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小説好きさん
20/10/30 23:09(更新日時)

プシュー。

扉が開く。

重い頭を抱えながら、窮屈だったカプセルから外に出て、ひといきつく。

冷凍睡眠から目覚めさせられた私は、これから地球時間でいうところの1年ほどの任務をこなさなければならない。

私を起こしやがったクルーは、再びそそくさと眠りにつく。のんきなものだ。

あんな顔だったかな? 随分と違和感を覚えたが、冷凍睡眠しているとはいえ、ある程度は歳を取るようだな。私も数年ぶりに目覚め、やつとも久しぶりの対面だ。記憶が混濁しているようなこともあるのだろう。短い時間ではあったが、久しぶりに人と話し、すこし懐かしい気持ちになる。

幾人かを乗せた宇宙船は、地球からはるか遠くのアストロ星へ向かっているのだ。

今や資源が乏しくなりつつある我々人類の、移住先を探す調査のためだと聞かされている。

交代で任務をこなしながら、長い旅を続けているが、計画通りなら、あと数回ほどカプセルを出入りする程度の期間で目的地へ到着するはずだ。

No.3171483 20/10/29 21:58(スレ作成日時)

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No.1 20/10/29 22:17
小説好きさん0 

程よく小綺麗に整理された船内。

ひとりで、この大きな船を管理するのは、意外と大変なことではある。

向こうで何か取引を持ちかけられた場合に備えて、結構な量の貨物を積んでいるのだから、その大きな倉庫の見回りも日課となる。

前のクルーにも頭が下がるが、ここからは、私が対応しなければならないのだ。毎回のことだが。

まずは、コックピットを見回る。異常はないようだ。

異常があれば、起こされた時に慌てて私に何かを伝えたであろうから当たり前だ。

それから、その倉庫や、水食料の状況やトイレなどの様子を確認し、問題ないことを把握する。

一通りのチェックを終え、日誌にそのことを記録し、コーヒーに口をつける。

起きてから慌ただしく動いていたのだから、少しばかりの休息はしょうがないだろう。このあとも長く続く任務だ。メリハリをつけなければ。

コーヒーの在庫が切れていたらどうしようかと思ったが、前のクルーたちも、この先を考えてのことだろう。そこそこの量が残っていた。

私にとっては唯一の楽しみでもある。

No.2 20/10/29 22:27
小説好きさん0 

これまでの他のクルーの日誌に目を通す。

特に何の異常もないようだ。

普段どおりの日常を過ごし、1年ごとに任務を交代し、引き継ぐ。

退屈にもなりそうなものだが、なぜだか、自分自身も、それを不満に思ったことはない。

これが自分の宿命というか、やるべきことなのだろう。

この船に乗り込んだからには、最後まで続けなければならない。

そんなことを考えながらも、日々が過ぎていく。

とりあえず異常はなく、順調に船は進んでいる。

もう少しで交代の日だ。

次のクルーに叱られないように、船内を、普段よりもう少しだけ整え、カプセルの扉を開き、声をかける。

No.3 20/10/29 22:40
小説好きさん0 

プシュー。

こいつも起こされるのは嫌なのだろうが、これが決まりだ。こちらもお遊びでやっているわけではない。

「おはよう。よい眠りだったかい」

「毎回のことだが、よくはないね」

そんな会話を交わし、ようやく一年間の任務を終え、再び冷凍睡眠カプセルへはいり、また眠りにつく。

これから、再び数年間眠ることになるのだが、起きたときには、そろそろ到着が見えてくる頃だろう。

眠りにつく瞬間は、やっと休めるという安堵感が大きいが、目覚めてみると、それ以降の任務の重圧や、長い時間をひとりぼっちで過ごすことになるという現実に押しつぶされそうになる。

みんな同じように感じているのだろうが、宇宙パイロットの宿命なのだし、しかたがないことだ。

こんな重圧も、任務を達成した後に振り返れば、良い酒のつまみの話の一つにでもなるのだろう。

生きている間に、そう何度も経験できる仕事ではないのだから。

No.4 20/10/29 22:55
小説好きさん0 

「おい、時間だぞ」

また数年が経ったようだ。

私を起こしやがったクルーは、相変わらずの態度で、引き継ぎ事項だけを伝えてカプセルへと戻る。

まったく、自分の前がこいつじゃなければ、もう少し快適な目覚めを迎えられていただろうに。

そんな風に感じつつも、順番としては前回とおなじクルーのはずが、なぜだか、随分と違って見えた。

眠っている私と違って、1年間は、ひとりっきりでこの船内の中で働いていたのだから、そういったものが表情にでいるのかもしれない。

私も、やつからすると、前回、起こされた時とは違って見えているのだろうか。

No.5 20/10/30 09:38
小説好きさん0 

テーブルにつき、軽く休んだ後、「さて、これからもう1年間、仕事を頑張るとするか」そんなことを考えつつ、ふとカプセルの連中を見渡すと、随分と見知らない顔ばかりが目に入ってくる。

