注目の話題
付き合い始めると余裕がなくなる。
旦那がいちいち人のやることにけちつけてくる。
食事の予定日になっても返信なし

交換小説しませんか?

レス91 HIT数 5435 あ+ あ-

チキン( 30代 ♂ BMsZnb )
19/11/14 13:00(更新日時)

交換日記ならぬ、
交換小説しませんか?
先が読めない小説、
お互いの感性が試される小説。

流れに身を任せて繋げていきましょう。
どこまでやれるかわかりませんが、とりあえずノってみようということで。
主としては小説を書いたことありませんが。

まずはファンタジーなど書きたいなという思いです。

18/07/03 07:45 追記
スレ返信なかなかできなくて
すいませんm(_ _)m💦

タグ

No.2665330 18/06/23 01:22(スレ作成日時)

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 18/06/23 02:05
名無し1 

それ、どこに載せるの?

No.2 18/06/23 08:33
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 1 ここです。

No.3 18/06/23 09:12
名無し3 

こんにちは。
よろしければ参加させて下さい。

No.4 18/06/23 09:37
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 3 どうぞどうぞ。

ぼく自身も不慣れなもので、小説になるのかわかんないけど、
話を繋げていけたらな、という次第です。

No.5 18/06/23 09:54
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

ドッペルゲンガーって知ってるかい?

自分にそっくりな人物を見かけると、自分の死期が近いといわれている。

おとぎ話のような伝説のような、
本当にそういうことってあるのかねぇ。

No.6 18/06/23 10:04
名無し3 

>> 5
僕の親友がいきなりこう切り出した。

「さあ?どうなんだろうね。
まだ1度も見かけた事が無いからないから分からないねぇ。」

僕はふざけ半分に返す。

No.7 18/06/23 10:24
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 6 「当たり前だろ、

見かけたら死ぬっつーの!」

俺はこいつに笑いながらツッコミを入れた。

No.8 18/06/23 12:24
名無し3 

>> 7 「だよな 笑
でもさ、実は半年ほど前から少し気になりだしてる事があるんだ。」

今まで親友に全く話す気も無かった些細に思えていた出来事が、偶然にも親友の些細な一言で浮上してきた。

No.9 18/06/23 13:00
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 8 「気になりだしてること?
何だよ?」

こいつは何気なしに切り出してきた。
何かとてつもないことを言うのか、それともとてつもないつまらない冗談でも言い出すのか、

俺はこいつの次の言葉を待つ。

No.10 18/06/23 18:03
名無し3 

>> 9 親友の顔が半分僕を小馬鹿にしたようににやけている。

こいつ…
言い出しにくくなったじゃないかよ。

それでもまあ暇つぶしの話のネタ程度にはなるだろう。
軽い気持ちで話してみるか。

「あのさ、お前って誰かに間違われた事ある?」

親友は「ん?」といった様子の顔をしたがスグに返事は来ない。

ちっ、長くなりそうだからなるべく簡単にまとめて話すか。

「あのさ、俺の会社はチェーン店が何店舗かあるんだけど、半年ほど前にS区の店舗に転勤になったんだわ。
そしたらさ、そこに来るお客さんの何人かに

『あれ?転職してここに来たの?』

って聞かれてさ、S区なんて家から遠いから全く初めて来た土地だし、大体ずっとこの会社勤めで転職なんてしてねえし。

先日なんて、仕事終わりに近くの美容院に初めて行ってみたら、そこの美容師さんにも

『あれ?久しぶりだね!』
とか言われて、
はあ?

俺の新規登録カードの名前見て、

『あ、ごめんね。人間違い。』
とか言ってたけど、

他のスタッフも俺の方をチラチラ見てコソコソ何か話してるし、
何か気分悪いっつか。

近くのコンビニでも昼飯買ってたら、いきなり全く知らない女に肩叩かれて、

『元気だった?』
とか言われてさ、
元気も何も君誰?

って顔してたら不機嫌そうな顔して立ち去られたんだけど…
僕、そんなにありきたりな顔してるかな?」

自分で長々と話しているうちに何だか気分が悪くなってきた僕は、黙っている親友に意見を求める様に親友の顔を見つめた。

No.11 18/06/23 19:05
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 10 「う~ん、ありきたりでは、ないな。
アリがよってくるほどお前、
甘い顔してねーもん、」

無反応。
てかちょっとイラッとしてるみたいだ。


「怒んなよ、悪かったよ、
俺の悪いクセ出ちまったなー。

ついお前がマジメな顔してると
からかいちまいたくなるんだわ。

でー、なんだ、」

気持ちを切り替え、真剣モードになる。


「話をまとめるとぉ、

お前が転勤先で見ず知らずのひとたちから
声をかけられまくった、

でも名前は違う。
でも本人と思われるほど
顔が似ている…」

一人ならまだしもそんなに何人もの人から間違われることなんて、
そうそうあることではない。

こいつの顔に目を移す、
目がマジだ。


、そいつが本当にドッペルゲンガーならヤバイよなぁ…

え!?
てか、ドッペルゲンガーって普通に生活してんの?
普通にコミュニケーションとれんの?
俺のイメージでは死神っていう感じなんですけど?
突然フッって現れる感じなんですけど?
でも実際のところわからねーし…


俺の悪いクセその2。
ついつい考えだしたら話が膨らみすぎちゃう。

案の定、目の前のやつは首を傾けてこっちを見ている。

気をとりなおして。

「お前の転勤先ってどこだっけ?」

No.12 18/06/23 19:40
名無し3 

>> 11 案の定、親友はふざけた様な答え方をした。

まあ予想の範囲内。

大体、こいつは昔からそうだ。

どうせ僕の話も、
「世の中、自分に似た奴が3人はいるからねぇ 笑」
と思っている程度だろう。

まあ確かにそう言われればそうなんだが、こんなに何人もの人にガチで間違われるのって気味が悪くないか?

ってか、僕の転勤先はS区だってば!!

こいつ、本当に人の話を聞いてないな。

大体、こいつは昔からそうだ。

生真面目な僕とは正反対で、ちょっといい加減でお調子者の所がある。

なのに、女にモテるのはいつもこいつ。

ったく、世の中の不条理を感じるよ。

正直な所、相変わらずややいい加減な親友の態度に少しイラついたものの、
気を取り直した僕はもう一度転勤先を告げた。

「S区だよ。お前確かS区の近くに住んでいなかったっけ?」

No.13 18/06/23 20:24
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 12 「あぁそうだ、S区だったよなぁ、
言ってた言ってた、
ハハ、」

そうだったそうだった、
右から左に流れてたわ、

「俺んちから近けぇじゃん。
で、

お前仕事、いつ休みだっけ?」

No.14 18/06/23 21:25
名無し3 

>> 13 ちっ、やっぱり適当に聞かれてたか。

大体、昔からこいつはこうだった。

ここまで徹底していると逆に憎めなくなってくるな。

休みか。

確か、携帯にシフト表を撮影した物を保存したはず。

僕は携帯を開けてシフト表をチェックしようとした。

「あれ?ない。」

何故か携帯の写真のフォルダは空になっている。

間違えて削除してしまったのだろうか…

「ごめん。シフトがわからない。
僕の休みを聞いてどうするつもりだったんだ?」

わざと茶化した様に親友に聞いてみた。










No.15 18/06/23 23:49
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 14 「どうするって?決まってンだろ。
お前のソックリさんがどんなヤツなのか調べるんだよ。
調べる為にはお前の顔が必要だろ?
俺一人じゃあどうにもならん!
だから次、出社した時にシフト
調べとけよ。」


わかりましたよ、としょうがなさそうにおどけるこいつ。

こいつ、自分のことなのに他人事のように言うところあるよな。
お前には危機感というものがないのか?

ほんと、正反対な性格だぜ。
まぁだからこそ、一緒にいて
楽しんだけどよ。

「あとお前の命の危険は大丈夫そうだな、
だってお前のソックリさんはだいぶ前に姿を消してんだろ?
まぁ帰ってくるかは別としてな。」

なんてついつい自分の感情だけで喋っちまってるど、当の被害者の意見も聞かねえとな。

「お前は自分のソックリさんのこと知りたいか?

