビングに戻ると、せいちゃんは居なかった

『お父さんは?』

『知らなーい。携帯鳴ってベランダ出たよ?』
しんちゃんがテレビを見ながら言う


ななこだ………!!!!


ベランダを開ける、『無理だって…』
小さなせいちゃんの声…

無言で携帯を取り上げた

『もしもし?』

『は?奥さん?…あのね~、せいちゃん返してくれる?』

『黙れ!』
アタシは、またふぅちゃんの部屋へと歩く
『てめぇよー、うちの娘に何言ってんだ?
マジで許さねぇ…ぶっ殺してやる!!!!』

『そんな話し、どうだっていいから!
せいちゃん返してよ~!!
あんたが自殺未遂なんてするから…
バカじゃないの?(笑)
そこまでして、しがみついてミジメだよ?』

『しがみついてない…
アイツは、てめぇにやるよ!!!
だけど、子供まで巻き込んで…やることが卑劣なんだよ!

そこまでしなきゃ、せいが手に入らね~のかよ?』

『うるさい!


………者!!!』


なんて…言った?

中学以来、アタシにそんなこと言った人はいない…

うるさい!【障がい者】!!

一瞬、言葉を失ってしまった


『耳の障がい者、なんでしょう(笑)

だから、同情かって…』

『だ・ま・れ・・・・・・・!!!!!!!』

『てめぇは、最低だな。
同情かってだと?だったら、…てめぇも耳つぶせや!!!
羨ましいなら、てめぇから、……音を奪ってやるよ!!』


『怖ーい……
あんた、マジ怖いんだけど?
頭、大丈夫?ふびんだねー(笑)

せいちゃんは、絶対返してもらうからね!

アタシ…あんたが近づくなら警察に言うから!!
怖すぎだよ(笑)ヤンキー(笑)ぷっ。ダサ~(笑)』


電話は切れた。


ショックだった…アタシのコンプレックス…

アタシが……
アタシが……

願っても、願っても…叶わない永遠の夢


普通に、自然な音が聞きたい…


ななこは、痛いとこをナイフのように刺して来た…


うなだれてリビングに戻る


心配そうな、せいちゃんの顔…


『ふぅちゃん、しんちゃんが上がって来たら
すぐにお風呂入ってね!!』


ソファーに座り、せいちゃんに携帯を渡した


No.476

子供達がお風呂から上がり、アタシもお風呂に入った

もちろん、一人で。


ななこに対して、怒りが湧きあがる

せいちゃんに対しても、怒りが…悲しみが湧きあがる

マシにはなったが、痩せ細った体に無数の痣が、まだ痛々しく残る…

青色、茶色、黄色…ムラのある斑点模様だ…


悲しい………


お風呂から上がり、ボディケアをする


痣に軟膏を塗り…

タニからもらった育毛剤を頭皮にスプレーする


プロテインをガバガバと飲み干し、体力作りにストレッチ&ヨガ


リラックスを心掛けるが、集中できない


お風呂から上がって来た、せいちゃんにイライラする


『いつまでいるの?
ななこが、返せってうるさいけど、
ハッキリと離婚の話し進めようよ…』


無言のせいちゃん…
だけど、小さく見えた。


『ななこに、障害者!!!って言われたよ
話したの?アタシのこと…最低だな!』


せいちゃんが驚いて、こっちを見る

『病気のアタシが嫌だって言ってた中に、パニック以外に
耳のことも入ってたんだね、ショックだったよ』


『…ななこが?
あい!違うんだ…ななこはバカで…』

『バカで可愛いんだろ?』

『……バカで、あいの事をすんげーライバル視してて…
聞いて来るんだよ。色々と…
つい話しちまった…ごめん!そんなこと直接言うような奴じゃないと思ってた…』


『もう、いいよ。アタシの全てがウザいんだもんね…
はぁ、話しにならねー、寝るわ』

『アタシだってなぁ、てめぇの全てがウザいんだよ!!』



『あい…明日、病院連れていくから…
一人じゃ無理だろ?』


悔しい…………!!!!!!!!


パニックでさえなけりゃ…一人でなんでも出来るのに!!!

『お願いします…』


アタシは、わずかに残っていた薬を飲んで、寝室へ入った


ベッドに潜りこみ…泣いた


全てが悔しかった。

泣くしかできないアタシが悔しかった…


No.477

疲れからか、すぐに眠れた


翌朝、洗面台に立つ。
自分の顔をよく見る…まだ消えてない
青痣が、痛々しい…

ハゲた頭も…痛々しい…


自殺未遂までした。


でも、そんな不幸な匂いがする女が鏡に映っていた…


変わりたい!
もう抜け出すしかない!!


着替えをする
オシャレは大好き…いつもより気合いを入れて、服を選ぶ


苛立ちには、ロックスタイルがもって来いだ!!!


肩だしの黒いニットで、中にヒョウ柄のタンクを着る
ダメージのデニムスカートを履き、網タイツ

ウイッグを付けて、ドクロのヘアピンで前髪を流して留める


気合い。気合い。

化粧も痣には、コンシーラーをたっぷり叩き込む

ツケマをして、カラコンを入れて完ぺき♪♪


別人になれた♪♪


痣が、うっすら見えるのが悲しいけど…



『行って来まーす♪♪』

『気をつけてね!行ってらっしゃい!』


さぁ~!やるよ、アタシ!


せいちゃんは、まだまだ寝ている


さっさと家事を済ませてしまった


今日は、【最後の日】にしよう!


