妻として嫁として、そして母として・・
『結婚しよう・・』
紆余曲折ありながらも3年付き合ってきた彼からのプロポーズ。 断る理由は無かった・・自然な流れ。
結婚て、タイミング。 あの時思い切ってなければ、違う人生あったのかな・・
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失礼します!結構私も同じ後悔組😢自立を考えてます。やはり価値観がちがったり、話しするのも嫌なとき程深刻に考えてしかし、過去をかえるも自分子供いるけど
その子の成長を見極めて新しく踏み出すつもりでたえてます。まだまだ
若いなら私より巻き返しできるわ!💪だわよ!
携帯を変えても、実家の電話にかけてきた・・
あちらも必死なのだろう・・
呼び戻したい理由が理由だし、今更戻る気なんて更々なかった・・
いい加減業を煮やした父が一喝!
「いい加減にして下さい!何を言っておいでか、分かっていますか?娘はもうそちらとは一切!!関係のない身です!これ以上娘と孫の環境を乱す様な行いはご遠慮願います!今後一切!!この様な連絡はご遠慮願います!!!」
今になって元・義家に悩まされるとは思ってもみなかった・・
私一人の心の内に留めておくには余りのストレスで、今回の電話攻撃の件は両親と真裕美ママにも話した
皆、口を揃えて「ふざけるな!!」と怒りまくり・・・当然だわな・(笑)
義家からの連絡は一切受け付けなくしたかった為、私は携帯の番号を変えた・・・
『ふざけんな?!人を何だと思ってるんだ!!バカにするのもいい加減にしろ!! お前らの事なんて、今更知ったこっちゃね~よ!!脳ミソ腐ってんじゃないの?!」
心の中で多香子を罵る汚い言葉がいくつも出てきた・・が、自らこんな電話かけてくる様な非常識な人間には何言っても無駄だろう・・
「(笑)寝言は寝てから言って下さいね?(笑)」
それだけ言って一方的に電話を切った・・
勿論ソッコー着信拒否に設定・・
設定し終わり、私はまた深くため息をついた・・・
開いた口が塞がらないとはまさにこの時の私にピッタリな言葉・・
え~と、何?要するに、義父の介護要員として私を呼び戻したい、私の家庭をぐちゃぐちゃにした挙げ句、自分の都合で出て行きたい、でもお金は貰うわよ・・てところか・・
世の中にはこんな女が居るんだ・・
怒りすぎて言葉も出ない・・・
私は携帯を顔から離して、大きく大きく深呼吸をした・・・
「旦那も付き合ってる時と全然違うし何かマザコンだし一緒に住むまで病気の父親居るなんて聞いてなかったし~・・こんなのサギじゃん?(笑)」
「もういい加減ウンザリだから、出て行きたいけど子供2人抱えて生活できないし~、で、優サンが戻るなら旦那も父親の介護頼めるし、あ、今、介護の仕事してんでしょ?旦那とお義母サンが話してるの聞いちゃった。私もそっちのがいいと思うんだよね~。私は子供の養育費だけちゃんとしてくれたら後は全然ゴネたりしないからさ。ね?悪い話じゃないよね?」
「ご用件は?・・」
女のプライドだろうか・・内心の動揺を悟られない様に、私は冷静な口調を装った・・
「あのさ~、優サンさ~、こっち帰ってくる気とか、ない?」
「は!?・・どう言う事でしょう?」
「いやね、優サンが元サヤに収まってくれるんなら、私ぃ、大人しくこのウチ出て行くからさぁ・・」
何言ってんだ!?この女!?
「私が言うのも何なんだけど、正直、この家には私より優サンの方が合ってると思うのよね~?」
それから数日、貴嗣からも義母からも電話が鳴る事はなく、分かってくれたんだと一安心していた・・
半月ぐらい経った頃だろうか・・知らない番号からの着信・・
「??はい?」 夜のバイトの関係だろうか?と出てみた・・
「あ、優・・サンよね?」
聞き覚えのない女性の声・・
「どちら様ですか?」
「あ、私~、・・多香子って言えば分かるよね?」
身体に電流が走ったとでも言うのだろうか・・
あまりに突然かつ意外な相手からの電話に、私は一瞬固まった・・・
一喝した事で、この件は終わるものと考えていた・・・が!!私が甘かった・・
以来、元・義母からも携帯が鳴り響き、たまらず一度出たらひたすら泣き付き台詞のオンパレード・・
「優ちゃん?!あぁやっと出てくれたのね(泣)私が悪かったわ(泣)戻ってくれないかしら?! 今度の嫁ったら酷いのよ?!etc・・・」
以降、まともに聞く気もしないので覚えてません・・
「私にはもう一切!!関係ありません!!」
それだけ言ったのは覚えてる・・
以前の私からは想像も出来ない言葉・・・
「あなた、何言ってるか分かってるの?! ・・私とユウキとの家庭をぐちゃぐちゃにして、その原因でもある女と生活始めて、それがちょっと上手くいかないからってヨリを戻したい?!?!バカじゃないの?!いい年して、少しは自分の行動に責任持ちなよ?! ・・子供が貴方の子じゃないかもなんて、私には一切関係ありませんから!!!」
言うだけ言って、一方的に電話を切った
腹が立って腹が立って、その日は眠れないぐらいムカついていた・・
両親にもこの事は話したが、私以上に憤慨していた・・・
そんな義母の疑問を、貴嗣も拭い切れなかった・・
義母の疑問はそのまま多香子への態度に出始めた
元々、籍を入れる事を渋り、義父の面倒はおろか、容体を気にもとめず遊びに出掛けたりで家を空ける多香子を、義母は良くは思っていなかった・・
義母の性格からして、どんなバトルが繰り広げられられたかは安易に想像できる・・
間に挟まれた貴嗣の反応も・・・
数日経った休みの日、貴嗣に電話した・・
貴嗣の用件は・・・復縁を求めるものだった・・
流石に驚いた私は事情を詳しく追及した
・・元夫は、何~にも変わっていない・・厚顔無恥もいいとこだ・・
多香子が女の子を出産し、その子がどうも貴嗣に一切似ていないらしい
ついでに母親の多香子にも似ていなく、まず義母が疑問を持ったらしい
『本当に息子の子供なのか?』
暫くたった頃・・元夫・貴嗣から連絡があった・・
携帯の番号は変えていた為、実家の電話にかけてきた・・
父が出て「今更何の用だ?」と言ったみたいだが、私と連絡取りたいと必死な様子だったらしい・・
父からその話を聞いた時、完全に無視してしまえば、後からあんな嫌な思いしなくて済んだのに・・・
恭介さんには自分の気持ちをありのまま伝えた
恭介さんは私のトラウマを分かってくれ、気長に、男・女関係無しで友達から始めようと言ってくれた
夜のお仕事をしていると、色んな出会い、きっかけがある・・
真裕美ママの言っていた通りだ・・・恭介さん以外にも、個人的にお付き合いしたいとのお申し出はいくつかあった
・・が、やはり同じ理由で、私は全てお断りしていた・・・
正直、恭介さんに惹かれた部分もあった・・
海外仕込みなのか、会話もスマートで女性の扱いにも慣れている
一緒に居て楽しかったし、もっと一緒に居たいとも思えた・・
だがダメだ・・元夫に刻まれた傷が蘇る
「どうせ男なんて、浮気するし・・ 」
それからお店に入り、たまたま客足が遅かったのもあり、暫くは恭介さんにベタ付き状態だった
色んな事を話した
恭介さんの海外での生活の事、お仕事の事・・
お父さんから私の今の環境は聞いているのだろうが、その事には一切触れては来なかった
帰りがけ・・恭介さんから「付き合って欲しい」と言われた・・
私はお断りした・・
ほぼ同時に、私は他のお席からご指名を頂き、軽く挨拶をして席を立った
それからは閉店時間まで他のお席で接客をしてその日のお仕事を終えた・・
・・1週間後・・・
「ご馳走様でした!あんなに美味しいお魚料理、初めてです!」
私は恭介さんに同伴して頂いていた
あの日、結局最後まで恭介さんとはお話出来なかったのだが、ママ経由で申し込みがあった・・
「いや・・突然かとも思ったんだけど・・優・・チャンとユックリ話してみたくてね・・・迷惑では無かった?」
「迷惑だなんてそんなっっ・・・」
気の利いた台詞が出てこない・・
しばしの沈黙の後、どちらともなく吹き出していた・・
宴席の会話や雰囲気から、どうやらこの日は恭介さんの御披露目だった様だ
外国暮らしをしていた息子さんが、親の後を継ぐべく仕事を覚える為に帰って来た・・
「いやぁ、社長もこれで安泰ですなぁ~」
「立派な御子息で羨ましい限りです」
等々・・ありきたりなおべっかが飛び交う中、私は会話のお邪魔にならない程度に、次々と空になるグラスに笑顔でお酒を注いでいた
ふと、恭介さんと目が合った・・・
「有り難うございます。ユウキ、最近電車に凄く興味を持ってて、プ○レール買ってやります!」
「ほうかほうか(笑)ワシはまだしてやれる孫がおらんから、嬉しいわい(笑)」
そう言うとチラリと隣の男性に目を向けた気がした・・
「優ちゃんは初めてだったかの? これはワシの息子でな、恭介と言う・・」
隣の男性が軽く微笑んだ
「初めまして、優です。お父様にはいつもお世話になっております。」
当たり障りのない挨拶を交わし、酒宴はスタートした・・・
夜・・いつもの様に真裕美ママのお店で予約のお得意様を待っていた
「優ちゃん頑張ってるみたいじゃない。山本さんが褒めてらしたわよ。覚えよう!って姿勢が凄く表れてて、実際仕事の飲み込みも早いって・・ね」
「ホントですか!?嬉しい! 皆さんホント親切に教えて下さって、凄く勉強になるんです!」
そんな話をしていると、この日の予約のお得意様(しかも2時間貸し切り)が20名様程引き連れていらっしゃった
「佐伯さん、いらっしゃいませ!皆様もどうぞ、お掛け下さい・・」 ママがテキパキと女の子を采配し、私はママに促され佐伯さんの席に着いた・・
「お!優ちゃん!久しぶりだなぁ! どうだ?坊主も大きくなったんじゃないか?」
「はい! お陰様で、ユウキも元気です!最近はちょびっとイヤイヤ期で・・(笑) そこがまたカワユイんですけどね~(笑)」
「ほぅかほぅか!男の子は元気が一番じゃわい(笑) ホレ・・坊主に玩具でも買ってやれ~」
佐伯さんが懐から1万円札を出した
ママをちらっと見ると黙って頷いている・・『受け取れ』のサイン・・
実際に携わってみると、思っていたよりも重労働で、きめ細かい心配りも大切だったが、それが苦にならない程『人の役に立ててる』実感があった
元夫との結婚生活では自分の存在価値なんて感じられなくなっていたから・・
週2日では物足りなく感じる程、私はひたすらアルバイトと言う名の研修に打ち込んだ・・
まだ資格を持っていない私は先輩スタッフのお手伝い的な仕事が多かったが、ベテランの先輩方の仕事ぶりはかなり勉強になった
アルバイトとはいえ、身体のご不自由なお年寄り相手の仕事・・気は抜けない
食事の介助をしようとしても、新人の見慣れない顔の私を警戒してか、中々口を開けて下さらないおばあちゃん、身体の自由が利かない苛立ちか、いつもガミガミ怒っているおじいちゃん・・
初めの頃はどうしていいか分からず、ただオロオロしていた
そんな時に必ず助け船を出してくれたのが所長の奥さん、千鶴子さん・・
「大丈夫大丈夫!初めはみんなそんなもんよ!段々慣れて分かってくるって!」
そう言ってケラケラと何でも笑い飛ばす、とても大らかな方だった・・・
それから私は必死で勉強した
毎日、お昼ご飯を食べてからユウキと一緒に実家へ行き、両親がユウキと遊んでくれている間に、結婚するまで私が使っていた2階の部屋で机に向かった・・
ご飯をたべてタップリ遊んだユウキはお昼寝している事も多く、私も安心して勉強に集中できた・・
そして暫く後・・山本さんの元で取り敢えずは週2日、アルバイトとして入る事になった・・
夜働きながら、私は元々興味があった介護の資格を取るべく昼間は勉強した
後押ししてくれたのはお店のお客様、山本さん・・
