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オカルト倶楽部にようこそ

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自由なパンダさん
20/02/17 13:04(更新日時)


当倶楽部にようこそ…

No.2995827 20/01/30 15:40(スレ作成日時)

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No.1 20/01/30 15:46
自由なパンダさん0 

俺の名前はユウヤ。
どこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。
ごく普通のサラリーマン、
といっても平々凡々な人生を送ってきたかというと実はそうでもなく、それなりに色々とハードや奇異な経験も積んできている。

まあそんな話はどうでも良いんだが、
それなりにバラエティに富んだ人生送ってきたと思っていた俺は、今後の人生で更に奇っ怪な経験をする事になるとはこの時までは夢にも思っていなかった。

そう。

あの2人に出会うまでは…




「今日は○○商事に寄ってから直帰します!」

俺は部長にそう声をかけるとホワイトボードに「○○商事→直帰」と大きく書き込み社外に出た。

外はあいにく朝からの大雨。
ちっ
こんな日に得意先まわりとはノリが悪いな。
あまり気が進まなかったが仕方ない。
幸い○○商事の部長さんとは普段から懇意にさせてもらっている。
正直、楽な相手と言えば楽だ。
いつもの様に上手くご機嫌を取って今日は早めに帰るか…



「では失礼致します。今後ともどうぞよろしくお願い致します。」

俺は丁寧に頭を下げ○○商事を後にした。

よしっ、思ったより早く終われたな。
どこかで呑んで帰るかな。
久しぶりにどこか良さそうな店の新規開拓でもしてみるかな
土砂降りの雨の中、そう思いながら繁華街を歩く。
そうだ。
今日は入ったことの無い路地に入ってみよう。


「モンちゃん…しっかり、大丈夫?」

「う、うん、少し目眩がしただけ…
ありがと…アンちゃん…」

いくつかの角を適当に曲がり人通りの少ない路地に入った俺の目に道の端にうずくまる女性とその女性に心配そうに声をかける友達らしき女性の姿が飛び込んできた。

「あの…大丈夫ですか?」

思わず声をかける俺。

この何気ない人助けの行為が後に奇妙な仲間たちとの出会いのキッカケになるとは、この時の俺には全く想像すら出来ていなかった。

No.2 20/01/30 15:52
自由なパンダさん0 

「大丈夫です。少し休んでいれば良くなりますから。」

何故か具合の悪い本人ではなく、アンちゃんと呼ばれた友人らしき女性の方が答えてきた。

「え?でも顔色がかなり悪いよ?
本当に大丈…うわっ!!!」

女性の言葉を無視して更に近づこうとした俺の前に突然1匹の黒猫が飛び出してきた。

なんだ猫かよ。
あ~ビックリした。

猫に驚かされて心臓がかなりバクバクしていたが、少し落ち着いて猫を見るとなかなか可愛い猫だ。

黒猫か。

魔女の宅急便というアニメ映画があったが、それによく似た可愛い黒猫がクリクリした大きな目で俺をじっと見上げている。

あれ?猫なんて近くにいたっけ?
どこから出てきたんだ?
それにしてもこいつ…
………
なかなか可愛いぢゃないか…

俺は特に猫好きというわけでも無かったが、その猫のあまりの可愛さについ手を出して猫を撫でようとした途端、

カプッ!!!

……猫が俺の手を噛んだ…

??!!

「痛ってええええっ!!!!」

あまりの痛さに手を引っ込めようとするが猫はガッチリ俺の手に噛み付いて離れない。

「こんの~!バカ猫!!
離せっ!離せっ!」

「あの…ジジがミエルの?!」

俺が猫を引き剥がそうともがいている所にモンちゃんと呼ばれた方の女性がさも驚いた様に顔を上げて声をかけてきた。

へっ?
ミエルも何も今現在このバカ猫を引き離そうと格闘中の姿が君にはミエナイのか?
何を言っちゃってるんだこの子は。

「これ君の猫?悪いけど何とかしてくれない?!」

右手に猫をプラプラさせながらウンザリしてそう訴えた途端、

「あはははは!」

「アンちゃん」が大声で笑い出す。

「いや、笑い事じゃね~…」

そう言いかけて「アンちゃん」の方を見た途端、

フッ

右手から猫の重みが消えた。

No.3 20/01/30 15:53
自由なパンダさん0 

あれ?

猫…は?
どこに…いったんだ?

