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名無し
15/07/19 20:06(更新日時)

金曜日

家から二軒隣の歯科医院は

午後休診だった



No.2178778 15/01/20 16:16(スレ作成日時)

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No.1 15/01/20 16:36
名無し0 

15台ほど停めることができる歯科医院の駐車場

私は小学3年生
友達の佳代ちゃんと真美子ちゃんと自転車に乗りながらおしゃべりをしたり
ボールで遊んでいた

何も悩みがなく楽しい時期だった

No.2 15/01/20 16:48
名無し 

駐車場には一台だけ車が停まっていた

いつも見る院長先生の車とはちがう

形は小さく
色は院長先生はシルバーだがこの車は白

『佐織ちゃんあの車怪しくない?』

『うん ナンバー書いておこう』

一同『うんうん』


3人共ノートと鉛筆を自転車の前かごから取りだし
白い車のナンバーをメモした

その時の私達のブームは探偵ごっこだった



No.3 15/01/20 21:42
名無し 

『商店街まで行こうよ もっと車停まってるよ』少しぽっちゃりで肩まで髪の長さの佳代ちゃんが言った

『うん 行こう 行こう』私とポニーテールで大きい目の真美子がこたえた


3人が自転車のバンドルを握り
駐車場を後にしようとしたところに

一人の男の子が自転車でやってきた

駐車場をぐるぐる周り私の前でブレーキをかけた

『トシくん補助輪取れたんだ』

今月小学校に入学したばかりの敏春に私は声をかけた



No.4 15/01/20 21:53
名無し 

『昨日とれた』

取れたのがよほど嬉しかったのかトシくんは
自転車で駐車場を何周もぐるぐると回った

まだ4月なのだがトシくんの
青色半袖シャツには首まわりに汗がにじんでいた


佳代ちゃんが『行こう』と再び切り出したので

みんな自転車のペダルを踏んだ


『佐織!』やわらかな母の
私を呼ぶ声が聞こえた



No.5 15/01/21 16:44
名無し 

『お母さんっ』

私は自転車に乗り母の元にかけよった

ショートボブにベージュのニット
黒のタイトスカート

いつも仕事の帰りに買い物によるため
スーパーの袋を持っていた

母は皆に笑顔を向けていた

『お母さん 商店街へ行っていい?』

『佐織もう帰らないといかんよ』

『何で?まだキンコンカン鳴ってないよ』

4月の5時前はまだ明るかった

不服そうな私に母は

『雨降ってくるから もうすぐ』

『ちょっとだけダメかな?』

遊び足りない私が言った


No.6 15/01/21 16:53
名無し 

『あんたはすぐ帰れるけど 佳代ちゃんたちは家遠いでしょ
雨に濡れちゃうよ』

私はしぶしぶうなずいた


佳代ちゃんと真美子ちゃんに
もうすぐ雨が降るからと伝え 家の方向に自転車を向けた

『バイバイ』

『バイバイ』

『トシくんもバイバイ』

話を聞いていた敏春も小さな自転車で駐車場を後にした

No.7 15/01/21 17:12
名無し 

家の小さな門扉を開けると 柴犬に似た雑種のエルが私と母を出迎えた

エルは尻尾を振りクゥンクゥンとアピールしてきたが
吠えはしなかった

『散歩は行った?』
『うん行ったよ ご飯もあげた』

『ありがとね』


『ただいま~』

玄関を開けると祖父が帰っていた

祖父は60歳を越えていたが 郵便の配達の仕事をしていた

『おかえり 一緒だったんか~』

祖父は脱いだ靴下を洗濯機の中に放り投げ 100円ライターを片手にタバコを探していた


No.8 15/01/21 21:38
名無し 

祖父はハンガーに掛けてあった上着のポケットに入っていた
タバコを出し一服した

祖父は母の実父だった

母は夕飯の支度をはじめていた

『お母さん 手伝う』
『じゃあ玉ねぎむいてくれる?』