山本さんはとある介護施設の所長をしており、奥さんもその施設で職員として介護に携わっていると言っていた
「独学で頑張るつもりなら、専門書は融通してあげよう。ある程度の知識が身に付いたら、実地も兼ねてウチでバイトしてみるかい?働きながら覚えて資格を取るといい・・」
願ったりの話だった
真裕美ママも大賛成してくれた・・・
一方、私はと言うと・・
離婚が成立してから夜のバイトもレギュラーで入る様になり、収入も断然増えた
今まで知り合ってなかったお客様とも出会い、企業の第一線で活躍されている方々との会話の中で、専業主婦として家庭に籠もっていた私の世間に対する視野も広がって知識も増えていった・・
ある程度お金が貯まったところで、私は実家を出るべくアパートを借りた
両親はいつまでも家に居ていいと言ってくれたが、『自立しなければ』・・との考えは変わらず、でも両親の気持ちを汲み取って実家から徒歩10分のアパートに決めた・・
暫くして再び貴嗣が婚姻出来る時期がきても、二人は入籍せず多香子は内縁状態だったらしい・・
貴嗣は入籍を望んだらしいが、多香子の方が躊躇?していた様だ・・
元々、家庭的ではない性格にプラスし、寝たきりになった舅の事も原因なのだろう・・
何でこんな噂が私の耳に入ってくるのかと言うと・・元・義母が多香子の事をご近所に愚痴っていたからだ・・
田舎のご近所の噂話はテレビのワイドショー並みだ
元・義母の友達の娘、あるいは嫁は、私も親しくしていたママ友だ・・
そして噂は私の耳にも入ってきていた・・
私との離婚が成立してすぐ・・いや、時期的には微妙なのだが、不倫相手の女性・・多香子が妊娠したらしい・・
妊娠した事で、多香子は貴嗣に養って貰うべく、私とユウキが元住んでいた二世帯で暮らし始めたそうだ・・・
実際その話を聞いた時は、ユウキに異母兄弟が出来る、しかも不倫相手と・・と、凄まじい嫌悪感を抱いたが、ユウキはユウキ・・私の可愛い息子、私の宝・・
多香子のお腹に芽生えた命には罪はない・・
貴嗣に一切の未練もなかった私は、自然にそう思える様になっていた・・・
それから数ヶ月・・・
夫は結局、裁判所からの呼び出しには一切やって来る事なく、その間、太田さんの協力もあって、実際は女とズルズルと続いている証拠も集める事が出来た・・
その証拠が私に有利に働き、ユウキの養育費だけは支払うとの条件で、私達夫婦は離婚した・・
元々、世間体を気にする義母・・養育費を払う事で私に対する口止め料も含まれていたと思われる・・
勿論私は自分の口からあれやこれやと言うはずもなかったが、人の口に戸はたてられない・・
「あの家は息子さんが女作って家庭崩壊したらしい・・」 噂はご近所で広まっていたみたいだ・・
「俺は!!・・今だって別れたくなんかないよ!優、頼むから許して欲しい・・女とはもう何でもないんだから!」
「今になってみると、私はともかく、あなたと血を分けたユウキの事だって一時期放って女と暮らしてたよね? 不倫の事実より、あなたのその不誠実な態度が何より許せない・・もう、一緒には暮らせない・・」
「・・・ 」
喋らなくなった受話器の向こうで義母の声がしたと思った矢先・・
「もしもし!?優ちゃん?! 裁判なんて、そんな恥さらしな事、絶対させませんからね!! あんたみたいな嫁!こっちから願い下げよ!!」
「はぁ、そうですか・・では離婚に応じて下さるんですね? それだったら、こちらも裁判なんて面倒な事しなくて済むし助かりますが・・」
「☆×↑*○&△■◇・・」
受話器の向こうで義母が何かまくしたてていたが、私は自分の言いたい事だけ言って電話を切った・・・
裁判所の手続きをして夫に通知が行った頃だろうか・・・あれだけ連絡が取れなかった夫から、ある日突然携帯が鳴った・・
「はい・・」
私は迷う事なく電話に出た
「優?・・久しぶりだな・・元気にしてたか?・・ユウキは元気か?」
「元気ですよ?今更何ですか?ずっと連絡取れなくて、我が子の事だって忘れてたんじゃないの?」
「そんな事ない!そんな事ないよ!ずっと気になってたんだ。」
「・・・それで、どの様な用件でしょうか?」
「そんな風に言うなよ!?・・優・・ホントに俺と別れるつもりなのか!?」
「私と別れたかったのは、あなたの方じゃないの?」
以前の様に感情的になる事もなく、私は静かな口調で言った・・・
女が一旦覚悟したら、後は早い・・
迷いが無くなった私は正式に離婚に向けて事を進めた・・
父が相談したと言う弁護士さん・・太田さんは、知人の娘と言う事もあってか、とても親身になって対応してくれた・・
夫とは相変わらず連絡が取れない・・家にかけても誰も出ない・・
明らかに逃げていると分かり、こちらは太田さん経由で裁判にする手続きをした・・
どうしてこんな事になったんだろう・・
結婚してから今までの事を振り返ってみた
普通に奥さんして、自然に子供が出来て母親になれた・・
二世帯とはいえ、考え方や習慣の違う夫の育った環境へ足を踏み入れ、それに馴染むべく努力はしたつもりだ・・
それでも一方的に私が悪いと言われるのなら、それでもいい・・もう、どうでもいい・・
これ以上、改善に向けて努力する気持ちも無くなった・・・夫への気持ちは完全に冷めていた・・・
「お父さん、どうだったの?!」
私より先に、母が聞いた
父は少し間を置いて口を開いた
「全く・・話にならん!当の本人の貴嗣君は仕事を理由に話し合いには姿を現さなかった!仕事が終わるまで待つと言ってずっと待っていたんだが結局何だかんだと逃げよった!」
「あちらのお義母さんもな、始めはユウキが可哀想だなんだと泣き落としできてたんだが、段々態度が豹変して最後には何もかも優が悪いかの様な言い様だ! 息子擁護も甚だしい!
優・・・辛いだろうが、よく聞きなさい・・あちらの家を出てその足で、知り合いで弁護士やってる奴の所に行って来た・・一通り話して、全面的に協力してくれるそうだ・・お前がケジメを付けたいなら、その人に頼む事も出来る、自分で決めなさい・・・」
私に迷いは無かった・・
「お父さん、私、闘うよ!」
「とにかく、今日これからあちらの家に行ってくる!」
父は支度を始めた
「優は家でユウキと待ってなさい」
それだけ言うと父は少し興奮した面持ちで出掛けて行った・・
お昼をまわっても父からは何の連絡も無く、かと言ってこっちから電話も出来ず、ただ待っているしか無かった・・
夕方近くなって、やっと父が帰ってきた・・・
「優・・・あちらのお義母さんだがな、こっちの話なんか、聞いちゃあいない!・・まぁ、そう言う性格なんだろうが・・・優・・今まで苦労してたんじゃないか?何で言わなかったんだ?」
「・・・・・」
『心配掛けたく無かった・・』 これを言うと逆に心配掛けるかな・・
黙ったままの私に母が助け船を出した
「お父さん、優はそう言う子でしょ?きっと私達に心配掛けまいとして1人で我慢してたのよ・・」
「うむ・・・優、親子なんだからな?俺達にまで気を遣う事ないんだぞ?お前は1人じゃないからな?」
涙が出た・・・
暫くして別室から携帯を片手に父が出てきた
「全く!・・話にならんな!これから貴嗣君に電話するからな?いいな、優?」
「う、うん?いいけど・・お義母さん何て?」
「その話は後だ!とにかく、貴嗣君本人と話せんとな!」
父は私の携帯から夫の名前を探してリダイアルした
プルルル・・プルルル・・・・・・・・・・・・・・
鳴らし続けても夫は出ない・・
父は一旦携帯を切り私に言った・・・
義母との会話に少々ウンザリぎみの私の手から携帯を取り上げ、父が出た
「ご無沙汰しております、優の父です」
父はそのまま別室に入って行った・・
ぼそぼそと話し声が聞こえるが、内容までは分からない
「お父さんに、任せておきなさい・・」
不安げな私に母が言った・・・
「追い込むも何も、手紙があったのは事実だし、貴嗣さんは逆ギレできちんとした話をしてくれないし、貴嗣さんが不倫してたのはお義母さんも分かってて貴嗣さんも認めてるでしょう?暫く相手の女性とも暮らしてた訳だし・・・そう言うのもひっくるめて貴嗣さんの行動の原因が全て私にあるかの様な言い方・・・これ以上何を話せと言うんですか?」
「だからね?!違うのよ?そう言う事言ってるんじゃなくて◇■△*&○・・」
あ~言えばこうと、とにかく息子を庇う内容を次々にまくし立てていたが私はもうまともにとりあうのは止めた・・
その日のお昼過ぎ、一旦止まっていた着信が再び入った・・・義母だった・・
「もしもし・・」
「優ちゃん?!良かった!やっと出てくれたのね?!昨日カナから聞いてビックリして、何度もかけたのよ?! 貴嗣も心配してるのよ?どうするつもりなの!?」
「貴嗣さんは何と言ってるんですか?」
「貴嗣?・・貴嗣にも話聞いたけど、優ちゃんの誤解なのよ?相手の女性とは、もう何でもないって言ってたわよ?」
「お義母さん、それ、信じてるんですか?・・・何でもない相手から、今でも仲良くしてる内容のメールや手紙がくるのは何ででしょう?可笑しくないですか?」
「だからね、優ちゃんがそうやって何でも勘ぐって話するから、貴嗣も追い込まれる感じがして話が出来ないって・・」
また私のせいか・・
朝食の後片付けをしていると、ユウキが起きた様子だった
良く眠れたからか、ユウキもご機嫌で布団の上で1人で遊んでいた
「ユウキ~、おっきした?一杯ねんねできたね~♪良かったね~♪」
ユウキに朝食をとらせていると、父が尋ねてきた
「お母さんとも話してたんだけどな、優、向こうの家とはどうするつもりだ?貴嗣君とキッチリ話付けんといかんだろ」
「うん、分かってる・・昨日こっち帰って来てから携帯ガンガン鳴ってた・・」
「そうか・・家にはかけてこなかったな・・」
父も苦笑いしていた
「今度かかってきたら出なさい・・話せん事には先に進めんだろ・・俺もお母さんも、向こうの家に話付けに行く気持ちの準備は出来てる、後は優がどうするか・・だ」
ユウキを起こさない様に布団から出てリビングに行くと、ほぼ同時に母も起きてきた
「あれ?早いね~、もっと寝てたらいいのに」
「もぅ寝れない(笑)久々に良く眠れたよ!」
たわいもない話をしていると、父も起きてきた
「お?何だ優、もう起きてたのか?」
私が知ってる限り、定年退職してからの父は朝はのんびりなハズだ
父もやはり私の事が気になっているのだろう
久しぶりに親子3人で朝御飯を食べた
父も母も、義家の事には一切触れてこない
楽しい雰囲気を壊したくなくて、私も夫からの着信の話はしなかった・・・
その夜は疲れもあってか良く眠れた
不思議とユウキも夜泣きしなかった
ユウキにとっても、すでに実家は落ち着く場所になっていたのかもしれない・・
翌朝目が覚めたのはまだ薄暗い早朝だった
ユウキは隣で静かな寝息をたてている
暫くぼぉっと見慣れた天井を眺めながら、これからの事を考えた・・
『いつまでも親に甘える訳にはいかない・・早く自立しなきゃな・・』
ふと、携帯の着信ランプが目に留まり開いてみた
夫、義母、カナさんから立て続けに数十件の着信・・
マナーモードに切り替えていた為全く気付かなかったのだが、しかしこれだけかけてきて一度も実家の方には連絡してこなかったのが逆に可笑しくて笑えた・・・
「さぁさ、優の好きなモノ、一杯作ってあるから!どうせロクに食べてないんでしょう?あんたは母親なんだから、しっかりしないと!」
母の言葉に促されリビングに上がると、そこには私の好物の手の込んだ和食系が並んでいた
「お母さんの炊き込みご飯!久しぶり!」
本当は食欲なんて全く無かったが、母の気持ちを無下にしたくなくて頑張って食べた・・
自分の器の料理の大半をユウキの口に運んでた事に母は気付いていたのかもしれないが・・
実家への道中、ハンドルを持つ手が震えた・・
とうとう家を出たんだ・・もう、後戻りは出来ない・・いや、しない!