No.478

せいちゃんに連れられて病院へ行った

異常なし。

次は、いつもの心療内科に連れ行ってもらう

先生に自殺未遂の話しをした

全ての成り行きを話した

心配された。
ダンナと別れた方がいいと、直接ではないが遠回しに個人の意見としてアドバイスしてくれた


『そのつもりです!』力を込めて返事をした

先生は、『無理のないように、いつでもおいでね』と、笑ってくれた

やっぱり人の笑顔は、癒される…



車で待たせていた、せいちゃんの元へ帰る


『次は、市役所行って…』

『……えっ…なんで?…』

『離婚届けもらうの。話し進めなきゃいけないじゃん。
先に、用紙だけ貰おう!』


ため息をつき、市役所へ車を走らせる、せいちゃん…


心の中で、何回も『さようなら』と繰り返していた

一人で市役所に入って行った。
離婚届けは、すんなりとは貰え無かった

離婚届けの記入の仕方や、他に色んな問題点の話しを聞き
パンフレット?と一緒に手渡された


でも、前進した気持ちだった


お昼も過ぎて『あい、ランチ行こうか…
外なら、冷静に話しも出来るかも知れないし…』

『そうだね、じゃあ〇〇〇〇に行こうよ
個室だし、話しやすいから…タバコも吸えるし(笑)』


『離婚届け…貰ったんだな…』


『そうだよ?もう、家族じゃなくなるね』

『サッパリしてるな…』


『せいちゃんの言うように、強い女だからね…
ほんとに、どこ見られてたんだろなー
アタシ、弱いのにさ…』


『弱くなったんだろ?』


『……だね。』


車は、お店に着いた


No.479

タバコを吸いながら、メニューに目を通す

『アタシ、Bセット』

『俺は…ん~…』『ゆっくり決めてね』


せいちゃんは、いつもすぐにメニューを決められない


アタシは、すぐに決まる

慣れたやり取り…



洋風の個室で、温かみのあるロッジのような雰囲気


お互い、口数少なくフォークを運び、パンをかじる


会話は、
思い出話しになって行く


『一番楽しかったのは、しんちゃんは、まだいないけど…
ふぅちゃんが元気になって、遊びまくった頃かなー♪』


『良かったよな、奇跡って言われたもんな。
ふぅちゃんも11歳だよ…』

せいちゃんも、遠い目をする



『アタシさー、せいちゃんと離婚する理由ね…
親には、不倫されてたって言いたくないの…』


『………なんで?俺が憎いだろう?』


『うん(笑)だけどね…、不倫されてたなんて
聞いたらさ、ショック受けるじゃん?

嫌なんだ…
結果は、同じで悲しませてしまうけど
女性問題で、心が傷ついたって思われたくないの…』


『あいは、親に甘えない奴だよな~
言えたことじゃないけど、女が出来たって
実家に泣いて帰る妻なんて腐るほどいるぞ?

やっぱり、あいは強いわ(笑)』


『違うの…………!!!!!
アタシはね、アタシは………………』

ここで初めて、幼少期の辛かった思い出を話した

祖父の事や、
両親に対する気持ち

母親に対する気持ち

耳の障害へのコンプレックス

パニックになってからの心の変化

せいちゃんを、母親のように慕って心を開き…それが依存のようになったこと

せいちゃんに話した

全て話した


何度も何度も、黙り込んで…
タバコを吸って…ハンカチで涙を拭って…


ゆっくりと、ゆっくりと話しをした



途中から、
せいちゃんは泣いてしまった


No.480

『なんで…なんで言わなかったんだ?』


『言えてたら…どうだったの?』


『大事にしてたと思う…
あいを、もっと甘やかしてあげてたと思う…


俺ばっか甘えてたな…

なんで、そんな大切な話しを…
今になって…』


『ごめん……
カウンセラーサンと先生以外には

誰にも言ったりしてない

ずっとずっと、こんなに全てを話したことなんて無かった

触れられたくなかったし…

自分から、悲劇のヒロインみたいな話し…したくなかった!!

アタシは、普通の子として扱われたかったの…


それを言うことは、自分を否定するように感じて…
言えなかった…



今だから、話してみようと思ったんだ…


前に、口が悪いから嫌い。って言ったじゃん?

あの時に…ほんとは言いたかった

でも殴られたから……』





せいちゃんは、アタシに向かい座り直して、土下座をした………


『あい………申し訳なかった……

許してくれなんて言わない…

だけど、謝らせてくれ、申し訳ありませんでした…

大切にできなかったこと…
沢山、傷つけたこと…


一生、忘れません……』

ポタポタと落ちる涙の雫…が、床を濡らす



アタシは、
答えようがなくて…

タバコに火を付けて『やめて…』とだけ言った



食後のコーヒーをお願いする


コーヒーを飲んだ


お互い、一言も話さなかった


許せるわけない。


話す事を避けていた自分を、後悔もしていた…



『明日、土曜日だし…せいちゃんの実家に行こうか…

話ししなきゃね………』


『あい…………』


無視してコーヒーを啜った



No.481

その夜、ふぅちゃんは機嫌が悪かった

せいちゃんが必死に、話しかけているからだ


ふぅちゃんは、ウザい!と言って部屋に行ってしまった


アタシは、黙々と夕食の後片付けをする


しんちゃんも、お父さん大好きっ子だったのに
無視して一人でゲームをしている


バラバラな家族………


9時過ぎに、せいちゃんの実家に電話をした

『ご無沙汰してます。あいです…』

『あら、あいちゃん…ごめんなさい…
バタバタとしててね…弁護士の話し…まだなのよ~』

『いえ、あの…明日伺ってもいいですか?
大事なお話しがあるので…』

『大丈夫よ。お父さんも居てるわ

ところで、せいはどうなってるの?』

『明日、お話しします…

せいちゃんは、以前と同じ状況です

今は、家にいますが…』

『そう…良かった…
今は、帰ってるのね。
頭が冷えるといいんだけど…』

(…無理ですね)

『では、お昼頃伺います』



じっと、アタシを見てるせいちゃん…


『なぁ、ちょっと子供達呼んで来て!
みんなの前で、話したいことがある』
せいちゃんが言う…



子供達を呼んで、家族が揃った



せいちゃんは、いきなり土下座をした


『あい、ふぅちゃん、しんちゃん…

お父さんが悪かった…どうか許してくれないか

もう一度、家族をやり直したいんだ…』

真っ赤な顔でせいちゃんが、必死に何度も頭を下げて訴える


しんちゃんは、アタシをチラチラ見ている…


ふぅちゃんが、新聞を投げつけた!!!
『ふざけんな!謝って許されることと、許されないことがあるんだよ!!

あんたは、お父さんじゃない!

お母さんは、自殺しようとしたんだよ?

ごめんなさいで済まされない!!!

