あの時、違う道を選んでいたら…
高校を卒業して20年…
久しぶりの同窓会
『変わらないね~‼』
『キレイになったね‼』
キャーキャーワイワイ大騒ぎ
そう、高校を卒業して何十年たっても…
一瞬で当時にタイムスリップしたかのような同級生達
高校は女子校だった
20年もたつと、ほぼ結婚していた
と言うか、、
30代後半で独身の女子の同窓会参加は女子校ではないのかもしれない…
それでもクラスの半数以上は参加していた
もちろん卒業してから疎遠になってた仲良しグループだった仲間は連絡取り合い全員参加していた
卒業して数年は連絡も取り合い、年に何回かは集まっていたが…
結婚して、子供が生まれた頃からは段々と集まる機会もなくなり、いつしか年賀状のやりとりだけしかする事もなくなっていった…
最初の1週間は、ほぼオリエンテーションに費やした
進学校ではなかったせいもあり、勉強よりマナーとか規律に重きを置くような学校だった
入学式の直後の教室で、親の目前での校則説明のあるような学校で
『頭髪のパーマ・染め毛は禁止ですので、天パ、地毛の茶色の生徒は親の申し出のみ生徒手帳に記入しますので、本日この場で申し出て下さい。』と担任からの話もあった
今でこそ高校生の染め毛なんかも多くみられるが、当時は不良の代名詞のような時代だった
クラスで3人ほど親からの申し出があった
その内の一人マミに至っては、クルクル頭の茶髪、メンソレータムの缶にいる子のような可愛い子だった
しかしそれも数日後
染め毛にパーマと判明する事となった
3年生に姉の居るマミが仕組んだ悪知恵だった(笑)
毎朝、校門で制服検査、頭髪検査をくぐり抜けなければ校門を入れないような厳しい学校だった
同窓会で唯から声を掛けられた
『元気⁉』
唯は入学当時クラス一番目立った子だった
入学したばかりの15才なのに
華やかな雰囲気を持った
なんか近寄りがたい大人びた子だった
『ミツルの事知ってる⁉』
ミツル…
高校2年から3年くらい付き合ってた4つ上の男だった
高校2年 16才からしたら、20才のミツルは大人に見えた…
『ミツルね…逢いたがってたよ…』
唯の店に来たのだそうだ
唯の母親はスナックを経営していた
美人で、色恋沙汰の絶えない母親
中学の時に唯の父親と離婚して、シングルで唯を育てていた
唯は、そのスナックで手伝いをしていた
だから、大人びていたのだと思う
もちろんスナックでのアルバイトなんかは禁止なのだが、親の店の手伝いなのだから学校に公にばれて問題になるような事もなかった
そんなある日
下校時間の電車が遅れる事故があった
途中の駅で事故があり電車が大幅に遅れた
数時間待たされた電車は、今まででないほどギューギューに混み合っていた
『嫌だな~…』
でも乗るしかない
開いたドアから無理矢理乗り込んだ
30分で降りるから、奥に入る訳にもいかず、閉まるドア間際に立った
外を眺めていた
揺れにギューギュー押される
混んでいるのだからしかたないけど…
ふと気がついたら
頭の上から、窓に二本の手のひらをついてたっている人がいた
私は小さいので
頭の上に腕が二本
『えっ…何⁉』と
窓に写る腕の主を見たら
ミツルだった
押し潰されないように守ってくれているようだった
ミツルは私よりも何駅も前から乗っているから、ドア付近に立っているはずはないのに…
胸の鼓動が早くなる
パクパク、パクパク
聞こえちゃってるんじゃないかと思うくらい
恥ずかしい
30分、外を向く私の頭の上にミツルの腕があった
やっと降りる駅に着きドアが開いた
人波に押され流れていく
必死にミツルの姿を探し追いかけた
バスターミナルに向かう階段を降りた所でミツルの後ろ姿を見つけた
必死に追いかけた
『ありがとう‼ありがとうございます‼』
今にも涙が溢れちゃいそうな顔でペコリと頭を下げた
『えっ…えっ…どうしたの⁉ゴメンね。潰されちゃいそうだったから、嫌だった⁉ゴメン、ゴメン』とミツルが言った
次の日、久々に真智子と帰りが一緒になった
スポーツ万能でハキハキした性格の真智子、中学のバスケ部で一緒だった同級生の林君と付き合っている
恋愛に関しては先輩だ
ただし、今の時代と違って、付き合っているとは言っても、まだHなどは程遠いような時代だった
『ね~真智子~』
『何⁉』
『日曜日にデートするんだ…』
『え~っ…誰⁉誰⁉』
『電車で忘れ物届けてくれた人…』
真智子は電車で一緒に帰った時にミツルの事は話た事があったし、面識もあった
『あ~っ…あの人~⁉』
『ちょっとカッコイイなぁ~って思ってたんだ、、なんで~⁉』
真智子に昨日のいきさつを話た
『フンフン、フンフン』
真智子はただフンフンて聞いていた
『でもさ…デートなんてした事ないし…デートに着ていくような服がない…』
『真智子も一緒に来てよ。』
『何言ってんのよ~、りんごらしくないね~、いつもの笑い転げてるりんごが可愛いよ~、大丈夫、大丈夫、私が太鼓判押してあげるから、そのまんまのりんごで行ってきな~。』
って、私の背中をパンッパンッて2回叩いた
でもホントにオシャレな服なんて持ってない
真智子がマミに話して、マミが服を貸してくれる事になった
入学式に天パと地毛茶髪を申告し、後にパーマと染髪のバレたマミだ
マミは、2つ上の高3に姉さんが居て、その上にも姉さん居る3姉妹の末っ子だ
一番上の姉さんは、ファッション関係の当時ハウスマヌカン⁉って言ったかな~(笑)
そんな関係で
オシャレに敏感で
いつも背伸びしているような子だった
『りんごがデート⁉
応援するする~‼プロデュースしちゃう~⤴⤴』
ってマミが言ってくれた
背格好、体型もマミと近かったから、服を借りる事が出来た
日曜日、待ち合わせは10時だったが、マミの家に8時に行った
もう何枚かの服をピックアップしてくれてた
着た事もないような
大人びた服から
フリフリした可愛い服もあった
何度か試着して
マミのお姉さんも一緒に見てくれて、、
ミツルに合わせて、ちょっと大人っぽい黒いワンピに決めた
海岸線の広い駐車場に車を停めた
まだ海水浴シーズンには早かったから、人影はまばらだった
『外出ようか⁉』
『うん』
自然と腕を出すミツルに腕を絡めた
(心臓はパクパクしていた)
駐車場の縁に腰かけて、海を眺めた
(うわっ…借りた服なんだけど~座って大丈夫かな⁉💦💦💦)と頭をよぎった
『良かった…』
『何が⁉』
『今日さ、すっぽかされるかと思って心配だったんだ…』
『すっぽかすくらいなら、最初から約束なんてしませんよ~だ(笑)』
『寒くない⁉ちょっと風が冷たいかな⁉』
そう言ってミツルは、自分が着ていた上着を脱いで私に掛けた
『私は大丈夫‼ミツルさんが寒いでしょ⁉』
『俺は全然寒くないから。』
兄と出前を取って食べた
『お前さ、ちゃんと勉強してるの⁉』
『してるよ…』
『母さんが心配していたぞ、大学行くなら予備校入れなきゃって言ってたぞ‼』
(予備校⁉大学⁉)
まったく考えていなかった
高校受験は、兄と同じ進学校を受験していた
まさか⁉が起きた
まさか⁉
落ちる事は想定外だった
担任も塾の先生も大丈夫と言ってくれていた
母親は、兄の高校のPTA会長をしていた
それなのに落ちた
私は受験に失敗したのだ
原因はわからない
余程、入試で何か失敗をやらかしたのか⁉
今になっても原因は入試での失敗しか思いつかないが…
私は人生の岐路で
初めて挫折を味わったのは高校入試だった
無言のまま時間が過ぎていった
おもむろにミツルが言った
『なんかあったの⁉バレて怒られた⁉』
『何も話してくれなきゃ、わかんないじゃん。答えてよ⁉』
『嫌なら嫌だってハッキリ言っていいから…』
『・・・』
『心配になって…』
『何が⁉』
『ミツルさん、モテそうだから…私なんて…』
『ミツルさん⁉ミツルでいいよ…
モテそうって何⁉
勝手に決めんなよ
言ったろっ、ずっと倫子を見てたって
俺はずっと倫子を見てたんだよ。わかってよ。
勝手に不安になるなよ。
信用しろよ。』
ミツルが言った
たった1日デートしただけだったけど…
ミツルの思いは痛いほどよくわかった
高校生の幼い恋心には、ミツルの思いは、今思えば重たかったのかもしれない
ミツルが車から降りて行った
近くのコンビニでアイスとお菓子とジュースを買ってきた
『溶けちゃうから、、食べな』アイスを手渡した
『ねぇ、俺さモテないよ(笑)』
『でも慣れてるみたいだから…』
『そんな事ないってばっ‼この1年近く電車に乗ってくる笑顔の可愛いケラケラ笑う子にずっと片思いしてた純粋な僕をわかってよ。』
プッ…
(いつも俺って言うのに、僕だって…)
『良かった、やっと笑った…』
『もう勝手にモテそうなんて不安になるなよ。俺、大丈夫だから、浮気は絶対しない自信があるから』
『一つ決めていい⁉』
『何⁉』
『絶対になんかあったら話す事、嘘は付かない事。話してくれなきゃ何もわからないじゃん。無言てキツいよ。』
『わかった。』
『じゃ誓える⁉』
『私はミツルに嘘はつきません。何かあったら必ず話ます。ほらっ言って‼』
ってミツルが言った
『私はミツルに嘘はつきません。何かあったら必ず話ます。ほらっ言って‼』
『ほらっ言ってはいらないの~‼』
『ミツルと付き合ってんの⁉』
『えっ…⁉ミツルの事知ってるの⁉』
『お姉の同級生だもん、小さい町だから、中学校は1校しかないから、同じ年は皆同窓生なんだよ。
しかもあの車、目立ち過ぎ(笑)
あれ、ミツルだよね⁉』
(唯にミツルなんて馴れ馴れしく呼び捨てになんてして欲しくない…)
黙って教室を出ようとした
『りんご~っ、
アンタの為に忠告してあげようと思ってんのに~
ムカつく~っ💢』
唯が怒鳴っていた
(忠告⁉
何⁉忠告って⁉)
振り替えると
『ミツル、地元じゃ知らない人が居ないくらい有名だよ。知ってるの⁉』
『えっ⁉』
(ど~ゆ~こと⁉)
『やっぱ知らないんだ。』
唯が笑ってる
『何なのよ⁉』
『知りたくないの⁉』
唯が思わせ振りな態度でもったいつけていた