正直、ドッペルゲンガー説が本物ならよぉ、
知ることが安全なのか知らないことが安全なのかわかんねえけどさぁ、
お前が望む方に俺は力を貸すぜ。


俺はお前の反応を待つ。
お前が出す答えに俺はついていくだけ。

  • << 17 ああ。 やっぱり。 きっとそうやって力になろうとしてくれると思ったよ。 だけど、僕の顔が必要なら何も本人を連れて歩かなくても写メで十分じゃないか? もしもうっかり出会ってしまって僕がどうにかなっちゃったらどうするんだよ。 全く昔からこいつはこうだ。 本当に… 思わず笑みがこぼれてしまう。 どんなにちいさなつまらない事でも、いつもお前は僕を助けようとしてくれた。 嬉しさをひた隠し、 「わかりましたよ。」 と軽く答えてみせる。 だが… 「いや、お前勘違いしてるぞ? その相手さんは消えてはいない。 今でも、昨日〇〇にいたよね? と、声をかけられる時がある。 僕のソックリさんとやらはなかなか人気者の様だな。」 そう言いながら親友の顔を見る。 そういや、こいつも昔から人気者だった。 僕はずっとこいつに憧れていた。 先日、中学を卒業以来10年ぶりに偶然僕を見かけて、 「もしかして…高橋? いつこっちに戻って来てたんだ?」 と声をかけてくれたお前。 またこうやってお前と話せる様になったのが心から嬉しいよ。 「なあ、ずっと会っていなくてもこうやって親身になってくれるお前は 中学生の頃と全然変わらないな。」 僕は懐かしさと親しみを込めた目で更めて親友を見つめた。

No.17 18/06/24 10:24
名無し3 

>> 15 「どうするって?決まってンだろ。 お前のソックリさんがどんなヤツなのか調べるんだよ。 調べる為にはお前の顔が必要だろ? 俺一人じゃあど… ああ。
やっぱり。
きっとそうやって力になろうとしてくれると思ったよ。

だけど、僕の顔が必要なら何も本人を連れて歩かなくても写メで十分じゃないか?

もしもうっかり出会ってしまって僕がどうにかなっちゃったらどうするんだよ。
全く昔からこいつはこうだ。

本当に…
思わず笑みがこぼれてしまう。
どんなにちいさなつまらない事でも、いつもお前は僕を助けようとしてくれた。

嬉しさをひた隠し、

「わかりましたよ。」

と軽く答えてみせる。

だが…

「いや、お前勘違いしてるぞ?
その相手さんは消えてはいない。
今でも、昨日〇〇にいたよね?
と、声をかけられる時がある。
僕のソックリさんとやらはなかなか人気者の様だな。」

そう言いながら親友の顔を見る。

そういや、こいつも昔から人気者だった。

僕はずっとこいつに憧れていた。

先日、中学を卒業以来10年ぶりに偶然僕を見かけて、

「もしかして…高橋?
いつこっちに戻って来てたんだ?」

と声をかけてくれたお前。

またこうやってお前と話せる様になったのが心から嬉しいよ。

「なあ、ずっと会っていなくてもこうやって親身になってくれるお前は
中学生の頃と全然変わらないな。」

僕は懐かしさと親しみを込めた目で更めて親友を見つめた。

No.18 18/06/24 18:37
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 17 「僕のソックリさんとやらはなかなか人気者の様だな。
、じゃねぇよ!!
お前自分のおかれてる状況わかってるっ!?
これはあなたの事件なんですよ!
た、か、は、し、くんっ!

ほんっと、お前危機感ねえよなぁ。
たく、

なぁに笑ってんだよぉ、
なに昔の思い出がよみがえってきました、みたいな目ェしてんだよ。」

俺はこいつの飄々としてるところにあきれるが、
あきれる反面おかしさもこみ上げてくる。

変わってねえな…

「ソックリさん、今もS区にいるのか…」
ならこいつを連れまわすのも危険ってことか…

俺はおもむろに携帯電話をとりだし、
はいちーず、と油断丸出しの
こいつの顔をフォルダにおさめた。

「とりあえずよぉ、
俺も時間がある時にS区に行って
お前のソックリさんに関する情報、探ってみるわ。

お前には、遭遇しないように気をつけろ、ぐらいしか言えねーけどよ、
気をつけろっつってもなぁ、ハハハ、」

俺はちょっとでもこいつの気持ちを軽くしようと
軽口をまぜてみる。
どうやら軽口につられたようだ。

最後に、仕事意外はS区内をぶらつかないのが賢明だな、と当然事を念押した。


それから気を取り直すように
中学校時代の話で盛り上がり、
あの時はこうだったああだったとお互いの記憶を確認し合いながら
夜は過ぎてゆき、
そして二人は別れた。


さっそく俺は次の日から行動を開始した。
仕事が終わり次第、急いで車でS区へと向かった。

なにから始めようか…
聞き込み、か?
でも下手に聞き込んで
そのことがソックリさんに知られるとマズくないか?
どこにいるのかもわからねえのに…

、ちょっとあいつに電話して聞いてみるか。
こういうことに関してはあいつの方が賢いからなぁ。


『プルルルル、プルルルル、プル、ガチャ』

「あ、もしもし、俺だけど……」

No.19 18/06/24 20:06
名無し3 

>> 18 親友と別れた帰り道、僕は色々と思いを巡らせていた。

僕の「ソックリさん」を探してくれるのか。

僕の事を本気で心配してくれて、僕のために必死で尽力しようとしてくれる。

クックック。
嬉しさが込み上げて笑いが出る。

僕はまだ勿論その「ソックリさん」には出くわしてはいない。

でも接客業という職業柄、いつその「ソックリさん」が客として僕の前に現れるかわからないな。

僕が「ソックリさん」に遭遇するのが先か、それともあいつが先になるのか。

どちらにしても…
と、僕は考える。

「ソックリさん」の存在が明るみになった時点で僕は…

中学の思い出話楽しかったな。
と、言ってもほとんどお前1人で話してて、僕は相槌打ってただけだけど。
やっぱり昔から変わらないな。
体育祭や文化祭、
お前はいつもクラスの中心的存在だった。

なあ、そんなお前に憧れていたのは女子だけじゃなかったんだぜ?

覚えてるか?
ポケモンキャラから付けられた、
「ゲンガー」
って呼ばれてたクラスでほとんど目立たなかった奴の事を…

ププーッ!!
車のクラクションの音にハッと我に返る。
目の前の歩行者信号は赤になっていた。

おっと、ボーッとしてしまっていた。
早く帰ってあいつにシフトを送らなくては。

僕は帰宅すると、シフト表を撮影し親友
の携帯へと送信した。

No.20 18/06/26 10:23
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 19 俺はあいつに電話をし
以前ソックリさんと間違われた美容院の場所を聞き出し
行ってみることにした。

「すみません、ちょっとお訪ねしたいのですが、」

受付のいかにも美容師らしいオシャレな女の子に携帯電話をかざし、
この人ってここに来たことありませんか?と訪ねたところ、
女の子は知っていた。
『あー河村さんですね、これ』
という返答。

あいつのソックリさんは河村という名前なのか…

俺は気持ちが高ぶるのを抑え
つとめて冷静なのを装い、
でも、何と言ってソックリさんの情報を聞き出そうかと考えていると、

女の子は親切に自分の方から
『河村さん、すごく楽しい方でスタッフの中でもとても評判がよかったんですよ。
しばらく顔を見かけなかったんですけど、つい先日いらっしゃったみたいで。
でも、どうも河村さんじゃなかったみたいで。
すごく顔はソックリだったんですけれどね、
本人と見間違うぐらい』

そうか、あいつが言っていた通りの人気者らしい。

「そうですよねぇ、
オモシロイヤツですよねーあいつ、」

とっさに俺は思いつき、
「河村からここの美容室がとてもイイと聞いていたもので、
あいつのススメで今日は髪を切りに、きました、」

そうですか、がとうございます、ではこちらにお名前の記入をお願いします、といわれるがまま
ペンを動かしソックリさんと同じ担当者の方でお願いした。

その担当者から出来る限りのソックリさんの情報を集めることにつとめた。

ソックリさん情報
・俺らと同じ歳ぐらい
・仕事は営業マン
・住まいはS区のS駅周辺

怪しまれることに注意しながら得た情報はこれぐらいだった。

とりあえずこれだけの情報を電話代であいつに伝えた。

No.21 18/06/26 19:19
名無し3 

親友から連絡が来た。

あいつの行動力の早さは昔からよく知ってはいたけど、それにしても早い。

もう名前や大体の年齢職業まで突き止めたのか。

多分僕の想像通り、
「ソックリさん」の年齢は僕らと同期で間違いないだろうな。

しかし…

意外なのは名前だった。

河村?

