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レス12 HIT数 594 あ+ あ-

漣音( ♂ PFdSnb )
19/06/27 23:41(更新日時)

2012年2月

僕は昨年末から引き継いだ仕事が捗らず、少し焦っていた。

高木レン 26歳
中小企業でも小の方で働いている。社長をはじめ、社内の雰囲気はアットホームなところもあり、仕事にもやりがいを感じている。

この日も僕は資料の作成に追われていた。
完成に向けての概要もイメージできず、あれこれ試行錯誤しながらという非効率な作業。そんなときに限って無意味な雑念が頭をよぎり、余計仕事を時間のかかるものにしていた。

くそっ!今日も遅いのかよ!

〝ブルルルル〟スマホの振動を胸ポケットに感じながら画面に目をやる。幼馴染の健二だ。

「もしもし、健二?どうしたの?」
「あ、レン?、今忙しい?」

その言葉にさらにイライラが募る。

「あぁ、今忙しいんだけど何?何かあった?」
「忙しいならいいんだ。相談したい事があるんだけど、今度でいいや!悪かったな。」

🎶♪♩…。


LINE通話の切れる音。
この切ない音色を聞くたびに胸の情動が蒸し返されて息がつまる。


ーー あぁ!! なんで僕が、あの時 …!! あの時…!!

No.2872784 19/06/27 23:22(スレ作成日時)

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No.1 19/06/27 23:23
漣音 ( ♂ PFdSnb )

僕は健二からの電話が気になっていたが、
この仕事が片付いたら電話しようと思っていた。相談って何だったんだろう?深刻な問題じゃないといいんだけど…。

やはり気がかりが止まず、ある程度のところで作業を切り上げた僕は、健二に電話をかけ直した。

…。…。…。

あれ?出ないな…。まあ明日でも良いか!

翌日の仕事も相変わらず忙しかった。
健二の事も頭の隅にはあったものの、
仕事の忙しさから気にしていなかった。
そのため、仕事終わりに電話をかけた先は、僕の彼女【青山詩織】だった。

「詩織ー♡?今どこー?」
「友達とファミレスにいるよー♡」
「そかそか!仕事終わったから帰るわ!」
「わかったー気をつけてねっ♪」
「うん、じゃあね!またメールする!」

彼女の詩織は僕より3個下の23歳。
同じ会社の後輩で、僕の一目惚れで猛アピールの末、やっと付き合うことが出来た。若干立場が弱い部分はあるものの、1年半の付き合いになる。

僕にとっては1番大切な存在だ。
帰宅すると、手洗いの次にすることが詩織にLINEや電話をすることである。
もうすでにルーティーンとなっているが飽きることなく嬉々としてコミュニケーションを取っていた。

明日も会社で顔を合わせるはずだった。
いつものように…。

No.2 19/06/27 23:29
漣音 ( ♂ PFdSnb )

2月24日

この日は冬のこの時期にしては朝から暖かく穏やかな日だった。いつも通りに起きて、いつも通りに仕事に向かう。2月最後の週末という事で道路は多少混雑していたが、何も変わらない1日が始まった。

もうすぐ会社に到着するというところで僕の携帯の着信音が鳴った。車の運転中ということもあり、応答出来ずにいた。10コール程度だったと思うが電話は切れた。

会社の駐車場に着いて車を止め、着歴を見ると
健二の家電の番号が残っていた。
僕はその時、健二からの〝相談したい〟という言葉を思い出した。
健二はいつも携帯から電話をかけてくるのに、何故家からかけてくるのだろうと若干の違和感とともに嫌な予感がした。
僕は駐車場から会社に向かう途中で健二の家に電話をかけた。

「携帯にお電話頂いていたみたいなのですが」
少し声が違って聞こえたが、出たのは健二の奥さんだった。
「今朝早くに警察から電話があって、警察に来て欲しいって。健二が……」
後は言葉なのか泣き声なのかわからない声をあげていた。