カナさんから連絡が行った様で、夫からの着信が何度もあったが私はそれを全て無視した
実家に着いた私とユウキを、両親は複雑な面持ちで、でも温かく迎えてくれた・・
「しばらくお世話になります・・」
「何言ってんの、ユックリ骨休めしなさい・・」
母の言葉に、私はつっかえていたモノが一気に溢れ、ユウキを抱っこしたまま玄関に座り込んでひたすら泣いた・・・
「すみません、昨日、貴嗣さんとは話しました・・私達夫婦の問題です、私の気持ちは変わりません」
それだけ言うと、足早に2階に上がり、残った荷物を手早く車に積み込み、ユウキを連れて「我が家」とは言えない家を後にした・・
呆然と見ているカナさんを後にして・・・
翌日、バイトはお休みを貰い、朝早くから荷物の整理を始めた
離婚を決意したあの日から少しずつ片付けてはいたものの、ユウキのお世話、カナさんの子供達のお世話の合間にだったので余りはかどってはいなかった
身の回りの物だけ荷造りして飛び出せばいいのだろうが、私物を義母やカナさんに見られるのはどうしても嫌だった
取り敢えず自分とユウキの物を片っ端から段ボールに詰め、あらかじめ連絡しておいた実家へと送った
荷物を引き取りに業者が来た事で、たまたま家にいたカナさんがビックリして聞いてきた
「何!?優ちゃんどうしたの突然!?出て行くの!?」
「はい。出て行きます。詳しくは貴嗣さんに聞いて下さい。」
「ちょっ、ちょっと待ってよ?!とにかく、話しよう?」
「辛い時、寂しい時、誰かに頼りたくなるでしょう?そんな時、お酒の席で知り合った男性と勢いで・・なんて、この仕事ではよくある事・・勿論、それが悪いなんて言ってるんじゃないのよ?ただ、優ちゃんにはそんな風になって欲しくないの・・」
「それに小さい子供がいるんだし、夜はちゃんと寝ておかないと身体に毒よ?」
真裕美さんは自分の経験から、私が堕ちない様にブレーキをかけてくれているんだと思った・・
自分の身内でもない、単なるアルバイトの私の人生を、親身になって考えてくれる真裕美さんの優しさに心打たれた・・
「分かりました・・私、頑張ります!」
少し考えた後、真裕美ママが口を開いた・・
「事情は分かったわ・・優ちゃんも仕事に慣れてきたし、お客様の評判もいいからお店としても逆に助かるわ」
「ただね、一つ約束して欲しいの・・・ある程度して生活が落ち着いたら、昼間の仕事で生計をたてる事を考えなさい?」
「昼間の仕事・・ですか?」
「そう・・・長くやってるとね~、色んな女の子達見てきたわ・・優ちゃんみたく、離婚して生活の為にやむなく・・とか、単に時給がいいから興味本位で・・とか」
「ただね、共通して言えるのが・・人間て、弱いのよ・・?」
私が甘かったのだ・・
離婚を言い渡したあの日、即座に家を出るべきだった
色々な事を考え過ぎて、タイミングを誤った
私の中では自立の準備をしていたのだが、この家で暮らしている以上、夫は『どうせ出て行かない・出て行けないだろう』と、タカを括っていたに違いない・・
・・その夜、お店に出てママに事情を詳しく説明し、定休日以外の週6日、みっちり働かせて貰える様頼んだ・・・
一度、夫とぶつかってみた
「相手の女性と、別れてないでしょう?」
「はぁ?!何言ってんの?!んな訳ないじゃん?!」
そう言う夫の目は完全にヨソを向いていた
「じゃあ、これは何?」
写メに撮ったメッセージカードを見せる
逆切れした夫がいう・・
「お前、何?!スパイしてんの?!サイテーだな!」
「お前のそう言う、相手追い詰めるとこキライだわ」
追い詰める・・・
へぇ、追い詰めてんだ、私・・・
♦♦スレをご覧下さっている皆様へ・・
私のつたない文章をご覧頂いて、誠に有り難うございます🐱
スレ本文に、ご意見・ご感想等頂けている様ですが、私も確認出来てないまま削除になっている傾向にあり、とても残念に思います😣
宜しければ、感想スレもありますので、そちらに書き込みして頂ければ幸いです😌
この頃から夫も、私に対して話し掛けてきたり、ユウキのお世話を買って出る様になった
しかし私の中では『今更・・』と言う気持ちが強く、夫に対して他人行儀な冷めた態度だった様に思う・・
夫はバレてないと思ってるのだろうが、水面下で『多香子』と続いているのは知っている・・
夫が無造作に脱ぎ散らかしたズボンのポケットから、多香子からだと思われるメッセージカードが見つかった
『このままずっとラブ②でいたいな💕愛してるよ💕』
正直、鼻で笑ってしまった
『好きにすればいい・・』
義父は一命は取り留めたものの、後遺症で右半身不随となった・・
元々、世話好きで何でも自分のペースでこなす義母・・義父の介護も(義父には悪いが)意気揚々とこなしている様に見受けられた
何でも先回りして手を貸す、あれはダメ、これしちゃ危ない・・などと、義父の行動を全て管理していた・・
2階からその様子が伺えるので、義父が気の毒になった程だ
カナさんも流石に心配はしていたが、その心配が故のストレスの矛先は全て私に向けられた・・
『息子夫婦の事で心配し過ぎて・・』
私からしてみれば『はぁ?!』な言い草だ
夫とはお互いに避けて生活していた
同じ屋根の下、たまに顔を合わせる事もあったが、私が開き直り堂々としていたのもあってか、夫の方がバツの悪そうな顔をしていた
そんな折・・ある日突然、義父が倒れた・・
脳梗塞だった・・・
それからは義母もカナさんも、私に対して何か言ってくることはなかった
ただ日々、私の様子を遠巻きに観察している感じだった
正直、居心地が悪かったが、すぐに夫と離婚して家を出て実家の両親に迷惑かけるよりは、自分の稼ぎの中から少しずつでも貯蓄して今後の生活の糧にしたかったので我慢した・・・
一瞬固まった様にも見えた義母とカナさんに軽く会釈して私は2階に戻った
義母とカナさんの間でどんな会話がなされたのかは知らない・・
ただ、私はもうそんな事はどうでもよかった・・
『好きに言えばいい・・』
今までの我慢が爆発した私は完全に開き直っていた・・・
♦♦お詫び♦♦
スレにレス下さった皆様、有り難うございます😌残念ながら削除されてしまい、不快に思われた方もいらっしゃるのではと危惧しております💦 また、続きを楽しみにして下さっている方々にも申し訳なく思います😣
感想スレもございますので、宜しければそちらにご意見・ご感想などお願い致します😌
あれだけ元夫の不貞に逆上し、周り(主に私)に迷惑を掛けまくって離婚したカナさんにまで言われるとは・・
義母もそれは分かっているはずだ
やはり血には勝てない
義家族のあまりの理不尽な言い様に、私は怒りを通り越して呆れた
夫は勿論、自分からそんな話はしないし、私も聞かない・・
どうにかユウキを引き留めたい義母から聞かされた事だ
だが義母が話せば話す程、夫に対して私は冷めていくだけだった・・
時折、義母から『答え』を要求される
「優ちゃん、夜も大変でしょう?どうかしら?貴嗣も家に帰ってきてる事だし、前みたいに戻れないかしら?」
カナさんまでもが言ってくる
「そろそろ許してあげてよ~・・一回追い出したんだし、気が済んだ事ない?
そんな意地張ってると、ホントに夫婦ダメになるよ~(笑)」
かなり後から知った事だが、夫が家に帰る様になった理由・・・
私が離婚を言い渡した事で、ふてくされた夫は不倫相手のアパートに転がり込んだ
だが一緒に生活していくうち、元々おいしいとこ取りの恋愛体質だった彼女が身の回りの世話をするのに飽きたらしく、体よく追い出された様だ・・
私が夜の仕事に入り始めてから、夫は毎日家に帰って来ている
だが私自身、気持ちの整理が付かず、夫に対してどう接して良いのか分からなかった
食事の支度や洗濯など、身の回りの世話はちゃんとやっていた・・・する事はきちんとやっている・・と、どこか意地にも似た感情があった
お店に入って2カ月・・子供の順応性には脱帽だ
初めは愚図っていたユウキも今ではスッカリ実家の両親に慣れ、逆に預けない日は調子が狂って夜泣きする始末・・
そんな感じで私は安心して仕事に出る日を徐々に増やしていけた
お店には色んなタイプのお客様がいらっしゃる・・
基本、麻里が言っていた様に、お酒の席でのマナーを心得ている紳士的なお客様が多かったが、やはり中には悪酔い?されてか、女の子に絡んでくるお客様も居る・・
そんな時は、まだ不慣れな私に代わって、ママや経験豊富な先輩がフォローしてくれた
私は本当に、周りに恵まれてたんだと思う・・・
翌週から、取り敢えずは週一でお店に入る様になった
ユウキが実家に慣れ、数時間ママがいなくても大丈夫になるまではとそうさせて貰った
お店のママ・・真裕美さんはとても気さくな方で、40過ぎてるらしいがとてもそうは見えない
麻里から私の事情を少しは聞いているだろうが、その事には一切触れてこない
真裕美さんは若くしてご主人を事故で亡くし、当時3歳の双子の息子達を育てる為に夜の世界に入ったそうだ
「やってみるとこれが意外に楽しかったりしてね~、向いてたんだわね、きっと(笑)」
そう言って上品に笑う笑顔の裏には相当の苦労があったに違いないが、それを微塵も感じさせない接客業のプロ意識が真裕美さんから感じられ、私はひたすら尊敬するばかりだった・・・
自宅へ戻り、義母に夜バイトに行く事にしたと報告した
案の定、嫁が夜の仕事だなんて気に食わないと言わんばかりの反対・批判の嵐だったが、「もう決めましたから!」 ・・と、私にしては珍しく強い口調で言い切ったからか、義母も最後には諦めた様だった・・
その夜、夫が突然帰宅した
義母からバイトの件を聞いたのだろう・・が、夫は何も言わなかった・・
何も言われない方がかえって気持ち悪かったが、何か言われたところで私の気持ちが変わる事はないし、話もしたくなかったので私も何も言わなかった・・・
母はいつも暖かい笑顔で迎えてくれる
その笑顔を崩してしまう事に罪悪感を感じながら、私は麻里に話した内容を両親にも話した・・
母は、たまに実家に帰る度にやつれて疲れた様子の私に気付いており、『何かある』とは思っていたが、私から話すまでは・・と敢えて聞かない様にしていたらしい
優の性格からして、こちらから追求しても優は答えないのは分かっていたから・・と
母は夜ユウキを預かる事を快諾してくれた
母は実家に戻ってこいと言ってくれたが、父は私がまだ先の事を考えられず決心がつかないのなら、時間を掛けて考えればいい・・いざ離婚となった時は、俺がキッチリ話をつけに行ってやる!・・と言ってくれた
翌朝・・私は実家へと車を走らせていた
夜働きに出る為にはユウキを見てて貰わないといけない
義母にお願いするつもりは更々なかったが、実家の母に頼むとなるとこれまでのいきさつを話さなきゃいけない・・