一瞬の事に俺は唖然とした。
狐につままれた様なというのは正にこの事であろう。
もっとも実際には狐につままれたのでは無く、「猫に噛まれた。」のだが…

「お兄さん…お願いがあるの…
ここを少し先に行ったお店に行きたいんだけど…手を貸して…」

そんな俺の様子ををずっと眺めていた
「モンちゃん」が少し恥ずかしそうにいきなり頼んできた。

「え?あ、ああ、もちろん。」

「じゃあ行きましょうか。」

さっきまでのやや拒む様な態度とは打って変わって何故か急に乗り気な様子の「アンちゃん」が「モンちゃん」の片腕を持ちそっと立たせた。

「あっ、手伝うよ。」

慌ててもう片方の腕を俺がそっと支える。

そこからすぐに右に曲がった先の路地を通り抜け更に左に曲がった先の路地にその「店」はあった。

間口は狭く古めかしいレンガの壁伝いに蔦が幾重にも絡み合って伸びている。
重厚なダークブラウンの重々しい木製の大きなドア。
窓はあるが豪奢なステンドグラス仕様になっており中の様子は見えない。が、全体的にノスタルジックな雰囲気が漂うどこか懐かしいほっとするような雰囲気を放つ佇まいだ。

「海ちゃん、お客様連れて来たよ。
どうかな?多分…能力はすごいと思うんだけど…」

中に入るや否や「モンちゃん」がおかしな事を言い出す。

中は重厚な木製のカウンターとアンティーク調のテーブルと椅子、壁際にソファが置かれ、カウンターに男女が1人ずつ座り、カウンター内に女性が2人立っていた。

「モンちゃん」に声をかけられた「海ちゃん」らしきカウンター内にいた女性の1人がまるで品定めでもするかの様に俺を上から下までジロジロ見回す。

なんだ?
感じ悪いな。

何となくムッとする俺に構わず、

「ふ~ん、面白そうな匂いはする。ね?ニナッチ?」

と「海ちゃん」がカウンター席の女性に声をかけると、

「そうね、モンちゃんが選んできたんなら間違いないでしょ。」

と「ニナッチ」と呼ばれた女性も訳の分からないセリフを吐いて俺を興味深げに見つめた。


No.4 20/01/30 16:03
自由なパンダさん0 

「あの、一体なんなんだよ?!」

不躾にジロジロ見られる事にかなりの不信感と苛立ちを覚えた俺は「ニナッチ」に少し食ってかかりかけたが、

「まあまあ、いきなりで驚いたよね。
名乗りもせずに失礼しました。
僕の名前は金太郎。
みんなからは金さんや金ちゃんって呼ばれてるよ。
良ければ君の名前も教えてもらってもいいかな?」

「ニナッチ」と同じくカウンター席に座っていた男性が穏やかな笑みを浮かべながら取りなすようにそう話しかけてきた。

「え?ユウヤ…だけど。」

「ユウヤさんごめんね~、海ちゃんやニナッチは【観察】するタイプだから。ほら座ってこれでも飲んで!」

俺が名乗るとすぐに「海ちゃん」の隣に立っていた女性が声をかけてきてアイスコーヒーをサービスしてくれた。

「あ、ありがとう。え~と、」

「私?マーキー。」

「ありがとうマーキーさん。」

「マーちゃんでいいよ。みんなもそう呼んでるし。」

「うん、わかった。じゃあ俺もさん付けはしなくていいんで…」

「わかった!じゃあユウちゃんね!」

極端だなおい。

屈託の無い明るいマーちゃんの態度に気持ちが少し和んだが、「モンちゃん」を始めとするそれぞれの不可解なセリフがどうも気になっていた。

「あの…金太郎…さん?」

俺はカウンター席に座ると「金太郎さん」の方に体を向け話しかけた。

「金ちゃんでいいよ。」

「あ、じゃあ、金ちゃん、さっきから皆さんが言っている事の意味が俺にはさっぱりわからないんだけど…」

「ああそうだよね、じゃあここはこの店のオーナーである海ちゃんから説明してもらうとしようか。」

金ちゃんは「海ちゃん」に向かって軽く目配せし、俺も「海ちゃん」の方に向き直って「海ちゃん」の話を聞く体勢を取った。

No.5 20/01/30 16:05
自由なパンダさん0 

「霊感とか、不思議な現象って信じる?」

「海ちゃん」が唐突に怪しい事を言い出す。

「時々かな?信じる事もあれば信じない事もある。元々そんなに興味は無いし。」

俺はわざと警戒心を露わにしながら取り付く島の無い答え方をした。

だってそうだろ?
初対面の俺に対する言動が怪しすぎるんだよここの人達。

でも興味が無いのは実は大嘘。
俺自身勘が鋭い方で予知夢も何回か見たことがあるし不思議な体験もしてきている。

それに…

「あらそうなんだ。実は私達社会人サークルみたいなのやってて、オカルト好きが集まってオカルト倶楽部っていうのを作ってるんだけど…」

俺の思考は「海ちゃん」の言葉で中断され、俺は我に返った。

はい来た~
勧誘来た~

会費が高級クラブ会員なみか?
それとも1本ウン10万~の水もしくは高額の壺を買わせる気か?