要するに、僕に一緒に警察へ行って欲しいということだった。
僕は会社の前まで来ていたが上司に休みをもらい、警察に同行することにした。

警察署に着くと健二の奥さん【千里】が待っていた。僕と健二は小学校から高校まで同じ学校の同級生で20歳で千里さんと結婚した後も家族ぐるみで仲良くしている。

千里は僕の姿が見えると駆け寄ってきて、僕の胸で泣きじゃくった。
僕はその時、健二に起きた最悪の出来事を予感していた。

No.3 19/06/27 23:29
漣音 ( ♂ PFdSnb )

「最近の健ちゃんは落ち着いていて、順調に回復しているって思っていたの。
でも昨日は1人で美容院に行ってくるって出かけたまま帰って来なくて…昨日の夜、健ちゃんと連絡が取れなくなって…すぐに警察へ届けたんだけど…」
その言葉の端々には後悔が滲んでいた。

「なんで連絡してくれなかったの?」
言ってから気付いた。知らない携帯番号からの着信が何度もあったことを…。

「何度も電話したけど、レン君出てくれなかったじゃない!何度も電話したんだよ?何度も。」
あれは千里からの着信だった。僕は後悔した。

なぜ電話に出なかったのだろう?
あの時電話に出ていれば健二を探せたかも知れなかったのに…。

そして、健二に言われた事を思い出した。
「最近自分の気持ちの揺れについて行けない俺がいる。なんの前触れもなく死にたい衝動にかられるんだ、それが恐ろしいほど強い衝動なんだ」
「大丈夫か?病院に行った時先生に話しているのか?」
「ああ、話してるよ。でもあいつ、俺の気持ちに潜む強い衝動を分かろうとしない。薬を増やすだけで俺のことなんか見ちゃいないんだ」
そう言うと健二はスマホを取り出した。

「レンに俺がどこにいるのか分かるようにして欲しいんだ。連絡が取れなくなった時でも居場所が分かるようにしておきたい」
健二はGPSアプリを設定した。

僕はポケットからスマホを取り出し、アプリを起動してみた。
アプリが示した場所は、今いる警察署だった。

No.4 19/06/27 23:31
漣音 ( ♂ PFdSnb )

健二が死んでから1週間が経った。
僕は健二にしてやれた可能性を考え続けていた。記憶を遡り、間違えた選択を正そうとし続けた。

健二から電話のあったあの日、仕事を中断して話を聞いていれば…。
詩織とやりとりしていたあの時、健二にもっと電話をかけ直していれば…。
何度も何度も鳴った電話に、たった1度でも出ていれば…。

あの時…… あの時…… あの時……。

だがしかし、現実は何1つ変わる事はなかった。
そして僕は自分自身の心が壊れ始めてる事に気付かず、間違った選択の道を選び続けていった。

健二が死んだのは、相談に乗ってあげられなかった僕のせいだ。
健二が死んだのは、詩織のことしか考えてなかった愚かな僕のせいだ。
健二が死んだのは、千里の電話に出なかった僕のせいだ。

…………。

僕のせいで、健二が死んだ。
僕のせいで、千里から健二を奪った。
僕のせいで、千里が悲しみ、苦しんでいる…。
こんな僕でもできる事が何かあるはずだ。
それならば…

僕は千里が悲しまないように励ましてやらなきゃいけない。
健二を失った悲しみを分かち合うことで、千里の心の負担を軽くしてあげなければいけない。

〝 僕が支えていかなきゃいけない 〟

そんな思いが僕の中で大きくなっていった。

No.5 19/06/27 23:33
漣音 ( ♂ PFdSnb )

3月23日


健二の月命日までの間、千里と7カ月になる
娘と過ごす為に、僕は健二の家に行けるだけ足を運んだ。

少しでも淋しく辛い時間をなくさないといけない。僕にできることはこれしかないのだから。

毎日のルーティーンだった詩織とのやりとりは、千里とその娘と過ごす時間に変わった。

そんな僕に、詩織はいつもと変わらず接してくれていた。

僕には詩織がいるけど、千里には誰もいない。
だから僕が支えないといけない。そんな僕を詩織はわかってくれているんだ。
僕は千里のことを1番に考えなくてはいけない。

こうして、詩織とのやりとりも会う時間も僕はないがしろにしていった。

千里まで健二のようになってしまったら…
健二のように死のうとしてしまったら…

僕は千里のことが心配で、だから健二の家に時間のある限り行っていた。


そんなある日、詩織は僕に
「レンのしてる事に何の意味があるの?」
と言ってきた。

……は? 何の意味?!