何故、河村なの…だろう。

僕の予想が外れているとでもいうのだろうか。

少し調べてみるかな。

でも、僕があいつに内緒でコソコソとこんな事をしていると知ったらあいつはどう思うのだろう。

僕は親友の事を思った。

あいつ、僕のために行ったこともない美容院にまで行ってくれたのか…

あいつは、あいつは、
ソックリさんを突き止めても、それでもこれからもずっと「僕の親友」としていてくれるのだろうか。

クックック。

笑いがこみ上げる。

僕の親友?
あいつにとっての「僕」って誰だい?
僕は洗面所に行くと鏡を見た。

自分で言うのもなんだが、なかなかのイケメンだよな。
ドッペルゲンガーか…

ゲンガー…
ゲンガー…


頭の遠くで声が聴こえる。

ゲンガーね…
ゲンガーってシャドーポケモン、ゴーストポケモンだったっけ?

「お前は…誰の影だよ?」

僕は鏡に向かって呟いた。

鏡の向こうの男は少し寂しい目をしながらニヤリと笑った。


No.22 18/06/27 10:47
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 21 『いらっしゃいませっ、』

「予約していた足原ですけど、

ってファミレスに予約って必要なのかよっ!!」

目の前の男ノーリアクション。

「てへ、来ちゃった」

『お客さま、お一人様ですか、
席は禁煙席と喫煙席がござ』

「お~い、高橋くん、
俺だよ俺!中学の同級生の足原ですよ~
ってまあボケはこのへんにしといてと。
なかなか様になってんじゃないの、高橋 店 長。」



俺は休みを利用してこいつのお店を訪れた。

どっきりドンキー。
ファミリーレストラン。

ランチタイムは混雑しているので
ちょっと時間をずらしてきた。

さすがに仕事となるとこいつの顔はびしっとしている。
仕事をしているという面構え。

ここに来た理由は、
友人が働いているから食べにきたというのもあるし、
来週のこいつの休みの日に久しぶりに俺らの中学校に行ってみないか?と誘う為だ。

大丈夫ならば職場の同僚に休みを変わってもらうつもり。

俺はこいつに案内された禁煙席に腰を落ち着ける。

「おススメは?」
俺は座るなりこいつに向かって言った。

No.23 18/06/27 20:25
名無し3 

>> 22 「ただいま!」

僕は玄関のドアを開けリビングの方に向かって声をかけた。

ただいまと言いながら玄関のドアを開けるのは数ヶ月ぶりだ。

「おかえり~!」
と母さんがニコニコしながら出てくる。

自宅からそこそこ距離のあるS区に転勤になったのをきっかけに僕は一人暮らしを始めた。

高校に入学して間もなく両親が離婚したのでそれからは母さんと2人きりの生活になってしまったが、僕が家を出たため母さんには寂しい思いをさせているだろうなと申し訳なく思う。

久しぶりに帰宅した僕に母さんは嬉しそうに色々と話しかけてきた。

「今日ね、偶然に中田さんに会ったのよ。中田さんの息子さんて中学の時に同級生だったわよね?」

「でね、10年前に埋めたタイムカプセルを今年中に有志が集まって掘り出そうって企画があるんですって。」

僕の返事を待たずに母さんは1人で話す。

タイムカプセル?
ああ、確か10年前に自分の願い事を書いて、「願いは叶いましたか?」って10年後の自分宛に手紙を書いて入れたやつね。

「まだ日にちは未定らしいけどそういうのってワクワクするわね。
願いが叶った子はいるのかしら。」

母さんはまるで自分の事の様に1人ではしゃいでいる。

「ね?ね?あなたの願いは何だったのかし…」

「母さん。」
僕は遮る様に立ち上がると冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、

「久しぶりに一緒に飲もうか。」
と母さんに笑顔を向けた。

No.24 18/06/28 17:56
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 23 休みの日、あいつとの待ち合わせ場所まで車で向かえにいく。

あいにくの雨だ。

この時期は雨がよく降る。

ワイパーのスイッチをひねりフロントガラスに張りつく水滴をはきとる。

ウイン、ウー。ウイン、ウー。

せっかくの休みの日だっていうのに何だかな…

俺が休みの日はけっこう雨が降っている気がする。

俺はどうやら雨男の才能をもって!?っ

キィィィッーー!!

あぶねぇ、危うく猫をひきそうになったぜ、

ふぅ~。

いきなり飛び出しきたらあぶないよ黒ネコちゃん、

気を取り直しあいつが待っている場所へ向かう。

ここのコンビニだったよな。

ウインカーを出しコンビニの駐車場にバックで停める。


「もしもし、ついたぞー
赤の軽だから。」

『わかった』


ウイン、ウー。ウイン、ウー。

ウイン、ウー。ウイン、ウー。

ウイ
ガチャ。

助手席のドアが開いた。

「よぉ、今日はあいにくの雨だなぁ、」
『そうだな、』

こいつは雨などお構い無しといった感じで飄々と助手席に座った。

No.25 18/06/28 22:54
名無し3 

>> 24 350mlの缶ビールを1本飲んだだけなのに結構酔いが回った。

疲れてんのかな。

シャワーをサッと浴びるとまだ話し足りなさそうな母さんに
「寝るよ。」
と告げて早々に自室に引きこもり、ベッドに寝転がると目を閉じて今日の出来事を回想する

今日、職場に親友がいきなり来た。

本来ならバイトの女の子が席にご案内するのが普通なのだが、親友を見かけた僕は慌ててあいつの前に立ち

「いらっしゃいませ。」
と声をかけた。

すると、あいつは嬉しそうに笑うと、
「予約していた足原ですけどおっ!
って、ファミレスに予約なんて必要なのかよっ!」
とのたまった。

…言っている事の意味が全然わからない…

とりあえず聞こえなかった事にして業務を遂行しようとしている僕に向かってまたあいつがのたまわれる。

「中学の同級生の足原ですよぉっ!
高橋店長!」

…ごめん。
何が言いたいのか全くわからない…

とりあえずそれも聞こえなかった事にした僕に対して奴は全くへこたれない。

「オススメなに?
え?どっきりドンキーセット?
あ~じゃあそれと~後は高橋君で。」

え?
高橋君?
当店にはそんなメニューはございませんが。

怪訝な顔をする僕に、
「お前、次の休みに一緒に中学校へ行くからな?
予定明けておけよ?」

有無を言わさず決められてしまった…





約束当日。

あいにくの雨。

本当は中学校に行くことに気乗りしない僕の心を反映しているかの様な天気だったが、あいつの車を見ると少し心が弾んだ。

「あいにくの雨だなぁ。」
と少し残念そうに言うあいつに、

これぐらいの雨なら大丈夫だよ。
という気持ちを込めて、

「そうだな。」
と僕は返事をしながら車に乗り込んだ。

No.26 18/07/04 05:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 25 「ドッペルゲンガーって
一体何なんだろうなぁ。」

俺は何となく吐き出した。

「一体何の為に現れるんだろ。」

助手席に座っているこいつは
黙って俺の言葉が途切れるまで
聞いてくれている。

「現れるからには何か意味があるんだろうな。」

ただ前方の雨がぶつかるフロントガラスごしに
過ぎ行く風景を見つめるこいつ。

「俺は、なんだろうな…
それらしい解答が浮かばねーや。」

当事者の方が感慨深いものが
あるかもしれない。

雨が強くなってきた。

「お前は、どう思う?」

No.27 18/07/04 13:09
名無し3 

>> 26 雨は一向に止む気配を見せないどころか、ますます激しく降ってきた。

窓の外を見つめる僕に運転席の親友が話しかけてくる。

「ドッペルゲンガーって何のために現れるんだろ。」

ドッペルゲンガーの存在意義を問うているのか?

