色んな出会いありますね…3…
またしても携帯が壊れ、今までの「色んな出会いありますね…2…」の続きが書けなくなったので「色んな出会いありますね…3…」として続きを書きます。
あの「出会い系…ですかね?」から大分経ちます…あのイガグリし~君もかなり大人になりました。もし当時から継続して見ていてくれている方がいるなら幸いです。また、途中から見てくれている方も引き続き見てやってください。
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この流れだと、おそらくツッチーと結婚するんだろうな…と思っていた。嫌じゃない、普通に嬉しいしちゃんと結婚したいと思う。
99%
そう、いつでも誰と付き合うときでも99%を超えることはない…
サトミと付き合う前、初恋と言えるべき女性と出会う…
久美。
でも彼女には付き合っている彼がいた。これまでの恋愛は久美を忘れるための恋愛。単純な俺はその都度忘れられた。そして終わってまた思い出す…の繰り返し。
この部分が 1%
通勤の時の最寄りの駅で会う…他愛もない話をする。お互いの恋愛の話や昔話…ヤバい、どんどん好きになる。自分の中の大半はツッチーなんだけど、1%に入り込む…
これまでは終わってから久美を思い出したが、今回は始まる前に思い出した。恐らくここが人生の岐路なんだろう…冷静に考えろって事か?
8/26
俺は明け方から家を出て、○越へと向かった。
待ち合わせの連絡は、土田さんから会社へ電話で連絡が入り、メモに書いてバックヤードの私物ロッカーの扉の隙間から入れておいて…との事だった。
すれ違いの為、2回程の電話と手紙のやり取りがあった。この時代あたりから携帯電話が出始めたが、まだショルダー型の物で、実際に自分が持つ姿が想像できなかった…
まだ夜が明けきってなく殆ど人の往来がない○越前に車を停めて土田さんを待つ。
駅のロータリーの方から小走りにこちらへ向かってくる女性がいる。ややポッチャリとした体型は一目で土田さんと分かる。
【ごめんなさい!遅くなりました!】
「いやいや、全然です。」
【始発で来たんですが、到着時間が分からなくて…10分も遅刻ですね…ごめんなさい。】
「いや、俺も時刻表で調べれば良かったです…こちらこそすみません。じゃ、行きますか?」
【あ、はい。】
俺は助手席のドアを開け、土田さんを乗せた。
【おじゃましま~す!】
車に乗り込みエンジンをかける…
「さて行きますか!」
【どこに行くんですか?】
「とりあえず西へ…」
そう言って車を走らせた。
昔から気の合う人間とはよく話し、あっという間に時間が過ぎるなんて事はよくあること。とはいえ、ここまで時間を忘れ、お互いの話が面白くて喋り倒した事はない…
いつの間にか日本橋を過ぎ、川崎も越え戸塚に入った…ここから海に向かい車を走らせる。
「腹減りません?」
【あ、そうですね…話しに夢中になっていて気付きませんでしたね…】
「どっか店に入りますか?」
【そうですね…でも楽しいので車にいたいから、コンビニで何か買いませんか?】
「いいんですか?コンビニで…」
【私は全然大丈夫ですよ…】
物凄く好感が持てた。
田舎に住んでいるとはいえ、デパガはデパガ…もう少し高飛車なのかと思ったがツッチーは違った。
そもそも、デパガのイメージを履き違えているのか?そんな事を考えながら道沿いのコンビニに入った…
……………………。
【アッキーからは聞いてるよね?受け渡しの人。】
「あ、うん。」
【2年くらい前かな…同期の子が受け渡しの○富運輸の人と仲良くて、同期だけで飲み会やったときに○富の人を何人か連れてきてね…その中に古場さんがいて…】
「古場さん?」
【あぁ、彼の事…………たまたま隣に座って、共通の話になって…】
「共通の話?」