何にしろこんな怪しそうな倶楽部に入る気はサラサラない。

「いやすみません、ほんとそういうの興味無いんで…そろそろ帰ります。」

「そう…私達を怪しいと思ってるでしょ?信じてもらえないだろうけど、一応カミングアウトしておくね。実は…」

ここで「海ちゃん」は少し勿体をつけた様に一呼吸置き、

「ここにいるメンバーね、それぞれ何かしらの能力保持者なの!!」

と何故か少し勝ち誇った様に言い切った。

「ね?私達が時々変なのはこういう事にも原因が…
って、おいっ!どこに行くのよ!!」

「いや、帰ります。」

「帰る?!これから謎が解き明かされていくんじゃない!私達の事を深く知れるんだよ!」

「いや、むしろ深く知りたくないので帰ります。」

「ちょっと!うちにはゆうやが必要なんだよ?!」

何言ってるんだ?
この人は…
っていうか何故に呼び捨てっ??!!

「プッ…ふふふ」

「ニナッチ」が堪えきれずに笑い声を漏らした。

「ゆうさんが嫌がってるから諦めようか。
ゆうさん、お引き留めしてごめんね?」

良かった。
この人はマトモそうだ。
って、ん?ゆうさんって誰だよ?!

一瞬ポカンとしたがこの人のおかげで何とか帰れそうだ。

「じゃ、これで。」

「……可愛がっていたんだね。
でも縛り付けて身代わりにするのは良くないよ?」

木製のドアに手をかけた俺の耳に
「ニナッチ」のその言葉が不意に突き刺さった。

No.6 20/01/30 16:10
自由なパンダさん0 

「何を言ってんだ…よ…」

自分でも声が震えているのが分かった。

「最近、霊的パワーの強い場所にでも引越した?
でもきっとこの子のお陰でまだあまり実感ないかな?
ゆうさんはこの子に守られてるんだよ
でもそろそろ限界。
このままじゃ…この子悪霊になっちゃうよ?」

「あんた、一体なんなんだ?!
俺の何かがミエテルのか?!」

「私は人のオーラや霊的な物がミエルのよ【観察】能力保持者。
ゆうさん、とても可愛がってたペットが死んでその首輪を肌身離さず持ち歩いてるでしょ?」

「…………」

俺は何も言えなかった。

「普通の人なら特に何の問題も無いとは思うんだけど、ゆうさんは…気付いてる?
かなり強い力を潜在的に秘めてるよ?
人の強い想いって時として魂をこの世に縛りつけちゃうことがあるんだけど
ゆうさんの想いならかなり拘束力強いでしょうね。
そうやって縛り付けたまま【良くない】場所に住んだ。
最初はこの子のお陰で何とかなってたけどだんだん色々と…
ねえ思い当たる事あるんじゃない?」

「………」

思い当たる節はあった。

チビ…

俺はポケットからチビのしていた赤い首輪を取り出したが、元は赤い色の首輪が8割がた黒ずんでいた。

またシミが広がっている…





「時々庭の手入れをしてくれる程度でいいからさ。」

半年ほど前、1年の海外赴任が決まった先輩夫婦に防犯と庭の手入れ要員を兼ねてそこに住んでくれないかと頼まれた。

駅近一軒家で家賃はタダ。

それまで住んでいた古いアパートが取り壊される事になり、引越しを検討中だった俺は一も二もなくその話に飛びついた。

新築の4LDKの庭付き一戸建て。
1階のリビングとリビングに続く和室が俺の生活スペースだったが、今までの汚くて狭い1DKのアパート暮らしからするとかなり豪勢なお城住まいの様な生活だ。

最初の頃は特に何事も無く快適な新生活が続いたが
1ヶ月を過ぎた頃から俺は悪夢にうなされる様になった。

目覚めると内容は覚えていないが、自分の叫び声で飛び起きる事も何回かあり、さすがの俺も少々参ってきていた
そんなある日、ふとお守りの様に持ち歩いているチビの首輪に何やら乾いた血の様なドス黒いシミを見つけた。

