究極の復讐

長い間読んで頂きありがとうございました🙇

約5ヶ月続いた小説も完結しちょっと寂しい反面、最後まで書けた事に関してはほっとしております😃

感想スレにて、小説が完結したらその質問に答えますとお伝えしていましたので改めてスレを立てたいと思っております✨

今まで究極の復讐を読んで頂き本当にありがとうございました😊

れな✨

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今まで当たり前だと思っていた事..
ごく平凡な日常..
全てが大切に思える。

自分が親になり両親の有り難み、愛情深さを改めて感じている。

失って気付く事もある..
でも失ってしまったものは戻ってはこない..

だから私は今の幸せにあぐらをかかず、感謝の気持ちや相手を思いやる気持ちを持ってこの先を生きて行こうと思う。


ねぇ、今度の休み動物園に行かない？

あ～いいね!
ゆなも喜ぶよ。

じゃあ決まり!
私張り切ってお弁当作るね。

お互い微笑む。


人生何が起こるか分からない。でもやり直す事はできる。

私は愛する夫と娘..
この家族を守り幸せにする事を誓い残りの人生を歩んでいくことだろう..


私を傷つける誰かが現れ...再び復讐をする事がない事を願いながら...

ー完ー

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さぁ!買い物に行こう。

今日の夕食は何？

ひろきの大好きなカツカレーにしようかな～。

やった!

ひろきはゆなを抱き上げ肩車にして手で足を支えた。

肩車が大好きなゆなはきゃっきゃとはしゃいでいる。

私はひろきの腕に手を回し一緒に歩き出した。

心地良い日差しの中イチョウの葉がヒラヒラと舞っている。

幸せ...ってこういう事なんだな。

一度はどん底まで堕ち、明るい未来なんて想像する事も出来なかった。

人生はやり直せる。

ありきたりな言葉だけど本当にその通りだなと思う。

そして今となってはあの試練があったからこそ...
この幸せがあるのだと感謝すらしている。

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...れな..れな..!!

えっ..

ぼ～としちゃって何考えてたの？

笑いながら私の顔を覗き込む。

な、何って別に～。

ほんと～？時折ニヤニヤしてたよ～。

ふふ..思い出し笑いしてたの。
今度教えてあげるね!
あれっ？ゆなは？

ここにいるよ。

ひろきの横の方で砂をいじって遊んでいる。

ゆな～おいで。

娘を抱き上げ膝に座らせた。

重たくなったね。子供の成長は本当に早い。

おでこを撫でプルプルのほっぺにキスをする。
ひろきは私の肩に手を回し親子３人しばしポカポカの日差しの中ゆったりとした時間を過ごした。

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20年来の友達から夫婦になる..

初めてキスした時はうぶな乙女か!と突っ込みたくなるくらい照れてドキドキした..

この歳になってこんな気持ちになるとは思ってなかったな。

数日後お互いの両親に挨拶に行った。

私の両親は相手がひろきだと知り泣いて喜んだ。

ひろきの両親も私で良かったと喜んでくれた。

バツイチだから申し訳なく思っていたけど、祝福してくれるんだ...
心から感謝をした。

そして沖縄に行き２人っきりで式を挙げた。

真っ白な教会。青い空と果てしなく続く海。

れな綺麗だよ。

ありがとう..

この日を一生忘れない..
一生....

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ポタポタと涙が溢れる..

言葉にならない..

頭をポンポンぐしゃぐしゃと撫でられた。

とても心地良く体中が安心感で満たされているのがわかる。

こんな気持ち何年ぶりだろう...
ずっと..傍にいたい..
そして私が幸せにしてあげたい..
こんな醜い私だけど..
それでも残りの人生をこの人と一緒に歩んでいきたい..


ひろき..ありがとう..
私も..愛してるよ..

優しく抱き寄せられる。
温かい....

....俺と結婚してくれますか？

はい...

ぷっあはは....
あははは...

なんだか照れくさい..
２人で顔を見合わせ笑いあった。

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はは、相変わらず!
考えに考え、先の事まで考えぬいて..
予想に近い事言うんだもんな～..
やっぱり俺はれなの事良く分かってるよ!

笑いながら話す。

俺に辛い思いさせるとか傷つけるとかそんな事考える必要はないんだ。
全てを理解した上で俺自身がれなを必要としているし..
これからの人生を一緒に生きて行きたいんだ..
...れなを不安にさせたり寂しい思いさせたりしない。
一生大事にする!

....って言ってもそんな言葉を信用できなくなってるんだよな..
...
...
...
俺を疑ってもいい..
探ってもいい..
今は信じられなくてもいい...

お互いじいちゃんばあちゃんになった時に...一緒になって良かったって思ってもらえればそれだけで満足だから!

それぐらい大事にする!

力強い言葉で私の目をそらす事なくしっかり見つめていた..

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そしてその事を隠さず伝えた。

ひろきの事さえ心から信じられない..

その事でいつか深く傷つけてしまうかもしれない...

ひろきは私を見つめ静かに聞いている。

かけがえのない人だからこそこれ以上近づきすぎない方がいい...

失ってしまう事の方が辛いから...

沈黙.....

これでいい..
バツイチの執念深く醜い女より...
ひろきにはもっともっと良い人がいる。
復讐を考える時点で私に幸せになる資格なんてない...
自分の中で何度も言い聞かせた。

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なんだか泣けてくる。
こんな純粋で優しい人..
他にはいない..

離婚して私は一生独身になるかもと覚悟はしていた。
だからひろきのプロポーズに女としての感覚が蘇り素直にドキドキもしたし嬉しかった。

でも..元夫に私なりの復讐を遂げスッキリした反面..自分がどれだけ執念深く醜い人間かというのも気付かされた...

人を信じすぎると痛い目に合う..
表向きは誰とでも仲良く接しているけど心の中ではいつか裏切られるかも...そんな考えが常に支配していた。

裏切られた過去のトラウマは決して消える事はないのだろう...

そして例えひろきと一緒になったとしても私はいつも...
疑い..探り..責め立て
不安になったり八つ当たりしてしまうんじゃないか..

そのように想像する事しかできなかった..

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離婚後はがむしゃらに仕事を頑張った。

その中で私をいつも支えてくれて..悩んでる時は的確に答えをくれ...嬉しい時は一緒に喜んでくれたひろき。

友達からかけがえのない人に変わっていくのを日々感じていた。

離婚して2年半経った時
プロポーズをされた。
突然の事でびっくりした私は..
付き合ってないのにどうして...？
そう問いかけると

俺はれなを20年近く見てきた。怒ったり泣いたり笑ったり喜んだり....
付き合うという概念は必要ないくらいれなを知っている。
昔...どん底の俺を助けてくれた..
あんな辛い事があったれなを俺なりに守っていきたいと思ったんだ..
それはただの恩とか情じゃなく...
１人の女性として..
あの..その..
愛しているから..

顔を真っ赤にしながらひろきは答えた。

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5年経った今..
理子は夜な夜な家を出ては真夜中、明け方に帰ってくるのをマンションの奥さん達が見ている..
きっとまた同じ事を繰り返しているのだろう...

元夫は過去の私と同じ立場になり今何を思うのだろうか..


そして私は...


ある昼下がり..
公園のベンチに座り暖かい日差しの中一点を見つめる。

マ..マ～

おぼつかないよちよち歩きで私のところに向かってくる。

ゆなちゃ～ん!

両手を差し出し愛しい我が子を抱きかかえた。

あ～やっぱりママには勝てないか。

砂場から服をはたきながら近づいて来る。

ゆなちゃん。パパが拗ねてますよ～。

言葉はまだ理解してないけどニコニコとあどけない笑顔を私に向けてくれる。

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私は徹底して良い妻を演じた。

マンションの奥さんにも元夫の同僚にも愛想良く接して誰からも良い奥さんねって言われていた。

理子は私を越える事はできない。
いつでもどこでも私と比べられ、この呪縛から逃れる事なくこの先生活をしていく。
さて..結婚生活はいつまで続くかしら..

元夫は..私が優しい受け答えする度、理子と日々言い争いをする度...一生後悔し自分の過ちを悔いながら生きていくだろう..
未練がましく..

責め立てない..
慰謝料も請求しない
優しく気遣う..

罵倒しあい憎しみながら離婚に至ればあんな女と別れて良かったと前向きにさせてしまう..

そんな事はさせない..

だって私の究極の復讐は死ぬまで後悔させる事...
過去はどんどん美化される...
過去になった私に勝る人はいないのだから...

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離婚成立後、夫からたまに電話が掛かってきていた。

れな..元気してるか？..

か細い声で聞いてくる。

私は元気にしてるよ。
たかしさんは？
風邪なんか引いてない？
最近肌寒いからね。
ちゃんと重ね着しないとダメだよ。

電話が掛かってくる度優しい口調であたかもあなたの事が心配なのよ的な受け答えをした。
でもあえてたかちゃんとは言わない。
一線を置き元夫に取り戻す事のできない距離があると認識させる為..

私は女より男の方が何倍も未練がましいと思っている。

過去に別れた彼女がもしかしたら今でも俺の事を想っているかも..なんて勘違いしている男は結構いると思う。

女は新しい恋にまっしぐらで過去の彼氏を思い出す事はあっても未練はあまりない...

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元夫..理子との結婚生活はどう？

あなたの基準は私なの。

特に最後の半年私が散々甘やかしてやったから何もしないのが当たり前になってるでしょ。

共働きで何もしないって..多数の女性がそれを許すって思っている訳..？

ましては気の強い理子..

手伝いもしない..
文句、我が儘を言う..
感謝もしない..

それがまかり通るはずもない..

マンションの奥さんが興味本位で私に電話をしてくる。

今日も怒鳴りあってる声が聞こえてきたの!やら
元夫の顔がやつれてる
など....

元夫は思うのだろうか..

れなは何も言わなくてもしてくれた..と

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理子..あなたはどんな結婚生活を夢見ていたのかしら？..

もう気付いた？
元夫は家事をほとんど手伝わないの..
共働きなのに...
服は脱ぎっぱなし電気は付けっぱなし..
夕飯は麺類、粉物はご飯じゃないって嫌がる..
服は必ずアイロン..
自分はなにもしないわりに部屋が散らかるのを嫌がる...
年賀状、残暑見舞い
お歳暮..全て相手任せ..
それをしてもらうのが当たり前だと思っているようだから特に感謝を口にする事もない..

不倫中はお互い良いとこしか見なくていい..
デートして食事してセックスして...
甘い蜜を吸っているだけ..

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そんな大掛かりな家具、家電の処分搬入をすれば当然社宅マンションに住む奥さん達の目に止まる..

たまに集まってはお茶をして、交流を深め仲良くしていた。

本当は挨拶するべきだったけど理由が理由だけにそのままになってしまった..
突然私がいなくなり知らない女が住みだして..
さぞ不思議に思っただろう...

その事で不倫していた事も会社中に知れ渡った。

元夫は会社で陰でこそこそと噂になり孤立する事になった。

理子は夫を持つ妻の立場である奥さん達の反感を当然受けマンションでも浮いた存在になった。

この事は偶然街で会った奥さんに色々聞かされた。
私に連絡したかったけど何て話せばいいのか分からずモヤモヤしていたらしい..

自分の事じゃないのに元夫と理子に対してイライラを爆発させひたすら喋っていた。

それからも度々連絡してきては近況を知らせてきた。

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その半年後..
県外で働いていた弟は会社に移動の希望を出し彼女と一緒に地元に帰ってきた。

彼女はとても素直でれなちゃんみたいに優しいと義母は電話で嬉しそうに話しをしていた。

その後結婚した２人には子供も出来て、義両親は孫をとても可愛がっている。

暗くやつれていた２人も今では以前の明るさを取り戻し幸せに暮らしている。


元夫と理子は結婚後も同じところで暮らし始めた..
なぜ同じ所に住むのか？
社宅マンションで安い家賃で住める為なのか...

私と住んでいた時に使っていた家電、家具、ソファやカーテンあらゆる物を処分し新しく買い揃えたらしい。

理子は私の触れている物すべてを消し去りたかったのだろう..

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義両親とは連絡をちょくちょく取り合っていた。

離婚した直後２人して私に頭を下げ慰謝料として300万円を渡してきた。

義両親にしたらそれが息子の償いと思ったかもしれない..

私は受け取りを丁重にお断りをして２人の未来の為に使ってくださいと伝えた。

あんなに明るかったのに..暗くそして随分とやつれていた..
私の知っている２人の面影はない..

その夜私は元夫の弟に初めて電話を掛けた..

掛けた時ちょっとビックリしていたけど私も久しぶりだから緊張しながら話しをした。
離婚のある程度の内容は知っていた。

今回の事で義両親が落ち込み..やつれきっている事を伝え今まで以上に気に掛けてほしいとお願いをした。

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１日１日を懸命に生きた...
あんな辛い思いしたからちょっとやそっとじゃ動じない。

そしてあれから5年の月日が流れた..

夫..いや元夫は私と離婚が成立した後..ほどなくして理子と結婚をした。

あの日私が帰った後どんな話し合いがあったかは分からない..

離婚をして１人寂しくなった元夫と..
近々30歳になり私への意地と結婚の焦りがある理子..

周りの人の事を無視すればすぐ結婚してもなんら不思議ではない..

見てろよ!私がたかしと幸せな家庭を築いてみせる!
とでも思ったのか..

それがきっかけで元夫と義両親には大きな溝ができ疎遠になったらしい..

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さぁ..
新しい我が家に帰るか..
結婚生活を過ごしたマンションを最後に見上げ..
車を走らせた..



その後は何かと忙しかった。
新しい生活に離婚の手続き..
実家にも行った。
もちろん仕事もある..

友達にも報告した。
事の始まりはさっちゃんから聞いた一言..

キャリアウーマン風の人と歩いていたよ..

実際は全然違った..

きっとその人は本当に職場の仲間だったのかもしれない..

でも結果的には不倫をしていた..
もしさっちゃんが何も言わなかったら今も何も知らず平穏に暮らしていたのだろうか..

でもそんな嘘の平穏は無意味で必要はない..

今新しい人生を歩みだし本当に良かったって心から思える...

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約束通り次はひろきに電話を掛けた。

プル..
れな!大丈夫か!?

早!!!

ここにも１人..
両親同様に心配してくれていた人がいた..

さっきと同じように話し合いの内容を話す...

ひろきはうんうんと相づちをうちながら静かに聞いてくれた。

一通り話し終わると..

そうか..頑張ったな!
れなの元気そうな声聞いて少し安心した。
なんか吹っ切れた感じが伝わってくるよ。

色々迷惑かけたけど..
ここまで自分を保てたのはひろきのおかげだと思ってる..
ありがとね..

その後少し話しをした。
近くに車を止め電話が掛かってくるのを待ってくれていた。

きっと今２人の距離はほんの数分で着くところだろう..

でも私は会わないと決めている。
会ったら少なからず甘えてしまうから..
まずは自分でしっかり..
地に足をつけて生きて行こう...

また落ち着いたらランチでも行こうねと約束し、わざわざ来てくれた事、今までの感謝...何度もお礼を言い電話を切った。

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車に乗り込み母親に電話を掛けた。

1コールですぐ出たからちょっとびっくりしたけど、それだけ心配して携帯を片時も離さず握っていたのだろう..

私は話し合いの内容を伝えた。

れなからか!?
大丈夫か!?
横から父親の声が聞こえてくる。

あ～２人共娘の私を心配してるんだな..
改めて親のありがたみを感じる..

ある程度は電話で伝えたけど詳しくは会って話す事になった。

電話を切る時..
お父さんもお母さんも安心して眠ってね。
私は全然大丈夫だから!
うまく話し合いもできたし今はほんと気持ちもスッキリしてるからね。

うんうん..
そうね...良かった..

安心したのかちょっと泣きそうな声になってるのが電話越しからでも分かる..

お父さんお母さん..
ありがとう..
心配たくさんかけちゃったね...
近々家に行くから..待っててね。

そう伝え電話を切った。

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私がリビングのドアを開けると義両親が立ち上がった。

どうぞ座ってください。
見送りは必要ありません...

すかさずそう言うとゆっくり腰を下ろした。
夫は頭を下げたままもう動かない..

では....失礼します..

ガチャ...ン

真っ暗な廊下を玄関めがけて歩く。

終わった..終わった..
終わった...

張り詰めてた気持ちが緩み体中の力が抜けていくのが分かる。

玄関まであと少し..

長かった...
辛かった...

でも私に後悔はない..
苦しい半年だったけど自分なりに整理する事ができたし..私の思いを取り乱す事なくぶつけられたと思う...

今すべてが吹っ切れた感じで体は重いけど気分は良い。

私は前向きにそして強く生きていける!
そう確信した。

背中にある過去..
扉の先にある未来..

玄関にたどり着きその扉を開ける..

ガチャっ

まっすぐ前を向き後ろを振り返る事なく私は歩き出した..

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私は夫の手を取り優しく握った。

たかちゃん...
....さようなら...

私の最後の温もり..２度と触れる事のできないこの温もりをしっかり覚えておいてちょうだい...
そう心で呟いた...

時間にして10秒くらい..
手を外そうとしたけど夫が離そうとしない。
もう一つの手で夫の手をゆっくり離した..

理子は下唇を噛み私に鋭い視線をむけている。

お父さんお母さん..
今後について話しがある時は電話します。
あとの事は...
私が加わって話す事ではないので4人で話してください。

私は荷物を持ち義両親に頭を下げた。

れ..れなちゃん...
こっちからも電話..
するからね...