【あ、部活の話…古場さんも体操やってたみたいで、珍しいでしょ?体操って?そうそういないから話が盛り上がって…飲み会終わっても受け渡しで話したりで、なんとなく流れから付き合うことになって…最初は楽しかったけど、いつまでも体操の話で盛り上がる訳でもなく、他の趣味はあまり合わなくて、出掛けても話すこともなくて…その内会う機会も減って、どちらからともなく極力会わない様にして、そんな時に○富の他のドライバーさんと付き合ってるって噂聞いて…で、今に至る感じかな…。】
俺は話を聞きながら、間に話を挟む訳でもなく、ただ、うんうんと相づちを打っていた。
【結構地味な話でしょ?】
「いやいや、よくあることじゃない?経験ですよ。」
【でもあまりあって欲しくないな…今度は大丈夫かな?】
そう言って土田さんは、うっすらと微笑みながら俺を見た。
挑戦状を突きつけられた気がした。
「そうっすね、土田さんなら大丈夫じゃないかな?保証するよ。」
【そお?良かった…】
車は藤沢を過ぎ大船から鎌倉へと進む。お盆休みも終わった平日の午前中だけあって、道路は思いの外空いている。江の電と並走する海沿いの道を、左にサーファーを見ながら西へと向かう。
遠くに江ノ島が見える。江ノ島といえば…敦子。今、何してんのかな?この状況でも隣の女に集中できない奴…そんな性格が災いして、数年後にとんでもない事をしでかすとも知らずに…
【何を遠い目してるんですか?集中しないと大変なことになりますよ!】
この時は、細かいところまで気にしてくれてるんだ…等とめでたい考えをしていた。
平日の昼過ぎ、観光客は少なく営業職と思われる男性お一人様、または二人連れ…近所の奥様数名グループがパラパラいる感じの店内。
ランチメニューを注文し、食事が運ばれて来るのを話ながら待つ…
大盛り上がりという訳ではないが話題は尽きず、会話は続いている。内容は相変わらず○越内の色んな噂話やそこから広がる関連の話…普段の話…もうお互い何度となく話した話題も飽きないし退屈しない…
楽しい…………。
食事が運ばれてきても食べながら話す。
楽しく食事しながら話す…あったかな?千秋の頃?殆ど仕事中だったからちょっと違うかな?こんなに落ち着いて楽しく話ながらの食事は記憶にないな…
サトミ、めぐみ、敦子、美恵子、千秋、菜穂子、旅行中の人、しのぶ…う~ん、皆良い付き合いだったけど、幼かったり、慌ただしかったり、sexありきだったりだったしな…
車に乗り込み来た道を戻る。
少し昼飯が遅かったが、4時を回ると何となく小腹が減る。俺は海が見える駐車場のあるコンビニを見つけ、寄ることにした。
「ちょっとトイレ…と小腹減ったし喉乾いたので…何か買ってきましょうか?」
【あ、いや…私も行きます。】
そう言うと二人はコンビニに入っていった。
俺はスポーツ飲料、土田さんはお茶を買い車内で飲み始める。
「意外と喉が乾いていたみたいだね…」
一気に半分ほど飲んで言う。
【そうですね、お昼食べてから飲んでないですしね。】
話ながらオニギリも食べ始める。
「それにしても大した所に行けなくてゴメンね…」
【いやいや、十分楽しいですよ!遊園地だの何だのって、言うほど面白くないし、今日は全然退屈してませんし。】
「そう言ってくれると有り難いよ。」
少し間が空いた…
「あの、付き合ってもらえませんか?」
そう言って土田さんを見ると、一瞬た惑った様な表情をしだが、優しく微笑んで…
【こちらこそお願いします。】
と、快諾してくれた。
思いの外あっさりと付き合うことになったので、少し拍子抜けしたが、嬉しい事には違いない。
少ししてまた車を走らせた。
誰もが思うが、いつ?どのタイミングで?というのをお互いに言い合った。
『特にいつ?ってのは覚えてませんが、土曜日に電話した時がありましたよね?特にちゃんと約束した訳じゃないのに、約束したつもりになって…あれ、電話切った後に結構落ち込んだんですよ…一人で舞い上がっちゃって…その時かな?もしかしたら好きかも…て思い始めたのは。』