私は台所の籐かごから玉ねぎを出し
母の隣で慣れた手つきで皮をむいていった

東側の窓からザーという音が聞こえた

雨が降ってきた

『お母さん 雨降ってきたね 佳代ちゃんたち大丈夫かな』

『うん 濡れてないよ 』



母は『雨に降られなければいいね 大丈夫かな』
ではなく


『濡れてないよ』と答えた

その頃の私はその言い方をおかしいとは思わなかった


No.9 15/01/22 16:33
名無し 

『おじいちゃん出来たよーっ』

『おう』

毎日3人で夕飯を食べた

私には父がいなかった 両親は私が生まれてしばらくしてから離婚した 父親には別れてから一度も会ってないから 記憶もなかった


夕飯のおかずは味噌汁 肉炒め じゃがいもの煮物

どのおかずにも私が切った玉ねぎが入っていた

学校での出来事や放課後友達と遊んだこと

祖父と母は 私の話をいつもニコニコと聞いてくれた


No.10 15/01/22 16:44
名無し 

私はどこにでもいる昭和時代の普通の子どもだった

小3の平均身長体重
成績も中間
運動神経も悪くはない
黒髪は2つに結び
笑顔が屈託なく
おしゃべりと大好き学校に元気一杯通っていた

そしてとても幸せだった

父親がいなくても
母 祖父 親戚近所の人 友達 エル

沢山の人に見守られ 愛され 子どもらしくすくすくと成長していた


それがいつまでも続くものだと思っていた


食事を終えた祖父は風呂の支度をした

湯が温まるまで昔の風呂釜だから40分位かかった


祖父はテレビのニュースを見ながら新聞を読んでいた

すぐ横で私はピンクレディの振り真似をして遊んでいた

No.11 15/01/22 21:20
名無し 

土曜日
当時学校は半ドン

私は帰宅し
ランドセルから鍵をとり出し玄関を開けた

誰もいない家には
母が朝作ってくれたおにぎりが テーブルの上にラップをかけておいてあった


それを食べると少女漫画雑誌の『なかよし』を読んでいた

土曜日はあまり好きではなかった

理由は2つあった

佳代ちゃんは学校のバスケ部の練習

真美子ちゃんはバレエ教室


仲良しの友達と遊べないのが一つの理由

マンガにも飽きて
仕方ないのでエルの散歩に行こうと ピンク色の網目のサンダルを履き 外に出た


No.12 15/01/22 21:34
名無し 

『エル!』
『ワン!』

元気よくエルは吠えた
私は首輪にリードを付け道路に出た

『エル!!』

後ろから大きな声でエルを呼んだのは
トシくんだった

『散歩 俺も行く!』
トシくんは自転車で 私たちに近づいた

『トシくんひももったらいかんよ 危ないじゃん』

まだ補助輪取れたてで かつ自転車のままリードを持とうと無茶をするトシくんを私は諫めた

No.13 15/01/22 23:17
名無し 

『ダメだってば!』

私はトシくんの手を振りはらい エルと全速力で走りだした

『あー佐織ぃ!』

トシくんは自転車で追いかけくる

小さくても自転車は自転車
すぐ追い付いてしまった

私は走るのを止め
肩で息をした
『ハアハア…』


気がついたらトシくんの家の前だった

といっても 私の家の裏側あたりなのだが
道を半時計回りに周ってきたのであった

もうトシくんは無理やりリードを取ろうとはしなかった

トシくんの家から大きな怒鳴り声が聞こえた

No.14 15/01/22 23:32
名無し 

『うるさいこの馬鹿女!出ていけ!離婚だ!』
『アンタの方が出ていきなさいよ!』

敏治の両親のこの光景は 近所でも有名だった

私とトシくんは怒鳴り声のする家の前を通り過ぎ エルと散歩を続けた

私は『あんたも大変だね』と一人言っぽく声をかけたら

『べっっつに!!』

と答えた敏治であったが
それは誰がみても強がりに見えた


こんなにイガミ合っている夫婦なのに 何で子どもが5人も生まれたのだろうと疑問もったのは

私がもう少し大きくなってからだった


No.15 15/01/23 16:35
名無し 

