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胡蝶

レス2 HIT数 568 あ+ あ-

匿名さん
21/05/08 12:16(更新日時)

 毎夜、僕は蝶となる。
 僕は、思わず見惚れるような美しく儚げな姿で、淑やかに凪ぐ海にもまさり、真夏の水彩絵の具を溢したかのような空にもまさる彩りの羽根をもち、夜明けの光を目指すかのように、ゆるやかに羽ばたく。
 周りには何者もおらず、ただ胡蝶の一頭が薄明の空を舞う。
 あたりは虚ろな夜空に日の光が覗く空のみで、他には何も見えやしなかった。
 終わりを迎えたかのような静寂の世界に、胡蝶は孤独すら感じさせない。ただ、その羽をはためかせるばかりだ。
 蝶は、日が昇るのを、空高く飛びながら見ることしかできない中、だんだんと朝日が空を照らす。
 ああ、光が夜をのみ込んでいく……。


 その瞬間、僕は目覚めた。
 ベッドの上を起き上がる。毛布が若干はだけているのが目につき、ふと、あたりを見渡す。
 部屋にはチラシやらビニール袋が散らかっており、空のコンビニ弁当がゴミ箱に捨ててある。
 最近だ。毎晩、僕はあの夢を見るようになった。
 夜明けの空を駆ける、蝶の夢。
 まどろみの中、その夢ばかり鮮明に覚えており、きまって日の出で目が覚める。
 カーテンを開け、窓の外を見る。
 ありふれたいつも通りの世界。行き交う車に、人の集まる駅。連なるマンションや電柱が見え、きちんと今が現実なのだと思わされる。
 いや、しかし……本当だろうか。
果たして、僕は先ほどの夢を“夢”と言えるのか。
 僕が人間として、体を持って生きているのが、本当の夢なのだとしたら、それは本当に僕が人間と言えるのだろうか。
 僕は、夢から目覚めたのではなく、今この瞬間に、胡蝶のまどろみの中なのではないのか。
 そんな曖昧な考えに、僕はほのかに興味を抱く。
 世界が静寂に包まれようと、あの胡蝶は天を優雅に、自由に舞う。
 夜明けを迎えようと、あの群青の翼を持ち、生き続けるのだろう。
 そう思うと、僕はなんだかすごく羨ましかった。
 いくらこの世の中が便利だろうが、孤独すら抱かず、どんな青にも
負けない羽を保ちながら、くるくると踊るように羽ばたくあの蝶の、なんと美しいことか。
 僕が眠ることであの蝶になれるのか、あの蝶が眠ってしまうことで僕が目覚めてしまうのか。
 朝ぼらけの頭で考えたって、しょうがない。
 僕は、おもむろに布団にもぐり込み、また胡蝶の夢をみる。

No.3287000 21/05/08 12:06(スレ作成日時)

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No.1 21/05/08 12:15
匿名さん1 ( 30代 ♂ )

しのぶ?

No.2 21/05/08 12:16
匿名さん0 

>> 1 すみません、笑っちゃいました笑笑

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