(唯の思わせ振りな態度に腹立ちながらも、知りたい気持ちと不安な気持ちでいっぱいになった…)
『今日さ、帰り時間ある⁉』
唯が誘った
昼休みが終了のチャイムが鳴った
『じゃ帰りねっ‼』
5時間目、6時間目は何の授業だったのかもわからないくらいだった
ミツルの事で頭がいっぱいになっていた
唯はミツルの何を知ってるの⁉
私の知らないミツル
また、不安の虫が大きく膨らんでいた…
『では、本日のホームルームは終了‼』
起立 礼
担任が教室から出ていった
『行こうか⁉』
唯が声を掛けてきた
一緒に学校を出た
真智子は今日も委員会だった
唯が
『ハンバーガー食べたいな~』
って言った
『いいよ、おごるよ。』
なんか弱みを握られた気分になっていた
『じゃ、ハンバーガーとポテトとコーラお願いねっ‼』
唯は、先にテーブルのある二階に上がって行った。
アルバイトもしてない私の小遣いは5千円だった
私はコーラだけ注文した
二階に上がると
こっち、こっちと唯が手招きをした
まるでパシリだ⤵
テーブルに着いて
『ねぇ、ミツルと付き合ってんの⁉』
『・・・』
『別にいいけど~…』
『・・・』
『ナンパされたの⁉』
『・・・』
『まっいっか…』
ハンバーガーを頬張りながら唯が話始めた…
『ミツル、族だよ、しかも幹部‼
りんごには無理だと思う。』
(えっ⁉
嘘でしょ⁉)
暴走族じゃないってミツルは言った
嘘はつかないってミツルは言った
恋心は音を立てて、崩れていくような気がした
『やっぱ知らなかったんだ⁉』
唯が笑ってる
『ミツルの身体、傷だらけじゃない⁉』
(そんなの知らない…)
(身体なんて見たことないもん…)
『知らないんだぁ~…』
『りんごって処女なの⁉』唯が言った
その言葉に、私は思わず走って逃げた
唯の笑う声が聞こえた…
一人電車に駆け込み
窓の外をボンヤリ眺めていた
地元の駅に到着した
改札を抜けいつもの階段を下りようとしたとき
『お嬢ちゃん、何を慌ててるの⁉』
ミツルの声だった
振り向きもせず
無視して階段をかけ下りた
下りた所でミツルに腕を捕まれた
『やめてっ‼』
ミツルの手を振りほどき、必死になって走って逃げた
ミツルが追いかけてきた
『なんだよ~⁉
どうしたんだよ~⁉』
ミツルの声が聞こえる
また腕を捕まれた
『俺の顔見ろよ‼何でも話すって誓ったばかりだろ⁉』
真面目な顔をしたミツルが居た
『離してっ‼』
『離さない‼』
『もう無理‼』
『俺、何かしたか⁉』
『嘘ついた‼』
『嘘なんかついてないってば‼』
通り過ぎる人が振り返る
『なぁ、ここじゃなんだから、車行こうか⁉』
『嫌っ‼離して‼』
『離さない‼』
涙が溢れてきた…
『おい、おい、俺が泣かしたみたいだろ…』
『こっち来いよ…』
ミツルに手を引っ張られながら、駐車場に向かった
『お願いだから、乗ってくれる⁉』
ミツルがドアを開けた
車のシートに
【リンゴの指定席💕】
って刺繍がしてあった
【リンゴだけしかダメ‼】ってマジックでミツルが付け足して書いてあった
『あれれ~っ⁉喜んでくれると思ったのに~…』
ミツルがおどけて見せたが、私はそんな気分にはなれなかった
車に乗り込む
『走っていいかな⁉』
『・・・』
駐車場から車は滑り出た
黙ったままうつ向いてた
『何かあったの⁉
話してよ。
約束したでしょ⁉』
『・・・』
『またダンマリ⁉
話してくれなきゃわからないじゃん。』
『・・・』
暫く走って、初めてデートした海岸線の駐車場に車入れた
ミツルも黙っている
『ウソつき…』
『俺ウソつき大嫌い‼』
『嘘つかないって言った癖に…暴走族…』
『あちゃ~っ…何それ⁉
俺、暴走族じゃないよ。』
『唯から聞いた…』
『誰それ⁉
唯なんて俺知らないぜっ。』
『山口唯』
『えっ、知らないようなぁ~…』
ミツルが必死に考えてる…
『山口唯⁉
山口唯⁉
やっぱ俺知らね~…
山口、、、山口、、、
山口薫なら同級生にいるけど…』
『妹、、クラスメート』
『山口薫の妹⁉
あっ…そ~言えば妹居たようなぁ~…』
『・・・』
しばらく沈黙が続いた
『そっか、そいつから聞いたんだな…俺が暴走族だって、、、倫子ゴメンっ…』
『ほらっウソつき…』
『でも、ちょっと違うんだな~…』
『何が⁉』
『俺、暴走族じゃないから、、、』
『だって、地元じゃ有名な暴走族だって唯が言っていたよ。』
車だってこんな…
『う~ん…』
『俺、今、暴走族じゃないです、』
ミツルが敬礼して見せた…
私は黙っていた
『昔、昔、そのまた大昔は暴走族だったかもしれません…』
ミツルがそんな言い方をした
『倫子、俺の顔を見てよ‼』
ゆっくりと顔をあげ、ミツルの方を向いた
『ダメかな⁉』
『俺、倫子にぞっこんなんだけどなぁ~…』
そんなクサイセリフをさらりと言うミツルを今は…
信用出来ない自分が居た…
『私もウソついてた…』
『えっ⁉』
『初めてのデートの日、友達に洋服借りて行った。
化粧なんてした事も初めてだった…無理してた、自分に嘘ついてた…私もウソつき…』
『やっぱなぁ~…
そんな感じしてた(笑)』
『俺が無理させちゃったのかな⁉』
『倫子、、無理して背伸びするなよ。俺は今のままの倫子の笑顔が好きになったんだからさっ』
『あっ…間違えないで、制服フェチとかロリとか、変な趣味はまったくないからなっ‼』
普通になっていた…
『でも…』
『俺さ、、ちゃんと話すわ…
倫子にちゃんと俺を知っててもらいたいから…』
ミツルが話始めた…
『俺、転校生なのよ、中学入学の時に転校してきたのよ。
生まれた所は遠い田舎でさ…
訛りがあって、恥ずかしくてさ、話せなかったのよ…』
なんか時々、不思議に感じた言葉のアクセントは、そうだったのかと納得した…
『お袋、再婚なんだ…
俺、お袋の連れ子ってヤツ
15も離れた妹が居る
妹は、今の親父とお袋の子供
まだ幼稚園だから、、俺のこと、ニィタンて呼ぶんだよ。嬉しかったなぁ~…ニィタンて呼ばれた時。』
『俺さ、喋らなかったから、クラスにも馴染めなかったんだ…
田舎からきたから、勉強も遅れてる。』
『新しい親父は俺を腫れ物のように扱った、と言うより扱い方がわからなかったんだと思う。お袋より一回りも年下だから、俺の親父にしたら若すぎだろ⁉(笑)』
『ホントの親父の記憶すらないんだ…
お袋が、ドライブインで深夜も早朝も働き詰だった。俺はいつも一人ぼっちだった。今の親父は、長距離トラックの運ちゃんでさ…
そ~ゆ~事になっちゃった訳なんだ(笑)』
『狭い田舎だったから…
すぐ噂になってさ
夜逃げするような感じで田舎を捨てて出て来たちゅ~感じ』
ポツリ、ポツリと思い出すように、前だけを向いてミツルが話始めた…
でも手はしっかりと握りしめたままだった…
『いいよ、無理して話さなくても…』
『イヤ、倫子には、ちゃんと話しておきたいんだ。』
『あっ…ただし、お袋が再婚で俺は連れ子って事は誰にも内緒でなっ…』
『誰も知らないと思うんだ…たぶん…
その為に、わざわざ知ってる人の居ない所に逃げてきたんだからさっ…』
『なんか逃げてって言うと悪い事でもしたみたいだな(笑)』
『ホントの親父の事は、お袋も話さない。一度聞いた事があるんだけど、、遠い所に居るってお袋が言ったから、子供心に死んじゃったんだと思ってた。』
『でも、うちには仏壇もなかったし、墓参りも行ってない…聞いちゃいけないんだなって思ったよ。お袋はドライブインで働いてたけど…凄い貧乏で食べる物もないなんて事はなかった…』
『うん…大人だね…』
『訛ってるから喋らない…
喋らないから友達も出来ない
友達も出来ないから、学校もつまらない…
悪循環だろ⁉(笑)』
ミツルは笑って見せた…
『段々、学校をサボってさ…
ゲーセンで暇つぶしするようになっていった…』
『ゲーセンだとさ、知らず知らずに顔見知りが、友達みたいになっていったんだ…』
『俺って勘違い野郎でしょ⁉』
ミツルが笑って言った
『そんなでさ、、知らない間に、先輩がおごってくれたりしてさ…
地元の暴走族のメンバーになっていた…
誰かと一緒に居るだけでなんか安心してさ…
たまに学校行っても、回りがなんか違うんだよ。
なんか強くなったような気がしてた…』
『俺ってホント、勘違い野郎でしょ⁉』
ミツルが時々、
『俺って勘違い野郎』って言葉を会話の間、間に挟む…
『そんなでさ、でも中学はあっと言う間に、終わってさ…』
『お袋が、必死に高校だけは行ってちょ~だい‼って泣きついて…
バカでも入れるような高校を探してきたんだよ。』
『しかたないから、入学式には行ったさ(笑)』
『でも類は友を呼ぶってヤツ⁉
高校は楽しかったよ、、
勉強なんてしなかったけど…
行っていれば卒業出来ちゃうような高校だからさ…』
そう、ミツルの行ってた高校は、、、
悪いのが集まってることで有名な悪名高い高校だった…
ちょっとした補導くらいでは退学にもならないような高校だった
『それでも停学は何回かはくらったよ…
アハハハっ(笑)』
『でも俺、ちゃんと卒業したから…偉いでしょ⁉』
ミツルが言った
『そうだね…』
ミツルの事がちょっとわかったような気がした…
本当は寂しがり屋なんだな…って思った
『わかってくれる⁉倫子ちゃん⁉』
わかったような…
わからないような…
でも『今』ここに居るミツルは、真面目に働いている社会人なんだって思えた…
『でもさ…
妹の幸が産まれてから、
なんか俺…
家に居づらくなっちゃってさ…
俺んちじゃない…
俺だけ家族じゃないって思ってた…』
『ホ~ント、俺って勘違い野郎だろ⁉』
『18才で速攻、4輪の免許取ってさ…
先輩から、タダ同然で譲ってもらった車乗り回してた…』
『バイトはしてたから、ガソリン代は自分で払ってた…
当たり前か⁉(笑)』
『ゴメンナサイ…』
『何⁉』
『バイクはずっと無免許で乗り回してました…』
『でも、4輪の免許取ってから、バイクの免許もちゃんと取得いたしました👮』
また敬礼してる(笑)
『高校卒業しても定職にもつかないで…
適当にバイトして…
適当に友達の家に寝泊まりして…
適当にしてた…
知らない間に、、暴走族の幹部になってた…』