義母が言ってきた事に対し私は一言｢はい｣とだけ答えた。

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はいはい!!
もう離婚して他人になるんでしょ!!

え～そうですけど..
..今私は夫と話しをしているのでちょっと黙っててもらえますか？

なっ!!

離婚した後に２人がそのまま付き合おうが私にはもう関係ありません..
ただあなた方２人が不貞を犯し..私やお互いの両親を傷つけた事は紛れもない事実..
その事はしっかり頭に刻み込んでください！

夫は顔面が蒼白になっている...
理子は私の言葉一つ一つにイラついているのが見てて分かる..

不倫をしている人は純粋に彼を愛している..と思っているから..
それを周りから不貞と言われる事が屈辱なのだろうと私は思っている..

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結婚して4年半..
付き合ってる時を入れたら随分長い月日を過ごしてきたね..

心からたかちゃんを愛していたし...これからの長い人生..死ぬまで一緒にいるって信じて疑わなかった...

まさかこんな日がくるなんてね...

もうすぐ夫婦じゃなくなり他人になる..
......
......
こんな事があって..
過去の楽しかった事、
嬉しかった事..
想い出すべてがかき消されてしまったけど...
お世話になった事は感謝してるから...
今までありがとう..
さようなら...


あ～れ..な～...

声にならない声..
つい4時間前までは何も知らず幸せだった夫..

こんな急な展開に頭が混乱し夢であってほしい...夢なら早く醒めてほしいと願っているのかもしれない...

隣にいた理子は痺れを切らし私に向かって喋り出す。

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.....
落ち着いたら...
またおじゃましますね。

そう微笑み答えると２人共半分泣きそうな顔で何度も頷いた。

横からは罵声が響く。

私は２人の元に近寄り立った状態で見おろした。

突然真横に立った私に多少驚いたのか２人共私の顔を見上げた。

話してるところ割って入ってごめんなさい...

たかちゃん...
最後にちょっといい？

隣の部屋に移動しようとしたが...

話しがあるならここで話して!!
今さらこそこそ２人で移動する必要ないでしょ!

理子に阻止された。
ピリピリしている理子をこれ以上刺激する事もないと思ったので、その場で夫と話しをする事にした。

義両親も私の方に耳を傾けている。

夫に......最後の言葉を残す...

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じゃあ....
話しも終わったので私..もう行きますね..

お父さん..お母さん..
今まで本当にお世話になりました。
人生を考えると短い付き合いでしたが..
お２人と過ごした楽しい日々は忘れません...

深々と頭を下げる..

れなちゃん..
私達の方こそ..
ありがとう...
息子のした事は私達の責任でもあるから..
本当に..
本当に...ごめん..なさ..い..

そんな!お母さんが謝らないでください..

ふざけないでよ!?もうなんなの!?
私１人バカみたいじゃない!!

私達が話している横から声が聞こえてくる。

理子が夫に責めより発狂している..

義父はまたため息をつきもう聞こえない振りをする...

れなちゃん..
もし良かったらまた..
家にお茶しにきて..
くれないかな...

少しの間無言になった。

• 共感0

たかし..
もう覚悟しなさい..
れなちゃんの気持ちが変わる事はない..
すべて...自分が招いた結果でしょ..

義母は怒りを抑えるように小さめの声で夫に言った。

あ～ぁぁ～

唸るように泣く夫..
誰も責めたりイライラをぶつける事もできない..
だって一番悪いのは本人なんだから..

しばらくした後..
顔をしかめ頭を腕で抱え込むようにテーブルに肘をついた。

そしてペンを取り小刻みに震える手で離婚届に記入をしていった。

書き終わると力無くペンをテーブルに置いた..というより落とした..

離婚届を手に取り封筒の中に戻す。

ありがとう...

一応..書いてくれた事にお礼を言う..

近々役所に提出します..

誰も返事はしない。

うつむいたまま...
重苦しい空気が流れる...

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これ以上こじれると終わらないと思ったので２人が話しているのを遮り私は喋りだした...

たかしさん..
何度も言ってるけど私もう..離婚しか考えてないから..

それから理子さん..
大きな勘違いしてると思うけど..
離婚を切り出したのは私の方だから!
それにさっき３人でたかしを責めてとか言ってたけど、たかしさんが離婚を拒み続けてただけだし...
ここにいるのは...
たかしさんのご両親って分かってての発言なんですかね？

理子の顔が..えっ!!
と言っている..

その後額に片手をあてしかめた顔をしたまましばらく動かなくなった。

たかしさん..
.....書いて下さい..

........
........

調停...なんてしたくないでしょ..？

夫は義両親の方を助けを求めるような顔で見つめた...

• 共感0

いや..だ...
お..俺はれなと別れたくない...

顔を歪ませ今にも泣きそうになりながら片手で顔を覆う。

は..はぁ!?
何言って...
たかし奥さんと別れるって言ってたでしょ!
私と一緒になりたいって言ってくれてたじゃない!

なんなんだよ...そんな事..言ってない..
お前が別れろとか..色々言ってくるからただ頷いてただけだろ..？

なにそれ!!
たかし私の事を一番愛してるっていつも言ってたよね!?
なんで!!なんでそんな事言えるの!?

２人が言い争っている..
私はそれを客観的に見ている...

義両親は...
悲しみ..？呆れ..？..
なんとも言えない表情をしている..
どんな気持ちでそれを見ているのだろうか...

• 共感0

それに３人で寄ってたかってたかしを責めるなんて！
しょうがない事もあるでしょ～！
もういい加減たかしの気持ちを尊重してあげたら～？

...
......
理子は夫から離婚を切り出し、それを私達親子が責め、阻止しようとしている...
と信じきっている..

私は義両親の方を見る..

お父さん..お母さん..
私..もういいですかね？

そう言うと義父が大きなため息をつきながら目を開ける...

たかし...
お前何考えてるんだ..？
あっちにもこっちにもいい顔して!
自分で責任をとれ！
もう知らん!

理子が眉間に少しシワを寄せ首を傾けている。
あれ？この２人奥さんの親じゃなかったの？
きっと必死に考えているところだろう...

私は改めて離婚届を夫の前に置き..

私と離婚してください!

そう言ってボールペンを差し出した..

• 共感0

もちろん結婚しているのはわかってるわよ!
でも結婚した後に本当に愛する運命の人に会う事だってあるじゃない!
先に結婚した人がそんなにえらいの？
私が先にたかしと出逢っていたら間違いなく結婚してるし!

....
そうか...
そんな考えを持っている人もいるんだ...

いや..理子だけじゃない
不倫をしている人は根本にその考えがあるのかもしれない...

..私が先に出逢っていたらって....

だからといってそれを正当化するなら婚姻制度なんてないほうがいい!

理子とは一生話しが合わないと改めて思う..

でも...ここまで不倫相手に思わせてしまったのは夫..

甘い言葉を言い続け..
30歳近い女をその気にさせて..

なのに夫は家庭に戻ろうとする..

ほんと...酷い男..

この２人との関わりを早く断ち切りたい..
心からそう思った...

↓
↓


今更ながら読み方は
理子＝りこ☝です😉✨

• 共感0

夫はこの状況でなんて答えるのか..
.....
理子さんはそう言ってるけど..
実際どうなの？
ちゃんと答えて!?

少し強めに問いただす。

いや..俺は..
....
沈黙...

理子が痺れを切らし喋りだす。

ねぇはっきり言ったらいいじゃない！
あのね～奥さん!
たかしはずっと私の傍に居たいって!私といると楽しいし癒されるっていつも言ってくれるの!

あ～...
ち....が..ぅ..

んっ何？

理子は夫の発した言葉が聞き取れず聞き返す。

義父は呆れているのか？
目を瞑り腕を組み、のけぞるようにその会話を聞いている。

理子さん....
分かってます？
...私達は結婚してるんです...
夫婦なんですよ!

......
....
夫は理子にそんな風に言っていたのか...
予想していた事だし..
分かっていた事だけど..
直接それを聞くと久しぶりに..あの時の感情が蘇ってくる..

• 共感0

お...お前..
なんで...ここにいるんだよ..

か細い声で夫が言う...

義両親もさすがにこの女が夫の不倫相手だと理解しただろう...

義母はあからさまに眉間にシワを寄せ夫と理子を睨むように見ている。

え～だってこの人が来いっていうから！
私を指差し理子が言う。

そう言うだろうとは分かっていた。
別に隠す必要もない。

来たいなら来てくださいって言ったけどダメだった？

目を直視しそう言うと夫は顔を掻いたり手を掻いたり..ソワソワが止まらない..

理子さん..
あなた夫と別れる気はありますか？

そう尋ねると理子は夫の腕にぎゅっと抱きつくように...

私達は愛し合ってるの!誰にも邪魔なんてできないし別れるつもりもありませ～ん!

義父と義母はまさに唖然としている..

夫は...固まっている..

ほんと...
期待を裏切らないなぁ..

ぷっ...ぅ

思わず吹き出してしまいそれをごまかすように後ろを向いて咳き込んだ..

• 共感0

リビングに入った..

理子の姿を見た夫の顔が一瞬にして真っ白に変わった..

もぉう!たかし私来ちゃったよ～!

夫の横にこれでもかとくっつく..

なんなんだ..この猫なで声は..
さっき睨みつけ私に言った時とは別人のように甘ったるい声を出す..

義両親は口を半開きにし明らかに困惑している様子...

イスが足りなくなったので組み立てイスを持ってきて義両親の近くに置いて座った...

すると理子は義両親を鋭い目で睨めつけ腕を組み..

ど～も

ゆっくりと一言だけ発した..

その場の空気が一気に凍りつく...

私も一瞬...理解出来なかった..
何..考えてるのこの女..
夫の親に向かって..

...夫の親？
私は自分が座った位置をみて確信した..

理子はこの２人を私の親と勘違いしている..
私が義両親の真横に座ったからだ...
３人で夫を丸め込もうとしてるとでも思ったのだろう...

理子..あんた...
面白すぎる...

私はしばしこの状況を..
見守る事にした...

• 共感0

ガチャ...

お互い目を合わせる..

この女が..理子..

私を睨みつけるように理子は言う...

さっきはどうも!勝手に電話切られたけど！
たかしいるんでしょ!上がってもいいかしら!

....どうぞ!

私は無表情でそう言ってのける..

靴を脱ぐ理子を見つめ私は考える..

写真ではほとんど横顔しか写ってなかった..
つけまつげに極太アイライン...
決して...綺麗とは言えない顔...
背が低くぽっちゃり..
派手な格好...
きつい性格...

私とは全然違う..
全然違うけど...
私この女と天秤に掛けられていたの..？

なんだか無性に情けなくなってくる...

廊下を歩き先にあるドアに手を掛け私はゆっくり開けた...

• 共感0

あ～もう..
どうしたらいいんだ..

夫がそう言った後..
しばし無言が続く...

そのタイミングで..
ピンポーン..

理子..ついに来た...

心臓の鼓動が早くなっていのがわかる。

夫と2年間不倫をしていた女と初めて対面をする...

３人共、こんな時間に..こんな時に誰？といった顔で首を傾げる..

私は立ち上がり玄関に向かった..

短い廊下がやけに長く感じる..
この時を待っていたのに...

玄関に着いた私は
目を瞑り...
気を落ち着かせ...
呼吸を整え..


扉を開けた...

• 共感0

私..慰謝料は貰わなくてもいいと思っているの...
これから１人で生きて行くからお金はあって越したことはない..
でも私には仕事があるから１人だったらなんとでも生きて行けると思うの...
だから...その分..
お父さんとお母さんの将来をしっかり考えてほしいの..
このお金はちゃんと意味のある事に使ってもらいたい...

この半年でこの貯金とは別に私なりにお金は貯めてきた。

だから慰謝料を貰わなくても充分なお金はある...

それより慰謝料を請求しない事の方が私にとって意義がある...

れなちゃん..
そこまで..私達の事..
なんで..こんな事に..
れなちゃんと毎週お茶する事が..私達の今の楽しみだったのに..

お父さん..お母さん..
私が半年我慢してきたのは２人の事が気掛かりだったからって言いましたよね...

義母は声を出し泣き始め
義父は片手で顔を覆う..

これで...義両親は私に付いた..

夫は頭をぐしゃぐしゃっと力いっぱいかきむしる..

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ちょっ!ちょっと待ってくれよ!!
俺は別れるなんて了承した覚えはない!
そんな..勝手に..
なんなんだよ!!
父さんも母さんも..
なんか言ってやってくれよ!!
俺は別れる気なんてないから!絶対に!

........
........
２人共口を開かない..
義父も義母も自分達の未来も大きく変わった事に気付いたのかもしれない..

...何を言われても私の気持ちは変わらないから..
..出来れば..調停なんかにしたくないの..

れな～....
そんな事...言わないでくれよ...

私は目を瞑り顔を横に数回振った..

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そしてそれを夫に渡した

義父も義母も私の話しを聞き..さっきまでの勢いはなくなり寂しげな表情になっている。

夫は袋を開き中から取り出す。

通帳...？

私はその通帳を夫の手から取り残高が見えるようにテーブルに広げた...

３人共目を見開きその金額に驚いている..

共働き..社宅..自炊..
それに子無し..
4年以上の月日があればかなりの金額になる...

れな..これ貯めた..の？

将来..これを頭金に二世住宅にしたいって思ってた..
私度々家にお邪魔してたから..だったら一緒に暮らしたらいいって..
お父さんもお母さんも..
私も...その方が楽しいんじゃないかなって...

れな..ちゃん...

これは前々から本当に思っていた事..

でももう..その願いも叶えられないね。
このお金は２人のお金...折半にしたいと思ってるから..

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お父さん、お母さん..
２人の気持ちは分かってるつもりです..
出来れば離婚などせず修復をしてほしいと思うのは親として当然の気持ちだと思います...

でも...先程も言いましたが...やっぱりこのまま夫婦を続ける事はできません。
不倫をされたという私の心の傷は...一生かけて大事にされたとしても決して消える事はないと思うんです。

お父さん..お母さん..
私の思い..分かって...
もらえませんか？

この4年..親のようにお茶飲み友達のように...本当に楽しい時を過ごしてきました...

実の息子が何よりも大切なのはもちろん分かります..
その気持ちの...
１割だけでも私の事..
考えてくれませんか..？

本当に大好きだった義両親。嫌いにはなりたくない。
私の思い伝わって..

ゆっくり立ち上がり私はタンスに向かう。
引き出しから袋を取り出し再びイスに座った。

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ほどなく
静かな部屋に音が鳴り響いた。

夫の携帯..
間違いなく理子だろう..

イスの下の方で携帯を開き確認している。

一瞬眉間にシワを寄せ携帯を切った。
しかしその数秒後..
また鳴り始めた。

義父が何かを察知したのか夫に言う。

たかし!話し合いの最中だ。電源を切りなさい。

あっ..うん...

携帯を切った後、夫は電源も切った。

私が席を外している間に３人でどう説得するかを考えていたであろう..

私は理子がくる事を確信している...
だからそれまで復讐を続行する。

３人の誰かが話し出す前に私は口を開いた。

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心臓のドキドキが止まらない...
想像以上に気が強く私も必死で勝ち気な対応をするのでいっぱいいっぱいだった...

理子は必ず来る..
私は今そう確信をしている...

夫は理子のどこが良かったのか...？
写真で見る限りではぽっちゃりして丸みがあって女性らしい印象は受けたけど、あのキツイ性格...

夫の前では全然違うのかもしれない..

でも今はそんな事考える時間はない..
結構長い事席を外している。
リビングをドア越しにこっそり覗くとまだ３人がヒソヒソ話しをしているのが見えた。

この様子だと私が戻ってくるのが少し遅い事など気にする余裕もないだろう。

ドアを開けリビングに戻ると３人はパッと体勢を戻した。

そして私はまた席に座った。

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随分と自信がおありですね？
別に私は動じませんけど..

笑いながらそう答え理子のイライラをさらに増幅させる。

はぁ!?.....
たかしそこにいるんでしょ!?代わって!

どうして代わらないといけないんですか？
ところで？どうします？
来ないという事でよかったですか？
あなたの声聞いたらもう別に来てもらわなくていい気になってきました。
夫と２人でゆっくり話しますから!

何なの!?
何１人で喋って勝手に決めてんの!?

もう切りますね!

ちょっと待ちなさいよ!!私の話し終わってないでしょ!!

はぁ..
家分かりますよね？
もう話しがあるなら来てください。
あなたが来ても蚊帳の外でしょうけどね。
でも来るなら早く来ないと話し合いもう終わりますから。

たかしほんとはそこにいないんでしょ!?

まぁ勝手にそう思ってください。
駐車場の車見ればいるかいないか分かるんじゃないですか？

もう切りますね。

待ちなさ...

理子が喋り掛けた時私は電話を切った。

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大きく深呼吸をして電話に出た...

もしもし..

あの...何件も着信残ってたんだけど誰ですか？

吉田理子さんですよね？

はぁ..そうですけど..
だから誰ですか？

初めまして..
私木村たかしの妻です。

えっ!.....
はっ!?
なんで私の携帯知ってんの.....？
.......
.......
たかしの携帯盗み見したんでしょ!
意味わからないんですけどっ!
何考えてるか分からないけど私達を別れさせようったってそうはいかないからね!!

....
今...夫と別れるか別れないか話し合いをしているところです..