『トシくん うちで遊ぶ?』

『うん 神経衰弱しよ! 』

トシくんは嬉しそうな顔になった
一人っ子だった私は 少々やんちゃだが敏春が弟みたいに思えて可愛かった

敏春とエルとしばらく神社周りを歩き タバコ屋の角を曲がると家だった

家の前には60代くらいの 品の良い女性がが門の前に立っていた


『こんにちは』
私は挨拶をした

『あのこちら野間さんですよね 今日伺う予定の者ですけど』

『はい ちょっと待って下さい』


おそらく母は帰って来てるのであろう
『お母さん お客さん来たよ』


『はーい』

まだ帰ってきたばかりの母は
訪ねてきた 初老の女性を家にいれた


No.16 15/01/23 22:33
名無し 

家の間取りは四畳半 六畳 六畳で
客は四畳半の部屋に招き入れた

私と敏春は六畳の部屋で トランプをして遊んでいた

最初の方でお経のようなものを読むのが聞こえたが
部屋を一つ挟んでいるので何を話ているのかまでは はほとんどわからなかった


約1時間ほどで客は部屋から出てきた

『ありがとうございました。お邪魔しました。』

心なしか初老の女性の表情が
来た時よりも明るく感じた


私はこの頃になると
母はうすうす霊的な相談を受けているのだなと気付いていた

『俺帰る』
トランプに飽きたのか
敏春が家を出ようとした

母は『トシくん またね ありがとうね』と玄関で手を振った

そして何故か 理解できない行動というか仕草を敏春に向かってしているのを
私はその時初めて見たのだった


No.17 15/01/24 20:41
名無し 

母は 敏春が玄関先から見えるか見えなくなるか位になった時

振っていた手を合わせ
拝むような 祈るような格好をしばらく続けたのだった

それは単に『ありがとうね』の意味を込めただけでなく
何かに熱心に祈るを捧げるようで時間も長かった

私は少し驚いた

家には佳代ちゃんや真美子ちゃんや
他にも友達が来たことはあるのだが

そんな見送り方をしたのは敏春だけだったからだった


私はなぜそんな見送りかたをするのか
聞こうかどうかまよったが 思いきって聞いてみた


No.18 15/01/24 20:51
名無し 

『お母さん何やってるの?』

母は一瞬ビクッとしたがすぐ
『トシくん無事に家に着きますようにって思っただけだよ』

と笑顔で返した

予想の出来た答えだったが まったく納得はしなかった

やっぱり変…あんな長いこと願ったりするかな?

手を合わせていた時間は30秒くらいはあったと思った

釈然としないながらもそれ以上は聞けずにいた

だが私は質問ついでにあまり今まで母に聞かなかった事を問うてみた

『お母さん 今日のお客さんは何の相談だったの?』


No.19 15/01/24 23:20
名無し 

『さっきの方は 旦那様が病気になったり 息子さんが勤める会社が倒産したりで
ちょっと悪い事が続いてるんで
何か憑いてるんじゃないかって相談しに来たんだよ

視たけど心配するものは何もないからって伝えたら
気が済んだみたい』

『そっかー
おばさん帰るとき元気そうだったから良かったね』


母は『私のような所へ来なくても…本当はね…』
と言いかけたが続けるのを止めた


私はやっぱり母は何か違うんだと理解した



No.20 15/01/24 23:33
名無し 

母は相談にお金を請求しなかったが
手土産やお供えはいただいていた

今回のご婦人も持ってきてくれた


『佐織買い物行くよ』

『うん』

もう夕方5時近くになってしまった

二人はいつもの商店街へと向かった

私は本当はバスに乗ってダイエーに行きたかったのだが 客がくるので滅多にいけなくなってしまった

これが私の土曜日が嫌いな理由の一つだった



No.21 15/01/24 23:57
名無し 

皆様
いつも閲覧ありがとうございます

明日25日は都合で更新できませんのでよろしくお願いします

誤字 脱字 読みづらい文章など多々ある事を心よりお詫びいたします(深礼)