(知らない間に幹部になってたって、、
それはないだろ⁉
と思いながらも、、
うんうん…てミツルの話を聞いていた…)
そのまま地元の駅まで送ってもらい
バイバイした
いつの間にか、高校2年の夏休みも目前に迫っていた
『倫子、夏期講習予約したからね‼』
朝から母親のキャンキャンと響く声が下から聞こえて、起こされた…
その頃、母親はパートから正社員になって生き生きしていた
私にとっても、朝早くから出掛けて…
帰りの遅くなった母親は都合が良かった
『鍵よろしく~っ‼』
バタバタと母親が出て行った…
ミツルとは相変わらずの、下校時間と夜勤への出勤までのわずかな時間の電車デートと、、、
ミツルの休みの日や夜勤明けのデートをしていた
遅くならないように気遣うミツルにちょっと物足りなさも感じていたが…
大切にしてくれてるから…と思ってた
高校生の私は、それだけで満たされてた
女子校も2年になると
彼氏がいる子も多くなってきた
バイト先で知り合った子
男子校の生徒と付き合ってる子
中学時代の同級生と付き合ってる子
それぞれにそれぞれの恋ばながあった
真智子は中学の同級生と、ずっと付き合っているし
マミは、バイト先で知り合った大学生と付き合い始めた
それぞれが夏休みにほのかなトキメキを期待していた
唯は、相変わらず母親のスナックを手伝っていたが、夏休みは海の家でもバイトをするそうで皆に声を掛けていた
『ね~っ、誰か一緒にバイトしない⁉バイトできる子探してるんだ~。』
唯の地元は観光地で海水浴場でもあった
海の家のバイトなんか楽しそうだな…
と、思ったけど、
唯とは絡みたくなと思ってた
『リンゴ~、海水浴来るんでしょ⁉』
突然、唯の声がした
『えっ⁉』
『わかんない…』
『来週の土曜日、仕事⁉』
ミツルが勤務表を手渡した
夜勤明けになっていた
『何⁉』
『花火大会でしょ⁉』
『花火大会かぁ~…』ミツルはそれ以上何も言わなかった
『一緒に行きたい』
『出られるの⁉』
ミツルが尋ねる
『うん…』
『無理すんなよ…俺さ言ったろ⁉リンゴの事大切にしたいと思ってる、だから困らせるような事したくないって…』
『俺さ、頭ワリィ~けど、、ちゃんと考えてるんだぞ…リンゴんちに挨拶行こうと思ってる。』
『挨拶⁉』
『お付き合いさせて下さいってさ、、、』
嬉しかったが、正直とまどった
母親に反対されるに決まってる
反対されるだけじゃ済まないような気がした…
今以上にうるさくなったら、ミツルとも逢えなくなる…
家に帰ると母親はまだ帰っていなかった
兄がリビングでテレビを見ていた
『ただいま~』
『お帰り』
『お兄ちゃん…』
『なんだよ⁉』
『来週の土曜日さB市で花火大会あるの知ってる⁉』
『そ~なんだ』
あまり興味はなさそうだ
『彼女連れてってあげなよ⁉』
『・・・』
『お兄ちゃん、お願いがあるんだけど…』
『なんだよ⁉』
『花火大会行きたいんだ…』
『行けばいいだろ⁉』
『お母さんが行かしてくれないもん…』
『どうしろって⁉』
『お兄ちゃんが彼女を誘って出掛ける…私がそれに付いていく…』
『はぁ~…お前連れて行く意味わかんない。』
『ミツルと行きたいんだ…』
『その偽装工作の片棒を担げってゆ~の⁉』
兄は暫く考えてたが…
『まぁ~いいだろっ‼』
引き受けてくれた⤴⤴⤴
その代わり夏休み中の家事を引き受ける事となった
母親が正社員で働き始めてから、洗濯物の取り込みとか、お風呂の支度は早く帰ってきた者がやることになっていた
兄の交換条件はそれだった
花火大会当日
兄の彼女(由美さん)とミツルと駅で待ち合わせをした
由美さんは浴衣を着ていた
ミツルもやってきた
『こんにちは
ミツルです』
『こんにちは
倫子の兄の学です』
そうだ兄に見られた事はあったが、ちゃんと会うのは初めてだった
『じゃ倫子10時半までに家に帰るんだぞっ‼絶対遅れるなよ‼約束守れよ‼』
『大丈夫です
俺、ちゃんと送り届けます
約束します。』
ミツルが言った
兄は由美さんを送ってから帰るから遅くなると言って兄達とはそこで別れ、
別々にホームへと向かった
あえて別の車両に乗り込んだ
夏休みの花火大会と言う事でいつもは降りる学校のある駅あたりからかなり混んできた
B市の花火大会は有名観光地と言うこともあり、地元のショボい花火大会とは違って大きな花火大会だった
ミツルと一緒のギュウギュウ詰めの電車は嫌いじゃなかった
ミツルにくっついていれたから
ミツルの肌の温もりを感じていられたから
『こんばんはっスッ』
『オゥッ‼』
ってミツルが言った
『知り合い⁉』
『俺、一応地元じゃん…』
また別の所から
『ミツル~持ってけよ』
って声がした
『オゥッ‼』
焼鳥とビールを差し出された
『イヤッ、俺こいつ送って行くから、焼鳥だけ貰うわっ』
そう言って焼鳥だけ貰った
『じゃ、夜、仲間内で集まる事になってるから来いやっ‼』
ミツルの後ろに隠れた
『ミツル…』
『大丈夫だよ、、後輩とか先輩だから』
ミツルはそう言ったが
そこには私の知らないミツルがいた
『夜…集まるの⁉』
『・・・』
ミツルは黙っていた
浜辺の空いてる所を探してた
『こっち、こっち~っ』
声の方を向くと
テーブルと席があった
『ミツル~、適当に座れよっ‼』
『商売の邪魔しちゃ悪いからいいっスッよ』
ミツルが言ったが…
結局、勧められた席に座った
花火が始まった
あちこちで歓声があがる
ミツルは空を見上げていた
『キレイだな‼』
『うん…』
どうも唯は苦手だ…
『泳ぎ来ないの⁉』
ドーナツを頬張りながら、唯が聞いた
『行きた~い‼✋』
マミが手をあげた
『リンゴは⁉』
『夏期講習があるから…』
『へぇ~っ…
夏期講習なんて行ってんだ⁉
進学すんの⁉』
『わかんないけど…』
『はぁ~っ⁉うちのクラスから進学するヤツなんて居たんだ~、、、』
やっぱり唯は苦手だ…
『いいじゃん、リンゴは頭いいんだからさっ‼』
マミが庇ってくれた
『ミツルは⁉』
『えっ…』
『ミツルって…ミツル先輩の事⁉』
里沙が口を挟んだ
『そ~だよ、リンゴ、ミツル先輩と付き合ってんだよ。』
唯が里沙に言ってる
『へぇ~ありえねぇ~‼』
里沙が言った
立ち止まって居ると
運転席でミツルが
おいで…
おいで…
と手招きをしていた
ゆっくり近寄り
車に乗り込む
『久しぶり~‼』
ミツルが笑顔で言った
『うんっ』
ミツルが車を走らせた
最初にデートした駐車場に車を滑り込ませ停車した
『今日さ、コンビニ行ったら、倫子の学校の制服着た子がいっぱいいたからさ、登校日なんだって思った…』
『来ちゃいけなかった⁉』
『ううん、、逢いたかった…』
『素直でよろしいっ‼』
『電話しろよっ‼』
『なんで電話してくんないの⁉』
『俺からかけちゃマズイんだろ⁉』
『お母さん19時くらいに帰ってくるからその前なら、大丈夫‼』
『そっか、了解👮』
『ね~っ…』
『何だよ⁉』
『花火大会の後…』
『真っ直ぐ家に帰って、一人寂しく膝を抱えてふて寝した。(笑)』
『ホント⁉』
『ウソつかないって約束したろ‼』
『信じなさ~いっ‼』
ミツルが頭をポンポンッと叩いた
ミツルの休みの日と
夜勤明けの日は
早起きして
早めに家を出て
夏期講習の時間までの少しの時間でもデートをしていた
そんなある日
『重大発表があります‼』
『何⁉』
『俺様、ボーナスが出ました‼
倫子ちゃんに何か買ってあげましょ~っ‼』
『えっ
ホント⁉』
『ホントもホント
ウソつかないって言ってんじゃん‼』
『じゃ、行きましょ~‼』ミツルと腕を組
駅ビルへと入って行った
『何が欲しいの⁉』
『う~ん…わかんない…』
『わかんないじゃ、困りますねぇ~』
1時間程歩き回ったけど
欲しい物は見つからなかった
『ちょっと座ろうか⁉』
ベンチに並んで座った
顔をあげた目線の先に
ジュエリーショップがあった
『買ってあげようか⁉』
『えっ⁉』
『でも…そんな高い物貰えない…』
『い~の‼
俺が倫子にプレゼントしたいんだから…』
二人でジュエリーショップのウィンドウを覗き込む
『一、十、百、千、万…』
『無理、無理~こんな高い物貰えない‼』
『ゴメン、、夏期講習の時間になっちゃった…』
結局、そのまま何も買わずにジュエリーショップを後にした…
『ゴメンね…』
『い~よ、い~よ、気にするなよ。
学生の本文は勉強です‼』
ミツルと別れて予備校へと向かった
夏休みだと言うのに
真智子もマミも
バイトに忙しく、、、
私は、私で夏期講習⤵⤵
ミツルとつかの間のデートはしていたが…
物足りなさを感じていた
お兄ちゃんもバイトをしているし…
夏期講習に出掛ける以外は、一人で家に居る事も多い
『ん~…つまんない、つまんない、つまんな~い‼』
お昼の『笑っていいとも』をボーッと見ていたら、電話が鳴った
『はいっ…』
『リンゴ⁉』
『うん』
マミからだった
『今週の日曜日、暇⁉』
『ちょっと待ってて…』
夏期講習の予定表とミツルの勤務表を出して見る
夏期講習は休みだし、
ミツルは仕事が入っていた
『暇、ヒマ、ひま~ッ⤴⤴』
『唯がさ、バイト手伝わないかって言うから、1日だけ行ってみない⁉』
『う~ん…』
『海の家、面白そうだよ。
居ればいいって‼』
唯がちょっと引っかかったが、、、
“面白そう“って言葉に行ってみたくなっていた
『時間も10時~16時だって言うし一緒に行こ‼』
『うん…』
『決まりネッ‼
唯には私から連絡しておくから、、、
じゃ日曜日、改札に8時に待ち合わせネッ‼』
電話を切ってから、
ミツルに言った方がいいかな⁉
って思ったけど…
逢えないまま日曜日を迎えていた…
『おはよ~ッ✋』
『おはよう。』
マミと一緒に電車に乗り込んだ
B市までは1時間はかかる
夏休みと言う事で
電車は比較的空いていた
冷房も効いていた
『マミ、大学生の彼氏はどう⁉』
『どうって…微妙かな~⁉』
『微妙って⁉』
『車持ってないじゃん、
お金も持ってないじゃん、』
『ミツルはさっ、社会人だし、車もあるじゃん…』
『そっか…』