出ていけー!!!!人殺し!!』

ふぅちゃん…厳しい!
我が娘…と感心してしまった


立ち上がった、しんちゃんも
『お母さんが死んじゃったら嫌だ!!!

だから、お父さんは許さない!

好きな女の人のところへ行ってよー!!
僕らの家に……居るなよ!』と叫んで泣いてしまった…


しんちゃんを抱き寄せて

『もう、無理だから。
今更……もう何を言われても通じない

信じないから…諦めて…』

『子供達が寝たら、離婚届け記入しよう…』


それだけ言った


ふぅちゃんが、やっと笑った

『お母さん♪もう、お父さん見なくて済むね!!』


ため息と笑いが出てしまった

No.482

寒い中、ベランダへ出てタバコを吸う


満天の星空…


もう2月も下旬、暖かい春がやって来る


毎年、バレンタインは紙袋いっぱいに持って帰って来ていた
せいちゃん宛てのチョコレート…

中には、手作りも3つ4つ混じっていた


毎年、子供たちが楽しみにしていた日…


今年は、チョコレートを持って、ななこの家に帰ってたんだなぁ

どんな会話をしてたんだろう


タバコの煙りとため息を吐き出す


気分は、悪くない。

現実的な金銭面は、不安もあったけど
こんな家庭を続けるわけには…いかない



勝手なことばかりして来た、せいちゃん…


最後は、アタシが勝手を言わせてもらう!!!


弱りかけた心を奮い立たせる



『おやすみ~♪♪』

子供たちも寝静まり、せいちゃんと向き合う


『離婚はするよ?!絶対に…だから、話しをしよう!』


『…なぁ、あい…どうしても駄目なのか?
考え直せないか?…俺、あいをそんなに裏切ってた訳じゃない…』

『はぁ?裏切ってるじゃん?バカには分からね~の?
普通の感覚が……とにかく、もう終わりにしたいから

せいちゃんは、家庭向きじゃないんだよ』


『たった3人だぜ?
裏切ったって、たった3人……
しかも、一人は名前も覚えてない一晩限りの女!!
それで離婚かよ?』


『ヨシに聞いたよ…全部、全部聞いたよ…』


せいちゃんの額から汗が吹き出す

『な…何を…?』


『昔、夏にも裏切ってたことあるんだってね』
(カマをかけた。何故なら【見た】からだ…)


『あれは…ナンパで軽いノリで…』
アタフタとするせいちゃん

やっぱりビンゴ…!!!
『ノリでヤッちゃったんだ?
じゃあ、4人だね?!』


『…………………………ごめんなさい』


小さな声で謝る。




もう、アタシは傷つかない!!!!



No.483

>> 482 『まだあるだろ?
……まき。会社の子だったよね
愛人にしてって迫られてたよね?』

『まき?知らない。』

『嘘つくんだ……』
突然、せいちゃんがアタシに馬乗りになって

ガツン!!!!頬を殴られた

頭がクラクラする


『まきは知らね~!!』ガツン!!バチン!!

バチン!!!…ガツン…!!


あぁ、意識が飛びそう…


せいちゃんを蹴り飛ばした

鼻血がダラダラと流れ出て…
アタシは、血を見ると、逆上して飛び掛かり、せいちゃんを殴った…

拳に力を入れて、めいいっぱいの一発!!!


呆気なくヨロめく、弱いせいちゃん…


コイツ、ほんと弱い。
簡単に殴り殺せそうだ……


もう、止めよう。

せいちゃんは、罵声を浴びせながら反撃して来る


好きなだけ、殴ったらいいよ。


ボコボコにやられた。

痛くて仕方ない…当たり前だけど、でも反撃せずにやられっぱなしになった


これで、もう最後だ。


顔面も体も、お構いなしに蹴りを入れて
殴り付けて、髪を引っ張って…
頬をぶたれる。


目が合う…『弱ぇーな(笑)』
わざと、挑発する


また殴られる………


『ヤレよ、あい!!!!お前は、スゲー強いじゃねーかよ!!
殴り返せよ!!!』

『てめぇは、殴る価値なし………(笑)』

爪で体中をひかかれる…

皮膚が痛む…

リモコンで殴られた。

絶対に声を出さなかった




そして、最後は…服をたくしあげられた…


それは、それは嫌だ。

『やめて…
それは嫌だ~!!!やめて~!!!』


『これなら勝てるな。あい、犯してやる!!!』


ショーツに手が伸びて、一気に引き下げられる…


涙が出る………


『てめぇ、ぶっ殺す!!』


アタシは、せいちゃんの手をつかみ
体を抱え込んで、プロレス技…
【ヨンノジガタメ】をかけた


『うぎゃ~ぁぁ、痛てー!!』

すぐに離して、頬を平手打ちした


『いい加減にして。』静かに言った



せいちゃんは、横たわり丸まった姿勢で動かない


顔を見ると、クシャクシャに眉間にシワを寄せて泣いていた


『もう、終わろ?』

『アタシ、まきと何回も話したことあるんだよ?
だから、全部聞いた
ヤッとくでしょう?5人だね』


せいちゃんは、声をあげて泣いた


アタシは、傷だらけになって
あちこちから血が出ていた…


No.484

『アタシから、書くからね!!』

深呼吸して記入して行く

『子供は、アタシの子だから渡さないよ』

子供の欄も記入…
本籍…記入…

氏名を書いて…捺印。


かなり、辛い作業だった…

もう離婚するんだなぁ…と実感する


まだまだ問題は山積みだけど、とにかく必死だった


殴られっぱなしだったのも計算のうち

殴られたことが、かえって良かったと思えた


痛むけど…ほんと、弱い男だ…

きっと、アタシ以上に殴った自分の手が痛いんじゃないか?
とか思った。

だって、普通にじゃんけんのグーなんだから(笑)

殴るときは、親指中に入れて…
角度を決めないと、手が折れたりするんだよ(笑)


『せいちゃん、書いて!!』
明るい声を出す


のっそり起き上がり、用紙を見つめる、せいちゃん…


『あい~ごめん……
これ書いたら許してくれる?』
泣きながら聞く


(はぁ?書いたら許す?)