話し合い？

話し合いの結果によっては元通り戻るかもしれませんが。

はぁ？
元通りって何言っ...

理子の話しを遮り私は話し出す。

今から家に来ませんか？
聞きたい事もあるし。
別に来たくないならそれはそれでかまいませんが。
夫と今後の２人の話しをするまでです。
まぁ来ても、私達は愛し合っているからあなたの入る隙間はないと思いますけどね!

鼻で笑うように言い理子を挑発する。

はぁ!?
何勘違いしてるの!!たかしはあなたに対して愛情はないの!!
私を愛しているの!
分かる？

理子はまんまと挑発に乗ってきた。

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れなちゃん...
今は辛くても時間が解決するもんだよ。

...時間で解決する事もあればしない事もあると思うんです..
それにたかしさんは別れる気でも..相手の女性はどうなんですか？
私が知る限りではたかしさんとの結婚を望んでいるって聞いています...

夫の顔を見る。

ねぇ本当に別れるって話ししてる？
すんなり別れられるの？
私にはそうは思えないんだけど。

......
......
また無言...
相変わらず分かりやすい男...
目が泳いでるよ...

...ちゃんと決着つけるよな？
なったかし！

義父が横から割り込んできた。

夫と義父が決着つける云々の話しをひたすらしている..

私はそれを聞いてるふりをして聞き流す...

その時私の携帯のバイブがポケットの中で着信を告げた。

ちょっとすみません。

トイレでも行くように私は席を外しリビングを出た。

出た直後３人頭を寄せ何か小声で話しているであろう姿がドアの小窓から見えた...

携帯を開き掛かってきた相手を確認する。

来た...!!!
かけ直して来た..!

ダメだったと思っていただけにこのタイミングで掛けてきてくれた事に感謝の気持ちすら湧いてくる。

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れな..落ち着け..
私はこの半年苦しみぬいてきた。
これ以上の苦しみなんてそうそうない..

ここで感情的になったら全てが無駄になる..
大丈夫..大丈夫..

自分に言い聞かせ気持ちを落ち着かせた。

３人の視線が私に向けられて、喋りだすのを待っている...


やっぱり私...
一度別れた方がいいと思うんです..

義父が口を開きかけたが、それを遮るように話しを続ける。

今のまま戻ってもお互いギクシャクするだけだと思うんです。

私自身一緒に居てもたかしさんを信じられず疑ってしまったり..責めてしまったり..傷つけたりしてしまうと思います..

私はこれ以上傷つきたくないし..またたかしさんを追い詰めたくもないんです..

私心が弱い..から..
今までのようにはやっていけません....

このまま生活をしてお互いが嫌いになってしまう前に離れるのもひとつの方法だとは思いませんか...？

私はゆっくりと３人を諭すように話した。

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お父さん..お母さん..
たかしさん..

ごめんなさい..
私やり直すつもりはないんです..

れなちゃん..
気持ちは分かる!
でもたかしはもうバカな事はしない!
今回の事で気持ちを入れ替え良い夫になるはずだよ!
だからこれからのたかしを信じてあげてほしい..

夫が横で頷く。

れなちゃん..
思い悩んで辛かったでしょ？
たかしもこれからはれなちゃんだけを大事にする!
もし何かあってもいつでも相談してくれたら私達が助けになるから..
だから今回みたいに1人で思い悩まないで!
いつだってたかしを懲らしめるから!
同じ女として許せない気持ちは分かるよ..
ただ今回初めての事で気の迷いだから..
今回だけ許してあげて..

３人が私に責めよる。

なんだか私が悪い事でもしたの？と勘違いしそうになる..

気の迷い!?
気の迷いが2年も続くのか!
結局は２人共夫の肩を持ち私の気持ちなんて考えてもない!

同じ女として分かる!?
分かるも何も息子の事しか考えてないじゃない!!

沸々と怒りが込み上げてくるのを必死で抑えた...

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義父は肩を上下に..深く息をしている。

私は夫をいかにも心配そうな目で見つめる。

たかし..
もうその女とキッパリ縁を切れ!

俺も..そのつもりだよ..

これからはれなちゃんだけを大事にしろ!
一生掛けて償いれなちゃんを守る事がお前の宿命だと思え!!

そうよ!たかし!
次泣かしたらお父さんもお母さんも許さないからね!
２人ともれなちゃんの味方なんだから!

分かってる..
俺も..そのつもりで..
一生掛けて償うし..もう間違いはおこさない..
れなだけを大事にしていく...
れなだけを守っていく..


.....はっ？
何言ってんの？
何３人で勝手にまとめてるわけ？？？
私の意志完璧に無視してるよ...
私..離婚するって義両親にも夫にもきっぱり断言したのに!!

..そっかぁ～..
結局は血の繋がった息子の方が可愛いって事か...

いくら仲良くしてても実の息子にはかなわない..

まっ分かってた事だけどね...

この義両親だけは違うかもって期待してた私がアホ..

まぁいい...

気持ちを切り替え私は口を開いた..

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れなちゃんに不満でもあったのか!?
仕事をしながら家事全般もして..いつもお前に尽くしていただろ!!
義理の親の家にもしょっちゅう来てくれるし..本当に良い嫁さんだよ..

たかし..何が気にくわなかったか..？
言ってみろ!

.....
れなに不満なんて..ないよ....

じゃあ..どうしてそんな事するんだ...

.....
.....

何も言えないのか!!

義父が夫の胸ぐらを掴み殴りかかる。

義母が手に力いっぱいしがみつき止めようと泣き叫ぶ。

お父さんやめて!!
やっやめてください!!

夫は無抵抗で..胸ぐらから義父の手が離されると力無くイスにうなだれるようにストンと落ちた..

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義両親と私もイスに座り4人が向かい合った。

テーブルにはさっき私がバラまいた写真がイヤでも義両親の目に入っているだろう...

夫は写真を急いでかき集めていたが...
義父はその中の1枚を手に取り眉間にシワを寄せている。

たかし..お前この女とまだ付き合っているのか..？

えっ...

夫は言葉を失っている。

たかしさん..
今日お父さんとお母さんにもこの事情と離婚の意志を話したの...
私達だけの問題じゃないから..

私が言うまでもなくその写真を見れば誰だってそういう事かと理解するだろう..

れなちゃんいいんだ!
俺とお母さんが知っているとかそんな事どうだっていい!
この女と今も付き合っているのか？と聞いているんだ!!

それは..いや..もう..
別れるつもりで..
別れる方向で話しをしているところだったんだ...

たかし..自分がした事分かっているのか!?
お前結婚してるんだぞ!

義父が徐々にヒートアップしていくのが分かった..

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私はゆっくり立ち上がり玄関に向かう。

ガチャッ

お父さん..お母さん..

私の顔は多分涙でグチャグチャだろう。
目も泣きすぎで腫れ真っ赤になっているはず。

...こんな酷い顔ですみません...

....れなちゃん..ごめんね..
行くか行かないか悩んだけど..たかしのしでかした事だから..私達にも責任...あるから...

誰が来たのか..気になった夫がリビングのドアを開け玄関を見た時......夫と義両親の目が合った。

夫は目を見開きその場で立ち尽くしている。

お父さん..お母さん..
あの..どうぞあがってください..

義両親は靴を脱ぎ夫めがけて廊下を歩く...

先程とはまた違う張り詰めた空気..

たかし。そこに座れ。

義父は低い声で夫にイスに座るよう命じた...

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私は顔を上げる事なくひっくひっく声を出し泣き続ける。

れな～..れな～..

夫も泣きながら私の名前を悲痛な声で呼び続ける。

端から見れば同じように泣いている姿..

誰にも分からないでしょうね。

苦しく辛く..悲痛な思いで声を上げ泣く夫...

込み上げてくる笑いを必死で抑え顔を隠し泣きまねをする私..

この空間にある計り知れないほどの温度差..

あなたがいけないのよ..

心の中で呟く。


ピンポーン..

時計を見る。
8時10分...

絶対来ると思っていた..

義両親のお出ましだ..

私の中で復讐第二章の合図が家のチャイムによってならされた...

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そ..そんな事言わないでくれよ!!!
俺...れながいないとダメなんだ!
絶対もうしない!
神に誓う..
れなの気持ちが俺に戻るように努力する!!
だから..だから..
今回だけ!今回だけ許してくれ!!

危機を感じたのか取り乱し、泣きながら訴えてくる。

私は顔を手で押さえ涙をボロボロ流す。

わ..わた..し..たかちゃんを心の底から愛していたのに..
結婚した時この幸せが一生続くって信じて疑わなかったのに..

でも..でももう無理..
たかちゃんを受け入れられない...

うう..うっう..

下を向き両手で顔全体を隠すように声をあげて泣いた..


ふふふ...
さぁ～...夫よ。
私はどんな女？
家事を完璧にこなし、
半年信じて待ち続け、
健気に誰よりも夫を愛していた。

ちゃんとそう思ってくれてるかしら..

両手で隠され見えない顔...
私は手の中でニヤリと笑う...

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たかちゃん頭を上げて..

私..さっきも言ったけど半年前から不倫の事知ってたの..

だからたかちゃんの行動が手にとるように分かった..

今日はデートするんだ..
今日は不倫相手のマンションに行くんだ..って..

そこで何をしているかなんて...誰しも思う事はひとつよね..

私はこの半年..
今から不倫相手と楽しむであろうあなたを...笑顔で何度も見送ってきたのよ..

そして今日..
私が決めた期限の誕生日までずっと...

数秒の無言...

そして私は夫の心に刻みつけるようにゆっくり話しだした。

...あなたに愛情は欠片もない...
私の手料理を二度と口にする事はない..
セックスはもちろんキスも、一緒に寝る事も..一生ない...
昨日までの当たり前の日常は今日をもって終わり...

私は家を出て行きます..

二度とない..
一生ない..を強調し明日からの生活が激変する事..
この先の人生に私がもういない事を強く印象づけた。

• 共感0

夫は目を押さえ泣いているようにもみえる..

俺に..チャンスをくれないか...
二度とれなを..泣かせるような事はしない..
一生を掛けて償う..
これからはずっとれなだけを大事にする..
だから..れな..
俺を信じて...
ずっとそばにいてくれないか...
許してほしい...

テーブルに付くくらい頭を下げる。


....きっと..今言っている事は嘘偽りのない本心だと思う..

心から反省し私に謝罪をしている。

でもこれが...
1年..5年..10年...経ったらどうだろう..

この気持ちを今と変わらず保つ事ができるのか....

浮気症の人は治らない..
その時だけは本気で反省し心を入れ替えても..時が経ち平凡な日常を送るうち....体が..心が..刺激を求めてしまうのだと思う...

男には誰しも多少の浮気願望があると思う。
でもそれを実行するかしないかでは天と地ほどの差がある。

この考えは不倫が発覚した時も今も変わらない...

本当に私を大事に思っていたならまず欲に負け不倫に走らなかっただろう..
しかも２年..

もう私の中で信じるに値しない男なのだ...

• 共感0

数秒の沈黙ののち..
私は静かに..優しい口調で話し始めた。

聞いて..たかちゃん..
私ね、たかちゃんが不倫してる事..半年前から知っていたのよ..

その事実を知った時、気がおかしくなりそうなくらい苦しんで..苦しんで..

すぐに問い詰める事も考えた..
でもそれを直接聞く勇気もなかったの..

もしかしたら私にも悪い所があったのかもしれない..
私が仕事してるからたかちゃんに不自由させてしまってたのかもしれない..
色々考えた...

何より２人の絆がまだ繋がっているって信じたかった..

だから私..それを知った日から..今まで以上にたかちゃんに尽くしてきたの..

気付いてくれてた..？

夫はこの半年を振り返っているだろう。
そして今更ながら、その事に気付くはず..
私が全てするから調子にのって何もしなくなっていた事に..

その時..決めたの..
たかちゃんの誕生日までに不倫をやめて戻ってきたら全てを忘れよう...
２人で明るく33歳の誕生日を祝おうって..

私はただただ信じて..
この半年あなたに尽くしながら祈っていたのよ..
お願い私を見てって..

• 共感0

夫は顔を片手で覆い眉間に深くシワを寄せる。

長い沈黙...

れな...ごめん...
魔が..差したんだ..
ごめん..ごめん..
..許してほしい..
れなと別れるなんて...
考えられない..
ほんと..ごめん..
ほんとごめん...

.......
...魔がさして？..
魔がさして２年も付き合うんだね..

えっ...

だからさっきから言ってるよね？
全て知ってるって！
随分と嘘言ってくれるじゃない！

たかちゃんが休みで私が仕事の時..理子さんのマンションに行ってるでしょ！

２人で買い物行ったりランチしたり～恋人同士だもんね！

理子さんは私とたかちゃんを別れさせたいみたいね？

２人結婚したらいいんじゃない？
だからお望み通り別れてあげるから！

いや..！ちょっと待ってくれよ!!
あっ...!!!
なんか言われたのか!?
あの女に変な事言われたんだな!?

勝手な解釈で理子が私に何か言ったと思っているようだ..

責任転換もはなはだしい..

私は何も返事をしなかった。
別に嘘は言っていない。
夫が勝手に解釈しただけ..

• 共感1

いや..ち..違うんだ..
そ..んなん...じゃないんだ..

何が違うの？

あ..友達...よく...4～5人で飲みに...行くけど...その中の１人の彼女でさっ！
しょっちゅう...来るんだよ..な..

........
........

聞き苦しい言い訳..

なんで名前まで知っているのかとか考えないのか..？
思考能力も麻痺しているのだろう...

ふ～ん...

沈黙が続く..
静かな部屋..時計の秒針がやけに大きく聞こえる...

ねぇ..
私がさっき言った事聞いてなかった..？
全て知ってるって..

イスの上から封筒を手に取り封を広げ夫の目の前に写真をバラまいた。

友達の彼女と手繋いで歩くんだ～..！
友達の彼女とキスするんだね～！
こんなに密着して！
まるで恋人みたい！
この写真見て！
ホテルから出てくるところ！
へ～すごいね～！
友達の彼女とセックスもするんだね！

私は淡々と..そして笑顔でそれを言ってのけた...

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え..しょ...正直にって..俺は..べつ..に...

目の前にあるコップを握り勢いよくほとんどを飲み干す。
そわそわしてさらに目を泳がせている。

本当にバレているのか？
いや..かまをかけている可能性もある..
俺はどうしたらいいんだ..シラを切り通すか...

夫の心の声が聞こえてくるように分かる。

それを楽しむかのように私はさらに追い討ちを掛ける。

ねぇたかちゃん..
もう一度言うね。
私全て知ってるの..
どうする？そのままシラを切り通す？
今までも..これからもずっと私を騙し続けるの？

あ..あ..
れな..あの...

...吉田..理子...

そう私が呟くと..
みるみる夫の顔が青白くなるのがわかった。

目を見開き、口元が小刻みに動いている。

さぁ次はあなたが喋る番よ...と言わんばかりの表情で夫を見つめた。

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そう..それでいい..
それでこそ追い詰めがいがある..

昔テレビを見ていた時..某タレントがこう言っていた。

浮気を問い詰められても何が何でもシラを切り通せ。

現場を見ていないならなんとでも理由をつけられる。

お前、俺を疑っているのか!?
具合の悪くなった友達を家で休ませただけだろ！
じゃぁお前はそのまま放置して帰れっていうのか!?

と、逆ギレ...

なぜか問い詰めた彼女が悪者になり、その話しはそれで終わり...

何も確証のないまま問い詰めれば言いくるめられる..

なんて理不尽な...

そう...だから決定的な証拠が不可欠なのだ..

感情的になって見切り発車してもろくな結果にはならない。

私は半年を掛けて準備をした。

そんな薄っぺらい嘘は私には通用しない..


たかちゃん...
私が何も知らないとでも思っているの？
正直に答えて..

不倫の事は私の口からは言わず、優しい口調でじわじわ追い詰めていく。

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ん？何？

夫は封筒から離婚届を取り出した..

動きが止まる..

見たのを確認して私が切り出す。

離婚して下さい..

え..な..ん...

数秒言葉を失う..

え..意味がわからん!
ちょっちょ..
はっ？どういう事..

意味は分かるでしょ。
その原因がたかちゃんにある事も...
私が言ってる事分かるよね...？

夫の目が泳ぐ。

この数秒間で頭をめまぐるしく回転させているだろう。

そんな事言われるなんて微塵も思っていなかった夫...

さぁどう答える？

夫に限らず何も心の準備をしていない男はこの状況でどんな対応をするのか..

そんな事考える余裕が私にはあった。

今..何を考えているか？
手に取るように分かる。

理子の事か？
バレてるのか？
いや..そうじゃなかったら墓穴を掘る..
ごまかせるか..？

そして夫は言った..

なんの事？
俺には分からない！

と.....

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ガチャッ

ただいま～。

おかえり。

あれっ？
ここに飾ってた絵は？
あっここにあった置物もない。
随分スッキリしたけど模様替え？

私は答える事なくリビングに向かう。
夫は首を傾げながら後ろを歩く。

冷たいお茶をコップに２杯注ぎテーブルの上に置いた。

私はイスに座りそれを飲む。

あれ？ここもなんか雰囲気が違う。
アロマスタンドあったよね？片付けた？

ネクタイを緩めながらイスに座りお茶を飲む。

あ、うん..

生返事で聞き流す。

たかちゃん誕生日おめでとう。
はい。プレゼント。

夫の前に差し出した。

おっありがとう!