心配掛けてしまうな・・
とても気が重い中、車は実家へ到着した・・・
その夜も相変わらず眠れない中、私は麻里の提案について考えていた
確かにこのままの状態でいい訳がない
夫と別れるにしてもユウキを抱えて生活していく為には仕事は必要だ・・かと言って自分に自信が無い今、就職できたとしてもバリバリ働ける自信は到底無い・・
夕方からのアルコールのせいもあってか、私は徐々に『やってみようか?!』と言う気になっていた・・
深夜、麻里にメールした・・
『私、やってみるよ!』
5分・・10分ぐらい経っただろうか、麻里から再び携帯が鳴った
「優?お待たせ! 単刀直入に言うけど、優、スナックでバイトする気ない?!」
「スナック!?・・えっ?!」
さっき電話を切った後、麻里はスグにスナックのママをしている知り合いに電話をかけ、バイトを募集していないか尋ねたらしい
「取り敢えず、週一でもいいって言ってたし、優はお酒も大丈夫だし何より見た目も全然OKだしさ、会員制のお店で身元の確かなお偉いさんばっかが来るお店だよ!」
「スナックかぁ・・・私に出来るんだろうか・・?」
「誰でも『初めて』はあるんだよ!出来るかどうかなんて、やってみなきゃ分かんないよ?」
麻里は昔から少々強引なところがある
慎重派の私の手をいつも引っ張ってくれ、だが決して無理強いはせず私の決断を待ち、尊重してくれる
「少し、考えさせて・・」
そう言ってその日は一旦通話を終了した・・・
少しの沈黙の後、麻里が口を開いた・・
「優・・優、ごめんね、何にも気付いてあげられなくて・・そんなに辛い思いしてたなんて・・・もう我慢しなくていいんだよ・・何でも私に話してね・・」
「ううん、麻里にまで心配掛けてごめんね・・今話せた事で少し楽になったよ・・」
「そっか・・それならいいんだけど、優、これからどうするつもり? 今のままじゃ、優が壊れちゃうよ!? 」
「・・・・・」
正直、これからの事なんて何も考えられていなかった・・
そんな私の性格を熟知している麻里が先に口を開いた
「優、今のあんたに必要なのは外に出る事だよ!・・バイトでもしてみない?」
「バイト?」
「そうバイト!優は今、旦那に浮気されて女としての自信を無くしてるんでしょ?だったらその自信を取り戻すんだよ!」
「どうやって?・・」
突然の提案に面食らっている私をヨソに、麻里は話を続けた
「ちょっと待ってて!後でまたかけるから!」
麻里は一方的に電話を切った・・・
私が落ち着きを取り戻すまで、麻里は電話の向こうでずっと黙って聞いてくれていた
「麻里・・ごめんね・・色々あったんだ・・・」
私は少しずつ話し始めた・・
夫の事、カナさんが帰ってきてからの事・・とにかく親や友達に心配掛けたくなくて今まで自分の中に溜め込んできた事が、まるで堤防が決壊したかの様に次から次に溢れてきた
麻里は私が一通り話し終わるまで、ただ「うん・・うん・・」と相づちを打ちながら聞いていた・・
そんな生活が3カ月も過ぎた頃、ある日親友の麻里から携帯が鳴った
麻里は大学の時からの友達だが、私が出産してからは忙しいだろうと気を遣ってくれ、月イチくらいのペースで電話のやり取りをしていた
そんな中、私からの返信が途絶えて心配したらしく、大丈夫かと電話してきてくれた
『優!? 元気なの? チビ居るからあんま連絡しなかったけど、メールも返事ないし、身体でも壊してんじゃないかと思ってさっ?! 大丈夫?!」
久しぶりの親友の声に、私は只泣きじゃくった・・・
流石に、幼子がいる自覚と自制心は残っていたので、昼間から呑む事はしなかったが、夕方以降、夕飯の支度時になると当たり前の様に、お茶代わりに缶ビールを空けていた・・
いくら呑んでも酔わない・・酔えない・・
いや、それなりに酔ってはいたのだろうか・・アルコールの量に比例して、夫と『多香子』の情事が頭に浮かび、想像で一杯になる
気が狂いそうだった・・・
それから数日・・夫は家に帰って来なくなった
たまに着替えを取りに帰ってきたみたいだが、私とは顔を会わせない様にしていた様だ
義母とは携帯で連絡を取り合っていたみたいだが、義母から私に伝わる事は無かった・・
私は夫の不倫が発覚して以来、一切食べ物を受け付けなくなった
代わりに、ユウキを授かってから口にしていなかったアルコールを身体に流し込んでいた・・・
泣きながら別れないでくれと訴える義母・・義父は相変わらず、こんな時は口を挟まない・・カナさんですら、黙って私と義母の様子を伺っている
「いや、お義母さん・・私もどうしたらいいか、今は何も考えられないんです・・」
「そうよね、そうだと思うわ、だから、結論は急がなくてもいいじゃない?・・ユウキと離れるなんて・・辛過ぎるわ(泣) ユウキだって、両親揃ってる方がいいに決まってる!」
他にも色々言っていたが、正直良く覚えていない・・
一方的に自分の願望をまくし立てる義母から解放された頃、私のなけなしの気力も体力も絞り取られ、倒れそうになりながら2階へと戻った・・・
気まずい雰囲気の中、義母からまず謝罪された
「優ちゃん、本当にご免なさい(泣) 貴嗣から話は聞いたわ・・・どんな理由があるにせよ、息子がした事が一番悪い・・(泣)」
思ってもみなかった言葉に、何て返したらいいのかしばし躊躇った・・・
私が言葉を探している間に、義母は話を続けた
「息子に全面的に非があるのは分かってる、分かっている上でお願い! 優ちゃん、離婚は思い留まってくれないかしら・・・ユウキの為にも!」
夫は先手を打っていた・・
義両親とカナさんに、私達夫婦の問題を(自分の都合のいい様に)話していた
女が出来た事は自分から話したみたいだが、それがあたかも私が原因であるかの様に伝わっていた
夫の思惑とは裏腹に、ある日義母から呼ばれた私は思いがけない言葉を聞く事となった・・・
結局一睡も出来ず、ユウキが起きるまで只ぼぉ~っとしていた様に思う・・
そのうち、夫が起きだし仕事に行く身支度を整えてる音を、私は息を潜めて聞いていた・・
やがて夫がいなくなり、腕の中のユウキを起こさない様そぉ~っと寝かせ、私は水を飲もうとリビングに出た
コップ一杯の水を飲み干したところで、身体の奥深くから激痛が走りその場にうずくまった・・
「胃が痛い・・」
どれぐらい泣いてたんだろう・・
ユウキは私の腕の中で、すやすやと安らかな寝息をたてている
外が明るみ始めていた・・
『こんな形で終わるのか・・』
怒り、悲しみを通り越し、ただ脱力感だけがあった・・・
夫は乱暴に大きな音でドアを閉め、寝室に引き籠もった
その音でユウキが目を覚ました
寝起きは特に痒がる・・
「ふぇ~ん!え~ん!・・」
「よしよし、ごめんね、おっきな音でビックリしたね、いい子いい子・・」
小さな我が子を抱き上げた時、堪えていたモノが一気に吹き上げてきた
「うっ・・うぅ・・くっ・・うぅぅぅぅ・・・・」
ユウキを抱いたまま、その場に泣き崩れた・・・
深夜0時をまわっていた
「書いて下さい」
私はもう一度、離婚届けとペンと印鑑を差し出した
「何だよ・・結局別れんのかよ・・・ふん!」
夫は半ばヤケクソな態度で離婚届けに殴り書きしていった
私はその様子を微動だにせず見つめた
書き終わったペンをテーブルの上に放り投げ、印鑑を同じく放り投げ・・「これでいいんだろっ!ふんっ!」
「有り難うございます。なるべく早く、身の振り方考えて出て行きます。」
私は静かに席を立った・・
私はそれ以上言葉を発しなかった
長い長い沈黙の間、夫は一度も私の目を見なかった
「別れましょう・・」
署名・捺印済みの離婚届けを夫の前に差し出した
一瞬、面食らった表情を見せた夫だったが、私が本気だと悟ったのか聞いてもいない事を喋り始めた
「ちょっ・・(汗)待ってくれよ(汗) ホントに多香子と一緒になる気なんてないんだよ?! 向こうだって最初から愛人希望で、2番目でいいからって寄ってきたんだから!」
「自分は主婦には向いてないって公言してるしさ」
聞けば聞く程ムカつく話だ
要するに相手の女も恋愛の美味しいとこ取りして楽しんでると言う事だ・・
「遊びで、女、抱けるんだ? ・・そんな人だったんだ?」
「いや・・・ だから・・・・・」
言葉に詰まった夫は、次に責任転嫁を始めた
「だってさ、お前だって悪いんだぜ?ユウキが出来てから、お前、変わったよな・・おフクロとお前の間に挟まれて俺だって辛かったんだ・・」
『はあ?!?!?!』
家の事には一切関知せず、見て見ぬフリ、俺には関係ね~を決め込んでた男のあまりの言い様に、今度は私がブチ切れた
「それが浮気の理由?・・あ、継続して付き合ってたんだから、浮気じゃなくて不倫だよね」
「・・・・・・・」
わめき散らす気も起きない、罵る言葉も出てこない
言葉では言い表わせない
それぐらい大きな怒りだった・・・
「随分と、ラブラブな人がいるんだね」
それからの沈黙に耐えきれなくなった夫は、自分から話し始めた
相手は仕事絡みのバツイチ女性であること、数ヶ月前からアプローチされていた事、酔った弾みでつい関係を持ってしまった事・・
夫が話し終え、また長い沈黙・・
「で?・・あなたはこれからどうしようと思ってる?」
「出来るなら、お前とやり直したい・・」
「どうして?相手とラブラブなんでしょ? 子供を手放したくないとかの理由だったら、それだけ愛し合ってるなら彼女もあなたの子供1人ぐらいは産んでくれるでしょ?! 実際そんな風なメールしてたじゃない?」
「いや、違うんだって(汗)結婚とか、そう言う類の女じゃないんだよ(汗)」
あくまでも遊びだと主張する夫・・
相手の事を遊びだったと聞いて安堵する一方、遊びで女を抱ける夫に嫌悪感が芽生えた
卑怯な男だ・・・
「隠してる事、あるよね?」
長い長い沈黙の後、夫が発した言葉は逆切れだった
「つ~かお前、何?人の携帯見た訳?」
「へぇ、あれ、やっぱあなたのなんだ? 違う事を祈ったけど・・。」
夫の性格からして逆切れは想定内だ
私はあくまでも冷静に、淡々と話を進めた・・
夕飯には必ず缶ビール一本晩酌・・アルコールに弱い夫はそれだけでほろ酔い・・
私はそんな夫の正面に座り、あくまで落ち着いた口調で問い掛けた
「何か、私に隠してる事、無い?」
途端に夫の目が泳ぐ・・
「何!?!? ・・何も、無いけど!?」
「あの黒い携帯、何?」
夫の顔から血の気が引くのが見てとれた
「?!?!?!」
「何?!何の事?!」
私は深い深いため息をついた
「この前、掃除してて偶然見つけてしまいました」
私は夫の目をこれでもか!と言うぐらい見つめた・・
こんばんは。一気に読みました。
しかし…
腹が立つね…
でも…
貴女は強い!
完結が待ち遠しい
きっと、貴女が幸せに過ごしてるって信じて…
文章能力も抜群だし、貴女は賢い!