『とにかく書いて!!男だろ!!
けじめつけな!!!!』


『痛くて…ペンが持てないよ……』

はぁ~……ため息が出る



こんなところが好きだったはずなのに
今では、苛立って仕方ない!


『アタシを殴った手だろ?痛みくらい我慢して書けよ!』


『痛い…痛い…』と言いながら書いていく

『あい、本籍って何?』

『免許証見れば?書いてあるから』


ヨロめきながら、財布から免許証を取り出して記入する


氏名……捺印のはんこを渡す

押した!!!!!


ヤッタ!!!前進した!!!



後は、せいちゃんの実家に明日行って、話しをつける


アタシの実家は、それ次第……



しみる体でお風呂に入った

『痛って~(笑)懐かしい痛みだわ(笑)
アハハ…マジ、痛いって~(笑)』

何故か、笑えて仕方なかった

一人で笑いながら痛みと格闘して、お風呂に入っていた


No.485

ベッドに入って、タニに電話をかけた

『もしもーし、あい?』
『うん…』

『元気ないじゃん。大丈夫か?病院行けたか?』

『…うん行ったよ。なんかね、ちょっと疲れ気味…
離婚届け書いたんだ…』

『そっかぁ…話してて大丈夫なの?』
『だって、タニが電話しろって言ったじゃん(笑)』


『いや…ダンナの前ならヤバいだろ?』

『ダンナ?知らなーい、お風呂入ってるんじゃない?
アタシ殴られたから、口ん中痛くって…
体も痛くってさぁ…』
涙が出て来た


『泣いてんのか?あぁー!!!もどかしいなーっ!
あいに会いて~…
守ってやりて~のに、立場上守ってもやれねぇ!』

『タニ……そんな、すごい助けられてるよ~
これ以上求めたら罰当たっちゃうよ(笑)』

『もっと求めろ(笑)
離婚成立したら、新しい人生の乾杯パーティーしような♪♪』

『アハハ…♪♪ありがとう!!』

『あ。それと俺、二号店の方に移るから♪
また、話しするわ!!』

『うん。………??
二号店って何処だっけ?』

『〇〇市の〇〇ビルの横だよ!!』

そこは、アタシの住んでる街の隣りの市だった

『知ってるー!!前、通った時ケーキ屋さんだと思ってたとこだ~!
車で15分くらいだよー♪近いじゃん♪♪』

『だから、生活の心配もすんなよ♪
俺が雇ってやるから♪タオル洗いに、床掃除…
お願いしますよ~』

『えっ……マジ?そんな…』

『そんなとこまで考えてますから♪
心配すんな!!
さっさと離婚して、新しい道歩けよ!!』

『あ…あり…がとう…』泣けてしまって
うまく話せない…

『んじゃ、ゆっくり寝なさい!おやすみ~』

『おやすみ!』



はぁー……泣ける。


タニは…そんなことまで考えてくれてるんだ…

甘えていいのかな…


嬉しい気持ちと、悪いなって気持ちが混ざり合って…

でも、嬉しくて涙が出た




しばらくすると、せいちゃんが入って来た


『あい…痛むか?薬、塗ろう?
ごめんな………
俺、最低だな…』

無視した。


No.486

『あい……!!!
俺、まだ…隠してることがあるんだ…

5人じゃない…
10人くらい…数も分からねぇ…

あ、風俗は別でな。
いい寄られて、女にアプローチされて落とされてやる
ってのが快感で…

いい寄る女は、大胆で自信持ってる女ばっかだから…
いい女が多くって…最低だな』


『ほんと最低』


『みなとも1年近く付き合ってたんだろ?
アタシ…ヨシから聞いてショックだった…


だって、1年って…しんちゃんが…
色々あって、アタシ虐待疑われたり…
すごい辛い時期だったんだから…!!!

ねぇ、分かる?』


『すまん!!!!!』
また、せいちゃんは土下座した


安い土下座…………


『離婚は、受け入れるよ…
だけど、子供たちには会いたい!!!』
せいちゃんが悲願する


『それは、子供が決めればいい。
だけど、しっかり自分の意志で判断できるまでは、会わさない!!』
アタシは、ここは譲らない



『…分かった。
慰謝料…養育費は、払うよ
どうしたい?』

『まだ、頭が回らない…、ちゃんと責任は取って欲しい…』


『俺の気が済むまで、やれることはやるから…

しばらくの生活も保障する…

ななこの慰謝料は……』

『ありがとう。
ななこの慰謝料…
それは、決めてるから
また、ななこと会わせてよ…

全て終わってから、離婚届け出して、離婚成立にしたい』


『分かった……
ななこは、払う気でいるから払うだろうし
心配すんな…』


『あんたに、そんなこと言われたくない!!!』



『傷つけて…ごめんな…
最後に抱かせてくれないか?

今までの気持ちを込めて…あいを感じたい』



『せいちゃん…ごめん…抱かれたくないの…

もう傷つけないで…』
アタシは泣いた


せいちゃんは、優しく優しく頭を撫でてくれた…


体中が痛かった…
心もとても痛かった…


No.487

もう離婚だと決めたけれど、ダンナが10人以上の女性と…
関係を持っていた…


とても傷ついた。

胸が張り裂けそうだった


優しく頭を撫でる…この手で…
何人もの女性を抱いて来た…


狂ってしまいそう


激しく泣きわめいたりしないけれど…

深く深く傷ついた


一体、アタシは何をしていたのか…

何も知らずに…ほんの一部に傷ついていたのだ


悲しみ。

怒りに変わる前は…深い悲しみが襲う


ベッドに入っても涙が止まらない

泣くアタシを気にしながら、何度も謝るせいちゃん…


『ごめんじゃないよ…
ごめんなんかじゃないよ…
アタシは、一体…結婚して何をしてたんだろ?