ガサガサ音を立て包装を取る。

それよりれな!
昨日から言ってる話し～!
何、何？早く聞かせて!

嬉しそうに聞いてくる..

ほんとっめでたい男...

私はイスの上に用意していた封筒を手に取り..夫の前にスーっと滑らせ目の前に置いた....

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この半年を振り返る..

信じきっていた夫からの裏切り..
地獄に突き落とされたあの日..
復讐を誓ったあの時..
今日までに要した復讐への準備

辛い思いをさせてしまった両親...
今まさに悲しみのどん底にいる義両親..

頭の中で色々な想い..感情が交錯する..

夫はただ１人..何も知らない..

私が妊娠の報告をするのだと今でも思っているのだろう...

これで理子ともうまく終わらせられる..きっとそう思っている..

妻が妊娠したんだ。
しょうがないだろ。
一応夫婦なんだからたまにはセックスしないと怪しまれるだろ？
でも妊娠したなら責任あるからな。
別れるしかないよな。
分かってくれるだろ？

待望の妊娠。
不倫の精算。
一石二鳥....

世の中そううまくいかない事思い知らせてやる...

ピンポーン...

私は静かに目を開ける..

ついにこの時..
今復讐の幕が開かれた..

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携帯を開き
ピ、ピ、ピ..
電話を掛ける....
胸が高鳴る..

プルル...プルル...
プルル...プルル...

出ない...

数分後
もう一度....

プルル...プルル...
プルル...プルル...

だめだ..出ない...

時計を見ると6時30分になろうとしていた...

もうすぐ帰って来る..

最後に新居に持って行く忘れ物がないかチェックする。

4年半過ごした家を目に焼きつける。

それぞれの部屋に入り最後のお礼とお別れをしていった。

テーブルにプレゼントを置く。
私が座る横のイスの上には封筒を２つ置いた。

ひとつは証拠写真..
もうひとつは..離婚届..

準備は整った..
あとひとつを残し..

もう7時になろうとしている。

再び電話を掛ける..

プルル...プルル
プルル...プルル

やっぱり出ない..
だめか...

まぁ...いい...
全てがうまくいく訳はない...

イスに座り目を瞑った。

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車に乗り込み自宅へ向け走らせた。

涙で前がうまく見えない...

バックからハンカチを取り出し目頭を押さえる。

お父さん..お母さん
ごめんなさい..

心で呟きながらも気持ちを切り替える。

これで終わりじゃない..
今からが本番...

家に帰り着き、気を落ち着かせる為コーヒーをつぎソファに座った。

ふぅ～...

コーヒーをひと口飲み溜め息をついた。

数分間...無になる..

そしてゆっくり体を動かしバックを引き寄せ中から携帯を取り出した。

• 共感0

靴を履き２人に手を差し出した。

義父は右手..
義母は左手を握る..

お父さん..
お母さん..
本当に今までありがとうございました。

できる事ならこの手を離したくなかった...です...

今までのように３人でお茶する事...もう...ないんですね...

義父も義母も泣いている...
60歳を過ぎた２人にこんな涙を流させてしまった...
これ以上２人の泣き顔を見ていられなかった...

手を自らはずし２人に深く頭を下げ家を出て行った...

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夜...たかしさんが７時くらいに帰ってくる予定なんです...

この事はお父さんとお母さんにも大きく関わる事なので...もし話しを聞きたいなら８時くらいだったら家に来てもらっても...いいです...よ..

言い合いになっている可能性もあるので...見苦しいところを見せてしまうかも...しれないですけど..

家に来るか来ないかはお父さんとお母さんにおまかせします...

少し小さめの声で流れるような口調でそう話した。

おかあさん..？

.....

義父が義母に意見を聞こうとしたが顔を両手で覆い泣いていて..話しができる状態ではなかった...

れなちゃん...
おかあさんが落ち着いて...話しをするよ...

力無く義父が答えた。

分かりました...
お父さん..お母さん..
私もう..行きますね..

ゆっくり立ち上がる。

２人も立ち上がり３人で玄関まで向かった。

• 共感0

２人は私を悲しそうな目で見つめる..

今まで親族として、もっとも近い距離にいた２人...
この日を境に遠い距離に変わってしまう..それは承知の上..

身支度を整え口を開く。

お父さん..お母さん..
お願いがあります。
この事は私の口から話したいんです。
だからたかしさんには連絡しないでいただけますか？
当事者として...夫婦であった事の最後のけじめとして... 私の思いを伝えたい...

れなちゃん...
わかった..たかしに連絡はしない...

....親としてれなちゃんには本当に申し訳なく思っているよ...

今日ここに話しがあるって来る前まで、たかしのプレゼントを何にするか相談したいんだろうって言ってた事が恥ずかしい....

れなちゃんが...こんな苦しみを抱えていたなんて..知るよしもなかった...

義父が下を向きゆっくりと話した...

• 共感0

また...沈黙になる。

義父は何か話そうとする素振りは見せるが、なかなか言葉が出ない様子で下を向き動かなくなってしまった。

お父さん...
お母さん...
初めて会った日から今まで...私を本当の娘のように可愛がってくれてありがとうございました...

私も本当の親同様に慕っていましたし...この幸せが一生続くって思っていました...

れなちゃん...
うっう..考え直して..
う、うう...

義母がボロボロ泣きながら訴える..

お母さん...
ごめんなさい..
私の気持ちはもう..
変わる事はありません..

お父さんとお母さんの事は今でも大好きです!
でもたかしさんにはもう...この半年で愛情は無くなってしまいました...

だから今日...たかしさんに離婚を切り出します...

お父さん...
お母さん...
こんな結果になってごめんなさい...
今まで本当にありがとう...ござ..いまし..た...

私は頬をつたう涙を手で拭いながらゆっくりと帰り支度を始めた。

• 共感0

>> 273 すみません💦同じレスがダブってしまいました🙇

• 共感0

私は嘘をついた..
夫を許す気なんてさらさらない。

不倫を止めて戻って来ようが来まいが、こんな裏切りをする人と一生添い遂げるなんて考えられない。

義父も義母も好きだけど、離婚して他人になってしまうのは悲しいけど...でもやっぱり..私は自分の人生をやり直したい...

数秒の沈黙が続く..

....私の願いは届く事なく期限の今日を迎えてしまいました。

...今もたかしさんはその女性と...続いています...

そしてその女性は...たかしさんと私の離婚を...望んでいるようなんです...

私...もう疲れました...
不倫が分かってから...たかしさんの行動が予想でき..るんですよ..

私が仕事の時はだいたい女性のマンションに...行っているようです..

そこで...何をしているか....

想像したくなく..ても..してしまい...

気が...おかしくなってしまいそうなほど..苦しみました..

２人は眉間にシワを寄せながら話しを聞き、時折手で頭を抱え込む。

義母は涙で...化粧がボロボロになっていた...

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私は嘘をついた..
夫を許す気なんてさらさらない。

不倫を止めて戻って来ようが来まいが、こんな裏切りをする人と一生添い遂げるなんて考えられない。

義父も義母も好きだけど、離婚して他人になってしまうのは悲しいけど...
でもやっぱり..私は自分の人生をやり直したい...

数秒の沈黙が続く...

...私の願いは届く事なく期限の今日を迎えてしまいました...

今もたかしさんはその女性と...続いています...

そしてその女性は...たかしさんと私の離婚を...望んでいるようなんです...

私...もう疲れました...
不倫が分かってから...たかしさんの行動が予想でき..るんですよ..

私が仕事の時はだいたい女性のマンションに...行っているようです..

そこで...何をしているか....

想像したくなく..ても..してしまい...

気が...おかしくなってしまいそうなほど..苦しみました..

２人は眉間にシワを寄せながら話しを聞き、時折手で頭を抱え込む。

義母は涙で...化粧がボロボロになっていた....

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...色々考えて考えて..
.......

考えていく中で思ったんです...

たかしさんと別れるって事はお父さんとお母さんとも別れなければいけないって...

私はここに来て３人でコーヒーを飲みながら話しをするのが楽しみだったし...
結婚してからの習慣にもなっていました...

お父さん...
お母さん...
わ..たし２人と..離れたく..なく..て..
うっう..

涙をポロポロ流し２人の心情に訴え掛ける。

れなちゃん...

目頭を押さえる義父..
目を真っ赤に涙を流す義母....

だから私...半年間頑張ろうって...

掃除、洗濯、料理、今まで以上に...頑張って...たかしさんが居心地良いように心掛けたんです...

それで..不倫を止めて戻ってきたら何もなかった事にしよう..

不倫が分かった日から半年後のたかしさんの誕生日を..その期限と決めていました...

お父さんとお母さんに言って....今までの関係が無くなるのが辛くて..辛くて..
だから誰にも言わず....ひたすらこの半年耐えてきたんです...

今までのように穏やかな日々が来る事を願って...

大粒の涙を流し感情を込めて私は言った。

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２人はしばらく下を向きショックを隠せないといった様子だ。

今知った事実を親としてどうしたらいいのか...
そう考えているのかもしれない。

私は静かに話し始めた.....

お父さん..お母さん..

私..たかしさんの不倫を知ったの...最近じゃないんです..

...半年前から知っていたんです...

２人が少し顔を上げた。


今はこんな風に落ち着いて話していますが...それを知らされた時は取り乱し精神的にもかなり追い詰められ１人で泣き叫んでいました...

感情が高ぶり涙がポタポタと下に落ちる。

私はどうしたらいいの？
たかしさんに問い詰めた方がいいの？
お父さんやお母さんに相談した方がいいの？
って随分悩んだんです..

声を多少震わせながらもしっかりと話しをしていく。

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え..どうして..そんな..

え～...ちょっと頭が混乱して訳がわからな..

だってそんな離婚だなんて..いつも仲良くしてるでしょ!?

どうしてそんな事..
れなちゃん何でそんな事言うの!？

お母さん!?
落ち着きなさい!!
そう言うからには理由があるんだよ!

れなちゃんちゃんと説明してくれないか!?

はい......
実は...たかしさん２年前から不倫しているんです...

なっ!!

義母が何か言いかけたが、止める事なく話しを続けた。

友達が...たかしさんと女性がホテルに入って行くのを見たって...

最初は人違いだと信じていなかったんですが、絶対間違いないって言い張るから.....
たかしさんの疑いを晴らす意味でも調査を依頼したんです...

....その結果..
付き合って２年になる女性がいる事を伝えられました...

少し脚色を加え不倫が分かった経緯を伝えた。

カバンから封筒を取り出し義父に渡した。

中の写真を見た義父は頭を抱えうなだれる。

その様子を見ていた義母が写真を義父の手からもぎ取り息子の不貞を目の当たりにした。

目をグッと瞑り顔を背け写真をテーブルに裏返して置いた。

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れなちゃん、いらっしゃい。
今日は珍しい時間帯に来たね～。

２階から下りてきた義父が言う。

あの..今日２人に話しがあってお邪魔しました。

そうそう。さっき電話で言ってたわね。
まっ、とりあえず座りましょう。
お茶用意するから待っててね。

義母がキッチンからコーヒーとクッキーを持って戻ってきた。

ん～美味しい。

２人をチラッとみて様子を伺う。

数分時間が経ったのち

で、れなちゃん話って何なの？
あっお父さんこのクッキーも食べてみて。
美味しいから。

いつも通りまったりとした空気が流れている。

私は姿勢を正し重い口を開いた。

お父さん...
お母さん...
私..たかしさんに今日の夜..離婚を切り出します.....

口を半開きにし目を見開き私を見る..

一気にその場がシーンと静まり返った。

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車を走らせ夫の実家に向かう。

通い慣れた道。
いつもなら気持ち軽やかに運転する道も今日はかなり気が重い。

頭の中でどういう風に切り出すかを何度もシュミレーションしてみる。

そうこう考えているうちに家に着いてしまった...

重い腰を上げ玄関に向かう。

相変わらず開けっ放しになっていたので大声で叫んでみた。

こんにちは。
れなです。

義母がすぐやってきた。

れなちゃん早かったね。
さっ上がって!

...おじゃまします。

私の声を聞いてか義父が２階から降りてくる。

いつもそうだ。
親の年になると夫婦２人じゃ会話が続かないからか義父はだいたい２階を拠点としているのだ。

でも私が来ると必ず下りてくる。
きっと楽しみにしてくれているんだと思う...

私の親には随分と心配をかけた。

夫の親には...きっと悲しみを与えてしまうのだろう。

夫に自分がした事でどれだけの人が傷つくのかを思い知らせたいと心から思った。

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40～50枚ある写真の中からより決定的な写りの物を15枚選んだ。

そこから５枚を封筒に入れバックに入れた。

物が無くなり昨日までとは雰囲気の違う部屋でしばし考える。

今から行動を起こす。
..あの２人に恨みはない。
今まで本当の娘のように可愛がってくれたし、私も週１ペースで遊び行くのがごく当たり前になってるくらい楽しかった。

これからはもうそれがなくなる。

離婚の事、その経緯...
その事実を聞いた時果たしてどちらの味方につくのか..

娘のように可愛がってくれた私か...本当の息子か...

言ってすぐは私の見方につくのではないか？

私はそう考えていた。

でも時が経つほどどんな理由であれ息子の方に行くだろう。

だから夫に言う今日義父と義母に言う必要があった。

少しでも時間をあけない為。

そこまで計算する私は何とも腹黒い。
復讐の手段として２人を利用する。

プルル...プルル..
はい、もしもし

こんにちは、れなです。

あらっれなちゃん？
どうしたの？

今からちょっとお話しがあるのでお邪魔していいですか？

家に居るから大丈夫よ。

では今から向かいます。戸締まりをして家を出た。

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着いた場所はショッピングモール。

その中に入っている紳士服屋に寄りネクタイを選んだ。

青のストライプで一番無難な柄。

プレゼント用でお願いします。

赤いリボンでキレイに包装してくれた。

お待たせ致しました。ありがとうございました。

ネクタイを受け取り店を出た。

車に走らせ家に帰る。
時間は２時。

朝から何も食べていなかったので家に帰り着いてパンを食べた。

お茶を飲み一息ついた後衣装ケースの奥に隠していた証拠写真を取り出しテーブルの上に置いた。

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独身時代に買った物を車に積んでいく。

運び終わると部屋の雰囲気がずいぶんシンプルになりひと目でその違いが分かるくらいになった。

自分の身支度もして家を出た。

車を走らせまずは新居に向かう。

持ってきた置物や額縁、化粧品...
クローゼットに入っていた以外の物をすべて持ってきた。

数回に分け部屋まで往復する。

最後に昨日買ったランプを部屋に運び入れそれらを自分の思う場所に飾っていった。

はぁ..疲れた。
でもこれでやっと部屋が完成した。
キレイになったな..

感動はそこそこに..
今日の私は忙しい。

そのままくつろぎたいところではあったけど、家を後にして車を走らせた。

着いた場所は区役所。

そこで離婚届を受け取った。

書き間違えたらいけないので２枚貰おうとしたけど、原則１枚だけらしい..

ここの区役所だけかな..？
厳しいな。

首を傾げながら再び車を走らせた。

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あっという間に準備を済ませる。

さっき言い忘れてたけど、たかちゃん33歳の誕生日おめでとう。

ありがとう!
もう年やね～はは。

それは私も同じ..

じゃあ仕事行ってくるね。

うん。気をつけてね。
行ってらっしゃい。

キスをしてくる。

じゃっ夜ね。
待ちに待ったね。
楽しみにしてるから✨

えっ？
......うん...

行って来ま～す。

笑顔で家を出て行った..

さっきから何なの..？

....
.....
もしかして!?って言ってた...

あ～..そうか..
妊娠の報告と思っているのかも..

だから楽しみにしてるねって。

そんな勘違いして..

自ら天から地獄に堕ちる事ないのに..

そんな事を思いながら新居に持って行く物を集め始めた。

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夜中１時を過ぎ夫がベットに入ってくるのが分かった。

寝たふりをして目を開けず夫を耳だけで観察する。

小さなため息が聞こえてきたかと思うと、数分後いびきをかき始めた。

今日がぐっすり眠れる最後だからね。
今だけゆっくり眠ってちょうだい。

夫の顔を見つめ..心の中で呟いた。


ピピピ..ピピピ...

目覚ましが朝になったのを伝える。

目だけ動かし部屋全体を見渡す。

この光景も今日で見納めか...
さようなら。私のすべてを見てきた部屋、ありがとう..

すくっと立ち上がりキッチンに向かい朝食を作り始めた。

作り終えると夫を起こし一緒に食べた。

ねぇ昨日も言ったけど今日は早く帰って来てね。

あ～分かってるよ。
話しって何？

ん？だから帰って話すってば。

良いこと？

帰って話す!

...もしかして!?

？？？はい？

帰って聞く～！

そういうと仕事に行く準備を始めた。

？？何なの？
しばらく意味が分からなかった。

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髪を乾かし、リビングに向かう。

私が入った瞬間夫が携帯を触るのをすぐ止め下に置いた。

あっ、ふ、風呂気持ち良かった？

うん気持ち良かったよ。

あの顔、あの様子..理子からだな..

最近理子からの催促が激しくなっているから夫もたじたじになっているのが見ててわかる。

そうだ....良い事思いついた..
なるほど...
理子が望んでいるなら私が叶えてあげよう...

私の中の悪魔が微笑む...