ドッペルゲンガーに存在意義なんてあるのか?

もしも僕が、
「ドッペルゲンガーは僕の方だよ。」
と言ったとしたら、こいつはどんな反応をするのだろう。

こいつは例の「河村」という男を既に直接見たのだろうか。

いや、それはないな。

もしも「.河村」と直接会ったとしたらおそらくもうこうやって僕とは…

「.お前はどう思う?」

ずっと黙り込んでいる僕に対して業を煮やしたのか、親友が少しイラついたように重ねて聞いてきた。

「ああ」

僕は曖昧に返事をし、

「何で急に中学校に行く気になったんだ?
何かあるのか?」

と質問の答えにならない質問を逆に投げ返した。

No.28 18/07/08 18:30
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 27 「なんとなく思いついた。

ほら、お前との関係って
中学の時しか知らないからさ、

お前も変な事件みたいなもんに
巻き込まれてるみたいだし、

なんか行きたくなったんだよな。

俺の直感がそういってんだよ。」


車で走り始めて1時間と少し。

車内はぽつりぽつりといった会話。

外の雨はぽつりぽつりといったふうではなくザーといった感じ。

雨の音と車から流れてるラジオの音で会話に間ができても
居心地は悪くない。

俺はなんとなく口から言葉を発した。

「お前さぁ、
俺の両親見たことないよなぁ。

実はさぁ誰にも言ったことは
ないんだけどさぁ

俺、

クローン人間なんだわ。」


助手席のこいつは無反応。
思ってた通りの反応。
かわらず左側の過ぎ去る景色を眺めている。

気にせず言葉を続ける。

「右肩に“3”という刺青が刻まれてるんだ。

何の番号かわかるか?

3番目に造られたっていう
製造番号だよ。

まぁ、今度見せてやるよ」


「ふ-んそうかい

じゃあ楽しみ待ってるよ、
ナンバースリーさん」

やっとノッてきてくれた。
すかさず俺も返す。

「ああ楽しみに待っとけ

お前には写メぐらい撮らせてやるからよ」


雨が少し
弱くなってきたような気がした。

No.29 18/07/10 12:56
名無し3 

>> 28 俺はクローン人間。

親友の口からそんな言葉が出るとは…

本気でカミングアウトしてるのか?

そんなことを気安く他人に言っていいのか?

それとも冗談話として言っているのか?

僕はリアクションに困り、ひたすら窓の外を眺めていた。

右肩のタトゥー。

NO.3。

NO.3…

軽口が好きなお前の冗談だと思いたい。

それに、お前の右肩のタトゥーなんて見た覚えもない。

水泳の授業もちゃんと受けてたよな。
その時に裸は見ているはずだ。

いや待てよ。

小さな物なら絆創膏を貼ったり、ウォータープルーフタイプのコンシーラーを塗ったり、誤魔化しは何とか効くか。

男の裸になんか興味ないからイチイチ細かく見ていなかったしな。

右肩にNo.のタトゥー。

具体的にナンバーの場所まで述べている。



これはもしかすると、事態は僕が思っていた以上にややこしくなってきているのかもしれない…

いや…
考え過ぎだな。

そのうちに親友の右肩を見せてもらうか。

そうすればスッキリもするだろう。

「ふーんそうかい。
じゃあ楽しみに待ってるよ。
ナンバースリーさん。」

僕は自分の気持ちを悟られないようにわざと淡々と答えた。

僕達を乗せた車はあと少しで目的地の中学校に到達する距離まで来ていた。

No.30 18/07/11 17:09
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 29 懐かしい街並みが見えてきた。

外は雨の影響で薄暗いが、

成長とともに過ごしてきた場所は
心が疼いてくる。

中学卒業以来だ。


何棟か知らないマンションが
建っている。

「あ、駄菓子屋潰れてんじゃん、」

俺は反射的に言葉を吐いた。

「ああ、あの駄菓子屋ね。
あれは5年前~」

隣のやつが説明してくれる。

しかし俺はところどころ変わった街並みに意識が向いて
横からの言葉に
気持ちの込もってない返事。

ため息を吐くように
「そっか~
10年だもんな~

そりゃ変わるよな~」

と、プチ浦島ショックを受けていた。


この緩めの坂を登っていったら
俺達の中学校だ。

只今 PM4:42

見覚えあるの制服の集団が
坂を下ってくる。
懐かしい~、

男子の制服はどこにでもありそうな黒の制服なんだけど、

女子の夏服だけは
スカートがブルースカイの色
なんだ。

どいつもこいつもガキだなぁ-
へへっ。


着いた。

何も変わってない。
匂いがただよってきそうな
あのままの風景。

遠くの方から聞こえてくる
吹奏楽部の音楽。

サッカー部と野球部が練習している。

とりあえず正門から離れ
外周の
車を停車できそうなところへ
車をとめた。


「来たのはいいけどよ-、
部外者はいれてくんねぇよな。

まぁ、
生徒がいなくなるまで待つか。」

俺はその判断は
決定事のように
隣のやつに訪ねる風でもなく
言った。

No.31 18/07/11 21:22
名無し3 

>> 30 中学校が近づくにつれ、親友がウキウキとハシャギ出す。
さっきから1人で喜んだりガッカリしたり本当に忙しい男だ。

僕としては街並みが変わろうがマンションが建とうがどうでも良いことだったが、駄菓子屋が潰れて残念な気持ちには少し共感できた。

おい。
さっきから女子中学生の足ばっかジロジロ見るなよ。
変質者と思われるじゃないか。

やっと目的地に着くと、
「部外者は入れてくんねぇよなぁ。」

と親友は1人でブツブツと呟く。

「まぁ生徒がいなくなるまで待つか。」

おい。
生徒がいなくなったら入り込む気だったのか?
生徒はいなくなっても先生か誰かしらはまだ残ってるだろ。
この御時世、野郎2人が無断で校内に入り込んでうろついたりしたら不審者容疑で下手すると通報もんだぞ。

昔とは違うのだよ。
昔とは…

でも、僕はそんなお前が好きだよ。

うげっ、我ながら気持ち悪い事を思ってしまった。
全身に鳥肌が立ったよ 笑

さてと。
冗談はさておき。

僕はおもむろに携帯を手に持つと電話をかけた。

「なんだ?
どこにかけてるんだ?」

親友が怪訝そうな顔をして聞いてくる。

幸い電話の相手はすぐに目当ての当人が出た。

「あ、もしもし。
先日タイムカプセルの埋めた場所の下見の件でお電話した高橋と申します。
はい、はい、〇〇年度に卒業したその高橋です…」

僕は電話を切ると、
「僕らが3年の時に担任だった先生覚えてるか?
あの先生、今はこの学校の教頭先生だってさ。
お前がここに来たいって言ったから予め適当な理由で電話して話をつけといた。」

「タイムカプセルの下見?
あ~そういや10年後に堀りだそう!
と言ってみんなで埋めたやつか?」

親友が思い出した様に言う。

「それそれ。
本当に今年掘り出す計画があるらしいよ。
だからそれをちょっと利用させてもらった。
さて、そういう事でとりあえず行こうか。
教頭先生様がお待ちだし。笑」

僕は先に車を降りた。

本当は気が進まない。

すぐにでも帰りたかったが、

「行こう!」

と運転席の親友に無理に笑顔を見せた。

No.32 18/07/12 20:51
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 31 「なんだよ、急にハリキリだしやがって。」

俺は嬉しさがこみあげてくる。

「お前最高だな。

どこまで用意周到なんだよ-

お前高橋名人だよっ!