頑張ってって言葉が相応しいかどうかですが…
この先も温かく見守って、愛読してゆきます。
いつもより少し早めに帰宅した夫は夕飯前にお風呂に入った
その間に夫のもう一つの携帯を探したが見当たらない・・
どうやら会社に置いて帰ったみたいだ
夫がお風呂から上がり、私も何食わぬ顔で温め直した食事を出す・・
夫が食べてる間、私はユウキと遊び、遊び疲れた息子はタイミング良く寝てくれた・・
やがて夫が食べ終わった
さぁ、戦闘開始だ・・
私の元々の性格だろうが、一旦決意したら行動は早い
市役所に離婚届けを取りに行き、何のためらいもなく署名・捺印した
その日はたまたま義両親とカナさん親子は揃ってお出掛け、外泊の予定だった
今夜しかない・・
私は腹を決めていた・・
それから丸2日、これからどうするのか、自分がどうしたいのか、悩んだ・・
よく、『男は浮気する生き物だから、女はど~んと構えてればよい』なんて耳にはしていたが、実際されてみるとそんな冷静にはなれなかった
まだ小さなユウキの事は勿論気に掛かってはいたが、当時の私が置かれている環境の中で、夫の愛情が唯一の私の救いだった・・それが不確かなモノになった
『離婚』
決意するのに、自分でも不思議なくらい、時間は掛からなかった・・・
その日、夫に対して(多分不自然だったに違いない)作り笑いをするのに必死だった
頭の中は夫と顔も知らない『多香子』の事で一杯だった
夫に隠れて、転送したメールを何度も読み返す
メールの内容から、『いつ』『どんな感じ』『付き合ってどのくらい』が見えてくる
自分の記憶を辿り、『あぁ、あの日、仕事の飲み会だって言って明け方帰って来た日だな・・あぁ、これは、いつもより上機嫌で不思議に思った日だな・・』
まるでパズルをしているかの様に、ピースがどんどんハマっていく・・
私は何かにとり憑かれた様に、1日中携帯と睨めっこしていた・・・
かいりさん初めまして☺
今、初めから全部読ませて頂きました🙇
ビックリする事に…うちの義家族にソックリ…
物の言い様…嫁に対する考え方…我が子を内の子発言連発(都合の良いときだけ)…などなど
スレを読んでいると、ユウキくんのアトピーの悪化は義家族からのストレスと比例しているようにしか思えません‼
私も産後すぐから…義母からの毎日の電話や過干渉で、ストレスが子供へ行ってしまい、それで毎日グズグズ&少し体が弱かったような気がします…
母と子はやっぱり一心同体だなぁと思いました。
一時期、限界の時は私と子供が有利に離婚できるように、旦那が浮気でもしてくれれば…と願う事もありましたが、今はどうすればみんな一番幸せになれるのか悩む毎日です…
早くかいりさんの'現在'が知りたいです。
更新、楽しみにしています🙇
一緒一緒‼と熱くなってしまい…長々と失礼しました🙇
初めまして✨
かいりサン🌱
今日一気に全部読ませて頂きました。
意外な方向への展開に 自分も主婦で人事とは思えず…
かいりサンを応援しています💖
負けないで欲しい…✨
続きをゆっくりでいいので待っています🌱
「ハンバーガー食いたくなったから買ってくるわ」
お昼に夫が出掛けたので私は再び寝室の携帯を確認しに行った
が、そこには携帯は無かった・・
持って出たらしい・・
30分後、買ってきたハンバーガーをたいらげ満足げな夫にユウキをお願いし、買い物に出るから・・と、自分のではなく夫の車に乗り込んだ
普段から車庫の駐車状況によって夫の車も使っていたのでそれは大丈夫だった
スーパーの駐車場に着き、夫の営業カバンを開けてみた・・・あった!携帯だ!・・・
夫が出てくるまで多分、ほんの数分だったと思うが、その間私の頭の中はぐちゃぐちゃだった
このまま携帯を突き付けて問いただそうか悩んだ
悩んだ末、私は携帯を元の場所に収めた
シャワーから上がった夫は一瞬、寝室に私がいるのに驚いた様子にも見えたが、私がいつも通りの態度を貫き通したので携帯を発見された事には気付いていない様だった・・
夫はいつもの朝風呂に入っている・・
いつ出てくるのか、ドキドキしながら私は携帯のメールのボタンを押した・・
そこには信じられない内容のやり取りがあった・・
『昨日は幸せだったよ❤やっぱHしたら眠たいよぉ❤ 愛してるよ💕 』
・・・メールの内容は全てこんな感じだった・・
その場にへたり混んで暫く動けなかった・・
一瞬、面食らったが、暫く考えた後、ユーザーを確認してみた
『夫のではありません様に』
ボタンをクリックすると、そこには夫の名前・・
『何で!?』 夫の携帯だ・・
指が自然に発着信履歴のボタンを押す・・
全て、同じ女の名前・・
『多香子』・・・
そんなある日、事件は起こった
寝室にある夫の仕事の書類をまとめてある戸棚・・ 私は滅多に触る事が無いのだが、その日はその棚にあまりに埃が溜まっていたので掃除しようとファイルを手に取った・・瞬間・・
『ゴトッ』
!?・・・見覚えの無い携帯が落ちてきた
その日を堺に、私達夫婦もギクシャクしてきた
外で働く夫になるべく家庭内の負担を掛けたくないと頑張ってきたのが、見事に裏目に出た
すっかりニート状態の小姑・・と言っても、遊びにだけはしっかり行くのだが・・
離婚のショックから立ち直れてないから・・とそれを黙認する義父母
家の中の事に全く関与しようとしない夫・・
私の中で燻っていたモノが噴き上げ様としていた・・
私の激痩せぶりに、鈍い夫も流石に気付いた
だが夫から出た言葉は、労いでも労りでも無く、そんな私を卑下する言葉だった
「お前最近痩せたよな?ど~したんだよ? あんま痩せると色気ね~ぞ?(笑)」
「ぶちっっっ!!!」
キレる音って、ホントにするんだ~・・・
「そんな事言わないでよ~(泣) 雅司が不倫なんてするなんて・・(泣)私なんて、もぅど~なってもいいんだからぁ~(泣)(泣)」
ウザイ・・・
カナさんがどうなろうが知った事ではないが、子供達はどうするんだ!?
離婚から3カ月・・今だに前を向かないカナさん・・母親にろくに面倒を見て貰えない子供達・・
そのしわ寄せは、全て私に回って来ていた・・
離婚して出戻ってきたカナさん
『旦那に裏切られた可哀想な自分』を全面に出し実家で好き放題・・
雅司さんには慰謝料・養育費をこれでもか!と請求し、子供達の為に・・と要求を全てのんだ雅司さんからは毎月きちんと入金されている様だ
雅司さんからのお金をあてにして、一向に働こうとしないカナさんに、流石に姑もキレた様だ
「あんた!いつまで家でゴロゴロしてるつもりなの!?子供抱えて片親になったんだから、これからどうするつもりなの?!」
カナさんの子供達は必然的に私が面倒みる様になっていた
アレルギー持ちの我が子に加え、両親の修羅場を目の当たりにして情緒不安定ぎみの姪・・まだ乳飲み子の甥・・・
カナさん夫婦の離婚が決まるまでの2週間で、私は5キロ痩せた
そんな中で雅司さんは、本当に心から安らげる、信頼できる相手と巡り合ってしまった
雅司さんはホテル住まいをしながら毎日カナさんの元を訪れ、『不倫』と言う行動をしてしまった事を詫び、全面的にカナさんの要望をのむ条件で『離婚』して欲しい・・と、何度も何度も頭を下げていた
それから数日間、家の中は修羅場だった
完全に自分を見失ったカナさんの悲鳴に近い罵声が飛び交い、義母の雅司さんを責める声、子供達の泣き声・・
嫌でも耳に入ってくる
カナさんは結婚当初から金使いが荒く、子供が出来てからも自分優先で遊び歩き、今回の里帰りでも分かる様に、結婚生活の中でほとんど雅司さんを顧みる事が無かった様だ
その時の私は只ただ面食らって、その場に居てはいけないと感じ2階に引き込んだ・・
その後も階下からはカナさんの罵声や泣き声が暫く続いた
後から分かったが、カナさんが長期に渡り家を空けている間に、雅司さんに好きな人が出来、不倫をしてしまったらしい・・・
さらに驚いたのが、そこにカナさんの夫・雅司さんが居た事だ
事前に連絡も無しに、突然やって来たらしい
「ふざけんなっっ!!? 絶対にっ!!!別れないからねっ!!!」
半狂乱のカナさんがティッシュの箱を投げつけて叫んだ
半分諦めていた頃、思いもよらない事件が起こった
一階の様子が騒がしく、カナさんの悲鳴にも近い泣き声!?怒鳴り声が聞こえてきた
恐る恐る下へ行くと、怒鳴り散らしながらそこら辺の物を投げまくるカナさんを姑が必死でなだめているところだった
「どうしたんですか!?何があったんですか!?」
そんなこんなでカナさんの出産から早や半年・・
『一体いつまで居るんだろう?』 聞きたくても聞けない・・
夫も流石に不思議に感じていた様で、ある日サラッと言ってのけた
「姉貴さ~、いつまで居るつもりなん? いつまでも旦那放っといてええんか?」
「いいのいいの。あの人は自分の実家が近いんだし、どうせお義母さんが世話焼いてるって~(笑)」
会話の感じからして、まだまだ帰ってくれそうにないなと感じて正直ガックリした
ある日、カナさんが「たまには一人で買い物でも行って来たら?ユウキ見ててあげるから~」 と言ってくれたので、下手に遠慮するよりは・・と、素直にお願いして出掛けてみた
買い物と言っても、普段の食料品の買い出しに近くのスーパーまで行っただけ、30分ぐらいで帰ったのだが、帰った途端「遅かったね~(ため息)ユウキと遊ぼうと思ったら、行ってスグ、タクが愚図りだしてそれどころじゃ無かったよ~↓」
「すみません(汗)急いだんですが・・」
その日1日、カナさんは私に対して恩を着せるかの様な態度だった
二度と甘い言葉には乗るまいと思った・・
ユウキの初節句・・実家の両親が立派な五月人形を送ってくれた
義母の言った言葉・・
「あらぁ、大きいの買って貰ったのね~。でも部屋が狭くなるわね(笑) 折角買ってくれるんだったら、もっと実用的なモノでも良かったのにね~(笑)」
普通そんな事言うか?!
私は両親の気持ちを踏み躙られた様で悔しいのと両親に申し訳ないのとで涙が出た
人間、睡眠が足りてないと思考や感情がおかしくなる・・を実感した
私の中でユウキが全てを締め、他の事が疎ましくてならなくなった
義母やカナさんの些細な一言にも過剰に反応し、嫁と言う立場から表に出すのを我慢した分、内に・・内にと溜まっていった・・・
ユウキのアトピーは相変わらずで、見た目は酷くなくても痒がって、夜は特に、寝付く時に体温が上がると痒い様で、眠るまで背中を擦ったり、夜中痒みで起きるのが当たり前で、その都度、酷い時は3、4時間、ずっと背中を擦ってやらなければいけなかった
私は慢性的な睡眠不足だつた
そんなこんなでカナさんの出産から早や、3カ月が過ぎた・・
いくら他県に嫁いでいるとはいえ、カナさんも生まれた子供も何の問題もなく元気なのに、里帰りとしては長すぎないか?
カナさんの旦那さん側のご両親も健在で、近くに住んでいる
『何で自宅に帰らないんだ?』
不思議に思ってはいても、私から聞く訳にもいかず、しかしひとつ屋根の下に義両親、小姑、その子供達と同居しているストレスが次第に私を蝕んでいた・・・
たまたま仕事から早く帰った夫が、鼻水ズルズルのミユキを見てカナさんに言った
「ミユキ風邪?! 2階に上げんなよ! 移るじゃん?!」
「何よぉ~! だって、ミユキが行きたがるから、しょうがないじゃん?」
「だってもクソもね~よ!俺は仕事忙しくて風邪引いてる暇なんてね~んだよ!!」
私やユウキを心配しての事ではなく、単に自分が移ったら嫌だと言う子供じみた理由に落胆したが、カナさんにハッキリ言ってくれた事でその時の私は安堵していた
別の機会にわざわざ夫に言いに行って貰っていたら、カナさんと義母はきっと私が言わせたと思うだろう・・
ムカついたものの、子供には罪はない
ミユキは私を慕ってくれていたし、私も血は繋がってないとはいえ、姪っ子の事は可愛かった
だが自分の子ユウキは守らなきゃいけない!
どうしようか悩んでいたが、この問題は意外にも夫が解決してくれた・・
そんなある日、今度はカナさんの娘ミユキが風邪をひいた
ユウキの時は移るのを嫌がって遠回しに追い出したのだから、当然、常識として私達への配慮はあると思っていた・・・
・・が、私が甘かった・・
タクヤに移るのを心配したのか、ミユキが2階に上がって来ても知らんぷり
逆に、2階に行っときな~って感じだった
流石にムカついた・・・
義母の関心がユウキに向けられた事で、カナさんは少なからず気分を害した様だった
私からしてみれば、別に義母を取り合っている訳でもないし、カナさんは実の娘な訳だし・・比べる次元が違うと思う
しかしカナさんはユウキと数ヶ月しか違わない自分の息子タクヤとユウキを、必要以上に比べていた様に思う
義母が常にユウキよりもタクヤを気に掛けていないと気が済まない様だった・・
それから数日間、ユウキはまた湿疹が出てケアして・・の繰り返しだったが、一度綺麗な状態を見た義母の態度は一変していた
あからさまに同情の態度だった
少しでも顔の湿疹が治まるや否や、すすんでベビーカーでの散歩に連れて行ってくれた
「今日は○○さんと会ったのよ~。貴嗣の子供の頃から知ってる人でね~、貴嗣にソックリで可愛いね~って言われたわぁ♪」
『貴嗣にソックリ』
この言葉が義母にとって何より嬉しかったらしい・・
レスに過去を振り返りと書かれているということは、今はお幸せなのでしょうか😔
こんなに心無い人が現実にいるんですね😣
私にはこんな苦労はなかったですが、読んでいて胸が痛みました😢
物語と主さんご自身のハッピーエンドを祈ります✨
これからもゆっくりの更新を楽しみにしています⤴
- << 92 あやさん、有り難うございます😄 当時の私は、自分の育った環境や常識とは違う、他の(夫の)育った家庭に馴染むので必死でした。何か違う?!と感じながらも、色んな考え方があるから・・と受け入れる姿勢だったかな・・。 今はと言うと、詳しい事は小説の進行上、まだお話し出来ないですが、数年前より間違いなく逞しく、図太くなったかも😅 よろしければこれからも応援して下さいね🐱
最初から一気に読んでしまいました‼
私自身が小さい頃アトピーだったこと、今初めての出産を間近に控えていることもあり他人事と思えず…💦
義両親とは別居ですが、出産予定日が遅れナーバスになり体調も優れない中、まだ産まれないのか、今から泊まりに行く等々こちらの予定を何も考えない義両親からの毎日の電話に精神的にも参ってたので、カイリさんの頑張りに胸打たれました😭
長くなってしまいましたが更新楽しみにしつつ、応援しています‼
- << 89 みなさん、有り難うございます😄 ご出産直前ですか⁉ ドキドキですね😆 義両親様も心配でたまらないのでしょうね💧 アトピーも大変でしたね😢 私は息子の痒みを理解出来ない辛さによく泣きました😞 ほんとに、代われるものなら代わってあげたい、痒い身体に産んでごめんねと・・。 長くなりましたが、無事のご出産、心よりお祈り致します。
ユウキを見る義母の目が変わった
「ウチの子、こんなに可愛いかったのね~♪♪♪」
出たよ・・「ウチの子」・・
それでも私は義母がユウキを認めてくれた様で嬉しかった
嬉しそうな義母の隣で、おもしろくなさげなカナさんの顔を、私は見逃さなかった・・
玄関を開けるとリビングから楽しそうな笑い声が聞こえた
他人の私が居ない事で、親子で随分とリラックスした感じに聞こえたのは私の邪推だろうか・・
「ただいま。帰りました。」
「あら、ユウキ、良くなったの?」
「はい。もうスッカリ治りました。お肌の調子もいいですよ。」
「あらぁ?!ホントっ!綺麗になったわねぇ!・・
あら?こうして見ると、貴嗣の赤ちゃんの時とそっくりね~♪」
実際、顔のジュクジュクした湿疹が無くなり腫れが引いたユウキの顔は、父親の顔にそっくりだった
生後すぐの時より益々似てきていた
その頃の私は既にどこかおかしかったのかもしれない
湿疹が引いた事で、ユウキの苦しみがやわらいだ事よりも、『あぁ、これで義母やカナさんに嫌味言われなくて済む・・』と言った安堵の気持ちの方が先にたっていた
風邪が治り、あれだけ酷かった湿疹もウソの様に綺麗になった
今から考えると、たまたま風邪が治ったのと同じタイミングだったのと、ステロイドで一時抑えられただけだったのだが、その時の私は今までで一番と言っていい程の綺麗な赤ちゃん肌のユウキを見てひたすら歓喜した
それから3日間、ユウキの症状がスッカリ良くなるまで、私は実家で過ごした
完全に治るまで、帰っても何言われるかは分かっていたし、私が何か言われるより、ユウキが蔑ろにされるのが可哀想でたまらなかった
ただ、この3日間、義母からの電話は毎日あった
私の携帯ではなく実家の家電に・・
母が出て、ユウキを心配する口調で話すらしい
母と話した後、私と代わるのだが、「ユウキ治った?いつでも帰っておいでね?」
『アンタが追い出したんだろ?!』
喉まで出掛かった台詞・・
社交的で口達者な義母・・私の両親に、孫を心配している良き姑を演じるなんて、造作もない事・・
「ふぇぇ~ ふぇぇ~」
泣き声で再び目が覚めた時、外は夕焼けに染まっていた
「え!? 今何時!?」
ビックリして泣き声のする方向を見ると、母がユウキをおんぶしてミルクを作っていた
母は笑顔で「あら、起きちゃった?ユウキはミルクの時間だね。私があげとくから、もっと寝てていいよ」
「いやぁ、凄い寝た(笑)何回か、ユウキ泣いたんじゃない?全っ然、気付かなかった(汗)」
「大丈夫よ~。優が寝られて良かったよ。」
母親の有り難みを深く感じた・・
実家に帰り安堵した私の気持ちが伝わったのか、心なしかユウキの機嫌も良くなった
母が、「みててあげるから少しでも寝ておきなさい」と言ってくれたので横になると、私の意識はすぐに遠退いていった
・・「ハッ?!」
ヤバイ!?思いっきり寝てた!? ユウキは!?