時間は夜12時を越えた。
さぁいよいよ今日を迎えた。

たかちゃん先にもう寝るね。

あ～俺はもう少しテレビ見てから寝るよ。

おやすみ。

うん。おやすみ。

ベットに入り天井を見つめる。

朝から忙しくなりそう。

トイレに行き忘れていたので部屋を出た。

こっそりリビングを覗くと携帯を触っている。

ふふ...バ～カ。

トイレを済ませ再びベットに入り早々に睡眠態勢をとる。

当日になり沸々と湧き上がってくる興奮を抑えながらも眠りについた。

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食器を洗い片付けていく。

片付けが終わり部屋着と下着を持って脱衣所に向かった。

はぁ...
湯船につかると急に胸の鼓動が早くなりいよいよ明日がやってくる事への緊張感と、どうなるのかという不安感が私の体を支配した。

目を瞑り今までの半年間を思い返す。
夫にされてた事..辛く地獄のような日々。

復讐を止めようとは思った事はない..

明日は私が待ちわびた日..

この半年..準備の期間ではあったけど私の精神を安定させる為にも必要な日数だっと思う。

もしあの時すぐ言ってたら感情的になってろくな結果にならなかった...ような気がする。

何をするにも準備が必要...

昔からそういうとこが私にはあった。
今回もそうだ。

だから私なりに今回も準備をして決行する。

よし...大丈夫!

体をキレイに洗いお風呂から上がった。

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食べ終わるくらいに切り出す。

たかちゃん明日誕生日やね。
おめでとう。

俺ももう33才。
年取ったよな...
でもおめでとうは明日言うもんだろ？

笑いながら言う。

...そうやね。
何かほしい物ある？

ん～そうだなぁ。
特にこれといってないけど...
れなが良いと思える物買って!

そう？うんわかった。
明日プレゼントするね。
帰りは遅くなりそう？

どうかなぁ？
そんなに遅くならないと思うけど。

明日...ちょっと話しがあるから少しでも早く帰ってきてもらっていい？

えっ何？
今聞くよ。

いや明日話すから。

そう。わかった。
できるだけ早く帰るよ！

お願いね。

話しを終え後片付けを始めた。

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部屋の片付けをしていると、ほどなく夫が帰ってきた。

ただいま～。

おかえり。
今日もお疲れ様。

先にお風呂に入る？

あ～そうしようかな。

言葉少なげに脱衣所に入っていった。

その間ハンバーグを焼き始め、テーブルに料理を並べていく。

部屋に夕食の匂いが立ち込める。
家庭の匂い...

この光景と匂いも最後..
いろんな事が最後を迎える。

髪を拭きながら夫がリビングに戻ってきた。

あ～気持ち良かった。
今日はハンバーグなんやね。やった。
食べよ食べよ。

うん食べようね。

いただきます。

２人とも手を合わせ夕食を食べ始めた。

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家に帰り着きキッチンに食材を置いた。

よし!!
気合いを入れ夕飯の支度を始める。

何度も何度も作ったハンバーグ。

ボールの中で材料を入れよくこねる。

一緒に味噌汁、サラダ、もやしと鶏肉のピリ辛炒めを作った。

あとは夫が帰ってきて温めるだけ。

...最後の夕飯を作り上げた。

キッチンの汚れをキレイに拭いていく。

ここで食事を作った４年半。
このキッチンともお別れ..
今までありがとね..

そんな思いでキレイに拭きあげていった。

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家まで車を走らせそのまま帰るつもりだったけど、雑貨屋のガラス越しにキレイなステンドグラスのランプが目に入ったので少し寄ってみる事にした。

オレンジと黄色と赤の太陽のように鮮やかで美しいランプ..

その美しさに目を奪われしばし見入る。

値段を見ると約３万円。
普段なら絶対に買わない金額。

あまり物欲もない私なのに...なぜかそのランプが無性に気になりその場から離れられなくなっていた。

よし...買おう。
値はかなり張ったが後悔はない。

その太陽のようなランプが新居で明るく部屋を照らし私の心をきっと癒やしてくれる。
そう思えて仕方がなかった。

ランプを購入しそっと車の助手席に置いた。

早く部屋に飾ろうね。ランプにむかって独り言を言う。

車を走らせランプが落ちないように手で支え家に帰った。

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荷物をまとめ戸締まりをして家を出た。

車を走らせスーパーに寄った。
夕飯の材料を見て回る。

私が夫の為に作る最後の料理...
いつも美味しいと喜んで食べていたハンバーグを作ると決めていた。

挽き肉、卵、パン粉、玉ねぎ...

.....
こんな風に誰かの為に料理を作る事..
この先の人生..私にやってくるのだろうか..？

そんな事を考えながら食材をカゴに入れていく。

会計を済ませ荷物を積み車を再び走らせた。

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れな..
前も言ったけど俺はれなの幸せを心からずっと願ってる。

正直....明日１人で話し合いをさせるのは不安だから本当は誰かにいてほしい..

ただ、れなの考えや思いもあるだろうから話し合いが終わったら何時でもいいから電話してくれないか？

何があってもいいように仕事終わったら家の近くウロウロしてるから..

....
親と同じような事言ってる..
いや、それ以上...
そうか...
ひろきは親のような感覚なんだ。
なんだかたくさん心配かけちゃったな..

ひろき..いつも心配かけちゃってごめんね..

謝るなって。
辛い時はお互い助けあってきただろ!
いつだって俺を頼ってこいよ!

頼もしく心強い言葉。
ひろきがいつだって助けてくれるという安心感さえ感じていた。

ありがとね....


それから、話し合いが終わったら必ず連絡をするという約束をして電話を切った。

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帰り支度をしながらひろきからの電話を待つ。

20分過ぎたところで携帯が鳴った。
ひろきからだ。

もしもし。

れなごめん待たせたね。

ううん。
今大丈夫なの？

全然大丈夫!
で、どうした？

うん、ひろきに色々心配かけたけど、明日夫に離婚切り出すから伝えようと思って...

いよいよ言うのか..
付き添いたいところだけど、男の俺がいると逆にこじれそうだよな...

親か、誰か、付き添ってもらったりしないのか？

ん～親にも同じ事言われたけど私ひとりの方が今までの気持ちを言いやすいから。

そっか....
...でも話し合いの最中なんかあったら電話してこいよ！
すぐとんでいくから！

ありがとう..
......
ひろき..
私ね..ひろきがいてくれてほんとに良かった...
あの時の私は精神的に病んでておかしかった..
そんな私を励ましてくれて応援してくれて本当に感謝してるの..
ありがとう...

ひろきへの感謝の気持ちを復讐決行の前に伝えておきたかった..

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冷蔵庫からお茶を取り出しコップについで飲み干した。

元の場所に座り込み携帯を開く。

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

...ふぅ～...
.......

プルルプルル..
２回コールして電話に出た。

もしもし..
れなどうした!?

あっひろき。
い、今話ししても大丈夫..かな？

あ～ちょっ、ちょっと待ってよ。
こっちから掛け直してもいいか？

そうよね。
仕事中よね...
いきなり電話掛けてごめん。
またかけ直すよ。

いや、大丈夫大丈夫!
あと少しでキリがいいから。
30分くらい経ったらかけ直すから待ってて。

あっうん。待ってる。
ありがとう...

一度電話を切り携帯を手が届くところに置きかかってくるのを待った。

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...そう..明日やっと切り出すのね..

お父さんとお母さんも一緒に居たほうがいいんじゃない？

２人だと逆上して何されるかわからないでしょ!?

ん～気持ちは嬉しいけど、最後は私の気持ちをたくさん言いたいの...

内容が内容だからお父さんとお母さんに聞かれたくない事もあるし..

...大丈夫!感情的にならないように落ち着いて話すから。

逆上なんてさせないから!

れな...
お母さんもう心配で心配で..

お母さん...話し合いが終わったら必ず連絡するから!

...分かった...
れな、そのかわり話しが終わったら何時でもいいから電話して。
お父さんもお母さんも心配で眠れないから。

うん。必ず連絡する。

母親をなだめるように話しをして電話を切った。

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食器を洗い終わるとラグの上で横になりクッションを枕に少し眠る事にした。

疲れていたのかすぐに記憶がなくなり眠りについた。

.....
.....
.....

ん～今何時...？
なかなか開かない目で携帯を手探りで探し時間を確認する。

もう４時を過ぎていた。

私は携帯を見つめ...電話をかけた。

プルル..プルル..
数回コールして電話に出た。

はい、もしもし。

あっお母さん？
れなだけど...

れな！
元気してる？
あ～もうずっと心配してるのよ!?

声から悲痛な訴えが分かる...

ん、元気してるよ。

...お母さん。心配かけたけど明日...離婚切り出すから...

私は母親に明日の事を伝えた。

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あ～手がちぎれる。
やっとの思いで玄関まで着き荷物を置いた。

真っ赤になった手を軽くさすりひとつずつキッチンに運び片付けていった。

片付けが終わると持ってきたガラスクリーナーを窓に吹きかけキレイに拭きあげていく。

ホコリをはたき掃除機をかけ床を徹底的に拭いていった。

掃除が終わりイスに腰掛ける。

あ～お腹すいたな。

私は買ってきた食材と調味料でチャーハンを作った。

記念すべきこの家で初めて作った料理。

なかなか美味しいじゃん。

私は一気にチャーハンを食べ終えた。

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ガラスクリーナー、雑巾、ワックスなど掃除に使えそうな物を袋に詰め込み玄関に置いた。

身支度をして今日持って行く物がないかもう一度チャックする。

今日の夜まで夫にバレる訳にはいかないので、これ以上持って行ける物がなかった。

袋を持ち車まで持っていき新居に向け走らせた。

途中スーパーに寄り調味料、食材、洗剤、これからの生活に必要な物をたくさん購入した。

あ～重たい。
思わず声に出して言ってしまう。

今までは重い物は持ってもらったり、電球が切れた時は替えてもらったりしていたけど、これからは全部１人でしないとな。

甘えた事は言ってられない。

私は両手にぐっと力を入れ荷物を持ち車まで運び押し込んだ。

車を新居まで走らせ駐車場に止めた。

...ん～どうしよう..
この荷物を１回ですべて持って行くか、２回に分けて持っていくか...

１回で運ぶ事にした。
両手いっぱいに袋を引っ掛け車から下りる。

重たすぎて袋が食い込み手が真っ赤になる。

私は気合いを入れ一歩づつ歩き新居に向かった。

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朝食を食べ夫はすぐに支度を始めた。

相変わらずあっという間に支度を終えた夫が仕事に出かける。

いってらっしゃい。
今日も頑張ってね。

あ～いってきまーす。

バタン。

行ったか...

しばらくコーヒーを飲みながらソファでくつろぐ。

今日から４連休をもらっている。

事情を察してくれた部長が有給と公休を合わせて連休にしてくれた。

家を歩き回る。
明日持って行く物をひとつひとつチェックする。

クローゼットの中はほとんどなくなり、あとは今日の夜に着替える部屋着と下着くらいになっている。

掃除、洗濯を一通りしたあと新居に向かう準備を始めた。

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朝食を作り夫を起こす。

たかちゃん起きて。
もう朝よ。

ん～ねむい～。
ん～れな～抱っこして向こうまで連れていって～。

...子供みたいに甘えた声出して...

夫はきっと自信過剰になっているのだろう。

この半年は私が何でもかんでもしてあげて甘やかしてきたから、れなは俺の事好きで好きでたまらないんだろうって...

私はそれに答えるように

はいはい。
一緒に行きましょうね～たかしくん。

夫の甘えにつき合ってあげた。

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朝..

一度も目を覚ます事なく朝になっていた。

横でいびきが聞こえる。

夫がいつベットに来たのかも分からないほど熟睡をしていたようだ。

夫を見る...
そして天井を見つめる...

いよいよ...明日..

明後日になれば私はもうここにはいない。

部屋を見渡す。

ここでどのくらいの涙を流したかな..

ひとつの終わりが近づくと人間思いに更けるものなのだろう...

私は夫を起こさないようにベットから降り朝食の準備を始めた。

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夕食を食べ終え片付けをする。

夫は相変わらず手伝う事もなくビール片手につまみを口に運びながらテレビを見ている。

時折携帯を見てはおでこに手を持っていく仕草をしているのは、理子のメールをみて今度どうするか考えているのかもしれない...

私は片付けが終わりお風呂に入った。

湯船に浸かりながら、さっき見れなかった送信メール..夫は何て返信しているのだろう。

一瞬考えたが...今となってはどうでもいい事なのですぐに考えるのをやめた。

お風呂から上がり髪を乾かし寝支度をする。

今日は眠たくて瞼が重い。
ちょっと早いけどもう寝よう。

たかちゃん。
今日はなんだか疲れたから早めに寝るね。

あ～先寝とき。
おやすみ。

おやすみ。

ベットに入りゆっくり目を閉じた。

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ソファに座って笑っていると視界に夫の携帯が入ってくる。

...今日も夫の携帯を見る事にした。

受信メールを開きここ2～3日の理子からのメールを見る。

ね～今度いつ来る？

早く奥さんに別れを切り出してよ!

私が奥さん説得してあげようか!?

.....

ほんと..勝ち気な女。

何通もメールを送ってきているけどこんな内容が多くなっている。

夫はそれに対して何て返してるんだろう...

送信メールを開く。

ガチャっ!
浴室から音がなった。

私は慌てて携帯の画面を元の状態にし置いてあった場所に戻した。

テーブルに食事を運んだところで夫がリビングに入ってくる。

あ～気持ち良かった。

お風呂上がるの早かったね。
じゃ、食べようか。

食べよ食べよ。
いただきま～す。

危なかった...
内心ドキドキしながらも平常心を保ちいつも通りの自分を演じた。

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車を走らせ今の家に急いで帰る。

あ～もうちょっと早く出ればよかった。

マンションに帰り着き夫の駐車場を見ると車はなかった。

なんだ。まだ帰ってきてない。

小走りで家まで向かい中に入るとすぐさま夕食の支度を始めた。

今日は手っ取り早くできる親子丼と味噌汁とサラダ。

料理の合間をみて部屋着に着替え、バックや服をまとめる。

それから15分後夫が帰って来た。

ただいま～

おかえりー。
今日もお疲れ様。
ご飯温めるから先にお風呂入ったら？

あ～そうするよ。

そのまま脱衣所に向かい服を脱いでいる
バタン。
浴室に入った。

ふふ。ははは。
あ～ははは....

笑いが込み上げくる。

今日１日のバタバタ。
準備が整った新居。
こんな現状をな～んにも知らない夫。

それが可笑しくて可笑しくて笑わずにはいられなかった。

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ガチャっ
ただいま。

もちろん誰もいないけど何となく言ってみる。

廊下を抜け両手いっぱいに持った荷物をゆっくり置いた。

あ～重たかった～
疲れた～

ちょっと休憩したいところではあるけど時間を考えると余裕はない。

あと30分くらいで帰らないと。

急いで片付けを始めた。

服をクローゼットに掛け、買ってきた食器を洗い水切りに置いた。

部屋の中を見渡す。今日からでも住めるくらい物は揃った。

あ～もう来週の今頃はここで暮らしてるんだな。

自分の趣味、好みの物が揃った部屋は居心地が良くうきうきする。

あっもう帰らないと!
もうここに着いて30分は過ぎていた。

バックを持ち急いで家を出た。

• 共感1

今日は仕事が少し早く終わった。

いつもならみんなと一緒に職場を出るけど...

みんなお疲れ様。
今日はちょっと寄るところがあるから先に帰らせてもらうね。

あっは～い。お疲れ様でした。

私は小走りで車まで向かい乗り込んだ。

最初の予定は新居に荷物を運ぶだけって思っていたけど、思いのほか早く終わったから雑貨屋に寄る事にした。

15分後雑貨屋に着き店内を歩き回る。

そこでマグカップやお皿、クッション、などを買い、朝家から持ってきた荷物と一緒に新居まで運んだ。

• 共感1

車に乗り込み職場に向かう。

与田さんおはようございます。

おはよう。

.....なんか私の方が与田さんって言われるの変な感じがするよ。

そうですかぁ？
私達はもうだいぶ慣れてあまり違和感なんてないですよ。

ほんとに～？

みんなで笑いあい
ひと時の会話を楽しむ。

さっじゃあミーティング始めようかね。
みんな集まって。

は～い。

こうして１日の業務が始まった。

職場では名前が変わる以外支障がないからほんと助かる...
つくづく思いながら今日１日の仕事をしっかりこなした。

• 共感0

朝食を食べあっという間に準備をすませた。

れな行ってくるね。

キスをする。

うん行ってらっしゃい。
頑張ってね。


夫を見送った。

自分の支度を始める。
今日も新居に運べるだけの荷物を持つ。

仕事帰りに持って行く為だ。

殺風景だった部屋は荷物が入るたび彩りを増していき、オレンジを基調とした明るい空間になっていく。

気持ちが少しでも前向きになるように明るく温もりのある色にしたかったからだ。

• 共感0

私は清々しい気持ちで朝を迎えた。

苦痛だったセックスからやっと解放された。

あと副作用で辛かったピルからももうすぐ解放される。

念の為あと数日飲むけど、長かった半年を考えると数日なんて何の苦でもない。

あの脱力感、たまにくる吐き気、副作用にも随分耐えたよな...