No.7 20/01/30 16:15
自由なパンダさん0 

「何だ?これ…」

最初は何かの汚れだろうと大して気にも留めなかったが、その日を境に日に日にそのシミは広がっていき、それに伴い悪夢を見る回数が増えていった…




「それ見せてください!!」

ぼーっと首輪を眺めていた俺は
急に大きな声をかけられ咄嗟に声のした方を見る。

「えと、君は…」

「アンです。」

「アン…ちゃん…と呼んでいいの…かな?」

「はい、呼び方は何でも。それよりもその首輪を貸して下さい!」

アンちゃんの剣幕に気圧され慌てて首輪を渡すと、アンちゃんは直ぐに首輪を両手で包み込み目を閉じて祈る様な姿勢を取った。

「あの…なにが?」

俺の問いかけも聞こえていないかの様にアンちゃんはひたすら集中して何かを祈っていたが、暫くすると、

「ふう…なんとか少し戻しました。
応急処置ですけど…」

と俺の手にそっと首輪を返してくれた。

見るとシミ自体の大きさは変わらないものの全体的に色がかなり薄くなっている。

「あの…これ、君が…あ、いや、アンちゃんがやったの?」

「はい、私は【癒し】の能力保持者です。」

「癒し?」

「はい、わかりやすく言うと今この子はゆうやさんが本来受ける霊障のほとんどを引き受けて弱っている状態です。
それを私の癒し効果で少し回復させました。
でも…いつまで持つか…」

一体なんなんだ。

訳がわからなくなってきた。

こいつらは一体…

「いつまで持つかって…あんた達の言うことがもし本当だとしたら、チビは遅かれ早かれ悪霊化するってことか?!それも俺の身代わりになったせいで?!
そんなオカルトめいた話、誰が信じられるかよ!!」

「…私達の事は信じなくてもいいよ…
でも…お願い…その子のお兄さんを守りたいっていう気持ちだけは信じてあげて?」

訳がわからず半ば怒鳴るような俺の波立つ言葉を静かなさざ波に戻す様なモンちゃんの言葉に、俺は一気に気持ちがスーッと落ち着いていくのを感じた。

No.8 20/01/30 21:10
自由なパンダさん0 

カチャン…

玄関のドアを閉めるとそれまで饒舌だったマーちゃんが急に無口になった。

「来てくれて嬉しいよ…怖くない?」

マーちゃんの顔を覗き込むように尋ねると、

「うん。だって…とても…来た…かった…から。」

緊張しているのだろうか、少し途切れガチに答えるマーちゃん。

「うん…ありがとう…」

俺もその後の言葉が出ない。

マーちゃんをリビングに案内しソファに座る様にすすめたが、オドオドと落ち着かない様子で辺りを見回している。

「落ち着かない?」

極力優しい声を出したつもりだったが、マーちゃんはビクッと肩を震わせた。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫大丈夫ごめんね。
実はこういうのあまり慣れてなくて…」

そうか。
ならここは俺がしっかりリードしなくては。

「マーちゃん、先ずはお風呂行こうか?」

しかし俺の言葉にマーちゃんは更にビクッ!となる。

「え?!あの、いきなり?!」

そう言いながら和室の方ににじにじと歩く。

「あ、そこは俺の寝室なんだけど…」

「えっ…」

マーちゃんは少し絶句した後、

「先に…お風呂…行きます…
あの…ゆうちゃんも…一緒に…」

と意を決した様に俺の腕を取った。







「いい?ゆうちゃん、何が起こるかわからないから私の手を絶対に離さないでね?」

脱衣場でマーちゃんがヒソヒソと囁いてくる。

「わかった…」

俺も小声で返事をして、そっと風呂場の開閉ドアを開けてみた。

………

特に何も変わった様子は無い。

「あれ?御守り代わりのチビちゃんの首輪を置いてきたからダイレクトにゆうちゃんを襲ってくると思ったんだけどな…そんな都合よくはいかないかな?でも…チビちゃんの為にも頑張らなきゃ…」

