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普通の日常の、異質な彼等

レス78 HIT数 8029 あ+ あ-

自由人( ♀ )
16/07/14 18:27(更新日時)

誰にも言えなかった秘密。

同じ経験をした友人や、一緒に体験をした彼を通し、私の秘密は秘密でなくなってきた…。


そんな私の秘密と、それに関わってきた人達を書いていこうと思います。


若干のフェイクはありますが、殆どが実話です。


(o>ω<o)ゞ


No.2314850 16/03/22 19:16(スレ作成日時)

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No.1 16/03/22 23:53
自由人0 ( ♀ )

思い起こせば、初めて「存在」に気付いたのは高校生の頃だった。

進学校に通っていた私は、中間や期末試験前は家中で一番静かで誘惑の少ない、仏間で試験勉強をしていた。

持ち込んでいたのは教材一式と折り畳みテーブル、それに布団。

夜中の2時くらいまで一心不乱に勉強し、眠気が強くなったら壁沿いに敷いた布団に潜って眠っていた。


No.2 16/03/23 00:11
自由人 ( ♀ )

眠りにつく寸前、必ず足音が聞こえてきた。


ぺりっ ぺりっ ぺりっ…

裸足で畳を歩く足音。
私の寝ている布団の周りを歩いている。


気にはなったが、あまりに強い眠気だったのでそのまま眠りに堕ちる。

それが試験期間中ずっと続いた。

昼間はすっかり忘れているし、そんなに怖いとも思っていなかったから、家族にも話さなかった。


No.3 16/03/23 00:25
自由人 ( ♀ )

高校生活最後の日、お世話になった勉強部屋(仏間)に泊まった。

私なりに感傷に浸っていたのだと思うんだけど、寝る前にご先祖様にお礼を…と思い、仏壇に手を合わせ、最後の夜を楽しみながら布団に横になった。


電気を消してもしばらくは寝付けなかったが、やはり足音は聞こえてきた。


ぺりっ ぺりっ ぺりっ…

ああ、来たな。
そう思ったとき、あることに気づいた。


私が寝ている布団は、片側を壁につけている。
だから、壁を通り抜けない限り、周りをぐるぐる回ることは出来ない筈だ。


でも足音は、当たり前のように布団周囲を同じペースで歩いている。

なんで?
不思議に思うも、少しずつ瞼が重くなり、足音に聞き入りながらも寝てしまっていた。

目を開けたら、何が見えたのだろう?
足音をたてている人物が見えたのだろうか?

でも、これも不思議なんだが足音が聞こえている間は、目を開けよう!とは思わなかった。


これは何年経っても、謎だった。

ただ、何かしら「存在」するものがあるのだろう。で、帳尻を合わせていたと思う。


No.4 16/03/23 00:42
自由人 ( ♀ )

高校を卒業した私は、短大近くのアパートへ引っ越した。
同じ県内だが実家では妹(中学生)と同室だったので、両親に懇願しアパートを借りて貰った。

条件は、学費と家賃以外は自分で稼ぐこと。


幸い、近所のコンビニとファーストフードで掛け持ちし、予想以上に稼ぐことが出来た。

何せ、ファーストフードで閉店まで働くと廃棄品を貰えたし、コンビニでも廃棄弁当等貰う事が出来たので食費が殆どかからない。

しかも学校とバイトで殆ど外にいて、アパートにはシャワー浴びて寝るために帰るようなもんで、光熱費も知れたもんだったから。

No.5 16/03/23 10:09
自由人 ( ♀ )

家具は最低限のものだけ買い揃えて貰えた。
小さな冷蔵庫、二合炊きの炊飯器、洋服ダンス。

それ以外は贅沢品と見なされ、欲しければ自分で買えという暗黙の了解。

洗濯機も贅沢品なのか、買っては貰えなかったので、毎月残ったバイト代を貯め小さな全自動洗濯機を購入した。(当時はまだ二層式が主流で、全自動は高価だった笑)

それまでは2~3日おきにコインランドリー通いをしていた。

そこでも面白い体験をすることとなる。

No.6 16/03/23 10:28
自由人 ( ♀ )

コインランドリーへは大体夜中に通っていた。

リュックに洗濯物と飲み物、お菓子、マンガ本を詰め、原付バイクで行っていた。


洗濯から乾燥までで大体1時間20分くらいかかったので、その間、マンガを読みながらオヤツタイムにしていた。

私が行く時間帯には、いつも同じような学生(大体男)が1人や2人は大量の洗濯物と共に来ていた。


私は高身長、痩せ型、まな板胸だったし、ショートカットで中性的に見られていた。
だから、他の客が男でも自然と雰囲気的に溶け込めていた。
ナンパや声かけなどされたこともなく、そういった危険は自分とは無縁だと自負すらしていた。


コインランドリーでのひとときすら、日常のひとこまになっていたそんなある日…。

No.7 16/03/23 10:51
自由人 ( ♀ )

コインランドリーの隣に小さな駐車場があり、その道路沿いの片隅に電話ボックスがあるのだが、いつも誰かが使用していた。

当時はまだ携帯電話なぞ普及しておらず、通信手段といえば家の固定電話か公衆電話のみの時代だった。

だからいつも誰かが使用していても違和感はなかったのに、今日は何故か違和感を感じた…。

ゴトンゴトンと乾燥機が回る騒音の中、マンガを読みながら意識は公衆電話へと向かっていた。

違和感の正体を探るため、窓からチラッと電話ボックスを覗いたりもした。

いる。
まだ話しているようだ。

こちらに背を向けた、長いスカートの女性の後ろ姿。

あ、そうか!
違和感が分かった!

