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コツコツコツ

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小説好きさん
20/11/19 03:27(更新日時)

壁の向こうから時々聞こえる、コツコツコツという音。

なんなんだ、不定期に聞こえてくるこの音は。

クレームを伝えに行くほどではないが、かすかに聴こえてくるレベルなのが厄介だ。

薄っすらと、でも確かに、それは耳に入ってくるのだ。

マンション暮らしの私だが、隣からなのか、上階からなのか、下階からなのかも確認できないほどなのが、さらに困惑させる。

全く見当違いなお宅に突然訪問し、「あの音やめてくれませんか」と伝えてしまって、仮に違ったとしたならば、完全にこちらに不信感を持たれるだろうし、それは望むところではない。

頭がおかしくなりそうだ。

No.3183887 20/11/19 02:06(スレ作成日時)

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No.1 20/11/19 02:22
小説好きさん0 

もう夜中だ。

私はベッドの上にいて、明日の仕事のことを考えながら、眠りに入ろうとしているわけだ。

唐突に鳴り響く、救急車やパトカーのサイレンの音ぐらいなら我慢するが。そういったものは、なんせ人命がかかっているのだから。

隣人は、こんな時間に何をしているのだろうか。

考えてもどうしようもない。起き上がって文句を伝えに行く気力もなく、眠ろうとしているのだが、やはり、聞こえてくるその音。

コツコツコツ

いいかげんにしてくれ。

とにかく何かを考えることで、その変な音をかき消そうとしながら、色々なことを頭の中に浮かべていた。

普段なら、考えることのないようなことや、仕事の愚痴。いつもの趣味のこともそうだ。

No.2 20/11/19 02:44
小説好きさん0 

仕事に関しては、「順風満帆だ!」とは、正直なところ言うことは出来ない。

本当に、何もかもが上手く行っている奴らなんているんだろうか。

いや、ごく一部にはいるんだろうけれど、自分の周りで、そういった同僚や友人は見たことは無い。

まあ、こんなマイナス思考では良くないか。

最近の楽しみは、なんといってもロードバイクだ。

いわゆるママチャリ的なものとは全く違い、爽快感が格段に違う。

初めて乗ったときは、本当に真っ直ぐに進むことすら厳しかったが、慣れるに従い、その面白さにハマっていった。

世間では、交通ルールを守らないロードバイカーたちが非難を浴びるようなことも多いようだが、私はきっちりと規則を守りながら、たまの休日に、ペダルを漕いでいる。

趣味と言って良いのだろうか。

ロードバイクがなければ、おそらく、仕事の色々なストレスに押しつぶされていたのかもしれない。

それぐらい、気持ちを楽にしてくれる存在だ。

精神的に参ってしまうと、私生活や、もちろん仕事自体も上手く行かないものだ。

あの空気感。気持ちよく峠を下るときの爽快な気分。

軽快に飛ばし、何十キロという道のりを、自分の脚力だけで進んでいくのだ。

No.3 20/11/19 03:09
小説好きさん0 

ロードバイクは、それぞれの走り方にもよるが、1時間で、10キロとか15キロとかは進める。

身体的な負荷はありつつも、自分の足で、それだけの距離を走破できるということに関して、感動や感慨が深まる。

仮に10時間走れば、100キロ、150キロといった道のりを、自分の脚力だけで進めるのだ。

マラソン選手でいう、ランナーズハイ的なことかもしれない。

苦しい、しんどいと感じながらも、なんとか目的地にたどり着いたときの爽快感は、どんな難題を突きつけられた仕事を、完璧にこなしたときと比べても、遥かに快感を覚える。

だからやめられないのだ。

他に、新しく、趣味でも始めようか。そんなことを考えていたこともあったが、もともと無趣味だった私の脳内からは、何も思い浮かばなかった。

まあ、ロードバイクでこれだけ楽しめているのだから、これを極めよう。

そんな風に思いながら、日々を過ごしていた。

目覚ましが鳴り、少しだけ意識が覚醒する。

そろそろ仕事の時間か。やれやれ、行ってくるとするか。

No.4 20/11/19 03:11
小説好きさん0 

起き上がろうとするが、どうも身体の調子が悪いようだ。

聞こえ続ける、あの音のせいかもしれない。

コツコツコツ

寝続けている間にも、ずっと鳴り続けていたのかもしれない。

それで心身に不調をきたしたのだとすれば、これは本当に、解決しなければならない問題だ。

こんな早朝まで、何をやっているんだろうか。

外に出て、音を出し続けているヤツを探して、本当にクレームを言ってやらねば。

そう思いながらも、なかなか布団から出ることが出来ない。

仕方がない。クレームをつけに行くのは後にして、とりあえず、身体を休めなければ、

そんな日もあるか。二度寝して、起きてから、頭を整理しよう。

そのまま、再び眠りについた。

No.5 20/11/19 03:23
小説好きさん0 

まどろみの中、少しだけ夢を見ていたようだ。

爽快に走るロードバイク。

気持ちの良い風を浴びながら、峠を下っていく。

途中途中で、追い越されたり、追い抜いたり、そういったバイカー達との一瞬のふれあい。

こういったライフワークがあるからこそ、仮に仕事がうまく行っていなかったとしても、自分はがんばれているんだろうな。

そんな風に感じながら、いつものように、走っていた。

No.6 20/11/19 03:26
小説好きさん0 

医師は言った。

「随分と長い時間手術をしてきたが、さすがにこの状況からの回復は難しそうだ。まだ手を尽くしたいとは思うが、意識を戻せるのかどうかすら、難しいしところだ。今、そこに映されているデータによれば、脳波計はグラフを示しているのだから、今はまだ意識があるのかもしれない。何を考えているのだろうか。悲しいことだ。ロードバイクでツーリング中に、不運にもトラックと衝突し、こんなことになるなんて」

事故にあい、昏睡状態に入っていたその男は、集中治療室のベッドの上で、手術を受けていた。

頭部に大きな障害をおい、長時間の開頭手術が行われていたのだ。

担当医師は慎重に、本当に慎重に、頭蓋骨に対して、さまざまな手術道具で穴を開けたり、中を覗いたりしながら、精一杯の手術を試みていた。

コツコツコツ

No.7 20/11/19 03:27
小説好きさん0 

---完結---

こんな深夜にもリアルタイムにPVが増えてくださってちょっと感動しております。
見ていただいていた皆様ありがとうございました!

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