どのくらい時間が経ったんだろう・・・ユウキは母の腕の中でスースーと寝息をたてて眠っていた
「あぁ、良かった。鼻、詰まってないみたい・・」
そんな事を考えながら、私の意識は再び遠退いていった
まるでユウキがバイ菌扱い!
義母が下に降りた後、悔しくて悔しくて、ユウキを抱き締め声を殺して泣いた
何を言われてもこの家で看病してやろうかとも思ったが、もしもカナさんの子供達が風邪をひきでもしたら、「ほれ見たことか!」と言われるのは目に見えてるので、私は実家に帰る事にした・・
実家に電話し事情を話すと、母は帰宅を快諾してくれた
夫にも電話で伝えたが、案の定、返事は「ふぅ~ん、そう。」だけだった
手早く荷物をまとめ、実家で出迎えてくれた母の顔を見た途端、心身共に疲労していた私は涙をこらえる事が出来なかった・・・
ユウキが風邪をひいてから、2階には寄り付きもしなかったのに・・
「あ、お義母さん、おはようございます。」
「おはよう。ユウキはどう?」
「はい。熱は下がったんですが、まだ鼻水鼻詰まりで苦しいみたいで・・機嫌悪いです。」
「そう。あのね、思ったんだけど、優チャンも大変だろうし、実家のご両親には頼れないの?」
「???えっとそれは・・?」
「ほら、私も手伝ってあげれない事もないんだけど、なんせ今はカナ達も居るじゃない?優チャンも自分の親の方が、遠慮なく手伝って貰えるんじゃないかと思ってね。カナとも話してたのよ~」
寝不足で頭が回らなくても、遠回しに『実家に帰れ』と言われているんだと分かった
夕飯を済ませた夫は一度もユウキに近付く事なく、そそくさと寝室に引っ込んで行った
まるで自分に移ったら嫌だといった感じで・・
その晩はユウキをずっと抱っこして、私は座った状態でうつらうつら出来ただけだった
翌朝・・・
夫が出勤し、熱は下がったが鼻詰まりと痒みで相変わらずグズるユウキをおんぶして家事をしていると、リビングのドアをノックする音がして出ると義母だった
深夜、帰宅した夫はユウキの状態を伝えて知っているはずなのに、開口一番、「今日のメシ何?」だった
「はぁ??!」と思ったが口に出したらどうなるか分かっていたし、今の状況で口論するパワーは残って無かったので「カレー」と一言呟いた
カレーは夫の大好物
ルーはインスタントのを使うのだが、これは手抜きにならないらしい・・
具材を煮込んでいる間は私もユウキをみてあげれるので夫の機嫌も損ねず私には楽なメニューだ
はじめは軽く鼻水が出る程度だったので1日様子をみていたが、赤ちゃんは急変する・・
翌日には熱が39度を超えた為、すぐに近くの小児科へ連れて行った
幸い、普通の風邪と診断され、水薬を飲ませて様子をみる事に・・
カナさんの子供達に移してはいけないと思い、カナさんの上の子ミユキに2階に上がって来ない様に注意して貰った
高熱と鼻詰まりで苦しい上、体温が上がって痒みも酷いのか、ユウキは殆んど眠れなく1日中グズグズと泣きっぱなしだった
免疫力が落ちたからなのか、湿疹の状態も最悪だった
そうこうしている内に、いよいよカナさんが男の子を出産し、家に帰って来た・・
毎日の沐浴は当たり前の様に義母とカナさんで2人掛かり・・赤ちゃん1人に対して常に2人でお世話をしていたにもかかわらず、カナさんはいつも「大変っっ(苛)」と愚痴っていた
そんな中、ユウキが初めての風邪をひいた・・
それから暫くして、カナさんが出産を控え里帰りしてきた
「優チャン宜しくね~♪」
何を宜しくだか・・
基本的には上と下なので、ウチはウチ・・と考えていた私が甘かった・・
カナさんは臨月のお腹をかかえて出歩くのも億劫だとかで、「ユウキ見せて~」と言っては頻繁に上がってきては、ユウキの機嫌の良い時だけ連れて降りる
ユウキが少しでもグズると下から大声で、「ママがお迎え来ないね~、ママ、何してるのかな~?可哀想ね~」
流石、あの義母の娘!? 言う事がソックリですわ。
この頃には私も大概慣れてきたので、テキト~に頃合いを見計らってユウキを連れに降りる様にしていた
結局ユウキをおんぶしながら家事をする
料理にうるさい夫のリクエストで揚げ物・・
油が跳ねるのでユウキをおんぶしていたくない・・けど仕方がない・・
一番長い菜箸を使い、目一杯腕を伸ばして火から離れて数種類の天ぷらを揚げる
天ぷらを揚げながら、ぼ~っと考えた
ユウキがお腹に出来た時、あんなに喜んでくれた夫は何だったんたろう・・
同居するまでは、ユウキが多少むずかっても一生懸命あやしてくれていた
同居した途端、夫は夫ではなく父親でもなく、息子に戻ってしまった・・
休日の夫・・ひたすら寝てるかゲームしてるか・・
たまにユウキをお願いして面倒みてくれたとしてもほんの10分・・
ユウキが泣き出して自分の手に負えないと、すぐに義母に押し付ける
押し付けられた義母も迷惑顔で「あらあら、ママはどうしたの~?」
2階の私に聞こえる様に大声で大げさにあやす・・
用事なんて出来ない・・
すぐにユウキを迎えに行って、義母に愛想笑いをする・・「すいません💦 お義母さんも、忙しいのに・・」
うちの子供はもうすぐ4歳です😃
生後2ヶ月からアトピーと診断され2歳位まではピークでした💧
今は殆ど通院もしていません😃
食物アレルギーもありチーズを食べると今でも蕁麻疹が出ますが他は大丈夫です
😃
アトピーが良くなれば喘息の方になる方もいますが今のところ大丈夫です😃
頑張って続けてくださいね😃拝見させて頂きます😃
こんばんは、はじめまして何か気になって読んでました😃
うちは、嫁姑問題はないですが3人目がアトピーで大変な思いしました💧
私も原因が解らずに自分を責め旦那からも責められました😂
色々調べて旦那の方が小児喘息がありアトピーと関係があること知りました💧
3歳ぐらいから大分良くなりもうすぐ4歳になりますがその時のことを思い出して
レスさせて頂きました😃
頑張って続けてください😃
「ユウキが痒くて寝れないみたいでね、私も寝不足で貧血も出てきたみたいで気分悪い時あって、休みの日、たまにだけでもユウキと一緒に寝てくれるとありがたいんだけど・・」
義母とのやり取りは省いて、精一杯、言葉を選んだつもりだが、夫から返ってきた言葉・・
「あぁ??
休みの日ぐらいゆっくりさせろや~!?」
ユウキの状態は日々のケアをしていてもあまり改善されず、昼夜問わず痒くて機嫌が悪く、まとまって寝ない・・
挨拶代わりの様に「可哀想ね~」を繰り返し、口だけ出してユウキに近寄らなくなった義母・・
睡眠不足と義母とのやり取りでストレスが最大に溜まったある日、夫に気持ちを話してみた
今までは、男の人は仕事が大変だから・・家庭の事は私が切り盛りしなきゃ・・と考えていた
そんな私の考えが、夫を甘やかしていたんだと後になって気付く事となるのだが・・・
どちらの責任とか、そんな事問題じゃないし、問題にする事の方がおかしいと私は思う
大事なのはユウキの苦痛を、いかに軽くしてあげるか・・
泣く事しか出来ない赤ちゃんは、痒くて痒くてひたすら泣いていたんだとようやく理解できた頃には、ユウキは全身包帯でぐるぐる巻きの状態だった
「どうしてアトピーなんてなっちゃったのかしらねぇ~。貴嗣もカナも、何ともなかったのにねぇ」
まるで母親の私の責任であるかの様な言い方
私は知っている・・・
夫の貴嗣は小さい頃、小児喘息で身体も弱く、入・退院を繰り返していたそうだ
子作りする際、夫が私に話していた
「俺に似たら、もしかしたらアレルギー持ちの子が生まれるかも」
全身が赤く爛れ膿が出る・・
卵アレルギーと診断され粉ミルクもアレルギー用に変え、出された薬を塗り掻かない様に包帯で覆い・・
そんな中、毎日の様にユウキを見る度「可哀想ね~」と連呼する義母
「外に連れてって知り合いに会ったらビックリされるから、恥ずかしくて見せれないわぁ~」
信じられない言葉だった
孫はあんたのお飾りなのか!?