いつも、同じ女性だからだ。
いつも、同じスカートの長さで、同じ後ろ姿を見ていたから違和感を感じたんだ!



No.8 16/03/23 11:01
自由人 ( ♀ )

あの女性は、あの服装しか持ってないのか?
毎回毎回、見るたび同じ服装じゃないか!

しかも毎回私がここに来る時から帰る時まで確実にいる。
最低でも毎回1時間半くらいは通話していることになる。


違和感の正体が分かり、モヤモヤが晴れたのかあとはまたマンガに集中し、時間を潰した。


帰りがけ電話ボックスを見ると、まだ通話しているようだった。

電話ボックスの薄緑の光は、暗闇を照す灯台のように人の心を惹き付けるのだろう…。


No.9 16/03/23 18:50
自由人 ( ♀ )

翌日は短大が休みだったため、朝からバイトだった。夕方バイトを上がり、久しぶりにバイクで近くをプラプラしてみた。


ふと…
昨夜の電話ボックスが気になり、行ってみることに。

ヤバイ。
お腹の虫が騒ぎだした!
電話ボックスは後回しだ。
先ずは腹ごしらえ。
近くのラーメン屋に入り、スペシャルセット(ラーメン、炒飯、餃子の王道セット)を注文した。


来た順に食べ尽くし、全て平らげるとまた興味は電話ボックスに戻っていた。

よし、行ってみよう!


店を出る頃は、外はすっかり暗くなっていた。


No.10 16/03/23 19:03
自由人 ( ♀ )

しばらく走り、コインランドリーの明かりが見えてきた。

いつもの駐車場にバイクを停め、電話ボックスがある方向を向いた。

変だ。

いつもの薄緑の光が見えない。
近寄ってみると、ボックス自体はあるものの、灯りが点いていなかった。

不審に思い、そっと扉を開けてみた。


あれ?電話機がある場所に、何もない?
しかも暗くて良く見えない。

手探りで辺りを探ると、一枚の貼り紙に指先が当たった。

破らないよう、そっと剥がし、ボックスの外へ出た。

ダメだ、暗くて何が書いてあるのか分からない。

仕方ないのでコインランドリーに入り、そこで読むことにした。


No.11 16/03/23 19:15
自由人 ( ♀ )

その紙には、そこの電話ボックスが取り壊される旨、移転先に既に設置されてる旨が書いてあった。

日付を見ると、もう1ヶ月以上前から貼られているらしい…。


紙を握りつぶしたくなる衝動に駆られたが、そこは我慢した。

そしてまた電話ボックスへ戻り、何事もなかったかのように紙を元の位置に置いてきた。


バイクに跨がりエンジンをかける時、チラッと見たが、相変わらず灯りはついていない。


チッ。
舌打ちし、家路についた。


No.12 16/03/23 22:21
自由人 ( ♀ )

テレビもラジオもステレオも何もない部屋では、娯楽といえばマンガだけ。

中学生の頃から変わらない習慣の一つに、「勉強は試験直前のみ」というものがあり、今までそれで何とかやってこれたので、今更その習慣が改善されることはなかった。

本棚のない部屋に大量に積まれたマンガが、当時は最高の娯楽だった。中でもお気に入りは北斗の拳と、スケバン刑事。

しばらく読み耽っていたが、ふと、例の電話ボックスが気になり出した。

あの後ろ姿の女性。

肩までの髪に淡いオレンジのカーディガン。
薄茶色のロングスカート。
頭の中でぼんやり思い出していた女性の後ろ姿。

その頭がクルッと回転し、顔を向けた瞬間、ニッと笑った。



No.13 16/03/24 11:11
自由人 ( ♀ )

ハッ!とした瞬間、手にしていたマンガがバサッと落ちた。

そわそわと落ち着かなくなり、冷蔵庫から牛乳パックを取り出すと、立ったまま口をつけがぶ飲みした。

冷たい感触が、喉を伝わり胸から胃に流れるのがわかった。


確かめたい。
確かめたい。
確かめたい…。

いてもたってもいられず、ベッドからシーツを剥ぎ取り、枕カバーを外し、洗面所のタオルとバスタオルを全てリュックに押し込み、読みかけていたマンガを詰めたら家を飛び出した。

バイクで向かったのは、勿論あの電話ボックス。

いや、違う違う!
いつものコインランドリーだ!