あんたは、他の女ばかり見てたんだね

アタシは…普通の家庭が欲しかった…

そんなに高望みなんてしてない…

ただ、普通の温かい家庭が欲しかった

ずっと一緒に居たいと思ってたのに…

幸せだって、毎日言ってたのがバカみたい…

見る目が無かったんだ…』


せいちゃんは『何も言えない…
ひどい男だと自覚してる…

もう、寝よう…傷つけてごめんな』


そして、ほんとに5分ほどで寝てしまった


アタシは、一晩中泣いた…

明け方に少し眠った


No.488

朝、鏡を見て叫びそうになる…

顔がハチに刺されたようにボコボコに…パンパンに腫れ上がり

まぶたは両目とも開けられないくらいだ

耳から頬にかけて切れていた

片目のまぶたも切れていた


幼い日の…あの日のようだった

まるで、ボクサー…


化粧なんてまるで意味がない

眉毛だけ描いた

唇も腫れ上がり口紅なんて塗れない…


寝室に戻り、着替える

恐る恐るパジャマを脱ぐと、赤紫の斑点だらけで
所々が腫れている


体中が痛む。
顔面も痛む。

見てもらおう…この姿をせいちゃんの両親に見せよう…


わざと胸まで開いた、薄手のニットを選んでストールを巻いた


足元も、ハーフパンツを選んだ


見るも無惨なアタシの姿…

子供たちに気づかれてしまう…


『どうしたの?…
すごい顔だよ…お母さん…
なんでこんな怪我したの?
お母さん!!!また、何かしたの?』

しんちゃんが叫ぶ……


『大丈夫。しんちゃん、大丈夫だからね!!
お母さん…お父さんのおばあちゃん達に、この姿見てもらいたいの…』


『お父さんが怪我させたの?!
なんで!!!!……
なんでーぇ!!!お母さんが、嫌いだからだね!』


『うーん……お母さんが、別れたいって言ったからかな?
お父さんは、お母さんと好きな女の人と二人が欲しいんだよ…

でも、お母さんだってお父さんをやっつけたから♪
お母さんって強いんだよ(笑)』


アタシは、子供たちに隠すことをしなかった


ありのままを伝えて、子供たちが自分の意志で

せいちゃんと向き合って欲しかった

残酷に映るかも知れないが、子供たちなりに考えなければならない親子の問題…


しんちゃんは、寝室へ走り

せいちゃんを叩いた。

『お母さんを…お母さんを…イジメるな!!!!
お母さんをイジメるなー!!』


ふぅちゃんも起きて来た…

『何…その顔…お母さん…どうしたの?

お父さんしか…いないよね?…
あの野郎…』


ふぅちゃんも寝室へ走った

枕をせいちゃんにバンバンぶつけて叩く


『お前…許さないから!!!
男が弱い女を殴るなよー!!!!』


寝室を覗く…

アタシ…間違えたかも知れないな…

お父さんに向かい、怒りをぶつける子供たちを見て


『やめて』と叫ぼうとした時…


『あのなー、お母さんはな、ほんとは無茶苦茶、強いんだよ!
なのにわざと、お父さんに殴られたんだよ!』

No.489

せいちゃんは、吐き捨てるように言った


『お母さんが強くても、弱くても関係ない!!!

お母さんは、お母さんは自殺未遂までしたんだからなー

なのに、殴るなよ!!!』
必死のふぅちゃん…


『お母さんをイジメるなーぁ!!

おばあちゃんに怒ってもらうから!!
お母さんをひどい目に合わせたって…
おばあちゃんに言うからなー!!!』
必死のしんちゃん…


胸が痛んだ……
とてつもなく胸が痛んだ…


『もう、喧嘩はやめよう!お母さんは、大丈夫だからね』
ニコニコ笑って、ふぅちゃんとしんちゃんを抱きしめて慰める


『お母さん………』

『大丈夫だよ~(笑)♪お母さんはね~、強いんだから♪
こんなの痛いうちに入らないから♪』


二人を連れてリビングに行く


せいちゃんもついて来る

『お父さんだけが悪くないぞ~!!!
喧嘩は、両方が悪いんだ!

なぁ、お母さん!!もう平気だもんな!!』


……てめぇが言うな!


『お母さんね、お父さんとは、しっかり別れたいから…
そのために今日は、おばあちゃんちに行くからね♪

大人の話しをしたいから、Jちゃんの部屋で遊んでてね♪』


『…分かった。
おばあちゃん泣くのかな…』
ふぅちゃんが心配そうに言う


『…そうだね…
おばあちゃんにとったら、お父さんは大事な子供だからね…』


『おばあちゃんもかわいそうだね』
しんちゃんが言う…



『全部、お父さんが悪いんだよ!』
真剣なふぅちゃんの言葉に


『へいへい!
すんませんでした~ぁ』
おどけるせいちゃん…


『昨日は、やり直したいって言ってたのに
お父さん…最低だな!!!
僕のお父さんじゃないよ!
お父さん変わった……』
しんちゃんが悲しげに言う


胸が痛かった…

ななこが憎かった…

こんな、せいちゃん…だったっけ?


初めて見せる幼稚で、情けない男の姿…



気持ちも、一気に冷めていった…


No.490

支度をして、子供たちを呼んだ

『お母さんね、これからは、あなた達に…
お母さんの弱いところも、情けないところも、色んな姿を全て見せると思う…

だから、ふぅちゃんも、しんちゃんも
辛かったり、悲しかったり、腹の立つこと…

なんでも話して欲しい!!

なんでも話し合える3人になろうね?

お母さんに遠慮なんてしないでね!!
ずっと、お母さんは味方だから頼ること!

…これは、この先ずっとの約束…♪ねっ』


『分かった…約束する』
『僕もなんでも話すよ』

アタシは二人を抱きしめて…



アタシのような…親に言えない

頼れない子にならないように…と願いを込めて、抱きしめた





そして、せいちゃんの実家……


『ただいまー』せいちゃんが上がる

お義母さんが出て来る
『はい、はーい♪いらっしゃい…………』


『あいちゃん!!!なんなの?その姿………!!!!』


アタシは、ウィッグをつけず
そのままの姿で訪ねた


『お義母さん…すいません。時間を取っていただいて…』


お義母さんは、アタシを見て…せいちゃんを見て…
交互を言葉もなくキョロキョロと見ていた


『おばあちゃん、こんにちは!!!』


二人は、元気に挨拶をして

ふぅちゃんが『おばあちゃん!!お父さんを怒ってよね!