オムツの上からだったので、ユウキはビックリして泣いた様子だったが、この日を堺に私の中でユウキに対する罪悪感と、「この子が居るから」と言う責任転嫁の気持ちが交錯した
思えばこの頃、ユウキはアトピーと診断され湿疹は全身に広がっていた
アレルギーの専門医に掛かり、治療を受けていたにもかかわらず症状は悪化するばかり・・・痒くて泣いていたのだ・・
義母が投げた後も、私はひたすら泣き止まない我が子をあやしながら、何とも言えない感情に襲われた
「何で!?何でそんなに泣くの!?あんたが泣くから親が来るんだ!?泣くな!!」
『ぷぎゃあ~!? あぁ~!あぁ~!あぁぁぁぁ~・・・』
ユウキの悲痛な泣き声に、ハッと我に返った
いたいけな我が子のお尻を、思い切りひっぱたいてしまった・・・
ユウキが泣く・・・
何がそんなに悲しいのか・・・
ミルクもあんまり飲まないし、あやしても抱っこしてもおんぶしても泣き止まない
気分転換にと外に連れ出しても泣く・泣く・泣く・・
たまらない様に義母が「かしてみなさい!?」
ほんの10分ぐらいで、「何でこんなに泣くの!?赤ちゃんは泣くものだけど、こんなに泣き止まないのは普通じゃないわよっ!?」
「私じゃダメみたいだから、ママに返すわね~」
義母はそそくさと下に降りて行った
・・・朝起きると同時に大泣きのユウキ・・・
と、同時に階段を上ってくる足音・・・
毎日毎日がこんな繰り返しで、いい加減ウンザリしていた
それでも顔に出さない様、努力はしたつもりだ
私のストレスは次第にユウキに向けられる様になった
『ユウキが泣くから親が来る・・ユウキが泣くと親が・・親が・・』
何の罪もない赤ちゃんのユウキ・・
頭で分かっててもどうにも出来ない感情が生まれる
「お義母さんに、お任せします。」
そうとしか言い様がなかった
車庫の改築は、日曜大工が趣味の義父が皆の反対を押し切って決めたものだ
業者に頼めば時間もコストも節約できた出来たものなのに
義母は、お金が絡む話は決して息子にはしない
同居したばかりで嫁が遠慮しがちなのをよんでいる
「あらぁ♪そう言ってくれるなら、優ちゃんとこのお祝いは、車庫に使わせて貰うわね~」
義母の勝ち誇った顔をまともに見る事が出来なかった
「お早うございます。」
寝癖の付いた髪を慌てて1つにまとめ、できるだけシャキっとした顔で降りた
「お早う。昨日ね、優ちゃんのお父さんから新築祝い頂いたんだけど、凄いわねぇ、20万も入ってたわぁ♪」
新築祝いの相場は地域によっても違うのだろうが、冠婚葬祭をいくつも経験してきた父の事だ、妥当な金額なのだろう
「新築と言っても改築だし、ウチの兄弟なんて1万ずつよ~(笑)まぁ、私がそれでいいって言っておいたんだけどね~。優ちゃんのお父さん、気を遣って上と下とで2軒分くれたのね~♪」
「はぁ、そうですか・・」
「それでね、折半するのがホントなんだけど・・」
義母は、何が言いたいのか分かってない私の顔をチラッと見てから目線を反らして続けた
「ほら、車庫の屋根はお父さんがする事になってるじゃない?材料の木材とか色々、買わなきゃいけなくてね ・・あと、昨日の会食もウチが出したし・・」
そこまで言われたら私も分かった
要するに全額よこせと言いたいんだろ?
終始ご機嫌だった夫はそんなやり取りに気付くはずもなく、いい感じに酔っ払って家に帰るなり高イビキだった
翌朝・・・
仕事が休みの夫は昼までご就寝
一方、年寄りは朝が早い
一階の掃除機の音で目が覚め、時計を見ると6時だった
夕べの外出で興奮していたのかユウキは夜中いつもよりグズり、私も寝不足だった
ドアの開け閉めや何の音か分からない音でとにかく煩い
ユウキも起きてしまったのでそのまま起床し、顔を洗っていると下から呼ぶ声がした
一瞬だったので多分父も母も気付いてなかったとは思うが・・
「あらぁ、お父さんもお母さんも、ユックリ召し上がって下さい~♪ ユウキは大丈夫ですからぁ~♪」
そんな風に言われたら、両親も「すいません、頂いてます・・」 としか言い様がない・・
義母は話もそこそこに、自分の姉達に孫を見せびらかしに席を離れて行った・・
「また今度、ゆっくりそっち帰るから・・ごめんね・・」
「おぅ!あんまり帰って来られても困るけどのぉ(笑)」・・私の心中を察してくれた父が笑いながら言った・・
宴席の間、義両親はユウキにベッタリだった
孫の面倒onlyと言っても過言ではない程、親戚そっちのけで・・
私の父が、「ユウキ、ちょっと見ない間に大きくなったな~♪」 と抱き上げた
母も嬉しそうに抱っこした・・
「大きくなったでしょ~♪」
やっと両親のそばに座れたや否や・・・私の目の前で・・私の両親の腕から孫をむしり取ったあの顔を・・・今でも忘れない・・・
宴席が始まってすぐ、義母に言われた・・
「こっちの親戚皆、お酒呑まない人ばっかりだから、呑むの、優ちゃんのお父さんと貴嗣とウチの姉の旦那だけだから、宜しくね」
何を宜しくかその時は分からなかったが、すぐに判明した
義母は、なぁ~んにもしなかった
私の中では招待した側が来てくれたお客さんをおもてなしする・・ぐらいはあったので、お茶を配ったり大皿の料理を取り分けたり・・と、座る間もなくとにかく動いた・・
夫はいい感じに酔ってご機嫌だった
私の両親は居心地悪い思いをしていた・・
私の様子を心配して、自分達は早目に引きあげるから・・と言ってくれたが折角だからと居て貰っていた
親戚が集まりひと通り家の中を見て回り、会場をホテルへと移した
夫の親戚と言っても、私達の結婚式の折に顔合わせして挨拶した程度の方がほとんどだったし、初対面の方もいた
そんな中、会食が始まった・・・
引っ越して二週間・・そろそろ落ち着いた頃を見計らって、親戚が集まり新築祝いがあった
料理が苦手な義母は接待するのも苦手らしく、近くのホテルでの会食となった
「ほら、ウチで食事するって言っても、みんなで集まると狭いからね~」
義母の鶴の一声でそう決まった
私の方は両親だけしか呼ばず、夫の親戚は義両親の兄弟その子供(夫の従兄弟)まで招待していた
同居翌日から、義両親の「大丈夫?」攻撃が始まった
ユウキが泣き始めるや否や、すかさず2階に上がってきては「大丈夫?」
聞き耳でもたててるのかと思う程、2階の様子を熟知していた
私は気が休まる時が無かった
少しでもユウキが泣こうものなら、義両親のどちらかが上がって来る
思う様に育児が出来ない・・・オチオチ昼寝もしてられない・・部屋をきちんとしとかなきゃ・・洗い物、たまってないよな・・あ、洗濯カゴ、出しっぱなしだったかも!?
毎日がこんな感じで、ユウキの夜泣きで睡眠不足な上に昼間も育児以外で神経尖らせていなければならなかった私は、次第に壊れていった・・・
「あ、お義父さん、大丈夫ですよ、お腹が空いたみたいで、今からおっぱいあげますんで・・」
「ほうか、ほうか、ユウキは腹ペコかぁ~(笑) 可哀想になぁ~(笑)」
・・と、言いながらユウキを抱き上げあやし始めた
流石に義父の前でおっぱい出して授乳するのは恥ずかしい・・
どんなにあやして貰っても、お腹が空いた赤ちゃんの機嫌が直る訳がない・・
空気が読めない義父に、授乳したいので下に行っててと言える度胸がその時の私にはまだ無かった・・
「ふやぁ~ ふやぁぁ~」
目が覚めたユウキが泣く・・
「おっぱいだね~、ヨシヨシ、お腹空いたね~」
シャツをめくり上げ、乳房をあらわにした瞬間、一気に階段を上ってくる足音!?
「どうした?!泣いとるな?! 」 義父だった・・
何とか引っ越しも終わり、新居での初日・・
「これから宜しくお願いします」
「はいはい宜しくね♪ユウキは面倒見るから、遠慮なく言ってね?」
「はい・・」
正直、気が重かった
ユウキはもう外に連れ出せる月齢だ
買い物にも連れて行ける・・
近くの公園や育児サークル・・一緒に行くのが楽しみだった・・
『世の中には孫に無関心な姑も居るって言うし、私は恵まれてるよな・・』 そう思い込んだ・・・
勿論、私も言われるがまま、されるがままで済ませてきた訳ではない
可愛い自分の子供・・自分で面倒見たいに決まってる!
何度かやんわりと断ったのだが、60を過ぎた口達者な義母にかなうはずもなく、同居を考え衝突したくなかった私は仕方なく義母に預けていた
今思えば、たとえ喧嘩になろうとも自分の育児を貫くべきだった・・
弱い母親だった・・・
翌月、私達の新居への引っ越し・・
引っ越しは、少しでも料金を節約したかったので自分で梱包して運び出して貰うタイプのプランにしていた
乳飲み子を抱えての引っ越し準備は大変だった
相変わらず仕事が忙しく帰って食べて寝るだけの夫は当たり前の様に全て私任せ
日に日に増えていく段ボールを横目で見ては、「ふ~ん・・」 だけだった
当日はユウキは義両親に見て貰う事になっていた
この頃には母乳とミルクの混合になっていた
引っ越すまでの数ヶ月、昼夜問わず義母は突然やって来て、見ててあげるからと私を買い物に行かせ、その隙にミルクをあげて自分の思う様に育児していた
おっぱいが張っていてもお腹いっぱいのユウキは当然飲まない・・の繰り返しで、すっかりペースも狂い、赤ちゃんに吸って貰えないおっぱいは次第に張らなくなっていた・・
「いや・・あの・・ 幸いおっぱいも溢れて絞るぐらい出てますし、経済的にも母乳の方が・・(苦笑)・・お気遣い有り難うございます・・」
姑、小姑に詰め寄られ、言葉を選びながら返答したつもりだったが夫は気にいらなかった様だ
「い~じゃん見てくれるっつ~んだから見て貰えば!ホントお前は可愛げね~よな~。それに何?経済的にって。俺の稼ぎが少ないとでも思ってる訳?!」
どうしてそんな風にとらえるんだろう・・
義父はこんな時、決まってだんまりを決め込む
女2人の口達者には適わないと分かっているからだ
その日は何とかなだめて仕出しの御節を囲んでアパートに帰った・・・
「キャハハ♪そぅそぅ(笑)お母さんの定番だったよね~、スーパーのポテサラ(笑)」
「優チャン駄目だよぉ、貴嗣は家庭料理に憧れて結婚したんだからさぁ (笑) ユウキがグズったら、ミルクにしたらいいんじゃない?ミルクの方が良く寝るって言うよ? 」
待ってましたとばかりに義母が言った
「そうよそうよ♪ ミルクだったら私があげれるし、優ちゃんもその間手が空くから楽になるわよ~」
夫は笑っていた
「ま~仕方ね~よな~。姉ちゃん元から料理あんま得意やねぇやん? 笑 オフクロに似て~ 笑」
「失礼ね~ (笑) ま、お母さんも作るの嫌いで出来合いとか多かったもんね~。 雅人も何にも言わないし、い~んでない?(笑)ミユキもベビーフードばっかだったけどちゃんと育ってるもんね~(笑)」
カナさんは更に続けた
「そ~言えば優チャン、ユウキの湿疹酷くなってるけど、母乳でしょ?優チャンちゃんとした栄養のあるもの食べてる~?」
何だこの会話?! 今の今までレトルト万歳な話じゃなかったか?!