No.14 16/03/24 20:05
自由人 ( ♀ )

いつもと同じ道順で、近付くにつれ気分も落ち着きだした。

コインランドリーの明かりと、薄緑の淡い光。


電話ボックス前を通過する時、いつも通りに女性がいるのが見えた。

駐車場にバイクを停め、コインランドリーに入り、いつものように洗濯を始めた。

今日は客がいない…。

静かな店内に、洗濯機の給水音だけが響く。


椅子に座り、マンガを手に取る。
チラッと窓から外を見た。

薄緑の光を放つ電話ボックスで背中を向けて立つ女性は、淡い光に包まれたまま誰と話しているのか、微動だにしなかった。

いつものように、乾燥まで終えると、洗濯物をテーブルに広げ、丁寧に畳んだ。
それをリュックに押し込み、コインランドリーを後にする。
向かったのは駐車場ではなく、電話ボックス。


拳をギュッと握り、フッと息を吐き、静かにノックをした。

振り向かない女性。

私はもう一度、今度は少し強めにノックをした。


No.15 16/03/24 23:44
自由人 ( ♀ )

全く気がつかないのか、振り向くこともなく身動きすらしない女性。

業を煮やした私は、ドアを開けた。

「すみません。」
「あの~、まだ話し中ですか?私も電話かけたいんで、早くして欲しいんだけど」


すると、先程まで全く反応のなかった女性が、ゆっくりこちらを向いた。

真っ赤な目から涙を滝のように流し、赤い口を歪めていた。


『電話が繋がらないの…』


と、私の頭の中に声が入って来た。


『あの人に何度も何度もかけているのに、電話が繋がらないの…』


また頭の中に響いてくる。

「ああ、この電話ボックスは、移転したらしいから。新しい場所は、この先を右に曲がった商店街の入り口にあるみたいだよ。」


数時間前に見た移転先を思い出し、教えた。


No.16 16/03/25 10:17
自由人 ( ♀ )

『ありがとう…』


スーッと霞のように消えてゆく女性。
完全に消える前に、私の方に手を伸ばした。
…ように見えた。


辺り一面暗闇になり、私はもう、確かめるものが何もないことで、その場を後にした。



バイクで帰宅し、荷物をドサッと玄関に放り投げると、ベッドに向かった。


イラッ…。


そのままベッドに倒れ込みたい衝動を抑え、箪笥の一番下の引き出しからシーツと枕カバーを取り出し、仏頂面でベッドメイキングを始めた。


散々な1日だった。
酷く疲れた。

自分の好奇心を恨みながら、シャワーも浴びずベッドに入ると、睡魔に襲われ逆らうことなく眠りに墜ちた。


No.17 16/03/25 20:17
自由人 ( ♀ )

それから少しの間は何事もなく、普通の日常のループだった。

短大ではじわじわと友達と呼べる女の子も出来たが、高校時代と同じく、この容姿のせいで「宝塚の男役」みたいな存在になりつつもあった。


やはり気軽に会話出来るのは、女子より男子とだった。

バイト先では、仲間の男子学生と男同士のような絡み方をしていた。
年上の女性の先輩からも可愛がられた。


同学年の女の子には羨望と嫉妬が入り雑じったような対応をされていた。


No.18 16/03/25 20:56
自由人 ( ♀ )

知り合いになった子や、友達になった子は、皆、私の住まいに興味津々だった。

同年代の独り暮らしが、羨ましくて仕方がないのだろう。
事あるごとに、うちに集まろう的な算段がなされたが、私は掛け持ちのバイトを口実に丁重に断っていた。

プライベートに他人を入れることに抵抗もあったが、殺風景で何もない部屋を見せることに恥ずかしさも感じていた。
だから、頑なに部屋への侵入を拒んでいたのだ。


しかし、それを後悔することになる出来事が起きた。


No.19 16/03/25 21:12
自由人 ( ♀ )

ある蒸し暑い梅雨の夜、時間はまだ8時を少し回った頃だったと思う。


雨が上がっていたので、窓を少し開けていたんだが、外から

ポクッ ポクッ ポクッ

と音がする。


よく耳を澄まさなければ聞こえないような僅かな音だったが、規則的に聞こえて来る。

時折、チーンという音が混じっていた。


…何だろう?


不思議だったが、ベッドに寝転がったままマンガを読み続けていた。


音は少しずつ大きくなってゆく。

ポクッ ポクッ ポクッ…
チーン
ポクッ ポクッ ポクッ…


ハッキリと聞こえるようになった頃、お経を詠む声も聞こえ始めた。


No.20 16/03/25 21:24
自由人 ( ♀ )

何処かで通夜でもやっているのだろう。

ポクッ ポクッ チーン
は、木魚を叩く音だと漸くここで気が付いた。


そうは思っても、読経の声や木魚の音は、段々大きくなってゆく。
まるで向こうから近付いて来ているように、不自然な大きさだ。


ついには、まるで窓のすぐ外から聞こえるような音量となり、堪えきれずマンガを閉じた。

誰かのイタズラかとも思い、少し開いている窓を、思い切り全開した。


ガラッ!