そんな事を思いながら朝食を作り夫を起こした。

おはよう。

ん～..れなおはよう。
ん～眠い～ん～ん～

...寝ぼけてるな...
前まではそれが可愛いって思っていたけど今となっては何とも思わない..
いやむしろイラッとする。

さっ起きて!
早く食べないと仕事遅れるよ。

夫をせかして朝食を食べさせた。

• 共感0

れな..あ～あ～
気持ち良い..
あっもうイク!イ..ク
うっ

私の中にはき出した。

夫は疲れたのか仰向けになり荒く呼吸をしている。

しばらくして歯を磨きベットに移動して眠りに着いた。

...日常のひとつひとつが終わりを告げていく。

夫は何も知らない。

復讐の日まであと５日...

ついにここまできた。

長く苦しい半年だった。

...私は静かに目を閉じ眠りについた...

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夫は無言で私の服を上までめくり上げ乳首に吸い付いた。

そうしている時でもあっという間にすべての服を脱ぎ捨て私の体にまとわりつく。

服も下着も脱がされお互い裸になった。

れな...気持ちいい？

...うん気持ち良いよ。

体中に舌を這わせる。

ん、あぁ、あ～

精一杯演技をした。
不倫をしだして２年何度もセックスをしたがよくも平然と私を抱けるものだ...

あ～気持ちいい..
れな入れていい？

うん入れて。

入れるよ。ん～あ～気持ちいい。

勢いよく何度も腰を突き上げる。

夫とのセックスも今日で最後になるだろう...

もう一生する事はない。

知るはずないよね..

私は最後まで演技を続けた。

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夕食を食べ終え片付けをしてお風呂に入った。

湯船に入り肩まで全部浸かる...

夫は元々あんまり家事をしない人だったけど、この半年は私がすべてをしていたから何ひとつしなくなっていた。

服さえ脱ぎっぱなしで家ではほとんど動かない。

完全共働きなのに、不倫までしておいて、思えば随分調子にのってるよな..

湯船から出て髪、体を洗いお風呂から出た。

冷たい麦茶を勢いよく飲み、２人でしばしテレビを見てくつろいだ。

時計を見るともうすぐ11時になろうとしている。そろそろ歯を磨こうかな。

そう思っている時、夫の手が私の服の中に入り胸を触ってきた...

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携帯を閉じ同じ場所に戻し夕食の仕上げをした。

テーブルに料理を並べている時お風呂からあがった夫が座る。

おっ今日はハンバーグか。うまそう✨

いっただきま～す✨

...私の手料理が食べられるのもあと数日。
何も知らない夫はこの当たり前の日常が一生続くって思っているはず。

人生そう思い通りにならないからね...

れな今日のハンバーグもうまい!

ほんと。良かった。
たくさん食べてね。

この先...一生味わえない私の手料理をせいぜい堪能してちょうだいね。

心の中で呟いた。

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メールボックスを確認する。

...メール受信と送信の割合が全然あっていない。

理子が３通メールを送ってきているのに対して夫は１通しか返信をしていない。

夫のメール内容も前に見た時より絵文字も少なくなってるし文自体短い。

ふ～ん。
これはますます太田さんの言った通り。

自然消滅でも狙っているような感じさえ受け取れる。

そして何事もなかったように家庭に戻るってか...

それで理子が納得するって思っているのか？
私と別れさせてまで結婚したいと思っている女がそれで引き下がると思っているのか？

...ほんとにバカな男...

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家に帰りソファに深く腰掛けた。

はぁぁ...

大きく溜め息をつく。

やるべき事はしたかな...

親への報告..会社への報告..新居..不倫の証拠..

離婚したらカードや免許証、保険証などの名義もかえないと..

あ～する事が多くて面倒くさい..

そんな事を考えながら腰を上げ夕食の準備を始めた。

ちょうど出来上がるくらいに夫が帰ってきた。

ただいま。

おかえりー。
あと少しでできるけど先お風呂入る？

あ～そうする。

夫がお風呂に入っている間に下着、部屋着を用意して置いた。

そして...念の為...

夫の携帯を開き吉田理子のアドレスと番号を私の携帯に登録した...

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木村さんが与田さんになるのはなんだか不思議だけど慣れたら全然大丈夫ですよ。

今からみんなで与田さんっていう練習しとこうか!

あ～そうやね!
いいかも。

顔を見合わせみんな頷いている。

木村さ..いや与田さんは与田さんだし私達の関係は何も変わらないですよ!

.....みんな...ありがとね。

....聞いちゃっていいですか？
離婚する理由ってなんだったんです？

そうね～性格の不一致とすれ違いかな？
お互い仕事してるし、子供もいなかったから別れる方向になったのかも...

理由については嘘をついた。あえて重い内容を話す必要もない。

そっかぁ。
与田さんには仕事があるし私達もいるから元気出してくださいね!

ありがとう
笑顔で返した。

ここにいるみんな素直で良い子だと思う。

でも裏ではなんて思っているんだろう。
陰でコソコソ言うかもしれない。

私は人を信じる心を無くしてしまったから...そんな醜い考えしかできなくなっていた...

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それから仕事に戻り業務をこなした。

もうすぐお昼休み。

...みんな昼休みを取る前にちょっと話しがあるんだけど集まってもらっていい？

は～い。

仕事仲間７人が集まった。

集まってもらってごめんなさい。
私事なんだけど...
近々離婚して名前が旧姓の与田に戻る事になると思います..

名前が変わって呼びにくいかもしれないけどこれからもよろしくお願いします。

みんなに頭を下げる。

第一声はなんて言われるのか...
なんて思われるのか...
なかなか顔があげられない。

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住む場所はどうするの？

それはもう職場近くのマンションを借りました。

その後部長と今の現状をある程度話し今後の仕事に関しても話し合った。

話しが済んだあと

何か困った事があったらなんでも相談してきなさいね!

すみません..
ありがとうございます...

何謝ってんの！もう8年の付き合いじゃない。
こんな時こそ私を頼ってきなさい!

目頭が熱くなる。

ありがとうございます。
震えそうな声でもう一度お礼を言った。

部長はとてもキビキビしていてまさにキャリアウーマンといった感じだ。
頼りがいがあり信頼も厚い。

怒るとかなり怖いけど普段は優しい。

この8年何度も何度も助けられた。
今回も部長は温かく私を包み込んでくれた。

...部長！私これからも仕事頑張ります!
だから今後ともどうぞよろしくお願いします!

これからも期待してるから頑張りなさいね。

私の背中をトントンと叩きエールを送ってくれた。

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人がいない会議室に入り私をイスに座らせた。

一度出ていった部長は数分後両手にコーヒーを持ちひとつを私に差し出した。

ありがとうございます。
コーヒーをひと口飲む。

で？話ってなに？

...実は夫と別れる事になるかと思います。
話しがまとまれば旧姓に戻るから前もってお伝えしておこうかと思いまして...

なるほどね～
....まぁ結婚って他人同士が一緒になるわけだから合わない事もあるわよね...

そういう私もバツイチだし。

部長が少し笑う。

部長は原因がなんなのか聞いてくる事はなかった。
離婚経験があるからか私の気持ちを察知してあえて聞いてこなかったのかもしれない..

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数日後..

木村さんおはようございます。

おはよう。

おはようございます。

おはよう。

いつも通りみんなと朝の挨拶を交わす。

木村さん。後で書類に目を通してもらっていいですか？

わかった。後で見るからそこに置いてて。

は～い。

何も変わらない職場の日常。
あ～みんななんて言うかな...
気が重い。胃が痛くなってきた...

でもいつかは言わないといけない事...

まずは上司に報告しないとな...

ゆっくり部長に近づいていく。

部長ちょっとお話しがあるんですが...

ん？どうした？

あの....

私の表情を察知して

あっちで話そうかね。

場所を移動してくれた。

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それから時間の合間をみては洋服の整理をして新居に運んだ。

夫が私のクローゼットを見る事なんてないから服がなくなっているなんて気付くはずもない。

生活に必要な食器やテーブル、家電はバレない程度に家から持っていき、足りない物は買い足して少しずつ生活できる環境を整えていった。

徐々に形にはなってきたけど私にはもうひとつしなければいけない事があった。

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不動産屋に戻り契約書に必要事項を記入した。

保証人はお決まりですか？

はい。親にお願いして書いてもらいました。
名前と印鑑を押した用紙を渡した。

今はほとんど親が保証人なんですよ。
こんなご時世ですからなかなか保証人になってくれる人が少ないですからね。

会話をしながらも手際良く事を進めていく。

ところで敷金、礼金のお支払はいかがいたしましょうか？

今日すべて支払います。

今の内に出費はできるだけ払って、１人で暮らしだした時に負担がかからないようにと考えていた。

支払いを済ませ入居日は１週間後に決まった。

これから少しずつ荷物を新居に移していく。

忙しくなりそうだ...

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着きましたよ。
ここになります。

えっここですか？

思っていた以上に綺麗だった。間取りしか見てなかったけど築15年経ってるマンションだったからもっと見た目古いのかと思ってた。

このマンションは最近リフォームしたんですよ。
内装も外壁もしていますから築15年とは思えないでしょ。

リフォームか...
今の私にピッタリ..

その後部屋の中まで見せてもらった。
１人で住むのに十分な広さ。
職場からも近い。

ここが気に入った!

あの私ここに決めます。

ありがとうございます。この物件はほんとお得ですよ。
木村さんラッキーでしたね。

そうですね✨私ラッキーですね!

和気あいあいと会話をしつつ来た道を走らせ不動産屋に戻った。

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太田さんに深々と頭を下げ事務所を後にした。

その後車を走らせ不動産屋に向かった。

こんにちは。
先日伺った木村と申します。

あっこんにちは。
どうぞこちらにお掛けください。

私はバックから前に貰った間取りのコピーを取り出し

ここに決めたいと思うのですが実際見せていただく事はできますか？

ちょっとお待ちくださいね。確認してきます。

奥に入り数分後
はい。大丈夫でした。今からでも行けますがどうします？

ほんとですか。
じゃあ今からお願いします。

自分の車はそのままにして不動産屋の車の助手席に座り車を走らせた。

物件に着くまでその家の情報や近くに何があるかなどを話した。
20分後キレイなマンションの前に車が止まった。

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男は遊びでも女はそう簡単に割り切った付き合いはできない。

理子は夫が既婚である事を知っている。なのに私との離婚を迫っている。

ひとつの家庭を壊しその上で幸せになりたいと考える...同じ女として私には理解ができない...

夫はバレない事が優しさ、不倫をする上でのルールなんて思っているのだろう

不倫する男も女も自分の事しか考えられない心が欠如した勝手な人間だ...


木村さん？木村さん？

あっはい。
ごめんなさい。ちょっと考え事してたらボーっとしちゃって。

...太田さん。
今まで本当にありがとうございました。

私この半年で随分強くなれたと思います。

太田さんが言ってくれた言葉ひとつひとつを心に刻み、これからしっかり新しい人生を歩んで行きます!

太田さんは微笑みながら私を見つめ頑張ってくださいねとエールを送ってくれた。

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ありがとうございました。

写真を受け取りバックに入れた。

あと吉田理子についてですが調べた事お伝えしますね。

どうやら吉田理子はご主人との結婚を望んでいるようです。
もうすぐ30歳になり焦っている部分もあるかもしれないですね...

元々勝ち気で我を通す性格のようですからご主人にれなさんとの離婚を迫っているみたいですよ...

ご主人がなんて言ってるかは分かりませんが、うまく交わしているのでしょうね。

先ほど見せた写真に手を繋いでいるのやキスしているのが何枚もありましたが、手を繋ぐのもキスするのもすべて理子からなんです。

これは私の憶測なんですがご主人はそろそろ潮時って思っているんじゃないですかね？

何となく２人を見ててそう感じたんです。

離婚の意志があるならここまでれなさんに隠さないと思うんですよね...

最初は不倫のスリルもあって快楽だけを楽しんできたけど、今はその時と状況が変わって理子の存在が重たくなってるかもしれないですね..

...そうか..太田さんの言う通りかも..

心でそう呟き無言で数回頷いた。

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それから４時間家から出てくる事はありませんでした。

その後家を出て車に乗り、近くのショッピングモールに行きました。

２時間ほど雑貨や服など見てまわり、パン屋でいくつかパンを買って車に戻りました。

いつものようにテーブルに写真を並べる。

手を絡めあっている写真が何枚もある。

もう見慣れた...

太田さんが続ける。

海沿いを走らせ途中道路の端に車を止め海の景色を眺めながら先ほど買ったパンを食べていました。

並べる写真を見る。
笑顔の２人...キスをしている写真...

もう見飽きたって..

その後は吉田理子をマンションに送り自宅に帰って行きました。

以上報告です。

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木村さんお待ちしていました。

どうぞコーヒー飲まれてください。

私はひと口コーヒーを飲み太田さんに言う。

調査結果をお願いします。

はい。分かりました。

ファイルを開きそれを見ながら話し出す。

今回も前回と同じように木村さんが出勤してからなんですが、ご主人は１時間後くらいに家を出ました。

車に乗り近くのコンビニで飲み物、おにぎりやパンなどいくつか買い...その後吉田理子のマンションに着き入っていきました....

私の顔をチラッと見る。

もう顔色ひとつ変える事はない。

太田さんは安心したのか話しを続ける。

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数日後...

今日は調査結果を聞きに行く日。

この半年何度も夫が理子のところに行くのを何も言わず見てきた...

最近は半分麻痺もしていたのか、最初の頃に比べると怒りや苦しみもだいぶ感じなくなっていた。

車に乗り前と同じ道を走り、同じ駐車場に止め事務所に向かう。

今日で来るの最後になるかな...

そんな事を考えながらドアを開け中に入る。

こんにちは。
木村です。

木村さんこんにちは。
どうぞ前と同じ席に掛けてお待ちください。

はい。

太田さんも私も慣れた感じだ。

イスに座り待っているとほどなくコーヒーを持った太田さんが部屋に入ってきた。

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帰りの車の中。

両親に申し訳ないと思いながらもやっとここまで話しが進んだ事に安堵の気持ちもあった..

もうあとは前に向かって突き進むだけ。

家に帰って夕飯の支度をしなくては。
制限速度を少しオーバーしながら急いで帰った。

家に着き手際良く食事を作る。
合間に洗濯物をたたみ、部屋の掃除をし、モップをかける。

時間があっという間に過ぎていった。

ピンポーン
ガチャっ
夫が帰ってきた...

ただいま～。

お帰りなさい。
今日もお疲れ様✨

ご飯食べる？先にお風呂入る？

あ～先に風呂入ろっかな。

下着と部屋着カゴの中に入れておくね。

は～い。
じゃあ入ってくる。

何事もなかったように振る舞う。

今日私がどんな１日を過ごしたかなんて知るよしもないだろう...

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...分かった...そのかわり何かあった時は必ず報告してこい!

母親も横で頷いている。

ありがとう..ちゃんと報告する。
私は大丈夫だから!お父さんとお母さんがいてくれて心強いから!

２人共うっすら涙を浮かべている...

はぁ...私親不孝だな...60近い両親にこんな思いをさせて...

お父さんお母さんもう一つお願いがあるの...

なに？

別れたら私家を出るから新しく住むところの保証人になってほしいの。

保証人？

うん、家借りる時は必ず保証人が必要だから。

そっか..もうそこまで現実的な話しなんだな...

うん...
私は契約書を渡した。

どこに書けばいい？

下のところ。ハンコもお願いね。

ありがとう...

２人にお礼を言い帰り支度を始めた。

夕方になり空が薄暗くなっている。

玄関まで見送ってくれた。

れな...無理するなよ..何かあったらすぐ連絡してくるんだぞ!

ありがとう....こんな思いさせて本当にごめんね..

何言ってんの!?辛い時はいつでも帰ってきなさい!

うん..ありがとう...

私は車に乗り実家をあとにした。

角を曲がるまで両親はずっと見ている。

切なすぎてまた涙が頬を濡らした...

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...２人にお願いがあるの...

終止符は私に打たせてほしい..

今色々準備してるの。
あの男に不倫を気付いているって言ってないのは私なりに考えがあるから...

だからあと少しこのまま見守っててほしい。

もし今お父さんとお母さんが行動に出てしまったら、私の今までの準備が無駄になってしまう。

だからあと少し私を見守って..お願い..

れな...
何をしようとしてるの？

何をするにしても何かと証拠が必要でしょ？
証拠がないと跳ね返されてしまうから..

２人はなるほど..と納得した様子だ。

証拠なんてとっくに揃ってる。両親に今動かれたらすべてが水の泡だからそう言って２人を諭した。

２人共約束して..
今は絶対行動を起こさないで...

私の未来の為にも今は動かないで..ね...

何度も念押しをした。

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れな...
お父さんもお母さんもあまりに急な事で気持ちがついていっていない...

ただれなの幸せだけを今までもこれからも願っている...

だかられなが考えて選んだ道ならそれを信じて歩んでもらいたいってお父さんは思っている...

お母さんはどうだ？

れなをあんな男に返してたまるものですか!?
私もれなには新しい人生を歩んでもらいたい!

でもあの男だけは許さない!!
２年もれなを騙し他の女と不倫していたなんて!!

だってそうでしょっ!!
例えば家の事何もしないとか金遣いが荒いとか、何か問題があるなら100歩譲って言い分を聞くけど、れなはすべてを頑張って仕事しながらこなしてたのよ!!

そんなれなを裏切るなんて...
人としてクズじゃないの!!!

そうだな!!
母さんの言う通りだ!!

れな!あの男と相手の女を訴えて慰謝料をたっぷり請求するぞ!!!

