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小説好きさん
20/11/26 23:15(更新日時)

【第一話:深夜の強盗】

「強盗だ。金を出せ」

 ある日の夜。老人が一人で暮らすこのアパートで、何者かが静かな口調で言葉を発した。

「やっ、なんと強盗ですと。これは珍しい。いや、はじめての体験ですな。人生、最後まで何があるか分からないものです」

「何をぶつぶつと言っているんだ。強盗だ。金を早く出せ」

 強盗はナイフをちらつかせ、その老人を脅しにかかる。

「強盗が自ら強盗だと名乗るのは、なんだか滑稽な気がしますな」

「ふざけるんじゃない。早くしなければ、殺すぞ」

「まあまあ、そのように興奮するのはよしなさい。そもそも、どこから入ってきたのですか。鍵を締め忘れていましたかね」

「そんなことはどうでもいい。ここで与太話をしている暇はないんだ。早くしろ」

「早くしろと言われましても、うちにはわずかばかりのお金しか置いてありませんよ」

「それでもいい。現金がないなら、通帳と印鑑も出しやがれ」

「あいにく、こんな爺さんでも最近は全てキャッシュレス決済ですませておりましてね。通帳などもウェブ通帳でして、そういった類の物理的なものは、ないのですよ。スマートフォンの中にあるネットバンキングやクレジットカードなどだけでして。そしてパスワードは全て私の頭の中ですし」

「お前は本当に面倒くさいやつだな。じゃあそれを早く吐け。さもないと本当にぶっ殺してやるぞ」

「はぁ。それなら、いっそのこと殺してもらって結構ですよ。なにせ、私はすでに医者に余命宣告されているのです。病気で死ぬか、今殺されて死ぬか、もうどちらだって人生にそれほど大きな違いはなさそうです。いや、病気で死ぬぐらいなら、強盗に刺されて死ぬ方が、クライマックスとしては盛り上がりますかな」

「なんだって? 往生際の悪いやつだ。そんな話でこの場をやり過ごそうなんて見え透いた嘘には騙されないぞ。おい、なんとか言いやがれ」

 困ったような表情をしながら、老人はゆっくりと立ち上がり書棚へ向かった。

No.3188611 20/11/26 21:16(スレ作成日時)

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