そこには植木が疎らに植えられた、真っ暗な裏庭があるだけで、誰も居なかった。


居ないのに、読経は止まない。
益々、大きくなってくる。

頭に直接響くように、大音量となった読経と木魚は、容赦なく頭痛まで引き起こしてくれた。


No.21 16/03/25 22:55
自由人 ( ♀ )

こんな時、誰かいれば手分けして音の出所を探せるのに…。


くッ。
痛む頭をどうにか持ち上げ、無人島にいるような心細さをかなぐり捨てると、窓から顔を出し

「いい加減にしろ!!近所迷惑だッ!!」
と叫んだ。


ピタリと途絶えた音に本来の変な自信を取り戻し、急いでTシャツの上にパーカーを羽織った。


サンダルを引っ掛けると玄関から飛び出し、アパートの裏側に回った。

1階にある自分の部屋の窓まで来ると、辺りを見回してみた。

幸い、両隣は留守のようで、電気は自分の部屋にしか点いていなかった。


他所から見れば、まるで私の方が怪しいが、とにかく細心の注意を払い、気配を探った。


何もない。
何も、聞こえない。


あれだけ大音量だった読経も喧騒も、まるで嘘のように止んでいたのである。


しばらく周囲を彷徨き、後ろ髪引かれながらも部屋に戻った。


No.22 16/03/25 23:12
自由人 ( ♀ )

部屋に戻っても落ち着かなかった。

視線を感じるような
体の一点がチリチリするような焦燥感があった。


「人恋しい」
そんな気持ちを初めて知った。

誰かいれば…
誰かが一緒にいてくれてれば、先程の出来事を検証出来たのに。

誰かが一緒にいてくれてれば、笑い話に出来たのに。

誰かが一緒にいてくれてれば、気が紛れたのに…。


この部屋に誰も入れなかったのは、私自身。

痛切に思い知り、酷く後悔していた。



No.23 16/03/26 12:47
自由人 ( ♀ )

明日からの自分の方針が見えた気がした。

そうだ。
人との繋がりを持とう。
密接に、濃く、深く。

だけど、誰でも良い訳ではない。

スケバン刑事のサキには、三平がいた。
神 恭一郎もいた。

北斗の拳には、ラオウがいた。いや、ラオウは敵だ。
レイとかマミヤとか、頼りになり一緒に戦える仲間…。

それからジョジョには……


……

明日からの新たな仲間作りを夢見て、枕を抱いて眠りに墜ちた…。


No.24 16/03/26 12:56
自由人 ( ♀ )

それから数日、人を見る目が変わった。

獲物を狙うハンターのように、鋭い眼光でギラギラと物色していたと思う。

女友達からは
「どうしたの~?朝から不機嫌そうだけど…何かあった?」と言われ

バイト先では
「疲れてるんじゃない?働き過ぎだよ。少し休みな!」と言われる始末だった。


そこそこ喋れる友達ではダメだ。
秘密を共有し、共に解決したり切磋琢磨出来る、真の仲間でないと!

私の思惑は、日常の穏やかな空気の中で空回りし続け、心も折れそうな諦めの境地に達してしまう寸前だった。


No.25 16/05/05 16:12
名無し25 

続きはまだですか?


怖いけど でも続きを待ってます。

No.26 16/05/05 22:57
自由人 ( ♀ )

>> 25 ありがとうございます。

まさか待っていてくれる人がいたとは…(涙)

私の中では、過去から辿って現在まで、書きたいエピソードがたくさんあります。

拙い文章ですがなるべく判りやすいように、また更新していきますので宜しくお願い致します。


凄く嬉しいレスでした。
ありがとうございます!


No.27 16/05/05 23:22
名無し25 

>> 26 とんでもない😅、自分のペースでね😄

No.28 16/05/06 23:50
自由人 ( ♀ )

当時、宜保愛子さんという霊能者が一躍脚光を浴びていた。

テレビでもオカルトブームで、よく心霊特集等取り上げられていた。


実際はそんなに興味がなかったが、オカルトマニアを探すには、この話題しかなかった。
郷に入れば郷に従え、だ。

小学生の頃には、口裂け女。
中学生の頃には、コックリさん。
高校生の頃には、心霊写真が流行っていた。

今は…。
うん、やはり宜保愛子だろう。


とにかく他人との会話に、巧妙に「宜保愛子」なるキーワードを入れ込んでみた。

餌が大きいせいか、食い付く食い付く。

ただ、殆どの情報源はテレビや雑誌、友達からの又聞きだった。

私が求める「経験者」と「体験談」は、釣り上げることは出来なかった。


だが、好機は突然、何の前触れもなくやって来た。


No.29 16/05/07 00:05
自由人 ( ♀ )