「そうだったんだ…すみませんでした。でもあの時既に土田さんの事好きでした。電話もらった時凄い嬉しかったんだけど、午後から審判の講習会が入ってて…自分の適当さ加減を恨んだね。あ、そうそう…タイミングは、一目惚れです。最初の挨拶の時に予感がしました…あ、もしかして付き合うかもって。」
朝比奈インターから首都高湾岸線に入る。横浜から南のエリアは平日はいつもガラガラ…この日は横浜エリアも比較的空いている。
夕方の工業地帯を抜けて、開発途中の横浜みなとみらい地区…まだ陽は高いがやや傾きかけた陽が色鮮やかに海をキラキラと照らしている。
やがて空港エリア…このエリアは少し道が悪い。ダダン!ダダン!ダダン!と道路の段差を乗り越える音…リズムはいいが少しうるさい。寝ている人間には耳障りな音…
『すみません…寝てしまって。今どこら辺ですか?』
「あ、起こしちゃった?ゴメン…今都内に入ったとこだよ。渋滞ないからかなり早く着くかも。東金で晩御飯も食べれるね。」
やがて車は、東京湾海底トンネルに入っていく。
葛西の大観覧車を右に見ながら、出来たばかりの京葉線と並走する。
そして浦安…ディズニーランドが間近に見える…
『ディズニーランドかぁ〜…暫く行ってないな…』
「そおっすね…いつか行こうよ❗️」
「実はディズニーランドの奥の海ッペリに学校があるんだけど、そこ母校です…」
『へぇ〜環境イイね〜…❗️』
「環境はね…通学キツかったし…」
『何となく分かる…風とかキツそうだね〜』
「分かる?殆ど毎日海からの風で逆風…罰ゲームだよ。」
やがて船橋…この時代を象徴する様な建物、室内型スキー場…ザウス❗️
幕張メッセ…千葉ポートタワーを過ぎ千葉市内から東金有料道路へ入る…
気がつくと陽は落ち、夕闇に包まれ始めていた。
東金有料道路下り車線は、銚子犬吠埼に初日の出を見に行くか夏休みの海水浴時期以外、事故でもなければあまり渋滞しない。この日も渋滞は無くスムーズだった。そして有料道路の終点となり市内へと入って行った。
会話も弾む。なんと無く手を繋いでいる。
まだ少し時間もあるが、先に食事を摂る事にした。
「どこか市内でお勧めの店ってある?」
『ラーメンなんですが、良いですか?特別美味しいって訳じゃないんですが、普通に美味しいので…』
「あ、イイよ❗️ラーメン大好きだし。」
とは言ったが、東金…ラーメン…と言えば、かつて、千秋と行ったラーメン屋を思い出し、出来ればそこじゃなければ良いな…なんて思っていた。
でも、そんなネガティヴな思いってのは大体裏目に出る事が多い。
やっぱりか…2年ぶりくらいか?
土田さんには悪いが、店に入り店内を見回して少しだけ思い出に浸った。
『知っているお店ですか?』
「いや、素朴な感じが良い雰囲気だな…って思って、思わず見回しちゃった…」
なんとかその場をやりきった。
食事を終え、門限までまだ少し時間があるので、海にでも行こうか?という事になった。
一番近い駐車場のある海水浴場までは大体20分くらい…移動中、ある提案をした。
「せっかく付き合う事になったので、お互い名字で呼ぶのはやめない?まぁ、仕事中は普通に名字だけど。」
『そうだね、私も違和感があった。何て呼びましょう?』
「土田さんの下の名前は、貴恭子(きくこ)だったよね?可愛らしく きっこ はどうすか?」
『ははは❗️家ではいつもそう呼ばれてる。新鮮味は無いけど、慣れ親しんだあだ名だからそれでいいよ❗️花山さんは何て呼びましょう?』
「俺も慣れ親しんだのがいいな…真一なので皆んなには昔から し〜君 て呼ばれてた。子供っぽいけど、今更他のあだ名ってのも何だからそれがいいな…」
『分かりました❗️し〜君ね、了解です❗️』
そんな話をしていると、駐車場に到着した。