「健二の家族との関係を知らない詩織には分からないよ!おまえには優しさがないのかよ!」

信じられなかった。何でそんなことが言えるのか。詩織の相手をする時間が減ったから怒っているのか?そんな自分本位な人間だったのか?僕のことを理解していると思っていた詩織が、そんな薄情な人間だったとは……もういい。


そうして相変わらず会社と健二の家を行き来していた僕だが、なぜか仕事でミスを連発するようになっていった。

得意先訪問のダブルブッキングをし、提出すべき資料は忘れるという、いつもの僕では信じられないミスを犯した。その大きなミスをカバーしていこうとすればするほど、またさらにミスを繰り返すようになり、僕の仕事に対する自信は奪われていった。

いったいどうしてしまったんだろう?
これ以上、他人に迷惑を掛けないようにしなくてはいけない。

そういえば最近、寝る時間が足りてなかったかもしれない。いつから寝不足なんだろう。まあいいや!とりあえず今日は早く寝よう。

普段の僕は、24時前に寝ることはなかったが、この日は22時前にベッドに横になった。

しかしこの日に限って午前1時を過ぎ、2時を過ぎても眠れなかった。結局、5時前くらいだっただろうか。ずっと眠れずにいた。

次の日も、その次の日もそうだった。

No.6 19/06/27 23:34
漣音 ( ♂ PFdSnb )

僕は眠れない日々が続いていた。そんなある日、僕は仕事中に過呼吸で倒れてしまった。

異変に気づいた詩織が駆け寄り、僕を応接室に連れていき、タオルとバケツを用意した。
苦しむ僕の身体をさすり、傍を離れようとしなかった。 ……何なんだよ。何してんだよ。

「仕事中なんだから戻れ!」と僕は息も絶え絶えに詩織を怒鳴りつけた。僕が今みんなに迷惑をかけているというのに、なんで詩織まで一緒になって迷惑かけてんだよ!何してんだよ!

詩織は黙って席を立ち、応接室を出て行った。だが、10分もしないうちに戻ってきた。

「今、有給休暇を出してきた!文句ある?!
こんな時に他人の心配してる場合じゃないでしょ!? どんだけ我慢してたか知らないけど、あたしがどんな思いで見守っていたかわかる? もういい加減にしてよね!!」とまくしたてた。

「……こんな事で有給を出してくるなんて馬鹿じゃないの?!」僕はまた怒鳴った。

詩織は黙った。そして思いっきり僕の肩にグーパンチをした。

僕は何も言わず支えてくれていた詩織の優しさに泣きそうになった。だからとっさに怒鳴ることしかできなかった。

No.7 19/06/27 23:35
漣音 ( ♂ PFdSnb )

僕は過呼吸を継続して起こすようになり、その頻度は高くなっていった。
仕事中の場合は気付いてくれる人がいるが、深刻だったのは通勤での運転中に過呼吸の症状が出てしまうことだ。その時は車を端に停めて落ち着くのを待つのだが、症状が表れている時に体が硬直してしまうことがある。
そうなってしまうとハンドルから手が離せなくなったり、掴んだタオルが手から離れなくなったりと日常生活に支障が出るまでに悪化していった。

会社のみんなに迷惑をかけている罪悪感が僕を更に追い詰め、客観的に見ても仕事を続ける事が困難であるのは明白であった。
仕事中も会社から帰る時も詩織に頼っていたのだが、僕は詩織よりも、同僚や上司に申し訳ないと思っていた。詩織には甘え切っていた。

詩織は僕のために、いつもより1時間早く会社に行き、自分の仕事をこなし、僕が通勤時に具合が悪くなった時にいつでも迎えに行けるよう準備を整え、仕事中に具合が悪くなったときは、僕の仕事の段取りを手伝ってくれた。
帰りも、僕が駐車場から車を出すまで見守って、僕より先に帰ることはなかった。

詩織は僕が必ず良くなると信じ、その時まで自分がフォローすると覚悟を決めているように感じられた。

そんな状態が続いたある日、僕は会社の社長に呼ばれた。

「高木、お前一度病院に行ってこい。」

あぁ、ついに戦力外通告だ…。

「おまえと青山が付き合っているのは皆知っているが、このままでは二人とも具合が悪くなる。もし病院でなんらかの心の病気だと診断されたなら、思い切って休め。俺はお前を認めているし、信じているから」