『そりゃさ、一緒に居れば楽しいんだけどね~…
バイト学生で
車なしじゃラブホにも行きにくいじゃん(笑)』
『ラブホ⁉』
『マミ、ラブホなんて行った事あるの⁉』
『あるよ~(笑)』
『バレないの⁉』
『なにが⁉』
『だって…大丈夫なの⁉』
『大丈夫だよ~、誰とも顔合わせないもん。』
『マミは、怖くなかったの⁉』
『全然‼』
『ミツルとは…まだなの⁉』
『うん…』
『時間の問題だねっ‼
そろそろじゃね⁉』
マミが言った
(ミツルとはキス以上の進展はなかった…)
三人姉妹の末っ子だけあって
マミは何でも先を歩いていた
化粧もファッションも
性もオープンだった
兄しかいない私には羨ましくてしかたなかった
『おネェちゃん欲しいな…』
『あげるよ~、持ってきな~(笑)』
マミが言った
B駅~B駅~🎵
『ひゃ~っ、やっと着いたね~‼』
観光地だけあって
電車から降りる人も多かった
バケーションムード満載のアーケード街を抜け、海の家に向かって歩いた
その道は、花火大会の日にミツルと手を繋いで歩いた道だった
ミツルに何も言わないまま来てしまったことに私は一抹の不安もあった
そんな不安も
ギラギラした太陽のせいか⁉
夏期講習から解き放たれた解放感からか⁉
気持は、ウキウキしていた
初めてのバイトのせいかもしれない
母親には
『マミと唯のところに遊びに行く』
と言って出掛けてきた
母親は
『遅くならないうちに帰ってきなさいよ‼』
しか言わなかった
『こっち、こっち~✋』
唯が手を振ってた
登校日以上に真っ黒になっていた
『今日は天気もいいし、
売り上げあげるよ~‼
いっぱい売れるとさ、【大入り袋】貰えるからね~‼』
『大入り袋って何⁉』
『リンゴはホントに何もしらないんだね~っ』
唯がゲラゲラ笑ってる
唯のそ~ゆ~バカにした態度が嫌いだった…
『いっぱい売り上げがあると、バイト代の他に、お年玉袋みたいなのにおまけをもらえんだよ‼』
『ふ~ん…』
『じゃ、ここに立ってて‼
店番だからさっ。』
私は、パラソルとゴザの貸出しを任された
唯は、焼きそばとビール担当
マミは、ゴムボート担当になった
『ほらほら~っボーッと立っているだけじゃなくて、声かけなきゃダメだよ~‼』
唯が命令口調で言った
『あのさ、、今日、誰が一番ナンパされるか競争しない⁉』
唯が言い出した
『乗った~✋』
マミが手をあげた
『リンゴも乗るよね⁉』
『うん…』
なんとなく返事をしていた…
『お疲れさま‼』
奥から男の人が出てきた
『なんか適当に飲み食いしていいから。』
『あれっ⁉
こないだミツルと居た子⁉』
『あっ…ハイッ…』
『ミツルは⁉』
『あっ…今日は、仕事なんです』
『なんだよ~、こんな天気いいのにミツル仕事してんのか~⁉ガハハハッ』
そ~言えば…
ミツルが先輩って言ってたっけ
中学が1校しかないから、皆顔見知りだって
私のA市とは違うんだな…
部活でもやってない限り、先輩も後輩もないし
唯とマミと3人で
ジュースを出して、
焼きそばとかき氷を食べた
『何人からナンパされた⁉私は5人‼』
唯が言った
『3人かな⁉』
マミが答えた
『リンゴは⁉』
『うん…ゼロ…かな…』
キャ~ッ
アハハハ
2人が笑ってる
16時近くになり
『ご苦労さん、もう上がっていいよ。』
と、バイト代5千円と千円が入った大入り袋を貰った
当時のバイト代にしたら破格の金額だった
マミが
『ありがとうございま~す‼
すご~い、こんなに貰えるんだ~‼⤴⤴』
はしゃいでる
私も初めてしたバイトで貰った初めてのバイト代だったから、凄く嬉しかった
『今日は特別‼
可愛い子が3人も居たから、売り上げ倍増だったから、また来てよ。』
先輩が言ってた
後片付けをして
海の家を後にした
3人して唯の家に行った
『シャワー浴びてくるね』唯がシャワーを浴び、
マミも私も順番にシャワーを浴びた
『お店おいでよ‼』
マミが言った
『行く、行く~‼✋』
マミが手をあげた
『リンゴは⁉』
『うん…』
早く帰らないと
またウルサイ母親に怒られるだろうな…
そう思って迷っていた
そんなやり取りをそばで聞いていた唯のママが
『リンゴちゃん、私がお母さんに電話してあげるようか⁉』
と言ってくれて電話してくれることになった
☎『いつもお世話になってます、唯の母です。
今日は、お友達が何人か集まって楽しんでますので、うちでご飯食べていきなさいって誘ってるんですよ。ちょっと遅くになりますが…』
👌ママがOKサインを出してる
電話を代わったら
『あまり迷惑かけないよう遅くならないうちに帰ってきなさいよ。』
って母親が言った
『お腹空かない⁉』
『空いた~‼』
外に出た
唯の勧めで、3人して小さな中華屋さんに入った
唯の男友達がバイトしている店だった
中途半端な時間の為か
他にお客はいなかった
3人してワイワイ食べてると、奥から唯の友達もきて一緒にテーブルに座った
『こっちがマミ、こっちがリンゴ』
唯が食べながら紹介した
『俺、徹(トオル)唯の同級生』
自己紹介してくれた
『ダメダメ~‼』
『二人共、彼氏居るからね~』
唯が言った
『なんだよ、それ⁉
自己紹介くらいしたっていいだろ⁉』
アハハハハッ
『リンゴには絶対手をだしたらダメだからね‼』
『俺、タイプだな~、お前みたいに下品なやつ無理‼』
『下品だって⁉』
また笑い転げてた
『リンゴはね、ミツル先輩の彼女なの‼』
『えっ⁉ミツル先輩の…意外…』
この人もミツルの事
知ってるんだ…
『意外』って…
お腹もいっぱいになって
唯のママの店に向かった
唯のママの店は
駅のアーケード街を抜けた
路地裏にあった
ドア1枚の小さな店だった
スナックに入るのも
私は初めてだった…
まだお客は1人も居なかった
中は薄暗く
小さいテーブル席が3つとカウンターだけの
小さい店だった
唯がカウンターの中に入り
『何にする⁉』
と聞く
『まかせる‼』
マミが答えた
『リンゴは⁉』
『私は…オレンジジュースで…』
唯が慣れた手つきで
シャカシャカ何やら作っていた
私には、オレンジジュース
マミには、キレイな色をしたカクテル🍸を出した
カクテルなんてものを見るのも初めてだった
小さなグラスの中にサクランボが入っていた
『おいし~‼』
『飲んでみる⁉』
マミが言ったが…
首を横に振った
カクテルに興味はあったが、飲めない自分がいた
気がつくと
それでもテーブル席は埋まっていた
スナックの店内は
タバコの煙で白くなっていた
『あれ、、ミツルの彼女らしいよ…』
『へぇ~ミツル高校生と付き合ってんの⁉』
『子供じゃん…』
後ろのテーブルでコソコソ話してる会話が耳に入った
『あの十字架の…』
『シッ…』
店内のカラオケの音に
言葉がかき消された
十字架の⁉
今、何て言ったの⁉
知りたかった
知りたかったが…
尋ねる事は出来なかった
時間は9時を回っていた
帰らなくちゃ…
『私、帰るね‼』
『ごちそうさまでした。』
『また、いらっしゃいね。』ママが言った
私は一人スナックを出た
マミは唯の家に泊まることになった
一人アーケード街を抜け
駅の改札を入っていった
一人帰らなきゃならない自分に苛立っていた
私だって泊まりたかった
でもウルサイ母親が友達の家に泊まる事なんて許してくれるはずもなかった
皆、してる事なのに…
『高校生くらいにはさ、タバコ吸ってるヤツも居るだろうよ。
俺も吸ってた。
でも、俺は倫子にはタバコ吸って欲しくない。』
自分は吸ってるくせに
勝手な事を言っている
『男って勝手だろ⁉
でも俺は、自分の女にタバコ吸って欲しくないんだ。』
自分の女…
ミツル…
今、私のこと自分の女って言ったよね⁉
すごく嬉しかった
『ゴメンナサイ…』
『わかってくれる⁉
俺、ホントに倫子のこと大切にしていきたいんだよ。
絶対、お前のこと守るから…何があっても守るから…』
大切にされてるんだなと実感した
『帰りたくない…』
『それはダ~メ‼』
『ちゃんと、お家に帰りなさ~い。
ケジメだって言ったろ⁉』
『俺、ちゃんとしたいから、コソコソ付き合うの嫌だし、倫子の親にちゃんと認めてもらえるように頑張るから…』
『うん…』
ミツルはエンジンをかけ
家の近くまで送ってくれた
『も~っ、遅いじゃない‼
迷惑かけなかった⁉
何も持たせないで恥ずかしいじゃない⁉』
母親が矢継ぎ早に言っていた
色々聞かれるのが面倒だから、そそくさと二階へ逃げた
夏期講習が早く終わったから、
久々に真智子のバイト先に向かった
『真智子✋』
もうちょい、待ってて…
真智子がフードコートの方を指さした
一人フードコートで真智子を待っていた
『お待たせ~✋』
『バイト大変だね』
『も~慣れたよ。』
『なんかあった⁉』
『どうもしないけど…
つまらなくてさ…』
『ミツルと上手くいってないの⁉』
『いや、普通~』
『普通ってなにさ~(笑)』
『真智子は⁉』
『普通~』
『こないださ、マミと唯の海の家手伝ってきた』
一部始終を真智子に報告した
真智子はいつもように
うん、うん、て聞いてくれていた
『リンゴさっ、あんまり唯と深入りしない方がいいよ、いい噂ないし…』
『そうだね、、ミツルも口には出さないけど、多分嫌みたい…』
『こないだ、林とさ…した…』
『えっ⁉』
『林としちゃった‼』
『いつ⁉』
真智子の突然の報告に驚いた
『中学のバスケの合宿があって、二人で見に行ったんだ』
林君と真智子は中学の時の同級生で同じバスケ部だった
『その帰りに…林んちに寄って…』
改札前の伝言板横で
待っていた
伝言板は必ず見るって言ってたから
10分…20分…30分…
ミツルが階段を上がってきた‼
『どうした⁉
何かあった⁉』
『お母さんが今日は留守だから…』
『悪い子だなぁ~…』
『まっ…たまには息抜きも必要だもんな。』
『じゃ、飯でも食い行くか⁉』
『うん⤴⤴』
『何、食うか~⁉』
『ミツルのお勧めでいいよ。』
『俺、あんまこっちで食わないからよくわかんね~や…車ね~し…』
で、結局、回転寿司🍣に入った
『俺さ、寿司めっちゃ好きなんよ~。』
『腹減ってるし』