あたりは街灯もほとんど無く、車がチラホラ停まっているだけ。晴れているので月明かりで周りがぼんやりと見えるくらいの明るさ。まぁ、大体真っ暗…
「ふう…」
『疲れた?』
「いや、楽しかった…もう一日が終わるんだ…って思ったら、少しため息が出た。ごめん…」
『そうだね、楽しい時って時間が過ぎるのが早いね…』
そう言ってまた手を繋いだ。
少しの沈黙が流れた…
「そろそろ時間かな?戻りますか?」
『あ、そうですね…名残惜しいですが…』
そう言うと、市内に向かって車を走らせた…
そこそこ遅い時間だが、県外などから海水浴に来て、真っ黒に日焼けした大勢の若者達が、市内のファミレスやラーメン屋で食事をしていてなんだか賑やかだった…
そんな賑やかな市内を抜けると、間も無く以前送っていった商店の前に近づいた。
「この近くだったよね?」
『あ、ここで良いです。』
「いや、今日は家の前まで送るよ。」
『いやいや、本当にここで良いですよ…』
頑なに断るきっこに対し、優しく聞き返した。
「前回もそうだけど、どうしたの?何か俺が行っちゃまずい事でもあるの?」
少しの沈黙の後、きっこは少し重めの口を開いた…
『私の家、物凄くボロいの…見られるの恥ずかしくて…』
「何だ、そんな事?でもさ、俺が付き合うのってきっこの家じゃなくてきっこなんだからさ…家がボロかろうが豪邸だろうが俺には関係ないよ。そんなん言ったら俺だって見せたくないよ…それに、ここから家のある方向に街灯が殆ど無いでしょ?ここら辺に住んでいたって危ないじゃん。このまま別れた後にきっこに何かあったら嫌だし…」
『分かった…でも本当にボロいからね…』
「気にしないよ。」
そう言ってきっこの家の方に向かった。
少し坂を登り、坂の途中のT字路を右折…坂を下り緩やかな左カーブを道なりに進むと、道沿いの左に家が出てきた…そこがきっこの家だ。通りの商店から400mはあったか?ここまで街灯は一ヶ所しか無く、殆ど暗闇に包まれていて改めて送った方が良かったと思った…
『ここ…』
家の前の道を挟んだ向かい側に家庭菜園があり、数台分の駐車スペースがある。きっこが気にしていた家は…というと…
確かに…見た目はきっこが言うのも分かる様なたたずまいの家ではあるが奥行きがある…でも俺の中では特に気にすることもない感じだった。
駐車スペースで切り返しUターンをしてきっこを降ろす。窓を開けほんの少し話す…
>> 28
得意先は2企業だが、それに付随する外商やギフトショップといった小型売店が県内全域にあり、きっこのいる売場には大体週に3〜4回訪問する。時間帯はマチマチだが、節約の為社食で昼を済ませたいので遅くても2時にはきっこのいる百貨店Mに行く。
が、営業やってりゃ何があるか分からない…会社の人間と飯食ってから出かける事もある…他の客と飯食う事もある…1人での移動中に魅了的な昼飯に出会い、そこで食う事もある…
そんな俺をきっこは待っていてくれる。でも売場に行ったからといって一緒に昼ごはんを食えるとも限らない…それでも待っていてくれた。
そんな動きをしばらく続けていれば、そりゃ売場の人達や同業の人間にもバレるね…当り前だけど。
松田先輩担当のS百貨店の寝装品売場の女性社員、佐藤さんと付き合い、そして別れた…までは良いのがだ、別れ方が悪い。
佐藤さんは最近冷たくなった松田先輩に対して、妊娠したと偽り結婚を迫った。松田先輩は思わず “誰の子?”と言ってまい彼女をひどく傷付けた…落ち込んでいる姿を見た加藤フロア長は理由を聞くと、松田先輩との話が出た…という流れだ。
この話のさらに深い理由を知る人間がいた。松田先輩と同期の梶原先輩だ…
梶原先輩が言うにはこうだ…
松田先輩は町田の実家から通勤している。地元には高校時代から付き合っている彼女がいる…