16連写だよっ!」

俺は、勢いにまかせて
そんな言葉を吐き出す。

これで正々堂々正門から入っていける。

最悪忍び込むっていう考えはあったが、
25歳のオトナとしては
やっぱそういうの
よくねぇか。

こいつはいつだって俺の欠けているところを補ってくれた。
月が丸くみえるのも影があるからだ、と何気なしに頭に浮かんできた。

「老けてっかな、トンボ。」

俺は10年ぶりに見るクラスの中のただひとりのオトナの顔を
どんな風に変わったのか
10年でオトナはどんな風に変わるのか
じじいになってる様を思い浮かべながら
同じ歩幅で歩く隣のやつに
言うようなひとりごとのような
風に口にだした。

トンボは言葉のまま
トンボのような大きな眼鏡を
かけていたからだ。

大まかに言えば
話しのわかる良いオトナだったよ。

先生と呼べる
良いオトナだった。

「10年だからな、
老けないほうがウソだよ。

でも教頭先生だから
それなりに威厳は出てるかもな。」

そう答えるこいつ。

野球部が練習をしている脇を抜け校舎の中へ足を踏み入れた俺達。

見ず知らずの若いオトナに
こんにちは、とあいさつしてくれる2組の
よくできた女子生徒。

職員室。

なんか緊張してくる。

苦手なんだよなぁ、
このオトナたちだけの棲みかが。

と一瞬躊躇している俺をよそに

ガラガラ、


と、隣の名人は何の躊躇もなく
扉を横にズラした。

No.33 18/07/14 00:09
名無し3 

>> 32 予想外の親友の喜びっぷりに僕はたじろいだ。

いくら嬉しいからって高橋名人を連呼するなよ。
今の中学生は高橋名人を知ってるのか?
恥ずかしい。

でも不思議と嫌な気はしない。

そもそもここに来ることも嫌なはずだったのに親友が行きたいと言うからノコノコと付いてきてしまった。
何をやってるんだ僕は一体。

トンボ先生か。
嫌いではないが今は本当はあまり会いたくはなかったな。

まあ仕方ない。
さっさと挨拶を済まして適当にタイムカプセルを埋めてある場所のチェックをして帰るか。

だが、
こいつのこの様子だと僕の理想通りに事が運ぶかな?

僕は色々思い悩みながらもさっさと事を済ませたい一心で、

「.失礼します!」

と職員室の戸を開けた。

「おお!懐かしいな、元気だったか?」

職員室には10年分そのまま歳をとりました。
といった感じのトンボ先生が笑顔は昔のそのままにニコニコと僕らを迎えてくれた。

「ご無沙汰してます。」

頭を下げる僕に先生はにこやかに頷くと、

「高橋君、君は少し雰囲気変わったね。
昔はもっと…」

「先生!実は足原も来てるんですよ!
足原!」

僕が廊下にいる足原を呼ぶと、

「足原?!あの足原か!ちゃんと頑張ってるのか?
あのやんちゃ坊主は。」

と先生の興味はすぐに親友の方に向いた。

トンボ先生は教え子に対して誰にでも公平に接する事のできる人格者だったが、それでもことのほか足原を気に入っていたのは誰の目から見てもわかった。

あいつはいつでもそうだ。

誰からも気に入られて、誰からも愛される。

「足原!久しぶりだな。
ちゃんと真面目に頑張ってるのか?」

トンボ先生は僕に見せた以上の笑顔で親友にそう話しかけた。

No.34 18/07/17 19:10
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 33 「真面目に働いてますよ~、

先生もしっかり出世しちゃて~

給料いくらもらってんすか~

今度飲みいきましょうよ~
もちろん先生のおごりでね!」

と久し振りに先生と顔を合わすなり、
俺は先生との再開をよろこんだ。

見た目はぴしっとしているが
雰囲気は変わってない。
ただあの頃とちゅっと違うのは、

若干痩せてることと
目尻あたりにしわが増えたこと、
そしてトンボめがねじゃ
なくなっていることだ。

あのめがねは
今の時代、合わねえもんな。

少しばかり身の上話を交わしつつ、
同級生のあいつはこんな仕事しているだの
女子のあいつは結婚しただの
子供産んだだのと
先生は自分から語りだした。

ちょうど話の区切りがいいところで俺は今回の目的をきりだす。

「で、先生あのさぁ

タイムカプセルって
どこに埋めたっけ?

俺、イマイチ覚えてなくてさぁ」


「ああそうだったな、

高橋から電話もらって
調べといたよ。

ちゃんと地図に書いて
わかりやすく記してあるよ、」

「ありがと、先生。」

そう言って俺は
先生からタイムカプセルを埋めた場所の地図が書かれている
一枚の紙をもらった。

「学校は7時には閉まるからな、
それまでに用を済ませるんだぞ。

学校から出ていく時は
もう一度職員室にきて、
わたしに言ってくれ。
わたしがいなければ
他の先生にでも構わないから」

「うん、わかった」

そして職員室の入口の扉に手をかけ俺は出ていこうとし、
後ろから続いてくるこいつは
失礼しました、と一言言ってから
職員室の扉を閉めた。


さっそく職員室前の廊下で
こいつと並んだ状態で
地図の記された紙を広げた。

「どれどれ…」

No.35 18/07/19 21:23
名無し3 

>> 34 やれやれ。

宝探しに夢中な小学生の様に、目を輝かせて地図を覗き込む親友の姿を見て僕は心の中でため息をついた。

こいつの性格を計算に入れることを忘れていた。

僕としたことが何たる凡ミス。

足原を気に入っている先生と足原を引き合わせる→懐かしい昔話に花が咲く→それなりに時間が経つ→タイムアップで強制帰宅。

こうなる予定だったのだが、僕の想像以上にトンボ先生が忙しかったのと、何よりこいつが僕の適当な口実に興味を持ってしまったのが計算外だった。

こいつは昔から好奇心の塊の様な奴だった…

まあ仕方がない。

元々タイムカプセルを埋めた場所はチラ見くらいはするつもりだったし、
適当に話を合わせて頃合を見て引き上げるか。

タイムカプセルは確か僕の記憶では…

僕も地図を覗き込む。

ああ、かなり当時とは様子が変わっちゃったな。

僕らが在学中だった10年前はボロボロの旧校舎がまだ建っており、そこと新校舎の間に中庭の様なスペースがあって、タイムカプセルはそこの中心地に埋めたのだが、僕らが卒業した後に旧校舎が取り壊されその中庭もそれに伴い無くなってしまった。

「今は…」

と思わず声に出して確認する。

この地図だと旧校舎&中庭の跡地には新しく部室や用具倉庫等が建っているらしい。

その一角に大きく×印がつけられている。

あれ?
思っていたよりも随分と片隅にあるな。

ははぁ、さては工事の際に邪魔になるからこっそり移動して埋め直されたか。

これはこの地図がないと分かりにくいかもな。

僕が1人で納得していると、

「おおっ!ここだ!確かにこの辺りの位置だったよな!
よし!とりあえず行ってみっか!」

親友が知ったふうな顔をして騒ぐ。

いや…全然場所変わってるけど…

僕は内心おかしくて仕方なかったが、
黙って親友の後に従った。

No.36 18/07/22 18:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 35 俺の記憶が甦ってきた。

俺の中学三年生。

高校受験を控えた時期。

その為自習時間が増え

その中の1時間
タイムカプセルの中に入れる
10年後の自分にあてたメッセージ
を書いたんだっけ。

何を書いたんだっけ、

……、


「お前さ-10年後の自分に
何て書いたか覚えてるか?

俺は、えっ!?」

(確か、ここに埋めたはずだぞ、
なんか建ってんぞ、えっ、)

俺は後ろを振り向き、

「確かここだったよなぁ、
ここに埋めたよぁ、

俺の記憶が確かなら
もうタイムカプセルは
二度と掘り返せねぇぞ…

いっそのことトンボに頼んで
この建物爆破してもらうか?」

俺は冗談でなく
本気でそうおもった。

知らない建物 < 思い出

勝る!

No.37 18/07/22 22:46
名無し3 

>> 36 「お前は10年前に何を書いた?」

夕暮れ時の旧校舎跡地で親友が唐突に聞いてきた。

えっ…

そんなの忘れてしまったよと言えばいいのに上手く言葉が出てこない。

「あの…足原…」

「えっ?!建物建ってるじゃん!これじゃ掘り返せない!」

突然、僕の言葉を遮る様に親友が騒ぎ出した。

えっ?

親友が指さす方向を見ると、
そこには用具入れの倉庫らしい建物が建っている。

いや、だからそこは…

その場所は10年前には確かにそこにタイムカプセルを埋めたであろう場所だった。

学校側に掘り返されて埋め直されたタイムカプセルは今は当然違う場所にある。
トンボ先生の地図にあった×印の場所だ。

お前、本気であんなに大きな×印を見逃していたのか?