ミツルは13皿をたいらげ
私は5皿を食べた
『遠慮すんなよ(笑)
いっぱい食べないと
背伸びないよ』
『ど~せ私はチビですよっ‼』
『チビなんて言ってね~じゃん
可愛いいよ(笑)』
ミツルは、時々ポッと喜ぶような言葉をサラリと言ってのける
『これからど~すっか⁉』
『家に来る⁉』
『イヤ、止めとく
母親が留守ってわかってて
行く訳にゃいかないから。』
妙なところは律義なミツルだった
『時間大丈夫ならさ、B市まで電車で行って、ドライブしながらこっちに帰ってくるってどう⁉』
『うん、そうする。』
二人で電車に乗り込んだ
手を繋いで座った
『なんで通勤は電車なの⁉』
『電車に乗ったら、可愛いい女子高生がいっぱいいるじゃん‼』
『えっ…ウソ⁉』
ミツルの手の甲をツネってやった
『イテテテ…
冗談だよ、冗談‼
俺の車だとさ、会社入れてくんないんだよ、
会社、自動車の工場じゃん、結構、ウルサイのよ。』
『そ~ゆ~事だったのかぁ~、、、
ミツルが電車通勤なんて意外だなと思ってたんだ。』
改札を抜けて
ミツルの駐車場に向かった
車に乗り込み
走らせた
『ちょっと寄って行きたい所がある。』
暫く走ってお土産屋さんの駐車場に入った
後から付いていった
『お袋‼』
えっ…お袋⁉お母さん⁉
ヤダ、なに突然、
心の準備が…ないない💦💦💦
『あ~ミツル』
『あらっ⁉』
『リンゴちゃん⁉』
『あっはいっ…青山倫子と申します。』
頭を下げた
『あっ…みちこちゃんて言うのね、アハハハ、、
ほらっこの子の車の助手席にリンゴって書いてあったから、、、
はじめまして、
ミツルの母です。』
明るい感じのいいお母さんだった
『送ってくっから、
顔出しただけだから…』
『ちょっと待って‼』
お母さんは、店のお土産のお菓子やらお饅頭の箱を袋に詰めて
『これ、荷物になるけど、持ってて‼
今度、家の方にもいらしてね。』
ものの10分の出来事だった
昔、バイクに乗ってた頃
『事故したんだ…』
『その時のキズ』
『気を失って
気がついたら、病院の集中治療室だったんだ、情けない話だろ⁉』
『ケガは順調に回復していった』
『それがさ、退院する頃には、なぜか敵対する暴走族とやりあって、俺一人で10人相手にしたとか、20人相手にしたとか大きな話になってて…笑うちゃうだろ⁉』
『後輩達は勝手にこのキズの事を十字架を背負ってるとか伝説だとか言ってるんだよ、笑っちゃうだろ?』
『俺ってさ、ケロイド体質って言うの?キズになりやすい体質だから…』
よく見ると、長いキズに横に十字になるようにキズがあり十字架のように見えた…
『痛かったでしょ⁉』
『そりゃ~痛かったさ(笑)』
立ち上がり、
ミツルのキズをそっと指で撫でた
いつしか眠りについていた
翌朝、目が覚め
下に下りていく
『倫子、、父さん今日から盆休みだから、ちょっとお婆ちゃんの様子見に行くけど、倫子も一緒に行くか⁉』
父さんが声かけてきた
『うん…予備校の宿題があるから…』
『そうか、残念だな』
『たまには、お母さんと二人でゆっくりしてきなよ。』
父親は身支度を整え
『じゃ、後は頼んだぞ。』
やだやだ、あんな帰省ラッシュの座れないような電車と新幹線を乗り継いで行くのはゴメンだ…
内心そう思ってた
幼い頃は、毎年
夏休みに母の田舎の
お婆ちゃんの所へ帰るのがあんなに楽しみだったのに…
お兄ちゃんの受験や、私の受験もありここ数年、お婆ちゃんの所へは行っていなかった
真智子と辰巳先輩は
デュエットしたり
結構、仲いい感じだった
真智子がトイレに立った
後を追うように私もトイレに行った
『真智子‼』
『何⁉』
『辰巳さんと仲いいんだね⁉林君は大丈夫なの⁉』
『・・・』
『辰巳先輩と付き合ってる』
『林君は⁉』
『もう、林とはダメだと思う』
『えっ⁉・・・』
真智子の話によると
バイト先に林君のクラスメートだと言う女の子が訪ねて来て(林君は共学)
別れてくれって懇願されたと言う。
『なんか、林のことなんかど~でもいいやって思っちゃったんだよね~。
真っ直ぐに林への思いを私にぶつける目に負けたって思ったんだよね~…』
『林君は⁉』
『最近、会ってもないし、連絡も取ってない
音信不通、、、自然消滅的な……』
『高校が別々になって、なんとなく距離を感じてたし…そんな時に辰巳先輩に声掛けられて…』
帰りのホームルームが終わって、、唯から話たい事があるからと声を掛けられた
『ねぇ、ミツルと上手くいってる⁉』
『うん、普通だよ。』
『おネェから聞いた事なんだけどね…』と話始めた
『ミツルの背中キズあるよね⁉』
『うん…事故したって…』
『実は……』
唯の話は
4年前、ミツルが彼女を乗せてバイクで出掛けた時に、他所の土地で暴走族に絡まれたそうだ
二人乗りでは、到底逃げ切れず追い付かれ、ケンカになり、最後までミツルは彼女を庇い大ケガをした
ケンカに警察も駆けつけ、補導される事となったが、彼女の親が地元の有力者でもみ消した
彼女とミツルは引き裂かれ
彼女は、遠い親戚の家に預けられた、、
と言う話だった。
次の日、一日中、授業なんて上の空だった
食欲もない
なんとなく気持ち悪いような気もしてた…
ホームルームが終わると急いで学校を出た
ミツルの車に乗り込む
『どうした⁉相談て…何かあったのか⁉』
『・・・』
『黙ってちゃわかんないだろ⁉』
『生理が来ない…』
『えっ⁉……』
『俺、オヤジになるのかぁ~…』
と呟いた…
『・・・』
『倫子んちに、ちゃんと挨拶行かなきゃな‼』
『俺に任せろ‼大丈夫だから‼倫子は何も心配すんな‼』
ミツルは上機嫌になっていた
ミツルとは反対に私は落ち込んでいた…
『倫子は俺と一緒になるのが嫌なのか⁉』
『そうじゃない…でもまだ私は高校生なんだよ…』
『じゃ、おろしたいの⁉』
『・・・』
『俺は、責任はきちんととる‼いつかは倫子と一緒になるって決めてたし、、それがちょっと早くなっただけだろ⁉』
『・・・』
お母さんは何て言うだろう…
お父さんは何て言うだろう…
とりあえず、次の土曜日に産婦人科に行くと決めた
ミツルも有給休暇を取って一緒に病院についてきてくれた
病院は、友達から聞いてた、私のA市からほど遠い所の女医さんの目立たない小さな病院にした。
保険証も出せない
名前も住所も生年月日もウソを書いた
他に人はいなかったから、すぐ呼ばれた
尿検査と内診がされた
ミツルと二人で呼ばれた
『あなた達、高校生でしょ⁉』
先生が言った
お見通しなのだろう…
『社会人です』
ミツルが言った
『そう、あなたは彼氏さん⁉』
『はい』
『結果から言うわね。』
『妊娠はしてないわね。夏休みで生理が乱れてるだけだと思うわ。とりあえず、生理のくるお薬をお出しします。様子を見て生理が来ないようだったら、またいらっしゃい。』
『彼氏さん、一緒に来たのは偉いわ、、でも彼女を大切にするって事は、ちゃんと避妊することよ。まだ妊娠は望んでないでしょ⁉』
ちょっとお説教をされて、病院を後にした。
ホッとした
二学期になって
職場体験実習があった
学校から、選んだ職場に
体験に行くと言うものだった。
介護の施設や
販売や工場
中には農業体験なんかもあった
私は美容室へと決めた
先生からは
『遅刻は絶対しないように、、、体験と言っても直接お客様と接する機会もある場合もあるから失礼のないように。』と厳しく言われた。
ちゃんとしたアルバイトもした事はなかった私にとって、初めての経験でもある。
緊張してその日を迎えた
『おはようございます。今日、一日職場体験をさせていただきます。
青山倫子です。
よろしくお願いいたします。』
夫婦で営む小さな美容室だった
親よりも若干若い感じの夫婦は
『よろしくね。倫子ちゃんでいいかしら⁉』
『はい』
『今日は、掃除をしてもらうわ、カットをした後のフロアをお願いするわね。』と奥さんが言った
緊張する~……
一日立ちっぱなしで
足がパンパンになっていた
職場体験は3日間連続だった。
毎日、毎日、掃除や後片付けや洗濯をしていた。
それだけだったが
一日立ちっぱなしで
疲れて家に帰れば
レポートを纏めるのが精一杯だった。
働くって大変なんだな…
でも、楽しくて楽しくて仕方なかった
夫婦には子供がいなかった
『倫子ちゃんみたいな子がお店に居たら、明るくなっていいわ。』
奥さんが言った
『美容師になりたいの⁉』
『将来はまだ考えてないんです。』
『あらっ、じゃぁ美容師になりなさいよ。うちにいらっしゃい(笑)』
奥さんに言われた。
美容師かぁ~…
考えたことなかったな
母親は、大学へ進学すると決めてるし
私もなんとなく予備校へ通ってる。
この職場体験が
私の人生を大きく左右することとなる
9月も過ぎた頃
進路指導の親子面談があった
面談の日
母親が
『大学進学で、、』と口火を切った
先生からは
『推薦で絞ってよろしいですか⁉』
『希望校はありますか⁉』
私の進路なのに
母親と先生が勝手に話を進める
『先生…』
『なんだ⁉』
『大学進学はしません‼』
『倫子っ、何を言い出すの⁉』
母親が怒った顔して睨んだ
『まぁまぁお母さん、、次回までに話し合って決めておいて下さい。』
初回進路面談で時間制限もあり曖昧な感じで面談を終えた
『アンタは何を言い出すのかと思ったら…』
母親が怒ってる
『勉強したい訳じゃないし…』
『予備校だって行ってるじゃない‼高いお金出してるのよっ‼』
母親がキャンキャンまくし立てる
私は予備校行きたいなんて言ってない…
早く家を出たかった
その夜父親が帰ってきて呼ばれた
『お前はど~したいんだ⁉』
『大学へ進学する目的がわからない、、、美容師になりたい』
初めて父親に言った
『お父さん何か言ってくださいよ。』
母親が口を挟んだ
『倫子、お前の進路だ、、もう一度よく考えなさい。』
ミツルに報告した
『進路指導があってさ…』
『どうすんの⁉』
ミツルが言った
『母親は大学行けって言ってる。』
『リンゴはどうしたいの⁉』
『俺の嫁さんになっちゃえよ‼』
『嫌なの⁉』
『そ~じゃないよ‼