マーちゃんが少し拍子抜けしつつも気合いを入れるためかブツブツ独り言を言っている。

そう今から1時間程前、

あの倶楽部でのやり取りの後、
チビの話に同情したマーちゃんが俺の家に付いてきてくれる事になったのだ。

「このままじゃチビちゃんが…
何とかしなきゃ!」

号泣しながらそう訴えるマーちゃん。

「そうだね。1度ゆうさんの家を調べて来てよ。それで何か対策をできれば…」

「今から行く!さっ、ゆうちゃん行くよ!」

ニナッチの言葉がまだ終わらないうちにマーちゃんは俺の手を引っ張って外に飛び出した。

No.9 20/01/31 20:54
自由なパンダさん0 

「水場って結構な確率で怪しそうだから浴室かなと踏んでたんだけど、とりあえずここでは何も感じないね?やはり寝室が怪しいのかな?」

マーちゃんが浴室の中を見回しながら言う。

確かにマーちゃんの言う様に俺も特に感じる物は無かったので、

「じゃあ寝室のほうに行ってみるか…」

と言いながら何気にポケットに手を入れてハッとした。

え?!
どういうことだ?!

ポケットから慌てて取り出したそれは、

「ああっ!!それチビちゃんの首輪じゃん!!なんで持って来てるのよっ!!」

「知らね~よ!あの倶楽部に置いてきたハズなんだが…」

チビをこれ以上この家に関わらせるのは危険とチビの首輪を箱に入れて確かにカウンターの上に置いた。
それがどうして俺のポケットに?!

「チビちゃん…もしかしてゆうちゃんを心配で付いてきちゃっ…
え…?!ゆうちゃんっっ!!!」

しんみり呟きかけたかと思うと、
突然マーちゃんが大声で叫び俺の手から首輪をはたき落とした。

首輪は勢い余って空の浴槽内に落ち、驚く俺に構わずマーちゃんは俺の腕を掴んで廊下まで有無を言わさず引きずり出した。

バタンっ!!!

家中に響き渡るほどの大きな音を立ててドアを閉めたマーちゃんが力が抜けた様にフッとその場に座り込んでしまったのを見て、ようやく俺は我に返り、

「なんなんだ?!首輪がどうしたんだ?」

とマーちゃんに詰め寄った。

「どうしたって…ゆうちゃんには…あのドス黒い妖気が見えなかったの?」

「………」

妖気がハッキリ見えるとまではいかなかったが、確かに何か気持ち悪い様な何とも言えない不快な感覚はしていた。

それにその不快な感覚は首輪を手放した瞬間から更に強くなってきている。

「私と丸腰のゆうちゃんが来たことで何かしらの動きを見せてくるかと思っていたけど、チビちゃんが付いて来ちゃったのは計算外だったね…」

マーちゃんはそう言うと困ったように頭を抱えたがすぐに、

「ダメだ!こうしている間にもチビちゃんが…ゆうちゃん!今から倶楽部に戻って作戦立ててなんて悠長なことしてる時間はないよ。
こうなったら2人で何とか抑えられるかやってみよう。
大丈夫!きっと大丈夫!」

そう言い放つと、

「うおぅっしゃー!!」

と謎の雄叫びと共に勢いよく浴室に飛び込んだ。

No.10 20/02/01 20:02
自由なパンダさん0 

マーちゃんが物凄い勢いで浴室に飛び込んだ後、辺りは一瞬静寂に包まれた…

ハッ!

マーちゃん!

マーちゃんの勢いに唖然と突っ立っていた俺も慌てて入ろうとした途端、

「ぎゃーーーーーっ!!!」

また更に物凄い雄叫びをあげてマーちゃんが浴室から飛び出してきて、

ガチャーン!!

俺とモロに激突したマーちゃんの手から、「浄化のための塩」が入った小瓶が吹っ飛び派手な音をたてて割れた。

しまった。

思わず同時に顔を見合わせる俺とマーちゃん。






「今から行く!」
とマーちゃんが俺の手を引っ張って外に飛び出してすぐに、何かを咥えた黒猫が俺達を追いかけてきた。

「ああっ!さっきのバカ猫!」

そう、俺の手に噛み付いて離さなかった例の猫だ。

しかし猫はもう俺の事は見向きもせずにマーちゃんの足元に駆け寄った。

「ジジ?あっ!ごめんありがとう!」

マーちゃんはかがむと猫から小瓶の様な物を受け取り、役目を終えた猫は少し走ったかと思うとふっと闇の中に消えた。

「なんだ?!今のは?!き、消えた?!」

驚く俺に、

「ゆうちゃんにも見えてたんだね今の猫、ジジっていう名だけどモンちゃんの使役する生命エネルギー体だよ。」

はいっ???????