２人共再び感情が高ぶっていた。

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聞いて...
私はもう一度自分の人生をやり直したいって思ってる..

このまま夫婦を続けても私の気持ちはもうあの人からなくなってるし、新しい人生を歩むなら少しでも早い方がいいと思うの...

お父さん..お母さん...ごめん..ごめんね...

こんな事になってごめん...

どうしてれなが謝るの..仕事も家の事も頑張ってた...れ..なが...

母親は横で泣いている。

父親も悔しそうに拳を固く固く握っている。


口に出しては言わないけど２人は孫をいつ抱けるか待ち望んでいたと思う...

それが娘がこんな状況になって孫を抱くという願いも夢のまた夢にしてしまった...

しばしの無言が続く。

きっと両親は私の今後の人生の心配と、夫への憎しみの気持ちを膨らませているのだろう...

私はただただ２人に心の中で何度も何度も謝った...

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私の大声でビックリしたのか２人共一瞬で静まる。

お父さんもお母さんもまずは私の話す事を聞いて....お願い...

２人はソファに戻り座った。

...私ね、さっきも言ったけど不倫がわかってからの半年ずっと苦しんできたの...

この半年すごく努力した。今までも仕事しながら家の事すべてこなしてきたけど、それ以上に頑張ってきた...

あの人が居心地が良いように常に気を配って生活してた...

そうしたら戻ってくるかと思って...

泣きながら話す。
多少の嘘をつきながら...

不倫がわかってから戻ってほしいなんて微塵も思ってはいない..


でも不倫をやめる事はなかった..の...

あの人は私が気付いている事を知らないし、私もまだ言ってないし...

れな..どうして問い詰めないんだ...
どうしてれながこんな目に..

父親が悲痛な声で私に訴える。

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...不倫してるの...

？？えっ？？？
なん...て...？？

自然と目に涙がたまる。
これは悔し涙...こんな事を親に言わないといけない悔し涙...

２年くらい前からあの人不倫してるの..

私半年前まで全然気がつかなくて...それが分かってからもずっと耐えてきたの...

れな...じゃあさっきはなんでその事言わなかったの!?

だって心配かけたくなかったし、お父さんとお母さんにそんな事言えな...い...でしょ...

声がひっくひっくなる...


...間違いないのか？..

探偵雇ってすべて調べたから...

...あの野郎..
そんな奴だったのか!!!?
今すぐ電話してここに連れてこい!?

いや俺が仕事場まで怒鳴り込んでやる!!

今にも家を飛び出しそうな勢いの父親とそれをオロオロしながら止めようとする母親...

私は大声で
お願い私の話しを聞いて!!!
と叫んだ。

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れなどうして...何かあったの!?

別れるってなんでだ!?

２人は目を見開いて私に責めよる。

４年一緒に暮らしたけど根本的な性格が会わないって思ったの。
子供もいないし別れるなら今かと思って。

私は嘘をついた。
親に不倫されてるなんて事言いたくなかったから...


何甘えた事言ってるんだ!!性格が合わない。じゃぁ別れるっておかしいだろ!!

性格が違うのは当たり前の事!!それをお互い理解しながら絆を深めていくのが夫婦だろ!!

お前達は何を考えているんだ!!!

怒鳴り散らす。

母親は眉間にシワを寄せ横で頷いている。

父親はヒートアップしさらに私を追い詰める。

私は怒鳴られながらも思う。普段仲の良い親子。なんで私がこんな目にあっているのか？

こんなに怒鳴る父親見た事あったかな？

そして

今日の夜仕事終わってからでもたかし君をここへ呼べ!!!

そうか..結局はそうなるよな...

もう隠すのはやめよう...
私の親なら分かってくれるはず...

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おっれなおかえり！何か飲むか？

ただいま...
そうやね、コーヒー飲ませて。

父親は気さくな人で娘の私から見ても茶目っ気のある人だなと思う。

ソファから立ち上がり、キッチンから３人分のコーヒーを持ってきてまた同じ場所に座った。

母親はお菓子を持って来て座った。

しばし３人でコーヒーを飲みながらまったりとした時間を過ごす。

で話しって何なの？

母親はコーヒーを飲みながら、父親はせんべいを食べながら私の言葉を待っている。

あ..の～...たかちゃんと別れようと思って...

２人の動きがピタッと止まった。

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数日後...

もしもしお母さん。
今から家出るね。
昨日も言ったけど話しがあるからお父さんと家で待ってて。

今から実家に向かう。

あ～気が重い。わかってくれるだろうか...

感情的にならなければいいけど..

そんな事を考えてるうちに実家に着く。

.....ピンポーン
ガチャ

あら、れな早かったわね。ねぇ電話で言ってた話しって何なの？

いつもの調子で母親が話しかけてくる。

いや、家にあがって話すよ。お父さんは？

２階にいるんじゃない？

お父さ～ん、お父さ～ん、れなが来たから降りてきて～。

母親が２階に向かって叫んだ。

すぐに父親も降りてきてリビングのソファに座った。

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あのう...

はい？

私結婚してるんですが近々家を出る予定なんです。

結婚後も仕事はずっとしているので収入は安定していますが家を借りる事はできますか？

そうですか。家はお貸しする事はできるのですが、保証人が必要になります。

それは家を借りる方皆さんに言える事ですが。

わかりました。次決める時までに保証人の承諾をもらってきます。

私は不動産屋を出て車に乗った。

保証人か...
そうよね..当たり前だよね...

もう...親にも言う時期か...

なんて言おうか..

帰りの車内その事ばかり考えながら家路に着いた。

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事務所を出た後、次は不動産屋に向かった。

今住んでいる所は夫の会社指定のマンションで家賃補助が出ている。

私が出て行くのが手っ取り早い。

それに４年一緒に暮らした家だけど、今となっては別に愛着もない。
むしろ心機一転新しい家で自分の人生をやり直したいと思っている。

不動産屋に着き中に入る。

すみません。
賃貸物件を見せてほしいのですが..

はーい。どうぞこちらにお座りください。

どんな物件をお探しですか？

１人暮らしなので１LDKか１DKを探してます。

場所とか条件、家賃の希望があれば言ってください。

私は第一に職場に近い事を条件にいくつか希望を言った。

３ヶ所条件にあった家が見つかり間取りをコピーした紙を受け取った。

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また前と同じように２人に頭を下げ部屋を出ようとした時太田さんが

木村さん。
木村さんはとってもお強い方ですね。
この前帰る時はとてもか弱い感じで大丈夫かなって心配しましたが、今の木村さんは凛としてかっこいいですよ！

ありがとうございます。良い意味で私は吹っ切れました。
あと少しですべてから解放されます。
それは２人のお陰でもあります。
一週間後またおじゃまします。
それまでもう少しお付き合いください。

私は２人に微笑み事務所を後にした。

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実は夫にはまだ何も言ってないんです。

まぁそれは私なりの考えもあっての事ですが...

今回の相談というのがもう１日調査をお願いしたいんです。

日にちはちょっと急ですが３日後なんですけど大丈夫ですかね？

えぇそれは全然大丈夫です。こちらで調整します。その日は...例の木村さんが仕事でご主人が休みの日ですか？

よく覚えていましたね!その通りです。
前にお願いしたのが随分前なので一応最近のも証拠として残しておきたいんですよ。

なるほどですね。
分かりました。必ず証拠は押さえます。

...木村さん、大きなお世話かもしれませんが吉田理子についてもう少し調べてみましょうか？

あっそうですね。分かる範囲でお願いします。

分かりました。私達に任せてください!

２人共心強く感じた。

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ここにくるのは３回目...夫の不貞を暴いてくれた場所..

私は前と同じ場所に車を止めエレベーターに乗り事務所の前に着く。

ドアを開け

こんにちわ。昨日電話した木村と申します。

私に気付いた女性２人が歩み寄る。

太田さん、阪東さんお久しぶりです。
覚えていますか？

木村さん!もちろん覚えています。どうぞどうぞ奥の部屋へ。

前と同じ部屋に通された。

コーヒーを出してくれて２人が私の前に座る。

木村さん。お元気にしていましたか？あれから..その後どうなったかずっと気になっていたんですよ。

２人共私を心配そうな顔で見つめる。

えぇ精神的に色々ありました。正直自分を保つ事も出来ないくらい病んだりもしましたが今はもう大丈夫ですよ!

私の言葉で２人に笑みがこぼれる。

木村さんは私達が今まで担当した中でも強く印象に残る方でしたからね。

...ご主人とは...どうなりました..か？

今回はその事で相談に来ました。

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その日からの私は今まで以上に夫に尽くした。

家はいつもキレイにした。
私自身も身なりに気を配り料理も手を抜く事なく毎日作った。

セックスの時はさすがに蹴飛ばしたい衝動にかられたが、あと少しの我慢と自分に言い聞かせ、喘ぎ声まで出し演技で夫を喜ばせた。

義理親のところにも頻繁に行き、２人の話しを楽しく聞く事に徹底した。

ひろきは一週間に１回ペースで励ましの電話をくれた。

気分が落ちそうな時もあったけどひろきの言葉を思い出し頑張る事ができた...

そして月日は流れ...

復讐の日まであと１ヶ月...

やっとここまできた..

前向きに生きると決めたがそれはそれ..
これはこれ....

自分のけじめの為にもきっちり実行はする..

せいぜい今の生活を満喫してちょうだい...たかちゃん

１ヶ月を切ったこの時期私はある場所に向かった。

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私は孤独だと勝手に思い込み辛い状況を自らつくりだしていた。

私には大事にしてくれる両親がいる。友達もいる。職場にも仲間がいる。

居場所はちゃんとあった。
しっかり前を向いて生きていこう。

今までは暗い未来しか想像できなかったけど、今からは自分自身の未来を明るくなるように作り上げていこうと思った。

ひろきが家まで送ってくれた。

今日は本当にありがとう..
ひろきに話しを聞いてもらえて良かった。たくさん取り乱してごめんね。

いいよいいよ。
もう謝んなって!
感情的になったれなもなかなか新鮮だったし。

笑いながら言う。

多分その時の私の顔は真っ赤だったに違いない。

改めてお礼を言い車を降りようとした時ひろきが私の頭をポンポンと叩き頑張れ!と親指を立てた。

うん頑張る!
私も親指を立て車を降りた。

走り去る車を見送り空を見上げる。

綺麗な夕焼け。真っ赤に染まった空は本当に美しく見とれてしまう。
この景色を覚えておこう...

自分が前向きになれた日

私はしっかりとした足取りで家に帰った。

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さっきはれなの気持ちも考えず質問攻めみたいになってごめん...

俺の方が感情が上がってしまって..


ひろきが謝る事なんてない!!!
ごめんひろきほんとごめん!!!
わた..しひどい事言って...

涙がまた溢れ出す..

もういいって事..
気にすんなって!
１人思い悩んでで辛かったな...
れなにはれなの考えがあるようだから俺はそれを見守る。

だから孤独とか言わず辛い事があったらいつでも相談してほしい。

...ありがとう...
.....ありがとう...

ひろきはとても出来た人だった...

私は自分に余裕がなく八つ当たりまでして最低な人間だ..

自分のちっぽけさを改めて認識する..


不本意ながらひろきに感情を爆発させてしまったけど..私を優しく包んでくれた...

大丈夫。
私はもう自分を見失ったりしない!

真っ暗な心の闇に強い光が差し込むのを感じた。

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れな、今色々言った事後悔してる顔してるなぁ～。
嫌われたって思ったか？
.....

俺は何を言われても嫌いになんてならないよ。
ましてやこんなとこで降ろさね～し

少し笑いながら言った。
.....

...なぁ覚えてるか？俺の弟が亡くなった時の事..

あの時弟を助けられなかった自分を責めて苦しんだ。

...その後の親の傷つきようは酷くて俺を責める事はなかったけど...なんで弟を助けられなかった？って目が言ってたよ...

いや...俺の被害妄想だったかもしれない..

あの時周りみんなが陰で俺を責めてる..俺が死ねば良かったって思ってるんだって追い詰められてた...

今だから言えるけど死のうって思った事もあったんだ...

!!!?
私は思わずひろきの顔を見る...

....でもれなが...毎日のように慰め励ましてくれたじゃないか..

俺が１人で落ち込まないよう毎日毎日家に来たり電話もしてくれただろ!!

俺が今こうしていれるのはれながいてくれたから..

れなに何かあった時は全力で助けたいってその時からずっと思ってた...

だからちゃんと幸せでいるか確認する為に定期的に電話していたんだ...


...ひろき......

• 共感0

ごめん..ひろきごめん...
ここで降ろして...

震える声で私は言った..

ひろきは私を心配して話しを聞いてくれたのに...ひどい八つ当たり...

れな...

ひろきが口を開く..
私は何て言われるのか怖くて体がビクッとなる...

お前最低だな
くずだな
もう関係ない
一生連絡しない

そう言われても仕方ない...自業自得....

私は顔を上げる事なく目をぐっと瞑りひろきの言葉を受け入れる準備をした...

• 共感0

半分発狂に近い状態だった..

ひろきはなだめようと思ったのか手をギュッと握り私を引き寄せ抱きしめた..

普通だったらはっと我に返る？とか恋に堕ちる？とかなるのだろうか？

私は真逆だった....

ひろきを力いっぱい突き放す..

異性が抱きあう姿...
夫と理子が車の中で抱き合っている写真...脳裏に浮かぶ..

それが状況は全然違うのに重なってしまった..

なんのつもり!!
何してんのよ!!
私が結婚してからもずっと連絡してきて!!
何!!こんな日がくるの狙ってたの!!
私を抱きたいとでも思ってるの!?
男はみんなそう!!
ひろきもそうでしょ!?
今からホテルに行って私を抱けばいいじゃない!

......
散々暴言は吐きやっと我に返る....
....私バカだ..ほんとバカ...

暴走した自分を止められなかった...
...心が..泣いている..こんな事を言う自分を恥じて...

目から大粒の涙がぽたぽた落ちる..

もうひろきの顔見られない...
私は助手席で小さくなりうつむいたまま顔を手で覆う...

.....大事な友達まで失った...

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ひろきは私の話しをずっと聞いてくれた...

ある程度話し終わったところでひろきは

今後どうするんだ？
話し合わないとな!!
なんでそこまで分かってて旦那に言わないんだ？
訴えるのか？
れなはどうしたいんだ？

私は質問攻めにされる。心配してくれている..分かってる..

でもなんだか私が責められているような感覚に陥る...


...る.さい..うるさい!!
なんでそんなに責めたてるの!!!
もう分かってる!
私なりに考えはあるの!!そんな風に私を責めないで!!!

ひろき私の結婚式の時言ったよね!?
たかしさんとなら、れなは必ず幸せになれるって!
なってないじゃない!!
私今不幸のどん底よ!!
男はすぐに嘘をつく!!ひろきだって嘘つきよ!!!

もう止まらない..
完全に八つ当たり..
脱線し暴走した私はさらに暴言を吐く..

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ひとつ、ひとつ言葉に出して話すとだんだんと感情が高ぶってくる...

今まで自分１人で考え処理してきた事..

それを口に出し人に話す事でなんだか少しだけ自分を解放できた気持ちになった..

ただ話していくうちに改めて夫の卑劣さを認識しあの時の感情もいっしょに蘇ってくる...

気付けば私は泣きじゃくりながらそれをひろきにぶつけていた...

裏切り、苛立ち、孤独、辛い色んな思いが交錯し抑えに抑えていた私の心の闇が数分後...大きく脱線しここで爆発をする事になる....

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...それがさぁ夫が不倫してて～笑えるでしょ～

あえて明るく言った...

今まで笑っていたひろきから一瞬にして笑顔が消えたのが分かった。

私は少しうつむきながら続けた..

相手とは1年半以上付き合ってるみたい。今も続いてるんだけど...

......
.....
なんでそれが分かった？
......
はは...メール見ちゃった..

...本当に確実なのか？

...実は探偵社にお願いして調査までしてもらったんよ..

私はメール見て発覚から調査結果までをひろきに話した。

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昔話で盛り上がる。

そうそう!
あの時のひろきめちゃめちゃ面白かった!
あはははは

そんな笑う事ないだろ!

もうおっかしいあははは
あははあ～苦しい
もうだめ～あははは

こら!れな!笑いすぎだぞ!

あははごめんごめん
あ～笑った!こんなに笑ったの久しぶり!

はいはい
俺はいつだって笑われ者ですよー

あはは、もうそんな拗ねる事ないでしょ。

拗ねてね～よーだ。
...ただれなの笑顔見れてほっとしたというか嬉しかっただけ!


.....れな何があった？

自然な流れを作りさりげなく聞いてきた。

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助手席のドアを開け車に乗った。

ひろき...久しぶり。

ほんとこんな風に会うの久しぶりだな。
とりあえずぶらっとドライブでもするか。

ちょっとテンション高めにひろきが言った。

うん、そうやね。

目的地は特になく大通りをひたすら進んだ。

車内では話しが盛り上がる。

最初こそぎこちなさがあったものの、時間が経つにつれ昔の感覚も蘇がえり会話が弾む。

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電話を切り支度をする。

ひろきと２人っきりで会ったのはもう4年以上前の事..結婚してから一度もなかった。

友達とはいえ異性と２人で会う事は夫からしたら気分が悪いだろうと私が会うのを断っていたからだ。

ここまで夫に対して気遣いをしていたけど、そんな思いも全然伝わってなかったな...