こいつたちは誰だ? いくら長い年月を宇宙空間で過ごしているとはいえ、こんなにも知らない姿形に変わることはないだろうし、中には随分と若い様相の者もいる。カプセルステーションには、起きた時と冷凍冬眠に入る時、定期的な点検で訪れる時以外にはめったに立ち寄らないので、気づかなかったのだろうか。

引き継ぎ事項には何もなかったはずだ。密閉された船内から、外へでることはできない。すくなくとも、アストロ星に到着するまでは。

前のクルーを無理やり起こす。

「なんだい。今眠りについたばかりだと思うのだが」

「クルーたちが、乗り込んだ時と、随分と変わっているように見えるのだが。何が起こっているんだ。いや、君も昔とは全然と違って見えるのだが」

「何を言っているんだ。当たり前じゃないか。もう起こさないでくれ」

No.6 20/10/30 12:55
小説好きさん0 

そうぶっきらぼうに伝えると、他には何も発言することなく、カプセルに戻る

全く何を言っているのか分からなかったが、私は改めて一人任務に入ることになる。

一通りやるべき仕事は終わらせ、しかしながらこの状況をどう理解すればよいか分からず、現状を理解するために、船内をくまなく調べ始めた。

それこそ、これまであまり訪れたことのないスペースや、倉庫の中身、各クルーが起きている時に使っている自室、もちろん睡眠カプセルも、日誌に残された僅かな情報まで、可能な限り調べ尽くした。

最後に手を付けたデータベース。トップシークレット扱いになっていたデータ領域には、結構長い時間の格闘の上、なんとか侵入することはできた。

プログラム部門で優秀な成果を残した私ですら、なんとか偶然突破出来たといっても良いぐらいの高いレベルのセキュリティだったが、なんとかハックすることができた。


そこで、私たちが知らされていない事実が多数みつかった。

このプロジェクトの目的はおろか、自分自身の存在についてさえも、一切知らない情報だらけだ。

しばし呆然とする。

No.7 20/10/30 13:09
小説好きさん0 

可能な限りの情報を集めてみると、我々は資源調査のためではなく、どうやら、アンタレス星との貿易によって、かろうじて成立している地球から、わずかばかりの資源を定期的に交換し続けるために作られた、ロボット。いや、見た目などは人間とまったく変わらない成分から作られているものだが、人工生物といってもよいものだったようだ。

一定期間働かせられた後、このカプセルに入り充電させられ、それと同時に、その間に全く別の姿かたちにプログラムを書き換えられ、しばらくすると、まるで別人になったかのように生まれ変わる。

任務のために必要な、ある程度の記憶は残されているようなのだが、再びカプセルに入れば、また、私たちは再生成されなおすようだ。

自分を自分とは認識するが、自分に対する、あるいは自分の任務に関する違和感は感じないらしい。

他のクルーはどのように感じながら、任務をこなしているのだろうか。生体が元になっているプログラミングされたロボットということだから、ある程度、コントロールしきれていない部分があるのとおしれない。私の自我は、もしかしたらそういった部分から発生してしまったエラーの可能性もある。

少なくとも、やつはそれを知っているようにも見えたが、プログラムされた行動を、ただ、定期的に繰り返すように作られているのだろう。

私が、なぜこのような自我を持ってしまったのかは分からないが。

そんなことを考えながら、さらに自分自身のことを調べようとしていた矢先に、突然と、後ろの方から、ガツンと言う音と共に、頭に大きな衝撃を受け、気を失った。

No.8 20/10/30 23:09
小説好きさん0 

「ようやく着いたかい」

アンタレス星の対外責任者と、しばらくぶりの対面だ。

「今回も随分と長い旅でした。さて、こちらの物資をお収めください」

「助かるよ。地球の方はどうかい?」

「アンタレス星との貿易のおかげで、なんとかしのげています。今回は、人工培養のクルーのやつが、一人途中でおかしなことを考え始めたようで、やっつけるのに手を焼きましたが。今後の改善点ですね」

「なるほど。我々アンタレス星にとっても、地球は大事な取引相手なのだから、そこのところはしっかり頼むよ。地球の富裕層の人々も、徐々にこちらへ移住してきているわけだし。ところで、そのクルーはどのように処理したんだい?」

「他のクルーを無理やり叩き起こしたりしていたり、プログラム外の行動をしていたことに気付いて、慌ててぶん殴ってやりましたよ。本来は疑問を抱くようなことはないはずだったのですが。地球へ戻るのにも生体の素は必要ですから、だいぶプログラムを修正しカプセルに寝かせてあります。都合のよい記憶だけを残すのは、ちょっとした調整が、なかなかに難しいものですね。次起きた頃には、まったく新しい人として産まれ直し、地球へ戻るための任務に着いているでしょうけれども、多少なりとも自我を持つ可能性があるのだとすると、少しかわいそうなものではありますが、いずれは、この貿易プログラムも、完全に人工培養されたクルーたちで、永遠と自動化できるようになるはずです」

No.9 20/10/30 23:09
小説好きさん0 

〜完了〜

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