交遊関係は広がったが、未だ自宅に招くような「真の友」には巡り会えずにいた。

自宅に招くには、「部屋のインテリア」より、「異質な何か」に興味を持った人が望ましい。

異質な存外を感じる自分には、同等の感じ方が出来る仲間が欲しかった。


悪目立ちが大嫌いな私は、自分の体験談を他人に語ったことはない。
いや、家族にすら、ない。


それは裏を返せば、否定されるのが怖かったから…
嘘つきと思われたり、イカレテルと思われるのが怖かったからで、だから尚更仲間が必要だったんだと思う。

季節は夏になっていた。


No.30 16/05/07 00:25
自由人 ( ♀ )

地元では割りと大きなお祭りに、高校時代の友達と行くことになった。

みんなが浴衣姿の中、私だけ唯一、ジーンズにTシャツ姿だった。

「あゆみも浴衣着ればいいのにぃ~」
「あ、でもあゆみの場合は甚平の方が似合いそう!」

(今更ながら、あゆみは私の仮名です)

など、てんでに好きなことを言いながら、きゃあきゃあはしゃいでお祭りを楽しんだ。


こういった友達との遊びでは、私はボディーガード的な役割も兼ねていた。

風貌からの役割なのだろう。
きゃあきゃあ言えないのだから、仕方ない。


「みんな、もうお祭りも終わったし、これからどうする?解散する?」

と私が切り出すと、数名が駄々を捏ねだした。

「まだ帰るの早いよ~!もう高校生じゃないんだから!!そうだ、飲みに行かない?知ってるお店があるんだぁ~」
という浴衣娘Aの発案で、お祭り二次会として場所を飲み屋に変えることになった。


内心「うげッ」と思ったが、この浴衣娘Aのおかげで私は欲しかったものを手にいれることになる。

まさに、好機は突然到来する!だ。


No.31 16/05/07 14:49
自由人 ( ♀ )

長い夏休み期間だけあって、みんなテンションが高かった。

飲み屋はマスターと奥さんが切り盛りする小さなお店で、言うなれば小綺麗な場末のスナックという感じだった。

カウンターと、ボックス席2つ。

カウンターにはサラリーマン風の男性客が、マスターと談笑していた。


私達は6人連れだったので、ボックス席2つを使うことが出来た。
浴衣娘Aの友達がマスターとママさんの娘らしく、Aもたびたび娘さんに連れられて来ているようだった。

あ。

ちなみに二十歳未満ではあるが、一応大学生と社会人の混合グループということで、飲酒は黙認してもらっていた。


カウンターの角には、硝子の花瓶に豪華な薔薇の花束が挿してあった。
大人の雰囲気と、女性的な雰囲気が居心地良かった。


No.32 16/05/07 16:12
自由人 ( ♀ )

お祭り屋台でたこ焼きやお好み焼き、焼き鳥等を買い食いして満腹になっていたが、乾杯のビールは美味しかった。

お通しに出された枝豆やチョコレートをつまみながら、ママさんを交えて女子会は盛り上がっていた。


23時になる頃にはカウンターの男性客も会計を済ませ、帰ったようだった。

客は私達だけとなり、カウンターの片付けを済ませたマスターも私達の女子会に参加して、益々賑やかになっていた。


ふっ…ッとカウンターの花瓶が気になった。

そちらを向くと、花瓶に挿した薔薇のすぐ上に、男性の顔が見えた。


後ろのボトル棚が見えるくらい透けた男の無表情な顔。眼鏡を掛けた中年だ。


すーッと前進したと思ったら、上半身まで透けて見えた。

そのまま前進し、こちらに向かって来る。



言葉を発する前に、そのまま私と隣に座っていた浴衣娘Bとの間をすり抜け、壁に消えてしまった。


なんだ。
ただの通りすがりか。


と思って何気なくBを見たら…

なんと、普段から大きめな目を更に1.5倍程大きく見開いて、口をポカンと空けていた。

見ている先は、男が消えていった壁。


「大丈夫?」
と聞いたら、私の方を振り返りながら
「今の何!?今の何!?今の何ィ~!?」
と半泣きで聞いてきた。


「見えたの?アレ。」
と聞くと

Bは首が折れるんじゃないかという程、コクンコクンと何度も頷いた。

涙目で唇が震えていた。


No.33 16/05/07 20:11
名無し25 

凄いhit数の伸びですよ。
気付いてました??

それだけ皆さんが見てるって事です。 頑張って下さい。

No.34 16/05/07 22:48
自由人 ( ♀ )

>> 33 25さん、毎度ありがとうございます。

hit数…伸びていますね、気がつきました。今頃(汗


正直、25さんしか見ている人がいないような感覚だったので、動揺してます。


読んでくださる皆様には本当に感謝の気持ちで一杯になります。

皆様、ありがとうございます。
25さん、ありがとうございます。


では、また少しずつ再開します。

No.35 16/05/07 23:00
自由人 ( ♀ )