お母さん…自殺未遂したんだから…
そして、昨日の夜に、お父さんがこんなに…
お母さんを殴ったの!!

絶対、許さない!
おばあちゃん、お父さんを怒ってよね!』

と言った…


『嘘…でしょう???』
お義母さんは、立ちすくんだ…


No.491

ふぅちゃんの次に、しんちゃんが言う

『ほんとだよ!!おばあちゃん!!
お母さんがかわいそうだ!!
僕は、もうお父さんなんか大嫌いだから!!
おばあちゃん、僕らの変わりに怒って!!』


しんちゃんの声の大きさに、お義父さんとJちゃんが、玄関まで出て来た


二人もアタシを見てビックリする…


Jちゃんが『何?せいに殴られたの?…あいちゃん…
せいに、何言ったの?
どんなこと言えばそんなに殴られちゃうわけ?』


カチン!!!と来た。

大丈夫?の一言もなく、そんな言い方!!!


『何か悪いことを言ったとして…こんなに殴ってもいいの?
Jちゃんなら…殴られても当たり前だと思うの?

アタシのこと…なんだと思ってるの?!』


Jちゃんに牙を向いた

黙ってなんかいられ無かった

『アタシ…Jちゃんのこと…信頼してたのに!
ひどいよ!!!!』


お義父さんが
『…まあ、とりあえず上がって…
しかし…なんでまた…そんなに…
せいが殴るなんて…』

動揺しながらリビングに通してもらった


『お父さんは、好きな女の人が出来て
変わっちゃったんだよ!
お母さんは、悪くない!!
コイツが全部悪いんだよ!!』

ふぅちゃんが、せいちゃんを指さす


『まぁ、まぁ、ふぅちゃん…
ちょっと落ち着きなさい』
お義父さんがなだめる


アタシは、
『Jちゃん、子供たち見てもらえるかな?
お義父さんとお義母さんと話しがしたいの…』


『……私も聞きたいな…』


『Jちゃん。
お願い…ふぅちゃんとしんちゃんを部屋で見てて

あいちゃんの話しを聞くから…』
お義母さんが言う


『あ~あ~…はいはい。
ふぅちゃん、しんちゃん、おいで~♪
ゲームする?DVD見る?』
Jちゃんは2階に上がって行った



リビングのソファーに座る


お義母さんが紅茶を入れてくれた


沈黙が続く…………


お義母さんが沈黙を破った


『せい…今でも…不倫してるの?』

『あーあっ。うるせーなぁ~、俺、性欲のモンスターだから(笑)』



性欲のモンスター?


頭がクラクラとした……


No.492

『何を馬鹿なこと言ってるんだ…』…お義父さんが呆れたように言った


お義父さん…!!ここでアタシなら、殴ってるだろう…


期待は出来ないと落胆した


『あいから聞けよ。違ったら俺が否定するから』


お義父さんとお義母さんがアタシを見た


全て話した。
その時々の、アタシの気持ちも含め全てを話した


途中で何度も口を挟もうとする二人に
『最後まで聞いてください!』とこれまでのこと全てを話した

離婚したいということを除いて…




『あいちゃん…自殺未遂って…!!!!
ねぇ、あいちゃんのご両親の耳には入ってるの?

そんなことが知れたら…』

ムカついた。

『うちの実家の両親には、何一つ話していません…』


『はぁ…良かった…』
お義父さんとお義母さんが安堵のため息をつく


『でも、その女の子妊娠してなくて良かったわね~
あいちゃん、弁護士のこと…ちゃんと…』

遮るように話した


『もう、ふぅちゃんにまで電話をかけて…
子供たちまで巻き込んで、アタシは暴力も振るわれて…

10人以上と関係を持ったという、せいちゃんとはこれ以上…
一緒にいる気はありません
家庭は、壊れました…
子供たちも、あの通りです…
アタシは、離婚を決めました!

夕べ離婚届けに記入もしました…』

離婚届けをテーブルに出した


『あいちゃん…気持ちは分からないでもないわよ…?
でも、あなたは…せいから見て、可愛いお嫁さんだったの?』


『…知りません。アタシの病気が一番嫌だったと言われたので
許せません……アタシなりには、努力もしました

何度も許して来ました…』


『だったら…許してあげられない?』

『ねぇ、せい!あいちゃんは可愛い奥さんだった?』


『あいは……なんも悪いとこ無かったよ…』


『だけど、ほかにも女が欲しくなる
いい寄られたなら、揺れるのも分かる…』
お義父さんが言う


『あいちゃん、せいは魅力があるんだよ!
そこを女房の甲斐で、あいちゃんの誇りには出来ないかな?』


…何が?誇り?ふざけんな!!!

『出来ません。』


『でも、離婚してあいちゃんは、生活して行けるの?
病気なんでしょう?冷静になれず、パニックになってしまうんでしょう?』

ため息が出る…


『タバコ吸わせてもらいます…』


ため息と苛立ちを煙りと共に吐き出した

普段、タバコは二人の前で吸ったことは無かった

No.493

『あいちゃん…離婚するということは…
あいちゃんのご両親にも知れるのよね…?』


タバコを吸いながら答える


『女性問題のことは、言いません。
父は、女性問題なんて絶対に許しませんから…』


『お父さん…融資が……』

呆れた。
こんな時に、自分達の融資の心配だ…


うちの父親は、銀行の偉いさん
だから、せいちゃんの両親は身内びいきで特別扱いされてるそうだ

詳しくは知らないけれど…


『う~ん……』悩む、義父。


『離婚の原因には、暴力のみを伝えるつもりです…
女性問題と暴力…二つを伝えるよりはマシだと思いますけど…』

タバコを揉み消しながら言う


『ねぇ、あいちゃん!!考え直してちょうだい!!
せいはね、私達と暮らしてた頃は…
そんな子じゃ無かった!
せいをこんな風にしたのは、あいちゃん!!