…… 辞めさせるつもりだ。僕が病気だからこれ以上いても何の役にも立たないから。迷惑なだけだからな。


そして後日病院に行き診断を受けた。診断名は【うつ病】だった。

僕の頭の中に健二がよぎった。

No.8 19/06/27 23:38
漣音 ( ♂ PFdSnb )

11月5日

僕の通院が始まった。病院の医師は穏やかな口調で色々と聞いてきた。そして、医師が示したのはこういう事だ。

うつ病とは脳内物質の分泌バランスが崩れることにより発症する病気である。
それには投薬治療が必要であるということ。
脳内物質の分泌バランスが崩れる原因の多くはストレスからくるもので、ストレスから離れて休息をとる必要があること。

僕は疑問に思った。

休息とはなんなのか?
ストレスから離れるとはどういうことか?
いま離れるべきストレスは仕事なのだろうか?職場の人達なのだろうか?

医師はその疑問には「わからない」としか答えなかった。その答えのない漠然とした不安はすぐに津波のように襲ってきた。

仕事を休む事で職場の人達は僕の事をどう思うんだろう…
その間に僕は必要なくなるのでは…
僕の居場所はどこにもなくなる…
じゃあ居場所がなくなった僕はどこに行けばいいんだ? 僕はどこに行けば……
あぁそうか。健二が言っていたのはこういうことか…。

そんな思考は際限なく続き、僕を暗闇に引きずり込んでいった。


この日から翌年の仕事始めまでの9週間、僕は休職した。この期間、何もできない時もあれば散歩に行ける程度の意欲がある時もあった。
ある程度調子の良い時は決まって仕事の事を考えることが多かったが、会社から連絡がくることはなかった。そして詩織は毎日のように様子を見に来てくれた。

僕はいつも詩織に
「仕事はどうなの? 忙しい?」
と聞くが、詩織は決まって
「忙しいけど大丈夫。今はゆっくり休んで」と
しか答えなかった。

僕にはそれが、
「レンがいなくても大丈夫だから! 出てこないで! 」と言っているように聞こえた。

調子が良い時は、会社に行っていないとしても少しでも何か役に立てればという気持ちが湧くのだが、そんな時に詩織に状況を聞いてみても
「大丈夫だから。心配しないで」と言うだけで何も教えてくれなかった。

僕は社長に言われた〝俺はお前を認めているし、信じているから〟という言葉がずっと心に引っかかっていた。これは社長の優しさで言ってくれただけだ。本当は僕を辞めさせたいのだろうと。
でも、もしかしたら本当に期待されているのかもしれない。だとしたら焦らずに回復に専念しよう。必要とされるのなら、あせって頑張るのも我慢しようと。

No.9 19/06/27 23:38
漣音 ( ♂ PFdSnb )

でも詩織は何も教えてくれなかった。会社の人も何も連絡してこなかった。それが辛く淋しかった。僕は邪険にされていると、ものすごい孤独感を感じた。社長が言った言葉もやはり僕を気遣うだけにしか過ぎなかったし、離れてしまえば職場の人ももう僕には無関心なのだ。

そうやって僕は周りの人たちへの不信感をどんどん募らせていった。

No.10 19/06/27 23:39
漣音 ( ♂ PFdSnb )

2013年1月7日

僕の復職に向けて、病院から3つの条件が出された。
①不眠の解消
薬の服用がある状態で6時間以上連続した睡
眠時間が確保できていること。
②身体的症状の消失
過呼吸などの症状が消失していること。
③気力が戻ってきていること。

この3条件に対し睡眠時間だけクリア出来ずにいたが、僕は医師に嘘をついた。
「先生、大丈夫。オールクリアです」
「わかりました。ではお仕事については短時間から始めましょう。お薬も徐々に減らして様子を見て行きましょう」と医師は言った。