ミツルとは一緒になりたいよ。でも、ちゃんと社会人もやってみたい…』
『一つ決めていいか⁉』
『何⁉』
『リンゴの成人式の日、、リンゴんちに、正式に結婚の申し込みに行く。』
『うん…』
『嬉しくないの⁉』
『嬉しいよ』
ミツルとは一緒になるんだって思ってた
でも高校卒業してすぐとは考えてはいなかったし
今は、結婚より、自分の進むべき道の選択を考えている。
『美容師になりたいかなと思って…』
『そっか、、応援するよ。でも二十歳なったら、俺の嫁さんになる‼いいな⁉』
『は~い。✋』
二十歳かぁ~…
すぐのような
遠いような…
ただミツルと一緒に人生歩んで行くんだって気持ちでいた
お酒も入り
中にはガァーガァー寝出す人もいた(笑)
香と何人かで片付けをしていた時
花火をしようと誰かが言った
私と塗装屋の健ちゃんとで買いに行った
『倫子ちゃんて高校生だよね⁉』
『はい』
『香の中学の同窓生なんです』
『そうか~、だからよく店に来てるんだ』
『俺、高校卒業して地元離れたから、中学や高校の友達と離ればなれだからさ…』
『地元はどこですか⁉』
『秋田』
『遠いですね。』
『そう、雪深い山の中、就職口もなくてさ、知り合いのつてでこっちに来たんだ。』
ほんわかするイントネーションの話方をする健ちゃんだった。
『こっちの子はさ、皆美人さんばっかりだよね。言葉もキレイだし…』
『そんな事ないですよ~…』
『でも、皆、心が冷たい…』
『そんな事ないですよ~。』
車中、そんな会話をした
あまり喋らない健ちゃんだったが、ほんわかした温かさを感じた
香が
『そろそろ店が混み始めるから戻るわ。』
と、ボーリング場を後にし、店まで香を送り届けた
『倫子ちゃん、暇なら、服を買いたいんだけど、、俺センスないから、付き合ってくれない⁉』
『暇だからいいですよ。』
健ちゃんの服を買いに出掛けた
ズボンとシャツとジャケットを一揃い選んだ
ズボンが2本目半額
シャツも2枚目が半額になっていた
せっかくだからと、まとめ買いした
『付き合ってくれたから、倫子ちゃんにも買ってあげるよ。』
『いや、そんな、いいですよ~…』
『遠慮しないでいいよ』
そんなやりとりをひとしきりしたが、結局買ってもらうのはやめた…
『じゃ、お礼に昼飯ご馳走するよ。』
ってラーメンを奢ってもらった
『ご馳走さま‼』
『今日はありがとう。倫子ちゃんのおかげで楽しかったよ。』
香の店まで送ってもらった
『1年だからさ、、、倫子は、俺だけのもんだからな‼』
『うん、、』
『シャワー浴びてくるよ。』
シャワーを浴びて、
二人でバスローブになって
並んで歯磨きをした
『ミツル、ありがとう💕』
優しく何度もキスしてくれた
ミツルはいつも優しくしてくれる
首筋…
胸の突起に優しく吸い付く…
ミツルの頭が段々下に…
『イヤッ…』
そこだけは、まだイヤだった…
抵抗があった…
『大丈夫だよ、倫子の全てを知りたい…』
『イヤッ…絶対イヤッ‼』
ミツルは嫌がる事は
無理矢理することはなかった…
『そのうち、、絶対するからな…』
『・・・・』
ミツルの優しいセックスが好きだった
いつも私に合わせるように丁寧にゆっくり優しくしてくれた
『やっぱ地元が落ち着くわ~‼』
大きく伸びをしながらミツルが言った
ミツルの地元も観光地だから、結構、ニギニギしいんだけどね…
空気が違うとミツルは言う
ミツルにはミツルの落ち着く行きつけの喫茶店があった
中学くらいから入り浸っていたそ~だ
ミツルの駐車場に車を停めて歩いて行く
アーケード街の裏路地の観光客には入りにくい感じの店だ
コーヒーとミルクティーを頼んでホッと落ち着く
ミツルがタバコを燻らす
『ミッちゃん‼』
お店のママは、ミツルの事をミッちゃんと呼んでいた
『なに⁉』
『アーケードの所に占いの店が出来たのよ。知ってる⁉』
『知らね~っ』
『よく当たるって凄い人気なのよ、二人で行ってらっしゃいよ。』
『興味ね~よ』
そんな会話をしていた
女の子ばかりだったから
ミツルはあまり乗り気じゃなかったみたい(笑)
暫く待たされて番がきた
『生年月日とお名前書いて』
『何を占ったらよろしい⁉』
『これからの仕事と、二人の将来を…』
『貴方は、…………』
『次は、二人の将来ね。』
『うん、、相性は、悪くはないわ。
彼氏さん、彼女を大切になさいね。
貴方の幸運の女神とでも言うのかな、、
彼女と知り合ってから、人生がいい方向に向かってる実感があるでしょ⁉』
ミツル『はい……』
『彼女の強い影響を受けて、貴方は出世していくわ。あげまんね(笑)
世の中、大成する男の人には、必ず運を導いてくれる女の人がいるものよ。
彼女は、貴方にとってその力を持っているわ。』
『ただ…彼氏さんの家族運がちょっと弱いわね…
別離の難があるの…
それを乗り越えることね。』
そんな事を言われた。
『遊園地のエリア行こうか⁉』
『賛成✋✋✋』
あっちこっちウロウロしながら、乗り物乗ったりしてた
『ジェットコースター乗ろうよ‼』
徹君が香の手を引っ張って行く
『私はパスする~』
『大丈夫だよ、リンゴも一緒に乗ろっ‼』
香に誘われて、、
健ちゃんと一緒に座った
ジェットコースターを降りたら、ちょっと頭がクラクラして気持ち悪かった…
『大丈夫⁉』
健ちゃんが心配してくれた
『ゴメン、ちょっと車で休みたいから、健ちゃん車のキー貸してくれる⁉』
『ちょっと休めばすぐよくなるから…』
『一緒に行くよ‼』
『大丈夫、大丈夫、、、楽しんできて、ちょっと休んだらすぐ戻るから…』
キーを預かり一人で駐車場に向かった
気持ち悪い…
家の前まで送ってもらった
『ありがとうございました。ご迷惑かけました。』
『早く寝ろよ~✋』
健ちゃんが言った
『バィバ~ィ✋』
『バィバ~ィ
またね~✋』
『ただいま~‼』
『車の音、倫子だったの⁉』
『誰⁉』
母親の尋問が始まった⤵
『今日ね、香と、香の知り合いに水族館連れてってもらっただけだよ。』
『あんたって子は…
大事な時期だって言うのに
フラフラ、フラフラしてて…
お兄ちゃんは、今頃は、毎日勉強してたわよっ‼』
また始まった⤵
私は進学しないんだから…もう勉強なんてい~じゃん…
そう思ったけど、、、
一言言えば
何倍にもなってウルサイから、、黙って聞いていた…
『家まで送ってもらっちゃって…
ちゃんとお礼したの⁉』
『お礼なんてい~んだよ。』
『まったく…恥かかせないでね。知り合いって…』
『香のお店の常連さん、、こないだ一緒にバーベキューもした塗装屋さんだよ。』
いちいちウルサイ…
これだから1年も付き合ってるのに、ミツルの事は言い出せないでいた…
隠してるつもりはないんだが…
そのうちに…家に連れてきてちゃんと紹介したいとは思っていた
3年の一学期も
あっという間に
過ぎようとしていた
職業体験でお世話になった美容室にカットしてもらいに来ていた
『こんにちは~‼』
『あらっ、いらっしゃい、倫子ちゃん‼』
『カットお願いします』
『進路は決めたの⁉』
『はい、美容師の専門学校へ行く事に決めました。』
『まぁ~っ…』
『職業体験でこちらにお邪魔させてもらったおかげです。パパさん、ママさんみたいな美容師になりたいなって目標が出来ました。』
『まぁ~、倫子ちゃんたら、嬉しいわ。』
『倫子ちゃんさえ良かったら、夏休みにアルバイトしに来てくれない⁉
丁度、若い子を入れたいねってパパと話をしてたのよ。
ね~パパ⁉』
『そ~だね。
倫子ちゃんさえ良かったら。』
『本当ですか⁉
でも…母に相談してみます…』
『そ~してね。
うちは、倫子ちゃんなら大歓迎だわ‼』
夏休み最初の土曜日、アルバイトが終えて、香の店に寄っていた。
『あ~疲れた、ソーダ水。ちょ~だい‼』
私は、喫茶店のソーダ水が好きだ。
香の店のそれは、レモンが一切れ入って、赤いサクランボが1ツ入っていた。
『この緑のソーダ水って、缶ジュースにはないよね⁉』
『そぉ~⁉』
そんな会話をしていたら、、、
『俺はクリームソーダちょ‼』
振り返ると健ちゃんだった
『そんな話聞いてたら飲みたくなったろ。(笑)』
『おっちゃんにはクリームソーダは、似合わないよ~。』
『似合うとか似合わないとかあんのか⁉』
『あるある~。(笑)』
『横、座っていい⁉』
『い~よ。』
健ちゃんのクリームソーダが出てきた。
アイスクリームを食べようとスプーンを入れたら、ソーダがシュワシュワ泡立って溢れた…
『あ~っ…素人だな~(笑)
先にちょっと飲んでから食べるんだよ。(笑)』
『俺は、アイスクリームを先に食べたいの‼』
『高校生は、夏休みでいいなぁ~。
毎日、何やってんの⁉』
健ちゃんに聞かれた
『美容室でアルバイトしてるんだよ。』
『へぇ~、、
アイス食べる⁉甘いわ…』
『うんっ…ありがと』
健ちゃんがクリームソーダのアイスを私のグラスに入れてくれた⤴
ニコニコしながら、食べる。
『似合うな‼(笑)』
健ちゃんが笑った
『ごちそうさま~、帰るわ‼』
『んじゃ、俺もそろそろ帰るかな…』
一緒に店を出た
『ん⁉なんか音しね⁉』
『ん⁉
あ~…今日、B市の花火大会なんだよ。
風の向きで響いてくるんだね。』
『行くか⁉』
『今から行っても、着く前に終わっちゃうよ(笑)』
『ちょっと車のりな‼』
健ちゃんが車を走らせた。山の高台まで来たとき
『あっ…見えた🎆』
遠くにちょっと小さかったが、、花火が見えた。
去年は…
ミツルと一緒に行ったのにな…
『見えたろ⁉』
『うん⤴』
『ありがと‼バィバィ~✋』
『早く寝ろよ~
おやすみ~✋』
お母さんが、キッチンに居た
うちは、キッチンの流しの前に窓があって、窓側が道路に面してる
健ちゃんに送ってもらったのは、もうバレていた…
『遅いわねっ。』
口調がキツイ
『・・・』
『アルバイトは17時まででしょ⁉』
『別にい~じゃん‼』
『誰なの⁉』
『健ちゃん…』
『私だって、もう高3なんだよ。別に健ちゃんは、普通の知り合いだし…』
『まったく…』
まったく⁉
何が言いたいのか⁉
これ以上、母親と話していたら爆発しそうだったから、二階へと逃げた…