あなたがせいを甘やかして来たからよ?
あなたにも責任があるわ!!
だから、やり直しなさい!
そうしてちょうだい!!』


『無理だよ。あいの気持ちを考えろよ?
俺は、あいの苦しんでるのを側で見て来た…

もう解放してやりたい…

ごめんな、あい…辛かったな…ごめんな…
悪いのは、全部俺だよ…』



せいちゃんの言葉に弾かれたように涙が出た


『だけど、融資は?どうなるの?
Jちゃんの挙式まで1ヶ月もないのよ?
こんな時期に……長男の離婚なんて…

相手さんにも顔が立たないわ………!!!』
泣き叫ぶお義母さん…






もう嫌だ………




離婚するって…こんなに傷つけられるんだ…


No.494

『お義父さん、お義母さん…

何故、アタシの気持ちが分からないんですか?

Jちゃんが、こんな髪も抜けて、痩せ細って、自殺未遂までして苦しんでても…

頑張って耐えろ!って言うんですか?』



『こんなアタシ…もう嫌だ!!!
毎日泣いて、鏡で見てもミジメな姿……

アタシ、もう嫌なんだよ~!!

せいちゃんと別れたい!
二つの家庭を持ちたいとか、本気でななこが好きだとか…

もう、全部全部嫌なんだよ~!!!』



『あいちゃん、落ち着いて…それがパニックなの?』


はぁ~?てめぇぶっ殺すぞ!!!


ワナワナと体が震える…


話しは、平行線のままだった

時間だけが過ぎて行く…



Jちゃんが降りて来た


『まだ話しつかないの?』

泣いてるアタシを見て、Jちゃんは笑った……


『あいちゃん…
そんな腫れ上がった顔で泣いてたら
もっと腫れちゃうよ?(笑)
あ~あ~。アタシ、こんなんにだけは、なりたくないわ!!(笑)

あいちゃん、女の意地ってヤツ持ってないの?

器が小さいなぁ~(笑)
男の浮気の一つや二つ…見逃してやりなよ~

せいの気持ち分かる気もするわ。こんな妻なら帰りたくないよね~(笑)