私とBのやり取りを聞いて、他の浴衣娘達が

「何!?何!?どーしたのォ!?」
と、興味津々に聞いてきた。


Bはただただ、首をフルフルと横に振るだけ。

仕方ないから私から
「何でもないよ。ただ、Bが少し酔ったみたいだ。」

と、然り気無く濁しておいた。


みんなビールや水割りで、かなり顔が赤くなっていた。

そろそろ御開きにしたかったが(明日も朝から晩までバイト)、マスターから意外な提案があった。


「みんな、夜食でも食べないか?近くに深夜までやっているファミレスがあるから、みんなで行こうか!」

ママさんも、マスターの援護射撃で
「そうよ!せっかく盛り上がったんだもの。行きましょうよ!お店は閉めちゃうわ(笑)」

ということで、お祭り三次会はファミレスへ場所を移すことになった…。


Bは私のTシャツの裾を掴んで、帰っちゃダメ!と言いたげなチワワの目をしていた…。

No.36 16/05/07 23:10
自由人 ( ♀ )

ゾロゾロ歩いて5分程で、裏地から表通りに出た。

信号を渡ってすぐに、チェーン店のファミレスがある。


中に入ると店員さんの元気な「いらっしゃいませ何名様ですかぁ?」の声が響いた。

こんな時間なのに、割りと人がいるもんだな。

店内は、カップルや学生グループ、飲み上がりのサラリーマンやOLが席の半分くらいに着いていた。


私達は人数も多いので、一番奥の席を2席くっつけてもらい、そこへ座った。


それぞれに好きな物をオーダーしていく。


オーダーを取り終わった店員が去ると、店内の明るい照明や雰囲気に精神を回復させたBが

「ねえねえみんな聞いて!さっきね、凄いの見ちゃった!!」
と、テーブルに身を乗り出し話し始めた。


私はみんなの反応が怖くて、ポーカーフェイスを決めていた。


No.37 16/05/07 23:24
自由人 ( ♀ )

Bは、マスターとママさんをチラッと見ながら、

「カウンターの方から、オバケがこっちに来たの。うわあって思ったら、壁の中へ消えてっちゃった!あゆみも一緒に見たんだよ!ね、あゆみ!!」


話を振られた私は

「2人で同時に同じ錯覚を見るなんてあるのかな?Bが言ったように、半透明の男が、すうっと通って行ったよ。」


みんなびっくりした顔で、私とBを交互に見ていた。
私とBが黙って頷くと、口々に、怖いだの酔いすぎだのワイワイ言い始めた。


するとマスターが
「ああいうのは初めて見たのかな?繁華街や飲み屋では、結構目撃談は聞くよ。実は私もね、うっすらとした人影や気配は感じることがある。だから2人が言ってることも、多分そうなんだと思うよ。さっきは怖かったよね…可哀想に。」

と、Bを労るように話してくれた。



あ、そうか。
だから場所をここに移したんだ。

Bが怖がっていたから。

アレを見た現場で話せと言っても、Bは怯えて震えるだけだったろう。

私はマスターに感謝した。


No.38 16/05/08 01:00
自由人 ( ♀ )

時間も深夜に達していたし、私達はまだ未成年だと言うことで、注文した料理を平らげたら御開きとなった。

マスターがタクシーでみんなを送ってくれると言ってくれたが、各々自宅に電話し、駅まで迎えに来てもらうということで、マスターには駅まで送って貰うことになった。


私とBの体験談を聞いてから暫くは怪談話となったが、いつの間にかに話題は恋愛話となっていた。

一頻り恋話が終わるくらいにはデザートまで食べ尽くしていたので、ちょうど良いタイミングだったみたいだ。


駅で家族の迎えを待っている間、マスターが私にだけ小声で
「またお店においで。今度は一人で。紹介したい人がいるから、必ず来て欲しい。」


何だか意味深な発言だったが、声に出さずに了解のサインを送った。


ファミレスではマスターがご馳走してくれたので、最後にみんなで感謝し、迎えが来た順に解散となった。

私は実家の父に迎えを頼んでいた。
もっと早い時間帯ならアパートまで電車で帰れたのに、実家のある地元に来ていては深夜帰宅は実家に帰るしかない。


明日は始発でアパートに戻って、バイトに行かなきゃな~なんて考えていたら、父の車が駅前に到着した。

みんなに「おやすみ」と、マスターとママさんには「ありがとうございました。おやすみなさい」とお礼をし、父の車に向かった。

車から降りていた父も、マスター達に一礼してくれていた。


しかし車の中では
「酒くさいぞ!まさかタバコまで吸ってないよな?」等々の説教を食らいながら、久しぶりの父と家路についた。


この日が私にとって、世界が広がる第一歩となった日でもあった。


No.39 16/05/08 11:34
自由人 ( ♀ )

久しぶりの実家。

元々、自室は妹と同室だったが、アパートにベッドと机を移したので、妹の私物で占領されていた。

寝ているのかと思っていた妹が、ムクッと起きて

「姉ちゃん、久しぶり!」

と、笑顔を向けた。

「まだ起きてたの?てゆーか起こしちゃった?ベッドがないこと忘れてたよ。ここで雑魚寝するけどいい?」
と聞くと、妹の笑顔が曇り
「もう寝ちゃうの?聞いて欲しいことがあるのに…。少しだけ、相談に乗ってよ…。」