他の友達はオールだとか、お泊まりだとか、自由に出来るのに…
いちいちウルサイ母親が、ウザかった…
その頃母親は、、
仕事と家事の忙しさと、、
お婆ちゃんが、退院してから、休みの度に実家へもちょくちょく様子を見に帰るようになり、、
ゆっくり休む時間もなくストレスも溜まっていたのだろう…
そのイライラが私に向けられていたように思う…
こんな家、早く出たい…
そう思っていた
歯ブラシ、下着、靴下、、日曜雑貨のこまごました物を一緒に買いに回った
楽しそうに見える
ミツルがなぜかイヤだった
『工場長凄いんだぜ‼』
『なにが⁉』
『技術がさ
板金だとか塗装だとか
凄い腕してるんだよ。
俺、絶対あの人の技術を身につけて、あの人みたいになりたいんだ‼』
『なんかさ、人生で目標に出来る人に出会えたって思うんだ。
倫子のおかげだな‼』
『私は何もしてないよ…』
『してるよ‼
あの占い師が言ってたじゃん、、、
倫子に出会って、俺の人生は今までからは想像出来ないほど回り始めたんだよ。倫子は俺の“あげまん“なんだよ(笑)』
『なんか“あげまん“て下品じゃない⁉』
『じゃ、幸運の女神だ‼』
離ればなれになると言うのに…
ミツルは妙にテンションが高かった…
家に戻って、お母さんに教わりながら、一緒に台所に立った
ちらし寿司に唐揚げにエビフライ、ポテトサラダ、ミツルの好きな物ばかりだった…
お刺身の大皿には伊勢海老に鯛にマグロがのっていた
『さっ、お膳につきましょうか。』
『お父さんっ乾杯して‼』
『あ~、じゃっ
ミツルの前途を祝して乾杯‼』
お酒が進んで
お父さんが
『俺は嬉しいんだ…
ミツルがやっと一人前になったような気がして…』
『オヤジ、何言ってんだよ⁉』
『倫子ちゃん、コイツのことよろしくなっ…』
泣き上戸なのか、酔いのせいか、お父さんがしみじみと言った…
ほどなくお父さんは横になり眠りについた…
『ミツル、お父さん嬉しいんだよ。アンタが真面目に働き始めて、口にこそ出さないけど心配してたんだからね。』
お母さんが言った
嬉しいけれど…
ミツルの行動が理解出来なかった
大人のように見えるミツルと、、
ルールを守れない子供のようなミツル
『夕べ、電話したんだぞっ、、どこ行ってた⁉』
『皆とカラオケで卒業パーティーしてた…』
『・・・・』
『俺とはオールで一緒に居た事なんてないよな⁉』
『いつも親がウルサイって言ってるから、ちゃんと遅くならないうちに送って行ってるよな⁉』
『ゴメン…』
『ゴメンじゃないよっ‼』
『何やってんだよっ‼』
『そうやっていつも、遊んでいたのか⁉』
『昨日は特別、、最後だから…』
『言い訳はいいよっ‼』
『俺の見えない所で何やってんだよ⁉』
初めて、本気で怒ってるミツルを見た…
ミツルの駐車場に車を停めて一緒に駅まで向かっていた。
『キー預けておくわ、、車、自由に乗っていいから。』
『無理、無理、、一人じゃ乗れないよ。』
ミツルの車のキーを預かった。
『後、半年だから、待ってられるよな⁉』
『うん…』
『なるべく戻ってくるようにするから…』
でも、交通費は、お互い痛かった
と言うより、真ん中あたりで待ち合わせをしても、1回1万はかかる電車代は、高校を卒業したばかりの私には出せなかった…
ミツルが出してくれると言ったが、、、
デート代もいつもミツルが払ってくれてたから、、
負担が大きいのもわかってたから…
駅のホームでの別れは
辛い…
無情に閉まる電車のドア
離ればなれになる瞬間
ドア1枚の隔たりが
せつなくさせる…
無理矢理作った笑顔で
バイバイと手をふった…
ゆっくりと走り出す電車
すぐに加速し遠ざかり
見えなくなっていった…
香が徹君を電話で呼び出した
水族館以来、香と徹君は急接近し、付き合っていた
健ちゃんの車に4人で乗り込み
近くの桜の名所へと向かった
まだ肌寒い季節
香と徹君は手を繋いで
前を歩いていく
健ちゃんはポケットに両手を突っ込んで時々立ち止まっては桜を眺めている
『俺の田舎はさ、ゴールデンウィーク頃に桜が咲くんだよ…』
健ちゃんがボソッと呟いた
『へぇ~…』
『雪解けが始まって、フキノトウがあっちこっちに芽吹いて…
天ぷらにして食べたり、フキノトウ味噌にしてさ…
もうじき春になるんだなって感じるんだよ…』
『フキノトウ⁉』
『知らないか~⁉』
『ほろ苦い、大人の味だよ。』
『リンゴちゃんにゃ、まだわかんないかもな(笑)』
『ハイ、ハイ、、大人の味はわかりませんよ💢』
『セリ摘んだりしてさ…
鍋に入れて食べると美味いんだよ。きりたんぽ鍋知ってる⁉』
『テレビとかで見たことはあるけど、食べた事はないよ。』
『そっか…
今度、食わしてやるよ。』
次の日も
仕事が終わる時間に迎えに来てくれた
『結構デカイ店なんだな⁉』
『うん、理・美容室だからね。』
床屋さんと、美容室が一緒になった店だった
『何人いるの⁉』
『う~ん、12人かな
系列店舗が7店舗あるから、従業員はかなりになると思うよ。』
『いつかはトップスタイリストになりたいと思ってる。(笑)』
『綾野さんて、うちの店のトップの人がいるんだけどね…
目標にしたい憧れの人なんだ。』
『大きな大会で賞も取っててね。人間的にも尊敬出来る大人って思うの‼』
『男か⁉』
『うん、男だけど…
入ったばかりの私にも、頑張れよって声かけてくれるんだよ。』
『お前スキだらけだから、心配だな…』
『そんな人じゃないよっ‼』
『まぁ、頑張れよ…』
ミツルがイラ立っていた…
『いつ電話してもいね~し…』
『忙しい、忙しいって…』
『最近、お前、変わったよな⁉』
『・・・・』
『そりゃ、高校生の時とは変わるよ‼』
『働いてるし、学校もあるし…』
『ミツルを思う気持ちは変わってないよ‼』
『それならいいよ…』
『ミツルおかしいよ‼』
『少し冷静になって考えた方がいいかもね…⁉』
『どうゆう意味⁉
わかんね~よ。』
『ハタチなったら結婚する約束だよな⁉』
『・・・・』
『約束だよな⁉』
『・・・・』
『返事しろよっ⁉』
『今は、学校をちゃんと卒業して国家資格を取るのが目標‼』
『わかったよ…』
こんなケンカしたくなかったのに…
お店を閉めた後も
残って練習する事もあった
綾野さんは、トップなのに遅くまで付き合って指導してくれた
ありがたかった
『すいません、疲れているのに遅くまで…』
『いいんだよ、倫子ちゃん見てるとさ、自分がこの業界に入った時の一生懸命さを思い出してね。』
『初心忘るべからずってヤツかな…(笑)』
『まだまだ怠けちゃいけないなって、この業界これで満足って事ないから、、、お互い頑張ろう。』
お互いなんて…
レベルが違い過ぎる
『遅いから、今日はこれくらいにしてさ、送って行くよ。』
『私は片付けて帰りますから…先に上がってください。ありがとうございました。』
片付けを済まして
外に出たら
綾野さんが車で待っててくれた
『送るよ。』
『大丈夫です…』
『こんな時間に女の子一人で帰したら、俺が心配になるだろ⁉(笑)』
『すいません…』
綾野さんに送ってもらう事にした
『ありがとうございました。』
『他のスタッフには内緒な‼』
『はいっ…』
憧れの綾野さんに
送ってもらっちゃった⤴
『今日、夜勤明けで…
明日、火曜日だろ
どうしても、倫子に逢いたくなって…
我慢が出来なかった…
気がついたら、高速飛ばしてた…』
『ありがとう、ミツルの気持ちはすっごく嬉しいよ…
私も逢いたかったし…』
『でもね、その無謀さが事故したり、またスピード違反で捕まったりしたら…』
『後、少しの辛抱でしょ⁉』
車をラブホに滑り込ませた…
ドアを閉めると
ミツルがベッドに押し倒し重なってきた
『待って…シャワー浴び…』
唇を重ねられ
喋れなくなった
ブラウスのボタンをはずし…
ブラをたくしあげ
あらわになった
乳首に吸い付く…
下着を剥ぎ取り
ミツルはそれを押し込んできた…
そのまま果てた…
メニューを見ても
何もわからない…
困っていると
『じゃ、このコースで、、』
綾野さんが指を指す
『かしこまりました。』
『お飲み物はどうされますか⁉』
『僕は車だから、ノンアルコールで…
彼女は…』
『あっ…いいです…』
メニューは下げられた
前菜から運ばれてきた
見たこともないような
綺麗なオシャレな料理だ
『あの…
フランス料理なんて、初めてで…』
『そうだよな…
まだ高校卒業したばかりだもんな…』
『嫌だった⁉』
『美味しいです…
でも、緊張してます…』
『倫子ちゃんて、素直だよね(笑)』
緊張しまくりで食べてた
『ごちそうさまでした。』
『いつもさ、店の裏でご飯食べてる時も、倫子ちゃんて一人でも手を合わせて、いただきます、ごちそうさまってしてるでしょ⁉
美味しそうに食べる子だなって見てたんだ。(笑)』
『姉さん、今日、相談したい事があるんだけど、帰りちょっといいかな⁉』
専門学校の、通称“姉さん“35才に声を掛けた
『いいよ。
今日は、旦那も遅くなるって言ってたから。』
学校が終わってファミレスに行った
『何、相談て⁉』
『姉さんは、なんで結婚したの⁉』
『なんでって、好きだったからかな⁉(笑)』
『好きなら結婚出来る⁉』
『なんかあったの⁉』
ミツルとのいきさつを話した
『そっか…』
『で、どうするの⁉』
『悩んでる…』
『話はいくらでも聞くけど、
答えは、自分で出さなきゃダメだよ。』
『だいたい、彼氏もまだ若いよね⁉
そう簡単に事業なんて上手くいくもんじゃないと思うよ。』
『もし、事業を始めるなら、3年はがむしゃらに頑張って、事業が軌道に乗ってからだと私は思うよ。』
『悩むくらいなら、“今“はタイミングじゃないんじゃない⁉』
『結婚てさ、タイミングと勢いみたいなもんあるからさ』
『仕事と学校辞めて、後悔しない⁉』
『わからない…』
『まだ18才でしょ⁉
彼氏は…22才って言ったっけ⁉
年齢は関係ないかもしれないけれど…
本気なら、学校卒業してさ、一人前になるまで3、4年くらい待てるんじゃない⁉
長い人生の中の何年かだよ。