では皆様よい日曜日をお過ごしくださいませ…☆


No.22 15/01/26 16:29
名無し 

それから2カ月ほどたったある日の土曜日

いつもの土曜日とはちがい 私はとても楽しみにしていた

母の弟 叔父の修一が来て図書館へ連れていってくれるからであった

私は学校から小走りで 家へ向かった

ランドセルに着けたお守りの鈴の音も
急いている私の気持ちを 表しているようだった

家の前には修一が来ている証の 白い乗用車が止まっていた

『ただいま!』

『おかえり 佐織』

すでに叔父は家にいた
祖父も母もまだ帰ってきていなかった

私は手洗いもそこそこに 急いでおにぎりを口にした

『あわてて食うなよ』と 叔父はにこにこしながら注意した

ガラッ 『すみません~』玄関の開ける音と聞き覚えのある声が聞こえた


No.23 15/01/26 16:56
名無し 

『はい』

私はおにぎりを食べたので 叔父が出てくれた

訪ねてきたのは敏春の母 河村静子だった

『あの うちの敏春がお邪魔してませんでしょうか。』

『いえ 来てませんけど今日は』

『そうですか』

敏春が来てないとわかった静子さんは
軽く会釈をし玄関を閉めて家を後にした

『お兄ちゃん トシくんのお母さん?』

『ああ』

私は叔父の事を 『お兄ちゃん』と 呼んでいた


『お兄ちゃん おにぎり食べたよ もう(図書館)行けるよ』

『おっしゃ 行こうか』

家には自家用車がなかったので
叔父に車に乗せてもらえる事が 私はとても嬉しかった

叔父 秀一はフェンダーミラーで後ろを確かめ
静かにアクセルをふんだ


No.24 15/01/26 21:01
名無し 

6月 初夏の日差しはきつく 車内は独特の蒸し暑さ
叔父はエアコンのボタンを押した

『あっつ~ ねえお兄ちゃん トシくんのお母さん知ってるの?』

『兄ちゃん2年前まであの家に住んどったの 忘れたんか 笑』

『あそっか 綺麗な人だよね トシくんのお母さん』

『ハハ… まあな』


静子さんは今で言うなら仲間由紀恵さんに似た感じの美人

旦那さんであり敏春の父親の 河村博は唐沢寿明に少し似ていて 美男美女のカップルだった

『でもさ 凄いケンカするんだよ あそこのお父さんとお母さん』

『ああ 有名だもんな この辺りじゃ 博も若い嫁さんもらったんだから 大事にすりゃええのに。』

叔父と敏春の父親は同級生だった

『トシくんが可哀想だよ ケンカばっかしてさ。』

『まあな 夫婦ゲンカ犬も食わないっちゅうしな 笑』


車内のエアコンがやっと効いてきた


No.25 15/01/26 21:23
名無し 

(トシくん ちゃんと家に帰ったかなあ 図書館に誘えばよかったかな) と 敏春の事を考えながら 窓から景色を眺めているうちに図書館へついた

一時間半ほど居て『モモちゃんシリーズ』を借り 図書館を出た

『佐織 ダイエー行くか?』

『行く!』

何ヵ月かぶりのダイエーへ行き
ソフトクリームを買ってもらい 家に帰ったきた


母と祖父と叔父と私で楽しく晩御飯を食べ 風呂に入りドリフを見て
疲れた私は すぐに眠りについた

もう敏春の事や いつもの母のお客さんの事はすっかり忘れていた


No.26 15/01/27 16:21
名無し 

日曜日ーー午前中私は書道教室に通っていた

佳代ちゃんや真美子ちゃんは通ってなかったが 同じクラスの子や近所の子がたくさんいて 習字はあまり書かず ほとんど遊んでいるので楽しく通っていた

母は土曜日にお客さんの相談を受けると
とても疲労するので 日曜日はだいたい昼まで寝ていた

だが午後からは気分も良くなるようで
喫茶店に祖父と3人で出掛けた

家に帰って しばらくすると 叔父の修一が玄関をあけ入ってきた

ガラガラ『あ~タバコ忘れてなかったかなあ~』



No.27 15/01/27 16:25
名無し 

『あるよ』
母は叔父にタバコを渡した

『ねえお兄ちゃん エルの散歩いこうよ!』

『散歩かあ~まあたまにはいいかな 笑』