「ああわかりやすく言うと…陰陽師と式神みたいな?
あの猫はモンちゃん自身の分身みたいな…と言ったらわかってくれるかな?」

「あ、うん、まあ、わかった様な…
気は…する…」

「モンちゃんは【使役】の能力保持者、ジジの様な分身を作る事もできれば既にこの世に生の無い彷徨える動物霊達の使役もできる。
使役された動物霊たちは自分は攻撃出来るけど基本相手側からの攻撃を無力化できるチート級の能力あるんだよ。」

「へえ?!モンちゃん無敵じゃないか?!」

「ううん、それには最大のリスクがあって【使役】の発動中は自分の生命エネルギーを消耗するんだ。
だから能力的には凄いんだけど両刃の剣なんだよ。」

「って…ことは?」

「【使役】の能力を限界を超えて使い続ければ…」

マーちゃんはそこで言葉を切ったが
流石の俺にもその先の意味がわかりゾッとした。

「まあ、そんなリスクがあるから回復役のアンちゃんがいつもサポート役としてくっついてるんだけどね。」

マーちゃんは小瓶の中身を確かめる様に軽く振りながら微笑んだ。

No.11 20/02/11 08:53
自由なパンダさん0 

「それ何が入ってるの?」

「浄化の為の塩だよ。」

「え?!浄化?!マーちゃんってそんなことできるのか?!」

「一応ね、私は【浄化】の能力保持者だから。」

驚いた俺の質問にマーちゃんは小瓶を弄びながら事も無げにそう言うと、

「そこらの小物程度なら楽勝だし、大物でも多少は役に立つから十分お守りにはなるんだよ。」

と少し得意げに鼻を鳴らした。

「え?でもそんな役立つお守りなのに何故忘れてくるんだ?こういう時にこそ必要あるんじゃ…」

「ほら!無駄話してないでちゃんと道案内してよ!」

マーちゃんは急に俺の話を遮り誤魔化す様に俺を急かす。

……
マーちゃんって…
しっかり者の女を気取ろうとしてるが、うっかり屋さんだな…
絶対そうだ…

何となくマーちゃんのキャラが見えてきた気がした。




で、
今俺たちはその
「こういう時にこそ必要あるんじゃないか?」な塩が飛び散った床を呆然と見つめているわけだが…

「塩無いと…まずい…んじゃ…」

と、料理製作準備中の様なセリフを吐く俺に、

「まあ、まずくは無いとは思うんだけど…う~ん、ある方が理想だよね…」

と、これだけ聞いたら完全に料理だろ?
なセリフをマーちゃんが真顔で吐く。

「でも浄化の為の特別な塩だろ?戻らないと用意出来ないだろうし一旦戻るか?」

浄化塩の在庫がまだ余分にあることを願いながらそう言う俺に、

「ううん、あれオカルト倶楽部のキッチンにあった食卓塩だから…
あ!そうだっ!!ここにも塩あるでしょ?!
持ってきて!!」

急にマーちゃんが1人勝手に元気を取り戻し嬉嬉として俺に命令を下した。

えっ?…

食卓塩って…

なんか効果薄そう、つか胡散臭っ。

内心ちょっと引きかけたが、
弘法筆を選ばずとも言うしな。
さしずめ、マーちゃん塩を選ばずと言ったところか…
などと思い返しキッチンに行った俺はあることを思い出しその場に呆然と突っ立ってしまった。

しまった…
塩を切らしてた…

痛恨のミスだ、どうしよう。

う~ん、これならあるんだが…

探せば買い置きがあるかな?

しかし俺のそんな意に反してゆっくりと塩を探す時間は無かったらしい。

手近にあった調味料の入れ物を手に取り思案している俺の耳に突然、

「ユウちゃん!!ユウちゃん!!
手を貸して!!」

と叫ぶマーちゃんの声が入ってきた。

No.12 20/02/11 22:49
自由なパンダさん0 

マーちゃん?!

慌てて戻ると、マーちゃんが浴室のドアを必死で押さえている。

「ユウちゃん、さっき浴室を覗いた時浴槽内に…恐ろしい姿の何かがいたの…多分それが外に出てこようと…」

それでさっき凄い悲鳴をあげて飛び出てきたのか…

そんなに恐ろしい姿って…

「そんなに…ヤバそうな奴なの…か?」

自分でも声が震えているのがわかる。

「う、うん、パッと見だけど、目が異様で口が大きく裂けてて…」

ダメだ。
何か勝てる気がしない。

ピキッ

俺が躊躇したわずか数秒の間にドアが軋む音がした。

「マーちゃん!!」

我に返り急いで駆け寄ろうとした次の瞬間、

バキバキバキバキッ

俺がマーちゃんに加勢するよりも早くドアが蝶番ごと外れ、

「キャッ!!」

マーちゃんは鋭く短い悲鳴をあげると咄嗟に横に飛び退いた。

「大丈夫か?!」

「あ、あ、あれ、あの、化け…物…」

マーちゃんはやっとそれだけ言うと腰を抜かして座り込む。

そして俺の声などまるで耳に入らないかの様に一点を指さしガタガタ震えるマーちゃんに、俺も恐る恐るその指差す方を見た。

??!!

