お別れを決めていた人への『ラブレター』(雪水あけみ)
お別れすることを心のどこかでお互いに意識している時の、2人で過ごす穏やかな時間。
『この時間を、何て言うんでしょうね。』
いつ、話そうかと悩みながら、相手の様子を横目でチラチラとうかがい、締め付けられる胸の傷みをごまかすように、彼の手を強く握っては黙りこむ。
いつ、何を話されるかと不安で、ソワソワと小さなことに気を配りながら、僅かなチャンスを見落とさないように意識し観察し続ける彼。
思い返せば、そんな時間ばかりで。
目が合えば、悲しい笑顔ばかりを向けあってた。
男性は、自分が本気で好きなら『別れることはない』と信じてしまう生き物。
だけど、深い傷を癒すための恋愛と、本当の愛は違うと気づいてしまっていた私の心は決まっていました。
本当の理解者
彼が、私に“別れる場合の話”として、ただ一つ、言ったことは...
『嫌われようとするのだけは、やめてほしい』
という言葉でした。
私は、この言葉を聞いた時、なぜだか涙が溢れて止まらなかったんですよね。
この人は、本当の私の理解者だったと。
私はお別れを告げた時、彼にとても短いラブレターを渡しました。
失恋の時の苦しみの一つは、自分がその人にとってなんだったのと感じてしまうこと。
手紙を受け取った彼は、これからも私を支えるということを条件に、別れを受け入れてくれました。
別れる相手を“愛してる”こともあるんです。
それを伝えてあげることが、2番目の優しさだと思いました。
雪水あけみ