私は叔父が昨日だけじゃなく 忘れ物をとりにきたといえ 今日も家に来てくれた事が嬉しくて もっと居て欲しかった


叔父の 笑うと目元に出来る優しい笑いジワが大好きだった

エルは尻尾を大きく振り リードを着けてもらうと 二三回その場をぐるぐる回ってから歩きだした


道を左に曲がり敏春の家の前に来た

意外にも今日は怒鳴り声はなく静かだった

留守だったのだろうか

No.28 15/01/27 16:32
名無し 

『今日は静かだね お兄ちゃん』

『そう いつもいつもケンカしてないだろ 笑』

叔父はそう言ったが
私がこの家の前を通る時はいつも怒鳴り声がするのだ

敏春の家は自営業で 電気工事業をしてて
夫婦で家にいることが サラリーマンの家庭より多いのもあるかもしれなかったが

『静子さんなんて 姉貴にくらべりゃチョロいもんさ』

『え?』

叔父の言葉を聞いて私はちょっと驚いた

『お母さんは怒鳴ったりしないよ』

『まあ 今はな』

私は意外…としか言い様がなかった

壇ふみのような穏やかさをもち 声を荒げることなどほとんどなかった母だが 昔はそうではなかったというのが信じられなかった


変な気分のまま いつも通り神社の周りを歩きタバコ屋の角を曲がり家へ着いた


エルを柱に繋ぎ

家の中に入ろうとした時

『エル!』
門の外から敏春がエルを呼んだ

No.29 15/01/27 20:59
名無し 

『佐織 もう散歩行ったの?』

『あーもう行ってきちゃったよ』

がっかりした敏春はすぐに帰ろうとした

『遊ぼっかトシくん』

『うん 俺人生ゲームしたい』

家の中で私とトシくんは人生ゲームで遊ぶことにした
修一おじさんも参加したり
お菓子を食べたり
楽しく時間が過ぎていった


ガラッ『こんちは~』

『あっ 父ちゃん!』
敏春はゲームを止めすぐに玄関に向かって駆け出した



No.30 15/01/27 21:05
名無し 

『トシ 帰るぞ~』

敏春の父 博さんは敏春の妹たち
3歳の子の手をつなぎ
1歳の子を 胸の所がバッテンになる おんぶ紐でおぶっていた

トシくんのお父さんとは同級生の 修一おじさんはそれを見て

『男前が台無しだな 笑』といった

『まあこんなもんだよ 笑』

『佐織ちゃん いつも敏春と遊んでくれてありがとね。』

トシくんのお父さんは 少しかがんで私の目線にあわせて お礼を言ってくれた

『うん』

『敏春 いくぞ 母ちゃんが待ってるぞ』

『…………。』敏春はうつむいていた

『ほら 行くぞ』

『やだ!俺…母ちゃんの子じゃないだもん!』

私と修一おじさんはその言葉に唖然とした

No.31 15/01/28 00:05
名無し 

『何言ってんだよ はよ! 帰るぞ ほれ』

『………。』

なかなか帰ろうとしない敏春の背中を押した

顔を真っ赤にした 敏春は何故か 目でなく口元をこすっていた
気のせいか少し赤く腫れたようになっているのに気づいた

『トシくん また来てね』

私と修一おじさんの後ろで母が微笑んだ

『依ちゃん…。』『……。』

※依子は母の名前です


何故か母とトシくんのお父さんとの間に一瞬 間があった

『依ちゃん いつも敏春が……ありがとな…。』

『はやく連れて行ってあげて 』

トシくんのお父さんはうなずき ぐずる敏春と一緒に帰っていった


No.32 15/01/28 00:12
名無し 

『お兄ちゃん トシくん トシくんのお母さんの子じゃないって ほんと?』

『んな訳ないよ 静子さんが敏春を妊娠して デッカイ腹してたたの俺知ってるし。トシの 冗談だよ。』

『そうか…そうだよね…。』

『二人とも 滅多な事外にいいふらすんじゃないよ? 修一 佐織。』

鋭い目で母が私達に釘をさした

修一『わかってます。』
私『うん。』


昨日とはうって変わって 複雑な心情でみんなと晩御飯を食べた

床に入っても トシくんの事やトシくんのお父さんと母の関係が気になりなかなか眠れなかった

(お母ちゃんの子じゃないて トシくん可愛がられてないのかなあ)