までは良いのだが、その後がいけない…松田先輩はなんとなく自分に気がある佐藤さんと浮気をした。勿論地元に彼女がいる事は内緒だった…半年程二股をしていたが、本命彼女との間でそろそろ結婚…という話が出始めた。家族同士の話も順調に進むにつれ、浮気相手の佐藤さんが少し邪魔になった。そうなると自然に冷たくなるのは当り前か…徐々にフェードアウトすれば良かったのだが、結婚を迫る勢いが強過ぎて思わず言葉の選択を誤った…らしい。
でも、その言葉を選んだ理由もあった。
>> 35
実は佐藤さんは入社間もなくから加藤フロア長と不倫関係にあった。
佐藤さんは幼い頃、両親が離婚し母親に育てられた…
加藤フロア長は40歳手前でフロア長に昇格するという、S百貨店では異例の出世をしその年齢から、仕事もプライベートも構わず部下の相談にも乗り信頼も厚い。元々商品部や外商部といった部門に所属しており、その手腕を買われ元売場の立て直しの為にフロア長に抜てきされた。当然元売場部門でも結果を残している。
外商部の上層部や商品部の各バイヤーへの影響も大きい。
加藤フロア長と佐藤さんの接点は、加藤フロア長歓迎会と佐藤さんを含めた数名の新人歓迎会をやった際に、佐藤さんが加藤フロア長の隣に座り家族の話をしたところから始まる…
加藤フロア長には子供がいない…
だからと言って佐藤さんと付き合うってのは少し考えにくいし、佐藤さんにしてみれば父親とダブり、加藤フロア長にしてみれば自分の娘の様に…であれば余計に不倫関係というのは無いのでは?
でも経緯は分からないが、佐藤さんが入社したその夏頃、加藤フロア長と佐藤さんがラブホテルに入っていくのを松田先輩と梶原先輩が目撃している。勿論誰にも言っておらず、二人以外知っている者はいない…
その事実を知った上で、自分に気のある態度を見せる佐藤さんに対して、浮気相手として見るのは無理もない…
佐藤さんにしてみればこの時点で22歳…数年続けてきた不倫という、いわば許されない恋愛に終止符を打ち、普通の恋愛が出来る喜びを感じていた最中の出来事だっただけに、ショックも大きかった様だ…
加藤フロア長にしてみれば不倫関係ではあったが、前向きに自分から去っていく佐藤さんを暖かく見守っている最中の出来事だっただけに、怒りは尋常ではなかっただろう…
『何かあった?』
沈黙を破ったのはきっこだった…
「いや、何もないよ…」
『嘘だね。何かあったって顔に書いてある。』
「………。」
いつもそうだ…すぐに顔に出てしまい、嘘がつけない。このままずっと言わないままで過ごすのに自信がない…バレる時って必ず変な気分になるんだろうから、今のうちに言っておいた方が得策か…
そんな事を考えながら、思い切ってきっこに言う事にした。
「あのさ…上に行ったら言うね。」
『え?あ、うん…分かった。何だろ?気になる。』
「俺たちにとっては直接関係のある事じゃないけど、今後の事かな…」
『そう…』
屋上にエレベーターが着く。目の前に縦長の休憩スペース、大きさは大体3M X 20Mくらいの縦長の割と広めなスペース。端っこに1人デパ地下の惣菜売り場でよく見かける女子社員がいるくらいで、他に誰もいない。
女子社員がこちらに気づく。
【あ!つっちーお疲れ様❗️ん?何々?デートぉ〜?】
もう、皆知ってます…
『違いますよ〜、休憩ですよ〜!』
【まぁまぁ、ゆっくりしてってよ〜、私はそろそろ時間なので行くね〜❗️ごゆっくり〜❗️】
そして誰もいなくなった。
「フ〜〜…」
ベンチに腰掛けため息ひとつ。
『で、今後の事って何?』
「うん…実はさ…」
俺は会社で起きた松田先輩の話を全てした…
『なるほどね…それで今後の付き合い方をちょっと考えちゃってるんだ…』
「まぁ…」
『でもさ、それって会社の先輩が彼女いるのを黙ってて、脈アリの子に手を出した…って事でしょ?そりゃ先輩が全面的に悪いよね?」
「そだね…」