それとも建物の印を埋めた場所の印と勘違いしてるのか?

親友の真意が分からず、しばし呆然としてしまった僕は、

「ああ、僕らのクラスだけの半分お遊びみたいな企画だったからな、学校側も工事の際にウッカリしてたんだろう。」

と、取り繕う様に曖昧に話を合わせた。

憮然とした表情で建物を見つめる親友。

その姿を見つめるうちに僕は我慢できなくなった。

手に持っていた地図をクシャクシャに丸めてポケットに突っ込み、

「もういいだろ!!時間も無いし帰るぞ!」

半ば怒鳴る様にしてさっさと校舎の方に歩き出すと、親友は少し驚いた様な顔を見せたが黙って僕の横に並んで歩き出した。

「足原。」

僕は黙って歩いている親友に声をかけた。

「お前は自分の願いを覚えているか?
お前の…願いは叶ったのか?」

No.38 18/07/30 17:13
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 37 俺は少し間を空けて
静かに口を開いた。

「俺の願いはきっと叶わないから

叶わないとわかりきってる
願いだから」


二人の間に沈黙が流れる。


そういえば
いつの間にか
雨、

あがってたんだな。


そして俺は
こいつがクシャクシャにした地図を拾いにいく。


クシャクシャになった紙を
開いて
できるだけ伸ばせるだけ
伸ばしながら

ちょっと困ったような笑顔で

「帰るか」

と訪ねる風でもなく

言った。






「先生、ゴメン、

俺ついうっかり
地図の紙、丸めて
クシャクシャにしちゃったよ、

気持ちがあの頃に戻って
0点のテストと
思っちゃたみたい。ハハ」

職員室に
トンボ先生はまだいた。

たくお前ってやつは、
お前は答案用紙を
そんな扱いにしてたのか、

そして軽く小突かれた。

懐かしい痛みに
うれしくなる。



じゃあ先生、
今度は居酒屋で会おうね、
失礼しまぁす、

と職員室をあとにした。


そこから
どちらとも口を開くことなく
校門を出て


車に乗り込んだ。

No.39 18/07/30 20:54
名無し3 

>> 38 「.俺の願いはきっと叶わないから…」

突然立ち止まった親友がポツリと漏らす。

足原、お前…

言葉が出ず黙って歩き出した僕の横で
親友が「あっ!」といった表情を見せたかと思うと僕の後ろに回り紙を拾い上げた。

くしゃくしゃになった紙のシワを親友は丁寧に伸ばす。

地図?

あ…勢い余ってポケットから落ちたのか…

僕とした事がかなり冷静さを欠いてしまっていたようだ。

親友が先生と話している間も僕はずっと黙っていた。

たった一言、ごめんの言葉が何故か出て来ない。

僕らはそのまま無言で車に乗り込んだ。

僕のモヤモヤした気持ちは収まる所か強くなる一方だった。

このままでダメだ。

足原に…
聞いてみようか。

こいつは素直に正直に答えるだろうか。

僕は窓の外を眺めながら色々思い悩んだ。

悩んだ挙句、僕は思い切って口を開いた。

「足原、お前自分の事をクローン人間とか言ってたよな。
お前は…自分が何者なのかを本当に知っているのか?」

No.40 18/07/30 23:50
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 39 お前は…自分が何者なのかを本当に知っているのか?


隣のやつから吐き出されたコトバは
自分で何十回も何百回も
自分に吐き出したコトバだ。

へたすりゃ何千回に
到達しているかもしれない。


何者か?

なんてわかるわけない。


ただ俺の代わりは
他にいるってことくらいしか
わからない。
いた、ってことしか。


そう


俺は代わりでしかなかった。



どうやら俺は
人類第1号らしい。


どうやら俺達は。





俺は物心ついた時には
籠の中にいた。


俺の家は研究所

親は…
見当もつかない。


じゃあ兄弟は?
っていえば


3人。


3人の兄。



一人は歳の大きく離れた
絶対的な兄。


他の二人は
歳の近い
同じ境遇の兄達。
生き方が決まってる兄達。
生き方を決められてる兄達。



そして俺。



俺達3人は
絶対的な兄の為に生きていた。


絶対的な兄の部品になる
為に生きていた。


絶対的な兄の部品は
壊れていたからだ。



家族っていうのは
足りないものを
補ってゆくものだろ。


支え合ってゆくものだろ。



絶対的な兄の為なら。


絶対的に兄の為なら。





絶対的な兄の部品になるには
15年かかるらしい。


早くて15年
成長しだして
一番活きのいい15年。


だが、

15年たたずして
2番目の兄は無くなった。


そして3番目の兄も。



そして俺が15年を迎える前に



絶対的な兄も無くなった。




そして

俺の意味も



無くなった。




俺に価値は無くなった。





生きてる理由も無くなった








俺は中学を卒業したあとに

よく面倒をみてくれていた
研究員の女性の養子として
ひきとられた。



多江子さん




河村 多江子さん










「高橋、



この世によぉ


この世に自分が何者か
わかってるやつなんて


どんだけ

いるんだろうな 」




俺はなんとなく


その時おもったんだ。




コイツと友達になったのは


なりたいと思ったのは




自分と似ていたから、




だったんじゃないだろうか


って。

No.41 18/07/31 19:19
名無し3 

>> 40 「自分が何者かわかってる奴ってどれだけいるんだろうな。」

親友が吐き捨てる様に言う。

その言葉と表情で僕は彼が何者なのかを確信した様な気がした。

足原。
やっぱり冗談じゃなかったんだな。

そうなのか。
やはりそうだったのか。

でもこれでもう僕は足原を偽ってコソコソと嗅ぎ回る必要もない。

そうだな。
自分が何者なのか分からなくなる時があるよな…

でもね、僕は「足原の親友」という自分の姿を気に入っていたよ。
もうその偽りの姿も終わりにしないといけないけどね…


「足原。」

僕は親友に声をかけた。

「僕とお前が10年ぶりに会って話をした時の会話を覚えているか?」

親友が微かに頷いた様に見えた。

「僕がお前と10年ぶりに『偶然会った時』僕はミスをした。
まず1つめ、
僕はずっと音信不通で連絡先すら知らなかったはずのお前に、S区の近くに住んでいるよな?
と言ってしまった。
中学当時は学区内の地域に住んでいたお前がかなり遠いS区付近に引っ越した事を何故僕が知っていたのか不思議に思わなかったか?」

親友は不振そうに眉をピクリとさせたが何も言わない。

「2つめ、
お前が僕を見かけて高橋!と声をかけてくれた時に僕は嬉しくて嬉しくて舞い上がってしまった。
そして迂闊にも僕に似ていると言われる人物の話をしてしまった。
でもな、」

ここで僕は息をついだ。

「お前と話しているうちに僕は思い出した。
僕が、僕が母親の旧姓の高橋を名乗り出したのは中学卒業後に両親が離婚してからなんだ。
つまり、お前が昔からの親友だと思っていたのは僕じゃない。
僕じゃないんだよ。」

隠していた事がどんどん言葉になって溢れてくる。

「お前は10年ぶりに偶然僕と再会したと思っていただろうけど、本当はそうじゃない。
お前の事をずっと調べていた僕が運悪くお前に見つかってしまっただけだ…」

もう、自分でも何が言いたいのか分からなかった。

「足原、ごめん。
お前の話を聞かせてくれ。
そうしたら僕の話も順を追ってしていくから…
ただ、これは謝らせてくれ。
騙してて申し訳なかった。

僕は…
僕は…お前の親友だった高橋じゃない…
本当の高橋は…
お前が僕のドッペルゲンガーか?と疑っていたあの河村という奴だ…」

僕はその言葉を言い切ると軽いめまいを覚え、口をつぐみ静かに目を閉じた。

No.42 18/08/12 13:46
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 41 ・・・・・・・