あまりの驚きに俺は言葉を失う。

そこにいたのは…
紛れもなく…







「チビ!!!」

思わず大声で呼びかける。

「うお~~~いいっ!!」

返事をしたのは「チビ」ではなくマーちゃんだった。

「え?!あれがチビ?!
随分と変わり果てた姿に…」

マーちゃんが更に声を詰まらせる。

「いや…あれがチビだけど?」

「ええっ?!嘘だよ!だってあれは犬というよりいかにもワニっぽいよ?!」

「いや…ワニだけど…何か?」

「えええっ?!ワニ?ワニ?」

いや、そんな、「大事な事だから2回言いました」的なノリで繰り返さなくても…

「あの禍々しいワニがユウちゃんの大事なワニなの?!何で首輪なんかしてたの?!犬じゃないの?!」

大事なワニって…
しかも禍々しいって…

そこは「大事なチビちゃんなの?!」
と聞くとこじゃ…
ワニが首輪して悪いかよ…
だって散歩に連れてくのに首輪をつけないと…だろ?

可愛いチビを禍々しいワニ呼ばわりされて、いや確かにワニはワニなんだけど、少し気おちした俺に向かって、

「とにかくユウちゃんのワニが完全に悪霊化する前に早く手を打とう!」

と素早く立ち直ったマーちゃんが叫んだ。

No.13 20/02/15 14:02
自由なパンダさん0 

人の連想する力は面白いもので、
①自分の身を呈してでも俺を守ろうとする従順さ
②チビという名前
③赤い首輪

ざっとこれらの情報だけでも俺のペットは【犬】だろうかと連想する人も少なくないかと思う。

よってマーちゃんが俺のチビを犬と間違えたのも無理からぬことではないだろう。

ふっと思いついたがこの連想力を逆に利用して他人をマインドコントロールすることも可能なのではないだろうか。

クックックフアーッハッハッハ

おっと、前フリが長くなった。

俺は色々な事柄を緻密に分析する癖がある。

そういうわけでこの非常事態の状況下においてもついいつもの分析をしてしまい話が長くなったが、結局のところ俺が言いたい事は、

「犬だと思い込んでいた時は【チビちゃん】と甘い声で言っていたくせに、ワニだと分かった途端【ワニ】呼ばわりするのはやめろ。」

なのである…


「ちょっとユウちゃん!何をぼーっとしてるのよ?!
塩は?塩を持ってきてくれた?!」

俺のいささか不満を含んだ思考はマーちゃんの言葉で中断され、俺は一気に現実に引き戻された。

「あ、ああ、塩…あるといえばある?んだが…」

「え?!あるの?!じゃあ早く貸して!!」

モゴモゴと煮え切らない態度で持ってきた調味料の容器を見つめる俺の手から半ばひったくる様に容器を奪い取ったマーちゃんは、何やら呪文の様なものを唱えながらチビに向かって中身をふりかけた。

モワア~~

マーちゃんの攻撃で途端に辺りはモウモウとした煙の様な物で包まれる。

ヴェーックション!!

エクションッ!
へクション!

チビが奇妙な音を出し苦しみ出す。

「ヴエクショ!ウェクションッ!!
ううっ、ズルズル…」

攻撃側のはずのマーちゃんも苦しんでいる。

「はっ、はっ、は~くしょんっ!!!」

ついでに俺も苦しんでいる。

「ちょっと!ユウちゃん!これは何なの?」

止まらないくしゃみに鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔でマーちゃんが俺に詰め寄った。

No.14 20/02/15 14:20
自由なパンダさん0 

「なにって…塩コショウ…だけど?」

「何で塩コショウなの?!ワニステーキでも作るつもりなの?!」

あ…ひどい…

「仕方ないだろ、塩が無かったんだから。」

チビをワニから更に進化してワニステーキ呼ばわりされ、また気落ちした俺に、

「ああっ!!ユウちゃん!!あれ見て!!」

とマーちゃんがまた叫ぶ。

何かと叫ぶのに忙しいマーちゃんにつられて再び視線をチビに戻すと、

?!