『で、し〜君は他に本命の彼女がいて実は私は浮気相手で、先輩と同じ事になる前に打ち明けて清算しちゃいたい…って事なの?』
「いや、違うよ。きっこの他に彼女なんかいないし。」
『じゃあ、それでいいんじゃない?何を悩む事あるの?』
「うん、俺らってこうやって付き合う以前にお互い取引先の人間でしょ?もし、万が一2人がダメになるなんて事があったら、仕事しづらくならないかな…って思ってさ。」
『え?そーゆー事考えちゃってるの?まだ付き合って間もないのに…なんか嫌だな…』
「そーゆー訳じゃないけど…」
『じゃあ決めようよ、万が一の事があってもお互い仕事は仕事、プライベートはプライベート。そうしようよ。』
完全にきっこのペース…
「だね…そうしよう。」
『じゃあ、普段の仕事もし〜君を特別扱いしないよ。』
「え?あ、うん…分った。」
完全にペースを握られた形になってこの話は終わった…
仕事とプライベートを完全に分けたので…ってそれが普通なんだけど、これまで仕事中のきっことの会話にも、微妙に馴れ馴れしさが漂っていたらしく、皆に知られる一因となっていたのは確かな事だった…
しかし、あの話の後はお互い仕事中の話し方に気を付けた。また、昼飯も俺が売り場に行くまできっこは食事を摂らずに待っていたが、極力それをやめるようにした。
あまりの変わり様に、周囲の人から俺らはもう別れてる…という説が流れる程。それは外商部にも広がり、いつもの様に外商部に顔を出すと、いつも気さくに話しかけてくれる法人課の課長、高山さんが真剣な表情で俺に声をかけ、外の自販機前に連れ出す。
【花山さんさぁ〜、つっちーと何かあった?最近変な噂聞いちゃったからさ…ていうか、仕事とは関係ないけど、つっちー大事にしないと花山さんとこ干すよ。皆言ってるよ。】
「あ、いや…そんなんじゃないんです…なんて言ったらいいか…」
そう言うと、俺はやむなく説明する羽目になってしまった…
【なんだ、そうなんだ…でもそれは良い心掛けだね。皆にも言っておくよ。】
「いやいや、そんな、皆にとかは良いんじゃないですか?知らない人だっている訳ですし、あまり自分達の事を広げられちゃうのも何ですし…」
【え?花山さん知らないの?花山さんとつっちーの事、知らない人なんて逆にいないんじゃないかな?ちなみにウチの部長連中も統括も知ってるし、多分社長も知ってると思う。つっちーが本店研修の時に、本店の社長に一発で気に入られて、直々に秘書課に欲しいって言われたらしいんだけど、通勤が厳しいからって断ったみたいで…その後もウチの社長と話す時は、必ずって言うほどつっちーの話題になるくらいで、社長が本店に行く時はつっちーの現状を仕入れてから行くみたいだし…】
「そ…そうなんですか?」
ただそれしか言えず、こりゃS百貨店の加藤フロア長レベルの話じゃなく、下手をすると会社の存続にも関わるくらいの、最重要取扱注意人物だと思った…同時に、そんな人物と付き合っている事を誇らしく思えた。
普段仕事で会う時はガッチリ仕事モードでの会話なので、プライベートで会う時は、結構ベタベタに甘えてくるきっこ…
月に数回のデートの別れ際は必ずキスして別れるんだけど、回数を重ねる毎にそれは長く濃厚な物になっていく…
ある日、きっこの家の近くに用水路がある。その近くにちょっとしたスペースがあり、人目にはつきにくい感じになっている。いつもの様にお互いの唇、舌を絡ませているときっこは俺の手を取って自分の下半身の方へ誘ってきた…俺はその誘いに乗るが核心にはいかず、スカートの中に手は入れるが太ももの内側を優しく触る…きっこの声が少し荒れてくるとようやく核心に迫る。直接には触れず、下着の上からなぞる程度に愛撫する…
やがて…
『ねぇ…したくない?』
「何を?」
『意地悪…』
「ふふふ…じゃあ次ね。」