やっと始まったばかりの彼女の夢諦めさせて…
物になるかならないかわからないようなそんな道に無理矢理連れ込む方が無謀だと私は思うよ。』
『あくまでも私の個人的意見として聞いてね。
決めるのは倫子ちゃんだからね。』
『少なくとも卒業はちゃんとして資格は取った方がいいと思うよ。』
『結婚て、同じ方向を向くって事だと思う。
違うことしてても、見てる方向だけは同じじゃなきゃダメなんだと思う。』
ピンポ~ン🎵
玄関の呼鈴が鳴った
『おはようございます。』
母『どうぞ、上がって
これなんだけど…』
健ちゃんだった
母…『直るかしら⁉』
健…『わかりました。
大丈夫ですよ。』
母…『棚が壊れちゃってって話をしたら、健ちゃんが見てくれるって、助かっちゃうわ~っ』
私…『はぁ~⁉
お母さん‼
健ちゃんは塗装屋さんなんだよ。
なんでも屋さんじゃないんだからね。』
健…『大丈夫、ついでだから。』
私…『大丈夫じゃないよ。お母さんたら、図々しいんだから…
健ちゃん、ちゃんと請求しなよ~。』
健ちゃんは笑いながら、
器用に棚を直していた
父も兄も、日曜大工のようなものは、からっきし出来なかったから、器用になんでもこなす健ちゃんに母はなんでも頼んでいたようだった
『俺…心配なんだよ…
倫子は、逢うたびに痩せて
化粧して、髪の色も変わって…
どんどん綺麗になっていく
電話しても家にいね~し…
知らね~男の車に乗ってるのなんか見たら…
たまんね~んだよ…』
『信用出来ないって事⁉』
『心配なんだよ。』
『綾野さんは、単なる職場の先輩、、疑われるような事は一切ない。』
『それでも、、たまんね~んだって…
そばに置いておきたいんだよ…』
『・・・・』
『そんな事言われたって…私だって、寮に電話しても繋がらなかった時は不安になったよ…
でも、私にはミツルしか居ないと思ってたし…
信用してたから…』
『それにね、、
ミツルも先輩と事業するって…大丈夫なの⁉』
『だから、倫子にそばにいて欲しいんだよ。』
『倫子がそばに居てくれたら、俺、頑張れるから…』
それから半月
私からは、電話しなかった…
ミツルからも電話はなかった…
仕事に勉強に夢中になっていた
夢中になることで
気持ちを紛らわせていた
久しぶりに授業が終わってご飯でも食べに行こうかって姉さんに誘われた
『どうなった⁉』
姉さんが聞いてきた
『どうって…
ついて行けないって言ったら…音信不通…』
『そっかぁ~…
でもさ、それで終わっちゃうくらいなら、それまでだったってことだよ。』
『そ~だよね…』
『じゃ~…今日は気晴らしに、パァ~ッていっちゃうか⁉』
『そうだね~⤴⤴』
飲んで食べて
憂さ晴らしした
姉さんありがとう
気にかけてくれてたんだね…
仕事が終えた姉さんの旦那さんが迎えに来てくれた
『送りますよ。
一緒にどうぞ。』
『すいません。
ありがとうございます。』
素敵な旦那様だった…
『なんか久しぶりだな…』
『そうだね…』
ハンバーガーを頬張る
『俺…お前に無理な事言ってた…
謝るよ。ゴメン…』
『えっ⁉』
『オヤジに話をしたんだ…
工場経営なんて、お前が思ってるほど簡単なもんじゃね~って…反対されたよ。
現実を見ろ。
倫子を巻き込むなって叱られたよ。』
『でも、俺…自分を試したいんだ…』
『だから…待っててくれとは言わない…』
『えっ⁉』
『1年離れてて、俺、メチャメチャ苦しかったんだよ。
こないだも言ったけど…
逢うたびに、倫子は綺麗になっていくだろ
不安で心配で…
倫子が困るのわかってて…無理矢理、あんなことした…ゴメン…』
『もし、、2年後、専門学校を卒業して資格取れた時に…倫子が俺を必要としてたら連絡して欲しい…』
『それまでに、俺、がむしゃらに頑張るからさ…
倫子も頑張って欲しい…』
『別れるって事⁉』
『そんなの嫌だよ…』
『ミツルは、別れたいの⁉』
『せっかく帰ってきたのに…』
1ヶ月後
ミツルから電話が入った
『元気にしてるか⁉』
『うん…ミツルは⁉』
『頑張ってるよ。
電話ひいたから…
電話番号教えておくよ。
困った事があったら、
必ず電話しろよ。
すぐ駆けつけるから…』
『ありがとう…』
『先輩のつてで、居抜きで工場を手にいれる事が出来そうなんだ。』
ミツルは、生き生きと話していた…
『ミツルは、頑張っているんだね…』
『オゥッ、、お前も頑張れな‼』
『うん…』
2月にも電話がかかってきていた
『元気にしてるか⁉』
『こっちの方には帰って来る予定はないの⁉』
『2年間は帰るつもりはない…』
と、ミツルは言い切った
1年間
遠距離だったせいか
逢えない寂しさには慣れていたのかもしれない…
むしろ
『どこに行ってた⁉』
『誰といた⁉』
と、ケンカになる事も増えていたから、それが無くなって、穏やかに話が出来るようになっていた。
3月…
4月…
電話はなかった
5月になっていた
☎『もしもし…』
☎『あっ…ミツル⁉』
☎『あぁ…』
☎『なんかあった⁉』
☎『俺…結婚するかも…』
☎『えっ…⁉』
『・・・・』
☎『なんか言ってくれよ…』
☎『・・・・』
『おめでとう…』
☎『なんで“おめでとう“なんて言うんだよ⁉』
☎『だって…ミツルが決めたんでしょ⁉』
意味がわからなかった…
何も考えられなかった
私はミツルについて行けなかった…
ミツルが決めたことなら…仕方ないんだろう
ミツルは、何と言って欲しいのか⁉
半年もたたないうちに
あっけなく終わった…
あまりにも突然で
涙も出なかった
何がどうなってるのかすら聞く気にもならなかった…
7月になって…
真智子から久々に電話があって
久々に会っていた…
『元気にしてる⁉』
『忙しいけどね。』
『ミツルと別れちゃった…』
『そっか…私もなんだ…』
真智子もバイトで一緒だった彼と別れたそ~だ
『これからだね~
赤い糸が繋がってなかったんだよ~。』
二人で新たな出発に、旅行に行こうかって話をしていた
『そ~言えば…
来週の土曜日、花火大会だし、唯の店で同級生何人かで飲む約束になってるんだけどさ、リンゴにも連絡してって言われてたんだ。
一緒に行こうよ。』
唯の店か…
正直、行きたくなかった…
同級生とは会いたかったが…
B市には…
ミツルは居るはずもないけど…
なんか…
【あとがき】
いままで読んでいただき
ありがとうございました。
初めての小説もどき⁉
で、1ヶ月程で
メリハリなく
ズルズルと綴ってきました。
サクサクと、短い期間で
短いページで数年を
綴りましたので
思いが伝わったかどうかはわかりませんが…
誰しも
心の中に
【あの時違う道を選んでいたら…】
人生違っていただろうな
なんて思うことはあると思います。
純粋に、【好き】ってだけで、恋い焦がれ、心配になったり、不安になったり…
でも大人になると
【好き】なだけじゃ
どうにもならないものもあります…⤵
この恋物語を読んで
甘酸っぱい
幼い“恋心“みたいなものを思い出されたら
光栄です…
ありがとうございました。
>> 420
おはようございます。
そう
『結婚するかも…』
って聞いた時は…
気を引きたくて
嘘をついてるとしか
思ってなかったです…
まさかホントに
離れるとは思ってもいなかったし…
高校生の頃は
大人に見えたミツルだったけど…
ミツルって、
寂しがりのかまってちゃんだったんですよね…
【続編】
書いていこうかな…
- << 425 主さん、こんばんは(^_^) 続編、ありがとうございます。また楽しみができましたV(^-^)V そうですね、若い時は年上の男の人は大人に見えるもんですよね。私も就職したての頃に一つ年上の彼とお付き合いしました。今、思えばその頃の彼の年って(21~22歳)ってまだすごく若いですよね。 けど、年上ってだけで随分甘えてワガママ言ってました。 彼とは5年お付き合いしましたがフラれてしまって、もっと彼の気持ちを考えてあげれば良かったとフラれた時、後悔しました。 ミツルさんも倫子さんと2年会わないじゃなくて、遠距離続けていれば良かったのに、頑固というかご自分の信念を曲げられない方だったのですね。 その気持ちも分からないでもないけど、もっと柔軟に考えることができたら倫子さんとの関係も違っていたのかもしれませんよね。 元カノさんをほっとけなかったミツルさんを優しいなぁと感じますが、そのせいで一番大切な人を傷つけているのだから勝手だとも思います。 (ごめんなさい) もしかしたら、ミツルさんも気持ちが少し離れていたのかな?その時に元カノが現れて気持ちが揺らいだのかな? とか考えます。長々とごめんなさい(>_<) 続編、楽しみですV(^-^)V
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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76レス 2329HIT 蜻蛉玉゜ -
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178レス 2780HIT 恋愛博士さん (50代 ♀)
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11レス 120HIT 永遠の3歳 -
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1レス 125HIT 小説家さん -
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ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1390HIT 檄❗王道劇場です -
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78レス 509HIT 旅人さん
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