ボウッ

チビの上に何か大きな影が浮き出てきている。

「どうやらあれが元凶みたいね。
姿を見せればこちらのものよ。」

マーちゃんはニヤリと笑いつつも少し緊張した様に塩コショウの容器をギュッと握りしめる。

「そいつにもそれを掛けるのか?」

「もちろん!コショウは余分だけど一応【塩】だからね!」

マーちゃんはまた何やら呪文を唱え、
えいやっ!とそのボウッとした物に塩コショウをふりかけた。

「ボエッボエッボエックション!!」

これまた変なクシャミらしき音を出し、そのボウッとした物がもがきながらその姿を表す。

こ、これは…


「ギャーッ!!!巨大ナメクジ~~っ!!!」

またまたマーちゃんが叫んで腰を抜かす横で俺は冷静にそいつを観察した。

「ナメクジ嫌~っ!私苦手なのよ!!」

もはや涙目のマーちゃんに、

「違う、ナメクジじゃないから安心しろ。」
と冷静に声をかける。

「ナメクジにしか見えないんだけど?!ナメクジじゃなかったらなんなのよ?!」

「よく見ろ、あれはカタツムリだ!!
その証拠に背中に殻を背負っている。」

「何言ってるのよっ!殻の付いたナメクジって事でしょ?!」

マーちゃんは俺の冷静な助言の甲斐なく更にパニックになり、それこそ「何言ってるのよっ!」なセリフを吐くと【カタツムリ】に塩コショウを掛けまくった。

「…掛けすぎじゃないか?
エスカルゴ料理でも作る気か?」

「エスカルゴ料理?!何ふざけたことを言ってるのよ!こちらは真剣なのよ?!」

……自分はワニステーキって言ったくせに…

「苦しい…苦しいよ…」

突然、俺の頭の中に苦しそうな声が鳴り響いた。

「マーちゃん?何か言ったか?」

しかしマーちゃんはずっと呪文の様なものを唱え続けている。

「苦しいよ…」

えっ?!
まさか?!

また声がして俺は思わずその【声を発しているカタツムリ】を見た。

No.15 20/02/17 13:04
自由なパンダさん0 

「お前…が話してるのか?」

「うん…苦しい…よ…」

「ユウちゃん?なに?何か言った?」

マーちゃんが呪文を唱えるのをやめて不思議そうに尋ねてきた。

あれ?
と、いうことはマーちゃんにはこの声は聞こえてないってことか?!

「マーちゃん、ちょっとストップ!
少し攻撃をやめてくれないか?」

「えっ?!なに?ユウちゃん?」

不思議がりながらも攻撃するのを止めてくれたマーちゃんに俺は軽く会釈をするとカタツムリの傍に近づいた。

マーちゃんには聞こえていないということは思念か何かで俺だけに語りかけているのだろうか?

カタツムリは相変わらずチビの上に乗っかる様な形になっている。

「おい、とりあえず先ずはチビから離れろ。話はそれからだ。」

俺はチビからカタツムリを引き離そうとカタツムリの殻に手をかけた。

ドクンッ

ドクンドクンッ

えっ?!

ゴオオオオオオオオオオッッ

胸が激しい動悸を打った。
途端に凄まじい勢いで、意識の塊が激しい水流の様に一気に俺の意識の中に流れ込んでくる。

うわっ
やべっ
い、意識、持って…かれ…そ…

激しい意識の水流に俺自身の意識が流されそうになるのを必死でこらえるが、目の前が暗くなり意識が遠のきかける。

「ユウちゃん!!!」

俺の異変に気づいたマーちゃんが咄嗟に俺を支えてくれ、俺は辛うじて意識を留め必死で正気を保った。

「あ、ああ、とりあえず大丈夫だ。
ありがとう助かった。」

既に半べそをかいているマーちゃんを安心させるためにわざと無理矢理笑顔を作り、マーちゃんの肩に手を置きマーちゃんの目を真剣に見つめた。

「ユウちゃん?」

「マーちゃん、
カタツムリに触れた途端にこいつの意識が俺に流れこんできた。
今からそれを話す。
それをよく聞いて手助けしてくれ。」

俺の身に起きた事情がまるでわからずまだ心配そうな顔のマーちゃんにいきなり訳のわからないお願いをしたが、

「うん、わかった。」

意外にもマーちゃんはあっさりと頷いた。

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