俺は自分の思考を

落ち着かせるため


車を路肩に寄せ

とめた




隣のやつからの

衝撃的な言葉。


隣のやつから出された

真実。




俺と同じような人間…




車内では緊張感の混じった

沈黙が続く




隣のこいつは

額に手をあて

どんな表情をしてるのか


手でかくれてみえないが、

口元には緊張がかいまみえるのが
横目でわかる。




こいつは



こいつは




お前が高橋でないにせよ

本心を明かしてくれたんだ


本心には本心で返さねぇと

いけねぇよな、






俺は今までの生い立ちを

静かに語りだした。




自分は研究施設で育ったということ、

3人の兄がいたということ、


その中の一番上の兄の為だけに

自分が存在していたということ、


そしてその兄は中学卒業前に

なくなったということ。


そして…



俺は中学を卒業後、

河村姓を名のっているということ…



全てが裏返ってあべこべ。

それはまるでオセロのようだ。

リバーシする



全てが何か繋がっていたんじゃかないかと

気づき始めているということ。


俺は少し語気を強くなるのを
隠せない。


「俺は、


ドッペルゲンガーの名前が河村

という名前だと知ったとき、

なんだか胸騒ぎがした…


終ったと思っていたものが

実はまだ続いていた、



感じたんだよ、 」


少し間を空けて口を開く。

それは自分を落ち着かせる為

の間でもある。



「真相をつきとめようにも

今は研究施設も取り壊されてるし、

養母の多江子さんも

2年前に亡くなっている。


このドッペルゲンガーの問題は

よぉ、

実は俺の問題だったんじゃねぇ

のか?」


俺は気持ちが高ぶっているのを

なんとか落ち着けようとつとめているが、

落ち着けてないだろう。

それでも

隣のやつに問う。


「お前は一体、何を知っている?


お前は一体、何の為に俺のことを

調べてた?」


…、…、…



No.43 18/08/12 19:10
名無し3 

>> 42 「中学の時にクラスにいたゲンガーって奴の事を覚えているか?」

親友の話が一区切りしたのをみて僕は話し出した。

「そのゲンガーには父親同士が双子である同じ年の従兄弟がいた。
その従兄弟は生まれつきとある珍しい難病で治療法が無く、
もっても小学校入学頃までには亡くなるだろうと言われていたらしい。

そういうこともあり、ゲンガーとその従兄弟はまるで関わりを持った事はなかった。

ところが違う小学校から初めて同じ中学になりその従兄弟を見たゲンガーは驚いた。

難病に侵されているはずの従兄弟が元気そうにピンピンしているんだ。

父親同士が双子というのもあって、2人は何となく似てはいたが、
成長が遅くチビだったゲンガーに対して従兄弟は背が高く顔立ちも大人びていて、とてもじゃないが
「治療不可な難病」に侵されている人間には見えなかった。

しかも同じクラスに、ゲンガーや従兄弟にどことなく似ている足原という男まで存在している。

僕の謎はここから始まった。」


ここで僕はふぅと一息ついた。


親友が僕の最後の

「僕の謎は…」

の言葉に反応して変な顔をしている。

「そうだよ。
そのゲンガーは僕だ。
そして、その従兄弟とは君が中学の時に親友だった高橋だよ。」

親友は訳のわからないといった様子で何も言葉を発しない。

「なあ。」

僕は続けた。

「クローン研究所の関係者の河村多江子さんに引き取られたって言ってたよな?
ドッペルゲンガー絡みの事で調べてわかったんだが、
そっくりさんの河村の家族は多江子さんだった。
肝心の河村の動向は掴めてないままだけどな。

多江子さんは結婚してからも職場では旧姓の河村を名乗ってたんだよ。

まあ、息子が中学生の頃には離婚したらしいけどね。

多江子さんの離婚する前の本当の名前は、
高橋多江子。
高橋のお母さんだよ。」

No.44 18/08/21 18:57
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 43 「多江子さんが本物の高橋のお母さん…

そしてお前は高橋のふりをしていたゲンガ-…」


そうか…


そうなんだ…



なんだろう、

驚きはするものの

騙されたと怒りが沸いてくるわけでもない…



さっきまで動揺してたものの

答えがわかると、


なんとなく受け入れられてくるのは。


俺の良いところ?




繋がってんなぁ、

繋がってる、

よくできてる、

ヨノナカってやつは。


俺はなんだか嬉しくなってきて

頬がゆるむ。



「お前スゲーな、

全然気づかなかったぞ、ハハ


でも、

お前も父ちゃんが双子なら
高橋のはずだろ?

なんで高橋じゃなかったんだ?



俺さぁ、

人の名前って覚えても忘れっぽいからさぁ。


ゴメンなぁ、

お前の中学生当時の名前、

思い出せねぇや。」


そして俺はあらためて言う。


「お前の名前、


教えてくれよ。」

No.45 18/08/21 21:37
名無し3 

>> 44 僕の突拍子も無い話に大して驚く様子もなく冷静に話を整理していく足原に僕は驚いた。

やっぱりすごいよ。
さすが僕が憧れ続けていただけの事はある。

「まずは名前のことだけど。」
僕は順を追って話し出した。

「僕の祖母は双子を産んだ後、産後の日だちが悪く亡くなった。
1人では到底双子を育てられない祖父は周りの勧めもあり、子供のいなかった遠くの親戚夫婦に僕の父を里子に出した。
だから双子であっても同じ高橋姓ではないし、里子に出された父を気遣い、高橋の家とはほとんど付き合いも無かったらしい。」

更に僕は言葉を続けた。

「その遠い地で育った父が結婚して僕が生まれ、その僕が中学に上がる頃に父の仕事の都合であの町に移り住んだが、そこに、」

僕は言葉を切った。

そう。
足原。
そこに君がいたんだ。

知らない土地で知らない人達に囲まれ、ずっと孤独だった僕に声をかけて優しくしてくれた足原。

中学の3年間、引っ込み思案だった僕は、親友の高橋といつも楽しそうに笑っている君をそっと見ている事しか出来なかったけど、
それでもたまに君がくれる優しさが本当に嬉しかったよ。

そんな君と友達になれたらどんなに良いだろうと僕はずっと思い続けていたんだ。

「足原君。」

「君が10年ぶりに会った僕を高橋君と間違えたのも無理はないよ。
だって、成長して背が伸びて体つきもしっかりした僕はあの頃の高橋君に似てるもの。
今はたまたま偶然に母親の旧姓の高橋だしね、
でも、僕は高橋遼君じゃない。」

「僕の昔の名前は、阿藤。
阿藤亮平だよ。」

No.46 18/08/22 20:54
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 45 そういう経緯があったのか…


「あとう…

そうだったな、


阿藤。



出席番号二番、

背の順は一番、


だったよなぁ。


出席番号では俺が一番

だったけどなぁ、へへッ」


気持ちをあらため俺は続ける。



「あらためて言うのも
なんだか照れくさいのがあるけどさぁ


なんだか言いたくなったから、




久しぶりだな、阿藤 亮平。




足原、



足原十人(たすと)だ」



ああ。と返事をする阿藤




「お前はどう思う?

この因果関係をさ。


これから先、

自分に及ぼすものが

あるのならば

それを突きとめなければならないと思うんだ。


でも、

今までの俺の人生が
仕組まれたものであったとしても


このまま普通に暮らせるのであれば俺は今のままでかまわない。」



代用品だろうとかまわない。


それでも俺の心は



満たされているから。



「俺さぁ


ウェディングプランナーの仕事してんだ。


笑っちゃうだろ。



今まで何組もの家族が誕生するのを見届けてきた。


家族っていいもんだよなぁ~



俺さぁ


タイムカプセルにこう書いたんだ。




家族がほしい



って」



俺の


変わらぬ願い。

No.47 18/08/23 20:14
名無し3 

足原君の言葉を僕は1つ1つ噛み締める様に聞いていた。

君は、身勝手な大人達のせいでずっと寂しく辛い思いをしてきたんだね。

でも君は恨み言の1つも言わず明るく元気に生きていた。
いや…生きようとしてきたんだ。


「次に僕が何故君の事を嗅ぎ回ろうとしていたのか。
幸か不幸かその君に見つかってしまってこういう状態になってしまっているのだけど。」

僕は足原君の顔をじっと見つめた。

足原君はそんな僕の視線を真っ直ぐに受け止めて僕の顔をじっと見つめ返して来る。

「僕の父親はある大学で何かの研究をやっていた。
そして、僕が小学校を卒業する頃にある研究所に引き抜かれそこに入った。」

僕は再び話し出した。

「入所当時は父親も生き生きと研究に没頭し、その頃は僕も母親でさえもその研究が何なのかは深く知らなかった。
だが…」

「その研究所に勤め出して2年ほど経った頃から父親は段々とおかしくなっていった。
毎晩、浴びるように酒を飲みうわ言の様に自分のしている研究の内容を語り、また酒を飲む。
そんな日々の繰り返し。
家庭は崩壊。
結局、父親はその研究所を辞め、
僕が中学を卒業する頃には両親は離婚した。」