私は親の夫婦仲が悪いのだけでなく お母さんにも可愛がられてないなんて ますますトシくんが可哀想になった



No.33 15/01/28 17:03
名無し 

月曜日ーー朝 雨が降っていた

トシくんが学校に来るか心配だったが 通学班の集合場所の公園に すでに来ていた

トシくんは水溜まりを長靴で踏み 水しぶきを飛ばして遊んでいた

元気そうだったので
とくに声もかけず集合登校で学校に向かった


No.34 15/01/28 22:36
名無し 

午後になっても雨は 止まないかった

5時間目は音楽室での授業

声が小さいとか 元気よく とか 細かく注意する 先生

私はげんなりしながら♪は~るの おが~わの♪と合唱をしていた

何度もダメ出しする先生に つまらなさを感じて 隣の席の木村くんとこっそり替え歌にしたりして遊んでいた


私が 教科書に載っている
滝廉太郎人物画の.メガネを塗りつぶしてサングラスにしたり

バッハに角を書いて『ひつじ~』と書いたのを木村くんに見せたら

『ギャハハハハ!!!!』と笑った


『野間さん! 木村くん!』

ヒステリックな担任の加茂先生に叱られた私たちは


音楽室の後ろで 後ろ向きに 立たされた



No.35 15/01/28 22:56
名無し 

みんなの合唱とグランドピアノの伴奏を背に

音楽室の後ろの壁を見つめる私と木村くん

ふと上を見ると ベートーベンの肖像画がこちらを睨んでいた
ベートーベンにまで怒られているようだった

(この人耳が聞こえなかったって本当?)

『佐織!』

『え?』

左側を見ると
廊下側の窓からトシくんが覗いてアッカンベーをしていた

『こら!トシっっ!!!』


『野間さんっっっ!!』


No.36 15/01/29 16:45
名無し 

放課後 加茂先生にコッテリとしぼられ 職員室を後にした
下駄箱に共犯の木村くんが待っていてくれた

『悪い 俺が大声で笑ったから。』

『木村くんのせいじゃないよ トシくんがからかうからさあ。』

『?』

『木村くん トシくん知らないよね。 さっき私の事 呼んだじゃん あの子だよ。』

『さっきって いつだよ?』

『だから 音楽室で…。そうか 木村くん後ろ向いてたからわからなかったよね、トシくんが 私の事呼んだんだよ。』

『へーそうだったんだ だから野間叫んだんだ!』

『そうそう 笑』

『いきなり コラッなんつーから 俺びっくりしたわ。』

『こっちこそゴメンね、 あのさ国語の宿題……』

(結構大きな声で呼んだんだと思ったんだけどな トシくん。)

