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花火11

レス 0 HIT数 756 あ+ あ-

小説家( 匿名 )
16-02-24 17:23(更新日時)

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「長谷川検事。おはようございます。今、コーヒーを入れますね。」

佐方事務官が、そう言ってイスから立ち上がった。しかし、何も返事が無いので顔を上げると、まだ、ダウンジャケットを着たまま、窓の外を虚ろな目で眺める柚子の姿があった。

佐方事務官は、かまわずに、コーヒーを入れ始めた。室内には、とたんにコーヒー豆の独特な香りが漂い始めた。
佐方事務官は、マグカップを2つ準備をして、柚子は朝はブラック、それ以外は、ミルクと砂糖各ひとつずつと呟く。
忘れると、また、怒られるからだ。

佐方事務官が、入れたてのコーヒーを柚子の机に置いた。しかし、気がつかないのか振り返らない。いつもは、コトンとマグカップの置く音がしたら振り返って、良い香りよね♪と言うのに。

明らかにいつもと違う。

お見合いの翌日も、長谷川検事は普通だった。どんなに難解な事件を抱えていても普通だった。こんな長谷川検事は、今までに一度も見たことがない。

「長谷川検事。どうかしたのですか?
コーヒーのマグカップ、ここに置きますよ。」

「ありがとう。別にたいしたことじゃないけど。弟の圭介にはいつもいつも、振り回されて困るけれど、今度のは、私の検察検事という仕事に、吉と出るか大凶と出るか分からないわ。腹をくくらないとね。」

「検事の弟さんって、どういう人なんです?」

「自意識過剰で、猪突猛進で、私より劣るでしょ。イイトコは無いわね。夢見心地から抜け出せてないし。」

「将来の義理の弟さんを、悪く言うのは止めてください!」

「#%??。もう、佐方くん。忙しいんだから、仕事始めるわよ。」

柚子は、佐方賢治の言葉をスルーした。
そして、上着を脱いでフックに掛けると席につき、大量の書類の中から一つを手に取った。

俺は、カレンダーを見て今日、例の話しを両親にすると決めていた。もう、自分に嘘はつかない。正直に生きる。後悔しない、ただ、ただ、それだけ。

夕食の後に、俺は切り出した。父親には、あらかじめ、伝えていた為に、今日は書斎ではなく居間にいた。

「父さん、母さん。俺、結論から言うと友人の柳之助と一緒に上京するんだ。ずっとずっと、音楽の道で生きていくと決めていた。今月末には、行くから。」

「えっ。圭介。生活は出来そう?心配だし。母さん、何て言っていいか・・・・%#!」

「俺は、昔、圭介とおなじことを考えていたけれど実行に移せなかった。圭介。前にも言ったと思うが、お前のめざすところは、人の意見に左右される、アンチなやつもいる、ときには、全然、自分が才能が無いと、嫌というほどに思い知らされ挫折するんだ。そこまでだと悟ったら帰ってこい。いいな。突っ走るだけではダメ。見極めて止めるのも必要だ。それだけだ。
じゃあ、父さんは、明日の裁判の準備をする。」

母さんは、父さんの後ろ姿を不満そうな顔で見ていた。

「じゃあ。母さん。俺、準備をしなきゃいけないから。」

「向こう行ったら、柚子に柚子に相談するんだよ。柚子に面倒みてもらうんだよ。まぁ、柚子が向こうにいるから安心だけど。あーあ。末っ子の圭介にはいつも母さん、ハラハラさせられて。」

俺は、階段の上から母さんのぼやきを聞いていた。

母さん。父さん。ゴメンというか、ありがとうというか。恩返しはそのうち・・・・するから。



No.2306087 16/02/24 17:23(作成日時)
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