俺は慎重だった…大事にしたいのもあったけど、色んな意味で慎重になった。でもそろそろ…とは思っていたけど、腹をくくらなくちゃいけないと感じた。
付き合い始めてから3ヶ月程が過ぎた…昔の流行り言葉で言う所の、AとBは済んでいる。しかも結構濃厚なやつ…よくここまでセックス無しで来れたもんだ…と我ながら感心する。言い換えれば、それだけきっことの付き合いに物凄く慎重になっていた…
用水路の情事から2日後…売場に行くとちょうどきっこが1人で昼飯に行くところだった。
「これから飯?」
『はい、そうですけど…一緒に行きます?』
「あ、はい。すぐ行くので先に行ってて下さい。」
『分かりました〜』
違和感が残るけど、この話し方にも少し慣れてきた。
食事を終え、いつもの屋上に行って話をする…
流石にここでは仕事モードの話し方はしない。
「土曜って休みだっけ?さっきシフト表見たけど…」
『あ、うん…休みだよ。』
「俺さ、フレックスだから午前中から仕事して3時くらいには上がれる様にするから、どっか行く?」
『うん、いいよ。ここまで来ようか?』
「いいの?そうしてくれると助かるよ…」
いよいよだ…いよいよセックスをする。これまで付き合った彼女達とは少し違う…もう緊張している。あの中2の頃のし〜君の様な気持ちになった。
土曜日…
バブルの頃の勤務体系として挙げられる物…フレックスタイム出勤があった。今でもあるかもしれないけど、当時は色んな企業が取り入れていた。俺が勤めていた会社も例外では無く取り入れていた。
取引先の8割以上が百貨店だったのもあって、週休2日の内1日は担当百貨店の定休日に合わせて平日に指定休という形で取得する。あとの1日は日曜日となる。ただ、会社自体の休みは土日なので、会社に申請を出さないと土曜日に会社に来て仕事する事ができない。なので皆直行直帰となり、当然タイムカードの打刻はできない。そんな訳で土曜日は自由出勤で昼休憩1時間を除く5時間労働で良いという事になっている。
俺は早く仕事を切り上げたかったので、9時に車で県内のギフトショップへ直行し、12店舗ある内の何店舗かを回り、昼飯を済ませて売り場に入る。売場で一通りの仕事を済ませ、最後に会社へ注文のファクスを流して終了…ジャスト3時。
いよいよきっこに会える。
社員通用口を出る…目の前にきっこがいた。
「待った?」
『ううん?今来たとこ…』
そんな会話をしながらきっこから社員カードを借りる。路地を挟んだ右斜め前に百貨店の平面駐車場がある。カードを駐車場の警備員に見せる。社員は客として駐車場を利用すると、社員カードを見せれば3時間無料になる。
2人で車に乗り込む。
「どこ行く?」
『どこでも…』
そう言ったきっこの顔はいつもと違い、俺の腹を括らせた。
まわりくどいのは嫌だった…今日会った時のきっこの雰囲気も違っていたし、このままどっかドライブしてから…なんてしてたら、いつもと同じ行動になって結局何もせずに終わりそうなので…
「あのさ、嫌じゃなきゃ…行く?」
『あ…うん。』
きっこもそのつもりで来ていたが、きっことしてはワンクッションおいてから…と思っていたらしく、少し驚いた感じだった。
車に乗り、とりあえずきっこの家の方角へ車を走らせた。
やはり、お互いにとって初めての場所は少し拘りたい…そう思いながら国道をひた走る。
所々に看板が出ているが、中々ここ❗️っていうホテルが出て来ない。
そうこうしているうちに、きっこの地元に近づく…
俺は、左に行くときっこの地元…の分岐に差し掛かったので、右にハンドルを切った…
やがて海に出る。海岸線の一般道を少し走ると、いかにも海岸沿いのホテルですよ…って雰囲気のホテルを見つけた。
俺は迷わず入った。幸い、ワンガレージワンルームになっており、誰にも会わずに入室出来た。
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