いつも無邪気な妹に悩み事があるなんて…
何だろう。

恋愛相談は苦手だ。

「恋愛相談ならねーちゃんでは無理だぞ。経験値が低い。」

「そんなことだったら学校の友達にするよ。姉ちゃんに相談したいのは、お母さんのことだよ?今日、お父さんが姉ちゃんを迎えに行ったんでしょ?お父さん、何か話さなかった?」

「うーん…。酒くさいと言われたり、タバコ吸ってるかは聞かれたけど…。あと、いつもの説教ね。勉強しろとか、夜遊びするなとか、女らしくしろとかかな?」

妹は溜め息混じりに息をふうーッと吐き出すと

「お母さん、離婚を考えてるみたいなの…。まだ内緒にしてね?お父さん、付き合ってる女の人がいるみたいで、よくお父さんに電話がかかって来てたの。いつもお母さんが電話を取るんだけど、同じ女の人からで、凄く怪しんでた。」

私は黙って聞いていた。

「でね、少し前の日曜日、またお父さんに女の人から電話があって、お父さん出掛けて行っちゃったの…。それからお母さんはお父さんを無視してる。」

お父さんが浮気?
まさか…。

「その女の人って、誰か分からないの?」

「お父さんの会社の人なんだって。何年か前、お父さんぎっくり腰で入院したじゃん。その時、会社の人達でお見舞いに来てくれたでしょ?そのなかにいたって、お母さんが言ってた。」


うわー。
会社の部下(父は役職だったので)と浮気かよ。

ドラマみたいで現実味ない。


No.40 16/05/08 12:58
自由人 ( ♀ )

「それでお母さんは離婚って騒いでるの?帰って来た時、普通に会話したよ?明日の朝食どうするか聞かれた。」

「騒ぐってより、準備をしているみたい。住むところとか、引っ越しの準備とか。お父さんは気付いてないみたいだけど、お母さんはいつでも出て行けるようにしてるみたいだよ?私も直接は言われてないけど、隣の市(母の実家のある市)の高校を受験するように言われたからね…」


今でこそ不倫だ何だと良く耳にするが、当時はまだ「不倫」はあまり馴染みがなく(石田純一の不倫は文化発言でブレイク)、浮気とか愛人とか、そんな言い回ししか思い付かなかった。

父がどうしたいかは、妹も分からないらしい。

話をして安心したのか、妹はしきりに欠伸をし始めた。

「うん、話は分かったよ。お盆にはまた帰ってくるから、その時、お母さんに聞いてみる。お盆は何日か泊まると思うから、ちゃんと話をしよう。明日は始発で帰らなきゃならないから、もう寝るね。」


その言葉を合図に、妹も

「おやすみ~…」

と寝入ってしまったようだ。


突然聞いたから、全然実感が湧かないけど、美樹(妹)は毎日見ていたんだよな~。

はあッ。
どうしよう。

てかもう2時過ぎてるじゃないか!!


ダメだ寝なきゃ。


今日はたくさんのことがあり、酷く疲れていた。

ラグの上にタオルケットを敷き、毛布にくるまって眠った。



この一連の出来事も、今となっては全て1本の糸で繋がっていたんだと、当時はしらずにいた。

運命なんて大袈裟だけど、たった1つの切っ掛けで、なるようになっていく。


もうすでに、その流れは始まっていた。


No.41 16/05/09 23:20
自由人 ( ♀ )

遠くから聞こえてくる

ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…

一定のリズムを保ちながら、時に遠く、時に近く感じる

ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…

おばあちゃん、あの音は何?

お前にも聞こえるんかい?
ええ子じゃから耳、塞いどき
お前を迎えに来たらばあちゃん守れんけんの

ドンッ ドンッ ドンッ …

おばあちゃん、怖い

大丈夫じゃ
じさまが守ってくださるけ
ええ子じゃから安心して眠らんと

うん、あーちゃん寝るからおばあちゃん、ここにいてね

ドンッ ドンッ ドンッ …


ばあちゃんはいつでも、お前のそばにおるけん
見つからんうちに目を瞑らんね


うん、おやすみなさい…



真っ暗な世界に堕ちてゆく

No.42 16/05/09 23:56
自由人 ( ♀ )

「あゆみ」

「あゆみ、起きなさい」

「あゆみ、時間だから早く」

「あゆみ!!」


ハッとして目を覚ましたら、覗き込む母と目があった。

「あゆみ…泣いてたの?」

心配そうな母の表情。

顔がしっとりしている。
私、泣いてたのか…。

「大丈夫だよ。変な夢を見たからかな…。今何時?」

「もう5時過ぎたわよ?始発で行くって言ってたけどちゃんと起きれる?」


「うん…眠いけど大丈夫。とりあえず顔洗ってくるね」


夢を見て泣くなんて、子供の頃以来だ…。

寝不足で意識朦朧としながらも、洗面所で冷たい水を何度も顔に掛けた。


No.43 16/05/10 00:10
自由人 ( ♀ )