その時は何も疑問に思わず木村くんと途中まで一緒に帰った
もう 雨はやんでいた
やや大き目の長靴は歩くのに少し重かった



No.37 15/01/29 20:45
名無し 

翌朝 登校班で通学中 敏春に聞いてみた

『トシくん 昨日音楽室に来て あたしにアッカンベしたよね あのあと先生にすごく怒られたんだから!』

『しらねーよ 何それ』

『とぼけたってダメだよ あんな事するのトシくんしかいないもん』

『しらねぇって 俺音楽室 行ったことないし』

トシくんに言われてはっとした

音楽室は3年生からしか使わないんだった

しかも4階にある

一年生の教室は一階で東校舎
音楽室は西校舎だから一番離れている

わざわざ来る理由もない

『トシくん昨日は何時間目で授業終わったの?』

『4時間目だよ』

音楽は5時間目の授業だった

『帰りの会終わってすぐ帰ったんだよね』

『うん 口の湿疹診てもらうから病院行くから 母ちゃんがすぐ帰ってこいって』

『そう ゴメンね 誰かと間違えたみたい』

だとしたら誰だったんだろう…




No.38 15/01/29 20:51
名無し 

学校に着いて 昨日トシくん(と思われる)が覗いたガラス窓近くに座っていた
優等生の松井さんに聞いてみた

『松井さん 昨日音楽室で このへんから男の子が覗いてなかった?』

『え?気がつかなかったけど…野間さんがコラッなんていうからそれにはびっくりしたよ笑 突然叫ぶんだもん 笑』

『誰か呼んだ気がしたんだけど勘違いだったのかな?』

『教頭先生がたまに見てる時あるよ それだったんじゃない?』

『うん…そうかも…』

その場では話をあわせたが

(違う あれは教頭先生なんかじゃない
敏春だよ絶対)

根拠は何も無かったし敏春自身も否定していたが

あの『佐織!』と呼ぶいつもの声とアッカンベの顔が
脳裏に焼き付いていて

あれが幻想だとも
他の人だとも まったく思えなかった




No.39 15/01/30 18:25
名無し 

私はすべて母に話した 母が何というか不安だったが
言わずにはいられなかった


私はトシくんを見てる
でもみんなはわからなかった



『どちらも事実だよ』

こないだトシくんと色々あったから 幻でもみたのだろうか

『逆よ』


母は答えた

  • << 41 『たぶんトシくんが 佐織の事考えてたんでしょう』 『考えてたって?考えてただけで見えちゃうもんなの? 』 『毎度見えるわけじゃないけど見たんでしょう?』 『そうだけど…。』 『気持ちがそっちに行ってたのよ』 母に『見えたんでしょう』と言われてしまうと何も聞き返せなかった 実際あれは敏春だった 『気のせいとか夢でも見てたとかいわれる そういう場合もあるし 幻想っていう病気が原因で見えるケースもある 佐織の場合 気のせいか夢って事で済まされるわね』 夢…夢なんかじゃなかった たしかにあれは…

No.40 15/01/30 18:32
名無し 

皆様いつも閲覧ありがとうございます

風邪をひいてしまいました

インフルエンザの検査をしましたが早すぎて反応がでない可能性もあるので明日再度するそうです

現在38°5分の熱で大変しんどいです

2日3日休ませていただきますのでご了承ください 礼

No.41 15/02/02 16:24
名無し 

>> 39 私はすべて母に話した 母が何というか不安だったが 言わずにはいられなかった 私はトシくんを見てる でもみんなはわからなかった 『ど… 『たぶんトシくんが 佐織の事考えてたんでしょう』

『考えてたって?考えてただけで見えちゃうもんなの?