こうして僕は医師からの許可を得て復職することになった。詩織からは
「ゆっくりならし運転で仕事を再開してね」と何度も念押しされた。

〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️

1月8日

9週間ぶりの出社だ。
僕は仕事に戻れることに嬉しさを感じると共に、職場の人々の僕に対する反応、仕事へのブランクから不安も感じていた。その為、前夜は薬を飲んでいるのに何度も目が覚めてしまっていた。

会社に着くと門の前で詩織が立っていた。
詩織はにこやかな笑顔で挨拶をした。
「おはようございます。」
僕もおどけて挨拶を返した。
「おはようございます!今日からお世話になります高木です。よろしくお願いします!」
詩織は続けて
「こちらへどうぞ」と微笑みながら返した。
詩織は僕の不安を察してくれていたのだろう。なんて茶番だ… なんて思いつつ、僕の不安は和らぎ、詩織の優しさに感謝した。

始業時間が過ぎると、まず社長に挨拶をした。
社長は僕を見ると開口一番
「おう!まぁ座れ」と手で社長室のソファを指し示した。こういう時の社長は決まって話が長くなるのだ。僕は覚悟を決めソファに腰掛けた。
「大丈夫か? 睡眠はとれているか? 無理はするなよ? 」から始まり、あとはいつものごとく社長の自慢話を永延と聞かせられた。結局、話し終わったのは1時間後だった。朝イチからちょっとうんざりもしたが、いつもと変わらない社長に僕はホッとするような嬉しさも感じた。

社長は本当に僕のことを心配し、期待して待っていてくれたのだ。
職場の人達も僕のことを温かく迎えてくれるのだろうか…。なぜ何も、誰も連絡してくれなかったのだろう…。

まだ少しの不安を抱えつつ、僕は仕事に戻ることにした。

No.11 19/06/27 23:41
漣音 ( ♂ PFdSnb )

社長の話が終わり、僕は職場に戻った。

「 おはようございます。」
……。挨拶は返ってきた。だけど、避けられてるような、僕の登場に戸惑っているような雰囲気に感じられた。気にしていてもしょうがない。よしっ、仕事しよう!

…… ってあれ!? ええっ!?

なぜか本来業務でこなすはずの自分の仕事がないことに気づいた。
とりあえず、現状把握から行うことにした。
休んでいる間、仕事がどのように進められていたのか? 問題はなかったのか? 現在進行中の案件は何なのだろうか?

だが、僕1人ではそれすらもわからない。
デスクでPCを立ち上げメールを確認すると
僕の休職から2日後である11月7日以降のメールが届いていない…!!

僕は軽い浦島太郎状態になった。
仕方なく周りの人へ状況を聞いて回るのだが
説明はしてくれるものの、相変わらず何かがおかしい。

この違和感は一体… 。でも正体はすぐにわかった。

No.12 19/06/27 23:41
漣音 ( ♂ PFdSnb )

---詩織だ。---

腕組みをして僕のことを睨みつけていたのだ。
一瞬で僕は悟った。詩織は僕の復職に備え水面下で、僕が仕事にのめり込まないように根回ししていたのだと。
だからあんなに念押ししていたのか、と僕の中でつながった。


それからというもの、僕は6割程度にセーブしながら仕事をしていた。セーブすることでやり甲斐も少なく物足りなさを感じていた。常にもう少しブレーキを緩めたいと思っていた。

周りの人達は何も言わなかった。
詩織を除いては。

詩織は事あるごとに「飛ばしすぎ!」と言ってきた。気にかけてくれていることはわかるものの、僕は内心ウンザリしていた。

そんな時、僕だけにしか対応することができない問題が発生した。詩織から
「レンさん、食事中に申し訳ないのですが設備のトラブルが解決しないので昼休みの後、手伝って頂けませんか?」と言われた。

は? 何故敬語?
そもそもあなた部署違うし。
それでも仕事ならやりますよ?
でもさぁ、僕から仕事を取り上げといてこんな時だけ敬語でお願いとか都合良すぎじゃね?

レンは心の中でひとしきり愚痴った。

今の僕は朝9時から午後2時までの時短勤務だ。
結局トラブルが解決したのは午後7時だった。
意に反したトラブルの処理だったが、久しぶりに仕事をやり切ったという充実感を感じた。

この瞬間、僕の心の中でかけていたブレーキはついに壊れてしまった。

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