今となってはどうでもいい事だけど..

そんな事を考えていると思いのほか時間が経っていた。

携帯が鳴った。
ひろきからだ。

もしもし。

もしもしれな？
もう着くよ。

あっ分かった。すぐ行くね。

急いで戸締まりをして家を出た。

ひろきの車が止まっている。

久しぶりだなぁ...


車に小走りで向かう。

助手席の窓をコンコンと叩いた...

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私は携帯を手の届くところに置き、いつでも出られるように準備していた...

それから2日後携帯がなった。

ひろきだ..
掛けてきてくれた。

私は大きく呼吸をし息を整え電話に出る。

もしもし...

...もしもしれな？

うん..

...元気してるか？

いつものセリフを今日も言っている。

うん...元気..

こ..この前はごめんな。無理に聞き出すつもりはなかったんだけど、れなの様子が気になって...

...こっちこそごめん..せっかく心配して掛けてくれたのに今の私に余裕がなくて...

言いたくないならこれ以上何も聞かないよ。でももし俺に話す事で気が楽になりそうだったらいつでも相談にのるから。

....ひろき...
私....

言葉がうまく出てこない..

10秒ほど沈黙のあとひろきが言った。

れな、今からちょっと会わないか？
迎えに行くから。

うん...

小さな声で返事した...

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ひろきに相談したら私は少しでも気が楽になるのかな...

そんな考えも浮かんでくる..

異性だから言える事もある。同性でよければとっくにさっちゃんに相談してるから。

でも私は電話を切ってしまった。

自分から電話を掛けるなんてできない..

もしひろきが電話を掛けてきてくれたら...話しだけでも聞いてもらおうか...

周りの人にずっと気付かれないようにしてきた..

誰にも言わないつもりだった..
私の気持ちに少し変化が表れる..

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付き合いの長い幼なじみ..
私のちょっとした変化に気付いた。

気付いてくれた...

いつだってそうだった...
私が友達と喧嘩してどうしようもなくなった時、仲裁に入って仲直りさせてくれた。

希望の高校に落ちた時、私を何時間も元気づけてくれた。

仕事で行き詰まった時も...


...ひろきには辛い過去がある...

ひろきが中学生の時弟が川で亡くなっている...

藻ですべり頭を打ち意識を失った為溺死してしまった...

その時一緒にいたひろきは助けられなかった自分を責め泣き叫び....見ていられなかった...

私はできる限り慰め元気づけひろきのそばにいた..

その後ひろきは立ち直り今を懸命に生きている。

そんな辛い経験をしているから人のちょっとした変化や辛さを敏感に感じられるのかもしれない...

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時折テーブルをガンガン叩きたくなるような、髪をぐしゃぐしゃっとしたくなるような衝動にかられる。

もう...私しっかりしろよ..
自分に言い聞かせる。

そんな時携帯がなった。
ひろきだ...

今回は掛けてくる期間が短い。
いつもなら3ヶ月近くあくのに。

私は携帯に出た。

...もしもし

れな？元気してるか？

あ～うん

最近暑くなったね。

...うんそうやね。

......
......
れな...なんかあったか？

えっ!いや別に何もない!!

私は少しキツい口調で答えてしまった。

俺...前に電話した時かられなの様子がいつもと違うってずっと気になってたんだ...

私はしばし無言になる。

れな？なにがあった？

俺でよければ話してくれないか？

........
....今日はちょっと疲れているから..
ごめん...切るね..

私は電話を切った。

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日が経つにつれ

あ～今日の夜、理子のマンションに行くだろうな...

今日は昼からデートするだろうな...

したくなくても自分で予測ができるようになっていた..

今まで夫が休みで私が仕事の日、セックスをしていなかった。

それは前に夫が、れな１人が仕事頑張って疲れているのにセックスは求められないよ

って言った事があったから。

私はその時、なんて妻思いの優しい人なんだろって改めて感心したのを覚えている。

でも実際は散々理子とセックスを楽しんで性欲が満たされていたんだ...
だから私とする気はなかった..

そういう風に前もって私に言ってたらセックスを求めない事が俺の優しさになるから...

こいつほんとカス
...私とことん騙されてるな...

愛情も無ければ情もない..ただ私のイライラはどんどん増大し爆発寸前のところまできていた...

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まぁ別にいいか...

お金は今の半分だけでもあればそれでいい。

慰謝料も請求しなくてもいいかな..くらいに思っている。

むしろそれも復讐の時の手段に考えているから...

あとは普段見えないところの整理をしよう。

賃貸物件もこまめに見ておかないと。

そんな事を少しずつ実行しながら１日１日を終えていく...

今まで通り２割増の心掛けはかわらず行って...

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メールを見た日から1ヶ月。

調査に１ヶ月を要した為あと5ヶ月で準備をしなくてはいけない。

まずはお金を整理しないと...

日々の偽りの生活に加え色々な難題が私を悩ませる...


２人は共働き。
子供がいない。
会社から家賃補助が出てる賃貸マンション。
ほぼ外食なし。
食費月2万円ちょっと
そして何より将来の為貯金を心掛けいた。もう半分趣味になっている。

貯えは結構ある...

....はぁ..私頑張ったのになぁ..

夫は貯金額をはっきりは把握していない。

知ったらきっと驚くだろう。

多少私が多く取れても半分近くは夫に持っていかれるのか...

通帳を眺めながらコツコツ貯めてきた自分を虚しく思いながらも、今後現金でへそくりしていこうと決めた。

あ～こんな事になると分かっていたら通帳一緒にしなかったのに....

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朝...

朝食の準備をする。
トースト、目玉焼き、ウインナーにサラダ

夫を起こし一緒に食べる。

今日仕事やろ？
あんまり無理せんどき。

うん休憩いれながら仕事するよ。

少し会話して夫は身支度をし始めた。

ものの5分で支度は終わり家を出る。

じゃあ行ってくるね。

いつものキスをする...

行ってらっしゃい。
気をつけて。

夫が行った途端に顔が無表情になる。

こうしていつもの日常を演じる...

私にはしなければいけない事がある。

もう5ヶ月を切った..

少しずつ準備をしていかなければ...

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１日で色々考え過ぎた..
うとうと浅い眠りに就く...

れな...れな..れな..
肩をポンポンと叩かれる。

ん～..ゆっくり目を開ける。

体調どんな？大丈夫？

帰ってきた...

ん、ん～大丈夫。
お疲れ様。
今何時...

今11時半くらい。
仕事が忙しくて帰れんかった。
もう少し早く帰れると思ったんやけど..
遅くなったね。ごめんね

...はいはい
心の中で呟く。

こんな時間までお疲れ様
今日は起きれなくてごめん。
たかちゃん夕食は？

あ～食べてきたよ。

そっか。明日も仕事だからシャワー浴びてもう寝ないとね。

そうやね。れなもう寝てていいよ。

うん。今日は先に眠らせてもらうね。
おやすみ。

おやすみ。
私の頭をポンポンと触って浴室に向かった。

時計を見る11時57分。
11時半？12時じゃん。
やましい事があるから少しでも時間を戻して言ったか...

......今日はもう考えるのやめよう...

私は眠りに就いた..

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夫は...そこまで考えて理子と付き合っているのだろうか？

その年齢の女性と付き合う事の重大さに気付いているのか？

もし理子と本気で将来を考えているのなら私にここまで隠すものなのか？

さっちゃんから、夫が女の人と歩いていた。という事を聞いてなかったら私は何も気付かず今を過ごしているはず...

理子...私は不思議とあなたを憎むまではない...

不倫は２人の同意で成り立つもの..

夫は結婚している..男だから浮気してみたいと思っている人は多いのかもしれない。

でもそれを行動に移すか移さないかは天と地ほどの差があると思う...

それを理性で抑えられない人は今後も不倫を繰り返す...

私は夫に見切りをつけた..

復讐のカウントダウンは始まっている。

それが終われば夫をあなたにくれてやる。

でもその先の未来は覚悟しておいて...

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部屋を見渡し散らかっていないのを確認して、シャワーをサッと浴び髪を乾かした。

お腹は減ってなかったけど、ずっと食べていなかったから菓子パンを半分だけ食べた。

歯を磨き部屋を真っ暗にしてベットに入る...

時間は10時半。
この時間になっても夫は帰っていない。

帰って来た時の第一声は、仕事が忙しくて帰れなかったよ。遅くなってごめんね。

とでも言うだろう。

もう何が真実か分からないから、最初から信じない。

.....吉田理子は夫になんて言われているのだろう...

別れたいけど別れられない？

本当に愛しているのは理子だけ？

夫婦関係は冷え切っている？

理子...甘い言葉をたくさん言われているんだろうね...

１年半の付き合い...27歳～29歳...女にとってとても大事な時期...

不倫している女性はどんな未来を描いているのだろう...

いつかは奥さんと別れて私と結婚してくれる!
と、夫を待っているのか.....

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普段から家はキレイにしているから1日掃除しなくても気にするほど散らかってはいない。

それでもホコリを叩き、モップをかけ数十分だけ掃除した。

携帯がメール受信の音を鳴らす。

夫からだ。

体調どう？大丈夫？
夜は適当に食べて帰るよ
薬飲んでベットで寝とき

まだ仕事中やけどできるだけ早く帰るね


...本当に仕事なのか？
理子のマンションに行ってるんじゃない？
私からのメールきてラッキーって思ったんじゃないの？

別に嫉妬している訳じゃない...
あとどれだけ私を騙すのかって思っただけ...

うん大丈夫よ
仕事頑張ってね
帰ってきた時寝てしまってたらごめんね

私は返信した。

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ベットに手を掛けグッと力を入れ数時間ぶりに両足で立った。

足が痺れている。

２、３歩動くと多少フラフラしたけどそのままキッチンまで歩いた。

お茶を冷蔵庫から取り出しグビグビ勢いよく飲んだ。

もう8時を過ぎている。明るかった外も真っ暗になり窓から見える外灯の光が眩しく感じた。

そろそろ夕食を作らないと...
キッチンに立つが体が何もしたくないと拒否するかのように動かない...

今日は無理だ...

私は携帯を取り出し夫にメールを打ちだした。

お疲れ様
今日ずっと頭が痛くて、今横になってるんだけど夕食作れそうにないの

お弁当買って帰るか食べて帰ってもらってもいい？
ごめんね

絵文字も多少入れ送信した。

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.....重い腰をゆっくり上げ...散らばった写真を一枚ずつ拾い上げた。

袋に入れ衣装ケースの端に隠すように入れた...

そしてさっきと同じ場所にしゃがみこむ...


愛情はなくなった...

普通だったら情は残り葛藤するのだろう...

だから別れたくても別れられない夫婦やカップルがたくさんいるのだと思う...

有り難い事に愛情に加え情や想い出もすべて私の闇が葬り去ってくれた..

だから優しい言葉掛けられても、好きだよなんて言われても、途中で気が変わって、やっぱりあなたと一緒にいたい....なんて事はあるわけない!

優しさすべて私を騙す為の嘘...
優しくされる度思うのだろう...
この偽善者が...と

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勝手な男...

こんな男だったんだ...気付かなかった。

私の知らなかった裏の顔

結婚って何なんだろ..
夫婦の絆ってなんだろう..

一緒に過ごした日々はなんだったんだろう..

結婚しても所詮は血の繋がりのない他人...

他人だから騙す事ができる...

そういう事....

私の中で一つの答えが出た。

私は信じていた..
疑う事がなかった..

夫婦に疑う事は必要ないって思っていたから..

私は１番信用していた人に裏切られた..

もう騙されない..
だから信用なんてしない..

今私の心を闇が完全に支配した...

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う..う～うっっう.....

どのくらい泣いたか..
泣きに泣いた...


でも...人間の体というのはよくできているもので、涙を流すだけ流すと冷静さを徐々に取り戻してくる。

それは涙自体にストレスを発散する成分が含まれているから...

そっか...人の体はストレスから身を守る為にできてるんだ...

妙に感心する...

少し冷静になれたところでまた考え始めた。

吉田理子...見た目が派手だから若く見えたけど私と1歳しか変わらなかった...

男から見たらきっと魅力的なんだろう..

女性らしい丸みのある体...

私は背が高めで細い..女性からは褒められた事はある...

男の良いと女の良いは違うもの...

あの男はタイプの全然違う女の体を交互に堪能していた...

家では何もせずとも妻がすべてしてくれる✨週１で妻とセックス。
外では魅力的な彼女と楽しくデート、そしてセックス✨

男の理想なのかもしれない...

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なんて男...なんて..

涙がまた溢れ出す..

私は朝から晩まで仕事してた....
あんたがそんな事してる時仕事してたのよ!!!!

酷い裏切り...

男はバレなければ不倫でもなんでもしていいと思っているの!?


男と女は元々の作りが違うから許されるとでも思ってるの!?

家では何食わぬ顔して平気なの!?罪悪感ないの!?

1年半...1年半も私騙されていたの!!?

私...ほんとバカみたい...

欲しい物も我慢して将来の為に貯金して...
料理..家事..掃除..
なに!?私都合の良い家政婦じゃない...

今度は怒りの感情が沸々と湧き上がってくる...

うっ..う～..うう..

声を出して泣かずにはいられなかった.....

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8日....買い物、マンション

17日...映画..ランチ...ホテル...

24日...バー...ホテル....

.......
..な..に...なにそれ...
なにそれ!!!!!

私はバッと毛布を押しのけさっき受け取った証拠の写真を床に乱雑にバラまいた...

キスしている写真
手を繋いで楽しそうに写っている写真
ホテルから出てきた時の写真

それらが私の目に飛び込んでくる..

私はベットに硬く握られた拳を上から下へ何度も..何度も打ちつけた...

すべてを消し去ってしまいたい絶望感..

今になって感情が大きな波のように打ち寄せてくる..

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家まで帰る道のり..

体が重い...目が霞んで前が見にくい..

何度か車を止め休憩を取りながら家に帰った...

静かな家の中。
時間はまだ4時..外は明るい

部屋着に着替えそのままベットに潜り込んだ。

何度も鼻をすすったせいで頭がガンガンする...

毛布にくるまり目を瞑る......

さっきは放心状態で頭で整理できなかったが、今は意識がしっかりしてきている。

太田さん、阪東さんが言った言葉一つ一つを思い返す..

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私は朦朧としながらもその言葉をしっかり胸に刻んだ。

事務所のドアを開け私は深く頭を下げた。

２人共見送ってくれる。

阪東さんが心配そうに車まで一緒に行きましょうか？と言ってくれたけど

ありがとうございます。でも大丈夫です。１人で帰れますよ。

と私は今できる精一杯の笑顔で答え事務所を出た。

目が真っ赤に腫れていた為、顔を隠すかのように小走りで車に向かい乗り込んだ。

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木村さん..私達調査員はどうする事もできず苦しんいる女性を助けたいと思っているんです。

今は真実を知り辛く苦しいと思います。

行動するには証拠がいる。証拠がないと慰謝料も取れない。

だから私達はそのお手伝いをしているのです。

新しく歩き出すためにも真実はしっかり受け止めてください。

別れるのも一つ、続けるのも一つ、後は木村さんが決める事。

今回完璧な証拠は取れました。ご主人からも吉田理子からも慰謝料は取れると思います。

私達はまだまだ若い木村さんのこれからの人生が明るいものである事を願いたいです...

しっかりとした口調で太田さんは私をそう諭した。

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ティッシュをそっと私の前に置いてくれた。

木村さん..
吉田理子についてですが、歳は29歳でした。
ご主人の取引先のOLです。

付き合いははっきりではないですが、調べた感じでは1年半くらいだと思います。

さりげなく数名から印象を聞けたのですが、流行に敏感でオシャレに気を使っているようです。

明るく優しい反面、自分の意見は押し通すちょっと我が強い一面があるとの事です.....

私は声にならない声で

太田さん、阪東さんいろいろ調べて頂きありがとうございました。

と２人にお礼を言った。

太田さんが口を開く。

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２人で近くの焼き鳥屋に行き3時間ほどして出てきました。

駅まで一緒に歩き男性は電車に乗り帰って行きました。

えっ帰った!?
この日家に帰ってきたのは12時過ぎだった....
頭の中で考える。

太田さんは続けた..

30分後吉田理子が電車に乗って来ました。

....駅で待ち合わせしていたのでしょう...

私は言葉を失う..


２人は歩いて近くのバーに入り１時間後出てきました。

酔っておぼつかない足で...ホテルに...

後は代行タクシーで吉田理子を送り自宅に帰って行きました....

..これが調査の結果です..
......沈黙。

私の目から涙がポタポタ落ちる...

メールを見た時もこうだった...

あの時と同じくらい涙が落ちる。

太田さんも阪東さんもそんな私を静かに見守っていた...

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木村さん。ちょっと休憩しましょう。

放心状態の私はただ頷く事しかできなかった。

10分くらい経ったか..

大丈夫ですか？続き聞けますか？もう少し休みます..？

いえ..続きをお願いします..

私は酸素をたくさん取り込むかのように大きく深呼吸をした。

24日。この日は私が尾行しています。太田さんが話す。

木村さんが出勤してしばらく家から出る事はありませんでした。

家から出てきたのは3時過ぎです。

近くのコンビニに寄って雑誌や飲み物を買ってまた帰りました。

5時くらいに再び車に乗り20分ほど走らせ１人の男性を乗せました。

写真を見ると見た事のある顔。
この日は本当に高校の友達と一緒だったんだ..