『毎度見えるわけじゃないけど見たんでしょう?』

『そうだけど…。』

『気持ちがそっちに行ってたのよ』


母に『見えたんでしょう』と言われてしまうと何も聞き返せなかった
実際あれは敏春だった

『気のせいとか夢でも見てたとかいわれる
そういう場合もあるし 幻想っていう病気が原因で見えるケースもある

佐織の場合 気のせいか夢って事で済まされるわね』

夢…夢なんかじゃなかった たしかにあれは…



No.42 15/02/02 16:36
名無し 

『そんなに深刻に考えなくてもいいのよ
あ~見えちゃたんだな 位で

みんな見てるんだよ気がつかないだけで
見えたからって
ただそれだけの事
何も心配いらないからね』


母にそう言われて少し安心した

母の話に100パーセントの納得は出来なかったが 深刻に考えるのはやめようと思った


『でもあまり人に言わないようにね
頭変だと思われるから』

そうだよね
信じてはもらえないだろう
そこに関しては全く同感だった

母は食卓の椅子から立ち
夕食の準備をし始めた


それから2週間ほど経った金曜日

敏春は学校を休んだ


No.43 15/02/02 21:16
名無し 

風邪でもひいたのかなと思いあまり気にとめなかった

翌日の夜
『今晩は』
玄関の戸があく音がした

母はお客の相談を受けた後だったので
おじいちゃんが対応に行った

何やら話混んでいたので気になって覗いてみると

両親に連れられて
敏春も来ていた

私は小走りで玄関までいってみると
口の周りを真っ赤にした敏春がいた

『ん~でもなあ…依子はさっきまでお客を見てずいぶん疲れているようなんだ…。』

祖父の言葉でトシくんたちは母にあいにきたのがわかった


『トシくん ひどいね口…真っ赤っかだよ 痛い?』

敏春はだまってうなずいた



No.44 15/02/03 16:42
名無し 

敏春の両親の表情で
何を求めて家に来たのか私は察した

『お母さん!』

私は部屋で横になってる母の元へとんでいった

『お母さん!トシくんが顔が腫れちゃってるの!見てあげて!』

慌てた私は『口が腫れてる』と言うべきところを『顔が腫れている』と言ってしまった

『え?顔が?』母は起き上がって玄関へ向かった


敏春の父と母
博さんと静子さんは母に深々とお辞儀をた

博『依ちゃんゴメン!敏がこんなになっって…どうしたらいいのか…頼む!見て欲しいんだ!』

静子『お願いします!もうこの子ご飯も食べられないんです!』

母親の静子さんは泣いていた


『医者には行ってるよね?』

母は敏春の顔を見た


No.45 15/02/03 17:03
名無し 

静子『もう3週間くらい前からずっと通ってるんです…。一度よくなったんですけどまた酷くなってしまって…お医者さんは,様子を見てって言うだけで,もうどうしたらいいのか…。』

『お医者さん、変えた?』

『はい…変えたんですけど…』

母はしばらく目を閉じて 考えこんでた

『大丈夫 治るから』

『本人ですか?』

静子さんが母にすがるように尋ねた


No.46 15/02/03 17:25
名無し 

>> 45 途中ですみません

↑『本人ですか?』→『本当ですか?』

あまりにも誤字が多く面目ないですm(_ _)m


No.47 15/02/03 21:11
名無し 

たびたびすみませんm(_ _)m次の頁から2~3レスほど 食事中にはふさわしくないレスになりますので閲覧ご注意下さい

No.48 15/02/03 21:20
名無し 

母『きちんとお医者に行って 治療を受けていたら必ず治るわ』

母は言いきった

母『…あとちょっと気になることがあるんだけど トシくん、あのね トイレに何かしたかな?いたずらとかしてない?』

敏春はうつむいて考えてた

『つば…はいた』


静子『唾?はいたの?』
博『いつ?』

敏『毎日…』


静子『毎日ぃ~?』

敏くんはクセでトイレの便器に唾を吐いていたらしい
汚してやろうとかいう悪意な気持ちではないく 単に習慣だったようだ


母『トシくん、トイレは用をたすところだからね つばは吐いちゃいかんよ、あとね、ちゃんと治るから痛いけどお医者さん行ってきちんと治療してね』

母はほほえみながら敏春に言いきかせた

『すみません!!』

博さんと静子さんは深々と頭を下げた


No.49 15/02/04 15:29
名無し 

母『謝らなくていいんですよ、知らずにやってたんだし。』

静子『はい…』

母『あとね、敏くんがちょっと良くなってからでいいから、すこしの間トイレの掃除させるといいと思う。気持ちの問題だけどね』

静子『わかりました させます。』

母『大丈夫。時間はかかるけど治るからね。』

敏春の両親はだいぶ安堵したようだった。

『ありがとうございました。すみませんでした…。』

博さんと静子さんは深々と頭を下げ帰ろうとしたとき
また母が言葉をかけた

『静子さん、博くんを信じてあげてね』

二人はふりかえった


No.50 15/02/04 16:46
名無し 

『色々あっただろうけど 博くんは今静子さんやお子さんのこと一番大事に思ってるから。』

『はい…すみません…ありがとうございました…。』

静子さんは何度も母にお礼を言っていた

『依ちゃん…ありがとう、俺たちが悪かったよ、俺たちのせいで敏春が…』

『誰が悪いというものじゃないけどね、子供のストレスは体に出やすいから。』

『本当にありがとな。疲れてるのに、すまなかった…。』

博さんも何度も母に頭を下げた


敏春は来たときよりすこし明るい表情になり帰っていった

母は両手を合わせて敏春たちを見送った


そしてなだれ込むよう布団に入り横になった



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