さすがに朝食をいただく余裕はなかったので、身支度を済ませると母に声をかけた。

「準備出来たのなら、駅まで送るから待ってなさい。今、お父さんの朝食を準備してるから。」

「お父さんはまだ起きてないの?いつも早起きだったのに。」

「最近はギリギリまで寝床にいるわよ?」


台所でせわしなく働く母を見て、昨夜の美樹の言葉を思い出した。

お母さん離婚したいみたい…


何度か躊躇ったが、やはり時間のある時でなきゃ、こんな話は出来ない。


今は知らない振りをしていよう。


鬱々と考えているうちに、朝食が出来たようだ。


「早く車に乗りなさい。始発に間に合うか分からないけど、急いで向かうから。」


駅までは車で7~8分。

早朝だからか、道路も駅の駐車場も空いていた。


停車した車から母も降りようとしたので

「ここで良いよ、またお盆に来るから連絡するね。ありがとう。」


ニコッと笑って、母に手を振りながら構内へ早足で向かった。


母はずっと、車の中で見送ってくれていた。


No.44 16/05/10 00:37
自由人 ( ♀ )

やはり始発には間に合わなかったが、早い時間帯の電車に乗ることが出来た。


ゴトゴトと揺られるたび、流れる景色が視界のなかで遠ざかる…

お父さんのこと、お母さんのこと、美樹に聞いた話はまだ私の中で現実味を帯びてはいなかった。


マスターから「またおいで」と言われたこと、不思議な体験を友達と共有出来たことが、意識の中でぐるぐる回っていた。


安穏とした生活が足元から崩れようとしている。


唇に自然と力が入った。


些細なことでも、積み重なれば大きな力を感じざるを得なくなる。


いや…些細でもなかったか。


私はどうすれば良い?

どう動けば良い?


おばあちゃん…。



No.45 16/05/10 11:02
自由人 ( ♀ )

考え事をしていたら降車駅に着いたことを報せるアナウンスが鳴った。

立ち上がると酷く疲労感があったが、ホームに降り立ちキオスクを探した。

お腹がすいた…。

おにぎりとお茶のペットボトルを購入し、改札口を抜けた。

駅からアパートまでは、歩いて5分程。
その5分ですら、しんどい。


アパートに着くと、ベッドに飛び込みたくなったが先ずはシャワーを浴びることにした。

朝はそんなに暑さを感じなかったが、今は一年で一番暑い季節。

昼には真夏日になり、怠さも増すだろう。


熱いシャワーは心地良かった。

着替えて窓を全開にすると、登校途中の小学生のグループが通るのが見えた。


No.46 16/05/10 11:27
自由人 ( ♀ )

シャワーのおかげで気分は良かったが、体は鉛のように重かった。

こめかみに鈍い痛みが走る。
お腹はすいていたが、食欲自体はなくなっている。
胃がキリキリ痛んでいた。

それでもバイトは休みたくなかった。

うちには電話がない。
公衆電話からかけるくらいなら、バイトに行った方がマシだと思ったからだ。

不便さを改めて実感した。


No.47 16/05/10 13:23
自由人 ( ♀ )

ファーストフードでのバイトは散々だった。

顔色が悪いせいで、裏方業務に回された。
一緒にシフトに入っていた先輩には心配もかけた。

休憩時間も食欲はなく、少しの水分しか摂ることが出来なかった。

午後からは壁やシンクに凭れることも多くなった。

誰かが連絡したのだろう。
遅番だった筈のマネージャーが来て、早退しろと言われた。
助かった…。

立っているのもやっとだったから。

心配するみんなにお詫びをして、先輩に助けられながら着替えると店を出た。

マネージャーがタクシーを呼んでくれたので、バイクを置いたままタクシーで帰宅した。


そのままベッドに倒れ込み、深く深く眠った…。



No.48 16/05/10 14:38
自由人 ( ♀ )

遠くで音がする

幼い頃よく聞いた音
幼い頃怯えた音


ドンッ ドンッ ドンッ…

あゆみちゃんあそぼ…

ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…

ごめんねあそべないの…

ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…

あそぼぉよぉ あゆみちゃん…

音が近づいてきた

ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…

ねぇ あぁゆみぃちゃゃゃ………んンンンン…


ごめんなさいダメなの
おばあちゃんがダメだって
だからごめんなさい

ドンッ ドンッ ドンッ…

だぁいじょぉぶだよぉォォ…
おばあちゃん死んじゃったからぁぁぁ…



No.49 16/05/10 18:42
名無し49 

ワクワクして続きが楽しみ~✨

No.50 16/05/10 22:51
自由人 ( ♀ )

>> 49 ありがとうございます。

お声をかけていただけると励みになります。

完結までの流れは大体出来ていますが、表現力がイマイチで追い付きません(照

雑にならないよう、頑張って書いていきます!

レスありがとうございました。

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