笑って聞き流そうとした横から、今がチャンスとばかりに夫が口を挟んだ
「いやぁこの前さ~、ユウキがグズったか何だか知らね~けどスーパーのポテトサラダが出てきてさ~、オフクロの飯で食い飽きたっちゅ~の!(笑)」
ユウキ、生後2カ月・・
新居が完成した・・・
義両親は先に引っ越しを済ませ、私達はアパートの契約の都合で翌月の月末に引っ越す事にしていた
新年を迎え、お正月を綺麗な新居で迎える事となった義母は上機嫌
カナさんも子供を連れて里帰りしていた
「明けましておめでとうございます」
挨拶もそこそこに、上機嫌の義母は娘と談笑・・
「お腹、大きくなったわね~♪2人目だし、今度は余裕もあるでしょ♪」
「そんな事ないよ~、やっぱお腹おっきいと動き辛いし上がいるからね~、最近は旦那のご飯も手抜きしまくりっ(笑) デパ地下の惣菜コーナー御用達よっ(笑)」
生後2・3週間の頃から、ユウキは顔や頭に湿疹が出来ていた
1ヶ月検診では乳児湿疹と言われ、軽い軟膏を渡されたが湿疹は日をおうごとに悪化していた
心配で受診したがやはり乳児湿疹と言われ、様子を見る様に言われた
この頃から昼夜問わず、ユウキはグズる様になった
『この人、何言ってんの?! 私が体調悪いのもユウキに手が掛かるのも知ってるじゃん?!』
喉まで出掛かった時、やっとで寝かしつけたユウキが大泣きし始めて慌てて抱っこした
「ふん!」
夫は仕方がない様子でお惣菜のポテトサラダだけ除けて夕食を食べ始めた
今まで、こんな風に言われた事なんて無かった・・
夫の意外な一面を見て、その時はただ戸惑うだけだった・・・
「ごめんなさい・・・」
突然の言われ様に返す言葉も無かった
そこで終われば今後私が気を付ければいい話で済んだだろうが、夫は余程気にくわなかったのか、更に続けた・・
「大体さ~、子供が生まれたからって、1ヶ月も我慢してお前の実家に通ったんだぜ? 仕事帰りにわざわざ寄るのって、どんだけしんどいか分かる? お前の親の手前、毎日子供の顔見に寄ったけどさ~ やっと帰ったかと思ったら、手抜き料理食わされる羽目になるとはな~・・」
「だ~か~ら~、ユウキは関係ないだろ! お前が作るの手抜きしただけだろ?!子供が出来たからって、俺の事疎かにしていい訳?」
子供は子供、自分は自分で分けて対処しなければいけないらしい・・
「そんな事言ったって、おんぶしながらご飯作ってたけど泣き止まないし、外に連れ出して歩いたりしたけど・・・」
言い掛けの私の言葉を遮る様に
「だからそれが何だっての? 飯もまともに作れん言い訳になると思ってんの?」
アパートに帰って、何とか家事・育児をこなしていたが、ある日夕飯の支度にてこずり結婚してから初めてスーパーで買ってきたお惣菜をおかずの中で一品出した
「は?何これ? 俺、出来合いって、あり得ないんだけど・・」
「!?!?・・ごめんね、今日はユウキの機嫌悪くて大変だったんだ・・」
自慢じゃないが私は料理は得意な方で作るのも好きだ・・調理師の学校を出て免許も持っている・・結婚してから色々と夫に振る舞ってきた
それに慣れた夫はたった一品のお惣菜に我慢が出来なかった様だ
実家での生活が1カ月もした頃、「そろそろアパートに帰ってこないか?」 夫が聞いてきた
もともと私も長くても1カ月ぐらいのつもりだったのだが、予想外に産後のひだちが悪く、まだ家事・育児を一人でこなせる自信がなかった
日頃の様子を見ていた母も心配して、「もう少し様子をみたら?」と勧めてくれたが、どうやら夫は仕事帰りに実家に寄ってからアパートに帰る生活がそろそろ嫌になってきた様だった
不安はあったが、妻として夫にいつまでも不自由させてはおけない気がして、3日後の週末、夫の休みの日にアパートに帰る事にした
夫も毎日仕事帰りにユウキに会いにきてくれた
まだ寝てばかりのユウキの姿を、珍しそうに側でジィっと見てたり、タイミング良く起きてる時に出くわすと「おっ♪」と嬉しそうに目を輝かせたり・・意外と子供好きな面を覗かせていた
退院してから実家に帰った私は、ユウキに合わせて寝て起きて・・の生活だった
少しずつでも動きたかったが産後の体調も思わしくなく目眩が酷かった
義母は毎日の様に実家に訪れては寝ているユウキをお構いなしに抱き上げ、自分の気が済むまで赤ちゃんの匂いを堪能していた
「ユウキちゃん♪ばぁばですよ~♪ ほんとユウキちゃんは貴嗣にソックリね~♪ ウチの子!だわね~♪」
義母は何かにつけ「ウチの子」を連発していた・・私の両親の前で・・
私の母は複雑な表情で黙って聞いていた
「ごめんねお母さん、お父さんとお母さんにとっても血の繋がった孫なのに・・」
義母が帰った後申し訳なさそうに言った私に母は、「何言ってんの。あなたは嫁に出したんだから・・それに良かったじゃない?ユウキの事、大事にしてくれて。」
確かにそうだが若い私には義母の独占欲がどうにも受け入れ難かった
・・・産んで二日目の初産婦に言う言葉だろうか・・
母乳は、赤ちゃんにどんどん吸ってもらって出る様になるものだからこれから増えると看護師さんは言っていた・・
それにカナさんよ、上の子ん時、確か完ミだと言ってなかったか・・?
赤ちゃんがちっちゃいのは当たり前でしょ・・・
なんかムカついた
「まあまあ、優ちゃん、出産おめでとう。元気な男の子で良かったね。」
カナさんの旦那さんの雅人さんがお祝いの言葉をかけてくれた
雅人さんとは数える程しか会った事なかったが、いつも穏やかな感じで優しいパパさんて印象だった
「有難うございます。遠いところをわざわざ来て頂いて・・」
カナさんの暴走を遮ってくれた事への感謝の気持ちも込めて、私は深々と頭を下げた・・
顔を見るなり真っ先に言われた言葉
「すみません・・・慣れなくて・・・」
やっとで返した言葉も聞こえていない様子のカナさんは、私の腕の中でスヤスヤ眠るユウキを半ば強引にむしり取った
「うわぁちっちゃい! こんなちっちゃくって大丈夫なの!? おっぱいも時間掛かってるみたいだし、あんまり飲まないとか?! ウチの子ん時はそんな事無かったよ~? 大丈夫? 優チャン おっぱい大きいのに、中身なかったの~? 笑」
私は更に焦った
スムーズに授乳出来ない焦りと、病室の外で人を待たせている焦り・・
看護師さんにお願いして、一旦授乳を休憩し、ユウキを抱っこして待合室に出た
待合室では義母とカナさん一家が首を長くして待っていた
「あ~、やっと来た~♪ もぉ、今日は諦めて帰ろうかと思ってたよ~ おっぱい中って聞いてたけど、15分も待ったよ~ 何でこんなに時間かかるの~?」
『遠いところを、わざわざ有難いな・・』
素直に感謝した
病院に来てくれた時タイミング悪く、ユウキを起こし始めて悪戦苦闘していた
看護師さんにも手伝ってもらいながら、何とかおっぱいをくわえさせ、半分寝てる状態のユウキに授乳させ様と必死だった
半泣きになりそうな時、別の看護師さんが部屋に来た
『あのぅ、ご親戚の方がみえてまして、赤ちゃんまだ見れないのか・・と仰ってまして~・・授乳中だとはお伝えしたんですが・・・』
産後二日目、まだ母乳が少ししか出ていなかったにも関わらず、3時間ごとの授乳 ・・授乳の為に起こさなければならなかったが、新生児はとにかく寝る寝る・・の寝てばかりで、一時間かけて起こしてやっと母乳を吸わせて・・の繰り返しで自分が休む暇など無かった
初めての育児で、『やらなければ』と言う気持ちが強かった
私の元々の性格もあるのだろうが・・
そんな時、カナさん一家が弟の初の子供を見る為に、県外から駆け付けてきてくれた
程なく私は元気な男の子を出産、夫の名前からひと文字使い、『祐貴』と名付けた
夫にソックリなユウキに義両親はメロメロ(笑)
二人が無類の子供好きだと判明するまでそう時間はかからなかった
のちに私はこの子供好きっぷりに悩まされる事となる・・・
夏も終わりに近づく頃、新居の工事が始まった
工事期間中は義母とカーテンや内装で必要な物を選びにいったり、ベビー用品を買いに行ったりする以外はのんびりと穏やかな生活だった
体調がすぐれなかった私は予定より早く里帰りしていた為、毎日仕事帰りに夫が寄り、ご飯を食べて夫婦の時間を過ごした
夫は私のお腹に手を当て、「お!今、蹴ったな~♪」と嬉しそうに目配せする
愛されてる・・・そう実感できるのが嬉しかった
妊娠も後期にさしかかり、私は軽い妊娠中毒症が出ていた
もともと貧血気味だったのだが、妊娠した事で更に悪化していた
そんな中、新居の打ち合わせで夫の実家へ何度も通い、家の内装を決めていく・・
新居は玄関だけ一緒で、後は完全に別々の二世帯住宅だったので、私達の住む2階は私の好みで決められたので良かったが、クロスの色やタイプ、ドアをどれにするかなど、細かい事は気にしない~の夫に全て任せられてしまったので、カタログと睨めっこの毎日だった
正直、身体がしんどかった・・・
「何言ってんだよ!! 文句があんなら、こっちの予定知りながら無計画に妊娠なんかしやがった姉貴に言いやがれ!!!」
『この人、何言ってんの??』
正直、カナさんの妊娠は本当に予定外だったみたいで(本人が笑いながら言ってた)、義母も戸惑いがあったみたいだが、それにしても可哀想なのはカナさんのお腹の赤ちゃん💧
手放しで祝福して貰えてないなんて・・
私は大きくなった自分のお腹をなでながら、夫や夫の家族への不信感を黙って飲み込んでいた
改築を予定していた時期と、カナさんの出産時期が重なってしまい、予定通りに改築を行うとカナさんが里帰りする家が無くなってしまうと言うのだ
改築の間、義両親は近くのアパートに仮住まいする訳だし、住む所が無い訳ではないのだが、狭いアパートに子連れで里帰り出産はどうもカナさんも義両親も嫌だったらしく、改築の時期をズラして欲しいと言われた
経済学部卒の夫の頭の中では、先々金利が上がりそうな当時の社会情勢や30代半ばにさしかかる自分の年齢、年収などからローンを組む時期を決めていた様で、改築時期を遅らせる選択はあり得ない様だった
「時期を早めるしかないな」 夫の一言に義母が言った
「え~!? お正月を狭いアパートで過ごすのなんて嫌だし、急にバタバタするのも疲れるわぁ~」
その言葉に夫がキレた
長男である夫はゆくゆくは実家を二世帯に改築して両親と一緒に住むつもりでいた
結婚前から聞いていたし、同居家庭で育った私も、差程の抵抗は無かった むしろ、お姑さんと仲良くやっていきたいな~なんて安易に考えていた
子供が生まれて少し落ち着いたら、改築に向けて準備する予定だった
依頼する業者は夫の友人が2代目を務める工務店に決まっていたが、それ以外はまだ白紙
私達は時間を掛けて綿密に計画を立てるつもりだった
それがカナさんの妊娠で予定が大幅に狂う事になったのだ
お腹の赤ちゃんも順調で、そろそろ性別が分かるかな?という頃、義母が何だか言い辛そうに口を開いた
「あのね、カナのとこも赤ちゃんが出来たらしくてね、上の子も居るし、里帰りすると思うのね」
カナさんは夫の2つ違いのお姉さん
他県に嫁いで3歳になる女の子がいる
「あら♪それはそれは、良かったじゃないですか~♪」 私は能天気に応えた
「それでね、家の改築の件、ちょっと考え直さないといけないの・・」
そうだった!それがあったんだ?!
無事に式を終え、私達の新婚生活が始まった
私は彼の意向もあり、結婚を期に会社を寿退社していたので専業主婦となった
夫はもともと仕事が忙しい人だったので、毎晩帰りが遅い事や休日出勤で出かける事も、さほど気にならなかった
半年ぐらい二人の生活を楽しんでから子作り開始
避妊を止めてから3カ月・・初めての妊娠
孫を心待ちにしていた互いの両親も、それはそれは喜んでくれ私も嬉しかった
彼に聞いてみた
「どうしてお義母さんが婚姻届書いてきたの?」
「ああ、あれ?後で書くからって置いといたら、お袋が勝手に書いたみたいやな~ 笑」
何とも思っていない様だ
もしかして、この人マザコン?!
結婚止めようかと本気で悩んだ
だが既に挙式・披露宴の準備は全て整い、何より此処は閉鎖的な田舎町
世間体が・・・
今更キャンセルする勇気は私には無かった・・・
人それぞれだとは思うが、私にとっては神聖な意味のある一枚の用紙
私は義母と結婚すんのか?彼は何故婚姻届の記入ぐらい自分でしてくれない?!義母よ、何故そこでアナタが出しゃばる?!
義母の前で必死で涙をこらえた
新居へ少しずつ荷物を運び整理をしていた時、お義母さんがやって来た
「これ、預かってきたよ~」
婚姻届だった
見ると、どう見ても彼の字ではない
「あぁそれ? あの子ったら何回言っても書かないから、間に合わないと思って私が書いたのよ~♪ 今日優ちゃんに渡す約束してたんでしょ?」
あまりのショックに言葉が出なかった
挙式を1週間後に控え、諸事情もあり、婚姻届を早目に出す事にした。 互いの両親も了承済み。
私が先に書いた。ドキドキした。これから始まる新婚生活を想像したり、幸せな気持ちで一杯だった。
凄く神聖な事の様に感じた。
あの日までは・・・
結婚が決まり、準備に追われた数ヶ月・・
仕事で忙しい彼に代わり、新居となるアパート探し。
彼の実家と私の実家の中間辺りで、運良く新築で家賃も手頃な物件があり、彼と相談して決めた。
彼は私より10歳年上。趣味を通じて知り合い、当時20代前半のまだまだ世間知らずの私にとって、大人な魅力を感じさせる相手だった。
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