僕は足原君の顔をじっと見つめたまま話を続ける。

「ある日、両親の離婚後ずっと音信不通だった父親が亡くなったとの連絡を受けた。
母親に代わり遺品の整理に行った僕はそこで1冊のノートを見つけた。
そのノートに書かれている文字はグチャグチャでほとんど読めない物だったが、所々読める文字を拾って読んだところ、懺悔ノートの様な物だったのだろうと推察された。」

僕はそこで息を継いだ。

僕の父は頭脳こそ優秀だったが、あまりにも繊細で優しく純粋な人だった。

自分が生涯をかけて打ち込んできた研究が、非人道的な事を行っていた研究所に利用されたのを知った時、父の心は壊れてしまったのではあるまいか…

「そのノートにね、父がこの子だけはこの子だけは人として静かに幸せな人生を歩んでもらいたいと繰り返し書いていた名前があった。

足原十人。

君の名だよ。

そして僕は、その研究所の閉鎖後に所在がわからなくなっていた君の事を少しずつ調べ始めた。」

No.48 18/08/24 20:31
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 47 「お前の父ちゃんも研究員だったのか…

多江子さんに続いて…」


そっか。

阿藤…


さん…


優しい人


メガネをかけていた


痩せ気味の…


そうだったんだな。


俺は阿藤に投げかけるでもなく
ぼーっとした口調で

「クローンって

なんだろ…


エゴ


だよなぁ…


科学は何かの犠牲のうえに


生まれる…




新しいものには


犠牲が…


ひつよう」



俺にはその時


“生け贄”


という言葉が浮かんでいた。


いつかのテレビ画面で見た

昔ばなし…


神の怒りを静める為には
生け贄が必要なのです


俺は生け贄だったんだ。


そう思うと




誇らしい、




なんてちっとも思えねぇ



、、!




俺はハンドルを握り
アクセルを踏みこむ。


強く握ったハンドル、


衝動が体を突き動かす、


阿藤は黙ったまま
俺の行動を見つめる


「悪いなぁ、阿藤、

もう少しだけ、


俺のわがままに

付き合ってくれや、」


俺はインターチェンジを目指した



どこにいくのかだって?


きまってんだろ、


クソ研究所だよ。

No.49 18/08/24 22:33
名無し3 

>> 48 「うん。研究員だった。
と言っても、話したように僅か2年ほどの事だから君の記憶にはあまり残ってないかもしれないが…」

僕は足原君の言葉に淡々と答えた。

「それでもね、その僅か2年の間に父が知った研究所の実態は、父の心血を注いだ研究がどんなに非道な事に利用されたかを知った父の心を壊してしまうには十分だったらし…」

僕はそこで言葉を切った。

「クローンって

なんだろ…」

と、話し出した足原君の顔つきがいつになく物凄い真剣味と凄みを帯びている。

足原君?

車が交差点に近づく。

ここを右折して20分も走れば僕達の住む街だ。

しかし、
足原君は右に曲がるべき道をそのまま直進した。

え?!

驚く僕に、

「悪いなぁ、阿藤。
もう少しだけ俺のワガママに付き合ってくれや。」

と足原君が言う。

「あの?…」

言いかけた僕に、

「どこに行くのかって?

決まってんだろ。

クソ研究所だよ!」

と足原君が当然のように言い放つ。



え?え?え?

で、でも研究所は閉鎖されたはずなんじゃ?!

いま、表向きはそうなってるっていうだけで、実態を知っているわけじゃないけど…

え?
でもそれならそれで尚更そんな所に乗り込んで行くのって危険なんじゃ?

僕の思いとは裏腹に車はぐんぐんとスピードを上げていく。

えっ?

足原君?

ちょっと足原君?

ちょっ、

「足原~~~??!!」

僕の叫び声がまるでスタートの合図のごとく、

「よっしゃあっ!!

行っけぇぇぇ!!!」


足原の怒鳴り声と共に
車が更に加速した。

No.50 18/08/25 18:39
チキン ( 30代 ♂ BMsZnb )

>> 49 「おかえり

たすと。」


「たっ、ただいま

多江子さん、」


「疲れたでしょ

今日はあなたの好きな
カレーライスよ。」


「マジ?
ちょうどカレーライス食べたいなぁって
思ってたとこだよ、」


「さ、
手を洗って着替えてらっしゃい。」


「うん」




「やっぱ多江子さんのカレーが
一番うまいや。」

「ありがと。」



「おかわり!」

「はい」




「おかわりっ!」

「はいはい」





「おかわり!」

「ほんとたすとはよく食べるわねぇ。
作りがいがあるわ。」


「だって、ふまいものあ、
しょうがないよ」

「ふふ
うれしい。

よく噛むのよ」



「、っ、っ、

おかわり!」


「っは~い」


「~わり!」
「~~るの?」
「~~~だもん」
「~~」
「っ~」



・・・・・・



まわりの風景が
早いスピードで
後ろに吸い込まれてゆく。


阿藤も黙って
ただ俺と同じように
前だけを向いてるみたいだ。

目の前の風景が
同じように見えてるのか
わからないが。


PM 8:41



次のインターチェンジだな。


なんだか無償にカレーが
食べたくなってきた。




『ごめんね…

ごめんね…』


亡くなる間際の多江子さん…




俺は視線は前に向けたまま
阿藤に言葉を投げかけた


「阿藤は食べ物

何が好きなんだ?」



どうでもいい会話だけど



なんとなく。


  • << 51 車はぐんぐんと走っていく。 ハンドルを握る足原は口をぎゅっと真一文字に結んだまま、じっと前を見据えている。 足原… 僕にはずっといくつかの疑問があった。 足原は河村多江子さんに引き取られたと言った。 河村多江子さんは高橋君の母親だ。 なら何故、一緒に住んでいた多江子さんの息子が高橋君だと知らなかったのか。 僕が高橋君が多江子さんの息子だと言った時に、足原は初めて知った様な顔をしていた。 その頃、高橋君、いや河村君はどうしていたのか。 そして… 僕が、自分のドッペルゲンガーか?と疑い独自に調べた河村君。 足原はあまり詳しくは調べていなかった様だが、僕は撤退的に河村君の動向を調べた。 結果、色々な事がわかったが、 僕が足原と再会する少し前からの河村君の消息がイマイチよく掴めない。 おかしい。 おかしい。 じゃあ、僕が足原と再会した後に、 「〇〇にいたよね?」 と、目撃された河村君は一体なんだったんだ? いや、チラッと見ただけの人の観察力なんて当てにはならない。 背格好や顔の雰囲気が似ていれば簡単に見間違えられるものだ。 と、すると… その目撃された男は、もしかすると実は足原?! しかし足原はそこにいた事をまるで覚えていない風だった。 覚えていない…と言えば、 僕との会話の中で足原は、 「よく覚えてなくてよぉ。」 というセリフが多かった。 まさか… 父さんの「研究の話」が嫌でも頭に浮かぶ。 足原…まさか… 合成…による…記憶障害?! まさか…な。 考え過ぎだろう。 でも… 次々に亡くなった?消えた?足原の兄達。 治療法が無いと言われていた難病だったはずなのに、見違えるほど元気な姿になっていた河村(高橋)君。 だが今はその消息が掴めていない… そして… 唯一残った足原… まさか… 僕はゾッとした。 「お前の好きな食べ物はなんだ?」 突然、足原が声をかけてきた。 険しい顔つきとは逆にのんびりとした声色だ。 「僕の好きなのは…カレーライスだ。」 僕は咄嗟にそう答えた。
投稿順
新着順
主のみ
付箋
このスレに返信する

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