悩んでやつれて…妖怪じみてるよ(笑)』


『やめなさい!!見た目のことを言うのは!!』






もうダメ…………




アタシは、

アタシは、





カバンとコートと車の鍵を持って
せいちゃんの実家を飛び出した…




車に乗り込み、エンジンをかけて逃げるように

車を飛ばした


No.495

>> 494 追加、訂正です🙇💦


ふぅちゃんと、しんちゃんを呼び

車に乗り込み逃げました💦


No.496

車を飛ばす

行き先は……決まってない


とりあえず、海岸沿いに車を止めて
海を見つめていた…


『お母さん、どうしたの?喧嘩したの?』
しんちゃんが聞く

『うん……ちょっと、おばあちゃんの家には……』

『おばあちゃんの家には、いたくないんだね♪
分かった!付き合うよ、お母さん♪♪』

『ふぅちゃん……ありがとう……』


『海、綺麗だね~!!オレンジ色の空だ…!!』
ふぅちゃんが外の景色を見て言う


夕方になり、オレンジ色の空にキラキラと波が光り輝いていた


アタシは左の手をかざす



アタシの、左手の親指の付けねには、根性焼きならぬ
根性星を[★]彫ってある


19歳の誕生日に、大人になっても幼い日々を、忘れない様に…

いつも見ていた星空を忘れないように…
と、20歳((大人)になる前にと、根性星を彫った


オレンジの空に、手をかざし、星を見つめる


【山田さんちに行こう!】


携帯でせいちゃんに、電話をする…

実家に電話等されたら、大変だ

『もしもし?!あい?』

『あのさ、…ちょっと山田さんちに行くよ…

今は、話せるような気持ちになれない!!』

『…ごめんな、分かった…また、連絡して…


せいちゃんは、山田さんに会ったことはないが、
家だけは前に教えていた



車を飛ばしす、実家を通り過ぎた……


『あれ~?お母さんのおばあちゃんちには寄らないの?』しんちゃんが聞く


『うん。こんな顔、見せたらおばあちゃん倒れちゃうよ(笑)』

『そうだね(笑)』
笑う、ふぅちゃんとしんちゃん…



アタシは山田さんちに、車を止めた


おっちゃんの車があったから、留守じゃない

『山田のおっちゃんって、背中に絵が描いてあるよね?あれ何?』ふぅちゃんが車から降りながら聞く

『お母さんの★みたいなもの♪でも、おっちゃんには、知らん顔してあげてね!!』

『ふーん…』


ピンポーン♪と鳴らしながら、勢いよくドアを開ける


『おっちゃーん!!おばちゃーん!!
あいだよ~!!………助けて……!!!』


No.497

おばちゃんがバタバタと出て来た
急いでいたのが分かる

アタシの姿を見て、靴を脱ぐ間もなく抱きしめられる

『あいちゃん…あいちゃん…!!!
何かあったのね?
来てくれたのね…!!』

『おばちゃん……!!!』


おばちゃんの優しい言葉に、胸の塊がほぐれて行く…

優しくされると、涙が出る

言葉もでない。
ただ抱き着いた…おばちゃんの匂い…
優しい匂いがした


『あいちゃんか~?』奥から、おっちゃんが歩いて来る足音が聞こえる


『上がって来いよ~!!』そう言って笑顔を見せた

おっちゃんの顔が変わる…

『どうしたんだ?なんで…
早く、上がりなさい!
暖かい部屋においで!!さぁ、ふぅちゃんも、しんちゃんも…』


『お邪魔しまーす!!』子供たちが家に上がる


ふぅちゃんが『お父さんがね、お母さんを苦しませて、こんなにしちゃったんだよ!
今まで、お父さんのおばあちゃんちに居たの…

でも、出て来たんだ♪ねっ!!お母さん?!』


アタシは頷いた


二人に抱き抱えられるように、リビングに連れてもらった


『あいちゃんを殴るなんて…
悔しいわ…!!!私達の大切な娘なのに…!!』

おばちゃんは、ずっと手をさすってくれた

おっちゃんは背中を撫でてくれる


アタシは、おばちゃんにもたれ掛かり
わんわん泣いた…

詳しい話しなんてできなかった

けれど、二人はアタシが落ち着くまで
ずっと側に付いていてくれた


子供たちは、玄関前の階段を上ったり降りたり…と
階段でドタバタと遊んでいた


ひとしきり、泣いて
『ごめんね、電話もせずにいきなり訪ねて…』

おっちゃんが笑う
『あいちゃんが電話してから来たことなんて
一度もないじゃないか(笑)』

『…そうだ(笑)!!』

アハハ…おばちゃんと三人で笑った


『べっぴんさんが台なしだ…
こんなになるほど…』
おっちゃんが頭を撫でてくれる


おばちゃんが、お茶とカステラを用意してくれた


子供たちも喜んで食べた

アタシも『口の中が痛い~!!(笑)』と言いながら笑って食べた



山田さんちは、魔法の家…

いつ来ても優しい心に触れて、慰められる

おっちゃんもおばちゃんも、根掘り葉掘り聞いたりしない


アタシが話さないことは、無理に聞いたりしない


でも、心配してくれる気持ちが伝わってくる



アタシは、泣きながら
ここまでの行きさつを話した


No.498

おっちゃんとおばちゃんは、腫れ物扱いもせず
いつも通りに接してくれた

『あいちゃん、晩御飯一緒に食べて行くだろ?』

『いいの~?
じゃあ、ご馳走になりーます♪』

『じゃあ、ふぅちゃんとしんちゃんも好きな、焼き肉にしようね♪

おばちゃん、買い物行って来るからね~』


おばちゃんが、買い物に出掛けた直後
携帯が鳴る、せいちゃんからだ
『もしもし』
『あ、あい?母ちゃんが晩御飯はどうすんのかって聞いてるよ

水炊きだって、帰って来るか?』

『いらない。こっちでご馳走になるから…』

『分かった。
明日、もう一度話し合いしよう?』


電話を切り、おっちゃんが換気扇の下でタバコを吸っていた

アタシも一緒に吸いに行った

『あいちゃん、タバコ吸ってると早く老けるぞ(笑)?』

『うるさいなぁ~(笑)おっちゃんだってガンになるよ?
マジやめなよ~』

ほとんど親子のような会話に癒される



アタシ達親子三人と山田さん夫妻で
焼き肉を食べた

たくさん笑って、昔のアタシの自慢話しを
子供たちに聞かせて笑うおっちゃん

『も~う、おっちゃん飲みすぎ!!』

『大きくなったなぁ、おじいちゃんになれた時は、嬉しかったぞ~!!』


ふぅちゃんと、しんちゃんの頭を撫でながら言う


アタシは胸がツンと熱くなって、涙が出そうになる


『あいちゃん、今夜は泊まって行きなさい♪』

『ほんとに?!いいの?おばちゃん♪♪』


長い付き合いだが、泊まるのは初めてだった


せいちゃんに連絡して、泊まることを伝えた

せいちゃんも、両親に話しをしておくから

両親にも考える時間があって、都合がいいと言われた



明日…
明日こそは、ちゃんと話そう!


お風呂に、親子三人で入った

山田さんちにお泊りで二人は、はしゃぎまくりだ


座敷に布団を用意してもらって、子供たちは先に寝た


アタシは、寝付けずにリビングでテレビを見ながら
おっちゃんと色んな話しをして
ぼんやりとしていた……


タニからメールが入る

『今日は、お疲れ様でした🍀
話しは聞いてもらえたかな?
ちゃんと話し合いが出来てるといいな😃』


はぁ……ため息が出た


『タニ…話し合いなんて…出来た状況じゃなかったよ😭⤵』

メールを返した


No.499

携帯を触って姿を見て
『ダンナか?』とおっちゃんが聞いてきた

『違うよ、タニ』

せいちゃんは、一度も山田さんには会ったことはないが

タニは、一緒に山田さんちに出入りして
中学の頃は、一緒にご飯も食べさせてもらったりしていた


『タニか~♪元気か?相変わらず仲良しか(笑)?』

『うん。タニねー、美容院やってるんだよ♪
二つもお店持って、店長さんなんだよ!!』


『そうか!!スゲーな(笑)結婚したのか?』

『まだ独身だよ(笑)結婚してたらメールなんてする訳ないじゃん!!』



『離婚してタニと結婚しろ(笑)
あの子は、いい子だ♪』


『何、言ってんだか(笑)』



そして、アタシは寝た



朝、起きたら、子供たちは、もう起きていて
アタシも慌てて着替えてリビングに行った

『おはよう~寝坊しちゃった(笑)』

『あいちゃん、おはよう!!まぁ……顔が…青くなってる!!!!』


鏡を見る
赤紫のところが完全に青く紫になっていて

唇も紫に変わっていた


あ~あ~泣きたくなる…

ここが山田さんちで良かった…


おっちゃんもビックリしていた

朝から、切れてるところをおばちゃんに消毒して、絆創膏を貼ってもらった


酷い……


これから、せいちゃんの実家に行くのが
ますます嫌になった…


【妖怪】Jちゃんの言葉が、突き刺さったままだ…


左手の星を見て、気持ちを奮い起こす。

(ずっと表現して来てませんが、ここまでも何度も左手の星を見ていました
プライバシー保護の為(笑)でも、もういいや😁)

何度だって立ち向かう。

ここで負けるもんか!!自分に喝を入れて

山田さんに挨拶をして、家を出た




ピンポーン♪

『お帰りなさい…悪かったな…』せいちゃんが迎えてくれた

『大丈夫……』


お義母さんが出て来た
『まぁ!!!昨日より顔が…!!!』

ため息をつく

『顔だけじゃありません…体中、こんなんですよ』
わざと微笑む。


頭をかきながら、『…ごめん…』
せいちゃんが言う


無視した

『お話し、できますか?アタシは一歩も譲る気はありません!!』


リビングへ通されて、昨日と同じ場所に座る


Jちゃんは、11時を回っても起きて来ないから
ふぅちゃんとしんちゃんが『起こして来る♪』と2階へ上がって行った


アタシはタバコを吸わせてもらった


No.500

皆様🙇

ここまで読んで頂きありがとうございます☺


500レスで収まり切れませんでした🙇💦


【まさか…私が②】のスレを立てさせて頂きます🍀✨


引き続き、お付き合い頂けたら光栄です🙇🍀✨



これからも
お付き合いよろしくお願い致します☺❤✨




      あいより☺


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